JP2004307284A - 炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配列したC/SiCを得ることが可能なC/SiC前駆体を、膨れや層状割れや変形を生じさせることなく製造するための方法を得る。
【解決手段】炭素繊維成形体を収容可能な寸法の形状保持容器に、炭素繊維成形体を収容する工程と、形状保持容器に収容された炭素繊維成形体に、炭素化可能な含浸剤を含浸する工程と、炭素繊維成形体に含浸剤を含浸して得られた含浸済み炭素繊維成形体を形状保持容器から取り出し、含浸済み炭素繊維成形体を加圧しながら炭化焼成する工程と、含浸済み炭素繊維成形体を炭化焼成して得られた炭化焼成体を加圧しながら黒鉛化焼成する工程とを行う。
【選択図】 図1
【解決手段】炭素繊維成形体を収容可能な寸法の形状保持容器に、炭素繊維成形体を収容する工程と、形状保持容器に収容された炭素繊維成形体に、炭素化可能な含浸剤を含浸する工程と、炭素繊維成形体に含浸剤を含浸して得られた含浸済み炭素繊維成形体を形状保持容器から取り出し、含浸済み炭素繊維成形体を加圧しながら炭化焼成する工程と、含浸済み炭素繊維成形体を炭化焼成して得られた炭化焼成体を加圧しながら黒鉛化焼成する工程とを行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は宇宙用赤外線望遠鏡の反射鏡等に使用される炭素繊維強化炭化珪素複合材料の前駆体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強度、耐熱性、耐酸性等に優れた材料として、炭素繊維強化炭化珪素複合材料(以下、C/SiCという)が知られている。
【0003】
従来のC/SiCの製造方法として、高強度グラファイト繊維及び合成樹脂からなるプリプレグの少なくとも2層を圧縮し、この圧縮によって得られた圧縮物を硬化する第1工程と、第1工程により得られた圧縮物を炭化する第2工程と、第2工程により得られた多孔性の圧縮物を炭素化可能な含浸剤で含浸し、しかる後含浸された圧縮物を炭化する第3工程と、第3工程により得られた炭化物をグラファイト化する第4工程と、第4工程により得られたグラファイト化された炭化物を粉砕する第5工程と、第5工程により得られた粉砕された粉末体の少なくとも一部を合成樹脂、ピッチ、合成樹脂及びピッチの混合物のグループから選ばれた炭素を含む結合剤と混合する第6工程と、第6工程により得られた混合物を成形し硬化する第7工程と、第7工程により得られた成形体を炭化する第8工程と、第8工程により得られた多孔体を液状シリコンで浸透し、同時にこの多孔体の炭素マトリクスを、この多孔体に存在するグラファイト短繊維を維持したままシリコンカーバイトに変換する第9工程とが順次行われる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−251065号公報(請求項5)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のC/SiCの製造方法では、グラファイト化された炭化物を粉砕するので、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したC/SiCを得ることが難しかった。このため、強度が低く、且つ主表面方向の一層の低熱膨張化ができないという問題点があった。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したC/SiCを得ることが可能な炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体(以下、C/SiC前駆体という)を、膨れや層状割れや変形を生じさせることなく製造するための方法を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法は、炭素繊維成形体を収容可能な寸法の形状保持容器に、炭素繊維成形体を収容する工程と、形状保持容器に収容された炭素繊維成形体に、炭素化可能な含浸剤を含浸する工程と、炭素繊維成形体に含浸剤を含浸して得られた含浸済み炭素繊維成形体を形状保持容器から取り出し、含浸済み炭素繊維成形体を加圧しながら炭化焼成する工程と、含浸済み炭素繊維成形体を炭化焼成して得られた炭化焼成体を加圧しながら黒鉛化焼成する工程とを備えたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法を示す断面工程図である。
【0009】
C/SiC前駆体を製造する場合、先ず、炭素繊維成形体1を準備する(図1(a))。炭素繊維成形体1は、ピッチ系炭素繊維やPAN系炭素繊維などの炭素繊維とバインダーとを溶媒中に分散して攪拌した後、ろ過し、続いて、ろ過して得られた固体成分を金型に入れ、加圧して繊維体積率を調整することにより得られる。この場合、加圧時に、加圧方向に垂直に向いていた炭素繊維は、加圧によって加圧方向に垂直な方向に倒れ、二次元的に無秩序に配列され、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置される。
【0010】
炭素繊維成形体1の繊維体積率は25〜50%の範囲が好ましい。25%未満では、C/SiCの強度が不足しかつC/SiCの低熱膨張効果が低減し、50%超では、C/SiC前駆体に金属Siが溶浸しにくくなる。また、炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は1〜1000の範囲が好ましい。この範囲であれば、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置する。1未満では、炭素繊維がすり潰された形態となり、C/SiCの強度が不足し、1000超では、炭素繊維を均一に分散することが難しく、C/SiCの特性にばらつきが生じる。
【0011】
その後、炭素繊維成形体1を収容可能な寸法の形状保持容器2に、炭素繊維成形体1を収容する(図1(b))。形状保持容器2は、炭素繊維成形体1の寸法に合わせた枠12と、その上下面に配置されたメッシュ状カバー13a,13bとから構成される。枠12やメッシュ状カバー13a,13bは、含浸剤を含浸する環境に耐えることができる材料のものを用いる。また、メッシュ状カバー13a,13bは、炭素繊維成形体1に含浸剤を含浸する際に、溶融した含浸剤が通過でき、炭素繊維の流出を防止でき、変形や目詰まりを起こさず、炭素繊維成形体1から放出されるガスの妨げとならないものを用いる。例えば、メッシュ状カバー13a,13bとして、目開きが10mm以下の工業用金属金網や、その工業用金属金網を2種以上を組み合わせたものや、その工業用金属金網と多数の孔が開いた板とを組み合わせたものを用いる。
【0012】
その後、形状保持容器2に収容された炭素繊維成形体1に、炭素化可能な含浸剤5を含浸する(図1(c))。含浸剤5としては、コールタールのピッチや、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を用いる。炭素繊維成形体への含浸剤5としてピッチを用いる場合、炭素繊維成形体1への含浸剤5の含浸は、含浸炉3内で溶融している含浸剤5中に、形状保持容器2に収容された炭素繊維成形体1を浸漬し、N2 ガスやArガスや真空などの非酸化雰囲気4中で、所定の温度で所定の時間保持することにより行われる。この場合、炭素繊維成形体1への含浸剤5の含浸が非酸化雰囲気4中で行われるため、炭素繊維の酸化が防止される。
【0013】
含浸する温度は150〜300℃の範囲が好ましい。150℃未満では、ピッチの粘性が高く、炭素繊維成形体1にピッチが含浸しにくく、300℃超では、ピッチが分解してピッチ中の油分が揮発し粘性が高くなり、炭素繊維成形体1にピッチが含浸しにくくなる。また、含浸する時間は1時間以上が好ましい。1時間以上であれば、炭素繊維成形体1に含浸するピッチの量が飽和値に達する。また、含浸剤5として熱硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂の粘性が変化しない温度で大気圧中で加圧する方法や、大気圧よりも低い圧力の真空中で含浸する。これらの圧力や真空度は、炭素繊維成形体の繊維体積率や大きさにあわせて任意の条件を設定すればよく、特に制限するものではない。
【0014】
その後、炭素繊維成形体1に含浸剤5を含浸して得られた含浸済み炭素繊維成形体6を形状保持容器2から取り出し、含浸済み炭素繊維成形体6を加圧しながら炭化焼成する(図1(d))。ピッチ含浸炭素繊維成形体6の炭化焼成は、形状保持容器2から取り出した含浸済み炭素繊維成形体6を、その上に重し7を載せて1×10−4MPa以上3.5×10−2MPa未満の範囲、好ましくは1.0×10−4〜2.6×10−2MPaの範囲の圧力が加わる状態で炭化焼成炉8内に配置し、N2 ガスやArガスや真空などの非酸化雰囲気4で、所定の温度で所定の時間加熱することにより行われる。この場合、含浸済み炭素繊維成形体6中の含浸剤5が分解し、炭化する。また、含浸済み炭素繊維成形体6中に、含浸剤5に比べて少量であるが含まれているバインダーも分解し、炭化する。
【0015】
炭化焼成温度は500〜1500℃の範囲が好ましい。500℃未満では、炭化が十分に進行せず、1500℃超では、特殊な炉が必要になる。
【0016】
その後、含浸済み炭素繊維成形体6を炭化焼成して得られた炭化焼成体9を加圧しながら黒鉛化焼成する(図1(e))。炭化焼成体9の黒鉛化焼成は、炭化焼成体9を、その上に重し7を載せて1×10−4MPa以上3.5×10−2MPa未満の範囲、好ましくは1.0×10−4〜2.5×10−2MPaの範囲の圧力が加わる状態で黒鉛化焼成炉10内に配置し、N2 ガスやArガスや真空などの非酸化雰囲気4中で、所定の温度で所定の時間加熱することにより行われる。この場合、炭化した含浸剤5やバインダーが結晶化し、黒鉛となる。
【0017】
黒鉛化温度は1700℃〜3000℃の範囲が好ましい。1700℃未満では、黒鉛化が十分に進行せず、3000℃超では、炉自体の製作が難しく、炉内寸法が小さく制限されるため工業的な生産にはむかず、生産性に欠ける。
【0018】
このようにして、膨れや層状割れや変形が無いC/SiC前駆体11を製造する(図1(f))。
【0019】
この実施の形態で製造されたC/SiC前駆体11は、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したものである。このため、この実施の形態で製造されたC/SiC前駆体11から、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したC/SiCを製造することができる。
この実施の形態で製造されたC/SiC前駆体11からC/SiCを製造する場合、先ず、所定の形状にC/SiC前駆体11を加工し、その上に金属Siを載せる。その後、非酸化雰囲気中で、1500℃〜2000℃で所定の時間加熱する。この場合、C/SiC用前駆体の間隙に金属Siが溶浸し、溶浸した金属Siと黒鉛とが反応して炭化珪素(SiC)となる。このようにして、C/SiCを製造する。
【0020】
なお、この実施の形態では、枠の上下面に配置されたメッシュ状カバーにより、形状保持容器のメッシュ状部分を構成する場合について説明したが、枠自体にメッシュ状部分を設ける場合であってもよい。
また、この実施の形態1では、炭化と黒鉛化とを異なる炉を用いて行う場合について説明したが、同じ炉を用いて連続的に行う場合であってもよい。
また、この実施の形態1では、重しにより加圧する場合について説明したが、ボルト締めやバネにより加圧する場合であってもよい。
【0021】
以下、この発明の実施例及び比較例を説明する。
実施例1.
先ず、直径10μm、長さ500μm(アスペクト比が50)のピッチ系炭素繊維とセルロース系バインダーとを溶媒中に分散して攪拌した後、ろ過し、続いて、ろ過して得られた固体成分を金型に入れ、加圧することにより、ピッチ系炭素繊維が二次元的に無秩序に配列され、かつ主表面に垂直な方向に層状に配列された、繊維体積率が35%である、直径100mm、厚さ20mmの円柱形状の炭素繊維成形体を形成した。
【0022】
その後、炭素繊維成形体を金属製枠に入れ、その上下面に工業用織金網を配置し、金属製枠と工業用織金網とを針金で固定した。
その後、含浸炉内で溶融している軟化点約80℃のコールタールピッチ中に、金属製枠と工業用織金網とから構成された形状保持容器に収容された炭素繊維成形体を浸漬し、N2 ガス雰囲気中で200℃で20時間保持した。
【0023】
その後、形状保持容器から取り出したピッチ含浸済み炭素繊維成形体を、その上に金属製の重しを載せて1.3×10−4MPaの圧力が加わる状態で炭化焼成炉内に配置し、Arガス雰囲気で、40℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温し、2時間保持した後、炉冷した。
その後、炭化焼成体を、その上にカーボン製の重しを載せて2.5×10−3MPaの圧力が加わる状態で黒鉛化焼成炉内に配置し、真空雰囲気で10℃/minの昇温速度で2000℃まで昇温し、1時間保持した後、炉冷した。
このようにして、C/SiC前駆体を製造した。
【0024】
実施例2.
炭化焼成時の加圧力は2.5×10−3MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0025】
実施例3.
炭化焼成時の加圧力は2.6×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0026】
実施例4.
炭化焼成時の加圧力は2.5×10−3MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は1.0×10−4MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0027】
実施例5.
炭化焼成時の加圧力は2.5×10−3MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は1.3×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0028】
実施例6.
炭化焼成時の加圧力は2.6×10−2MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は2.5×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0029】
実施例7.
炭素繊維成形体の繊維体積率は25%であり、炭化焼成時の加圧力は2.6×10−3MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は2.6×10−3MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0030】
実施例8.
炭素繊維成形体の繊維体積率は45%であり、炭化焼成時の加圧力は2.6×10−3MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は2.6×10−3MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0031】
実施例1〜3は炭化焼成時の加圧力を変化させた場合を示し、実施例4〜6は黒鉛化焼成時の加圧力を変化させた場合を示し、実施例7,8は炭素繊維成形体の繊維体積率を変化された場合を示す。
いずれの実施例の場合も、炭素繊維成形体が崩れず、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られた。また、膨れや層状割れや変形が見られず、外観及び断面状況が良好な炭化焼成体が得られた。また、膨れや層状割れや変形が見られず、外観及び断面状況が良好なC/SiC前駆体が得られた。
【0032】
比較例1.
形状保持容器を使用しない。それ以外は実施例1の場合と同様にして、ピッチの含浸までを行った。この場合、形状保持用容器を使用せずにピッチの含浸を行ったので、炭素繊維成形体が崩れてしまい、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られなかった。
【0033】
比較例2.
炭化焼成時に加圧しない。それ以外は実施例1の場合と同様にして、炭化焼成までを行った。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られたが、加圧せずに炭化焼成を行ったので、ピッチの熱分解により発生したガスの影響で、炭化焼成体に膨れや層状割れが見られた。
【0034】
比較例3.
炭化焼成時に加圧しない。黒鉛化焼成時の加圧力は3.0×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られたが、加圧せずに炭化焼成を行ったので、ピッチの熱分解により発生したガスの影響で、炭化焼成体に膨れや層状割れが見られた。膨れや層状割れが見られた炭化焼成体を3.0×10−2MPaの圧力を加えながら黒鉛化焼成を行っても、膨れや層状割れを無くすことができなかった。
【0035】
比較例4.
炭化焼成時の加圧力は3.5×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、炭化焼成までを行った。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られたが、3.5×10−2MPaの高い圧力を加えながら炭化焼成を行ったので、炭化焼成体に変形が見られた。
【0036】
比較例5.
炭化焼成時の加圧力は2.5×10−2MPaである。黒鉛化焼成時の加圧力は3.5×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体及び炭化焼成体が得られたが、3.5×10−2MPaの高い圧力を加えながら黒鉛化焼成を行ったので、C/SiC前駆体に変形が見られた。
【0037】
比較例6.
炭化焼成時の加圧力は1.0×10−4MPaである。黒鉛化焼成時に加圧しない。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体及び炭化焼成体が得られたが、加圧せずに黒鉛化焼成を行ったので、炭化焼成時に残留した内部ガスなどにより、C/SiC前駆体に膨れや層状割れが見られた。
【0038】
表1にこの発明の実施例及び比較例の結果を示す。
【表1】
【0039】
形状保持用容器を使用してピッチの含浸を行った実施例1〜8及び比較例2〜6の場合、炭素繊維成形体が崩れず、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られた。一方、形状保持用容器を使用せずにピッチの含浸を行った比較例1の場合、炭素繊維成形体が崩れてしまい、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られなかった。この結果から、形状保持用容器を使用してピッチの含浸を行う必要がある。
【0040】
1.0×10−4〜2.6×10−2MPaの範囲の圧力を加えて炭化焼成を行った実施例1〜8並びに比較例5及び6の場合、膨れや層状割れや変形が見られず、外観及び断面状況が良好な炭化焼成体が得られた。一方、加圧せずに炭化焼成を行った比較例2及び3の場合、炭化焼成体に膨れや層状割れが見られた。また、3.5×10−2MPaの高い圧力を加えて炭化焼成を行った比較例4の場合、炭化焼成体に変形が見られた。この結果から、1.0×10−4MPa以上3.5×10−2MPa未満の圧力を加えて炭化焼成を行うことが好ましい。より好ましくは、炭化焼成時の加圧力は1.0×10−4〜2.6×10−2MPaの範囲である。
【0041】
1.0×10−4〜2.5×10−2MPaの範囲の圧力を加えて炭化焼成を行った実施例1〜8の場合、膨れや変形が見られず、外観及び断面状況が良好なC/SiC前駆体が得られた。一方、加圧せずに黒鉛化焼成を行った比較例6の場合、C/SiC前駆体に膨れや層状割れが見られた。また、3.5×10−2MPaの高い圧力を加えて黒鉛化焼成を行った比較例5の場合、炭化焼成体に変形が見られた。この結果から、1.0×10−4MPa以上3.5×10−2MPa未満の圧力を加えて黒鉛化焼成を行うことが好ましい。より好ましくは、黒鉛化焼成時の加圧力は1.0×10−4〜2.5×10−2MPaの範囲である。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、炭素繊維成形体を収容可能な寸法の形状保持容器に、炭素繊維成形体を収容する工程と、形状保持容器に収容された炭素繊維成形体に、炭素化可能な含浸剤を含浸する工程と、炭素繊維成形体に含浸剤を含浸して得られた含浸済み炭素繊維成形体を形状保持容器から取り出し、含浸済み炭素繊維成形体を加圧しながら炭化焼成する工程と、含浸済み炭素繊維成形体を炭化焼成して得られた炭化焼成体を加圧しながら黒鉛化焼成する工程とを備えるように炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法を構成したので、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したC/SiCを得ることが可能なC/SiC前駆体を、膨れや層状割れや変形を生じさせることなく製造することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法を示す断面工程図である。
【符号の説明】
1 炭素繊維成形体、2 形状保持容器、3 含浸炉、4 非酸化雰囲気、5含浸剤、6 含浸済み炭素繊維成形体、7 重し、8 炭化焼成炉、9 炭化焼成体、10 黒鉛化焼成炉、12 枠、13a,13b メッシュ状カバー。
【発明の属する技術分野】
この発明は宇宙用赤外線望遠鏡の反射鏡等に使用される炭素繊維強化炭化珪素複合材料の前駆体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
強度、耐熱性、耐酸性等に優れた材料として、炭素繊維強化炭化珪素複合材料(以下、C/SiCという)が知られている。
【0003】
従来のC/SiCの製造方法として、高強度グラファイト繊維及び合成樹脂からなるプリプレグの少なくとも2層を圧縮し、この圧縮によって得られた圧縮物を硬化する第1工程と、第1工程により得られた圧縮物を炭化する第2工程と、第2工程により得られた多孔性の圧縮物を炭素化可能な含浸剤で含浸し、しかる後含浸された圧縮物を炭化する第3工程と、第3工程により得られた炭化物をグラファイト化する第4工程と、第4工程により得られたグラファイト化された炭化物を粉砕する第5工程と、第5工程により得られた粉砕された粉末体の少なくとも一部を合成樹脂、ピッチ、合成樹脂及びピッチの混合物のグループから選ばれた炭素を含む結合剤と混合する第6工程と、第6工程により得られた混合物を成形し硬化する第7工程と、第7工程により得られた成形体を炭化する第8工程と、第8工程により得られた多孔体を液状シリコンで浸透し、同時にこの多孔体の炭素マトリクスを、この多孔体に存在するグラファイト短繊維を維持したままシリコンカーバイトに変換する第9工程とが順次行われる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−251065号公報(請求項5)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来のC/SiCの製造方法では、グラファイト化された炭化物を粉砕するので、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したC/SiCを得ることが難しかった。このため、強度が低く、且つ主表面方向の一層の低熱膨張化ができないという問題点があった。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したC/SiCを得ることが可能な炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体(以下、C/SiC前駆体という)を、膨れや層状割れや変形を生じさせることなく製造するための方法を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法は、炭素繊維成形体を収容可能な寸法の形状保持容器に、炭素繊維成形体を収容する工程と、形状保持容器に収容された炭素繊維成形体に、炭素化可能な含浸剤を含浸する工程と、炭素繊維成形体に含浸剤を含浸して得られた含浸済み炭素繊維成形体を形状保持容器から取り出し、含浸済み炭素繊維成形体を加圧しながら炭化焼成する工程と、含浸済み炭素繊維成形体を炭化焼成して得られた炭化焼成体を加圧しながら黒鉛化焼成する工程とを備えたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態を説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法を示す断面工程図である。
【0009】
C/SiC前駆体を製造する場合、先ず、炭素繊維成形体1を準備する(図1(a))。炭素繊維成形体1は、ピッチ系炭素繊維やPAN系炭素繊維などの炭素繊維とバインダーとを溶媒中に分散して攪拌した後、ろ過し、続いて、ろ過して得られた固体成分を金型に入れ、加圧して繊維体積率を調整することにより得られる。この場合、加圧時に、加圧方向に垂直に向いていた炭素繊維は、加圧によって加圧方向に垂直な方向に倒れ、二次元的に無秩序に配列され、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置される。
【0010】
炭素繊維成形体1の繊維体積率は25〜50%の範囲が好ましい。25%未満では、C/SiCの強度が不足しかつC/SiCの低熱膨張効果が低減し、50%超では、C/SiC前駆体に金属Siが溶浸しにくくなる。また、炭素繊維のアスペクト比(繊維長/繊維直径)は1〜1000の範囲が好ましい。この範囲であれば、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置する。1未満では、炭素繊維がすり潰された形態となり、C/SiCの強度が不足し、1000超では、炭素繊維を均一に分散することが難しく、C/SiCの特性にばらつきが生じる。
【0011】
その後、炭素繊維成形体1を収容可能な寸法の形状保持容器2に、炭素繊維成形体1を収容する(図1(b))。形状保持容器2は、炭素繊維成形体1の寸法に合わせた枠12と、その上下面に配置されたメッシュ状カバー13a,13bとから構成される。枠12やメッシュ状カバー13a,13bは、含浸剤を含浸する環境に耐えることができる材料のものを用いる。また、メッシュ状カバー13a,13bは、炭素繊維成形体1に含浸剤を含浸する際に、溶融した含浸剤が通過でき、炭素繊維の流出を防止でき、変形や目詰まりを起こさず、炭素繊維成形体1から放出されるガスの妨げとならないものを用いる。例えば、メッシュ状カバー13a,13bとして、目開きが10mm以下の工業用金属金網や、その工業用金属金網を2種以上を組み合わせたものや、その工業用金属金網と多数の孔が開いた板とを組み合わせたものを用いる。
【0012】
その後、形状保持容器2に収容された炭素繊維成形体1に、炭素化可能な含浸剤5を含浸する(図1(c))。含浸剤5としては、コールタールのピッチや、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂を用いる。炭素繊維成形体への含浸剤5としてピッチを用いる場合、炭素繊維成形体1への含浸剤5の含浸は、含浸炉3内で溶融している含浸剤5中に、形状保持容器2に収容された炭素繊維成形体1を浸漬し、N2 ガスやArガスや真空などの非酸化雰囲気4中で、所定の温度で所定の時間保持することにより行われる。この場合、炭素繊維成形体1への含浸剤5の含浸が非酸化雰囲気4中で行われるため、炭素繊維の酸化が防止される。
【0013】
含浸する温度は150〜300℃の範囲が好ましい。150℃未満では、ピッチの粘性が高く、炭素繊維成形体1にピッチが含浸しにくく、300℃超では、ピッチが分解してピッチ中の油分が揮発し粘性が高くなり、炭素繊維成形体1にピッチが含浸しにくくなる。また、含浸する時間は1時間以上が好ましい。1時間以上であれば、炭素繊維成形体1に含浸するピッチの量が飽和値に達する。また、含浸剤5として熱硬化性樹脂を用いる場合、熱硬化性樹脂の粘性が変化しない温度で大気圧中で加圧する方法や、大気圧よりも低い圧力の真空中で含浸する。これらの圧力や真空度は、炭素繊維成形体の繊維体積率や大きさにあわせて任意の条件を設定すればよく、特に制限するものではない。
【0014】
その後、炭素繊維成形体1に含浸剤5を含浸して得られた含浸済み炭素繊維成形体6を形状保持容器2から取り出し、含浸済み炭素繊維成形体6を加圧しながら炭化焼成する(図1(d))。ピッチ含浸炭素繊維成形体6の炭化焼成は、形状保持容器2から取り出した含浸済み炭素繊維成形体6を、その上に重し7を載せて1×10−4MPa以上3.5×10−2MPa未満の範囲、好ましくは1.0×10−4〜2.6×10−2MPaの範囲の圧力が加わる状態で炭化焼成炉8内に配置し、N2 ガスやArガスや真空などの非酸化雰囲気4で、所定の温度で所定の時間加熱することにより行われる。この場合、含浸済み炭素繊維成形体6中の含浸剤5が分解し、炭化する。また、含浸済み炭素繊維成形体6中に、含浸剤5に比べて少量であるが含まれているバインダーも分解し、炭化する。
【0015】
炭化焼成温度は500〜1500℃の範囲が好ましい。500℃未満では、炭化が十分に進行せず、1500℃超では、特殊な炉が必要になる。
【0016】
その後、含浸済み炭素繊維成形体6を炭化焼成して得られた炭化焼成体9を加圧しながら黒鉛化焼成する(図1(e))。炭化焼成体9の黒鉛化焼成は、炭化焼成体9を、その上に重し7を載せて1×10−4MPa以上3.5×10−2MPa未満の範囲、好ましくは1.0×10−4〜2.5×10−2MPaの範囲の圧力が加わる状態で黒鉛化焼成炉10内に配置し、N2 ガスやArガスや真空などの非酸化雰囲気4中で、所定の温度で所定の時間加熱することにより行われる。この場合、炭化した含浸剤5やバインダーが結晶化し、黒鉛となる。
【0017】
黒鉛化温度は1700℃〜3000℃の範囲が好ましい。1700℃未満では、黒鉛化が十分に進行せず、3000℃超では、炉自体の製作が難しく、炉内寸法が小さく制限されるため工業的な生産にはむかず、生産性に欠ける。
【0018】
このようにして、膨れや層状割れや変形が無いC/SiC前駆体11を製造する(図1(f))。
【0019】
この実施の形態で製造されたC/SiC前駆体11は、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したものである。このため、この実施の形態で製造されたC/SiC前駆体11から、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したC/SiCを製造することができる。
この実施の形態で製造されたC/SiC前駆体11からC/SiCを製造する場合、先ず、所定の形状にC/SiC前駆体11を加工し、その上に金属Siを載せる。その後、非酸化雰囲気中で、1500℃〜2000℃で所定の時間加熱する。この場合、C/SiC用前駆体の間隙に金属Siが溶浸し、溶浸した金属Siと黒鉛とが反応して炭化珪素(SiC)となる。このようにして、C/SiCを製造する。
【0020】
なお、この実施の形態では、枠の上下面に配置されたメッシュ状カバーにより、形状保持容器のメッシュ状部分を構成する場合について説明したが、枠自体にメッシュ状部分を設ける場合であってもよい。
また、この実施の形態1では、炭化と黒鉛化とを異なる炉を用いて行う場合について説明したが、同じ炉を用いて連続的に行う場合であってもよい。
また、この実施の形態1では、重しにより加圧する場合について説明したが、ボルト締めやバネにより加圧する場合であってもよい。
【0021】
以下、この発明の実施例及び比較例を説明する。
実施例1.
先ず、直径10μm、長さ500μm(アスペクト比が50)のピッチ系炭素繊維とセルロース系バインダーとを溶媒中に分散して攪拌した後、ろ過し、続いて、ろ過して得られた固体成分を金型に入れ、加圧することにより、ピッチ系炭素繊維が二次元的に無秩序に配列され、かつ主表面に垂直な方向に層状に配列された、繊維体積率が35%である、直径100mm、厚さ20mmの円柱形状の炭素繊維成形体を形成した。
【0022】
その後、炭素繊維成形体を金属製枠に入れ、その上下面に工業用織金網を配置し、金属製枠と工業用織金網とを針金で固定した。
その後、含浸炉内で溶融している軟化点約80℃のコールタールピッチ中に、金属製枠と工業用織金網とから構成された形状保持容器に収容された炭素繊維成形体を浸漬し、N2 ガス雰囲気中で200℃で20時間保持した。
【0023】
その後、形状保持容器から取り出したピッチ含浸済み炭素繊維成形体を、その上に金属製の重しを載せて1.3×10−4MPaの圧力が加わる状態で炭化焼成炉内に配置し、Arガス雰囲気で、40℃/minの昇温速度で1000℃まで昇温し、2時間保持した後、炉冷した。
その後、炭化焼成体を、その上にカーボン製の重しを載せて2.5×10−3MPaの圧力が加わる状態で黒鉛化焼成炉内に配置し、真空雰囲気で10℃/minの昇温速度で2000℃まで昇温し、1時間保持した後、炉冷した。
このようにして、C/SiC前駆体を製造した。
【0024】
実施例2.
炭化焼成時の加圧力は2.5×10−3MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0025】
実施例3.
炭化焼成時の加圧力は2.6×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0026】
実施例4.
炭化焼成時の加圧力は2.5×10−3MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は1.0×10−4MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0027】
実施例5.
炭化焼成時の加圧力は2.5×10−3MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は1.3×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0028】
実施例6.
炭化焼成時の加圧力は2.6×10−2MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は2.5×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0029】
実施例7.
炭素繊維成形体の繊維体積率は25%であり、炭化焼成時の加圧力は2.6×10−3MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は2.6×10−3MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0030】
実施例8.
炭素繊維成形体の繊維体積率は45%であり、炭化焼成時の加圧力は2.6×10−3MPaであり、黒鉛化焼成時の加圧力は2.6×10−3MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。
【0031】
実施例1〜3は炭化焼成時の加圧力を変化させた場合を示し、実施例4〜6は黒鉛化焼成時の加圧力を変化させた場合を示し、実施例7,8は炭素繊維成形体の繊維体積率を変化された場合を示す。
いずれの実施例の場合も、炭素繊維成形体が崩れず、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られた。また、膨れや層状割れや変形が見られず、外観及び断面状況が良好な炭化焼成体が得られた。また、膨れや層状割れや変形が見られず、外観及び断面状況が良好なC/SiC前駆体が得られた。
【0032】
比較例1.
形状保持容器を使用しない。それ以外は実施例1の場合と同様にして、ピッチの含浸までを行った。この場合、形状保持用容器を使用せずにピッチの含浸を行ったので、炭素繊維成形体が崩れてしまい、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られなかった。
【0033】
比較例2.
炭化焼成時に加圧しない。それ以外は実施例1の場合と同様にして、炭化焼成までを行った。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られたが、加圧せずに炭化焼成を行ったので、ピッチの熱分解により発生したガスの影響で、炭化焼成体に膨れや層状割れが見られた。
【0034】
比較例3.
炭化焼成時に加圧しない。黒鉛化焼成時の加圧力は3.0×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られたが、加圧せずに炭化焼成を行ったので、ピッチの熱分解により発生したガスの影響で、炭化焼成体に膨れや層状割れが見られた。膨れや層状割れが見られた炭化焼成体を3.0×10−2MPaの圧力を加えながら黒鉛化焼成を行っても、膨れや層状割れを無くすことができなかった。
【0035】
比較例4.
炭化焼成時の加圧力は3.5×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、炭化焼成までを行った。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られたが、3.5×10−2MPaの高い圧力を加えながら炭化焼成を行ったので、炭化焼成体に変形が見られた。
【0036】
比較例5.
炭化焼成時の加圧力は2.5×10−2MPaである。黒鉛化焼成時の加圧力は3.5×10−2MPaである。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体及び炭化焼成体が得られたが、3.5×10−2MPaの高い圧力を加えながら黒鉛化焼成を行ったので、C/SiC前駆体に変形が見られた。
【0037】
比較例6.
炭化焼成時の加圧力は1.0×10−4MPaである。黒鉛化焼成時に加圧しない。それ以外は、実施例1の場合と同様にして、C/SiC前駆体を製造した。この場合、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体及び炭化焼成体が得られたが、加圧せずに黒鉛化焼成を行ったので、炭化焼成時に残留した内部ガスなどにより、C/SiC前駆体に膨れや層状割れが見られた。
【0038】
表1にこの発明の実施例及び比較例の結果を示す。
【表1】
【0039】
形状保持用容器を使用してピッチの含浸を行った実施例1〜8及び比較例2〜6の場合、炭素繊維成形体が崩れず、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られた。一方、形状保持用容器を使用せずにピッチの含浸を行った比較例1の場合、炭素繊維成形体が崩れてしまい、外観及び断面状況が良好なピッチ含浸済み炭素繊維成形体が得られなかった。この結果から、形状保持用容器を使用してピッチの含浸を行う必要がある。
【0040】
1.0×10−4〜2.6×10−2MPaの範囲の圧力を加えて炭化焼成を行った実施例1〜8並びに比較例5及び6の場合、膨れや層状割れや変形が見られず、外観及び断面状況が良好な炭化焼成体が得られた。一方、加圧せずに炭化焼成を行った比較例2及び3の場合、炭化焼成体に膨れや層状割れが見られた。また、3.5×10−2MPaの高い圧力を加えて炭化焼成を行った比較例4の場合、炭化焼成体に変形が見られた。この結果から、1.0×10−4MPa以上3.5×10−2MPa未満の圧力を加えて炭化焼成を行うことが好ましい。より好ましくは、炭化焼成時の加圧力は1.0×10−4〜2.6×10−2MPaの範囲である。
【0041】
1.0×10−4〜2.5×10−2MPaの範囲の圧力を加えて炭化焼成を行った実施例1〜8の場合、膨れや変形が見られず、外観及び断面状況が良好なC/SiC前駆体が得られた。一方、加圧せずに黒鉛化焼成を行った比較例6の場合、C/SiC前駆体に膨れや層状割れが見られた。また、3.5×10−2MPaの高い圧力を加えて黒鉛化焼成を行った比較例5の場合、炭化焼成体に変形が見られた。この結果から、1.0×10−4MPa以上3.5×10−2MPa未満の圧力を加えて黒鉛化焼成を行うことが好ましい。より好ましくは、黒鉛化焼成時の加圧力は1.0×10−4〜2.5×10−2MPaの範囲である。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、炭素繊維成形体を収容可能な寸法の形状保持容器に、炭素繊維成形体を収容する工程と、形状保持容器に収容された炭素繊維成形体に、炭素化可能な含浸剤を含浸する工程と、炭素繊維成形体に含浸剤を含浸して得られた含浸済み炭素繊維成形体を形状保持容器から取り出し、含浸済み炭素繊維成形体を加圧しながら炭化焼成する工程と、含浸済み炭素繊維成形体を炭化焼成して得られた炭化焼成体を加圧しながら黒鉛化焼成する工程とを備えるように炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法を構成したので、炭素繊維が主表面方向に二次元的に無秩序に配列し、かつ主表面に垂直な方向に層状に配置したC/SiCを得ることが可能なC/SiC前駆体を、膨れや層状割れや変形を生じさせることなく製造することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1による炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法を示す断面工程図である。
【符号の説明】
1 炭素繊維成形体、2 形状保持容器、3 含浸炉、4 非酸化雰囲気、5含浸剤、6 含浸済み炭素繊維成形体、7 重し、8 炭化焼成炉、9 炭化焼成体、10 黒鉛化焼成炉、12 枠、13a,13b メッシュ状カバー。
Claims (4)
- 炭素繊維成形体を準備する工程と、
上記炭素繊維成形体を収容可能な寸法の形状保持容器に、上記炭素繊維成形体を収容する工程と、
上記形状保持容器に収容された上記炭素繊維成形体に、炭素化可能な含浸剤を含浸する工程と、
上記炭素繊維成形体に上記含浸剤を含浸して得られた含浸済み炭素繊維成形体を上記形状保持容器から取り出し、上記含浸済み炭素繊維成形体を加圧しながら炭化焼成する工程と、
上記含浸済み炭素繊維成形体を炭化焼成して得られた炭化焼成体を加圧しながら黒鉛化焼成する工程と
を備えた炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法。 - 形状保持容器は、溶融した含浸剤が通過可能なメッシュ状部分を有することを特徴とする請求項1記載の炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法。
- 炭化焼成は、含浸済み炭素繊維成形体を1×10−4以上3.5×10−2MPa未満の範囲内の圧力で加圧しながら行うことを特徴とする請求項1記載の炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法。
- 黒鉛化焼成は、炭化焼成体を1×10−4以上3×10−2MPa未満の範囲内の圧力で加圧しながら行うことを特徴とする請求項1記載の炭素繊維強化炭化珪素複合材料用前駆体の製造方法。
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