JP2004312588A - 水晶発振器切替式pll発振回路 - Google Patents
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Abstract
【課題】基準信号源として、出力インピーダンスが高いクリップドサイン出力の温度補償型水晶発振器を複数個用い、スイッチによる切替方式を用いながら、位相雑音の劣化を起こさない高品質のPLL発振回路を提供する。
【解決手段】基準信号源1の出力と、電圧制御型発振器100の分周された出力の位相を、位相比較器103により比較することにより安定した周波数で発振させるPLL発振回路の基準信号源1がつぎの構成になっている。すなわち、出力インピーダンスの高いクリップドサイン出力のTCXOが複数個用いられ、そのTCXOのそれぞれの出力側にはインピーダンス変換回路を構成するトランジスタQのベースが接続され、複数のトランジスタのエミッタは、共通のエミッタ抵抗に接続されて出力される構造で、切替スイッチSW1により複数個のトランジスタのオンオフを制御することにより発振周波数を切り替える。
【選択図】 図1
【解決手段】基準信号源1の出力と、電圧制御型発振器100の分周された出力の位相を、位相比較器103により比較することにより安定した周波数で発振させるPLL発振回路の基準信号源1がつぎの構成になっている。すなわち、出力インピーダンスの高いクリップドサイン出力のTCXOが複数個用いられ、そのTCXOのそれぞれの出力側にはインピーダンス変換回路を構成するトランジスタQのベースが接続され、複数のトランジスタのエミッタは、共通のエミッタ抵抗に接続されて出力される構造で、切替スイッチSW1により複数個のトランジスタのオンオフを制御することにより発振周波数を切り替える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水晶発振器を基準信号源として位相同期発振を行うPLL(phase locked loop)発振回路に関する。さらに詳しくは、基準信号源として、出力インピーダンスの高いクリップドサイン出力の温度補償型水晶発振器(TCXO)を複数個用いて、切り替ることにより発振周波数を変更できるように構成された水晶発振器切替式PLL発振回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
水晶発振器を基準信号源として位相同期発振を行うPLL発振回路は、マイクロ波、ミリ波帯通信装置の局部発振回路として要求される高い周波数安定度、低い位相雑音特性を実現するための非常に重要な回路になっている。
【0003】
この基準信号源として用いられる水晶発振器には、出力インピーダンスが50Ωに整合されたサイン出力のものと、クリップドサイン出力と呼ばれるハイインピーダンス(通常10kΩ程度)出力のものがある。サイン出力水晶発振器はクリップドサイン出力発振器にインピーダンス変換用バッファアンプを内蔵したもので、その分消費電力が増加すると共に高価になる。
【0004】
これまで、通信機用としては、サイン出力の水晶発振器を用いることが多かったが、最近では、携帯電話機用に小型で消費電力が少なく、位相雑音に優れ、温度補償されたクリップドサイン出力水晶発振器(以下、単にTCXOともいう)を安価に入手できるようになってきているため、通信機用としても、このTCXOを利用することが望まれている。
【0005】
このようなTCXOを用いたPLL発振回路の一例が図6に示されている。すなわち、図6において、1が基準信号源で、電源電圧端子に接続されることにより、電源電圧Vopが印加されるTCXO1の出力が、コンデンサC1を介して、エミッタフォロア型インピーダンス変換回路を構成するトランジスタQ1のベースBに入力され、トランジスタQ1のエミッタEとエミッタ抵抗R3との接続点からDCカット用コンデンサC3を介して基準信号が出力される。なお、R1およびR2は、トランジスタQ1のベースBに電位を与えるブリーダ抵抗で、コレクタCは電源電圧Vopの端子に接続されている。
【0006】
このインピーダンス変換された基準信号は、周波数逓倍器102により逓倍されて、位相比較器103に供給される。一方、電圧制御発振器(VCO)100の出力が2ポートに分岐される電力分配器101の一方から分岐され、その分岐された出力が分周器104で分周されて、基準信号の逓倍された周波数とほぼ近い周波数にされ、位相比較器103に供給されて、前述の基準信号の位相と比較され、その位相差を電圧に変換してVCO100のチューニング電圧にフィードバックすることにより、基準信号と一定の関係にある安定した発振周波数に調整され、電力分配器101の他方のポートから出力される構成になっている。
【0007】
一方、この種のPLL発振回路では、異なる発振周波数で発振させることが要求される場合があるが、この種のPLL発振回路で、発振周波数を変更する方法として、▲1▼基準信号源の周波数と、電圧制御発振器(VCO)の周波数を分周した低い周波数とで位相比較を行い、VCO側の分周にプログラマブルカウンタを用い、分周比を変化させることによりVCOの発振周波数を変化させるシンセサイザ方式と、▲2▼複数個の水晶発振器を用い、水晶発振器をスイッチなどで切り替える基準信号源切替方式(たとえば特許文献1参照)とが知られている。
【0008】
要求される周波数が多い場合には、シンセサイザ方式が有利であるが、マイクロ波帯、ミリ波帯のVSAT(Very Small Aperture Terminal)、FWA(Fixed Wireless Access System)などの局部発振回路にPLL発振回路を用いる場合には、とくに低い位相雑音が要求されるため、位相比較周波数を高くした方が位相雑音上有利となるため、シンセサイザ方式では要求される位相雑音を実現できず、固定周波数の水晶発振器が用いられる場合が多い。
【0009】
前述のクリップドサイン出力のTCXOを複数個搭載して、複数の周波数に切替可能な低雑音PLL発振回路を実現する場合、図7に示されるような構成にすることにより、基準信号源切替方式により発振周波数を変えることができる位相雑音の優れたPLL発振回路を安価に実現することができる。すなわち、図7において、図6と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略するが、この例では、温度補償クリップドサイン出力水晶発振器が、第1のTCXO1と第2のTCXO2の2個設けられ、それぞれの電源入力端と電源電圧Vopの端子との間に第1のスイッチSW1(電源スイッチ)が、出力側に第2のスイッチSW2(SPDT(Single Pole Double Throw)スイッチ)が設けられ、第1および第2のスイッチSW1、SW2が同期して切り替えられることにより、基準信号源の発振周波数を変化させるものである。なお、この出力がインピーダンス変換用トランジスタQ1のベースBに接続され、その出力を基準にしてPLL発振回路を動作させる構成は、前述の図6の場合と同じである。
【0010】
なお、位相雑音の低減を実現するためには、基準信号の周波数を高くすることが有効であるが、発振周波数の高い水晶発振器を作製することは困難であるため、前述のように、周波数逓倍器102により水晶の基本共振周波数(30MHz以下)の基準信号を逓倍して位相比較器103に入力する方法がとられている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−359521号公報(図1、3)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、消費電力、サイズ、コストの面からクリップドサイン出力のものが優れており、複数の周波数で発振させるためには、低位相雑音という面からは、単一発振周波数で温度補償された水晶発振器TCXOを複数個設けて、スイッチにより切り替えるのが好ましい。しかし、前述の図7に示される構成のPLL発振回路では、スイッチによる切替がうまく動作せず、位相雑音の劣化や出力電力などが低下するという問題がある。すなわち、図6に示されるスイッチによる切替を行わない場合の逓倍器102の出力(P点)における位相雑音Bと、図7に示されるSPDTスイッチSW2により、第1および第2のスイッチSW1と連動して切り替えた場合の逓倍器102の出力(P点)における位相雑音Cの特性が図8に示されるように、スイッチで切り替える場合Cは、明らかに切り替えない場合Bより位相雑音特性が劣化している。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、基準信号源として、出力インピーダンスが高いクリップドサイン出力の温度補償型水晶発振器を複数個用い、スイッチによる切替方式を用いながら、位相雑音の劣化を起こさない高品質のPLL発振回路を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明による水晶発振器切替式PLL発振回路は、基準信号源と、電圧制御型発振器と、前記基準信号源の出力または該出力の逓倍された出力、および前記電圧制御型発振器の出力または該出力の分周された出力の位相を比較する位相比較器を有するPLL発振回路において、前記基準信号源が、複数個のクリップドサイン出力温度補償型の水晶発振器と、該複数個の水晶発振器のそれぞれの出力にベースが接続される複数個のトランジスタと、該トランジスタ各々のベース電位を決定するためのコレクタ・ベース間およびベース・アース間に接続される抵抗と、前記複数個のトランジスタのエミッタが共通に接続されアースとの間に接続されるエミッタ抵抗と、前記複数個のトランジスタの1個および該トラジスタと接続される水晶発振器のみを動作させ得るように前記複数個のトランジスタおよび複数個の水晶発振器と電源電圧端子との間に接続される切替スイッチとからなり、該切替スイッチにより選択された水晶発振器の信号を前記エミッタ抵抗とエミッタとの接続点から基準信号として出力させる構成になっている。
【0015】
この構成にすることにより、電源がオフになっているトランジスタは、ベース電位がエミッタ電位より低くなっているため、オフとなり電流が流れ込まず、電源がオンになっているトランジスタの電流のみがエミッタ抵抗に流れる。エミッタフォロアの出力インピーダンスを50Ωに合せる場合、エミッタ抵抗の値は通常50〜200Ω程度であり、オフ側のトランジスタをエミッタ端から見たインピーダンスは、エミッタ抵抗の値と比較して充分に大きい値となるため、オフ側のトランジスタにおけるインピーダンスの影響は殆ど無視することができる。そのため、動作しているTCXO(温度補償型水晶発振器)の出力側インピーダンスに影響を与えることなく、TCXOの切替が可能となる。
【0016】
前記トランジスタのベース電位を決定する抵抗は常に電源電圧端子と接続され、トランジスタのコレクタおよび前記水晶発振器に印加される電源電圧のみが前記切替スイッチにより切り替えられる構造としたり、前記トランジスタのコレクタは常に電源電圧端子と接続され、トランジスタのベース電位を決定する抵抗および前記水晶発振器に印加される電源電圧のみが前記切替スイッチにより切り替えられる構造にすることもできる。
【0017】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明による水晶発振器切替式PLL発振回路について、一実施形態のブロック図が示される図1を参照しながら説明をする。
【0018】
本発明による水晶発振器切替式PLL発振回路は、基準信号源1またはその逓倍された出力と、電圧制御型発振器100またはその分周された出力の位相を、位相比較器103により比較することにより安定した周波数で発振させるPLL発振回路で、基準信号源1に特徴がある。
【0019】
すなわち、本発明による基準信号源1は、クリップドサイン出力温度補償型の水晶発振器TCXO1、TCXO2が複数個設けられ、それぞれのTCXO1およびTCXO2の出力には、DCカット用コンデンサC1、C2を介してトランジスタQ1、Q2のベースが接続されている。それぞれのトランジスタQ1、Q2のベースBと電源電圧Vopの端子との間、およびベースBとアースとの間には、それぞれベース電位を決定するためのブリーダ抵抗R1、R4およびR2、R5が接続され、複数個のトランジスタのエミッタEは、それぞれ共通のエミッタ抵抗R3を介してアースに接続されている。そして、TCXOと接続されるトランジスタの複数組のうち、1組のTCXOおよびトランジスタのみに電源電圧が印加されるように、切替スイッチSW1が設けられ、その切替スイッチSW1により選択された組のTCXOの信号を前述のエミッタ抵抗R3とエミッタとの接続点から基準信号として出力させる構成になっている。
【0020】
すなわち、本発明によるPLL発振回路に用いる基準信号源1は、出力インピーダンスの高いクリップドサイン出力のTCXOを複数個用い、そのTCXOを切替スイッチSW1により、切り替えることにより、異なる周波数の基準信号を発生させているが、各TCXOの出力端でスイッチングするのではなく、各TCXOの出力端には、インピーダンス変換回路を構成するトランジスタQのベースBを接続し、そのトランジスタQおよびTCXOに印加する電源電圧を切替スイッチSW1によりオンオフするように切り替えていることに特徴がある。
【0021】
前述のように、出力インピーダンスが10kΩ程度と高いクリップドサイン出力のTCXOを用いて、その出力を電子スイッチによりオンオフさせると、位相雑音が増化するという問題があり、本発明者はその問題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、高周波では、PINダイオードなどからなるスイッチング素子によるオン抵抗や容量が影響し、TCXOの出力インピーダンスが高いとオン時の反射損失や内部消費電力が大きくなり、また、オフ時のアイソレーションが低下し、インピーダンスが高い伝送系においては、通常の高周波スイッチの特性が大幅に損なわれてしまうということを見出した。
【0022】
すなわち、スイッチSW1の等価回路は、図5に示されるように、オン時のオン抵抗Ronとオフ時の容量Coffとを有しており、スイッチとして通常用いられるPINダイオードでは、Ron=2.5Ω程度、Coff=0.5pF程度を有している。この値で、TCXOが20MHzとすると、オン時の挿入損失、反射損失および内部消費は、出力インピーダンスが50Ωのときと10kΩのときとで、表1に示されるような値になる。また、オフ時のアイソレーション、反射損失、内部消費は、それぞれの出力インピーダンスのときに、表2のような値になる。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
さらに、スイッチング素子として、PINダイオードなどの半導体素子を用いる場合には、バイアス供給のためのRFチョーク回路、またはDCバイアスのリターン回路が必要である。これらの回路のインピーダンスは伝送系のインピーダンスに対して影響がないように充分に大きくする必要があり、通常は回路インピーダンスの10倍以上のインピーダンスにする必要がある。一方で、コイルを用いたチョーク回路の場合、コイルのインダクタンス成分と線間容量などインダクタンスと並列に存在する寄生容量の影響により、その共振周波数(自己共振周波数)より高い周波数では逆にインピーダンスは低下し、たとえば前述の回路インピーダンスが10kΩの場合に10倍以上のインピーダンスにするには、Zx=2πfLより、L=796μH以上のコイルが必要となるが、この値に近いインダクタンスを有するコイルの自己共振周波数は通常数MHz以下となり、20MHz程度の高周波で、回路インピーダンスが10kΩに対応するバイアス回路を形成することができない。
【0026】
この場合、チョーク、DCバイアスリターン回路に抵抗を用いることも考えられるが、電源から供給可能な電流がこの抵抗によって制限されるため、PINダイオードなどを用いる場合には、充分に低いオン抵抗となるバイアス電流を供給できない。たとえば100kΩの抵抗をチョークに用いると、電源電圧が10Vの場合で、最大0.1mAしか供給できず、ダイオードを充分に低いオン抵抗で動作させることができない。
【0027】
このような理由により、クリップドサイン出力TCXOを用い、負荷として高いインピーダンスを保ったまま、高周波スイッチにより切り替る構造にすると、前述のように、回路損失の増加または負荷インピーダンスの低下により位相雑音の劣化などが生じることを見出した。そして、出力インピーダンスの高いTCXOの出力端に直接スイッチを接続しないで、TCXOの出力端に接続されたインピーダンス変換回路のトランジスタに接続する電源電圧との間にスイッチを接続することにより、スイッチによる影響をなくすることができることを見出した。
【0028】
本発明では、TCXOが複数個設けられ、その各々の出力側にエミッタフォロアのインピーダンス変換回路を構成するトランジスタQ1、Q2のベースBが接続されている。トランジスタQ1、Q2のそれぞれのベースBには、ベース電位を決定する抵抗R1、R2およびR4、R5が接続され、図1に示される例では、R1、R4がそれぞれのトランジスタQ1、Q2のベースBとコレクタC間に接続され、R2、R5がベースBとアース間に接続されている。さらに、図1に示される例では、TCXOの電源供給用端子が、そのTCXOが接続されるトランジスタのコレクタCと接続され、各トランジスタのコレクタCと電源電圧Vopの端子との間に切替スイッチSW1が設けられており、TCXOとトランジスタからなる組の複数組のうち、1組のTCXOおよびトランジスタのみに、電源電圧Vopを供給して動作させ得るように構成されている。
【0029】
各トランジスタQ1、Q2のエミッタEは、それぞれ電気的に接続され、共通のエミッタ抵抗R3を介してアースに接続されている。このトランジスタQ1、Q2は、TCXOの出力インピーダンスを変換するもので、エミッタ抵抗R3は、所望の出力インピーダンスになるように設定される。たとえば50Ωの出力インピーダンスにするには、通常50〜200Ωに設定される。そして、エミッタEとエミッタ抵抗R3との接続点から、DCカット用コンデンサC3を介して基準信号を出力する構造になっており、切替スイッチSW1の制御により、それぞれ発振周波数の異なるTCXOを選択して、所望の発振周波数の基準信号を出力する構成になっている。
【0030】
基準信号は、周波数逓倍器(n逓倍、たとえばn=32)102により逓倍されて、たとえば20MHz程度のTCXOの発振周波数を640MHz程度に高くして位相比較器(PFD)103に供給する。逓倍するのは、前述のように、位相比較器により位相を比較する際に、その周波数が高いほど位相雑音を低下させることができるためである。そして、たとえば2.56GHzで発振する電圧制御発振器(VCO)100で発振した出力の一部が電力分配器101により分岐されて、1つのポートから取り出された出力が、分周器(m分周、たとえばm=4)104により、TCXOからの出力が逓倍器102により逓倍された周波数とほぼ同程度の周波数になるように分周されて、位相比較器103に供給される。
【0031】
そして、位相比較器103で逓倍された基準信号と、VCO100で発振して分周された出力との位相が比較され、両者に差がある場合には、その位相差を電圧に変換してVCOのチューニング電圧にフィードバックすることにより、VCOの発振周波数を常に基準信号と一定の関係になるように調整される。この出力は、電力分配器101の他方のポートから発振出力として供給される。なお、逓倍器102と分周器104は、位相を比較するため、基準信号とVCOとの周波数をほぼ同程度にするもので、いずれか一方のみで周波数をほぼ同じにできる場合には、両方を設ける必要はない。
【0032】
本発明のPLL発振回路に用いる基準信号源によれば、TCXOとして、出力インピーダンスの高いクリップドサイン出力のものを使用しているが、その出力に直接スイッチング素子を接続するのではなく、その出力にはエミッタフォロアのインピーダンス変換回路を構成するトランジスタが接続され、インピーダンスを下げられたそのエミッタ抵抗を介して出力される構造とされ、切替スイッチによる切替は、そのトランジスタの動作を切り替えているため、スイッチによる反射損失や内部消費などによるロスは殆ど生じない。なお、エミッタ抵抗には、オフのトランジスタが接続されているが、エミッタフォロアの出力インピーダンスを50Ωに合せる場合、前述のように、エミッタ抵抗R3の値は50〜200Ω程度であり、オフ側のトランジスタをエミッタ端から見たインピーダンスは、エミッタ抵抗の値と比較して充分に大きい値となるため、オフ側のトランジスタによるインピーダンスの影響を殆ど無視することができ、影響を受けない。
【0033】
この構成にした場合の逓倍器102の出力部(P点)における位相雑音特性Aを、前述の図6に示される切替スイッチを設けない構造の位相特性Bと比較して図2に示す。図2から明らかなように、スイッチを設けない構造の位相雑音特性と殆ど同じ雑音特性が得られ、図8に示される雑音特性Cと比較して、明らかに改善されていることが分る。
【0034】
なお、前述の例では、トランジスタQ1、Q2のコレクタCと、ブリーダ抵抗R1、R4の端部とを接続して、その接続部と電源電圧Vopの端子との間を切替スイッチSW1によりTCXOと連動してオンオフさせたが、トランジスタのオンオフは、コレクタCおよびブリーダ抵抗(ベースB)の両方への電源供給を止める必要はなく、いずれか一方のみをスイッチングさせる構造にしてもよい。その例が図3〜4に示されている。
【0035】
すなわち、図3に示される例は、トランジスタQ1、Q2のブリーダ抵抗R1、R4は、それぞれ直接電源電圧Vopの端子に接続し、コレクタCのみをTCXO1、TCXO2の電源端子と共に切替スイッチSW1によりオンオフ制御する例である。また、図4に示される例は、トランジスタQ1、Q2のコレクタCを直接電源電圧Vopの端子に接続し、トランジスタQ1、Q2のブリーダ抵抗R1、R4の端部をTCXO1、TCXO2の電源端子と共にオンオフ制御する例である。このような接続にしても、トランジスタのオンオフ制御は同じで、同様に位相雑音特性の優れたスイッチングを行うことができる。
【0036】
前述の各例では、TCXOおよびトランジスタの組が2組の例であったが、2組に限定されるものではなく、必要とされる基準信号の周波数の数に合せてTCXOとトランジスタの組を設けることにより、所望の数の発振周波数で基準信号を切り替えることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明の回路構成によれば、大量生産がされ、安価で、位相雑音の少ないクリップドサイン出力の温度補償型水晶発振器を用いながら、切替スイッチで基準信号の周波数を変化させる構造のPLL発振回路を低い位相雑音で得ることができ、非常に高特性のPLL発振回路が得られる。また、構成部品も、TCXO1個あたり、トランジスタ1個と抵抗2個ですみ、しかもどの部品も特別な仕様は必要がなく、小型で安価に得られ、全体として、非常に安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるPLL発振回路の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の構成における位相雑音特性を、切替スイッチを用いない場合と比較して示した図である。
【図3】図1の変形例を示す図1と同様のブロック図である。
【図4】図1の変形例を示す図1と同様のブロック図である。
【図5】切替スイッチの高周波等価回路を示す図である。
【図6】従来のクリップドサイン出力のTCXOを用い、周波数切替を行わない場合のPLL発振回路の例を示すブロック図である。
【図7】従来のクリップドサイン出力のTCXOを用い、周波数切替を行う場合のPLL発振回路の例を示すブロック図である。
【図8】図7の回路構成における位相雑音特性を図6に示される場合と比較して示した図である。
【符号の説明】
1 基準信号源
100 電圧制御型発振器(VCO)
102 周波数逓倍器
103 位相比較器
104 分周器
TCXO クリップドサイン出力の水晶発振器
SW1 切替スイッチ
【発明の属する技術分野】
本発明は、水晶発振器を基準信号源として位相同期発振を行うPLL(phase locked loop)発振回路に関する。さらに詳しくは、基準信号源として、出力インピーダンスの高いクリップドサイン出力の温度補償型水晶発振器(TCXO)を複数個用いて、切り替ることにより発振周波数を変更できるように構成された水晶発振器切替式PLL発振回路に関する。
【0002】
【従来の技術】
水晶発振器を基準信号源として位相同期発振を行うPLL発振回路は、マイクロ波、ミリ波帯通信装置の局部発振回路として要求される高い周波数安定度、低い位相雑音特性を実現するための非常に重要な回路になっている。
【0003】
この基準信号源として用いられる水晶発振器には、出力インピーダンスが50Ωに整合されたサイン出力のものと、クリップドサイン出力と呼ばれるハイインピーダンス(通常10kΩ程度)出力のものがある。サイン出力水晶発振器はクリップドサイン出力発振器にインピーダンス変換用バッファアンプを内蔵したもので、その分消費電力が増加すると共に高価になる。
【0004】
これまで、通信機用としては、サイン出力の水晶発振器を用いることが多かったが、最近では、携帯電話機用に小型で消費電力が少なく、位相雑音に優れ、温度補償されたクリップドサイン出力水晶発振器(以下、単にTCXOともいう)を安価に入手できるようになってきているため、通信機用としても、このTCXOを利用することが望まれている。
【0005】
このようなTCXOを用いたPLL発振回路の一例が図6に示されている。すなわち、図6において、1が基準信号源で、電源電圧端子に接続されることにより、電源電圧Vopが印加されるTCXO1の出力が、コンデンサC1を介して、エミッタフォロア型インピーダンス変換回路を構成するトランジスタQ1のベースBに入力され、トランジスタQ1のエミッタEとエミッタ抵抗R3との接続点からDCカット用コンデンサC3を介して基準信号が出力される。なお、R1およびR2は、トランジスタQ1のベースBに電位を与えるブリーダ抵抗で、コレクタCは電源電圧Vopの端子に接続されている。
【0006】
このインピーダンス変換された基準信号は、周波数逓倍器102により逓倍されて、位相比較器103に供給される。一方、電圧制御発振器(VCO)100の出力が2ポートに分岐される電力分配器101の一方から分岐され、その分岐された出力が分周器104で分周されて、基準信号の逓倍された周波数とほぼ近い周波数にされ、位相比較器103に供給されて、前述の基準信号の位相と比較され、その位相差を電圧に変換してVCO100のチューニング電圧にフィードバックすることにより、基準信号と一定の関係にある安定した発振周波数に調整され、電力分配器101の他方のポートから出力される構成になっている。
【0007】
一方、この種のPLL発振回路では、異なる発振周波数で発振させることが要求される場合があるが、この種のPLL発振回路で、発振周波数を変更する方法として、▲1▼基準信号源の周波数と、電圧制御発振器(VCO)の周波数を分周した低い周波数とで位相比較を行い、VCO側の分周にプログラマブルカウンタを用い、分周比を変化させることによりVCOの発振周波数を変化させるシンセサイザ方式と、▲2▼複数個の水晶発振器を用い、水晶発振器をスイッチなどで切り替える基準信号源切替方式(たとえば特許文献1参照)とが知られている。
【0008】
要求される周波数が多い場合には、シンセサイザ方式が有利であるが、マイクロ波帯、ミリ波帯のVSAT(Very Small Aperture Terminal)、FWA(Fixed Wireless Access System)などの局部発振回路にPLL発振回路を用いる場合には、とくに低い位相雑音が要求されるため、位相比較周波数を高くした方が位相雑音上有利となるため、シンセサイザ方式では要求される位相雑音を実現できず、固定周波数の水晶発振器が用いられる場合が多い。
【0009】
前述のクリップドサイン出力のTCXOを複数個搭載して、複数の周波数に切替可能な低雑音PLL発振回路を実現する場合、図7に示されるような構成にすることにより、基準信号源切替方式により発振周波数を変えることができる位相雑音の優れたPLL発振回路を安価に実現することができる。すなわち、図7において、図6と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略するが、この例では、温度補償クリップドサイン出力水晶発振器が、第1のTCXO1と第2のTCXO2の2個設けられ、それぞれの電源入力端と電源電圧Vopの端子との間に第1のスイッチSW1(電源スイッチ)が、出力側に第2のスイッチSW2(SPDT(Single Pole Double Throw)スイッチ)が設けられ、第1および第2のスイッチSW1、SW2が同期して切り替えられることにより、基準信号源の発振周波数を変化させるものである。なお、この出力がインピーダンス変換用トランジスタQ1のベースBに接続され、その出力を基準にしてPLL発振回路を動作させる構成は、前述の図6の場合と同じである。
【0010】
なお、位相雑音の低減を実現するためには、基準信号の周波数を高くすることが有効であるが、発振周波数の高い水晶発振器を作製することは困難であるため、前述のように、周波数逓倍器102により水晶の基本共振周波数(30MHz以下)の基準信号を逓倍して位相比較器103に入力する方法がとられている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−359521号公報(図1、3)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
前述のように、消費電力、サイズ、コストの面からクリップドサイン出力のものが優れており、複数の周波数で発振させるためには、低位相雑音という面からは、単一発振周波数で温度補償された水晶発振器TCXOを複数個設けて、スイッチにより切り替えるのが好ましい。しかし、前述の図7に示される構成のPLL発振回路では、スイッチによる切替がうまく動作せず、位相雑音の劣化や出力電力などが低下するという問題がある。すなわち、図6に示されるスイッチによる切替を行わない場合の逓倍器102の出力(P点)における位相雑音Bと、図7に示されるSPDTスイッチSW2により、第1および第2のスイッチSW1と連動して切り替えた場合の逓倍器102の出力(P点)における位相雑音Cの特性が図8に示されるように、スイッチで切り替える場合Cは、明らかに切り替えない場合Bより位相雑音特性が劣化している。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、基準信号源として、出力インピーダンスが高いクリップドサイン出力の温度補償型水晶発振器を複数個用い、スイッチによる切替方式を用いながら、位相雑音の劣化を起こさない高品質のPLL発振回路を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明による水晶発振器切替式PLL発振回路は、基準信号源と、電圧制御型発振器と、前記基準信号源の出力または該出力の逓倍された出力、および前記電圧制御型発振器の出力または該出力の分周された出力の位相を比較する位相比較器を有するPLL発振回路において、前記基準信号源が、複数個のクリップドサイン出力温度補償型の水晶発振器と、該複数個の水晶発振器のそれぞれの出力にベースが接続される複数個のトランジスタと、該トランジスタ各々のベース電位を決定するためのコレクタ・ベース間およびベース・アース間に接続される抵抗と、前記複数個のトランジスタのエミッタが共通に接続されアースとの間に接続されるエミッタ抵抗と、前記複数個のトランジスタの1個および該トラジスタと接続される水晶発振器のみを動作させ得るように前記複数個のトランジスタおよび複数個の水晶発振器と電源電圧端子との間に接続される切替スイッチとからなり、該切替スイッチにより選択された水晶発振器の信号を前記エミッタ抵抗とエミッタとの接続点から基準信号として出力させる構成になっている。
【0015】
この構成にすることにより、電源がオフになっているトランジスタは、ベース電位がエミッタ電位より低くなっているため、オフとなり電流が流れ込まず、電源がオンになっているトランジスタの電流のみがエミッタ抵抗に流れる。エミッタフォロアの出力インピーダンスを50Ωに合せる場合、エミッタ抵抗の値は通常50〜200Ω程度であり、オフ側のトランジスタをエミッタ端から見たインピーダンスは、エミッタ抵抗の値と比較して充分に大きい値となるため、オフ側のトランジスタにおけるインピーダンスの影響は殆ど無視することができる。そのため、動作しているTCXO(温度補償型水晶発振器)の出力側インピーダンスに影響を与えることなく、TCXOの切替が可能となる。
【0016】
前記トランジスタのベース電位を決定する抵抗は常に電源電圧端子と接続され、トランジスタのコレクタおよび前記水晶発振器に印加される電源電圧のみが前記切替スイッチにより切り替えられる構造としたり、前記トランジスタのコレクタは常に電源電圧端子と接続され、トランジスタのベース電位を決定する抵抗および前記水晶発振器に印加される電源電圧のみが前記切替スイッチにより切り替えられる構造にすることもできる。
【0017】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明による水晶発振器切替式PLL発振回路について、一実施形態のブロック図が示される図1を参照しながら説明をする。
【0018】
本発明による水晶発振器切替式PLL発振回路は、基準信号源1またはその逓倍された出力と、電圧制御型発振器100またはその分周された出力の位相を、位相比較器103により比較することにより安定した周波数で発振させるPLL発振回路で、基準信号源1に特徴がある。
【0019】
すなわち、本発明による基準信号源1は、クリップドサイン出力温度補償型の水晶発振器TCXO1、TCXO2が複数個設けられ、それぞれのTCXO1およびTCXO2の出力には、DCカット用コンデンサC1、C2を介してトランジスタQ1、Q2のベースが接続されている。それぞれのトランジスタQ1、Q2のベースBと電源電圧Vopの端子との間、およびベースBとアースとの間には、それぞれベース電位を決定するためのブリーダ抵抗R1、R4およびR2、R5が接続され、複数個のトランジスタのエミッタEは、それぞれ共通のエミッタ抵抗R3を介してアースに接続されている。そして、TCXOと接続されるトランジスタの複数組のうち、1組のTCXOおよびトランジスタのみに電源電圧が印加されるように、切替スイッチSW1が設けられ、その切替スイッチSW1により選択された組のTCXOの信号を前述のエミッタ抵抗R3とエミッタとの接続点から基準信号として出力させる構成になっている。
【0020】
すなわち、本発明によるPLL発振回路に用いる基準信号源1は、出力インピーダンスの高いクリップドサイン出力のTCXOを複数個用い、そのTCXOを切替スイッチSW1により、切り替えることにより、異なる周波数の基準信号を発生させているが、各TCXOの出力端でスイッチングするのではなく、各TCXOの出力端には、インピーダンス変換回路を構成するトランジスタQのベースBを接続し、そのトランジスタQおよびTCXOに印加する電源電圧を切替スイッチSW1によりオンオフするように切り替えていることに特徴がある。
【0021】
前述のように、出力インピーダンスが10kΩ程度と高いクリップドサイン出力のTCXOを用いて、その出力を電子スイッチによりオンオフさせると、位相雑音が増化するという問題があり、本発明者はその問題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、高周波では、PINダイオードなどからなるスイッチング素子によるオン抵抗や容量が影響し、TCXOの出力インピーダンスが高いとオン時の反射損失や内部消費電力が大きくなり、また、オフ時のアイソレーションが低下し、インピーダンスが高い伝送系においては、通常の高周波スイッチの特性が大幅に損なわれてしまうということを見出した。
【0022】
すなわち、スイッチSW1の等価回路は、図5に示されるように、オン時のオン抵抗Ronとオフ時の容量Coffとを有しており、スイッチとして通常用いられるPINダイオードでは、Ron=2.5Ω程度、Coff=0.5pF程度を有している。この値で、TCXOが20MHzとすると、オン時の挿入損失、反射損失および内部消費は、出力インピーダンスが50Ωのときと10kΩのときとで、表1に示されるような値になる。また、オフ時のアイソレーション、反射損失、内部消費は、それぞれの出力インピーダンスのときに、表2のような値になる。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
さらに、スイッチング素子として、PINダイオードなどの半導体素子を用いる場合には、バイアス供給のためのRFチョーク回路、またはDCバイアスのリターン回路が必要である。これらの回路のインピーダンスは伝送系のインピーダンスに対して影響がないように充分に大きくする必要があり、通常は回路インピーダンスの10倍以上のインピーダンスにする必要がある。一方で、コイルを用いたチョーク回路の場合、コイルのインダクタンス成分と線間容量などインダクタンスと並列に存在する寄生容量の影響により、その共振周波数(自己共振周波数)より高い周波数では逆にインピーダンスは低下し、たとえば前述の回路インピーダンスが10kΩの場合に10倍以上のインピーダンスにするには、Zx=2πfLより、L=796μH以上のコイルが必要となるが、この値に近いインダクタンスを有するコイルの自己共振周波数は通常数MHz以下となり、20MHz程度の高周波で、回路インピーダンスが10kΩに対応するバイアス回路を形成することができない。
【0026】
この場合、チョーク、DCバイアスリターン回路に抵抗を用いることも考えられるが、電源から供給可能な電流がこの抵抗によって制限されるため、PINダイオードなどを用いる場合には、充分に低いオン抵抗となるバイアス電流を供給できない。たとえば100kΩの抵抗をチョークに用いると、電源電圧が10Vの場合で、最大0.1mAしか供給できず、ダイオードを充分に低いオン抵抗で動作させることができない。
【0027】
このような理由により、クリップドサイン出力TCXOを用い、負荷として高いインピーダンスを保ったまま、高周波スイッチにより切り替る構造にすると、前述のように、回路損失の増加または負荷インピーダンスの低下により位相雑音の劣化などが生じることを見出した。そして、出力インピーダンスの高いTCXOの出力端に直接スイッチを接続しないで、TCXOの出力端に接続されたインピーダンス変換回路のトランジスタに接続する電源電圧との間にスイッチを接続することにより、スイッチによる影響をなくすることができることを見出した。
【0028】
本発明では、TCXOが複数個設けられ、その各々の出力側にエミッタフォロアのインピーダンス変換回路を構成するトランジスタQ1、Q2のベースBが接続されている。トランジスタQ1、Q2のそれぞれのベースBには、ベース電位を決定する抵抗R1、R2およびR4、R5が接続され、図1に示される例では、R1、R4がそれぞれのトランジスタQ1、Q2のベースBとコレクタC間に接続され、R2、R5がベースBとアース間に接続されている。さらに、図1に示される例では、TCXOの電源供給用端子が、そのTCXOが接続されるトランジスタのコレクタCと接続され、各トランジスタのコレクタCと電源電圧Vopの端子との間に切替スイッチSW1が設けられており、TCXOとトランジスタからなる組の複数組のうち、1組のTCXOおよびトランジスタのみに、電源電圧Vopを供給して動作させ得るように構成されている。
【0029】
各トランジスタQ1、Q2のエミッタEは、それぞれ電気的に接続され、共通のエミッタ抵抗R3を介してアースに接続されている。このトランジスタQ1、Q2は、TCXOの出力インピーダンスを変換するもので、エミッタ抵抗R3は、所望の出力インピーダンスになるように設定される。たとえば50Ωの出力インピーダンスにするには、通常50〜200Ωに設定される。そして、エミッタEとエミッタ抵抗R3との接続点から、DCカット用コンデンサC3を介して基準信号を出力する構造になっており、切替スイッチSW1の制御により、それぞれ発振周波数の異なるTCXOを選択して、所望の発振周波数の基準信号を出力する構成になっている。
【0030】
基準信号は、周波数逓倍器(n逓倍、たとえばn=32)102により逓倍されて、たとえば20MHz程度のTCXOの発振周波数を640MHz程度に高くして位相比較器(PFD)103に供給する。逓倍するのは、前述のように、位相比較器により位相を比較する際に、その周波数が高いほど位相雑音を低下させることができるためである。そして、たとえば2.56GHzで発振する電圧制御発振器(VCO)100で発振した出力の一部が電力分配器101により分岐されて、1つのポートから取り出された出力が、分周器(m分周、たとえばm=4)104により、TCXOからの出力が逓倍器102により逓倍された周波数とほぼ同程度の周波数になるように分周されて、位相比較器103に供給される。
【0031】
そして、位相比較器103で逓倍された基準信号と、VCO100で発振して分周された出力との位相が比較され、両者に差がある場合には、その位相差を電圧に変換してVCOのチューニング電圧にフィードバックすることにより、VCOの発振周波数を常に基準信号と一定の関係になるように調整される。この出力は、電力分配器101の他方のポートから発振出力として供給される。なお、逓倍器102と分周器104は、位相を比較するため、基準信号とVCOとの周波数をほぼ同程度にするもので、いずれか一方のみで周波数をほぼ同じにできる場合には、両方を設ける必要はない。
【0032】
本発明のPLL発振回路に用いる基準信号源によれば、TCXOとして、出力インピーダンスの高いクリップドサイン出力のものを使用しているが、その出力に直接スイッチング素子を接続するのではなく、その出力にはエミッタフォロアのインピーダンス変換回路を構成するトランジスタが接続され、インピーダンスを下げられたそのエミッタ抵抗を介して出力される構造とされ、切替スイッチによる切替は、そのトランジスタの動作を切り替えているため、スイッチによる反射損失や内部消費などによるロスは殆ど生じない。なお、エミッタ抵抗には、オフのトランジスタが接続されているが、エミッタフォロアの出力インピーダンスを50Ωに合せる場合、前述のように、エミッタ抵抗R3の値は50〜200Ω程度であり、オフ側のトランジスタをエミッタ端から見たインピーダンスは、エミッタ抵抗の値と比較して充分に大きい値となるため、オフ側のトランジスタによるインピーダンスの影響を殆ど無視することができ、影響を受けない。
【0033】
この構成にした場合の逓倍器102の出力部(P点)における位相雑音特性Aを、前述の図6に示される切替スイッチを設けない構造の位相特性Bと比較して図2に示す。図2から明らかなように、スイッチを設けない構造の位相雑音特性と殆ど同じ雑音特性が得られ、図8に示される雑音特性Cと比較して、明らかに改善されていることが分る。
【0034】
なお、前述の例では、トランジスタQ1、Q2のコレクタCと、ブリーダ抵抗R1、R4の端部とを接続して、その接続部と電源電圧Vopの端子との間を切替スイッチSW1によりTCXOと連動してオンオフさせたが、トランジスタのオンオフは、コレクタCおよびブリーダ抵抗(ベースB)の両方への電源供給を止める必要はなく、いずれか一方のみをスイッチングさせる構造にしてもよい。その例が図3〜4に示されている。
【0035】
すなわち、図3に示される例は、トランジスタQ1、Q2のブリーダ抵抗R1、R4は、それぞれ直接電源電圧Vopの端子に接続し、コレクタCのみをTCXO1、TCXO2の電源端子と共に切替スイッチSW1によりオンオフ制御する例である。また、図4に示される例は、トランジスタQ1、Q2のコレクタCを直接電源電圧Vopの端子に接続し、トランジスタQ1、Q2のブリーダ抵抗R1、R4の端部をTCXO1、TCXO2の電源端子と共にオンオフ制御する例である。このような接続にしても、トランジスタのオンオフ制御は同じで、同様に位相雑音特性の優れたスイッチングを行うことができる。
【0036】
前述の各例では、TCXOおよびトランジスタの組が2組の例であったが、2組に限定されるものではなく、必要とされる基準信号の周波数の数に合せてTCXOとトランジスタの組を設けることにより、所望の数の発振周波数で基準信号を切り替えることができる。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明の回路構成によれば、大量生産がされ、安価で、位相雑音の少ないクリップドサイン出力の温度補償型水晶発振器を用いながら、切替スイッチで基準信号の周波数を変化させる構造のPLL発振回路を低い位相雑音で得ることができ、非常に高特性のPLL発振回路が得られる。また、構成部品も、TCXO1個あたり、トランジスタ1個と抵抗2個ですみ、しかもどの部品も特別な仕様は必要がなく、小型で安価に得られ、全体として、非常に安価に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるPLL発振回路の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の構成における位相雑音特性を、切替スイッチを用いない場合と比較して示した図である。
【図3】図1の変形例を示す図1と同様のブロック図である。
【図4】図1の変形例を示す図1と同様のブロック図である。
【図5】切替スイッチの高周波等価回路を示す図である。
【図6】従来のクリップドサイン出力のTCXOを用い、周波数切替を行わない場合のPLL発振回路の例を示すブロック図である。
【図7】従来のクリップドサイン出力のTCXOを用い、周波数切替を行う場合のPLL発振回路の例を示すブロック図である。
【図8】図7の回路構成における位相雑音特性を図6に示される場合と比較して示した図である。
【符号の説明】
1 基準信号源
100 電圧制御型発振器(VCO)
102 周波数逓倍器
103 位相比較器
104 分周器
TCXO クリップドサイン出力の水晶発振器
SW1 切替スイッチ
Claims (3)
- 基準信号源と、電圧制御型発振器と、前記基準信号源の出力または該出力の逓倍された出力、および前記電圧制御型発振器の出力または該出力の分周された出力の位相を比較する位相比較器を有するPLL発振回路において、
前記基準信号源が、複数個のクリップドサイン出力温度補償型の水晶発振器と、該複数個の水晶発振器のそれぞれの出力にベースが接続される複数個のトランジスタと、該トランジスタ各々のベース電位を決定するためのコレクタ・ベース間およびベース・アース間に接続される抵抗と、前記複数個のトランジスタのエミッタが共通に接続されアースとの間に接続されるエミッタ抵抗と、前記複数個のトランジスタの1個および該トラジスタと接続される水晶発振器のみを動作させ得るように前記複数個のトランジスタおよび複数個の水晶発振器と電源電圧端子との間に接続される切替スイッチとからなり、該切替スイッチにより選択された水晶発振器の信号を前記エミッタ抵抗とエミッタとの接続点から基準信号として出力させる構成である水晶発振器切替式PLL発振回路。 - 前記トランジスタのベース電位を決定する抵抗は常に電源電圧端子と接続され、トランジスタのコレクタおよび前記水晶発振器に印加される電源電圧のみが前記切替スイッチにより切り替えられる請求項1記載の水晶発振器切替式PLL発振回路。
- 前記トランジスタのコレクタは常に電源電圧端子と接続され、トランジスタのベース電位を決定する抵抗および前記水晶発振器に印加される電源電圧のみが前記切替スイッチにより切り替えられる請求項1記載の水晶発振器切替式PLL発振回路。
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CN108051077A (zh) * | 2017-11-29 | 2018-05-18 | 北京无线电计量测试研究所 | 一种用于数字化相位噪声测量参考源系统 |
JP2022046509A (ja) * | 2016-12-19 | 2022-03-23 | テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル) | 無線デバイスの送受信機用の基準水晶発振器を切り替えるためのシステム及び方法 |
-
2003
- 2003-04-10 JP JP2003106165A patent/JP2004312588A/ja active Pending
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