JP2004294273A - 帯電状態検出装置およびその複合システム、帯電状態表示方法ならびに電気絶縁性シートのロール体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】電気絶縁性シート等の物体の帯電状態を、その物体を汚損することなく簡便かつ精密に可視化出来る表示装置あるいは表示方法を提供する。
【解決手段】電子ペーパー表示素子を有し、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分の少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態と異なる色で表示することを特徴とする帯電状態検出装置。
【選択図】 図2
【解決手段】電子ペーパー表示素子を有し、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分の少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態と異なる色で表示することを特徴とする帯電状態検出装置。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電状態を検出するための装置や帯電状態の表示方法に関する。また、当該技術をとりわけ好適に適用できる電気絶縁性シートのロール体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気絶縁体は表面抵抗が高いため、電荷が自由に移動できず孤立状態のまま局所的に存在し、場合によっては正電荷と負電荷が入り乱れた状態となる。このような状態を帯電状態という。
【0003】
フィルム等の電気絶縁性シートの製造工程においては、製造装置(たとえば、搬送用金属ロールやゴムロール等)がフィルムに接触すると、フィルム表面に帯電電荷が発生し、工程中で種々の障害を起こすことが良く知られている。障害の1つとして、周囲のゴミが帯電電荷のクーロン力により引き寄せられ、製品の品位を落としたりする。また、電気絶縁性シートの帯電数10μC/m2以上になると、フィルムと搬送ロールあるいはその他の製造装置との間で容易に放電が発生し、電気絶縁性シートの表面にスタチックマークと呼ばれる放電痕を残すという問題がある。
【0004】
たとえば、電気絶縁性シートが正に帯電し放電が起こりうる電界を超えた場合、部分的に放電が発生する。このとき、絶縁性シートには正の帯電のあった部分に負の帯電模様が形成される。帯電模様の形状は放電の仕方、絶縁性シートの特性に左右されるが、おおむね、大きさが1〜10mm程度の円形、または楕円形の放電痕となる。また、電気絶縁性シートが負に帯電し放電が発生した場合には正の樹枝状の放電痕となる。
【0005】
さらに、フィルムに対する蒸着等の後加工工程では、ベースフィルムの静電気帯電によって、蒸着膜の均一性が損なわれたり蒸着機内の搬送ロールにおいてしわを生じたりする問題がある。
【0006】
従来このような電気絶縁性シートの帯電状態を可視化する方法として例えば、電子写真用のトナー等の帯電した微粒子帯電した物体に直接ふりかけ逆極性の帯電箇所に付着させる方法や、表面電位計や電界強度計を用いて帯電した物体周辺の電気量を測定する方法が知られている(非特許文献1,2参照。)。
【0007】
帯電した微粒子を付着させて可視化する方法では、無帯電部分と正・負の帯電部分とを微細なパターンを可視化する事はできるが、近年の生産現場のクリーン化においては微粒子を生産現場に持ち込むことはできず、生産管理には適用できなかった。さらに、トナー粒子を製品に直接振りかけ製品を汚損してしまう破壊試験であって、有効な帯電状態の管理方法ではなかった。
【0008】
一方、表面電位計や電界強度計などによる帯電状態の計測では次の問題があった。表面電位計の測定視野は直径が数mmφから数10mmφであり、この測定範囲における平均値が測定値となってしまう。従って微細なパターンとして可視化するのが難しかったり、微弱な帯電状態を検出するのが難しいといった問題があった。すなわちこの方法も、有効な帯電状態の管理手段ではなかった。
【0009】
つまり、電気絶縁性シート等の帯電状態(帯電があるのかないのか、帯電の極性が正なのか負なのか等)を非破壊で簡便かつ精密に可視化する方法はなかった。
【0010】
一方近年、紙に変わるディスプレイ媒体の1つとして、「電子ペーパー」が開示されている。この電子ペーパーは、紙の特性とLCDやCRTディスプレイのようにリアルタイムに表示できるディスプレイの特性を合わせ持ち、書き換えの可能な新しい表示媒体として注目されている。
【0011】
電子ペーパーに利用されている素子には例えば次のようなものがある。
【0012】
「マイクロカプセル型電気泳動素子」は、透明なマイクロカプセル内に(例えば黒色の)絶縁性溶媒と(例えば白色の)電気泳動粒子とを封入し、電界を印加することにより電気泳動粒子を移動させて、(例えば白黒の)画像を表示するものである(特許文献1参照。)。
【0013】
また、「ツイストボール」は、球形の微粒子が光学異方性(例えば白と黒の塗り分け)と電気異方性とを有し、電界により回転して(例えば白黒の)画像を表示するための表示素子に関するものである(特許文献2,3参照。)。
【0014】
ただし、特許文献1に記載の技術は、電極と電極の間に表示素子を配置し、通常は、一方の電極を分割し出力命令に応じて任意の部分に正または負の電圧(数10Vから数100V)をかけ、もう一方を0V(アース)として電界を形成し、上記のような素子を作動させて表示を行うものである。
【0015】
また、特許文献2に記載の技術は摩擦電気でアドレス可能なディスプレイに関するものであり、物体の帯電状態を検知して可視化するというものではなかった。またさらには、正帯電と負帯電を区別して検出し可視化するものでもなかった。
【0016】
また、特許文献3にはツイストボールの製造方法が記載されているが、その用途については、衣類等の物品への装飾或いはカモフラージュが記載されているのみであり、物体の帯電状態を検知して可視化するというものではなかった。
【0017】
【非特許文献1】
「静電気Q&A」,明光社,静電気学会編,平成4年1月,p202−203
【0018】
【非特許文献2】
「新版 静電気ハンドブック」,オーム社,静電気学会編,平成10年11月,p.400−402,428−430
【0019】
【特許文献1】
特開平1−86116号公報
【0020】
【特許文献2】
特開2000−322001号公報
【0021】
【特許文献3】
特開平8−234686号公報(段落番号0016)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電気絶縁性シート等の物体の帯電状態を、その物体を汚損することなく簡便かつ精密に可視化出来る表示装置あるいは表示方法を提供することを目的とする。
【0023】
また本発明は、電気絶縁性シートの帯電状態を、電気絶縁性シートを汚損することなく簡便かつ精密に管理することにより、静電気によるゴミの付着や後工程での塗布ムラや張り付き、しわの発生などを抑えて品位の高い電気絶縁性シートのロール体を提供することを他の目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、電子ペーパー表示素子を有し、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分の少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態と異なる色で表示することを特徴とする帯電状態検出装置である。
【0025】
また本発明は、導電性基板と、電子ペーパー表示素子を配した電子ペーパー表示素子層と、誘電体層とをこの順に積層して備えた帯電状態検出装置であって、前記誘電体層側からの外部電界を受容可能に構成されていることを特徴とする帯電状態検出装置である。
【0026】
また本発明は、本発明の帯電状態検出装置を複数用いてなり、その少なくとも一つが正帯電部分を識別できるものであり、他の少なくとも一つが負帯電部分を識別できるものであり、さらにこれらの帯電状態の情報を処理する処理装置と、その情報の処理結果を表示する表示装置を備えたことを特徴とする帯電状態検出装置の複合システムである。
【0027】
また本発明は、電子ペーパー表示素子を用いて、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分のうち少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態の部分と異なる色で表示することを特徴とする帯電状態表示方法である。
【0028】
また本発明は、本発明の帯電状態検出装置を用いる帯電状態表示方法であって、当該帯電状態検出装置における導電性基板を電気的に接地し、その基板と物体との電位差によって発生する電界により電子ペーパー表示素子の状態を変化させることを特徴とする帯電状態表示方法である。
【0029】
また本発明は、本発明の帯電状態検出装置を複数用い、その少なくとも一つに正帯電状態を識別させ、また他の少なくとも一つに負帯電状態を識別させ、これらの識別結果に基づいて物体の帯電状態を表示することを特徴とする帯電状態表示方法である。
【0030】
また本発明は、本発明の帯電状態表示方法による検査工程を含むことを特徴とする電気絶縁性シートのロール体の製造方法である。
【0031】
また本発明は、電気絶縁性シートと接触するロールに近接して、本発明の帯電状態検出装置を設け、該帯電状態検出装置の表示に基づいて製造条件を設定することを特徴とする電気絶縁性シートのロール体の製造方法である。
【0032】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の帯電状態表示装置は、電子ペーパー表示素子を有する。「電子ペーパー表示素子」とは、電界に応じて少なくともその一方向から見た光学特性を変化させる素子を言う。分極を有する物体や電荷を有する物体や配向した分子を含んでおり、外部からの電界の作用に応じて容易に状態を変化できるため、少なくとも1方向からみた色等の光学特性が変化するのである。
【0033】
電子ペーパー表示素子の変化する光学特性が色である場合には、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分の少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態と異なる色で表示することができる。「無帯電」とは実質上正にも負にも帯電しておらず、例えば電子写真用のトナーを振りかけてもトナーが付着しない状態を言う。また、「正帯電」とは電子が不足した状態、「負帯電」とは電子が過剰である状態を言う。
【0034】
電子ペーパー表示素子としては例えば、絶縁性溶媒で包囲されており表面に光学特性の異なる2つ以上の領域を有し、かつ帯電特性の異なる2つ以上の領域を有する複数の回転粒子(例えばいわゆるツイストボールであり、以下、当該回転粒子をこのようにも総称する。)を含むものを好ましく採用することができる。
【0035】
ツイストボールは例えば、球形の形状を有し、一方の半球は正の極性を有し、もう一方の半球は負の極性を有しており(図1,2における2では+と−の記号を付与している)、かつ、それぞれの半球は白と黒、あるいは赤と青といった異なる色を有している。ツイストボールの周りにはキャビティーを形成し、オイル、ワックス等の絶縁性溶媒で満たしている。ツイストボールの極性を有する部分は絶縁性溶媒とゼータ電位に関連した電気二重層を形成している。ここに電界がかかると、正の極性を有する半球部分は電界の向きと同じ方向を向き、負の極性を有する半球部分は電界と反対の方向を向くので、ツイストボールの回転が発生する。そして物体を置くのと反対側から観察した場合、正の極性を有する半球部分を白色、負の極性を有する半球部分を黒色とすると、物体の正帯電部分に対応して観察者側には白色を呈し、物体の負帯電部分に対応して観察者側には黒色を呈する。一方、測定物体を置いた方から観察すると、正帯電部分は黒色に、負帯電部分は白色を呈する。
【0036】
例えば、図2では誘電体層6側の面を被測定面=帯電した電気絶縁性シート8に接触させると、導電性基板が0Vあるので、被測定物の正に帯電した場所は電界感応素子層5の中の電界が上方向に向き、電界感応素子2の負帯電部が被測定物を向く。反対に、被測定物の負に帯電した場所は電界感応素子層5の中の電界が下方向に向き、電界感応素子2の正帯電部が被測定物を向く。
【0037】
また、物体の無帯電部分に直面するツイストボールについては回転は起こらず、後述するような適切な初期化を行っておけば、正帯電の白色も負帯電の黒色も呈さず、肉眼ではおおむね正帯電と負帯電の中間色に見える。あるいは、ツイストボールが回転したかどうかは、初期状態との差分を取ったり、中間色を除去するフィルターをかけるなどの処理によって判断することもできる。また、電界が途絶たときには、絶縁性溶媒により回転が抑制され表示を保持することができる。
【0038】
ツイストボールは、例えば白と黒とに色分けされたものの場合には、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などをバインダーとして、酸化チタンを含有させて白色とし、カーボンブッラクを含有させて黒色とすることができる。また、正あるいは負の極性は、トナーで用いられるような帯電制御剤を数%添加することにより得ることができる。これらから2種の半球を形成し、当該2種の半球を組み合わせて1つのツイストボールとすることができる。ツイストボールにオイル、ワックス等の被覆を施し、あるいはエポキシ等でカプセル化し、空孔を有するシリコン樹脂等のエラストマー層にスプレー法、スクリーン印刷法等にてツイストボールを配置し、ツイストボールによる電子ペーパー表示素子層とすることができる。
【0039】
また、電子ペーパー表示素子としては例えば、絶縁性溶媒と絶縁性溶媒中に移動可能に分散された絶縁性溶媒と異なる光学特性の電気泳動粒子とを内蔵する複数の小領域を有するものも好ましく採用することができる。
【0040】
かかる小領域としては例えば、絶縁性溶媒と電気泳動粒子とを封入したマイクロカプセル(いわゆるマイクロカプセル型電気泳動素子)を好ましく採用することができる。
【0041】
マイクロカプセル型電気泳動素子は例えば、マイクロカプセル内に、絶縁性溶媒としてオイルと、正の極性を有する例えば赤色の粒子と、負の極性を有する例えば青色の粒子を封入してなる。正の極性を有する粒子は電界と同じ方向に泳動し、負の極性を有する粒子は電界と反対の方向に泳動する。1つのカプセル内に上記2種の粒子の両方を封入しているものを採用した態様は、正と負の帯電状態を同時に表示することができるばかりか、2色の中間色をもって無帯電であることをも容易に表示することができるので好ましい。この態様において、物体を置くのと反対側から観察した場合、正の極性を有する粒子を赤色、負の極性を有する粒子を青色とすると、物体の正帯電部分に対応して観察者側には赤色を呈し、物体の負帯電部分に対応して観察者側には青色を呈する。また、物体の無帯電部分に直面するマイクロカプセルについては、両粒子の泳動は起こらず、後述するような適切な初期化を行っておけば、正帯電の赤色も負帯電の青色も呈さず、肉眼ではおおむね赤と青の中間色に見える。
【0042】
電気泳動粒子としては、コロイド粒子のほか、種々の有機・無機質顔料、染料、金属粉、ガラス或いは樹脂等の微粉末などを適宜使用できる。また、電気泳動素子を分散させる絶縁性溶媒としては、水、アルコール類、炭化水素、ハロゲン化炭化水素等のほか、天然又は合成の各種の油などを使用できる。このような分散系中には、必要に応じて、電解質や界面活性剤、金属石けん、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤に加えて分散剤、潤滑剤、安定化剤等を添加しても良い。
【0043】
電気泳動素子をエンドミル等の適当な手段で絶縁性溶媒中に十分に混和して分散させた後、界面重合法、不溶化反応法、相分離法或いは界面沈澱法などの適宜手法で分散系をマイクロカプセル化することができる。
【0044】
このようにして得られたマイクロカプセルを、スクリーン印刷手段、ローラー印刷手段或いはスプレー法などの手法を用いて導電性基板上に薄くコーティングして、マイクロカプセル型電気泳動素子による電子ペーパー表示素子層とすることができる。
【0045】
マイクロカプセルが電子ペーパー表示素子層の面内で凝集したり偏ったりすることなく均一に分散するよう、マイクロカプセルの移動を抑制する機構あるいは部材を設けておくことが好ましい。また、この移動抑制部材は、誘電体層と電気的に0Vに接続された導電性基板とのギャップを所定の値に保持するスペーサを兼ねていてもよい。
【0046】
また、上記の小領域としては例えば、絶縁性溶媒と電気泳動粒子とを封入した複数のセルが誘電体層の面内方向に配列されてなる態様のものも好ましく採用することができる。セルを形成する材質としては、絶縁性を有する物質を採用することができ、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系等の樹脂を採用することができる。セルを基板に接着や融着などの方法で固定して、分級により粒径をほぼ揃えた電気泳動粒子をセルの容積に対して20%から60%になるように添加し、その後、絶縁性溶媒を入れ封入すると良い。
【0047】
電子ペーパー表示素子の検出分解能は5μm以上100μm以下が好適である。100μm以下とすることで微小な放電痕を検出・表示することができ、検出分解能は小さいほど良い傾向ではあるが、5μm以上とするのが製作の容易さといった製造コストの点からも妥当である。
【0048】
また本発明の帯電状態検出装置は、導電性基板と、電子ペーパー表示素子を配した電子ペーパー表示素子層と、誘電体層とをこの順に積層して備える。
【0049】
導電性基板は、基板上の帯電状態検出装置としての有効領域内において、電気導体が一面に配されているものをいう。たとえば、図2に示したように、絶縁性の基板(図中4)上の有効領域の表面に金属めっき、金属箔の貼付等で形成された一面べたの電気導体(図中3)の部位を形成してなるものであってもよく、メッシュ状の電気導体を配したものであってもよい。また、有効領域を含む基板の全体が金属等の導電性材料で形成されていてもよい。
【0050】
基板4の素材は、高分子をシート状にした有機化合物でも良いし、ガラスなどの無機化合物でも良い。また、柔軟性を有する素材を基板4に採用すると、平面だけでなく曲面を有する物体の場合にも使用できるため使用範囲が広がる。
【0051】
電気導体3の素材としては、酸化インジウム錫(ITOとも表す。)を好ましく採用することができる。本発明の帯電状態検出装置において、導電性基板として透明なものを採用することは、電気ペーパー表示素子の光学特性の変化を物体にかざす面と逆の方(導電性基板側)から直接容易に観察できる点で好ましいが、ITOにより透明な電気導体3を達成することができるからである。
【0052】
本発明の帯電状態検出装置は、導電性基板に導電的に接続され、外部の接地点に接地可能なリードをさらに有することが好ましい。図においては、電気導体3は、リードがアース線7として接続され、接地されている。そうすることによって、例えばツイストボールが電界を受けてうけて回転する際に、誘導電荷によって逆極性の電荷が誘起されツイストボールの回転を阻害するのを防ぐことができる。また電気泳動素子においても同様である。
【0053】
導電性基板上に、前述のような電子ペーパー表示素子層を備える。
【0054】
電子ペーパー表示素子層には、導電性基板と後述する誘電体層とギャップを所定のギャップに維持する様、スペーサを設けてもよい。
【0055】
そして電子ペーパー表示素子層上には、誘電体層を備える。誘電体層側に物体を置き、あるいはかざし、その帯電状態を検出する。誘電体層は、電界を電子ペーパー表示素子に伝達する役目の他、電子ペーパー表示素子層を保護する役目も兼ねている。
【0056】
誘電体層の素材としては、合成樹脂(特にポリエステルなどの絶縁性シート)、ガラス等を採用することができる。柔軟性を有していれば曲面などのような形の物体にも対応できる。また、誘電体層自体が帯電してしまわないように、電気抵抗値が1012Ω/□以下となるような素材、例えば、ポリアミド系樹脂や界面活性剤で帯電防止層を付与したポリエステル系樹脂なども好ましい。
【0057】
また誘電体層として透明な素材を採用することも好ましい態様の一つである。そうすることで、導電性基板が透明でない場合にも、帯電状態検出装置から物体を離しても帯電状態に基づく変化を記憶しているので、誘電体層側からこれを観察することができる。
【0058】
また本発明の帯電状態検出装置は、誘電体層からの外部電界を受容可能に構成されている。
【0059】
なお、測定対象の物体は、透明なプラスチックフィルムのように、それ自体が透明なものであれば、帯電装置検出装置の出力を物体を通して観測することができるので、本発明の好適な適用対象である。
【0060】
「外部電界」とは、帯電状態表示(検出)装置の誘電体層の表面よりも、誘電体層および電子ペーパー素子の厚みの合計よりも遠く離れた物体の電荷と導電性基板との間の電位差によって発生する電界をいう。「誘電体層の表面より」とは具体的に誘電体層の外側で電子ペーパー表示素子を挟んで導電性基板(0V)と対向した面のことである。
【0061】
「受容可能」とは、電界の効果により光学特性が検出装置として十分検出可能な程度だけ変化しうることをいう。
【0062】
誘電体層からの外部電界を受容可能とするためのより具体的な構成としては、まず、誘電体層と電子ペーパー表示素子層との厚みの合計を0.1μm〜1000μmとすることが好ましい。1000μm以下とすることで、効率よく電界を受容し物体の帯電状態を検出することが可能となる。また、0.1μm以上とすることで、電子ペーパー表示素子層を保護するのに適当な機械的強度を得ることができる。
【0063】
さらに、誘電体層と電子ペーパー表示素子層とを合わせた部分の静電容量を1pF/m2〜1μF/m2の範囲内とすることが好ましい。
V=Q/C
(V:電位(V)、Q:電荷(C/m2)、C:対接地静電容量(F/m2))
であり、Cを1μF/m2以下とすることで、十分な大きさの電位をとることができ効率よく帯電状態を検出することができる。一方、静電容量は厚みに反比例するため、1pF/m2以上とすることで誘電体層の厚みをある程度抑え、装置の製造コスト、表示素子の可視性、軽量化、柔軟性等に資する。
【0064】
本発明の帯電状態検出装置は、上記のように電子ペーパー表示素子により帯電状態を検出するものであるが、その検出結果を表示する手段の態様としては、まず、電子ペーパー表示素子層に配した電子ペーパー表示素子が帯電状態を検出して、さらに電子ペーパー表示素子が帯電状態を視認可能に表示するものが好ましい。電子ペーパー表示素子に検出手段と表示手段とを兼ねさせることにより、シンプルでコンパクトな構成の装置とすることが可能となり、簡単な操作性や、省スペース、低コスト等の利点を得られる。
【0065】
かかる態様は前述のように、電子ペーパー表示素子としては変化する光学特性が視認可能な色の変化であるものを採用し、また導電性基板あるいは誘電体層の素材として透明なものを採用することで達成することができる。
【0066】
検出結果を表示する手段の他の態様としては、さらに別途、表示手段を設けることも好ましい。そうすることによって、例えば初期状態との差分を取ったり、中間色を除去するフィルターをかけるなどの処理をしたりすることができる。
【0067】
次に、本発明の帯電状態検出装置の複合システムは、本発明の帯電状態検出装置を複数用いてなり、その少なくとも一つが正帯電部分を識別できるものであり、他の少なくとも一つが負帯電部分を識別できるものであり、さらにこれらの帯電状態の情報を処理する処理装置と、その情報の処理結果を表示する表示装置を備えたことを特徴とする。このような構成とすることにより、無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分のそれぞれを確実に区別して識別することができる。尚、例えば見かけ上1枚の装置に、正帯電部分を識別できる領域と負帯電を識別できる領域とが収められているような場合にも、「帯電状態検出装置を複数用いてなる」ものとする。
【0068】
図4〜6にてその一例を説明する。図4において、帯電状態検出装置は正帯電を識別できる。つまり、電子ペーパー表示素子21として正の極性とそれに対応した特定色(例えば赤色)を有するものを採用し、物体が正帯電を有する箇所においては、電子ペーパー表示素子21の正極性部分は物体の正帯電と反発して、導電性基板側に移動し、赤色を呈する。この赤色か否かについての情報を、装置22に読みとらせる。一方、図5において、帯電状態検出装置は負帯電を識別できる。つまり、電子ペーパー表示素子23として負の電極とそれに対応した特定色(例えば青色)を有するものを採用し、物体が負帯電を有する箇所においては、電子ペーパー表示素子23の負極性部分は物体の負帯電と反発して、導電性基板側に移動し、青色を呈する。この青色か否かについての情報を、装置24に読みとらせる。
【0069】
同じ物体8について検出し読みとらせた、装置22,24からの情報を、情報処理装置25にて処理する。例えば、赤色・青色の場合には「1」とし、またそうでない場合には「0」とし、図4においては左側の電子ペーパー表示素子21から順に
「10110110」
となる。同様に図5においては
「01001101」
となる。そして処理装置25で両数列データを比較し、いずれか一方のみが1の場合には対応する極性を、2つが同じ(いずれも0、またはいずれも1)であれば無帯電と判断でき、
「正負正正負無正負」
(正:正帯電、負:負帯電、無:無帯電。)となる。
そしてこの3状態を区別して表示装置26により表示することができる。
【0070】
本発明の帯電状態表示方法は、電子ペーパー表示素子を用いて、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分のうち少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態の部分と異なる色で表示することを特徴とするものである(その態様の詳細については、本発明の帯電状態検出装置の態様の説明を参照。)。
【0071】
また本発明の帯電状態表示方法は、本発明の帯電状態検出装置を用いる帯電状態表示方法であって、当該帯電状態検出装置における電気導体を有する基板を電気的に接地し、その基板と物体との電位差によって発生する電界により電子ペーパー表示素子の状態を変化させることを特徴とするものでもある(その態様の詳細については、本発明の帯電状態検出装置の態様の説明を参照。)。
【0072】
本発明の帯電状態表示方法を図2を用いて説明する。
本発明の帯電状態検出装置の誘電体層側に物体を配置してその帯電状態を検出させるが、帯電状態検出装置における接地された導電性基板(0V電位)と物体8との距離が近くなればなるほど、より強い電界が形成されるので、電子ペーパー表示素子2の状態を変化させやすい、言い換えると、可視化表示させたい物体8の帯電電荷量が少ない場合でも可視化が可能になるので、物体8と誘電体層6とは、1mm以下のギャップを介して近接させるか、接触あるいは密着させて検出することが好ましい。
【0073】
本発明の帯電状態表示方法は、その初期化として、電子ペーパー表示素子層に、当該電子ペーパー表示素子層の面内方向の成分を有する電界を印加することが好ましい。初期化をすることにより、それまでの表示を消去できるので、電子ペーパー表示素子を何度でも繰り返し使用することができる。また、正または負の帯電状態と無帯電状態とを判別しやすくすることができる。
【0074】
図3にその一実施態様を示す。図3において、電子ペーパー表示素子2の近傍に、これを挟むように一対の電極10,11を配置している。このとき、一対の電極の間隔は、直近の電子ぺーパー表示素子のみを制御できるよう、電子ペーパー表示素子の大きさよりも小さくとってある。一対の電極10,11は、一方を0Vとし、もう一方に正または負の電位を印加することによって面内方向の成分を有する電界を印加することができ、図3においては、電極10を0Vとし、電極11に負の電位を印加している。すると、電子ペーパー表示素子2の正極性部分は負の電位を印加した電極11側を、負極性部分は0Vの電極10側を向くので、図3に向かっては左側が正、右側が負になるように回転する。そして、すべての電子ペーパー表示素子2に同様に電界を印加すれば、正負正負と交互に並ぶことになる。電界感応素子2が十分に小さい場合には、おおむね正を表示する色と負を表示する色との中間色に見えることが多い。このようにして帯電状態の表示をリセットし初期化とすることができる。なお、帯電状態表示を消去するための電極と電源は装置本体に組み込んでも良いし、取り外しが可能な別の装置としても良い。
【0075】
また、測定前に誘電体層を市販の除電器を用いて除電することも好ましい。
【0076】
また本発明の帯電状態表示方法は、本発明の帯電状態検出装置を複数用い、その少なくとも一つに正帯電状態を識別させ、また他の少なくとも一つに負帯電状態を識別させ、これらの識別結果に基づいて物体の帯電状態を表示することを特徴とするものでもある(その態様の詳細については、本発明の帯電状態検出装置の複合システムの態様の説明を参照。)。
【0077】
また本発明の帯電状態表示方法は、その対象とする物体として、電気絶縁性シートに好ましく適用することができる。
【0078】
電気絶縁性シートとして具体的には、一般に絶縁性高分子からなり表面抵抗値が1012Ω/□以上であり、電気を通さない材質からなるシートを好適な対象とする。このような電気絶縁性シートの体積抵抗率は、通常、1012Ω・m以上である。電気絶縁性シートの材質としてはたとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などの絶縁性高分子を好適な対象とする。
【0079】
また、電気絶縁性シートの表面には放電処理やコーティングなどが施されていてもよい。例えば、片面に金属などの導電薄膜が形成したり、後工程での接着性を良くするために易接着剤がコーティングしたり、ぬれ性を向上するために放電加工を施したり等である。特にそのような態様においては、電気絶縁性シートの表面と裏面とで異なった性質を有する傾向にあるので、本発明の好適な対象となる。尚、その片面に導電性膜が形成されていても、他方の面の絶縁性が保たれておれば、本発明の好適な対象である電気絶縁性シートたりうる。
【0080】
また、電気絶縁性シートの厚みにとしては、0.5〜500μmの範囲のものがよく工業的に扱われる。
【0081】
次に、本発明の電気絶縁性シートのロール体の製造方法は、本発明の帯電状態表示方法による検査工程を含むことを特徴とするものである。
【0082】
また、本発明の電気絶縁性シートのロール体の製造方法は、電気絶縁性シートと接触するロールに近接して、本発明の帯電状態検出装置を設け、該帯電状態検出装置の表示に基づいて製造条件を設定することを特徴とするものでもある。
【0083】
そうすることで、静電気によるゴミの付着や後工程での塗布ムラや張り付き、しわの発生などを抑えて品位の高い電気絶縁性シートのロール体を提供することができる。
【0084】
本発明の電気絶縁性シートロール体の製造方法の一態様例を図7に示す。
【0085】
図7において、電気絶縁性シート31を介して巻取コア34に押圧ロール33を密着させ、その押圧力を調整することにより巻き込み空気量をコントロールする。押圧力の調整には、エアシリンダなど(図示せず)を用いることができる。図7に示す巻取装置の前工程には、通常、電気絶縁性シートを搬送する目的や張力を制御する目的で多数の装置や他のロールが配置されている。絶縁性シートロール体27とは巻取コア34に順次絶縁性シートが巻き上げられたものを指し、絶縁性シートの移動に伴って押圧ロール33は時計回りに、巻取コアは反時計回りに回転し巻取コア34に順次シートが巻き取られていく。
【0086】
押圧ロール33は前述のようにを用いずに絶縁性シートを巻き取ると、巻き込み空気量を調整しシワの発生を防止するので、好ましく採用することができるが、押圧ロール33を密着させて強く押圧をかけニップしながら絶縁性シートを巻き取ると、押圧ロール33と絶縁性シートの間で強い摩擦帯電が発生する傾向にあるので、絶縁性シートの帯電状態を監視し制御する必要がある。
【0087】
なお、図7には図示していないが、電気絶縁性シートの巻取部には、帯電を中和する目的で除電器を設置してもよい。除電装置としては、交流式、直流式、交流高周波式、送風式などの電圧印加式静電気除去装置や、導電性繊維やカーボンブラシを用いた自己放電式除電装置などを挙げることができる。
【0088】
本発明の帯電状態検出装置1をロール体27の近くに設置し、ロール体27の帯電状態を監視することができる。
【0089】
ロール体27が回転している場合は、帯電状態検出装置1の誘電体層とロール体27との接触による摩擦帯電を防ぐよう、接触しない程度に接近させて帯電状態検出装置1を設けることが好ましい。
【0090】
巻取り中に異常な帯電状態を確認した場合にはたとえば、摩擦帯電を抑制するようにに面圧条件や速度、除電条件を変更し電気絶縁性シートの品質を一定に保つこともできるし、ロール体の製造を途中で中止し生産ロスを最小限にくい止めても良い。
【0091】
また、ロール体27の巻き取りを停止した場合は、図9に示すようにロール体27の表層に帯電状態表示装置1を被せるとロール体の帯電状態を確認することができる。
【0092】
また、図8は押圧ロールの表面に本発明の帯電状態検出装置1を組み込んだ1例である。この態様は、押圧ロールの帯電状態を監視することができ、製造プロセスを管理するに役立つ。
【0093】
また、押圧ロールに組み込む他、搬送を助けるガイドロールやニップロール、フィルムのシワをのばすためのエキスパンダロール、コロナ放電処理を行う処理ロールなどにも本発明の帯電状態表示装置を組み込むことができる。
【0094】
【実施例】
以下本発明を実施例を用いて説明する。
【0095】
(実施例1)
ツイストボールの正極性部分の素材として、透明なポリエステル樹脂にヘキスト社製のトリフェニル系帯電制御剤“コピーブルーPR”を6重量%含有させ、顔料としてカーボンブラックを含有させて黒色とした。
【0096】
また、負極性部分の素材として、含金属アゾ化合物”ボントロンSE”を5重量%含有させ、顔料として酸化チタンを含有させて白色とした。
【0097】
それぞれの素材から半球を形成し、当該2種の半球を組み合わせて直径20μmのボールとした。このボールをオイルの中に落とし、ボールの表面をオイルで被覆した。
【0098】
別途製作した、空孔を有するシリコーンエラストマー板にスクリーン印刷法にてツイストボールを配置し、ツイストボールによる電子ペーパー表示素子層を得た。なお、空孔の直径はツイストボールの直径よりも僅かに大きいので、各ツイストボールはその空孔内で回転することができる。
【0099】
誘電体層には、透明なポリエステル系のフィルム(東レ製、膜厚38μm)を採用した。また、導電性基板の導体にはITO電極を採用した。
【0100】
電子ペーパー表示素子層の片面に導電性基板を、もう一方の面に誘電体層を積層した。また、導電性基板の導体は導線を通じて接地した。
【0101】
初期状態において、電子ペーパー表示素子層は白と黒の中間色である灰色を呈していた。
【0102】
このようにして得た本発明の帯電状態検出装置を、電気絶縁性シートとして厚さ6μmのポリエステルシートに接触させたところ、電子ペーパー表示素子が瞬時に回転し、帯電の分布状態を表示した。
【0103】
その表示結果の拡大図を図10に示す。図10は透明な電気導体をふくむ基板側から観察した結果である。帯電の大きさは全体で16mmで、樹枝状の帯電パターンを呈し、枝状に延びた先端の幅が約0.3mmである。帯電極性はツイストボールの回転による黒色への呈色から、正帯電であると判った。
【0104】
(参考例1)
実施例1で用いたポリエステルシートを、その帯電状態を変化させないよう注意を払いながら帯電状態検出装置から離し、このポリエステルシートに対して、コピー機に使用されているトナーを振りかけて帯電状態を可視化したところ、実施例1の結果とよく一致していた。
【0105】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、他のポリエステルシートの帯電状態の表示を行った。その表示結果の拡大図を図11に示す。図11は透明な電気導体をふくむ基板側から観察した結果である。
【0106】
このように、電気絶縁性シートの帯電状態について、無帯電部分を灰色に、正帯電部分を黒色に、負帯電部分を白色に区別して表示することが出来た。
【0107】
(実施例3)
図7に巻き取り部分を示すような態様により、絶縁性シートのロール体の製造を行った。
【0108】
絶縁性シート1として、厚み20μm、幅1050mmのコロナ放電加工を施したポリプロピレンフィルムを、巻き取り速度150m/分にて巻長7000m巻き取った。
【0109】
押圧ロール33は面圧300N/mになるようにエアシリンダで巻取コア34に押しつけた。また張力は50N/mとした。
【0110】
巻取コア34には、ガラス繊維強化樹脂製のものを採用した。
【0111】
帯電状態検出装置1は、実施例1で用いたのと同様のものを巻取コア近傍に設けた。また同装置1には、絶縁性シートが巻き上げられるに従って後方に退避する機構を付設した。
【0112】
また、図7には図示していないが、ロール体の電位を低減する目的で、巻取コア近傍には巻取コアに向けて除電器を設けた。除電器には、帯電状態検出装置と同様に、絶縁性シートが巻き上げられるに従って後方に退避する機構を付設した。除電器の印加電圧の初期値は5kVとした。
【0113】
帯電状態検出装置1にて帯電の異常を監視しながら巻き取りを行い、その開始から7分経過後(1050m巻取時)、装置1により放電痕が検出された。ポリプロピレンフィルムは負に強く帯電する傾向があるため、巻き太って絶縁性シートが積層されるに従い絶縁性シートのロール体の電位が上昇し、前記除電器の除電能力を上まわると押圧ロールとの間で放電を発生し易くなるという知見に基づき、ここで除電器の印加電圧を9kVに変更した。また、帯電状態検出装置1の表示状態を初期化して再び帯電状態の異常を監視しながら巻き続けたところ、以降は異常な放電痕を検出しなくなり、製品を異常帯電によりシワ等の欠点を発生させることなく巻き上げることができた。
【0114】
【発明の効果】
本発明により、電気絶縁性シート等の物体の帯電状態を、その物体を汚損することなく簡便かつ精密に可視化出来る表示装置あるいは表示方法を提供することができる。
【0115】
またひいては、電気絶縁性シートの帯電状態を、電気絶縁性シートを汚損することなく簡便かつ精密に管理することにより、静電気によるゴミの付着や後工程での塗布ムラや張り付き、しわの発生などを抑えて品位の高い電気絶縁性シートのロール体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の帯電状態検出装置の1例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の帯電状態表示方法の1例を示す概略図である。
【図3】本発明の帯電状態の消去方法の1例を示す概略図である。
【図4】本発明の帯電状態表示方法の1例を示す概略図である。
【図5】本発明の帯電状態表示方法の1例を示す概略図である。
【図6】本発明の帯電状態表示方法の構成図を示す図である。
【図7】本発明の電気絶縁性シートロール体の製造方法の1例であって、帯電状態検出装置を押圧ロールに組み込んだ場合の構成概略図である。
【図8】本発明の電気絶縁性シートロール体の製造方法の1例であって、帯電状態装置をロール体近傍に設置した場合の構成概略図である。
【図9】本発明の帯電状態検出装置を用いて、電気絶縁性シートロール体の帯電状態を確認する1例を示す概略図である。
【図10】本発明による電気絶縁性シートの帯電状態表示結果を示す1例図である。
【図11】本発明による電気絶縁性シートの帯電状態表示結果を示す1例図である。
【符号の説明】
1:帯電状態検出装置
2:電子ペーパー表示素子
3:電気導体
4:基板
5:電子ペーパー表示素子層
6:誘電体層
7:アース線
8:帯電した電気絶縁性シート
9:導線
10:アースを接続する電極
11:電圧を印加する電極
12:直流電源
20:電子ペーパー表示素子の状態を表示する表示手段
21:正極性に帯電した部位を持つ電子ペーパー表示素子
22:正電荷に感応した状態を表示する表示手段
23:負極性に帯電した部位を持つ電子ペーパー表示素子
24:負電荷に感応した状態を表示する表示手段
25:帯電状態の情報を処理する処理器
26:帯電状態の処理結果を表示する表示装置
27:電気絶縁性シートのロール体
28:本発明の装置により検出した静電気帯電部分
31:電気絶縁性シート
33:押圧ロール
34:巻取コア
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電状態を検出するための装置や帯電状態の表示方法に関する。また、当該技術をとりわけ好適に適用できる電気絶縁性シートのロール体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気絶縁体は表面抵抗が高いため、電荷が自由に移動できず孤立状態のまま局所的に存在し、場合によっては正電荷と負電荷が入り乱れた状態となる。このような状態を帯電状態という。
【0003】
フィルム等の電気絶縁性シートの製造工程においては、製造装置(たとえば、搬送用金属ロールやゴムロール等)がフィルムに接触すると、フィルム表面に帯電電荷が発生し、工程中で種々の障害を起こすことが良く知られている。障害の1つとして、周囲のゴミが帯電電荷のクーロン力により引き寄せられ、製品の品位を落としたりする。また、電気絶縁性シートの帯電数10μC/m2以上になると、フィルムと搬送ロールあるいはその他の製造装置との間で容易に放電が発生し、電気絶縁性シートの表面にスタチックマークと呼ばれる放電痕を残すという問題がある。
【0004】
たとえば、電気絶縁性シートが正に帯電し放電が起こりうる電界を超えた場合、部分的に放電が発生する。このとき、絶縁性シートには正の帯電のあった部分に負の帯電模様が形成される。帯電模様の形状は放電の仕方、絶縁性シートの特性に左右されるが、おおむね、大きさが1〜10mm程度の円形、または楕円形の放電痕となる。また、電気絶縁性シートが負に帯電し放電が発生した場合には正の樹枝状の放電痕となる。
【0005】
さらに、フィルムに対する蒸着等の後加工工程では、ベースフィルムの静電気帯電によって、蒸着膜の均一性が損なわれたり蒸着機内の搬送ロールにおいてしわを生じたりする問題がある。
【0006】
従来このような電気絶縁性シートの帯電状態を可視化する方法として例えば、電子写真用のトナー等の帯電した微粒子帯電した物体に直接ふりかけ逆極性の帯電箇所に付着させる方法や、表面電位計や電界強度計を用いて帯電した物体周辺の電気量を測定する方法が知られている(非特許文献1,2参照。)。
【0007】
帯電した微粒子を付着させて可視化する方法では、無帯電部分と正・負の帯電部分とを微細なパターンを可視化する事はできるが、近年の生産現場のクリーン化においては微粒子を生産現場に持ち込むことはできず、生産管理には適用できなかった。さらに、トナー粒子を製品に直接振りかけ製品を汚損してしまう破壊試験であって、有効な帯電状態の管理方法ではなかった。
【0008】
一方、表面電位計や電界強度計などによる帯電状態の計測では次の問題があった。表面電位計の測定視野は直径が数mmφから数10mmφであり、この測定範囲における平均値が測定値となってしまう。従って微細なパターンとして可視化するのが難しかったり、微弱な帯電状態を検出するのが難しいといった問題があった。すなわちこの方法も、有効な帯電状態の管理手段ではなかった。
【0009】
つまり、電気絶縁性シート等の帯電状態(帯電があるのかないのか、帯電の極性が正なのか負なのか等)を非破壊で簡便かつ精密に可視化する方法はなかった。
【0010】
一方近年、紙に変わるディスプレイ媒体の1つとして、「電子ペーパー」が開示されている。この電子ペーパーは、紙の特性とLCDやCRTディスプレイのようにリアルタイムに表示できるディスプレイの特性を合わせ持ち、書き換えの可能な新しい表示媒体として注目されている。
【0011】
電子ペーパーに利用されている素子には例えば次のようなものがある。
【0012】
「マイクロカプセル型電気泳動素子」は、透明なマイクロカプセル内に(例えば黒色の)絶縁性溶媒と(例えば白色の)電気泳動粒子とを封入し、電界を印加することにより電気泳動粒子を移動させて、(例えば白黒の)画像を表示するものである(特許文献1参照。)。
【0013】
また、「ツイストボール」は、球形の微粒子が光学異方性(例えば白と黒の塗り分け)と電気異方性とを有し、電界により回転して(例えば白黒の)画像を表示するための表示素子に関するものである(特許文献2,3参照。)。
【0014】
ただし、特許文献1に記載の技術は、電極と電極の間に表示素子を配置し、通常は、一方の電極を分割し出力命令に応じて任意の部分に正または負の電圧(数10Vから数100V)をかけ、もう一方を0V(アース)として電界を形成し、上記のような素子を作動させて表示を行うものである。
【0015】
また、特許文献2に記載の技術は摩擦電気でアドレス可能なディスプレイに関するものであり、物体の帯電状態を検知して可視化するというものではなかった。またさらには、正帯電と負帯電を区別して検出し可視化するものでもなかった。
【0016】
また、特許文献3にはツイストボールの製造方法が記載されているが、その用途については、衣類等の物品への装飾或いはカモフラージュが記載されているのみであり、物体の帯電状態を検知して可視化するというものではなかった。
【0017】
【非特許文献1】
「静電気Q&A」,明光社,静電気学会編,平成4年1月,p202−203
【0018】
【非特許文献2】
「新版 静電気ハンドブック」,オーム社,静電気学会編,平成10年11月,p.400−402,428−430
【0019】
【特許文献1】
特開平1−86116号公報
【0020】
【特許文献2】
特開2000−322001号公報
【0021】
【特許文献3】
特開平8−234686号公報(段落番号0016)
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電気絶縁性シート等の物体の帯電状態を、その物体を汚損することなく簡便かつ精密に可視化出来る表示装置あるいは表示方法を提供することを目的とする。
【0023】
また本発明は、電気絶縁性シートの帯電状態を、電気絶縁性シートを汚損することなく簡便かつ精密に管理することにより、静電気によるゴミの付着や後工程での塗布ムラや張り付き、しわの発生などを抑えて品位の高い電気絶縁性シートのロール体を提供することを他の目的とする。
【0024】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、電子ペーパー表示素子を有し、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分の少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態と異なる色で表示することを特徴とする帯電状態検出装置である。
【0025】
また本発明は、導電性基板と、電子ペーパー表示素子を配した電子ペーパー表示素子層と、誘電体層とをこの順に積層して備えた帯電状態検出装置であって、前記誘電体層側からの外部電界を受容可能に構成されていることを特徴とする帯電状態検出装置である。
【0026】
また本発明は、本発明の帯電状態検出装置を複数用いてなり、その少なくとも一つが正帯電部分を識別できるものであり、他の少なくとも一つが負帯電部分を識別できるものであり、さらにこれらの帯電状態の情報を処理する処理装置と、その情報の処理結果を表示する表示装置を備えたことを特徴とする帯電状態検出装置の複合システムである。
【0027】
また本発明は、電子ペーパー表示素子を用いて、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分のうち少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態の部分と異なる色で表示することを特徴とする帯電状態表示方法である。
【0028】
また本発明は、本発明の帯電状態検出装置を用いる帯電状態表示方法であって、当該帯電状態検出装置における導電性基板を電気的に接地し、その基板と物体との電位差によって発生する電界により電子ペーパー表示素子の状態を変化させることを特徴とする帯電状態表示方法である。
【0029】
また本発明は、本発明の帯電状態検出装置を複数用い、その少なくとも一つに正帯電状態を識別させ、また他の少なくとも一つに負帯電状態を識別させ、これらの識別結果に基づいて物体の帯電状態を表示することを特徴とする帯電状態表示方法である。
【0030】
また本発明は、本発明の帯電状態表示方法による検査工程を含むことを特徴とする電気絶縁性シートのロール体の製造方法である。
【0031】
また本発明は、電気絶縁性シートと接触するロールに近接して、本発明の帯電状態検出装置を設け、該帯電状態検出装置の表示に基づいて製造条件を設定することを特徴とする電気絶縁性シートのロール体の製造方法である。
【0032】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の帯電状態表示装置は、電子ペーパー表示素子を有する。「電子ペーパー表示素子」とは、電界に応じて少なくともその一方向から見た光学特性を変化させる素子を言う。分極を有する物体や電荷を有する物体や配向した分子を含んでおり、外部からの電界の作用に応じて容易に状態を変化できるため、少なくとも1方向からみた色等の光学特性が変化するのである。
【0033】
電子ペーパー表示素子の変化する光学特性が色である場合には、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分の少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態と異なる色で表示することができる。「無帯電」とは実質上正にも負にも帯電しておらず、例えば電子写真用のトナーを振りかけてもトナーが付着しない状態を言う。また、「正帯電」とは電子が不足した状態、「負帯電」とは電子が過剰である状態を言う。
【0034】
電子ペーパー表示素子としては例えば、絶縁性溶媒で包囲されており表面に光学特性の異なる2つ以上の領域を有し、かつ帯電特性の異なる2つ以上の領域を有する複数の回転粒子(例えばいわゆるツイストボールであり、以下、当該回転粒子をこのようにも総称する。)を含むものを好ましく採用することができる。
【0035】
ツイストボールは例えば、球形の形状を有し、一方の半球は正の極性を有し、もう一方の半球は負の極性を有しており(図1,2における2では+と−の記号を付与している)、かつ、それぞれの半球は白と黒、あるいは赤と青といった異なる色を有している。ツイストボールの周りにはキャビティーを形成し、オイル、ワックス等の絶縁性溶媒で満たしている。ツイストボールの極性を有する部分は絶縁性溶媒とゼータ電位に関連した電気二重層を形成している。ここに電界がかかると、正の極性を有する半球部分は電界の向きと同じ方向を向き、負の極性を有する半球部分は電界と反対の方向を向くので、ツイストボールの回転が発生する。そして物体を置くのと反対側から観察した場合、正の極性を有する半球部分を白色、負の極性を有する半球部分を黒色とすると、物体の正帯電部分に対応して観察者側には白色を呈し、物体の負帯電部分に対応して観察者側には黒色を呈する。一方、測定物体を置いた方から観察すると、正帯電部分は黒色に、負帯電部分は白色を呈する。
【0036】
例えば、図2では誘電体層6側の面を被測定面=帯電した電気絶縁性シート8に接触させると、導電性基板が0Vあるので、被測定物の正に帯電した場所は電界感応素子層5の中の電界が上方向に向き、電界感応素子2の負帯電部が被測定物を向く。反対に、被測定物の負に帯電した場所は電界感応素子層5の中の電界が下方向に向き、電界感応素子2の正帯電部が被測定物を向く。
【0037】
また、物体の無帯電部分に直面するツイストボールについては回転は起こらず、後述するような適切な初期化を行っておけば、正帯電の白色も負帯電の黒色も呈さず、肉眼ではおおむね正帯電と負帯電の中間色に見える。あるいは、ツイストボールが回転したかどうかは、初期状態との差分を取ったり、中間色を除去するフィルターをかけるなどの処理によって判断することもできる。また、電界が途絶たときには、絶縁性溶媒により回転が抑制され表示を保持することができる。
【0038】
ツイストボールは、例えば白と黒とに色分けされたものの場合には、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメタクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などをバインダーとして、酸化チタンを含有させて白色とし、カーボンブッラクを含有させて黒色とすることができる。また、正あるいは負の極性は、トナーで用いられるような帯電制御剤を数%添加することにより得ることができる。これらから2種の半球を形成し、当該2種の半球を組み合わせて1つのツイストボールとすることができる。ツイストボールにオイル、ワックス等の被覆を施し、あるいはエポキシ等でカプセル化し、空孔を有するシリコン樹脂等のエラストマー層にスプレー法、スクリーン印刷法等にてツイストボールを配置し、ツイストボールによる電子ペーパー表示素子層とすることができる。
【0039】
また、電子ペーパー表示素子としては例えば、絶縁性溶媒と絶縁性溶媒中に移動可能に分散された絶縁性溶媒と異なる光学特性の電気泳動粒子とを内蔵する複数の小領域を有するものも好ましく採用することができる。
【0040】
かかる小領域としては例えば、絶縁性溶媒と電気泳動粒子とを封入したマイクロカプセル(いわゆるマイクロカプセル型電気泳動素子)を好ましく採用することができる。
【0041】
マイクロカプセル型電気泳動素子は例えば、マイクロカプセル内に、絶縁性溶媒としてオイルと、正の極性を有する例えば赤色の粒子と、負の極性を有する例えば青色の粒子を封入してなる。正の極性を有する粒子は電界と同じ方向に泳動し、負の極性を有する粒子は電界と反対の方向に泳動する。1つのカプセル内に上記2種の粒子の両方を封入しているものを採用した態様は、正と負の帯電状態を同時に表示することができるばかりか、2色の中間色をもって無帯電であることをも容易に表示することができるので好ましい。この態様において、物体を置くのと反対側から観察した場合、正の極性を有する粒子を赤色、負の極性を有する粒子を青色とすると、物体の正帯電部分に対応して観察者側には赤色を呈し、物体の負帯電部分に対応して観察者側には青色を呈する。また、物体の無帯電部分に直面するマイクロカプセルについては、両粒子の泳動は起こらず、後述するような適切な初期化を行っておけば、正帯電の赤色も負帯電の青色も呈さず、肉眼ではおおむね赤と青の中間色に見える。
【0042】
電気泳動粒子としては、コロイド粒子のほか、種々の有機・無機質顔料、染料、金属粉、ガラス或いは樹脂等の微粉末などを適宜使用できる。また、電気泳動素子を分散させる絶縁性溶媒としては、水、アルコール類、炭化水素、ハロゲン化炭化水素等のほか、天然又は合成の各種の油などを使用できる。このような分散系中には、必要に応じて、電解質や界面活性剤、金属石けん、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤に加えて分散剤、潤滑剤、安定化剤等を添加しても良い。
【0043】
電気泳動素子をエンドミル等の適当な手段で絶縁性溶媒中に十分に混和して分散させた後、界面重合法、不溶化反応法、相分離法或いは界面沈澱法などの適宜手法で分散系をマイクロカプセル化することができる。
【0044】
このようにして得られたマイクロカプセルを、スクリーン印刷手段、ローラー印刷手段或いはスプレー法などの手法を用いて導電性基板上に薄くコーティングして、マイクロカプセル型電気泳動素子による電子ペーパー表示素子層とすることができる。
【0045】
マイクロカプセルが電子ペーパー表示素子層の面内で凝集したり偏ったりすることなく均一に分散するよう、マイクロカプセルの移動を抑制する機構あるいは部材を設けておくことが好ましい。また、この移動抑制部材は、誘電体層と電気的に0Vに接続された導電性基板とのギャップを所定の値に保持するスペーサを兼ねていてもよい。
【0046】
また、上記の小領域としては例えば、絶縁性溶媒と電気泳動粒子とを封入した複数のセルが誘電体層の面内方向に配列されてなる態様のものも好ましく採用することができる。セルを形成する材質としては、絶縁性を有する物質を採用することができ、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリオレフィン系等の樹脂を採用することができる。セルを基板に接着や融着などの方法で固定して、分級により粒径をほぼ揃えた電気泳動粒子をセルの容積に対して20%から60%になるように添加し、その後、絶縁性溶媒を入れ封入すると良い。
【0047】
電子ペーパー表示素子の検出分解能は5μm以上100μm以下が好適である。100μm以下とすることで微小な放電痕を検出・表示することができ、検出分解能は小さいほど良い傾向ではあるが、5μm以上とするのが製作の容易さといった製造コストの点からも妥当である。
【0048】
また本発明の帯電状態検出装置は、導電性基板と、電子ペーパー表示素子を配した電子ペーパー表示素子層と、誘電体層とをこの順に積層して備える。
【0049】
導電性基板は、基板上の帯電状態検出装置としての有効領域内において、電気導体が一面に配されているものをいう。たとえば、図2に示したように、絶縁性の基板(図中4)上の有効領域の表面に金属めっき、金属箔の貼付等で形成された一面べたの電気導体(図中3)の部位を形成してなるものであってもよく、メッシュ状の電気導体を配したものであってもよい。また、有効領域を含む基板の全体が金属等の導電性材料で形成されていてもよい。
【0050】
基板4の素材は、高分子をシート状にした有機化合物でも良いし、ガラスなどの無機化合物でも良い。また、柔軟性を有する素材を基板4に採用すると、平面だけでなく曲面を有する物体の場合にも使用できるため使用範囲が広がる。
【0051】
電気導体3の素材としては、酸化インジウム錫(ITOとも表す。)を好ましく採用することができる。本発明の帯電状態検出装置において、導電性基板として透明なものを採用することは、電気ペーパー表示素子の光学特性の変化を物体にかざす面と逆の方(導電性基板側)から直接容易に観察できる点で好ましいが、ITOにより透明な電気導体3を達成することができるからである。
【0052】
本発明の帯電状態検出装置は、導電性基板に導電的に接続され、外部の接地点に接地可能なリードをさらに有することが好ましい。図においては、電気導体3は、リードがアース線7として接続され、接地されている。そうすることによって、例えばツイストボールが電界を受けてうけて回転する際に、誘導電荷によって逆極性の電荷が誘起されツイストボールの回転を阻害するのを防ぐことができる。また電気泳動素子においても同様である。
【0053】
導電性基板上に、前述のような電子ペーパー表示素子層を備える。
【0054】
電子ペーパー表示素子層には、導電性基板と後述する誘電体層とギャップを所定のギャップに維持する様、スペーサを設けてもよい。
【0055】
そして電子ペーパー表示素子層上には、誘電体層を備える。誘電体層側に物体を置き、あるいはかざし、その帯電状態を検出する。誘電体層は、電界を電子ペーパー表示素子に伝達する役目の他、電子ペーパー表示素子層を保護する役目も兼ねている。
【0056】
誘電体層の素材としては、合成樹脂(特にポリエステルなどの絶縁性シート)、ガラス等を採用することができる。柔軟性を有していれば曲面などのような形の物体にも対応できる。また、誘電体層自体が帯電してしまわないように、電気抵抗値が1012Ω/□以下となるような素材、例えば、ポリアミド系樹脂や界面活性剤で帯電防止層を付与したポリエステル系樹脂なども好ましい。
【0057】
また誘電体層として透明な素材を採用することも好ましい態様の一つである。そうすることで、導電性基板が透明でない場合にも、帯電状態検出装置から物体を離しても帯電状態に基づく変化を記憶しているので、誘電体層側からこれを観察することができる。
【0058】
また本発明の帯電状態検出装置は、誘電体層からの外部電界を受容可能に構成されている。
【0059】
なお、測定対象の物体は、透明なプラスチックフィルムのように、それ自体が透明なものであれば、帯電装置検出装置の出力を物体を通して観測することができるので、本発明の好適な適用対象である。
【0060】
「外部電界」とは、帯電状態表示(検出)装置の誘電体層の表面よりも、誘電体層および電子ペーパー素子の厚みの合計よりも遠く離れた物体の電荷と導電性基板との間の電位差によって発生する電界をいう。「誘電体層の表面より」とは具体的に誘電体層の外側で電子ペーパー表示素子を挟んで導電性基板(0V)と対向した面のことである。
【0061】
「受容可能」とは、電界の効果により光学特性が検出装置として十分検出可能な程度だけ変化しうることをいう。
【0062】
誘電体層からの外部電界を受容可能とするためのより具体的な構成としては、まず、誘電体層と電子ペーパー表示素子層との厚みの合計を0.1μm〜1000μmとすることが好ましい。1000μm以下とすることで、効率よく電界を受容し物体の帯電状態を検出することが可能となる。また、0.1μm以上とすることで、電子ペーパー表示素子層を保護するのに適当な機械的強度を得ることができる。
【0063】
さらに、誘電体層と電子ペーパー表示素子層とを合わせた部分の静電容量を1pF/m2〜1μF/m2の範囲内とすることが好ましい。
V=Q/C
(V:電位(V)、Q:電荷(C/m2)、C:対接地静電容量(F/m2))
であり、Cを1μF/m2以下とすることで、十分な大きさの電位をとることができ効率よく帯電状態を検出することができる。一方、静電容量は厚みに反比例するため、1pF/m2以上とすることで誘電体層の厚みをある程度抑え、装置の製造コスト、表示素子の可視性、軽量化、柔軟性等に資する。
【0064】
本発明の帯電状態検出装置は、上記のように電子ペーパー表示素子により帯電状態を検出するものであるが、その検出結果を表示する手段の態様としては、まず、電子ペーパー表示素子層に配した電子ペーパー表示素子が帯電状態を検出して、さらに電子ペーパー表示素子が帯電状態を視認可能に表示するものが好ましい。電子ペーパー表示素子に検出手段と表示手段とを兼ねさせることにより、シンプルでコンパクトな構成の装置とすることが可能となり、簡単な操作性や、省スペース、低コスト等の利点を得られる。
【0065】
かかる態様は前述のように、電子ペーパー表示素子としては変化する光学特性が視認可能な色の変化であるものを採用し、また導電性基板あるいは誘電体層の素材として透明なものを採用することで達成することができる。
【0066】
検出結果を表示する手段の他の態様としては、さらに別途、表示手段を設けることも好ましい。そうすることによって、例えば初期状態との差分を取ったり、中間色を除去するフィルターをかけるなどの処理をしたりすることができる。
【0067】
次に、本発明の帯電状態検出装置の複合システムは、本発明の帯電状態検出装置を複数用いてなり、その少なくとも一つが正帯電部分を識別できるものであり、他の少なくとも一つが負帯電部分を識別できるものであり、さらにこれらの帯電状態の情報を処理する処理装置と、その情報の処理結果を表示する表示装置を備えたことを特徴とする。このような構成とすることにより、無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分のそれぞれを確実に区別して識別することができる。尚、例えば見かけ上1枚の装置に、正帯電部分を識別できる領域と負帯電を識別できる領域とが収められているような場合にも、「帯電状態検出装置を複数用いてなる」ものとする。
【0068】
図4〜6にてその一例を説明する。図4において、帯電状態検出装置は正帯電を識別できる。つまり、電子ペーパー表示素子21として正の極性とそれに対応した特定色(例えば赤色)を有するものを採用し、物体が正帯電を有する箇所においては、電子ペーパー表示素子21の正極性部分は物体の正帯電と反発して、導電性基板側に移動し、赤色を呈する。この赤色か否かについての情報を、装置22に読みとらせる。一方、図5において、帯電状態検出装置は負帯電を識別できる。つまり、電子ペーパー表示素子23として負の電極とそれに対応した特定色(例えば青色)を有するものを採用し、物体が負帯電を有する箇所においては、電子ペーパー表示素子23の負極性部分は物体の負帯電と反発して、導電性基板側に移動し、青色を呈する。この青色か否かについての情報を、装置24に読みとらせる。
【0069】
同じ物体8について検出し読みとらせた、装置22,24からの情報を、情報処理装置25にて処理する。例えば、赤色・青色の場合には「1」とし、またそうでない場合には「0」とし、図4においては左側の電子ペーパー表示素子21から順に
「10110110」
となる。同様に図5においては
「01001101」
となる。そして処理装置25で両数列データを比較し、いずれか一方のみが1の場合には対応する極性を、2つが同じ(いずれも0、またはいずれも1)であれば無帯電と判断でき、
「正負正正負無正負」
(正:正帯電、負:負帯電、無:無帯電。)となる。
そしてこの3状態を区別して表示装置26により表示することができる。
【0070】
本発明の帯電状態表示方法は、電子ペーパー表示素子を用いて、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分のうち少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態の部分と異なる色で表示することを特徴とするものである(その態様の詳細については、本発明の帯電状態検出装置の態様の説明を参照。)。
【0071】
また本発明の帯電状態表示方法は、本発明の帯電状態検出装置を用いる帯電状態表示方法であって、当該帯電状態検出装置における電気導体を有する基板を電気的に接地し、その基板と物体との電位差によって発生する電界により電子ペーパー表示素子の状態を変化させることを特徴とするものでもある(その態様の詳細については、本発明の帯電状態検出装置の態様の説明を参照。)。
【0072】
本発明の帯電状態表示方法を図2を用いて説明する。
本発明の帯電状態検出装置の誘電体層側に物体を配置してその帯電状態を検出させるが、帯電状態検出装置における接地された導電性基板(0V電位)と物体8との距離が近くなればなるほど、より強い電界が形成されるので、電子ペーパー表示素子2の状態を変化させやすい、言い換えると、可視化表示させたい物体8の帯電電荷量が少ない場合でも可視化が可能になるので、物体8と誘電体層6とは、1mm以下のギャップを介して近接させるか、接触あるいは密着させて検出することが好ましい。
【0073】
本発明の帯電状態表示方法は、その初期化として、電子ペーパー表示素子層に、当該電子ペーパー表示素子層の面内方向の成分を有する電界を印加することが好ましい。初期化をすることにより、それまでの表示を消去できるので、電子ペーパー表示素子を何度でも繰り返し使用することができる。また、正または負の帯電状態と無帯電状態とを判別しやすくすることができる。
【0074】
図3にその一実施態様を示す。図3において、電子ペーパー表示素子2の近傍に、これを挟むように一対の電極10,11を配置している。このとき、一対の電極の間隔は、直近の電子ぺーパー表示素子のみを制御できるよう、電子ペーパー表示素子の大きさよりも小さくとってある。一対の電極10,11は、一方を0Vとし、もう一方に正または負の電位を印加することによって面内方向の成分を有する電界を印加することができ、図3においては、電極10を0Vとし、電極11に負の電位を印加している。すると、電子ペーパー表示素子2の正極性部分は負の電位を印加した電極11側を、負極性部分は0Vの電極10側を向くので、図3に向かっては左側が正、右側が負になるように回転する。そして、すべての電子ペーパー表示素子2に同様に電界を印加すれば、正負正負と交互に並ぶことになる。電界感応素子2が十分に小さい場合には、おおむね正を表示する色と負を表示する色との中間色に見えることが多い。このようにして帯電状態の表示をリセットし初期化とすることができる。なお、帯電状態表示を消去するための電極と電源は装置本体に組み込んでも良いし、取り外しが可能な別の装置としても良い。
【0075】
また、測定前に誘電体層を市販の除電器を用いて除電することも好ましい。
【0076】
また本発明の帯電状態表示方法は、本発明の帯電状態検出装置を複数用い、その少なくとも一つに正帯電状態を識別させ、また他の少なくとも一つに負帯電状態を識別させ、これらの識別結果に基づいて物体の帯電状態を表示することを特徴とするものでもある(その態様の詳細については、本発明の帯電状態検出装置の複合システムの態様の説明を参照。)。
【0077】
また本発明の帯電状態表示方法は、その対象とする物体として、電気絶縁性シートに好ましく適用することができる。
【0078】
電気絶縁性シートとして具体的には、一般に絶縁性高分子からなり表面抵抗値が1012Ω/□以上であり、電気を通さない材質からなるシートを好適な対象とする。このような電気絶縁性シートの体積抵抗率は、通常、1012Ω・m以上である。電気絶縁性シートの材質としてはたとえば、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリオレフィン系などの絶縁性高分子を好適な対象とする。
【0079】
また、電気絶縁性シートの表面には放電処理やコーティングなどが施されていてもよい。例えば、片面に金属などの導電薄膜が形成したり、後工程での接着性を良くするために易接着剤がコーティングしたり、ぬれ性を向上するために放電加工を施したり等である。特にそのような態様においては、電気絶縁性シートの表面と裏面とで異なった性質を有する傾向にあるので、本発明の好適な対象となる。尚、その片面に導電性膜が形成されていても、他方の面の絶縁性が保たれておれば、本発明の好適な対象である電気絶縁性シートたりうる。
【0080】
また、電気絶縁性シートの厚みにとしては、0.5〜500μmの範囲のものがよく工業的に扱われる。
【0081】
次に、本発明の電気絶縁性シートのロール体の製造方法は、本発明の帯電状態表示方法による検査工程を含むことを特徴とするものである。
【0082】
また、本発明の電気絶縁性シートのロール体の製造方法は、電気絶縁性シートと接触するロールに近接して、本発明の帯電状態検出装置を設け、該帯電状態検出装置の表示に基づいて製造条件を設定することを特徴とするものでもある。
【0083】
そうすることで、静電気によるゴミの付着や後工程での塗布ムラや張り付き、しわの発生などを抑えて品位の高い電気絶縁性シートのロール体を提供することができる。
【0084】
本発明の電気絶縁性シートロール体の製造方法の一態様例を図7に示す。
【0085】
図7において、電気絶縁性シート31を介して巻取コア34に押圧ロール33を密着させ、その押圧力を調整することにより巻き込み空気量をコントロールする。押圧力の調整には、エアシリンダなど(図示せず)を用いることができる。図7に示す巻取装置の前工程には、通常、電気絶縁性シートを搬送する目的や張力を制御する目的で多数の装置や他のロールが配置されている。絶縁性シートロール体27とは巻取コア34に順次絶縁性シートが巻き上げられたものを指し、絶縁性シートの移動に伴って押圧ロール33は時計回りに、巻取コアは反時計回りに回転し巻取コア34に順次シートが巻き取られていく。
【0086】
押圧ロール33は前述のようにを用いずに絶縁性シートを巻き取ると、巻き込み空気量を調整しシワの発生を防止するので、好ましく採用することができるが、押圧ロール33を密着させて強く押圧をかけニップしながら絶縁性シートを巻き取ると、押圧ロール33と絶縁性シートの間で強い摩擦帯電が発生する傾向にあるので、絶縁性シートの帯電状態を監視し制御する必要がある。
【0087】
なお、図7には図示していないが、電気絶縁性シートの巻取部には、帯電を中和する目的で除電器を設置してもよい。除電装置としては、交流式、直流式、交流高周波式、送風式などの電圧印加式静電気除去装置や、導電性繊維やカーボンブラシを用いた自己放電式除電装置などを挙げることができる。
【0088】
本発明の帯電状態検出装置1をロール体27の近くに設置し、ロール体27の帯電状態を監視することができる。
【0089】
ロール体27が回転している場合は、帯電状態検出装置1の誘電体層とロール体27との接触による摩擦帯電を防ぐよう、接触しない程度に接近させて帯電状態検出装置1を設けることが好ましい。
【0090】
巻取り中に異常な帯電状態を確認した場合にはたとえば、摩擦帯電を抑制するようにに面圧条件や速度、除電条件を変更し電気絶縁性シートの品質を一定に保つこともできるし、ロール体の製造を途中で中止し生産ロスを最小限にくい止めても良い。
【0091】
また、ロール体27の巻き取りを停止した場合は、図9に示すようにロール体27の表層に帯電状態表示装置1を被せるとロール体の帯電状態を確認することができる。
【0092】
また、図8は押圧ロールの表面に本発明の帯電状態検出装置1を組み込んだ1例である。この態様は、押圧ロールの帯電状態を監視することができ、製造プロセスを管理するに役立つ。
【0093】
また、押圧ロールに組み込む他、搬送を助けるガイドロールやニップロール、フィルムのシワをのばすためのエキスパンダロール、コロナ放電処理を行う処理ロールなどにも本発明の帯電状態表示装置を組み込むことができる。
【0094】
【実施例】
以下本発明を実施例を用いて説明する。
【0095】
(実施例1)
ツイストボールの正極性部分の素材として、透明なポリエステル樹脂にヘキスト社製のトリフェニル系帯電制御剤“コピーブルーPR”を6重量%含有させ、顔料としてカーボンブラックを含有させて黒色とした。
【0096】
また、負極性部分の素材として、含金属アゾ化合物”ボントロンSE”を5重量%含有させ、顔料として酸化チタンを含有させて白色とした。
【0097】
それぞれの素材から半球を形成し、当該2種の半球を組み合わせて直径20μmのボールとした。このボールをオイルの中に落とし、ボールの表面をオイルで被覆した。
【0098】
別途製作した、空孔を有するシリコーンエラストマー板にスクリーン印刷法にてツイストボールを配置し、ツイストボールによる電子ペーパー表示素子層を得た。なお、空孔の直径はツイストボールの直径よりも僅かに大きいので、各ツイストボールはその空孔内で回転することができる。
【0099】
誘電体層には、透明なポリエステル系のフィルム(東レ製、膜厚38μm)を採用した。また、導電性基板の導体にはITO電極を採用した。
【0100】
電子ペーパー表示素子層の片面に導電性基板を、もう一方の面に誘電体層を積層した。また、導電性基板の導体は導線を通じて接地した。
【0101】
初期状態において、電子ペーパー表示素子層は白と黒の中間色である灰色を呈していた。
【0102】
このようにして得た本発明の帯電状態検出装置を、電気絶縁性シートとして厚さ6μmのポリエステルシートに接触させたところ、電子ペーパー表示素子が瞬時に回転し、帯電の分布状態を表示した。
【0103】
その表示結果の拡大図を図10に示す。図10は透明な電気導体をふくむ基板側から観察した結果である。帯電の大きさは全体で16mmで、樹枝状の帯電パターンを呈し、枝状に延びた先端の幅が約0.3mmである。帯電極性はツイストボールの回転による黒色への呈色から、正帯電であると判った。
【0104】
(参考例1)
実施例1で用いたポリエステルシートを、その帯電状態を変化させないよう注意を払いながら帯電状態検出装置から離し、このポリエステルシートに対して、コピー機に使用されているトナーを振りかけて帯電状態を可視化したところ、実施例1の結果とよく一致していた。
【0105】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、他のポリエステルシートの帯電状態の表示を行った。その表示結果の拡大図を図11に示す。図11は透明な電気導体をふくむ基板側から観察した結果である。
【0106】
このように、電気絶縁性シートの帯電状態について、無帯電部分を灰色に、正帯電部分を黒色に、負帯電部分を白色に区別して表示することが出来た。
【0107】
(実施例3)
図7に巻き取り部分を示すような態様により、絶縁性シートのロール体の製造を行った。
【0108】
絶縁性シート1として、厚み20μm、幅1050mmのコロナ放電加工を施したポリプロピレンフィルムを、巻き取り速度150m/分にて巻長7000m巻き取った。
【0109】
押圧ロール33は面圧300N/mになるようにエアシリンダで巻取コア34に押しつけた。また張力は50N/mとした。
【0110】
巻取コア34には、ガラス繊維強化樹脂製のものを採用した。
【0111】
帯電状態検出装置1は、実施例1で用いたのと同様のものを巻取コア近傍に設けた。また同装置1には、絶縁性シートが巻き上げられるに従って後方に退避する機構を付設した。
【0112】
また、図7には図示していないが、ロール体の電位を低減する目的で、巻取コア近傍には巻取コアに向けて除電器を設けた。除電器には、帯電状態検出装置と同様に、絶縁性シートが巻き上げられるに従って後方に退避する機構を付設した。除電器の印加電圧の初期値は5kVとした。
【0113】
帯電状態検出装置1にて帯電の異常を監視しながら巻き取りを行い、その開始から7分経過後(1050m巻取時)、装置1により放電痕が検出された。ポリプロピレンフィルムは負に強く帯電する傾向があるため、巻き太って絶縁性シートが積層されるに従い絶縁性シートのロール体の電位が上昇し、前記除電器の除電能力を上まわると押圧ロールとの間で放電を発生し易くなるという知見に基づき、ここで除電器の印加電圧を9kVに変更した。また、帯電状態検出装置1の表示状態を初期化して再び帯電状態の異常を監視しながら巻き続けたところ、以降は異常な放電痕を検出しなくなり、製品を異常帯電によりシワ等の欠点を発生させることなく巻き上げることができた。
【0114】
【発明の効果】
本発明により、電気絶縁性シート等の物体の帯電状態を、その物体を汚損することなく簡便かつ精密に可視化出来る表示装置あるいは表示方法を提供することができる。
【0115】
またひいては、電気絶縁性シートの帯電状態を、電気絶縁性シートを汚損することなく簡便かつ精密に管理することにより、静電気によるゴミの付着や後工程での塗布ムラや張り付き、しわの発生などを抑えて品位の高い電気絶縁性シートのロール体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の帯電状態検出装置の1例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の帯電状態表示方法の1例を示す概略図である。
【図3】本発明の帯電状態の消去方法の1例を示す概略図である。
【図4】本発明の帯電状態表示方法の1例を示す概略図である。
【図5】本発明の帯電状態表示方法の1例を示す概略図である。
【図6】本発明の帯電状態表示方法の構成図を示す図である。
【図7】本発明の電気絶縁性シートロール体の製造方法の1例であって、帯電状態検出装置を押圧ロールに組み込んだ場合の構成概略図である。
【図8】本発明の電気絶縁性シートロール体の製造方法の1例であって、帯電状態装置をロール体近傍に設置した場合の構成概略図である。
【図9】本発明の帯電状態検出装置を用いて、電気絶縁性シートロール体の帯電状態を確認する1例を示す概略図である。
【図10】本発明による電気絶縁性シートの帯電状態表示結果を示す1例図である。
【図11】本発明による電気絶縁性シートの帯電状態表示結果を示す1例図である。
【符号の説明】
1:帯電状態検出装置
2:電子ペーパー表示素子
3:電気導体
4:基板
5:電子ペーパー表示素子層
6:誘電体層
7:アース線
8:帯電した電気絶縁性シート
9:導線
10:アースを接続する電極
11:電圧を印加する電極
12:直流電源
20:電子ペーパー表示素子の状態を表示する表示手段
21:正極性に帯電した部位を持つ電子ペーパー表示素子
22:正電荷に感応した状態を表示する表示手段
23:負極性に帯電した部位を持つ電子ペーパー表示素子
24:負電荷に感応した状態を表示する表示手段
25:帯電状態の情報を処理する処理器
26:帯電状態の処理結果を表示する表示装置
27:電気絶縁性シートのロール体
28:本発明の装置により検出した静電気帯電部分
31:電気絶縁性シート
33:押圧ロール
34:巻取コア
Claims (20)
- 電子ペーパー表示素子を有し、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分の少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態と異なる色で表示することを特徴とする帯電状態検出装置。
- 導電性基板と、電子ペーパー表示素子を配した電子ペーパー表示素子層と、誘電体層とをこの順に積層して備えた帯電状態検出装置であって、前記誘電体層側からの外部電界を受容可能に構成されていることを特徴とする帯電状態検出装置。
- 前記導電性基板に導電的に接続され、外部の接地点に接地可能なリードをさらに有する請求項2記載の帯電状態検出装置。
- 電子ペーパー表示素子層に配した電子ペーパー表示素子が帯電状態を検出して、さらに電子ペーパー表示素子が帯電状態を視認可能に表示する請求項2または請求項3記載の帯電状態検出装置。
- 電子ペーパー表示素子層における電子ペーパー表示素子の状態を検出してこれを表示する表示手段をさらに有する請求項2または3記載の帯電状態検出装置。
- 導電性基板が透明である請求項2〜5のいずれか記載の帯電状態検出装置。
- 電子ペーパー表示素子層と誘電体層との厚みの合計が0.1μm〜1000μmである請求項2〜6のいずれか記載の帯電状態検出装置。
- 誘電体層と電子ペーパー表示素子層とを合わせた部分の対接地静電容量が1pF/m2〜1μF/m2の範囲内である請求項2〜7のいずれか記載の帯電状態検出装置。
- 電子ペーパー表示素子が、絶縁性溶媒で包囲されており表面に光学特性の異なる2つ以上の領域を有し、かつ帯電特性の異なる2つ以上の領域を有する複数の回転粒子を含むものである請求項1〜8のいずれか記載の帯電状態検出装置。
- 電子ペーパー表示素子が、絶縁性溶媒と該絶縁性溶媒中に移動可能に分散された該絶縁性溶媒と異なる光学特性の電気泳動粒子とを内蔵する複数の小領域を有するものである請求項1〜8のいずれか記載の帯電状態検出装置。
- 前記小領域が前記絶縁性溶媒と前記電気泳動粒子とを封入したマイクロカプセルである請求項10記載の帯電状態検出装置。
- 前記小領域として、前記絶縁性溶媒と前記電気泳動素子とを封入した複数のセルが前記誘電体層の面内方向に配列されてなる請求項10記載の帯電状態検出装置。
- 請求項1〜12のいずれか記載の帯電状態検出装置を複数用いてなり、その少なくとも一つが正帯電部分を識別できるものであり、他の少なくとも一つが負帯電部分を識別できるものであり、さらにこれらの帯電状態の情報を処理する処理装置と、その情報の処理結果を表示する表示装置を備えたことを特徴とする帯電状態検出装置の複合システム。
- 電子ペーパー表示素子を用いて、物体の無帯電部分、正帯電部分、負帯電部分のうち少なくとも一つの帯電状態の部分を他の帯電状態の部分と異なる色で表示することを特徴とする帯電状態表示方法。
- 請求項2〜12のいずれか記載の帯電状態検出装置を用いる帯電状態表示方法であって、当該帯電状態検出装置における導電性基板を電気的に接地し、その基板と物体との電位差によって発生する電界により電子ペーパー表示素子の状態を変化させることを特徴とする帯電状態表示方法。
- 電子ペーパー表示素子層に、該電子ペーパー表示素子層の面内方向の成分を有する電界を印加する、請求項15記載の帯電状態表示方法。
- 請求項1〜12のいずれか記載の帯電状態検出装置を複数用い、その少なくとも一つに正帯電状態を識別させ、また他の少なくとも一つに負帯電状態を識別させ、これらの識別結果に基づいて物体の帯電状態を表示することを特徴とする帯電状態表示方法。
- 物体が電気絶縁性シートである請求項13〜16のいずれか記載の帯電状態表示方法。
- 請求項18記載の帯電状態表示方法による検査工程を含むことを特徴とする電気絶縁性シートのロール体の製造方法。
- 電気絶縁性シートと接触するロールに近接して、請求項1〜12のいずれか記載の帯電状態検出装置を設け、該帯電状態検出装置の表示に基づいて製造条件を設定することを特徴とする電気絶縁性シートのロール体の製造方法。
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