JP2004290082A - 薬用人参カルスの培養方法 - Google Patents

薬用人参カルスの培養方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2004290082A
JP2004290082A JP2003086887A JP2003086887A JP2004290082A JP 2004290082 A JP2004290082 A JP 2004290082A JP 2003086887 A JP2003086887 A JP 2003086887A JP 2003086887 A JP2003086887 A JP 2003086887A JP 2004290082 A JP2004290082 A JP 2004290082A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
culture
ginseng
callus
liquid medium
subculture
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2003086887A
Other languages
English (en)
Inventor
Yoshiko Tsujikura
佳子 辻倉
Hiroko Sahashi
裕子 佐橋
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nitto Denko Corp filed Critical Nitto Denko Corp
Priority to JP2003086887A priority Critical patent/JP2004290082A/ja
Publication of JP2004290082A publication Critical patent/JP2004290082A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】薬用人参を起源植物とするカルスの培養方法における課題である継代培養工程および増殖用培養工程における薬用人参カルス培養物収量の低下、ならびに該薬用人参カルス培養物内に生産される二次代謝産物含量の低下を抑制し、種株である薬用人参カルスの特性を長期的に維持することを目的とする。
【解決手段】液体培地での継代培養工程およびそれに続く液体培地での増殖用培養工程からなる薬用人参カルスの培養方法であり、継代培養工程および増殖用培養工程を行う培養容器を同一形状とし、さらに継代培養工程の液体培地量を増殖用培養工程の液体培地量の55〜90容量%にすることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薬用人参を起源植物とするカルスの培養方法に関し、詳しくは、薬用人参カルス培養物収量の低下、および該薬用人参カルス培養物内に生産される二次代謝産物含量の低下を抑制し、その結果として最終目的物である二次代謝産物の生産効率の低下を長期間にわたり抑制する、薬用人参カルスの培養方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
薬用人参、例えばおたね人参(Panax ginseng)、チクセツ人参(Panax japonicus)、アメリカ人参(Panax quinq uefolium)、三七人参(田七人参とも呼ばれる;Panax notoginseng)、シベリア人参(Eleutherococcus senticosus)などは、古来より有用漢方薬として珍重されており、これら薬用人参から抽出された薬用人参エキスは、医薬品や食品、化粧品などの原料として広く利用されている。
【0003】
これら薬用人参の薬効としては強壮作用や長生作用、さらに現在では血糖値降下作用、鎮静作用、興奮作用、利尿作用などが明らかにされており、これら薬効は薬用人参中に生産されるパナキサン、サポニン、サポゲニンなどによるものであることが報告されている。
【0004】
上記薬用人参エキスは、かつては畑などで栽培した薬用人参からの抽出により生産されていたが、利用範囲の広がりとともに一定品質のエキスを大量に生産することが必要となってきた。このような理由から、現在では薬用人参のカルスを液体培地で培養し、大量の薬用人参カルス培養物を短期間で生産する植物組織培養が行われている。
【0005】
植物組織培養は、その実施形態により回分培養方法や連続培養方法などに分類でき、これらの方法により薬用人参培養物の製造が行われている。以下、回分培養方法を例に、薬用人参カルスの培養方法の概要を説明する。
【0006】
まず、薬用人参の細胞片をオーキシン類やサイトカイニン類などのホルモンを含有した固形培地においてカルス誘導し、薬用人参カルスの種株とする。この工程を発現工程と称する。
【0007】
ホルモンを含有する液体培地を培養容器に入れ、薬用人参カルスの種株を定期的に植え継ぐことにより、種株の特性変化を抑えつつ長期間培養を行う。この工程を継代培養工程と称する。
【0008】
ホルモンを含有する液体培地を多数の培養容器に入れ、そこに、継代培養工程により生産した薬用人参カルス培養物を種株として所定量ずつ移して培養を行い、大規模培養の前段階とする。この工程を増殖用培養工程と称する。
【0009】
上記増殖用培養工程での培養物、複数容器分を1つの大型タンクに移してさらに培養を行う。また、必要であればこの大型タンクでの培養物をさらに大きなタンクに移して多段培養を行う。この工程を大規模培養工程と称する。
【0010】
これら一連の培養工程により、薬用人参カルス培養物を大量に生産することができる。一連の培養工程において、発現工程から増殖用培養工程は小スケールの培養装置で行われることが多く、ガラスフラスコを培養容器として、恒温室内で振盪装置で振盪しながら培養されるのが一般的である。そして、それに続く大規模培養工程は、工場などに備え付けの金属製の大型タンクで行われることが多い。
【0011】
以上、回分培養方法を例として薬用人参カルス培養物の製造方法の概要を示したが、発現工程〜増殖用培養工程までの工程は連続培養方法も同じであり、上記記載は回分培養方法のみを対象とするものではなく、連続培養工程にも適用可能である。
【0012】
薬用人参カルスの培養方法をごく簡単に説明したが、実際の製造では解決すべき問題も残されているのが現実である。具体的には、上記製造工程全体にわたって、種株となる薬用人参カルスの品質を一定に維持することである。
【0013】
仮に、製造工程全体に渡って種株となる薬用人参カルスの品質が維持されていない場合、大規模培養工程後の植物細胞の品質、例えば薬用人参カルス培養物の生産量が少量となったり、生産した薬用人参カルス培養物中の有効成分の含有量が低下する恐れがある。
【0014】
そして、薬用人参カルス培養物の生産量が少なくなった場合には薬用人参カルス培養物から抽出される薬用人参エキスの生産量が少なくなり、また、薬用人参カルス培養物中の有効成分の含有量が低下した場合には、生産した薬用人参エキスにおけるサポニンなど有効成分の含有量が低く、低品質のエキスとなってしまう。
【0015】
従って、高品質の薬用人参エキスを安定的に生産するためには、各工程における工程管理が重要であり、特に大規模培養工程以前、つまり継代培養工程ならびに増殖用培養工程における種株の特性を維持することが必要なのである。
【0016】
上記理由により薬用人参エキスの大規模生産では、増殖能力に優れ、さらに有効成分の生産能力にも優れた種株を選抜するとともに、継代培養工程および増殖用培養工程の培養条件の最適化により種株の品質を安定に維持しているのである。
【0017】
植物細胞の培養における培養条件の最適化手段として従来知られているものとしては、培地組成の変更や、培養途中での培地の交換などがある。
【0018】
培地組成の変更は、主に、一般的に用いられている培地の特定成分の増減、新規成分の追加、または通常の添加成分を添加しないなどの方法により培地組成を変更するものである。具体例としては、一般的なムラシゲスクーグ培地(MS培地)の組成から硝酸アンモニウムを除く一方でグルコースを追加処方した修正MS培地が挙げられる。(例えば、特許文献1参照)
【0019】
また、培養途中での培地の交換の例としては、継代培養途中で培地成分組成を変化させた液体培地で培養する操作を含む方法や(例えば、特許文献2参照)、増殖に適した組成の培地での培養と有用成分生産に適した組成の培地での培養とを交互に繰り返す方法がある。(例えば、特許文献3参照)
【0020】
これら培地組成の変更や、培養途中での培地の交換を行う場合、その状況ごとに最適な培地を選択することが重要となるのは言うまでもない。しかしながら、最適な培地の選択を行うには、豊富な経験と知識を有する実験者が、その状況ごとに選択した複数の候補培地で培養を行い、その中から適当な種株の選抜を行わなければならず、多くの手間を有するものである。
【0021】
また、細胞特性を維持するための継代培養であるにもかかわらず、培地を変更したことにより細胞がダメージを受けてしまい、その結果、細胞特性が変わってしまう場合もある。
【0022】
【特許文献1】
特開昭59−169487号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開平8−131160号公報(請求項1)
【特許文献3】
特開平10−179147号公報(請求項1)
【0023】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記課題、つまり、培地変更による細胞へのダメージを生じさせることなく、さらに経験の浅い実験者であっても、簡易な手段により種株の特性を長期的に維持しうる薬用人参カルスの培養方法を提供することを目的とするものである。なお、ここで言う種株の特性とは、薬用人参カルスの増殖能力が高く、且つ該薬用人参カルス培養物中に生産される、サポニンをはじめとする二次代謝産物の細胞内濃度も高く維持している状態を指す。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために、継代培養工程および増殖用培養工程の各工程において、種々の培養条件で薬用人参カルスの培養を行った。その結果、継代培養工程および増殖用培養工程を同一形状の培養容器を用い、さらに継代培養工程を、増殖用培養工程と比較して小容量の培地で行うことが、上記課題を解決するのに効果的であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0025】
すなわち本発明は、液体培地での継代培養工程およびそれに続く液体培地での増殖用培養工程からなる薬用人参カルスの培養方法であり、継代培養工程および増殖用培養工程を行う培養容器を同一形状とし、さらに継代培養工程における液体培地量を増殖用培養工程における液体培地量の55〜90容量%にすることを特徴とする薬用人参カルスの培養方法である。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0027】
まず、本発明で使用する薬用人参とは、パナキサン、サポニン、サポニゲンなどの有効成分を多く含む人参を指すものである。特に、その種類としては、上記有効成分の含有量の多さなどから、おたね人参、チクセツ人参、アメリカ人参、三七人参、シベリア人参が好ましい。
【0028】
次に、本発明で使用する培地について説明するが、培地は何ら特別な組成である必要は無く、植物組織培養に一般的に用いられる培地が使用できる。具体例を挙げれば、MS培地、ホワイト培地、ガンボルグB5培地、ニッチェ培地、ヘラー培地、モーレル培地、あるいはこれら培地の成分をそれぞれ至適濃度に修正した修正培地などを使用することができる。また、必要であれば、これらの培地にカゼイン分解酵素、コーンスティープリカー、ビタミン類などを添加しても良い。
【0029】
本発明では、これら培地に対してホルモン類を添加して培養を行うが、ホルモン類のうち、オーキシン類としては3−インドール酪酸、3−インドール酢酸、1−ナフタリン酢酸などが例示でき、その添加濃度は通常、培地に対して0.1〜10ppmの範囲で調節する。これらオーキシン類は薬用人参のカルス誘導および培養カルスの増殖には必須である。
【0030】
一方、サイトカイニン類としては、カイネチン、ゼアチン、ジベレリンなどが例示でき、通常、培地に対して0.01〜5ppmの濃度で添加する。これらサイトカイニン類は細胞増殖を促進するとともに細胞分化の促進に有効であり、葉などの栄養器官の老化を防ぐ物質である。
【0031】
上記原料を用いて薬用人参カルスを誘導させるが、この発現工程では小容量の培養容器を用いる。発現工程での培養容器は特に限定されるものではないが、取り扱い性を考えると、ガラス製三角フラスコやガラス製ビーカーを使用するのが好ましく、特に実容量0.12〜1.3Lのガラス製三角フラスコを好適に用いることができる。
【0032】
なお、本発明で言う実容量とは、培養容器開口部まで内容物を満たした場合の内容量を示すものであり、上記実容量範囲に含まれる培養容器としては0.1〜1L容量用三角フラスコとして一般に市販されているガラス製三角フラスコを例示することができる。以後、本発明で言う培養容器容量とは、この実容量を指すものである。
【0033】
発現工程では、上記培養容器中に培地、ホルモン、そして寒天を加えて固形培地を作製し、そこに薬用人参組織を接種して培養を行う。培養は、薬用人参のカルス培養において一般的に採用されている温度範囲、具体的には20〜28℃の恒温室で静置培養を行えば良い。この際、使用する固形培地量は特に重要ではなく、薬用人参カルスが誘導されれば良い。こうして得られた薬用人参カルスを、以後の工程で種株として用いる。
【0034】
上記工程により誘導された種株を用いて継代培養を行うが、継代培養に用いる培養容器としては、発現工程と同様に三角フラスコやビーカーが使用可能であり、取扱い性の点から培養容器容量0.12〜1.3Lのガラス製三角フラスコが好ましく、特に0.3L〜1L容量用として市販されているガラス製三角フラスコを使用するのが好ましい。
【0035】
ガラス製三角フラスコを利用した継代培養では、培地に所定濃度のホルモン類を添加した液体培地をガラス製三角フラスコに入れ、そこに種株を接種して、20〜28℃の温度範囲の恒温室で振盪培養を行う。この振盪は、市販の振盪装置で任意の速度で振盪すれば良い。
【0036】
培養容器として1L容量用として市販されているガラス製三角フラスコを使用し、液体培地量を500mlとして、高崎科学機械株式会社製TA−216振盪装置を用いて振盪を行う場合を例に挙げれば、毎分70〜100ストロークの振盪速度で培養を行うのが適当である。
【0037】
この毎分70〜100ストロークという振盪速度範囲は、毎分70ストローク未満では弱すぎて種株が充分に振盪されず、一方、毎分100ストロークを超える強い振盪では、飛散した液体培地が培養容器の開口部周辺の壁面や開口部に設けた蓋部材に付着して微生物汚染を引き起こすとの問題を解消するために設定した範囲であり、他の条件で振盪を行う場合にも、これら問題を解消できる程度の振盪の程度であれば問題はない。
【0038】
本発明では、継代培養工程および増殖用培養工程の振盪速度を一定に設定したうえで、増殖用培養工程の液体培地量に対する継代培養工程の液体培地量の割合(以下、「容量割合」とする)を55〜90容量%に設定し、継代培養工程および増殖用培養工程を行う。
【0039】
容量割合を90容量%を超えるものとした場合には、継代培養工程と増殖用培養工程とのあいだの培養条件の差が小さく、本発明の効果が小さいことから、好ましくない。
【0040】
一方、容量割合を55容量%未満とした場合には、継代培養工程と増殖用培養工程との間の培養条件、例えば薬用人参カルスが受ける機械的ストレスなどの程度の差が非常に大きなものとなり、その結果、種株の特性が変化してしまう恐れがあるので好ましくない。
【0041】
よって、種株の特性を長期的に維持するという本発明の目的を達するためには、容量割合を55〜90容量%、好ましくは60〜80容量%、より好ましくは65〜80容量%の範囲とする。
【0042】
また、本発明の薬用人参カルスの培養方法は、継代培養工程の液体培地量と増殖用培養工程の液体培地量の容量比を55〜90%に設定するとともに、両工程の液体培地量を培養容器容量に対する特定割合、具体的には培養容器容量の20〜50%の容量とする薬用人参カルスの培養方法である。
【0043】
液体培地量を培養容器容量の20%未満にすると、上述した程度の振盪を加えた場合でも、カルス同士の衝突やカルスの培養容器に対する衝突、また、液体培地によるせん断力などの機械的ストレスが過剰なものとなり、これにより細胞集塊であるカルスが崩れてしまったり、また、種株の特性が変わってしまう恐れがある。
【0044】
一方、液体培地量を培養容器容量の50%を超えるものとした場合、上記の問題は生じにくいが、逆に上述の振盪条件を適用しても十分な振盪が与えられなかったり、また、充分振盪するために振盪を強く設定していた場合には、飛散した液体培地が培養容器の開口部周辺の壁面や開口部に設けた蓋部材に付着して微生物汚染を引き起こす恐れがある。
【0045】
上記の理由から、継代培養工程および増殖用培養工程の液体培地量は培養容器容量の20〜50%の範囲内とするのが好ましく、特に、継代培養工程の液体培地量は20〜35%がより好ましく、さらに好ましいのは25〜30%である。そして、増殖用培養工程の液体培地量については30〜50%がより好ましく、さらに好ましいのは30〜40%である。
【0046】
上記説明の通り、本発明では培養容器容量や容量割合や各工程の液体培地量を所定範囲に設定するが、通常は、最初に培養容器容量を設定し、その後で残りの条件、つまり、容量割合および各工程における液体培地量を設定する。
【0047】
容量割合および各工程における液体培地量を決定する順番は特に規定されるものではなく、例えば容量割合を設定してから、それに合わせて継代培養工程および増殖用培養工程の液体培地量を設定しても良い。
【0048】
また、継代培養工程もしくは増殖用培養工程のどちらか一方の液体培地量を設定したうえで容量割合を設定し、それに合わせて残り一方の液体培地量を設定してもよい。
【0049】
継代培養工程を行うには、培養容器に上記のように設定した量の液体培地、ホルモン類、および種株を入れ、振盪培養を行う。振盪の条件については特別な条件を設定する必要はなく、先述の振盪条件のような植物の組織培養で一般的に用いられる条件を適用すればよい。
【0050】
継代培養工程は、通常は数週間ごと、好ましくは2〜4週間ごとに新しい培地に交換して薬用人参カルスの培養を繰り返して行う。
【0051】
この継代培養工程の後に増殖用培養工程を行うが、液体培地や種株、ホルモンなどの培養原料の量が異なる点を除けば、増殖用培養工程は継代培養工程と同じ培養方法である。
【0052】
ただし、増殖用培養工程は、大規模培養工程で使用する多量の種株を製造する工程であるから、継代培養工程よりも多数の培養容器で培養を行う必要がある。
【0053】
続く大規模培養工程は、大量の薬用人参カルス培養物を製造する工程であるため、培養容器は継代培養工程、並びに増殖用培養工程で用いたよりも大型のものを用いる。この工程で使用する培養容器としては、数十〜数万Lの実容量を持つ培養容器、特に、撹拌機構を備えた金属製培養容器(培養装置)を用いるのが適当である。
【0054】
このような培養装置の例としては、培養容器内部を撹拌するための撹拌機を装備した金属製培養容器を挙げることができる。
【0055】
この工程では、1つの培養装置、複数の培養容器分の増殖用培養工程培養物、培地、ならびにホルモン類を入れて培養を行う。そして、製造した薬用人参カルス培養物をさらに大きな培養装置に移し、上記培養を多段工程で培養を繰り返すことにより、大量の薬用人参カルス培養物を製造することができるのである。
【0056】
【実施例】
以下、実施例および比較例をもって本発明の薬用人参カルスの培養方法を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0057】
<実施例1>
水洗いしたおたね人参を70%エタノール水溶液に30秒間浸漬した後、さらに2%−次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬して滅菌した後、滅菌水でよく洗浄し、その後で根の部分を無菌的に0.5〜1cmの大きさに切断した。
【0058】
この切断片を使い、固形培地を用いた通常の植物組織培養方法によりカルス誘導し、このおたね人参カルスを実施例1の種株として使用した。
【0059】
1L容量用として市販されているガラス製三角フラスコ(実容量1.2L。以下、1L三角フラスコと示す。)に3ppmの3−インドール酪酸および0.2ppmのカイネチンを添加した修正MS培地400ml、ならびに液体培地量に対して8%(wt/vol)(32g)のおたね人参カルスを入れ、25℃の恒温室内で毎分約80ストロークの速度で振盪培養を行い、継代培養工程とした。継代培養工程中は4週間ごとに同条件で新しい培地に植え継ぎを繰り返し、最終的に12ヶ月間培養を行った。
【0060】
継代培養工程終了後、1L三角フラスコに、継代培養工程と同組成の液体培地450mLを入れ、そこに継代培養工程後のおたね人参カルス40gを移植して4週間振盪培養を行い、増殖用培養工程とした。
【0061】
実施例1の継代培養工程の液体培地量は、増殖用培養工程の液体培地量の89容量%である。
【0062】
<実施例2>
継代培養工程における液体培地の量およびおたね人参カルスの量をそれぞれ350mL、28gとした以外は実施例1と同じにして培養を行った。
【0063】
実施例2の継代培養工程の液体培地量は、増殖用培養工程の液体培地量の78容量%である。
【0064】
<実施例3>
継代培養工程における液体培地の量およびおたね人参カルスの量をそれぞれ300mL、24gとした以外は実施例1と同じにして培養を行った。
【0065】
実施例3の継代培養工程の液体培地量は、増殖用培養工程の液体培地量の67容量%である。
【0066】
<実施例4>
継代培養工程における液体培地の量およびおたね人参カルスの量をそれぞれ250mL、20gとした以外は実施例1と同じにして培養を行った。
【0067】
実施例4の継代培養工程の液体培地量は、増殖用培養工程の液体培地量の56容量%である。
【0068】
<比較例1>
継代培養工程における液体培地の量およびおたね人参カルスの量をそれぞれ450mL、36gとした以外は実施例1と同じにして培養を行った。比較例1では継代培養工程ならびに増殖用培養工程の液体培地の量ならびにおたね人参カルスの量が同じ(100容量%)であり、両工程における機械的ストレスの程度に差は無い。
【0069】
<比較例2>
継代培養工程における液体培地の量およびおたね人参カルスの量をそれぞれ200mL、16gとした以外は実施例1と同じにして培養を行った。
【0070】
比較例2の継代培養工程の液体培地量は、増殖用培養工程の液体培地量の44容量%である。
【0071】
実施例1〜4ならびに比較例1〜2について、増殖用培養工程終了時のおたね人参カルス培養物の乾燥収量、ならびに乾燥おたね人参カルス培養物の単位重量あたりのサポニン含量を測定した。
【0072】
それら測定値を、予め測定しておいた継代培養開始時点でのおたね人参カルス培養物の培養後乾燥重量、ならびに乾燥おたね人参カルス培養物の単位重量あたりのサポニン含量と比較し、結果を表1に示した。
【0073】
ここで、上記測定においては、おたね人参カルスを十分乾燥させた後に重量を測定し、乾燥収量とした。また、得られた乾燥カルス培養物をエタノールにより抽出したエキスについてHPLCでジンセノサイド類の定量分析を行い、ジンセノサイド類の濃度の総和をサポニン含量とした。
【0074】
【表1】
Figure 2004290082
【0075】
表1から明らかなように、継代培養工程および増殖用培養工程の液体培地量を同じ(100容量%)にした比較例1では、増殖用培養工程後のおたね人参カルスの乾燥収量およびサポニン含量が、継代培養工程前に比べて著しく低下した。
【0076】
また、継代培養工程の液体培地量を増殖用培養工程の液体培地量に対して44容量%にした比較例2では、乾燥重量については比較的高い値を示していたが、サポニン含量の低下が著しく、継代培養工程前の半分以下の値となった。
【0077】
それに対し、本発明の培養方法を適用した実施例1〜4では、いずれの実施例も増殖用培養工程後のおたね人参カルスの乾燥収量およびサポニン含量が比較例1に比べて高く、さらに、実施例3では継代培養工程前と比べても同等の乾燥収量およびサポニン含量を示した。
【0078】
<実施例5>
水洗いしたアメリカ人参を70%エタノール水溶液に30秒間浸漬した後、さらに2%−次亜塩素酸ナトリウム水溶液に10分間浸漬して滅菌した後、滅菌水でよく洗浄し、その後で根の部分を無菌的に0.5〜1cmの大きさに切断した。
【0079】
この切断片を、固形培地を用いた通常の植物組織培養方法によりカルス誘導し、このアメリカ人参カルスを実施例6の種株として使用した。
【0080】
1L三角フラスコに4ppmの3−インドール酪酸および0.1ppmのベンジルアデニンを添加したガンボルグB5培地を350ml入れ、さらにアメリカ人参カルス28gを入れて、25℃の恒温室内で毎分約80ストロークの速度で振盪培養を行い、継代培養工程とした。継代培養工程中は1ヶ月ごとに新しい培地に植え継ぎを繰り返し、最終的に12ヶ月間培養を行った。
【0081】
継代培養工程終了後、上記ガンボルグB5培地450mlを入れた1L三角フラスコを新たに用意し、継代培養終了後のアメリカ人参カルス培養物36gを移植して4週間培養を行い、増殖用培養工程とした。
【0082】
実施例5の継代培養工程の液体培地量は、増殖用培養工程の液体培地量の78容量%である。
【0083】
<実施例6>
継代培養工程における液体培地の量およびアメリカ人参カルスの量をそれぞれ300mL、24gとした以外は実施例5と同じにして培養を行った。
【0084】
実施例6の継代培養工程の液体培地量は、増殖用培養工程の液体培地量の67容量%である。
<比較例3>
継代培養工程における液体培地の量およびアメリカ人参カルスの量をそれぞれ450mL、36gとした以外は実施例6と同じにして培養を行った。比較例3では継代培養工程ならびに増殖用培養工程の液体培地の量、ならびにアメリカ人参カルスの量が同じ(100容量%)であり、両工程における機械的ストレスの程度に差は無い。
【0085】
実施例5および6、比較例3についても、増殖用培養工程終了時のアメリカ人参カルス培養物の乾燥収量、ならびに乾燥アメリカ人参カルス培養物の単位重量あたりのサポニン含量を測定し、予め測定しておいた継代培養開始時点でのアメリカ人参カルス培養物の培養後乾燥重量、ならびに乾燥アメリカ人参カルス培養物の単位重量あたりのサポニン含量と比較し、結果を表2に示した。
【0086】
【表2】
Figure 2004290082
【0087】
継代培養工程および増殖用培養工程の液体培地量を同じ(100容量%)にした比較例3では、増殖用培養工程後には、継代培養工程前と比較してサポニン含量が著しく低下したのに対し、本発明の培養方法を適用した実施例5および6では、サポニン含量、乾燥物収量ともに継代培養工程前と比べてほとんど低下していなかった。
【0088】
【発明の効果】
本発明の培養方法により、薬用人参カルス培養における乾燥物収量、および二次代謝物であるサポニンの含有量を安定的に維持することが可能となった。特に本発明は、従来行われていたような培地組成の変更や、特定培地の交換を必要とせず、継代培養工程と増殖用培養工程における液体培地量を変化させるのみという非常に簡便な方法により、上記効果を奏するものである。

Claims (5)

  1. 液体培地での継代培養工程およびそれに続く液体培地での増殖用培養工程を含む薬用人参カルスの培養方法であり、継代培養工程および増殖用培養工程を行う培養容器を同一形状とし、さらに継代培養工程の液体培地量を増殖用培養工程の液体培地量の55〜90容量%にすることを特徴とする薬用人参カルスの培養方法。
  2. 継代培養工程および増殖用培養工程における液体培地量を培養容器容量の20〜50%とする請求項1記載の薬用人参カルスの培養方法。
  3. 実容量0.12〜1.3Lの三角フラスコを培養容器として使用する請求項1または2の何れか1項記載の薬用人参カルスの培養方法。
  4. さらに大規模培養工程を含む請求項1記載の薬用人参カルスの培養方法。
  5. 薬用人参カルスがおたね人参、チクセツ人参、アメリカ人参、三七人参、シベリア人参から選ばれる薬用人参のカルスである請求項1記載の薬用人参カルスの培養方法。
JP2003086887A 2003-03-27 2003-03-27 薬用人参カルスの培養方法 Pending JP2004290082A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003086887A JP2004290082A (ja) 2003-03-27 2003-03-27 薬用人参カルスの培養方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003086887A JP2004290082A (ja) 2003-03-27 2003-03-27 薬用人参カルスの培養方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2004290082A true JP2004290082A (ja) 2004-10-21

Family

ID=33401396

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003086887A Pending JP2004290082A (ja) 2003-03-27 2003-03-27 薬用人参カルスの培養方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2004290082A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009000013A (ja) * 2007-06-19 2009-01-08 Nitto Denko Corp 植物細胞塊の培養方法
JP2012507579A (ja) * 2008-11-06 2012-03-29 株式会社ウンファ 天然高麗人参または高麗人参を含む高麗人参類の形成層由来植物幹細胞株を有効成分として含有する癌予防または治療用組成物

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009000013A (ja) * 2007-06-19 2009-01-08 Nitto Denko Corp 植物細胞塊の培養方法
JP2012507579A (ja) * 2008-11-06 2012-03-29 株式会社ウンファ 天然高麗人参または高麗人参を含む高麗人参類の形成層由来植物幹細胞株を有効成分として含有する癌予防または治療用組成物

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US20120329158A1 (en) Methods of Plant Regeneration and Apparatus Therefor
CN112021180B (zh) 板栗体细胞胚发育的同步化方法及组培苗生根方法
Nieves et al. Callus induction in cotyledons of Moringa oleifera Lam.
JPH0453495A (ja) 粘性多糖類の生産方法
JP2004290082A (ja) 薬用人参カルスの培養方法
Bathoju et al. Production of medicinally important secondary metabolites (stigmasterol and hecogenin) from root cultures of Chlorophytum borivilianum (Safed musli)
Mohanta et al. In vitro culture of highly valuable medicinal plant Bacopa monnieri (L.) Penn. for rapid and mass multiplication
AU2014353082B9 (en) Production of plants using somatic embryogenesis
JP4387862B2 (ja) 薬用人参カルスの継代培養方法
Karyanti et al. Proliferation of oil palm (Elaeis Guineensis Jacq.) embryogenic callus with repeated subcultures in liquid medium
Amente et al. Effect of Growth Regulators Concentrations on in Vitro Multiplication of Three Elite Sugarcane (Saccharum Officinarum L.) Genotypes using Shoottip Culture
CN105296391A (zh) 一种用于加速辣椒种子从果实中剥离的制剂及其使用方法
Sahu et al. Bioproduction and optimization of rosmarinic acid production in Solenostemon scutellarioides through media manipulation and conservation of high yielding clone via encapsulation
CN106538563B (zh) 人参皂苷混合物及其在作为植物生长调节剂中的应用
Mastuti et al. Elicitor effect of chitosan on in vitro culture of different explants of physalis accessions from east java
Ardiyani et al. Morphological variation of somatic embryos of Coffea arabica L. during some sub-culture periods
Puad et al. Effects of Carbon Sources, Plant Growth Regulators and Inoculum Size on Citrus suhuiensis Cell Suspension Culture Growth
JP2023038573A (ja) 薬用人参カルスの製造方法、および高ジンセノサイド含有カルス
Button et al. The effect of subculture interval on organogenesis in callus cultures of Citrus sinensis
JPS6321470B2 (ja)
Md Setamam et al. The effects of foliar and nodes explants on callus induction of pogostemon cablin in-vitro culture by using plant growth regulator/Nursuria Md. Setamam and Norrizah Jaafar Sidik
RU2147608C1 (ru) Штамм культивируемых клеток растений panax ginseng c.a.mey - продуцент биологически активных веществ
Paek et al. Effects of chemical and physical environments on cell culture of Gymnema sylvestre
JP5081505B2 (ja) 植物細胞塊の培養方法
JPH0494625A (ja) 木本植物の組織培養方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20051114

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080325

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20080521

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20080521

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20080909