JP2004300628A - 成型用紙の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】凹凸又は収縮が付与された紙シートの表面を十分に平滑化して、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性を改善した成型用紙を得る。
【解決手段】ロール周面が凹凸形状である硬質ロール7とロール周面が平坦な軟質ロール8とからなる一対のプレスロール9に、紙中水分が20%〜50%の範囲である紙シート1A〜1Dを通紙して該紙シート1A〜1Dに凹凸を与え、乾燥した後、表面処理剤の塗布を行い、該紙シート1A〜1Dを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化した。
【選択図】 図1
【解決手段】ロール周面が凹凸形状である硬質ロール7とロール周面が平坦な軟質ロール8とからなる一対のプレスロール9に、紙中水分が20%〜50%の範囲である紙シート1A〜1Dを通紙して該紙シート1A〜1Dに凹凸を与え、乾燥した後、表面処理剤の塗布を行い、該紙シート1A〜1Dを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化した。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、凹凸又は収縮を付与した成型用紙の製造方法に関し、特に、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性を改善した成型用紙を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境負荷への関心の高まりとともに、環境への影響が少ない包装材料、容器の素材として紙への関心が高まり、種々の成形用紙が提案されている。かかる成形用紙として、例えば、ロール周面が凹凸形状である硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとからなり、前記硬質ロールの周速度に対して前記軟質ロールの周速度を遅くして回転するようにした一対のプレスロールに紙シートを通紙して該紙シートに凹凸を付与することにより、高い伸び特性を有し成型性に優れる成型用紙を製造する方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特表平11−509276号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載された製造方法により製造された成型用紙は、その製造方法の特徴から硬質ロールの形状に応じたかなり大きな凹凸が表面に生じることから、この凹凸が、凹凸を付与した後に行われる印刷、塗工、ラミネーション等の加工における障害となる。
【0005】
具体的には、例えば、ラミネーションの手法として、ウエットラミネーション、ホットメルトラミネーション等の、接着剤によりフィルム基材を貼りあわせる手法が知られているが、かかるラミネーションの手法においては、紙の表面に生じた凹凸に沿ってフィルム基材を貼り合せることが困難であり、その結果凹部へフィルムが入り込み難い。また、他のラミネーションの手法として、スリットダイから熱溶融した樹脂を押出しラミネートすることにより樹脂層を設ける押出しコーティングラミネーションが知られているが、かかる手法においては、スロットダイから押出され軟化した樹脂が凹部に完全に入り込む前に冷却されてしまうことにより、通常の紙に比べ接着強度が低下する。
【0006】
このようなことから、前記特許文献1の製造方法においては、印刷、塗工、ラミネーション等の加工を考慮して、凹凸を付与した紙の表面を平滑化するため、線圧10〜100kg/cmのカレンダー処理で艶出し処理を行っている。しかし、前記一対のプレスロールを構成する前記硬質ロールの凹凸形状、前記軟質ロールの材質と硬度、及びそれらロールの加圧条件と周速度の差等により、付与された凹凸の深さは70〜110μmとかなり深くなるため、特許文献1に示されたカレンダー処理の処理条件では凹凸を付与した紙の表面を十分に平滑化する効果がえられるものとはいえない、といった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、凹凸又は収縮が付与された紙シートの表面を十分に平滑化して、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性を改善した成型用紙の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の成型用紙の製造方法は、ロール周面が凹凸形状である硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとからなる一対のプレスロールに、紙中水分が20%〜50%の範囲である紙シートを通紙して該紙シートに凹凸を与え、乾燥した後、表面処理剤の塗布を行い、該紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化することを特徴とする。
【0009】
このようにすると、ロール周面が凹凸形状である硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとからなる一対のプレスロールに、紙中水分が20%〜50%の範囲である紙シートを通紙することにより、該紙シートに凹凸が与えられ、該凹凸が与えられた紙シートを乾燥した後、表面処理剤の塗布を行うので、紙シートに表面処理剤を確実に塗布することができ、表面処理剤の塗布により水分が与えられた紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化するので、その表面を十分に平滑化することができ、これにより、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性に優れた成型用紙を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の成型用紙の製造方法は、ロール周面に周方向に沿った溝をロール幅方向に所定の間隔をあけて設けた硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとから成る一対のプレスロールを備え、加圧下で前記硬質ロールの周速度に対して前記軟質ロールの周速度を遅くして回転するようにした収縮付与装置に、坪量が50g/m2〜450g/m2の範囲で、紙中水分が20%〜50%の範囲の紙シートを通紙して該紙シートに収縮を与え、乾燥した後、表面処理剤の塗布を行い、該紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化することを特徴とする。
【0011】
このようにすると、硬質ロールと軟質ロールとの間に通紙された紙シートは、硬質ロールと軟質ロールの周速度差で発生する剪断力の作用を受け、それにより紙シートの縦方向は、硬質ロールと軟質ロールの周速度差に相当する分の紙が圧縮され縦収縮が付与され、一方、横方向は、周速度差による圧縮に伴い、硬質ロールの周方向に沿った溝に紙シートが押し込まれ収縮が付与されることになり、これにより、縦横共に20%以上の伸びを示す伸張紙を得ることができる。そして、前記収縮を与えた紙シートを乾燥した後、表面処理剤の塗布を行うので、紙シートに表面処理剤を確実に塗布することができ、表面処理剤の塗布により水分が与えられた紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化するので、その表面を十分に平滑化することができ、これにより、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性の他、3次元成型に優れた成型用紙を得ることができる。
【0012】
請求項3に記載の成型用紙の製造方法は、請求項2に記載の、前記硬質ロールの周速度に対する前記軟質ロールの周速度は、前記硬質ロールの周速度1に対して前記軟質ロールの周速度が0.95〜0.5の範囲であることを特徴とする。
【0013】
このようにすると、紙シートへ収縮を付与する摩擦力を維持するための十分な剪断力を、より確実に紙シートに作用させることができる。
【0014】
請求項4に記載の成型用紙の製造方法は、請求項1,2又は3に記載の、前記表面処理剤の塗布と前記カレンダー処理による平滑化は、カレンダーロールによりを行うことを特徴とする。
【0015】
このようにすると、表面処理剤の塗布と平滑化処理が同時に行われることから、紙シートに付与された凹凸或いは収縮が保たれ且つ表面処理剤の塗布により紙シートに水分が与えられた状態でこれに平滑化処理を行うことができるので、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性の他、3次元成型に優れた成型用紙を容易に且つ確実に得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の成型用紙の製造方法は、請求項1,2,3又は4に記載の、前記表面処理剤は、有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系のいずれかであることを特徴とする。
【0017】
このように表面処理剤が有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系のいずれかであると、紙シートに水分を付与する機能を有するとともに、アンカー剤としての機能をも有することから、押出しコーティングラミネーションでのラミネート強度を向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る成型用紙の製造方法の実施の形態の一例について説明する。
図1は本発明に係る成型用紙の製造方法を実施する抄紙機の実施の形態の一例を示す概略構成図、図2は図1に示す収縮付与装置の一例を示す斜視図、図3は図2の収縮付与装置で用いている硬質ロールの縦断面図、図4は硬質ロールの溝の形状の一例を示す一部拡大断面図である。
【0019】
本例の抄紙機では、前工程で得られた紙シート1Aをシリンダードライヤーからなる乾燥装置2で予備乾燥して紙中水分を20%〜50%の範囲に調整し、該水分調整した紙シート1Bを収縮付与装置3で所要の収縮を与え、収縮を与えた紙シート1Cをシリンダードライヤーからなる乾燥装置4で乾燥して紙シート1Dを得、さらに表面処理剤塗布手段を備えたカレンダー装置5により、紙シート1Dに表面処理剤を塗布するとともに平滑化処理を行って成型用紙1Eを得、巻き取り機で巻き取る。
【0020】
前記収縮付与装置3は、ロール周面に周方向に沿った溝6をロール幅方向に所定の間隔をあけて設けた硬質ロール7とロール周面が平坦な軟質ロール8とから成る一対のプレスロール9を備え、加圧下で前記硬質ロール7の周速度に対して前記軟質ロール8の周速度を遅くして回転するように調整できる周速度調整手段10を備え、且つ硬質ロール7と軟質ロール8との線圧を調整する加圧力調整手段11を備えた構成になっている。このような収縮付与装置3の加圧力調整手段11により硬質ロール7と軟質ロール8との線圧を調整し、そして周速度調整手段10により硬質ロール7の周速度に対して軟質ロール8の周速度が遅くなるように調整した上で、硬質ロール7と軟質ロール8とで構成される一対のプレスロール9に、坪量が50g/m2〜450g/m2の範囲で、紙中水分を20%〜50%の範囲に調整した紙シート1Bを通紙すると、紙シート1Bは硬質ロール7と軟質ロール8の周速度差で発生する剪断力の作用を受ける。それによって紙シート1Bの縦方向は、硬質ロール7と軟質ロール8の周速度差に相当する分の紙層が圧縮され縦収縮が付与される。一方、横方向は、周速度差による圧縮に伴い、硬質ロール7の周方向に沿った溝6に紙層が押し込まれて横収縮が付与される。
【0021】
前記硬質ロール7の前記周方向に沿った溝6は、ロール幅方向に溝間隔Aが0.6mm〜1.8mmの間隔で、溝幅Bが0.3mm〜1.5mm、溝深さCが0.5mm〜2.0mmの範囲で形成されていることが好ましく、このような溝間隔、溝幅、溝深さにすると、紙シート1Bに収縮を付与する硬質ロール7と軟質ロール8の周速度差で発生する剪断力を効率的に紙層に作用させる硬質ロール7/紙シート1B/軟質ロール8の各界面の摩擦力を良好に得ることができる。
【0022】
前記軟質ロール8は、ロール周面が平坦で、前記硬質ロール7とニップされた時十分に変形するものであれば特に限定されるものではないが、材質がポリウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ポリサルファイドゴム、ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム等のゴムロールが好適である。特に、紙シートに剪断力を有効に伝搬するために紙シート1Bの表面と軟質ロール8間の摩擦力が十分に得られることや表面摩耗し難く耐久性に優れることが重要である。
【0023】
前記硬質ロール7と軟質ロール8は、所定の加圧下で、両者の周速度差で発生する剪断力を効率的に紙シート1Bの層に作用させることが重要であり、前記硬質ロール7と軟質ロール8とを線圧10kg/cm〜70kg/cmの範囲の加圧下におき、硬質ロール7と軟質ロール8とを、硬質ロール7の周速度1に対して軟質ロール8の周速度を0.95〜0.5の範囲で回転させることが望ましい。
【0024】
軟質ロール8の周速度が硬質ロール7の周速度に対して95%を超えると、紙シート1Bを収縮させる剪断力が少なく、縦横同時に十分な伸びを付与することが出来ない。また、軟質ロール8の周速度が硬質ロール7の周速度に対して50%未満では剪断力は十分得られるが、機械的負荷が大きくなり、ゴムロールの破損、動力負荷大を招き、好ましくない。
【0025】
このようにして収縮付与装置3により収縮を与えた紙シート1Cは、前記乾燥装置4で乾燥させた後、前記カレンダー装置5によりカレンダーサイジングを行い、表面処理剤の塗布と平滑化を同時に行う。前記カレンダーサイジング前に一度乾燥させるのは、紙の水分が高い状態では表面処理剤を塗布し難いからであり、乾燥装置4による乾燥は、紙中水分が6%以下となるように行うことが望ましい。
【0026】
前記カレンダー装置5は前記のようにカレンダーサイジングが行える装置であり、カレンダーロール12の少なくとも1つに表面処理剤である塗工液を供給する液ボックスを備えている。このようなカレンダー装置5で表面処理剤を塗布することにより、水分が与えられた紙シートが乾燥しないうちにカレンダー処理することができ、収縮が与えられた紙シート1Dの表面を十分に平滑化することができる。
【0027】
なお、前記紙シート1Dへの表面処理剤の塗布手段は、必ずしも前記カレンダー装置5に備えられていなくてもよく、カレンダー処理の前工程で、表面処理剤塗布装置で行ってもよい。この場合の表面処理剤塗布装置としては、サイズプレスコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター等が使用できる。いずれかの手段により紙シート1Dへ表面処理剤を塗布した後、乾燥装置で乾燥し、カレンダー装置によりカレンダー処理を行うが、紙シート1Dが完全に乾燥する前にカレンダー処理を行うことが需要である。
【0028】
この紙シート1Dへの表面処理剤の塗布とカレンダー処理は、本例のように、同時に連続して行うことが望ましい。表面処理剤の塗布した後に、時間を置いてカレンダー処理を行うと、表面処理剤の塗布により水分が与えられている紙シート1Dにかかるテンションにより、紙シート1Dに与えられている収縮が伸びてしまい、伸び特性が得られなくなる場合があるからである。
【0029】
また、前記表面処理剤の塗布は必ずしも抄紙工程の、収縮付与装置3による処理に引き続いて行われる必要はなく、例えば、抄紙機と該収縮付与装置3で処理し乾燥した紙を別の塗工機で表面処理剤を塗布することも可能である。しかし、前記のように紙シート1Dへの表面処理剤の塗布とカレンダー処理は、同時に連続して行うことが望ましく、その観点から前記塗工機はカレンダーを有するものであることが好ましい。
【0030】
塗布される表面処理剤としてはカレンダー処理時の水分付与という観点からロジン、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなど製紙分野で一般的に表面処理剤として使用されているものであれば使用可能である。
【0031】
紙の用途により表面処理剤を選択することによりさらに効果が上がる。例えば、ラミネート方法の1つである押出しコーティングラミネーションでは、ラミネート強度向上を目的として、樹脂を塗布する前に基材上に、塗布量0.1〜0.3g/m2のアンカー剤を塗布することが一般的であり、本発明の目的である、表面の凹凸の軽減により得られる効果の一つであるラミネート適性の向上では、表面処理剤として押出しラミネーティングで使用されるアンカー剤を選択することによりさらに効果が相乗されることになる。
【0032】
この場合アンカー剤としては、公知のものが使用可能である。例えば、押出しラミネーション用のアンカー剤として、有機チタン系、イソシアネート系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、メラミン系樹脂等が広く使用されているが、これらの中でも塗布時の取扱い易く、水系で使用可能なポリエチレンイミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂及びエチレン・酢酸ビニル系共重合体がより好ましい。
【0033】
このようにしてカレンダー装置5により表面処理剤を塗布するとともに平滑化処理を行うことにより、縦横ともに20%以上の高い伸び特性を示すとともに、表面が十分に平滑化され、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性に優れた成型用紙1Eを得ることができる。
【0034】
かかる成型用紙1Eに使用されるパルプは、針葉樹または広葉樹の木材繊維、ミツマタ、コウゾなどの靭皮繊維、バガス、ケナフなどの非木材繊維、木綿繊維、古紙など通常の製紙原料が使用できるが汎用性などから針葉樹または広葉樹の木材繊維が好適である。
【0035】
なお、本発明は、通常の抄紙の過程で、水分20〜50%の完全に乾燥されていない状態の紙シートを、ロール周面が凹凸形状である硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとからなる一対のプレスロールに通紙して凹凸を付与した後、水分3〜12%まで乾燥して得られる成型用紙の製造方法に適用することができ、上記実施の形態で説明したような縦横共に20%以上の高い伸び特性を示す成型用紙の製造方法に限定されるものではない。
【0036】
また、硬質ロールと軟質ロールによるロールの周速差について制限されることはない。また、硬質ロール及び軟質ロールの素材及び硬質ロールのロール周面に設けられる凹凸形状についても制限はない。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
抄紙原料は濾水度300mlにされた汎用のN−BKPパルプを使用し、ワイヤー上の設定坪量を150g/m2になるように抄紙し、紙シート1Bを得た。この紙シート1Bに、溝間隔1.2mm、溝幅0.8mm、深さ1.2mmで周方向に沿った溝を有する金属の硬質ロール7と、硬度50°のニトリルブタジエンゴムから成る平坦な軟質ロール8からなる一対のプレスロール9を有する収縮付与装置3により線圧25kg/cmをかけ、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えて収縮処理して紙シート1Cを得て、この紙シート1Cを十数本のシリンダードライヤーよりなる乾燥装置4により紙中水分が約5%になるよう乾燥して紙シート1Dを得て、次いでサイズプレス装置により表面処理剤としてポリエチレンイミン(商品名:エポミンP1000、(株)日本触媒製、濃度0.5%に希釈)を塗布し、乾燥装置により紙中水分が10%以下にならない程度に乾燥した後、線圧45kg/cmで100℃に加温した一対のカレンダーロール12で平滑化処理を行って成型用紙1Eを得た。
【0039】
[実施例2]
実施例1と同様にして、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えた一対のプレスロール9により収縮処理し乾燥した紙シート1Dを、一対のカレンダーロール12により表面処理剤としてポリエチレンイミン(商品名エポミン:P1000、(株)日本触媒製、濃度0.5%に希釈)を塗布し、同時に平滑化処理を行い、成型用紙1Eを得た。
【0040】
[実施例3]
実施例2と同様にして、一対のカレンダーロール12により表面処理剤として4%の澱粉を塗布し、同時に平滑化処理を行い、成型用紙1Eを得た。
【0041】
[比較例1]
実施例1と同様にして、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えた一対のプレスロール9により収縮処理後、乾燥し、成型用紙1Eを得た。
【0042】
[比較例2]
実施例1と同様にして、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えた一対のプレスロール9により収縮処理し乾燥した紙シート1Dを、線圧45kg/cmで100℃に加温した一対のカレンダーロールで平滑化処理を行い、成型用紙1Eを得た。
【0043】
[比較例3]
実施例1と同様にして、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えた一対のプレスロール9により収縮処理され乾燥された紙シート1Dをサイズプレス装置により表面処理剤としてポリエチレンイミン(商品名:エポミンP1000、(株)日本触媒製、濃度0.5%に希釈)を塗布後、乾燥して、成型用紙1Eを得た。
【0044】
前記実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた成型用紙1Eについて、低密度ポリエチレン(LDPE)を押出し温度300℃、ラミネート厚50μm、ニップ圧15kg/cmで押出しラミネーションを行い、破断伸びの測定及びラミ強度試験を行い、その結果を表1に示す。
【0045】
○破断伸びの測定
LDPEでラミネートされた実施例1〜3及び比較例1〜3の成型用紙1Eを、JIS P 8113に準じ、縦方向に沿った幅15mm、つかみ具の間隔100mmで定速伸張型引張試験機により500m/分で破断するまでの伸びを測定し、つかみ具の間隔で除して破断伸び(%)とした。
【0046】
○ラミ強度試験
長さ210mm、幅15mmのLDPEでラミネートされた実施例1〜3及び比較例1〜3の成型用紙一端で、紙基材とLDPEを少量引離して100m/分でT剥離試験を行った。
【0047】
【表1】
実施例1〜3で得られた成型用紙では良好なラミネート強度が得られた。またカレンダーサイズによる塗布方法では、実施例1のように表面処理剤塗布後の水分が高い状態でサイズプレスと一対のカレンダーロール間のテンションにより伸ばされることがない為、伸びの低下も少なかった。カレンダー処理して平滑化のみを行った場合に比べ表面処理剤塗布により水分を上げてカレンダー処理して平滑化したものは表面の凹凸がより潰れており、ラミの強度が上がった。
【0048】
表面処理剤にポリエチレンイミン系アンカー剤を塗布した場合には、これらカレンダーによる平坦化以上の効果が得られており、これらを組合せることにより十分なラミネートの剥離強度を得ることができた。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、凹凸或いは収縮が与えられた紙シートを乾燥した後、表面処理剤の塗布を行うので、紙シートに表面処理剤を確実に塗布することができ、表面処理剤の塗布により水分が与えられた紙シートを乾燥しないでカレンダー処理して平滑化するので、その表面を十分に平滑化することができ、これにより、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性の他、3次元成型に優れた成型用紙を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る成型用紙の製造方法を実施する抄紙機の実施の形態の一例を示す概略構成図。
【図2】図1に示す収縮付与装置の一例を示す斜視図。
【図3】図2の収縮付与装置で用いている硬質ロールの縦断面図。
【図4】硬質ロールの溝の形状の一例を示す一部拡大断面図。
【符号の説明】
1A〜1D 紙シート
1E 成型用紙
2 乾燥装置
3 収縮付与装置
4 乾燥装置
5 カレンダー装置
6 溝
7 硬質ロール
8 軟質ロール
9 プレスロール
10 周速度調整手段
11 加圧力調整手段
12 カレンダーロール
【発明の属する技術分野】
本発明は、凹凸又は収縮を付与した成型用紙の製造方法に関し、特に、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性を改善した成型用紙を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の環境負荷への関心の高まりとともに、環境への影響が少ない包装材料、容器の素材として紙への関心が高まり、種々の成形用紙が提案されている。かかる成形用紙として、例えば、ロール周面が凹凸形状である硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとからなり、前記硬質ロールの周速度に対して前記軟質ロールの周速度を遅くして回転するようにした一対のプレスロールに紙シートを通紙して該紙シートに凹凸を付与することにより、高い伸び特性を有し成型性に優れる成型用紙を製造する方法が提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特表平11−509276号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載された製造方法により製造された成型用紙は、その製造方法の特徴から硬質ロールの形状に応じたかなり大きな凹凸が表面に生じることから、この凹凸が、凹凸を付与した後に行われる印刷、塗工、ラミネーション等の加工における障害となる。
【0005】
具体的には、例えば、ラミネーションの手法として、ウエットラミネーション、ホットメルトラミネーション等の、接着剤によりフィルム基材を貼りあわせる手法が知られているが、かかるラミネーションの手法においては、紙の表面に生じた凹凸に沿ってフィルム基材を貼り合せることが困難であり、その結果凹部へフィルムが入り込み難い。また、他のラミネーションの手法として、スリットダイから熱溶融した樹脂を押出しラミネートすることにより樹脂層を設ける押出しコーティングラミネーションが知られているが、かかる手法においては、スロットダイから押出され軟化した樹脂が凹部に完全に入り込む前に冷却されてしまうことにより、通常の紙に比べ接着強度が低下する。
【0006】
このようなことから、前記特許文献1の製造方法においては、印刷、塗工、ラミネーション等の加工を考慮して、凹凸を付与した紙の表面を平滑化するため、線圧10〜100kg/cmのカレンダー処理で艶出し処理を行っている。しかし、前記一対のプレスロールを構成する前記硬質ロールの凹凸形状、前記軟質ロールの材質と硬度、及びそれらロールの加圧条件と周速度の差等により、付与された凹凸の深さは70〜110μmとかなり深くなるため、特許文献1に示されたカレンダー処理の処理条件では凹凸を付与した紙の表面を十分に平滑化する効果がえられるものとはいえない、といった問題があった。
【0007】
本発明の目的は、凹凸又は収縮が付与された紙シートの表面を十分に平滑化して、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性を改善した成型用紙の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の成型用紙の製造方法は、ロール周面が凹凸形状である硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとからなる一対のプレスロールに、紙中水分が20%〜50%の範囲である紙シートを通紙して該紙シートに凹凸を与え、乾燥した後、表面処理剤の塗布を行い、該紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化することを特徴とする。
【0009】
このようにすると、ロール周面が凹凸形状である硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとからなる一対のプレスロールに、紙中水分が20%〜50%の範囲である紙シートを通紙することにより、該紙シートに凹凸が与えられ、該凹凸が与えられた紙シートを乾燥した後、表面処理剤の塗布を行うので、紙シートに表面処理剤を確実に塗布することができ、表面処理剤の塗布により水分が与えられた紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化するので、その表面を十分に平滑化することができ、これにより、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性に優れた成型用紙を得ることができる。
【0010】
請求項2に記載の成型用紙の製造方法は、ロール周面に周方向に沿った溝をロール幅方向に所定の間隔をあけて設けた硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとから成る一対のプレスロールを備え、加圧下で前記硬質ロールの周速度に対して前記軟質ロールの周速度を遅くして回転するようにした収縮付与装置に、坪量が50g/m2〜450g/m2の範囲で、紙中水分が20%〜50%の範囲の紙シートを通紙して該紙シートに収縮を与え、乾燥した後、表面処理剤の塗布を行い、該紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化することを特徴とする。
【0011】
このようにすると、硬質ロールと軟質ロールとの間に通紙された紙シートは、硬質ロールと軟質ロールの周速度差で発生する剪断力の作用を受け、それにより紙シートの縦方向は、硬質ロールと軟質ロールの周速度差に相当する分の紙が圧縮され縦収縮が付与され、一方、横方向は、周速度差による圧縮に伴い、硬質ロールの周方向に沿った溝に紙シートが押し込まれ収縮が付与されることになり、これにより、縦横共に20%以上の伸びを示す伸張紙を得ることができる。そして、前記収縮を与えた紙シートを乾燥した後、表面処理剤の塗布を行うので、紙シートに表面処理剤を確実に塗布することができ、表面処理剤の塗布により水分が与えられた紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化するので、その表面を十分に平滑化することができ、これにより、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性の他、3次元成型に優れた成型用紙を得ることができる。
【0012】
請求項3に記載の成型用紙の製造方法は、請求項2に記載の、前記硬質ロールの周速度に対する前記軟質ロールの周速度は、前記硬質ロールの周速度1に対して前記軟質ロールの周速度が0.95〜0.5の範囲であることを特徴とする。
【0013】
このようにすると、紙シートへ収縮を付与する摩擦力を維持するための十分な剪断力を、より確実に紙シートに作用させることができる。
【0014】
請求項4に記載の成型用紙の製造方法は、請求項1,2又は3に記載の、前記表面処理剤の塗布と前記カレンダー処理による平滑化は、カレンダーロールによりを行うことを特徴とする。
【0015】
このようにすると、表面処理剤の塗布と平滑化処理が同時に行われることから、紙シートに付与された凹凸或いは収縮が保たれ且つ表面処理剤の塗布により紙シートに水分が与えられた状態でこれに平滑化処理を行うことができるので、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性の他、3次元成型に優れた成型用紙を容易に且つ確実に得ることができる。
【0016】
請求項5に記載の成型用紙の製造方法は、請求項1,2,3又は4に記載の、前記表面処理剤は、有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系のいずれかであることを特徴とする。
【0017】
このように表面処理剤が有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系のいずれかであると、紙シートに水分を付与する機能を有するとともに、アンカー剤としての機能をも有することから、押出しコーティングラミネーションでのラミネート強度を向上させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る成型用紙の製造方法の実施の形態の一例について説明する。
図1は本発明に係る成型用紙の製造方法を実施する抄紙機の実施の形態の一例を示す概略構成図、図2は図1に示す収縮付与装置の一例を示す斜視図、図3は図2の収縮付与装置で用いている硬質ロールの縦断面図、図4は硬質ロールの溝の形状の一例を示す一部拡大断面図である。
【0019】
本例の抄紙機では、前工程で得られた紙シート1Aをシリンダードライヤーからなる乾燥装置2で予備乾燥して紙中水分を20%〜50%の範囲に調整し、該水分調整した紙シート1Bを収縮付与装置3で所要の収縮を与え、収縮を与えた紙シート1Cをシリンダードライヤーからなる乾燥装置4で乾燥して紙シート1Dを得、さらに表面処理剤塗布手段を備えたカレンダー装置5により、紙シート1Dに表面処理剤を塗布するとともに平滑化処理を行って成型用紙1Eを得、巻き取り機で巻き取る。
【0020】
前記収縮付与装置3は、ロール周面に周方向に沿った溝6をロール幅方向に所定の間隔をあけて設けた硬質ロール7とロール周面が平坦な軟質ロール8とから成る一対のプレスロール9を備え、加圧下で前記硬質ロール7の周速度に対して前記軟質ロール8の周速度を遅くして回転するように調整できる周速度調整手段10を備え、且つ硬質ロール7と軟質ロール8との線圧を調整する加圧力調整手段11を備えた構成になっている。このような収縮付与装置3の加圧力調整手段11により硬質ロール7と軟質ロール8との線圧を調整し、そして周速度調整手段10により硬質ロール7の周速度に対して軟質ロール8の周速度が遅くなるように調整した上で、硬質ロール7と軟質ロール8とで構成される一対のプレスロール9に、坪量が50g/m2〜450g/m2の範囲で、紙中水分を20%〜50%の範囲に調整した紙シート1Bを通紙すると、紙シート1Bは硬質ロール7と軟質ロール8の周速度差で発生する剪断力の作用を受ける。それによって紙シート1Bの縦方向は、硬質ロール7と軟質ロール8の周速度差に相当する分の紙層が圧縮され縦収縮が付与される。一方、横方向は、周速度差による圧縮に伴い、硬質ロール7の周方向に沿った溝6に紙層が押し込まれて横収縮が付与される。
【0021】
前記硬質ロール7の前記周方向に沿った溝6は、ロール幅方向に溝間隔Aが0.6mm〜1.8mmの間隔で、溝幅Bが0.3mm〜1.5mm、溝深さCが0.5mm〜2.0mmの範囲で形成されていることが好ましく、このような溝間隔、溝幅、溝深さにすると、紙シート1Bに収縮を付与する硬質ロール7と軟質ロール8の周速度差で発生する剪断力を効率的に紙層に作用させる硬質ロール7/紙シート1B/軟質ロール8の各界面の摩擦力を良好に得ることができる。
【0022】
前記軟質ロール8は、ロール周面が平坦で、前記硬質ロール7とニップされた時十分に変形するものであれば特に限定されるものではないが、材質がポリウレタンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、ポリサルファイドゴム、ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム等のゴムロールが好適である。特に、紙シートに剪断力を有効に伝搬するために紙シート1Bの表面と軟質ロール8間の摩擦力が十分に得られることや表面摩耗し難く耐久性に優れることが重要である。
【0023】
前記硬質ロール7と軟質ロール8は、所定の加圧下で、両者の周速度差で発生する剪断力を効率的に紙シート1Bの層に作用させることが重要であり、前記硬質ロール7と軟質ロール8とを線圧10kg/cm〜70kg/cmの範囲の加圧下におき、硬質ロール7と軟質ロール8とを、硬質ロール7の周速度1に対して軟質ロール8の周速度を0.95〜0.5の範囲で回転させることが望ましい。
【0024】
軟質ロール8の周速度が硬質ロール7の周速度に対して95%を超えると、紙シート1Bを収縮させる剪断力が少なく、縦横同時に十分な伸びを付与することが出来ない。また、軟質ロール8の周速度が硬質ロール7の周速度に対して50%未満では剪断力は十分得られるが、機械的負荷が大きくなり、ゴムロールの破損、動力負荷大を招き、好ましくない。
【0025】
このようにして収縮付与装置3により収縮を与えた紙シート1Cは、前記乾燥装置4で乾燥させた後、前記カレンダー装置5によりカレンダーサイジングを行い、表面処理剤の塗布と平滑化を同時に行う。前記カレンダーサイジング前に一度乾燥させるのは、紙の水分が高い状態では表面処理剤を塗布し難いからであり、乾燥装置4による乾燥は、紙中水分が6%以下となるように行うことが望ましい。
【0026】
前記カレンダー装置5は前記のようにカレンダーサイジングが行える装置であり、カレンダーロール12の少なくとも1つに表面処理剤である塗工液を供給する液ボックスを備えている。このようなカレンダー装置5で表面処理剤を塗布することにより、水分が与えられた紙シートが乾燥しないうちにカレンダー処理することができ、収縮が与えられた紙シート1Dの表面を十分に平滑化することができる。
【0027】
なお、前記紙シート1Dへの表面処理剤の塗布手段は、必ずしも前記カレンダー装置5に備えられていなくてもよく、カレンダー処理の前工程で、表面処理剤塗布装置で行ってもよい。この場合の表面処理剤塗布装置としては、サイズプレスコーター、ロールコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター等が使用できる。いずれかの手段により紙シート1Dへ表面処理剤を塗布した後、乾燥装置で乾燥し、カレンダー装置によりカレンダー処理を行うが、紙シート1Dが完全に乾燥する前にカレンダー処理を行うことが需要である。
【0028】
この紙シート1Dへの表面処理剤の塗布とカレンダー処理は、本例のように、同時に連続して行うことが望ましい。表面処理剤の塗布した後に、時間を置いてカレンダー処理を行うと、表面処理剤の塗布により水分が与えられている紙シート1Dにかかるテンションにより、紙シート1Dに与えられている収縮が伸びてしまい、伸び特性が得られなくなる場合があるからである。
【0029】
また、前記表面処理剤の塗布は必ずしも抄紙工程の、収縮付与装置3による処理に引き続いて行われる必要はなく、例えば、抄紙機と該収縮付与装置3で処理し乾燥した紙を別の塗工機で表面処理剤を塗布することも可能である。しかし、前記のように紙シート1Dへの表面処理剤の塗布とカレンダー処理は、同時に連続して行うことが望ましく、その観点から前記塗工機はカレンダーを有するものであることが好ましい。
【0030】
塗布される表面処理剤としてはカレンダー処理時の水分付与という観点からロジン、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなど製紙分野で一般的に表面処理剤として使用されているものであれば使用可能である。
【0031】
紙の用途により表面処理剤を選択することによりさらに効果が上がる。例えば、ラミネート方法の1つである押出しコーティングラミネーションでは、ラミネート強度向上を目的として、樹脂を塗布する前に基材上に、塗布量0.1〜0.3g/m2のアンカー剤を塗布することが一般的であり、本発明の目的である、表面の凹凸の軽減により得られる効果の一つであるラミネート適性の向上では、表面処理剤として押出しラミネーティングで使用されるアンカー剤を選択することによりさらに効果が相乗されることになる。
【0032】
この場合アンカー剤としては、公知のものが使用可能である。例えば、押出しラミネーション用のアンカー剤として、有機チタン系、イソシアネート系樹脂、ポリエチレンイミン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、メラミン系樹脂等が広く使用されているが、これらの中でも塗布時の取扱い易く、水系で使用可能なポリエチレンイミン系樹脂、メラミン系樹脂、ポリブタジエン系樹脂及びエチレン・酢酸ビニル系共重合体がより好ましい。
【0033】
このようにしてカレンダー装置5により表面処理剤を塗布するとともに平滑化処理を行うことにより、縦横ともに20%以上の高い伸び特性を示すとともに、表面が十分に平滑化され、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性に優れた成型用紙1Eを得ることができる。
【0034】
かかる成型用紙1Eに使用されるパルプは、針葉樹または広葉樹の木材繊維、ミツマタ、コウゾなどの靭皮繊維、バガス、ケナフなどの非木材繊維、木綿繊維、古紙など通常の製紙原料が使用できるが汎用性などから針葉樹または広葉樹の木材繊維が好適である。
【0035】
なお、本発明は、通常の抄紙の過程で、水分20〜50%の完全に乾燥されていない状態の紙シートを、ロール周面が凹凸形状である硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとからなる一対のプレスロールに通紙して凹凸を付与した後、水分3〜12%まで乾燥して得られる成型用紙の製造方法に適用することができ、上記実施の形態で説明したような縦横共に20%以上の高い伸び特性を示す成型用紙の製造方法に限定されるものではない。
【0036】
また、硬質ロールと軟質ロールによるロールの周速差について制限されることはない。また、硬質ロール及び軟質ロールの素材及び硬質ロールのロール周面に設けられる凹凸形状についても制限はない。
【0037】
【実施例】
以下、実施例を挙げて発明を詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0038】
[実施例1]
抄紙原料は濾水度300mlにされた汎用のN−BKPパルプを使用し、ワイヤー上の設定坪量を150g/m2になるように抄紙し、紙シート1Bを得た。この紙シート1Bに、溝間隔1.2mm、溝幅0.8mm、深さ1.2mmで周方向に沿った溝を有する金属の硬質ロール7と、硬度50°のニトリルブタジエンゴムから成る平坦な軟質ロール8からなる一対のプレスロール9を有する収縮付与装置3により線圧25kg/cmをかけ、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えて収縮処理して紙シート1Cを得て、この紙シート1Cを十数本のシリンダードライヤーよりなる乾燥装置4により紙中水分が約5%になるよう乾燥して紙シート1Dを得て、次いでサイズプレス装置により表面処理剤としてポリエチレンイミン(商品名:エポミンP1000、(株)日本触媒製、濃度0.5%に希釈)を塗布し、乾燥装置により紙中水分が10%以下にならない程度に乾燥した後、線圧45kg/cmで100℃に加温した一対のカレンダーロール12で平滑化処理を行って成型用紙1Eを得た。
【0039】
[実施例2]
実施例1と同様にして、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えた一対のプレスロール9により収縮処理し乾燥した紙シート1Dを、一対のカレンダーロール12により表面処理剤としてポリエチレンイミン(商品名エポミン:P1000、(株)日本触媒製、濃度0.5%に希釈)を塗布し、同時に平滑化処理を行い、成型用紙1Eを得た。
【0040】
[実施例3]
実施例2と同様にして、一対のカレンダーロール12により表面処理剤として4%の澱粉を塗布し、同時に平滑化処理を行い、成型用紙1Eを得た。
【0041】
[比較例1]
実施例1と同様にして、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えた一対のプレスロール9により収縮処理後、乾燥し、成型用紙1Eを得た。
【0042】
[比較例2]
実施例1と同様にして、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えた一対のプレスロール9により収縮処理し乾燥した紙シート1Dを、線圧45kg/cmで100℃に加温した一対のカレンダーロールで平滑化処理を行い、成型用紙1Eを得た。
【0043】
[比較例3]
実施例1と同様にして、硬質ロール7の周速に対し軟質ロール8は25%遅い周速を与えた一対のプレスロール9により収縮処理され乾燥された紙シート1Dをサイズプレス装置により表面処理剤としてポリエチレンイミン(商品名:エポミンP1000、(株)日本触媒製、濃度0.5%に希釈)を塗布後、乾燥して、成型用紙1Eを得た。
【0044】
前記実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた成型用紙1Eについて、低密度ポリエチレン(LDPE)を押出し温度300℃、ラミネート厚50μm、ニップ圧15kg/cmで押出しラミネーションを行い、破断伸びの測定及びラミ強度試験を行い、その結果を表1に示す。
【0045】
○破断伸びの測定
LDPEでラミネートされた実施例1〜3及び比較例1〜3の成型用紙1Eを、JIS P 8113に準じ、縦方向に沿った幅15mm、つかみ具の間隔100mmで定速伸張型引張試験機により500m/分で破断するまでの伸びを測定し、つかみ具の間隔で除して破断伸び(%)とした。
【0046】
○ラミ強度試験
長さ210mm、幅15mmのLDPEでラミネートされた実施例1〜3及び比較例1〜3の成型用紙一端で、紙基材とLDPEを少量引離して100m/分でT剥離試験を行った。
【0047】
【表1】
実施例1〜3で得られた成型用紙では良好なラミネート強度が得られた。またカレンダーサイズによる塗布方法では、実施例1のように表面処理剤塗布後の水分が高い状態でサイズプレスと一対のカレンダーロール間のテンションにより伸ばされることがない為、伸びの低下も少なかった。カレンダー処理して平滑化のみを行った場合に比べ表面処理剤塗布により水分を上げてカレンダー処理して平滑化したものは表面の凹凸がより潰れており、ラミの強度が上がった。
【0048】
表面処理剤にポリエチレンイミン系アンカー剤を塗布した場合には、これらカレンダーによる平坦化以上の効果が得られており、これらを組合せることにより十分なラミネートの剥離強度を得ることができた。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、凹凸或いは収縮が与えられた紙シートを乾燥した後、表面処理剤の塗布を行うので、紙シートに表面処理剤を確実に塗布することができ、表面処理剤の塗布により水分が与えられた紙シートを乾燥しないでカレンダー処理して平滑化するので、その表面を十分に平滑化することができ、これにより、印刷適性、塗工適性、ラミネート適性の他、3次元成型に優れた成型用紙を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る成型用紙の製造方法を実施する抄紙機の実施の形態の一例を示す概略構成図。
【図2】図1に示す収縮付与装置の一例を示す斜視図。
【図3】図2の収縮付与装置で用いている硬質ロールの縦断面図。
【図4】硬質ロールの溝の形状の一例を示す一部拡大断面図。
【符号の説明】
1A〜1D 紙シート
1E 成型用紙
2 乾燥装置
3 収縮付与装置
4 乾燥装置
5 カレンダー装置
6 溝
7 硬質ロール
8 軟質ロール
9 プレスロール
10 周速度調整手段
11 加圧力調整手段
12 カレンダーロール
Claims (5)
- ロール周面が凹凸形状である硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとからなる一対のプレスロールに、紙中水分が20%〜50%の範囲である紙シートを通紙して該紙シートに凹凸を与え、乾燥した後、表面処理剤の塗布を行い、該紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化することを特徴とする成型用紙の製造方法。
- ロール周面に周方向に沿った溝をロール幅方向に所定の間隔をあけて設けた硬質ロールとロール周面が平坦な軟質ロールとから成る一対のプレスロールを備え、加圧下で前記硬質ロールの周速度に対して前記軟質ロールの周速度を遅くして回転するようにした収縮付与装置に、坪量が50g/m2〜450g/m2の範囲で、紙中水分が20%〜50%の範囲の紙シートを通紙して該紙シートに収縮を与え、乾燥した後、表面処理剤の塗布を行い、該紙シートを乾燥する前にカレンダー処理して平滑化することを特徴とする成型用紙の製造方法。
- 前記硬質ロールの周速度に対する前記軟質ロールの周速度は、前記硬質ロールの周速度1に対して前記軟質ロールの周速度が0.95〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項2に記載の成型用紙の製造方法。
- 前記表面処理剤の塗布と前記カレンダー処理による平滑化は、カレンダーロールにより行うことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の成型用紙の製造方法。
- 前記表面処理剤は、有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系のいずれかであることを特徴とする請求項1,2,3又は4に記載の成型用紙の製造方法。
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JP2006274517A (ja) * | 2005-03-30 | 2006-10-12 | Nippon Paper Industries Co Ltd | 伸張紙の製造方法 |
CN103998226A (zh) * | 2011-11-30 | 2014-08-20 | 乔治·特拉尼 | 用于处理纤维材料和/或柔韧材料的幅材的多功能设备 |
-
2003
- 2003-03-31 JP JP2003095303A patent/JP2004300628A/ja not_active Withdrawn
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