JP2004300744A - 耐風橋梁 - Google Patents

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Rokusui Yui
陸粋 由井
Takuya Murakami
琢哉 村上
Katsuaki Takeda
勝昭 武田
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Abstract

【課題】耐風性安定化対策のための特殊な部材や装置を設置することなく、耐風性を向上させることができる橋梁を提供する。
【解決手段】ケーブルを介して橋桁を支える主塔を有する橋梁において、橋桁を挟んで対向する1対の主塔の断面形状または高さが異なるか、もしくは構成部材ないしは材質が異なるか、もしくはそれぞれの設置位置が橋軸に対して対称な位置から橋軸方向に偏位しているかのうち、いずれか1つまたは2つ以上を満たすことを特徴とする耐風橋梁である。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、橋梁の耐風性を向上させた耐風橋梁に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、斜張橋、吊橋等の主塔では、渦励振等に対する耐風性がしばしば問題となっている。図8に示すようなH型主塔に代表される並列柱形式の主塔では、風上側主塔で発生した剥離渦が風下側主塔に作用することにより、風下側主塔にウェークギャロッピングと呼ばれる空力干渉に起因する不安定振動が生じる場合がある。このような振動を生じさせないための対策として、図9に示すように主塔の断面の隅角部に隅切りを施したり、プレートあるいはデフレクターを設置して剥離流を制御する方法(例えば、特許文献1および非特許文献1参照。)や、主塔にダンパーを設置して振動を抑制する方法(例えば、特許文献2参照。)等が提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平1−214608号公報
【0004】
【特許文献2】
特開平5−039606号公報
【0005】
【非特許文献1】
「構造物の耐風工学」p.246、財団法人日本鋼構造協会、1997年11月
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前述のような従来技術では、大型構造物である主塔に隅切りの形成、プレートやデフレクター等の設置、あるいはダンパーの設置などの耐風性安定化対策を施すため、経済性の点で問題がある。
【0007】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであり、耐風性安定化対策のための特殊な部材や装置を設置することなく耐風性を向上させることができる橋梁を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するため、本発明は次のような構成を有する。
[1]ケーブルを介して橋桁を支える主塔を有する橋梁において、橋桁を挟んで対向する1対の主塔が形状または構成部材において非対称であることを特徴とする耐風橋梁。
[2]ケーブルを介して橋桁を支える主塔を有する橋梁において、橋桁を挟んで対向する1対の主塔のうち、一方の主塔の位置が他方の主塔の位置に対して橋軸方向に偏位していることを特徴とする耐風橋梁。
[3]ケーブルを介して橋桁を支える主塔を有する橋梁において、橋桁を挟んで対向する1対の主塔の形状が異なるか、もしくは構成部材が異なるか、もしくはそれぞれの設置位置が橋軸に対して対称な位置から橋軸方向に偏位しているかのうち、いずれか2つ以上が複合していることを特徴とする耐風橋梁。
【0009】
本発明の要点は、斜張橋、吊橋等の橋梁における並列柱形式の主塔を橋軸に対して非対称な構造とすることにある。非対称とは、対向する1対の塔状構造物からなる主塔において、それぞれの塔状構造物の断面形状や高さ、構成部材の材質、もしくは設置位置などが橋軸に対して非対称であることを示す。
【0010】
図6に示すように、主塔T1、T2の形状や構成部材が異なる場合には、風上側と風下側のそれぞれの主塔において作用する空気力が異なること、即ち主塔T1で生じる剥離渦の発生振動数fT1と主塔T2で生じる剥離渦の発生振動数fT2とが異なることや両者の固有振動数が異なることにより振動する風速域が異なる。したがって、例えば風上側主塔が振動するような風速の風が作用した場合、風上側主塔は振動しようとするが、水平部材で連結された風下側主塔は振動しないため、この水平部材を介して風下側主塔から風上側主塔に減衰力が作用する。このため、主塔全体として耐風性を安定化させることが可能となる。
【0011】
また、図7に示すように、主塔T1、T2の設置位置を橋軸に対して対称な位置から橋軸方向にずらすことにより、風上側主塔から放出される剥離渦が風下側主塔に直接作用しないようにして、並列配置による空力不安定振動(ウェークギャロッピングのような現象)を安定化させることができる。
【0012】
本発明では、斜張橋や吊橋などにおいてケーブルを介して橋桁を支える主塔を非対称構造とすることにより耐風性を向上させており、耐風性安定化対策のための特殊な部材や装置を必要としていない。したがって、経済的な橋梁を提供することが可能となっている。また、橋梁の主要部である主塔にこのような非対称構造を採用することにより新たな景観性を創出することもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
図1は本発明に係る橋梁の実施形態1を説明する側面図、正面図、平面図であり、(a)は斜張橋の場合を、(b)は吊橋の場合をそれぞれ示している。
【0014】
本実施形態の橋梁は、主塔T1およびT2、水平部材H、ケーブルCおよび橋桁Gからなっている。
【0015】
前記主塔T1およびT2は、橋桁Gを挟んで対向する1対の塔状構造物からなり、水平部材Hにより連結されている。このような主塔T1およびT2が橋軸方向に所定の間隔で複数対設置され、ケーブルCを介して橋桁Gを支えている。
【0016】
本実施形態では、主塔T1と主塔T2とは断面形状が異なっている。このことにより、両者は固有振動数が異なるとともに、主塔T1で生じる剥離渦の発生振動数fT1と主塔T2で生じる剥離渦の発生振動数fT2とが異なり、それぞれの励振される風速域が異なっている。したがって、一方の主塔が振動しようとしても水平部材Hで連結された他方の主塔が振動しないため、主塔全体として振動が抑制されることになる。
(実施形態2)
図2は本発明に係る橋梁の実施形態2を説明する側面図、正面図、平面図であり、(a)は斜張橋の場合を、(b)は吊橋の場合をそれぞれ示している。
【0017】
この実施形態2では、前述の実施形態1と同一な部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0018】
本実施形態では、主塔T1と主塔T2とは高さが異なっている(図2では主塔T2が主塔T1よりも高くなっている)。このことにより、両者は固有振動数が異なり、それぞれの励振される風速域が異なっている。したがって、一方の主塔が振動しようとしても水平部材Hで連結された他方の主塔が振動しないため、主塔全体として振動が抑制されることになる。
(実施形態3)
図3は本発明に係る橋梁の実施形態3を説明する側面図、正面図、平面図であり、(a)は斜張橋の場合を、(b)は吊橋の場合をそれぞれ示している。
【0019】
この実施形態3では、前述の実施形態1および2と同一な部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0020】
本実施形態では、主塔T1と主塔T2とは構成部材、材質が異なっている。例えば、一方が鋼製で、他方がRC製であるような形態である。このことにより、両者は剛性や固有振動数が異なり、それぞれの励振される風速域が異なっている。したがって、一方の主塔が振動しようとしても水平部材Hで連結された他方の主塔が振動しないため、主塔全体として振動が抑制されることになる。
(実施形態4)
図4は本発明に係る橋梁の実施形態4を説明する側面図、正面図、平面図であり、(a)は斜張橋の場合を、(b)は吊橋の場合をそれぞれ示している。
【0021】
この実施形態4では、前述の実施形態1〜3と同一な部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0022】
本実施形態では、主塔T1と主塔T2とは橋軸に対して対称な位置から橋軸方向にずらして設置されている。このことにより、風上側主塔から放出される剥離渦が風下側主塔に直接作用しないようにして、並列配置による空力不安定振動(ウェークギャロッピングのような現象)を安定化させることができる。
(実施形態5)
図5は本発明に係る橋梁の実施形態5を説明する側面図、正面図、平面図であり、(a)は斜張橋の場合を、(b)は吊橋の場合をそれぞれ示している。
【0023】
この実施形態5では、前述の実施形態1〜4と同一な部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略し、相違する部分についてのみ説明する。
【0024】
本実施形態では、主塔T1と主塔T2とは高さと構成部材の材質とが異なっている(図5では主塔T2が主塔T1よりも高くなっている)。このことにより、両者は剛性や固有振動数が異なり、それぞれの励振される風速域が異なっている。したがって、一方の主塔が振動しようとしても水平部材Hで連結された他方の主塔が振動しないため、主塔全体として振動が抑制されることになる。また、主塔T1と主塔T2とを同一重量になるようにすれば、それぞれの基礎は対称構造にすることができる。
【0025】
なお、上述の実施形態5は実施形態2と実施形態3との組合せであるが、実施形態1〜4のうち、任意の2つ以上を組み合わせて、主塔T1と主塔T2とが複合した非対称構造になるようにしてもよい。
【0026】
【発明の効果】
以上に述べた本発明の耐風橋梁によれば、耐風性安定化対策のための特殊な部材や装置を新たに設置する必要がないので、橋梁にとって有害な振動を経済的に抑制することが可能となる。また、本発明の副次的な効果として、景観性も重視される橋梁において、主要部である主塔を非対称構造とすることによる新たな景観の創造が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の説明図
【図2】本発明の実施形態2の説明図
【図3】本発明の実施形態3の説明図
【図4】本発明の実施形態4の説明図
【図5】本発明の実施形態5の説明図
【図6】本発明の作用効果の説明図
【図7】本発明の作用効果の説明図
【図8】従来の構造を例示する説明図
【図9】従来の技術を例示する説明図
【符号の説明】
T1、T2 主塔
H 水平部材
G 橋桁
C ケーブル

Claims (3)

  1. ケーブルを介して橋桁を支える主塔を有する橋梁において、橋桁を挟んで対向する1対の主塔が形状または構成部材において非対称であることを特徴とする耐風橋梁。
  2. ケーブルを介して橋桁を支える主塔を有する橋梁において、橋桁を挟んで対向する1対の主塔のうち、一方の主塔の位置が他方の主塔の位置に対して橋軸方向に偏位していることを特徴とする耐風橋梁。
  3. ケーブルを介して橋桁を支える主塔を有する橋梁において、橋桁を挟んで対向する1対の主塔の形状が異なるか、もしくは構成部材が異なるか、もしくはそれぞれの設置位置が橋軸に対して対称な位置から橋軸方向に偏位しているかのうち、いずれか2つ以上が複合していることを特徴とする耐風橋梁。
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