JP2004305923A - 意匠性に優れた転写印刷塗装金属板 - Google Patents
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Abstract
【目的】コントラストが高くグラデーションのある印刷模様が付与された転写印刷塗装金属板を提供する。
【構成】エンボス加工された金属板を基材1とし、基材表面に設けた染着性の良好な塗膜2に昇華性染料の昇華転写で印刷模様が付与された塗装金属板である。エンボス頂面Tに高濃度染着層4c,エンボス底面Bに非印刷部4n又は低濃度染着層4dが形成され、エンボス縁部Rが非印刷部4nとなる。非印刷部4n又は低濃度染着層4dと高濃度染着層4cでコントラストが与えられ、グラデーションのある特異な印刷模様が発現する。
【選択図】 図1
【構成】エンボス加工された金属板を基材1とし、基材表面に設けた染着性の良好な塗膜2に昇華性染料の昇華転写で印刷模様が付与された塗装金属板である。エンボス頂面Tに高濃度染着層4c,エンボス底面Bに非印刷部4n又は低濃度染着層4dが形成され、エンボス縁部Rが非印刷部4nとなる。非印刷部4n又は低濃度染着層4dと高濃度染着層4cでコントラストが与えられ、グラデーションのある特異な印刷模様が発現する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、色調を微妙に変化させることにより高級感のある印刷模様が付与された転写印刷塗装金属板に関する。
【0002】
【従来技術及び問題点】
昇華性染料を用いた転写印刷で印刷模様を付与する方法は、繊維ではすでに実用化されており、樹脂成形体や金属板でも応用・展開が検討されている。たとえば、凹凸のあるボタン等の樹脂成形体を転写紙と重ね合わせ、減圧雰囲気で加熱することにより昇華性染料を樹脂成形体に転写する方法(特開昭49−41689号公報),転写紙のインク面と塗装鋼板の塗膜を対向させ、熱板プレスで加熱加圧することにより塗膜を昇華性染料で染着する方法(特開昭59−95143号公報)等がある。
【0003】
本発明者等も、昇華転写に適した塗装金属板を特許第3355171号等で紹介しており、染着性,耐光性,耐磨耗性に優れた塗膜構成を開発している(特開2001−219499号公報,特開2001−158178号公報,特開2002−59507号公報等)。
昇華性染料を用いた転写印刷は、従来のグラビア印刷,オフセット印刷等と異なり、製版工程を必要とせずに鮮明なフルカラーの印刷模様を塗装鋼板に付与できる。しかし、平坦な表面をもつ塗装金属板を印刷対象にしているので、得られる印刷模様が二次元的な意匠になる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、転写印刷で付与される印刷模様に更に変化をつけるべく検討した結果案出されたものであり、表面が平坦な塗装金属板に代えてエンボス加工した塗装金属板を基材に使用することにより、昇華転写時の染料の昇華挙動を積極的に活用し、グラデーションで変化をもたせた印刷模様のある転写印刷塗装金属板を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の転写印刷塗装金属板は、型押し,ロールエンボス等によりエンボス加工された金属板を基材に使用している。基材表面に設けた染着性の良好な塗膜に昇華性染料の昇華転写で印刷模様が付与されており、エンボス頂面に高濃度染着層,エンボス底面に非印刷部又は低濃度染着層が形成されており、低濃度染着層の濃度はエンボスの深さ及び広さに応じて変化している。
【0006】
塗膜の形成には、ビニル系樹脂,アクリレート系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリアミド系樹脂,尿素系樹脂,ポリカプロラクトン系樹脂,ポリアリレート系樹脂,ポリスルホン系樹脂,シリコーンポリエステル系樹脂,エポキシ系樹脂の1種又は2種以上の共重合体又は混合物をベースとする塗料が使用可能である。
【0007】
【作用】
エンボス加工された塗装金属板は、エンボス頂面T,エンボス底面B等で凹凸が付けられた表面状態になっており、基材・金属板1に設けられている塗膜2もエンボス頂面T,エンボス底面Bを倣った凹凸表面になっている(図1a)。転写印刷では台紙3aに所定パターンで昇華性染料3bを塗布した転写シート3が使用され、塗膜2に昇華性染料3bを対向させて塗装金属板に転写シート3を重ね合わせる(図1b)。
転写シート3に圧力Pを加えて塗装金属板に押し付けて加熱・加圧すると、転写シート3から昇華性染料3bが昇華して塗膜2に浸透し、塗膜2を染着する。昇華性染料3bによる塗膜2の染着は、塗膜2に転写シート3が密着しているエンボス頂面Tで促進され、塗膜2に転写シート3が軽く接触するエンボス底面Bでは昇華性染料3bの浸透量が減少する。
【0008】
本発明では、塗膜2と転写シート3との接触状態がエンボス模様に応じて異なることを昇華性染料3bの浸透制御に利用している。すなわち、昇華性染料3bが塗膜2に盛んに浸透するエンボス頂面Tでは、多量の昇華性染料3bが塗膜2に浸透するため、濃度の高い染料染着層4cが形成される。塗膜2に転写シート3が軽く接触するエンボス底面Bでは、転写シート3から塗膜2に浸透する昇華性染料3bが少なくなり、低濃度染着層4dが形成される。染着層4dの濃度は、塗膜2に対する転写シート3の接触状態、換言すればエンボス底面Bの深さや広さに応じて変化する。塗膜2に転写シート3が接触しないエンボス縁部R,塗膜2に転写シート3が接触しない程度の深さのあるエンボス底面Bでは、昇華性染料3bの浸透が生じないため塗膜2が非印刷部4nとして残る。
【0009】
エンボス頂面Tに高濃度染着層4c,エンボス底面Bに非印刷部又は低濃度染着層4dが形成され、エンボス縁部Rが非印刷部4nとなるため、転写印刷後の塗装鋼板を観察すると立体感のある印刷模様が認識される。しかも、低濃度染着層4dの濃度変化によってグラデーションが付けられるため、平坦表面をもつ塗装金属板に付けた印刷模様と明らかに異なる印象が与えられる。このようにエンボス加工した塗装金属板を対象とするとき、転写シート3に模様をつけなくてもエンボスの凹凸に対応する模様が塗装金属板に付与され、エンボスの種類が変わっても同じ転写シート3を使用できる。たとえば、ベタ印刷された転写シート3を使用した場合でも、単純なベタ模様でなく、意匠性のある砂目,ストライプ,水玉等の地模様が付与される。
【0010】
【実施の形態】
基材・金属板1には、めっき鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム板等が使用され、必要に応じてベースコート層,プライマ層を介して染着性の良い塗膜2が形成されている。染着性の良い塗膜2が表層にある限り、基材・金属板1と塗膜2との間にベースコート層を設けた塗装金属板又は更にプライマ層を設けた塗装金属板,基材・金属板1に塗膜2を直接設けた塗装金属板の何れでも良い。塗膜2はクリア,有色の何れでも良く、付与しようとする意匠に応じて使い分ける。
【0011】
塗膜2の形成には、転写シート3から移行してくる昇華性染料3bを受容して良く染まる樹脂である限り、ビニル系樹脂,アクリレート系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリアミド系樹脂,尿素系樹脂,ポリカプロラクトン系樹脂,ポリアリレート系樹脂,ポリスルホン系樹脂,シリコーンポリエステル系樹脂,エポキシ系樹脂の1種又は2種以上の共重合体又は混合物等、種々の樹脂塗料を使用できる。
基材・金属板1に塗布した塗料を焼き付けることにより塗膜2が形成されるが、昇華転写で印刷模様を発現させる上で、塗膜2の乾燥膜厚が5〜30μmの範囲に収まるように塗料の塗布量が調整される。薄すぎる塗膜2では、十分な量の昇華性染料3bを浸透させることができず、濃淡のある印刷模様が得られがたくなる。逆に、厚すぎる塗膜2では、加工性が低下し、エンボス加工や製品形状への加工時に亀裂,剥離が生じやすくなる。
【0012】
塗膜2が形成された塗装金属板は、型押し,ロールエンボス等でエンボス加工される。グラデーションをつける上では、エンボス底面Bの深さを塗膜2に転写シート3が軽く接触する程度に設定する。浅いエンボス底面Bにある塗膜2は、ほぼ全体が淡色に着色される。深くて狭いエンボス底面Bにある塗膜2は、転写シート3と接触しないので非印刷部4nとなる。深くて広いエンボス底面Bにある塗膜2は、一部が転写シート3と接触するので低濃度染着層4dが部分的に形成される。したがって、エンボスの深さ,広さの調節により、グラデーションの付け方を変化させることができる。
塗膜2の形成に先立って基材・金属板1をエンボス加工しても良いが、エンボス加工で形成された凹部が塗料で充填される虞がある。この場合、流動性の良好な塗料を使用し、エンボス加工で凹凸が付けられた表面形状をなぞった膜厚の塗膜2を形成することにより、凹部への塗料充填を抑制できる。
【0013】
昇華性染料で予め着色した転写シート3を基材・金属板1に接触させて加熱すると、昇華した染料3bが塗膜2に浸透して染着層4c,4d,4mが形成される。高濃度染着層4c,低濃度染着層4dで印刷模様に濃淡をつけ、低濃度染着層4dの濃度変化でグラデーションを醸し出すため、転写温度,転写時間を調整する。転写温度が高いほど濃淡の差が大きくなり、転写時間が長いほど多くの部分に転写シート3が接触してグラデーションが強調された印刷模様が得られる。
【0014】
転写シートは、グラビア印刷,オフセット印刷,スクリーン印刷等で作製できる。小ロット印刷用には、製版工程を必要としないコンピュータグラフィックスを用いた電子写真法,静電記録法,インクジェット法,感熱転写法等も採用可能である。
昇華性染料3bは、加熱により固相又は液相から昇華,揮発して塗膜2に転移する染料であり、キノフタロン誘導体,アントラキノン誘導体,アゾ系色素等の分散染料が好適に使用される。従来から昇華熱転写,昇華転写捺染等で用いられて染料も制限なく使用でき、たとえば以下の昇華性染料が例示される。
【0015】
〔イエロー系昇華性染料〕
Kayacet Yellow AG,Kayaset Yellow TDN(日本化薬株式会社製),RTY 52,Dianix Yellow 5R−E,Dianix Yellow F3G−E,Dianix Brilliant Yellow 5G−E(三菱化学株式会社製),ブラスト Yellow8040,DY108(有本化学株式会社製),Sumikaron Yellow EFG,Sumikaron Yellow E−4GL(住友化学株式会社製),FORONBrilliant Yellow SGGLPI(Sand社製)、PS イエローGG(三井東圧染料株式会社製)
【0016】
〔マゼンタ系昇華性染料〕
Kayaset Red 026,Kayaset Red 130,Kayaset Red B(日本化薬株式会社製),OilRed DR−99,Oil Red DK−99(有本化学株式会社製)、Diacelliton Pink B(三菱化学株式会社製),Sumikaron Red E−FBI(住友化学株式会社製),Latyl Red B(Du Pont社製),Sudan Red 7B(BASF社製),Resolin Red FB,Ceres Red 7B(Bayer社製)
【0017】
〔シアン系昇華性染料〕
Kayalon Blue FG,Kayalon Blue FR,Kayacet Blue 136,Kayacet Blue 906(日本化薬株式会社製),Oil Blue 63(有本化学株式会社製),HSB9,RTB 31(三菱化学株式会社製),DisperseBlue #1(住友化学株式会社製),MS Blue 50(三井東圧染料株式会社製),Ceres Blue GN(Bayer社製),Duranol Brilliant Blue 2G(ICI社製)
各色用の昇華性染料は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。黒色はイエロー、マゼンタ、シアン色用の昇華性染料を適宜混合することにより得られる。他の昇華性染料を使用する場合でも、60℃以上の昇華温度(液相からの揮発温度を含む)を示す染料が適当である。昇華性染料は、昇華温度が高いほど比較的分子量が大きく、耐光性,耐熱性に優れている。
【0018】
【実施例】
〔基材・金属板の用意〕
板厚0.5mmの亜鉛めっき鋼板を脱脂・表面調整処理した後、塗布型クロメート処理を施し、白色ポリエステル系樹脂塗料を塗布し、最高到達板温220℃で1分間焼き付けることにより乾燥膜厚:14μmの白色ベースコート層を形成した。次いで、メラミン配合ポリエステル樹脂塗料を塗布し、染着性の良い乾燥膜厚:18μmの塗膜2を形成した。
得られた塗装金属板をロールエンボスでエンボス加工した。エンボス加工後の鋼板表面を観察したところ、塗膜2は亀裂や破断なく凹凸模様に追従しており、最大深さ2mmのエンボス模様が鋼板表面に付けられていた。
【0019】
〔転写シート,転写印刷〕
シアンの昇華性染料から作製した昇華性染料インキを用い、インクジェットプリンタで出力用紙にシアンのベタ模様を出力した。シアンは、ほぼ同じ条件下で昇華する各色昇華性染料のなかで視認性が最も低いことから、シアンを基準にすることにより印刷模様の鮮明度を評価できる。
昇華性染料3bが塗膜2に対向するように転写シート3を塗装鋼板のエンボス加工面に重ね合わせ、温度160℃,圧力4×104Paで150秒間圧着した。圧着完了後、塗装鋼板から転写シート3を剥離した。
【0020】
〔印刷模様の評価〕
塗膜2に転写された昇華性染料は、エンボス凹凸に応じて濃度が異なる染着層4c,4dを形成していた。そこで、視野100mm×100mmにある染着層4c,4dのシアン反射濃度を反射濃度計(RD−1200:マクベス社製)で測定し、測定結果を当該視野のエンボス深さと比較した。表1の調査結果にみられるように、エンボス頂面Tでは反射濃度20の高濃度染着層4c,深さ2mmのエンボス底面Bでは反射濃度0.1の低濃度染着層4dが形成されており、エンボスが浅くなるほど色調が淡→濃に変化した。この色調変化によってグラデーションが与えられ、しかも高濃度染着層4c,低濃度染着層4dのコントラストがあるため、転写印刷で付与された印刷模様は極めて印象深い意匠であった。
【0021】
【0022】
【発明の効果】
以上に説明したように、エンボス加工された基材・金属板の塗膜に昇華転写で染着層を形成しているので、通常の転写印刷条件下でエンボス凹凸に応じて非印刷部又は低濃度染着層から高濃度染着層に変化した印刷模様が発現する。低濃度染着層,高濃度染着層でコントラスト,グラデーションが付けられ、エンボス模様に由来する立体感もあるため、特異な印象を与える意匠がつけられた転写印刷塗装金属板として、内装材,表装材,外装材等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンボス模様をもつ塗装金属板を転写印刷するとき、エンボス凹凸に応じて低濃度染着層,高濃度染着層が形成されることを説明する工程図
【符号の説明】
1:基材・金属板 2:塗膜 3:転写シート 3a:台紙 3b:昇華性染料 4c:高濃度染着層 4d:低濃度染着層 4n:非印刷部
T:エンボス頂面 B:エンボス底面 R:エンボス縁部 P:転写印刷時の圧力
【産業上の利用分野】
本発明は、色調を微妙に変化させることにより高級感のある印刷模様が付与された転写印刷塗装金属板に関する。
【0002】
【従来技術及び問題点】
昇華性染料を用いた転写印刷で印刷模様を付与する方法は、繊維ではすでに実用化されており、樹脂成形体や金属板でも応用・展開が検討されている。たとえば、凹凸のあるボタン等の樹脂成形体を転写紙と重ね合わせ、減圧雰囲気で加熱することにより昇華性染料を樹脂成形体に転写する方法(特開昭49−41689号公報),転写紙のインク面と塗装鋼板の塗膜を対向させ、熱板プレスで加熱加圧することにより塗膜を昇華性染料で染着する方法(特開昭59−95143号公報)等がある。
【0003】
本発明者等も、昇華転写に適した塗装金属板を特許第3355171号等で紹介しており、染着性,耐光性,耐磨耗性に優れた塗膜構成を開発している(特開2001−219499号公報,特開2001−158178号公報,特開2002−59507号公報等)。
昇華性染料を用いた転写印刷は、従来のグラビア印刷,オフセット印刷等と異なり、製版工程を必要とせずに鮮明なフルカラーの印刷模様を塗装鋼板に付与できる。しかし、平坦な表面をもつ塗装金属板を印刷対象にしているので、得られる印刷模様が二次元的な意匠になる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、転写印刷で付与される印刷模様に更に変化をつけるべく検討した結果案出されたものであり、表面が平坦な塗装金属板に代えてエンボス加工した塗装金属板を基材に使用することにより、昇華転写時の染料の昇華挙動を積極的に活用し、グラデーションで変化をもたせた印刷模様のある転写印刷塗装金属板を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の転写印刷塗装金属板は、型押し,ロールエンボス等によりエンボス加工された金属板を基材に使用している。基材表面に設けた染着性の良好な塗膜に昇華性染料の昇華転写で印刷模様が付与されており、エンボス頂面に高濃度染着層,エンボス底面に非印刷部又は低濃度染着層が形成されており、低濃度染着層の濃度はエンボスの深さ及び広さに応じて変化している。
【0006】
塗膜の形成には、ビニル系樹脂,アクリレート系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリアミド系樹脂,尿素系樹脂,ポリカプロラクトン系樹脂,ポリアリレート系樹脂,ポリスルホン系樹脂,シリコーンポリエステル系樹脂,エポキシ系樹脂の1種又は2種以上の共重合体又は混合物をベースとする塗料が使用可能である。
【0007】
【作用】
エンボス加工された塗装金属板は、エンボス頂面T,エンボス底面B等で凹凸が付けられた表面状態になっており、基材・金属板1に設けられている塗膜2もエンボス頂面T,エンボス底面Bを倣った凹凸表面になっている(図1a)。転写印刷では台紙3aに所定パターンで昇華性染料3bを塗布した転写シート3が使用され、塗膜2に昇華性染料3bを対向させて塗装金属板に転写シート3を重ね合わせる(図1b)。
転写シート3に圧力Pを加えて塗装金属板に押し付けて加熱・加圧すると、転写シート3から昇華性染料3bが昇華して塗膜2に浸透し、塗膜2を染着する。昇華性染料3bによる塗膜2の染着は、塗膜2に転写シート3が密着しているエンボス頂面Tで促進され、塗膜2に転写シート3が軽く接触するエンボス底面Bでは昇華性染料3bの浸透量が減少する。
【0008】
本発明では、塗膜2と転写シート3との接触状態がエンボス模様に応じて異なることを昇華性染料3bの浸透制御に利用している。すなわち、昇華性染料3bが塗膜2に盛んに浸透するエンボス頂面Tでは、多量の昇華性染料3bが塗膜2に浸透するため、濃度の高い染料染着層4cが形成される。塗膜2に転写シート3が軽く接触するエンボス底面Bでは、転写シート3から塗膜2に浸透する昇華性染料3bが少なくなり、低濃度染着層4dが形成される。染着層4dの濃度は、塗膜2に対する転写シート3の接触状態、換言すればエンボス底面Bの深さや広さに応じて変化する。塗膜2に転写シート3が接触しないエンボス縁部R,塗膜2に転写シート3が接触しない程度の深さのあるエンボス底面Bでは、昇華性染料3bの浸透が生じないため塗膜2が非印刷部4nとして残る。
【0009】
エンボス頂面Tに高濃度染着層4c,エンボス底面Bに非印刷部又は低濃度染着層4dが形成され、エンボス縁部Rが非印刷部4nとなるため、転写印刷後の塗装鋼板を観察すると立体感のある印刷模様が認識される。しかも、低濃度染着層4dの濃度変化によってグラデーションが付けられるため、平坦表面をもつ塗装金属板に付けた印刷模様と明らかに異なる印象が与えられる。このようにエンボス加工した塗装金属板を対象とするとき、転写シート3に模様をつけなくてもエンボスの凹凸に対応する模様が塗装金属板に付与され、エンボスの種類が変わっても同じ転写シート3を使用できる。たとえば、ベタ印刷された転写シート3を使用した場合でも、単純なベタ模様でなく、意匠性のある砂目,ストライプ,水玉等の地模様が付与される。
【0010】
【実施の形態】
基材・金属板1には、めっき鋼板,ステンレス鋼板,アルミニウム板等が使用され、必要に応じてベースコート層,プライマ層を介して染着性の良い塗膜2が形成されている。染着性の良い塗膜2が表層にある限り、基材・金属板1と塗膜2との間にベースコート層を設けた塗装金属板又は更にプライマ層を設けた塗装金属板,基材・金属板1に塗膜2を直接設けた塗装金属板の何れでも良い。塗膜2はクリア,有色の何れでも良く、付与しようとする意匠に応じて使い分ける。
【0011】
塗膜2の形成には、転写シート3から移行してくる昇華性染料3bを受容して良く染まる樹脂である限り、ビニル系樹脂,アクリレート系樹脂,ポリエステル系樹脂,ポリカーボネート系樹脂,ポリウレタン系樹脂,ポリアミド系樹脂,尿素系樹脂,ポリカプロラクトン系樹脂,ポリアリレート系樹脂,ポリスルホン系樹脂,シリコーンポリエステル系樹脂,エポキシ系樹脂の1種又は2種以上の共重合体又は混合物等、種々の樹脂塗料を使用できる。
基材・金属板1に塗布した塗料を焼き付けることにより塗膜2が形成されるが、昇華転写で印刷模様を発現させる上で、塗膜2の乾燥膜厚が5〜30μmの範囲に収まるように塗料の塗布量が調整される。薄すぎる塗膜2では、十分な量の昇華性染料3bを浸透させることができず、濃淡のある印刷模様が得られがたくなる。逆に、厚すぎる塗膜2では、加工性が低下し、エンボス加工や製品形状への加工時に亀裂,剥離が生じやすくなる。
【0012】
塗膜2が形成された塗装金属板は、型押し,ロールエンボス等でエンボス加工される。グラデーションをつける上では、エンボス底面Bの深さを塗膜2に転写シート3が軽く接触する程度に設定する。浅いエンボス底面Bにある塗膜2は、ほぼ全体が淡色に着色される。深くて狭いエンボス底面Bにある塗膜2は、転写シート3と接触しないので非印刷部4nとなる。深くて広いエンボス底面Bにある塗膜2は、一部が転写シート3と接触するので低濃度染着層4dが部分的に形成される。したがって、エンボスの深さ,広さの調節により、グラデーションの付け方を変化させることができる。
塗膜2の形成に先立って基材・金属板1をエンボス加工しても良いが、エンボス加工で形成された凹部が塗料で充填される虞がある。この場合、流動性の良好な塗料を使用し、エンボス加工で凹凸が付けられた表面形状をなぞった膜厚の塗膜2を形成することにより、凹部への塗料充填を抑制できる。
【0013】
昇華性染料で予め着色した転写シート3を基材・金属板1に接触させて加熱すると、昇華した染料3bが塗膜2に浸透して染着層4c,4d,4mが形成される。高濃度染着層4c,低濃度染着層4dで印刷模様に濃淡をつけ、低濃度染着層4dの濃度変化でグラデーションを醸し出すため、転写温度,転写時間を調整する。転写温度が高いほど濃淡の差が大きくなり、転写時間が長いほど多くの部分に転写シート3が接触してグラデーションが強調された印刷模様が得られる。
【0014】
転写シートは、グラビア印刷,オフセット印刷,スクリーン印刷等で作製できる。小ロット印刷用には、製版工程を必要としないコンピュータグラフィックスを用いた電子写真法,静電記録法,インクジェット法,感熱転写法等も採用可能である。
昇華性染料3bは、加熱により固相又は液相から昇華,揮発して塗膜2に転移する染料であり、キノフタロン誘導体,アントラキノン誘導体,アゾ系色素等の分散染料が好適に使用される。従来から昇華熱転写,昇華転写捺染等で用いられて染料も制限なく使用でき、たとえば以下の昇華性染料が例示される。
【0015】
〔イエロー系昇華性染料〕
Kayacet Yellow AG,Kayaset Yellow TDN(日本化薬株式会社製),RTY 52,Dianix Yellow 5R−E,Dianix Yellow F3G−E,Dianix Brilliant Yellow 5G−E(三菱化学株式会社製),ブラスト Yellow8040,DY108(有本化学株式会社製),Sumikaron Yellow EFG,Sumikaron Yellow E−4GL(住友化学株式会社製),FORONBrilliant Yellow SGGLPI(Sand社製)、PS イエローGG(三井東圧染料株式会社製)
【0016】
〔マゼンタ系昇華性染料〕
Kayaset Red 026,Kayaset Red 130,Kayaset Red B(日本化薬株式会社製),OilRed DR−99,Oil Red DK−99(有本化学株式会社製)、Diacelliton Pink B(三菱化学株式会社製),Sumikaron Red E−FBI(住友化学株式会社製),Latyl Red B(Du Pont社製),Sudan Red 7B(BASF社製),Resolin Red FB,Ceres Red 7B(Bayer社製)
【0017】
〔シアン系昇華性染料〕
Kayalon Blue FG,Kayalon Blue FR,Kayacet Blue 136,Kayacet Blue 906(日本化薬株式会社製),Oil Blue 63(有本化学株式会社製),HSB9,RTB 31(三菱化学株式会社製),DisperseBlue #1(住友化学株式会社製),MS Blue 50(三井東圧染料株式会社製),Ceres Blue GN(Bayer社製),Duranol Brilliant Blue 2G(ICI社製)
各色用の昇華性染料は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。黒色はイエロー、マゼンタ、シアン色用の昇華性染料を適宜混合することにより得られる。他の昇華性染料を使用する場合でも、60℃以上の昇華温度(液相からの揮発温度を含む)を示す染料が適当である。昇華性染料は、昇華温度が高いほど比較的分子量が大きく、耐光性,耐熱性に優れている。
【0018】
【実施例】
〔基材・金属板の用意〕
板厚0.5mmの亜鉛めっき鋼板を脱脂・表面調整処理した後、塗布型クロメート処理を施し、白色ポリエステル系樹脂塗料を塗布し、最高到達板温220℃で1分間焼き付けることにより乾燥膜厚:14μmの白色ベースコート層を形成した。次いで、メラミン配合ポリエステル樹脂塗料を塗布し、染着性の良い乾燥膜厚:18μmの塗膜2を形成した。
得られた塗装金属板をロールエンボスでエンボス加工した。エンボス加工後の鋼板表面を観察したところ、塗膜2は亀裂や破断なく凹凸模様に追従しており、最大深さ2mmのエンボス模様が鋼板表面に付けられていた。
【0019】
〔転写シート,転写印刷〕
シアンの昇華性染料から作製した昇華性染料インキを用い、インクジェットプリンタで出力用紙にシアンのベタ模様を出力した。シアンは、ほぼ同じ条件下で昇華する各色昇華性染料のなかで視認性が最も低いことから、シアンを基準にすることにより印刷模様の鮮明度を評価できる。
昇華性染料3bが塗膜2に対向するように転写シート3を塗装鋼板のエンボス加工面に重ね合わせ、温度160℃,圧力4×104Paで150秒間圧着した。圧着完了後、塗装鋼板から転写シート3を剥離した。
【0020】
〔印刷模様の評価〕
塗膜2に転写された昇華性染料は、エンボス凹凸に応じて濃度が異なる染着層4c,4dを形成していた。そこで、視野100mm×100mmにある染着層4c,4dのシアン反射濃度を反射濃度計(RD−1200:マクベス社製)で測定し、測定結果を当該視野のエンボス深さと比較した。表1の調査結果にみられるように、エンボス頂面Tでは反射濃度20の高濃度染着層4c,深さ2mmのエンボス底面Bでは反射濃度0.1の低濃度染着層4dが形成されており、エンボスが浅くなるほど色調が淡→濃に変化した。この色調変化によってグラデーションが与えられ、しかも高濃度染着層4c,低濃度染着層4dのコントラストがあるため、転写印刷で付与された印刷模様は極めて印象深い意匠であった。
【0021】
【0022】
【発明の効果】
以上に説明したように、エンボス加工された基材・金属板の塗膜に昇華転写で染着層を形成しているので、通常の転写印刷条件下でエンボス凹凸に応じて非印刷部又は低濃度染着層から高濃度染着層に変化した印刷模様が発現する。低濃度染着層,高濃度染着層でコントラスト,グラデーションが付けられ、エンボス模様に由来する立体感もあるため、特異な印象を与える意匠がつけられた転写印刷塗装金属板として、内装材,表装材,外装材等に使用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】エンボス模様をもつ塗装金属板を転写印刷するとき、エンボス凹凸に応じて低濃度染着層,高濃度染着層が形成されることを説明する工程図
【符号の説明】
1:基材・金属板 2:塗膜 3:転写シート 3a:台紙 3b:昇華性染料 4c:高濃度染着層 4d:低濃度染着層 4n:非印刷部
T:エンボス頂面 B:エンボス底面 R:エンボス縁部 P:転写印刷時の圧力
Claims (1)
- エンボス加工された金属板を基材とし、基材表面に設けた染着性の良好な塗膜に昇華性染料の昇華転写で印刷模様が付与されており、エンボス頂面に高濃度染着層,エンボス底面に非印刷部又は低濃度染着層が形成され、低濃度染着層の濃度がエンボスの深さ及び広さに応じて変化していることを特徴とする意匠性に優れた転写印刷塗装金属板。
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---|---|---|---|
JP2003103282A JP2004305923A (ja) | 2003-04-07 | 2003-04-07 | 意匠性に優れた転写印刷塗装金属板 |
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Publications (1)
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Family
ID=33466477
Family Applications (1)
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Country Status (1)
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014223935A (ja) * | 2013-05-17 | 2014-12-04 | アサヒビール株式会社 | 金属缶 |
JP2014227174A (ja) * | 2013-05-20 | 2014-12-08 | アサヒビール株式会社 | 金属缶 |
US20200009857A1 (en) * | 2018-07-03 | 2020-01-09 | Glen G. Bries | Digital full-color 3-dimensional stamped metal |
-
2003
- 2003-04-07 JP JP2003103282A patent/JP2004305923A/ja not_active Withdrawn
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