JP2004303843A - 多層基板および電子部品 - Google Patents
多層基板および電子部品 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004303843A JP2004303843A JP2003092992A JP2003092992A JP2004303843A JP 2004303843 A JP2004303843 A JP 2004303843A JP 2003092992 A JP2003092992 A JP 2003092992A JP 2003092992 A JP2003092992 A JP 2003092992A JP 2004303843 A JP2004303843 A JP 2004303843A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- dielectric
- multilayer substrate
- resin
- temperature coefficient
- ppm
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Fixed Capacitors And Capacitor Manufacturing Machines (AREA)
- Production Of Multi-Layered Print Wiring Board (AREA)
Abstract
【課題】回路の温度特性を改善し、かつ小型化が図れる多層基板とそれを用いた電子部品を提供する。
【解決手段】樹脂または樹脂に機能材料粉末を混合した1枚以上の基板からなる。多層基板3の少なくとも1層に、樹脂に誘電体粉末を混合してなり、容量の温度係数が負となる誘電体層2a、2bを有し、該誘電体層を挟むコンデンサ電極5b、5cを備える。
【選択図】 図1
【解決手段】樹脂または樹脂に機能材料粉末を混合した1枚以上の基板からなる。多層基板3の少なくとも1層に、樹脂に誘電体粉末を混合してなり、容量の温度係数が負となる誘電体層2a、2bを有し、該誘電体層を挟むコンデンサ電極5b、5cを備える。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂または樹脂に機能材料粉末を混合した基板を積層してなる多層基板とこれを用いた電子部品に係わり、特に温度特性を改善させた多層基板と電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には、樹脂に機能材料粉末を混合した複合材料として、熱安定の高い複合材料を提供することを目的として、20℃〜50℃で比誘電率が4以上で比誘電率の温度係数を150ppm/℃以下としたものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−79056号公報。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
樹脂あるいは樹脂に機能材料粉末を混合した複合材料を用いて多層基板および搭載電子部品により所定の機能を有するモジュールを構成する際に、搭載素子が正の温度係数を持つ場合には、モジュールの温度による特性変化を小さくするため、負の温度係数を持つ温度補償用コンデンサを搭載していた。
【0005】
しかし前記特許文献1に記載の基板を用いた場合、コンデンサの比誘電率の温度係数を充分に小さくすることができないという問題点がある。また、温度補償用のコンデンサを搭載するための部品実装面を広くとる必要があり、小型化を阻害するという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、回路を温度特性を改善し、かつ小型化が図れる多層基板とそれを用いた電子部品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
多くの樹脂の比誘電率の熱係数はおおよそ±50〜60ppm/℃以内であり、かつ比誘電率も3程度と小さい。このような樹脂に、比誘電率の温度係数が負である誘電体粉末を含有させることで温度係数を負にすることが可能である。そして、その比誘電率が樹脂よりも大きな誘電体粉末を樹脂に混合することにより、複合誘電体の比誘電率を大きくすることが可能となり、電子部品の1種であるモジュールの小型化が可能になる。
【0008】
さらに、分散させる負の温度係数を持つ誘電体粉末の種類や量を変えたり、あるいは、比較的比誘電率の大きな比誘電率を持ち、ゼロに近いかまたは正の温度係数を持つ誘電体粉末と負の温度係数を持つ誘電体粉末との混合比率を適宜変えることにより、複合誘電体の温度係数や比誘電率を、モジュールで必要とされる特性に合った値にすることが可能となる。すなわち、本願発明は以下のことを内容とする。
【0009】
(1)本発明の多層基板は、樹脂または樹脂に機能材料粉末を混合した1枚以上の基板からなる多層基板であって、
前記多層基板の少なくとも1層に、樹脂に誘電体粉末を混合してなり、容量の温度係数が負となる誘電体層を有し、該誘電体層を挟むコンデンサ電極を備えたことを特徴とする。
【0010】
(2)また、本発明の多層基板は、前記誘電体層の−25〜85℃における容量の温度係数が−80ppm/℃以下であることを特徴とする。
【0011】
(3)また、本発明の多層基板は、 前記誘電体層に2種以上の誘電体粉末を含有することを特徴とする。
【0012】
(4)また、本発明の多層基板は、前記誘電体層に混合する少なくとも1種の誘電体粉末の−25〜85℃における比誘電率の温度係数が−200ppm/℃以下であることを特徴とする。
【0013】
(5)本発明の電子部品は、前記(1)〜(4)のうちのいずれかの多層基板により構成されていることを特徴とする。
【0014】
(6)本発明の電子部品は、電圧制御発振器であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は本発明による多層基板の一実施の形態を示すもので、図1は断面図、図2は層構成図、図3は多層基板に搭載する部品の配置を示す平面図、図4は回路図である。本実施の形態は電子部品として電圧制御発振器を構成する場合について示すが、本発明は勿論他の電子部品にも適用できるものである。
【0016】
図1において、1a〜1gは樹脂または樹脂に機能材料粉末を混合した複合材料からなる誘電体層、2a、2bは本発明により設けられた温度補償用誘電体層である。多層基板3はこれらの誘電体層1a〜1g、2a、2bと、インダクタ層4形成用の導体パターン5aと、コンデンサ層6形成用の導体パターン5b、5cと、共振器層7形成のためのグランド用導体パターン5d、5eおよびストリップライン用導体パターン5fとの積層体でなる。これらはビルドアップ工法や、複数枚の樹脂基板を接着層を介して同時に積層し接着する工法等により作製される。
【0017】
8は多層基板3上の搭載部品、9はグランド用導体パターン5d、5e等の導体層と搭載部品8とを接続するスルーホール、10は多層基板3の側面に形成され、多層基板3内の導体パターン間の接続あるいは外部接続用端子として設けられたサイドスルーホールである。
【0018】
図2において、(a)が最上層、(b)がその下の層、…(j)が最下層となるように積層される。図3に示す搭載部品は、最上層の導体パターン上に半田付け等で固定して搭載される。
【0019】
図4において、11は制御電圧入力端子、12は電源端子、13は出力端子、C1〜C9はコンデンサ、D1はバリキャップダイオード、R1〜R4は抵抗、L1〜L3はインダクタ、Q1、Q2はトランジスタ、7Aは前記共振器層7により構成される共振器である。
【0020】
図1、図2と図4の対比から分かるように、前記インダクタL1、L2は前記インダクタ層4に形成される導体パターン5aにより実現される。また、インダクタL3は最上層と、共振器7Aのストリップライン5fと同層の導体パターンにより形成される。
【0021】
コンデンサC2〜C5、C8は前記温度補償用誘電体層2aを挟む導体パターン(コンデンサ電極)5b、5cにより実現される。共振器7Aは、グランド用導体パターン5d、5eと、これらの間のストリップライン用導体パターン5fと、これらの間に設けられた温度補償用誘電体2bおよび誘電体層1e〜1gとにより構成される。
【0022】
図3と図4の対比から分かるように、多層基板3には、コンデンサC1、C6、C7、C9、抵抗R1〜R4、バリキャップダイオードD1、トランジスタQ1、Q2が搭載される。
【0023】
この電圧制御発振器において、前記バリキャップダイオードD1やインダクタL1〜L3等は正の温度係数を持つ。このような温度係数により、温度変化に伴って温度変化による中心発振周波数の変化を防止するため、少なくとも中心発振周波数への影響の大きいコンデンサC2、C3については、負の温度係数を持つように構成する。すなわち、前記温度補償用誘電体層2aは負の温度係数を持つように、負の温度係数をもつ誘電体粉末を混合して構成する。また、本実施の形態においては、共振器7Aを構成する誘電体層2bも負の温度係数を持つ誘電体粉末を樹脂に混合することにより、全体として負の温度係数を持たせている。
【0024】
図5は前記誘電体層2a、2bとして従来のように温度補償機能を持たない誘電率の温度係数TCε=−20ppm/℃(−25〜25℃の範囲)、−50ppm/℃(25〜85℃の範囲)のものを用い、温度補償用のチップコンデンサを搭載しなかった場合の制御電圧入力端子11に加わる制御電圧Vcと出力端子13から得られる中心発振周波数Fとの関係を、25℃、−20℃、85℃の場合について示す図である。図6は制御電圧Vcの変化に対する中心発振周波数Fの目標値からのずれΔFを、−20℃、85℃の場合について示す図である。
【0025】
図7は前記誘電体層2a、2bとして、誘電率の温度係数TCε=−360ppm/℃(−25〜25℃の範囲)、−270ppm/℃(25〜85℃の範囲)のものを用いた場合の制御電圧入力端子11に加わる制御電圧Vcと出力端子13から得られる中心発振周波数Fとの関係を、25℃、−20℃、85℃の場合について示す図である。図6は制御電圧Vcの変化に対する中心発振周波数Fの目標値からのずれΔFを、−20℃、85℃の場合について示す図である。
【0026】
図5.図6と図7、図8との対比から分かるように、本発明による温度補償用誘電体層2a、2bを設けた場合には、温度変化による中心発振周波数の目標値からのずれを要求される範囲以内に抑えることが可能となった。
【0027】
具体的には、中心発振周波数の目標値は、制御電圧が0.3Vで2370MHz以下、制御電圧が1.3Vで2460MHz、制御電圧が2.3Vで2530MHz以上である。また、ずれの目標値は±5MHzであり、Vc=0.3Vで見ると、従来例の場合には、−20℃で−13.56MHzのずれがあり、目標範囲内に収まらなかったが、本発明による場合には、−20℃で+1.83MHzのずれとなり、目標範囲内に収めることができた。また、85℃では、従来例の場合には中心発振周波数のずれは+4.98MHzでかろうじて目標範囲内に入ったが、本発明による場合には、中心発振周波数のずれは+2.56MHzとなり、中心発振周波数のずれを目標範囲内に容易に収めることが可能となった。
【0028】
このように、本発明は、多層基板3の内部に温度補償用コンデンサを内蔵したので、多層基板3上に温度補償用コンデンサを搭載する必要がなくなり、多層基板3の部品搭載面積を小さくし、モジュールとして構成される電子部品を小型化できる。
【0029】
このような温度補償の目的を達成するには、コンデンサC2、C3の温度係数は、−25〜85℃の範囲において、−80ppm/℃以下であることがインダクタL1〜L3や抵抗R1〜R4等の温度特性や搭載されるコンデンサC1、C6、C7、C9等の温度係数との関連において好ましい。
【0030】
また、このような容量の温度係数を得るため、本発明における温度補償用誘電体層2a、2bに混合する誘電体粉末の温度係数TCεは、−25℃〜85℃の範囲において、−200ppm/℃以下、すなわちTCε≦−200ppm/℃であることが好ましい。誘電体粉末の比誘電率の温度係数が−200ppm/℃より高い(TCε>−200ppm/℃)と、誘電体粉末の樹脂に対する含有率を大きくしなければならず、成形性の悪化を招く可能性がある。
【0031】
また、2種類以上の誘電体粉末を樹脂に混合してもよい。2種類以上の誘電体粉末を加える場合、少なくとも1種類の誘電体粉末が負の温度係数を有していればよい。2種類以上の誘電体粉末を混合する場合、誘電体層2a、2bの比誘電率の温度係数が−100ppm/℃前後から−300ppm/℃前後であり、かつ比誘電率が大きい場合に有効である。例えば比誘電率が177、比誘電率の温度係数が−1620ppm/℃程度のものにCaTiO3があるが、このような誘電体粉末の含有する量を少なくすれば、温度係数はマイナスから樹脂の温度係数に近づき、目的の値を得ることができる。しかしそれと同時に比誘電率も樹脂の値に近づいて小さくなってしまい、より大きな比誘電率が得られない。
【0032】
しかし比誘電率の温度係数がゼロに近く、比誘電率が大きな誘電体として、BaO−Nd2O3−TiO2系(比誘電率εrは約80〜98、TCε<−80ppm/℃)があるが、このような誘電体粉末を前記負の温度係数の誘電体粉末に複合させて含有することで、比誘電率をある程度維持しながら温度特性を任意に変えることができる。
【0033】
ここで、誘電体共振器による共振周波数の温度係数TCFと(1)式により定義しておく。
TCF=−(TCε/2)−α?(1)
但しαは材料の線膨張係数であり、誘電体の線膨張係数は6〜12程度である。
【0034】
前述のように、誘電体粉末の種類は負の温度係数を持ち、かつその温度係数が−200ppm/℃以下のものが有効である。以下の誘電体において、TCFは(2)式により、線膨張係数αを10に近似させてTCεの値から求めたものである。誘電率の温度係数TCεは1GHzにおける値である。
TiO2{TCε=−900ppm/℃(TCF=400ppm/℃)、εr=104、Q=15000}
CaTiO3{TCε=−1620ppm/℃(TCF=800ppm/℃)、εr=170、Q=1800}
SrTiO3{TCε=−3360ppm/℃(TCF=1670ppm/℃)、εr=255、Q=700}
BaZrO3{TCε=−320ppm/℃(TCF=150ppm/℃)、εr=40、Q=200}
SrSnO3{TCε=−3720ppm/℃(TCF=1850ppm/℃)、εr=129、Q=400}
(Ba,Sr)TiO3{TCε<−2200ppm/℃、εr>260}。
【0035】
さらに必要に応じて、誘電体層2a、2bには下記の誘電体粉末を含んでもよい。
Mg2SiO4(εr=7、Q=20000)
Al2O3(εr=9.8、Q=40000)
MgTiO3(εr=17、Q=22000)
ZnTiO3(εr=26、Q=800)
Zn2TiO4(εr=15、Q=700)
SrZrO3(εr=30、Q=1200)
BaTi2O5(εr=42、Q=5700)
BaTi4O9(εr=38、Q=9000)
Ba2Ti9O20(εr=39、Q=9000)
Ba2(Ti,Sn)9O20(εr=37、Q=5000)
ZrTiO4(εr=39、Q=7000)
(Zr,Sn)TiO4(εr=38、Q=7000)
BaNd2Ti5O14(εr=83、Q=2100)
BaSm2TiO14(εr=74、Q=2400)
Bi2O3−BaO−Nd2O3−TiO2系(εr=88、Q=2000)
PbO−BaO−Nd2O3−TiO2系(εr=90、Q=5200)
(Bi2O3,PbO)−BaO−Nd2O3−TiO2系(εr=105、Q=2500)
La2Ti2O7(εr=44、Q=4000)
Nd2Ti2O7(εr=37、Q=1100)
(Li,Sm)TiO3(εr=81、Q=2050)
Ba(Mg1/3Ta2/3)O3(εr=25、Q=35000)
Ba(Zn1/3Ta2/3)O3(εr=30、Q=14000)
Ba(Zn1/3Nb2/3)O3(εr=41、Q=9200)
Sr(Zn1/3Nb2/3)O3(εr=40、Q=4000)
誘電体粉末の粒径は、実用上問題がない範囲であればよいが、平均粒径0.1〜10μm程度が好ましい。特に粒径が小さくなると、樹脂との混練がしにくくなり、成形時の流動性が低下し、含有できる誘電体粉末の最大量も少なくなる。また、逆に粒径が大きくなると、誘電体粉末を多く含有させることが可能になるが、薄い基板を作製した場合、樹脂層をプリプレグにより形成する場合にプリプレグに凹凸が発生し、局部的に電界集中の原因になり、コンデンサの信頼性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0036】
また、使用する樹脂としては従来より電子部品に使用される熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のどちらでも用いることができる。その樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド(エーテル)樹脂、ビスマレイミドトリアジン(シアネートエステル)樹脂、ポリビニルベンジルエーテル化合物等を用いることができる。
【0037】
温度補償用コンデンサは次のような工程により作製することができる。まず負の温度係数を持つ誘電体粉末と樹脂とからなる複合誘電体のスラリーを塗工機によりクロスや不織布の基材に含浸して加熱により溶剤等を除去してプリプレグを作製する。このプリプレグの両面に銅等の金属箔を貼り付け、熱プレス機で両面金属基板を作製する。
【0038】
ビルドアップ用の基板として作製する場合は、銅箔等の金属表面に負の誘電率温度係数を持つ誘電体粉末と樹脂とからなる複合誘電体のスラリーをドクターブレード法等により塗布し、これを乾燥して樹脂付き金属材料を構成する。
【0039】
熱可塑性樹脂を用いる場合には、金型等により高温で成形し、これに金属膜をつけて基板を作製することができる。
【0040】
【実施例】
本発明を実施する場合の好適な材料、組成を調べるため、表1、表2に示すように、種々の材料について粉末、組成比を変え、温度係数、比誘電率、Q値を調べた。
【0041】
表1において、ベース樹脂の種類1は、ビニルベンジルエーテル化合物70wt%、臭素化ビニルベンジル化合物30wt%である樹脂粉末100重量部に対して、シラン系カップリング材を0.5重量部加えたものである。また、ベース樹脂の種類2は、ビニルベンジルエーテル化合物56wt%、臭素化ビニルベンジル化合物30wt%、スチレン系エラストマー14wt%の混合物である樹脂粉末100重量部に対し、過酸化物1.2部、シラン系カップリング材を0.5重量部加えたものである。
【0042】
サンプルの作製は、誘電体粉末と樹脂とを、表1、表2に示す組成になるように調合してトルエン中で誘電体粉末の凝集がなくなるまで十分に混合しスラリーとした。次に塗工機を用いてスラリーを106タイプのEガラスクロスに塗布し、100℃で10分乾燥し、65μmの厚さのプリプレグを得た。次にこのプリプレグの上下に18μmの銅箔を配置して真空熱プレス機で常温から昇温させて200℃で1時間で硬化させ、両面銅箔付き基板を得た。
【0043】
次に前記基板をほぼ10pFとなるようなサイズに切断して温度特性測定用サンプルを得た。また、高周波における比誘電率の測定用サンプルについてはプリプレグを10枚重ねて約0.7mmの基板を作製し、100mm×1.5mmに切断した棒状サンプルを得た。
【0044】
また、ガラスクロスを含まないものについては、18μmの銅箔の上にスラリーを均一に塗布し、100℃で10分乾燥し、約100μmの厚さの樹脂層を作製し、乾燥させたスラリー側に別の銅箔を乗せて、真空熱プレス機で常温から昇温させて200℃で1時間で硬化させ、両面銅箔付き基板を得た。次にこの基板を10pF程度になるように切断して、温度特性測定用サンプルを得た。
【0045】
高周波における比誘電率測定用サンプルについては、PETフィルム上にスラリーを塗布し、100℃で10分乾燥し、約100μmの複合誘電体シートを作製し、これを0.7mm程度となるように重ね、真空熱プレス機で常温から昇温させて200℃、1時間で硬化させ、100mm×1.5mmに切断した棒状サンプルを得た。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
容量値の測定は、高温槽に測定用サンプルを設置し、アジレントテクノロジー社製E4991Aインピーダンスアナライザーを用いて500MHzで測定した。測定温度は−25℃、25℃、85℃で行い、その温度での容量値を記録した。容量の温度係数τc(ppm/℃)は下記の(2)式により求めた。
【0049】
τc=106×{(CT−C25)/C25}/(T−25)…(2)
但しT:測定温度、CT:測定温度Tにおける容量、C25:25℃における容量
比誘電率およびQの測定は、ヒュウレットパッカード(株)製83620A、8757Cを使用して、空洞共振器摂動法により2GHzで測定した。
【0050】
表1,表2から分かるように、本発明の実施例においては、−25℃〜85℃の範囲において、容量の温度係数τcを−80ppm/℃以下とすることができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、正の温度特性を有する素子を使用する多層基板や電子部品において、負の温度係数を持つ誘電体粉末を混合してコンデンサ等を構成する誘電体層を負の温度係数としたので、多層基板により実現される回路を温度特性を改善し、温度補償用コンデンサ等を省略することができ、多層基板や電子部品の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による多層基板の一実施の形態を電圧制御発振器について示す断面図である。
【図2】図1の層構造図である。
【図3】図1の表面の部品配置図である。
【図4】図1〜図3の電圧制御発振器の等価回路図である。
【図5】従来の電圧制御発振器における制御電圧と中心発振周波数との関係図である。
【図6】図5の電圧制御発振器において、制御電圧の変化に対する中心発振周波数の目標値からのずれを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における制御電圧と中心発振周波数との関係図である。
【図8】図7の電圧制御発振器において、制御電圧の変化に対する中心発振周波数の目標値からのずれを示す図である。
【符号の説明】
1a〜1g:誘電体層、2a、2b:負の温度係数を有する誘電体層、3:多層基板、4:インダクタ層、5a〜5f:導体パターン、6:コンデンサ層、7:共振器層、7A:共振器、8:搭載部品、9:スルーホール、10:サイドスルーホール、11:制御電圧入力端子、12:電源端子、13:出力端子
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂または樹脂に機能材料粉末を混合した基板を積層してなる多層基板とこれを用いた電子部品に係わり、特に温度特性を改善させた多層基板と電子部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
特許文献1には、樹脂に機能材料粉末を混合した複合材料として、熱安定の高い複合材料を提供することを目的として、20℃〜50℃で比誘電率が4以上で比誘電率の温度係数を150ppm/℃以下としたものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−79056号公報。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
樹脂あるいは樹脂に機能材料粉末を混合した複合材料を用いて多層基板および搭載電子部品により所定の機能を有するモジュールを構成する際に、搭載素子が正の温度係数を持つ場合には、モジュールの温度による特性変化を小さくするため、負の温度係数を持つ温度補償用コンデンサを搭載していた。
【0005】
しかし前記特許文献1に記載の基板を用いた場合、コンデンサの比誘電率の温度係数を充分に小さくすることができないという問題点がある。また、温度補償用のコンデンサを搭載するための部品実装面を広くとる必要があり、小型化を阻害するという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、回路を温度特性を改善し、かつ小型化が図れる多層基板とそれを用いた電子部品を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
多くの樹脂の比誘電率の熱係数はおおよそ±50〜60ppm/℃以内であり、かつ比誘電率も3程度と小さい。このような樹脂に、比誘電率の温度係数が負である誘電体粉末を含有させることで温度係数を負にすることが可能である。そして、その比誘電率が樹脂よりも大きな誘電体粉末を樹脂に混合することにより、複合誘電体の比誘電率を大きくすることが可能となり、電子部品の1種であるモジュールの小型化が可能になる。
【0008】
さらに、分散させる負の温度係数を持つ誘電体粉末の種類や量を変えたり、あるいは、比較的比誘電率の大きな比誘電率を持ち、ゼロに近いかまたは正の温度係数を持つ誘電体粉末と負の温度係数を持つ誘電体粉末との混合比率を適宜変えることにより、複合誘電体の温度係数や比誘電率を、モジュールで必要とされる特性に合った値にすることが可能となる。すなわち、本願発明は以下のことを内容とする。
【0009】
(1)本発明の多層基板は、樹脂または樹脂に機能材料粉末を混合した1枚以上の基板からなる多層基板であって、
前記多層基板の少なくとも1層に、樹脂に誘電体粉末を混合してなり、容量の温度係数が負となる誘電体層を有し、該誘電体層を挟むコンデンサ電極を備えたことを特徴とする。
【0010】
(2)また、本発明の多層基板は、前記誘電体層の−25〜85℃における容量の温度係数が−80ppm/℃以下であることを特徴とする。
【0011】
(3)また、本発明の多層基板は、 前記誘電体層に2種以上の誘電体粉末を含有することを特徴とする。
【0012】
(4)また、本発明の多層基板は、前記誘電体層に混合する少なくとも1種の誘電体粉末の−25〜85℃における比誘電率の温度係数が−200ppm/℃以下であることを特徴とする。
【0013】
(5)本発明の電子部品は、前記(1)〜(4)のうちのいずれかの多層基板により構成されていることを特徴とする。
【0014】
(6)本発明の電子部品は、電圧制御発振器であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は本発明による多層基板の一実施の形態を示すもので、図1は断面図、図2は層構成図、図3は多層基板に搭載する部品の配置を示す平面図、図4は回路図である。本実施の形態は電子部品として電圧制御発振器を構成する場合について示すが、本発明は勿論他の電子部品にも適用できるものである。
【0016】
図1において、1a〜1gは樹脂または樹脂に機能材料粉末を混合した複合材料からなる誘電体層、2a、2bは本発明により設けられた温度補償用誘電体層である。多層基板3はこれらの誘電体層1a〜1g、2a、2bと、インダクタ層4形成用の導体パターン5aと、コンデンサ層6形成用の導体パターン5b、5cと、共振器層7形成のためのグランド用導体パターン5d、5eおよびストリップライン用導体パターン5fとの積層体でなる。これらはビルドアップ工法や、複数枚の樹脂基板を接着層を介して同時に積層し接着する工法等により作製される。
【0017】
8は多層基板3上の搭載部品、9はグランド用導体パターン5d、5e等の導体層と搭載部品8とを接続するスルーホール、10は多層基板3の側面に形成され、多層基板3内の導体パターン間の接続あるいは外部接続用端子として設けられたサイドスルーホールである。
【0018】
図2において、(a)が最上層、(b)がその下の層、…(j)が最下層となるように積層される。図3に示す搭載部品は、最上層の導体パターン上に半田付け等で固定して搭載される。
【0019】
図4において、11は制御電圧入力端子、12は電源端子、13は出力端子、C1〜C9はコンデンサ、D1はバリキャップダイオード、R1〜R4は抵抗、L1〜L3はインダクタ、Q1、Q2はトランジスタ、7Aは前記共振器層7により構成される共振器である。
【0020】
図1、図2と図4の対比から分かるように、前記インダクタL1、L2は前記インダクタ層4に形成される導体パターン5aにより実現される。また、インダクタL3は最上層と、共振器7Aのストリップライン5fと同層の導体パターンにより形成される。
【0021】
コンデンサC2〜C5、C8は前記温度補償用誘電体層2aを挟む導体パターン(コンデンサ電極)5b、5cにより実現される。共振器7Aは、グランド用導体パターン5d、5eと、これらの間のストリップライン用導体パターン5fと、これらの間に設けられた温度補償用誘電体2bおよび誘電体層1e〜1gとにより構成される。
【0022】
図3と図4の対比から分かるように、多層基板3には、コンデンサC1、C6、C7、C9、抵抗R1〜R4、バリキャップダイオードD1、トランジスタQ1、Q2が搭載される。
【0023】
この電圧制御発振器において、前記バリキャップダイオードD1やインダクタL1〜L3等は正の温度係数を持つ。このような温度係数により、温度変化に伴って温度変化による中心発振周波数の変化を防止するため、少なくとも中心発振周波数への影響の大きいコンデンサC2、C3については、負の温度係数を持つように構成する。すなわち、前記温度補償用誘電体層2aは負の温度係数を持つように、負の温度係数をもつ誘電体粉末を混合して構成する。また、本実施の形態においては、共振器7Aを構成する誘電体層2bも負の温度係数を持つ誘電体粉末を樹脂に混合することにより、全体として負の温度係数を持たせている。
【0024】
図5は前記誘電体層2a、2bとして従来のように温度補償機能を持たない誘電率の温度係数TCε=−20ppm/℃(−25〜25℃の範囲)、−50ppm/℃(25〜85℃の範囲)のものを用い、温度補償用のチップコンデンサを搭載しなかった場合の制御電圧入力端子11に加わる制御電圧Vcと出力端子13から得られる中心発振周波数Fとの関係を、25℃、−20℃、85℃の場合について示す図である。図6は制御電圧Vcの変化に対する中心発振周波数Fの目標値からのずれΔFを、−20℃、85℃の場合について示す図である。
【0025】
図7は前記誘電体層2a、2bとして、誘電率の温度係数TCε=−360ppm/℃(−25〜25℃の範囲)、−270ppm/℃(25〜85℃の範囲)のものを用いた場合の制御電圧入力端子11に加わる制御電圧Vcと出力端子13から得られる中心発振周波数Fとの関係を、25℃、−20℃、85℃の場合について示す図である。図6は制御電圧Vcの変化に対する中心発振周波数Fの目標値からのずれΔFを、−20℃、85℃の場合について示す図である。
【0026】
図5.図6と図7、図8との対比から分かるように、本発明による温度補償用誘電体層2a、2bを設けた場合には、温度変化による中心発振周波数の目標値からのずれを要求される範囲以内に抑えることが可能となった。
【0027】
具体的には、中心発振周波数の目標値は、制御電圧が0.3Vで2370MHz以下、制御電圧が1.3Vで2460MHz、制御電圧が2.3Vで2530MHz以上である。また、ずれの目標値は±5MHzであり、Vc=0.3Vで見ると、従来例の場合には、−20℃で−13.56MHzのずれがあり、目標範囲内に収まらなかったが、本発明による場合には、−20℃で+1.83MHzのずれとなり、目標範囲内に収めることができた。また、85℃では、従来例の場合には中心発振周波数のずれは+4.98MHzでかろうじて目標範囲内に入ったが、本発明による場合には、中心発振周波数のずれは+2.56MHzとなり、中心発振周波数のずれを目標範囲内に容易に収めることが可能となった。
【0028】
このように、本発明は、多層基板3の内部に温度補償用コンデンサを内蔵したので、多層基板3上に温度補償用コンデンサを搭載する必要がなくなり、多層基板3の部品搭載面積を小さくし、モジュールとして構成される電子部品を小型化できる。
【0029】
このような温度補償の目的を達成するには、コンデンサC2、C3の温度係数は、−25〜85℃の範囲において、−80ppm/℃以下であることがインダクタL1〜L3や抵抗R1〜R4等の温度特性や搭載されるコンデンサC1、C6、C7、C9等の温度係数との関連において好ましい。
【0030】
また、このような容量の温度係数を得るため、本発明における温度補償用誘電体層2a、2bに混合する誘電体粉末の温度係数TCεは、−25℃〜85℃の範囲において、−200ppm/℃以下、すなわちTCε≦−200ppm/℃であることが好ましい。誘電体粉末の比誘電率の温度係数が−200ppm/℃より高い(TCε>−200ppm/℃)と、誘電体粉末の樹脂に対する含有率を大きくしなければならず、成形性の悪化を招く可能性がある。
【0031】
また、2種類以上の誘電体粉末を樹脂に混合してもよい。2種類以上の誘電体粉末を加える場合、少なくとも1種類の誘電体粉末が負の温度係数を有していればよい。2種類以上の誘電体粉末を混合する場合、誘電体層2a、2bの比誘電率の温度係数が−100ppm/℃前後から−300ppm/℃前後であり、かつ比誘電率が大きい場合に有効である。例えば比誘電率が177、比誘電率の温度係数が−1620ppm/℃程度のものにCaTiO3があるが、このような誘電体粉末の含有する量を少なくすれば、温度係数はマイナスから樹脂の温度係数に近づき、目的の値を得ることができる。しかしそれと同時に比誘電率も樹脂の値に近づいて小さくなってしまい、より大きな比誘電率が得られない。
【0032】
しかし比誘電率の温度係数がゼロに近く、比誘電率が大きな誘電体として、BaO−Nd2O3−TiO2系(比誘電率εrは約80〜98、TCε<−80ppm/℃)があるが、このような誘電体粉末を前記負の温度係数の誘電体粉末に複合させて含有することで、比誘電率をある程度維持しながら温度特性を任意に変えることができる。
【0033】
ここで、誘電体共振器による共振周波数の温度係数TCFと(1)式により定義しておく。
TCF=−(TCε/2)−α?(1)
但しαは材料の線膨張係数であり、誘電体の線膨張係数は6〜12程度である。
【0034】
前述のように、誘電体粉末の種類は負の温度係数を持ち、かつその温度係数が−200ppm/℃以下のものが有効である。以下の誘電体において、TCFは(2)式により、線膨張係数αを10に近似させてTCεの値から求めたものである。誘電率の温度係数TCεは1GHzにおける値である。
TiO2{TCε=−900ppm/℃(TCF=400ppm/℃)、εr=104、Q=15000}
CaTiO3{TCε=−1620ppm/℃(TCF=800ppm/℃)、εr=170、Q=1800}
SrTiO3{TCε=−3360ppm/℃(TCF=1670ppm/℃)、εr=255、Q=700}
BaZrO3{TCε=−320ppm/℃(TCF=150ppm/℃)、εr=40、Q=200}
SrSnO3{TCε=−3720ppm/℃(TCF=1850ppm/℃)、εr=129、Q=400}
(Ba,Sr)TiO3{TCε<−2200ppm/℃、εr>260}。
【0035】
さらに必要に応じて、誘電体層2a、2bには下記の誘電体粉末を含んでもよい。
Mg2SiO4(εr=7、Q=20000)
Al2O3(εr=9.8、Q=40000)
MgTiO3(εr=17、Q=22000)
ZnTiO3(εr=26、Q=800)
Zn2TiO4(εr=15、Q=700)
SrZrO3(εr=30、Q=1200)
BaTi2O5(εr=42、Q=5700)
BaTi4O9(εr=38、Q=9000)
Ba2Ti9O20(εr=39、Q=9000)
Ba2(Ti,Sn)9O20(εr=37、Q=5000)
ZrTiO4(εr=39、Q=7000)
(Zr,Sn)TiO4(εr=38、Q=7000)
BaNd2Ti5O14(εr=83、Q=2100)
BaSm2TiO14(εr=74、Q=2400)
Bi2O3−BaO−Nd2O3−TiO2系(εr=88、Q=2000)
PbO−BaO−Nd2O3−TiO2系(εr=90、Q=5200)
(Bi2O3,PbO)−BaO−Nd2O3−TiO2系(εr=105、Q=2500)
La2Ti2O7(εr=44、Q=4000)
Nd2Ti2O7(εr=37、Q=1100)
(Li,Sm)TiO3(εr=81、Q=2050)
Ba(Mg1/3Ta2/3)O3(εr=25、Q=35000)
Ba(Zn1/3Ta2/3)O3(εr=30、Q=14000)
Ba(Zn1/3Nb2/3)O3(εr=41、Q=9200)
Sr(Zn1/3Nb2/3)O3(εr=40、Q=4000)
誘電体粉末の粒径は、実用上問題がない範囲であればよいが、平均粒径0.1〜10μm程度が好ましい。特に粒径が小さくなると、樹脂との混練がしにくくなり、成形時の流動性が低下し、含有できる誘電体粉末の最大量も少なくなる。また、逆に粒径が大きくなると、誘電体粉末を多く含有させることが可能になるが、薄い基板を作製した場合、樹脂層をプリプレグにより形成する場合にプリプレグに凹凸が発生し、局部的に電界集中の原因になり、コンデンサの信頼性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0036】
また、使用する樹脂としては従来より電子部品に使用される熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のどちらでも用いることができる。その樹脂としては、例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド(エーテル)樹脂、ビスマレイミドトリアジン(シアネートエステル)樹脂、ポリビニルベンジルエーテル化合物等を用いることができる。
【0037】
温度補償用コンデンサは次のような工程により作製することができる。まず負の温度係数を持つ誘電体粉末と樹脂とからなる複合誘電体のスラリーを塗工機によりクロスや不織布の基材に含浸して加熱により溶剤等を除去してプリプレグを作製する。このプリプレグの両面に銅等の金属箔を貼り付け、熱プレス機で両面金属基板を作製する。
【0038】
ビルドアップ用の基板として作製する場合は、銅箔等の金属表面に負の誘電率温度係数を持つ誘電体粉末と樹脂とからなる複合誘電体のスラリーをドクターブレード法等により塗布し、これを乾燥して樹脂付き金属材料を構成する。
【0039】
熱可塑性樹脂を用いる場合には、金型等により高温で成形し、これに金属膜をつけて基板を作製することができる。
【0040】
【実施例】
本発明を実施する場合の好適な材料、組成を調べるため、表1、表2に示すように、種々の材料について粉末、組成比を変え、温度係数、比誘電率、Q値を調べた。
【0041】
表1において、ベース樹脂の種類1は、ビニルベンジルエーテル化合物70wt%、臭素化ビニルベンジル化合物30wt%である樹脂粉末100重量部に対して、シラン系カップリング材を0.5重量部加えたものである。また、ベース樹脂の種類2は、ビニルベンジルエーテル化合物56wt%、臭素化ビニルベンジル化合物30wt%、スチレン系エラストマー14wt%の混合物である樹脂粉末100重量部に対し、過酸化物1.2部、シラン系カップリング材を0.5重量部加えたものである。
【0042】
サンプルの作製は、誘電体粉末と樹脂とを、表1、表2に示す組成になるように調合してトルエン中で誘電体粉末の凝集がなくなるまで十分に混合しスラリーとした。次に塗工機を用いてスラリーを106タイプのEガラスクロスに塗布し、100℃で10分乾燥し、65μmの厚さのプリプレグを得た。次にこのプリプレグの上下に18μmの銅箔を配置して真空熱プレス機で常温から昇温させて200℃で1時間で硬化させ、両面銅箔付き基板を得た。
【0043】
次に前記基板をほぼ10pFとなるようなサイズに切断して温度特性測定用サンプルを得た。また、高周波における比誘電率の測定用サンプルについてはプリプレグを10枚重ねて約0.7mmの基板を作製し、100mm×1.5mmに切断した棒状サンプルを得た。
【0044】
また、ガラスクロスを含まないものについては、18μmの銅箔の上にスラリーを均一に塗布し、100℃で10分乾燥し、約100μmの厚さの樹脂層を作製し、乾燥させたスラリー側に別の銅箔を乗せて、真空熱プレス機で常温から昇温させて200℃で1時間で硬化させ、両面銅箔付き基板を得た。次にこの基板を10pF程度になるように切断して、温度特性測定用サンプルを得た。
【0045】
高周波における比誘電率測定用サンプルについては、PETフィルム上にスラリーを塗布し、100℃で10分乾燥し、約100μmの複合誘電体シートを作製し、これを0.7mm程度となるように重ね、真空熱プレス機で常温から昇温させて200℃、1時間で硬化させ、100mm×1.5mmに切断した棒状サンプルを得た。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
容量値の測定は、高温槽に測定用サンプルを設置し、アジレントテクノロジー社製E4991Aインピーダンスアナライザーを用いて500MHzで測定した。測定温度は−25℃、25℃、85℃で行い、その温度での容量値を記録した。容量の温度係数τc(ppm/℃)は下記の(2)式により求めた。
【0049】
τc=106×{(CT−C25)/C25}/(T−25)…(2)
但しT:測定温度、CT:測定温度Tにおける容量、C25:25℃における容量
比誘電率およびQの測定は、ヒュウレットパッカード(株)製83620A、8757Cを使用して、空洞共振器摂動法により2GHzで測定した。
【0050】
表1,表2から分かるように、本発明の実施例においては、−25℃〜85℃の範囲において、容量の温度係数τcを−80ppm/℃以下とすることができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明によれば、正の温度特性を有する素子を使用する多層基板や電子部品において、負の温度係数を持つ誘電体粉末を混合してコンデンサ等を構成する誘電体層を負の温度係数としたので、多層基板により実現される回路を温度特性を改善し、温度補償用コンデンサ等を省略することができ、多層基板や電子部品の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による多層基板の一実施の形態を電圧制御発振器について示す断面図である。
【図2】図1の層構造図である。
【図3】図1の表面の部品配置図である。
【図4】図1〜図3の電圧制御発振器の等価回路図である。
【図5】従来の電圧制御発振器における制御電圧と中心発振周波数との関係図である。
【図6】図5の電圧制御発振器において、制御電圧の変化に対する中心発振周波数の目標値からのずれを示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における制御電圧と中心発振周波数との関係図である。
【図8】図7の電圧制御発振器において、制御電圧の変化に対する中心発振周波数の目標値からのずれを示す図である。
【符号の説明】
1a〜1g:誘電体層、2a、2b:負の温度係数を有する誘電体層、3:多層基板、4:インダクタ層、5a〜5f:導体パターン、6:コンデンサ層、7:共振器層、7A:共振器、8:搭載部品、9:スルーホール、10:サイドスルーホール、11:制御電圧入力端子、12:電源端子、13:出力端子
Claims (6)
- 樹脂または樹脂に機能材料粉末を混合した1枚以上の基板からなる多層基板であって、
前記多層基板の少なくとも1層に、樹脂に誘電体粉末を混合してなり、容量の温度係数が負となる誘電体層を有し、該誘電体層を挟むコンデンサ電極を備えたことを特徴とする多層基板。 - 請求項1に記載の多層基板において、
前記誘電体層の−25〜85℃における容量の温度係数が−80ppm/℃以下であることを特徴とする多層基板。 - 請求項1または2に記載の多層基板において、
前記誘電体層に2種以上の誘電体粉末を含有することを特徴とする多層基板。 - 請求項1から3までのいずれかに記載の多層基板において、
前記誘電体層に混合する少なくとも1種の誘電体粉末の−25〜85℃における比誘電率の温度係数が−200ppm/℃以下であることを特徴とする多層基板。 - 請求項1から4までのいずれかに記載の多層基板により構成されていることを特徴とする電子部品。
- 請求項5に記載の電子部品が電圧制御発振器であることを特徴とする電子部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003092992A JP2004303843A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 多層基板および電子部品 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003092992A JP2004303843A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 多層基板および電子部品 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004303843A true JP2004303843A (ja) | 2004-10-28 |
Family
ID=33405889
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003092992A Pending JP2004303843A (ja) | 2003-03-31 | 2003-03-31 | 多層基板および電子部品 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004303843A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4855407B2 (ja) * | 2005-09-14 | 2012-01-18 | 京セラ株式会社 | 可変共振回路、フィルタ装置、通信装置および可変共振回路の温度特性調整方法 |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003092992A patent/JP2004303843A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4855407B2 (ja) * | 2005-09-14 | 2012-01-18 | 京セラ株式会社 | 可変共振回路、フィルタ装置、通信装置および可変共振回路の温度特性調整方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6713162B2 (en) | Electronic parts | |
US6808642B2 (en) | Method for producing multilayer substrate and electronic part, and multilayer electronic part | |
US7281321B2 (en) | Printed circuit board having embedded capacitors using hybrid material and method of manufacturing the same | |
US20030030994A1 (en) | Substrate for electronic part and electronic part | |
US20040265551A1 (en) | Electronic component and process for manufacturing the same | |
JP2003078251A (ja) | セラミックチップ内蔵基板とその製造方法 | |
JP2003273520A (ja) | 積層モジュール | |
JP2004303843A (ja) | 多層基板および電子部品 | |
JP2002305366A (ja) | 積層基板および電子部品の製造方法、 | |
JPH10190241A (ja) | 多層配線基板 | |
JP2004221603A (ja) | カプラ | |
JP2006260895A (ja) | 複合誘電体材料及びこれを用いたプリプレグ、金属箔塗工物、成形体、複合誘電体基板、多層基板 | |
JP2005039263A (ja) | 回路モジュール用多層基板及び回路モジュール | |
JP4496858B2 (ja) | 電子部品及び多層基板 | |
JP2004304178A (ja) | 積層電子部品とその製造方法 | |
JP2004201333A (ja) | バルントランス | |
Daigle | Printed circuit board material and design considerations for wireless applications | |
JP2004158879A (ja) | インダクタ | |
JP2004207747A (ja) | キャパシタ | |
JPH07272534A (ja) | 複合誘電体の製造方法 | |
JP2006252891A (ja) | 複合誘電体材料及びこれを用いたプリプレグ、金属箔塗工物、成形体、複合誘電体基板、多層基板 | |
JP2004111908A (ja) | 高周波電子部品 | |
JP2004006897A (ja) | 積層電子部品 | |
JP2004165698A (ja) | 基板 | |
JP2004207746A (ja) | モジュール |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060613 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060615 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060814 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20070222 |