JP2004307588A - (メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法 - Google Patents
(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】重合反応液中に、鉄イオンなどの重金属イオンを添加することによって、上記課題は解決される。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体の共重合によって形成される共重合体の製造方法、ならびに、(メタ)アクリル酸系単量体およびアリルエーテル系単量体の共重合によって形成される共重合体の製造方法に関する。本発明の方法によって製造される(メタ)アクリル酸系共重合体は、洗剤ビルダーやスケール防止剤などに適用される。
【0002】
【従来の技術】
(メタ)アクリル酸系重合体は水溶性重合体であり、キレート能、分散性に優れる。このため、(メタ)アクリル酸系重合体は、洗剤ビルダー、スケール防止剤、分散剤などに適用されている。
【0003】
(メタ)アクリル酸系重合体としては、(メタ)アクリル酸のホモポリマーの他、共重合体が知られている。例えば、(メタ)アクリル酸系単量体と不飽和アルコール系単量体とを併用することによって、共重合体と界面活性剤との相溶性が向上しうる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、(メタ)アクリル酸系単量体とアリルエーテル系単量体とを併用することによって、共重合体の耐ゲル性が向上しうる(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
重合方法としては、(メタ)アクリル酸のホモポリマーに関する技術であるが、開始剤として過硫酸塩および重亜硫酸塩を用いる技術が提案されている(特許文献3参照)。開始剤として過硫酸塩および重亜硫酸塩を用いると、高濃度の単量体を含む重合反応液から、比較的分子量が低い重合体が合成されうる。
【0006】
ただし、単量体成分以外の成分は、製造される重合体中に含まれる不純物や亜硫酸ガスの原因となるため、開始剤の使用量を減少させることが望ましい。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−60785号公報
【特許文献2】
特開2002−3536号公報
【特許文献3】
特開平11−315115号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が目的とするところは、単量体として、(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体、または、(メタ)アクリル酸系単量体およびアリルエーテル系単量体を含み、開始剤として過硫酸塩および重亜硫酸塩を含む重合反応液を用いて、(メタ)アクリル酸系共重合体を製造する方法において、開始剤の使用量を減少させる手段を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、重合反応液中において、少なくとも(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体を共重合させることによる、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法であって、前記重合反応液は、開始剤として、1種以上の過硫酸塩および1種以上の重亜硫酸塩を含み、前記重合反応液は、重金属イオンを含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法である。
【0010】
また本発明は、重合反応液中において、少なくとも(メタ)アクリル酸系単量体およびアリルエーテル系単量体を共重合させることによる、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法であって、前記重合反応液は、開始剤として、1種以上の過硫酸塩および1種以上の重亜硫酸塩を含み、前記重合反応液は、重金属イオンを含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法である。
【0011】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法においては、重合反応液中に、重金属イオン、好ましくは鉄イオンが含まれる。重合反応液中に重金属イオンが含まれていると、開始剤効率が向上し、より少ない開始剤量で共重合体を合成しうる。
【0012】
単純に開始剤の使用量を減少させると、得られる共重合体の分子量が増加する傾向にある。本発明の製造方法を用いれば、開始剤の使用量を減少させても、同等の分子量の共重合体を製造しうる。
【0013】
使用する開始剤量が少ないと、製造コスト的にも有利である。また、使用する開始剤量が少ないと、(メタ)アクリル酸系共重合体中に含まれる開始剤由来の不純物量を低減させうる。これらの理由により、(メタ)アクリル酸系共重合体が適用される製品の競争力および品質が向上する。
【0014】
本発明の製造方法は、重金属イオンの添加といった比較的容易な手法によって、効果的に開始剤の使用量を低減させうる。このため、工業的に適用する際に発生する設備コストが比較的小さく、製造される製品の競争力が増大する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、重合反応液に重金属イオンを含ませることによって、開始剤の使用量を減少させても、低分子量の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造しうることを見出した。かかる知見に基づき、本発明は完成された。
【0016】
次に、本発明の製造方法の実施形態について、詳細に説明する。
【0017】
(メタ)アクリル酸系共重合体は、重合反応液において、2種以上の単量体を重合させることにより、合成される。本願において、(メタ)アクリル酸系共重合体とは、(メタ)アクリル酸系単量体、および、不飽和アルコール系単量体またはアリルエーテル系単量体との共重合によって形成される共重合体をいう。場合によっては、他の単量体も使用されうる。
【0018】
本願の(メタ)アクリル酸系共重合体を製造するにあたっては、少なくとも(メタ)アクリル酸系単量体が単量体として用いられる。「(メタ)アクリル酸系単量体」とは、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの塩を意味する。アクリル酸またはメタクリル酸の塩としては、アクリル酸またはメタクリル酸を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ成分で中和した塩;アクリル酸またはメタクリル酸をアンモニア、またはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により中和した塩が挙げられる。
【0019】
「不飽和アルコール系単量体」とは、分子中に炭素−炭素二重結合(C=C)を有し、分子中にアルコール構造(C−OH)を有し、かつ、(メタ)アクリル酸系単量体と共重合可能である化合物を意味する。不飽和アルコール系単量体に由来する繰り返し単位が共重合体中に含まれていると、界面活性剤との相溶性が向上しうる。
【0020】
不飽和アルコール系単量体の構造については、前記定義以外は、特に限定されない。好ましくは、不飽和アルコール系単量体は、下記式(1)で表される。
【0021】
【化3】
【0022】
式(1)において、R1、R2およびR4は、独立して水素原子またはメチル基を表す。ただし、R2がメチル基である場合には、R1およびR4は水素原子である。即ち、R1およびR2、または、R4とR2の双方がメチル基ではない。R3は−CH2−、−(CH2)2−、または−C(CH3)2−を表す。R1〜R4の合計炭素数は3である。
【0023】
Xは炭素数2〜18、好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜12のアルキレン基を表す。アルキレン基の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、スチレン基などが挙げられ、エチレン基やプロピレン基が好ましい。2種以上のXが用いられてもよい。例えば、式(1)において、「−X−O−」で表される繰り返し構造は、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドから形成される。2種以上のXが分子中に存在する場合、Xの結合順序は、特に制限されない。
【0024】
nは、アルキレンオキサイド単位の繰り返し数を表す。nは、1〜300、好ましくは1〜100、より好ましくは5〜50の整数である。nが小さすぎると、界面活性剤との相溶性が十分向上しない虞がある。nが大きすぎると、nの増加に伴った効果が発現せず、材料コストが徒に上昇する虞がある。
【0025】
式(1)で表される単量体の具体例としては、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)のアルキレンオキサイド付加物、3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)のアルキレンオキサイド付加物、2−メチル−3−ブテン−2−オールのアルキレンオキサイド付加物、アリルアルコールのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。不飽和アルコールのアルキレンオキサイド付加物を不飽和アルコール系単量体として用いると、効果的に界面活性剤との相溶性が向上しうる。
【0026】
不飽和アルコール系単量体は、合成された化合物であってもよいし、市販されている化合物であってもよい。また、2種以上の不飽和アルコール系単量体が用いられてもよい。
【0027】
「アリルエーテル系単量体」とは、分子中にアリルエーテル構造(C=C−C−O−C)を有し、かつ、(メタ)アクリル酸系単量体と共重合可能である化合物を意味する。アリルエーテル系単量体に由来する繰り返し単位が共重合体中に含まれていると、共重合体の耐ゲル性が向上しうる。
【0028】
アリルエーテル系単量体の構造については、前記定義以外は、特に限定されない。好ましくは、アリルエーテル系単量体は、下記式(2)で表される。
【0029】
【化4】
【0030】
式(2)において、R5は、水素原子またはメチル基を表す。
【0031】
YおよびZは、独立して水酸基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、またはスルホン酸基の塩を表す。スルホン酸基の塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン基の塩が挙げられる。金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩が挙げられる。有機アミン基の塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩などが挙げられる。
【0032】
式(2)で表される単量体の具体例としては、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸およびその塩、3−アリルオキシ−1−ヒドロキシ−2−プロパンスルホン酸およびその塩、3−メタアリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸およびその塩、3−メタアリルオキシ−1−ヒドロキシ−2−プロパンスルホン酸およびその塩等が挙げられる。ただし、アリルエーテル系単量体は、これらに限定されない。好ましくは、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸ナトリウムが用いられる。
【0033】
アリルエーテル系単量体は、合成された化合物であってもよいし、市販されている化合物であってもよい。また、2種以上のアリルエーテル系単量体が用いられてもよい。
【0034】
必要に応じて、(メタ)アクリル酸系単量体、不飽和アルコール系単量体、アリルエーテル系単量体以外の化合物が、単量体として用いられてもよい。(メタ)アクリル酸系単量体が、エチレン性不飽和単量体であることを考慮すると、好ましくは、他の単量体もエチレン性不飽和単量体である。なお、「エチレン性不飽和単量体」とは、エチレン(CH2=CH2)の水素原子が置換されてなる化合物をいう。エチレン性不飽和単量体の塩が用いられてもよい。
【0035】
エチレン性不飽和単量体としては、モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸、モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸、スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和化合物、水酸基を有する不飽和炭化水素などが挙げられる。モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸とは、エチレンの水素原子を置換する置換基が1つのカルボキシル基(−COOH)を有する脂肪族炭化水素を意味する。モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸とは、エチレンの水素原子を置換する置換基が2つのカルボキシル基を有する脂肪族炭化水素を意味する。ただし、モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸は無水化されていてもよく、無水化されている部位においては環状構造を形成していてもよい。スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和化合物とは、エチレンの水素原子を置換する置換基が1以上のスルホン酸基を有する化合物を意味する。水酸基を有する不飽和炭化水素とは、1以上のC=C結合および1以上の水酸基を有する炭化水素を意味する。
【0036】
モノエチレン性不飽和脂肪族モノカルボン酸には、クロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸が含まれる。モノエチレン性不飽和脂肪族ジカルボン酸には、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸が含まれる。スルホン酸基を有するモノエチレン性不飽和化合物には、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸が含まれる。
【0037】
エチレン性不飽和単量体の塩としては、上記例示した化合物を水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ成分で中和した塩;上記例示した化合物をアンモニア、またはモノエタノールアミンやトリエタノールアミンなどの有機アミン類により中和した塩が挙げられる。
【0038】
単量体として用いられる化合物は、上記例示した化合物に限定されるものではない。例えば、場合によっては、疎水性の化合物が単量体として用いられうる。しかしながら、このような疎水性の化合物を単量体として用いると、得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の耐ゲル性が悪化する恐れがある点に留意する必要がある。
【0039】
(メタ)アクリル酸系共重合体における、各単量体の構成比は、適用される用途に適した特性を発現しうる限りにおいて、特に限定されない。
【0040】
少なくとも(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体を共重合させる場合には、(メタ)アクリル酸系単量体の配合量は、単量体の総質量に対して、好ましくは30〜99質量%、より好ましくは40〜99質量%、さらに好ましくは50〜99質量%である。一方、不飽和アルコール系単量体の配合量は、単量体の総質量に対して、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%、さらに好ましくは15〜50質量%である。配合量がこれら範囲であると、キレート能、分散性、界面活性剤との相溶性に優れた共重合体が得られる。他の単量体が用いられる場合には、(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体の配合量が上記範囲を逸脱しない範囲で、他の単量体が添加されるとよい。
【0041】
少なくとも(メタ)アクリル酸系単量体およびアリルエーテル系単量体を共重合させる場合には、(メタ)アクリル酸系単量体の配合量は、単量体の総モル数に対して、好ましくは65〜99モル%、より好ましくは70〜97モル%、さらに好ましくは75〜95モル%である。一方、アリルエーテル系単量体の配合量は、単量体の総モル数に対して、好ましくは1〜35モル%、より好ましくは3〜30モル%、さらに好ましくは5〜25モル%である。配合量がこれらの範囲であると、キレート能、分散能、耐ゲル性に優れた共重合体が得られる。
【0042】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体は、上述の単量体を重合反応液中において、開始剤を用いて重合することによって合成される。
【0043】
重合反応液の溶媒は、好ましくは水性の溶媒であり、より好ましくは水である。溶媒として水を用いる場合には、使用される単量体は水溶性であるべきである。単量体の溶媒への溶解性を向上させるために、単量体の重合に悪影響を及ぼさない範囲で有機溶媒を適宜加えてもよい。加えられる有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒドなどのアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサンなどのエーテル類などが挙げられる。
【0044】
重合反応液中は、開始剤として、1種以上の過硫酸塩および1種以上の重亜硫酸塩を含む。過硫酸塩および重亜硫酸塩を開始剤系として用いて重合することにより、(メタ)アクリル酸系共重合体の主鎖の末端にはスルホン酸基が定量的に導入されうる。スルホン酸基が導入されることにより、(メタ)アクリル酸系共重合体は、良好な耐ゲル性を示しうる。
【0045】
過硫酸塩および重亜硫酸塩の添加比率は、質量比で過硫酸塩1に対して、重亜硫酸塩は好ましくは0.1〜10、より好ましくは0.5〜5、さらに好ましくは1〜3の範囲内であることが好ましい。過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が0.1未満であると、重亜硫酸塩による効果が十分ではなくなり、共重合体の主鎖の末端に定量的にスルホン酸基を導入することができなくなる恐れがある。また、過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が0.1未満であると、得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量が高くなる傾向にある。一方、過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が10を超えると、重亜硫酸塩による効果が添加比率に伴うほど得られない恐れがある。ただし、過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量が、この範囲に限定されるわけではない。具体的な過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量は、使用用途や使用環境に応じて決定されるべきである。例えば、(メタ)アクリル酸系共重合体が洗剤ビルダーとして用いられる場合には、重量平均分子量が高すぎると、性能が低下する恐れがある。したがって、重量平均分子量が必要以上に増大しないように留意して、配合量を決定すればよい。
【0046】
過硫酸塩および重亜硫酸塩の添加量は、使用される(メタ)アクリル酸系単量体1モルに対する過硫酸塩および重亜硫酸塩の通常の配合量は、好ましくは1〜30g、より好ましくは3〜25g、さらに好ましくは5〜20gである。この範囲内で過硫酸塩および重亜硫酸塩を添加すると、得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の主鎖の末端に定量的にスルホン酸基を導入しやすい。本発明においては、重金属イオンが重合反応液中に含まれるため、添加する過硫酸塩および重亜硫酸塩の量を減少させうる。
【0047】
過硫酸塩としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、および過硫酸アンモニウムが挙げられる。重亜硫酸塩としては、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウムが挙げられる。必要であれば、亜硫酸塩やピロ亜硫酸塩などを用いてもよい。
【0048】
得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の主鎖の末端に定量的にスルホン酸基を導入するためには、ある程度の量の過硫酸塩および重亜硫酸塩が配合される必要がある。しかしながら、過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量が多すぎると、これらの化合物由来の不純物の生成量も増大する。また、開始剤として配合される重亜硫酸塩が分解して発生する亜硫酸ガスは、重合反応時の作業員の安全性や周辺環境へ悪影響を及ぼす。したがって、過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量は少ないことが好ましい。本発明においては、重金属イオンを重合反応液中に配合することによって、過硫酸塩および重亜硫酸塩の配合量を低減することを可能にした。
【0049】
即ち、本発明においては、重合反応液は、重金属イオンを含む。重金属とは、比重が4g/cm3以上の金属を意味する。具体的な重金属としては、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどが挙げられる。2種以上の重金属が用いられてもよい。重合反応液は、これらのイオンを含む。好ましくは、重合反応液は、鉄イオンを含む。重金属イオンのイオン価については特に限定しない。例えば、重金属として鉄が用いられる場合には、重合反応中に溶解している鉄イオンは、Fe2+であっても、Fe3+であってよい。これらが組み合わされていても良い。
【0050】
重金属イオンは、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いて添加されうる。その際に用いられる重金属化合物は、重合反応液中に含有されることを所望する重金属イオンに応じて決定される。溶媒として水が用いられる場合には、水溶性の重金属塩が好ましい。水溶性の重金属塩としては、モール塩(Fe(NH4)2(SO4)2・6H2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マンガンなどが挙げられる。重金属イオンの添加方法としては、初期添加または逐次添加、好ましくは初期添加が用いられる。ただし、重金属イオンの添加方法がこれらに限定されるわけではない。なお、初期添加とは、重金属イオンの全量を重合反応液中に予め添加する方法をいい、逐次添加とは、重金属イオンを重合反応の進行と共に、徐々に添加していく方法をいう。
【0051】
重金属イオンの含有量は、特に限定されないが、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜20ppm、より好ましくは0.2〜10ppm、さらに好ましくは0.3〜7ppm、特に好ましくは0.4〜6ppm、最も好ましくは0.5〜5ppmである。本発明の効果を得るために加えられる重金属イオンはこの程度の量でよいため、重金属イオン由来の不純物は殆ど発生しない。
【0052】
重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了した時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合反応が進行し、アルカリ成分を用いて重合させた共重合体を中和し、その後、溶媒を除去して固体の共重合体を得る場合には、中和する前の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0053】
重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しない恐れがある。一方、重金属イオンの含有量が20ppmを超えると、色調が悪化する恐れがある。また、洗剤ビルダーやスケール防止剤として(メタ)アクリル酸系共重合体が用いられた場合には、汚れの増加やスケールの増加を招く恐れがある。
【0054】
重合方法については、特に限定されない。好ましい実施形態の一つは、重金属イオンが予め配合された水溶液中に、上記単量体、開始剤としての過硫酸塩および重亜硫酸塩を滴下する方法である。上記単量体を含む溶液、過硫酸塩を含む溶液、および重亜硫酸塩を含む溶液を滴下することによって、各成分は重合反応液中で反応する。各溶液の濃度については、特に制限はない。
【0055】
各成分の滴下時間は、通常は60分〜420分であり、好ましくは90分〜360分である。上記単量体は、一部または全量を反応系中に予め仕込まれてもよい。各成分によって、滴下時間が異なっていてもよい。
【0056】
滴下時間が60分以下であると、開始剤として添加される過硫酸塩および重亜硫酸塩によって生じる効果が減少し、定量的なスルホン酸導入ができない恐れがある。一方、滴下時間が420分を超える場合には、(メタ)アクリル酸系共重合体の生産性の点で問題がある。ただし、事情がある場合には、上記範囲を外れても構わない。
【0057】
各成分の滴下速度は特に限定されるものではない。例えば、滴下の開始から終了を通じて、滴下速度は一定であってもよく、必要に応じて、滴下速度を変化させてもよい。共重合体の製造効率を高めるためには、滴下終了後の重合反応液における固形成分の濃度、すなわち単量体の重合によって生じる固形分の濃度が40質量%以上になるように、各成分を滴下させることが好ましい。
【0058】
上記単量体の重合における重合温度は、好ましくは25〜99℃、より好ましくは50〜95℃、さらに好ましくは、80℃以上90℃未満である。重合温度が低すぎると、得られる共重合体の重量平均分子量が上昇する恐れ、および、不純物の生成量が増加する恐れがある。また、重合時間が長くなるため、共重合体の生産性が低下する。重合温度が高すぎると、重亜硫酸塩の分解により発生する亜硫酸ガスの量が増加する恐れがある。なお、重合温度とは、重合反応液の温度をいう。重合温度の測定方法や制御手段については、特に限定されず、一般に使用される装置を用いて測定すればよい。
【0059】
重合時の圧力は、特に限定されるものではなく、常圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下であってもよい。
【0060】
低分子量の重合体を得るためには、重合反応は酸性条件下で行われることが好ましい。具体的には、重合反応中の重合反応液の酸の中和度は、好ましくは40mol%未満であり、より好ましくは20mol%未満であり、さらに好ましくは10mol%未満である。中和度が高いと不純物が多量に生成する恐れがある。中和度の下限値は特に制限されないが、中和度が低すぎると、重亜硫酸塩の分解により発生する亜硫酸ガスの量が増加する恐れがある。これらのバランスを考えると、重合反応中の重合反応液の酸の中和度は5mol%程度に保つとよい。
【0061】
本発明において、重合反応中の重合反応液中の酸の中和度は、重合反応液中に含まれる有機酸および無機酸の双方の酸の平均の中和度を意味する。酸成分の具体例としては、カルボキシル基などの官能基を有する単量体、過硫酸塩や重亜硫酸塩などの開始剤由来の無機酸、重合反応液中において生成した酸化合物などが挙げられる。ただし、過硫酸塩や重亜硫酸塩などの開始剤由来の無機酸や酸化合物は、通常は、30mol%以上の中和度を有している。このような場合には、単量体中に含まれる酸を30mol%以上中和するために必要なアルカリ成分があれば、少なくとも重合反応液中の酸の中和度が30mol%を下回ることはない。中和度の測定方法については、一定の再現性を有する測定方法であれば、特に制限はない。例えば、実施例において記載する方法を用いることができる。また、重合反応液中の酸の中和度は、重合反応液中にアルカリ成分または酸性分を適宜加えることによって、制御されうる。酸性条件下で反応が進行している重合反応液中の酸の中和度を上昇させるためには、水酸化ナトリウムなどのアルカリ成分を添加するとよい。
【0062】
酸性条件下で重合を行う場合には、得られる(メタ)アクリル酸系重合体の中和度は、重合が終了した後に、アルカリ成分を適宜添加することによって制御される。アルカリ成分としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン類等が挙げられる。アルカリ成分は、1種類のみを用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
得られる(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量は、好ましくは500〜100,000であり、より好ましくは1,000〜50,000であり、さらに好ましくは1,500〜15,000である。重量平均分子量がこの範囲内であれば、(メタ)アクリル酸系共重合体の分散能、キレート能、および耐ゲル性といった各種性能が、特に優れる。
【0064】
本発明の製造方法によって製造される(メタ)アクリル酸系共重合体は、分散能、キレート能、耐ゲル性などの各種特性に優れる。その上、使用する開始剤が少ないため、不純物含有量が少なく、製造コストも低い。かような特徴を有する(メタ)アクリル酸系共重合体は、洗剤ビルダー、無機顔料の分散剤、スケール防止剤など各種用途において、非常に有用である。
【0065】
なお、本発明の製造方法を実施するにあたっては、特許文献1などの公知技術を適用してもよく、本発明の技術的範囲は、本明細書において記載する具体的実施形態に限定されない。また、本発明の製造方法によって製造された(メタ)アクリル酸系共重合体を各種用途に適用するにあたっては、公知技術を適宜参照すればよく、特に限定されるわけではない。新たに開発された手段を用いても良い。
【0066】
【実施例】
続いて、本発明の効果について、以下の実施例を参照して説明する。なお、固形分濃度および重量平均分子量は、以下の方法に従って測定された。
【0067】
<固形分濃度の測定方法>
(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体の共重合によって形成される共重合体を含む重合反応液における固形分濃度は、110℃の熱風乾燥機で2時間処理した後の不揮発分を、固形分として算出された。
【0068】
(メタ)アクリル酸系単量体およびアリルエーテル系単量体の共重合によって形成される共重合体を含む重合反応液における固形分濃度は、170℃の熱風乾燥機で1時間処理した後の不揮発分を、固形分として算出された。
【0069】
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
(メタ)アクリル酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定された。測定条件や測定装置などは、以下の通りである。
【0070】
・(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体の共重合によって形成される共重合体について
装置:日立社製L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:SHODEX社製 Asahipak GF310−HQ、GF710−HQ、GF−1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/分
検量線:総和化学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
・(メタ)アクリル酸系単量体およびアリルエーテル系単量体の共重合によって形成される共重合体について
装置:昭和電工株式会社製 SHODEX−GPCSYSTEM−21
検出器:RI
カラム:東ソー株式会社製 TSK−gel α−2500、 α−3500、guard column
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/分
検量線:総和化学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARD
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=7/3(体積比)
<実施例1>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、255gの純水および0.0262gのFe(NH4)2(SO4)2・6H2O(モール塩)を仕込んだ。重合反応完結時における重合反応液の全質量に対する、重金属イオンとしての鉄イオンの濃度を算出したところ、鉄イオンの濃度は3ppmであった。この水溶液を撹拌しながら、90℃まで昇温させた。
【0071】
次に、約90℃に保持された重合反応液中に、撹拌しながら、(1)(メタ)アクリル酸系単量体として、342.0gの80%アクリル酸水溶液(以下、「80%AA」と略す)、(2)不飽和アルコール系単量体として、131.5gの80%3―メチル−3−ブテン−1−オールのエチレンオキサイド10モル付加物(以下「80%IPN−10」と称す)、(3)中和度を制御する目的で、15.83gの48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、「48%NaOH」と略す)、(4)過硫酸塩として、106.7gの15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、「15%NaPS」と略す)、および、(5)重亜硫酸塩として、91.4gの35%重亜硫酸ナトリウム水溶液(以下、「35%SBS」と略す)を、別々の滴下ノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AA、80%IPN−10、48%NaOH、および35%SBSについては180分間、15%NaPSについては210分間とした。滴下は連続的に行われ、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。
【0072】
なお、系中に投入された全単量体に対する開始剤の使用量は、下記式に従って算出される「対モノマー投入量」を用いて、比較した。
【0073】
【数1】
【0074】
上記式からも明らかなように、開始剤の「対単量体投入量」とは、(メタ)アクリル酸系共重合体を重合するために、重合反応液中に投入された単量体1molあたり使用された開始剤量(g)を意味する。
【0075】
本実施例においては、過硫酸塩としての過硫酸ナトリウムについての対単量体投入量は4.0g/molであった。また、重亜硫酸塩としての重亜硫酸ナトリウムについての対単量体投入量は8.0g/molであった。滴下後の重合反応液中の酸の中和度は5mol%であった。
【0076】
滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。なお、前述の「重合反応完結時における重合反応液の全質量に対する、重金属イオンとしての鉄イオン(Fe)の濃度」は、この時点での重合反応液の全質量を基準として算出した。
【0077】
重合完結後、重合反応液を放冷し、300.8gの48%NaOHを、撹拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。中和後の重合反応液における固形分濃度は45質量%であった。得られた(メタ)アクリル酸系共重合体を含む重合反応液中の酸の最終中和度は100mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は5500であった。共重合体の合成条件、および、得られた共重合体の特性を、まとめて表1に示す。
【0078】
なお、重合反応液中の酸の中和度は、以下の手順に従って測定した。
【0079】
▲1▼ イオン交換樹脂でナトリウム塩を処理することによって、重合反応液中の酸の中和度を0モル%にする。
【0080】
▲2▼ ▲1▼で得た重合反応液の中和滴定を水酸化ナトリウムを用いて行い、滴定曲線を作成する。
【0081】
▲3▼ 重合反応液のpHと、▲2▼で得た滴定曲線の交点とから、重合反応液に含まれる水酸化ナトリウム量が決まる。中和滴定の開始点から終点、すなわち中和度0モル%から100モル%とするまでに要する水酸化ナトリウムの量に対する、重合反応液に含まれる水酸化ナトリウム量の比から、中和度(モル%)を算出する。
【0082】
<実施例2>
モール塩の使用量を0.0255gとし、35%SBSの使用量を57.1gにした以外は、実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体を重合させた。
【0083】
滴下後の重合反応液中の酸の中和度は5mol%であり、重合反応液中の酸の最終中和度は100mol%であった。中和後の重合反応液における固形分濃度は45質量%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は8400であった。共重合体の合成条件、および、得られた共重合体の特性を、まとめて表1に示す。
【0084】
<比較例1>
モール塩を添加しない以外は、実施例1と同様にして、(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体を重合させた。滴下後の重合反応液中の酸の中和度は5mol%であり、重合反応液中の酸の最終中和度は100mol%であった。中和後の重合反応液における固形分濃度は45質量%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は8200であった。共重合体の合成条件、および、得られた共重合体の特性を、まとめて表1に示す。
【0085】
<実施例3>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、165gの純水および0.0198gのモール塩を仕込んだ。重合反応完結時における重合反応液の全質量に対する、重金属イオンとしての鉄イオンの濃度を算出したところ、鉄イオンの濃度は3ppmであった。この水溶液を撹拌しながら、90℃まで昇温させた。
【0086】
次に、約90℃に保持された重合反応液中に、撹拌しながら、(1)(メタ)アクリル酸系単量体として、252.0gの80%AA、(2)不飽和アルコール系単量体として、131.2gの60%アリルアルコールのエチレンオキサイド25モル付加物(以下「60%PEA−25」と称す)、(3)中和度を制御する目的で、11.67gの48%NaOH、(4)過硫酸塩として、76.5gの15%NaPS、(5)重亜硫酸塩として、57.4gの35%SBS、および、(6)23.0gの純水を、別々の滴下ノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AA、60%PEA−25、48%NaOH、35%SBS、および純水については120分間、15%NaPSについては210分間とした。滴下は連続的に行われ、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。
【0087】
滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。重合完結後、重合反応液を放冷し、221.7gの48%NaOHを、撹拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。中和後の重合反応液における固形分濃度は43質量%であった。得られた(メタ)アクリル酸系共重合体を含む重合反応液中の酸の最終中和度は100mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は5100であった。共重合体の合成条件、および、得られた共重合体の特性を、まとめて表1に示す。
【0088】
<実施例4>
モール塩の使用量を0.0194gとし、35%SBSの使用量を41.0gにした以外は、実施例3と同様にして、(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体を重合させた。
【0089】
滴下後の重合反応液中の酸の中和度は5mol%であり、重合反応液中の酸の最終中和度は100mol%であった。中和後の重合反応液における固形分濃度は43質量%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は7700であった。共重合体の合成条件、および、得られた共重合体の特性を、まとめて表1に示す。
【0090】
<比較例2>
モール塩を添加しない以外は、実施例3と同様にして、(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体を重合させた。滴下後の重合反応液中の酸の中和度は5mol%であり、重合反応液中の酸の最終中和度は100mol%であった。中和後の重合反応液における固形分濃度は43質量%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は7900であった。共重合体の合成条件、および、得られた共重合体の特性を、まとめて表1に示す。
【0091】
<実施例5>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに、179.8gの純水および0.0219gのモール塩を仕込んだ。重合反応完結時における重合反応液の全質量に対する、重金属イオンとしての鉄イオンの濃度を算出したところ、鉄イオンの濃度は3ppmであった。この水溶液を撹拌しながら、沸点まで昇温させた。
【0092】
次に、約90℃に保持された重合反応液中に、撹拌しながら、(1)(メタ)アクリル酸系単量体として、214.2gの80%AA、(2)アリルエーテル系単量体として、286.1gの40%3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム水溶液(以下「40%HAPS」と称す)、(3)過硫酸塩として、67.7gの15%NaPS、および、(4)重亜硫酸塩として、57.4gの37%重亜硫酸ナトリウム水溶液(以下、「37%SBS」と略す)、および23.0gの純水を、別々の滴下ノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAおよび37%SBSについては120分間、40%HAPSについては90分間、15%NaPSについては140分間とした。滴下は連続的に行われ、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。
【0093】
滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を沸点で熟成して、重合を完結させた。重合完結後、重合反応液を放冷し、217.5gの48%NaOHを、撹拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。中和後の重合反応液における固形分濃度は43質量%であった。得られた(メタ)アクリル酸系共重合体を含む重合反応液中の酸の最終中和度は97mol%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は4800であった。共重合体の合成条件、および、得られた共重合体の特性を、まとめて表1に示す。
【0094】
<実施例6>
モール塩の使用量を0.0213gとし、37%SBSの使用量を47.3gにした以外は、実施例5と同様にして、(メタ)アクリル酸系単量体およびアリルエーテル系単量体を重合させた。
【0095】
滴下後の重合反応液中の酸の中和度は5mol%であり、重合反応液中の酸の最終中和度は97mol%であった。中和後の重合反応液における固形分濃度は45質量%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は7500であった。共重合体の合成条件、および、得られた共重合体の特性を、まとめて表1に示す。
【0096】
<比較例3>
モール塩を添加しない以外は、実施例5と同様にして、(メタ)アクリル酸系単量体およびアリルエーテル系単量体を重合させた。滴下後の重合反応液中の酸の中和度は5mol%であり、重合反応液中の酸の最終中和度は97mol%であった。中和後の重合反応液における固形分濃度は45質量%であった。また、得られた共重合体の重量平均分子量は7300であった。共重合体の合成条件、および、得られた共重合体の特性を、まとめて表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示されるように、重金属イオンを重合反応液に含ませることによって、開始剤の効率が向上する。例えば、実施例1と比較例1とを比較すれば、僅か3ppmの重金属イオンを重合反応液に加えることによって、得られる共重合体の分子量が大きく減少している。これは、重金属イオンの添加によって、開始剤の効率が上昇しているためと推測される。また、実施例2および比較例1を比較すれば、開始剤の使用量を減少させても、同等の分子量の重合体が得られることがわかる。
【0099】
【発明の効果】
本発明の(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法を用いれば、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造に用いられる過硫酸塩および重亜硫酸塩の量を低減させうる。
Claims (6)
- 重合反応液中において、少なくとも(メタ)アクリル酸系単量体および不飽和アルコール系単量体を共重合させることによる、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法であって、
前記重合反応液は、開始剤として、1種以上の過硫酸塩および1種以上の重亜硫酸塩を含み、
前記重合反応液は、重金属イオンを含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法。 - 重合反応液中において、少なくとも(メタ)アクリル酸系単量体およびアリルエーテル系単量体を共重合させることによる、(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法であって、
前記重合反応液は、開始剤として、1種以上の過硫酸塩および1種以上の重亜硫酸塩を含み、
前記重合反応液は、重金属イオンを含むことを特徴とする(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法。 - 前記(メタ)アクリル酸系単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、またはこれらの塩である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
- 前記重金属イオンは、鉄イオンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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