JP2004300259A - 繊維質成形体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】作業環境の悪化及び工場周辺の大気汚染を起こさず、且つ製造設備の腐食等を起こすことのない繊維質成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】短繊維にフェノール樹脂と水の混和物を噴霧し、加熱乾燥により水分の乾燥とレゾール型のフェノール樹脂の硬化を行って繊維質成形体を得る方法において、該混和物がレゾール型のフェノール樹脂、水及びキレート剤を含有するものである繊維質成形体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業機器用断熱吸音材、住宅用断熱吸音材、プラント用断熱吸音材、自動車用吸音材、又は農業用の苗床等に用いられるロックウールやグラスウール等の繊維質成形体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ロックウール又はグラスウールは、天然鉱物を繊維状に加工して得られる比較的安価で耐熱性の高い不燃繊維であり、ロックウール又はグラスウールの繊維質成形体は、産業機器用断熱吸音材、住宅用断熱吸音材、プラント用断熱吸音材、自動車用吸音材、又は農業用の苗床等として広く使用されている。
【0003】
前記ロックウール又はグラスウール等の繊維質成形体は、ガラス、玄武岩又はスラグ等を溶融させて加工した短繊維に、結合剤としてレゾール型のフェノール樹脂を用い、該結合剤を液体状で噴霧して該短繊維に配合させた後、加熱等により、水分の乾燥及び該レゾール型のフェノール樹脂の硬化を行い製造される。繊維質成形体の製造において、結合剤として使用されるレゾール型のフェノール樹脂とは、一般にフェノール類とアルデヒドを、トリエチルアミン又はナトリウム化合物等のアルカリ触媒で反応させた樹脂を言い、硬化剤を用いなくとも加熱又は乾燥することにより反応が進み、硬化に至る樹脂であり、硬化前は通常20〜80重量%程度の水を含有する液体状の原液として市販されている。
【0004】
繊維質成形体の製造において、結合剤を短繊維に十分に分散配合させるために、前記レゾール型のフェノール樹脂を多量の水に分散させた状態で噴霧することが行われる。そのため、レゾール型のフェノール樹脂と水を混和させた混和物が必要となる。混和前のレゾール型のフェノール樹脂の原液は、固形物の含有量が20〜80%であり、市販されているものの多くは40〜60%である。そして、結合剤として使用される際には、通常、固形物の含有量を10%程度として使用される。従って、所定の固形物の含有量とするためには、当該レゾール型のフェノール樹脂の原液に対し、水を多量に加えなければならない。しかし、所定量の水を含有するレゾール型フェノール樹脂の原液と水を単に混和したのでは、レゾール型のフェノール樹脂が分離して固形物が生じ、短繊維に所望量の硬化成分を塗布することができないばかりか、噴霧ノズルの閉塞、製造設備の配管の汚れ、ポンプの能力低下等といった不具合が生じる問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、従来より、繊維質成形体の製造においては、アンモニア水を添加した混和物が一般に使用されてきた。混和物を調製する際に、混和剤としてアンモニア水を添加しpHを高めることにより、レゾール型のフェノール樹脂と水の混和性を高くし、固形物が分離することを防いでいる。
【0006】
しかし、アンモニアは揮発しやすく、かつ非常に強い刺激臭を有する物質であるため、作業環境の悪化及び工場周辺の大気汚染を引き起こすこと、更には、アンモニア水がアルカリ性であるため、アルミニウムなどのアルカリに弱い素材を製造設備に使用できないという問題があった。そこで、アンモニア水を添加した混和物を使用しない、環境面で問題とならない新規な繊維質成形体の製造方法の開発が望まれていた。
【0007】
従って、本発明の目的は、硬化成分を均一に噴霧でき、作業環境の悪化及び工場周辺の大気汚染を起こさず、且つ製造設備の腐食等を起こすことのない繊維質成形体の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行った結果、(i)レゾール型のフェノール樹脂と多量の水を混和した時の該レゾール型のフェノール樹脂の分離による固形物の発生は、金属イオンが多く含まれている水を使用した時ほど多い傾向にあり、特に2価又は3価の金属陽イオンの与える影響が大きいこと、(ii)キレート剤を添加することにより、該キレート剤が金属イオンを捕捉し、該金属イオンがレゾール型のフェノール樹脂の分散状態を破壊するのを防止できること、(iii)単繊維に、キレート剤を配合したレゾール型フェノール樹脂と水の混和物を噴霧し加熱乾燥させれば、硬化成分を均一に噴霧でき、作業環境の悪化及び工場周辺の大気汚染を起こさず、且つ製造設備の腐食等を起こすことがないこと等を見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、短繊維にレゾール型のフェノール樹脂と水の混和物を噴霧し、加熱乾燥により水分の乾燥とレゾール型のフェノール樹脂の硬化を行って繊維質成形体を得る方法において、該混和物がレゾール型のフェノール樹脂、水及びキレート剤を含有する繊維質成形体の製造方法を提供するものである。本発明によれば、レゾール型のフェノール樹脂と水の混和剤として、キレート剤を使用するため、作業環境の悪化及び工場周辺の大気汚染を起こさず、且つ製造設備の腐食等を起こさない。また、混和物からレゾール型のフェノール樹脂が分離して固形物が生じることがないため、短繊維に硬化成分を均一塗布できると共に、製造設備の配管が汚れたり、噴霧ノズルが閉塞したり、ポンプ能力が低下したりすることがない。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る繊維質成形体の製造方法は、短繊維にレゾール型のフェノール樹脂と水の混和物を噴霧し、加熱乾燥により水分の乾燥とレゾール型のフェノール樹脂の硬化を行って繊維質成形体を得る方法において、該混和物がレゾール型のフェノール樹脂、水及びキレート剤を含有するものである。すなわち、本発明の繊維質成形体の製造方法は、特定の混和物を用いること以外は公知の方法を用いることができる。
【0011】
本発明の製造方法で使用する短繊維としては、特に制限されず、ガラス、玄武岩又はスラグ等の公知の材料を用いることができ、それらを溶融して加工を行って得られたものが使用できる。短繊維の形状としては、特に制限されないが、通常、繊維径1〜20μm、平均繊維径3〜15μmである。
【0012】
本発明の製造方法で使用する混和物は、レゾール型のフェノール樹脂、水及びキレート剤を含有するものである。当該混和物に用いられるレゾール型のフェノール樹脂しては、特に制限されず、通常トリエチルアミン又はナトリウム化合物等のアルカリ触媒を用いて反応させて得られるレゾール型のフェノール樹脂であり、市販品を用いればよい。
【0013】
上記混和物に用いられる水としては、特に制限されず、精製水、水道水、工業用水又は井戸水等が挙げられる。更には、各種工程で発生する排水、例えば、ボイラーの冷却水の排水又は湿式集塵機の排水等も用いることができる。具体的にはレゾール型のフェノール樹脂の原液に含まれる水と、この原液に添加される多量の希釈水の混合水である。
【0014】
上記混和物に用いられるキレート剤としては、特に制限されず、金属イオンと結合してキレート化合物を形成する多座配位子すなわち複数の配位原子を持つ化合物である。すなわち、キレート剤としては、多価金属と結合してキレート化合物を生成するものが好ましく、水溶性キレート剤が特に好ましい。キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ニトリロ3酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸(HIDA)、ハイドロエチルエチレンジアミン4酢酸(HEDTA)、ジセチレントリアミン5酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン6酢酸(TTHA)、ジカルボキシメチルグルタミン酸(GLDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1,3−プロパンジアミン4酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン4酢酸(DPTA−OH)等のアミノカルボン酸キレート剤及びその金属塩、あるいはヒドロキシエチリデン2ホスホン酸(HEDP)、ニトロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタン3カルボン酸(PBTC)等のホスホン酸キレート剤及びその金属塩が挙げられる。また、当該キレート剤は、水和物であってもよく、複数のキレート剤を併用することもできる。このうち、エチレンジアミン4酢酸又はその金属塩が、レゾール型のフェノール樹脂と水の混和性を向上させる効果が高い点で好ましく、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム塩(EDTA−2Na)、エチレンジアミン4酢酸3ナトリウム塩(EDTA−3Na)又はエチレンジアミン4酢酸4ナトリウム塩(EDTA−4Na)は、混和性の向上させる効果が高いことに加え安価である点で特に好ましい。
【0015】
上記混和物において、当該キレート剤の添加量は、水100重量部に対し、0.01〜5.0重量部、好ましくは0.02〜3.0重量部、特に好ましくは0.05〜1.0重量部である。0.01重量部未満だと、キレート剤の効果が現れにくく、5重量部を超えるとキレート剤の優れた効果はあるもののコストが高くなる。
【0016】
上記混和物において、当該水の配合量は、レゾール型のフェノール樹脂の固形分100重量部に対して、200〜3900重量部(固形分含有量2.5〜33重量%)、好ましくは400〜1900重量部(固形分含有量5〜20重量%)である。200重量部未満では、混和物中のレゾール型フェノール樹脂の含有量が多くなり、噴霧した時に該混和物の繊維への分散性が不十分となり、高い強度の繊維質成形体が得られず、また、製造コストも高くなる。一方、3900重量部を超えると、加熱乾燥工程で多くの熱が奪われ、レゾール型のフェノール樹脂の硬化が不十分となり、また、噴霧量が多くなることから、噴霧用のポンプの容量を大きくする必要も生じる。
【0017】
上記混和物には、上記必須成分の他、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば尿素が挙げられる。尿素は、レゾール型のフェノール樹脂を加熱硬化させる時のアルデヒドの発生を抑制し、あるいは、増量剤として使用されコスト削減に寄与する。当該尿素の添加量は、レゾール型のフェノール樹脂の固形分100重量部に対して、50重量部以下とすることが、レゾール型のフェノール樹脂硬化物の耐熱性を低下させない点で好ましい。
【0018】
該混和物中には、更に、硫酸アンモニウムが配合されていてもよい。硫酸アンモニウムは、レゾール型のフェノール樹脂の加熱硬化速度を上昇させ、生産性の向上に寄与する。当該硫酸アンモニウムの添加量は、レゾール型のフェノール樹脂の固形分100重量部に対して、20重量部以下とすることが、レゾール型のフェノール樹脂硬化物の耐水性を低下させない点で好ましい。
【0019】
また、前記混和物の調製は、水を含有させたレゾール型のフェノール樹脂の原液、水及びキレート剤を接触させることにより行うことができる。レゾール型のフェノール樹脂は、通常水を含有させた状態で販売されているが、混和物の調製に用いるレゾール型のフェノール樹脂の原液中の水の含有量は特に制限されず、任意の含有量のものを用いることができる。通常、フェノール樹脂の原液中の水の含有量は20〜80重量%である。
【0020】
水を含有させたレゾール型のフェノール樹脂の原液に更に添加される水としては、特に制限されず、精製水、水道水、工業用水又は井戸水等が挙げられる。更には、各種工程で発生する排水、例えば、ボイラーの冷却水の排水又は湿式集塵機の排水等も用いることができる。このうち、2価又は3価の金属陽イオンを含む工業用水や井戸水を用いると、キレート剤の添加効果が特に顕著に現れると共に、混和物を安価に調製することができる。
【0021】
水を含有させたレゾール型のフェノール樹脂原液と水の混合割合は、目的とする混和物中のレゾール型のフェノール樹脂固形物含有量、又は原液中の水分含有量により定まる。例えば、固形物含有量が10重量%の混和物の製造を目的とし、50重量%の水分含有量のレゾール型フェノール樹脂の原液を原料として使用する場合、該レゾール型のフェノール樹脂の原液の4倍量の水を混合する。
【0022】
キレート剤の添加方法は、特に制限されず、例えば、レゾール型のフェノール樹脂の原液と水の混合と同時にキレート剤を添加する方法、予め混和する水に所定量のキレート剤を添加する方法、予めレゾール型のフェノール樹脂の原液に所定量のキレート剤を添加する方法、又は予め高濃度のキレート剤水溶液を調製し、レゾール型のフェノール樹脂の原液と水を混合すると同時に、該高濃度のキレート剤水溶液を添加する方法等が挙げられる。
【0023】
また、キレート剤を添加する際に、各種の酸、塩基又は塩を添加し、pHの調整をすることができる。各種の酸、塩基又は塩の添加量は、混和する水に対して、5重量%以下とすることが、レゾール型のフェノール樹脂硬化物の耐水性を低下させない点で好ましい。また、複数の酸、塩基又は塩を併用することができる。
【0024】
添加された各成分を混和する方法としては、特に制限されず、公知の装置を用いて行うことができ、また、混和物を製造する際の温度は、90℃以下とすることが好ましい。90℃を超えるとレゾール型のフェノール樹脂の硬化が開始する場合がある。
【0025】
このようにして調製した前記混和物を前記短繊維に噴霧し、混和物を短繊維に配合させる。当該混和物の噴霧は、短繊維の加工と同時であっても、短繊維の加工後であっても、あるいは短繊維の加工と同時に行なうと共に加工後にも行なうものであってもよいが、短繊維の加工と同時に噴霧することが、混和物が短繊維全体に分散しやすい点で好ましい。
【0026】
前記短繊維と前記混和物の配合割合は、繊維質成形体中のレゾール型のフェノール樹脂の硬化物の含有量が、0.1〜5重量%となる配合割合が好ましい。繊維質成形体中のレゾール型のフェノール樹脂硬化物の含有量が、0.1重量%未満であると繊維質成形体の強度が低下し、一方、5重量%を超えると製造コストが高くなる。当該配合割合は、混和物中の固形物含有量と目的とする繊維質成形体中のレゾール型のフェノール樹脂硬化物の含有量により定まり、例えば、固形物含有量が10重量%の混和物を用いて、レゾール型のフェノール樹脂の硬化物の含有量が3重量%である繊維質成形体を100kg製造する場合、97kgの短繊維と30kgの該混和物を配合する。すなわち、該配合割合は、例えば繊維質成形体製造時の短繊維の製造速度とフェノール樹脂と水の混和物の噴霧量により適宜調整され、得られた繊維質成形体の強熱減量、例えばフェノール樹脂硬化物が消失する1200℃で処理した時の減量値から確認することができる。
【0027】
次に、混和物が噴霧された短繊維を、必要であれば圧縮等により形状を整えた後、加熱乾燥し、水分の乾燥及びレゾール型のフェノール樹脂の硬化を行う。加熱乾燥方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができ、例えば、所定の加熱乾燥温度に設定したオーブン中で加熱する方法、所定の加熱乾燥温度の熱風を送風する方法等が挙げられる。加熱乾燥温度は、通常180〜300℃であり、加熱乾燥に要する時間は、通常1〜30分間である。
【0028】
このようにして得られた繊維質成形体は、更に、裁断装置を用い裁断等を行い、各種の用途に応じた形状の繊維質成形体とする。
【0029】
本発明の繊維質成形体の製造方法によれば、短繊維に噴霧する混和物として、キレート剤を混和剤として用いるレゾール型のフェノール樹脂と水の混和物を使用するため、作業環境の悪化及び工場周辺の大気汚染を起こさず、且つ製造設備の腐食等を起こさない。また、混和物からレゾール型のフェノール樹脂が分離して固形物が生じることがないため、短繊維に硬化成分を均一塗布できると共に、製造設備の配管が汚れたり、噴霧ノズルが閉塞したり、ポンプ能力が低下したりすることがない。
【0030】
【実施例】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
実施例1
(フェノール樹脂と水の混和物の調製)
Caイオン85ppm、Mgイオン40ppmを含有する井戸水に、キレート剤としてエチレンジアミン4酢酸2ナトリウム2水和物(EDTA−2Na2HO)を添加し、0.1重量%のEDTA−2Na水溶液を調製した。次に、固形物含有量50重量%(固形物中の尿素含有量30%)、水含有量50重量%のレゾール型のフェノール樹脂200kg及び当該EDTA−2Na水溶液800kgを、攪拌装置に加え、攪拌速度100rpm、25℃で10分間攪拌を行い混和物1000kgを得た。
【0031】
(繊維質成形体の製造)
玄武岩、ドロマイト等からなる鉱物の混合物をキューポラで溶解し、次いで繊維化と同時に、結合剤となる前記方法で調製されたレゾール型フェノール樹脂と水の混和物を噴霧し、更に集綿、積層しこれを圧縮して、厚さ40mm、嵩密度100kg/mの圧縮物とした。次いで、この圧縮物を230℃に設定された連続炉にて10分間加熱乾燥を行い、水分の乾燥及びレゾール型のフェノール樹脂の硬化を行った。加熱乾燥後、裁断機を用いて裁断を行い、断熱材用繊維質成形体を得た。得られた繊維質成形体のフェノール樹脂硬化物含有量、曲げ強度を下記測定方法に従い測定すると共に、繊維質成形体の製造時の連続炉周辺の臭気を官能評価した。その結果、フェノール樹脂硬化物含有量は1.5重量%、曲げ強度は断熱材として十分な82kPaであった。また、連続炉周辺の臭気はほとんど感じることがなかった。
【0032】
(フェノール樹脂硬化物含有量の測定)
繊維質成形体25gを1200℃に加熱し、加熱前後に変化した重量を加熱前の繊維質成形体重量で除した値から、繊維質成形体中のフェノール樹脂硬化物の含有量を求めた。
【0033】
(曲げ強度の測定方法)
得られた繊維質成形体をカッターナイフで裁断し、幅100mm、長さ30mm、厚さ40mmの形状を切り出して曲げ強度を測定した。曲げ強度はインストロン型万能試験機を用い、支点間距離20mm、圧縮速度5mm/分にて3点曲げを行い、試験中の最大応力で評価した。
【0034】
実施例2
0.1重量%EDTA−2Na水溶液の代わりに、0.2重量%のEDTA−2Na水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、フェノール樹脂硬化物含有量は1.5重量%、曲げ強度は断熱材として十分な81kPaであった。また、連続炉周辺の臭気はほとんど感じることがなかった。
【0035】
実施例3
エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム4水和物(EDTA−4Na4HO)を用いて、0.1重量%のEDTA−4Na水溶液を調製した。そして、0.1重量%のEDTA−2Na水溶液の代わりに、0.1重量%のEDTA−4Na水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、フェノール樹脂硬化物含有量は1.5重量%、曲げ強度は断熱材として十分な78kPaであった。また、連続炉周辺の臭気はほとんど感じることがなかった。
【0036】
実施例4
0.1重量%のEDTA−4Na水溶液の代わりに、0.2重量%のEDTA−4Na水溶液を用いた以外は、実施例3と同様の方法で行った。その結果を表1に示す。その結果、フェノール樹脂硬化物含有量は1.5重量%、曲げ強度は断熱材として十分な85kPaであった。また、連続炉周辺の臭気はほとんど感じることがなかった。
【0037】
実施例5
0.1重量%EDTA−2Na水溶液の代わりに、0.05重量%のEDTA−2Na水溶液と0.05重量%のEDTA−4Na水溶液の当量混合水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果、フェノール樹脂硬化物含有量は1.5重量%、曲げ強度は断熱材として十分な83kPaであった。また、連続炉周辺の臭気はほとんど感じることがなかった。
【0038】
比較例1
井戸水にキレート剤を添加しない以外は、実施例1と同様の方法で行った。混和物を噴霧中に目詰まりを起こし、以降の混和物の噴霧を行うことはできなかった。また、噴霧装置の混和物タンク、配管に、フェノール樹脂の固形物が多数観察された。
【0039】
比較例2
実施例1で用いた固形物中の尿素含有量30%且つ固形物含有量50重量%、水含有量50重量%のレゾール型フェノール樹脂の原液200kgに、アンモニア濃度が28重量%のアンモニア水を50kg、及び井戸水750kg攪拌機に加え、攪拌速度100rpm、温度25℃にて10分間攪拌し、フェノールと水の混和物を調製した。そして、当該混和物を使用する以外は実施例1と同様の方法で行った。その結果、フェノール樹脂硬化物含有量は1.5重量%、曲げ強度は断熱材として十分な83kPaであったが、連続炉周辺で強い刺激臭を感じた。
【0040】
キレート剤を混和剤に用いた混和物を使用した実施例1〜5は、臭気は無く良好であり、得られた繊維質成型体の機械的物性は従来のものと同等の強度を有しており、良好であり特に問題となる点は見当たらなかった。一方、キレート剤を添加しない比較例1では、分離した固形物が噴霧口を閉塞し、作業を続けることができなかった。また、アンモニアを用いる従来の製造方法(比較例2)では、良好な物性を持つ繊維質成形体が得られたものの、強い臭気を感じた。
【0041】
【発明の効果】
本発明の繊維質成形体の製造方法によれば、短繊維に噴霧する混和物として、キレート剤、レゾール型のフェノール樹脂及び水の混和物を使用するため、作業環境の悪化及び工場周辺の大気汚染を起こさず、且つ製造設備の腐食等を起こさない。また、混和物からレゾール型のフェノール樹脂が分離して固形物が生じることがないため、短繊維に硬化成分を均一塗布できると共に、製造設備の配管が汚れたり、噴霧ノズルが閉塞したり、ポンプ能力が低下したりすることがない。

Claims (5)

  1. 短繊維にレゾール型のフェノール樹脂と水の混和物を噴霧し、加熱乾燥により水分の乾燥とレゾール型のフェノール樹脂の硬化を行って繊維質成形体を得る方法において、該混和物がレゾール型のフェノール樹脂、水及びキレート剤を含有するものであることを特徴とする繊維質成形体の製造方法。
  2. 前記混和物中、水の含有量が、前記レゾール型のフェノール樹脂の固形分100重量部に対して、200〜3900重量部であり、キレート剤の含有量が、水100重量部に対し、0.01〜5.0重量部であることを特徴とする請求項1記載の繊維質成形体の製造方法。
  3. 前記キレート剤が、エチレンジアミン4酢酸又はその金属塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の繊維質成形体の製造方法。
  4. 前記エチレンジアミン4酢酸の金属塩が、エチレンジアミン4酢酸のナトリウム塩であることを特徴とする請求項3記載の繊維質成形体の製造方法。
  5. 前記短繊維と前記混和物の配合割合は、繊維質成形体中のレゾール型のフェノール樹脂の硬化物の含有量が、0.1〜5重量%となる割合であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の繊維質成形体の製造方法。
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