JP2004307793A - バイオマス発電システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】バイオマス原料を乾留して得られるタールを主燃料1としマイクロガスタービン2の燃焼器3で燃焼させてタービン6を回転させ発電するようにした。バイオマス原料を乾留して発生する煙を冷却液化するとガスや液化物(タール等)が得られるが、このバイオマス発電システムは前記タールを主燃料としマイクロガスタービンの燃焼器で燃焼させてタービンを回転させ発電するように構成し、枯渇の問題や地球温暖化の問題がある化石燃料ではなくバイオマス原料由来のタールを用いるようにしている。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、バイオマス原料を変換してガスタービンの燃料として安全に利用することができる発電システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
送電ロスがなくまた排ガスの熱等を利用してコ・ジェネレーション(電力と熱の供給)することにより高いエネルギー効率が得られる分散型の発電設備が普及しつつある。
【0003】
分散型の発電設備の種類としてディーゼル発電機、ガスエンジン発電機、ガスタービン発電機などがあり、この中で排気ガス中のNOxが少なく騒音も小さいマイクロガスタービンが着目されている(例えば、非特許文献1参照)。そして、前記マイクロガスタービンに使用される燃料としては、ガス系のもの(LNGやLPG等)や前記ガス系よりも比較的安価な液系のもの(軽油や灯油等)がある。
【0004】
しかし、前記LNGやLPG、軽油や灯油などのような化石燃料には枯渇の問題や地球温暖化の問題がある。したがって、現存の生物燃料を利用可能でありカーボンニュートラル(全体として二酸化炭素の増減に影響を与えない)の性質を有するバイオマスをエネルギー源とする発電が望まれる。
【0005】
【非特許文献1】
財団法人エネルギー総合工学研究所ホームページ、“エネルギー講座、マイクロガスタービン(2001.10.30)”、[online]、2001.10.30、 [2003/1/24検索]、インターネット<URL:http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data4004.html>
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこでこの発明は、現存の生物燃料を活用可能でありカーボンニュートラルの性質を有するバイオマスをエネルギー源とする発電システムを提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するためこの発明では次のような技術的手段を講じている。
▲1▼ この発明のバイオマス発電システムは、バイオマス原料を乾留して得られるタールを主燃料としマイクロガスタービンの燃焼器で燃焼させてタービンを回転させ発電するようにしたことを特徴とする。
【0008】
バイオマス原料を乾留して発生する煙を冷却液化するとガスや液化物(タール等)が得られるが、このバイオマス発電システムは前記タールを主燃料としマイクロガスタービンの燃焼器で燃焼させてタービンを回転させ発電するように構成し、枯渇の問題や地球温暖化の問題がある化石燃料ではなくバイオマス原料由来のタールを用いるようにしている。
【0009】
ここで、前記バイオマス原料(生物体を原料にしたエネルギー資源の総称)として天然由来、生物由来のものがあり、木材・竹材その他の木質系のものや植物、食品(穀類、野菜類、肉類その他)・食物(の残渣、廃棄物) などを例示することが出来る。なお、前記のような食品廃棄物の処理方法として醗酵を利用することは試みられているが、上記のような利用をするものは全く見られない。
【0010】
▲2▼ 木質バイオマス原料を乾留して得られる木タールを主燃料とするようにしてもよい。
【0011】
木質バイオマス原料を乾留して発生する木煙を冷却液化すると木ガス、木酢液、木タールが得られるが、このバイオマス発電システムは前記木タールを主燃料としマイクロガスタービンの燃焼器で燃焼させてタービンを回転させ発電するように構成し、枯渇の問題や地球温暖化の問題がある化石燃料ではなく木質バイオマス原料由来の木タールを用いるようにしている。
【0012】
ここで、前記木質バイオマス原料として、樹木や竹、ヤシ、わら、もみがら、枝葉などを例示することができる。
【0013】
▲3▼ (ア) 前記バイオマス原料を約300℃〜700℃で乾留してタールを得るようにしたこととしてもよい。
【0014】
バイオマス原料を乾留(例えば木質バイオマス原料の場合は木煙を冷却液化)する温度帯によって得られるガス (例えば木ガス)と液体(例えば木酢液)とタール(例えば木タール)の比率が異なり、乾留温度(冷却液化温度)が約300℃〜700℃(常圧)とするとタールが多く生成するという利点がある。
【0015】
(イ) ところで、約450℃〜650℃(常圧)の範囲で乾留を行うとタールの収率が特に高くなり、燃焼に有益な高分子成分が多量に含まれるという利点がある。
【0016】
すなわち約450℃〜650℃で乾留を行うと、木タールの上向きに凸状の放物線グラフ(図4の乾留温度(℃)と生成物比率(%)の関係のグラフ参照)の頂上の領域でその生成物比率が約20%弱以上と高い比率となる。なお約650℃を越える温度で乾留すると、木タールがピッチ化しその収率が悪化する傾向が見られる。また前記数値範囲の約650℃を越えると、木タール以外の木ガスの生成物比率のグラフ線(前記図4参照)の傾きが急上昇しており(木タールの割合が低下する一方で主燃料ではない木ガス〔発熱量が木タールより劣る〕の割合が急激に高まっている)、前記数値範囲は臨界的意義を有するものである。
【0017】
▲4▼ (ア) 前記タールを約20〜90mmHgの減圧下で約100〜190℃の液温度で分留してタールオイルを得るようにし、前記木タールオイルを主燃料としたこととしてもよい。
【0018】
バイオマス原料を乾留して得られるタールには、ピッチ成分のように引火点が高く粘度も高い、燃料としてあまり利用し難いような高分子成分も含まれている。すなわち、例えば木タールには炭素数が23程度の物質まで含まれており、このうち例えばC16H34 (Hexadecane)の引火点は130℃、C18H38(Octadecane)の引火点は166℃とかなり高い。
【0019】
ところが、上記タールを約20〜90mmHgの減圧下で約100〜190℃の液温度で分留して得られたタールオイルは、ピッチの含有量が低い良質なものである。また、得られたタールオイルの発熱量は6,615cal/g程度と燃料として十分である。なお、前記タールオイルの引火点は79℃〜90℃であり、従前の化石燃料である灯油の40℃や軽油の50℃と比べると多少は高いが、マイクロガスタービンの燃焼器で燃焼させてタービンを回転させ発電するには十分なものである(図5の「木タールオイルのGC−MS分析」のグラフ参照)。
【0020】
(イ) ここで、前記タールを約20〜40mmHgの減圧下で約100〜150℃の液温度で分留してタールオイルを得るようにし、前記タールオイルを主燃料としたこととしてもよい。タールオイルの分留・精製条件をこのように設定すると、よりピッチの含有量が低い良質なタールオイルを得ることができる。
【0021】
▲5▼ 前記タールを希釈又はエマルジョン化したものを主燃料としたこととしてもよい。
(前記▲4▼のような(木)タールオイルの代わりに)このように構成すると、バイオマス原料を乾留して得られるタール(ピッチ等が含有される)を希釈(例えばエタノールやメタノール等の溶媒に溶解させる)し又はエマルジョン化(例えば界面活性剤等を添加する)して粘度を落としたものを主燃料とすることができるので、マイクロガスタービンの燃焼器での燃焼時に、高温度状態下の重合によりピッチ化して装置内にこびり付くことを抑制することができ、前記木タールオイルの場合のような分留操作という大きな手間をかけることなく効率的に使用することができる。
【0022】
▲6▼ 前記バイオマス原料を乾留して得られるガスを燃焼用空気と共にマイクロガスタービンの燃焼器に供給するようにしたこととしてもよい。
【0023】
マイクロガスタービンの主燃料としてタール(前記タールオイル又は前記タールを希釈若しくはエマルジョン化したもの)を供給するが、このようにガス(可燃性物質)をも導入することによりメインのタールの使用量を減らし省エネルギーに資することができる。
【0024】
▲7▼ 前記▲1▼〜▲6▼のいずれかに記載のバイオマス発電システムの主燃料とするタール又はタールオイル又はタールを希釈若しくはエマルジョン化したものは、バイオマス発電のエネルギー源とすることができるものである。
【0025】
▲8▼ このバイオマス原料の無害化発電方法は、前記▲1▼〜▲6▼のいずれかに記載のバイオマス発電システムにより前記主燃料をマイクロガスタービンの燃焼器で約800℃以上で燃焼させるようにしたものである。
【0026】
バイオマス燃料を乾留して得られるタールにはベンツピレン、ダイオキシンなどの有害有機物質が含まれることも多いが、このバイオマス原料の無害化発電方法によると、前記のような有害有機物質もマイクロガスタービンで約800℃以上で燃焼させることによって十分に熱分解して無害化しクリーンで安全な発電を行うことができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
▲1▼ 図1に示すように、この実施形態のバイオマス発電システムは、木材・竹材その他の木質バイオマス原料を乾留して得られる木タールを主燃料1とし、マイクロガスタービン2の燃焼器3で約800℃から900℃以上で燃焼させてタービン4を回転させ発電するようにしている。
【0028】
このマイクロガスタービン2は、燃料1と加温した空気とを混合し燃焼させる燃焼器3と、燃焼ガスの力で高速回転させるタービン4と、空気軸受け5と、大気中の空気を取り込み加圧して再生器へ送り込む圧縮機6と、タービン4と同軸で連結されて回転し電気を発生する高速発電機7と、吸気口8と、フィルター9と、交流出力するインバータ/整流器10と、取り込んだ空気を加温し膨張させる再生器11と、タービン部で得られる熱を温水等として回収して給湯や冷暖房時に利用する排熱回収装置12と、排気口13とを有する。そして、ガスタービン4では、吸入→圧縮→燃焼→膨張→排気の順で燃焼ガスが持つ熱エネルギーを機械エネルギーに変換している。
【0029】
ところで、木質バイオマス原料を乾留して発生する木煙を冷却液化すると木ガス、木酢液、木タールが得られるが、このバイオマス発電システムは前記木タールを主燃料1としマイクロガスタービン2の燃焼器3で燃焼させてタービン4を回転させ発電するように構成し、枯渇の問題や地球温暖化の問題がある化石燃料ではなく木質バイオマス原料由来の木タールを用いるようにしており、現存の生物燃料を活用可能でありカーボンニュートラルの性質を有する木質バイオマスをエネルギー源とすることができる。
【0030】
▲2▼ 図2及び図3に示すように、前記木質バイオマス原料は、例えば可燃性燃料発生装置14により約450℃〜650℃で乾留して木タールを得るようにしている(木質バイオマス原料の乾留)。
【0031】
前記可燃性燃料発生装置14は、バーナー15と、木質バイオマス原料を加熱して熱分解する乾留炉16と、窯内温度計17と、加熱ガス温度計18と、木タール及び木酢液の貯留タンク19と、木ガス等を捕集するための冷却器20と、熱分解ガス洗浄塔21と、ガス中の粉塵を除去するためのサイクロン22と、前記乾留炉16で発生する木ガスと木タールを誘引するガス誘引ファン23とを有している。
【0032】
ところで、木質バイオマス原料を乾留(木煙を冷却液化)する温度帯によって得られる木ガスと木酢液と木タールの比率が異なり、乾留温度(冷却液化温度)が約300℃〜700℃(常圧)で木タールが多く生成するが、約450℃〜650℃(常圧)で乾留を行うと木タールの収率が特に高くなり燃焼に有益な高分子成分が多量に含まれる。図4に、乾留温度(℃)と生成物(木炭、木酢液、木タール、木ガス)比率(%)の関係のグラフを示す。
【0033】
すなわち約450℃〜650℃で乾留を行うと、木タールの上向きに凸状の放物線グラフ(図4参照)の頂上の領域でその生成物比率が約20%弱以上と高い比率となる。なお約650℃を越える温度で乾留すると、木タールがピッチ化しその収率が悪化する傾向が見られる。また前記数値範囲の約650℃を越えると、木タール以外の木ガスの生成物比率のグラフ線(前記図4参照)の傾きが急上昇しており(木タールの割合が低下する一方で主燃料1ではない木ガス〔発熱量が木タールより劣る〕の割合が急激に高まっている)、前記数値範囲は臨界的意義を有するものである。
【0034】
なお、前記乾留条件により得られた木ガスの成分を表1に示す。前記ガスの発熱量は1,000kcal/Nm3程度であった。
【表1】
【0035】
▲3▼ 前記木質バイオマス原料の乾留工程に引き続いて、得られた木タールを約20〜90mmHgの減圧下で約100〜190℃の液温度で分留して木タールオイルを得るようにし(木タールの分留)、前記木タールオイルをバイオマス発電システムの主燃料1とすることができる。
【0036】
木質バイオマス原料を乾留して得られる木タールには、ピッチ成分のように引火点が高く粘度も高い、燃料としてあまり利用し難いような高分子成分も含まれている。すなわち、前記木タールをGC−MS分析してみると炭素数が23程度の物質まで含まれており、このうち例えばC16H34 (Hexadecane)の引火点は130℃、C18H38(Octadecane)の引火点は166℃とかなり高い。
【0037】
ところが、上記木タールを約20〜90mmHgの減圧下で約100〜190℃の液温度で分留して得られた木タールオイルは、木ピッチの含有量が低い良質なものであった。また、得られた木タールオイルの発熱量は6,615cal/g程度と燃料として十分であった(図5の木タールオイルのGC−MS分析のグラフ参照)。
【0038】
この木タールオイルをGC分析を行った結果の主成分を、表2に示す。
【表2】
【0039】
前記表2に示す通り、前記木タールオイルはグアヤコール、4−メチルグアヤコール、フェノールを含有しその引火点は79℃〜90℃であり、従前の化石燃料である灯油の40℃や軽油の50℃と比べると多少は高いが、マイクロガスタービン2の燃焼器3で燃焼させてタービン4を回転させ発電するには十分なものであった。
【0040】
▲4▼ ここで、前記木タールを約20〜40mmHgの減圧下で約100〜150℃の液温度で分留して木タールオイルを得るようにし(木タールの分留)、前記木タールオイルをバイオマス発電システムの主燃料1とすることができる。木タールオイルの分留・精製条件をこのように設定すると、より木ピッチの含有量が低い良質な木タールオイルを得ることができる。
【0041】
▲5▼ 前記▲3▼▲4▼のような木タールオイルの代わりに、上記木質バイオマス原料を乾留して得られる木タール(木ピッチ等が含有される)を希釈(例えばエタノールやメタノール等の溶媒に溶解させる)したものをバイオマス発電システムの主燃料1とすることができる。また、前記木タールをエマルジョン化(例えば界面活性剤等を添加する)したものをバイオマス発電システムの主燃料1とすることができる。
【0042】
このようにすると、木タールを希釈又はエマルジョン化し粘度を落としたものを主燃料1とすることができるので、マイクロガスタービン2の燃焼器3での燃焼時に、高温度状態下の重合によりピッチ化して装置内にこびり付くことを抑制することができ、前記木タールオイルの場合のような分留操作という大きな手間をかけることなく効率的に使用することができる。
【0043】
▲6▼ 前記木質バイオマス原料を乾留して得られる木ガスを、燃焼用空気と共にマイクロガスタービン2の燃焼器3(主燃料1と加温した空気とを混合して燃焼させる)に供給することができる。
【0044】
マイクロガスタービン2の主燃料1として木タール(又は木タールオイルや木タールを希釈若しくはエマルジョン化したもの)を燃焼器3に供給するが、このように木ガス(可燃性物質)をも加温した空気とを混合して導入し燃焼させることによりメインの木タールの使用量を減らし省エネルギーに資することができる。
【0045】
【実施例】
次に、この発明の構成をより具体的に説明する。
(実施例1)
このバイオマス発電システムの付帯装置(図示せず)は、木タールオイルの貯蔵タンクと、運転補助のための液体燃料(木タールオイルよりも引火点が低い灯油や軽油)の貯蔵タンクと、前記各貯蔵タンクからの燃料供給管路にそれぞれ設けられた弁体と、燃料をガスタービン4に送るためのポンプを有する燃料供給部と、計測盤とである。
【0046】
前記燃料供給部は、木タールオイルタンクと液体燃料タンクとの各燃料供給管路に各別に設けられている。そして、各燃料供給部はそれぞれポンプの出力側に設けられた燃料供給圧力一定保持のためのリリーフバルブと、このリリーフバルブからの燃料を貯蔵して前記ポンプに供給するリザーバタンクを設けており、安定した圧力でガスタービン4に燃料を供給できるようにしている。
【0047】
前記計測盤にはガスタービン4の「運転開始信号」と「負荷の有無信号」を入力し、前記燃料供給部からの「運転準備信号」を受けてガスタービン4に「運転了承信号」を出力するようにしている。
【0048】
またこの計測盤には、前記木タールオイルが所定の温度以上であり且つガスタービン4に負荷がかかったときには燃料を液体燃料供給ルート(灯油や軽油)から木タールオイル供給ルートに切り替え、負荷なし時には液体燃料供給ルートに切り替える手段を有する演算部を設けている。前記演算部は、ガスタービン4からの「運転開始信号」により燃料供給を液体燃料供ルートに制御する手段と、負荷なし時には液体燃料供給ルートでの燃料供給を継続させ、負荷あり時には燃料を木タールオイル供給ルートに切り替える手段とを有し、ガスタービン運転停止時には液体燃料供給を停止するようにしている。
【0049】
具体的には、前記木タールオイルが流動点以上となることを確保するために木タールオイルルートに配管ヒータを設置しており、前記ガスタービン4が運転中に前記木タールオイル温度が所定値以上で且つガスタービン4に負荷がかかったときには燃料を木タールオイル供給ルートに切り替え、木タールオイルが所定温度以下時とガスタービン4に負荷なし時には液体燃料供給ルートに切り替えて運転するようにしている。
【0050】
ところで、既述の通り可燃性燃料発生装置14で得られた木ガス(表1参照)の発熱量は1,000kcal/Nm3程度であり、単独でガスタービン用のガス燃料として使用するには熱量が少ないように考えられる。このように熱量が若干少ない木ガスも有効利用するため、燃焼用空気と共にマイクロガスタービン2の燃焼器3の吸気側に供給し燃焼空気と混ぜて燃焼させるようにしている。
【0051】
すなわち既述の可燃性燃料発生装置14の乾留炉16で発生した木ガスは、図6に示すガスホルダー内24に捕集され、ブロワー25を備えた配管26を介してエアーと混合されてマイクロガスタービン2へと送られるようにしている。27はエアーの開閉バルブ、28は木ガスの濃度調整手段である。ガスタービン4の燃焼器3には燃料ポンプ29により供給される主燃料1を噴霧するための噴霧ノズル30が設けられ、その噴霧燃料は燃焼器3内で前記木ガスと混合されて燃焼される。また燃焼器3内の温度を検出するための熱電対(温度センサー)31と、この熱電対31の検出結果に基づいて燃料ポンプ29による主燃料1の供給量を制御して燃焼温度を一定とするコントロール部32とを設けている。33は発火手段、34は排管である。そして、木タールや木ガス内に有害な有機物質が存在する可能性のある場合も、これらをガスタービン4内で高温で完全燃焼させることにより安全な低分子に熱分解して大気中に排出するようにしている。
【0052】
また、表3に木材(広葉樹林、針葉樹林)を乾留(乾留温度300℃、400℃、500℃)した際に生成する木ガスの熱量(kcal/NM3)と組成(Vol%)を示すが(柴本、栗山、木材炭化、p34、朝倉書店、1956年)、原料となる木材の種類や乾留条件によって生成する木ガスの熱量が異なっており、この意味からもマイクロガスタービン2の燃焼器3内の燃焼温度を既述のようにモニターし、これに基づいて主燃料1の供給量を制御することにより、木ガスの供給量や燃焼器3内の発熱量が変化しても安定した発電ができるようにしている。
【表3】
【0053】
図7に木タールオイルを使用したマイクロガスタービン2の運転結果のグラフ(温水出口温度[℃]、温水入口温度[℃]、出力電圧[kW]、出力熱量[Mcal/h]、木タールオイル流量[L]、温水流量[m3/h])を示すが、安定した出力電力や安定した出力熱量が得られたことが把握される。
【0054】
(実施例2)
木タールオイル(実施例)と比較のための灯油(比較例)との2種類の燃料をマイクロガスタービンの燃焼器で800℃以上で燃焼させてタービンを回転させ発電を行い、発電と熱回収(温水製造)の試験を行った。この負荷試験結果を、表4に示す。
【表4】
【0055】
この表に示すとおり、コ・ジェネレーション(発電+熱回収)の平均総合効率は木タールオイルが69.2%で、灯油の69.8%とほぼ同等な値であった。すなわち、現存の生物燃料を活用可能でありカーボンニュートラルの性質を有する木質系バイオマス(木タールオイル)を燃料として用いたコ・ジェネレーションシステムの効率は、化石燃料である灯油と同等に優れているものであった。そして、この結果により灯油の代替エネルギーを、カーボンニュートラルな木質バイオマスから得ることが非常に有用であることが実証された。
【0056】
(実施例3)
木タールオイル(実施例)、灯油(比較例)、主燃料の灯油+助燃料の木ガス(参考例)との3種類の燃料をマイクロガスタービンの燃焼器で800℃以上で燃焼させてタービンを回転させ発電を行った。なお、前記参考例は主燃料の灯油に対し、木材を乾留して得られる木ガスを燃焼用空気と共にマイクロガスタービンの燃焼器に供給するようにしたものである。
【0057】
そして、マイクロガスタービンを運転した際の排ガスの分析測定を行った。ここで木タールオイル(実施例)からの排ガス、灯油(比較例) からの排ガスの採取位置は、図8の全体システムの測定位置関係図のMGTNo.1出口測定口である。また、主燃料の灯油+助燃料の木ガス(参考例)からの排ガスの採取位置は、No.2出口測定口である。図中の2つのMGTは、それぞれマイクロガスタービンを示す。また図中のXは、木タールオイルのタンクを示す。
【0058】
表5に、ダイオキシン類の測定結果 (JISK0311:1999「排ガス中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法」による) を示す。なお参考のため、木ガスそのもの(燃焼前)の測定結果も併せて示す(表6、表7も同様)。
【表5】
【0059】
この表に示すとおり、木ガス(燃焼前)中のダイオキシン類は0.37ng−TEQ/m3Nであったが、木タールオイル(実施例)の排ガス中のダイオキシン類は0.00011 ng−TEQ/m3Nであり、灯油(比較例) の排ガス中の0.000018 ng−TEQ/m3Nにかなり近いものである。このダイオキシンの値は、国の排出基準値(焼却能力が1時間当たり4,000kg以上の廃棄物の焼却炉で1ng−TEQ/m3N)と比較してみてもかなりの低濃度である。
【0060】
すなわち、バイオマス燃料を乾留して得られるタールにはダイオキシン類などの有害有機物質が含まれることが多いが、マイクロガスタービンで800℃以上で燃焼させることによって前記のような有害有機物質も十分に熱分解して無害化しクリーンで安全な発電を行うことができるものである。
【0061】
表6に、ばい煙の結果測定を示す。
【表6】
【0062】
この表に示すとおり、木タールオイル(実施例)の排ガス中のばいじんや硫黄酸化物の含有量は測定可能な定量下限値以下であり、灯油(比較例)の排ガスと同等にクリーンなものであった。窒素酸化物は、国の排出基準値70ppm(排出ガス量4万5千m3N/h未満のガスタービンに係わる窒素酸化物の排出基準値)と比較してもその基準値以下である。このように、木タールオイルでマイクロガスタービンにより発電する際に排出される排ガスは、大気の環境に対して負荷の少ない環境にやさしいものであった。
【0063】
【発明の効果】
この発明は上述のような構成であり、次の効果を有する。
【0064】
枯渇の問題や地球温暖化の問題がある化石燃料ではなくバイオマス原料由来のタールを用いるようにしているので、現存の生物燃料を活用可能でありカーボンニュートラルの性質を有するバイオマスをエネルギー源とする発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のバイオマス発電システムの実施形態におけるマイクロガスタービンの構造の説明図。
【図2】この発明のバイオマス発電システムの実施形態についての可燃性燃料発生装置の構造を説明する正面図。
【図3】図2の可燃性燃料発生装置の構造を説明する平面図。
【図4】乾留温度(℃)と生成物比率(%)の関係のグラフ。
【図5】木タールオイルのGC−MS分析のグラフ。
【図6】この発明のバイオマス発電システムの実施例におけるマイクロガスタービンの構造の要部の説明図。
【図7】木タールオイルを使用したマイクロガスタービンの運転結果のグラフ。
【図8】全体システムの測定位置関係図。
【符号の説明】
1 主燃料
2 マイクロガスタービン
3 燃焼器
6 タービン
Claims (8)
- バイオマス原料を乾留して得られるタールを主燃料としマイクロガスタービンの燃焼器で燃焼させてタービンを回転させ発電するようにしたことを特徴とするバイオマス発電システム。
- 木質バイオマス原料を乾留して得られる木タールを主燃料とした請求項1記載のバイオマス発電システム。
- 前記バイオマス原料を約300℃〜700℃で乾留してタールを得るようにした請求項1又は2記載のバイオマス発電システム。
- 前記タールを約20〜90mmHgの減圧下で約100〜190℃の液温度で分留してタールオイルを得るようにし、前記タールオイルを主燃料とした請求項1乃至3のいずれかに記載のバイオマス発電システム。
- 前記タールを希釈又はエマルジョン化したものを主燃料とした請求項1乃至4のいずれかに記載のバイオマス発電システム。
- 前記バイオマス原料を乾留して得られるガスを燃焼用空気と共にマイクロガスタービンの燃焼器に供給するようにした請求項1乃至5のいずれかに記載のバイオマス発電システム。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載のバイオマス発電システムの主燃料とするタール、タールオイル又はタールを希釈若しくはエマルジョン化したもの。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載のバイオマス発電システムにより前記主燃料をマイクロガスタービンの燃焼器で約800℃以上で燃焼させるようにしたバイオマス原料の無害化発電方法。
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