JP2004300025A - ガラス発泡体及びそれを用いた断熱材並びにガラス発泡体の製造方法 - Google Patents

ガラス発泡体及びそれを用いた断熱材並びにガラス発泡体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、ガラス粉体粒子の内部まで浸透した水分子が加熱により膨張し各々のガラス粉体粒子が発泡して多数の独立気泡を均一に分散させることができ均質性に優れ、また多数の独立気泡を分散させることができるため嵩密度を小さくでき軽量性に優れるとともに断熱性に優れ、さらに気泡径が小さく気泡間のガラス壁の厚さを薄くできるので、ドリルや鋸等を用いた穿孔や切断等の機械加工が容易で機械加工性に優れるガラス発泡体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のガラス発泡体は、高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させて水熱処理されたガラス粉体が焼結及び発泡して形成された平均気泡径が10〜1000μm好ましくは15〜700μmの発泡セルを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラス粉体を用いたガラス発泡体及びそれを用いた断熱材並びにガラス発泡体の製造方法に関するものである。
従来より、ガラス質廃材等を粉砕したガラス粉体を用いて、ガラスのマトリックス中に独立又は連続した気泡が形成された断熱性や防音性等に優れたガラス発泡体が開発されている。
例えば、(特許文献1)には「ビンガラス等を粉砕したものに石灰石粉末を混合した原料を造粒後、810〜960℃で加熱する泡ガラスの製造方法」が開示されている。
(特許文献2)には「廃ガラスを破砕して粉粒状に形成し、これに炭酸ナトリウム等の金属炭酸塩、炭化珪素等の金属炭化物、窒化珪素等の金属窒化物の少なくとも1種を添加し加熱するガラス発泡体の製造方法」が開示されている。
(特許文献3)には、「天然ガラス質鉱物の粉砕物とアルカリ金属水酸化物と水とからなるスラリー等を110〜200℃の高温高圧水蒸気下で反応処理する無機ガラス発泡体の製造方法」が開示されている。
特開昭58−60634号公報 特開平11−343128号公報 特開昭60−235743号公報
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)と(特許文献2)に開示の技術は、ガラス粉体に炭酸ナトリウムや石灰石粉末等の金属炭酸塩、炭化珪素等の金属炭化物、窒化珪素等の金属窒化物の発泡剤を混合し加熱しなければならず、発泡剤はガラス軟化点以上の高温で分解するものが選択されているため、約900℃以上の高い温度に加熱する必要があり省エネルギー性に欠けるとともに大型の加熱炉を要するという課題を有していた。
(2)ガラス軟化点と発泡剤が分解する温度とが重なる温度範囲で発泡体が形成されるので、加熱する際には加熱炉の精密な温度制御が必要であり生産性に欠けるという課題を有していた。
(3)発泡剤の粒径や形状、ガラス粉体と発泡剤との混ざり具合によってガラス発泡体の密度や気泡径等が変化するので、それらの制御が困難で均質なガラス発泡体を得ることができないという課題を有していた。
(4)溶融したガラス粉体によって発泡剤が分解して発生するガスが包み込まれたときは独立気泡、それ以外の場合は連続気泡が形成されるが、大部分が連続気泡であり通気性を有し、そのため断熱性に欠けるという課題を有していた。
(5)(特許文献3)に開示の技術は、金属炭酸塩、金属炭化物等の発泡剤を用いずにガラス発泡体を製造することができるが、NaOHやKOH等のアルカリ金属水酸化物とともにガラス粉体の反応処理を行うので、アルカリ金属水酸化物によってガラスが変性され易く、製造されたガラス発泡体の耐水性に欠けるという課題を有していた。また、工程が煩雑になるという課題を有していた。
(6)添加するアルカリ金属水酸化物の量や反応処理温度の条件によっては、反応が進みすぎてガラスが変性し発泡温度が極端に低下し機械的強度の大きなガラス発泡体を得ることができず、逆に結晶化が進行して殆ど発泡せずに低密度のガラス発泡体を得ることができず安定性に欠けるという課題を有していた。
(7)反応処理条件と発泡させるための加熱温度との関係が複雑であり、発泡条件が制限され生産性に欠けるという課題を有していた。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、多数の独立気泡が均一に分散され均質性に優れ、また嵩密度を小さくでき軽量性に優れるとともに断熱性に優れ、さらに機械加工性に優れるガラス発泡体を提供することを目的とする。
また、本発明は、断熱性、軽量性、不燃性、防湿性に優れ、外壁のコンクリート躯体の打込型枠(捨て型枠)として使用することで、打設されたコンクリートと良好に接合し外壁面を形成させることができるとともにコンクリート打設後の型枠解体を不要にでき、斑の少ない外装仕上げのできる断熱材を提供することを目的とする。
また、本発明は、形状や大きさの自由度が高く多種多用な形状や大きさのガラス発泡製品を製造することができ自在性に優れ、また低い加熱温度で製造することができ省エネルギー性に優れるとともに生産性に優れるガラス発泡体の製造方法を提供することを目的とする。
上記従来の課題を解決するために本発明のガラス発泡体及びそれを用いた断熱材並びにガラス発泡体の製造方法は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載のガラス発泡体は、高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させて水熱処理されたガラス粉体が焼結及び発泡して形成された平均気泡径が10〜1000μm好ましくは15〜700μmの発泡セルを備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)ガラス粉体に高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させることで、ガラス粉体を変性させずにガラス粉体粒子の表面から水分子を浸透させ内部に拡散させた水熱処理粉体ができる。ガラス粉体粒子の内部に拡散した水分子は、表面に吸着した水分子とは異なり蒸発し難く、高温までガラス粉体粒子内に存在するので、ガラス粉体を加熱するとガラスが軟化すると同時に内部に拡散した水分子が蒸気となり膨張して、軟化したガラス粉体粒子内に気泡が形成されガラス粉体が焼結することにより、ガラス粉体粒子の内部から発泡した発泡セルを形成させることができる。このため独立気泡を多数形成させることができる。
(2)水熱処理によって水分子がガラス粉体粒子の内部まで浸透するので、加熱により各々のガラス粉体粒子が発泡して発泡セルを均一に分散させることができ均質性に優れる。
(3)発泡セルの平均気泡径が10〜1000μm好ましくは15〜700μmの発泡セルを備えているので、嵩密度を小さくでき軽量性に優れるとともに断熱性に優れ、また発泡セル間のガラス壁の厚さを薄くすることができ機械加工性に優れる。
ここで、ガラス粉体としては、ガラスを所定の大きさのガラス粉体粒子に粉砕したものが用いられる。なかでも、薬品用びん,化粧品用びん,食物調味料用びん,飲料用びん等の瓶ガラス、板ガラス、窓ガラス、テレビやディスプレイのガラスパネル等の廃棄物、ガラス製品工場から発生するスクラップ等のガラス質廃材が、好適に用いられる。廃棄物の再資源化を図ることができ省資源性に優れるからである。なかでも、NaO等のアルカリイオンを多量に含有する瓶ガラス、板ガラス等のガラス質廃材は、水熱処理によってガラス粉体に水分子が浸透し易くガラスの軟化温度を低下させるとともに容易に発泡させることができるので好適に用いられる。
発泡セルの平均気泡径が15μmより小さくなるにつれ発泡が不十分で嵩密度が大きく断熱性や機械加工性が低下する傾向がみられ、平均気泡径が700μmより大きくなるにつれ一度形成された発泡セルが隣接する発泡セルと合体して粗大な気泡が形成されているため発泡セルの気泡径が不揃いで均質性に欠け、また機械加工の際にチッピング等が生じ易く機械加工性が低下する傾向がみられる。特に、10μmより小さくなるか1000μmより大きくなると、これらの傾向が著しいため、いずれも好ましくない。
なお、発泡セルには、割れ、ヒビ等は含まない。
発泡セルのガラス壁の平均厚さとしては、5〜200μmが好適に用いられる。ガラス壁の平均厚さが5μmより薄くなるにつれガラス発泡体の機械的強度が小さくなる傾向がみられ、200μmより厚くなるにつれドリルや鋸等を用いて機械加工をする際の加工性が低下する傾向がみられるため、いずれも好ましくない。
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガラス発泡体であって、径がφ11mmの合金工具鋼製のストレートシャンクツイストドリルを用い重量9.8N、回転数400rpmの条件下において穿孔したドリル侵入速度が、0.01〜5m/min好ましくは0.1〜2m/minである構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)合金工具鋼製のドリルを用いたドリル侵入速度が0.01〜5m/minの範囲に形成されているので、ドリルや鋸等を用いて容易に切断,研削,穿孔等の機械加工ができ特殊な加工設備を要さず加工コストを低減でき、また切断や切削等の加工時間を大幅に短縮できるとともに自在な形状に容易に加工することができ自在性に優れ、さらにチッピングや割れの発生率を低下させることができ製品得率を高めることができる。
(2)機械加工性に優れているので、ガラス発泡体を断熱材やボイドスラブを構築する際の捨て型枠等として用い現場施工する際に、ドリルや鋸等を用いて加工し現場の状況に応じ容易に対応でき施工性に優れる。
ここで、径がφ11mmの合金工具鋼製のストレートシャンクツイストドリルを用い重量9.8N、回転数400rpmの条件下において穿孔したドリル侵入速度が、0.1m/minより小さくなるにつれ、切断加工時間が長くなり加工生産性が低下するとともにドリル等の加工具の磨耗量が大きくなり、またドリル等の加工具に加える重量を大きくしなければ加工ができないのでチッピングや割れの発生率が高まり製品得率が低下する傾向がみられ、2m/minより大きくなるにつれガラス発泡体が容易に磨耗し易く構造体として使用し難くなる傾向がみられる。特に、0.01m/minより小さくなるか5m/minより大きくなると、これらの傾向が著しいため、いずれも好ましくない。
本発明の請求項3に記載の断熱材は、パネル状に形成された若しくは躯体内に埋設された請求項1又は2に記載のガラス発泡体を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)平均気泡径が10〜1000μmの発泡セルを備えたパネル状に形成された若しくは躯体内に埋設されたガラス発泡体を備えているので、断熱性及び軽量性に優れ、またガラスが原料なので不燃性に優れ、さらに独立気泡が多数形成されているので防湿性に優れる。
(2)ガラスを原料にしたパネル状に形成された若しくは躯体内に埋設されたガラス発泡体を備えているので、外壁のコンクリート躯体の打込型枠(捨て型枠)兼外断熱材として使用することで、打設されたコンクリートとガラス発泡体が良好に接合し外壁面を形成させることができるとともに、コンクリート打設後の型枠解体を不要にできる。
(3)ガラス発泡体が平均気泡径10〜1000μmの発泡セルを備えているので、パネル状に形成された若しくは躯体内に埋設されたガラス発泡体の表面にガラス釉等を用いて外断熱材としての外装仕上げをする場合に、斑の少ない外装仕上げをすることができるとともに強固に接合させることができる。
ここで、パネル状に形成された断熱材は、建造物等の外壁、内壁や床面下等に配設される。躯体内に埋設された断熱材は、コンクリート打設時に壁の中央や外側に配置し躯体内を断熱する。パネル状に形成された若しくは躯体内に埋設されたガラス発泡体の外面には、予め所望のガラス釉仕上げ、タイル張り等の外装仕上げを施すことができる。
また、ガラス発泡体の厚さは、要求される強度と断熱性能が得られるように適宜選択することができる。
なお、ガラス発泡体の線熱膨張係数(JIS A 1129に準拠した方法で測定)としては、6×10−6〜15×10−6−1が好適に用いられる。線熱膨張係数が6×10−6−1より小さくなるか、15×10−6−1より大きくなるにつれ、コンクリートの線熱膨張係数とのずれが大きくなり、コンクリート躯体の断熱材として用いた場合に線熱膨張係数の違いによって剥離等が発生し易くなる傾向がみられるため好ましくない。
本発明の請求項4に記載のガラス発泡体の製造方法は、ガラス粉体に高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させて水熱処理粉体を得る水熱処理工程と、前記水熱処理工程で得られた水熱処理粉体を所定形状に成形して若しくは型枠内に充填して成形体を得る水熱粉体成形工程と、前記水熱粉体成形工程で得られた成形体を所定温度に加熱して焼結及び発泡させる加熱発泡工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)水熱処理工程を備えているので、ガラス粉体粒子を変性させずにガラス粉体粒子の表面から水分子を浸透させ内部に拡散させることができる。ガラス粉体粒子の内部に拡散した水分子は、表面に吸着した水分子とは異なり蒸発し難く、高温までガラス粉体粒子内に存在する。加熱発泡工程においてガラス粉体を加熱すると、ガラスが軟化すると同時に内部に拡散した水分子が蒸気となり膨張して、軟化したガラス粉体粒子内に気泡が形成されることにより、ガラス粉体粒子の内部から発泡させ、ガラス粉体を焼結させることができる。このため独立気泡を多数形成させることができる。
(2)ガラス粉体粒子に浸透した水分子が、加熱によりガラス粉体粒子が軟化し始めると同時に軟化したガラス粉体粒子内で膨張することによってガラス粉体粒子が発泡するので、発泡現象が生じる温度範囲が広く、加熱発泡工程における温度制御を容易にできる。また、ガラス粉体粒子が内部から均一に発泡するので、発泡セルのガラス壁の厚さを薄くすることができ、ドリルや鋸等で所望の形状に容易に加工することができ機械加工性に優れたガラス発泡体を製造できる。
(3)水熱処理粉体を所定形状に成形して若しくは型枠内に充填して得られた成形体を加熱発泡させるので、成形体の形状や大きさの自由度が高く多種多用な形状や大きさのガラス発泡製品を製造することができ自在性に優れる。
(4)系内に導入する水蒸気や水の量を制御することにより用途に応じてガラス発泡体の嵩密度や気泡の大きさ等を制御することができ自在性に優れる。
(5)ガラス粉体に水熱処理を行っているのでガラスの軟化温度を低下させることができ、加熱発泡工程における加熱温度を低くすることができるので省エネルギー性に優れるとともに高温の加熱炉を用いず製造することができ生産性に優れる。また、低い温度で焼結させるので得られたガラス発泡体の発泡セルの気泡径を小さくでき、機械加工性に優れたガラス発泡体を製造できる。
(6)金属炭酸塩、金属炭化物等の発泡剤を用いず製造するので、発泡剤の粉砕や混合の工程が不要で生産性に優れ、また発泡剤が偏析することもなく均一に気泡が分散したガラス発泡体を製造することができる。
水熱処理工程としては、ガラス粉体を入れた密封容器又はキルン等の中に高温高圧の水蒸気を導入しガラス粉体粒子に接触させるもの、又はガラス粉体と水とを入れた密封容器を加熱して水を蒸発させて生成した水蒸気や高温高圧水をガラス粉体粒子に接触させるものが用いられる。なかでも、高温高圧の水蒸気をガラス粉体粒子に接触させるものが好適に用いられる。ガラス粉体を高温高圧水に浸漬する等、ガラス粉体粒子に高温高圧水を接触させた場合には、ガラス粉体粒子への水分子の拡散よりむしろガラス粉体粒子から金属イオンが溶出し、溶出した金属イオンとガラスとの反応が進行してガラス粉体粒子の表面に珪酸カルシウム水和物等の化合物が形成され易く、ガラス粉体粒子への水分子の拡散が抑制され易くなるので好ましくない。
水熱粉体成形工程としては、水熱処理粉体を必要に応じてバインダー等を添加し成形型等を用いてプレス成形等によって所定形状に成形し成形体を得るもの、ステンレス製等の金属製やセラミック製等で所定形状に形成された型枠内に水熱処理粉体を充填し型枠に応じた形状の成形体を得るもの、加熱炉で用いられるステンレス製等の金属製やセラミック製等で形成されたメッシュベルトやキャタピラー等の帯状体や板状体等の上に水熱処理粉体をホッパー等から落下させて堆積し成形体を得るもの等が用いられる。
なお、水熱処理工程において得られた水熱処理粉体が固化している場合には、水熱粉体成形工程に先立ち、その固化体を粉砕し必要に応じて篩等を用いて整粒した後に成形することができる。これにより、斑なく水熱処理粉体を分散させた成形体を得ることができ、加熱発泡工程によって得られるガラス発泡体を均質化することができる。
固化体を粉砕し篩等を用いて整粒する場合は、目開き1mmの標準篩を用い、これを通過した粒子を用いるのが好ましい。水熱処理粉体が凝結して塊状化し偏在するのを防止できるからである。
加熱発泡工程では、成形体をボックス炉,シャットルキルン,ローラーハースキルン,トンネル式等の加熱炉内で間歇式若しくは連続式に加熱し、ガラスを軟化させて焼結させるとともにガラス粉体に浸透した水蒸気を膨張させて軟化したガラス粉体粒子を内部から発泡させる。なお、成形体として水熱処理粉体を型枠内に充填したものを用いた場合は、型枠とともに加熱することができる。
これにより、請求項1又は2に記載のガラス発泡体を得ることができる。
請求項5に記載のガラス発泡体の製造方法は、ガラス粉体を所定形状に成形して若しくは型枠内に充填して成形体を得るガラス粉体成形工程と、前記ガラス粉体成形工程で得られた成形体に高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させて水熱処理固化体を得る成形体水熱処理工程と、前記成形体水熱処理工程で得られた水熱処理固化体を所定温度に加熱して焼結及び発泡させる加熱発泡工程と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)成形体水熱処理工程を備えているので、成形体のガラス粉体を変性させずにガラス粉体粒子の表面から水蒸気や高温高圧水を浸透させ内部に拡散させることができる。ガラス粉体粒子の内部に拡散した水分子は、表面に吸着した水分子とは異なり蒸発し難く、高温までガラス粉体粒子内に存在する。加熱発泡工程においてガラス粉体を加熱すると、ガラスが軟化すると同時に内部に拡散した水分子が蒸気となり膨張して、軟化したガラス粉体粒子内に気泡が形成されることにより、ガラス粉体粒子の内部から発泡させることができる。このため独立気泡を多数形成させることができる。
(2)ガラス粉体粒子内に浸透した水分子が、加熱によりガラスが軟化し始めると同時に軟化したガラス粉体粒子内で膨張することによってガラスが発泡するので、発泡現象が生じる温度範囲が広く、加熱発泡工程における温度制御を容易にできる。また、ガラス粉体粒子が内部から均一に発泡するので、発泡セルのガラス壁の厚さを薄くすることができ、ドリルや鋸等で所望の形状に容易に加工することができ機械加工性に優れたガラス発泡体を製造できる。
(3)ガラス粉体を所定形状に成形して若しくは型枠内に充填して得られた成形体を水熱処理した後に加熱発泡させるので、成形体の形状や大きさの自由度が高く多種多用な形状や大きさのガラス発泡製品を製造することができ自在性に優れる。
(4)系内に導入する水蒸気や水の量を制御することにより用途に応じてガラス発泡体の嵩密度や気泡の大きさ等を制御することができ自在性に優れる。
(5)ガラス粉体に水熱処理を行っているのでガラスの軟化温度を低下させることができ、加熱発泡工程における加熱温度を低くすることができるので省エネルギー性に優れるとともに高温の加熱炉を用いず製造することができ生産性に優れる。また、低い温度で焼結させるので得られたガラス発泡体の発泡セルの気泡径を小さくでき、機械加工性に優れたガラス発泡体を製造できる。
(6)金属炭酸塩、金属炭化物等の発泡剤を用いず製造するので、発泡剤の粉砕や混合の工程が不要で生産性に優れ、また発泡剤が偏析することもなく均一に気泡が分散したガラス発泡体を製造することができる。
ガラス粉体成形工程としては、ガラス粉体を必要に応じてバインダー等を添加し成形型等を用いてプレス成形等によって所定形状に成形し成形体を得るもの、ステンレス製等の金属製やセラミック製等で所定形状に形成された型枠内にガラス粉体を充填し型枠に応じた形状の成形体を得るもの、ステンレス製等の金属製やセラミック製等で形成された帯状体や板状体等の上にガラス粉体を堆積し成形体を得るもの等が用いられる。
成形体水熱処理工程としては、ガラス粉体成形工程で成形された成形体を入れた密封容器又はキルン等の中に高温高圧の水蒸気を導入しガラス粉体粒子に接触させるもの、又はガラス粉体と水とを入れた密封容器を加熱して水を蒸発させて生成した水蒸気や高温高圧水をガラス粉体粒子に接触させるものが用いられる。これにより、成形体が水熱処理された水熱処理固化体が得られる。なかでも、高温高圧の水蒸気をガラス粉体粒子に接触させるものが好適に用いられる。ガラス粉体粒子を高温高圧水に浸漬する等、ガラス粉体粒子に高温高圧水を接触させた場合には、ガラス粉体粒子への水分子の拡散よりむしろガラス粉体粒子から金属イオンが溶出し、溶出した金属イオンとガラスとの反応が進行してガラス粉体粒子の表面に珪酸カルシウム水和物等の化合物が形成され易く、ガラス粉体粒子への水分子の拡散が抑制され易くなるので好ましくない。
加熱発泡工程では、水熱処理固化体をボックス炉,シャットルキルン,ローラーハースキルン,トンネル式等の加熱炉内で間歇式若しくは連続式に加熱し、ガラスを軟化させて焼結させるとともにガラス粉体に浸透した水蒸気を膨張させて軟化したガラス粉体を内部から発泡させる。なお、ガラス粉体を型枠内に充填して得られた水熱処理固化体を加熱する場合は、型枠とともに加熱することができる。また、型枠から取り出した後に加熱することもできる。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のガラス発泡体の製造方法であって、前記加熱発泡工程における加熱温度が、600〜900℃好ましくは700〜800℃である構成を有している。
この構成により、請求項4又は5で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)加熱発泡工程における加熱温度が低く常圧で加熱するので省エネルギー性に優れるとともに高温の加熱炉を要さず製造することができ生産性に優れる。
(2)加熱温度が600〜900℃好ましくは700〜800℃なので、ガラス粉体粒子を十分に発泡させることができるとともに焼結も十分に進行させることができ、機械的強度が高く、かつ、嵩密度の低いガラス発泡体を製造することができる。
ここで、ガラス粉体の種類にもよるが、加熱発泡工程における加熱温度が700℃より低くなるにつれ発泡が不十分になるとともに焼結が十分に進行せずガラス発泡体の機械的強度が小さく崩れ易くなる傾向がみられ、800℃より高くなるにつれ発泡した気泡が破裂するものが現れ気泡径が不均一になるとともにガラスが溶融し気泡がつぶれガラス発泡体の嵩密度が大きくなる傾向がみられる。特に、600℃より低くなるか900℃より高くなると、これらの傾向が著しいためいずれも好ましくない。
請求項7に記載の発明は、請求項4乃至6の内いずれか1に記載のガラス発泡体の製造方法であって、前記水熱処理工程又は成形体水熱処理工程における前記水蒸気又は前記高温高圧水の温度が、150〜350℃好ましくは180〜300℃であり、前記水蒸気又は前記高温高圧水の圧力が、0.3〜16MPa好ましくは1〜4MPa、特に好ましくは1MPa以上その温度における飽和水蒸気圧以下である構成を有している。
この構成により、請求項4乃至6の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)水熱処理工程又は成形体水熱処理工程における水蒸気又は高温高圧水の温度が150〜350℃好ましくは180〜300℃であり、水蒸気又は高温高圧水の圧力が0.3〜16MPa好ましくは1〜4MPaなので、ガラス粉体粒子の内部に多量の水分子を浸透させることができ、加熱発泡工程の所定温度範囲でガラスの発泡と焼結ができるため、嵩密度が低く機械的強度の高いガラス発泡体を得ることができる。
ここで、水蒸気又は高温高圧水の温度が180℃より低くなる又は水蒸気等の圧力が1MPaより低くなるにつれ、水蒸気等の温度を高くしてもガラス粉体粒子に浸透する水分子量が少なく加熱発泡工程においてガラスが発泡せず溶融し易くなる傾向がみられる。水蒸気等の温度が300℃より高くなる又は水蒸気等の圧力がその温度における飽和水蒸気圧より高くなるにつれ、水蒸気等とガラス粉体粒子との反応が進行して珪酸カルシウム水和物等の化合物が形成されるためガラス構造が壊れ加熱発泡工程において発泡し難くなる傾向がみられる。水蒸気等の圧力が4MPaより高くなるにつれ、ガラス粉体の表面に珪酸カルシウム水和物等の化合物が形成されガラス粉体粒子への水分子の浸透が妨げられる傾向がみられる。特に、水蒸気又は高温高圧水の温度が150℃より低くなる又は水蒸気等の圧力が0.3MPaより低くなるか、水蒸気等の温度が350℃より高くなる又は水蒸気等の圧力が16MPaより高くなると、これらの傾向が著しくなるのでいずれも好ましくない。
請求項8に記載の発明は、請求項4乃至7の内いずれか1に記載のガラス発泡体の製造方法であって、前記ガラス粉体又は水熱処理粉体が、目開き1mmの標準篩を通過する粒径、好ましくは目開き250μmの標準篩を通過する粒径に分級された構成を有している。
この構成により、請求項4乃至7の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)粉砕されたガラス粉体又は水熱処理粉体が目開き1mmの標準篩を通過する粒径、好ましくは目開き250μmの標準篩を通過する粒径に分級されているので、1個のガラス粉体粒子の体積に対する水の浸透量を発泡に必要な量にしてガラス粉体粒子の各々を十分発泡させることができる。水分子はガラス粉体粒子の表面から浸透していくため、粒径が大きく体積が大きなガラス粉体粒子は、粒径が小さく体積が小さいガラス粉体粒子より、水分子がガラス粉体粒子内部にまで浸透するのに長時間を要し、粒径の小さなガラス粉体粒子が発泡できる条件で水熱反応処理を行うと、単位体積当たりの水の浸透量が少なく発泡量が少なくなるからである。一方、粒径の大きなガラス粉体粒子が発泡できる条件で水熱反応処理を行うと、粒径の小さなガラス粉体粒子の水熱反応が進行し珪酸カルシウム水和物等の化合物を形成しガラス構造が破壊されるため発泡されにくくなるからである。
ここで、ガラス粉体や水熱処理粉体は、重力分級機,慣性分級機,遠心分級機,篩い分け機等の分級装置を用いて分級することができる。なかでも、JIS Z 8801で規定する標準篩を装着した篩い分け機で分級するのが好ましい。大量のガラス粉体等を短時間で分級することができるからである。なお、篩い分け機以外の重力分級機,慣性分級機,遠心分級機等の分級装置を用いて分級する場合は、標準篩を用いて分級したのと実質的に同じ粒径によって分級されていればよい。
ガラス粉体や水熱処理粉体を分級する標準篩の目開きが250μmより大きくなるにつれ粒度分布の幅が広がるので、粒径の小さなガラス粉体粒子の水熱反応が進行し珪酸カルシウム水和物等の化合物が形成されガラス構造が破壊されるため発泡され難くなったり、粒径の大きなガラス粉体粒子の水熱反応が進行せず拡散した水分子量が少なく発泡され難くなったりする傾向がみられる。特に、標準篩の目開きが1mmより大きくなると、この傾向が著しくなるので好ましくない。
本発明の請求項9に記載の発明は、請求項4乃至8の内いずれか1に記載のガラス発泡体の製造方法であって、前記成形体が、可燃性固形物を含有した構成を有している。
この構成により、請求項4乃至8の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)成形体が含有する可燃性固形物が加熱発泡工程で焼失することにより、成形体において可燃性固形物が占めていた部分を気泡にすることができる。このため、成形体に可燃性固形物を含有させることによりガラス発泡体の嵩密度をより小さくすることができる。
(2)可燃性固形物が焼失して形成される気泡は連続気泡となるため、浸透した水が膨張して形成された独立気泡に加えて連続気泡も有するガラス発泡体を製造することができる。これにより、可燃性固形物の大きさや量に応じて連続気泡の量や大きさ、ガラス発泡体の嵩密度等をガラス発泡体の用途に応じて自由に制御することができ自在性に優れる。
ここで、可燃性固形物としては、加熱発泡工程における加熱温度で酸化されて焼失する固形物が用いられ、セルロース,セルロース誘導体,ポリメタクリル酸メチル,ポリスチレン,ポリエチレン等の有機物、木炭等の炭材等で塊状,粒状,繊維状等に形成されたものが用いられる。
可燃性固形物の水熱処理粉体(ガラス粉体)に対する添加量は、ガラス粉体100容量部に対して可燃性固形物5〜40容量部好ましくは10〜25容量部が好適に用いられる。水熱処理粉体(ガラス粉体)100容量部に対する可燃性固形物の量が10容量部より少なくなるにつれ可燃性固形物の添加効果がみられずガラス発泡体の嵩密度を小さくすることができなくなる傾向がみられ、25容量部より大きくなるにつれ気泡の量が増えガラス発泡体の機械的強度が著しく低下する傾向がみられる。特に、5容量部より少なくなるか40容量部より多くなると、これらの傾向が著しいためいずれも好ましくない。
なお、可燃性固形物の大きさとしては、製造するガラス発泡体の大きさに応じて最適なものを選択することができる。
以上のように、本発明のガラス発泡体及びそれを用いた断熱材並びにガラス発泡体の製造方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)ガラス粉体に高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させることで、ガラス粉体を変性させずにガラス粉体粒子の表面から水分子を浸透させ内部に拡散させた水熱処理粉体ができる。ガラス粉体粒子の内部に拡散した水分子は、表面に吸着した水分子とは異なり蒸発し難く、高温までガラス粉体粒子内に存在するので、ガラス粉体を加熱するとガラスが軟化すると同時に内部に拡散した水分子が蒸気となり膨張して、軟化したガラス粉体粒子内に気泡が形成されガラス粉体が焼結することにより、ガラス粉体粒子の内部から発泡した発泡セルを形成させることができる。このため独立気泡を多数形成させることができる断熱性に優れたガラス発泡体を提供することができる。
(2)水熱処理によって水分子がガラス粉体粒子の内部まで浸透するので、加熱により各々のガラス粉体粒子が発泡して発泡セルを均一に分散させることができ均質性に優れたガラス発泡体を提供することができる。
(3)発泡セルの平均気泡径が10〜1000μm好ましくは15〜700μmの発泡セルを備えているので、嵩密度を小さくでき軽量性に優れるとともに断熱性に優れ、また発泡セル間のガラス壁の厚さを薄くすることができ機械加工性に優れたガラス発泡体を提供することができる。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)合金工具鋼製のドリルを用いたドリル侵入速度が0.01〜5m/minの範囲に形成されているので、ドリルや鋸等を用いて容易に切断,研削,穿孔等の機械加工ができ特殊な加工設備を要さず加工コストを低減でき、また切断や切削等の加工時間を大幅に短縮できるとともに自在な形状に容易に加工することができ自在性に優れ、さらにチッピングや割れの発生率を低下させることができ製品得率の高いガラス発泡体を提供することができる。
(2)機械加工性に優れているので、ガラス発泡体を断熱材やボイドスラブを構築する際の捨て型枠等として用い現場施工する際に、ドリルや鋸等を用いて加工し現場の状況に応じて容易に対応でき施工性に優れたガラス発泡体を提供することができる。
請求項3に記載の発明によれば、
(1)平均気泡径が10〜1000μmの発泡セルを備えたパネル状に形成された若しくは躯体内に埋設されたガラス発泡体を備えているので、断熱性及び軽量性に優れ、またガラスが原料なので不燃性に優れ、さらに独立気泡が多数形成されているので防湿性に優れた断熱材を提供することができる。
(2)ガラスを原料にしたパネル状に形成された若しくは躯体内に埋設されたガラス発泡体を備えているので、外壁のコンクリート躯体の打込型枠(捨て型枠)兼外断熱材として使用することで、打設されたコンクリートとガラス発泡体が良好に接合し外壁面を形成させることができるとともに、コンクリート打設後の型枠解体を不要にできる断熱材を提供することができる。
(3)ガラス発泡体が平均気泡径10〜1000μmの発泡セルを備えているので、パネル状に形成された若しくは躯体内に埋設されたガラス発泡体の表面にガラス釉等を用いて外断熱材としての外装仕上げをする場合に、斑が少なく密着強度の高い外装仕上げができる断熱材を提供することができる。
請求項4に記載の発明によれば、
(1)水熱処理工程を備えているので、ガラス粉体粒子を変性させずにガラス粉体粒子の表面から水分子を浸透させ内部に拡散させることができる。ガラス粉体粒子の内部に拡散した水分子は、表面に吸着した水分子とは異なり蒸発し難く、高温までガラス粉体粒子内に存在する。加熱発泡工程においてガラス粉体を加熱すると、ガラスが軟化すると同時に内部に拡散した水分子が蒸気となり膨張して、軟化したガラス粉体粒子内に気泡が形成されることにより、ガラス粉体粒子の内部から発泡させ、ガラス粉体を焼結させることができる。このため独立気泡を多数形成させることができ断熱性に優れたガラス発泡製品を製造できるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(2)ガラス粉体粒子に浸透した水分子が、加熱によりガラス粉体粒子が軟化し始めると同時に軟化したガラス粉体粒子内で膨張することによってガラス粉体粒子が発泡するので、発泡現象が生じる温度範囲が広く、加熱発泡工程における温度制御を容易にできるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。また、ガラス粉体粒子が内部から均一に発泡するので、発泡セルのガラス壁の厚さを薄くすることができ、ドリルや鋸等で所望の形状に容易に加工することができ機械加工性に優れたガラス発泡体を製造できるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(3)水熱処理粉体を所定形状に成形して若しくは型枠内に充填して得られた成形体を加熱発泡させるので、成形体の形状や大きさの自由度が高く多種多用な形状や大きさのガラス発泡製品を製造することができ自在性に優れたガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(4)系内に導入する水蒸気や水の量を制御することにより用途に応じてガラス発泡体の嵩密度や気泡の大きさ等を制御することができ自在性に優れたガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(5)ガラス粉体に水熱処理を行っているのでガラスの軟化温度を低下させることができ、加熱発泡工程における加熱温度を低くすることができるので省エネルギー性に優れるとともに高温の加熱炉を用いず製造することができ生産性に優れたガラス発泡体の製造方法を提供することができる。また、低い温度で焼結させるので得られたガラス発泡体の発泡セルの気泡径を小さくでき、機械加工性に優れたガラス発泡体を製造できるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(6)金属炭酸塩、金属炭化物等の発泡剤を用いず製造するので、発泡剤の粉砕や混合の工程が不要で生産性に優れ、また発泡剤が偏析することもなく均一に気泡が分散したガラス発泡体を製造することができるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
請求項5に記載の発明によれば、
(1)成形体水熱処理工程を備えているので、成形体のガラス粉体を変性させずにガラス粉体粒子の表面から水蒸気や高温高圧水を浸透させ内部に拡散させることができる。ガラス粉体粒子の内部に拡散した水分子は、表面に吸着した水分子とは異なり蒸発し難く、高温までガラス粉体粒子内に存在する。加熱発泡工程においてガラス粉体を加熱すると、ガラスが軟化すると同時に内部に拡散した水分子が蒸気となり膨張して、軟化したガラス粉体粒子内に気泡が形成されることにより、ガラス粉体粒子の内部から発泡させることができる。このため独立気泡を多数形成させることができ断熱性に優れたガラス発泡製品を製造できるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(2)ガラス粉体粒子内に浸透した水分子が、加熱によりガラスが軟化し始めると同時に軟化したガラス粉体粒子内で膨張することによってガラスが発泡するので、発泡現象が生じる温度範囲が広く、加熱発泡工程における温度制御を容易にできるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。また、ガラス粉体粒子が内部から均一に発泡するので、発泡セルのガラス壁の厚さを薄くすることができ、ドリルや鋸等で所望の形状に容易に加工することができ機械加工性に優れたガラス発泡体を製造できるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(3)ガラス粉体を所定形状に成形して若しくは型枠内に充填して得られた成形体を水熱処理した後に加熱発泡させるので、成形体の形状や大きさの自由度が高く多種多用な形状や大きさのガラス発泡製品を製造することができ自在性に優れたガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(4)系内に導入する水蒸気や水の量を制御することにより用途に応じてガラス発泡体の嵩密度や気泡の大きさ等を制御することができ自在性に優れたガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(5)ガラス粉体に水熱処理を行っているのでガラスの軟化温度を低下させることができ、加熱発泡工程における加熱温度を低くすることができるので省エネルギー性に優れるとともに高温の加熱炉を用いず製造することができ生産性に優れたガラス発泡体の製造方法を提供することができる。また、低い温度で焼結させるので得られたガラス発泡体の発泡セルの気泡径を小さくでき、機械加工性に優れたガラス発泡体を製造できるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(6)金属炭酸塩、金属炭化物等の発泡剤を用いず製造するので、発泡剤の粉砕や混合の工程が不要で生産性に優れ、また発泡剤が偏析することもなく均一に気泡が分散したガラス発泡体を製造することができるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項4又は5の効果に加え、
(1)加熱発泡工程における加熱温度が低く常圧で加熱するので省エネルギー性に優れるとともに高温の加熱炉を要さず製造することができ生産性に優れたガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(2)加熱温度が600〜900℃好ましくは700〜800℃なので、ガラス粉体を十分に発泡させることができるとともに焼結も十分に進行させることができ、機械的強度が高く、かつ、嵩密度の低いガラス発泡体を製造することができるガラス発泡製品を製造できるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
請求項7に記載の発明によれば、請求項4乃至6の内いずれか1の効果に加え、
(1)水熱処理工程又は成形体水熱処理工程における水蒸気又は高温高圧水の温度が150〜350℃好ましくは180〜300℃であり、水蒸気又は高温高圧水の圧力が0.3〜16MPa好ましくは1〜4MPaなので、ガラス粉体粒子の内部に多量の水分子を浸透させることができ、加熱発泡工程の所定温度範囲でガラスの発泡と焼結ができるため、嵩密度が低く機械的強度の高いガラス発泡体を得ることができるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
請求項8に記載の発明によれば、請求項4乃至7の内いずれか1の効果に加え、
(1)粉砕されたガラス粉体又は水熱処理粉体が目開き1mmの標準篩を通過する粒径、好ましくは目開き250μmの標準篩を通過する粒径に分級されているので、1個のガラス粉体粒子の体積に対する水の浸透量を発泡に必要な量にしてガラス粉体粒子の各々を十分発泡させることができ断熱性に優れたガラス発泡製品を製造できるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
請求項9に記載の発明によれば、請求項4乃至8の内いずれか1の効果に加え、
(1)成形体が含有する可燃性固形物が加熱発泡工程で焼失することにより、成形体において可燃性固形物が占めていた部分を気泡にすることができる。このため、成形体に可燃性固形物を含有させることによりガラス発泡体の嵩密度をより小さくすることができるガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
(2)可燃性固形物が焼失して形成される気泡は連続気泡となるため、浸透した水が膨張して形成された独立気泡に加えて連続気泡も有するガラス発泡体を製造することができる。これにより、可燃性固形物の大きさや量に応じて連続気泡の量や大きさ、ガラス発泡体の嵩密度等をガラス発泡体の用途に応じて自由に制御することができ自在性に優れたガラス発泡体の製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ガラス質廃材としての緑色瓶ガラスを粉砕した後、ふるいを用いて分級し、粒径が32μm以下の粒子のガラス粉体を得た。このガラス粉体3gをテフロン(登録商標)を内張にした内容積27mLのオートクレーブに水0.6mLとともに入れ、200℃で8時間加熱し、ガラス粉体に高温高圧の水蒸気を接触させ水熱処理粉体を合成した(水熱処理工程)。なお、このときのオートクレーブの圧力は1.5MPaであり1.5MPaの飽和水蒸気をガラス粉体粒子に接触させたことになる。
生成された水熱処理粉体を、約100kg/cmの圧力で1軸圧縮成形して円盤状の成形体を得た(成形工程)。成形体の嵩密度は、1.3g/cmであった。
次いで、得られた成形体をステンレス板の上に置き、ステンレス板とともに成形体をマッフル炉に入れ600℃/時間の速度で昇温、750℃で30分間加熱して水熱処理粉体を焼結及び発泡させ実施例1のガラス発泡体を得た(加熱発泡工程)。
実施例1のガラス発泡体の嵩密度は0.45g/cmであった。顕微鏡で測定した発泡セルの気泡径は平均55μmであった。水の中に入れたところ水面に浮かび、1週間経過してもガラス発泡体内に水が浸透することなく浮かび続け、重量等になんら変化がみられなかった。また、Heピクノメータで分析した結果、ガラス発泡体に形成された気泡の70〜80%が独立気泡であることがわかった。
(実施例2)
加熱発泡工程において、成形体を700℃で30分加熱した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のガラス発泡体を得た。
実施例2のガラス発泡体の嵩密度は0.55g/cmであり、実施例1のガラス発泡体と同様に水に浮かんだ。なお、発泡セルの気泡径は実施例1のガラス発泡体より小さく平均で約40μmであった。実施例1に比べて加熱温度が低いことによると推察された。
(実施例3)
加熱発泡工程において、成形体を800℃で30分加熱した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のガラス発泡体を得た。
実施例3のガラス発泡体の嵩密度は0.65g/cmであり、実施例1のガラス発泡体と同様に水に浮かんだ。なお、発泡セルの気泡径は実施例1のガラス発泡体より若干大きく、大きなものは平均約65μmであった。また、大きな気泡間のガラス壁の肉厚が厚く、その間に小さな気泡が観察された。実施例1に比べて加熱温度が高く、一度形成された気泡の一部が破壊して隣接する気泡と合体して大きくなったものではないかと推察された。
実施例1〜3によれば、嵩密度が小さく、形成された気泡の大部分が独立気泡であるガラス発泡体が製造できることが明らかになった。また、所定温度(本実施例では750℃)までは加熱温度を高くするにつれ、ガラス発泡体の嵩密度を低くでき、その温度を超えると嵩密度が増加することがわかった。所定温度までは水熱処理粉体粒子内に浸透した水分子が水熱処理粉体粒子(ガラス粉体粒子)内で気泡を形成し膨張するため嵩密度を小さくできるが、温度の上昇に伴って気泡がさらに膨張し互いに合体し、なかには潰れてしまうものもあり、そのため発泡セル間のガラス壁同士が溶着して発泡セルの気泡が少なくなるるからであると推察している。
(実施例4)
水熱処理工程において、ガラス粉体とともにオートクレーブ内に入れた水の量を0.5mLとした以外は実施例1と同様にして、実施例4のガラス発泡体を得た。なお、水熱処理工程において、オートクレーブの当初の圧力は1.5MPaであり当初は1.5MPaの水蒸気をガラス粉体粒子に接触させたことになる。しかし、水熱処理中にオートクレーブの圧力が1.5MPa未満に低下した。水蒸気の水分子が各ガラス粉体粒子に浸透したからであると推察される。
実施例4のガラス発泡体の嵩密度は0.8g/cmであった。水の中に入れたところ水面に浮かび、1週間経過してもガラス発泡体内に水が浸透することなく浮かび続け、なんら変化がみられなかった。なお、顕微鏡で測定した発泡セルの気泡径は実施例1のガラス発泡体より小さく平均約40μmであった。水熱処理中にオートクレーブの圧力が低下し、ガラス粉体粒子に浸透した水分量が実施例1より少なくなったからであると推察している。
(実施例5)
水熱処理工程において、ガラス粉体とともにオートクレーブ内に入れた水の量を0.75mLとした以外は実施例1と同様にして、実施例5のガラス発泡体を得た。なお、水熱処理工程において、オートクレーブの圧力は1.5MPaであり1.5MPaの飽和水蒸気及び高温高圧水をガラス粉体に接触させたことになる。
実施例5のガラス発泡体の嵩密度は0.6g/cmであった。水の中に入れたところ水面に浮かび、1週間が経過してもガラス発泡体内に水が浸透することなく浮かび続け、なんら変化がみられなかった。顕微鏡で測定した発泡セルの気泡径は実施例1のガラス発泡体より大きく、大きなものは平均約90μmであり、大きな気泡間のガラス壁の肉厚も平均約8μmと厚くなった。
実施例1,4,5によれば、水熱処理工程における水蒸気の圧力を変えてガラス粉体に浸透させる水分子の量を制御することにより、ガラス発泡体の嵩密度を制御することができ自在性に優れることが明らかになった。なお、実施例5のガラス発泡体の嵩密度が実施例1のガラス発泡体の嵩密度に比べて高いのは、ガラス粉体と高温高圧水との反応が進行し珪酸カルシウム水和物等の化合物が形成されてガラス構造が破壊され発泡し難くなったからであると推察している。
(実施例6)
ガラス質廃材としての緑色瓶ガラス,透明瓶ガラス等を粉砕した後、JIS Z8801で規定された目開き1.00mmの標準篩を用いて分級し、これを通過する粒子のガラス粉体を得た。このガラス粉体をテフロン(登録商標)を内張にしたオートクレーブ内で200℃,8時間、1.5MPaの高温高圧の水蒸気に接触させ水熱処理粉体を合成した(水熱処理工程)。
合成された水熱処理粉体を、約100kg/cmの条件で1軸圧縮成形し直径約2cmの円盤状の成形体を得た(成形工程)。成形体の嵩密度は、1.3g/cmであった。
次いで、得られた成形体をステンレス板の上に置き、ステンレス板とともに成形体をマッフル炉に入れ、750℃で30分間加熱して水熱処理粉体を焼結及び発泡させ実施例6のガラス発泡体を得た(加熱発泡工程)。
実施例6のガラス発泡体の嵩密度は0.65g/cmであった。このガラス発泡体を切断・研削して一辺が1cmの立方体状に形成し、圧縮して割れを生じたときの荷重を圧縮前のガラス発泡体の断面積で除した圧縮強さは14.7MPaであった。
(実施例7)
水熱処理工程において、実施例6で用いたガラス粉体を分級して粒径335μm以下の粒子のガラス粉体を用いた以外は実施例6と同様にして、実施例7のガラス発泡体を得た。実施例7のガラス発泡体の嵩密度は0.55g/cmであった。また、圧縮強さは29.4MPaであった。
実施例6,7によれば、低い嵩密度で機械的強度が著しく高いガラス発泡体が得られることが明らかになった。これにより、産業用プラント等の配管等の断熱材や建築資材等の断熱材等として用いることもできることが明らかになった。また、湖沼や海等の水面に浮島や筏のように浮遊させることができる浄化材や軽量の構造材として用いることもできる。さらに、鉄筋コンクリートの床スラブ内に埋設する軽量化材として用いることができ、これにより廃棄物処理等の問題が発生せず環境保全性や安全性に優れ、さらに解体後の建築廃材に発泡スチロール製等の合成樹脂製の軽量化材を含有しないので、建築廃材の再利用を可能にすることができるとともに断熱効果を高めることができる。現在、発泡スチロール製で形成された軽量化材が主に用いられているため、解体時には飛散し周囲の環境を汚染するとともに廃棄物処理等でも問題を発生し、火災時には有毒ガスの発生源ともなるからである。
(実施例8)
ステンレス製で縦15cm、横15cm、高さ4cmの有底上部開口の箱型に形成された型枠の内側に窒化硼素製の離型剤を塗布した後、水熱処理粉体を型枠内に3cmの厚さで充填し、型枠とともに水熱処理粉体を加熱した以外は実施例6と同様にして、実施例8のガラス発泡体を得た。実施例8のガラス発泡体の嵩密度は0.44g/cmであり、型枠の大きさや形状と略同一の直方体状のガラス発泡体を得ることができた。
本実施例によれば、プレス成形等を行う必要がなく水熱処理粉体を型枠に充填し加熱するだけで型枠に沿ったガラス発泡体が得られるので、プレス成形等が困難な長尺状等のガラス発泡体の製造も可能であることが明らかになった。
(実施例9)
可燃性固形物として平均粒径(本実施例では長辺の長さ)200μmに紙を繊維化して形成したセルロースからなる有機化合物を、実施例6で用いた水熱処理粉体100容量部に対し15容量部添加混合した成形体を形成した以外は実施例6と同様にして、実施例9のガラス発泡体を得た。嵩密度は実施例6のガラス発泡体の嵩密度の約半分の0.35g/cmであった。
以上のことから本実施例によれば、成形体に可燃性固形物を含有させることによりガラス発泡体の嵩密度をより小さくすることができることが明らかになった。
(実施例10)
水熱処理工程において、オートクレーブの温度を300℃にした以外は、実施例1と同様にして実施例10のガラス発泡体を得た。実施例10のガラス発泡体の嵩密度は0.9g/cmであった。
本実施例によれば、水熱処理工程における水蒸気の温度を変えてガラス粉体に浸透させる水分子の量を制御することにより、ガラス発泡体の嵩密度を制御することができ自在性に優れることが明らかになった。
(実施例11)
加熱発泡工程において、成形体を650℃で30分加熱した以外は、実施例1と同様にして実施例11のガラス発泡体を得た。実施例11のガラス発泡体の嵩密度は1.45g/cmであり、気泡径は実施例2のガラス発泡体より小さいことが確認された。実施例2に比べて加熱温度が低いことによると推察された。
(実施例12)
加熱発泡工程において、成形体を850℃で30分加熱した以外は、実施例1と同様にして実施例12のガラス発泡体を得た。実施例12のガラス発泡体の嵩密度は0.78g/cmであり、気泡径は実施例3のガラス発泡体より大きいことが確認された。実施例3に比べて加熱温度が高いことによると推察された。
(実施例13)
加熱発泡工程において、予め750℃に加熱したマッフル炉内に常温の成形体を挿入し、30分間加熱して水熱処理粉体を焼結及び発泡させた以外は、実施例1と同様にして、実施例13のガラス発泡体を得た。
実施例13のガラス発泡体の嵩密度は0.29g/cmであった。顕微鏡で測定した発泡セルの気泡径は平均約70μmであった。水の中に入れたところ水面に浮かび、1週間経過してもガラス発泡体内に水が浸入することなく浮かび続け、なんら変化がみられなかった。
実施例1,13によれば、成形体を急速に加熱することにより、より低密度のガラス発泡体が得られることが明らかになった。これは、水熱処理したガラス粉体を加熱すると、加熱時間の経過とともにガラス構造が崩壊し結晶化し軟化し難くなるが、急速に加熱されたことによりガラス構造が崩壊する前に膨張し径の大きな気泡が形成されたからであると推察している。
(実施例14)
ガラス質廃材としての緑色瓶ガラス,透明瓶ガラス等を粉砕した後、目開き200μmの篩を用いて分級し、これを通過する粒子のガラス粉体を得た。このガラス粉体をテフロン(登録商標)を内張にしたオートクレーブ内で200℃,6時間、1.5MPaの高温高圧の水蒸気に接触させ水熱処理粉体を得た(水熱処理工程)。
ステンレス製で縦20cm、横20cm、高さ4cmの有底上部開口の箱型に形成された型枠の内側に窒化硼素製の離型剤を塗布した後、水熱処理粉体を型枠内に3cmの厚さで充填した。予め750℃に加熱したマッフル炉に、この水熱処理粉体を充填した型枠を入れ、4時間加熱して水熱処理粉体を焼結及び発泡させ実施例14のガラス発泡体を得た(加熱発泡工程)。
実施例14の1枚のガラス発泡体から、バンドソーを用いて幅約40mm、厚さ約40mm、長さ約160mmの直方体状の試験体を4本切り出した。この試験体を用いJIS R 5201に準拠した方法にて、曲げ強さ、圧縮強さを測定した。また、嵩密度も測定した。
曲げ強さ試験は、支点間距離100mmの3点曲げ試験により測定した(n=15)。その結果、曲げ強さは2.4〜5MPaであった。
圧縮強さは、40×40mmの加力板を試験体に接触させて一軸圧縮して測定した(n=15)。その結果、圧縮強さは4〜11.7MPaであった。
嵩密度は0.42〜0.51g/cmであった(n=15)。なお、嵩密度は試験体の採取位置により異なり、周辺部より中央部の方が高かった。
また、実施例14の1枚のガラス発泡体を、縦197mm、横197mm、厚さ38mmの板状に成形し、迅速熱伝導率計(QTM−500、京都電子工業製)を用いてプローブ法により熱伝導率を測定した(n=3)。この結果、熱伝導率は、0.156〜0.168W/(m・K)であった。
また、実施例14のガラス発泡体から得られた縦197mm、横197mm、厚さ38mmの板状の試験体を用い、JIS A 1129に準拠した方法にて線熱膨張係数を測定した。その結果、線熱膨張係数は8.5×10−6〜9.6×10−6−1であった。
本実施例によれば、曲げ強度が大きく、かつ、軽量コンクリートと同程度の熱伝導率、線熱膨張係数を有するガラス発泡体が得られることが明らかになった。従って、線熱膨張係数の差による剥離等の問題がなく、パネル状に成形したりコンクリート躯体内に埋設することによって、断熱材としても好適に用いられることが明らかになった。
(実施例15)
実施例15〜19は連続炉を用いてガラス粉体を加熱した場合の実施例である。用いた連続炉は、ステンレス製等で形成された幅1.5mのメッシュベルトが長さ25mに渡って張設され、1ゾーンの長さが6mの加熱帯が3ゾーン(加熱帯の合計長さは18m)設けられている。
実施例15では、ガラス質廃材としての緑色瓶ガラス,透明瓶ガラス等を粉砕した後、目開き200μmの篩を用いて分級し、これを通過する粒子のガラス粉体を得た。このガラス粉体をオートクレーブ内で200℃,6時間、1.5MPaの高温高圧の水蒸気に接触させ水熱処理粉体を合成した(水熱処理工程)。
合成された水熱処理粉体を、ステンレス製の板の上に縦約20cm、横約20cm、厚さ約4cmに堆積し、この水熱処理粉体をステンレス製板ごと連続炉のメッシュベルトの上に置き加熱した(加熱発泡工程)。
連続炉は、第1ゾーン700℃、第2ゾーン740℃、第3ゾーン740℃に設定し、ベルトの送り速度を400mm/minに設定した。
連続炉で加熱され得られた実施例15のガラス発泡体の嵩密度は0.53g/cmであり、Heピクノメータで分析した結果、形成された気泡の86%が独立気泡であることがわかった。
(実施例16)
連続炉を第1ゾーン750℃、第2ゾーン780℃、第3ゾーン780℃に設定し、ベルトの送り速度を700mm/minに設定した以外は、実施例15と同様にして、実施例16のガラス発泡体を得た。
得られた実施例16のガラス発泡体の嵩密度は0.50g/cmであり、Heピクノメータで分析した結果、形成された気泡の74%が独立気泡であることがわかった。
(実施例17)
連続炉を第1ゾーン750℃、第2ゾーン780℃、第3ゾーン780℃に設定し、ベルトの送り速度を400mm/minに設定した以外は、実施例15と同様にして、実施例17のガラス発泡体を得た。
得られた実施例17のガラス発泡体の嵩密度は0.41g/cmであり、Heピクノメータで分析した結果、形成された気泡の54%が独立気泡であることがわかった。
(実施例18)
連続炉を第1ゾーン800℃、第2ゾーン830℃、第3ゾーン830℃に設定し、ベルトの送り速度を700mm/minに設定した以外は、実施例15と同様にして、実施例18のガラス発泡体を得た。
得られた実施例18のガラス発泡体の嵩密度は0.42g/cmであり、Heピクノメータで分析した結果、形成された気泡の83%が独立気泡であることがわかった。
(実施例19)
連続炉を第1ゾーン800℃、第2ゾーン830℃、第3ゾーン830℃に設定し、ベルトの送り速度を400mm/minに設定した以外は、実施例15と同様にして、実施例19のガラス発泡体を得た。
得られた実施例19のガラス発泡体の嵩密度は0.47g/cmであり、Heピクノメータで分析した結果、形成された気泡の58%が独立気泡であることがわかった。
以上の実施例15〜19の結果、マッフル炉だけでなく連続炉を用いてもガラス発泡体が得られることが明らかになった。また、加熱発泡工程における加熱温度やベルトの送り速度を変えることにより、ガラス発泡体の嵩密度や独立気泡の割合をある程度制御できることも明らかになった。
(実施例20)
ガラス質廃材としての緑色瓶ガラス,透明瓶ガラス等を粉砕した後、分級した粒径335μm以下の粒子のガラス粉体を、テフロン(登録商標)を内張にしたオートクレーブ内で200℃,8時間、1.5MPaの高温高圧の水蒸気に接触させ水熱処理粉体を合成した(水熱処理工程)。
この水熱処理粉体を、厚さ1mmのステンレス板の上に置いたステンレス製で内径3cm,外径4cm,高さ3cmの円筒状に形成された型枠内に充填し、マッフル炉内で600℃/時間の速度で昇温、750℃で2時間加熱し焼結及び発泡させ、実施例20のガラス発泡体を得た。
実施例20のガラス発泡体の断面写真を図1に示す。
これによれば、発泡セルの平均気泡径は約65μm、最大の気泡径は450μmであり、発泡セルのガラス壁の平均厚さは約40μmであった。また、発泡セルがほぼ均一に分散していることも確認された。
(実施例21)
ガラス質廃材としての緑色瓶ガラス,透明瓶ガラス等を粉砕した後、分級した粒径200μm以下の粒子のガラス粉体を、テフロン(登録商標)を内張にしたオートクレーブ内で200℃,5時間、1.5MPaの高温高圧の水蒸気に接触させ水熱処理粉体を合成した(水熱処理工程)。
この水熱処理粉体を、実施例20で用いた型枠内に充填し、予め750℃に加熱されたマッフル炉内に型枠ごと入れ急速加熱し、50分間保持し焼結及び発泡させ、実施例21のガラス発泡体を得た。
このガラス発泡体の断面写真を図2に示す。
これによれば、発泡セルのガラス壁の平均厚さは約40μmであるが、平均気泡径は約300μmであり、実施例20のガラス発泡体よりも発泡セルの気泡径が大きなことが確認された。これは実施例13で推察したことと同様で、急速に加熱されたことによりガラス構造が崩壊する前に膨張し径の大きな気泡が形成されたからであると推察している。
(比較例1)
水熱処理工程において、オートクレーブの温度を120℃にした以外は、実施例1と同様にして比較例1のガラス発泡体を得た。比較例1のガラス発泡体の嵩密度は1.72g/cmであり、気泡径が実施例1のガラス発泡体より小さいことが確認された。水熱処理工程における温度が低くガラス粉体に浸透した水分量が少ないからであると推察された。
(機械加工性の評価)
実施例8のガラス発泡体を用いて加工性の評価を行った。なお、比較例として、炭化珪素を発泡剤として使用したガラス発泡体(比較例2)、アクリル板を用いた。
比較例2のガラス発泡体は、実施例6と同様のガラス粉体100重量部に対して、炭化珪素(平均粒径3.9μm、品名C−4000F、屋久島電工社製)を4重量部添加混合したものをステンレス製の板の上に縦約15cm、横約15cm、厚さ約3cmに堆積し、ステンレス板と一緒にマッフル炉内で950℃,30分加熱し焼結及び発泡させて製造した。比較例2のガラス発泡体の嵩密度は0.4g/cmであった。
加工性は、ドリルで穿孔した際のドリルの侵入速度を用いて評価した。ドリルとしては、合金工具鋼製で径がφ11mmのストレートシャンクツイストドリルを用いた。穿孔の際の条件は、ドリルに上方から加える重量を9.8N、ドリルの回転数を400rpmとした。この条件下において、実施例8のガラス発泡体、比較例2のガラス発泡体、アクリル板に対するドリル侵入速度を測定した。
この結果、実施例8のガラス発泡体の場合は、ドリル侵入速度が1.2m/minであった。また、チッピングも0.05mm以下であり綺麗な孔を穿孔できた。しかし、比較例2のガラス発泡体及びアクリル板の場合は、ドリルは全く侵入しなかった。
実施例20及び21のガラス発泡体についても、同様にして加工性の評価を行った。その結果、ドリル侵入速度は1.2〜1.4m/minであり、チッピングもほとんどない綺麗な孔を穿孔できた。
本実施例のガラス発泡体によれば、ドリルや鋸等を用いて容易に切断,研削,穿孔等の機械加工ができ特殊な加工設備を要さず加工コストを低減でき、また切断や切削等の加工時間を大幅に短縮できるとともに自在な形状に容易に加工することができ自在性に優れ、さらにチッピングや割れの発生率を低下させることができ製品得率を高めることができることが明らかになった。
本発明は、ガラス粉体を用いたガラス発泡体及びそれを用いた断熱材並びにガラス発泡体の製造方法に関し、多数の独立気泡が均一に分散され均質性に優れ、また嵩密度を小さくでき軽量性に優れるとともに断熱性に優れ、さらに機械加工性に優れるガラス発泡体を提供できる。また、断熱性、軽量性、不燃性、防湿性に優れ、外壁のコンクリート躯体の打込型枠(捨て型枠)として使用することで、打設されたコンクリートと良好に接合し外壁面を形成させることができるとともにコンクリート打設後の型枠解体を不要にでき、斑の少ない外装仕上げのできる断熱材を提供できる。また、形状や大きさの自由度が高く多種多用な形状や大きさのガラス発泡製品を製造することができ自在性に優れ、また低い加熱温度で製造することができ省エネルギー性に優れるとともに生産性に優れるガラス発泡体の製造方法を提供できる。
実施例20のガラス発泡体の断面写真 実施例21のガラス発泡体の断面写真

Claims (9)

  1. 高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させて水熱処理されたガラス粉体が焼結及び発泡して形成された平均気泡径が10〜1000μm好ましくは15〜700μmの発泡セルを備えていることを特徴とするガラス発泡体。
  2. 径がφ11mmの合金工具鋼製のストレートシャンクツイストドリルを用い重量9.8N、回転数400rpmの条件下において穿孔したドリル侵入速度が、0.01〜5m/min好ましくは0.1〜2m/minであることを特徴とする請求項1に記載のガラス発泡体。
  3. パネル状に形成された若しくは躯体内に埋設された請求項1又は2に記載のガラス発泡体を備えていることを特徴とする断熱材。
  4. ガラス粉体に高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させて水熱処理粉体を得る水熱処理工程と、前記水熱処理工程で得られた水熱処理粉体を所定形状に成形して若しくは型枠内に充填して成形体を得る水熱粉体成形工程と、前記水熱粉体成形工程で得られた成形体を所定温度に加熱して焼結及び発泡させる加熱発泡工程と、を備えていることを特徴とするガラス発泡体の製造方法。
  5. ガラス粉体を所定形状に成形して若しくは型枠内に充填して成形体を得るガラス粉体成形工程と、前記ガラス粉体成形工程で得られた成形体に高温高圧の水蒸気又は高温高圧水を接触させて水熱処理固化体を得る成形体水熱処理工程と、前記成形体水熱処理工程で得られた水熱処理固化体を所定温度に加熱して焼結及び発泡させる加熱発泡工程と、を備えていることを特徴とするガラス発泡体の製造方法。
  6. 前記加熱発泡工程における加熱温度が、600〜900℃好ましくは700〜800℃であることを特徴とする請求項4又は5に記載のガラス発泡体の製造方法。
  7. 前記水熱処理工程又は成形体水熱処理工程における前記水蒸気又は高温高圧水の温度が、150〜350℃好ましくは180〜300℃であり、前記水蒸気又は高温高圧水の圧力が、0.3〜16MPa好ましくは1〜4MPaであることを特徴とする請求項4乃至6の内いずれか1に記載のガラス発泡体の製造方法。
  8. 前記ガラス粉体又は水熱処理粉体が、目開き1mmの標準篩を通過する粒径、好ましくは目開き250μmの標準篩を通過する粒径に分級されていることを特徴とする請求項4乃至7の内いずれか1に記載のガラス発泡体の製造方法。
  9. 前記成形体が、可燃性固形物を含有していることを特徴とする請求項4乃至8の内いずれか1に記載のガラス発泡体の製造方法。
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WO2016185977A1 (ja) * 2015-05-19 2016-11-24 日本電気硝子株式会社 真贋認証用ガラスチップ及びその製造方法
CN112135802A (zh) * 2018-05-17 2020-12-25 匹兹堡康宁欧洲股份有限公司 蜂窝状玻璃产品及其制造方法

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