JP2004305401A - カーペット及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】バッキング繊維層の構成繊維がカーペット表面に現れにくく、しかも、タフト糸及びこれを構成する繊維が抜け落ちにくいカーペットを提供する。
【解決手段】このカーペットは、カーペット本体5と、カーペット本体5の裏面に接合されたバッキング繊維層とからなる。カーペット本体5は、複数本の繊維2よりなるタフト糸3が、一次基布1表面に植設されてなるものである。カーペット本体5の裏面におけるバックステッチ部6には、バインダーが付与されている。このバインダーによって、バックステッチ部6における複数本の繊維相互間が結合されている。また、バインダーは、カーペット本体5裏面において実質的な層を形成していない程度の量で、付与されている。バッキング繊維層の構成繊維は、一次基布1及びバックステッチ部6における繊維と絡み合っている。これによって、タフト糸3及びこれを構成する繊維の抜け落ちを防止している。
【選択図】 図2
【解決手段】このカーペットは、カーペット本体5と、カーペット本体5の裏面に接合されたバッキング繊維層とからなる。カーペット本体5は、複数本の繊維2よりなるタフト糸3が、一次基布1表面に植設されてなるものである。カーペット本体5の裏面におけるバックステッチ部6には、バインダーが付与されている。このバインダーによって、バックステッチ部6における複数本の繊維相互間が結合されている。また、バインダーは、カーペット本体5裏面において実質的な層を形成していない程度の量で、付与されている。バッキング繊維層の構成繊維は、一次基布1及びバックステッチ部6における繊維と絡み合っている。これによって、タフト糸3及びこれを構成する繊維の抜け落ちを防止している。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や家屋室内などに用いるカーペット及びその製造方法に関し、特に、成形して自動車用として用いるのに適したカーペット及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、不織布などの一次基布1表面に、複数本の繊維2よりなるタフト糸3を植設し、一次基布1裏面にポリエチレンシートなどの樹脂シート4を貼着してなるタフテッドカーペットが、自動車や家屋室内で用いるカーペットとして重宝されている。このようなカーペットは、一次基布1表面にタフト糸3を植設したカーペット本体5の裏面に、樹脂シート4を接着することによって、得られるものである。この樹脂シート4はバッキング層とも呼ばれるものであり、カーペット表面からのタフト糸3及びそれを構成している繊維2の抜け落ちを防止するためのものである。
【0003】
最近、バッキング層として樹脂シート4を用いるのではなく、繊維層を用いることが提案されている(特許文献1)。このバッキング繊維層は、カーペット本体5の裏面に繊維ウェブ層を積層し、繊維ウェブ層側から水流交絡処理を施し、繊維ウェブ層を構成する繊維とカーペット本体5を構成する繊維とを絡み合わせて形成されるものである。したがって、構成繊維相互間が絡み合ったバッキング繊維層によって、カーペット表面からタフト糸3及びこれを構成する繊維2が抜け落ちるのを防止しうるのである。
【0004】
特許文献1記載の方法によって得られるカーペットは、廃棄する際に環境に悪影響を及ぼす樹脂シート4を使用していないため、好ましいものである。しかるに、水流交絡処理によって、バッキング繊維層中の構成繊維をカーペット本体5の繊維と絡ませるものであるため、その絡み合いを強くしてタフト糸3及びこれを構成する繊維2の抜け落ちを防止しようとすると、カーペット本体5表面にバッキング繊維層中の繊維が現れてきて、カーペット表面の意匠性を損なうということがあった。また、絡み合いを弱くすると、カーペット表面の意匠性を損なうことはないが、タフト糸3及びこれを構成する繊維2が抜け落ちやすくなるということがあった。つまり、特許文献1記載の方法を利用する際には、水流交絡処理の程度やバッキング繊維層の繊維組成などに関し、微妙な調整を必要とすることが多かった。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−115372号公報(第2頁、請求項1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、一次基布1表面にタフト糸3を植設したときに生じる、一次基布1裏面のバックステッチ部6に特定の工夫を施すことによって、水流交絡処理の程度が強くても、バッキング繊維層中の構成繊維がカーペット本体5表面に現れにくくすると共に、タフト糸3及びこれを構成する繊維2の抜け落ちを防止しようというものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、複数本の繊維よりなるタフト糸が一次基布表面に植設されてなるカーペット本体と、該カーペット本体の裏面に接合されたバッキング繊維層とからなり、該タフト糸の該一次基布表面への植設によって生じる、該カーペット本体裏面におけるバックステッチ部は、バインダーの付与によって、複数本の繊維相互間が結合されており、且つ、該バインダーは該カーペット本体裏面において実質的な層を形成しておらず、該バッキング繊維層の構成繊維が、該一次基布及び該バックステッチ部における繊維と絡み合うことによって、該カーペット本体と該バッキング繊維層とが接合していることを特徴とするカーペットに関するものである。
【0008】
本発明で用いるカーペット本体5は、複数本の繊維2よりなるタフト糸3が、一次基布1表面に植設されてなるものである。一次基布1としては、従来公知の不織布又は編織物が用いられる。具体的には、ポリエステル長繊維やポリオレフィン長繊維が集積されてなるスパンボンド不織布を用いるのが好ましい。タフト糸3としても従来公知のものが用いられ、具体的には、ポリエステル繊維やポリアクリル繊維などの繊維2を数十本乃至数百本集束したものを用いるのが好ましい。カーペット本体5は、一次基布1にタフト糸3を、従来公知の方法で縫い付けてゆくことにより、得られる。タフト糸3は、その先端をカットしてカットパイルとしてもよいし、カットせずにループパイルとしてもよい。
【0009】
本発明では、このカーペット本体5の裏面に生じるタフト糸3のバックステッチ部6に、バインダーを付与する。そして、このバインダーによって、バックステッチ部6に存在する繊維相互間を結合するのである。一方、バックステッチ部6以外の区域7、つまり、一次基布1の裏面が現れている区域7には、バインダーを付与してもしなくてもよい。一般的には、カーペット本体5裏面全体にバインダーを付与することになるから、区域7にもバインダーが付与される。しかしながら、バインダーが、バックステッチ部6を被覆し、バックステッチ部6及び区域7に亙って、実質的な層を形成しないようにする必要がある。なぜなら、このような実質的な層を形成した場合には、この層を破壊しなければ、バッキング繊維層の構成繊維とカーペット本体5の繊維とが絡み合わなくなる。つまり、極めて高水圧の水流交絡処理を行わなければならず、合理的にカーペットを得にくくなるので、好ましくないのである。
【0010】
本発明において、カーペット本体5の裏面に生じるタフト糸3のバックステッチ部6に、バインダーを付与して得られるものは、カーペット基布と称している。すなわち、複数本の繊維よりなるタフト糸が一次基布表面に植設されてなるカーペット本体と、該カーペット本体裏面における該タフト糸のバックステッチ部に付与されたバインダーとよりなり、該バックステッチ部の複数本の繊維相互間は、該バインダーによって結合されており、且つ、該バインダーは該カーペット本体裏面において実質的な層を形成していないものを、カーペット基布として称している。そして、このカーペット基布を用いて、本発明に係るカーペットを得ることができる。カーペット基布の裏面におけるバインダーの量(固形分)は、20〜100g/m2であるのが好ましく、20〜40g/m2であるのがさらに好ましい。バインダーの量が20g/m2未満であると、バックステッチ部6の繊維相互間をバインダーによって十分に結合しにくくなる。また、バインダーの量が100g/m2を超えると、カーペット本体5の裏面において層を形成する恐れが生じる。
【0011】
本発明において用いるバインダーとしては、ポリブタジエンゴム,クロロプレンゴム,スチレンブタジエンゴム,アクリロニトリルブタジエンゴムなどの合成ゴムや、酢酸ビニル重合体,塩化ビニル重合体,アクリル系重合体,エチレン酢酸ビニル重合体,エポキシ系重合体,ウレタン系重合体,ポリエチレン,ポリエステル,石油系樹脂,パラフィンワックス,ゴムアスファルト系樹脂などの合成樹脂を用いることができる。また、このバインダーをカーペット本体5裏面のバックステッチ部6に付与するには、合成ゴムラテックスや合成樹脂エマルジョンの形態のバインダー液を調整し、カーペット本体5の裏面に塗布し、乾燥固着すればよい。特に、バインダー液を泡状にして、カーペット本体5の裏面に塗布すると、カーペット本体5裏面に存在するバインダーの量(固形分)を20〜100g/m2の範囲内に調整しやすくなるし、また、繊維が密集しているバックステッチ部6に、毛細管現象によってバインダーを集中しやすくなるので、好ましい。
【0012】
本発明に係るカーペットにおいて、カーペット本体5の裏面には、バッキング繊維層が接合されている。バッキング繊維層を接合するには、特許文献1記載の方法によればよい。すなわち、カーペット基布の裏面に、バッキング繊維ウェブ層を積層し、水流交絡処理を施すことによって、バッキング繊維ウェブ層中の構成繊維を、一次基布1及びバックステッチ部6の繊維と絡み合わせればよい。本発明においては、バックステッチ部6にはバインダーが付与されており、バックステッチ部6の繊維相互間がバインダーで結合されている。しかしながら、水流交絡処理によって、この結合が一部破壊され、バッキング繊維層中の構成繊維と、バックステッチ部6の繊維とが絡み合うのである。もちろん、一次基布1の区域7に、バインダーが付与され、一次基布1の繊維相互間が結合されている場合も、この結合は破壊され、バッキング繊維層中の構成繊維と、一次基布1の繊維とが絡み合う。また、一次基布1の区域7にバインダーが付与されていない場合も、バッキング繊維層中の構成繊維と一次基布1の繊維とが絡み合う。そして、以上のようなバッキング繊維層中の構成繊維が、一次基布1及びバックステッチ部6の繊維と絡み合うことによって、カーペット本体5とバッキング繊維層とが接合するのである。
【0013】
バッキング繊維層を構成する繊維としては、ポリエステル繊維,ポリオレフィン繊維,ポリアミド繊維,ポリアクリル繊維などの従来公知の繊維を用いることができる。特に、ポリエステル繊維のみを使用し、一次基布及びタフト糸の繊維もポリエステル繊維を用いれば、全てがポリエステルであり、リサイクルに供しうるので、好ましい。また、バッキング繊維層の目付も任意であり、具体的には、300〜500g/m2程度であるのが好ましい。バッキング繊維層が、第一バッキング繊維層と、この第一バッキング繊維層とは繊維組成の異なる第二バッキング繊維層とからなるときは、第一バッキング繊維層は50〜150g/m2程度であるのが好ましく、第二バッキング繊維層は200〜400g/m2程度であるのが好ましい。なお、本発明において、第一バッキング繊維層は、カーペット本体5と直接当接する繊維層のことを意味しており、第二バッキング繊維層は第一バッキング繊維層と直接当接し、カーペット本体5とは直接当接しない繊維層のことを意味している。
【0014】
バッキング繊維層を構成している繊維の繊度も任意であり、具体的には、1〜20デシテックスのものを採用するのが好ましい。また、バッキング繊維層が第一バッキング繊維層と第二バッキング繊維層とからなるときは、第一バッキング繊維層を構成している繊維の平均繊度を、第二バッキング繊維層を構成している繊維の平均繊度よりも細くするのが好ましい。この理由は、細繊度の繊維の方が、カーペット本体5の繊維と絡みやすいからである。すなわち、カーペット本体5と直接接合する第一バッキング繊維層の構成繊維を細くして、カーペット本体5との絡み合いを強くし、剥離しにくくするためである。繊度の細い繊維として、当初から繊度の細いものであっても、分割して繊度を細くしたものであってもよい。また、第二バッキング繊維層を構成している繊維は、吸音性や通気性を向上させるため、相対的に太繊度のものを用いるのが好ましい。さらに、吸音性や通気性の向上のため、異形断面繊維や極太繊維などを用いるのも好ましい。
【0015】
また、バッキング繊維層の構成繊維として、熱融着性繊維を含有させておくことも好ましいことである。バッキング繊維層が、第一バッキング繊維層と第二バッキング繊維層からなるときは、両方に含有させてもよいし、一方に含有させてもよい。熱融着性繊維を含有させておくと、カーペットを加熱加圧して所定の型に成形した場合、成形時に熱融着性繊維が他の繊維と融着し、保型性が向上するからである。熱融着性繊維としては、成形時の温度条件で融着するものであれば、どのようなものでもよいが、特に、鞘が低融点成分で芯が高融点成分よりなる芯鞘型複合繊維を用いるのが好ましい。
【0016】
さらに、バッキング繊維層の構成繊維として、熱収縮性の無い繊維を含有させておくことも好ましいことである。バッキング繊維層が、第一バッキング繊維層と第二バッキング繊維層からなるときは、両方に含有させてもよいし、一方に含有させてもよい。熱収縮性の無い繊維とは、カーペットを加熱加圧して成形する際における温度条件及び圧力条件下において、熱収縮率が0%以下の繊維のことであり、具体的には、熱収縮率がマイナスとなる熱伸長性繊維(一般に自己伸長性繊維と呼ばれる。)のことである。このような熱収縮性の無い繊維を含有させておくと、カーペットを加熱加圧して所定の型に成形した場合、その型にバッキング繊維層が追随しやすくなり、成形しやすくなるからである。
【0017】
本発明に係るカーペットは、カーペット基布の裏面に、バッキング繊維ウェブ層を積層し、特許文献1記載の方法で水流交絡処理をすることによって、製造することができる。すなわち、一次基布表面に、複数本の繊維よりなるタフト糸を植設してカーペット本体を得た後、該カーペット本体裏面にバインダー液を塗布して、該タフト糸の該一次基布表面への植設によって生じる、該カーペット本体裏面における該タフト糸のバックステッチ部にバインダーを付与し、該バックステッチ部の複数本の繊維相互間を該バインダーによって結合してカーペット基布を得た後、該カーペット基布裏面にバッキング繊維ウェブ層を積層し、該バッキング繊維ウェブ層側から水流交絡処理を施して、該バッキング繊維ウェブ層を構成している繊維を、該一次基布及び該バックステッチ部に絡み合わせて、該カーペット本体とバッキング繊維層とを接合することによって、本発明に係るカーペットを得ることができる。
【0018】
本発明に係るカーペットの製造方法を工程順に説明すれば、以下のとおりである。まず、従来公知の方法でカーペット本体5を得る。すなわち、一次基布1に、複数本の繊維2よりなるタフト糸3を植設してゆくことによって、一次基布1表面にタフト糸3が植設されたカーペット本体5が得られる。次に、カーペット本体5の裏面に、バインダー液を塗布し乾燥して、バインダーを固着させる。バインダー液としては、前述した従来公知の合成ゴムラテックスや合成樹脂エマルジョンを用いることができる。この際、バインダー液は泡状にして塗布するのが好ましい。これによって、バインダーはバックステッチ部6に付与され、バックステッチ部6の複数本の繊維2相互間は、バインダーによって結合される。以上が、カーペット基布を得るまでの工程である。
【0019】
次に、このカーペット基布の裏面に、バッキング繊維ウェブ層を積層する。バッキング繊維ウェブ層は、第一バッキング繊維ウェブ層と、この第一バッキング繊維ウェブ層とは繊維組成の異なる第二バッキング繊維ウェブ層とで構成されていてもよい。そして、バッキング繊維ウェブ層側から水流交絡処理を施して、バッキング繊維ウェブ層を構成している繊維を、一次基布1及びバックステッチ部6に絡み合わせる。バックステッチ部6にはバインダーが付与され、バックステッチ部6の繊維相互間がバインダーで結合されているが、水流交絡処理によって、この結合が一部破壊され、バッキング繊維層中の構成繊維と、バックステッチ部6の繊維とが絡み合う。水流交絡処理によって、このような結合の一部破壊及び各繊維間の絡み合いを達成するためには、使用する水流の圧力を10MPa以上とするのが好ましい。10MPa未満の圧力であると、バインダーによる繊維間の結合が破壊しにくくなると共に、各繊維間の絡み合いも不十分になる傾向が生じる。また、この水流交絡処理によって、バッキング繊維層中の構成繊維は、一次基布2の繊維とも絡み合う。以上の絡み合いによって、カーペット本体5とバッキング繊維層とが接合し、カーペットが得られるのである。
【0020】
以上のような本発明に係るカーペットは、バッキング繊維層の構成繊維がカーペット表面に現れにくく、意匠性に優れ、しかもタフト糸3の繊維2が抜け落ちにくいので、自動車や家屋室内のカーペットとして好適に用いられる。特に、本発明に係るカーペットを、自動車の床面の形状に沿うように、所定の形状に加熱成形してなる成形カーペットは、自動車用として用いるのに適している。
【0021】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、カーペット本体の裏面におけるバックステッチ部に、バインダーを付与して、バックステッチ部の繊維相互間を結合すれば、水流交絡処理の程度を強くして、バッキング繊維層中の構成繊維とカーペット本体との絡み合いを強固にしても、バッキング繊維層中の構成繊維がカーペット本体表面に現れにくいとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0022】
実施例1
一次基布であるポリエステルスパンボンド不織布(目付100g/m2)に、ポリエステル紡績糸よりなるタフト糸を植設して、カーペット本体を得た。タフト糸で形成されたパイルはカットパイルであり、カットパイルの重量は450g/m2であった。このカーペット本体の裏面に、スチレンブタジエンラテックス(バインダー固形分30質量%)を泡状にして塗布し乾燥して、固形分重量で30g/m2のバインダーが、カーペット本体の裏面に付与されたカーペット基布を得た。
【0023】
一方、バッキング繊維ウェブ層として、第一バッキング繊維ウェブ層と第二バッキング繊維ウェブ層とからなるものを準備した。第一バッキング繊維ウェブ層は、繊度1.45デシテックスで繊維長38mmのポリエステル繊維(ユニチカ株式会社製、品番「120」)90質量%と、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの熱融着性ポリエステル繊維(ユニチカファイバー株式会社製、登録商標「キャスベン」 品番「7080」、鞘成分が融点160℃の変性ポリエステルで芯成分がポリエステルよりなる芯鞘型複合繊維)10質量%とが均一に混綿されてなる、目付100g/m2のものである。第二バッキング繊維ウェブ層は、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの熱伸長性ポリエステル繊維(帝人ファイバー株式会社製、品番「TT00」)30質量%と、繊度4.4デシテックスで繊維長51mmの熱融着性ポリエステル繊維(ユニチカファイバー株式会社製、登録商標「キャスベン」 品番「7080」)50質量%と、繊度14デシテックスで繊維長51mmのポリエステルからなる中空コンジュゲート繊維(ユニチカファイバー株式会社製、「H38G」)20重量%が均一に混綿されてなる、目付300g/m2のものである。
【0024】
そして、カーペット基布の裏面に、第一バッキング繊維ウェブ層がカーペット基布の裏面と当接するようにして、バッキング繊維ウェブ層を積層した。つまり、カーペット基布/第一バッキング繊維ウェブ層/第二バッキング繊維ウェブ層の順で積層した。この後、第二バッキング繊維ウェブ層側から、水流の圧力を最大40MPaとして、水流交絡処理を施した。そして、サクションドラム式乾燥機で乾燥を行い、カーペットを得た。最後に、180℃に加熱しながら加圧し、自動車用の成形カーペットを得た。
【0025】
比較例1
バインダーの付与を行わない他は、実施例1と同一の方法で自動車用の成形カーペットを得た。
【0026】
比較例2
実施例1で用いたカーペット本体裏面に、バッキング層として、エチレン−酢酸ビニル樹脂をコーティングして、カーペットを得た。コーティングにより、カーペット本体裏面に貼着されたエチレン−酢酸ビニル樹脂シートの重量は、1.5kg/m2であった。そして、このカーペットを実施例1と同様に成形し、自動車用の成形カーペットを得た。
【0027】
実施例1及び比較例1、2に係る成形用カーペットについて、以下の試験を行った。
〔耐摩耗試験〕
各成形用カーペットから、直径130mmの円形試験片を3枚採取し、試験片の中心に6mmの穴をあけ、試験片の質量を0.001g単位まで測定し、この質量をXgとした。次に、試験片をテーパ式摩耗試験機に取り付け、500gの重りを取り付けた摩耗輪No.H38で150回摩耗した。この摩耗を行った後、摩耗によって生じた繊維の微塵などをブラッシング又は吸引によって完全に除去し、試験片を標準状態にした後、質量を0.001g単位まで測定し、この質量をYgとした。そして、試験片3枚について、各々(X−Y)の値を算出し、その平均値をカットパイル(タフト糸)の摩耗減少量とした。この結果を表1に示した。
【0028】
〔抜糸強度試験〕
JIS L 1023(繊維製敷物の性能に関する試験方法)に記載の方法に準じて、抜糸強度を測定した。すなわち、各成形用カーペットから100mm×100mmの試験片を5枚採取し、各々を試験片ホルダーに固定した。隣接する2本のカットパイル(タフト糸)の先端をカットパイル用チャックに挟み、引張試験機を使用して100mm/minの速度で引き抜き、カットパイルが抜けるときの最大荷重(N)を測定した。各試験片5枚の最大荷重(N)の平均値を表1に示した。
【0029】
〔引張強度試験〕
各成形用カーペットの縦方向(長手方向)が長さ方向と一致するようにして、長さ200mm×巾50mmの試験片を3枚採取した。また、各成形用カーペットの横方向(幅方向)が長さ方向と一致するようにして、長さ200mm×巾50mmの試験片を3枚採取した。そして、各試験片について140℃の雰囲気下で5分間熱処理した後、引張試験機を用い、つかみ間隔100mm、引張速度300mm/minで、各試験片の長さ方向の伸度が10%、20%、30%に達したときの引張強度(N)を測定した。縦方向が長さ方向となっている試験片3枚の引張強度(N)の平均値、及び横方向が長さ方向となっている試験片3枚の引張強度(N)の平均値を、表2及び表3に示した。なお、試験片の伸度は、以下の式で算出されるものである。
伸度(%)=〔(変位/つかみ間隔)×100〕
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
表1の結果から明らかなように、実施例1に係るカーペットは、比較例1に係るカーペットに比べて、摩耗減少量が少なくなっており、タフト糸を構成している複数本の繊維が抜けにくいことが分かる。また、実施例1に係るカーペットは、比較例1及び2に係るカーペットに比べて、抜糸強度が高くなっており、タフト糸そのものも抜けにくくなっていることが分かる。さらに、表2及び表3の結果から明らかなように、実施例1に係るカーペットは、比較例1及び2に係るカーペットに比べて、小さい力で伸ばすことができ、成形性が良好であると認められる。また、実施例1に係るカーペット表面の外観と、比較例1に係るカーペット表面の外観とを比べると、後者のカーペット表面に、一部、バッキング繊維層を構成する繊維の存在が認められた。
【0034】
【作用及び発明の効果】
本発明に係るカーペットは、カットパイルを形成しているタフト糸のバックステッチ部にバインダーが付与され、バックステッチ部の繊維相互間を結合していると共に、バッキング繊維層の構成繊維はバックステッチ部の繊維と絡み合っている。したがって、繊維相互間の結合と絡み合いの両者の相乗作用によって、タフト糸及びタフト糸を構成している繊維の抜けを防止しうるという効果を奏する。また、バックステッチ部にバインダーが付与されているため、バッキング繊維層の構成繊維は、バックステッチ部を通って、表面のカットパイル中に侵入しにくくなる。したがって、バッキング繊維層の構成繊維が、カーペット表面に現れにくくなり、カーペットの意匠性を損ないにくいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂シートをバッキング層とした従来のカーペットの模式的側面図である。
【図2】カーペット本体の模式的側面図である。
【符号の説明】
1 一次基布
2 タフト糸を構成する繊維
3 タフト糸
4 樹脂シート
5 カーペット本体
6 バックステッチ部
7 一次基布裏面におけるバックステッチ部以外の区域
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車や家屋室内などに用いるカーペット及びその製造方法に関し、特に、成形して自動車用として用いるのに適したカーペット及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、不織布などの一次基布1表面に、複数本の繊維2よりなるタフト糸3を植設し、一次基布1裏面にポリエチレンシートなどの樹脂シート4を貼着してなるタフテッドカーペットが、自動車や家屋室内で用いるカーペットとして重宝されている。このようなカーペットは、一次基布1表面にタフト糸3を植設したカーペット本体5の裏面に、樹脂シート4を接着することによって、得られるものである。この樹脂シート4はバッキング層とも呼ばれるものであり、カーペット表面からのタフト糸3及びそれを構成している繊維2の抜け落ちを防止するためのものである。
【0003】
最近、バッキング層として樹脂シート4を用いるのではなく、繊維層を用いることが提案されている(特許文献1)。このバッキング繊維層は、カーペット本体5の裏面に繊維ウェブ層を積層し、繊維ウェブ層側から水流交絡処理を施し、繊維ウェブ層を構成する繊維とカーペット本体5を構成する繊維とを絡み合わせて形成されるものである。したがって、構成繊維相互間が絡み合ったバッキング繊維層によって、カーペット表面からタフト糸3及びこれを構成する繊維2が抜け落ちるのを防止しうるのである。
【0004】
特許文献1記載の方法によって得られるカーペットは、廃棄する際に環境に悪影響を及ぼす樹脂シート4を使用していないため、好ましいものである。しかるに、水流交絡処理によって、バッキング繊維層中の構成繊維をカーペット本体5の繊維と絡ませるものであるため、その絡み合いを強くしてタフト糸3及びこれを構成する繊維2の抜け落ちを防止しようとすると、カーペット本体5表面にバッキング繊維層中の繊維が現れてきて、カーペット表面の意匠性を損なうということがあった。また、絡み合いを弱くすると、カーペット表面の意匠性を損なうことはないが、タフト糸3及びこれを構成する繊維2が抜け落ちやすくなるということがあった。つまり、特許文献1記載の方法を利用する際には、水流交絡処理の程度やバッキング繊維層の繊維組成などに関し、微妙な調整を必要とすることが多かった。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−115372号公報(第2頁、請求項1)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、一次基布1表面にタフト糸3を植設したときに生じる、一次基布1裏面のバックステッチ部6に特定の工夫を施すことによって、水流交絡処理の程度が強くても、バッキング繊維層中の構成繊維がカーペット本体5表面に現れにくくすると共に、タフト糸3及びこれを構成する繊維2の抜け落ちを防止しようというものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、複数本の繊維よりなるタフト糸が一次基布表面に植設されてなるカーペット本体と、該カーペット本体の裏面に接合されたバッキング繊維層とからなり、該タフト糸の該一次基布表面への植設によって生じる、該カーペット本体裏面におけるバックステッチ部は、バインダーの付与によって、複数本の繊維相互間が結合されており、且つ、該バインダーは該カーペット本体裏面において実質的な層を形成しておらず、該バッキング繊維層の構成繊維が、該一次基布及び該バックステッチ部における繊維と絡み合うことによって、該カーペット本体と該バッキング繊維層とが接合していることを特徴とするカーペットに関するものである。
【0008】
本発明で用いるカーペット本体5は、複数本の繊維2よりなるタフト糸3が、一次基布1表面に植設されてなるものである。一次基布1としては、従来公知の不織布又は編織物が用いられる。具体的には、ポリエステル長繊維やポリオレフィン長繊維が集積されてなるスパンボンド不織布を用いるのが好ましい。タフト糸3としても従来公知のものが用いられ、具体的には、ポリエステル繊維やポリアクリル繊維などの繊維2を数十本乃至数百本集束したものを用いるのが好ましい。カーペット本体5は、一次基布1にタフト糸3を、従来公知の方法で縫い付けてゆくことにより、得られる。タフト糸3は、その先端をカットしてカットパイルとしてもよいし、カットせずにループパイルとしてもよい。
【0009】
本発明では、このカーペット本体5の裏面に生じるタフト糸3のバックステッチ部6に、バインダーを付与する。そして、このバインダーによって、バックステッチ部6に存在する繊維相互間を結合するのである。一方、バックステッチ部6以外の区域7、つまり、一次基布1の裏面が現れている区域7には、バインダーを付与してもしなくてもよい。一般的には、カーペット本体5裏面全体にバインダーを付与することになるから、区域7にもバインダーが付与される。しかしながら、バインダーが、バックステッチ部6を被覆し、バックステッチ部6及び区域7に亙って、実質的な層を形成しないようにする必要がある。なぜなら、このような実質的な層を形成した場合には、この層を破壊しなければ、バッキング繊維層の構成繊維とカーペット本体5の繊維とが絡み合わなくなる。つまり、極めて高水圧の水流交絡処理を行わなければならず、合理的にカーペットを得にくくなるので、好ましくないのである。
【0010】
本発明において、カーペット本体5の裏面に生じるタフト糸3のバックステッチ部6に、バインダーを付与して得られるものは、カーペット基布と称している。すなわち、複数本の繊維よりなるタフト糸が一次基布表面に植設されてなるカーペット本体と、該カーペット本体裏面における該タフト糸のバックステッチ部に付与されたバインダーとよりなり、該バックステッチ部の複数本の繊維相互間は、該バインダーによって結合されており、且つ、該バインダーは該カーペット本体裏面において実質的な層を形成していないものを、カーペット基布として称している。そして、このカーペット基布を用いて、本発明に係るカーペットを得ることができる。カーペット基布の裏面におけるバインダーの量(固形分)は、20〜100g/m2であるのが好ましく、20〜40g/m2であるのがさらに好ましい。バインダーの量が20g/m2未満であると、バックステッチ部6の繊維相互間をバインダーによって十分に結合しにくくなる。また、バインダーの量が100g/m2を超えると、カーペット本体5の裏面において層を形成する恐れが生じる。
【0011】
本発明において用いるバインダーとしては、ポリブタジエンゴム,クロロプレンゴム,スチレンブタジエンゴム,アクリロニトリルブタジエンゴムなどの合成ゴムや、酢酸ビニル重合体,塩化ビニル重合体,アクリル系重合体,エチレン酢酸ビニル重合体,エポキシ系重合体,ウレタン系重合体,ポリエチレン,ポリエステル,石油系樹脂,パラフィンワックス,ゴムアスファルト系樹脂などの合成樹脂を用いることができる。また、このバインダーをカーペット本体5裏面のバックステッチ部6に付与するには、合成ゴムラテックスや合成樹脂エマルジョンの形態のバインダー液を調整し、カーペット本体5の裏面に塗布し、乾燥固着すればよい。特に、バインダー液を泡状にして、カーペット本体5の裏面に塗布すると、カーペット本体5裏面に存在するバインダーの量(固形分)を20〜100g/m2の範囲内に調整しやすくなるし、また、繊維が密集しているバックステッチ部6に、毛細管現象によってバインダーを集中しやすくなるので、好ましい。
【0012】
本発明に係るカーペットにおいて、カーペット本体5の裏面には、バッキング繊維層が接合されている。バッキング繊維層を接合するには、特許文献1記載の方法によればよい。すなわち、カーペット基布の裏面に、バッキング繊維ウェブ層を積層し、水流交絡処理を施すことによって、バッキング繊維ウェブ層中の構成繊維を、一次基布1及びバックステッチ部6の繊維と絡み合わせればよい。本発明においては、バックステッチ部6にはバインダーが付与されており、バックステッチ部6の繊維相互間がバインダーで結合されている。しかしながら、水流交絡処理によって、この結合が一部破壊され、バッキング繊維層中の構成繊維と、バックステッチ部6の繊維とが絡み合うのである。もちろん、一次基布1の区域7に、バインダーが付与され、一次基布1の繊維相互間が結合されている場合も、この結合は破壊され、バッキング繊維層中の構成繊維と、一次基布1の繊維とが絡み合う。また、一次基布1の区域7にバインダーが付与されていない場合も、バッキング繊維層中の構成繊維と一次基布1の繊維とが絡み合う。そして、以上のようなバッキング繊維層中の構成繊維が、一次基布1及びバックステッチ部6の繊維と絡み合うことによって、カーペット本体5とバッキング繊維層とが接合するのである。
【0013】
バッキング繊維層を構成する繊維としては、ポリエステル繊維,ポリオレフィン繊維,ポリアミド繊維,ポリアクリル繊維などの従来公知の繊維を用いることができる。特に、ポリエステル繊維のみを使用し、一次基布及びタフト糸の繊維もポリエステル繊維を用いれば、全てがポリエステルであり、リサイクルに供しうるので、好ましい。また、バッキング繊維層の目付も任意であり、具体的には、300〜500g/m2程度であるのが好ましい。バッキング繊維層が、第一バッキング繊維層と、この第一バッキング繊維層とは繊維組成の異なる第二バッキング繊維層とからなるときは、第一バッキング繊維層は50〜150g/m2程度であるのが好ましく、第二バッキング繊維層は200〜400g/m2程度であるのが好ましい。なお、本発明において、第一バッキング繊維層は、カーペット本体5と直接当接する繊維層のことを意味しており、第二バッキング繊維層は第一バッキング繊維層と直接当接し、カーペット本体5とは直接当接しない繊維層のことを意味している。
【0014】
バッキング繊維層を構成している繊維の繊度も任意であり、具体的には、1〜20デシテックスのものを採用するのが好ましい。また、バッキング繊維層が第一バッキング繊維層と第二バッキング繊維層とからなるときは、第一バッキング繊維層を構成している繊維の平均繊度を、第二バッキング繊維層を構成している繊維の平均繊度よりも細くするのが好ましい。この理由は、細繊度の繊維の方が、カーペット本体5の繊維と絡みやすいからである。すなわち、カーペット本体5と直接接合する第一バッキング繊維層の構成繊維を細くして、カーペット本体5との絡み合いを強くし、剥離しにくくするためである。繊度の細い繊維として、当初から繊度の細いものであっても、分割して繊度を細くしたものであってもよい。また、第二バッキング繊維層を構成している繊維は、吸音性や通気性を向上させるため、相対的に太繊度のものを用いるのが好ましい。さらに、吸音性や通気性の向上のため、異形断面繊維や極太繊維などを用いるのも好ましい。
【0015】
また、バッキング繊維層の構成繊維として、熱融着性繊維を含有させておくことも好ましいことである。バッキング繊維層が、第一バッキング繊維層と第二バッキング繊維層からなるときは、両方に含有させてもよいし、一方に含有させてもよい。熱融着性繊維を含有させておくと、カーペットを加熱加圧して所定の型に成形した場合、成形時に熱融着性繊維が他の繊維と融着し、保型性が向上するからである。熱融着性繊維としては、成形時の温度条件で融着するものであれば、どのようなものでもよいが、特に、鞘が低融点成分で芯が高融点成分よりなる芯鞘型複合繊維を用いるのが好ましい。
【0016】
さらに、バッキング繊維層の構成繊維として、熱収縮性の無い繊維を含有させておくことも好ましいことである。バッキング繊維層が、第一バッキング繊維層と第二バッキング繊維層からなるときは、両方に含有させてもよいし、一方に含有させてもよい。熱収縮性の無い繊維とは、カーペットを加熱加圧して成形する際における温度条件及び圧力条件下において、熱収縮率が0%以下の繊維のことであり、具体的には、熱収縮率がマイナスとなる熱伸長性繊維(一般に自己伸長性繊維と呼ばれる。)のことである。このような熱収縮性の無い繊維を含有させておくと、カーペットを加熱加圧して所定の型に成形した場合、その型にバッキング繊維層が追随しやすくなり、成形しやすくなるからである。
【0017】
本発明に係るカーペットは、カーペット基布の裏面に、バッキング繊維ウェブ層を積層し、特許文献1記載の方法で水流交絡処理をすることによって、製造することができる。すなわち、一次基布表面に、複数本の繊維よりなるタフト糸を植設してカーペット本体を得た後、該カーペット本体裏面にバインダー液を塗布して、該タフト糸の該一次基布表面への植設によって生じる、該カーペット本体裏面における該タフト糸のバックステッチ部にバインダーを付与し、該バックステッチ部の複数本の繊維相互間を該バインダーによって結合してカーペット基布を得た後、該カーペット基布裏面にバッキング繊維ウェブ層を積層し、該バッキング繊維ウェブ層側から水流交絡処理を施して、該バッキング繊維ウェブ層を構成している繊維を、該一次基布及び該バックステッチ部に絡み合わせて、該カーペット本体とバッキング繊維層とを接合することによって、本発明に係るカーペットを得ることができる。
【0018】
本発明に係るカーペットの製造方法を工程順に説明すれば、以下のとおりである。まず、従来公知の方法でカーペット本体5を得る。すなわち、一次基布1に、複数本の繊維2よりなるタフト糸3を植設してゆくことによって、一次基布1表面にタフト糸3が植設されたカーペット本体5が得られる。次に、カーペット本体5の裏面に、バインダー液を塗布し乾燥して、バインダーを固着させる。バインダー液としては、前述した従来公知の合成ゴムラテックスや合成樹脂エマルジョンを用いることができる。この際、バインダー液は泡状にして塗布するのが好ましい。これによって、バインダーはバックステッチ部6に付与され、バックステッチ部6の複数本の繊維2相互間は、バインダーによって結合される。以上が、カーペット基布を得るまでの工程である。
【0019】
次に、このカーペット基布の裏面に、バッキング繊維ウェブ層を積層する。バッキング繊維ウェブ層は、第一バッキング繊維ウェブ層と、この第一バッキング繊維ウェブ層とは繊維組成の異なる第二バッキング繊維ウェブ層とで構成されていてもよい。そして、バッキング繊維ウェブ層側から水流交絡処理を施して、バッキング繊維ウェブ層を構成している繊維を、一次基布1及びバックステッチ部6に絡み合わせる。バックステッチ部6にはバインダーが付与され、バックステッチ部6の繊維相互間がバインダーで結合されているが、水流交絡処理によって、この結合が一部破壊され、バッキング繊維層中の構成繊維と、バックステッチ部6の繊維とが絡み合う。水流交絡処理によって、このような結合の一部破壊及び各繊維間の絡み合いを達成するためには、使用する水流の圧力を10MPa以上とするのが好ましい。10MPa未満の圧力であると、バインダーによる繊維間の結合が破壊しにくくなると共に、各繊維間の絡み合いも不十分になる傾向が生じる。また、この水流交絡処理によって、バッキング繊維層中の構成繊維は、一次基布2の繊維とも絡み合う。以上の絡み合いによって、カーペット本体5とバッキング繊維層とが接合し、カーペットが得られるのである。
【0020】
以上のような本発明に係るカーペットは、バッキング繊維層の構成繊維がカーペット表面に現れにくく、意匠性に優れ、しかもタフト糸3の繊維2が抜け落ちにくいので、自動車や家屋室内のカーペットとして好適に用いられる。特に、本発明に係るカーペットを、自動車の床面の形状に沿うように、所定の形状に加熱成形してなる成形カーペットは、自動車用として用いるのに適している。
【0021】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、カーペット本体の裏面におけるバックステッチ部に、バインダーを付与して、バックステッチ部の繊維相互間を結合すれば、水流交絡処理の程度を強くして、バッキング繊維層中の構成繊維とカーペット本体との絡み合いを強固にしても、バッキング繊維層中の構成繊維がカーペット本体表面に現れにくいとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0022】
実施例1
一次基布であるポリエステルスパンボンド不織布(目付100g/m2)に、ポリエステル紡績糸よりなるタフト糸を植設して、カーペット本体を得た。タフト糸で形成されたパイルはカットパイルであり、カットパイルの重量は450g/m2であった。このカーペット本体の裏面に、スチレンブタジエンラテックス(バインダー固形分30質量%)を泡状にして塗布し乾燥して、固形分重量で30g/m2のバインダーが、カーペット本体の裏面に付与されたカーペット基布を得た。
【0023】
一方、バッキング繊維ウェブ層として、第一バッキング繊維ウェブ層と第二バッキング繊維ウェブ層とからなるものを準備した。第一バッキング繊維ウェブ層は、繊度1.45デシテックスで繊維長38mmのポリエステル繊維(ユニチカ株式会社製、品番「120」)90質量%と、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの熱融着性ポリエステル繊維(ユニチカファイバー株式会社製、登録商標「キャスベン」 品番「7080」、鞘成分が融点160℃の変性ポリエステルで芯成分がポリエステルよりなる芯鞘型複合繊維)10質量%とが均一に混綿されてなる、目付100g/m2のものである。第二バッキング繊維ウェブ層は、繊度2.2デシテックスで繊維長51mmの熱伸長性ポリエステル繊維(帝人ファイバー株式会社製、品番「TT00」)30質量%と、繊度4.4デシテックスで繊維長51mmの熱融着性ポリエステル繊維(ユニチカファイバー株式会社製、登録商標「キャスベン」 品番「7080」)50質量%と、繊度14デシテックスで繊維長51mmのポリエステルからなる中空コンジュゲート繊維(ユニチカファイバー株式会社製、「H38G」)20重量%が均一に混綿されてなる、目付300g/m2のものである。
【0024】
そして、カーペット基布の裏面に、第一バッキング繊維ウェブ層がカーペット基布の裏面と当接するようにして、バッキング繊維ウェブ層を積層した。つまり、カーペット基布/第一バッキング繊維ウェブ層/第二バッキング繊維ウェブ層の順で積層した。この後、第二バッキング繊維ウェブ層側から、水流の圧力を最大40MPaとして、水流交絡処理を施した。そして、サクションドラム式乾燥機で乾燥を行い、カーペットを得た。最後に、180℃に加熱しながら加圧し、自動車用の成形カーペットを得た。
【0025】
比較例1
バインダーの付与を行わない他は、実施例1と同一の方法で自動車用の成形カーペットを得た。
【0026】
比較例2
実施例1で用いたカーペット本体裏面に、バッキング層として、エチレン−酢酸ビニル樹脂をコーティングして、カーペットを得た。コーティングにより、カーペット本体裏面に貼着されたエチレン−酢酸ビニル樹脂シートの重量は、1.5kg/m2であった。そして、このカーペットを実施例1と同様に成形し、自動車用の成形カーペットを得た。
【0027】
実施例1及び比較例1、2に係る成形用カーペットについて、以下の試験を行った。
〔耐摩耗試験〕
各成形用カーペットから、直径130mmの円形試験片を3枚採取し、試験片の中心に6mmの穴をあけ、試験片の質量を0.001g単位まで測定し、この質量をXgとした。次に、試験片をテーパ式摩耗試験機に取り付け、500gの重りを取り付けた摩耗輪No.H38で150回摩耗した。この摩耗を行った後、摩耗によって生じた繊維の微塵などをブラッシング又は吸引によって完全に除去し、試験片を標準状態にした後、質量を0.001g単位まで測定し、この質量をYgとした。そして、試験片3枚について、各々(X−Y)の値を算出し、その平均値をカットパイル(タフト糸)の摩耗減少量とした。この結果を表1に示した。
【0028】
〔抜糸強度試験〕
JIS L 1023(繊維製敷物の性能に関する試験方法)に記載の方法に準じて、抜糸強度を測定した。すなわち、各成形用カーペットから100mm×100mmの試験片を5枚採取し、各々を試験片ホルダーに固定した。隣接する2本のカットパイル(タフト糸)の先端をカットパイル用チャックに挟み、引張試験機を使用して100mm/minの速度で引き抜き、カットパイルが抜けるときの最大荷重(N)を測定した。各試験片5枚の最大荷重(N)の平均値を表1に示した。
【0029】
〔引張強度試験〕
各成形用カーペットの縦方向(長手方向)が長さ方向と一致するようにして、長さ200mm×巾50mmの試験片を3枚採取した。また、各成形用カーペットの横方向(幅方向)が長さ方向と一致するようにして、長さ200mm×巾50mmの試験片を3枚採取した。そして、各試験片について140℃の雰囲気下で5分間熱処理した後、引張試験機を用い、つかみ間隔100mm、引張速度300mm/minで、各試験片の長さ方向の伸度が10%、20%、30%に達したときの引張強度(N)を測定した。縦方向が長さ方向となっている試験片3枚の引張強度(N)の平均値、及び横方向が長さ方向となっている試験片3枚の引張強度(N)の平均値を、表2及び表3に示した。なお、試験片の伸度は、以下の式で算出されるものである。
伸度(%)=〔(変位/つかみ間隔)×100〕
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
表1の結果から明らかなように、実施例1に係るカーペットは、比較例1に係るカーペットに比べて、摩耗減少量が少なくなっており、タフト糸を構成している複数本の繊維が抜けにくいことが分かる。また、実施例1に係るカーペットは、比較例1及び2に係るカーペットに比べて、抜糸強度が高くなっており、タフト糸そのものも抜けにくくなっていることが分かる。さらに、表2及び表3の結果から明らかなように、実施例1に係るカーペットは、比較例1及び2に係るカーペットに比べて、小さい力で伸ばすことができ、成形性が良好であると認められる。また、実施例1に係るカーペット表面の外観と、比較例1に係るカーペット表面の外観とを比べると、後者のカーペット表面に、一部、バッキング繊維層を構成する繊維の存在が認められた。
【0034】
【作用及び発明の効果】
本発明に係るカーペットは、カットパイルを形成しているタフト糸のバックステッチ部にバインダーが付与され、バックステッチ部の繊維相互間を結合していると共に、バッキング繊維層の構成繊維はバックステッチ部の繊維と絡み合っている。したがって、繊維相互間の結合と絡み合いの両者の相乗作用によって、タフト糸及びタフト糸を構成している繊維の抜けを防止しうるという効果を奏する。また、バックステッチ部にバインダーが付与されているため、バッキング繊維層の構成繊維は、バックステッチ部を通って、表面のカットパイル中に侵入しにくくなる。したがって、バッキング繊維層の構成繊維が、カーペット表面に現れにくくなり、カーペットの意匠性を損ないにくいという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂シートをバッキング層とした従来のカーペットの模式的側面図である。
【図2】カーペット本体の模式的側面図である。
【符号の説明】
1 一次基布
2 タフト糸を構成する繊維
3 タフト糸
4 樹脂シート
5 カーペット本体
6 バックステッチ部
7 一次基布裏面におけるバックステッチ部以外の区域
Claims (11)
- 複数本の繊維よりなるタフト糸が一次基布表面に植設されてなるカーペット本体と、該カーペット本体の裏面に接合されたバッキング繊維層とからなり、該タフト糸の該一次基布表面への植設によって生じる、該カーペット本体裏面におけるバックステッチ部は、バインダーの付与によって、複数本の繊維相互間が結合されており、且つ、該バインダーは該カーペット本体裏面において実質的な層を形成しておらず、該バッキング繊維層の構成繊維が、該一次基布及び該バックステッチ部における繊維と絡み合うことによって、該カーペット本体と該バッキング繊維層とが接合していることを特徴とするカーペット。
- バッキング繊維層の構成繊維として、熱融着性繊維が含有されている請求項1記載のカーペット。
- バッキング繊維層の構成繊維として、熱収縮性の無い繊維が含有されている請求項1記載のカーペット。
- バッキング繊維層が、第一バッキング繊維層と、該第一バッキング繊維層とは繊維組成の異なる第二バッキング繊維層の二層構造となっている請求項1記載のカーペット。
- 第一バッキング層の構成繊維の平均繊度は、第二バッキング繊維層の構成繊維の平均繊度よりも細い請求項4記載のカーペット。
- 複数本の繊維よりなるタフト糸が一次基布表面に植設されてなるカーペット本体と、該カーペット本体裏面における該タフト糸のバックステッチ部に付与されたバインダーとよりなり、該バックステッチ部の複数本の繊維相互間は、該バインダーによって結合されており、且つ、該バインダーは該カーペット本体裏面において実質的な層を形成していない請求項1記載のカーペットを得るためのカーペット基布。
- カーペット本体裏面に存在するバインダーの量が、20〜100g/m2である請求項6記載のカーペット基布。
- 一次基布表面に、複数本の繊維よりなるタフト糸を植設してカーペット本体を得た後、該カーペット本体裏面にバインダー液を塗布して、該タフト糸の該一次基布表面への植設によって生じる、該カーペット本体裏面における該タフト糸のバックステッチ部にバインダーを付与し、該バックステッチ部の複数本の繊維相互間を該バインダーによって結合してカーペット基布を得た後、該カーペット基布裏面にバッキング繊維ウェブ層を積層し、該バッキング繊維ウェブ層側から水流交絡処理を施して、該バッキング繊維ウェブ層を構成している繊維を、該一次基布及び該バックステッチ部に絡み合わせて、該カーペット本体とバッキング繊維層とを接合することを特徴とする請求項1記載のカーペットの製造方法。
- バインダー液を泡状で、カーペット本体裏面に塗布する請求項8記載のカーペットの製造方法。
- 水流交絡処理で用いる水流の圧力が、10MPa以上である請求項8記載のカーペットの製造方法。
- バッキング繊維層が、第一バッキング繊維層と、該第一バッキング繊維層とは繊維組成の異なる第二バッキング繊維層の二層構造となっている請求項8記載のカーペットの製造方法。
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