JP2004294934A - 感光性組成物および感光性平版印刷版材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】保存性に優れた高感度な感光性組成物を提供すること。印刷版として紫外線硬化インキを用いて印刷を行う場合においても高い耐刷性を有する感光性平版印刷版を与えること。特に750nm以上の近赤外レーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供すること。
【解決手段】ガラス転移温度が50℃以上であるバインダー樹脂、有機ホウ素塩化合物および25℃に於いて固体もしくは1000mPa・s以上の粘度を有する重合性二重結合を2個以上有する化合物を含み、系内に粘度が1000mPa・s以下である化合物を含有しないことを特徴とする感光性組成物を用いる。
【選択図】 無し。
【解決手段】ガラス転移温度が50℃以上であるバインダー樹脂、有機ホウ素塩化合物および25℃に於いて固体もしくは1000mPa・s以上の粘度を有する重合性二重結合を2個以上有する化合物を含み、系内に粘度が1000mPa・s以下である化合物を含有しないことを特徴とする感光性組成物を用いる。
【選択図】 無し。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性組成物に関し、更にこれを利用した感光性平版印刷版材料に関する。更に詳しくは、レーザーを用いて画像形成可能な感光性組成物および感光性平版印刷版材料に関する。更に、プリント配線基板作成用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成等に好適な感光性組成物に関する。また、特に750nm以上の近赤外光から赤外光の波長範囲にある光に感度を有するネガ型の感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューター上で作成したデジタルデータをもとにフィルム上に出力せずに直接印刷版上に出力するコンピュータートゥープレート(CTP)技術が開発され、出力機として種々のレーザーを搭載した各種プレートセッターとこれらに適合する感光性平版印刷版の開発が盛んに行われている。なかでも750nm以上の近赤外領域に発光する半導体レーザーやYAGレーザーを利用した出力機においては光源の出力が数100mWから数ワットクラスの高出力レーザーが搭載されているため、極めて高いエネルギーでの画像形成が可能となっている。
【0003】
特開2001−290271号(特許文献1)、同2002−278066号(特許文献2)、同2003−043687号(特許文献3)、同2003−29408号(特許文献4)、同2003−26744号公報(特許文献5)等には側鎖にスチレン性二重結合を有するポリマーを感光層に使用することで、オーバー層を設けることなく高感度でかつ耐刷性に優れたCTPに適合する印刷版の例が開示されている。これらの場合には有機ホウ素塩を光重合開始剤として使用することで、感光性組成物として高感度で、印刷版として耐刷性に優れた印刷版を与えることが示されている。
【0004】
しかしながら、感光性組成物として使用する場合において、その保存性に対する要求は年々高まっており、ますます過酷な条件下におかれても感度、現像性等の品質に変化が無いことが求められている。さらに、印刷版として使用する場合に於いては、通常のオフセット印刷に加えて、紫外線硬化インキや減感インキなどの特殊なインキを用いて印刷を行う場合に於いても耐刷性の更なる向上が求められているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−290271号公報(第1〜4頁)
【特許文献2】
特開2002−278066号公報(第1〜4頁)
【特許文献3】
特開2003−043687号公報(第1〜4頁)
【特許文献4】
特開2003−29408号公報(第1〜4頁)
【特許文献5】
特開2003−26744号公報(第1〜4頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、保存性に優れた高感度な感光性組成物を提供することにあり、また印刷版として紫外線硬化インキを用いて印刷を行う場合においても高い耐刷性を有する感光性平版印刷版を与えることを目的とする。特に750nm以上の近赤外レーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、ガラス転移温度が50℃以上であるバインダー樹脂、有機ホウ素塩化合物および25℃に於いて固体もしくは1000mPa・s以上の粘度を有する重合性二重結合を2個以上有する化合物を含み、系内に粘度が1000mPa・s未満の化合物を含有しないことを特徴とするネ感光性組成物を用いることで基本的には達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の骨子は、有機ホウ素塩を感光性材料として使用する場合に於いて、用いられる固相中に於いて、有機ホウ素塩の拡散を防止することで、高感度で且つ長期の比較的高温下での保存に於いても、感度変化の少ない保存性に優れた感光性組成物が得られることを見出したものである。即ち、本発明に用いられるガラス転移温度が50℃以上であるバインダー樹脂である必要性は、保存される温度が通常の場合高くても50℃前後であることから、ガラス転移温度が50℃であるバインダー樹脂を用いることで、感光層はガラス状態に保たれ、従って有機ホウ素塩の系中における拡散が防止され、熱による種々の反応により有機ホウ素塩が分解されることを有効に防止できることを見出したものである。同様の理由で、系内に粘度が1000mPa・s未満の化合物を含有しないことは、こうした比較的低粘度の添加物を系内に含有する場合に於いては、有機ホウ素塩の熱的な拡散が生じ、有機ホウ素塩の熱分解が比較的起こり易くなるため、用いないことが極めて好ましいことを見出したものである。本発明に於いて、塗布の際に用いる粘度が1000mPa・s未満の溶剤は、乾燥により除去され、感光層中に於いて実質的に含まれないことも必要である。
【0009】
本発明は、光照射により重合反応が誘起され、その結果として架橋した皮膜を与える感光性組成物を与えることを目的とするが、そのための基本構成としてバインダー樹脂、高感度光重合開始剤である有機ホウ素塩および架橋重合のために必要とされる分子内に重合性二重結合を2個以上有する化合物を含む。バインダー樹脂に必要とされる物性としてはガラス転移温度が50℃以上であることが必須であり、その化学構造に関しては特に制約は無い。分子内に重合性二重結合を2個以上有する化合物としては、25℃に於いて固体もしくは1000mPa・s以上の粘度を有する化合物であることが必要であり、その重合性二重結合の構造に関しては特に制約は無い。
【0010】
25℃において固体である、分子内に重合性二重結合を2個以上有する化合物の好ましい例を化1に示す。
【0011】
【化1】
【0012】
25℃に於いて1000mPa・s以上の粘度を有する分子内に重合性二重結合を2個以上有する化合物の好ましい例を化2に示す。
【0013】
【化2】
【0014】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記化3で表される。
【0015】
【化3】
【0016】
式中、R11、R12、R13およびR14は各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11、R12、R13およびR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0017】
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびホスホニウム化合物が挙げられる。アルカリ金属イオンまたはオニウム化合物と有機ホウ素アニオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素を添加することで色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。また、カチオン性増感色素の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有する場合は、該増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は更にアルカリ金属もしくはオニウム塩の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを併せて含有するのが好ましい。
【0018】
本発明に係わる好ましい様態の一つとして、有機ホウ素塩とこれを増感する色素を併せて含む感光性組成物であり、この場合の有機ホウ素塩は可視光から赤外光の波長領域に感光性を示さず、増感色素の添加によって初めてこうした波長領域の光に感光性を示すものである。
【0019】
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した化3で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0020】
【化4】
【0021】
【化5】
【0022】
本発明において、有機ホウ素塩と共に用いることでより高感度である感光性組成物を与えるため好ましい構成要素としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0023】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を化6および化7に示す。
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
上述したような光重合開始剤の含有量は、感光性組成物全量に対して、1〜50質量%の範囲で含まれることが好ましく、更には2〜40質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0027】
本発明の感光性組成物は、近赤外〜赤外光、即ち700nm以上、更には750〜1100nm可視光から赤外光の各種光源に対応できるように、これらの波長領域に吸収を有し、前述の光重合開始剤を増感する増感剤を併せて含有する。増感剤としては、各種増感色素が好ましく用いられる。このような増感色素として、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、クマリン、ポリフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、スクアリリウム化合物、ピリリウム化合物が挙げられ、好ましい増感色素の具体例を以下に示す。
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
上記で例示した増感色素の対アニオンを、前述した有機ホウ素アニオンに置換した増感色素も同様に用いることができる。増感色素の含有量は、感光性組成物1m2当たり3〜300mg程度が適当である。好ましくは10〜200mg/m2である。
【0031】
感光性組成物を構成するガラス転移温度が50℃以上であるバインダー樹脂としては、特にアルカリ性現像液に可溶性である樹脂であることが好ましい。そのためにカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む重合体であることが特に好ましい。
【0032】
上記のカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0033】
カルボキシル基を有するモノマーに加えて共重合体としてこれに他のモノマー成分を導入して合成、使用することも好ましく行うことが出来る。こうした場合に共重合体中に組み込むことが出来るモノマーとして、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することが出来る。これらのモノマーの共重合体中に占める割合としては、得られたバインダー樹脂のガラス転移温度が50℃以上である限りに於いて任意の割合で導入することが出来る。
【0034】
上記のようなバインダー樹脂の分子量については好ましい範囲が存在し、質量平均分子量で1000から100万の範囲であることが好ましく、さらに1万から30万の範囲にあることが特に好ましい。
【0035】
上記のようなバインダー樹脂としては、特に側鎖に重合性二重結合を導入した重合体であることが好ましく、この場合に極めて高感度でかつ耐溶剤性に優れた感光性組成物を与えることから特に好ましく用いられる。本発明に係わる好ましい重合体の例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100質量%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
本発明の感光性組成物は、上述した成分以外にも種々の目的で他の成分を添加することも好ましく行われる。特に、二重結合基の熱重合あるいは熱架橋を防止し長期にわたる保存性を向上させる目的で種々の重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。この場合の重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、該重合体100質量部に対して0.1質量部から10質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0040】
感光性組成物を構成する要素として、他に、画像の視認性を高める目的で種々の染料、顔料を添加することや、感光性組成物のブロッキングを防止する目的等で無機物微粒子あるいは有機物微粒子を添加することも好ましく行われる。
【0041】
平版印刷版材料として使用する場合の感光層自体の厚みに関しては、支持体上に0.5ミクロンから10ミクロンの範囲の乾燥厚みで形成することが好ましく、さらに1ミクロンから5ミクロンの範囲であることが耐刷性を大幅に向上させるために極めて好ましい。感光層は上述の3つの要素を混合した溶液を作成し、公知の種々の塗布方式を用いて支持体上に塗布、乾燥される。支持体については、例えばフィルムやポリエチレン被覆紙を使用しても良いが、より好ましい支持体は、研磨され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板である。
【0042】
上記のようにして支持体上に形成された感光層を有する材料を印刷版として使用するためには、これに密着露光あるいはレーザー走査露光を行い、露光された部分が架橋することでアルカリ性現像液に対する溶解性が低下することから、後述するアルカリ性現像液により未露光部を溶出することでパターン形成が行われる。
【0043】
アルカリ性現像液としては、本発明の重合体を溶解する液で有れば特に制限は無いが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアンモニウムハイドロキサイド等のようなアルカリ性化合物を溶解した水性現像液が良好に未露光部を選択的に溶解し、下方の支持体表面を露出出来るため極めて好ましい。さらには、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種アルコール類をアルカリ性現像液中に添加することも好ましく行われる。こうしたアルカリ性現像液を用いて現像処理を行った後に、アラビアゴム等を使用して通常のガム引きが好ましく行われる。
【0044】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
実施例1〜8および比較例1〜5
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に表1に示す重合体および多官能性化合物を使用して、下記の配合処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
重合体(表1) 10質量部
多官能性化合物(表1) 7質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 5質量部
トリハロアルキル置換化合物(T−8) 3質量部
増感色素(S−33) 0.3質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩0.08質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0046】
【表1】
表中、EA−6320;新中村化学工業株式会社製、エポキシアクリレート、粘度4万mPa・s(25℃)。
表中、U−6HA;新中村化学工業株式会社製、ウレタンアクリレート、粘度200万mPa・s以上(25℃)。
表中、U−15HA;新中村化学工業株式会社製、ウレタンアクリレート、粘度10万mPa・s以上(25℃)。
表中、TMPTA;トリメチロールプロパントリアクリレート、粘度95mPa・s(25℃)。
表中、A−200;新中村化学工業株式会社製、オリゴエチレングリコール(n=4)ジアクリレート、粘度22mPa・s(25℃)。
【0047】
【化13】
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
上記で作成した試料を作成直後および45℃に調整した乾燥器内に3ヶ月間保存を行った後に、波長830nmの半導体レーザー(出力1W)を利用し、レーザースポット径10ミクロンに調整し、版面パワー150mJ/cm2になるよう外面ドラム上で1000rpmの回転速度で走査露光を行った。現像は、ケイ酸カリウムを2質量%および水酸化カリウム0.8質量%、ノニオン性界面活性剤2質量%を含有するアルカリ性現像液を使用して、30℃で15秒間現像液に浸漬し、現像を行った後直ちに水洗を行って平版印刷版原版を作成した。いずれの実施例においても塗布試料作成直後における露光および現像においては、原版上の画像は20ミクロン細線が明瞭に再現されていた。比較例4および5においては同様に良好な画像が形成されらが、比較例1〜3においては画像は形成されるものの50ミクロン細線が辛うじて再現出来る程度であり、後述する条件で印刷を行うと画像が簡単に欠落する結果となった。これに対して全ての実施例および比較例4,5で作成した試料は、塗布直後の段階で露光、現像を行い、後述する印刷試験を行った場合にいずれも良好な耐刷性(7〜20万部)および保水性を示した。一方、45℃に調整した乾燥器内に3ヶ月間保存を行った後に露光および現像を行った結果を表2に纏めた。表2に見られるように全ての実施例においては塗布試料作成直後と全く同様の画像が形成されており、感度および現像性に変化は認められなかった。一方、比較例1〜5においては画像は形成されないか部分的にしか形成されず、また現像性についても、非画像部の溶出性が低下していることが確認された。
【0051】
【表2】
【0052】
このものの印刷性能評価を行うため、印刷機はミヤコシビジネスフォーム印刷機を使用し、印刷インキはUVインキBest Cure RNCプロセス紅を使用して、湿し水は市販の湿し水を希釈して使用して印刷を行った。印刷評価項目として耐刷性についてはテスト画像中の微小網点および細線が欠落し始めるまでの刷り枚数を以て評価を行った。また、地汚れの有無(保水性)は印刷物上の地汚れの有無を以て目視判定を行った。結果として表3に示すような良好な結果が得られた。
【0053】
【表3】
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、保存性に優れた高感度な感光性組成物が得られ、また印刷版として紫外線硬化インキを用いて印刷を行う場合においても高い耐刷性を有する感光性平版印刷版が与えられる。特に750nm以上の近赤外レーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版が得られる。
【発明の属する技術分野】
本発明は感光性組成物に関し、更にこれを利用した感光性平版印刷版材料に関する。更に詳しくは、レーザーを用いて画像形成可能な感光性組成物および感光性平版印刷版材料に関する。更に、プリント配線基板作成用レジストや、カラーフィルター、蛍光体パターンの形成等に好適な感光性組成物に関する。また、特に750nm以上の近赤外光から赤外光の波長範囲にある光に感度を有するネガ型の感光性平版印刷版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューター上で作成したデジタルデータをもとにフィルム上に出力せずに直接印刷版上に出力するコンピュータートゥープレート(CTP)技術が開発され、出力機として種々のレーザーを搭載した各種プレートセッターとこれらに適合する感光性平版印刷版の開発が盛んに行われている。なかでも750nm以上の近赤外領域に発光する半導体レーザーやYAGレーザーを利用した出力機においては光源の出力が数100mWから数ワットクラスの高出力レーザーが搭載されているため、極めて高いエネルギーでの画像形成が可能となっている。
【0003】
特開2001−290271号(特許文献1)、同2002−278066号(特許文献2)、同2003−043687号(特許文献3)、同2003−29408号(特許文献4)、同2003−26744号公報(特許文献5)等には側鎖にスチレン性二重結合を有するポリマーを感光層に使用することで、オーバー層を設けることなく高感度でかつ耐刷性に優れたCTPに適合する印刷版の例が開示されている。これらの場合には有機ホウ素塩を光重合開始剤として使用することで、感光性組成物として高感度で、印刷版として耐刷性に優れた印刷版を与えることが示されている。
【0004】
しかしながら、感光性組成物として使用する場合において、その保存性に対する要求は年々高まっており、ますます過酷な条件下におかれても感度、現像性等の品質に変化が無いことが求められている。さらに、印刷版として使用する場合に於いては、通常のオフセット印刷に加えて、紫外線硬化インキや減感インキなどの特殊なインキを用いて印刷を行う場合に於いても耐刷性の更なる向上が求められているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−290271号公報(第1〜4頁)
【特許文献2】
特開2002−278066号公報(第1〜4頁)
【特許文献3】
特開2003−043687号公報(第1〜4頁)
【特許文献4】
特開2003−29408号公報(第1〜4頁)
【特許文献5】
特開2003−26744号公報(第1〜4頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、保存性に優れた高感度な感光性組成物を提供することにあり、また印刷版として紫外線硬化インキを用いて印刷を行う場合においても高い耐刷性を有する感光性平版印刷版を与えることを目的とする。特に750nm以上の近赤外レーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、ガラス転移温度が50℃以上であるバインダー樹脂、有機ホウ素塩化合物および25℃に於いて固体もしくは1000mPa・s以上の粘度を有する重合性二重結合を2個以上有する化合物を含み、系内に粘度が1000mPa・s未満の化合物を含有しないことを特徴とするネ感光性組成物を用いることで基本的には達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の骨子は、有機ホウ素塩を感光性材料として使用する場合に於いて、用いられる固相中に於いて、有機ホウ素塩の拡散を防止することで、高感度で且つ長期の比較的高温下での保存に於いても、感度変化の少ない保存性に優れた感光性組成物が得られることを見出したものである。即ち、本発明に用いられるガラス転移温度が50℃以上であるバインダー樹脂である必要性は、保存される温度が通常の場合高くても50℃前後であることから、ガラス転移温度が50℃であるバインダー樹脂を用いることで、感光層はガラス状態に保たれ、従って有機ホウ素塩の系中における拡散が防止され、熱による種々の反応により有機ホウ素塩が分解されることを有効に防止できることを見出したものである。同様の理由で、系内に粘度が1000mPa・s未満の化合物を含有しないことは、こうした比較的低粘度の添加物を系内に含有する場合に於いては、有機ホウ素塩の熱的な拡散が生じ、有機ホウ素塩の熱分解が比較的起こり易くなるため、用いないことが極めて好ましいことを見出したものである。本発明に於いて、塗布の際に用いる粘度が1000mPa・s未満の溶剤は、乾燥により除去され、感光層中に於いて実質的に含まれないことも必要である。
【0009】
本発明は、光照射により重合反応が誘起され、その結果として架橋した皮膜を与える感光性組成物を与えることを目的とするが、そのための基本構成としてバインダー樹脂、高感度光重合開始剤である有機ホウ素塩および架橋重合のために必要とされる分子内に重合性二重結合を2個以上有する化合物を含む。バインダー樹脂に必要とされる物性としてはガラス転移温度が50℃以上であることが必須であり、その化学構造に関しては特に制約は無い。分子内に重合性二重結合を2個以上有する化合物としては、25℃に於いて固体もしくは1000mPa・s以上の粘度を有する化合物であることが必要であり、その重合性二重結合の構造に関しては特に制約は無い。
【0010】
25℃において固体である、分子内に重合性二重結合を2個以上有する化合物の好ましい例を化1に示す。
【0011】
【化1】
【0012】
25℃に於いて1000mPa・s以上の粘度を有する分子内に重合性二重結合を2個以上有する化合物の好ましい例を化2に示す。
【0013】
【化2】
【0014】
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記化3で表される。
【0015】
【化3】
【0016】
式中、R11、R12、R13およびR14は各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11、R12、R13およびR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
【0017】
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンが同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。オニウム塩としては、アンモニウム、スルホニウム、ヨードニウムおよびホスホニウム化合物が挙げられる。アルカリ金属イオンまたはオニウム化合物と有機ホウ素アニオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素を添加することで色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。また、カチオン性増感色素の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを含有する場合は、該増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は更にアルカリ金属もしくはオニウム塩の対アニオンとして有機ホウ素アニオンを併せて含有するのが好ましい。
【0018】
本発明に係わる好ましい様態の一つとして、有機ホウ素塩とこれを増感する色素を併せて含む感光性組成物であり、この場合の有機ホウ素塩は可視光から赤外光の波長領域に感光性を示さず、増感色素の添加によって初めてこうした波長領域の光に感光性を示すものである。
【0019】
本発明に用いられる有機ホウ素塩としては、先に示した化3で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオンおよびオニウム化合物が好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとのオニウム塩として、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
【0020】
【化4】
【0021】
【化5】
【0022】
本発明において、有機ホウ素塩と共に用いることでより高感度である感光性組成物を与えるため好ましい構成要素としてトリハロアルキル置換化合物が挙げられる。トリハロアルキル置換化合物とは、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体およびオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
【0023】
トリハロアルキル置換した含窒素複素環化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を化6および化7に示す。
【0024】
【化6】
【0025】
【化7】
【0026】
上述したような光重合開始剤の含有量は、感光性組成物全量に対して、1〜50質量%の範囲で含まれることが好ましく、更には2〜40質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0027】
本発明の感光性組成物は、近赤外〜赤外光、即ち700nm以上、更には750〜1100nm可視光から赤外光の各種光源に対応できるように、これらの波長領域に吸収を有し、前述の光重合開始剤を増感する増感剤を併せて含有する。増感剤としては、各種増感色素が好ましく用いられる。このような増感色素として、シアニン、フタロシアニン、メロシアニン、クマリン、ポリフィリン、スピロ化合物、フェロセン、フルオレン、フルギド、イミダゾール、ペリレン、フェナジン、フェノチアジン、ポリエン、アゾ化合物、ジフェニルメタン、トリフェニルメタン、ポリメチンアクリジン、クマリン、ケトクマリン、キナクリドン、インジゴ、スチリル、スクアリリウム化合物、ピリリウム化合物が挙げられ、好ましい増感色素の具体例を以下に示す。
【0028】
【化8】
【0029】
【化9】
【0030】
上記で例示した増感色素の対アニオンを、前述した有機ホウ素アニオンに置換した増感色素も同様に用いることができる。増感色素の含有量は、感光性組成物1m2当たり3〜300mg程度が適当である。好ましくは10〜200mg/m2である。
【0031】
感光性組成物を構成するガラス転移温度が50℃以上であるバインダー樹脂としては、特にアルカリ性現像液に可溶性である樹脂であることが好ましい。そのためにカルボキシル基含有モノマーを共重合成分として含む重合体であることが特に好ましい。
【0032】
上記のカルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0033】
カルボキシル基を有するモノマーに加えて共重合体としてこれに他のモノマー成分を導入して合成、使用することも好ましく行うことが出来る。こうした場合に共重合体中に組み込むことが出来るモノマーとして、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−カルボキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、リン酸基を有するモノマーとしてビニルホスホン酸等、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、或いは、ビニルスルホン酸およびその塩、アリルスルホン酸およびその塩、メタリルスルホン酸およびその塩、スチレンスルホン酸およびその塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびその塩等のスルホン酸基を有するモノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することが出来る。これらのモノマーの共重合体中に占める割合としては、得られたバインダー樹脂のガラス転移温度が50℃以上である限りに於いて任意の割合で導入することが出来る。
【0034】
上記のようなバインダー樹脂の分子量については好ましい範囲が存在し、質量平均分子量で1000から100万の範囲であることが好ましく、さらに1万から30万の範囲にあることが特に好ましい。
【0035】
上記のようなバインダー樹脂としては、特に側鎖に重合性二重結合を導入した重合体であることが好ましく、この場合に極めて高感度でかつ耐溶剤性に優れた感光性組成物を与えることから特に好ましく用いられる。本発明に係わる好ましい重合体の例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100質量%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
本発明の感光性組成物は、上述した成分以外にも種々の目的で他の成分を添加することも好ましく行われる。特に、二重結合基の熱重合あるいは熱架橋を防止し長期にわたる保存性を向上させる目的で種々の重合禁止剤を添加することが好ましく行われる。この場合の重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、該重合体100質量部に対して0.1質量部から10質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0040】
感光性組成物を構成する要素として、他に、画像の視認性を高める目的で種々の染料、顔料を添加することや、感光性組成物のブロッキングを防止する目的等で無機物微粒子あるいは有機物微粒子を添加することも好ましく行われる。
【0041】
平版印刷版材料として使用する場合の感光層自体の厚みに関しては、支持体上に0.5ミクロンから10ミクロンの範囲の乾燥厚みで形成することが好ましく、さらに1ミクロンから5ミクロンの範囲であることが耐刷性を大幅に向上させるために極めて好ましい。感光層は上述の3つの要素を混合した溶液を作成し、公知の種々の塗布方式を用いて支持体上に塗布、乾燥される。支持体については、例えばフィルムやポリエチレン被覆紙を使用しても良いが、より好ましい支持体は、研磨され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板である。
【0042】
上記のようにして支持体上に形成された感光層を有する材料を印刷版として使用するためには、これに密着露光あるいはレーザー走査露光を行い、露光された部分が架橋することでアルカリ性現像液に対する溶解性が低下することから、後述するアルカリ性現像液により未露光部を溶出することでパターン形成が行われる。
【0043】
アルカリ性現像液としては、本発明の重合体を溶解する液で有れば特に制限は無いが、好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアンモニウムハイドロキサイド等のようなアルカリ性化合物を溶解した水性現像液が良好に未露光部を選択的に溶解し、下方の支持体表面を露出出来るため極めて好ましい。さらには、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール等の各種アルコール類をアルカリ性現像液中に添加することも好ましく行われる。こうしたアルカリ性現像液を用いて現像処理を行った後に、アラビアゴム等を使用して通常のガム引きが好ましく行われる。
【0044】
【実施例】
以下実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、効果はもとより本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0045】
実施例1〜8および比較例1〜5
厚みが0.24mmである砂目立て処理を行った陽極酸化アルミニウム板を使用して、この上に表1に示す重合体および多官能性化合物を使用して、下記の配合処方で示される感光性塗工液を乾燥厚みが2.0ミクロンになるよう塗布を行い、75℃の乾燥器内にて6分間乾燥を行った。
<感光性塗工液>
重合体(表1) 10質量部
多官能性化合物(表1) 7質量部
有機ホウ素塩(BC−6) 5質量部
トリハロアルキル置換化合物(T−8) 3質量部
増感色素(S−33) 0.3質量部
10%フタロシアニン分散液(着色剤) 0.5質量部
N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩0.08質量部
ジオキサン 70質量部
シクロヘキサノン 10質量部
【0046】
【表1】
表中、EA−6320;新中村化学工業株式会社製、エポキシアクリレート、粘度4万mPa・s(25℃)。
表中、U−6HA;新中村化学工業株式会社製、ウレタンアクリレート、粘度200万mPa・s以上(25℃)。
表中、U−15HA;新中村化学工業株式会社製、ウレタンアクリレート、粘度10万mPa・s以上(25℃)。
表中、TMPTA;トリメチロールプロパントリアクリレート、粘度95mPa・s(25℃)。
表中、A−200;新中村化学工業株式会社製、オリゴエチレングリコール(n=4)ジアクリレート、粘度22mPa・s(25℃)。
【0047】
【化13】
【0048】
【化14】
【0049】
【化15】
【0050】
上記で作成した試料を作成直後および45℃に調整した乾燥器内に3ヶ月間保存を行った後に、波長830nmの半導体レーザー(出力1W)を利用し、レーザースポット径10ミクロンに調整し、版面パワー150mJ/cm2になるよう外面ドラム上で1000rpmの回転速度で走査露光を行った。現像は、ケイ酸カリウムを2質量%および水酸化カリウム0.8質量%、ノニオン性界面活性剤2質量%を含有するアルカリ性現像液を使用して、30℃で15秒間現像液に浸漬し、現像を行った後直ちに水洗を行って平版印刷版原版を作成した。いずれの実施例においても塗布試料作成直後における露光および現像においては、原版上の画像は20ミクロン細線が明瞭に再現されていた。比較例4および5においては同様に良好な画像が形成されらが、比較例1〜3においては画像は形成されるものの50ミクロン細線が辛うじて再現出来る程度であり、後述する条件で印刷を行うと画像が簡単に欠落する結果となった。これに対して全ての実施例および比較例4,5で作成した試料は、塗布直後の段階で露光、現像を行い、後述する印刷試験を行った場合にいずれも良好な耐刷性(7〜20万部)および保水性を示した。一方、45℃に調整した乾燥器内に3ヶ月間保存を行った後に露光および現像を行った結果を表2に纏めた。表2に見られるように全ての実施例においては塗布試料作成直後と全く同様の画像が形成されており、感度および現像性に変化は認められなかった。一方、比較例1〜5においては画像は形成されないか部分的にしか形成されず、また現像性についても、非画像部の溶出性が低下していることが確認された。
【0051】
【表2】
【0052】
このものの印刷性能評価を行うため、印刷機はミヤコシビジネスフォーム印刷機を使用し、印刷インキはUVインキBest Cure RNCプロセス紅を使用して、湿し水は市販の湿し水を希釈して使用して印刷を行った。印刷評価項目として耐刷性についてはテスト画像中の微小網点および細線が欠落し始めるまでの刷り枚数を以て評価を行った。また、地汚れの有無(保水性)は印刷物上の地汚れの有無を以て目視判定を行った。結果として表3に示すような良好な結果が得られた。
【0053】
【表3】
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、保存性に優れた高感度な感光性組成物が得られ、また印刷版として紫外線硬化インキを用いて印刷を行う場合においても高い耐刷性を有する感光性平版印刷版が与えられる。特に750nm以上の近赤外レーザー光源に充分高い感光性を有する感光性組成物及び感光性平版印刷版が得られる。
Claims (5)
- ガラス転移温度が50℃以上であるバインダー樹脂、有機ホウ素塩化合物および25℃に於いて固体もしくは1000mPa・s以上の粘度を有する重合性二重結合を2個以上有する化合物を含み、系内に粘度が1000mPa・s未満の化合物を含有しないことを特徴とする感光性組成物。
- 更に、トリハロアルキル置換化合物を含有する請求項1に記載の感光性組成物。
- 更に、可視光から赤外光の波長範囲に吸収を有し、かつ前記有機ホウ素塩を増感する増感剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の感光性組成物。
- 該バインダー樹脂が、側鎖に重合性二重結合を有する重合体であることを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。
- 上記何れかの請求項における該感光性組成物を利用したことを特徴とする感光性平版印刷版材料。
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