JP2004292989A - インクジェット記録用布帛およびその製造方法 - Google Patents

インクジェット記録用布帛およびその製造方法 Download PDF

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直博 大林
Tetsuya Iwasaki
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Abstract

【課題】高濃度且つ高鮮明の画像が得られ、かつ布帛特有の風合いを損なうことなく、耐引っ掻き性、経時安定性に優れたインクジェット記録用布帛およびその製造方法を提供する。
【解決手段】軽量で屈曲性に富み、耐久性、引裂強度にも優れた布帛を用いたインク受容層を有するインクジェット記録用布帛において、布帛1に近い側に弾力性、インク吸収性を有するウレタン樹脂層2、布帛から遠い側に定着性を有するカチオン性樹脂層3を形成する。
【選択図】 図4

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用布帛およびその製造方法に関し、さらに詳しくは、高濃度、高鮮明の画像が形成でき、かつ布帛特有の風合いを損なうことなく、耐引っ掻き性、記録後の経時安定性に優れたインクジェット記録用布帛およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェット記録用基材としては記録紙や樹脂シートが主であった。
しかし、特に広告や横断幕等の分野においては、記録紙は長期間使用できないこと、樹脂シートは環境面で好ましくないこと等の理由で、軽量で屈曲性に富み、耐久性、引裂強度にも優れた布帛が注目を浴びている。
そこで近年では、布帛基材における様々な検討が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、インク吸収性、染料定着性を高めるために、布帛にウレタン樹脂とカチオン性樹脂からなるインク受容層を形成して得られる記録媒体が開示されている。ウレタン樹脂は吸収性を、カチオン性樹脂は定着性を高めることができるからである。
しかし、係る記録媒体は、吸収性に優れたウレタン樹脂とカチオン性樹脂が共存しているため、記録画像を放置しておくと、吸水性ウレタンが空気中の水分を吸収し、画像中の染料が滲み出す問題が発生するため、経時安定性に乏しくなる。
また、ウレタン樹脂およびカチオン性樹脂が各々均一な層を形成しないため、互いの性能を十分に発揮することができない。
【0004】
また、特許文献2では、セルロース系繊維にカチオン性基を有する高分子化合物を付与し、架橋剤により不溶化して得られる記録用繊維シートが開示されている。
しかし、セルロース繊維では、耐久性におとるため、長期使用を目的とする場合は不向きであり、また、耐引っ掻き性を高めるために架橋剤を添加しているが、架橋剤の存する箇所しかインク受容層の接着性は向上しないため、結果として、長期使用の際には、チョークマークといった白化現象がおこり、十分な品質を得ることができない。また、インク受容層に柔軟性がないため、布帛の風合いにも劣る。
また、係る技術を布帛の強度に優れる合成繊維に転用することも考えられるが、天然繊維に比べ、合成繊維は繊維密度が低いことから、一般に接着性が劣り、耐引っ掻き性はさらに悪化することとなる。
【0005】
一方、耐引っ掻き性等を改善するために、染料を布帛内部に染着させる方法も検討されている。
一般に、染着は、インク受容層を洗浄によって除去することから、耐引っ掻き性に優れるが、滲みが大きくなるのが欠点である。
これに対し、例えば、特許文献3では染着工程(発色)で機能性薬剤を、洗浄工程(着色剤、インク受容層の除去)で滲み防止薬剤を付与することにより滲みを改善する方法が開示されている。
しかし、この方法によると、滲みは改善できるが、着色剤を布帛内部に染着させるため、カラーバリューにおとり、十分な濃度を出すことはできない。また、染着工程、洗浄工程が必要となり、小ロット、短納期を目的としたインクジェット記録に適しているとはいえず、排水の量が膨大であることや、工程負荷を考慮しても好ましくない。
【0006】
以上のことから、布帛を使用したインクジェット記録用布帛において、高濃度且つ高鮮明の画像が得られ、かつ布帛の特有の風合いを損なうことなく、耐引っ掻き性、経時安定性に優れたインクジェット記録用布帛を得ることは、未だ達せられていない。
【0007】
【特許文献1】
特開平9−39372号公報
【特許文献2】
特開平11−1879号公報
【特許文献3】
特開平11−93062号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような技術的背景を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、インクジェット記録用布帛において、高濃度且つ高鮮明の画像が得られ、かつ布帛特有の風合いを損なうことなく、耐引っ掻き性、経時安定性に優れたインクジェット記録用布帛およびその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、布帛にインク受容層を有するインクジェット記録用布帛において、布帛に近い側にウレタン樹脂層、布帛から遠い側にカチオン性樹脂層を形成することによって、上記課題を解決できることを見いだし本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、布帛にインク受容層を形成してなるインクジェット記録用布帛であって、該インク受容層が、布帛に近い側にウレタン樹脂層、布帛から遠い側にカチオン性樹脂層を形成してなるインクジェット記録用布帛に関する。
また、ウレタン樹脂が、脂肪族、若しくは脂環族であるイソシアネート化合物とアルキレンオキサイド単位を有するポリオール化合物とからなり、かつ該ウレタン樹脂の分子量が8000〜50000であるインクジェット記録用布帛に関する。
さらに、アルキレンオキサイド単位がエチレンオキサイド単位、トリメチレンオキサイド単位、若しくはテトラメチレンオキサイド単位の何れか一以上からなるインクジェット記録用布帛に関する。
さらに、カチオン性樹脂が、分子内に少なくとも1種の4級化したアミン、若しくはアミド基を有し、かつ分子量が5000〜40000であるインクジェット記録用布帛に関する。
さらに、布帛が合成繊維からなり、かつ該合成繊維はミクロポーラス化されているインクジェット記録用布帛に関する。
さらに、布帛を内包するウレタン樹脂層、かつ該ウレタン樹脂層を内包するカチオン性樹脂層の三層構造からなるインクジェット記録用布帛に関する。
また、布帛にインク受容層を形成するインクジェット記録用布帛の製造方法であって、該布帛が合成繊維からなり、ミクロポーラス加工によって、該合成繊維にミクロポーラス構造を形成した後、ウレタン樹脂を付与することにより、該ミクロポーラス部にウレタン樹脂を充填させ、さらにカチオン性樹脂を付与することを特徴とするインクジェット記録用布帛の製造方法に関する。
さらに、ウレタン樹脂およびカチオン性樹脂を付与する方式が含浸であって、各付与後には乾燥工程を行うことを特徴とするインクジェット記録用布帛の製造方法に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用布帛は、布帛にインク受容層が形成されており、該インク受容層は、ウレタン樹脂層とカチオン性樹脂層からなる。
インク受容層とは、インクを受けとめるための層であり、布帛のインクを受ける面(一の面または両面)に形成されている層をいう。
また、布帛に近い側にウレタン樹脂層、布帛から遠い側にカチオン性樹脂層を形成しなければならない。
【0012】
ウレタン樹脂層をカチオン性樹脂層と別層にしたのは、着色剤の定着性、インクの吸収性を十分に発揮させるためである。
布帛に近い側にウレタン樹脂としたのは、布帛との接着性に優れ、インクを吸収する能力にも優れているためであり、また、布帛特有の風合いを損なわないためにも、柔軟性に優れるウレタン樹脂が適しているからである。
布帛から遠い側にカチオン性樹脂としたのは、吸水性に優れるウレタン樹脂の外側をカチオン性樹脂で覆うことにより、記録後放置した場合、空気中の水分を吸収することによる着色剤の滲みをが防止でき経時安定性に優れるからである。また、ウレタン樹脂はカチオン性樹脂との接着性にも優れる。
さらに、布帛の近い側にウレタン樹脂、遠い側にカチオン性樹脂とすると、内部のウレタン樹脂のクッション効果により、耐引っ掻き性が向上し、チョークマークといった白化現象を防止することができる。
なお、ウレタン樹脂とカチオン性樹脂を同一層に存在させた場合は、耐引っ掻き性に劣ることとなるが、さらに本発明は、同一層に存在させた場合のウレタン樹脂量よりも少ない量で、クッション効果を発揮することができる。
【0013】
本発明で使用されるウレタン樹脂は、以下のイソシアネート化合物とポリオール化合物から合成される。
その中でも、脂肪族、若しくは脂環族であるイソシアネート化合物とアルキレンオキサイド単位を有するポリオール化合物との合成物であるのが好ましい。
イソシアネート化合物を芳香族とすると、紫外線や熱等の影響を受けやすく、酸化還元等により黄変が生じるからである。
一方、脂肪族、若しくは脂環族のイソシアネート化合物を使用すれば、黄変の問題もなく、経時安定性に優れる。
具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族が挙げられる。
特に耐光性、耐熱性に優れるウレタン樹脂を合成できる脂環族が好ましい。
【0014】
また、本発明で使用されるポリオール化合物としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、シリコーンポリオール等が挙げられるが、これらは単独で使用されても、2種以上混合して使用されてもよい。
特にアルキレンオキサイド単位を有するポリエーテルポリオールであると柔軟性に富み、かつ成膜性に優れるため、耐引っ掻き性に優れるウレタン樹脂を合成することができ、好ましい。
ここでアルキレンオキサイド単位とは、具体的には、エチレンオキサイド単位、トリメチレンオキサイド単位、プロピレンオキサイド単位、若しくはテトラメチレンオキサイド単位等をいう。
これらは、単独に重合しても、複数を合わせて共重合体としてもよい。
特に、エチレンオキサイド/トリメチレンオキサイドの共重合体、エチレンオキサイド/テトラメチレンオキサイドの共重合体等の共重合体であればより好ましい。
トリメチレンオキサイド単位、テトラメチレンオキサイド単位の数とエチレンオキサイド単位の数とのバランスによって親水性/疎水性を調整でき、使用する着色剤や布帛に適当な樹脂に調整することが可能となるからである。
【0015】
また、トリメチレンオキサイド単位、テトラメチレンオキサイド単位の数がエチレンオキサイド単位の数と比して多いのが好ましい。
けだし、係るアルキレンオキサイド単位はいずれも吸水性に優れるが、トリメチレンオキサイド単位、テトラメチレンオキサイド単位のポリマーは、エチレンオキサイド単位のポリマーに比して水に溶けにくい性質を有することから、トリメチレンオキサイド単位、テトラメチレンオキサイド単位を増やすと、空気中の水分の吸収しにくくなり、その結果、経時安定性を向上させることができるためである。
特に好ましくは、エチレンオキサイド単位:トリメチレンオキサイド単位が1:1〜1:3である。
【0016】
また、ウレタン樹脂の分子量が8000〜50000の範囲にあるものが好ましい。風合いを保ったままで滲みを防止できるからである。
8000未満では、ウレタン樹脂の成膜性が低く、また吸水力が低いため結果的に滲みが大きくなる傾向があり、50000を超えると皮膜が堅くなり、布帛特有の風合いを保てなくなる。
【0017】
また、ウレタン樹脂はノニオン性であるのが好ましい。
カチオン性樹脂との接着性が良好であり、柔軟性に優れる一体化したインク受容層を形成できるためである。
一方、ウレタン樹脂をアニオン性やカチオン性とすると、カチオン性樹脂のイオン性に変動を与え、生産性にばらつきが生じることとなる。
さらに、インク受容層のカチオン性が低くなると、インク吸収性および経時安定性に劣ることとなり、カチオン性が強くなると防汚性に劣るという欠点も生じる。
【0018】
次に、本発明のカチオン性樹脂は、分子内に少なくとも1種の4級化したアミン、若しくはアミド基を有する化合物が好ましい。
着色剤の固定化に優れ、高濃度、高彩度の着色物が得られるからである。
アミン、若しくはアミド基を有する化合物としては、ポリアルキレンイミン等のポリイミン、ポリアルキルアミン、ポリアルキレンポリアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミン、若しくはポリジアリルアミン等のポリアミン、ポリアルキレンポリアミド、ポリアリルアミド、若しくはポリアクリルアミド等のポリアミドが挙げられ、さらにはこれらのカチオン性官能基を複数種類有するジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン、ジシアンジアミドトリエチレンテトラアミン等やこれらのカチオン性官能基を有する化合物の共重合体が挙げられる。また、これらのカチオン性官能基を有する化合物とノニオン性であるアルキレンオキサイド、ビニルアルコール、スチレン、エピハロヒドリン等との共重合体であってもよい。なお、これらの化合物は単独で使用されても、2種以上混合して使用されてもよい。
この中でもポリアルキルアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミン、若しくはポリジアリルアミン等のポリアミン、若しくはアミン基を有する化合物とノニオン性であるアルキレンオキサイド、ビニルアルコール、スチレン、エピハロヒドリン等との共重合体であるポリアミン系であると特に滲みなく定着性に優れるため好ましい。
【0019】
また、これらのカチオン性樹脂はpH3〜6で4級化されて使用される。カチオン性を有効に帯びさせるためである。
pH調整剤としては、公知の酸性を呈する化合物が使用できるが、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等の緩衝溶液を使用するのが好ましい。
カチオン性樹脂等はpHに影響を受けやすいため、一定の領域に保つ必要があるからである。
【0020】
また、カチオン性樹脂の分子量は、5000〜40000であるのが好ましい。着色剤の濃度、彩度を発揮させるためである。
また、分子量が5000未満では着色剤の定着力が弱く、濃度が低くなり、40000を超えると、定着力が強すぎるため、汚れ等をも定着するおそれがあるからである。
【0021】
また、該カチオン性樹脂が分子内に水酸基を有すると滲みが防止できるため好ましい。
インクジェットにて飛翔してきたインクを瞬時に捉え、瞬間的な滲みを防止できるからである。
具体的には、カチオン性樹脂中に水酸基を含んでいればよく、好ましくはポリアルキルアミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミン、若しくはポリジアリルアミン等のポリアミンに水酸基が付加されている化合物、若しくはアミン基を有する化合物とノニオン性であるビニルアルコール、エピハロヒドリン等との共重合体であるポリアミン系等が挙げられる。インクを瞬時に捉え、瞬間的な滲みを防止できるばかりでなく、定着性にも優れるからである。
カチオン性樹脂を含む処理液へは、インクの定着性をさらに向上させるために多孔性微粒子を添加してもよい。
多孔性微粒子としては、具体的には、無定形シリカ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、スメクタイト、クレー、酸化亜鉛、炭酸亜鉛および珪藻土等の無機顔料類、スチレン系、アクリル系、尿素樹脂系、メラミン樹脂系、若しくはベンゾグアナミン系等の有機顔料類が挙げられ、単独、若しくは組み合わせて適宜使用することができる。この中でも、無定形シリカがインク定着性に優れ、またコスト的にも安価であるため好ましい。
また、カチオン化された多孔性微粒子であると着色剤を定着する力が強くなり耐水性が向上するためさらに好ましい。
【0022】
多孔性微粒子の平均粒径としては、0.1〜10μmの範囲がよく、さらには0.5〜5μmが好ましい。
0.1μm未満では、カチオン性樹脂を含む処理液に添加した際に、微粒子同士の会合が起こりやすく処理液安定性に問題が生じるからであり、10μmを超えると、インク受容層の表面平滑性の低下、剥離、濃度低下の原因となるからである。また、後述する布帛表面にミクロポーラス構造を形成した場合には、ミクロポーラス中に充填したウレタン樹脂とカチオン性樹脂との接着性を妨げることにもなる。
【0023】
本発明の布帛としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ尿素、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート、ポリフルオロエチレン、若しくはポリ青化ビニリデン等の合成繊維、綿、麻、絹、若しくは毛等の天然繊維、レーヨン等の再生繊維、アセテート、若しくはトリアセテート等の半合成繊維、乳酸、若しくはとうもろこし等を原料とした生分解性繊維等、各種の繊維が挙げられ、単独、若しくは混紡、交織、混繊、交編等して使用することができる。
この中でも強度、防腐性等の経時安定性に優れる合成繊維において、問題となる耐引っ掻き性が著しく改善されることから、合成繊維が好ましい。
さらには汎用性に優れ、かつ耐久性の面からポリエステルが特に好ましい。
布帛の組織は織物、編物、立毛布帛、不織布等が挙げられるが、布帛を構成すれば特に限定されない。布帛に柔軟性を求めるときには、ジョーゼット、サテン等の薄地素材を使用すると効果的である。
【0024】
インク受容層を付与する前に布帛をあらかじめ繊維表面をミクロポーラス加工することが好ましい。
布帛表面にミクロポーラスを形成せしめ、この形成したミクロポーラス中にウレタン樹脂を充填することにより弾力性、接着性が向上し、風合いも柔軟になり引っ掻き性も良好となるためである。
ミクロポーラス加工としては、酸、アルカリの水溶液、若しくはエチルアミン等の有機溶剤を用いた減量加工、紫外線処理、スパッタリング処理、プラズマ処理および電子線処理等が挙げられる。
この中でも安価で汎用性のあるアルカリ水溶液を用いた減量加工が好ましい。
また、ミクロポーラス加工は合成繊維に行うのが好ましい。一般に繊維密度が低く、効果が発揮しやすい点、また、ミクロポーラス加工時の安定性等の理由による。
【0025】
本発明のインクジェット記録用布帛の形態は、布帛の一の面に対し、2層が積層されている形態(図1)、布帛の一の面に対し、ウレタン樹脂層が形成されており、カチオン層が布帛およびウレタン樹脂層全体を覆っている形態(図2)、布帛全体をウレタン樹脂層が覆っており、その一の面に対しカチオン層が積層されている形態(図3)、布帛に対し、ウレタン樹脂層が全体を覆っており、カチオン層がウレタン樹脂層の外部から全体を覆っている形態(図4)が挙げられるが、布帛に対し、ウレタン樹脂層が全体を覆っており、カチオン層がウレタン樹脂層の外部から全体を覆っている形態(図4)が好ましい。
布帛に対し、表裏関係なく画像を記録することが可能となり汎用性に優れるからである。
【0026】
次に、布帛へのインク受容層の付与方法について説明する。
布帛は予めミクロポーラス加工を施しておくことが好ましい。特に繊維密度が低く、効果が発揮しやすい点、また、ミクロポーラス加工時の安定性等の理由から合成繊維に行うのが好ましい。さらには、前述した好ましい形態であるポリエステルに減量加工を施すとより効果的である。
ウレタン樹脂を含む処理液をミクロポーラス化した布帛に付与し、布帛の繊維と繊維の空隙や繊維表面のミクロポーラス部に充填させると、布帛の弾力性が向上し、風合いも柔軟になり、その結果、耐引っ掻き性に優れることとなるため好ましい。さらに、カチオン性樹脂を、ウレタン樹脂を固着させた布帛に付与することにより、経時安定性にも優れた本発明のインク受容層を形成することができる。
また、ウレタン樹脂、若しくはカチオン性樹脂を含む処理液には必要に応じて、添加剤を配合することができる。
具体的には架橋剤、撥水剤、帯電防止剤、浸透剤、紫外線吸収剤、還元防止剤、酸化防止剤、造膜剤、柔軟剤、消泡剤、レベリング剤、粘度調整剤、pH調整剤、防炎剤、防腐剤等が挙げられる。
【0027】
また、処理液の付与方法としては、通常用いられる方法を適宜選択して使用することができる。例えば、布帛の一の面に付与する方式として、グラビア方式、コーティング方式、スクリーン方式、ローラー方式、ロータリー方式、スプレー方式(片面)等が挙げられ、布帛の全体に付与する方式として、含浸方式、スプレー方式(両面)等が挙げられる。
好ましい形態である、布帛に対しウレタン樹脂層が全体を覆っており、カチオン層がウレタン樹脂層の外部から全体を覆っている形態(図4)を製造するには、含浸方式を選択するのが好ましい。簡便に付与でき、加工ムラも生じにくいからである。
また、ウレタン樹脂を付与した後、およびカチオン性樹脂を付与した後には、乾燥工程によって固着させるのが好ましい。
各々乾燥工程を行うのは、一の層と他の層を混合することなく均一に形成させるためである。
【0028】
布帛への付与量は、ウレタン樹脂が固形分で1〜15g/m、カチオン性樹脂が固形分で3〜30g/mが好ましい。
ウレタン樹脂が1g/m未満であると、耐引っ掻き性発揮できず、カチオン性樹脂が3g/m未満であると、経時安定性に劣ることとなり、ウレタン樹脂が15g/mを超えても、カチオン性樹脂が30g/mを超えても、いずれも効果に差がでないからである。
また、ウレタン樹脂とカチオン性樹脂の布帛への付与量の比率は、1:1〜1:5の範囲の割合に調整することが好ましい。本発明の目的である耐引っ掻き性、経時安定性を向上させ、かつ風合い、着色濃度を最も効果的に発揮できるためである。
【0029】
本発明に用いられるインクは、アニオン性、若しくはノニオン性の着色剤が使用できる。布帛の表面はカチオン性樹脂が存するため、接着性に優れるからである。
具体的には、反応染料、酸性染料、直接染料、若しくは分散染料等の染料、若しくは顔料等が挙げられ、インクとしてはこれらを水溶解、若しくは水分散させた形態で適用可能である。
好ましくは鮮明性に優れる染料がよく、さらにはアニオン性の反応染料、酸性染料が特に接着性に優れるため好ましい。
また、インクには必要に応じて分散剤、消泡剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、pH調整剤、防腐剤、浸透剤、湿潤剤等を添加することが可能である。
【0030】
インクジェット記録方法としては、荷電変調方式、マイクロドット方式、帯電噴射制御方式、インクミスト方式などの連続方式、ステムメ方式、パルスジェット方式、バブルジェット(登録商標)方式、静電吸引方式などのオン・デマンド方式などいずれも採用可能である。
【0031】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0032】
【実施例1】
〔布帛の加工〕
布帛としてポリエステルサテン布を準備し、アルカリ水溶液を用いて減量加工を行い、布帛Aを得た。
【0033】
次いで、以下の処方にて処理液の調製を行った。
(処理液A:ウレタン樹脂を含む処理液)
HAレジンG−1(分子量40000、ノニオン性ウレタン樹脂、脂環族イソシアネート、エチレンオキサイド単位:トリメチレンオキサイド単位=1:2、明成化学工業株式会社製)を15重量部、および水を85重量部加え、十分に撹拌し、処理液Aを得た。
【0034】
(処理液B:カチオン性樹脂を含む処理液)
フィックスオイルFE(分子量5000、カチオン性樹脂、ポリアルキルアミン系、明成化学工業株式会社製)を10重量部、フィックスオイルFE(分子量20000、カチオン性樹脂、ポリアルキルアミン系、明成化学工業株式会社製)を10重量部、ニコソルトS12(多孔性微粒子、カチオン性無定形シリカ、平均粒径0.15μm、日華化学株式会社製)を30重量部、および水を50部加え、十分に撹拌し、処理液Bを得た。
【0035】
上記の得られた処理液Aを、準備した布帛Aに対し固形分換算で3g/mになるように含浸方式により付与し、150℃にて1分間乾燥を行った。
次いで、処理液Bを含浸法にて6g/m付与し、再び150℃で1分間乾燥し、インクジェット記録用ポリエステル布帛を得た。
【0036】
この布帛に、下記処方で作製したインクおよび記録方式により図柄を記録した。
(インク処方)
C.I.Reactive Blue 19を5重量部、エチレングリコール(湿潤剤)を3重量部、および水を92重量部加え、十分に撹拌し、ろ過により不純物を除去してインクを得た。
【0037】
ピエゾ圧電素子によってインクを吐出させるオンデマンド方式のシリアル走査型インクジェット記録ヘッドを用いて、記録した。(記録条件はノズル径80μm、駆動電圧100V、周波数5kHz、解像度360dpi)
カラーパターンをインク平均付与量1.4×10−2〜5.6×10−2μl/mmの範囲でインクジェット記録し、評価用記録画像(ISO400)を得た。
【0038】
【実施例2】
処理液A、Bを以下の処方の処理液C、Dに変更する以外は実施例1と同様にインクジェット記録用布帛を作製し、インクジェット記録を行った。
【0039】
(処理液C:ウレタン樹脂を含む処理液)
アクアプレンWS−105(分子量10000、アニオン性ウレタン樹脂、脂環族イソシアネート、エチレンオキサイド単位:トリメチレンオキサイド単位=2:1、明成化学工業株式会社製)を15重量部、および水を85重量部加え、十分に撹拌し、処理液Cを得た。
【0040】
(処理液D:カチオン性樹脂を含む処理液)
トータス604T(分子量4000、カチオン性樹脂、ポリアルキルアミン系、日華化学株式会社製)を10重量部、フィックスオイルFE(分子量20000、カチオン性樹脂、ポリアルキルアミン系、明成化学工業株式会社製)を10重量部、ニコソルトS12(多孔性微粒子、カチオン性無定形シリカ、平均粒径0.15μm、日華化学株式会社製)を30重量部、および水を50重量部加え、十分に撹拌し、処理液Bを得た。
【0041】
【実施例3】
処理液Bを以下の処方の処理液Eに変更する以外は実施例1と同様にインクジェット記録用布帛を作製し、インクジェット記録を行った。
【0042】
(処理液E:カチオン性樹脂を含む処理液)
NE−1094A(分子量5000、カチオン性樹脂、ポリアリルアミン系、日華化学株式会社製)を20重量部、および水を80部加え、十分に撹拌し、処理液Eを得た。
【0043】
【比較例1】
以下の処方にて処理液の調製を行った。
(処理液F:ウレタン樹脂およびカチオン性樹脂を含む処理液)
HAレジンG−1(分子量40000、ノニオン性ウレタン樹脂、脂環族イソシアネート、エチレンオキサイド単位:トリメチレンオキサイド単位=1:2、明成化学工業株式会社製)を15重量部、フィックスオイルFE(分子量5000、カチオン性樹脂、ポリアルキルアミン系、明成化学工業株式会社製)を10重量部、フィックスオイルFE(分子量20000、カチオン性樹脂、ポリアルキルアミン系、明成化学工業株式会社製)を10重量部、ニコソルトS12(多孔性微粒子、カチオン性無定形シリカ、平均粒径0.15μm、日華化学株式会社製)を30重量部、および水を35重量部加え、十分に撹拌し、処理液Fを得た。
【0044】
上記処理液を布帛Aに対し含浸法にて9g/m(固形分換算)付与し150℃で1分間乾燥し、インクジェット記録用ポリエステル布帛を得た。
次に実施例1と同様にインクジェット記録用布帛に対しインクジェット記録を行った。
【0045】
実施例において作製されたインクジェット記録用ポリエステル布帛の評価結果を表1に示す。各評価項目は下記方法にて実施した。
1.耐引っ掻き性
インクジェット記録した記録物を指の爪で3回擦ったときのチョークマークの有無を目視で判定し、その程度により評価を付けた。
○ チョークマークが全くない
△ チョークマークが若干認められる
× チョークマークがはっきり認められる
【0046】
2.経時安定性
インクジェット記録後、記録物を1日、3日、10日放置(20℃RH65%)した後、記録画像の経時における染料の滲み状態を目視で判定し、その程度により評価を付けた。
○ 滲みがない
△ やや滲んでいる
× 明らかに滲んでいる
【0047】
3.濃度
濃度は記録画像の濃度を目視で判定し、その程度により評価を付けた。
○ 濃度が高い
△ やや濃度不足を感じる
× 濃度が低い
【0048】
4.布帛の風合い
得られた試験布の風合いを触手で評価した
○ 肌触りがやわらかく、風合いが良好である
△ 肌触りが多少硬い
× 肌触りが硬く、柔軟性がない
【0049】
【表1】
Figure 2004292989
【0050】
表1から明白なように、本発明のインクジェット記録用布帛を使用して作成された実施例1〜3のインクジェット記録物は、耐引っ掻き性、記録後の経時安定性に優れ、濃度や風合いをも損なわないインクジェット記録物を得ることができる。
特に実施例1、3のようにウレタン樹脂がノニオン性のインクジェット記録用布帛は、経時安定性に優れ、長期間の使用に最適である。
一方、比較例1のインクジェット記録用布帛を使用して作成されたインクジェット記録物は、上記評価を満足することなく使用は困難である。
【0051】
【発明の効果】
以上のように、本発明によるインクジェット記録用布帛は、高濃度且つ高鮮明の画像が得られ、かつ布帛特有の風合いを損なうことなく、耐引っ掻き性、経時安定性に優れたインクジェット記録用布帛を提供することができる。
従って、経時安定性に優れることから、垂れ幕や横断幕といった大型広告等の長期使用に適しており、また、耐引っ掻き性に優れることから、係る大型広告等の施工や搬送の際にキズや折れ跡がつきにくいインクジェット記録用布帛を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【図1】布帛の一の面に対し、2層が積層されている形態
【図2】布帛の一の面に対し、ウレタン樹脂層が形成されており、カチオン層が布帛およびウレタン樹脂層全体を覆っている形態
【図3】布帛全体をウレタン樹脂層が覆っており、その一の面に対しカチオン層が積層されている形態
【図4】布帛に対し、ウレタン樹脂層が全体を覆っており、カチオン層がウレタン樹脂層の外部から全体を覆っている形態
【符号の説明】
1 布帛
2 ウレタン樹脂層
3 カチオン性樹脂層

Claims (8)

  1. 布帛にインク受容層を形成してなるインクジェット記録用布帛であって、該インク受容層が、布帛に近い側にウレタン樹脂層、布帛から遠い側にカチオン性樹脂層を形成してなることを特徴とするインクジェット記録用布帛。
  2. 前記ウレタン樹脂が、脂肪族、若しくは脂環族であるイソシアネート化合物とアルキレンオキサイド単位を有するポリオール化合物とからなり、かつ該ウレタン樹脂の分子量が8000〜50000である請求項1記載のインクジェット記録用布帛。
  3. 前記アルキレンオキサイド単位がエチレンオキサイド単位、トリメチレンオキサイド単位、若しくはテトラメチレンオキサイド単位の何れか一以上からなる請求項1乃至2記載のインクジェット記録用布帛。
  4. 前記カチオン性樹脂が、分子内に少なくとも1種の4級化したアミン、若しくはアミド基を有し、かつ分子量が5000〜40000である請求項1乃至3記載のインクジェット記録用布帛。
  5. 前記布帛が合成繊維からなり、かつ該合成繊維はミクロポーラス化されている請求項1乃至4記載のインクジェット記録用布帛。
  6. 布帛を内包するウレタン樹脂層、かつ該ウレタン樹脂層を内包するカチオン性樹脂層の三層構造からなる請求項1乃至5記載のインクジェット記録用布帛。
  7. 布帛にインク受容層を形成するインクジェット記録用布帛の製造方法であって、該布帛が合成繊維からなり、ミクロポーラス加工によって、該合成繊維にミクロポーラス構造を形成した後、ウレタン樹脂を付与することにより、該ミクロポーラス部にウレタン樹脂を充填させ、さらにカチオン性樹脂を付与することを特徴とするインクジェット記録用布帛の製造方法。
  8. 前記ウレタン樹脂およびカチオン性樹脂を付与する方式が含浸であって、各付与後には乾燥工程を行うことを特徴とする請求項7記載のインクジェット記録用布帛の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006199498A (ja) * 2004-12-22 2006-08-03 Konica Minolta Holdings Inc インクジェットプリンター及びそれを用いて作製した記録物
JP2009075227A (ja) * 2007-09-19 2009-04-09 Blueball Co Ltd 印刷用布帛及びこれを用いた物品
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