JP2004311109A - 蓄電池用格子の製造方法 - Google Patents
蓄電池用格子の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004311109A JP2004311109A JP2003100645A JP2003100645A JP2004311109A JP 2004311109 A JP2004311109 A JP 2004311109A JP 2003100645 A JP2003100645 A JP 2003100645A JP 2003100645 A JP2003100645 A JP 2003100645A JP 2004311109 A JP2004311109 A JP 2004311109A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- grid
- sheet
- storage battery
- roll
- bent portion
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02E—REDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
- Y02E60/00—Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
- Y02E60/10—Energy storage using batteries
Landscapes
- Cell Electrode Carriers And Collectors (AREA)
Abstract
【課題】金属のシートをロータリーエキスパンド方式により形成した格子は、その桟部に屈曲部が残り、該屈曲部には歪が多く存在するので、蓄電池用正極板に使用するとその部分が局部的に腐食を受け短寿命になる欠点を有していたのに対して、前記欠点を除去し、ロータリーエキスパンド方式による寿命性能の安定した蓄電池用格子の製造方法を提供することにある。
【解決手段】ロータリーエキスパンド方式により形成された格子の桟部をロールプレスにより加工前のシート厚の110%以上、150%以下にプレス処理する、さらに前記ロールが100℃以上に加熱されていることを特徴とするものである。
【選択図】 図4
【解決手段】ロータリーエキスパンド方式により形成された格子の桟部をロールプレスにより加工前のシート厚の110%以上、150%以下にプレス処理する、さらに前記ロールが100℃以上に加熱されていることを特徴とするものである。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は蓄電池用格子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蓄電池、例えば、鉛蓄電池の正・負極板は、鉛または鉛合金からなる格子に、酸化鉛を主体とする鉛粉を希硫酸で練膏したペーストを充填・熟成・乾燥した後、電解液である希硫酸中で、電気化学的に酸化・還元反応を起こさせる化成工程を経て作製される。前記格子を作製する方法には、溶融状態の鉛または鉛合金を鋳型に注入・固化する鋳造方式によって直接格子を形成する方法と、鉛または鉛合金からなるシートを打ち抜きあるいはエキスパンド加工により枡目を形成する方法とがある。近年では生産性の優れている後者の方式が増加傾向にある。
【0003】
エキスパンド加工方式には、ダイスカッターの上下運動によって金属シート(以降、シートと記載)に両端部から順に各枡目を形成するレシプロ方式と、ロータリーカッタ−の回転によってシートに千鳥状のスリットを形成し、このシートを両側から展開することによりスリットを網目状に展開するロータリー方式とがある。本発明は、ロータリー方式による格子の製造方法の改善に関するものである。
【0004】
ロータリーエキスパンド方式は2段階の工程からなっている。
【0005】
第1段階は、シートの進行方向に沿って千鳥状になるように複数本の互いに平行なスリットを刻むと共に、シート幅方向に隣り合うスリットにより形成された線部をシート面から表裏両方向に交互に凸状に塑性変形させながら、非スリット部の平坦領域が前記凸状線部の結節部となるように形成していく工程からなっている。
【0006】
第2段階は、加工された前記シートを幅方向へ展開して網目部を形成する工程からなっている。
【0007】
図1は、第1段階の加工工程の一例を示す要部側面図で、1aは上部のロ−タリーカッタ−、1bは下部のロ−タリーカッタ−、21は加工前のシート、22は加工後のシートをそれぞれ示す。図2は、第1段階の加工が終了した時点のシートの状態を示す要部斜視図で、3は屈曲部を示す。
【0008】
図2に示すように、ロータリーカッタ−の凸状加工面の形状が反映され、スリット頂点部は屈曲し、屈曲部3を形成している。したがって、この時点で、加工されたシートの厚み、すなわち,上下の凸状線部の頂点間の厚みは、使用するロータリーカッターの形状および形成する格子の設計によっても変わってくるが、通常、加工前のシートの厚みの180%以上に形成される。
【0009】
第2の段階で、前記加工されたシートを幅方向に展開する際に、上記屈曲部3は、切断時の加工硬化により変形抵抗が大きくなっているために伸ばされ難く、歪を保持したまま屈曲部が残ってしまう。展開後の格子厚みは、最適設計、すなわちスリット幅とシート厚みを1:1にした場合でも、展開時に桟部がねじれるのでシート厚に対して140%の厚みになるが、上述したように屈曲部が残ってしまうので格子厚みはさらに厚くなる傾向にある。
【0010】
図3は、展開後のシートの状態を示す平面図(a)およびA−A断面図(b)で、3は屈曲部、4は結節部、5は網目部、7は格子、8は格子の上額縁、9は桟部をそれぞれ示す。
【0011】
図3(a)および(b)の○で囲んだ部分には屈曲部3の一部が伸ばされずに残り、部分的に格子厚み方向に出っ張った形状をしている。したがって、この部分には歪が多く存在する。従来では、このような格子に上述したようにペーストを充填・熟成・乾燥し、未化成極板を作製していた。
【0012】
【発明が解決しようとしている課題】
屈曲部3が残った格子を、特に正極板に使用した鉛蓄電池を腐食試験(通常、過充電試験のことをいう)に供したところ、屈曲部3には歪が多く存在しているため、その部分が集中的に腐食を受け、体積膨張し、正極板と対面しているセパレータを局部的に圧迫するためにセパレータが劣化・破断して短絡に至ることがあった。また、厚み方向に対する膨張が圧迫によって制限された場合には、極板高さ方向に膨張することになり、正極板の上額縁が機械的に伸び、負極ストラップと接触し短絡を起こし、短寿命になる問題をも抱えていた。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、シートの展開後に残存する屈曲部の出っ張りを緩和することによりその部分の歪が少なくなり、歪に起因する正極格子の腐食が大幅に低減し、寿命性能の安定した蓄電池用格子の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題を解決するための手段として、請求項1によれば、金属シートをロータリー式エキスパンド加工方式により格子を形成する蓄電池用格子の製造方法において、
前記格子の厚みを、ロールプレスにより加工前のシート厚みの110%以上、150%以下にプレス処理することを特徴とするものである。
【0015】
シートを展開した後、格子の桟部の屈曲部の出っ張りが残存し、該屈曲部には歪が多く存在するので蓄電池使用中にその部分が局部的に腐食を受けるのに対して、本発明では、シート展開後、格子をロールプレスでプレス処理して桟部に残存している屈曲部の出っ張りを緩和することによって歪が少なくなり、その部分での局部腐食が低減されることがわかった。
【0016】
ロールプレスした後の格子の厚みが、加工前のシート厚みの150%より厚い場合には、屈曲部の出っ張りが十分に緩和されておらず、その効果が少なく、110%までプレスすると格子そのものの変形が大きく、逆に桟部に歪が発生し、むしろ腐食が促進し、格子の伸びが返って大きくなった。したがって、プレス後の格子の厚みが加工前のシート厚みの110%以上、150%以下になるようにプレスするのが好ましい。
【0017】
請求項2によれば、前記ロールプレスの表面温度が100℃以上に加熱されていることを特徴とするものである。
【0018】
展開された格子をロールプレスする際に、ロールを加温し、格子を加熱すると金属格子に展性が付加され、軟らかくなって、プレスした際に、前記屈曲部の出っ張りが変形し易くなり、屈曲部の歪が効果的に除去される。その際の、ロールプレスの表面温度が100℃より低いと、金属格子に展性が十分付加されないためにその効果が小さい。したがって、100℃以上にすることが好ましい。
【0019】
【実施の形態】
本発明は、ロータリー式エキスパンド加工方式により作製された格子の桟部に歪を多く抱えた屈曲部が残存し、該部分が集中的に腐食を受けるのを抑制するために、展開後の格子をロールプレスでプレス処理をして前記屈曲部の出っ張りを緩和し、該部分の歪を少なくし、歪に起因する局部腐食を低減しようとするものである。図4はその実施例を示す要部模式断面図で、3は屈曲部、6aは第1のロール、6bは第2のロール、7は格子、8は格子の上額縁、9は桟部をそれぞれ示す。第1のロール6aおよび第2のロール6bで格子7がプレスされている状態を示している。
【0020】
格子をプレスする際に、図4に示すように、加工前のシートの厚みをd0、プレス後の格子の厚みをdとしたときに、d/d0×100が110%以上、150%以下になるようにプレスすると共に、ロール表面の温度を100℃以上に保って、該格子を加熱してプレスの効果を高めようとするもので、以下、実施例に基づき詳細に説明する。
【0021】
【実施例】
Pb−0.06%Ca−1.3%Sn合金からなる約10mmのスラブを多段ロール方式により1.0mmに圧延したシートを、常法のロータリーエキスパンド方式により加工・展開した後に、次の工程に設置した本発明の方式であるロールプレス機を通過させてプレス処理を行った。その場合、プレス後の格子厚みをd、加工前のシート厚みをd0とした時に、d/d0×100が、90%から180%まで変化するように、プレスロール間を調整した。さらに、ロール表面の温度もヒーターにより25℃から300℃まで変化させ、これらを組み合せて格子を作製した。この場合のロールプレス機の回転速度は20m/分の条件で行った。
【0022】
上記各格子に正極ペーストを充填し、熟成・乾燥を経て未化成正極板を作製した。この正極板と常法により作製したエキスパンド格子からなる負極板および微孔性のポリエチレンを主体としたセパレータとを積層して、JIS D 5301に規定されている55D23型の自動車用鉛蓄電池を作製した。これら蓄電池に所定比重、所定量の希硫酸を注入して電槽内で化成を行った。
【0023】
上記蓄電池をJIS D5301に準ずる軽負荷寿命試験に供した。寿命試験条件を以下に示す。
試験温度:水槽 75℃
放電:25Aで4分間
充電:14.8V(制限充電電流:25A)で10分間
上記充・放電を繰り返し、2,500サイクルで試験を終了し、蓄電池を解体し、正極板の最大伸びを調査した。図5に格子厚みd/加工前シート厚みd0×100と正極板の最大伸び(%)との関係を示す。正極板の伸びは、プレス時のロールの温度25℃でプレスがかかっていない格子厚み180%の正極板の最大伸びを100としたときの比率で表した。
【0024】
図5に示すように、プレスに関しては、d/d0×100を100%あるいはそれより薄い90%までプレスすると、格子自体の変形が大きくなり、逆に歪が増加し、ロールプレスの温度に関係なく、いずれも腐食を抑制する点では逆効果で格子伸びが大きくなった。
【0025】
一方、プレスが弱く、d/d0×100が160%以上になると、ロールプレスの温度に関係なく、屈曲部の出っ張りの緩和が不十分で格子伸びの低減効果がほとんど得られなかった。
【0026】
したがって、プレスに関しては、d/d0×100を110%以上、150%以下になるようにプレスするのが好ましいことが明らかになった。
【0027】
一方、ロールの温度に関しては、ロールの表面温度が25℃あるいは50℃と加熱温度が低い条件では、格子に十分な展性が付加されておらず、ロールプレスの効果が十分でなく、格子の伸びの抑制は最大で約20%であった。これに対して、ロールの温度100℃で格子を加熱すると共に、プレスによりd/d0×100を120〜130%にすると屈曲部の出っ張りがより緩和され、その部分の歪がより少なくなり、格子の伸びを約35%低減できた。さらに、200℃では、120〜130%にプレスした場合、格子の最大伸びは42〜45%低減できた。しかし、ロールの温度が300℃になると鉛あるいは鉛合金の融点に近づくので、格子が軟らかくなり過ぎ、格子自体が大きく変形し、返って寿命試験中の腐食が進行し、伸びの低減効果は200℃の場合より低下した。
【0028】
なお、実施例では、Pb−0.06%Ca−1.3%Sn合金シートを加工して得た格子を用いた鉛蓄電池について説明したが、本発明は、鉛蓄電池に限定するものでなく、金属シートを加工して形成した格子を用いる蓄電池であればいずれの蓄電池にも適用可能である。
【0029】
上記実施例でのロールプレス機の回転速度は20m/分の条件で行ったが、回転速度10〜30m/分の範囲でほぼ同様の効果が得られることを確認した。しかし、回転速度が10m/分より遅くなると、特に高温でのプレスにおいて温度の影響を過度に受け、軟らかくなり過ぎて、逆効果になった。一方、回転速度が30m/分より速くなると、特に、低い温度のプレスにおいて、温度の効果が低減し、本発明の効果が十分に得られなかった。
【0030】
【発明の効果】
ロータリー式エキスパンド加工方式により形成された格子は、ロータリーカッタ−の凸状加工面の形状が反映され、スリット頂点部が屈曲する。該屈曲部は、加工硬化により変形し難くなっているので、展開後も残存する。該屈曲部には多くの歪が存在し、蓄電池使用中にその部分が局部的に腐食を受け、格子の伸びが進行し、蓄電池が短寿命になる傾向があった。それに対して、本発明では、加工後の格子をロールプレスで加工前のシート厚みの110%〜150%にプレス処理することによって、前記屈曲部の出っ張りが緩和され、その部分の歪が少なくなる。さらに前記ロールを100℃以上に加熱することによって、金属に展性が付加され、プレスがより効果的に作用し、歪に起因する局部腐食が大幅に低減され、安定した寿命性能の蓄電池が得られ、その工業的効果が極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なロータリー式エキスパンド加工工程を示す要部側面図。
【図2】ロータリー式エキスパンド加工工程により鉛合金シートにスリットが形成された状態を示す要部斜視図。
【図3】ロータリー式エキスパンド加工により形成された格子の桟部の形状を示す平面図およびそのA−A断面図。
【図4】ロールプレス処理を模式的に示す要部断面図。
【図5】寿命試験後の正極格子の最大伸びと格子厚みd/加工前のシートの厚みd0×100との関係を示す図
【符号の説明】
1a 上部ロータリーカッター
1b 下部ロータリーカッター
21 加工前のシート
22 加工後のシート
3 屈曲部
4 結節部
5 網目部
6a 上部ロールプレス
6b 下部ロールプレス
7 格子
8 上額縁
9 桟部
【発明の属する技術分野】
本発明は蓄電池用格子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蓄電池、例えば、鉛蓄電池の正・負極板は、鉛または鉛合金からなる格子に、酸化鉛を主体とする鉛粉を希硫酸で練膏したペーストを充填・熟成・乾燥した後、電解液である希硫酸中で、電気化学的に酸化・還元反応を起こさせる化成工程を経て作製される。前記格子を作製する方法には、溶融状態の鉛または鉛合金を鋳型に注入・固化する鋳造方式によって直接格子を形成する方法と、鉛または鉛合金からなるシートを打ち抜きあるいはエキスパンド加工により枡目を形成する方法とがある。近年では生産性の優れている後者の方式が増加傾向にある。
【0003】
エキスパンド加工方式には、ダイスカッターの上下運動によって金属シート(以降、シートと記載)に両端部から順に各枡目を形成するレシプロ方式と、ロータリーカッタ−の回転によってシートに千鳥状のスリットを形成し、このシートを両側から展開することによりスリットを網目状に展開するロータリー方式とがある。本発明は、ロータリー方式による格子の製造方法の改善に関するものである。
【0004】
ロータリーエキスパンド方式は2段階の工程からなっている。
【0005】
第1段階は、シートの進行方向に沿って千鳥状になるように複数本の互いに平行なスリットを刻むと共に、シート幅方向に隣り合うスリットにより形成された線部をシート面から表裏両方向に交互に凸状に塑性変形させながら、非スリット部の平坦領域が前記凸状線部の結節部となるように形成していく工程からなっている。
【0006】
第2段階は、加工された前記シートを幅方向へ展開して網目部を形成する工程からなっている。
【0007】
図1は、第1段階の加工工程の一例を示す要部側面図で、1aは上部のロ−タリーカッタ−、1bは下部のロ−タリーカッタ−、21は加工前のシート、22は加工後のシートをそれぞれ示す。図2は、第1段階の加工が終了した時点のシートの状態を示す要部斜視図で、3は屈曲部を示す。
【0008】
図2に示すように、ロータリーカッタ−の凸状加工面の形状が反映され、スリット頂点部は屈曲し、屈曲部3を形成している。したがって、この時点で、加工されたシートの厚み、すなわち,上下の凸状線部の頂点間の厚みは、使用するロータリーカッターの形状および形成する格子の設計によっても変わってくるが、通常、加工前のシートの厚みの180%以上に形成される。
【0009】
第2の段階で、前記加工されたシートを幅方向に展開する際に、上記屈曲部3は、切断時の加工硬化により変形抵抗が大きくなっているために伸ばされ難く、歪を保持したまま屈曲部が残ってしまう。展開後の格子厚みは、最適設計、すなわちスリット幅とシート厚みを1:1にした場合でも、展開時に桟部がねじれるのでシート厚に対して140%の厚みになるが、上述したように屈曲部が残ってしまうので格子厚みはさらに厚くなる傾向にある。
【0010】
図3は、展開後のシートの状態を示す平面図(a)およびA−A断面図(b)で、3は屈曲部、4は結節部、5は網目部、7は格子、8は格子の上額縁、9は桟部をそれぞれ示す。
【0011】
図3(a)および(b)の○で囲んだ部分には屈曲部3の一部が伸ばされずに残り、部分的に格子厚み方向に出っ張った形状をしている。したがって、この部分には歪が多く存在する。従来では、このような格子に上述したようにペーストを充填・熟成・乾燥し、未化成極板を作製していた。
【0012】
【発明が解決しようとしている課題】
屈曲部3が残った格子を、特に正極板に使用した鉛蓄電池を腐食試験(通常、過充電試験のことをいう)に供したところ、屈曲部3には歪が多く存在しているため、その部分が集中的に腐食を受け、体積膨張し、正極板と対面しているセパレータを局部的に圧迫するためにセパレータが劣化・破断して短絡に至ることがあった。また、厚み方向に対する膨張が圧迫によって制限された場合には、極板高さ方向に膨張することになり、正極板の上額縁が機械的に伸び、負極ストラップと接触し短絡を起こし、短寿命になる問題をも抱えていた。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、シートの展開後に残存する屈曲部の出っ張りを緩和することによりその部分の歪が少なくなり、歪に起因する正極格子の腐食が大幅に低減し、寿命性能の安定した蓄電池用格子の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題を解決するための手段として、請求項1によれば、金属シートをロータリー式エキスパンド加工方式により格子を形成する蓄電池用格子の製造方法において、
前記格子の厚みを、ロールプレスにより加工前のシート厚みの110%以上、150%以下にプレス処理することを特徴とするものである。
【0015】
シートを展開した後、格子の桟部の屈曲部の出っ張りが残存し、該屈曲部には歪が多く存在するので蓄電池使用中にその部分が局部的に腐食を受けるのに対して、本発明では、シート展開後、格子をロールプレスでプレス処理して桟部に残存している屈曲部の出っ張りを緩和することによって歪が少なくなり、その部分での局部腐食が低減されることがわかった。
【0016】
ロールプレスした後の格子の厚みが、加工前のシート厚みの150%より厚い場合には、屈曲部の出っ張りが十分に緩和されておらず、その効果が少なく、110%までプレスすると格子そのものの変形が大きく、逆に桟部に歪が発生し、むしろ腐食が促進し、格子の伸びが返って大きくなった。したがって、プレス後の格子の厚みが加工前のシート厚みの110%以上、150%以下になるようにプレスするのが好ましい。
【0017】
請求項2によれば、前記ロールプレスの表面温度が100℃以上に加熱されていることを特徴とするものである。
【0018】
展開された格子をロールプレスする際に、ロールを加温し、格子を加熱すると金属格子に展性が付加され、軟らかくなって、プレスした際に、前記屈曲部の出っ張りが変形し易くなり、屈曲部の歪が効果的に除去される。その際の、ロールプレスの表面温度が100℃より低いと、金属格子に展性が十分付加されないためにその効果が小さい。したがって、100℃以上にすることが好ましい。
【0019】
【実施の形態】
本発明は、ロータリー式エキスパンド加工方式により作製された格子の桟部に歪を多く抱えた屈曲部が残存し、該部分が集中的に腐食を受けるのを抑制するために、展開後の格子をロールプレスでプレス処理をして前記屈曲部の出っ張りを緩和し、該部分の歪を少なくし、歪に起因する局部腐食を低減しようとするものである。図4はその実施例を示す要部模式断面図で、3は屈曲部、6aは第1のロール、6bは第2のロール、7は格子、8は格子の上額縁、9は桟部をそれぞれ示す。第1のロール6aおよび第2のロール6bで格子7がプレスされている状態を示している。
【0020】
格子をプレスする際に、図4に示すように、加工前のシートの厚みをd0、プレス後の格子の厚みをdとしたときに、d/d0×100が110%以上、150%以下になるようにプレスすると共に、ロール表面の温度を100℃以上に保って、該格子を加熱してプレスの効果を高めようとするもので、以下、実施例に基づき詳細に説明する。
【0021】
【実施例】
Pb−0.06%Ca−1.3%Sn合金からなる約10mmのスラブを多段ロール方式により1.0mmに圧延したシートを、常法のロータリーエキスパンド方式により加工・展開した後に、次の工程に設置した本発明の方式であるロールプレス機を通過させてプレス処理を行った。その場合、プレス後の格子厚みをd、加工前のシート厚みをd0とした時に、d/d0×100が、90%から180%まで変化するように、プレスロール間を調整した。さらに、ロール表面の温度もヒーターにより25℃から300℃まで変化させ、これらを組み合せて格子を作製した。この場合のロールプレス機の回転速度は20m/分の条件で行った。
【0022】
上記各格子に正極ペーストを充填し、熟成・乾燥を経て未化成正極板を作製した。この正極板と常法により作製したエキスパンド格子からなる負極板および微孔性のポリエチレンを主体としたセパレータとを積層して、JIS D 5301に規定されている55D23型の自動車用鉛蓄電池を作製した。これら蓄電池に所定比重、所定量の希硫酸を注入して電槽内で化成を行った。
【0023】
上記蓄電池をJIS D5301に準ずる軽負荷寿命試験に供した。寿命試験条件を以下に示す。
試験温度:水槽 75℃
放電:25Aで4分間
充電:14.8V(制限充電電流:25A)で10分間
上記充・放電を繰り返し、2,500サイクルで試験を終了し、蓄電池を解体し、正極板の最大伸びを調査した。図5に格子厚みd/加工前シート厚みd0×100と正極板の最大伸び(%)との関係を示す。正極板の伸びは、プレス時のロールの温度25℃でプレスがかかっていない格子厚み180%の正極板の最大伸びを100としたときの比率で表した。
【0024】
図5に示すように、プレスに関しては、d/d0×100を100%あるいはそれより薄い90%までプレスすると、格子自体の変形が大きくなり、逆に歪が増加し、ロールプレスの温度に関係なく、いずれも腐食を抑制する点では逆効果で格子伸びが大きくなった。
【0025】
一方、プレスが弱く、d/d0×100が160%以上になると、ロールプレスの温度に関係なく、屈曲部の出っ張りの緩和が不十分で格子伸びの低減効果がほとんど得られなかった。
【0026】
したがって、プレスに関しては、d/d0×100を110%以上、150%以下になるようにプレスするのが好ましいことが明らかになった。
【0027】
一方、ロールの温度に関しては、ロールの表面温度が25℃あるいは50℃と加熱温度が低い条件では、格子に十分な展性が付加されておらず、ロールプレスの効果が十分でなく、格子の伸びの抑制は最大で約20%であった。これに対して、ロールの温度100℃で格子を加熱すると共に、プレスによりd/d0×100を120〜130%にすると屈曲部の出っ張りがより緩和され、その部分の歪がより少なくなり、格子の伸びを約35%低減できた。さらに、200℃では、120〜130%にプレスした場合、格子の最大伸びは42〜45%低減できた。しかし、ロールの温度が300℃になると鉛あるいは鉛合金の融点に近づくので、格子が軟らかくなり過ぎ、格子自体が大きく変形し、返って寿命試験中の腐食が進行し、伸びの低減効果は200℃の場合より低下した。
【0028】
なお、実施例では、Pb−0.06%Ca−1.3%Sn合金シートを加工して得た格子を用いた鉛蓄電池について説明したが、本発明は、鉛蓄電池に限定するものでなく、金属シートを加工して形成した格子を用いる蓄電池であればいずれの蓄電池にも適用可能である。
【0029】
上記実施例でのロールプレス機の回転速度は20m/分の条件で行ったが、回転速度10〜30m/分の範囲でほぼ同様の効果が得られることを確認した。しかし、回転速度が10m/分より遅くなると、特に高温でのプレスにおいて温度の影響を過度に受け、軟らかくなり過ぎて、逆効果になった。一方、回転速度が30m/分より速くなると、特に、低い温度のプレスにおいて、温度の効果が低減し、本発明の効果が十分に得られなかった。
【0030】
【発明の効果】
ロータリー式エキスパンド加工方式により形成された格子は、ロータリーカッタ−の凸状加工面の形状が反映され、スリット頂点部が屈曲する。該屈曲部は、加工硬化により変形し難くなっているので、展開後も残存する。該屈曲部には多くの歪が存在し、蓄電池使用中にその部分が局部的に腐食を受け、格子の伸びが進行し、蓄電池が短寿命になる傾向があった。それに対して、本発明では、加工後の格子をロールプレスで加工前のシート厚みの110%〜150%にプレス処理することによって、前記屈曲部の出っ張りが緩和され、その部分の歪が少なくなる。さらに前記ロールを100℃以上に加熱することによって、金属に展性が付加され、プレスがより効果的に作用し、歪に起因する局部腐食が大幅に低減され、安定した寿命性能の蓄電池が得られ、その工業的効果が極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的なロータリー式エキスパンド加工工程を示す要部側面図。
【図2】ロータリー式エキスパンド加工工程により鉛合金シートにスリットが形成された状態を示す要部斜視図。
【図3】ロータリー式エキスパンド加工により形成された格子の桟部の形状を示す平面図およびそのA−A断面図。
【図4】ロールプレス処理を模式的に示す要部断面図。
【図5】寿命試験後の正極格子の最大伸びと格子厚みd/加工前のシートの厚みd0×100との関係を示す図
【符号の説明】
1a 上部ロータリーカッター
1b 下部ロータリーカッター
21 加工前のシート
22 加工後のシート
3 屈曲部
4 結節部
5 網目部
6a 上部ロールプレス
6b 下部ロールプレス
7 格子
8 上額縁
9 桟部
Claims (2)
- 金属シートをロータリー式エキスパンド加工方式により格子を形成する蓄電池用格子の製造方法において、
前記格子の厚みを、ロールプレスにより加工前のシート厚みの110%以上、150%以下にプレス処理することを特徴とする蓄電池用格子の製造方法。 - 前記ロールプレスの表面温度が100℃以上に加熱されていることを特徴とする請求項1に記載の格子の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003100645A JP2004311109A (ja) | 2003-04-03 | 2003-04-03 | 蓄電池用格子の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003100645A JP2004311109A (ja) | 2003-04-03 | 2003-04-03 | 蓄電池用格子の製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004311109A true JP2004311109A (ja) | 2004-11-04 |
Family
ID=33464716
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003100645A Pending JP2004311109A (ja) | 2003-04-03 | 2003-04-03 | 蓄電池用格子の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004311109A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011040568A (ja) * | 2009-08-11 | 2011-02-24 | Shin Kobe Electric Mach Co Ltd | 蓄電デバイスの電極集電体の製造方法および製造装置 |
-
2003
- 2003-04-03 JP JP2003100645A patent/JP2004311109A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011040568A (ja) * | 2009-08-11 | 2011-02-24 | Shin Kobe Electric Mach Co Ltd | 蓄電デバイスの電極集電体の製造方法および製造装置 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP4288730B2 (ja) | 鉛蓄電池の製造方法および鉛蓄電池用格子の製造装置 | |
JP2004311109A (ja) | 蓄電池用格子の製造方法 | |
JP4062817B2 (ja) | 鉛蓄電池及びその製造法 | |
JP4852869B2 (ja) | 鉛蓄電池用極板集電体の製造方法 | |
JP4239303B2 (ja) | 鉛蓄電池 | |
JP6921037B2 (ja) | 鉛蓄電池 | |
JP2000340235A (ja) | 鉛蓄電池 | |
JP4263465B2 (ja) | 電極集電体及びその製造方法とシール鉛蓄電池 | |
JP4686810B2 (ja) | 鉛蓄電池 | |
JP2006294296A5 (ja) | ||
JP4774297B2 (ja) | 鉛蓄電池用格子体の製造方法および鉛蓄電池 | |
JP4380184B2 (ja) | 蓄電池用格子体とそれを用いた鉛蓄電池 | |
JP4203634B2 (ja) | 鉛蓄電池の製造法 | |
JP4006888B2 (ja) | 鉛蓄電池の製造法 | |
JP4894105B2 (ja) | 鉛蓄電池 | |
JP3637603B2 (ja) | 鉛蓄電池 | |
JP2000357518A (ja) | 鉛蓄電池用格子体およびその製造方法 | |
JP4876328B2 (ja) | 蓄電池用極板格子製造装置 | |
JP4834912B2 (ja) | 蓄電池用格子体の製造方法と、その製造方法により製造した蓄電池用格子体を用いる鉛蓄電池の製造方法 | |
JP2004311110A (ja) | 蓄電池用格子の製造方法及び蓄電池 | |
JP4461697B2 (ja) | 鉛蓄電池の正極格子体とそれを用いた鉛蓄電池 | |
JP2003187791A (ja) | 鉛蓄電池 | |
JP2000215898A5 (ja) | ||
JP4904632B2 (ja) | 鉛蓄電池 | |
JP2002100365A (ja) | 蓄電池用圧延鉛合金シートとそれを用いた鉛蓄電池 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20051213 |