JP2004297850A - 永久磁石の結合構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】コーティング膜が形成された磁石とヨークとを圧入によって一体化する場合、コーティング膜の剥がれを防止する。また、ヨークとコーティング膜が形成された永久磁石とを抜け難くする。
【解決手段】コーティング膜5aが形成された磁石5と、磁気回路を構成するヨーク4とを一体化する構造おいて、弾性体から成り膜厚偏差を有するコーティング膜5aが形成された磁石5に対して、膜厚偏差以下の潤滑油11がヨーク表面に設けられたヨーク4を圧入して一体で結合した。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本技術は、永久磁石の結合構造に関するものであり、特に、弾性体からなるコーティング膜により被覆された永久磁石と、磁気回路を構成するヨーク部材とを、圧入により一体化して結合する永久磁石の結合構造に係る。
【0002】
【従来の技術】
従来、永久磁石にはネオジウム・鉄・ホウ素から成る磁石が広く知られている。このネオジウム・鉄・ホウ素から成る磁石は、エネルギー積が最大の磁石として知られている。しかしながら、この磁石は錆び易く、磁石の酸化に伴う劣化を防止するため、磁石の表面に表面処理が施されコーティング膜が設けられる(例えば、特許文献1)。
【0003】
この様な永久磁石はモータ等に使用されており、モータに使用される永久磁石はヨークの機能を有するハウジング(ヨーク部材)内に収められ、永久磁石はコイルが巻回されたロータに対向配置して設けられる。そこで、ロータのコイルに対して通電を行うと、ハウジング内に取り付けられた永久磁石とロータ間で磁気回路が形成され、ロータには電磁力が作用し、ロータが回転を行う。
【0004】
一般的に、モータに使用される永久磁石は、磁気回路を構成するヨーク部材に対して接着剤等により固定する方法が知られている(例えば、特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−285881号公報(第1頁、図10)
【0006】
【特許文献2】
特開2001−78377号公報(第1頁、図1)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記した如く、永久磁石をヨーク部材に接着剤により固定する場合、磁石と、磁石が取り付けられるヨーク部品との間に接着剤を塗布して、固定する。しかし、この様な方法では、永久磁石への接着層の塗布と、接着剤の塗布後に接着層を乾燥させるという工程が必要となってしまう。それ故に、接着剤により永久磁石をヨーク部材に対して結合する方法では、組付時間が増大すると共に、塗布や乾燥設備等およびこれらの設備の管理と接着材料の管理が必要となり、部品のコストアップにつながってしまう。
【0008】
そこで、安価な結合方法として圧入による方法が考えられるが、単にコーティング膜が表面に設けられた永久磁石に対して、圧入による結合する方法を行うと、次のような問題が生じ得る。つまり、永久磁石を別の部品(例えば、ヨーク部材)へ組み付けて永久磁石との一体化を行う場合に圧入等による嵌め合いを行うと、永久磁石の表面に設けられたコーティング膜が傷つけられたり、コーティング膜が剥がれることが起こり得る。これが原因で、コーティング膜が傷つけられた部位や剥がれた部位から磁石の腐食が発生する。このため、コーティング膜が表面に被覆されている永久磁石を圧入等によって締まり嵌めを行う場合には、永久磁石を嵌めるヨーク部材との間で、何らかの対策が必要となる。
【0009】
例えば、コーティング膜が表面に設けられたリング状の環状永久磁石(単に、環状磁石と称す)にヨーク部材を単に圧入すると、圧入面の滑り摩擦抵抗の影響によって、コーティング膜がねじ切られて剥がれるという現象が起こり得る。このコーティング膜がねじ切られて剥がれる現象は、コーティング膜とヨーク部材との間の滑り摩擦状態によっては圧入面における滑り摩擦係数が過大であると、ヨーク部材を圧入する際にヨーク部材がコーティング膜を引きずって圧入されるものとなり、その結果、コーティング膜が剥がれてしまう。
【0010】
上記した問題を改良する為には、コーティング膜とヨーク部材との滑り摩擦係数を低減させれば良い。しかし、単にコーティング膜とヨーク部材との滑り摩擦係数を低減させる為に、環状磁石とヨーク部材との圧入面に対して滑りやすい被膜を形成して圧入を行う場合には、新たな問題が発生する。
【0011】
この様に、永久磁石とヨーク部材との圧入面に潤滑油等の滑りやすい被膜を設ければ、その被膜によってヨーク部材を環状磁石に対して圧入する場合には、コーティング膜を引きずらずにヨーク部材が環状磁石の中に挿入することはできる。これは、ヨーク部材の圧入時に要する圧入荷重が潤滑油によって小さくなるが、それ同時にヨーク部材の抜け荷重も小さくなり、環状磁石に対してヨーク部材が抜け易くなってしまう。その結果、環状磁石とヨーク部材とを圧入する場合や、環状磁石もしくはヨーク部材のどちらか一方に外力が作用した場合には、潤滑油による被膜によって、環状磁石に対してヨーク部材が簡単に脱落することが起こり得る。
【0012】
そこで、本発明はこの様な問題に鑑みて成されたものであり、コーティング膜が形成された永久磁石とヨーク部材を圧入によって一体化する場合、コーティング膜の剥がれを防止すると共に、ヨーク部材とコーティング膜が形成された永久磁石とが抜け難くすることを技術的課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記した技術的課題を解決するために講じた技術的手段は、コーティング膜が形成された永久磁石と、磁気回路を構成するヨーク部材とを一体化した永久磁石の結合構造おいて、前記コーティング膜は弾性体から成り、膜厚偏差を有する圧入面を有し、前記膜厚偏差以下の潤滑油が表面に設けられた前記ヨーク部材が前記圧入面に圧入され結合されている構造としたことである。
【0014】
上記した手段によれば、コーティング膜は弾性体から成り、膜厚偏差を有する圧入面を有し、膜厚偏差以下の潤滑油が表面に設けられたヨーク部材が圧入面に圧入され結合される構造としたので、圧入の際には弾性体のコーティング膜が変形しながら、永久磁石に対してヨーク部材が圧入される。この場合、コーティング膜は膜厚偏差によって圧入面が凹凸状となり、この凹凸状の凹部に潤滑油が入ることによって、圧入面では滑り摩擦係数が潤滑油を設けない場合に比べて低減されるので、滑り易くなる。それ故に、圧入時にコーティング膜を引きずっての圧入が防止され、コーティング膜を引き剥がすことなく、ヨーク部材と永久磁石を圧入により結合させることが可能になる。また、圧入面に設けられる潤滑油は膜厚偏差以下としたので、圧入時に圧入面の凹凸状となった凸部によって凹部に潤滑油が入り込む。この為、凸部には潤滑油による被膜が必要以上に形成されず、ヨーク部材とコーティング膜が形成された永久磁石とが抜け難くなる。
【0015】
この場合、潤滑油は膜厚偏差により形成される圧入面の凹部に流れ込めば、圧入面の凸部には潤滑油による被膜が形成されない若しくは極めて薄くなり、ヨーク部材とコーティング膜が形成された永久磁石とがより抜け難くなる。
【0016】
また、潤滑油は非亜鉛系油圧作動油とすれば、圧入時にスラッジの発生が少なくなり、圧入面にスラッジが異物として残ることが防止される。この場合、潤滑油は水素化改質処理したパラフィン系オイルをベースとした、非亜鉛系のものが望ましい。
【0017】
更に、潤滑油は粘度が0.05Pas以下であり、潤滑油の膜厚は膜厚偏差の1/10程であれば、圧入面に粘度が0.05Pas以下となったさらさらの潤滑油が圧入時に弾性変形する膜厚偏差の1/10程の凹部に適度な量だけ入り込み易くなる。従って、圧入後の圧入面には極めて薄い被膜が形成され、抜け荷重を増大させることが可能である。つまり、潤滑油の粘度を調整し、潤滑油の被膜の厚みが、コーティング膜の膜厚偏差の一定割合以下にすることにより、圧入後にコーティング膜とヨーク部材との間で両者の結合を確実に保持するための圧入荷重を発生させることが可能となり、永久磁石が外力等によりヨーク部材から脱落することが防止される。
【0018】
更にその上、コーティング膜はフッ素ゴムであれば、酸に対して強くなり、耐熱性も強くなる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明おける一実施形態について、図面を参照して説明する。以下に示す実施形態の説明では永久磁石(単に、磁石と称す)5をモータ1に適用した一例について説明を行うが、これに限定されるものではなく、本発明は、磁石5とは異なる熱膨張率を有する材質から成る部材に、磁石5を取り付ける場合にも適用が可能である。
【0020】
図1は、モータ1の断面図である。図1に示すモータ1は、ハウジング8と、ハウジング8に対して回転自在となって、モータ1の出力となる回転力が出力されるシャフト2と、シャフト2とハウジング8との間に配設され、ハウジングに対してシャフト2を回転自在に軸支するベアリング3と、シャフト2が中央に圧入されてシャフト2と一体回転するヨーク部材(単に、ヨークと称す)4と、ヨーク4の外周面に嵌め合いによる圧入によって取り付けられ、N極とS極が周方向において交互に着磁された永久磁石(単に、磁石と称す)5と、ハウジング内に配設され巻線6が巻回される複数の巻回部7aを周方向に複数備えたコア7とを備える。
【0021】
このモータ1は、図示しないコネクタを介して、巻線6に電流を流すことによって、巻線6と巻線6と対向する磁石5との間で、電磁力による電磁的な吸引/反発が生じ、巻線6が支持されたハウジング8に対してシャフト2が回転する。
【0022】
ヨーク4は、磁性体材(例えば、磁性体ステンレス、Fe等)から成り、中央にシャフト2が挿入される開口部4aを有したリング状を呈する。ヨーク4は、ハウジング8に固定された円柱状のコア7に巻かれた巻線6に通電が成されると、ヨーク4に磁路が形成される。このヨーク4とシャフト2との結合は、ヨーク4の開口部4aに対してシャフト2の外周面が圧入された締まり嵌めの関係にあり、ヨーク4とシャフト2とは一体回転する。
【0023】
磁石5は、希土類鉄系磁石(例えば、ネオジ磁石と称される、ネオジウム−鉄−ボロンから成る磁石)を用いており、環状の磁石5の内周面とヨーク4の外周面とは圧入による締まり嵌めの関係により、磁石5はヨーク4に対して回転不能に固定されている。この磁石5の周囲には、図2に示す如く、所定の膜厚偏差を有するコーティング膜5aが形成され、磁石5の表面を保護している。
【0024】
コア7は、ハウジング8の一方の内壁に底面7bが固定され、円筒状を呈する。底面7bからは、複数の巻線部7aがシャフト2と平行に立設した状態で軸方向に突出しており、巻線部7aの周囲に巻線6が巻回されている。
【0025】
有底円筒状のハウジング8の中心には、中央が開口したボス部8aが形成され、ボス部8aにはベアリング3の外輪が圧入により嵌っている。一方、ベアリング3の内輪にはシャフト2が圧入されており、ハウジング8に対してシャフト2がベアリング3によって、回転自在に支持されている。
【0026】
この様な構成のモータ1における磁石5について、図2を参照して詳細に説明する。
【0027】
本実施形態における磁石5は、表面(例えば、外周面、内周面および軸方向端面)からの磁石5の腐食を防止すると共に、ヨーク4が圧入される場合に、磁石5を傷つけない様に圧入するため、表面に弾性力を有したコーティング膜5aが設けられている。
【0028】
コーティング膜5aは、例えば、磁石5を備えたモータ1を車両においてウォーターポンプのモータとして磁石5をラジエータ内で使用する場合等には、モータ1に耐酸性と耐熱性が必要となる場合には、コーティング膜5aは酸性およびおよびアルカリ性液にも腐食されないゴム材料(例えば、フッ素ゴム等)を用いることが望ましい。
【0029】
次に、磁石5に対して圧入されるヨーク4について説明する。本実施形態では、磁石5に対してコーティング膜5aを形成するが、一方のヨーク4の外周4bに対して所定量の潤滑油11が塗布されて設けられている方法を採用する。潤滑油11は、コーティング膜5aが表面に形成された磁石5に、ヨーク4を圧入する際に発生する摩擦力を低減させるために設けられるものである。潤滑油11はヨーク4の外周に設けられ、ヨーク4の外周と磁石5の内周とで形成される圧入面9に介在するものとなる。この潤滑油11は以下の方法によって、圧入面9に塗布される。
【0030】
磁石5にヨーク4を圧入する場合、磁石5の中心とヨーク4との中心がずれた状態でヨーク4を磁石5に圧入すると、コーティング膜5aの表面に傷をつけてしまったり、磁石5を破壊させてしまうことが起こり得る。このため、磁石5とヨーク4とが同軸になる同軸孔を有した専用治具を用いて圧入を図ることが望ましい。この場合、専用治具を磁石5に対して上方から被せた状態で、同軸孔の一方からヨーク4を磁石5の圧入面9に対して挿入する方法を取ると良い。
【0031】
この場合、ヨーク4をコーティング膜5aが設けられた磁石5に圧入する方法について、図3を参照して説明する。潤滑油11の粘度を適正粘度に調節する(S1)。次に、この調節された粘度の潤滑油11を所定の容器内に入れる(S2)。この後、潤滑油11が入った容器にヨーク4を浸漬させる(S3)。ヨーク4を浸漬させた後、ヨーク4を容器から引き上げる(S4)。
【0032】
一方、ヨーク4を磁石5に対して圧入する際、ヨーク4と磁石5の同軸度を出すために上記した専用治具を用意する(S5)。次に、磁石5に対して専用治具を上方から被せ、磁石5を専用治具に固定する(S6)。この後、潤滑油11が外周4bに塗布されたヨーク4を専用治具の同軸孔から挿入してゆき、ヨーク4を磁石5の内径に圧入する(S7)。この様にして、潤滑油11が外周4bに塗布されたヨーク4を環状の磁石5の内径に圧入する方法を採用した。
【0033】
次に、圧入面9における潤滑油11の作用について説明する。潤滑油の作用を説明する前に、磁石5に設けられるコーティング膜5aの膜厚の設定および膜厚偏差について、補足して説明する。
【0034】
上記した方法により、ヨーク4の外周4bに塗布された潤滑油11は、潤滑油11の有する粘度に応じた被膜を形成する。一方で、磁石5に設けられたコーティング膜5aは弾性力を有し、ヨーク4の圧入によってコーティング膜5aが弾性変形される。これによって、磁石5のコーティング膜5aとヨーク4との間で互いに力(ここでは、緊迫力と称す)が発生し、その結果、磁石5がヨーク4と一体になって保持されるものとなる。この場合、環状の磁石5の内径に設けられた開口部4aに円柱状のヨーク4を圧入する際、コーティング膜5aの内径寸法(内寸)はヨーク4の外径寸法(外寸)よりも小さく設定されており、しかも、コーティング膜5aの潰し代がコーティング膜側に形成されている。この様なヨーク4とコーティング膜5aの嵌めあい状態のもとで、ヨーク4を磁石5に対して圧入する前に、潤滑油11がヨーク4の外周4bに塗布される。
【0035】
次に、ヨーク4の圧入を行う場合の磁石の寸法精度について簡単に説明する。磁石5は磁石5の製造方法に応じて、寸法精度が確保される。例えば、ネオジウムから成る磁石5を焼結にて作る場合、焼結によるネオジウム磁石のリング形状の内径は、焼結品では±50μmの寸法公差となる。このため、磁石5の内径の寸法精度を高めるためには、焼結後に後加工をしない方がコスト的に有利となる為、本実施形態では焼結状態での磁石5を使用するものとする。これに対して、ヨーク4は機械加工によって作られ、寸法精度は焼結より成る磁石5の寸法精度に比べて、1桁程高くなっている。
【0036】
更に次に、コーティング膜5aの膜厚精度について説明する。コーティング膜5aの外径寸法の精度も製造方法に準拠した膜厚精度を有するものとなる。例えば、スプレー塗装やディッピング塗装によって、環状の磁石5の表面全面にコーティング膜5aを形成する場合には、塗装回数に応じた膜厚精度を有するものとなる。この場合、磁石5に対する塗装回数が少ない程、塗装に要するコストが安価となるが、塗装回数が少ない程、一回の塗装によって形成する所望の膜厚を確保する必要があり、比較的粘度の高い塗料を使用しなければならなくなる。これによって、一回の塗装により所望の膜厚を有するコーティング膜5aを形成する方法では、膜厚精度は良くないものとなってしまう。この場合、磁石5を空中に浮かした状態で塗装することは現実的に難しいことから、薄い塗装を塗り重ねて所望の膜厚精度を確保する必要がある。
【0037】
この様なことから、本実施形態においては、複数回(例えば、4回)のスプレー塗装により、所望な膜厚(例えば、約400μm)から成るコーティング膜5aを形成する条件に基づき、膜厚精度について説明する。ここでは、環状の磁石5の内径:27.2mmのものを使用し、コーティング膜5aの圧入代が、260〜330μmの偏差で、ヨーク4が磁石5に対して圧入を行うものとする。
【0038】
膜厚形成に当たっては、一回目の塗装と二回目の塗装は相対的に粘度が高い塗料でコーティング膜5aを塗装により設けた後、三回目の塗装と四回目の塗装では相対的に粘度が低い塗料で塗装する方法を採用した。本実施例では、一回目の塗装と二回目の塗装は、0.15Pasの粘度の塗料で塗装を施すと、350μm±100μmの塗膜を有するコーティング膜5aが形成される。また、三回目と四回目の塗装では、0.1Pasの粘度の塗料でさらに10μmの膜厚の塗膜を上塗りして形成した。これによって、コーティング膜5aの膜厚偏差は、100μmを若干越える膜厚偏差になる。この場合、三回目および四回目の塗装は、二回面の塗装でできたコーティング膜5aのピンホール等の欠陥を修復するため、上塗りの方を下塗りに比べて粘度の低い塗料で塗装する様にしている。こうして、スプレー塗装やディッピング塗装では、毎回の塗装に伴う膜厚精度が累積されて、塗膜の膜厚精度が決まる。
【0039】
コーティング膜5aの形成にスプレー塗装あるいはディッピング塗装による形成方法においては、次の様な問題が生じる。即ち、スプレー塗装あるいはディッピング塗装を行うと、磁石表面に設けられた塗装後の未乾燥状態の塗料が、重力を受けて自重により垂れ下がってくることが起こり得る。その自重により垂れ下がった塗料はその後固化するので、環状の磁石5にコーティング膜5aを形成する場合には、端部に比べて中央部の膜厚が薄い、つつみ状の膜が形成される。この場合、同一試料における塗膜の膜厚精度の内、未乾燥状態の塗膜の重力によって形成される膜厚精度が膜厚精度全体の約9割を占め、塗装むらによる膜厚精度が、膜厚精度全体の1割程度を占めることが実験等により判明した。この為、磁石5に設けられる圧入面9のコーティング膜5aは、軸方向の同一径の部位において、全体の膜厚精度の1割程の膜厚偏差を有するものとなる。このような理由から、ヨーク4を圧入する際に最初にコーティング膜5aと当接するコーティング膜の上端面においては、10μm前後の膜厚偏差を持つものとなる。尚、本実施例では10μmの膜厚偏差に対して、コーティング膜5aの圧入代を260〜330μmの範囲に設定している。
【0040】
以上、説明した様に、ヨーク4の圧入によって磁石5と結合させて保持するためには、磁石5の内寸公差に伴って、所望の膜厚のコーティング膜5aを形成する必要がある。所望な膜厚のコーティング膜5aを形成する為には、塗料の塗布の回数に応じた塗膜の膜厚偏差が生まれる。一方、ヨーク4の外周4bに潤滑油11を塗布したものを、環状の磁石5に圧入する際には、ヨーク4に形成される潤滑油11の被膜の厚みとコーティング膜5aの膜厚偏差との関係を利用する。これによって、両者の圧入面9における滑り摩擦係数を下げると共に、ヨーク4とコーティング膜5aとの圧入面9において、ヨーク4が磁石5から抜けにくくすることが可能である。即ち、ヨーク4とコーティング膜5aとの圧入面9において圧入荷重を発生させることによって、抜け荷重を増大させて抜け防止を図ることが可能となり、これと同時に、弾性力を有するコーティング膜5aを圧入により弾性変形させて、磁石5とヨーク4との結合を確実に保持することが可能となる。
【0041】
この場合、ヨーク4に対して与えられる潤滑油11の量によっては、次の様な問題が生じる。即ち、潤滑油11が必要量以上に塗布されたヨーク4は、表面に潤滑油11の粘度に応じた塗膜が形成される。この場合、磁石5に対して圧入されるヨーク4の外径が、磁石5に設けられたコーティング膜5aの内径よりも大きい場合には、ヨーク4の表面に塗付された潤滑油11はコーティング膜5aに対して十分な緊迫力が無くなる為に、ヨーク4は磁石5から容易に離脱する。
【0042】
ヨーク4を磁石5に圧入する事により、コーティング膜5aを弾性変形させて、環状の磁石5を保持させるための緊迫力を圧入面9に発生させる為に、圧入するヨーク4の外径がコーティング膜5aの内径より大きくないと、コーティング膜5aの潰し代が十分に発生しなくなり、圧入後、コーティング膜5aの弾性変形によって磁石5を確実に保持することができなくなってしまう。
【0043】
以上、述べた様に、圧入面9に潤滑油11を塗布して潤滑油11の塗膜を形成させるヨーク4の外寸とコーティング膜5aの内寸の関係と、コーティング膜5aを圧入により弾性変形させて磁石5を確実に保持させるヨーク4の外寸とコーティング膜5aの内寸との関係とは、相反する関係にある。しかしながら、潤滑油11は、ヨーク4の圧入時にヨーク4に塗膜として形成された状態で、ヨーク4と共に一体となって圧入されなければ、圧入面9における滑り摩擦係数を低減させることはできない。一方、潤滑油11の塗膜が形成されたヨーク4が磁石5に圧入されることによって、圧入面9でのコーティング膜5aを弾性変形させて磁石5を保持する緊迫力をコーティング膜5aに発生させることが必要となる。この相反する性質を実現させなければ、ヨーク4の圧入時にコーティング膜5aが従来の如く破断してしまうか、或いは、潤滑油11をヨーク4に塗布したとしても、ヨーク4を磁石5に対して結合させて保持させる抜け荷重を発生させることができなくなってしまう。
【0044】
そこで、本発明はこの様な問題を解決する為にヨーク4に設けられる最適な潤滑油の量をコーティング膜5aの膜厚から決定した。そして、上記したスプレー塗装やディッピング塗装によって形成されるコーティング膜5aの膜厚精度の悪さを利用して、ヨーク4への潤滑油11の塗布によって圧入面9における滑り摩擦係数を低減させると共に、ヨーク4の圧入によってコーティング膜5aを弾性変形させて、ヨーク4と磁石5との結合が強固となることを、実験により見出した。
【0045】
即ち、コーティング膜5aは未乾燥状態においては、塗布された塗料の自重によって下方へと垂れ下がる。この場合、コーティング膜5aは、磁石5の表面になるべく同一の膜厚と成るように形成させる為、磁石5の状態を180度上下をひっくり返して、上下を反対にすると良い。例えば、磁石5の上下を反対にして、同一の粘度の塗料で各一回ずつ塗布する方法を取る。この様にして、磁石の上下を反対にするとコーティング膜5aは、上下の膜厚に比べて中央の膜厚が薄くなる膜厚偏差を有する。このような膜厚偏差を有するコーティング膜5aに、ヨーク4を圧入させる。
【0046】
上記した様に、上下の膜厚に比べて中央の膜厚が薄くなった磁石5に対してヨーク4を圧入する場合には、弾性変形により磁石5を保持するコーティング膜5aの緊迫力を膜厚が相対的に厚い上下端で確保し、圧入が始まる上下面では圧入による弾性変形量を大きくすれば、圧入時に潤滑油がヨークの表面からはぎ落とされる易くなる。
【0047】
コーティング膜5aは塗膜の形成方法に依存して膜厚偏差を有している。コーティング膜5aを上記した方法により形成する場合には、コーティング膜5aの同一高さの同一内周面において約10μm程の膜厚偏差を有する。この同一内周部の膜厚偏差の大きさと、ヨーク4に塗布された潤滑油11の塗膜の厚みとの大小関係によって、ヨーク4を圧入する際に以下に示す現象が起こり得る。
【0048】
最初に、コーティング膜5aの膜厚の10μm程から成る膜厚偏差の大きさに比べ、潤滑油11の塗膜の厚みが10μmに近い場合あるいは塗膜の厚みがその厚みよりも厚い場合で、潤滑油11の粘度が相対的に高い粘度を有する潤滑油11をヨーク4に対して塗布した場合について、圧入時および圧入後の潤滑油11の挙動について、図4を参照して説明する。ヨーク4の先端は、磁石5に設けられたコーティング膜5aを傷つけないように、C型面取りが成されたテーパ部4cを有する。ヨーク4の磁石5への圧入が開始されると、テーパ部4cがコーティング膜5aの端部と最初に接触する。そして、ヨーク4はコーティング膜5aを弾性変形させて圧入されてゆく。この場合、ヨーク4の表面に設けられた潤滑油11の塗膜の一部はコーティング膜5aとの接触によってヨーク4から剥ぎ落とされ、残りの潤滑油11の塗膜は圧入面9においてコーティング膜5aの膜厚偏差(偏差:d)によって形成される凹部状となった空間12がある為、この空間12に潤滑油11が充填される。この空間12は、ヨーク表面から剥ぎ落とされずに空間12を充填する潤滑油11、ヨークからコーティング膜に転移した潤滑油11とで充填される。ヨーク4はコーティング膜5aを弾性変形させながら、ヨーク4の圧入に従い、コーティング膜5aの膜厚偏差は、コーティング膜の弾性変形によって縮小されるので圧入後には圧入前に比べて小さな値となり、潤滑油によって圧入面9での滑り摩擦係数を低減することはできる。しかしながら、コーティング膜5aの膜厚偏差の大きさに比べ、潤滑油11の塗膜の厚みが必要以上に厚い場合には、ヨーク4がコーティング膜5aを有する磁石5に対して完全に圧入された時点では、圧入前の10μm程の膜厚偏差は圧入後には10分の1以下となり、圧入後におけるコーティング膜5aの膜厚偏差の領域には潤滑油11が充填されるが、ヨーク表面から剥ぎ落とされずに空間12を潤滑油11により充填される以外に、ヨーク表面にはヨーク4からコーティング膜5aに転移した潤滑油11も存在するものとなる。この為、ヨーク4もしくは磁石5のどちらか一方に外力を受けた場合には、ヨーク4が磁石5に対して容易に脱落し易くなってしまう。
【0049】
次に、コーティング膜5aの膜厚偏差の大きさに比べて、潤滑油11の塗膜の厚みが薄い場合、即ち、潤滑油11の粘度が相対的に低い粘度を有する潤滑油11をヨーク4に対して塗布した場合について、圧入時および圧入後の潤滑油11の挙動について説明する。ここでは、コーティング膜厚の膜厚偏差10μmに対し、ヨーク4に塗布された潤滑油11の塗膜の膜厚を1.2μmとした場合について説明する。尚、この場合、潤滑油11の粘度を0.05Pasに希釈した潤滑油11を用いた。ヨーク4の圧入が開始されると、ヨーク4はコーティング膜5aを弾性変形させて圧入され、圧入に従って潤滑油11の塗膜の一部はコーティング膜5aとの接触によって、ヨーク4からはぎ落とされる。剥ぎ落とされなかった残りの潤滑油11の塗膜は、塗膜自体の膜厚が薄い為、コーティング膜5aの膜厚偏差によって形成される凹部状となった空間12の全てではなく、空間12の一部に充填される。圧入状態でヨーク4が磁石5に挿入され、ヨーク4はコーティング膜5aを弾性変形させながら、コーティング膜5aを有する磁石5の内径に圧入される。コーティング膜5aの膜厚偏差は、上記と同様にコーティング膜5aの弾性変形によって、膜厚偏差は縮小される。この場合、潤滑油11は、ヨーク4とコーティング膜5aとの圧入面9に充填された状態を保ちながらヨーク4の圧入が進行する為、潤滑油11の移動により圧入時の滑り摩擦係数を下げることが可能である。圧入が完了し、ヨーク4がコーティング膜5aの正規の圧入位置に配置された時点では、コーティング膜5aの膜厚偏差は圧入前に比べて小さな値となり、圧入開始の初期に有していた10μm程の膜厚偏差は10分の1以下となる。更にこの場合、圧入後におけるコーティング膜5aの膜厚偏差によって形成される空間12は、圧入の初期段階における潤滑油11の塗膜の厚みを膜厚偏差の1/10程と薄くした。この為、潤滑油11の塗膜はコーティング膜5aの膜厚偏差によって形成される空間12の全てではなく、空間12の一部に充填されることになる。特に、潤滑油の塗膜は液体であるため、圧入後におけるコーティング膜5aのヨーク側に突出した部分は極薄い塗膜として形成される。これによって潤滑油11は分子膜状態に近い極めて薄い潤滑油11の塗膜が形成されるものとなり、この状態で磁石5またはヨーク4のいずれか一方に外力を受けたとしても、潤滑油11による塗膜の変形量はコーティング膜5aの弾性変形量に比べて著しく小さい。このため、コーティング膜5aの弾性変形による緊迫力を下げることが無くなりヨーク4と磁石5との結合が強固となるので、その結果、ヨーク4が磁石5から容易に脱落することはなくなる。
【0050】
以上に説明したように、膜厚偏差を有するコーティング膜5aが形成された磁石5にヨーク4を圧入する際には、膜厚偏差の1/10以下の潤滑油11を圧入面9に塗布することで、圧入面9における滑り摩擦係数を下げ、ヨーク4が磁石5に圧入される際、ヨーク4がコーティング膜5aを引きずってコーティング膜5aを傷つけたり、はぎ落とす事を防止することができる。この様な潤滑油11は、コーティング膜5aに対する接着力が無く、ヨーク4をコーティング膜5aに対して滑らせる効果を有する液体であることが望ましい。
【0051】
一方、液体の潤滑油11をヨーク4に塗布する場合、潤滑油11が有する粘度に応じた塗膜がヨーク表面に形成される。潤滑油11は接着力が殆ど無く、固体に比べて応力に対する体積変化がし易い。このため、圧入後に圧入面9に形成される潤滑油11の塗膜が必要以上に厚いと、外力を受けた場合に潤滑油11の塗膜が変形し、圧入面9から容易にヨーク4または磁石5が脱落する。
【0052】
ヨーク4が圧入される弾性力を有し、磁石5を劣化から防止するコーティング膜5aは、形成方法に応じた膜厚精度を有する。この場合、膜厚精度はコーティングにより使用する塗料の粘度に応じて変わるが、ヨーク4の圧入によって弾性変形することで、膜厚精度が平均化される。
【0053】
ヨーク4の磁石5への圧入によってコーティング膜5aの表面の凹凸は変形して平均化される。この場合、塗布した潤滑油11の塗膜の膜厚を薄くし、さらにこの平均化された塗膜の膜厚偏差を利用すると、コーティング膜5aの凸部に分子レベルの極めて薄い潤滑油11の被膜が形成される。この極めて薄い被膜によって、磁石5またはヨーク4のいずれか一方に外力が作用した場合には、その外力によって生ずる潤滑油11の被膜の変形は、コーティング膜5aの弾性変形に比べて著しく小さくなり、コーティング膜5aの弾性変形に基づく緊迫力を低下させることが無いので、外力を受けても磁石5またはヨークが脱落することが無くなる。
【0054】
本実施形態において潤滑油11は、パラフィン系オイルをベースにし、これに磨耗防止剤や酸化防止剤を混合した、非亜鉛系の油圧作動油を用いており、具体的には、商品名:ダフニースーパーハイドロA(製造:出光興産)を用いた。
【0055】
次に、実施例について説明する。以下に示す実施例では、潤滑油11の粘度を変え、潤滑油11を昇温させ、潤滑油11をヨーク表面に設けるために潤滑油11の入った容器を25℃、60℃、70℃に設定し、この温度の異なる容器の中にヨーク4を浸漬させて、ヨーク表面に粘度が異なる潤滑油11を塗布し、潤滑油11の塗膜を形成した実験を行い、それぞれについて潤滑油11の塗膜の厚みを測定した。潤滑油11の塗膜の厚みが異なるヨーク4を圧入し、磁石5に対してヨーク4を圧入する圧入時と、ヨーク4の磁石5からの外れ易さを検証する為に、磁石5からヨーク4を引き抜くときの荷重(引き抜き荷重と称す)を測定した。
【0056】
(実施例)
以下に示す実施例では、環状の磁石5には、高さ:24mm、内径:27.2mm、外径:31.8mmのネオジ磁石を使用した。この磁石5にフッ素ゴムを材料とする塗料によって400μm程の膜厚を有するコーティング膜5aを形成した。一方、ヨーク4は内径:26.8mmとして、このヨーク4に粘度の異なる3パターンの潤滑油11の塗膜を形成する実験を行った結果を以下に示す。
【0057】
実施例1:(高粘度の潤滑油使用)
室温25℃における潤滑油11の入った容器にヨーク4を浸漬させ、ヨーク表面に7.5μm程の潤滑油11の塗膜を形成させた。このとき、潤滑油11の粘度は0.31Pasであった。このような条件でヨーク4の表面に潤滑油11の塗膜を形成したものを磁石5に圧入した。このときの圧入荷重と抜け荷重とを測定した。
【0058】
実施例2:(中粘度の潤滑油を使用)
実施例2では、潤滑油11の粘度を低下させるために、潤滑油11を60℃まで昇温させ、この温度での潤滑油11が入った容器の中にヨーク4を浸漬させ、ヨーク4の表面に1.2μm程の潤滑油11の塗膜を形成させた。このときの潤滑油11の粘度は0.05Pas程である。この様な条件で、潤滑油11の塗膜をヨーク4の表面に形成し、これを磁石5に圧入した。このときの圧入荷重と抜け荷重とを測定した。
【0059】
実施例3:(低粘度の潤滑油を使用)
実施例3では、潤滑油11の粘度をさらに低下させるために、潤滑油11を70℃まで昇温させ、この温度の潤滑油11の入った容器の中にヨーク4を浸漬させ、ヨーク4の表面に0.7μm程の潤滑油11の塗膜を形成させた。このときの潤滑油11の粘度は0.03Pasである。こうした条件で潤滑油の塗膜をヨーク4の表面に形成し、これを磁石5に圧入した。このときの圧入荷重と抜け荷重とを測定した。
【0060】
(実験結果)
上記した実施例1〜3の実験において、ヨーク4を磁石5に対して圧入した場合の圧入荷重と抜け荷重を[表1]に示す。
【0061】
【表1】
Figure 2004297850
上記の実験の結果から、ヨーク4の表面に塗布した潤滑油11の塗膜の膜厚に応じて、ヨーク4をコーティング膜5aが形成された磁石5に圧入した際に発生する圧入荷重が大きく変わり、これに応じて抜け荷重も変わることが判明した。尚、上記したいずれの実施例については、圧入時にコーティング膜5aが剥がれるという現象は発生せずに、潤滑油11の塗布による圧入面9の滑り摩擦係数の低減の効果が得られた。
【0062】
上記した実験における圧入荷重の結果についての考察を以下に説明する。ヨーク4の表面に潤滑油11を塗布し、ヨーク4を磁石5に圧入することで、潤滑油11の塗膜がヨーク4とコーティング膜5aとの圧入面9に形成される。この潤滑油11の塗膜は液体で、実施例1に示す様に、相対的に粘度が高い潤滑油でも粘度が0.3Pas程の低粘度のさらさらした液体を使用した。この場合において、ヨーク4をコーティング膜5aに圧入する際に、両者が接する面の全面が緊密に接触する場合には、低粘度の液体である潤滑油11はヨーク4の表面から剥ぎ落とされ、潤滑油の効果は得られなくなる。一方、ヨーク4の圧入によって磁石5を保持させるためには、圧入後においてコーティング膜5aは弾性変形によって緊迫力を発生させなければならない。よって、ヨーク4とコーティング膜5aとの間に隙間がある場合は、その隙間によって両者の結合に絶え得るべく緊迫力は発生せず、ヨーク4は磁石5から簡単に脱落する。このように、ヨーク4とコーティング膜5aとの圧入面9には相反する性質が要求される。そこで、本発明ではこの相反する性質を同時に成立させるコーティング膜5aの膜厚偏差を利用した結合構造を見出した。
【0063】
上記した実施形態におけるコーティング膜5aは、同一内周面において、10μm程の膜厚偏差を有するものを使用しており、ヨーク4をコーティング膜5aが形成された磁石5に圧入する際、ヨーク表面に塗布された潤滑油11の塗膜は一部が剥ぎ落とされる。ヨーク4の圧入によって弾性力を有するコーティング膜5aは弾性変形する。弾性変形したコーティング膜5aは圧入により圧入面9の凸部が潰されることによって、コーティング膜5aの膜厚偏差は圧入前に比べて縮小される。コーティング膜5aの凸部が潰されるときに、ヨーク表面に塗られた潤滑油11の一部は、コーティング膜5aの膜厚偏差により発生する空間12の中に充填されるものとなる。この空間12は、ヨーク4の圧入が進むことにより変形して縮小され、空間内に充填された潤滑油11の一部はさらに圧入によりヨーク4から剥ぎ落とされる。この場合、コーティング膜5aの膜厚偏差のうち、ヨーク側に突出した凸部は、ヨーク4の圧入によって、より大きく圧縮変形が成される為、コーティング膜5aに吸着した潤滑油11の塗膜は、極めて薄い潤滑油の被膜が形成されることになるが、この極めて薄い潤滑油11の塗膜は、圧入面9の圧入荷重の発生を妨げることがない。
【0064】
しかし、ヨーク表面に塗布した潤滑油11の塗膜の厚みが必要以上(一定の膜厚)以上になると、多くの塗膜は圧入が開始される時点でヨーク4から剥ぎ落とされ、コーティング膜5aの膜厚偏差によって形成される空間12を潤滑油11で充填されながらコーティング膜5aが変形される。ヨーク4の圧入が終了した時点においても、コーティング膜5aの厚偏差が平均化された空間内に潤滑油11が充填される。一方、コーティング膜5aの膜厚偏差のうち、ヨーク側に突出した凸部はヨーク4の圧入によって圧縮変形が成されるが、潤滑油11の供給量が多い場合は、この部位に形成される潤滑油11の被膜は、潤滑油の供給量が少ない場合に比べて、相対的に厚くなる。この潤滑油11の被膜の厚さが薄ければ薄いほど、圧入面9におけるヨーク4の圧入荷重の発生を妨げないものとなるが、コーティング膜5aの被膜の厚みが必要以上に厚くなると、圧入面9でヨーク4が磁石5に対して滑ってしまうため、圧入荷重の発生量が少なくなる。
【0065】
以上の事から、ヨーク4をコーティング膜5aが形成された磁石5に圧入する時に発生する圧入荷重は、コーティング膜5aの膜厚偏差におけるヨーク側に突出した部位における潤滑油11の被膜の厚みで決まることを見出した。この被膜が薄ければ薄い程、圧入面9での滑り摩擦力が小さくなる。これによって、コーティング膜5aを弾性変形させながらヨーク4を圧入するときの抵抗力が圧入荷重となる。ヨーク表面に形成された潤滑油11の厚みは、実施例1では7.5μm、実施例2では1.2μm、実施例3では0.7μmとしたので、実施例2および実施例3におけるコーティング膜5aの被膜の厚みは、実施例1に比べると著しく薄くなる。これによって、実施例2および実施例3の圧入荷重は、実施例1の圧入荷重に比べて著しく大きな値となり、これに応じて抜け荷重の値及び最大荷重の値に応じた値となった。
【0066】
ヨーク4の表面に塗布する潤滑油11の厚みの適性値は、抜け荷重の大きさで決定される。抜け荷重の大きさは、概略圧入時の圧入荷重の大きさにより決定される。従って、必要となる抜け荷重の値を得るためには、これに必要な圧入荷重、圧入条件を見出し、これによって適正な潤滑油の塗膜の厚み、すなわち塗布する潤滑油の適性粘度が求められる。
【0067】
抜け荷重の適性値は、外力に対する磁石5とヨーク4との保持力から求められる。圧入後における外力として、例えば、上記した磁石5をモータ1に応用する場合、モータ1の駆動時に反力としての回転トルクを磁石5が受けるか、或いは、外部から振動加速度による外力を受ける。この様な上記した磁石5を車両のウォーターポンプに適用した場合は、モータ駆動時の反力としての回転トルクは0.9Nmであり、33Nに相当する力を磁石5は受ける。また、最大振動加速度は30Gであり、このとき磁石は11.8Nの重力を受けるという結果を得た。この場合には、塗布される潤滑油11の塗膜は1.2μm以下にして、0.05Pas以下の粘度を有する潤滑油11にヨーク4を浸漬させてやることが必要となる結果を得た。
【0068】
【発明の効果】
本発明によれば、弾性力を有するコーティング膜に潤滑油を塗布したヨークを圧入する際、圧入面に潤滑油の被膜が形成されることによって、圧入面での滑り摩擦係数が下がるので、圧入されるヨークと一体になってコーティング膜が引き剥がされることを防止することができる。
【0069】
この場合、圧入面に極めて薄い潤滑油の被膜(コーティング膜の膜厚偏差の1/10以下)となる潤滑油の膜をヨークに設けてヨークを圧入することで、圧入面における潤滑油のすべりを小さくすることができる。これによって、ヨークとコーティング膜との間で圧入荷重の発生を増大させることができ、ヨークとコーティング膜が形成された磁石との抜け荷重を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における永久磁石をモータに適用した場合のモータ内部構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す磁石とコーティング膜との嵌め合い関係を示す模式図である。
【図3】図2に示すヨークに潤滑油を塗布し、磁石に対して圧入するまでの工程を示した工程図である。
【図4】潤滑油をヨークに塗布し、コーティング膜が形成された磁石に対して圧入する状態を示した説明図である。
【図5】コーティング膜とヨークとの結合を模式的に示した圧入面の拡大図である。
【符号の説明】
1 モータ
4 ヨーク部材(ヨーク)
5 永久磁石(磁石)
5a コーティング膜
9 圧入面
11 潤滑油
12 空間(凹部)

Claims (5)

  1. コーティング膜が形成された永久磁石と、磁気回路を構成するヨーク部材とを一体化した永久磁石の結合構造おいて、
    前記コーティング膜は弾性体から成り、膜厚偏差を有する圧入面を有し、前記膜厚偏差以下の潤滑油が表面に設けられた前記ヨーク部材が前記圧入面に圧入され結合されていることを特徴とする永久磁石の結合構造。
  2. 前記潤滑油は、膜厚偏差により形成される圧入面の凹部に流れ込んでいることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石の結合構造。
  3. 前記潤滑油は、非亜鉛系油圧作動油としたことを特徴とする請求項1に記載の永久磁石の結合構造。
  4. 前記潤滑油は、粘度が0.05Pas以下であり、前記潤滑油の膜厚は前記膜厚偏差の1/10程であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の永久磁石の結合構造。
  5. 前記コーティング膜は、フッ素ゴムから成ることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石の結合構造。
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