JP2004304088A - 半導体発光素子の寿命予測評価装置並びに評価方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】短時間で高効率であり、かつ信頼性が高く再現性のある安定した寿命評価を実施できる。
【解決手段】複数の半導体発光素子を第一のAPC駆動した後、第二のAPC駆動しAPC駆動電流の時間変化率から電流値が1.2〜1.35倍の駆動電流値になる寿命時間をそれぞれ演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを演算する。
【選択図】 図9
【解決手段】複数の半導体発光素子を第一のAPC駆動した後、第二のAPC駆動しAPC駆動電流の時間変化率から電流値が1.2〜1.35倍の駆動電流値になる寿命時間をそれぞれ演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを演算する。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光装置の評価装置並びに半導体発光装置寿命の評価方法に関わる。特に半導体レーザダイオードを短時間で加速劣化試験し、寿命予測する評価装置や寿命予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体発光装置の信頼性試験としての寿命評価(エージングともいう)は、製品規格としての仕様要求どうり実施していた。すなわち、例えば半導体レーザダイオードにおいてTc=60℃、P0=30mWにおける寿命評価を仕様要求された場合、APC(定光出力駆動)時の電流値が1.2〜1.5倍になるまで数千時間以上、時には数万時間も駆動しつづけ、その結果時間でもって評価していた。ここで、Tcは半導体レーザのケース温度であり、P0は半導体レーザダイオードの光出力である。一般に、半導体レーザダイオードでは、APC駆動時の電流値が初期電流値に対して1.5倍になったところを寿命として定義するのが適切といわれている。このような評価方法を実施すると、例えば同ロットの半導体レーザダイオードの中から素子を複数個サンプリング抽出し、抽出したサンプリング素子に対して、上記のような長時間駆動をして該ロットの素子の寿命を決定するので、評価した素子は当然機能を失い(少なくとも電流値は1.5倍となるので実用に耐えない素子となり商品価値がなくなる)、また寿命が決定されるまで数千時間以上の長時間がかかるのでサンプリングされなかった素子については、その間出荷を待機させるか、若しくは該ロットの半導体発光素子の寿命が不明のまま出荷若しくは使用し、後日、該ロットの寿命が判明した時点、すなわち、サンプリング素子の寿命評価試験が完了した時点で該半導体発光素子の寿命を評価・判断するしかなかった。
【0003】
この方法では、寿命評価の信頼性をあげるためには、サンプリング素子数を増やさなければならないが、サンプリング素子数を増やせば増やすほど、廃棄される素子数が増えるのでコストは増加し、またサンプリング素子の中には寿命と判定するのに、すなわちAPC駆動初期電流値の1.5倍に達するのに数万時間以上も要する素子もあったりして、極めて長時間を必要とすると共に、サンプリングした素子の寿命と実際に製品となる素子の寿命との個体差により信頼性の判定に際し妥当性が担保されないことが問題となるなど、効率や信頼性や安定性、再現性においてはなはだ問題点が多かった。
【0004】
また、半導体発光素子の異なる使用条件下における寿命を評価したい場合、すなわち、異なる温度下や異なる光出力下における寿命(寿命の温度依存性や光量依存性)にいたっては、それぞれの条件下において、各々別個に独立して前記寿命評価試験を実施するしかなく、例えば、温度条件50℃、60℃、70℃の3通りで光出力30mW、40mW、50mWの3通りにおける寿命評価であれば、3×3で計9通りの条件についてそれぞれ、別個に、前記 寿命評価をする必要が生じることになる。仮に各条件につき20個のサンプリング抽出をするとすれば、単一ロットから20個×9通りで180個のサンプリング素子の抽出が必要となり、この180個が寿命試験の結果廃棄処分されることになり、時間的にもコスト的にも効率が非常に悪かった。
【0005】
また、評価時間を短縮するためにAPC駆動時の電流増加率を一定として仮定し、例えば1000時間のAPC駆動時の駆動電流増加率だけから駆動電流値が1.5倍になる時間を線形比例算出し推定寿命として算出する寿命算出方法を用いると、評価時間は1000時間で済むものの、サンプル素子間のばらつきや、上記仮定の不確かさに基づくと思われる算出結果により、ワイブルプロットした時にデータの矛盾が生じたり、すなわち算出結果が何を表すのか処理に困窮するようなデータが算出される。すなわち、信頼性寿命評価試験で、各試験条件に用いるLD個体(サンプリング個体)が異なるので、個々の加速係数(寿命係数)が異なりバラツクことにより、実質的にはその他の素子(非サンプリング個体)については評価できない状態になる。これを克服するためには同一ロットから非常に多数のサンプリング抽出と統計処理が必要となるなど、時間とコスト効率との両立が事実上不可能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、こういった従来の半導体発光装置の寿命評価方法においては、APC駆動電流値が実際に1.5倍になるまで長時間駆動を必要としたり、多数のサンプリング抽出を必要とするだけでなく、実試験評価した条件 すなわち、試験評価した温度や試験評価した光出力以外の条件下における寿命についてはまったく判明せず、精度よく推定することができなかった。
【0007】
つまり、例えば半導体レーザダイオードにおいてAPC(Auto Power Control)駆動した場合では、例えば窒化物系半導体レーザダイオードにおける一定光出力駆動による動作電流に観察される劣化としては、当初徐々に駆動電流が駆動時間に対しリニアに増加する傾向が見られる。この傾向は初期動作電流値の1.2倍〜1.3倍になるまで観察され、この間は動作電流の増加量は駆動時間に比例する。ところが、この後急激に電流値が増加し、すなわち急激に駆動電流値が増加する変曲点は初期動作電流値の1.2倍〜1.3倍となるところである。
【0008】
したがって、例示する個々の半導体レーザダイオードの推定寿命であるところの駆動電流値が1.5倍になる寿命時間を変曲点を考慮せずに線形比例関係に基づき計算すると、図1に示すように実際の素子の寿命に対し極めて長い寿命時間が推定値として算出されることになり、この結果に基づいたワイブルプロットをして統計処理を実施しても有効な意味のあるデータとして用いることはできず、該ロットとしての寿命、すなわちサンプリング個体以外の素子をも含めた素子群全体に関わる寿命を決定することは事実上できなかった。
【0009】
また、評価実験と異なる温度や異なる光出力条件下における半導体レーザダイオードの寿命については、精度良く推定することは不可能であり、やはり実際に多数のサンプルについて評価を行うしかないため、実際に評価実験を行うとすると時間的、コスト的にも多大な労力を必要とするなど現実的には様様な条件下における寿命評価は不可能であった。
【0010】
上記のような問題点にかんがみ、本願発明は光ストレージ向けレーザダイオードなど半導体発光装置として必要とされる寿命特性等について、短時間で高効率であり、かつ信頼性が高く再現性のある安定した寿命評価を実施でき、さらには異なるさまざまな条件下における寿命時間評価についても短時間で高効率であり、かつ信頼性が高く再現性のある安定した寿命時間推定を行え、半導体レーザダイオード等の半導体発光素子群やロットの平均故障寿命(MTTF)等も算出できるだけでなく、評価選別スクリーニング等、例えば同一発光素子群であるかどうかつまり光量依存性成立の可否による対象母集団の同一発光素子群性のスクリーニングや寿命規格を満たすかどうか、個々のワイブルプロット近似直線にのらない異常素子の除去などに用いることも可能な評価装置及び評価方法を提供することを目的とする。なお、上記発明が解決しようとする課題については、半導体レーザダイオードを例に記載しているが、本件発明はこれに限定されるものではない。
【特許文献1】
特開2002−141388
【特許文献2】
特公平7−105570
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動する半導体発光素子駆動装置と、APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出する検出手段を備え、第一のAPC駆動電流の時間変化率から第一のAPC駆動電流が所定の駆動電流値になるのに要する時間を演算する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置であります。
この実施により、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになります。また、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となります。
請求項2に記載の発明は、所定の駆動電流値が、APC駆動開始時の第一のAPC駆動電流の電流値の1.2倍〜1.35倍である半導体発光素子の評価装置であります。
これにより、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。
請求項3に記載の発明は、複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動する半導体発光素子駆動装置と、APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出する検出手段を備え、第一のAPC駆動電流の時間変化率から第一のAPC駆動電流がAPC駆動開始時の第一のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間を演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを出力する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置であります。
この発明により、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。加えて、多数の個体数を有する半導体発光素子群に対しても、その素子群、すなわちロット全体に対する寿命評価を実施することができ、平均故障寿命も短時間で、少数サンプルで低コスト、かつ信頼性高く、再現性良く安定して実施でき、スクリーニングとしての半導体発光素子の選別にも用いることが可能となります。
請求項4に記載の発明は、複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値で第一のAPC駆動した後、複数の半導体発光素子を第二の設定温度において第二の発光出力値で第二のAPC駆動する半導体発光素子駆動装置と、第一のAPC駆動電流及び第二のAPC駆動電流を検出する検出手段を備え、第一のAPC駆動電流の時間変化率、及び第二のAPC駆動電流の時間変化率からそれぞれ第一及び第二のAPC駆動電流が第一及び第二のAPC駆動開始時の第一及び第二のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間をそれぞれ演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを演算し、出力する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置であります。
この発明により、多数の発光素子群に対しても簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。加えて、多数の個体数を有する半導体発光素子群に対しても、その素子群、すなわちロット全体に対する寿命評価を実施することができ、平均故障寿命も短時間で、少数サンプルで低コスト、かつ信頼性高く、再現性良く安定して実施でき、スクリーニングとしての半導体発光素子の選別にも用いることが可能となります。しかも、寿命時間は評価に関わるさまざまな環境因子によって異なるところ、上記のあらゆる発光素子個体や発光素子群に対し、複数の環境条件すなわち、異なる温度下や異なる発光出力下における寿命時間について、精密に寿命評価することが可能となるだけでなく、環境因子が変化したときの発光素子の環境因子依存性についても短時間で正確に見積もることが可能となります。
請求項5に記載の発明は、第二の設定温度は前記第一の設定温度以下であり、又は/及び前記第二の発光出力は前記第一の発光出力以下である請求項4記載の半導体発光素子の評価装置であります。
これにより、初期変動等によるAPC駆動開始時初期に観察されるAPC駆動電流の不安定性に関わる要因を除去でき、より確度の高い寿命評価が可能となります。
請求項6に記載の発明は、半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動し、APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出し、第一のAPC駆動電流の時間変化率から第一のAPC駆動電流が所定の駆動電流値になるのに要する時間を演算する半導体発光素子の寿命評価方法であります。
この実施により、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになります。また、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となります。
請求項7に記載の発明は、所定の駆動電流値が、APC駆動開始時の第一のAPC駆動電流の電流値の1.3倍であることを特徴とする半導体発光素子の寿命評価方法であります。
これにより、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。
請求項8に記載の発明は、複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動し、APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出し、第一のAPC駆動電流の時間変化率から第一のAPC駆動電流がAPC駆動開始時の第一のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間を演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを演算する半導体発光素子の寿命評価方法であります。
この発明により、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。加えて、多数の個体数を有する半導体発光素子群に対しても、その素子群、すなわちロット全体に対する寿命評価を実施することができ、平均故障寿命も短時間で、少数サンプルで低コスト、かつ信頼性高く、再現性良く安定して実施でき、スクリーニングとしての半導体発光素子の選別にも用いることが可能となります。
請求項9に記載の発明は、複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値で第一のAPC駆動した後、複数の半導体発光素子を第二の設定温度において第二の発光出力値で第二のAPC駆動し、第一のAPC駆動電流及び第二のAPC駆動電流を検出し、第一のAPC駆動電流の時間変化率、及び第二のAPC駆動電流の時間変化率からそれぞれ第一及び第二のAPC駆動電流が第一及び第二のAPC駆動開始時の第一及び第二のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間をそれぞれ演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを演算する半導体発光素子の寿命評価方法であります。
この発明により、多数の発光素子群に対しても簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。加えて、多数の個体数を有する半導体発光素子群に対しても、その素子群、すなわちロット全体に対する寿命評価を実施することができ、平均故障寿命も短時間で、少数サンプルで低コスト、かつ信頼性高く、再現性良く安定して実施でき、スクリーニングとしての半導体発光素子の選別にも用いることが可能となります。しかも、寿命時間は評価に関わるさまざまな環境因子によって異なるところ、上記のあらゆる発光素子個体や発光素子群に対し、複数の環境条件すなわち、異なる温度下や異なる発光出力下における寿命時間について、精密に寿命評価することが可能となるだけでなく、環境因子が変化したときの発光素子の環境因子依存性についても短時間で正確に見積もることが可能となります。
請求項10に記載の発明は、第二の設定温度は第一の設定温度以下であり、又は/及び第二の発光出力は第一の発光出力以下である半導体発光素子の寿命評価方法であります。
これにより、初期変動等によるAPC駆動開始時初期に観察されるAPC駆動電流の不安定性に関わる要因を除去でき、より確度の高い寿命評価が可能となります。
請求項11に記載の発明は、半導体発光素子の所定の発光出力値における寿命評価時間を、異なる発光出力値における寿命評価時間から該発光出力値と該寿命評価時間の反比例なる光量依存性に基づき算出する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置であります。
この発明の実施により、さまざまな発光出力に対応する各発光出力時の寿命評価時間について、他の異なる発光出力時の寿命評価時間にもとづき算出することが可能となり、大幅な労力の低減と時間の短縮を図れ、再現性良く信頼性の高い評価を実施でき、スクリーニング(評価選別)への適用も可能となります。
請求項12に記載の発明は、半導体発光素子の所定の発光出力値における寿命評価時間を、異なる発光出力値における寿命評価時間から該発光出力値と該寿命評価時間の反比例なる光量依存性に基づき算出する半導体発光素子の寿命算出方法であります。
この発明の実施により、さまざまな発光出力に対応する各発光出力時の寿命評価時間について、他の異なる発光出力時の寿命評価時間にもとづき算出することが可能となり、大幅な労力の低減と時間の短縮を図れ、再現性良く信頼性の高い評価を実施でき、スクリーニング(評価選別)への適用も可能となります。
【0012】
(半導体発光素子)
GaAs系、InP系、GaN系など通称III−V族化合物半導体とよばれる半導体材料からなる化合物半導体はもちろん、Si系などその他の半導体材料からなる発光素子はLED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)等すべてこの範疇に含まれる。望ましくは半導体レーザダイオードであるところ、さらには半導体レーザの材料として窒化物系半導体材料であるAlxInyGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)を含有するものであればより好ましい。窒化物系半導体材料からなる発光素子では、本発明により劣化の早さ具合がより正確に再現性良く、寿命評価することができる。
【0013】
(第一の設定温度)
寿命試験を実施する設定温度(環境温度ともいう)のことであり、任意に設定することができる。典型例として、現在の窒化物系半導体レーザダイオード(LD)においては、25℃〜70℃の範囲であればより好ましいことが判明している。25℃より低温では、劣化速度が小さいので寿命評価に要する時間が長引く傾向にあり、70℃より高温では高温によるさまざまな加速劣化がなだれ現象的に発生する傾向があるので、通常の室温動作環境における劣化の評価としては70℃より低温がより望ましいが、第一の設定温度としては特に限定されるものではなく、またこれらはあくまで、現在の窒化物系半導体レーザダイオードにおける典型的例示であり、本発明を実施するに際し何ら制限を加えるものではない。さらにまた、100℃を超える高温にて寿命評価を行うと、発光素子が破壊される場合があり、破壊される傾向が強くなるので、非破壊検査を徹底実施する場合にはこの温度以下で実施することがより望ましいが、第一の設定温度としては特にこの温度に限定されることはない。
【0014】
(第一の発光出力値)
寿命試験を実施する設定発光出力値のことである。第一のAPC駆動時には発光出力値を第一の発光出力値に設定することにより、第一の発光出力値にて一定光出力駆動(APC駆動)するものであるが、評価対象となる発光素子の動作範囲内であれば、発光出力値は限定されるものではない。典型例として、現在の窒化物系半導体LDにおいては、30mW〜55mW程度で寿命評価を実施すると、ワイブルプロット時における相関関係が非常に明確に観察される傾向が確認されており、より好ましいものであるが、あくまで典型例であり第一の発光出力値を設定するに際し、これに限定されるものではない。
【0015】
(APC駆動)
Auto Power Controlすなわち、一定光出力駆動のことを指す。典型的には半導体レーザダイオード(LD)における、一定光出力駆動をことを意味するが、本発明におけるAPC駆動とは、半導体レーザダイオードのみに限定されるものではない。半導体発光素子を一定光出力駆動する場合すべてにおいて、APC駆動は該当するものである。
【0016】
(第一のAPC駆動電流)
APC駆動するときに半導体発光素子に供給される電流のことであり、一般には半導体発光素子個々に供給する電流をいう。典型例として半導体レーザダイオード(LD)をAPC駆動する場合では、所定の一定光出力になるように第一のAPC駆動電流が調整された上で、APC駆動されるものであるが、時間の経過と共に、この第一のAPC駆動電流は増加する。すなわち、半導体レーザダイオードの経時劣化に伴って、第一のAPC駆動電流が増加するものである。典型例として、窒化物系半導体レーザダイオードの場合にはAPC駆動開始時の第一のAPC駆動電流に対して、その電流値が1.2〜1.3倍になるまではAPC駆動時間すなわち、信頼性寿命評価時間に比例して第一のAPC駆動電流が増加する。その後、経過時間と共に急激に第一のAPC駆動電流が増加し、APC駆動開始時の第一のAPC駆動電流に対して、その電流値が1.5倍になる時間でもって、典型例の窒化物系半導体レーザダイオードの寿命とすることができる。
【0017】
(APC駆動電流の時間変化率)
APC駆動を信頼性寿命評価試験のように長時間継続すると、当初徐々に劣化により、駆動電流が増加する傾向が観察される。これを単位時間あたりの増加率に換算したものが、APC駆動電流の時間変化率であり、増加率または、劣化率などと呼ばれることもある。典型例として窒化物系半導体レーザダイオードの場合においては、時間変化率は、APC駆動の極初期に発生する初期劣化を除外すると、大体、初期電流値の1.2倍〜1.3倍程度になるまでは一定であるが、その後急激に時間変化率が大きくなり、APC駆動の電流が増大する。
【0018】
(所定の駆動電流値)
任意に設定できる電流値である。この所定の電流値になった時点で、その素子に関わる寿命評価としては、寿命であると判定することができる。典型例として窒化物系半導体レーザダイオードの場合には、APC駆動開始時の電流の1.5倍の電流値になった時点で寿命と判定することができる。さらには、典型的には窒化物系半導体レーザダイオードにおいては、APC駆動電流の時間変化率はAPC駆動電流の電流初期値の1.2倍〜1.3倍で急激に増大することが判明したため、所定の駆動電流値をAPC駆動電流の電流初期値の1.2〜1.35倍とすることが、より正確な、再現性のある信頼性評価及びワイブルプロットを獲得する上で望ましい。
【0019】
(APC駆動電流の電流値の所定倍)
上記(所定の駆動電流値)で説明したことに準じるものであり、所定倍とは基本的に任意の倍率に設定できるものではあるが、典型例としての、窒化物系半導体レーザダイオードにおいては、所定倍を1.2倍〜1.35倍と設定することにより、より信頼性が高く、再現性の良い、安定した信頼性寿命評価を実施することができるとともに、ワイブルプロットなど複数の素子評価を統計的に処理する場合においても、より、さまざまな環境因子と寿命特性との相関関係が明確に把握され、また寿命予測したり、平均故障寿命(MTTF)等が算出できるので、より望ましい。
【0020】
(寿命評価時間)
測定する個々の発光素子に関しては、寿命時間はAPC駆動電流の初期電流値の1.5倍の駆動電流値になった時点で寿命時間と評価することができるものであるが、1.2〜1.35倍の駆動電流値になる時点でもって、寿命と評価する評価法が窒化物系半導体レーザダイオードにおいてはより好ましい。さらには、この寿命時間は実際に駆動電流値が1.3倍または1.5倍になるまで駆動することなく、APC駆動の時間変化率において電流増加が時間に比例する関係を用いて、当初の数百時間までの電流増加率から算出することができるものである。なお、個々の半導体発光素子の寿命については、個々ごとに個別で異なるものであるが、それらのデータをワイブルプロットして、発光素子群すなわち同ロット発光素子や同構造発光素子の多数集合体全体としての寿命としては累積故障率が63.2%となるところの寿命時間でもって平均故障寿命として評価することができる。また、寿命評価時間は寿命時間のみならずエージング評価している時間(エージング時間)であっても良い。
【0021】
(ワイブルプロット)
本発明における典型的なワイブルプロットとしては横軸に対数時間軸を、縦軸に累積故障率(累積不良率ともいう)をとり、所定の条件下(環境因子下)における素子個々の寿命時間をプロットしたものがある。典型例における窒化物系半導体レーザダイオードにおいては、累積故障率が60%程度強までは近似直線上に大体フィットすることが判明しているが、これを超えると非常に長寿命な素子が観察され、近似直線とは寿命時間が長いほうへ乖離していくことが判明しているが、これに限定されるものではない。
【0022】
(半導体発光素子群)
典型的には同じ構造であったり、同じ設計で作製された素子であったり、同じロットで作成された発光素子の集合体を同一の半導体発光素子群という。例えば、カタログ等に記載される同一型番、同一形式の発光素子もこれに該当する。同一型番、同一構造、同一ロットの半導体発光素子であっても素子単体を個々に評価すると、寿命特性は相当に異なっているものではあるが、その集合体に対する寿命評価として、MTTF等が用いられることがある。ここでいう、半導体発光素子群としては上記典型例に限定されるものではなく、半導体発光素子が2個以上複数個を一括りにして呼称するものであり、呼称対象の個数だけに依存し、その他の限定要因に制限されることはない。
【0023】
(MTTF)
平均故障寿命、あるいはMean Time To Failureともいい、典型的にはワイブルプロット時の累積故障率が63.2%になるところの推定寿命時間、または実評価の寿命時間を平均故障寿命というが、必ずしも63.2%でなくても良く、ある所定の累積故障率になる時の推定寿命時間をMTTFや平均故障寿命とする場合もある。例えば『MTTF50%』といった場合には、ワイブルプロット時の累積故障率(又は累積不良率)が50%になる寿命時間のことを意味することもある。
【0024】
(第二の設定温度)
第一のAPC駆動に対し、それと異なる環境下で第二のAPC駆動による信頼性寿命試験をする場合の、第二のAPC駆動時の設定温度を第二の設定温度という。第二のAPC駆動時において、発光出力が第一のAPC駆動時と異なる場合には、第二の設定温度は第一の設定温度と同じでも良いし、異なっていても良い。一方、第二のAPC駆動時において、発光出力が第一のAPC駆動時と同じ場合には、第二の設定温度は第一の設定温度と異なっていることが望ましい。第一と第二の設定温度が異なる場合においては、第一の設定温度に対し第二の設定温度がより低い方が、初期劣化の激しい発光素子を抽出除外できる意味合いにおいてより望ましい。すなわち、半導体発光素子においてはAPC駆動初期に、極端に劣化してしまい、発光出力が大幅に低減したり、光らなくなる素子個体が含まれていることがあるが、このような素子個体は、寿命評価時における特異点扱いとしてワイブルプロット時の対象から除外することが、より信頼性の高い評価をする上で好ましいものであるが、この意味において最初により厳しい環境条件下すなわち、より高い温度やより高い光出力下でAPC駆動信頼性寿命試験を実施し、その後環境条件を緩めたすなわち、より低い温度やより低い光出力下でのAPC駆動信頼性寿命試験を実施することが望ましい。
【0025】
ところで、この第二の設定温度とは単一の温度のみではなく、2段階以上の複数の設定温度を有することも可能である。すなわち、典型例としては、第一の設定温度を70℃とし、第二の設定温度を60℃と50℃と40℃としても良い。この場合には、第一の設定温度でAPC駆動して経過時間に対する電流増加率を測定した後、続いて第二の設定温度である60℃、50℃、40℃で同様に各々の電流増加率から、各々の環境下における寿命を推定算出し、ワイブルプロットすることが可能である。したがって、よりさまざまな環境条件下における、それぞれの寿命について評価・判定したい場合には、2以上のより多くの温度等環境条件を設定することが望ましい。2段階以上の複数の設定温度を有する場合においても、より高い設定温度における、すなわちより厳しい環境条件下における寿命試験評価から実施することがより好ましいことは、上述のとうりである。
【0026】
(第二の発光出力値)
第一のAPC駆動に対し、それと異なる環境下で第二のAPC駆動による信頼性寿命試験をする場合の、第二のAPC駆動時の設定光出力を第二の発光出力値という。第二のAPC駆動時において、設定温度が第一のAPC駆動時と異なる場合には、第二の発光出力値は第一の発光出力値と同じでも良いし、異なっていても良い。一方、第二のAPC駆動時において、設定温度が第一のAPC駆動時と同じ場合には、第二の発光出力値は第一の発光出力値と異なっていることが望ましい。第一と第二の発光出力値が異なる場合においては、第一の発光出力値に対し第二の発光出力値がより低い方が、初期劣化の激しい発光素子を初期に抽出除外できる意味合いにおいてより望ましい。すなわち、半導体発光素子においてはAPC駆動初期に、極端に劣化してしまい、発光出力が大幅に低減したり(駆動電流を増大しても発光出力が上がらない)、光らなくなる素子個体が含まれていることがあるが、このような素子個体は、寿命評価時における特異点扱いとしてワイブルプロット時の対象から除外することが、より信頼性の高い評価をする上で好ましいものであるが、この意味において最初により厳しい環境条件下すなわち、より高い温度やより高い光出力下でAPC駆動信頼性寿命試験を実施し、その後環境条件を緩めたすなわち、より低い温度やより低い光出力下でのAPC駆動信頼性寿命試験を実施することが望ましい。
【0027】
ところで、この第二の発光出力値とは単一の発光出力値のみではなく、2段階以上の複数の発光出力値を有することも可能である。すなわち、典型例としては、第一の発光出力値を55mWとし、第二の発光出力値を40mWと30mWとしても良い。
この場合には、第一の発光出力値でAPC駆動して経過時間に対する電流増加率を測定した後、続いて第二の発光出力値である40mWと30mWで同様に各々の電流増加率から、各々の環境下における寿命を推定算出し、ワイブルプロットすることが可能である。したがって、よりさまざまな環境条件下における、それぞれの寿命について評価・判定したい場合には、2以上のより多くの光出力等環境条件を設定することが望ましい。2段階以上の複数の発光出力値を有する場合においても、より高い発光出力値における、すなわちより厳しい環境条件下における寿命試験評価から順次実施することがより好ましいことは、上述のとうりである。
【0028】
(第二のAPC駆動)
本発明における典型例としては、第一のAPC駆動と第二のAPC駆動という2以上の複数の異なる環境下、すなわち設定温度か又は/及び光出力のことなる条件下における寿命評価を、より環境条件の厳しいほうから順次、すなわちより設定温度が高く、又は/及びより光出力が高い条件からAPC駆動信頼性寿命評価を実施する。第二のAPC駆動における環境条件は、必ずしも単一の環境条件である必要はないが、この場合においても、より厳しい環境下のAPC駆動信頼性試験から順次実施することが望ましい。
【0029】
(第一のAPC駆動電流及び該第二のAPC駆動電流を検出する検出手段)
典型的には、電流計である。ただし、本発明の実施においては電流の絶対値は必ずしも検出する必要は無く、相対的な駆動電流値の増加率が把握できるものであれば可能である。したがって、ここでいう検出手段とは、電流計や電圧計等に限定されるものではなく、等価的に電流値が相対的に把握できる手段であれば何でも良い。
【0030】
(第二の設定温度は第一の設定温度以下)
初期劣化の著しく非実用的な発光素子を、抽出除外する意味において、第二の設定温度は第一の設定温度以下の方がより好ましいことは上述のとうりである。
【0031】
(第二の発光出力値は第一の発光出力値以下)
初期劣化の著しく非実用的な発光素子を、抽出除外する意味において、第二の発光出力は第一の発光出力以下の方がより好ましいことは上述のとうりである。
【0032】
(光量依存性)
同一発光素子群で形成された集団に対し設定発光出力の異なる環境下における信頼性寿命試験を実施し、ワイブルプロットした場合は、発光出力の値に依存してある所定の累積故障率になる推定寿命や寿命、平均故障寿命(MTTF)が関係することが判明した。典型例として、窒化物系半導体レーザダイオードにおいては、推定寿命はAPC駆動信頼性評価時の設定発光出力値に反比例することが判明した。反比例とはすなわち、光量が1/3倍、1/2倍、2倍、3倍、4倍になれば寿命はそれぞれ3倍、2倍、1/2倍、1/3倍、1/4倍になるような関係が成立することをいい、y=a/xなる関係が存在する(y:寿命評価時間、x:発光出力、a:a>0なる定数)。別の表現をすれば、寿命時間と発光出力の積が同一発光素子群で構成された同一集団に対しては一定となるものである。ただし、ここでいう寿命時間とは、ある所定の累積故障率になる寿命をいうものである。
【0033】
(例えばMTTF63.2%時の寿命時間など、相対比較計算時は双方同じ累積故障率寿命で推定計算できるものであり、累積故障率の値に関係なく所定の値にすれば推定計算は可能である)
すなわち、同一発光素子群で構成された同一集団に対しては、推定寿命と発光出力の反比例関係を表す一定の値の定数a((寿命)=a/(発光出力))を決めることができ、これは同一発光素子群で構成された同一集団である限り変化しない。例えば、同一発光素子群の典型例として、図2に示すように、同一発光素子群だが異なる2つの集団のレーザダイオード素子群A(集合A)、素子群B(集合B)の場合には、これらの集合A,集合Bはそれぞれ同一発光素子群から構成されるので図のように例えば55mW発光時の寿命((寿命A55)と(寿命B55))と30mW発光時の寿命((寿命A30)と(寿命B30))は集合A,集合B共にそれぞれ、発光出力に対し反比例する関係がある。この関係から、他の光出力条件における、寿命をそれぞれ推定算出することができるのである。すなわち集合Aに対しては(寿命A55)*(55mW)=(寿命A30)*(30mW)となり、変形すると、(寿命A55)/(寿命A30)=30/55となりすなわち、同一発光素子群から形成される集合体Aに対しては、寿命は発光出力に反比例することが理解できる。一例として、集合Aの55mW時の寿命を(寿命A55)=300時間が評価測定でわかると、30mW時の寿命は(寿命A30)=(寿命A55)*(55/30)=550時間と実際に試験評価しなくても推定計算することができるのである。同様に、集合Aの10mW時の寿命は(寿命A10)=(寿命A55)*(55/10)=1650時間とこれも実際に試験評価しなくても推定計算することができるのである。
また、集合Bに対しても、(寿命B55)*(55mW)=(寿命B30)*(30mW)となる。変形すると、(寿命B55)/(寿命B30)=30/55となりすなわち、同一発光素子群から形成される集合Bに対しては、寿命は発光出力に反比例することが理解できる。例えば、10mW時の寿命を(寿命B10)=1815時間が測定評価で判明したとすると、30mW時の寿命は(寿命B30)=(寿命B10)*(10/30)=605時間と実際に試験評価しなくても推定計算することができる。同様に、集合Bの55mW時の寿命は(寿命B55)=(寿命B10)*(10/55)=330時間とこれも実際に試験評価しなくても推定計算することができるのものである。
本発明においてはこの光量依存性(又は光量積分と呼称することもある)なる光出力と寿命の反比例関係に基づいて、同一の発光素子群において、発光出力(光量)が異なる場合における信頼性寿命について、実際の評価を実施しなくても安定的に精度良く推定することが可能となるものである。この関係は寿命評価時間に対しても成立するものである。
なお、本発明にいう設定温度とは、典型的には半導体チップの温度のことであるが、半導体発光素子の筐体温度で等価的に代替でき、例えば半導体レーザダイオードであればステムの温度やステム支持放熱筐体温度などである。ただし、現実的にチップ温度やステム温度測定が難しい場合には、放熱筐体温度や半導体発光素子を保持する環境温度、すなわち、恒温層内であれば恒温層内の設定温度などで、適宜補正を加えることにより等価的に適用できるものである。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
半導体発光素子の所定の発光出力値と異なる発光出力値における寿命時間において発光出力値と寿命時間に反比例関係が成り立つ(または半導体発光素子の所定の発光出力値と異なる発光出力値における寿命時間においてy=1/x が成り立つ(x:発光出力値, y:寿命時間の倍率とする))半導体発光素子群からランダムに20個サンプリングし、
a) Tc=60℃, Po=55mW 300時間 + b) Tc=60℃, Po=30mW 500時間のエージングを行った。(図3、図4参照)
これによりTc=60℃, Po=30mW 1000時間相当の劣化を実現できたことになる。即ち、発光出力値を上げることで実評価時間トータル800時間のエージングにもかかわらず、Tc=60℃, Po=30mW 1000時間相当の加速劣化試験を実現することができる。
すなわち、
a) + b) = Tc=60℃, Po=30mW 1050時間に相当
また、それぞれのエージングによる推定寿命をワイブル分布で表すとそれぞれの近似線は平行であり、寿命に1.83倍の差が見られる。これにより、Tc=60℃において反比例関係が成り立つことを検証することができる。(図4参照)
【0035】
(実施例2)
光量依存性が成り立ち(または半導体発光素子の所定の発光出力値と異なる発光出力値における寿命時間においてy=1/x が成り立つ(x:発光出力値, y:寿命時間の倍率とする))、かつTc=60℃とTc=70℃で推定寿命に2倍の差がある条件を満たす同一の半導体発光素子群からランダムに20個サンプリングし、
c) Tc=70℃, Po=55mW 200時間 + d) Tc=70℃, Po=30mW 150時間のエージングを行う。(図5参照)
これによりTc=60℃, Po=30mW 1000時間相当の劣化を実現できる。即ち、設定温度と発光出力値を上げることにより、実評価時間はトータル350時間のエージングにもかかわらず、Tc=60℃, Po=30mW 1000時間相当を実時間350時間で加速劣化させ寿命評価を実施することができる。
トータル換算時間 c) + d) = Tc=60℃, Po=30mW 1033時間に相当
また、それぞれのエージングによる推定寿命をワイブル分布で表すとそれぞれの近似線は平行であり、1.83倍の差が見られる。これにより、Tc=70℃において反比例関係が成り立つことを検証することができる。(図6参照)
【0036】
(実施例3)
実施例2に加えてさらに下記条件でのエージングを実施した。
実施例2 + e) Tc=60℃, Po=30mW 300時間のエージングを行う。(図7参照)
それぞれのエージングによる推定寿命をワイブル分布で表すとそれぞれの近似線は平行であり、d) と e) では寿命に2倍の差が見られる。これにより、Tc=60℃とTc=70℃で2倍の寿命差があることを検証することができる。(図8参照)
これを評価選別スクリーニングに用いる場合、例えば同一発光素子群であるかどうかすなわち光量依存性成立の可否による対象母集団の同一発光素子群性のスクリーニングや寿命規格を満たすかどうかの判定、個々半導体発光素子においてワイブルプロット近似直線にのらない異常素子の除去などに用いることも可能な評価装置を作製することができるものである。
このように寿命評価の温度を変えた場合の寿命時間との関係は、図10に示すように所定の値に基づき換算できる。すなわち、同一半導体発光素子群から構成される同一の集合体に関する限りにおいては、図10に基づくと、寿命評価温度60℃の寿命を基準とすると70℃、50℃、40℃、25℃の各寿命評価温度時の寿命時間はそれぞれ、基準に対し0.5倍、1.7倍、4.3倍、7.1倍となることが判明したものであり、この関係に基づいて異なる温度における寿命時間を相対的にに換算することができるものである。一例を示すと、70℃における寿命評価エージング100時間は、60℃の200時間、50℃の340時間、40℃の860時間、25℃の1420時間の寿命評価エージングにそれぞれ相当するものである。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、長時間にわたる劣化試験の結果を短時間で加速して評価することができるようになった。さらには、評価サンプルを多数用いることなく減数させることができ、選別スクリーニング、例えば設定寿命より短い素子群の選別や標準とするワイブルプロット近似直線からずれた素子の選別などに用いることができる。加えて、作製した素子が同一発光素子群(設計同一、規格合格)であるかどうかの確認・検証と同時に、光量依存性の確認・検証をして光量依存性の規格に則った素子であるかどうかの判断をすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】単一の半導体レーザダイオードの寿命評価に関わる従来技術と本発明の典型例説明図
【図2】同一の半導体発光素子群にかかる異なるロットのワイブルプロット典型例模式概念図
【図3】a)Tc=60℃、P0=55mW、300時間と
b)Tc=60℃、P0=30mW、500時間エージング結果
における動作電流の推移
【図4】a)Tc=60℃、P0=55mW、300時間と
b)Tc=60℃、P0=30mW、500時間エージング結果
における寿命推定のワイブル分布
【図5】c)Tc=70℃、P0=55mW、200時間と
d)Tc=70℃、P0=30mW、150時間エージング結果
における動作電流の推移
【図6】c)Tc=70℃、P0=55mW、200時間と
d)Tc=70℃、P0=30mW、150時間エージング結果
における寿命推定のワイブル分布
【図7】c)Tc=70℃、P0=55mW、200時間と
d)Tc=70℃、P0=30mW、150時間と
e)Tc=60℃、P0=30mW、300時間エージング結果
における動作電流の推移
【図8】c)Tc=70℃、P0=55mW、200時間と
d)Tc=70℃、P0=30mW、150時間と
e)Tc=60℃、P0=30mW、300時間エージング結果
における寿命推定のワイブル分布
【図9】様様な条件下のエージング結果における寿命推定のワイブル分布
【図10】エージング温度が変化した場合の寿命変化の相対関係
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光装置の評価装置並びに半導体発光装置寿命の評価方法に関わる。特に半導体レーザダイオードを短時間で加速劣化試験し、寿命予測する評価装置や寿命予測方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体発光装置の信頼性試験としての寿命評価(エージングともいう)は、製品規格としての仕様要求どうり実施していた。すなわち、例えば半導体レーザダイオードにおいてTc=60℃、P0=30mWにおける寿命評価を仕様要求された場合、APC(定光出力駆動)時の電流値が1.2〜1.5倍になるまで数千時間以上、時には数万時間も駆動しつづけ、その結果時間でもって評価していた。ここで、Tcは半導体レーザのケース温度であり、P0は半導体レーザダイオードの光出力である。一般に、半導体レーザダイオードでは、APC駆動時の電流値が初期電流値に対して1.5倍になったところを寿命として定義するのが適切といわれている。このような評価方法を実施すると、例えば同ロットの半導体レーザダイオードの中から素子を複数個サンプリング抽出し、抽出したサンプリング素子に対して、上記のような長時間駆動をして該ロットの素子の寿命を決定するので、評価した素子は当然機能を失い(少なくとも電流値は1.5倍となるので実用に耐えない素子となり商品価値がなくなる)、また寿命が決定されるまで数千時間以上の長時間がかかるのでサンプリングされなかった素子については、その間出荷を待機させるか、若しくは該ロットの半導体発光素子の寿命が不明のまま出荷若しくは使用し、後日、該ロットの寿命が判明した時点、すなわち、サンプリング素子の寿命評価試験が完了した時点で該半導体発光素子の寿命を評価・判断するしかなかった。
【0003】
この方法では、寿命評価の信頼性をあげるためには、サンプリング素子数を増やさなければならないが、サンプリング素子数を増やせば増やすほど、廃棄される素子数が増えるのでコストは増加し、またサンプリング素子の中には寿命と判定するのに、すなわちAPC駆動初期電流値の1.5倍に達するのに数万時間以上も要する素子もあったりして、極めて長時間を必要とすると共に、サンプリングした素子の寿命と実際に製品となる素子の寿命との個体差により信頼性の判定に際し妥当性が担保されないことが問題となるなど、効率や信頼性や安定性、再現性においてはなはだ問題点が多かった。
【0004】
また、半導体発光素子の異なる使用条件下における寿命を評価したい場合、すなわち、異なる温度下や異なる光出力下における寿命(寿命の温度依存性や光量依存性)にいたっては、それぞれの条件下において、各々別個に独立して前記寿命評価試験を実施するしかなく、例えば、温度条件50℃、60℃、70℃の3通りで光出力30mW、40mW、50mWの3通りにおける寿命評価であれば、3×3で計9通りの条件についてそれぞれ、別個に、前記 寿命評価をする必要が生じることになる。仮に各条件につき20個のサンプリング抽出をするとすれば、単一ロットから20個×9通りで180個のサンプリング素子の抽出が必要となり、この180個が寿命試験の結果廃棄処分されることになり、時間的にもコスト的にも効率が非常に悪かった。
【0005】
また、評価時間を短縮するためにAPC駆動時の電流増加率を一定として仮定し、例えば1000時間のAPC駆動時の駆動電流増加率だけから駆動電流値が1.5倍になる時間を線形比例算出し推定寿命として算出する寿命算出方法を用いると、評価時間は1000時間で済むものの、サンプル素子間のばらつきや、上記仮定の不確かさに基づくと思われる算出結果により、ワイブルプロットした時にデータの矛盾が生じたり、すなわち算出結果が何を表すのか処理に困窮するようなデータが算出される。すなわち、信頼性寿命評価試験で、各試験条件に用いるLD個体(サンプリング個体)が異なるので、個々の加速係数(寿命係数)が異なりバラツクことにより、実質的にはその他の素子(非サンプリング個体)については評価できない状態になる。これを克服するためには同一ロットから非常に多数のサンプリング抽出と統計処理が必要となるなど、時間とコスト効率との両立が事実上不可能であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、こういった従来の半導体発光装置の寿命評価方法においては、APC駆動電流値が実際に1.5倍になるまで長時間駆動を必要としたり、多数のサンプリング抽出を必要とするだけでなく、実試験評価した条件 すなわち、試験評価した温度や試験評価した光出力以外の条件下における寿命についてはまったく判明せず、精度よく推定することができなかった。
【0007】
つまり、例えば半導体レーザダイオードにおいてAPC(Auto Power Control)駆動した場合では、例えば窒化物系半導体レーザダイオードにおける一定光出力駆動による動作電流に観察される劣化としては、当初徐々に駆動電流が駆動時間に対しリニアに増加する傾向が見られる。この傾向は初期動作電流値の1.2倍〜1.3倍になるまで観察され、この間は動作電流の増加量は駆動時間に比例する。ところが、この後急激に電流値が増加し、すなわち急激に駆動電流値が増加する変曲点は初期動作電流値の1.2倍〜1.3倍となるところである。
【0008】
したがって、例示する個々の半導体レーザダイオードの推定寿命であるところの駆動電流値が1.5倍になる寿命時間を変曲点を考慮せずに線形比例関係に基づき計算すると、図1に示すように実際の素子の寿命に対し極めて長い寿命時間が推定値として算出されることになり、この結果に基づいたワイブルプロットをして統計処理を実施しても有効な意味のあるデータとして用いることはできず、該ロットとしての寿命、すなわちサンプリング個体以外の素子をも含めた素子群全体に関わる寿命を決定することは事実上できなかった。
【0009】
また、評価実験と異なる温度や異なる光出力条件下における半導体レーザダイオードの寿命については、精度良く推定することは不可能であり、やはり実際に多数のサンプルについて評価を行うしかないため、実際に評価実験を行うとすると時間的、コスト的にも多大な労力を必要とするなど現実的には様様な条件下における寿命評価は不可能であった。
【0010】
上記のような問題点にかんがみ、本願発明は光ストレージ向けレーザダイオードなど半導体発光装置として必要とされる寿命特性等について、短時間で高効率であり、かつ信頼性が高く再現性のある安定した寿命評価を実施でき、さらには異なるさまざまな条件下における寿命時間評価についても短時間で高効率であり、かつ信頼性が高く再現性のある安定した寿命時間推定を行え、半導体レーザダイオード等の半導体発光素子群やロットの平均故障寿命(MTTF)等も算出できるだけでなく、評価選別スクリーニング等、例えば同一発光素子群であるかどうかつまり光量依存性成立の可否による対象母集団の同一発光素子群性のスクリーニングや寿命規格を満たすかどうか、個々のワイブルプロット近似直線にのらない異常素子の除去などに用いることも可能な評価装置及び評価方法を提供することを目的とする。なお、上記発明が解決しようとする課題については、半導体レーザダイオードを例に記載しているが、本件発明はこれに限定されるものではない。
【特許文献1】
特開2002−141388
【特許文献2】
特公平7−105570
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動する半導体発光素子駆動装置と、APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出する検出手段を備え、第一のAPC駆動電流の時間変化率から第一のAPC駆動電流が所定の駆動電流値になるのに要する時間を演算する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置であります。
この実施により、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになります。また、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となります。
請求項2に記載の発明は、所定の駆動電流値が、APC駆動開始時の第一のAPC駆動電流の電流値の1.2倍〜1.35倍である半導体発光素子の評価装置であります。
これにより、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。
請求項3に記載の発明は、複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動する半導体発光素子駆動装置と、APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出する検出手段を備え、第一のAPC駆動電流の時間変化率から第一のAPC駆動電流がAPC駆動開始時の第一のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間を演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを出力する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置であります。
この発明により、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。加えて、多数の個体数を有する半導体発光素子群に対しても、その素子群、すなわちロット全体に対する寿命評価を実施することができ、平均故障寿命も短時間で、少数サンプルで低コスト、かつ信頼性高く、再現性良く安定して実施でき、スクリーニングとしての半導体発光素子の選別にも用いることが可能となります。
請求項4に記載の発明は、複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値で第一のAPC駆動した後、複数の半導体発光素子を第二の設定温度において第二の発光出力値で第二のAPC駆動する半導体発光素子駆動装置と、第一のAPC駆動電流及び第二のAPC駆動電流を検出する検出手段を備え、第一のAPC駆動電流の時間変化率、及び第二のAPC駆動電流の時間変化率からそれぞれ第一及び第二のAPC駆動電流が第一及び第二のAPC駆動開始時の第一及び第二のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間をそれぞれ演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを演算し、出力する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置であります。
この発明により、多数の発光素子群に対しても簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。加えて、多数の個体数を有する半導体発光素子群に対しても、その素子群、すなわちロット全体に対する寿命評価を実施することができ、平均故障寿命も短時間で、少数サンプルで低コスト、かつ信頼性高く、再現性良く安定して実施でき、スクリーニングとしての半導体発光素子の選別にも用いることが可能となります。しかも、寿命時間は評価に関わるさまざまな環境因子によって異なるところ、上記のあらゆる発光素子個体や発光素子群に対し、複数の環境条件すなわち、異なる温度下や異なる発光出力下における寿命時間について、精密に寿命評価することが可能となるだけでなく、環境因子が変化したときの発光素子の環境因子依存性についても短時間で正確に見積もることが可能となります。
請求項5に記載の発明は、第二の設定温度は前記第一の設定温度以下であり、又は/及び前記第二の発光出力は前記第一の発光出力以下である請求項4記載の半導体発光素子の評価装置であります。
これにより、初期変動等によるAPC駆動開始時初期に観察されるAPC駆動電流の不安定性に関わる要因を除去でき、より確度の高い寿命評価が可能となります。
請求項6に記載の発明は、半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動し、APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出し、第一のAPC駆動電流の時間変化率から第一のAPC駆動電流が所定の駆動電流値になるのに要する時間を演算する半導体発光素子の寿命評価方法であります。
この実施により、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになります。また、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となります。
請求項7に記載の発明は、所定の駆動電流値が、APC駆動開始時の第一のAPC駆動電流の電流値の1.3倍であることを特徴とする半導体発光素子の寿命評価方法であります。
これにより、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。
請求項8に記載の発明は、複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動し、APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出し、第一のAPC駆動電流の時間変化率から第一のAPC駆動電流がAPC駆動開始時の第一のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間を演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを演算する半導体発光素子の寿命評価方法であります。
この発明により、簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。加えて、多数の個体数を有する半導体発光素子群に対しても、その素子群、すなわちロット全体に対する寿命評価を実施することができ、平均故障寿命も短時間で、少数サンプルで低コスト、かつ信頼性高く、再現性良く安定して実施でき、スクリーニングとしての半導体発光素子の選別にも用いることが可能となります。
請求項9に記載の発明は、複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値で第一のAPC駆動した後、複数の半導体発光素子を第二の設定温度において第二の発光出力値で第二のAPC駆動し、第一のAPC駆動電流及び第二のAPC駆動電流を検出し、第一のAPC駆動電流の時間変化率、及び第二のAPC駆動電流の時間変化率からそれぞれ第一及び第二のAPC駆動電流が第一及び第二のAPC駆動開始時の第一及び第二のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間をそれぞれ演算し、寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から複数の半導体発光素子群のMTTFを演算する半導体発光素子の寿命評価方法であります。
この発明により、多数の発光素子群に対しても簡便に寿命時間の推定演算が実施できるようになるだけでなく、多数の素子に対しても短時間でかつ、少数のサンプリング個体のみにて寿命算出することが可能となり、信頼性・精度が高く、再現性の良い安定した寿命評価を高効率にて実施できます。加えて、多数の個体数を有する半導体発光素子群に対しても、その素子群、すなわちロット全体に対する寿命評価を実施することができ、平均故障寿命も短時間で、少数サンプルで低コスト、かつ信頼性高く、再現性良く安定して実施でき、スクリーニングとしての半導体発光素子の選別にも用いることが可能となります。しかも、寿命時間は評価に関わるさまざまな環境因子によって異なるところ、上記のあらゆる発光素子個体や発光素子群に対し、複数の環境条件すなわち、異なる温度下や異なる発光出力下における寿命時間について、精密に寿命評価することが可能となるだけでなく、環境因子が変化したときの発光素子の環境因子依存性についても短時間で正確に見積もることが可能となります。
請求項10に記載の発明は、第二の設定温度は第一の設定温度以下であり、又は/及び第二の発光出力は第一の発光出力以下である半導体発光素子の寿命評価方法であります。
これにより、初期変動等によるAPC駆動開始時初期に観察されるAPC駆動電流の不安定性に関わる要因を除去でき、より確度の高い寿命評価が可能となります。
請求項11に記載の発明は、半導体発光素子の所定の発光出力値における寿命評価時間を、異なる発光出力値における寿命評価時間から該発光出力値と該寿命評価時間の反比例なる光量依存性に基づき算出する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置であります。
この発明の実施により、さまざまな発光出力に対応する各発光出力時の寿命評価時間について、他の異なる発光出力時の寿命評価時間にもとづき算出することが可能となり、大幅な労力の低減と時間の短縮を図れ、再現性良く信頼性の高い評価を実施でき、スクリーニング(評価選別)への適用も可能となります。
請求項12に記載の発明は、半導体発光素子の所定の発光出力値における寿命評価時間を、異なる発光出力値における寿命評価時間から該発光出力値と該寿命評価時間の反比例なる光量依存性に基づき算出する半導体発光素子の寿命算出方法であります。
この発明の実施により、さまざまな発光出力に対応する各発光出力時の寿命評価時間について、他の異なる発光出力時の寿命評価時間にもとづき算出することが可能となり、大幅な労力の低減と時間の短縮を図れ、再現性良く信頼性の高い評価を実施でき、スクリーニング(評価選別)への適用も可能となります。
【0012】
(半導体発光素子)
GaAs系、InP系、GaN系など通称III−V族化合物半導体とよばれる半導体材料からなる化合物半導体はもちろん、Si系などその他の半導体材料からなる発光素子はLED(発光ダイオード)、LD(レーザダイオード)等すべてこの範疇に含まれる。望ましくは半導体レーザダイオードであるところ、さらには半導体レーザの材料として窒化物系半導体材料であるAlxInyGa1−x−yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x+y≦1)を含有するものであればより好ましい。窒化物系半導体材料からなる発光素子では、本発明により劣化の早さ具合がより正確に再現性良く、寿命評価することができる。
【0013】
(第一の設定温度)
寿命試験を実施する設定温度(環境温度ともいう)のことであり、任意に設定することができる。典型例として、現在の窒化物系半導体レーザダイオード(LD)においては、25℃〜70℃の範囲であればより好ましいことが判明している。25℃より低温では、劣化速度が小さいので寿命評価に要する時間が長引く傾向にあり、70℃より高温では高温によるさまざまな加速劣化がなだれ現象的に発生する傾向があるので、通常の室温動作環境における劣化の評価としては70℃より低温がより望ましいが、第一の設定温度としては特に限定されるものではなく、またこれらはあくまで、現在の窒化物系半導体レーザダイオードにおける典型的例示であり、本発明を実施するに際し何ら制限を加えるものではない。さらにまた、100℃を超える高温にて寿命評価を行うと、発光素子が破壊される場合があり、破壊される傾向が強くなるので、非破壊検査を徹底実施する場合にはこの温度以下で実施することがより望ましいが、第一の設定温度としては特にこの温度に限定されることはない。
【0014】
(第一の発光出力値)
寿命試験を実施する設定発光出力値のことである。第一のAPC駆動時には発光出力値を第一の発光出力値に設定することにより、第一の発光出力値にて一定光出力駆動(APC駆動)するものであるが、評価対象となる発光素子の動作範囲内であれば、発光出力値は限定されるものではない。典型例として、現在の窒化物系半導体LDにおいては、30mW〜55mW程度で寿命評価を実施すると、ワイブルプロット時における相関関係が非常に明確に観察される傾向が確認されており、より好ましいものであるが、あくまで典型例であり第一の発光出力値を設定するに際し、これに限定されるものではない。
【0015】
(APC駆動)
Auto Power Controlすなわち、一定光出力駆動のことを指す。典型的には半導体レーザダイオード(LD)における、一定光出力駆動をことを意味するが、本発明におけるAPC駆動とは、半導体レーザダイオードのみに限定されるものではない。半導体発光素子を一定光出力駆動する場合すべてにおいて、APC駆動は該当するものである。
【0016】
(第一のAPC駆動電流)
APC駆動するときに半導体発光素子に供給される電流のことであり、一般には半導体発光素子個々に供給する電流をいう。典型例として半導体レーザダイオード(LD)をAPC駆動する場合では、所定の一定光出力になるように第一のAPC駆動電流が調整された上で、APC駆動されるものであるが、時間の経過と共に、この第一のAPC駆動電流は増加する。すなわち、半導体レーザダイオードの経時劣化に伴って、第一のAPC駆動電流が増加するものである。典型例として、窒化物系半導体レーザダイオードの場合にはAPC駆動開始時の第一のAPC駆動電流に対して、その電流値が1.2〜1.3倍になるまではAPC駆動時間すなわち、信頼性寿命評価時間に比例して第一のAPC駆動電流が増加する。その後、経過時間と共に急激に第一のAPC駆動電流が増加し、APC駆動開始時の第一のAPC駆動電流に対して、その電流値が1.5倍になる時間でもって、典型例の窒化物系半導体レーザダイオードの寿命とすることができる。
【0017】
(APC駆動電流の時間変化率)
APC駆動を信頼性寿命評価試験のように長時間継続すると、当初徐々に劣化により、駆動電流が増加する傾向が観察される。これを単位時間あたりの増加率に換算したものが、APC駆動電流の時間変化率であり、増加率または、劣化率などと呼ばれることもある。典型例として窒化物系半導体レーザダイオードの場合においては、時間変化率は、APC駆動の極初期に発生する初期劣化を除外すると、大体、初期電流値の1.2倍〜1.3倍程度になるまでは一定であるが、その後急激に時間変化率が大きくなり、APC駆動の電流が増大する。
【0018】
(所定の駆動電流値)
任意に設定できる電流値である。この所定の電流値になった時点で、その素子に関わる寿命評価としては、寿命であると判定することができる。典型例として窒化物系半導体レーザダイオードの場合には、APC駆動開始時の電流の1.5倍の電流値になった時点で寿命と判定することができる。さらには、典型的には窒化物系半導体レーザダイオードにおいては、APC駆動電流の時間変化率はAPC駆動電流の電流初期値の1.2倍〜1.3倍で急激に増大することが判明したため、所定の駆動電流値をAPC駆動電流の電流初期値の1.2〜1.35倍とすることが、より正確な、再現性のある信頼性評価及びワイブルプロットを獲得する上で望ましい。
【0019】
(APC駆動電流の電流値の所定倍)
上記(所定の駆動電流値)で説明したことに準じるものであり、所定倍とは基本的に任意の倍率に設定できるものではあるが、典型例としての、窒化物系半導体レーザダイオードにおいては、所定倍を1.2倍〜1.35倍と設定することにより、より信頼性が高く、再現性の良い、安定した信頼性寿命評価を実施することができるとともに、ワイブルプロットなど複数の素子評価を統計的に処理する場合においても、より、さまざまな環境因子と寿命特性との相関関係が明確に把握され、また寿命予測したり、平均故障寿命(MTTF)等が算出できるので、より望ましい。
【0020】
(寿命評価時間)
測定する個々の発光素子に関しては、寿命時間はAPC駆動電流の初期電流値の1.5倍の駆動電流値になった時点で寿命時間と評価することができるものであるが、1.2〜1.35倍の駆動電流値になる時点でもって、寿命と評価する評価法が窒化物系半導体レーザダイオードにおいてはより好ましい。さらには、この寿命時間は実際に駆動電流値が1.3倍または1.5倍になるまで駆動することなく、APC駆動の時間変化率において電流増加が時間に比例する関係を用いて、当初の数百時間までの電流増加率から算出することができるものである。なお、個々の半導体発光素子の寿命については、個々ごとに個別で異なるものであるが、それらのデータをワイブルプロットして、発光素子群すなわち同ロット発光素子や同構造発光素子の多数集合体全体としての寿命としては累積故障率が63.2%となるところの寿命時間でもって平均故障寿命として評価することができる。また、寿命評価時間は寿命時間のみならずエージング評価している時間(エージング時間)であっても良い。
【0021】
(ワイブルプロット)
本発明における典型的なワイブルプロットとしては横軸に対数時間軸を、縦軸に累積故障率(累積不良率ともいう)をとり、所定の条件下(環境因子下)における素子個々の寿命時間をプロットしたものがある。典型例における窒化物系半導体レーザダイオードにおいては、累積故障率が60%程度強までは近似直線上に大体フィットすることが判明しているが、これを超えると非常に長寿命な素子が観察され、近似直線とは寿命時間が長いほうへ乖離していくことが判明しているが、これに限定されるものではない。
【0022】
(半導体発光素子群)
典型的には同じ構造であったり、同じ設計で作製された素子であったり、同じロットで作成された発光素子の集合体を同一の半導体発光素子群という。例えば、カタログ等に記載される同一型番、同一形式の発光素子もこれに該当する。同一型番、同一構造、同一ロットの半導体発光素子であっても素子単体を個々に評価すると、寿命特性は相当に異なっているものではあるが、その集合体に対する寿命評価として、MTTF等が用いられることがある。ここでいう、半導体発光素子群としては上記典型例に限定されるものではなく、半導体発光素子が2個以上複数個を一括りにして呼称するものであり、呼称対象の個数だけに依存し、その他の限定要因に制限されることはない。
【0023】
(MTTF)
平均故障寿命、あるいはMean Time To Failureともいい、典型的にはワイブルプロット時の累積故障率が63.2%になるところの推定寿命時間、または実評価の寿命時間を平均故障寿命というが、必ずしも63.2%でなくても良く、ある所定の累積故障率になる時の推定寿命時間をMTTFや平均故障寿命とする場合もある。例えば『MTTF50%』といった場合には、ワイブルプロット時の累積故障率(又は累積不良率)が50%になる寿命時間のことを意味することもある。
【0024】
(第二の設定温度)
第一のAPC駆動に対し、それと異なる環境下で第二のAPC駆動による信頼性寿命試験をする場合の、第二のAPC駆動時の設定温度を第二の設定温度という。第二のAPC駆動時において、発光出力が第一のAPC駆動時と異なる場合には、第二の設定温度は第一の設定温度と同じでも良いし、異なっていても良い。一方、第二のAPC駆動時において、発光出力が第一のAPC駆動時と同じ場合には、第二の設定温度は第一の設定温度と異なっていることが望ましい。第一と第二の設定温度が異なる場合においては、第一の設定温度に対し第二の設定温度がより低い方が、初期劣化の激しい発光素子を抽出除外できる意味合いにおいてより望ましい。すなわち、半導体発光素子においてはAPC駆動初期に、極端に劣化してしまい、発光出力が大幅に低減したり、光らなくなる素子個体が含まれていることがあるが、このような素子個体は、寿命評価時における特異点扱いとしてワイブルプロット時の対象から除外することが、より信頼性の高い評価をする上で好ましいものであるが、この意味において最初により厳しい環境条件下すなわち、より高い温度やより高い光出力下でAPC駆動信頼性寿命試験を実施し、その後環境条件を緩めたすなわち、より低い温度やより低い光出力下でのAPC駆動信頼性寿命試験を実施することが望ましい。
【0025】
ところで、この第二の設定温度とは単一の温度のみではなく、2段階以上の複数の設定温度を有することも可能である。すなわち、典型例としては、第一の設定温度を70℃とし、第二の設定温度を60℃と50℃と40℃としても良い。この場合には、第一の設定温度でAPC駆動して経過時間に対する電流増加率を測定した後、続いて第二の設定温度である60℃、50℃、40℃で同様に各々の電流増加率から、各々の環境下における寿命を推定算出し、ワイブルプロットすることが可能である。したがって、よりさまざまな環境条件下における、それぞれの寿命について評価・判定したい場合には、2以上のより多くの温度等環境条件を設定することが望ましい。2段階以上の複数の設定温度を有する場合においても、より高い設定温度における、すなわちより厳しい環境条件下における寿命試験評価から実施することがより好ましいことは、上述のとうりである。
【0026】
(第二の発光出力値)
第一のAPC駆動に対し、それと異なる環境下で第二のAPC駆動による信頼性寿命試験をする場合の、第二のAPC駆動時の設定光出力を第二の発光出力値という。第二のAPC駆動時において、設定温度が第一のAPC駆動時と異なる場合には、第二の発光出力値は第一の発光出力値と同じでも良いし、異なっていても良い。一方、第二のAPC駆動時において、設定温度が第一のAPC駆動時と同じ場合には、第二の発光出力値は第一の発光出力値と異なっていることが望ましい。第一と第二の発光出力値が異なる場合においては、第一の発光出力値に対し第二の発光出力値がより低い方が、初期劣化の激しい発光素子を初期に抽出除外できる意味合いにおいてより望ましい。すなわち、半導体発光素子においてはAPC駆動初期に、極端に劣化してしまい、発光出力が大幅に低減したり(駆動電流を増大しても発光出力が上がらない)、光らなくなる素子個体が含まれていることがあるが、このような素子個体は、寿命評価時における特異点扱いとしてワイブルプロット時の対象から除外することが、より信頼性の高い評価をする上で好ましいものであるが、この意味において最初により厳しい環境条件下すなわち、より高い温度やより高い光出力下でAPC駆動信頼性寿命試験を実施し、その後環境条件を緩めたすなわち、より低い温度やより低い光出力下でのAPC駆動信頼性寿命試験を実施することが望ましい。
【0027】
ところで、この第二の発光出力値とは単一の発光出力値のみではなく、2段階以上の複数の発光出力値を有することも可能である。すなわち、典型例としては、第一の発光出力値を55mWとし、第二の発光出力値を40mWと30mWとしても良い。
この場合には、第一の発光出力値でAPC駆動して経過時間に対する電流増加率を測定した後、続いて第二の発光出力値である40mWと30mWで同様に各々の電流増加率から、各々の環境下における寿命を推定算出し、ワイブルプロットすることが可能である。したがって、よりさまざまな環境条件下における、それぞれの寿命について評価・判定したい場合には、2以上のより多くの光出力等環境条件を設定することが望ましい。2段階以上の複数の発光出力値を有する場合においても、より高い発光出力値における、すなわちより厳しい環境条件下における寿命試験評価から順次実施することがより好ましいことは、上述のとうりである。
【0028】
(第二のAPC駆動)
本発明における典型例としては、第一のAPC駆動と第二のAPC駆動という2以上の複数の異なる環境下、すなわち設定温度か又は/及び光出力のことなる条件下における寿命評価を、より環境条件の厳しいほうから順次、すなわちより設定温度が高く、又は/及びより光出力が高い条件からAPC駆動信頼性寿命評価を実施する。第二のAPC駆動における環境条件は、必ずしも単一の環境条件である必要はないが、この場合においても、より厳しい環境下のAPC駆動信頼性試験から順次実施することが望ましい。
【0029】
(第一のAPC駆動電流及び該第二のAPC駆動電流を検出する検出手段)
典型的には、電流計である。ただし、本発明の実施においては電流の絶対値は必ずしも検出する必要は無く、相対的な駆動電流値の増加率が把握できるものであれば可能である。したがって、ここでいう検出手段とは、電流計や電圧計等に限定されるものではなく、等価的に電流値が相対的に把握できる手段であれば何でも良い。
【0030】
(第二の設定温度は第一の設定温度以下)
初期劣化の著しく非実用的な発光素子を、抽出除外する意味において、第二の設定温度は第一の設定温度以下の方がより好ましいことは上述のとうりである。
【0031】
(第二の発光出力値は第一の発光出力値以下)
初期劣化の著しく非実用的な発光素子を、抽出除外する意味において、第二の発光出力は第一の発光出力以下の方がより好ましいことは上述のとうりである。
【0032】
(光量依存性)
同一発光素子群で形成された集団に対し設定発光出力の異なる環境下における信頼性寿命試験を実施し、ワイブルプロットした場合は、発光出力の値に依存してある所定の累積故障率になる推定寿命や寿命、平均故障寿命(MTTF)が関係することが判明した。典型例として、窒化物系半導体レーザダイオードにおいては、推定寿命はAPC駆動信頼性評価時の設定発光出力値に反比例することが判明した。反比例とはすなわち、光量が1/3倍、1/2倍、2倍、3倍、4倍になれば寿命はそれぞれ3倍、2倍、1/2倍、1/3倍、1/4倍になるような関係が成立することをいい、y=a/xなる関係が存在する(y:寿命評価時間、x:発光出力、a:a>0なる定数)。別の表現をすれば、寿命時間と発光出力の積が同一発光素子群で構成された同一集団に対しては一定となるものである。ただし、ここでいう寿命時間とは、ある所定の累積故障率になる寿命をいうものである。
【0033】
(例えばMTTF63.2%時の寿命時間など、相対比較計算時は双方同じ累積故障率寿命で推定計算できるものであり、累積故障率の値に関係なく所定の値にすれば推定計算は可能である)
すなわち、同一発光素子群で構成された同一集団に対しては、推定寿命と発光出力の反比例関係を表す一定の値の定数a((寿命)=a/(発光出力))を決めることができ、これは同一発光素子群で構成された同一集団である限り変化しない。例えば、同一発光素子群の典型例として、図2に示すように、同一発光素子群だが異なる2つの集団のレーザダイオード素子群A(集合A)、素子群B(集合B)の場合には、これらの集合A,集合Bはそれぞれ同一発光素子群から構成されるので図のように例えば55mW発光時の寿命((寿命A55)と(寿命B55))と30mW発光時の寿命((寿命A30)と(寿命B30))は集合A,集合B共にそれぞれ、発光出力に対し反比例する関係がある。この関係から、他の光出力条件における、寿命をそれぞれ推定算出することができるのである。すなわち集合Aに対しては(寿命A55)*(55mW)=(寿命A30)*(30mW)となり、変形すると、(寿命A55)/(寿命A30)=30/55となりすなわち、同一発光素子群から形成される集合体Aに対しては、寿命は発光出力に反比例することが理解できる。一例として、集合Aの55mW時の寿命を(寿命A55)=300時間が評価測定でわかると、30mW時の寿命は(寿命A30)=(寿命A55)*(55/30)=550時間と実際に試験評価しなくても推定計算することができるのである。同様に、集合Aの10mW時の寿命は(寿命A10)=(寿命A55)*(55/10)=1650時間とこれも実際に試験評価しなくても推定計算することができるのである。
また、集合Bに対しても、(寿命B55)*(55mW)=(寿命B30)*(30mW)となる。変形すると、(寿命B55)/(寿命B30)=30/55となりすなわち、同一発光素子群から形成される集合Bに対しては、寿命は発光出力に反比例することが理解できる。例えば、10mW時の寿命を(寿命B10)=1815時間が測定評価で判明したとすると、30mW時の寿命は(寿命B30)=(寿命B10)*(10/30)=605時間と実際に試験評価しなくても推定計算することができる。同様に、集合Bの55mW時の寿命は(寿命B55)=(寿命B10)*(10/55)=330時間とこれも実際に試験評価しなくても推定計算することができるのものである。
本発明においてはこの光量依存性(又は光量積分と呼称することもある)なる光出力と寿命の反比例関係に基づいて、同一の発光素子群において、発光出力(光量)が異なる場合における信頼性寿命について、実際の評価を実施しなくても安定的に精度良く推定することが可能となるものである。この関係は寿命評価時間に対しても成立するものである。
なお、本発明にいう設定温度とは、典型的には半導体チップの温度のことであるが、半導体発光素子の筐体温度で等価的に代替でき、例えば半導体レーザダイオードであればステムの温度やステム支持放熱筐体温度などである。ただし、現実的にチップ温度やステム温度測定が難しい場合には、放熱筐体温度や半導体発光素子を保持する環境温度、すなわち、恒温層内であれば恒温層内の設定温度などで、適宜補正を加えることにより等価的に適用できるものである。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
半導体発光素子の所定の発光出力値と異なる発光出力値における寿命時間において発光出力値と寿命時間に反比例関係が成り立つ(または半導体発光素子の所定の発光出力値と異なる発光出力値における寿命時間においてy=1/x が成り立つ(x:発光出力値, y:寿命時間の倍率とする))半導体発光素子群からランダムに20個サンプリングし、
a) Tc=60℃, Po=55mW 300時間 + b) Tc=60℃, Po=30mW 500時間のエージングを行った。(図3、図4参照)
これによりTc=60℃, Po=30mW 1000時間相当の劣化を実現できたことになる。即ち、発光出力値を上げることで実評価時間トータル800時間のエージングにもかかわらず、Tc=60℃, Po=30mW 1000時間相当の加速劣化試験を実現することができる。
すなわち、
a) + b) = Tc=60℃, Po=30mW 1050時間に相当
また、それぞれのエージングによる推定寿命をワイブル分布で表すとそれぞれの近似線は平行であり、寿命に1.83倍の差が見られる。これにより、Tc=60℃において反比例関係が成り立つことを検証することができる。(図4参照)
【0035】
(実施例2)
光量依存性が成り立ち(または半導体発光素子の所定の発光出力値と異なる発光出力値における寿命時間においてy=1/x が成り立つ(x:発光出力値, y:寿命時間の倍率とする))、かつTc=60℃とTc=70℃で推定寿命に2倍の差がある条件を満たす同一の半導体発光素子群からランダムに20個サンプリングし、
c) Tc=70℃, Po=55mW 200時間 + d) Tc=70℃, Po=30mW 150時間のエージングを行う。(図5参照)
これによりTc=60℃, Po=30mW 1000時間相当の劣化を実現できる。即ち、設定温度と発光出力値を上げることにより、実評価時間はトータル350時間のエージングにもかかわらず、Tc=60℃, Po=30mW 1000時間相当を実時間350時間で加速劣化させ寿命評価を実施することができる。
トータル換算時間 c) + d) = Tc=60℃, Po=30mW 1033時間に相当
また、それぞれのエージングによる推定寿命をワイブル分布で表すとそれぞれの近似線は平行であり、1.83倍の差が見られる。これにより、Tc=70℃において反比例関係が成り立つことを検証することができる。(図6参照)
【0036】
(実施例3)
実施例2に加えてさらに下記条件でのエージングを実施した。
実施例2 + e) Tc=60℃, Po=30mW 300時間のエージングを行う。(図7参照)
それぞれのエージングによる推定寿命をワイブル分布で表すとそれぞれの近似線は平行であり、d) と e) では寿命に2倍の差が見られる。これにより、Tc=60℃とTc=70℃で2倍の寿命差があることを検証することができる。(図8参照)
これを評価選別スクリーニングに用いる場合、例えば同一発光素子群であるかどうかすなわち光量依存性成立の可否による対象母集団の同一発光素子群性のスクリーニングや寿命規格を満たすかどうかの判定、個々半導体発光素子においてワイブルプロット近似直線にのらない異常素子の除去などに用いることも可能な評価装置を作製することができるものである。
このように寿命評価の温度を変えた場合の寿命時間との関係は、図10に示すように所定の値に基づき換算できる。すなわち、同一半導体発光素子群から構成される同一の集合体に関する限りにおいては、図10に基づくと、寿命評価温度60℃の寿命を基準とすると70℃、50℃、40℃、25℃の各寿命評価温度時の寿命時間はそれぞれ、基準に対し0.5倍、1.7倍、4.3倍、7.1倍となることが判明したものであり、この関係に基づいて異なる温度における寿命時間を相対的にに換算することができるものである。一例を示すと、70℃における寿命評価エージング100時間は、60℃の200時間、50℃の340時間、40℃の860時間、25℃の1420時間の寿命評価エージングにそれぞれ相当するものである。
【0037】
【発明の効果】
本発明により、長時間にわたる劣化試験の結果を短時間で加速して評価することができるようになった。さらには、評価サンプルを多数用いることなく減数させることができ、選別スクリーニング、例えば設定寿命より短い素子群の選別や標準とするワイブルプロット近似直線からずれた素子の選別などに用いることができる。加えて、作製した素子が同一発光素子群(設計同一、規格合格)であるかどうかの確認・検証と同時に、光量依存性の確認・検証をして光量依存性の規格に則った素子であるかどうかの判断をすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】単一の半導体レーザダイオードの寿命評価に関わる従来技術と本発明の典型例説明図
【図2】同一の半導体発光素子群にかかる異なるロットのワイブルプロット典型例模式概念図
【図3】a)Tc=60℃、P0=55mW、300時間と
b)Tc=60℃、P0=30mW、500時間エージング結果
における動作電流の推移
【図4】a)Tc=60℃、P0=55mW、300時間と
b)Tc=60℃、P0=30mW、500時間エージング結果
における寿命推定のワイブル分布
【図5】c)Tc=70℃、P0=55mW、200時間と
d)Tc=70℃、P0=30mW、150時間エージング結果
における動作電流の推移
【図6】c)Tc=70℃、P0=55mW、200時間と
d)Tc=70℃、P0=30mW、150時間エージング結果
における寿命推定のワイブル分布
【図7】c)Tc=70℃、P0=55mW、200時間と
d)Tc=70℃、P0=30mW、150時間と
e)Tc=60℃、P0=30mW、300時間エージング結果
における動作電流の推移
【図8】c)Tc=70℃、P0=55mW、200時間と
d)Tc=70℃、P0=30mW、150時間と
e)Tc=60℃、P0=30mW、300時間エージング結果
における寿命推定のワイブル分布
【図9】様様な条件下のエージング結果における寿命推定のワイブル分布
【図10】エージング温度が変化した場合の寿命変化の相対関係
Claims (12)
- 半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動する半導体発光素子駆動装置と、該APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出する検出手段を備え、前記第一のAPC駆動電流の時間変化率から該第一のAPC駆動電流が所定の駆動電流値になるのに要する時間を演算する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置。
- 前記所定の駆動電流値が、該APC駆動開始時の該第一のAPC駆動電流の電流値の1.2〜1.35倍であることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子の評価装置。
- 複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動する半導体発光素子駆動装置と、該APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出する検出手段を備え、前記第一のAPC駆動電流の時間変化率から該第一のAPC駆動電流が該APC駆動開始時の該第一のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間を演算し、該寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から該複数の半導体発光素子群のMTTFを出力する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置。
- 複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値で第一のAPC駆動した後、該複数の半導体発光素子を第二の設定温度において第二の発光出力値で第二のAPC駆動する半導体発光素子駆動装置と、該第一のAPC駆動電流及び該第二のAPC駆動電流を検出する検出手段を備え、前記第一のAPC駆動電流の時間変化率、及び第二のAPC駆動電流の時間変化率からそれぞれ該第一及び第二のAPC駆動電流が該第一及び第二のAPC駆動開始時の該第一及び第二のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間をそれぞれ演算し、該寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から該複数の半導体発光素子群のMTTFを演算し、出力する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置。
- 前記第二の設定温度は前記第一の設定温度以下であり、又は/及び前記第二の発光出力は前記第一の発光出力以下である請求項4記載の半導体発光素子の評価装置。
- 半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動し、該APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出し、前記第一のAPC駆動電流の時間変化率から該第一のAPC駆動電流が所定の駆動電流値になるのに要する時間を演算する半導体発光素子の寿命評価方法。
- 前記所定の駆動電流値が、該APC駆動開始時の該第一のAPC駆動電流の電流値の1.2〜1.35倍であることを特徴とする請求項6記載の半導体発光素子の寿命評価方法。
- 複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値でAPC駆動し、該APC駆動時の第一のAPC駆動電流を検出し、前記第一のAPC駆動電流の時間変化率から該第一のAPC駆動電流が該APC駆動開始時の該第一のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間を演算し、該寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から該複数の半導体発光素子群のMTTFを演算する半導体発光素子の寿命評価方法。
- 複数の半導体発光素子を第一の設定温度において第一の発光出力値で第一のAPC駆動した後、該複数の半導体発光素子を第二の設定温度において第二の発光出力値で第二のAPC駆動し、該第一のAPC駆動電流及び該第二のAPC駆動電流を検出し、前記第一のAPC駆動電流の時間変化率、及び第二のAPC駆動電流の時間変化率からそれぞれ該第一及び第二のAPC駆動電流が該第一及び第二のAPC駆動開始時の該第一及び第二のAPC駆動電流の電流値の所定倍の駆動電流値になる寿命時間をそれぞれ演算し、該寿命時間をワイブルプロットした時の近似直線から該複数の半導体発光素子群のMTTFを演算する半導体発光素子の寿命評価方法。
- 前記第二の設定温度は前記第一の設定温度以下であり、又は/及び前記第二の発光出力は前記第一の発光出力以下である請求項9記載の半導体発光素子の寿命評価方法。
- 半導体発光素子の所定の発光出力値における寿命評価時間を、異なる発光出力値における寿命評価時間から該発光出力値と該寿命評価時間の反比例なる光量依存性に基づき算出する演算装置を備える半導体発光素子の評価装置。
- 半導体発光素子の所定の発光出力値における寿命評価時間を、異なる発光出力値における寿命評価時間から該発光出力値と該寿命評価時間の反比例なる光量依存性に基づき算出する半導体発光素子の寿命算出方法。
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JP2012132882A (ja) * | 2010-12-24 | 2012-07-12 | Mitsubishi Electric Corp | 電子部品の品質評価装置および方法 |
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2003
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