JP2004313019A - 組織抽出液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ホモジナイザー又はソニケーター等の装置を用いることなく、簡便且つ迅速で、しかも、安全性の高い、組織抽出液の製造方法及び組織中のタンパク質分析方法を提供する。
【解決手段】前記製造方法は、組織に対して、ホモジナイズ処理又は超音波処理を実施することなく、細胞分散用酵素処理及び膜可溶化用界面活性剤処理を行うことを特徴とする。また、前記タンパク質分析方法では、前記製造方法により得られる抽出液を、被検試料として用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】前記製造方法は、組織に対して、ホモジナイズ処理又は超音波処理を実施することなく、細胞分散用酵素処理及び膜可溶化用界面活性剤処理を行うことを特徴とする。また、前記タンパク質分析方法では、前記製造方法により得られる抽出液を、被検試料として用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、組織抽出液の製造方法、及び前記製造方法を用いて調製した抽出液を試料として用いる分析方法に関する。なお、本明細書における前記「分析」には、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」と、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」との両方が含まれる。
【0002】
【従来の技術】
組織からタンパク質を抽出する場合は一般に、ホモジナイザー又はソニケーター等の装置を用いて、組織に対し物理的な衝撃を与え、組織を破壊することにより、タンパク質を抽出する方法が広く用いられている(非特許文献1)。この場合、試料毎に装置の洗浄が必要であること、及び同時に多検体の処理ができない等、操作は複雑であり、時間を要する。
【0003】
また、前記方法では、抽出容器にホモジナイザー等の刃を挿入する必要があり、抽出容器を密閉することができず、抽出液の飛沫が発生する。特に、感染性を有する病原体、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、梅毒トレポネーマ、又は結核菌等により汚染された組織を処理する場合、あるいは、狂牛病プリオンタンパク質等、組織中に含まれる危険性の高い病原体を測定する場合、抽出液飛沫中に含まれた病原体が飛散することがあり、作業従事者のみならず、周囲に対し感染被害が発生する恐れがある。
【0004】
しかしながら、組織を検体として用いる検査項目は多岐に及ぶため、測定用試料として組織抽出液を調製する目的で、ホモジナイザー又はソニケーター等の装置を用いて、タンパク質を抽出する方法が広く用いられている。実例として、ウシ組織中の狂牛病プリオンタンパク質の測定、あるいは、ヒト組織中のアルブミン量、アルカリホスファターゼ量、グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(以下、GOTと略称する)量、グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ(以下、GPTと略称する)量、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(以下、DPDと略称する)量(非特許文献2)、又はチミジル酸合成酵素(以下、TSと略称する)量の測定等、多岐に及ぶ診断が行われていることが挙げられる。
【0005】
【非特許文献1】
「ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」,(米国),1981年,第256巻,p.219−224
【非特許文献2】
「キャンサー・リサーチ(CANCER RESEARCH)」,(米国),1993年,第53巻,p.5433−5438
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、従来技術の前記の欠点を解消し、ホモジナイザー又はソニケーター等の装置を用いる場合に比べ、試料毎の装置の洗浄等を回避することができ、しかも、同時に多検体の処理が可能な、簡便且つ迅速な、組織抽出液の製造方法、すなわち、組織からのタンパク質抽出法を提供することにある。また、組織に対し物理的な衝撃を与えることによりタンパク質を抽出する場合に頻発する抽出液の飛沫の発生を防ぎ、安全性の高い抽出法を提供することにある。更には、本発明の抽出法を用いて分離したタンパク質抽出液を試料として用いる、組織中のアルブミン測定法、アルカリホスファターゼ測定法、GOT測定法、GPT測定法、DPD測定法、及びTS測定法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、組織に対して、ホモジナイズ処理又は超音波処理を実施することなく、細胞分散用酵素処理及び膜可溶化用界面活性剤処理を行うことを特徴とする、組織抽出液の製造方法により解決することができる。
また、本発明は、前記製造方法により得られる抽出液を、被検試料として用いる、組織中のタンパク質分析方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、抽出工程中に飛沫の発生の可能性のある物理的操作、例えば、ホモジナイズ処理又は超音波処理を実施することなく、組織に対し、細胞分散用酵素処理(以下、単に酵素処理と称することがある)及び膜可溶化用界面活性剤処理(以下、単に界面活性剤処理と称することがある)を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の製造方法を適用することのできる組織には、動物組織及び植物組織が含まれる。
動物組織の場合、前記動物としては、好ましくは哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、又はイルカ等に適用することができ、より好ましくはヒト、ウシ、又はブタ、特にはヒトに適用することができる。動物組織としては、例えば、臓器(例えば、肝臓、胃、肺、腸管、脾臓、又は膵臓など)又はそれらの一部を挙げることができる。
また、植物組織としては、後述のプロトプラスト調製用酵素によりプロトプラストに調製可能な植物の各種組織である限り、特に限定されるものではないが、例えば、ミカン、オレンジ、イネ、コムギ、オオムギ、又はダイズ等を挙げることができる。
【0010】
本発明の製造方法では、組織に対する酵素処理及び界面活性剤処理を、同時に実施することもできるし、あるいは、酵素処理の後に界面活性剤処理の順序で、あるいは、界面活性剤処理の後に酵素処理の順序で行うこともできる。これらの実施順序は目的に応じて適宜選択することができる。
【0011】
本発明の製造方法を実施する場合に、組織はそのままの状態で、あるいは、適当な手段(例えば、はさみ等)により細切した後、タンパク質抽出を行うことができる。抽出効率を高めるため、組織は、予めはさみ等を用いて細切(例えば、0.1mm〜1cmの細片)することが好ましい。あるいは、組織小片(例えば、0.1mm〜1cmの細片)として採取した場合には、そのまま使用することができるため、好ましい。
【0012】
本発明に用いる細胞分散用酵素には、動物細胞を処理するために用いる動物細胞分散用酵素と、植物細胞を処理するために用いるプロトプラスト調製用酵素とが含まれる。本発明に用いる細胞分散用酵素は、細胞間を結合している細胞間結合物質(例えば、タンパク質、核酸、糖類、若しくは脂質、又はそれらの複合体等)又は細胞壁などを分解し、細胞をばらばらにすることが可能な酵素である限り、特に限定されるものではない。
本発明に用いる動物細胞分散用酵素としては、例えば、コラゲナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エラシターゼ、トリプシン、ヒアルロニダーゼ、パパイン、バシルス・ポリミキサ(Bacillus Polymixa)由来メタルプロテアーゼ(商品名ディスパーゼ;GIBCO BRL社)、又はマトリクスメタルプロテアーゼ等を挙げることができる。また、前記マトリクスメタルプロテアーゼとしては、例えば、間質コラゲナーゼ、好中球ラゲナーゼ、ゼラチナーゼA、ゼラチナーゼB、ストロメリシン1、ストロメリシン2、メトリリシン、ストロメリシン3、又はメタロエラスターゼ等を用いることができる。
【0013】
本発明に用いるプロトプラスト調製用酵素としては、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、又はペクチンリアーゼ等を挙げることができる。
【0014】
これらの細胞分散用酵素は、目的に応じて、単独で、あるいは、組み合わせて使用することができる。酵素濃度は、例えば、0.001mg/mL〜1000mg/mLの範囲で目的に応じて設定することができる。また、酵素反応温度は、各酵素の至適温度により、例えば、0℃〜50℃の範囲で目的に応じて設定することができる。酵素反応時間は、例えば、1分間以上で目的に応じて設定することができるが、作業効率を考慮すれば、30分間〜2時間程度が好ましい。酵素処理中は、目的に応じて、反応容器を静置及び/又は震盪することができる。
【0015】
本発明に用いる膜可溶化用界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤を挙げることができる。本発明に用いる膜可溶化用界面活性剤は、細胞膜の可溶化により細胞を破壊することが可能な界面活性剤である限り、特に限定されるものではない。
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、
N,N−ビス (3−D−グルコンアミドプロピル) コラミド[N,N−Bis (3−D−gluconamidopropyl) cholamide;商品名BIGCHAP]、
N,N−ビス (3−D−グルコンアミドプロピル) デオキシコラミド[N,N−Bis (3−D−gluconamidopropyl) deoxycholamide;商品名Deoxy−BIGCHAP]、
ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル[Polyoxyethylene (9) Lauryl Ether;商品名NIKKOL BL−9EX]、
オクタノイル−N−メチルグルカミド(Octanoyl−N−methylglucamide;商品名MEGA−8)、
ノナノイル−N−メチルグルカミド(Nonanoyl−N−methylglucamide;商品名MEGA−9)、
デカノイル−N−メチルグルカミド(Decanoyl−N−methylglucamide;商品名MEGA−10)、
ポリオキシエチレン (8)オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene (8) Octylphenyl Ether;商品名TritonX−114]、
ポリオキシエチレン (9) オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene (9) Octylphenyl Ether;商品名NP−40]、
ポリオキシエチレン (10) オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene (10) Octylphenyl Ether:商品名TritonX−100]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノラウレート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monolaurate;商品名Tween20]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノパルミテート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monopalmitate;商品名Tween40]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノステアレート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monostearate;商品名Tween60]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノオレエート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monooleate;商品名Tween80]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタントリオレエート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Trioleate]、
ポリオキシエチレン (23) ラウリルエーテル[Polyoxyethylene (23) Lauryl Ether;商品名Brij35]、
ポリオキシエチレン (20) セチルエーテル[Polyoxyethylene (20) Cethyl Ether;商品名Brij58)]、
n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド(n−Dodecyl−ベータ−D−maltopyranoside)、
n−ヘプチル−ベータ−D−チオグルコピラノシド(n−Heptyl−ベータ−D−thioglucopyranoside)、
n−オクチル−ベータ−D−グルコピラノシド(n−Octyl−ベータ−D−glucopyranoside)、
n−オクチル−ベータ−D−チオグルコピラノシド(n−Octyl−ベータ−D−thioglucopyranoside)、
n−ノニル−ベータ−D−チオマルトシド(n−Nonyl−ベータ−D−thiomaltoside)、
ジギトニン(Digitonin)、又は
サポニン(Saponin)
等を用いることができる。
【0016】
両性界面活性剤としては、例えば、
3−[(3−コラミドプロピル) ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート[3−[(3−Cholamidopropyl) dimethylammonio]−1−propanesulfonate;商品名CHAPS]、又は
3−[(3−コラミドプロピル) ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート[3−[(3−Cholamidopropyl) dimethylammonio]−2−hydroxy−1−propanesulfonate;商品名CHAPSO]
等を用いることができる。
【0017】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、
ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecylsulfate)、
ドデシル硫酸リチウム(Lithium Dodecylsulfate)、
3,5−ジヨードサリチル酸リチウム(Lithium 3,5−Diiodosalicylate)、
ドデシル硫酸トリス[Tris (hydroxymethyl) aminomethane Dodecyl Sulfate;Tris DS]、
コール酸ナトリウム(Sodium Cholate)、
デオキシコール酸ナトリウム(Sodium Deoxycholate)、
N−ラウロイルサルコシン(N−Lauroylsarcosine)、又は
N−ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム(Sodium N−Dodecanoylsarcosinate)
等を用いることができる。
【0018】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、
セチルジメチルエチルアンモニウムブロマイド(Cetyldimethylethylammonium Bromide)、
セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(Cethltrimethylammonium Bromide)、
セチルトリメチルアンモニウムクロライド(Cethyltrimethylammonium Chloride)、又は
グアニジンチオシアネート(Guanidine Thiocyanate)
等を用いることができる。
【0019】
これらの界面活性剤は、目的に応じて、単独で、あるいは、組み合わせて使用することができる。界面活性剤濃度は、例えば、0.01%〜50%の範囲で目的に応じて設定することができる。また、反応温度は、0℃〜50℃の範囲で目的に応じて設定することができる。界面活性剤処理時間は、例えば、1秒間以上で目的に応じて設定することができるが、作業効率を考慮すれば、30秒間〜2分間程度が好ましい。界面活性剤処理中は、目的に応じて、反応容器を静置及び/又は震盪することができる。
【0020】
酵素処理及び界面活性剤処理の両方の工程を終えた後、得られた抽出液をそのまま、組織抽出液とすることもできるし、あるいは、所望により、直ちに又は静置した後、適当な分離手段、例えば、遠心又は濾過することにより残査を除去し、組織抽出液を得ることができる。
【0021】
また、界面活性剤処理に用いる溶液には、分析対象物の保護剤としてタンパク質分解酵素阻害剤を添加することもできる。本発明において用いることのできるタンパク質分解酵素阻害剤としては、例えば、大豆トリプシンインヒビター(soybean trypsin inhibitor;SBTI)、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFP)、ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DNTB)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン(GSH)、N−エチルマレイミド(NEM)、p−クロロメルクリ安息香酸(PCMB)、p−ヒドロキシメルクリ安息香酸(PHMB)、フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、N−トシル−L−リシルクロロメチルケトン(TLCK)、N−トシル−L−フェニルアラニルメチルケトン(TPCK)、ロイコペプチン(leukopeptin)、ペプスタチン(pepstatin)、組織メタロプロテイナーゼインヒビター(tissue inhibitor of metalloproteinases;TIPM)、ラージメタロプロテイナーゼインヒビター(large inhibitor of metalloproteinases;LIPM)、チキンメタロプロテイナーゼインヒビター(chicken inhibitor of metalloproteinases;ChIPM)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(plasminogen activator inhibitor;PAI)、プロテアーゼネキシン(protease nexin;PN)等を挙げることができる。これらのタンパク質分解酵素阻害剤は、目的に応じて、単独で、あるいは、組み合わせて用いることができる。また、タンパク質分解酵素阻害剤濃度は、目的に応じて、例えば、0.01μmol/L以上に設定することができるが、これに限定されるものではなく、目的に応じた濃度を設定することができる。
【0022】
酵素処理及び界面活性剤処理に用いる反応容器としては、タンパク質抽出に一般に用いられる通常の反応容器、例えば、ガラス製チューブ又は合成樹脂製チューブ等を用いることができる。また、これらの容器の形状は、反応後、直ちに遠心操作を行うことができる形状であることが好ましい。また、取り扱い時の安全性を考慮し、密閉可能な容器を用いることが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法で得られた組織抽出液は、組織中タンパク質分析用試料として用いることができる。すなわち、本発明の製造方法は、組織中タンパク質分析用試料の製造方法でもある。本発明のタンパク質分析方法では、本発明の製造方法により得られた抽出液を被検試料として用いること以外は、分析対象の各タンパク質に応じた公知の分析方法により、分析対象タンパク質を分析することができる。この場合、目的に応じて、組織抽出液を直接測定することもできるし、あるいは、適切な緩衝液を用いて希釈し、測定することもできる。
【0024】
本発明のタンパク質分析方法で分析可能なタンパク質としては、例えば、アルブミン、アルカリホスファターゼ、GOT、GPT、DPD、又はTS等を挙げることができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
《ブタ肝臓中のDPD測定》
(1)本発明方法によるブタ肝臓抽出液の調製
ブタ肝臓1gをハサミにより細切後、蓋の密閉が可能なタイプのチューブに移した。その後、0.04mg/mLコラゲナーゼ/20mmol/Lリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと略称する)(pH7.4)溶液2mL、又は0.04mg/mLディスパーゼ/20mmol/L PBS(pH7.4)溶液2mLを添加し、37℃で100rpmにて1時間震盪した。その後、各々に対し、4%CHAPS及び1mmol/L PMSFを含む20mmol/L PBS(pH7.4)2mLを添加し、室温にて試験管ミキサーを用いて30秒間撹拌した。その後、30分間氷浴し、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ブタ肝臓抽出液を得た。
【0026】
(2)比較用ブタ肝臓抽出液の調製
(2−1)ホモジナイザーを用いるブタ肝臓抽出液の調製
対照実験として、ホモジナイザー(ポリトロン)を用いてブタ肝臓抽出液を調製した。すなわち、ブタ肝臓1gをハサミにより細切後、1mmol/L EDTA及び0.5mmol/L DTTを含む10mmol/Lトリス緩衝生理食塩水(以下、TBSと略称する)(pH7.4)4mLを添加し、抽出容器を氷冷しながらホモジナイザーを用いて1分間磨砕した。その後、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ブタ肝臓抽出液を得た。
【0027】
(2−2)界面活性剤処理のみによるブタ肝臓抽出液の調製
対照実験として、界面活性剤処理のみにより、ブタ肝臓抽出液を調製した。すなわち、ブタ肝臓1gをハサミにより細切後、蓋の密閉が可能なタイプのチューブに移した。その後、4%CHAPS及び1mmol/L PMSFを含む20mmol/L PBS(pH7.4)4mLを添加し、室温にて試験管ミキサーを用いて30秒間撹拌した。その後、30分間氷浴し、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ブタ肝臓抽出液を得た。
【0028】
(3)ブタ肝臓抽出液中DPDのELISA法測定
(3−1)検体希釈液及び標準液の調製
先に調製した各ブタ肝臓抽出液を、2%ウシ血清アルブミン(以下、BSAと略称する)及び0.1%Triton X−100を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、検体希釈液を調製した。また、MIA Paca細胞(ATCC番号:CRL−1420)抽出物を、2%BSA及び0.1%Triton X−100を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、標準液を調製した。
【0029】
(3−2)DPD測定用ELISAプレートの調製
抗DPDウサギIgGを定法によりペプシン消化し、抗DPDウサギF(ab’)2を調製した。50mmol/L炭酸緩衝液(pH 9.6)を用いて調製した10μg/mL抗DPDウサギF(ab’)2溶液を、96穴マイクロタイタープレート(MS8696F;住友ベークライト)の各ウェルに100μL/ウェルずつ分注し、4℃にて1晩静置した。その後、ウェル中の溶液を抜き取り、次いで、1%BSAを含む20mmol/L PBS(pH7.4)を250μL/ウェルずつ分注し、25℃にて1時間静置し、ブロッキング操作を行うことにより、DPD測定用ELISAプレートを調製した。
【0030】
(3−3)DPD測定用酵素標識抗体の調製
抗DPDウサギIgGを定法によりペプシン消化し、抗DPDウサギF(ab’)2を調製した。これとは別に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(以下、HRPと略称する)を化学修飾し、BSAと結合させることにより、HRP−BSA複合体を調製した。その後、抗DPDウサギF(ab’)2を用いて定法にて抗DPDウサギFab‘断片を調製し、同時にHRP−BSA複合体の化学修飾物を調製し、両者を結合することにより、DPD測定用酵素標識抗体を調製した。更に、先に調製したDPD測定用ELISAプレートと組み合わせることにより、DPD測定用ELISA試薬を調製した。
【0031】
(3−4)ブタ肝臓抽出液中DPDのELISA法による測定
先に調製したDPD測定用ELISAプレートのウェルに、検体希釈液又は標準液を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて1時間静置した。反応終了後、0.1%Triton X−100を含む生理食塩水300μL/ウェルにて3回洗浄した。次いで、0.1%TritonX−100及び20%正常ヤギ血清を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて調製したDPD測定用酵素標識抗体溶液(5μg/mL)を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて1時間静置した。反応終了後、0.1%Triton X−100を含む生理食塩水300μL/ウェルにて3回洗浄した。次いで、0.26%オルトフェニレンジアミン二塩酸塩(以下、OPDと略称する)及び0.006%過酸化水素を含む0.1mol/L酢酸緩衝液(pH5.5)を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて30分間静置した。反応終了後、0.05mol/L硫酸水溶液を100μL/ウェルずつ分注し、得られた490nmの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定した。なお、検体希釈液中のDPD濃度は、標準液の測定値から算出した。
【0032】
(4)ブタ肝臓抽出液中DPDのタンパク質濃度測定
先に調製した各ブタ肝臓抽出液を、20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、検体希釈液を調製した。また、BSAを、20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈することにより、標準液を調製した。
【0033】
96穴マイクロタイタープレート(MS8696F;住友ベークライト)のウェルに、市販のタンパク質アッセイ試薬(BCA Protein Assay Reagent;PIERECE社)を200μL/ウェルずつ分注した。次いで、検体希釈液又は標準液を10μL/ウェルずつ分注し、室温にて30分間静置した。反応終了後、得られた630nmの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定した。なお、検体希釈液中のDPD濃度は、標準液の測定値から算出した。
【0034】
(5)ブタ肝臓抽出液中DPDの測定結果
ブタ肝臓抽出液中DPDの測定結果を表1に示す。
表1に示すとおり、本発明方法を用いて調製したブタ肝臓抽出液中のDPD量を測定したところ、対照実験のブタ肝臓抽出液中のDPD量と、ほぼ同等の比活性値が得られた。また、タンパク質及びDPDの抽出効率も、従来広く用いられている抽出法である対照実験に比べても、遜色ない結果が得られた。
【0035】
【0036】
【実施例2】
《ヒト組織中のDPD測定》
(1)本発明方法によるヒト組織抽出液の調製
ヒト組織(肝臓、胃、肺、腸管、脾臓、及び膵臓)を2分割した後、一方の組織片をハサミを用いて細切後、蓋の密閉が可能なタイプのチューブに移した。なお、残る一方の組織片は、後述のとおり、ホモジナイザーを用いるヒト組織抽出液の調製に用いた。
その後、ヒト組織1g当たり、0.04mg/mLディスパーゼ/20mmol/L PBS(pH7.4)溶液2mLを添加し、37℃で100rpmにて1時間震盪した。その後、4%CHAPS及び1mmol/L PMSFを含む20mmol/L PBS(pH7.4)2mLを添加し、室温にて試験管ミキサーを用いて30秒間撹拌した。その後、30分間氷浴し、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ヒト組織抽出液を得た。
以下、ヒト肝臓抽出液を用いて各種測定を実施した結果を示すが、肝臓以外の組織抽出物についても同様の結果が得られた。
【0037】
(2)ホモジナイザーを用いるヒト組織抽出液の調製
対照実験として、先に調製した残る一方のヒト組織片から、ホモジナイザー(ポリトロン)を用いてヒト組織抽出液を調製した。ヒト組織をハサミを用いて細切後、ヒト組織1g当たり、1mmol/L EDTA及び0.5mmol/L DTTを含む10mmol/L TBS(pH7.4)4mLを添加し、抽出容器を氷冷しながらホモジナイザーを用いて1分間磨砕した。その後、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ヒト組織抽出液を得た。
【0038】
(3)ヒト組織抽出液中DPDのELISA法測定
(3−1)検体希釈液及び標準液の調製
ブタ肝臓抽出液の代わりに、ヒト組織抽出液を用いること以外は、実施例1(3−1)の操作を繰り返すことにより、検体希釈液及び標準液を調製した。
【0039】
(3−2)DPD測定用ELISAプレートの調製
実施例1(3−2)の操作を繰り返すことにより、DPD測定用ELISAプレートを調製した。
【0040】
(3−3)DPD測定用酵素標識抗体の調製
実施例1(3−3)の操作を繰り返すことにより、DPD測定用酵素標識抗体を調製した。更に、先に調製したDPD測定用ELISAプレートと組み合わせることにより、DPD測定用ELISA試薬を調製した。
【0041】
(3−4)ヒト組織抽出液中DPDのELISA法による測定
実施例2(3−1)で調製した検体希釈液及び標準液を用いること以外は、実施例1(3−4)の操作を繰り返した。
【0042】
(4)ヒト組織抽出液中DPDのタンパク質濃度測定
ブタ肝臓抽出液の代わりに、ヒト組織抽出液を用いること以外は、実施例1(4)の操作を繰り返した。
【0043】
(5)ヒト組織抽出液中DPDの測定結果
ヒト組織抽出液中DPDの測定結果を図1に示す。なお、測定値の比較は、比活性値(ng/mg)にて行った。
【0044】
図1に示す結果から、本発明方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のDPD測定値(Y)と、対照実験により調製したヒト組織抽出液中のDPD測定値(X)との間には、Y=1.05X、R=0.92のとおり、良好な相関性が認められた。
【0045】
【実施例3】
《ヒト組織中のアルブミン、アルカリホスファターゼ、GOT、及びGPTの測定》
(1)ヒト組織中のアルブミン量測定
先に調製したヒト組織抽出液を用いて、ヒト組織中のアルブミン量の測定を実施した。分析機器として、日立自動分析装置7170Sを、試薬としてイアトロファイン ALB(ヤトロン)を用いた。また、標準物として、ヒト血清を用いた。
まず、先に調製したヒト組織抽出液又は標準物(2μL)に対して、ALB R−1(270μL)を添加後、撹拌し、反応を開始した。10分間の反応を行い、反応時間である10分間を34等分(34ポイント)した、4ポイント目における、主波長660nm及び副波長700nmにて得られた吸光度を測定することにより、ヒト組織抽出液中のアルブミン量を測定した。
この測定の結果、本発明の製造方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のアルブミン量と、ホモジナイザーを用いて調製したヒト組織抽出液中のアルブミン量との間には、良好な相関性が認められた。
【0046】
(2)ヒト組織中のアルカリホスファターゼ量測定
先に調製したヒト組織抽出液を用いて、ヒト組織中のアルカリホスファターゼ量の測定を実施した。分析機器として、日立自動分析装置7170Sを、試薬としてイアトロLQ ALPレート(ヤトロン)を用いた。また、標準物として、酵素キャリブレーター(ヤトロン)を用いた。
まず、先に調製したヒト組織抽出液又は標準物(2μL)に対して、ALP R−1(160μL)を添加後、撹拌し、5分間予備反応させた。次いで、ALP R−2(40μL)を添加後、撹拌し、本反応を開始した。10分間の本反応を行い、反応時間である10分間を34等分(34ポイント)した、21ポイント目から34ポイント目における、主波長405nm及び副波長505nmにて得られた吸光度の変化量を測定することにより、ヒト組織抽出液中のアルカリホスファターゼ量を測定した。
この測定の結果、本発明の製造方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のアルカリホスファターゼ量と、ホモジナイザーを用いて調製したヒト組織抽出液中のアルカリホスファターゼ量との間には、良好な相関性が認められた。
【0047】
(3)ヒト組織中のGOT量測定
先に調製したヒト組織抽出液を用いて、ヒト組織中のGOT量の測定を実施した。分析機器として、日立自動分析装置7170Sを、試薬としてイアトロLQ GOTレート(ヤトロン)を用いた。また、標準物として、酵素キャリブレーター(ヤトロン)を用いた。
まず、先に調製したヒト組織抽出液又は標準物(7.5μL)に対して、GOT R−1(150μL)を添加後、撹拌し、5分間予備反応させた。次いで、GOT R−2(50μL)を添加後、撹拌し、本反応を開始した。10分間の本反応を行い、反応時間である10分間を34等分(34ポイント)した、21ポイント目から34ポイント目における、主波長340nm及び副波長405nmにて得られた吸光度の変化量を測定することにより、ヒト組織抽出液中のGOT量を測定した。
この測定の結果、本発明の製造方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のGOT量と、ホモジナイザーを用いて調製したヒト組織抽出液中のGOT量との間には、良好な相関性が認められた。
【0048】
(4)ヒト組織中のGPT量測定
試薬としてイアトロLQ GPTレート(ヤトロン)を用いたこと以外は、前記(3)の操作を繰り返した。
この測定の結果、本発明の製造方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のGPT量と、ホモジナイザーを用いて調製したヒト組織抽出液中のGPT量との間には、良好な相関性が認められた。
また、TSについても、本発明の製造方法により調製した組織抽出液を用いた測定において、良好な結果が得られた。
【0049】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、組織に対し、酵素処理及び界面活性剤処理を組み合わせることにより、組織から簡便且つ安全性の高いタンパク質抽出を行うことができる。また、従来の抽出法に比べても、遜色ない抽出効率のタンパク質抽出を行うことができる。更に本発明によれば、組織中のアルブミン量、アルカリホスファターゼ量、GOT量、GPT量、DPD量、又はTS量の測定に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のDPD測定値(Y)と、対照実験により調製したヒト組織抽出液中のDPD測定値(X)との相関を示すグラフである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、組織抽出液の製造方法、及び前記製造方法を用いて調製した抽出液を試料として用いる分析方法に関する。なお、本明細書における前記「分析」には、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」と、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」との両方が含まれる。
【0002】
【従来の技術】
組織からタンパク質を抽出する場合は一般に、ホモジナイザー又はソニケーター等の装置を用いて、組織に対し物理的な衝撃を与え、組織を破壊することにより、タンパク質を抽出する方法が広く用いられている(非特許文献1)。この場合、試料毎に装置の洗浄が必要であること、及び同時に多検体の処理ができない等、操作は複雑であり、時間を要する。
【0003】
また、前記方法では、抽出容器にホモジナイザー等の刃を挿入する必要があり、抽出容器を密閉することができず、抽出液の飛沫が発生する。特に、感染性を有する病原体、例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、梅毒トレポネーマ、又は結核菌等により汚染された組織を処理する場合、あるいは、狂牛病プリオンタンパク質等、組織中に含まれる危険性の高い病原体を測定する場合、抽出液飛沫中に含まれた病原体が飛散することがあり、作業従事者のみならず、周囲に対し感染被害が発生する恐れがある。
【0004】
しかしながら、組織を検体として用いる検査項目は多岐に及ぶため、測定用試料として組織抽出液を調製する目的で、ホモジナイザー又はソニケーター等の装置を用いて、タンパク質を抽出する方法が広く用いられている。実例として、ウシ組織中の狂牛病プリオンタンパク質の測定、あるいは、ヒト組織中のアルブミン量、アルカリホスファターゼ量、グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ(以下、GOTと略称する)量、グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ(以下、GPTと略称する)量、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ(以下、DPDと略称する)量(非特許文献2)、又はチミジル酸合成酵素(以下、TSと略称する)量の測定等、多岐に及ぶ診断が行われていることが挙げられる。
【0005】
【非特許文献1】
「ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」,(米国),1981年,第256巻,p.219−224
【非特許文献2】
「キャンサー・リサーチ(CANCER RESEARCH)」,(米国),1993年,第53巻,p.5433−5438
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、従来技術の前記の欠点を解消し、ホモジナイザー又はソニケーター等の装置を用いる場合に比べ、試料毎の装置の洗浄等を回避することができ、しかも、同時に多検体の処理が可能な、簡便且つ迅速な、組織抽出液の製造方法、すなわち、組織からのタンパク質抽出法を提供することにある。また、組織に対し物理的な衝撃を与えることによりタンパク質を抽出する場合に頻発する抽出液の飛沫の発生を防ぎ、安全性の高い抽出法を提供することにある。更には、本発明の抽出法を用いて分離したタンパク質抽出液を試料として用いる、組織中のアルブミン測定法、アルカリホスファターゼ測定法、GOT測定法、GPT測定法、DPD測定法、及びTS測定法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、本発明による、組織に対して、ホモジナイズ処理又は超音波処理を実施することなく、細胞分散用酵素処理及び膜可溶化用界面活性剤処理を行うことを特徴とする、組織抽出液の製造方法により解決することができる。
また、本発明は、前記製造方法により得られる抽出液を、被検試料として用いる、組織中のタンパク質分析方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の製造方法は、抽出工程中に飛沫の発生の可能性のある物理的操作、例えば、ホモジナイズ処理又は超音波処理を実施することなく、組織に対し、細胞分散用酵素処理(以下、単に酵素処理と称することがある)及び膜可溶化用界面活性剤処理(以下、単に界面活性剤処理と称することがある)を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の製造方法を適用することのできる組織には、動物組織及び植物組織が含まれる。
動物組織の場合、前記動物としては、好ましくは哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ネコ、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、又はイルカ等に適用することができ、より好ましくはヒト、ウシ、又はブタ、特にはヒトに適用することができる。動物組織としては、例えば、臓器(例えば、肝臓、胃、肺、腸管、脾臓、又は膵臓など)又はそれらの一部を挙げることができる。
また、植物組織としては、後述のプロトプラスト調製用酵素によりプロトプラストに調製可能な植物の各種組織である限り、特に限定されるものではないが、例えば、ミカン、オレンジ、イネ、コムギ、オオムギ、又はダイズ等を挙げることができる。
【0010】
本発明の製造方法では、組織に対する酵素処理及び界面活性剤処理を、同時に実施することもできるし、あるいは、酵素処理の後に界面活性剤処理の順序で、あるいは、界面活性剤処理の後に酵素処理の順序で行うこともできる。これらの実施順序は目的に応じて適宜選択することができる。
【0011】
本発明の製造方法を実施する場合に、組織はそのままの状態で、あるいは、適当な手段(例えば、はさみ等)により細切した後、タンパク質抽出を行うことができる。抽出効率を高めるため、組織は、予めはさみ等を用いて細切(例えば、0.1mm〜1cmの細片)することが好ましい。あるいは、組織小片(例えば、0.1mm〜1cmの細片)として採取した場合には、そのまま使用することができるため、好ましい。
【0012】
本発明に用いる細胞分散用酵素には、動物細胞を処理するために用いる動物細胞分散用酵素と、植物細胞を処理するために用いるプロトプラスト調製用酵素とが含まれる。本発明に用いる細胞分散用酵素は、細胞間を結合している細胞間結合物質(例えば、タンパク質、核酸、糖類、若しくは脂質、又はそれらの複合体等)又は細胞壁などを分解し、細胞をばらばらにすることが可能な酵素である限り、特に限定されるものではない。
本発明に用いる動物細胞分散用酵素としては、例えば、コラゲナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エラシターゼ、トリプシン、ヒアルロニダーゼ、パパイン、バシルス・ポリミキサ(Bacillus Polymixa)由来メタルプロテアーゼ(商品名ディスパーゼ;GIBCO BRL社)、又はマトリクスメタルプロテアーゼ等を挙げることができる。また、前記マトリクスメタルプロテアーゼとしては、例えば、間質コラゲナーゼ、好中球ラゲナーゼ、ゼラチナーゼA、ゼラチナーゼB、ストロメリシン1、ストロメリシン2、メトリリシン、ストロメリシン3、又はメタロエラスターゼ等を用いることができる。
【0013】
本発明に用いるプロトプラスト調製用酵素としては、例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、又はペクチンリアーゼ等を挙げることができる。
【0014】
これらの細胞分散用酵素は、目的に応じて、単独で、あるいは、組み合わせて使用することができる。酵素濃度は、例えば、0.001mg/mL〜1000mg/mLの範囲で目的に応じて設定することができる。また、酵素反応温度は、各酵素の至適温度により、例えば、0℃〜50℃の範囲で目的に応じて設定することができる。酵素反応時間は、例えば、1分間以上で目的に応じて設定することができるが、作業効率を考慮すれば、30分間〜2時間程度が好ましい。酵素処理中は、目的に応じて、反応容器を静置及び/又は震盪することができる。
【0015】
本発明に用いる膜可溶化用界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤を挙げることができる。本発明に用いる膜可溶化用界面活性剤は、細胞膜の可溶化により細胞を破壊することが可能な界面活性剤である限り、特に限定されるものではない。
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、
N,N−ビス (3−D−グルコンアミドプロピル) コラミド[N,N−Bis (3−D−gluconamidopropyl) cholamide;商品名BIGCHAP]、
N,N−ビス (3−D−グルコンアミドプロピル) デオキシコラミド[N,N−Bis (3−D−gluconamidopropyl) deoxycholamide;商品名Deoxy−BIGCHAP]、
ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテル[Polyoxyethylene (9) Lauryl Ether;商品名NIKKOL BL−9EX]、
オクタノイル−N−メチルグルカミド(Octanoyl−N−methylglucamide;商品名MEGA−8)、
ノナノイル−N−メチルグルカミド(Nonanoyl−N−methylglucamide;商品名MEGA−9)、
デカノイル−N−メチルグルカミド(Decanoyl−N−methylglucamide;商品名MEGA−10)、
ポリオキシエチレン (8)オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene (8) Octylphenyl Ether;商品名TritonX−114]、
ポリオキシエチレン (9) オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene (9) Octylphenyl Ether;商品名NP−40]、
ポリオキシエチレン (10) オクチルフェニルエーテル[Polyoxyethylene (10) Octylphenyl Ether:商品名TritonX−100]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノラウレート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monolaurate;商品名Tween20]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノパルミテート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monopalmitate;商品名Tween40]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノステアレート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monostearate;商品名Tween60]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタンモノオレエート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Monooleate;商品名Tween80]、
ポリオキシエチレン (20) ソルビタントリオレエート[Polyoxyethylene (20) Sorbitan Trioleate]、
ポリオキシエチレン (23) ラウリルエーテル[Polyoxyethylene (23) Lauryl Ether;商品名Brij35]、
ポリオキシエチレン (20) セチルエーテル[Polyoxyethylene (20) Cethyl Ether;商品名Brij58)]、
n−ドデシル−ベータ−D−マルトピラノシド(n−Dodecyl−ベータ−D−maltopyranoside)、
n−ヘプチル−ベータ−D−チオグルコピラノシド(n−Heptyl−ベータ−D−thioglucopyranoside)、
n−オクチル−ベータ−D−グルコピラノシド(n−Octyl−ベータ−D−glucopyranoside)、
n−オクチル−ベータ−D−チオグルコピラノシド(n−Octyl−ベータ−D−thioglucopyranoside)、
n−ノニル−ベータ−D−チオマルトシド(n−Nonyl−ベータ−D−thiomaltoside)、
ジギトニン(Digitonin)、又は
サポニン(Saponin)
等を用いることができる。
【0016】
両性界面活性剤としては、例えば、
3−[(3−コラミドプロピル) ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート[3−[(3−Cholamidopropyl) dimethylammonio]−1−propanesulfonate;商品名CHAPS]、又は
3−[(3−コラミドプロピル) ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート[3−[(3−Cholamidopropyl) dimethylammonio]−2−hydroxy−1−propanesulfonate;商品名CHAPSO]
等を用いることができる。
【0017】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、
ドデシル硫酸ナトリウム(Sodium Dodecylsulfate)、
ドデシル硫酸リチウム(Lithium Dodecylsulfate)、
3,5−ジヨードサリチル酸リチウム(Lithium 3,5−Diiodosalicylate)、
ドデシル硫酸トリス[Tris (hydroxymethyl) aminomethane Dodecyl Sulfate;Tris DS]、
コール酸ナトリウム(Sodium Cholate)、
デオキシコール酸ナトリウム(Sodium Deoxycholate)、
N−ラウロイルサルコシン(N−Lauroylsarcosine)、又は
N−ドデカノイルサルコシン酸ナトリウム(Sodium N−Dodecanoylsarcosinate)
等を用いることができる。
【0018】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、
セチルジメチルエチルアンモニウムブロマイド(Cetyldimethylethylammonium Bromide)、
セチルトリメチルアンモニウムブロマイド(Cethltrimethylammonium Bromide)、
セチルトリメチルアンモニウムクロライド(Cethyltrimethylammonium Chloride)、又は
グアニジンチオシアネート(Guanidine Thiocyanate)
等を用いることができる。
【0019】
これらの界面活性剤は、目的に応じて、単独で、あるいは、組み合わせて使用することができる。界面活性剤濃度は、例えば、0.01%〜50%の範囲で目的に応じて設定することができる。また、反応温度は、0℃〜50℃の範囲で目的に応じて設定することができる。界面活性剤処理時間は、例えば、1秒間以上で目的に応じて設定することができるが、作業効率を考慮すれば、30秒間〜2分間程度が好ましい。界面活性剤処理中は、目的に応じて、反応容器を静置及び/又は震盪することができる。
【0020】
酵素処理及び界面活性剤処理の両方の工程を終えた後、得られた抽出液をそのまま、組織抽出液とすることもできるし、あるいは、所望により、直ちに又は静置した後、適当な分離手段、例えば、遠心又は濾過することにより残査を除去し、組織抽出液を得ることができる。
【0021】
また、界面活性剤処理に用いる溶液には、分析対象物の保護剤としてタンパク質分解酵素阻害剤を添加することもできる。本発明において用いることのできるタンパク質分解酵素阻害剤としては、例えば、大豆トリプシンインヒビター(soybean trypsin inhibitor;SBTI)、ジイソプロピルフルオロリン酸(DFP)、ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)(DNTB)、ジチオスレイトール(DTT)、グルタチオン(GSH)、N−エチルマレイミド(NEM)、p−クロロメルクリ安息香酸(PCMB)、p−ヒドロキシメルクリ安息香酸(PHMB)、フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF)、N−トシル−L−リシルクロロメチルケトン(TLCK)、N−トシル−L−フェニルアラニルメチルケトン(TPCK)、ロイコペプチン(leukopeptin)、ペプスタチン(pepstatin)、組織メタロプロテイナーゼインヒビター(tissue inhibitor of metalloproteinases;TIPM)、ラージメタロプロテイナーゼインヒビター(large inhibitor of metalloproteinases;LIPM)、チキンメタロプロテイナーゼインヒビター(chicken inhibitor of metalloproteinases;ChIPM)、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター(plasminogen activator inhibitor;PAI)、プロテアーゼネキシン(protease nexin;PN)等を挙げることができる。これらのタンパク質分解酵素阻害剤は、目的に応じて、単独で、あるいは、組み合わせて用いることができる。また、タンパク質分解酵素阻害剤濃度は、目的に応じて、例えば、0.01μmol/L以上に設定することができるが、これに限定されるものではなく、目的に応じた濃度を設定することができる。
【0022】
酵素処理及び界面活性剤処理に用いる反応容器としては、タンパク質抽出に一般に用いられる通常の反応容器、例えば、ガラス製チューブ又は合成樹脂製チューブ等を用いることができる。また、これらの容器の形状は、反応後、直ちに遠心操作を行うことができる形状であることが好ましい。また、取り扱い時の安全性を考慮し、密閉可能な容器を用いることが好ましい。
【0023】
本発明の製造方法で得られた組織抽出液は、組織中タンパク質分析用試料として用いることができる。すなわち、本発明の製造方法は、組織中タンパク質分析用試料の製造方法でもある。本発明のタンパク質分析方法では、本発明の製造方法により得られた抽出液を被検試料として用いること以外は、分析対象の各タンパク質に応じた公知の分析方法により、分析対象タンパク質を分析することができる。この場合、目的に応じて、組織抽出液を直接測定することもできるし、あるいは、適切な緩衝液を用いて希釈し、測定することもできる。
【0024】
本発明のタンパク質分析方法で分析可能なタンパク質としては、例えば、アルブミン、アルカリホスファターゼ、GOT、GPT、DPD、又はTS等を挙げることができる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
《ブタ肝臓中のDPD測定》
(1)本発明方法によるブタ肝臓抽出液の調製
ブタ肝臓1gをハサミにより細切後、蓋の密閉が可能なタイプのチューブに移した。その後、0.04mg/mLコラゲナーゼ/20mmol/Lリン酸緩衝生理食塩水(以下、PBSと略称する)(pH7.4)溶液2mL、又は0.04mg/mLディスパーゼ/20mmol/L PBS(pH7.4)溶液2mLを添加し、37℃で100rpmにて1時間震盪した。その後、各々に対し、4%CHAPS及び1mmol/L PMSFを含む20mmol/L PBS(pH7.4)2mLを添加し、室温にて試験管ミキサーを用いて30秒間撹拌した。その後、30分間氷浴し、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ブタ肝臓抽出液を得た。
【0026】
(2)比較用ブタ肝臓抽出液の調製
(2−1)ホモジナイザーを用いるブタ肝臓抽出液の調製
対照実験として、ホモジナイザー(ポリトロン)を用いてブタ肝臓抽出液を調製した。すなわち、ブタ肝臓1gをハサミにより細切後、1mmol/L EDTA及び0.5mmol/L DTTを含む10mmol/Lトリス緩衝生理食塩水(以下、TBSと略称する)(pH7.4)4mLを添加し、抽出容器を氷冷しながらホモジナイザーを用いて1分間磨砕した。その後、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ブタ肝臓抽出液を得た。
【0027】
(2−2)界面活性剤処理のみによるブタ肝臓抽出液の調製
対照実験として、界面活性剤処理のみにより、ブタ肝臓抽出液を調製した。すなわち、ブタ肝臓1gをハサミにより細切後、蓋の密閉が可能なタイプのチューブに移した。その後、4%CHAPS及び1mmol/L PMSFを含む20mmol/L PBS(pH7.4)4mLを添加し、室温にて試験管ミキサーを用いて30秒間撹拌した。その後、30分間氷浴し、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ブタ肝臓抽出液を得た。
【0028】
(3)ブタ肝臓抽出液中DPDのELISA法測定
(3−1)検体希釈液及び標準液の調製
先に調製した各ブタ肝臓抽出液を、2%ウシ血清アルブミン(以下、BSAと略称する)及び0.1%Triton X−100を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、検体希釈液を調製した。また、MIA Paca細胞(ATCC番号:CRL−1420)抽出物を、2%BSA及び0.1%Triton X−100を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、標準液を調製した。
【0029】
(3−2)DPD測定用ELISAプレートの調製
抗DPDウサギIgGを定法によりペプシン消化し、抗DPDウサギF(ab’)2を調製した。50mmol/L炭酸緩衝液(pH 9.6)を用いて調製した10μg/mL抗DPDウサギF(ab’)2溶液を、96穴マイクロタイタープレート(MS8696F;住友ベークライト)の各ウェルに100μL/ウェルずつ分注し、4℃にて1晩静置した。その後、ウェル中の溶液を抜き取り、次いで、1%BSAを含む20mmol/L PBS(pH7.4)を250μL/ウェルずつ分注し、25℃にて1時間静置し、ブロッキング操作を行うことにより、DPD測定用ELISAプレートを調製した。
【0030】
(3−3)DPD測定用酵素標識抗体の調製
抗DPDウサギIgGを定法によりペプシン消化し、抗DPDウサギF(ab’)2を調製した。これとは別に、西洋ワサビペルオキシダーゼ(以下、HRPと略称する)を化学修飾し、BSAと結合させることにより、HRP−BSA複合体を調製した。その後、抗DPDウサギF(ab’)2を用いて定法にて抗DPDウサギFab‘断片を調製し、同時にHRP−BSA複合体の化学修飾物を調製し、両者を結合することにより、DPD測定用酵素標識抗体を調製した。更に、先に調製したDPD測定用ELISAプレートと組み合わせることにより、DPD測定用ELISA試薬を調製した。
【0031】
(3−4)ブタ肝臓抽出液中DPDのELISA法による測定
先に調製したDPD測定用ELISAプレートのウェルに、検体希釈液又は標準液を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて1時間静置した。反応終了後、0.1%Triton X−100を含む生理食塩水300μL/ウェルにて3回洗浄した。次いで、0.1%TritonX−100及び20%正常ヤギ血清を含む20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて調製したDPD測定用酵素標識抗体溶液(5μg/mL)を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて1時間静置した。反応終了後、0.1%Triton X−100を含む生理食塩水300μL/ウェルにて3回洗浄した。次いで、0.26%オルトフェニレンジアミン二塩酸塩(以下、OPDと略称する)及び0.006%過酸化水素を含む0.1mol/L酢酸緩衝液(pH5.5)を100μL/ウェルずつ分注し、室温にて30分間静置した。反応終了後、0.05mol/L硫酸水溶液を100μL/ウェルずつ分注し、得られた490nmの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定した。なお、検体希釈液中のDPD濃度は、標準液の測定値から算出した。
【0032】
(4)ブタ肝臓抽出液中DPDのタンパク質濃度測定
先に調製した各ブタ肝臓抽出液を、20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈し、検体希釈液を調製した。また、BSAを、20mmol/L PBS(pH7.4)を用いて適当な倍率に希釈することにより、標準液を調製した。
【0033】
96穴マイクロタイタープレート(MS8696F;住友ベークライト)のウェルに、市販のタンパク質アッセイ試薬(BCA Protein Assay Reagent;PIERECE社)を200μL/ウェルずつ分注した。次いで、検体希釈液又は標準液を10μL/ウェルずつ分注し、室温にて30分間静置した。反応終了後、得られた630nmの吸光度を、マイクロプレートリーダーを用いて測定した。なお、検体希釈液中のDPD濃度は、標準液の測定値から算出した。
【0034】
(5)ブタ肝臓抽出液中DPDの測定結果
ブタ肝臓抽出液中DPDの測定結果を表1に示す。
表1に示すとおり、本発明方法を用いて調製したブタ肝臓抽出液中のDPD量を測定したところ、対照実験のブタ肝臓抽出液中のDPD量と、ほぼ同等の比活性値が得られた。また、タンパク質及びDPDの抽出効率も、従来広く用いられている抽出法である対照実験に比べても、遜色ない結果が得られた。
【0035】
【0036】
【実施例2】
《ヒト組織中のDPD測定》
(1)本発明方法によるヒト組織抽出液の調製
ヒト組織(肝臓、胃、肺、腸管、脾臓、及び膵臓)を2分割した後、一方の組織片をハサミを用いて細切後、蓋の密閉が可能なタイプのチューブに移した。なお、残る一方の組織片は、後述のとおり、ホモジナイザーを用いるヒト組織抽出液の調製に用いた。
その後、ヒト組織1g当たり、0.04mg/mLディスパーゼ/20mmol/L PBS(pH7.4)溶液2mLを添加し、37℃で100rpmにて1時間震盪した。その後、4%CHAPS及び1mmol/L PMSFを含む20mmol/L PBS(pH7.4)2mLを添加し、室温にて試験管ミキサーを用いて30秒間撹拌した。その後、30分間氷浴し、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ヒト組織抽出液を得た。
以下、ヒト肝臓抽出液を用いて各種測定を実施した結果を示すが、肝臓以外の組織抽出物についても同様の結果が得られた。
【0037】
(2)ホモジナイザーを用いるヒト組織抽出液の調製
対照実験として、先に調製した残る一方のヒト組織片から、ホモジナイザー(ポリトロン)を用いてヒト組織抽出液を調製した。ヒト組織をハサミを用いて細切後、ヒト組織1g当たり、1mmol/L EDTA及び0.5mmol/L DTTを含む10mmol/L TBS(pH7.4)4mLを添加し、抽出容器を氷冷しながらホモジナイザーを用いて1分間磨砕した。その後、4℃及び14000rpmにて30分間遠心することにより残査を除去し、ヒト組織抽出液を得た。
【0038】
(3)ヒト組織抽出液中DPDのELISA法測定
(3−1)検体希釈液及び標準液の調製
ブタ肝臓抽出液の代わりに、ヒト組織抽出液を用いること以外は、実施例1(3−1)の操作を繰り返すことにより、検体希釈液及び標準液を調製した。
【0039】
(3−2)DPD測定用ELISAプレートの調製
実施例1(3−2)の操作を繰り返すことにより、DPD測定用ELISAプレートを調製した。
【0040】
(3−3)DPD測定用酵素標識抗体の調製
実施例1(3−3)の操作を繰り返すことにより、DPD測定用酵素標識抗体を調製した。更に、先に調製したDPD測定用ELISAプレートと組み合わせることにより、DPD測定用ELISA試薬を調製した。
【0041】
(3−4)ヒト組織抽出液中DPDのELISA法による測定
実施例2(3−1)で調製した検体希釈液及び標準液を用いること以外は、実施例1(3−4)の操作を繰り返した。
【0042】
(4)ヒト組織抽出液中DPDのタンパク質濃度測定
ブタ肝臓抽出液の代わりに、ヒト組織抽出液を用いること以外は、実施例1(4)の操作を繰り返した。
【0043】
(5)ヒト組織抽出液中DPDの測定結果
ヒト組織抽出液中DPDの測定結果を図1に示す。なお、測定値の比較は、比活性値(ng/mg)にて行った。
【0044】
図1に示す結果から、本発明方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のDPD測定値(Y)と、対照実験により調製したヒト組織抽出液中のDPD測定値(X)との間には、Y=1.05X、R=0.92のとおり、良好な相関性が認められた。
【0045】
【実施例3】
《ヒト組織中のアルブミン、アルカリホスファターゼ、GOT、及びGPTの測定》
(1)ヒト組織中のアルブミン量測定
先に調製したヒト組織抽出液を用いて、ヒト組織中のアルブミン量の測定を実施した。分析機器として、日立自動分析装置7170Sを、試薬としてイアトロファイン ALB(ヤトロン)を用いた。また、標準物として、ヒト血清を用いた。
まず、先に調製したヒト組織抽出液又は標準物(2μL)に対して、ALB R−1(270μL)を添加後、撹拌し、反応を開始した。10分間の反応を行い、反応時間である10分間を34等分(34ポイント)した、4ポイント目における、主波長660nm及び副波長700nmにて得られた吸光度を測定することにより、ヒト組織抽出液中のアルブミン量を測定した。
この測定の結果、本発明の製造方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のアルブミン量と、ホモジナイザーを用いて調製したヒト組織抽出液中のアルブミン量との間には、良好な相関性が認められた。
【0046】
(2)ヒト組織中のアルカリホスファターゼ量測定
先に調製したヒト組織抽出液を用いて、ヒト組織中のアルカリホスファターゼ量の測定を実施した。分析機器として、日立自動分析装置7170Sを、試薬としてイアトロLQ ALPレート(ヤトロン)を用いた。また、標準物として、酵素キャリブレーター(ヤトロン)を用いた。
まず、先に調製したヒト組織抽出液又は標準物(2μL)に対して、ALP R−1(160μL)を添加後、撹拌し、5分間予備反応させた。次いで、ALP R−2(40μL)を添加後、撹拌し、本反応を開始した。10分間の本反応を行い、反応時間である10分間を34等分(34ポイント)した、21ポイント目から34ポイント目における、主波長405nm及び副波長505nmにて得られた吸光度の変化量を測定することにより、ヒト組織抽出液中のアルカリホスファターゼ量を測定した。
この測定の結果、本発明の製造方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のアルカリホスファターゼ量と、ホモジナイザーを用いて調製したヒト組織抽出液中のアルカリホスファターゼ量との間には、良好な相関性が認められた。
【0047】
(3)ヒト組織中のGOT量測定
先に調製したヒト組織抽出液を用いて、ヒト組織中のGOT量の測定を実施した。分析機器として、日立自動分析装置7170Sを、試薬としてイアトロLQ GOTレート(ヤトロン)を用いた。また、標準物として、酵素キャリブレーター(ヤトロン)を用いた。
まず、先に調製したヒト組織抽出液又は標準物(7.5μL)に対して、GOT R−1(150μL)を添加後、撹拌し、5分間予備反応させた。次いで、GOT R−2(50μL)を添加後、撹拌し、本反応を開始した。10分間の本反応を行い、反応時間である10分間を34等分(34ポイント)した、21ポイント目から34ポイント目における、主波長340nm及び副波長405nmにて得られた吸光度の変化量を測定することにより、ヒト組織抽出液中のGOT量を測定した。
この測定の結果、本発明の製造方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のGOT量と、ホモジナイザーを用いて調製したヒト組織抽出液中のGOT量との間には、良好な相関性が認められた。
【0048】
(4)ヒト組織中のGPT量測定
試薬としてイアトロLQ GPTレート(ヤトロン)を用いたこと以外は、前記(3)の操作を繰り返した。
この測定の結果、本発明の製造方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のGPT量と、ホモジナイザーを用いて調製したヒト組織抽出液中のGPT量との間には、良好な相関性が認められた。
また、TSについても、本発明の製造方法により調製した組織抽出液を用いた測定において、良好な結果が得られた。
【0049】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、組織に対し、酵素処理及び界面活性剤処理を組み合わせることにより、組織から簡便且つ安全性の高いタンパク質抽出を行うことができる。また、従来の抽出法に比べても、遜色ない抽出効率のタンパク質抽出を行うことができる。更に本発明によれば、組織中のアルブミン量、アルカリホスファターゼ量、GOT量、GPT量、DPD量、又はTS量の測定に極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を用いて調製したヒト組織抽出液中のDPD測定値(Y)と、対照実験により調製したヒト組織抽出液中のDPD測定値(X)との相関を示すグラフである。
Claims (6)
- 組織に対して、ホモジナイズ処理又は超音波処理を実施することなく、細胞分散用酵素処理及び膜可溶化用界面活性剤処理を行うことを特徴とする、組織抽出液の製造方法。
- 先ず細胞分散用酵素処理を行い、次いで膜可溶化用界面活性剤処理を行う、請求項1に記載の製造方法。
- 細胞分散用酵素処理と膜可溶化用界面活性剤処理とを同時に行う、請求項1に記載の製造方法。
- 先ず膜可溶化用界面活性剤処理を行い、次いで細胞分散用酵素処理を行う、請求項1に記載の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法により得られる抽出液を、被検試料として用いる、組織中のタンパク質分析方法。
- 分析対象としての前記タンパク質が、アルブミン、アルカリホスファターゼ、グルタミン酸−オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、グルタミン酸−ピルビン酸トランスアミナーゼ、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ、又はチミジル酸合成酵素である、請求項5に記載の分析方法。
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