JP2004296472A - 薄肉R−Fe−B系焼結磁石およびその製造方法 - Google Patents
薄肉R−Fe−B系焼結磁石およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004296472A JP2004296472A JP2003082717A JP2003082717A JP2004296472A JP 2004296472 A JP2004296472 A JP 2004296472A JP 2003082717 A JP2003082717 A JP 2003082717A JP 2003082717 A JP2003082717 A JP 2003082717A JP 2004296472 A JP2004296472 A JP 2004296472A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- thin
- sintered magnet
- less
- mass
- oxygen
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Powder Metallurgy (AREA)
- Hard Magnetic Materials (AREA)
- Manufacturing Cores, Coils, And Magnets (AREA)
Abstract
【課題】押出成形により成形工程・加工工程のコストを削減しつつ、バインダ含有の炭素と酸素、さらには脱脂・焼結炉中の炭素と酸素との反応を抑制し、磁気特性の劣化を抑制するとともに高い寸法精度で製造した小型、薄肉、無加工のモータ、アクチュエータ用途に有用な焼結磁石を製造する。
【解決手段】薄肉R−Fe−B系焼結磁石(Rは1種又は2種以上のYを含む希土類元素)であって、前記薄肉R−Fe−B系焼結磁石は焼結磁石中のR量が32.5質量%以上37.5質量%以下であるとともに、肉厚1mm以下の薄板状であり、かつ含有酸素量が1.00質量%以下、かつ炭素量が0.10質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】薄肉R−Fe−B系焼結磁石(Rは1種又は2種以上のYを含む希土類元素)であって、前記薄肉R−Fe−B系焼結磁石は焼結磁石中のR量が32.5質量%以上37.5質量%以下であるとともに、肉厚1mm以下の薄板状であり、かつ含有酸素量が1.00質量%以下、かつ炭素量が0.10質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出成形により製造したR(希土類)−鉄−ボロン系の焼結型の希土類焼結磁石に係わるものであり、R−Fe−B系磁石粉末と熱可塑性バインダを混練、押出成形し、脱脂したのち焼結することで、R−Fe−B系磁石粉末とバインダ含有炭素、酸素との反応を抑制し、磁気特性の劣化を抑制するとともに高い寸法精度で製造した小型、薄肉、無加工のモータ、アクチュエータ用途に有用な焼結磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年希土類−鉄−ボロン系永久磁石(以下R−Fe−B焼結磁石と記載する。)は各種モータ、アクチュエータ、センサーなどの磁気回路を構成する材料として幅広い産業分野で利用されている。特に本系磁石の高いエネルギー積に着目し環境保全、省エネルギーの観点から各種分野の小型軽量化の際、重要な役割を果たしてきた。さらに今日、情報通信分野では小型軽量化が進み、磁石にも小型、薄肉化の要求が多くなってきている。
【0003】
プレス成形され、焼結によって製造されるNd−Fe−B系焼結磁石は、ボンド磁石と異なりバインダを含まず焼結による高密度化によって高い磁気特性が得られる。しかしプレス成形では金型キャビティ中に常に一定量の磁粉を供給しないと厚さがばらつき、焼結後に加工を施さないと一般的に要求される寸法公差内の磁石を大量生産で供給することは不可能である。加工コストは製造工程全体の中でも格別に大きなものであり、得に小型、薄物では無加工品でないと顧客要求を満足する価格製品とすることは困難である。
【0004】
プレス成形の他にも、特開平9−283358号公報に開示されるように磁石粉末と水溶性バインダまたは熱可塑性バインダを混ぜ、射出成形および押出成形する製造方法や、または特開平7−130516号公報に開示されるように磁石粉末、水溶性のポリマーおよび水を混ぜ、射出成形して、脱水処理、脱脂し焼結する製造方法が提案されている。しかしながら1mm以内の均一な肉厚を持った薄肉磁石を無加工で大量生産することは今だ検討されておらず、当然ながら実施にも至っていない。
【0005】
本発明者らがこの小型、薄肉、無加工の焼結磁石に挑んだ結果、水溶性のバインダを用いた場合では成形体強度、保形性に問題があるため、焼結体の寸法精度が出しにくいことがわかった。また、熱可塑性バインダを用いた場合では希土類元素が炭素、酸素と反応しやすく、焼結体の炭素濃度と酸素濃度が高くなり、R2Fe14B主相の体積比率を低下させるために飽和磁化や残留磁束密度(Br)を低下させ、Rリッチ相が低減し保磁力(Hcj)を低下させる。
【0006】
また薄肉品では表面の炭素濃度、酸素濃度が高くなり、反り、収縮率差などを生じ、寸法精度が出しにくい。スプレー造粒法は圧縮成形のため形状、肉厚を薄くするのに限界がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−283538号公報 (第2頁右欄41行目〜第3頁左欄7行目)
【特許文献2】
特開平7−130516号公報 (第7頁左欄25行目〜右欄16行目)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明の課題は上記問題を解決し、押出成形により成形工程・加工工程のコストを削減しつつ、バインダ含有の炭素と酸素、さらには脱脂・焼結炉中の炭素と酸素との反応を抑制し、磁気特性の劣化を抑制するとともに高い寸法精度で製造した小型、薄肉、無加工のモータ、アクチュエータ用途に有用な焼結磁石を製造することにある。
【0009】
【課題を解決する手段】
本発明においては押出成形の際に磁石粉末と混合するバインダとして熱可塑性バインダを選択し寸法精度の向上を計るだけでなく、所定の圧力でBN板やZrO2板等の平板により成形体を圧接することが特徴である。成形体に板を圧接するのは、第1の目的として薄物で表面積の大きい成形体を炉中雰囲気中の炭素・酸素との反応から抑制ためであり、また、第2の目的としてに脱脂・焼結中に不可避的に起こる成形体の焼結反りを抑制するためである。
【0010】
つまり本発明は、焼結体炭素濃度、酸素濃度および表面の炭素濃度、酸素濃度を低減し、薄肉の焼結磁石を高い寸法精度で得るための検討をおこなった結果、R−Fe−B系金属間化合物を含む合金粉末(Rは1種又は2種以上のYを含む希土類元素)に熱可塑性バインダを加え、不活性雰囲気中で混練した後、押出成形により薄板状の成形体を作製し、前記成形体の少なくとも一面を平板で圧接させ、脱バインダ処理し、焼結して肉厚1mm以下の焼結品とすることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に用いる平板はBN板又はZrO2板であることが好ましい。例えばAl2O3板やMo板では平板中の酸素が成形体中に入りこんで磁気特性を悪化させたり、熱膨張率の違いから焼結中に焼結割れが起きるためである。
また、平板が成形体と接触する面の表面粗度Raは20μm以下であることが好ましい。20μm以上であると凹凸による成形体との摩擦係数が実質的に高くなり、焼結中の熱膨張率の差による成形体割れの頻度が顕著になる。ここで表面粗度Raとは粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さLで割った値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。
【0012】
成形体の少なくとも一面を5.88Pa(0.06gf/cm2)以上、127.4Pa(1.3gf/cm2)以下の圧力で平板を圧接させることで焼結割れなく、かつ焼結反りを抑制した本発明品が得られる。5.88Pa(0.06gf/cm2)未満の圧力であると成形体の焼結反りを抑えることができず、求められる寸法公差内に薄肉形状の両平面を収めることができない。また、127.4Pa(1.3gf/cm2)超であると垂直摩擦抗力が高すぎて成形体と平板との摩擦力があがり、熱膨張率の差による割れが抑制できない。好ましくは9.8Pa(0.1gf/cm2)以上98Pa(1.0gf/cm2)以下である。
【0013】
脱バインダ処理および焼結の工程において、成形体のそばに酸素吸収剤を置きながら処理し、成形体中へ炭素や酸素が混入することを抑制させることが好ましい。炭素・酸素吸収剤は、例えばNd粉末、CaH2粉末、Zr粉末、Ti粉末、Y粉末など、炉中の炭素や酸素を吸蔵するものであれば適宜使用可能である。
【0014】
前記合金粉末はRが32.5質量%以上37.5質量%以下であり、かつ前記熱可塑性バインダは熱可塑性樹脂、可塑剤、滑剤のなかからコンパウンド量(合金粉末とバインダとの総和量)に対して含有酸素量が0.50質量%以下になるように任意に選択した数種類を混練したものが好ましい。合金粉末中の希土類量が32.5質量%未満であるとRと酸素、炭素が反応して有効なRが枯渇し保磁力が低下する。また、37.5質量%以上であると有効な残留磁束密度が得られない。さらに、コンパウンド量(合金粉末とバインダとの総和量)に対して含有酸素量が0.50質量%以上であると、本発明のように平板で成形体を覆っても酸素量を低減することは困難であり、やはり有用な磁気特性を得ることは難しい。
【0015】
脱バインダ処理は水素雰囲気中で行うことが好ましい。炭素については脱バインダ時に水素雰囲気で加熱することによって低減する。炭素および水素を主成分とするバインダは水素中で加熱することによってクラッキングにより分子量が低下し、脱バインダがより完全に行える。クラッキングとは水素の存在下で加熱することによりバインダ分子量が低下することを意味する。焼結はAr中または真空中で行うことで成形体中への酸素混入を抑制することができる。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、アクタチックポリプロピレン(APP)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、アモルファスポリオレフィン(APO)、ナフタレン、ポレスチロール (GPPS、HIPS)、ポリカーボネート (PC)、アクリル(PMMA)、ポリアセチル(PC)、アクリル(POM)、ポリアセチル(PC)、塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)など適宜使用可能である。
【0017】
本発明による製造方法により、肉厚1mm以下の薄板状焼結後無加工品、かつ平面度公差が100μm以内、70μm以内、さらには50μm以内である薄肉R−Fe−B系焼結磁石を製造可能である。また、ある程度の反りは抑制ができないため、10μm以上の反りが発生する。機械加工でこの面を平坦にしたものは10μm未満となるが、機械加工を施すとコストが高くなるため好ましくない。この薄肉R−Fe−B系焼結磁石は、焼結磁石中のR量が32.5質量%以上37.5質量%以下であるとともに、含有酸素量が1.0質量%以下、かつ炭素量が0.10質量%以下であることが特徴である。この不純物の低減により本発明の薄肉R−Fe−B系焼結磁石は、密度が7450kg/m3以上かつ最大エネルギー積(BH)maxが160kJ/m3以上であるという薄肉・無加工品としては従来全く達成できなかった高性能のものが得られている。
【0018】
本発明に用いる合金粉末について記載する。単に%と記してあるのは質量%を意味するものとする。
本発明に用いる合金粉末はR2Fe14B金属間化合物(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種であり、TはFe又はFe及びCoである)を主相とするものであり、主要成分のR、T及びBの総計を100%として、R:32.5〜37.5%、B:0.5〜2%、残部Feからなる組成が選択される。
Rとして(Nd、Dy)、(Pr、Dy)、又は(Nd、Pr、Dy)の組合せが実用性が高い。又R量は32.5〜37.5%が好ましい。 Dyの一部をTbで置換しても良い。B量は0.5〜2%が好ましく、0.8〜1.2%がより好ましい。B量が0.5%未満では実用に耐えるiHcを得られず、2%超ではBr、(BH)maxが大きく低下する。Bの一部がCで置換可能な事は公知であり、本発明にも適用可能である。
表面磁束密度や耐食性を向上するために、Nb、Al、Co、Ga及びCuの群から選択される少なくとも1種の元素を適量含有することが好ましい。
Nbの含有量は0.1〜2%が好ましい。Nbの含有により焼結過程でNbのほう化物が生成し、結晶粒の異常粒成長が抑制できる。Nb含有量が0.1%未満では添加効果が認められず、2%超ではNbのほう化物の生成量が多くなりBrの低下が顕著になる。
Alの含有量は0.02〜2%が好ましい。Al含有量が0.02%未満ではHcjや耐食性の向上効果を得られず、2%超ではBr、(BH)maxが顕著に低下する。
Co含有量は0.3〜5%が好ましい。Co含有量が0.3%未満ではキュリー点や耐食性を向上する効果が得られず、5%超ではBr、Hcjが共に大きく低下する。
Ga含有量は0.01〜0.5%が好ましい。Ga含有量が0.01%未満ではHcjの向上効果を得られず、0.5%超ではBr、(BH)maxの低下が顕著になる。
Cu含有量は0.01〜1%が好ましい。Cu含有量が0.01%未満では耐食性やHcjを向上する効果を得られず、1%超ではBrの低下が顕著になる。
Cu及びCoが前記特定量範囲で共に含有されるとき、第2次熱処理の許容温度幅が広がる効果を得られ好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例をもって具体的に説明するが、本発明の内容はこれによって限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
重量百分率でNd32.5wt%、Dy3.0wt%、B1.05wt%、残部実質的にFeからなる合金を高周波溶解によって溶解し、ストリップキャスト法により粗粉砕粉を作製した。この粗粉砕粉を水素吸蔵・脱水素処理を行った後、ランデムミルにて500μm以下の粗粉とした。この粗粉に対してパラフィンワックスを0.05〜0.10wt%添加・混合後、ジェットミルにより微粉砕した。ジェットミルの粉砕媒体は窒素ガスで、ガス圧は0.69Mpa(7kgf/cm2)とした。得られた合金粉末の平均粒径は4.20μmである。合金粉末93wt%と熱可塑性バインダとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)2.0wt%、ポリエチレン(PE)1.5wt%、パラフィンワックス(PW)3.5wt%を混練し、押出成形機で磁場中成形を行った。押出成形による予備成形体は厚さ0.5mm、幅21.0mmの薄板状である。この予備成形体を外径10.0mm、内径3.5mmのドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが10μm、厚さが2.0mmのBN板で挟み、炉中に設置した。BN板が成形体にかける圧力はBN板の自重によるものであり圧力は51.0Pa(0.52gf/cm2)である。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
焼結した本発明の薄物R−Fe−B系焼結磁石を図1に示す位置で表面の断面曲線を測定した。図2にその結果を示す。また、磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
(参考例1)
実施例1と同様にして重量百分率でNd35.0wt%、Dy3.0wt%、B1.05wt%、残部実質的にFeからなる合金にて薄肉リング形状焼結体を作製した。磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。R量が多いため残留磁束密度が低下し有効な磁気特性が得られない。
【0023】
(比較例1)
実施例1と同様にして重量百分率でNd29.0wt%、Dy3.0wt%、B1.05wt%、残部実質的にFeからなる合金にて薄肉リング形状焼結体を作製した。磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。R量が少ないため有効なR量が低減し有効な磁気特性を得られない。
【0024】
(比較例2)
実施例1と同様にして薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を平板に挟むことなく炉中に設置した。成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
この比較用の試料を実施例1と同様に表面の断面曲線を測定した。図3にその結果を示す。また、磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。平板を用いないで脱バインダ処理・焼結を行うと成形体全体に反りが発生し、平面度公差が100μm以内に納まらないことが解かる。また、焼結体中の酸素量、炭素量も増大しており有用な磁気特性も得られていないことが明らかである。
【0025】
(比較例3)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが10μm、厚さが5.0mmのBN板で挟み、炉中に設置した。BN板が成形体にかける圧力はBN板の自重によるものであり圧力は131.3Pa(1.34gf/cm2)である。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。焼結炉から焼結体を取り出すと比較用試料10個中、4個が割れており、残りの6個も真円度の公差が150〜300μmがあり、歩留まりが悪く実用に耐えない製造条件であることが解った。
【0026】
(比較例4)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を厚さが0.2mmのBN板に挟み、炉中に設置した。このBN板が成形体にかける圧力は自重によるものであり、圧力は4.9Pa(0.05gf/cm2)であった。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
この比較用の試料を実施例1と同様に表面の断面曲線を測定した。結果を図4に示す。また、平面度公差、磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。平板が成形体に与える圧力が4.9Pa(0.05gf/cm2)以内であると成形体の焼結による反りを抑制することにならず、平面度公差が100μm以内に納まらないことが解る。
【0027】
(比較例6)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが30μm、厚さが2.0mmのBN板で挟み、炉中に設置した。BN板が成形体にかける圧力はBN板の自重によるものである。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。焼結炉から焼結体を取り出すと比較用試料10個中、8個が割れており、残りの2個も真円度の公差が150〜300μmがあり、歩留まりが悪く実用に耐えない製造条件であることが解った。
【0028】
(実施例2)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが9μm、厚さが2.0mmのZrO2板で挟み、炉中に設置した。ZrO2板が成形体にかける圧力はZrO2板の自重によるものである。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。
【0029】
(参考例2)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが16μm、厚さが2.0mmのAl2O3板で挟み、炉中に設置した。Al2O3板が成形体にかける圧力はAl2O3板の自重によるものである。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。Al2O3含有酸素が焼結中に反応して焼結体中の酸素量が増加し、有効な特性が得られなかった.
【0030】
(参考例3)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが3μm、厚さが0.5mmのMo板で挟み、炉中に設置した。Mo板が成形体にかける圧力はMo板の自重によるものであり圧力は69.9Pa(0.713gf/cm2)である。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。焼結炉から焼結体を取り出すと比較用試料10個中、10個が割れており、歩留まりが悪く実用に耐えない製造条件であることが解った。
【0031】
(比較例7)
実施例1と同様に合金粉末93wt%と表2に示すバインダ配合にて薄肉リング形状の焼結体を作製した。内部酸素、炭素濃度を表1に示す。バインダ含有酸素量はコンパウンド量に対するバインダ含有酸素量を示す。コンパウンド量に対するバインダ含有酸素量が多いため焼結体中の酸素量も多くなり有効な磁気特性を得ることはできない。
【0032】
【表2】
【0033】
(実施例3)
実施例1と同様な方法で酸素吸着剤をCaH2、Zr、Ti、Y粉末としてその影響を調べた。磁気特性と焼結体炭素濃度、酸素濃度を表3に示す。酸素吸着剤を使用していない比較例8では焼結体中の酸素量が1wt%を遥かに超えており、磁気特性も満足いくものが得られていない。また、使用した酸素吸着材の中ではNd粉末が最もよい結果を示した。
【0034】
【表3】
【0035】
【発明の効果】
本発明のプロセスを適用することで、無加工でも寸法精度が良好で顧客の満足する焼結後無加工の押出成形による薄肉磁石を提供することができた。小型、薄肉、無加工のモータ、アクチュエータ用途にも有用であり、アセンブリとして問題なく組みこめ、安価な駆動構造品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面粗度の測定位置を示す模式図である。
【図2】本実施例での表面粗度を示す図である。
【図3】比較例での表面粗度を示す図である。
【図4】比較例での表面粗度を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、押出成形により製造したR(希土類)−鉄−ボロン系の焼結型の希土類焼結磁石に係わるものであり、R−Fe−B系磁石粉末と熱可塑性バインダを混練、押出成形し、脱脂したのち焼結することで、R−Fe−B系磁石粉末とバインダ含有炭素、酸素との反応を抑制し、磁気特性の劣化を抑制するとともに高い寸法精度で製造した小型、薄肉、無加工のモータ、アクチュエータ用途に有用な焼結磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年希土類−鉄−ボロン系永久磁石(以下R−Fe−B焼結磁石と記載する。)は各種モータ、アクチュエータ、センサーなどの磁気回路を構成する材料として幅広い産業分野で利用されている。特に本系磁石の高いエネルギー積に着目し環境保全、省エネルギーの観点から各種分野の小型軽量化の際、重要な役割を果たしてきた。さらに今日、情報通信分野では小型軽量化が進み、磁石にも小型、薄肉化の要求が多くなってきている。
【0003】
プレス成形され、焼結によって製造されるNd−Fe−B系焼結磁石は、ボンド磁石と異なりバインダを含まず焼結による高密度化によって高い磁気特性が得られる。しかしプレス成形では金型キャビティ中に常に一定量の磁粉を供給しないと厚さがばらつき、焼結後に加工を施さないと一般的に要求される寸法公差内の磁石を大量生産で供給することは不可能である。加工コストは製造工程全体の中でも格別に大きなものであり、得に小型、薄物では無加工品でないと顧客要求を満足する価格製品とすることは困難である。
【0004】
プレス成形の他にも、特開平9−283358号公報に開示されるように磁石粉末と水溶性バインダまたは熱可塑性バインダを混ぜ、射出成形および押出成形する製造方法や、または特開平7−130516号公報に開示されるように磁石粉末、水溶性のポリマーおよび水を混ぜ、射出成形して、脱水処理、脱脂し焼結する製造方法が提案されている。しかしながら1mm以内の均一な肉厚を持った薄肉磁石を無加工で大量生産することは今だ検討されておらず、当然ながら実施にも至っていない。
【0005】
本発明者らがこの小型、薄肉、無加工の焼結磁石に挑んだ結果、水溶性のバインダを用いた場合では成形体強度、保形性に問題があるため、焼結体の寸法精度が出しにくいことがわかった。また、熱可塑性バインダを用いた場合では希土類元素が炭素、酸素と反応しやすく、焼結体の炭素濃度と酸素濃度が高くなり、R2Fe14B主相の体積比率を低下させるために飽和磁化や残留磁束密度(Br)を低下させ、Rリッチ相が低減し保磁力(Hcj)を低下させる。
【0006】
また薄肉品では表面の炭素濃度、酸素濃度が高くなり、反り、収縮率差などを生じ、寸法精度が出しにくい。スプレー造粒法は圧縮成形のため形状、肉厚を薄くするのに限界がある。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−283538号公報 (第2頁右欄41行目〜第3頁左欄7行目)
【特許文献2】
特開平7−130516号公報 (第7頁左欄25行目〜右欄16行目)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明の課題は上記問題を解決し、押出成形により成形工程・加工工程のコストを削減しつつ、バインダ含有の炭素と酸素、さらには脱脂・焼結炉中の炭素と酸素との反応を抑制し、磁気特性の劣化を抑制するとともに高い寸法精度で製造した小型、薄肉、無加工のモータ、アクチュエータ用途に有用な焼結磁石を製造することにある。
【0009】
【課題を解決する手段】
本発明においては押出成形の際に磁石粉末と混合するバインダとして熱可塑性バインダを選択し寸法精度の向上を計るだけでなく、所定の圧力でBN板やZrO2板等の平板により成形体を圧接することが特徴である。成形体に板を圧接するのは、第1の目的として薄物で表面積の大きい成形体を炉中雰囲気中の炭素・酸素との反応から抑制ためであり、また、第2の目的としてに脱脂・焼結中に不可避的に起こる成形体の焼結反りを抑制するためである。
【0010】
つまり本発明は、焼結体炭素濃度、酸素濃度および表面の炭素濃度、酸素濃度を低減し、薄肉の焼結磁石を高い寸法精度で得るための検討をおこなった結果、R−Fe−B系金属間化合物を含む合金粉末(Rは1種又は2種以上のYを含む希土類元素)に熱可塑性バインダを加え、不活性雰囲気中で混練した後、押出成形により薄板状の成形体を作製し、前記成形体の少なくとも一面を平板で圧接させ、脱バインダ処理し、焼結して肉厚1mm以下の焼結品とすることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に用いる平板はBN板又はZrO2板であることが好ましい。例えばAl2O3板やMo板では平板中の酸素が成形体中に入りこんで磁気特性を悪化させたり、熱膨張率の違いから焼結中に焼結割れが起きるためである。
また、平板が成形体と接触する面の表面粗度Raは20μm以下であることが好ましい。20μm以上であると凹凸による成形体との摩擦係数が実質的に高くなり、焼結中の熱膨張率の差による成形体割れの頻度が顕著になる。ここで表面粗度Raとは粗さ曲線を中心線から折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を長さLで割った値をマイクロメートル(μm)で表わしたものである。
【0012】
成形体の少なくとも一面を5.88Pa(0.06gf/cm2)以上、127.4Pa(1.3gf/cm2)以下の圧力で平板を圧接させることで焼結割れなく、かつ焼結反りを抑制した本発明品が得られる。5.88Pa(0.06gf/cm2)未満の圧力であると成形体の焼結反りを抑えることができず、求められる寸法公差内に薄肉形状の両平面を収めることができない。また、127.4Pa(1.3gf/cm2)超であると垂直摩擦抗力が高すぎて成形体と平板との摩擦力があがり、熱膨張率の差による割れが抑制できない。好ましくは9.8Pa(0.1gf/cm2)以上98Pa(1.0gf/cm2)以下である。
【0013】
脱バインダ処理および焼結の工程において、成形体のそばに酸素吸収剤を置きながら処理し、成形体中へ炭素や酸素が混入することを抑制させることが好ましい。炭素・酸素吸収剤は、例えばNd粉末、CaH2粉末、Zr粉末、Ti粉末、Y粉末など、炉中の炭素や酸素を吸蔵するものであれば適宜使用可能である。
【0014】
前記合金粉末はRが32.5質量%以上37.5質量%以下であり、かつ前記熱可塑性バインダは熱可塑性樹脂、可塑剤、滑剤のなかからコンパウンド量(合金粉末とバインダとの総和量)に対して含有酸素量が0.50質量%以下になるように任意に選択した数種類を混練したものが好ましい。合金粉末中の希土類量が32.5質量%未満であるとRと酸素、炭素が反応して有効なRが枯渇し保磁力が低下する。また、37.5質量%以上であると有効な残留磁束密度が得られない。さらに、コンパウンド量(合金粉末とバインダとの総和量)に対して含有酸素量が0.50質量%以上であると、本発明のように平板で成形体を覆っても酸素量を低減することは困難であり、やはり有用な磁気特性を得ることは難しい。
【0015】
脱バインダ処理は水素雰囲気中で行うことが好ましい。炭素については脱バインダ時に水素雰囲気で加熱することによって低減する。炭素および水素を主成分とするバインダは水素中で加熱することによってクラッキングにより分子量が低下し、脱バインダがより完全に行える。クラッキングとは水素の存在下で加熱することによりバインダ分子量が低下することを意味する。焼結はAr中または真空中で行うことで成形体中への酸素混入を抑制することができる。
【0016】
熱可塑性樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、アクタチックポリプロピレン(APP)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、アモルファスポリオレフィン(APO)、ナフタレン、ポレスチロール (GPPS、HIPS)、ポリカーボネート (PC)、アクリル(PMMA)、ポリアセチル(PC)、アクリル(POM)、ポリアセチル(PC)、塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)など適宜使用可能である。
【0017】
本発明による製造方法により、肉厚1mm以下の薄板状焼結後無加工品、かつ平面度公差が100μm以内、70μm以内、さらには50μm以内である薄肉R−Fe−B系焼結磁石を製造可能である。また、ある程度の反りは抑制ができないため、10μm以上の反りが発生する。機械加工でこの面を平坦にしたものは10μm未満となるが、機械加工を施すとコストが高くなるため好ましくない。この薄肉R−Fe−B系焼結磁石は、焼結磁石中のR量が32.5質量%以上37.5質量%以下であるとともに、含有酸素量が1.0質量%以下、かつ炭素量が0.10質量%以下であることが特徴である。この不純物の低減により本発明の薄肉R−Fe−B系焼結磁石は、密度が7450kg/m3以上かつ最大エネルギー積(BH)maxが160kJ/m3以上であるという薄肉・無加工品としては従来全く達成できなかった高性能のものが得られている。
【0018】
本発明に用いる合金粉末について記載する。単に%と記してあるのは質量%を意味するものとする。
本発明に用いる合金粉末はR2Fe14B金属間化合物(RはYを含む希土類元素の少なくとも1種であり、TはFe又はFe及びCoである)を主相とするものであり、主要成分のR、T及びBの総計を100%として、R:32.5〜37.5%、B:0.5〜2%、残部Feからなる組成が選択される。
Rとして(Nd、Dy)、(Pr、Dy)、又は(Nd、Pr、Dy)の組合せが実用性が高い。又R量は32.5〜37.5%が好ましい。 Dyの一部をTbで置換しても良い。B量は0.5〜2%が好ましく、0.8〜1.2%がより好ましい。B量が0.5%未満では実用に耐えるiHcを得られず、2%超ではBr、(BH)maxが大きく低下する。Bの一部がCで置換可能な事は公知であり、本発明にも適用可能である。
表面磁束密度や耐食性を向上するために、Nb、Al、Co、Ga及びCuの群から選択される少なくとも1種の元素を適量含有することが好ましい。
Nbの含有量は0.1〜2%が好ましい。Nbの含有により焼結過程でNbのほう化物が生成し、結晶粒の異常粒成長が抑制できる。Nb含有量が0.1%未満では添加効果が認められず、2%超ではNbのほう化物の生成量が多くなりBrの低下が顕著になる。
Alの含有量は0.02〜2%が好ましい。Al含有量が0.02%未満ではHcjや耐食性の向上効果を得られず、2%超ではBr、(BH)maxが顕著に低下する。
Co含有量は0.3〜5%が好ましい。Co含有量が0.3%未満ではキュリー点や耐食性を向上する効果が得られず、5%超ではBr、Hcjが共に大きく低下する。
Ga含有量は0.01〜0.5%が好ましい。Ga含有量が0.01%未満ではHcjの向上効果を得られず、0.5%超ではBr、(BH)maxの低下が顕著になる。
Cu含有量は0.01〜1%が好ましい。Cu含有量が0.01%未満では耐食性やHcjを向上する効果を得られず、1%超ではBrの低下が顕著になる。
Cu及びCoが前記特定量範囲で共に含有されるとき、第2次熱処理の許容温度幅が広がる効果を得られ好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例をもって具体的に説明するが、本発明の内容はこれによって限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
重量百分率でNd32.5wt%、Dy3.0wt%、B1.05wt%、残部実質的にFeからなる合金を高周波溶解によって溶解し、ストリップキャスト法により粗粉砕粉を作製した。この粗粉砕粉を水素吸蔵・脱水素処理を行った後、ランデムミルにて500μm以下の粗粉とした。この粗粉に対してパラフィンワックスを0.05〜0.10wt%添加・混合後、ジェットミルにより微粉砕した。ジェットミルの粉砕媒体は窒素ガスで、ガス圧は0.69Mpa(7kgf/cm2)とした。得られた合金粉末の平均粒径は4.20μmである。合金粉末93wt%と熱可塑性バインダとしてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)2.0wt%、ポリエチレン(PE)1.5wt%、パラフィンワックス(PW)3.5wt%を混練し、押出成形機で磁場中成形を行った。押出成形による予備成形体は厚さ0.5mm、幅21.0mmの薄板状である。この予備成形体を外径10.0mm、内径3.5mmのドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが10μm、厚さが2.0mmのBN板で挟み、炉中に設置した。BN板が成形体にかける圧力はBN板の自重によるものであり圧力は51.0Pa(0.52gf/cm2)である。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
焼結した本発明の薄物R−Fe−B系焼結磁石を図1に示す位置で表面の断面曲線を測定した。図2にその結果を示す。また、磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
(参考例1)
実施例1と同様にして重量百分率でNd35.0wt%、Dy3.0wt%、B1.05wt%、残部実質的にFeからなる合金にて薄肉リング形状焼結体を作製した。磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。R量が多いため残留磁束密度が低下し有効な磁気特性が得られない。
【0023】
(比較例1)
実施例1と同様にして重量百分率でNd29.0wt%、Dy3.0wt%、B1.05wt%、残部実質的にFeからなる合金にて薄肉リング形状焼結体を作製した。磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。R量が少ないため有効なR量が低減し有効な磁気特性を得られない。
【0024】
(比較例2)
実施例1と同様にして薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を平板に挟むことなく炉中に設置した。成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
この比較用の試料を実施例1と同様に表面の断面曲線を測定した。図3にその結果を示す。また、磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。平板を用いないで脱バインダ処理・焼結を行うと成形体全体に反りが発生し、平面度公差が100μm以内に納まらないことが解かる。また、焼結体中の酸素量、炭素量も増大しており有用な磁気特性も得られていないことが明らかである。
【0025】
(比較例3)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが10μm、厚さが5.0mmのBN板で挟み、炉中に設置した。BN板が成形体にかける圧力はBN板の自重によるものであり圧力は131.3Pa(1.34gf/cm2)である。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。焼結炉から焼結体を取り出すと比較用試料10個中、4個が割れており、残りの6個も真円度の公差が150〜300μmがあり、歩留まりが悪く実用に耐えない製造条件であることが解った。
【0026】
(比較例4)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を厚さが0.2mmのBN板に挟み、炉中に設置した。このBN板が成形体にかける圧力は自重によるものであり、圧力は4.9Pa(0.05gf/cm2)であった。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
この比較用の試料を実施例1と同様に表面の断面曲線を測定した。結果を図4に示す。また、平面度公差、磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。平板が成形体に与える圧力が4.9Pa(0.05gf/cm2)以内であると成形体の焼結による反りを抑制することにならず、平面度公差が100μm以内に納まらないことが解る。
【0027】
(比較例6)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが30μm、厚さが2.0mmのBN板で挟み、炉中に設置した。BN板が成形体にかける圧力はBN板の自重によるものである。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。焼結炉から焼結体を取り出すと比較用試料10個中、8個が割れており、残りの2個も真円度の公差が150〜300μmがあり、歩留まりが悪く実用に耐えない製造条件であることが解った。
【0028】
(実施例2)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが9μm、厚さが2.0mmのZrO2板で挟み、炉中に設置した。ZrO2板が成形体にかける圧力はZrO2板の自重によるものである。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。
【0029】
(参考例2)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが16μm、厚さが2.0mmのAl2O3板で挟み、炉中に設置した。Al2O3板が成形体にかける圧力はAl2O3板の自重によるものである。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。
磁気特性と内部酸素、炭素濃度を表1に示す。Al2O3含有酸素が焼結中に反応して焼結体中の酸素量が増加し、有効な特性が得られなかった.
【0030】
(参考例3)
実施例1と同様にしてドーナツ型形状に打抜き加工を施し、薄肉リング形状の成形体を作製した。
その後、この薄肉リング形状の成形体を表面粗度Raが3μm、厚さが0.5mmのMo板で挟み、炉中に設置した。Mo板が成形体にかける圧力はMo板の自重によるものであり圧力は69.9Pa(0.713gf/cm2)である。また、その成形体のそばに酸素吸収剤としてNd−Fe−B磁石粉末を50g配置した。その後、この成形体を水素中で昇温速度20℃/h、脱脂温度615℃で脱脂した。焼結はAr中で昇温速度200℃/h、焼結温度1100℃でおこなった。焼結炉から焼結体を取り出すと比較用試料10個中、10個が割れており、歩留まりが悪く実用に耐えない製造条件であることが解った。
【0031】
(比較例7)
実施例1と同様に合金粉末93wt%と表2に示すバインダ配合にて薄肉リング形状の焼結体を作製した。内部酸素、炭素濃度を表1に示す。バインダ含有酸素量はコンパウンド量に対するバインダ含有酸素量を示す。コンパウンド量に対するバインダ含有酸素量が多いため焼結体中の酸素量も多くなり有効な磁気特性を得ることはできない。
【0032】
【表2】
【0033】
(実施例3)
実施例1と同様な方法で酸素吸着剤をCaH2、Zr、Ti、Y粉末としてその影響を調べた。磁気特性と焼結体炭素濃度、酸素濃度を表3に示す。酸素吸着剤を使用していない比較例8では焼結体中の酸素量が1wt%を遥かに超えており、磁気特性も満足いくものが得られていない。また、使用した酸素吸着材の中ではNd粉末が最もよい結果を示した。
【0034】
【表3】
【0035】
【発明の効果】
本発明のプロセスを適用することで、無加工でも寸法精度が良好で顧客の満足する焼結後無加工の押出成形による薄肉磁石を提供することができた。小型、薄肉、無加工のモータ、アクチュエータ用途にも有用であり、アセンブリとして問題なく組みこめ、安価な駆動構造品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面粗度の測定位置を示す模式図である。
【図2】本実施例での表面粗度を示す図である。
【図3】比較例での表面粗度を示す図である。
【図4】比較例での表面粗度を示す図である。
Claims (10)
- 薄肉R−Fe−B系焼結磁石(Rは1種又は2種以上のYを含む希土類元素)であって、前記薄肉R−Fe−B系焼結磁石は焼結磁石中のR量が32.5質量%以上37.5質量%以下であるとともに、肉厚1mm以下の薄板状であり、かつ含有酸素量が1.00質量%以下、かつ炭素量が0.10質量%以下であることを特徴とする薄肉R−Fe−B系焼結磁石。
- 前記薄肉R−Fe−B系焼結磁石は平面度公差が10μm以上100μm以内の無加工品であることを特徴とする請求項1に記載の薄肉R−Fe−B系焼結磁石。
- 前記薄肉R−Fe−B系焼結磁石は、最大エネルギー積(BH)maxが160kJ/m3以上である請求項1または2に記載の薄肉R−Fe−B系焼結磁石。
- R−Fe−B系金属間化合物を含む合金粉末(Rは1種又は2種以上のYを含む希土類元素)に熱可塑性バインダを加え、不活性雰囲気中で混練した後、押出成形により薄板状の成形体を作製し、前記成形体の少なくとも一面を平板で圧接させ、脱バインダ処理し、焼結して肉厚1mm以下の焼結品とすることを特徴とする薄肉R−Fe−B系焼結磁石の製造方法。
- 前記平板を圧接させる圧力は5.88Pa(0.06gf/cm2)以上、127.4Pa(1.3gf/cm2)以下である請求項4に記載の薄肉R−Fe−B系焼結磁石の製造方法。
- 前記平板はBN板又はZrO2板であり、かつ平板が成形体と接触する面の表面粗度Raは20μm以下である請求項4または5に記載の薄肉R−Fe−B系焼結磁石の製造方法。
- 前記脱バインダ処理および焼結を酸素吸収剤と共に行う請求項4〜6のいずれかに記載の薄肉R−Fe−B系焼結磁石の製造方法。
- 前記合金粉末はRが32.5質量%以上37.5質量%以下であり、かつ前記熱可塑性バインダは熱可塑性樹脂、可塑剤、滑剤のなかからコンパウンド量(合金粉末とバインダとの総和量)に対して含有酸素量が0.50質量%以下になるように任意に選択した数種類を混練したものである請求項4〜7のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
- 前記脱バインダ処理は水素雰囲気中で行い、かつ前記焼結はAr中または真空中で行うことを特徴とする請求項4〜8のいずれか記載の希土類焼結磁石の製造方法。
- 前記成形体を作製後、打ち抜き加工またはせん断加工を施し、その後平板で圧接する請求項4〜9のいずれかに記載の希土類焼結磁石の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003082717A JP2004296472A (ja) | 2003-03-25 | 2003-03-25 | 薄肉R−Fe−B系焼結磁石およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003082717A JP2004296472A (ja) | 2003-03-25 | 2003-03-25 | 薄肉R−Fe−B系焼結磁石およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004296472A true JP2004296472A (ja) | 2004-10-21 |
Family
ID=33398397
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003082717A Pending JP2004296472A (ja) | 2003-03-25 | 2003-03-25 | 薄肉R−Fe−B系焼結磁石およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004296472A (ja) |
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007258377A (ja) * | 2006-03-22 | 2007-10-04 | Tdk Corp | 希土類焼結磁石の製造方法 |
JP2012007212A (ja) * | 2010-06-25 | 2012-01-12 | Seiko Epson Corp | 粉末冶金用バインダー組成物、粉末冶金用コンパウンドおよび焼結体 |
JP2012007223A (ja) * | 2010-06-28 | 2012-01-12 | Seiko Epson Corp | チタン焼結体およびチタン焼結体の製造方法 |
-
2003
- 2003-03-25 JP JP2003082717A patent/JP2004296472A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007258377A (ja) * | 2006-03-22 | 2007-10-04 | Tdk Corp | 希土類焼結磁石の製造方法 |
JP2012007212A (ja) * | 2010-06-25 | 2012-01-12 | Seiko Epson Corp | 粉末冶金用バインダー組成物、粉末冶金用コンパウンドおよび焼結体 |
JP2012007223A (ja) * | 2010-06-28 | 2012-01-12 | Seiko Epson Corp | チタン焼結体およびチタン焼結体の製造方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Cui et al. | Manufacturing processes for permanent magnets: Part I—sintering and casting | |
CN1061162C (zh) | 热压铁-稀土金属永磁体制造方法 | |
WO2013176116A1 (ja) | 永久磁石モータ、永久磁石モータの製造方法及び永久磁石 | |
US9818513B2 (en) | RFeB-based magnet and method for producing RFeB-based magnet | |
WO2017033266A1 (ja) | 磁石粒子およびそれを用いた磁石成形体 | |
CN102365142A (zh) | R-t-b系稀土类永久磁铁用合金材料、r-t-b系稀土类永久磁铁的制造方法和电动机 | |
KR102420691B1 (ko) | 희토류 자석 및 그것을 사용한 리니어 모터 | |
WO2003085684A1 (fr) | Aimant anisotrope lie composite de terres rares, compose pour aimant anisotrope lie composite de terres rares, et procede de production de l'aimant | |
JP2005203555A (ja) | 焼結磁石の製造方法 | |
JP6484994B2 (ja) | Sm−Fe−N系磁石成形体およびその製造方法 | |
JP2001210508A (ja) | アークセグメント磁石、リング磁石及び希土類焼結磁石の製造方法 | |
KR102345075B1 (ko) | 소결 자석 형성용 소결체의 제조 방법 및 소결 자석 형성용 소결체를 사용한 영구 자석의 제조 방법 | |
JP3739266B2 (ja) | 交換スプリング磁石の製造方法 | |
US20100321139A1 (en) | Permanent magnet and method of producing permanent magnet | |
JP2004296472A (ja) | 薄肉R−Fe−B系焼結磁石およびその製造方法 | |
CN1959878B (zh) | 一种纳米晶钕铁硼永磁块体的制备方法 | |
JPH09283358A (ja) | R−Fe−B系焼結磁石の製造方法 | |
JP2008258463A (ja) | 永久磁石材料とそれを用いた永久磁石およびその製造方法 | |
JP2002057015A (ja) | 異方性磁石とその製造方法およびこれを用いたモータ | |
JP2018073873A (ja) | 希土類磁石およびその製造方法 | |
JPS63178505A (ja) | 異方性R−Fe−B−M系永久磁石 | |
JP2015207687A (ja) | 永久磁石及び永久磁石の製造方法 | |
OTT et al. | Manufacturing Processes for Permanent Magnets: Part I—Sintering and Casting | |
JPS63286515A (ja) | 永久磁石の製造方法 | |
JP3338590B2 (ja) | 射出成形法によるR−Fe−B系焼結磁石の製造方法 |