JP2004300547A - 水素発生陰極を使用するイオン交換膜電解槽 - Google Patents

水素発生陰極を使用するイオン交換膜電解槽 Download PDF

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Abstract

【課題】水素発生陰極を使用する電解槽の電極と電極集電体間の電気的接触を確実に行って電解条件を安定化させる。
【解決手段】金属製コイル体4を、あるいは耐食性フレームに金属製コイル体を巻回して構成される弾性クッション材5を、水素発生陰極14と陰極集電体13間に設置する。 金属製コイル体は自由に変形でき、更に十分な導電性を有するため、電極と電極集電体間を確実に電気的に接続できる。
【選択図】 図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルカリ金属塩化物水溶液等の電解に使用できる水素発生陰極を装着したイオン交換膜電解槽に関する。
【0002】
【従来の技術】
クロルアルカリ電解を代表とする電解工業は、素材産業として重要な役割を果たしている。このような重要な役割を持つものの、クロルアルカリ電解に要する消費エネルギーが大きく、日本のようにエネルギーコストが高い国ではその省エネルギー化の達成を強く要望されている。
例えば、クロルアルカリ電解は、環境問題の解決と共に省エネルギー化を達成するために、水銀法から隔膜法を経てイオン交換膜法へと転換され、約25年で約40%の省エネルギー化を達成してきた。しかし、この省エネルギー化でも不十分で、エネルギーである電力コストが全製造費の約半分を占めているが、現行の方法を使用する限りこれ以上の電力節約は不可能なところまで来ている。
【0003】
食塩電解に使用する水素発生陰極装着電解槽では、陽極、イオン交換膜及び水素発生陰極の三者を密着状態で配置して電解電圧の低下を図っているが、電解面積が数平方メートルにも達する大型の電解槽では、陽極及び陰極を剛性部材で電極室にすると、両電極をイオン交換膜に密着させて電極間隔を所定値に保持することは困難であった。
電極間距離あるいは電極と電極集電体間の距離を小さくするためあるいはほぼ一定値に維持するための手段として、弾性材料を使用する電解槽が知られている。
この弾性材料には金属の細線の織布、不織布、網などが非剛性材料と、板バネ等の剛性材料が知られている。
【0004】
非剛性材料は、電解槽への装着後に、対極から過度に押圧された場合に部分的に変形して電極間距離が不均一になったり、非剛性材料の細線がイオン交換膜に突き刺さるといった不都合があった。又板バネ等の剛性材料では、イオン交換膜を傷つけたり、塑性変形が生じて再使用が不可能になるといった欠点があった。
又食塩電解槽のようなイオン交換膜電解槽では、陽極や陰極をイオン交換膜に密着させて低電圧で運転を継続できることが望ましく、電極をイオン交換膜方向に押圧するための種々の方法が提案されている。
【0005】
【特許文献1】
特公昭63−53272号公報(第1図〜第8図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前述したようにイオン交換膜を陽−陰極間で狭持する電解槽の構造上の特徴は、電極をイオン交換膜に均一に密着させてイオン交換膜の破損をさけるため及び陽−陰両電極間距離を最小に保つため、少なくとも一方の電極の極間距離方向への移動が自由な構造とし、電極を弾力性部材で押し狭持圧を調節できる点にある。
弾力性部材としては、金属ワイヤーからなる編物や織物又はこれを積層したもの、或いは三次元的に編んであるか、三次元的に編んだ後これにうねり加工等を施した形状、並びに金属繊維からなる不織物、コイルバネ(スプリング)、板バネなどがあり、いずれも何らかのバネ弾性を有するものである。
【0007】
一方食塩電解槽などの工業用の電解槽では、電極集電体から電極への電力供給を円滑に行うために、板バネや金属網状体等が使用されることがある。
しかし前述の通り、板バネや金属網状体は剛体であるため、イオン交換膜を傷付けたり、変形率が小さく、十分な電気的接続が得られないことがある。
このような欠点を解消するために、金属網状体に替えて金属製コイル体を陰極と陰極端板の間に装着して前記陰極を隔膜方向に均一に押圧して各部材を密着させた電解槽が開示されている(特許文献1)。
【0008】
この金属製コイル体はコイルの線径が非常に小さく、変形率が高いため、各部材を十分に密着させ、安定した電解槽の操業が可能になる。
本発明は従来の金属製コイル体の前述の特性を活かしつつ必要に応じて前記欠点を解消して、前記金属製コイル体を電極と電極集電体との間の電気的接続を確保するための部材として有するイオン交換膜電解槽を提供すること目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、イオン交換膜により陽極を収容する陽極室と水素発生陰極を収容する陰極室に区画されたイオン交換膜電解槽において、金属製コイル体を、あるいは耐食性フレームに金属製コイル体を巻回して構成される弾性クッション材を、水素発生陰極と陰極集電体間及び/又は陽極と陽極集電体間、あるいは水素発生陰極と陰極隔壁及び/又は陽極と陽極隔壁間に収容したことを特徴とするイオン交換膜電解槽である。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の対象とするイオン交換膜電解槽は、水素発生陰極装着イオン交換膜電解槽である。本発明の電解反応はクロルアルカリ(食塩)電解による水酸化アルカリ(水酸化ナトリウム)の生成反応であることが望ましい。
本発明ではこのような電解槽の陽極又は水素発生陰極と各集電体間に金属製コイル体を設置して各電極への給電が確実に起こるようにする。
【0011】
この金属製コイル体は、良好な耐食性を示すニッケル、ニッケル合金、ステンレス鋼、或いは銅等の固有抵抗の小さい金属に良好な耐食性を示すニッケル等をめっき等で被覆して製造した線材をロール加工により螺旋コイルに加工することにより得られる。線材の断面形状は、円、楕円、角部が丸い矩形等が好ましい。イオン交換膜の損傷を防止するために、三角形又は矩形のような鋭利な角部を有する断面形状は望ましくない。例えば直径0.17mmのニッケル線(NW2201)をロール加工すると、断面形状が約0.05mm×0.5mmの角部が丸い矩形に成り、巻き径が約6mmであるコイル線となり、得られたコイル線は好ましく使用できる。
金属製コイル体はこのまま電解槽内の対象電極とその集電体間に装着しても良いが、本発明では耐食性フレームに金属製コイル体を巻回して構成した弾性クッション材として使用することが望ましい。
【0012】
つまり前記金属製コイル体は変形率が高いため、取扱い難く、作業員の意図通りに電解槽の所定箇所に設置することが困難になることが多い。更に容易に変形する(強度が不十分である)ため、一旦電解槽の所定箇所に設置しても電解槽内の電解液や生成ガスにより偏位して各部材の均一密着が困難になることがある。
前記弾性クッション材は、例えば長方形状の耐食性フレームの4本の枠杆のうち対向する2本の間に、ほぼ均一密度になるように1本の又は複数本の金属製コイル体を巻回すことにより得られる。この弾性クッション材では、耐食性フレームの左右に通常2層の金属製コイル体が積層されるが、金属製コイル体自体が変形し易いため、隣接するコイル同士が櫛歯状に噛み合わさせて、見掛け上、1層になっている。このようにして得られた弾性クッション材は、食器洗浄用の金属タワシのような外観を有している。
【0013】
前記金属製コイル体を使用する弾性クッション材の組立は、電解槽外の作業であるため、容易に行うことができ、得られた弾性クッション材は、電解槽組立時に、電解槽内の対象電極と装着の集電体を電気的に接続するように装着するようにすれば良く、この装着時にも弾性クッション材自体は耐食性フレームの強度により組立に支障が出る程には変形しないため、容易に所定箇所に設置できる。
【0014】
この金属製コイル体の径(コイルの見掛け上の直径)は電解槽内に装着されることにより通常10〜70%まで縮んで弾性が生じ、この弾性により陽極と陽極集電体又は陰極と陰極集電体を弾性的に接続して電極への給電が容易になる。線径の小さい金属製コイル体を使用すれば必然的に電極や集電体と弾性クッション材との接触点の数が多くなり、均一接触が可能になる。電解槽に装着された後の弾性クッション材は、その耐食性フレームにより形状が保持されるため、塑性変形を受けることが殆どなく、電解槽の解体−再組立時にも殆どの場合再使用できる。
【0015】
本発明の弾性クッション材(又は金属製コイル体)を含むイオン交換膜電解槽を組み立てる際には、少なくとも一方の電極とその電極集電体間に弾性クッション材等を位置させ、その後は通常通りに組立てれば所定の位置に弾性クッション材等が保持された電解槽が得られる。
【0016】
前述のような構成から成るイオン交換膜電解槽を使用して食塩電解を行うには、陽極室に食塩水溶液等の電解液を、陰極ガス室に希釈苛性ソーダ水溶液を供給しながら、両極間に通電する。弾性クッション材等が集電体との間に保持されている電極では、弾性クッション材等の高強度及び強靭性によりこの状態が長期間維持されるため、イオン交換膜等が機械的に損傷したりすることなく、又過度に変形して給電が不十分になることがなく、苛性ソーダ等を高効率で製造できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明によるイオン交換膜電解槽で使用可能な弾性クッション材の例を図1〜図4に基づいて説明する。図1は耐食性フレームの斜視図、図2は弾性クッション材を例示する斜視図、図3は図2のA−A線縦断面図、図4は図2のB−B線縦断面図である。
【0018】
図1に示すように、耐食性フレーム3はニッケル等の金属丸棒で長方形の枠1の長手方向の1対の丸棒間に掛け渡された補強杆2から成っている。
図3及び図4に示す金属製コイル体4は、細径の金属線をコイル状にロール加工して得られ、例えば洗浄用の金属タワシのように剛性のない自由に変形できる材料になっている。この金属製コイル体4は図2に示すように、例えば直径約2mmのニッケル製耐食性フレーム3の長手方向の1対の丸棒間のほぼ全長に渡って巻回されて弾性クッション材5が製造される。
このようにして製造された弾性クッション材5は、金属製コイル体4が耐食性フレーム3に巻回されているため、耐食性フレーム3の形状のまま保持され、金属製コイル体4が耐食性フレーム3から離脱することは殆どなく、金属製コイル体4を耐食性フレーム3と一体化したものとして取り扱える。
これらの金属製コイル体や弾性クッション材等は、必ずしも陰極集電体や水素発生陰極に溶接等で固定する必要はないが、固定しても構わない。通常電気は接触通電方式で流すことにする。
【0019】
図5は、弾性クッション材を単極式食塩電解槽の水素発生陰極と陰極集電体の電気的接続に使用した例を示す概略平面図である。
図では、電解槽10内に、上下方向を向く1対の導電棒11が立設され、この導電棒の周囲に陰極液循環通電部材12が設置され、この通電部材12の面に沿って陰極集電体13が電気的に接続されている。
ついで前記陰極集電体13には弾性クッション材5が電気的に接続され、更にこの弾性クッション材13の外側には水素発生陰極14が接触状態で設置されている。
【0020】
図6は、弾性クッション材を複極式食塩電解槽の水素発生陰極と陰極集電体の電気的接続に使用した例を示す概略平面図である。
図では、電解槽20内には、接合された陽極隔壁21と陰極隔壁22の陽極側には上下方向を向く4個の陽極保持部材23(一体化されている)が帯状接合部24を陽極隔壁21に接合することにより固定され、各部材23の中には陽極液循環通路25が確保されている。
【0021】
又前記接合隔壁の陰極側には前記陽極保持部材23に対応する陰極保持部材26が帯状接合部27を陰極隔壁22に接合することにより固定され、各陰極保持部材25の中には陰極液循環通路28が確保されている。
前記陽極保持部材23の中央外側には凸状部29が形成され、この凸状部29を通してエキスパンデッドメタル状の陽極30へ給電を行う。
前記4個の陰極保持部材26の平坦面には弾性クッション材5(又は金属製コイル体4)が電気的に接触し、更にその外側には水素発生陰極31が電気的に接続されて、前記陰極保持部材26から弾性クッション材5を通して水素発生陰極31へ給電が行われる。
【0022】
弾性クッション材5を使用する場合は、この積層時に金属製コイル体4は耐食性フレーム3に巻回されているため、取り扱いが容易で形が崩れたりすることが殆ど無い。
この状態で、陽極室に食塩水を、陰極室に希釈苛性ソーダ水溶液をそれぞれ供給しながら両極間に通電すると、陰極室で濃縮苛性ソーダ水溶液が得られる。
【0023】
次に本発明に係る水素発生陰極を使用するイオン交換膜電解槽に関する実施例及び比較例を記載するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0024】
[実施例1]
次のようにして単位イオン交換膜電解槽を組み立てた。
陽極はペルメレック電極株式会社製の寸法安定性電極を使用し、陰極はニッケル製マイクロメッシュ基材の活性陰極とした。陽極及び陰極の反応面サイズはそれぞれ幅110mm、高さ1400mmとした。イオン交換膜は旭硝子株式会社製のFlemionF−8934を使用した。
【0025】
金属製コイル体は、線径が0.17mmで、引張強度620〜680N/mのニッケル線(NW2201)をロール加工により約0.5mm幅のコイル線にし、コイルの巻き径が約6mmにしたものを用いた。
この金属製コイル体を、直径2mmのニッケル丸棒製枠(耐食性フレーム)に巻回して直方体状に形状を整え、概略サイズが厚さ10mm×幅110mm×長さ350mmの弾性クッション材とした。この弾性クッション材のコイル線密度は約7g/dmであった。陰極集電体はニッケル製エキスパンデッドメタルとした。
【0026】
陰極集電体と水素発生陰極間に弾性クッション材を弾性が生じるように挿入し、電流密度4kA/mで30日間電解を行った。
運転期間中、電解条件が安定し、高濃度苛性ソーダが得られた。
【0027】
【発明の効果】
本発明は、イオン交換膜により陽極を収容する陽極室と水素発生陰極を収容する陰極室に区画されたイオン交換膜電解槽において、金属製コイル体を、あるいは耐食性フレームに金属製コイル体を巻回して構成される弾性クッション材を、水素発生陰極と陰極集電体間及び/又は陽極と陽極集電体間に設置したことを特徴とするイオン交換膜電解槽である。この金属製コイル体や弾性クッション材は水素発生陰極と陰極隔壁間及び/又は陽極と陽極隔壁間に設置しても良い。
金属製コイル体は自由に変形でき、更に十分な導電性を有するため、電極と電極集電体間を確実に電気的に接続できる。この金属製コイル体を耐食性フレームに巻回して構成した弾性クッション材を前記金属製コイル体の替わりに使用すると、金属製コイル体を耐食性フレームと一体化しているため、取扱いが容易で、更に形が崩れたりすることが殆ど無く、常に一定の力が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用可能な弾性クッション材中の耐食性フレームの斜視図。
【図2】本発明で使用可能な弾性クッション材を例示する斜視図。
【図3】図2のA−A線縦断面図。
【図4】図2のB−B線縦断面図。
【図5】弾性クッション材を単極式食塩電解槽の水素発生陰極と陰極集電体の電気的接続に使用した例を示す概略平面図。
【図6】弾性クッション材を複極式食塩電解槽の水素発生陰極と陰極集電体の電気的接続に使用した例を示す概略平面図。
【符号の説明】
1 長方形枠
2 補強杆
3 耐食性フレーム
4 金属製コイル体
5 弾性クッション材
10 単極式電解槽
11 導電棒
12 通電部材
13 陰極集電体
14 水素発生陰極
20 複極式電解槽
21 陽極隔壁
22 陰極隔壁
23 陽極保持部材
24 帯状接合部
25 陽極液循環通路
26 陰極保持部材
27 帯状接合部
28 陰極液循環通路
29 凸状部
30 陽極
31 水素発生陰極

Claims (4)

  1. イオン交換膜により陽極を収容する陽極室と水素発生陰極を収容する陰極室に区画されたイオン交換膜電解槽において、金属製コイル体を、水素発生陰極と陰極集電体間及び/又は陽極と陽極集電体間に収容したことを特徴とするイオン交換膜電解槽。
  2. イオン交換膜により陽極を収容する陽極室と水素発生陰極を収容する陰極室に区画されたイオン交換膜電解槽において、耐食性フレームに金属製コイル体を巻回して構成される弾性クッション材を、水素発生陰極と陰極集電体間及び/又は陽極と陽極集電体間に収容したことを特徴とするイオン交換膜電解槽。
  3. イオン交換膜により陽極を収容する陽極室と水素発生陰極を収容する陰極室に区画されたイオン交換膜電解槽において、金属製コイル体を、水素発生陰極と陰極隔壁及び/又は陽極と陽極隔壁間に収容したことを特徴とするイオン交換膜電解槽。
  4. イオン交換膜により陽極を収容する陽極室と水素発生陰極を収容する陰極室に区画されたイオン交換膜電解槽において、耐食性フレームに金属製コイル体を巻回して構成される弾性クッション材を、水素発生陰極と陰極隔壁及び/又は陽極と陽極隔壁間に収容したことを特徴とするイオン交換膜電解槽。
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