JP2004293132A - 外壁構造および複合外壁パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】環境依存性透湿シートによる結露防止機能を有効に発揮し、断熱性や防音性などの機能も良好な外壁構造にする。
【解決手段】建築物の屋外空間Oに面して配置される外装部材40と、外装部材40の屋内側の通気空間50と、通気空間50の屋内側で透湿性を有する断熱材22と、断熱材22の屋内側で屋内空間Rに面する内装部材30とを備え、内装部材30は、屋内空間Rに面し透湿性を有する内装仕上げ層34、35と、内装仕上げ層34、35の屋外側で、設置環境の温度および湿度で透湿度が変化する環境依存性透湿層33と、内装仕上げ層34、35の屋外側の透湿性発泡樹脂層32とを含む外壁構造である。
【選択図】 図1
【解決手段】建築物の屋外空間Oに面して配置される外装部材40と、外装部材40の屋内側の通気空間50と、通気空間50の屋内側で透湿性を有する断熱材22と、断熱材22の屋内側で屋内空間Rに面する内装部材30とを備え、内装部材30は、屋内空間Rに面し透湿性を有する内装仕上げ層34、35と、内装仕上げ層34、35の屋外側で、設置環境の温度および湿度で透湿度が変化する環境依存性透湿層33と、内装仕上げ層34、35の屋外側の透湿性発泡樹脂層32とを含む外壁構造である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外壁構造および複合外壁パネルに関し、詳しくは、住宅などの建築物において屋内空間と屋外空間とを仕切る外壁の構造と、このような外壁を構築するのに利用される複合外壁パネルとを対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
住宅などの建築物における一般的な外壁の構造は、屋外側から屋内側へと順番に、外装部材、断熱材および内装部材が配置される。このような外壁構造において、壁面内部における結露の防止は重要な課題である。結露問題には、冬型結露と夏型結露がある。
冬型結露は、冬期に屋外空間が低温になり、屋内空間が暖房などで高温高湿になることにより発生する。例えば、屋内空間の高温で高湿の空気が、透湿性のある内装部材を通過して外壁の内部に侵入したところで急冷され、内装部材の内面で結露を生じて、カビの繁殖や内装部材の変質・腐食などを引き起こす。
【0003】
夏型結露は、夏期に屋外空間が高温高湿になり、屋内空間は冷房などで低温になったときに発生する。外壁の内部に存在する高温高湿の空気が、屋内空間からの伝熱で冷却された内装部材の内面と接触して冷却されることで、内装部材の内面で結露が生じる。この夏型結露は、外壁構造として、外装部材と断熱材との間に通気空間を設けている場合には、通気空間を流通する空気が高温高湿になって内装部材の内面に接触する状態であると、余計に甚だしくなる。
従来、冬型結露を防止するには、外壁構造を構成する各部材に防湿性材料を使用することで、壁の内部に湿気が侵入しないようにすることで対応されていた。
【0004】
また、夏型結露を防止する方法として、透湿性の高い内装部材を使用することで、外壁の内部空間に発生した湿気を、内装部材を通過させて屋内空間へと逃がす技術が提案されている。
さらに、冬型結露と夏型結露の両方を防止する方法として、内装部材の内面に、温度および湿度に依存して透湿度が変化する環境依存性透湿シートを配置しておく技術が提案されている。環境依存性透湿シートは、湿度および温度が高いときには透湿性が良好であるが、湿度および温度が低いと透湿性がなくなる。したがって、夏期には、外壁内部に溜まった湿気を屋内空間に逃がす機能を果たして、夏型結露の発生を防止する。冬期には、屋内空間の湿気が外壁内部に侵入しないように遮断する機能を果たして、冬型結露の発生を防止する。このような環境依存性透湿シートとして、ザバーン(登録商標)BF(商品名、デュポン社製)が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記した環境依存性透湿シートを利用しても、外壁内部における結露が防止できない場合がある。また、環境依存性透湿シートで結露防止の機能を果たそうとすると、室内空間の断熱性や防音性が低下するという問題が発生する。
これは、環境依存性透湿シートによる夏型結露の防止を果たすには、内装部材の全体が湿気を良好に通過させる透湿性を有している必要がある。しかし、内装部材を構成する部材層のうち、断熱性や防音性などの機能を果たすための部材層は、その機能上、透湿性の低い材料が多い。環境依存性透湿シートよりも屋内側に、前記のような透湿性に劣る部材層が配置されると、この透湿性に劣る部材層の内面で結露が発生する。環境依存性透湿シートよりも屋外側に透湿性に劣る部材層が配置された場合には、透湿シートを配置する意味がなくなり、この場合も、透湿性に劣る部材層の内面で結露が発生する。
【0006】
内装部材を構成する全ての部材層を、透湿性の高い材料にすれば、環境依存性透湿シートによる夏型結露の防止機能は良好になるが、断熱性や防音性が低下して、居住環境を損なうことになる。
しかも、冬型結露に関して、特に、前記した通気空間を有する外壁構造の場合などは、内装部材が過度に低温になってしまい、内装部材の屋内側の表面で結露が発生し易くなってしまう。
本発明の課題は、前記した外壁構造において、環境依存性透湿シートによる結露防止機能を有効に発揮させるとともに、断熱性や防音性などの機能についても良好な性能が発揮できるようにすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる外壁構造は、建築物の屋内空間と屋外空間とを仕切る外壁の構造であって、前記屋外空間に面して配置される外装部材と、前記外装部材の屋内側に配置される通気空間と、前記通気空間の屋内側に配置され透湿性を有する断熱材と、前記断熱材の屋内側に配置され前記屋内空間に面して配置される内装部材とを備え、前記内装部材は、前記屋内空間に面して配置され透湿性を有する内装仕上げ層と、前記内装仕上げ層の屋外側に配置され、設置環境の温度および湿度で透湿度が変化する環境依存性透湿層と、前記内装仕上げ層の屋外側に配置される透湿性発泡樹脂層とを含む。
【0008】
〔建築物の外壁〕
建築物の屋内空間と屋外空間とを仕切る外壁であれば、建築物の種類や配置場所あるいは細部の構造は特に限定されない。
建築物として、一般住宅のほか、集合住宅やオフィスビル、工場、公共施設などが含まれる。外壁として、建築物の外周側面を囲む外側壁のほか、傾斜壁面や屋根壁面なども含まれる。
外壁の基本構造として、木柱や鉄骨、コンクリート躯体などで構築された骨組構造に、内装部材、外装部材、断熱材などを順次取り付け施工していくもののほか、予め外壁構造が組み上げられたパネルすなわち複合外壁パネルを、建築物の外壁個所に敷設し連結固定して施工するものもある。外壁構造の一部は複合外壁パネルで構成しておき、残りの構造は、現場に構築された複合外壁パネルに、取り付けたり塗工形成したりするものもある。
【0009】
〔外装部材〕
建築物の外側の屋外空間に面して配置される。
基本的には、通常の建築物における外装部材と共通する材料や構造が適用できる。
具体的には、ALC板やセメント板、セラミックタイルなどの外装仕上げ材が使用できる。モルタル吹付け壁や塗装仕上げも適用される。外壁の骨組構造の表面を覆って、セメント板などからなる外装下地板を施工したあと、外装下地板の表面に外装仕上げ板を取り付けていくこともできる。
【0010】
外装部材が透湿性あるいは通気性を有していると、通気空間その他の外壁内部に発生したり溜まったりした湿気を、外装部材を通して屋外空間に放出させることができる。但し、外装部材は、透湿性は有していても、雨水などの侵入を阻止できる防水性の高いものが好ましい。
外装部材の屋内側になる内面に、防水フィルムなどによる防水層を設けることもできる。
〔通気空間〕
外装部材の屋内側に配置される。屋外空間の空気すなわち外気が流通する。
【0011】
具体的には、外壁の骨組構造に対して、部分的あるいは断続的に配置された桟などの間隔保持材を介して、外装部材を取り付けるようにすることで、通気空間を構成することができる。
通気空間は、外壁の上下端を開放しておく。外壁の上端で屋根裏空間や軒下空間に連通させておくこともできる。外壁の下端が床下空間に連通していてもよい。通気空間は上下方向だけでなく、横方向にも連通させておくことができる。通気空間には、必要に応じて屋外空間との連通を可能にしたり遮断したり出来る開閉ダンパ構造を備えておくこともできる。
【0012】
外装部材の内側に通気空間が存在すると、通気空間に存在する空気層が断熱機能を果たす。例えば、夏期の日射によって外装部材が過熱されたときに、外装部材の熱が外壁の屋内側に伝達され難くなる。逆に、冬期に寒気が吹き付けて外装部材が冷却されたときにも、外壁の屋内側までが過度に冷却されるのを防止できる。また、外壁の内部空間に溜まった湿気を、通気空間を流通する気流によって運び去るという機能も期待できる。
通気空間の厚みは、建築物の構造などによっても異なるが、通常は5〜30mmに設定される。
【0013】
但し、通気空間が存在することによって、内装部材の内面側が通気空間に露出し、そのことによる弊害も生じる。例えば、通気空間を流通する空気で内装部材が加熱されたり冷却されたりする。通気空間を流通する空気が湿気を持ち込むこともある。このような弊害を解消するのに、後で詳述する内装部材の構成が有効となる。雨水などの水分が外装部材の隙間などから通気空間に浸入して、外壁の内部空間を高湿状態にすることもある。
〔断熱材〕
通気空間の屋内側に配置され透湿性を有する。
【0014】
基本的には、通常の建築物における外壁用の断熱材と共通する材料や構造が採用できる。但し、通気空間から内装部材側へと湿気が通過できる透湿性を有する断熱材を用いる。これによって、通気空間に侵入したり溜まったりした湿気を、断熱材および内装部材を経て室内空間に放出させることが可能になる。
断熱材の具体例として、グラスウールなどからなるマットが使用できる。多孔質板材も使用できる。合成樹脂発泡体も使用できる。
断熱材の厚みは、施工条件や要求性能によっても異なるが、通常は30〜100mmに設定できる。
【0015】
断熱材のうち、通気空間に露出する面に、防水シートなどの防水層を設けておけば、雨水などが通気空間から断熱材へ浸入するのを阻止できる。防湿層を設けておけば、湿気の浸入も防止できる。但し、断熱材側から通気空間に湿気を逃がすようにするには、防湿層を設けないほうが良い。また、防湿層として、環境依存型透湿シートを使用すれば、適切な透湿と防湿・防水の機能を果たすことも可能になる。
〔内装部材〕
断熱材の屋内側に配置され屋内空間に面して配置される。
【0016】
基本的には、通常の建築物における内装部材と共通する材料や構造を採用することができる。
<内装仕上げ層>
内装部材には、屋内空間に面して配置され、屋内空間に露出する内装仕上げ層を備える。
内装仕上げ層の材料および構造は、通常の内装部材における内装仕上げ層と同様であるが、透湿性を有する材料や構造を採用することで、外壁の内部から屋内空間へと湿気を排出することが可能になる。
【0017】
内装仕上げ層の具体例として、石膏ボードや繊維集積ボードなどの各種建材ボードが使用できる。珪藻土などの調湿材が配合された建材ボードも使用できる。石膏ボードなどのボード類を下地材にして、その表面に表装材となる壁紙や壁布を貼り付けておくこともできる。漆喰や石膏プラスターによる塗り壁、塗装仕上げなども採用できる。したがって、内装仕上げ層は、単一材料層からなる場合と、複数の材料層が積層される場合とがある。
<環境依存性透湿層>
内装部材の中で内装仕上げ層よりも屋外側に配置され、設置環境の温度および湿度で透湿度が変化する。
【0018】
環境依存性透湿層として、夏期に多い高温・高湿環境では透湿度が大きいが、冬期に多い低温・低湿環境では透湿度が小さく実質的に非透湿性になるものが使用される。夏期の代表的な環境条件として、温度30〜40℃、相対湿度80〜90%を想定できる。冬期の代表的な環境条件として、温度20℃、相対湿度60〜70%を想定できる。
具体的には、30℃、相対湿度90%における透湿抵抗2〜50m2・h・mmHg/gであり、20℃、相対湿度60%における透湿抵抗100〜900m2・h・mmHg/gであるものが好ましい。
【0019】
環境依存性透湿層を構成する材料として、商品名ザバーン(登録商標)BF(デュポン社製)が挙げられる。
環境依存性透湿層の厚みは、目的とする機能が発揮できれば良く、通常は、0.1〜1.0mmに設定できる。
<透湿性発泡樹脂層>
内装仕上げ層の屋外側に配置される。
内装部材を構成する他の部材と同様に透湿性を有するとともに、良好な断熱性や防音性も発揮する。
【0020】
透湿性発泡樹脂層の透湿性として、40℃、相対湿度90%における透湿抵抗2〜10m2・h・mmHg/gであるものが好ましい。但し、環境依存性透湿層のような環境依存性は必要とされない。
透湿性発泡樹脂層の断熱性を評価する熱伝導率は、0.01〜0.04kcal/m・h・℃であるものが好ましい。より好ましくは、0.02〜0.03kcal/m・h・℃である。
透湿性発泡樹脂層の厚みは、透湿性や断熱性などの要求性能によっても異なるが、通常は10〜30mmに設定できる。
【0021】
上記のような特性を有する透湿性発泡樹脂層として、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)が使用できる。これは、予備発泡させたポリスチレンビーズを型成形と同時に2次発泡させて得られる発泡樹脂成形品である。密度、発泡倍率、成形圧力、成形時の水蒸気投入量、その他の製造条件の設定によって、必要な透湿性および断熱性を持たせることができる。例えば、密度を小さくするほど、透湿度は高まるが熱伝導率は低下する傾向がある。密度10〜40kg/m3の範囲に設定できる。
<内装部材の層構成>
内装部材は、前記した内装仕上げ層、環境依存性透湿層および透湿性発泡樹脂層を有していれば、その他の部材層を含んでいてもよく、配置構造も特に限定されない。
【0022】
例えば、内装部材の内面側には、内装部材を外壁の骨組構造に取り付けるための内装下地層を配置しておくことができる。内装下地層としては、合板や石膏ボード、木質繊維ボードなどが使用できる。内装下地層も透湿性に優れたものが好ましい。
内装部材には、透湿性発泡樹脂層に加えて、断熱機能や防音機能を果たす部材層を設けておくこともできる。防水機能や防火機能、防カビ機能を果たす部材層も採用できる。
内装部材の屋外空間に露出する面には内装仕上げ層が配置される必要があるが、環境依存性透湿層および透湿性発泡樹脂層については、どちらが室内側に配置されても構わない。透湿性発泡樹脂層の内外両面に環境依存性透湿層が配置されていてもよい。内装下地層の屋外側に透湿性発泡樹脂層を配置することもできる。
【0023】
〔複合外壁パネル〕
前記した外壁構造を構成する各部材層が、1枚のパネルに組み立てられたものである。
したがって、前記外壁構造と同様に、外装部材、通気空間、断熱材および内装部材とを備える。内装部材には、内装仕上げ層、環境依存性透湿層、透湿性発泡樹脂層が含まれる。
独立した状態で輸送保管し、建築物に施工して外壁を構成できるように、複合外壁パネルには骨組構造となる枠体を備えている。枠体は通常、型鋼材などを枠状に組み立てた鋼枠で構成される。枠体の片面には通気空間を介して外装部材が取り付けられ、反対面には内装部材が取り付けられる。枠体の内部空間に断熱材が収容できる。
【0024】
複合外壁パネルは、外壁構造を構成する全ての層が設けられていてもよいし、一部の層は複合外壁パネルには設けておかず、複合外壁パネルを建築物に施工したあとで、必要な部材層を取り付けたり、仕上げ層を塗工形成したりすることもできる。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1に示す外壁構造は、複合外壁パネル10を用いて構築されている。
〔複合外壁パネル〕
複合外壁パネル10の基本構造は、鋼枠20と外装仕上げ板40と内装部材30と通気空間50とで構成されている。
鋼枠20は、C形鋼材などを矩形枠状に組み立て溶接などで接合したものである。鋼枠20の内部空間には、厚み60mmのグラスウールマットからなる断熱材22が収容されている。
【0026】
外装仕上げ板40は、矩形状のセメント板などからなり、あいじゃくり構造などで互いに連結されて複合外壁パネル10の屋外空間Oに面する表面を覆っている。外装仕上げ板40は、合板などからなる外装下地板42の表面に取り付けられている。
通気空間50は、厚み20mmであり、鋼枠20の表面に桟材46を介して、外装下地板42および外装仕上げ板40を取り付けることで、外装下地板42と鋼枠20および断熱材22との間に空気が流通自在な空間を設けることで構成している。桟材46は鋼枠20の各辺に断続的に設けられていて、通気空間50が複合外壁パネル10の端辺から外部に連通するようになっている。
【0027】
内装部材30は、鋼枠20の屋内空間Rに面する表面に設けられている。内装部材30は、鋼枠20側から順に、合板などからなる内装下地板31、ビーズ法ポリスチレンフォーム(例えば、内山工業社、岩倉化学工業社の製品)からなる透湿性発泡樹脂層32、ザバーン(登録商標)BF(商品名、デュポン社製)からなる環境依存性透湿層33、石膏ボード34および壁紙35が積層されている。何れの部材も、透湿性を有している。
<ザバーン(登録商標)BFの諸元>
厚さ0.23mm、ポリプロピレンスパンボンド不織布。
【0028】
30℃、相対湿度90%における透湿抵抗2.5m2・h・mmHg/g、20℃、相対湿度60%における透湿抵抗400m2・h・mmHg/g、耐水圧2000mmH2O以上。
<ビーズ法ポリスチレンフォームの諸元>
厚さ20mm、密度20kg/m3。
40℃、相対湿度90%における透湿抵抗8m2・h・mmHg/g、熱伝導率0.03〜0.034kcal/m・h・℃。
〔外壁構造〕
複合外壁パネル10は、通常の複合外壁パネルと同様の施工方法によって、建築物の壁面を構築する。
【0029】
図1に示すように、複合外壁パネル10を建築物の屋外空間Oと屋内空間Rとを仕切る外壁に建てつけて設置する。複合外壁パネル10は、ボルト結合などで建築物の柱材や土台に固定される。また、複合外壁パネル10同士を並べて連結固定する。複合外壁パネル10の通気空間50が、上下方向および横方向に連通するように配置する。通気空間50は、外壁の下端では直接にあるいは床下空間を介して屋外空間Oと連通し、外壁の上端では屋根裏空間や軒下空間を介して屋外空間Oと連通する。複合外壁パネル10の端辺における連結個所では、目地処理などを行って隙間を塞ぐ。
【0030】
複合外壁パネル10の屋内空間R側の表面では、壁紙35などの表装部材を設けておかず、建築物に施工して壁面が構築されたあとで、壁面全体に壁紙35を貼るなどして表装仕上げを施せば、複合外壁パネル10同士の継目が目立たなくなる。
〔結露防止機能〕
<冬型結露>
図2を参照して、冬型結露の防止機能を説明する。
冬期においては、屋内空間Rが、暖房で昇温するとともに調理などの居住活動によって湿気も発生し易い。屋外空間Oは低温であり、外装仕上げ板40に吹き付ける寒風で冷却される作用もある。通気空間50に空気を流通させることで、外装仕上げ板40から断熱材22側への冷熱の伝達を軽減することもできるが、内装部材30の内面側が冷却されることは避けられない。通気空間50を流通する空気自体が低温になっているので内装部材30を冷却することにもなる。内装部材30が過度に冷却されると、内装部材30の屋内空間Rに面する表面で、屋内空間Rの空気が急冷されて相対湿度が上昇し、内装部材30の表面に結露が発生することがある。
【0031】
しかし、内装部材30に透湿性発泡樹脂層32が存在していると、内装部材30を貫通する熱伝達を遮断し、内装部材30の屋内空間R側の表面が過度に冷却されることが防止できる。その結果、内装部材30の表面における結露が有効に防止できる。
しかも、環境依存性透湿層33については、室内空間Rを暖房していたとしても、内装部材30の内部はそれほど高温にはならないので、比較的に低温環境におかれた状態である。環境依存性透湿層33は比較的に低い温度および低い湿度環境におかれることになる。例えば、環境依存性透湿層33の個所における温度が20℃、湿度が60%などになる。
【0032】
この状態では、環境依存性透湿層33は透湿性を失い非透湿層あるいは防湿層として機能する。屋内空間Rで発生した湿気が、内装部材30を通過して断熱材22などの壁内部に侵入することが防止でき、壁内部における結露の発生が阻止できる。
<夏型結露>
図1は、夏型結露の防止機能を説明している。
夏期においては、屋外空間Oに高温で高湿の空気が存在することが多い。強い日射が外装仕上げ板40に当たって、外装仕上げ板40を昇温させる。通気空間50を空気が流通することで、断熱材22よりも屋内側が過度に昇温することが防止できるが、通気空間50を流通する空気も高い温度になり湿度も高い状態になり易い。断熱材22から内装部材30に至る壁内の空間も高温で高湿状態になる。ところが、屋内空間Rは、冷房によって低温状態に維持されることが多い。例えば、室温が25℃であるのに対して、壁の内部温度が40℃程度にも上がる。
【0033】
壁の内部で、高温高湿の空気が、室内空間Rの冷房で冷却された内装部材30の内面に接触すると、空気が急冷され、内装部材30の内面における相対湿度は90%を超えるような高湿状態になり、結露が発生し易くなる。
しかし、環境依存性透湿層33および透湿性発泡樹脂層32を含む内装部材30の全体が透湿性を有していれば、内装部材30の内面付近における湿気は、内装部材30を通過して屋内空間R側へと排出される。特に、環境依存性透湿層33は、高温高湿環境では高い透湿性を示すので、湿気の通過を阻害することがなく、内装部材30から屋内空間Rへの湿気の排出が効率的に行われる。
【0034】
透湿性発泡樹脂層32も、通常の発泡樹脂層32に比べて良好な透湿性を有するので、内装部材30の全体における透湿性は非常に良好である。しかも、透湿性発泡樹脂層32は、屋外空間Oあるいは通気空間50側から、屋内空間R側への熱伝達を遮断するので、屋内空間Rの温度上昇を防ぎ、屋内空間Rにおける冷房効果を高めることができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明にかかる外壁構造は、内装部材に、環境依存性透湿層と透湿性発泡樹脂層とを組み合わせて使用している。夏期には、外壁内部の湿気を、内装部材を通過させて屋内空間に逃がし、内装部材の内面における夏型結露の発生を有効に防止できる。冬期には、屋内空間の湿気が外壁内部に侵入するのを、透湿性の低下した環境依存性透湿層によって遮断し、外壁内部における冬型結露の発生を有効に防止できる。
特に、外装部材と断熱材との間に通気空間が設けられていて、夏期に外壁内部に高湿で高温の空気が侵入し易く、冬期に内装部材の内面が低温になり易い外壁構造であっても、前記した夏型結露および冬型結露の防止の両方を効率的に果たすことができる。
【0036】
しかも、透湿性発泡樹脂層の存在によって、外壁構造、特に内装部材の断熱性や防音性が良好に維持できるので、居住性に優れ、住宅などの建築物に適した外壁構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を表す外壁構造の断面図
【図2】冬型結露の防止機能を説明する要部断面図
【符号の説明】
10 複合外壁パネル
20 鋼枠
22 断熱材
30 内装部材
31 内装下地材
32 透湿発泡スチレン層
33 環境依存性透湿シート
34 内装仕上げボード
35 壁紙
40 外装仕上げ板
42 外装下地材
O 屋外空間
R 屋内空間
【発明の属する技術分野】
本発明は、外壁構造および複合外壁パネルに関し、詳しくは、住宅などの建築物において屋内空間と屋外空間とを仕切る外壁の構造と、このような外壁を構築するのに利用される複合外壁パネルとを対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
住宅などの建築物における一般的な外壁の構造は、屋外側から屋内側へと順番に、外装部材、断熱材および内装部材が配置される。このような外壁構造において、壁面内部における結露の防止は重要な課題である。結露問題には、冬型結露と夏型結露がある。
冬型結露は、冬期に屋外空間が低温になり、屋内空間が暖房などで高温高湿になることにより発生する。例えば、屋内空間の高温で高湿の空気が、透湿性のある内装部材を通過して外壁の内部に侵入したところで急冷され、内装部材の内面で結露を生じて、カビの繁殖や内装部材の変質・腐食などを引き起こす。
【0003】
夏型結露は、夏期に屋外空間が高温高湿になり、屋内空間は冷房などで低温になったときに発生する。外壁の内部に存在する高温高湿の空気が、屋内空間からの伝熱で冷却された内装部材の内面と接触して冷却されることで、内装部材の内面で結露が生じる。この夏型結露は、外壁構造として、外装部材と断熱材との間に通気空間を設けている場合には、通気空間を流通する空気が高温高湿になって内装部材の内面に接触する状態であると、余計に甚だしくなる。
従来、冬型結露を防止するには、外壁構造を構成する各部材に防湿性材料を使用することで、壁の内部に湿気が侵入しないようにすることで対応されていた。
【0004】
また、夏型結露を防止する方法として、透湿性の高い内装部材を使用することで、外壁の内部空間に発生した湿気を、内装部材を通過させて屋内空間へと逃がす技術が提案されている。
さらに、冬型結露と夏型結露の両方を防止する方法として、内装部材の内面に、温度および湿度に依存して透湿度が変化する環境依存性透湿シートを配置しておく技術が提案されている。環境依存性透湿シートは、湿度および温度が高いときには透湿性が良好であるが、湿度および温度が低いと透湿性がなくなる。したがって、夏期には、外壁内部に溜まった湿気を屋内空間に逃がす機能を果たして、夏型結露の発生を防止する。冬期には、屋内空間の湿気が外壁内部に侵入しないように遮断する機能を果たして、冬型結露の発生を防止する。このような環境依存性透湿シートとして、ザバーン(登録商標)BF(商品名、デュポン社製)が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記した環境依存性透湿シートを利用しても、外壁内部における結露が防止できない場合がある。また、環境依存性透湿シートで結露防止の機能を果たそうとすると、室内空間の断熱性や防音性が低下するという問題が発生する。
これは、環境依存性透湿シートによる夏型結露の防止を果たすには、内装部材の全体が湿気を良好に通過させる透湿性を有している必要がある。しかし、内装部材を構成する部材層のうち、断熱性や防音性などの機能を果たすための部材層は、その機能上、透湿性の低い材料が多い。環境依存性透湿シートよりも屋内側に、前記のような透湿性に劣る部材層が配置されると、この透湿性に劣る部材層の内面で結露が発生する。環境依存性透湿シートよりも屋外側に透湿性に劣る部材層が配置された場合には、透湿シートを配置する意味がなくなり、この場合も、透湿性に劣る部材層の内面で結露が発生する。
【0006】
内装部材を構成する全ての部材層を、透湿性の高い材料にすれば、環境依存性透湿シートによる夏型結露の防止機能は良好になるが、断熱性や防音性が低下して、居住環境を損なうことになる。
しかも、冬型結露に関して、特に、前記した通気空間を有する外壁構造の場合などは、内装部材が過度に低温になってしまい、内装部材の屋内側の表面で結露が発生し易くなってしまう。
本発明の課題は、前記した外壁構造において、環境依存性透湿シートによる結露防止機能を有効に発揮させるとともに、断熱性や防音性などの機能についても良好な性能が発揮できるようにすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる外壁構造は、建築物の屋内空間と屋外空間とを仕切る外壁の構造であって、前記屋外空間に面して配置される外装部材と、前記外装部材の屋内側に配置される通気空間と、前記通気空間の屋内側に配置され透湿性を有する断熱材と、前記断熱材の屋内側に配置され前記屋内空間に面して配置される内装部材とを備え、前記内装部材は、前記屋内空間に面して配置され透湿性を有する内装仕上げ層と、前記内装仕上げ層の屋外側に配置され、設置環境の温度および湿度で透湿度が変化する環境依存性透湿層と、前記内装仕上げ層の屋外側に配置される透湿性発泡樹脂層とを含む。
【0008】
〔建築物の外壁〕
建築物の屋内空間と屋外空間とを仕切る外壁であれば、建築物の種類や配置場所あるいは細部の構造は特に限定されない。
建築物として、一般住宅のほか、集合住宅やオフィスビル、工場、公共施設などが含まれる。外壁として、建築物の外周側面を囲む外側壁のほか、傾斜壁面や屋根壁面なども含まれる。
外壁の基本構造として、木柱や鉄骨、コンクリート躯体などで構築された骨組構造に、内装部材、外装部材、断熱材などを順次取り付け施工していくもののほか、予め外壁構造が組み上げられたパネルすなわち複合外壁パネルを、建築物の外壁個所に敷設し連結固定して施工するものもある。外壁構造の一部は複合外壁パネルで構成しておき、残りの構造は、現場に構築された複合外壁パネルに、取り付けたり塗工形成したりするものもある。
【0009】
〔外装部材〕
建築物の外側の屋外空間に面して配置される。
基本的には、通常の建築物における外装部材と共通する材料や構造が適用できる。
具体的には、ALC板やセメント板、セラミックタイルなどの外装仕上げ材が使用できる。モルタル吹付け壁や塗装仕上げも適用される。外壁の骨組構造の表面を覆って、セメント板などからなる外装下地板を施工したあと、外装下地板の表面に外装仕上げ板を取り付けていくこともできる。
【0010】
外装部材が透湿性あるいは通気性を有していると、通気空間その他の外壁内部に発生したり溜まったりした湿気を、外装部材を通して屋外空間に放出させることができる。但し、外装部材は、透湿性は有していても、雨水などの侵入を阻止できる防水性の高いものが好ましい。
外装部材の屋内側になる内面に、防水フィルムなどによる防水層を設けることもできる。
〔通気空間〕
外装部材の屋内側に配置される。屋外空間の空気すなわち外気が流通する。
【0011】
具体的には、外壁の骨組構造に対して、部分的あるいは断続的に配置された桟などの間隔保持材を介して、外装部材を取り付けるようにすることで、通気空間を構成することができる。
通気空間は、外壁の上下端を開放しておく。外壁の上端で屋根裏空間や軒下空間に連通させておくこともできる。外壁の下端が床下空間に連通していてもよい。通気空間は上下方向だけでなく、横方向にも連通させておくことができる。通気空間には、必要に応じて屋外空間との連通を可能にしたり遮断したり出来る開閉ダンパ構造を備えておくこともできる。
【0012】
外装部材の内側に通気空間が存在すると、通気空間に存在する空気層が断熱機能を果たす。例えば、夏期の日射によって外装部材が過熱されたときに、外装部材の熱が外壁の屋内側に伝達され難くなる。逆に、冬期に寒気が吹き付けて外装部材が冷却されたときにも、外壁の屋内側までが過度に冷却されるのを防止できる。また、外壁の内部空間に溜まった湿気を、通気空間を流通する気流によって運び去るという機能も期待できる。
通気空間の厚みは、建築物の構造などによっても異なるが、通常は5〜30mmに設定される。
【0013】
但し、通気空間が存在することによって、内装部材の内面側が通気空間に露出し、そのことによる弊害も生じる。例えば、通気空間を流通する空気で内装部材が加熱されたり冷却されたりする。通気空間を流通する空気が湿気を持ち込むこともある。このような弊害を解消するのに、後で詳述する内装部材の構成が有効となる。雨水などの水分が外装部材の隙間などから通気空間に浸入して、外壁の内部空間を高湿状態にすることもある。
〔断熱材〕
通気空間の屋内側に配置され透湿性を有する。
【0014】
基本的には、通常の建築物における外壁用の断熱材と共通する材料や構造が採用できる。但し、通気空間から内装部材側へと湿気が通過できる透湿性を有する断熱材を用いる。これによって、通気空間に侵入したり溜まったりした湿気を、断熱材および内装部材を経て室内空間に放出させることが可能になる。
断熱材の具体例として、グラスウールなどからなるマットが使用できる。多孔質板材も使用できる。合成樹脂発泡体も使用できる。
断熱材の厚みは、施工条件や要求性能によっても異なるが、通常は30〜100mmに設定できる。
【0015】
断熱材のうち、通気空間に露出する面に、防水シートなどの防水層を設けておけば、雨水などが通気空間から断熱材へ浸入するのを阻止できる。防湿層を設けておけば、湿気の浸入も防止できる。但し、断熱材側から通気空間に湿気を逃がすようにするには、防湿層を設けないほうが良い。また、防湿層として、環境依存型透湿シートを使用すれば、適切な透湿と防湿・防水の機能を果たすことも可能になる。
〔内装部材〕
断熱材の屋内側に配置され屋内空間に面して配置される。
【0016】
基本的には、通常の建築物における内装部材と共通する材料や構造を採用することができる。
<内装仕上げ層>
内装部材には、屋内空間に面して配置され、屋内空間に露出する内装仕上げ層を備える。
内装仕上げ層の材料および構造は、通常の内装部材における内装仕上げ層と同様であるが、透湿性を有する材料や構造を採用することで、外壁の内部から屋内空間へと湿気を排出することが可能になる。
【0017】
内装仕上げ層の具体例として、石膏ボードや繊維集積ボードなどの各種建材ボードが使用できる。珪藻土などの調湿材が配合された建材ボードも使用できる。石膏ボードなどのボード類を下地材にして、その表面に表装材となる壁紙や壁布を貼り付けておくこともできる。漆喰や石膏プラスターによる塗り壁、塗装仕上げなども採用できる。したがって、内装仕上げ層は、単一材料層からなる場合と、複数の材料層が積層される場合とがある。
<環境依存性透湿層>
内装部材の中で内装仕上げ層よりも屋外側に配置され、設置環境の温度および湿度で透湿度が変化する。
【0018】
環境依存性透湿層として、夏期に多い高温・高湿環境では透湿度が大きいが、冬期に多い低温・低湿環境では透湿度が小さく実質的に非透湿性になるものが使用される。夏期の代表的な環境条件として、温度30〜40℃、相対湿度80〜90%を想定できる。冬期の代表的な環境条件として、温度20℃、相対湿度60〜70%を想定できる。
具体的には、30℃、相対湿度90%における透湿抵抗2〜50m2・h・mmHg/gであり、20℃、相対湿度60%における透湿抵抗100〜900m2・h・mmHg/gであるものが好ましい。
【0019】
環境依存性透湿層を構成する材料として、商品名ザバーン(登録商標)BF(デュポン社製)が挙げられる。
環境依存性透湿層の厚みは、目的とする機能が発揮できれば良く、通常は、0.1〜1.0mmに設定できる。
<透湿性発泡樹脂層>
内装仕上げ層の屋外側に配置される。
内装部材を構成する他の部材と同様に透湿性を有するとともに、良好な断熱性や防音性も発揮する。
【0020】
透湿性発泡樹脂層の透湿性として、40℃、相対湿度90%における透湿抵抗2〜10m2・h・mmHg/gであるものが好ましい。但し、環境依存性透湿層のような環境依存性は必要とされない。
透湿性発泡樹脂層の断熱性を評価する熱伝導率は、0.01〜0.04kcal/m・h・℃であるものが好ましい。より好ましくは、0.02〜0.03kcal/m・h・℃である。
透湿性発泡樹脂層の厚みは、透湿性や断熱性などの要求性能によっても異なるが、通常は10〜30mmに設定できる。
【0021】
上記のような特性を有する透湿性発泡樹脂層として、ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)が使用できる。これは、予備発泡させたポリスチレンビーズを型成形と同時に2次発泡させて得られる発泡樹脂成形品である。密度、発泡倍率、成形圧力、成形時の水蒸気投入量、その他の製造条件の設定によって、必要な透湿性および断熱性を持たせることができる。例えば、密度を小さくするほど、透湿度は高まるが熱伝導率は低下する傾向がある。密度10〜40kg/m3の範囲に設定できる。
<内装部材の層構成>
内装部材は、前記した内装仕上げ層、環境依存性透湿層および透湿性発泡樹脂層を有していれば、その他の部材層を含んでいてもよく、配置構造も特に限定されない。
【0022】
例えば、内装部材の内面側には、内装部材を外壁の骨組構造に取り付けるための内装下地層を配置しておくことができる。内装下地層としては、合板や石膏ボード、木質繊維ボードなどが使用できる。内装下地層も透湿性に優れたものが好ましい。
内装部材には、透湿性発泡樹脂層に加えて、断熱機能や防音機能を果たす部材層を設けておくこともできる。防水機能や防火機能、防カビ機能を果たす部材層も採用できる。
内装部材の屋外空間に露出する面には内装仕上げ層が配置される必要があるが、環境依存性透湿層および透湿性発泡樹脂層については、どちらが室内側に配置されても構わない。透湿性発泡樹脂層の内外両面に環境依存性透湿層が配置されていてもよい。内装下地層の屋外側に透湿性発泡樹脂層を配置することもできる。
【0023】
〔複合外壁パネル〕
前記した外壁構造を構成する各部材層が、1枚のパネルに組み立てられたものである。
したがって、前記外壁構造と同様に、外装部材、通気空間、断熱材および内装部材とを備える。内装部材には、内装仕上げ層、環境依存性透湿層、透湿性発泡樹脂層が含まれる。
独立した状態で輸送保管し、建築物に施工して外壁を構成できるように、複合外壁パネルには骨組構造となる枠体を備えている。枠体は通常、型鋼材などを枠状に組み立てた鋼枠で構成される。枠体の片面には通気空間を介して外装部材が取り付けられ、反対面には内装部材が取り付けられる。枠体の内部空間に断熱材が収容できる。
【0024】
複合外壁パネルは、外壁構造を構成する全ての層が設けられていてもよいし、一部の層は複合外壁パネルには設けておかず、複合外壁パネルを建築物に施工したあとで、必要な部材層を取り付けたり、仕上げ層を塗工形成したりすることもできる。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1に示す外壁構造は、複合外壁パネル10を用いて構築されている。
〔複合外壁パネル〕
複合外壁パネル10の基本構造は、鋼枠20と外装仕上げ板40と内装部材30と通気空間50とで構成されている。
鋼枠20は、C形鋼材などを矩形枠状に組み立て溶接などで接合したものである。鋼枠20の内部空間には、厚み60mmのグラスウールマットからなる断熱材22が収容されている。
【0026】
外装仕上げ板40は、矩形状のセメント板などからなり、あいじゃくり構造などで互いに連結されて複合外壁パネル10の屋外空間Oに面する表面を覆っている。外装仕上げ板40は、合板などからなる外装下地板42の表面に取り付けられている。
通気空間50は、厚み20mmであり、鋼枠20の表面に桟材46を介して、外装下地板42および外装仕上げ板40を取り付けることで、外装下地板42と鋼枠20および断熱材22との間に空気が流通自在な空間を設けることで構成している。桟材46は鋼枠20の各辺に断続的に設けられていて、通気空間50が複合外壁パネル10の端辺から外部に連通するようになっている。
【0027】
内装部材30は、鋼枠20の屋内空間Rに面する表面に設けられている。内装部材30は、鋼枠20側から順に、合板などからなる内装下地板31、ビーズ法ポリスチレンフォーム(例えば、内山工業社、岩倉化学工業社の製品)からなる透湿性発泡樹脂層32、ザバーン(登録商標)BF(商品名、デュポン社製)からなる環境依存性透湿層33、石膏ボード34および壁紙35が積層されている。何れの部材も、透湿性を有している。
<ザバーン(登録商標)BFの諸元>
厚さ0.23mm、ポリプロピレンスパンボンド不織布。
【0028】
30℃、相対湿度90%における透湿抵抗2.5m2・h・mmHg/g、20℃、相対湿度60%における透湿抵抗400m2・h・mmHg/g、耐水圧2000mmH2O以上。
<ビーズ法ポリスチレンフォームの諸元>
厚さ20mm、密度20kg/m3。
40℃、相対湿度90%における透湿抵抗8m2・h・mmHg/g、熱伝導率0.03〜0.034kcal/m・h・℃。
〔外壁構造〕
複合外壁パネル10は、通常の複合外壁パネルと同様の施工方法によって、建築物の壁面を構築する。
【0029】
図1に示すように、複合外壁パネル10を建築物の屋外空間Oと屋内空間Rとを仕切る外壁に建てつけて設置する。複合外壁パネル10は、ボルト結合などで建築物の柱材や土台に固定される。また、複合外壁パネル10同士を並べて連結固定する。複合外壁パネル10の通気空間50が、上下方向および横方向に連通するように配置する。通気空間50は、外壁の下端では直接にあるいは床下空間を介して屋外空間Oと連通し、外壁の上端では屋根裏空間や軒下空間を介して屋外空間Oと連通する。複合外壁パネル10の端辺における連結個所では、目地処理などを行って隙間を塞ぐ。
【0030】
複合外壁パネル10の屋内空間R側の表面では、壁紙35などの表装部材を設けておかず、建築物に施工して壁面が構築されたあとで、壁面全体に壁紙35を貼るなどして表装仕上げを施せば、複合外壁パネル10同士の継目が目立たなくなる。
〔結露防止機能〕
<冬型結露>
図2を参照して、冬型結露の防止機能を説明する。
冬期においては、屋内空間Rが、暖房で昇温するとともに調理などの居住活動によって湿気も発生し易い。屋外空間Oは低温であり、外装仕上げ板40に吹き付ける寒風で冷却される作用もある。通気空間50に空気を流通させることで、外装仕上げ板40から断熱材22側への冷熱の伝達を軽減することもできるが、内装部材30の内面側が冷却されることは避けられない。通気空間50を流通する空気自体が低温になっているので内装部材30を冷却することにもなる。内装部材30が過度に冷却されると、内装部材30の屋内空間Rに面する表面で、屋内空間Rの空気が急冷されて相対湿度が上昇し、内装部材30の表面に結露が発生することがある。
【0031】
しかし、内装部材30に透湿性発泡樹脂層32が存在していると、内装部材30を貫通する熱伝達を遮断し、内装部材30の屋内空間R側の表面が過度に冷却されることが防止できる。その結果、内装部材30の表面における結露が有効に防止できる。
しかも、環境依存性透湿層33については、室内空間Rを暖房していたとしても、内装部材30の内部はそれほど高温にはならないので、比較的に低温環境におかれた状態である。環境依存性透湿層33は比較的に低い温度および低い湿度環境におかれることになる。例えば、環境依存性透湿層33の個所における温度が20℃、湿度が60%などになる。
【0032】
この状態では、環境依存性透湿層33は透湿性を失い非透湿層あるいは防湿層として機能する。屋内空間Rで発生した湿気が、内装部材30を通過して断熱材22などの壁内部に侵入することが防止でき、壁内部における結露の発生が阻止できる。
<夏型結露>
図1は、夏型結露の防止機能を説明している。
夏期においては、屋外空間Oに高温で高湿の空気が存在することが多い。強い日射が外装仕上げ板40に当たって、外装仕上げ板40を昇温させる。通気空間50を空気が流通することで、断熱材22よりも屋内側が過度に昇温することが防止できるが、通気空間50を流通する空気も高い温度になり湿度も高い状態になり易い。断熱材22から内装部材30に至る壁内の空間も高温で高湿状態になる。ところが、屋内空間Rは、冷房によって低温状態に維持されることが多い。例えば、室温が25℃であるのに対して、壁の内部温度が40℃程度にも上がる。
【0033】
壁の内部で、高温高湿の空気が、室内空間Rの冷房で冷却された内装部材30の内面に接触すると、空気が急冷され、内装部材30の内面における相対湿度は90%を超えるような高湿状態になり、結露が発生し易くなる。
しかし、環境依存性透湿層33および透湿性発泡樹脂層32を含む内装部材30の全体が透湿性を有していれば、内装部材30の内面付近における湿気は、内装部材30を通過して屋内空間R側へと排出される。特に、環境依存性透湿層33は、高温高湿環境では高い透湿性を示すので、湿気の通過を阻害することがなく、内装部材30から屋内空間Rへの湿気の排出が効率的に行われる。
【0034】
透湿性発泡樹脂層32も、通常の発泡樹脂層32に比べて良好な透湿性を有するので、内装部材30の全体における透湿性は非常に良好である。しかも、透湿性発泡樹脂層32は、屋外空間Oあるいは通気空間50側から、屋内空間R側への熱伝達を遮断するので、屋内空間Rの温度上昇を防ぎ、屋内空間Rにおける冷房効果を高めることができる。
【0035】
【発明の効果】
本発明にかかる外壁構造は、内装部材に、環境依存性透湿層と透湿性発泡樹脂層とを組み合わせて使用している。夏期には、外壁内部の湿気を、内装部材を通過させて屋内空間に逃がし、内装部材の内面における夏型結露の発生を有効に防止できる。冬期には、屋内空間の湿気が外壁内部に侵入するのを、透湿性の低下した環境依存性透湿層によって遮断し、外壁内部における冬型結露の発生を有効に防止できる。
特に、外装部材と断熱材との間に通気空間が設けられていて、夏期に外壁内部に高湿で高温の空気が侵入し易く、冬期に内装部材の内面が低温になり易い外壁構造であっても、前記した夏型結露および冬型結露の防止の両方を効率的に果たすことができる。
【0036】
しかも、透湿性発泡樹脂層の存在によって、外壁構造、特に内装部材の断熱性や防音性が良好に維持できるので、居住性に優れ、住宅などの建築物に適した外壁構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を表す外壁構造の断面図
【図2】冬型結露の防止機能を説明する要部断面図
【符号の説明】
10 複合外壁パネル
20 鋼枠
22 断熱材
30 内装部材
31 内装下地材
32 透湿発泡スチレン層
33 環境依存性透湿シート
34 内装仕上げボード
35 壁紙
40 外装仕上げ板
42 外装下地材
O 屋外空間
R 屋内空間
Claims (5)
- 建築物の屋内空間と屋外空間とを仕切る外壁の構造であって、
前記屋外空間に面して配置される外装部材と、
前記外装部材の屋内側に配置される通気空間と、
前記通気空間の屋内側に配置され透湿性を有する断熱材と、
前記断熱材の屋内側に配置され前記屋内空間に面して配置される内装部材とを備え、
前記内装部材は、前記屋内空間に面して配置され透湿性を有する内装仕上げ層と、前記内装仕上げ層の屋外側に配置され、設置環境の温度および湿度で透湿度が変化する環境依存性透湿層と、前記内装仕上げ層の屋外側に配置される透湿性発泡樹脂層とを含む
外壁構造。 - 前記環境依存性透湿層が、30℃、相対湿度90%における透湿抵抗2〜50m2・h・mmHg/gであり、20℃、相対湿度60%における透湿抵抗100〜900m2・h・mmHg/gである
請求項1に記載の外壁構造。 - 前記透湿性発泡樹脂層が、40℃、相対湿度90%における透湿抵抗2〜10m2・h・mmHg/g、熱伝導率0.01〜0.04kcal/m・h・℃のビーズ法ポリスチレンフォームからなる
請求項1または2に記載の外壁構造。 - 前記内装部材が、屋内側から前記内装仕上げ層、前記環境依存性透湿層、前記透湿性発泡樹脂層、および、内装下地層の順番で構成されている
請求項1〜3の何れかに記載の外壁構造。 - 建築物の屋内空間と屋外空間とを仕切る外壁を構築する複合外壁パネルであって、
前記屋外空間に面して配置される外装部材と、
前記外装部材の屋内側に配置される通気空間と、
前記通気空間の屋内側に配置され透湿性を有する断熱材と、
前記断熱材の屋内側に配置され前記屋内空間に面して配置される内装部材とを備え、
前記内装部材は、前記屋内空間に面して配置され透湿性を有する内装仕上げ層と、前記内装仕上げ層の屋外側に配置され、設置環境の温度および湿度で透湿度が変化する環境依存性透湿層と、前記内装仕上げ層の屋外側に配置される透湿性発泡樹脂層とを含む
複合外壁パネル。
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Cited By (4)
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2003
- 2003-03-26 JP JP2003086170A patent/JP2004293132A/ja active Pending
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