JP2004297280A - 通信システム及び受信装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】MC−CDMA通信におけるBER受信性能を改善する。
【解決手段】複数のサブキャリアを介して少なくとも2ユーザの信号を送受するMC−CDMA通信システムにおいて、送信装置は、異なるコードで拡散された2ユーザの信号をコード多重し、複数のサブキャリアを用いてMC−CDMA送信し、受信装置は、MC−CDMA信号を受信し、受信信号を送信側コードで逆拡散し、非線形処理して得られる各ユーザの受信データの軟判定を行う受信部を備え、一方の受信部は他方の受信部から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データを判定する。
【選択図】 図2

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2以上のサブチャネルを採用する通信システム、特にDMT(discrete multi−tone)変調やフィルタバンク(filter−bank)変調、などの幾つかのサブチャネルを備えた通信システム、あるいは、マルチキャリア通信システム、あるいは、マルチキャリア変調によりバンドが独立した狭バンドに分割され、各サブバンドが、多重ユーザのアクセスをサポートするために、独立してCDMA方式により変調される通信システムに関する。
【0002】
この10年の間に、マルチキャリア(MC)と符号分割多重アクセス(CDMA)の組合わせに基づいた多くの新しい変調方式が考えられてきた。これら方式の共通の特徴は、拡散データシーケンス(チップ)の並列送信であり、チップ周期は、マルチパスフェージングに対するロバスト性を得るために実際に増大させられてきた。マルチキャリア(MC)と符号分割多重アクセス(CDMA)の組合わせは、異なったアプローチで実現されている。対応する方式は、MC−CDMA、直接拡散CDMA (DS−CDMA)、マルチトーンCDMA (MT−CDMA)が知られている。全方式において、ユーザは同時に利用可能なバンド幅を共用する。ユーザ信号の分離は、DS−CDMAに類似した方法でコードドメインにおいて実行される。
周波数選択性フェージング環境は、サブチャネルにおいてマルチアクセス干渉(MAI)またはチャネル間干渉(ICI)を引き起こし、結果的にBER性能を劣化する(たとえば、非特許文献1、2)。
【0003】
本発明では、MC−CDMAべースの通信システムのために最適なシンボルワイズレシーバ(symbol−wisereceiver)の構成を導出する。Markov チェーンアプローチ(Markov chain approach)を使って、干渉が隣接サブチャネルに影響を与える状況において最適レシーバをシンセサイズする。新しい非線形信号処理技術が、すなわち、最大事後確率推定に基づいた非線形信号処理技術が提案される。最大事後確率推定は、システムのBER(bit error rate)性能に対する多重アクセス干渉(MAI)あるいはチャネル間干渉(ICI)の効果をかなり緩和する。ほとんどの研究において、MAIまたはICIを零平均ガウス分布確率変数(Gaussian−distributed randomvariable with a zero mean)として扱うことが、普通に行われている。これに対して、我々は、MAIまたはICIを記述するために有限状態離散マルコフプロセスモデル(a finite−statediscrete Malkov process model)を採用する。2ユーザデータの送受信について説明するが、いくらかの修正により、以後に説明される本発明のアイデアは、幾人かのユーザがMAIあるいはICIにより互いに影響されるより複雑なケースに発展可能である。
【0004】
【従来の技術】
DMTあるいはOFDMによるMC−CDMA方式を考察する。MC−CDMA方式は、DS拡散とMC変調との直列連鎖に基づいている。議論を単純化するために、IFFT(図6)とFFT(図7)は理想的に動作し、付加的なICIを引き起こさないものとする(たとえば、非特許文献3)。IFFTとFFTは、MC−CDMAシンボルを変調信号に変換する際、あるいは逆の変換をする際、システムにおいて実施される。
図6はMC−CDMA送信機の構成図であり、ユーザ数が2で、サブキャリア数が2の場合である。ユーザ0のコピー部CPY0はユーザ0の送信データDをコピーして2つのサブキャリア用のデータを出力する。乗算器MPL00は第1複製データDに第1拡散コード列{C00,C01}の第1コードC00を乗算し、乗算器MPL01は第2複製データDに第2コードC01を乗算し、それぞれサブチャネル0,1側に出力する。
【0005】
ユーザ1のコピー部CPY1はユーザ1の送信データDをコピーして2つのサブキャリア用のデータを出力する。乗算器MPL10は第1複製データDに第2拡散コード列{C10,C11}の第1コードC10を乗算し、乗算器MPL11は第2複製データDに第2コードC11を乗算し、それぞれサブチャネル0,1側に出力する。
サブチャネル0(第1サブキャリア)側の加算器ADD0は
・C00+D・C10
を演算して出力し、サブチャネル1(第2サブキャリア)側の加算器ADD1は
・C01+D・C11
を演算して出力する。
逆高速フーリエ変換部IFFTは2つのサブキャリア信号に逆高速フーリエ変換(あるいは逆離散フーリエ変換)を施して実部及び虚部の時間軸信号に変換する。各時間軸信号は図示しないGI挿入部、QPSK変調部を介してアンテナより送信される。
【0006】
図7はMC−CDMA受信機の構成図であり、ユーザ数が2で、サブキャリア数が2の場合である。フーリエ変換部FFTは図示しない受信部、復調部、GI除去部を介して入力されたべースバンドの受信信号にフーリエ変換処理を施してサブチャネル0,1の2つのサブキャリア信号S,Sを出力する。チャネル推定部CEUはサブキャリア信号S,Sに含まれるパイロット信号を用いて各サブキャリアのチャネルを推定し、チャネル補償部CC0,CC1はチャネル推定値k0,k1をサブキャリア信号S,Sに乗算してチャネル補償(フェージング補償)を行う。
【0007】
乗算器MP00は第1キャリアデータSに第1拡散コード列{C00,C01}の第1コードC00を乗算し、乗算器MP01は第2キャリアデータSに第2コードC01を乗算し、それぞれサブチャネル0の加算器AD0に入力する。サブチャネル0(第1サブキャリア)側の加算器AD0は次式
=S・C00+S・C01
を演算して送信データDを復調する。
同様に、乗算器MP10は第1キャリアデータSに第2拡散コード列{C10,C11}の第1コードC10を乗算し、乗算器MP11は第2キャリアデータSに第2コードC11を乗算し、それぞれサブチャネル1の加算器AD1に入力する。サブチャネル1(第2サブキャリア)側の加算器AD1は次式
=S・C10+S・C11
を演算して送信データDを復調する。
【0008】
IFFTとFFTが理想的に動作し、付加的なICIを引き起こさないものとすれば、以降の説明においてそれらを省略することができる。IFFTを省略した場合の2ユーザのMC−CDMA用送信機は図8に示され、FFTを省略した場合の2ユーザのMC−CDMA用受信機は図9に示され、それぞれ図6、図7と同一部分には同一符号を付している。図8において、増幅部AF0、AF1の係数k,kは振幅に関しての第1、第2サブキャリア0,1のチャネル伝達関数であり、伝送環境(チャネル)におけるサブキャリアの減衰を意味している。
これからの説明において、記号を簡単化にするために、信号D(t)=±1やS(t)の時間依存性を省略し、新しい記号としてD(t)をDで、S(t)をSで表記する。
【0009】
サブキャリア(サブチャネル)数Nは2である。各サブキャリアシーケンスD(iはサブキャリア番号)は、拡散ファクタSFの直交ショートコードCにより拡散され、ついで、同一のサブキャリアを共用するために他ユーザからの対応するサブキャリアと結合される。図8において、C={C00,C01}は第1ユーザ(ユーザ番号0)の拡散コードであり、C={C10,C11}は第2ユーザ(ユーザ番号1)の拡散コードである。直交する一組の拡散コード列C、Cを発生するために使用可能な多くの異なるシーケンスが存在するが、ウォルシュ(Walsh)やハダマード(Hadamard)シーケンスはCDMAにおける有益な組を与える。ここで、ハダマードマトリクスから拡散コードを選択する。表記において、cの第1インデックスはユーザ番号(ユーザ数2の場合には0又は1)を表わし、第2インデックスはサブキャリア(サブチャネル)番号を示す。図8に示されるMC−CDMAシステムは、サブキャリア数N,拡散ファクタSFがすべて等しいと仮定しており、N=SF=2である。図8のモデルは、MAIやICIを引き起こす物理プロセスを理解するために有益である。
【0010】
MC伝送時、各サブキャリア上に周波数非選択フェージングが本質的に存在し、また、一般的にN=SFとする必要はない。実際に、初期のシンボルレートが周波数選択フェージングの支配を受けるのに十分に高ければ、信号を周波数ドメインで拡散する前に、直列/並列変換する必要がある。
MC−CDMAレシーバは、逆拡散を成功させるためにコヒーレントな検出を必要とする。本明細書では、理想ガウシャン白色ノイズチャネル(AWGN)と理想的なサブチャネルのフレーム/時間同期を仮定する。レシーバにおいて、各サブキャリアSの各受信シンボルは、拡散シーケンスCの対応するチップパターン(コードパターン)の信号によって乗算され、推定されたチャネル推定値kが各サブキャリアに関連付けられる。それらは図9に示されるように周波数ドメインにおいてSFチップの期間にわたってコヒーレントに積算される。図9は2ユーザの場合の従来技術(たとえば、非特許文献2,3)で報告されたMC−CDMAを示している。このレシーバは”クラシカル”MC−CDMAとして本明細書で後に参照される。理想的なチャネル推定ができたと仮定し、各サブキャリアのチャネル推定値がk,kであるとしている。
【0011】
図式的例示として、ユーザへの拡散コード割り当てのためにウォルシュコードC={w,w}が使用されたものとする。最初のユーザ(第1ユーザ)の拡散コードはC={+1,+1}となり、第2ユーザの拡散コードはC={+1,−1}となる。送信機における第1、第2サブキャリア信号は、
=D+D
=D−D
となり、チャネル出力は
=k・(D+D
=k・(D−D) (1)
となる。レシーバにおいて、各サブキャリアSiの信号は逆拡散されてコヒーレントに結合される。フラットフェージングの場合、逆拡散及び結合後、データ推定は(2)式の様に得られる。
【数1】
Figure 2004297280
(2)式において、k,kは、第1、第2サブチャネルの振幅に関するチャネル伝達係数である。フラットフェージングの場合には、k=kと仮定することができる。この簡単な例から明らかなように、フラット周波数フェージングの場合、適当な拡散コードを選択することにより、受信シンボルDに付加する歪を発生するICI又はMAIは存在しない。これは、MC−CDMAべース通信システムにおいてユーザデータ分離の基本的な原理である。
【0012】
以下では、もはやフラットフェージングを仮定しない。このため、k≠kである。(2)式から明らかなように、
【数2】
Figure 2004297280
が成立する。(3)式において、被乗数(k −k )をもったメンバーは、周波数選択性フェージングによるMAIを表わしている。(3)式におけるマルチアクセス干渉MAIは、ICIとしても扱われる。実際、(3)式からわかるように、被乗数(k −k )はクロスフィード係数又は2つのサブチャネル間の漏れを表わしている。
={k・w00,k・w01},C={k・w10,k・w11}としての拡散コードパターンに対して、あるいは図6に示す記号を用いた(4)式の拡散コードパターンに対して、サブチャネル伝達係数k,kが再計算可能であることを示すことは容易である。
【数3】
Figure 2004297280
(4)式により拡散コードを修正して、周波数選択性フェージングをフラットフェージングとして扱うことができる。一般的な場合におけるC={w,w}と対比すると、(4)式のコードは非直交である。図10及び図11はこのアプローチによるMC−CDMA送信機及びMC−CDMA受信機の構成図である。
【非特許文献1】
S.Hara, P Prasad “Overview of Multicarrier CDMA”, IEEE CommunicationMagazine, Dec.1997, pp.126−133.
【非特許文献2】
S.Hara “Design and Performance of Multicarrier CDMA System inFrequency−Selective Raleigh Fading”, IEEE Transaction on Vehicular Technology,Vol.48, Sep. 1999.
【非特許文献3】
S.Abeta, H.Atarashi, N.Sawahashi and F.Adachi “Performance of CoherentMulticarrier/DS−CDMA and MC−CDMA for Broadband Packet Wireless Access”, IEICETrans. Commun., Vol. EB−84, No.3, March 2001, pp.406−414.
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
(3)式からk=kのとき、MAI又はICIが存在しなくなる。実際、この場合、零に等しいクロスフィード係数及びサブチャネル間の漏れは除去される。他のどのようなkの選択であってもMAIあるいはICIの原因になる。この簡単な例は、注意しないとk≠kの時、周波数選択フェージングがサブチャネルにMAIあるいはICIを引き起こし、BERを劣化する。
従って、本発明の目的は、MC−OFDMの通信システムのBER性能を改善することである。そのような改善は非線形信号処理の実施により得られる。すなわち、非線形処理後に一つのサブチャネルから導出される情報が他サブチャネルの推定事後確率を精練するために使用されるとき、BERの改善が得られる。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、マルチアクセス方式と結合された2−サブチャネルマルチキャリア通信システムであり、サブチャネルを介して独立にデータを発生する2つのデータソースを備え、これらデータのシーケンスは周波数ドメインにおいて拡散ファクタSF=2の直交コードシーケンスにより拡散され、ついで、IFFT変換され、周波数選択性環境を通して送信される。IFFTは各サブキャリアにおけるシンボルを信号に変換するために使用される。
すなわち、本発明は、複数のサブキャリアを介して少なくとも2ユーザの信号を送受する通信システムであり、異なるコードで拡散された2ユーザの信号をコード多重し、複数のサブキャリアを用いて送信する送信装置、信号を受信し、受信信号を送信側コードで逆拡散し、非線形処理して得られる各ユーザの受信データの軟判定を行う受信部を含む受信装置、各受信部における軟判定の対象値を他方の受信部に入力する手段を備え、一方の受信部は他方の受信部から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データを判定する。
【0015】
受信装置は、好ましくは、▲1▼信号を各サブキャリアにおける信号に変換するFFTプロセッサ、▲2▼各サブキャリアのシンボルに、コードパターンと各サブキャリアに関連するチャネル推定値とを結合した信号を乗算する4つの乗算器、▲3▼振幅リミッター特性に応じた伝達関数を備えた非線形ユニット、▲4▼閾値に基づいて送信データについて判定を行う判定部、▲5▼前記逆拡散信号の2つの第1加算部、▲6▼一方の第1加算部からの出力信号と他ユーザデータの軟判定対象値との加算を行い、加算結果を前記非線形ユニットに入力する第2加算部、▲7▼該非線形ユニットの出力信号と前記他方の第1加算部からの出力信号を加算して軟判定対象値を出力する手段、を備えている。本発明によれば、BER性能を改善することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
(A)サブキャリアの受信シンボル復調アルゴリズム
図1はMC−CDMA送信部の構成図であり、ユーザ数が2で、サブキャリア数(サブチャネル数)が2の場合である。なお、IFFTは省略し図示していない。
ユーザ0のコピー部11はユーザ0の送信データDをコピーして2つのサブキャリア用のデータを出力する。乗算器12は第1複製データDに第1拡散コード列{C00,C01}の第1コードC00を乗算し、乗算器13は第2複製データDに第2コードC を乗算し、それぞれサブチャネル0,1側に出力する。
ユーザ1のコピー部21はユーザ1の送信データDをコピーして2つのサブキャリア用のデータを出力する。乗算器22は第1複製データDに第1拡散コード列{C10,C11}の第1コードC10を乗算し、乗算器23は第2複製データDに第2コードC11を乗算し、それぞれサブチャネル0,1側に出力する。
サブチャネル0(第1サブキャリア)側の加算器14は
・C00+D・C10
を演算して出力し、サブチャネル1(第2サブキャリア)側の加算器24は
・C01+D・C11
を演算して出力する。
【0017】
伝送中に第1サブキャリア信号にノイズn(t)が付加されてy(t)となって受信機31に受信される。また、第2サブキャリア信号にノイズn(t)が付加されてy(t)となって受信機に受信される。ノイズn(t),n(t)は統計的に独立である。
バイナリ情報(2値情報) Diがサブチャネル0,1を介して信号S*ij(t)として送信されるものとする。なお、S*ij(t)におけるインデックスiはユーザ番号(i=0,1)を示し、インデックスjは情報シンボルDiの符号により決定される。すなわち、
Di=+1ならばj=0
Di=−1ならばj=1
である。以後、表記を簡単にするために、式においてS*ij (t)の時間依存性を省略する。すなわち、S*ij(t)をS*ij と表記する。
【0018】
送信情報シンボルD、Dは統計的に独立で(相関がなく)、且つ、等分布された確率変数であるとする。図1から、ICIの影響を受けた信号は、サブチャネル0,1で送信された信号S*0j,S*1j (j=0,1)の線形結合として表現される。
【数4】
Figure 2004297280
ICIの導入後は、2つの送信信号Dに替わって(5),(6)式に従って、サブチャネル0の送信信号としてS(i=0,1,2,3)を使用し、サブチャネル1の送信信号としてS(i=4,5,6,7)を使用する。送信信号Sにおける番号iは、第1、第2サブチャネルにおけるシンボルD,Dをペア(対)にすることにより決定される信号番号を示す。
【0019】
サブチャネルiの受信情報シンボルDがjとなる事後確率P(D=j/y(t))は、
がjである信号を受信する事後確率として得ることができる。この事後確率
P(D =j/y(t))は、2つのサブチャネルにおいてD情報シンボルをそれぞれ送信する事後確率の乗積の和として得られる。すなわち、第1サブチャネル(サブチャネル0)の受信情報シンボルDが”0”(=+1)となる事後確率P(D=+1/y(t))、および、第1サブチャネルの受信情報シンボルDが”1”(=−1)となる事後確率P(D=−1/y(t))はそれぞれ(7)式で求めることができる。
【数5】
Figure 2004297280
(7)式より、D=+1となる事後確率は、第1サブチャネルの信号がSで、第2サブチャネルの信号がSである確率の積と、第1サブチャネルの信号がSで、第2サブチャネルの信号がSである確率の積の和である。同様に、D=−1となる事後確率は、第1サブチャネルの信号がSで、第2サブチャネルの信号がSである確率の積と、第1サブチャネルの信号がSで、第2サブチャネルの信号がSである確率の積の和である。
【0020】
受信信号がSである事後確率P(S/y(t)) は、次式
【数6】
Figure 2004297280
により与えられる。ただし、
は正規化因子、
iはサブチャネル番号(i=1,2)、jは信号番号(j=0,1,2,3)、
y(t)は第iサブチャネルにおいて、ICIを伴う信号系列とスペクトルパワー強度Nを有する白色ガウスノイズn(t)との合成信号(y(t)= S +n(t))、
apr(S)は受信信号Sの事前確率、
P(y(t)/ S)は条件付き確率であり、受信語がy(t)であった時、送られた符号語がSであったという確率である。
【0021】
(7)式に(8)式を用いて変形すると、(9)式が得られる。
【数7】
Figure 2004297280
事前確率Papr(S)(i=0〜7)は(5)(6)式より(10)式で示すように2つの隣接サブチャネルで送信されるデータの交差積として表現される。
【数8】
Figure 2004297280
第1サブチャネル(サブチャネル0)の受信情報シンボルDが”0”(=+1)、”1”(=−1)となる事後確率P(D=+1/y(t))、P(D=−1/y(t))が求まれば、それらの大小比較により、あるいはそれらの対数(logarithm)の差と閾値との比較により受信情報シンボルの符号(+1又は−1)を決定できる。
【0022】
・大小比較による判定
第1サブチャネルの情報シンボルDが+1であるか、−1であるかは、まず、
【数9】
Figure 2004297280
【0023】
・対数の差による判定
第1サブチャネルの情報シンボルDが+1であるか、−1であるかは、まず、
【数10】
Figure 2004297280
を演算し(lnはeを底とする対数)、しかる後、その正負により判定する。すなわち、
【数11】
Figure 2004297280
であればD=+1と判定し、
【数12】
Figure 2004297280
であればD=−1であると判定する。
(11c),(11d)式における各対数項は(12a),(12b)式に示すようになる。但し、表記を簡単にするために、P(S/y(t))→P(S)とする。
【数13】
Figure 2004297280
(12a),(12b)式のln P(D=+1/y(t)),ln P(D=−1/y(t))を求めると(13)〜(14)式になる。ただし、ln P(D=+1)=ln P(D=+1/y(t)),ln P(D=−1)=ln P(D=−1/y(t))である。
【0024】
【数14】
Figure 2004297280
lnは対数、chはcosh(ハイパボリク コサイン)を意味する。
【0025】
さて、(8)式より、
【数15】
Figure 2004297280
が成立しており、両辺の対数を演算すると
【数16】
Figure 2004297280
また、(5)、(6)式より、
=−S, S=−S, S=−S, S=−S
であるから、エネルギーに関して
=E, E=E, E=E, E=E (16)
が成立する。従って、(17),(18)式が成立する。
【数17】
Figure 2004297280
【数18】
Figure 2004297280
次式
【数19】
Figure 2004297280
に、(13),(14)式を代入して(17)、(18)式を考慮すると(19)式が導出される。
【0026】
【数20】
Figure 2004297280
上式において、ΔlnP,ΔlnPは、第1、第2ユーザのソフト判定値で
【数21】
Figure 2004297280
である。y(t),y(t)は、第1サブチャネル、第2サブチャネルの受信信号で
(t)=S(t)+n(t)(i=0〜3)
(t)=S(t)+n(t)(i=4〜7)
である。又、
ΔE=E−E,ΔE=E−E
である。
【0027】
(B)受信機の構成
図2は(19)式の判定アルゴリズムを実現する受信機の構成図であり、ソフト判定値ΔlnP演算部50、FFT演算部51、ソフト判定値ΔlnP演算部70を有している。第1サブチャネルのソフト判定値ΔlnP演算部50のみの詳細を示すが第2サブチャネルの構成も同様である。
(19)式における(S+S),(S+S),(S−S),(S−S)は(5),(6)式より、
(S+S)=2・C00
(S+S)=2・C01
(S−S)=2・C10, (20)
(S−S)=2・C11
である。尚、C00〜C11は(4)式で与えられる。
【0028】
(20)式の関係およびFFT演算部51から
【数22】
Figure 2004297280
が出力されるものとすると、乗算器52は(19)式の右辺第1項
【数23】
Figure 2004297280
の演算を行い、乗算器53は(19)式の右辺第2項
【数24】
Figure 2004297280
の演算を行う。乗算器54は(19)式の右辺第3項、第4項における
【数25】
Figure 2004297280
の演算を行い、乗算器55は(19)式の右辺第3項、第4項における
【数26】
Figure 2004297280
の演算を行う。加減算器56〜58は(19)式の右辺第3項のln coshの[]内の演算を行い、加減算器56〜57,59は(19)式の右辺第4項のln coshの[]内の演算を行う。なお、
【数27】
Figure 2004297280
である。ln cosh演算部60は、(19)式の右辺第3項の演算を行い、ln cosh演算部61は、(19)式の右辺第4項の演算を行う。加算器62〜64は(19)式右辺の演算を行ってソフト判定値ΔlnPを出力する。判定部65はこのソフト判定値ΔlnPの正負に基づいて受信信号Dの”0”,”1”を判定して出力する。
【0029】
ソフト判定値ΔlnP演算部70も同様にソフト判定値ΔlnPを演算し、該ソフト判定値ΔlnPの正負に基づいて受信信号Dの”0”,”1”を判定して出力する。以上では、ln cosh演算部60,61で(19)式の右辺第3項、第4項の演算を行う例を示したであるが、図3に示す振幅リミッターの特性(伝達関数)を備えた非線形ユニットを設けることにより、ln cosh演算部60,61を省略することができる。なお、図3において、縦軸は、
【数28】
Figure 2004297280
である。
【0030】
以上要約すれば、図2のMA−CDMA用のレシーバは、▲1▼受信MC−CDMA信号を各サブキャリアにおけるCDMA信号に変換するFFTプロセッサ、▲2▼サブキャリアの各受信MC−CDMAシンボルに、チップパターン(コードパターン)と各サブキャリアに関連するチャネル推定値とを結合した信号((4)式参照)を乗算する4つの乗算器、▲3▼振幅リミッター特性に応じた伝達関数を備えた非線形ユニット、▲4▼閾値に基づいて送信データについて判定を行う判定部、▲5▼前記逆拡散信号の2つの第1加算部、▲6▼一方の第1加算部からの出力信号と他ユーザデータの軟判定対象値との加算を行い、加算結果を前記非線形ユニットに入力する第2加算部、▲7▼該非線形ユニットの出力信号と前記他方の第1加算部からの出力信号を加算して軟判定対象値を出力する手段を備えている。
【0031】
本発明の受信データの復調アルゴリズムはターボ符号のターボデコーダに類似している。ターボデコーダにおいて、各デコーダは情報を他のデコーダに渡し、そして、他のデコーダにより導き出された情報を用いて順番に推定された事後確率を精練する。同様に、本発明のアルゴリズムにおいても、非線形処理後に導出される第1ユーザデータの軟判定対象値が、第2ユーザデータの推定事後確率を精練するために使用され、非線形処理後に導出される第2ユーザデータの軟判定対象値が、第1ユーザデータの推定事後確率を精練するために使用され、BERの改善効果が得られる。
【0032】
(C)ノイズイミュニティとシミューレーション結果
一般的な場合、本発明レシーバは事後確率の推定を改善するために非線形ユニットとクロスフィードを採用した。この構成は、BER性能を解析することが非常に難しいことを意味している。それゆえ、非線形信号処理がクラシカルなレシーバより優れていることを証明するためにコンピュータシミューレーションに頼った。図4において特性Aは、本発明レシーバの平均BERパフォーマンスを2Eb/Nの関数として示している。ただし、k=0.5,k=1.0である。また、参考として特性Bは、クラシカルなレシーバでMAIが存在する時のBERパフォーマンスを示す。特性CはMAI(ICI)のない本発明のBER特性である。特性Dは、(21)式の公式を使って計算したマッチトフィルタレシーバのICIが存在しない時のBERシミューレーション結果を表示する。
【数29】
Figure 2004297280
である。
コンピュータシミューレーションにより得られた本発明のBERパフォーマンスと(21)式で計算されたBERパフォーマンスとはかなり良く一致している。又、図4のプロットから明らかなようにMAIが存在しない本発明レシーバのBERは、従来のマッチトフィルタべースレシーバの(21)式で得られたBERと差異がない。尚、後者のBERは図4で”Reference”として示している。
【0033】
図5はk1=1.0に固定し、k0を0〜1,0の範囲で可変した時の本発明レシーバのBER特性AとクラシカルなレシーバのBER特性Bである。ただし、2Eb/N=10dBである。図5より、本発明レシーバは広い範囲にわたって良好なBERパフォーマンスが得られた。しかしながら、BERにおける最大の改善は大きな2Eb/Nで発生する(図4参照)。これは、2Eb/Nが小さいと、入力ノイズがMAI(ICI)を支配し、事後確率の推定を改善するために利用できる信頼性のあるデータが存在しないからである。これに対して、2Eb/Nが大きくなると、MAI(ICI)がノイズを支配するからである。以上のことはkの範囲に対しても同様である。相対的に伝達係数k(k<0.5)を小さくして第1サブチャネル信号のEb/N比を低くすると、推定後に得られたデータは全く信頼性が低い。しかし、第1サブチャネル信号のEb/N比を高くすると、得られたデータの信頼性を高くできる。
【0034】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、一方の受信部は他方の受信部から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データを判定するように構成したから、BER性能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】MC−CDMA送信部の構成図である。
【図2】本発明の判定アルゴリズムを実現するMC−CDMA受信機の構成図である。
【図3】非線形ユニットの特性図である。
【図4】本発明のBERパフォーマンス説明図である。
【図5】k1=1.0に固定し、k0を0〜1,0の範囲で可変した時の本発明レシーバのBER特性である。
【図6】従来のMC−CDMA送信機の構成図である。
【図7】従来のMC−CDMA受信機の構成図である。
【図8】従来のMC−CDMA送信機の第1変形図である。
【図9】従来のMC−CDMA受信機の第1変形図である。
【図10】従来のMC−CDMA送信機の第2変形図である。
【図11】従来のMC−CDMA受信機の第2変形図である。
【符号の説明】
50 ソフト判定値ΔlnP演算部
51 FFT演算部
60,61 ln cosh演算部
65 判定部
70 ソフト判定値ΔlnP演算部

Claims (5)

  1. 複数のサブキャリアを介して少なくとも2ユーザの信号を送受する通信システムにおいて、
    異なるコードで拡散された2ユーザの信号をコード多重し、複数のサブキャリアを用いて送信する送信装置、
    信号を受信し、受信信号を送信側コードで逆拡散し、非線形処理して得られる各ユーザの受信データの軟判定を行う受信部を含む受信装置、
    各受信部における軟判定の対象値を他方の受信部に入力する手段、
    を備え、一方の受信部は他方の受信部から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データを判定する、
    ことを特徴とする通信システム。
  2. 前記各受信部は、
    受信したデータが2値のうち一方である確率と他方である確率との差を前記軟判定対象値として演算する手段、
    他方の受信部から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整する手段、
    該軟判定対象値に基づいて受信データを判定する判定部
    を備えたことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
  3. 前記受信装置は、
    信号を各サブキャリアにおける信号に変換するFFT部、
    FFT部からの出力信号を用いて各ユーザデータを判定する受信部を備え、
    各受信部は、
    各サブキャリアの受信シンボルに、送信側拡散コードと同じコードパターンと各サブキャリアに関連するチャネル推定値とを結合した信号を乗算して逆拡散する4つの乗算器、
    振幅リミッター特性に応じた伝達関数を備えた非線形ユニット、
    閾値に基づいて送信データについて判定を行う判定部、
    前記逆拡散信号の2つの第1加算部、
    一方の第1加算部からの出力信号と他ユーザデータの軟判定対象値との加算を行い、加算結果を前記非線形ユニットに入力する第2加算部、
    該非線形ユニットの出力信号と前記他方の第1加算部からの出力信号を加算して軟判定対象値を出力する手段、
    を備えたことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
  4. 複数のサブキャリアを介して少なくとも2ユーザの信号を送受する通信システムの受信装置において、
    信号をサブキャリア毎の信号に変換するFFT部、
    サブキャリア毎の信号に送信側と同じコードを用いて逆拡散処理、非線形処理を施してユーザデータの判定対象値を発生し、該判定対象値の軟判定を行う受信部、
    各受信部における前記判定対象値を他方の受信部に入力する手段、
    を備え、一方の受信部は他方の受信部から入力された軟判定対象値を用いて、自身の軟判定対象値を調整し、該軟判定対象値に基づいて受信データを判定する、
    ことを特徴とする通信システムの受信装置。
  5. 複数のサブキャリアを介して少なくとも2ユーザの信号を送受する通信システムの受信装置において、
    信号を各サブキャリアにおける信号に変換するFFT部、
    FFT部からの出力信号を用いて各ユーザデータを判定する受信部を備え、
    各受信部は、
    各サブキャリアの受信シンボルに、送信側拡散コードと同じコードパターンと各サブキャリアに関連するチャネル推定値とを結合した信号を乗算して逆拡散する4つの乗算器、
    振幅リミッターの特性に応じた伝達関数を備えた非線形ユニット、
    閾値に基づいて送信データについて判定を行う判定部、
    前記逆拡散信号の2つの第1加算部、
    一方の第1加算部からの出力信号と他ユーザデータの軟判定対象値との加算を行い、加算結果を前記非線形ユニットに入力する第2加算部、
    該非線形ユニットの出力信号と前記他方の第1加算部からの出力信号を加算して軟判定対象値を出力する手段、
    を備えたことを特徴とする通信システムの受信装置。
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