JP2004288623A - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子 Download PDF

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智章 原
Yoshitomo Yonehara
祥友 米原
Miya Sakurai
美弥 桜井
Morio Taniguchi
彬雄 谷口
Yu Ichikawa
結 市川
Toshiki Koyama
俊樹 小山
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Abstract

【課題】 湿式製膜法で製造が可能で、高発光効率、高輝度が得られる有機EL素子を提供すること。
【解決手段】 透明基板上に形成された正電極層上に、発光層、負電極層がこの順に積層してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、該発光層が、一般式(1)で表されるイリジウム(III)錯体からなる燐光発光材料を含有し、且つ、カルバゾール基を有する重合体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【化1】
Figure 2004288623

(1)
(式中、Yは二座配位子を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表し、少なくとも一方はアルコキシ基を表す。nは3〜8の整数を表す。)
【選択図】 なし



Description

本発明は燐光発光材料を使用した有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
近年、モバイルコンピュータ、携帯電話、PDA等の携帯情報端末用表示素子の需要が増し、表示素子の軽量化、低消費電力化が望まれている。
自己発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略す。)は、バックライトを必要とせず、素子の薄型化や軽量化が可能であることや、低駆動電圧で高輝度の発光が得られることから、ブラウン管型表示装置や液晶表示素子等の既存の表示素子に代わる次世代表示メディアとして、研究が進められている。特に最近では、赤色、青色、緑色の有機EL素子を、フルカラーディスプレイへ適用することが検討されている。
有機EL素子は、一般に、正電極層、発光物質を含有する発光層、および負電極層が、順に積層した構造からなる。正、負両電極層間に電圧を印加すると、前記発光層に、負電極層から電子が、正電極層から正孔が注入される。注入された電子と正孔は、発光物質中において再結合し、発光物質は励起子を生成する。この励起子が基底状態に失活する際に発光がおこる。
発光物質としては一重項励起子が発光する蛍光性化合物と、三重項励起子が発光する燐光性化合物が知られている。現在、有機EL素子用の発光物質として最もよく使用されているのは、熱に安定な蛍光性化合物である。しかし、蛍光性化合物を利用した有機EL素子の理論上の発光効率は最大5%と非常に低い。これに対し、燐光性化合物を利用した有機EL素子の理論上の発光効率は最大20%である。このことから、燐光性化合物を利用した有機EL素子は、蛍光性化合物を利用した有機EL素子の4倍の発光効率を示すことが期待できる。
しかし、従来知られている燐光性化合物は、三重項励起子が熱的に不安定であり、室温で発光させることが困難であった。従って、室温で発光させることのできる燐光性化合物を使用した有機EL素子が望まれている。
室温で発光する燐光性化合物として、イリジウム(III)トリス(2−フェニルピリジン)錯体(以下、「Ir(ppy)」と略す。)が知られており、Ir(ppy)と、正孔輸送材料である4,4'−N,N'−ジカルバゾール−ビフェニルとの混合物を、電極層上に共蒸着させて得た発光層を有する有機EL素子が知られている(例えば、特許文献1参照。)。これは、発光効率が8%と、蛍光性化合物を発光物質として使用した有機EL素子と比べ、高い発光効率を示す。しかし、該有機EL素子は、発光層を共蒸着法で作製しているので、製造効率が低いといった問題があった。また発光層中のIr(ppy)濃度を高くすると多量体を形成し、三重項励起子が発光せずに失活するため、発光効率が低下する(以下、これを「濃度消光」と略す。)問題があった。
一方、置換基として芳香族基を有するIr(ppy)は、多量体形成による濃度消光がある程度抑制でき高い発光効率を示すが(例えば、特許文献2参照。)、該化合物もIr(ppy)同様に、蒸着により成膜する必要があるため、製造効率が低いという問題を有する。
これに対し、Ir(ppy)を、正孔輸送材料であるポリパラフェニレンに、該錯体が多量体を形成しない、即ち濃度消光が起こらない濃度以下となるようにドーピングし、これを正電極層上に印刷法等の湿式製膜法で発光層を得る方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。高分子の正孔輸送材料にIr(ppy)をドーピングすることで、製造効率の高い湿式製膜法で発光層を作製することを可能とした。しかしこの方法で得られた有機EL素子は、正電極層からポリパラフェニレンに注入される正孔の、Ir(ppy)に輸送される確率、即ち正孔輸送効率が低いといった問題があった。また、Ir(ppy)の結晶性が高いため、Ir(ppy)を高濃度にドーピングできず、得られる有機EL素子の発光効率に限界があった。
一方、湿式製膜が可能な燐光性化合物として、主鎖または側鎖に3重項励起状態からの発光を示す金属錯体構造を有する、ポリスチレン換算の数平均分子量が10〜10の高分子発光体が知られている(例えば、特許文献3参照。)。該高分子発光体は、1〜5個のハロゲン原子等を有する金属錯体と、2個のハロゲン原子等を有するモノマーとを共重合することにより製造される。該高分子発光体は、モノマーとして芳香族化合物を使用することにより正孔輸送性を示すため、分子内で金属錯体への正孔輸送が可能となり高い発光効率を示しうる。更に、製膜性を有する高分子中に燐光発光性の金属錯体ユニットを導入しているため、結晶性が低下し湿式製膜が可能となる。
しかし、該高分子発光体は、金属錯体由来の燐光を発光させるために1分子中に導入する金属錯体濃度を高くする必要があるが、金属錯体濃度を高くすると、金属錯体ユニットが高分子中の分岐点となるために結晶性が増し、溶剤への溶解性が低下することになる。更に、金属錯体ユニット同士が重合し隣接するため、分子内での濃度消光が起こりうる。
一方、溶解性の低下および結晶化を抑制するために金属錯体濃度を低くすると、該高分子発光体の主鎖を形成する正孔輸送性ユニットの蛍光が主発光となるため、高発光効率の高分子発光体を得ることができない。
国際公開第00/70655号パンフレット 特開2002−332291号公報 特開2003−171659号公報 「アプライド・フィジックス・レター」,2002年3月,第80号(2002年)2045−2047
本発明が解決しようとする課題は、高い発光効率を示し、湿式製膜法で製造が可能で、発光効率の高い有機EL素子を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決する手段として、以下の2つの手段を用いることで、課題を解決した。即ち、ポリパラフェニレン基をIr(ppy)のフェニル基に導入することで、分子内及び分子間での正孔輸送を効率化し、正電極層から注入された正孔をイリジウム(III)錯体へ効率良く輸送させ、電子と正孔がイリジウム(III)錯体中で再結合する確率を上げ、イリジウム(III)錯体の発光効率を高めた。このようにポリパラフェニレン基をIr(ppy)のフェニル基に導入することにより、前記の効果と同時にイリジウム(III)錯体間の相互作用が抑制され、これにより濃度消光を低減させ、発光層中のイリジウム(III)錯体の濃度を上げることができるようにした。
更に本発明は上記のイリジウム(III)錯体をカルバゾール基を有する重合体と混合させることによって発光効率を向上させることを可能にした。
また、前記ポリパラフェニレン基に置換基としてアルコキシ基を導入し、かつ、フェニレン基の数を3〜8とし、より溶媒へ溶けやすくすることで、湿式製膜を可能とした。
即ち、本発明は、透明基板上に形成された正電極層上に、発光層、負電極層がこの順に積層してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、該発光層が、一般式(1)で表されるイリジウム(III)錯体からなる燐光発光材料を含有し、且つ、カルバゾール基を有する重合体を含有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
Figure 2004288623
(1)
(式中、Yは二座配位子を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表し、少なくとも一方はアルコキシ基を表す。nは3〜8の整数を表す。)
本発明の有機EL素子は、正孔輸送材料であるポリパラフェニレン基を導入した前記一般式(1)で表されるイリジウム(III)錯体を使用しているので、正電極層から注入された正孔をイリジウム(III)錯体へ効率良く輸送させることができる。電子と正孔とがイリジウム(III)錯体中で再結合する確率が上がるので、高い発光効率が得られる。
また、前記一般式(1)で表されるイリジウム(III)錯体は、アルコキシ基で置換されたポリパラフェニレン基を導入しているため、溶剤に対する溶解性が高く、製膜時に結晶化が起こらない。従って、発光層を湿式製膜法で容易に形成することができる。
また、アルコキシ基で置換されたかさ高いポリパラフェニレン基を導入し、イリジウム(III)錯体間の相互作用を低下させているので、多量体が生成しにくい。その結果、発光層中の該イリジウム(III)錯体濃度を高くしても濃度消光が起きにくいので、該濃度を高くすることができ、高い輝度の有機EL素子が得られる。
更に本発明の有機EL素子は、発光層に本発明で使用するイリジウム(III)錯体とカルバゾール基を有する重合体を含有していることにより、該イリジウム(III)錯体に対する効率の良い電荷の移動、及びホールと電子の再結合で生じたエネルギーの移動がなされる。このため高輝度、高発光効率の有機EL素子を得ることができる。
本発明においてイリジウム(III)錯体とは、配位数が6のイリジウムの錯体を表す。今後、本発明において一般式(1)のイリジウム(III)錯体をイリジウム錯体(A)と略記することがある。
一般式(1)において、ポリパラフェニレン基の置換位置としては、2−フェニルピリジンのフェニル基の2位、3位または4位が好ましく、4位が最も好ましい。またポリパラフェニレン基の置換フェニレン基の数nは3〜8が好ましい。nが3より少ないと、ポリパラフェニレン基の正孔輸送性が十分発現せず、nが8より多いと、ポリパラフェニレン基自身も蛍光を発するため、燐光発光効率が低下する問題や、有機EL素子の発光が混色するため、色純度が低下する問題が生じる。そのため、溶媒に対する溶解性と燐光の発光効率のバランスから、nは3〜4であることがさらに好ましく、3であることが最も好ましい。
また、ポリパラフェニレン基は、置換基としてRで表される炭素数1〜10のアルコキシ基を有する。ポリパラフェニレン基の置換基としてはアルキル基やシアノ基も知られているが、置換基Rがアルキル基やシアノ基の場合、アルコキシ基に比べイリジウム(III)錯体の溶解性を高める効果が低く、このため置換数を増やす必要がある。その結果、ポリパラフェニレン基の正孔輸送性が低下し、得られるイリジウム(III)錯体の発光効率が低下してしまう。従って、置換基Rはアルコキシ基が最も好ましい。アルコキシ基の中でもエトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチロキシ基、ヘキシロキシ基が好ましい。アルコキシ基の炭素数が多すぎると、ポリパラフェニレン基の正孔輸送性が低下するため、得られるイリジウム(III)錯体の発光効率が低下する傾向にある。上記のアルコキシ基の中でも、溶解性と発光効率とのバランスから、ブトキシ基が最も好ましい。
上記のアルコキシ基は、フェニレン基1分子あたり2置換されていることが好ましい。アルコキシ基の置換位置に特に制限はないが、製造の容易さから1,4−フェニレン基の2位および5位が置換されていることが好ましい。
一般式(1)においてYは二座配位子を表す。二座配位子としては、例えば、2−フェニルピリジン、一般式(2)で表される配位子、
Figure 2004288623
(2)
(式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表し、少なくとも一方はアルコキシ基を表す、nは3〜8の整数を表す。)
2−(2−ベンゾチエニル)ピリジン、2−フェニルキノリン、2−チエニルキノリン、ピコリン酸、アセチルアセトン等があげられる。中でも、Yが前記一般式(2)で表される配位子であるイリジウム(III)錯体、即ち一般式(2)で表される配位子をすべての配位子に有するイリジウム(III)錯体は、発光色が緑色であり、輝度、発行効率とも高くなることから好ましい。
本発明において、前記ポリパラフェニレン基は正孔を輸送させる役割を有する。該ポリパラフェニレン基はイリジウム(III)錯体に結合しているので、該ポリパラフェニレン基は、正電極層から受け取った正孔を発光物質であるイリジウム錯体(A)に分子内でも輸送することができる。分子内及び分子間で正孔を輸送することができるので、輸送効率が高く、そのため、得られる有機EL素子は高い発光効率を示す。
また、ポリパラフェニレン基が置換基としてアルコキシ基を有するので、イリジウム錯体(A)は溶剤に対する溶解性が高く、製膜時の結晶性が低い。従って、湿式製膜法による発光層の形成により適し、得られる発光層の結晶化を抑制することができる。
更に、ポリパラフェニレン基が置換基としてアルコキシ基を有し、かさ高さが増しているため、イリジウム錯体(A)は分子間での多量体を形成しにくく、濃度消光が起きにくい。
イリジウム錯体(A)としては、例えば、式(3)の化合物が挙げられる。
Figure 2004288623

(3)
(式中、nは3〜8の整数を表す。)
式(3)で表されるイリジウム(III)錯体は、例えば、イノーガニック・ケミストリー、第30巻、第1685頁(1991年)等に記載の公知慣用の方法で合成することができる。具体的には、ポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジンとイリジウム(III)化合物とを、不活性ガス気流下で加熱攪拌するだけで、容易に得られる。
ポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジンとイリジウム(III)化合物との反応には、溶媒を使用してもよい。溶媒としては、例えば、水、グリセリン、エトキシエタノール等が挙げられる。また必要に応じて、トリフルオロ酢酸銀、トリフルオロメタンスルホン酸銀等の触媒を使用しても良い。反応温度は、室温〜250℃の範囲であれば差し支えない。
ポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジンは、イリジウム(III)化合物1molに対し、3〜10mol反応させることが好ましい。
ポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジンは、2−(ハロゲン化フェニル)ピリジンと、ポリパラフェニレン誘導体のホウ酸化合物とを、テトラヒドロフラン、トルエン、アセトン等の溶剤中で、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)やトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)等の金属触媒下、室温から還流温度の範囲内でカップリング反応させて得られる。
2−(ハロゲン化フェニル)ピリジンの例としては、2−(4−ブロモフェニル)ピリジン、2−(4−クロロフェニル)ピリジン、2−(3−ブロモフェニル)ピリジン、2−(3−クロロフェニル)ピリジン、2−(2−ブロモフェニル)ピリジン、2−(2−クロロフェニル)ピリジン等が挙げられる。
中でも、2−(4−ブロモフェニル)ピリジン、又は2−(4−クロロフェニル)ピリジンから得られる配位子からなるイリジウム(III)錯体が好ましい。
ポリパラフェニレン誘導体のホウ酸化合物は、例えば、2,5−ジブトキシ−4−ブロモフェニルホウ酸をカップリング反応させて得られたブトキシ基を置換基に有するポリパラフェニレン基を有するホウ酸化合物が挙げられる。
前記イリジウム(III)化合物としては、例えば、イリジウム(III)トリクロリドおよびその水和物、イリジウム(III)トリアセチルアセトナート、カリウムヘキサクロロイリデート(III)等が使用できる。
イリジウム錯体(A)と共に発光層に含有させるカルバゾール基を有する重合体は、具体的には下記一般式(4)で表される。中でも重合体一分子中に、一般式(4)で表される構造を50モル%以上有するものが好ましい。
Figure 2004288623
(4)
式中、Xは単結合、1,4−フェニレン基、p−ビフェニル−4,4'−ジイル基、p−テルフェニル−4,4''−ジイル基、または炭素数1〜3のアルキレン基を示す。中でも単結合あるいは1,4−フェニレン基が好ましい。R、Rはそれぞれ独立して水素原子、または炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、フェニルアミノ基またはジフェニルアミノ基を表す。X、R、Rはさらに置換基を有していても良い。
カルバゾール基を有する重合体の主鎖は共役していないことが好ましい。下記(4−1)〜(4−3)に該重合体の好ましい具体例を挙げる。
Figure 2004288623
(4−1)
Figure 2004288623

(4−2)
Figure 2004288623
(4−3)
本発明で使用するカルバゾール基を有する重合体は、ビニルカルバゾール、N−(p−ビニルフェニル)カルバゾール、5−3:3,6−ジメチル[N−(p−ビニルフェニル)カルバゾール]等の重合性基を有するカルバゾール化合物を重合させて得られる。このとき公知慣用のアクリルモノマーやスチレンモノマー等の重合性モノマーを共重合させてもよい。特に、N−フェニル−N−(p−ビニルフェニル)−アミノベンゼンやN,N',N''−トリフェニル−N'−(p−ビニルフェニル)−4,4'−ジアミノビフェニル等のフェニルアミノ基を有する重合性モノマーを使用すると、より高い電荷輸送能を有する重合体を得ることができる。重合性基を有するカルバゾール化合物と該重合性モノマーを共重合させるには得られる重合体が、一般式(4)で表される構造を50モル%以上有するように、モノマーの組成比を調整する。重合条件に特に制限はなく、公知の方法で重合させることができる。
一般式(4)で表される化合物の分子量は、好ましくはMw=10,000〜1,000,000である。一般式(4)で表される化合物の分子量を変えることによって、発光層を形成させるための塗布溶液、インキの粘度を調整することができる。Mwが10000未満であると製膜性に劣る傾向があり、Mwが1000000を越えると有機溶媒に対する溶解性が劣り、塗布溶液を調整しづらくなる傾向にある。
これらカルバゾール基を有する重合体はポリパラフェニレン等と比べ、高い電荷輸送能を有し、励起したイリジウム(III)錯体とエキシマーを形成することもないので、効率良くイリジウム錯体(A)にエネルギー移動させることができ、高い発光効率の発光層を得ることができる。
イリジウム錯体(A)とカルバゾール基を有する重合体を含有する発光層は、透明基板上に形成された正電極層上に形成される。該基板は、電極層や発光層を形成する際に変質しない透明材料であればよく、例えば、ガラスや高分子フィルム等が挙げられる。高分子フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン、ポリエーテルスルホン等の透明材料を、酸化珪素や窒化珪素等でガスバリアコートしたフィルムを使用することができる。
前記透明な正電極層は、インジウムスズオキシド(以下、「ITO」と略す。)等を基板上にスパッタリングや真空蒸着したり、あるいは、ITO微粒子の懸濁液を塗布し、該微粒子を焼結させて得られる。また、電極表面に、紫外線−オゾン処理、酸素雰囲気下のプラズマ処理等の表面処理を施すと、得られる有機EL素子の駆動電圧の低下を防ぎ、発光効率を向上させる効果が得られる。正電極層の膜厚は、10nm〜5μmの範囲であると、光が透過しやすい。中でも、膜厚が20nm〜1μmの範囲が好ましい。
前記基板に設けた正電極層上に、イリジウム錯体(A)とカルバゾール基を有する重合体を含有する発光層を形成する。該発光層は、イリジウム錯体(A)とカルバゾール基を有する重合体の有機溶剤溶液を、公知のコーティング法、インクジェット法、印刷法によって塗布後、乾燥して得られる。乾燥方法に特に制限はない。
イリジウム錯体(A)とカルバゾール基を有する重合体の混合比は2:98〜99:1の範囲とすることが好ましい。特に好ましくは2:98〜90:10の範囲である。この他にカルバゾール基を有する重合体以外の高分子材料を含有させても良い。カルバゾール基を有する重合体以外の高分子材料としては、溶剤可溶としたポリフェニレン、ポリフルオレノン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリオキサジアゾール等、電荷輸送能を有する高分子材料を用いることが好ましい。特に溶剤可溶としたポリパラフェニレン、ポリフルオレノン、ポリピロールが好ましい。
発光層の膜厚は特に限定はないが、乾燥後の膜厚を1nm〜1μmとした場合に、高い発光効率が得られる。中でも、膜厚が10nm〜500nmとなるように作製することが好ましい。
前記有機溶剤としては、イリジウム錯体(A)を溶解することができれば、いずれの有機溶剤でも使用できる。例えばシクロヘキサノン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、テトラリン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ブチルカルビトール、N−メチルピロリドン等を挙げることができるが、有機溶剤の揮発速度が速いとイリジウム錯体(A)の有機溶剤溶液の粘度上昇が起こることや、使用する印刷版にイリジウム錯体(A)が固着しやすくなることから、25℃における蒸気圧が0.01〜3.0kPa(0.1〜22.5mmHg)の範囲内であって、沸点が100〜300℃の範囲内にある有機溶剤であることが好ましい。このような有機溶剤の例として、トルエン、キシレン、シクロヘキサノン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、テトラリン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ブチルカルビトール、N−メチルピロリドン等があげられる。これらの有機溶剤は、単独で使用しても混合して使用しても差し支えない。
イリジウム錯体(A)及びカルバゾール基を有する重合体を塗布、印刷するための有機溶剤溶液の濃度は、印刷方法やコーティング方法により異なるが、0.1質量%〜15質量%の範囲であることが好ましい。該有機溶剤溶液濃度が0.1質量%未満であると、印刷またはコーティングした乾燥後の膜厚が薄くなりすぎるため有機EL素子のショートを引き起こすおそれがある。一方、該有機溶剤溶液濃度が15質量%を越えると、印刷またはコーティングした乾燥後の膜厚が厚くなるため、発光させるために必要な電圧が高くなる、あるいは発光輝度が低くなることになる。得られる有機EL素子の性能から、イリジウム錯体(A)及びカルバゾール基を有する重合体を塗布、印刷するための有機溶剤溶液の濃度は0.5質量%〜10質量%の範囲にあることが特に好ましい。該有機溶剤溶液の濃度がこの範囲内であれば乾燥後の発光層の膜厚を、1nm〜1μmとなるように制御しやすい。
前記発光層上に負電極層を設ける。負電極層は、例えば、前記発光層上に、リチウムやカリウム等のアルカリ金属、カルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属、金、銀、アルミニウム、又はリチウム−アルミニウム合金やマグネシウム−銀合金等の合金を、真空蒸着、スパッタリングするか、これらの粉体を含有する塗料を塗布することによって得られる。該負電極層の膜厚は50〜200nmの範囲が好ましい。また、前記負電極層上に、酸化珪素、窒化珪素、二酸化珪素、酸化ゲルマニウム、又は二酸化ゲルマニウム等を、真空蒸着またはスパッタリングするか、これらの粉体を含有する塗料を塗布して保護層を設けることにより、本発明の有機EL素子を劣化させる因子である水分や酸素を遮断することができる。
本発明の有機EL素子には、電荷輸送性をより向上させるために、正電極層と、イリジウム錯体(A)とカルバゾール基を有する重合体を含有する発光層との間に正孔輸送層を、前記発光層と負電極層との間に電子輸送層を設けてもよい。また、電荷輸送性をより向上させるために、前記発光層に正孔輸送材料または電子輸送材料を混合することもできる。
正孔輸送層は、陽極から注入された正孔を移動させるために設けられる層である。正孔輸送層に使用する正孔輸送材料としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ベンジジン誘導体、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体等が挙げられる。
正孔輸送層は、正電極層上に作製する。正孔輸送材料が、トリフェニルアミン誘導体等の低分子化合物である場合は、正電極層上に真空蒸着させたり、又は、正孔輸送材料を有機溶媒に溶解した後、正電極層上に、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法などによって塗布して作製する。また、正孔輸送材料がポリチオフェン誘導体等の高分子化合物である場合は、必要に応じて有機溶媒に溶解した後、正電極層上に、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法などによって塗布して作製する。正孔輸送層の膜厚は、一般に、5nm〜500nmとなるように作製する。
一方、前記電子輸送層に使用する電子輸送材料としては、例えば、オキサジアゾール誘導体、ナフトキノン誘導体、ポリキノキサリン誘導体等が挙げられる。
電子輸送層は、イリジウム錯体(A)とカルバゾール基を有する重合体を含有する発光層上に作製する。
電子輸送層は、電子輸送材料がオキサジアゾール誘導体やナフトキノン誘導体等である場合は、前記発光層上に真空蒸着したり、又は、電子輸送材料を有機溶媒に溶解した後、前記発光層上に、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法などによって塗布して作製する。また、電子輸送材料が、ポリキノキサリン誘導体等の高分子化合物である場合は、必要に応じて有機溶媒に溶解した後、前記発光層上に、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法などによって塗布して作製する。電子輸送層は、乾燥後の膜厚が5nm〜500nmとなるように作製するとよい。
また、電子輸送層と負電極層との間に、発光効率を高める目的で、リチウムやカリウム等アルカリ金属のフッ化物層、カルシウムやマグネシウム等アルカリ土類金属のフッ化物層等の絶縁層を、真空蒸着、スパッタリングするか、これらの粉体を含有する塗料を塗布することによって、膜厚0.1〜10nmの範囲となる様に作製することもできる。
また、イリジウム錯体(A)とカルバゾール基を有する重合体に正孔輸送材料または電子輸送材料を混合し発光層を形成する場合は、前記記載の正孔輸送材料または電子輸送材料とイリジウム錯体(A)とカルバゾール基を有する重合体を、予めシクロヘキサノン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ブチルカルビトール、テトラリン、N−メチルピロリドン等の有機溶媒に溶解した後、その溶液を各種コーティング法、インクジェット法、印刷法等によって正電極層上に塗布後、乾燥して得られる。乾燥方法に特に制限はない。
正孔輸送材料または電子輸送材料が多すぎると、イリジウム錯体(A)の濃度が低くなりすぎて十分な発光輝度が得られにくいことから、イリジウム錯体(A)は、混合物全量に対して2%以上混合するのが好ましい。
前記発光層の膜厚には特に限定はないが、乾燥後1nm〜1μmとなるように作製すると、発光効率をより高めることができる。中でも、膜厚が10nm〜500nmとなるように作製することが好ましい。
本発明においては、イリジウム錯体(A)が、電荷輸送材料であるπ共役鎖を有しており電荷輸送機能を有する上、共存するカルバゾール基を有する重合体も電荷輸送機能を有するため、正孔輸送層または電子輸送層がなくても、発光効率の高い有機EL素子を得ることができる。
本発明の有機EL素子には、正電極層からの正孔の注入を容易にするために、正電極層と正孔輸送層の間、正孔輸送層を持たない場合は正電極層と発光層の間、に正孔注入層設けても良い。正孔注入層は例えば正電極層上に、フタロシアニン誘導体を膜厚が50nm以下となるように真空蒸着することや、ポリエチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホネート(PEDOT−PSS)を溶媒に溶解若しくは分散させた後、各種コーティング法、インクジェット法、印刷法等で50nm以下となるように塗布することで得ることができる。
また本発明の有機EL素子には、負電極層からの電子の注入を容易にするために、負電極層と電子輸送層との間、電子輸送層を持たない場合は負電極層と発光層の間、に電子注入層を設けてもよい。電子注入層は、例えば電子注入層上、または発光層上にトリシアノキノジメタンやオキサジアゾール誘導体を、膜厚が50nm以下となるように真空蒸着して得られる。
本発明の有機EL素子の発光層には、結晶性が低く、会合体を形成しにくいイリジウム錯体(A)及びカルバゾール基を有する重合体を使用しているので、高発光効率を得ることができ、濃度消光を起こしにくい。また、イリジウム錯体(A)及びカルバゾール基を有する重合体は溶剤に溶けやすいので、発光層を湿式製膜法で簡単に形成することができる。該イリジウム錯体(A)の結晶性が低いことから、本発明の有機EL素子は、時間が経過しても、発光層中でイリジウム錯体(A)が結晶化して析出することがなく、素子が劣化しにくい。
本発明の有機EL素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の用途に、好適に使用することができる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の例において、「%」は、特に断りのない限りは質量基準とする。
<合成参考例1> 2−(4−ブロモフェニル)ピリジンの合成
反応容器中に、2−ブロモピリジン11gとテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す。)200mlとを仕込み、アルゴン気流下アセトン−ドライアイスバスで冷却しながら、ターシャリー・ブチルリチウムの1.5mol/lのペンタン溶液92mlを滴下した。滴下終了後直ちに塩化亜鉛1.0mol/lのジエチルエーテル溶液70mlを滴下した。アセトン−ドライアイスバス中で1時間、0℃で2時間、室温で3時間反応させた後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)800mgを加え、1−ブロモ−4−ヨードベンゼン19.6gのTHF溶液100mlを滴下した。室温で約68時間反応させた後、反応液に酢酸エチル200mlを加え、10%アンモニア水100mlで1回、蒸留水100mlで2回洗浄し、有機層を濃縮した。残査をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)で分離し、溶剤を留去して2−(4−ブロモフェニル)ピリジン9.6gを得た。
<合成参考例2> Mwが1300のポリ(2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレン)基を有するホウ酸化合物の合成
反応容器中に、2,5−ジブトキシ−1−ブロモ−4−フェニルホウ酸13.8g、1mol/lの炭酸カリウム水溶液80ml、THF200ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)400mgを仕込み、アルゴン気流下、60℃で撹拌し、7分後にフェニルホウ酸4.88gを加え、さらに同温で8時間撹拌して反応を終了した。反応液を1mol/lの塩酸400mlに滴下し、生成した沈殿物を濾集して蒸留水400mlで洗浄した。この沈殿物をジクロロメタン30mlに溶解し無水硫酸マグネシウムで乾燥後、0.5μmフィルターで濾過した。ジクロロメタンを濃縮し、ポリ(2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレン)を有するホウ酸化合物(以下、「ホウ酸化合物(A)」と略す。)3.3gを得た。ホウ酸化合物(A)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)を用いてポリスチレン換算の分子量分布を測定したところ、重量平均分子量(以下、「Mw」と略す。)が1300、数平均分子量(以下、「Mn」と略す。)が900、Mw/Mnが1.44、Mwから算出した2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレンユニットの繰り返し数nは5.6であり、繰り返し数nの平均は5〜6であると推定される。
<合成参考例3> Mwが1600のポリ(2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレン)基を有するホウ酸化合物の合成
反応容器中に、2,5−ジブトキシ−1−ブロモ−4−フェニルホウ酸13.8g、1mol/lの炭酸カリウム水溶液80ml、トルエン200ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)400mgを仕込み、アルゴン気流下、95℃で撹拌し、42時間後にフェニルホウ酸4.88gを加え、さらに同温で8時間撹拌して反応を終了した。これ以降は合成参考例2と同様の後処理工程を行い、Mwが1600、Mnが1400、Mw/Mnが1.14のポリ(2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレン)を有するホウ酸化合物(以下、「ホウ酸化合物(B)」と略す。)3.3gを得た。Mwから算出した2,5−ジブトキシ−1,4−フェニレンユニットの繰り返し数nは6.9であり、繰り返し数nの平均は6〜7であると推定される。
<合成参考例4>ポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジンの合成
反応容器中に、合成参考例1で得た2−(4−ブロモフェニル)ピリジン0.7g、合成参考例2で得たホウ酸化合物(A)を1.6g、THF200ml、1mol/lの炭酸カリウム水溶液40ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)35mgを仕込み、アルゴン気流下、60〜65℃で24時間撹拌した。反応溶液の有機層と水層とを分離し、有機層を乾燥、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)で精製し、ポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジン誘導体(以下、「ピリジン誘導体(C)」と略す。)3.5gを得た。この化合物について、GPCを用いてポリスチレン換算の分子量分布を測定したところ、Mwが1400、Mnが1000であった。
H−NMRスペクトルデータ:CDCl、300MHz)
8.7ppm(d,1H,N−CH=)、8.1ppm(d,2H)、
7.8ppm(m,4H、)、7.6ppm(d,2H)、
7.4ppm(m,2H)、7.3ppm(d,1H)、
7.2ppm(m,1H)、7.0−7.1ppm(m,8H)、
3.9ppm(t,12H,O−CH −)、
1.6−1.7ppm(m、12H,−CH −)、
1.4−1.5ppm(m、12H,−CH −)、
0.9−1.0ppm(t,18H,−CH
<合成参考例5>ポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジンの合成
合成参考例4における、ホウ酸化合物(A)1.6gに代えて、ホウ酸化合物(B)1.9gを用いた以外は合成参考例4と同様の操作を行い、Mwが1900、Mnが1600、Mw/Mnが1.18の、ポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジン誘導体(以下、「ピリジン誘導体(D)」と略す。)1.4gを得た。
(1H−NMRスペクトルデータ:CDCl、300MHz)
8.7ppm(d,1H,N−CH=)、8.1ppm(d,2H)、
7.8ppm(m,4H、)、7.6ppm(d,2H)、
7.4ppm(m,2H)、
7.3ppm(d,1H)、7.2ppm(m,1H)、
7.0−7.1ppm(m,6H)、
3.9ppm(t,16H,O−CH −)、
6−1.7ppm(m、16H,−CH −)、
−1.5ppm(m、16H,−CH −)、
0.9−1.0ppm(t,24H,−CH
<合成参考例6> 2,5−ジブトキシフェニルホウ酸の合成
反応容器中にヒドロキノン110g、水酸化カリウム140g、エタノール800mlを仕込み、窒素気流下、還流しながら1−ブロモブタン412gを滴下した。5時間後反応を終了し、反応液にヘキサン800mlを加え、蒸留水100mlで3回洗浄した。有機層を濃縮後、水/メタノールにて再結晶し、1,4−ジブトキシベンゼン136gを得た。
得られた1,4−ジブトキシベンゼン136g、N−ブロモこはく酸イミド109g、ジクロロメタン600ml、酢酸300mlを35℃にて撹拌した。7時間後反応を終了し、反応液から大部分のジクロロメタンを留去した後、ヘキサン800mlを加え、蒸留水300ml、3%炭酸水素ナトリウム溶液250ml、10%水酸化ナトリウム溶液100ml、蒸留水300mlで2回の順に洗浄し、最後にヘキサンを留去した。残査をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)にて精製し、2−ブロモ−1,4−ジブトキシベンゼン155gを得た。
次に、2−ブロモ−1,4−ジブトキシベンゼン155g、ジエチルエーテル700mlをアセトン/ドライアイスバス中、アルゴン気流下で撹拌しながら、2.6mol/L N−ブチルリチウム ヘキサン溶液200mlを滴下した。反応液を同バス内で2時間、室温で2時間撹拌した後、再びアセトン/ドライアイスバスにて冷却し、トリメトキシボラン78gのジエチルエーテル溶液200mlを滴下した。反応液を室温で10時間撹拌後、反応液に2mol/L塩酸500mlを加え3時間撹拌した。エーテル層を濃縮し、残査にヘキサン700mlを加えた。生成した沈殿物を濾集し、アセトン500mlに溶解、不溶物を濾過後、アセトンを留去して2,5−ジブトキシフェニルホウ酸58gを得た。
<合成参考例7> 4−ブロモ−2,5−ジブトキシビフェニルの合成
反応容器中にフェニルヒドロキノン55.8g、水酸化カリウム44.8g、エタノール500mlを仕込み、窒素気流下、還流しながら1−ブロモブタン164gを滴下した。6時間後反応を終了し、反応液にヘキサン300mlを加え、蒸留水100mlで3回洗浄した。有機層を濃縮後、残査をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)にて精製し、2,5−ジブトキシビフェニル73.6gを得た。
得られた2,5−ジブトキシビフェニル71.2gを酢酸150mlに溶解し、室温で撹拌しながら臭素25gと酢酸35mlの混合溶液を滴下した。攪拌を続け、3時間後に臭素8gを追加し、更に4時間撹拌した。反応後の溶液にヘキサン300mlを加え、蒸留水100ml、2%炭酸水素ナトリウム水溶液100ml、蒸留水100mlで2回の順に洗浄し、最後にヘキサンを留去した。残査をカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)にてカラム精製し、4−ブロモ−2,5−ジブトキシビフェニル60.6gを得た。
<合成参考例8> 2,5,2',5',2'',5''−ヘキサブトキシ〔1,1',4',1'',4'',1'''〕クオーターフェニルホウ酸の合成
反応容器中に合成参考例6で得た2,5−ジブトキシフェニルホウ酸18.4g、合成参考例7で得た4−ブロモ−2,5−ジブトキシビフェニル20.7g、THF250ml、2mol/L炭酸カリウム水溶液50ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)600mgを仕込み、アルゴン気流下、還流しながら24時間反応した。反応液にヘキサン300mlを加え、水層を分離後、有機層を濃縮した。残査をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、2,5,2',5'−テトラブトキシ〔1,1',4',1''〕ターフェニル25.3gを得た。
得られた2,5,2',5'−テトラブトキシ〔1,1',4',1''〕ターフェニル25.3gを酢酸200mlに溶解し、室温で撹拌しながら、臭素9gと酢酸10mlの混合溶液を滴下した。3時間後反応を終了し、反応液にヘキサン250mlを加え、蒸留水100ml、2%炭酸水素ナトリウム水溶液100ml、蒸留水100mlで2回の順に有機層を洗浄した。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、4−ブロモ−2,5,2',5'−テトラブトキシ〔1,1',4',1''〕ターフェニルを得た。
得られた4−ブロモ−2,5,2',5'−テトラブトキシ〔1,1',4',1''〕ターフェニル20.8g、参考例6で得た2,5−ジブトキシフェニルホウ酸13g、THF150ml、2mol/L炭酸カリウム水溶液30ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム380mgを還流しながらアルゴン気流下で24時間反応した。反応液にヘキサン300mlを加え、水層を分離後、有機層を濃縮した。残査をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、2,5,2',5',2'',5''−ヘキサブトキシ〔1,1',4',1'',4'',1'''〕クオーターフェニル22.5gを得た。
得られた2,5,2',5',2'',5''−ヘキサブトキシ〔1,1',4',1'',4'',1'''〕クオーターフェニル22.5gを、酢酸100mlとヘキサン50mlの混合溶剤に溶解し、室温で撹拌しながら、臭素5.0gと酢酸10mlの混合溶液を滴下した。3時間後反応を終了し、反応液に酢酸エチル300mlを加え、蒸留水100ml、2%炭酸水素ナトリウム水溶液100ml、蒸留水100mlで2回の順で有機層を洗浄した。有機層を濃縮後、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、4−ブロモ−2,5,2',5',2'',5''−ヘキサブトキシ〔1,1',4',1'',4'',1'''〕クオーターフェニル18.8gを得た。
次に、4−ブロモ−2,5,2',5',2'',5''−ヘキサブトキシ〔1,1',4',1'',4'',1'''〕クオーターフェニル18.8g、ジエチルエーテル200mlを、アセトン/ドライアイスバス中、アルゴン気流下で撹拌しながら、1.56mol/L n−ブチルリチウム ヘキサン溶液18mlを滴下した。反応液を同バス内で2時間、室温で2時間撹拌した後、再びアセトン/ドライアイスバスで冷却し、トリメトキシボラン5gのジエチルエーテル溶液10mlを滴下した。反応液を室温で10時間撹拌後、反応液に2mol/L塩酸50mlを加え3時間撹拌した。反応液から有機層を分離し溶剤留去後、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)にて精製し、2,5,2',5',2'',5''−ヘキサブトキシ〔4,1',4',1'',4'',1'''〕クオーターフェニルホウ酸10.4gを得た。
<合成参考例9> 2−(2',5',2'',5'',2''',5'''−ヘキサブトキシクインケフェニル−4−イル)ピリジンの合成
合成参考例8で得た2,5,2',5',2'',5''−ヘキサブトキシ〔4,1',4',1'',4'',1'''〕クオーターフェニルホウ酸10.4g、2−(4−ブロモフェニル)ピリジン2.5g、THF200ml、2mol/L炭酸カリウム水溶液15ml、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム220mgを還流しながらアルゴン気流下で24時間反応した。反応液に酢酸エチル200mlを加え、水層を分離後、有機層を濃縮した。残査をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)にて精製し、2−(2',5',2'',5'',2''',5'''−ヘキサブトキシクインケフェニル−4−イル)ピリジン(以下「ピリジン誘導体(E)」と略す。)13.9gを得た。
<合成例1> ポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジン誘導体を配位子とするイリジウム(III)錯体(A−1)の合成
反応容器中に、合成参考例4で得たMw1400、Mn1000、n数が5.6のピリジン誘導体(C)を1.2g、イリジウムトリス(アセチルアセトナート)440mg、グリセリン20mlを仕込み、窒素気流下、220℃で還流しながら8時間撹拌した。反応液にジクロロメタン200mlを加え、蒸留水50mlで3回洗浄した。ジクロロメタンを濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン/ヘキサン)で精製し、式(5)で表されるポリパラフェニレン基を有する2−フェニルピリジン誘導体を配位子とするイリジウム(III)錯体(A−1)320mgを得た。この化合物について、GPCを用いてポリスチレン換算の分子量分布を測定したところ、Mwが4500、Mnが3100であった。
H−NMRスペクトルデータ:CDCl、300MHz)
7.9ppm(d,3H,N−CH=)、
7.6−7,8ppm(m,15H)、
7.4−7.5ppm(m,9H、)、7.3ppm(d,3H)、
6.9−7.1ppm(m,40H)、
3.9ppm(m,60H,O−CH −)、
1.6−1.7ppm(m、60H,−CH −)、
1.4−1.5ppm(m、60H,−CH −)、
0.9−1.0ppm(m,90H,−CH
Figure 2004288623
(5)
(式(5)中、nは5〜6を表す。)
<合成例2> 2−(2',5',2'',5'',2''',5'''−ヘキサブトキシクインケフェニル−4−イル)ピリジンを配位子とするイリジウム(III)錯体(A−2)の合成
反応容器中に、合成参考例9で得たピリジン誘導体(E)を8g、トリフルオロ酢酸銀を1.57g、イリジウムトリス(アセチルアセトナート)1.13g、グリセリン30mlを仕込み、アルゴン気流下、220℃で還流しながら8時間撹拌した。反応液を冷却後、反応液にジクロロメタン200mlを加え、蒸留水50mlで3回洗浄した。ジクロロメタンを濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン)で精製し、式(6)で表される2−(2',5',2'',5'',2''',5'''−ヘキサブトキシクインケフェニル−4−イル)ピリジンを配位子とするイリジウム(III)錯体(A−2)3.98gを得た。
(1H−NMRスペクトルデータ:CDCl3、300MHz)
7.9ppm(d,3H)、7.7ppm(d,3H)、
7.7ppm(d,3H)、7.6ppm(d,9H)、
7.4ppm(t,9H)、7.3ppm(t,3H)、
7.0ppm(s,3H)、7.0ppm(s,s,12H)、
6.9ppm(s,3H)、3.9ppm(m,36H)、
1.6−1.7ppm(m、36H)、1.4−1.5ppm(m、36H)、
8−0.9ppm(m,54H)
Figure 2004288623
(6)
<比較合成例1>主鎖にイリジウム(III)錯体ユニットを持つポリパラフェニレン誘導体(B−1)の合成
特開2003−171659号公報に基づき、イリジウムトリスアセチルアセトナート0.642g、2−(4−ブロモフェニル)ピリジン0.41g、2−(フェニル)ピリジン0.54gおよびグリセリン30mlを仕込み、220℃のオイルバスで10時間還流しながら撹拌した。反応液を冷却後、反応液にジクロロメタン200mlを加え、蒸留水50mlで3回洗浄した。ジクロロメタンを濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン)で精製し、得られた画分を約3mlに濃縮した。この濃縮液にメタノール100mlを加えて析出した黄色固体0.3gを濾集した。この黄色固体は、トリス(2−(フェニル)ピリジン)イリジウム(III)錯体(錯体1)、ビス(2−(フェニル)ピリジン)モノ(2−(4−ブロモフェニル)ピリジン)イリジウム(III)錯体(錯体2)、モノ(2−(フェニル)ピリジン)ビス(2−(4−ブロモフェニル)ピリジン)イリジウム(III)錯体(錯体3)、トリス(2−(4−ブロモフェニル)ピリジン)イリジウム(III)錯体(錯体4)の混合物(以下、錯体混合物Aと略す)であった。GPCより、それぞれの比率を求めると、表1の通りであった。
Figure 2004288623
反応生成物のイリジウム濃度が4.3%になるように、1,4−ジブロモ−2,5−ジブトキシベンゼン182mg、2,5−ジブトキシ−1,4−フェニルジボロニックアシッド186mg、錯体混合物A44mg(仕込みに際しては、ビス(2−(フェニル)ピリジン)モノ(2−(4−ブロモフェニル)ピリジン)イリジウム(III)の分子量733を用いた。)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)10mg、THF10ml、2mol/L炭酸カリウム水溶液2mlを仕込み、アルゴン気流下、60〜65℃で24時間撹拌した。反応溶液の有機層と水層とを分離し、有機層を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン)で精製した。目的物の画分を約1mlに濃縮後、残査にメタノール30mlを加え、生成した黄色沈殿を濾集し、主鎖にイリジウム(III)錯体ユニットを持つポリパラフェニレン誘導体(B−1)130mgを得た。この化合物は、イリジウム(III)錯体ユニットとフェニレンユニットがランダム共重合した構造を有する。この化合物について、GPCを用いてポリスチレン換算の分子量分布を測定したところ、Mwが4200、Mnが2900であった。
<実施例1>
合成例1で得たイリジウム錯体(A−1)と化合物(4−1)である高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)を質量比14:86の割合で混合して1,1,2−トリクロロエタンに溶解させて発光層形成用塗布液を作製した。発光層形成用塗布液中の固形分濃度は3%とした。次に片面に厚さ100nmのITO電極層を有する面積が20mm×20mm、厚さが1.1mmのコーニング社製のガラス板「1737」のITO電極層をウシオ電機(株)製エキシマ光照射装置UES20−172にて10分間オゾンエキシマ処理した。この上に前記発光層形成用塗布液をスピンコーターにて100nmの膜厚となるように成膜し、真空乾燥機を用いて真空下110℃で1時間乾燥させ、発光層を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は0.59%であった。このようにして得られたITO、発光層が順に積層されたガラス板を、発光面積が2mm×2mmとなるようにシャドウマスクした後、真空蒸着機に入れ、マグネシウム9、銀1の割合となるよう共蒸着し膜厚200nmの負電極層を形成させた。さらに負電極層保護の目的で負電極層の上に銀を厚さ100nmとなるように真空蒸着し、有機EL素子(A)を得た。
窒素ガス雰囲気中で、有機EL素子(A)の負電極と正電極をケースレー社製の「237ハイ・ボルテージ・ソース・メジャー・ユニット」に接続し、両電極間に電圧を印可して電流密度・電圧特性を測定した。さらに、(株)トプコン製色彩輝度計「BM−7」を使用して有機EL素子(A)の輝度を、(株)日立製作所製蛍光光度計「F−4500」を使用して有機EL素子(A)の発光スペクトルをそれぞれ測定した。電流密度・電圧・輝度特性および発光スペクトルから、発光波長λmax、最高輝度、外部量子効率を算出した。
その結果、有機EL素子Aは、発光波長λmaxが540nm、最高輝度は13000cd/m、最大外部量子効率が3.6%であった。
<実施例2>
実施例1における発光層の代わりに、合成例2で得たイリジウム錯体(A−2)と高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)質量比8.8:91.2の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させた溶液を使用して発光層を設けた以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(B)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は0.59%であった。有機EL素子(B)を実施例1と同様に評価した結果、有機EL素子(H)は、発光波長λmaxが540nm、最高輝度は16000cd/m、最大外部量子効率が3.8%であった。
<実施例3>
実施例1における発光層の代わりに、合成例2で得たイリジウム錯体(A−2)と高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)を質量比22:78の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させた溶液を使用して発光層を設けた以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(C)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は1.5%であった。有機EL素子(C)を実施例1と同様に評価した結果、有機EL素子(C)は、発光波長λmaxが540nm、最高輝度は17000cd/m、最大外部量子効率が3.9%であった。
<実施例4>
実施例1における発光層の代わりに、合成例2で得たイリジウム錯体(A−2)と高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)を質量比45:55の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させた溶液を使用して発光層を設けた以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(D)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は3%であった。有機EL素子(D)を実施例1と同様に評価した結果、有機EL素子(D)は、発光波長λmaxが540nm、最高輝度は15000cd/m、最大外部量子効率が3.7%であった。
<実施例5>
実施例1における発光層の代わりに、合成例2で得たイリジウム錯体(A−2)と高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)を質量比70:30の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させた溶液を使用して発光層を設けた以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(E)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は4.7%であった。有機EL素子(E)を実施例1と同様に評価した結果、有機EL素子(E)は、発光波長λmaxが540nm、最高輝度は15000cd/m、最大外部量子効率が3.8%であった。
<実施例6>
実施例1における発光層の代わりに、合成例2で得たイリジウム錯体(A−2)と高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)と下記式(7)に構造を示す2−(4−ビフェニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(アルドリッチ社製)を質量比8.8:81.2:10の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させた溶液を使用して発光層を設けた以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(F)を得た。発光層中のイリジウム原子濃度は0.59%であった。有機EL素子(F)を実施例1と同様に評価した結果、有機EL素子(F)は、発光波長λmaxが540nm、最高輝度は14000cd/m、最大外部量子効率が4.3%であった。
Figure 2004288623
(7)
<比較例1>
実施例1における発光層の代わりに、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)と高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)を質量比2:98の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させた溶液を使用して発光層を設けた以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(G)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は0.59%であった。有機EL素子(G)を実施例1と同様に評価した結果、有機EL素子(G)は、発光波長λmaxが513nm、最高輝度は5900cd/m、外部量子効率が2.5%であり、最高輝度および最大外部量子効率は実施例1〜6で得られた有機EL素子(A)〜(F)よりも低い値となった。
<比較例2>
実施例1における発光層の代わりに、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)と高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)とを5:95の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させた溶液を使用して発光層を設けた以外は実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(H)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は1.5%であった。有機EL素子(H)を実施例1と同様に評価した結果、有機EL素子(H)は、発光波長λmaxが513nm、最高輝度は4800cd/m、外部量子効率が1.9%であり、最高輝度および外部量子効率は実施例1〜6で得られた有機EL素子(A)〜(F)よりも低い値となった。さらに、有機EL素子(H)の外部量子効率は、比較例1の有機EL素子(G)よりも低い値となり、濃度消光の影響が認められた。
<比較例3>
実施例1における発光層の代わりに、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)と高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)とを質量比10:90の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させた溶液を使用して発光層を設けた以外は実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(I)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は3.0%であった。有機EL素子(I)を目視観察した結果、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)の結晶が析出し均一な発光層が形成されていなかった。有機EL素子(I)を実施例1と同様に評価したが、電圧を印加すると素子がショートし、最高輝度および最大外部量子効率を測定することができなかった。
<比較例4>
実施例1における発光層の代わりに、比較合成例1で得たイリジウム(III)錯体ユニットを持つポリパラフェニレン誘導体(B−1)と高砂香料(株)製ポリビニルカルバゾール(Mw=20,000)を質量比14:86の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させた溶液を使用して発光層を設けた以外は、実施例1と同様の操作を行い、有機EL素子(J)を得た。発光層中のイリジウム原子の濃度は0.59%であった。有機EL素子(J)を実施例1と同様に評価した結果、有機EL素子(J)は、発光波長λmaxが535nm、最高輝度は60cd/m、最大外部量子効率が0.4%であり、最高輝度および最大外部量子効率は実施例1〜6で得られた有機EL素子(A)〜(F)よりも著しく低い値となった。これは比較合成例1の化合物がイリジウム錯体ユニットとフェニレンユニットのランダム共重合体であることから、その構造の不規則性に起因するものと考えられる。
実施例1〜6、及び比較例1〜4の結果を表2に示す。実施例1〜6の結果は、比較例1〜4の結果に比べ、最高輝度、発光効率共に高かった。
また、発光層中のイリジウム原子濃度が発光効率に与える影響(濃度消光の影響)について次のように評価した。実施例2〜5について実施例2の発光効率を100とし、比較例1〜2について比較例1の発光効率を100として発光効率の相対値を計算し、比較した。その結果、実施例2〜5で得られた有機EL素子には濃度消光の影響が認められなかった。しかし比較例1〜2で得られた有機EL素子は濃度が高くなると発光効率が低下し、濃度消光の影響が認められた。
Figure 2004288623
表2中、Ir(ppy)は、イリジウムトリス(2−フェニルピリジン)を表す。
本発明の有機EL素子は、表示素子、ディスプレイ、バックライト、照明光源、記録光源、露光光源、読み取り光源、標識、看板、インテリア、光通信等の用途に、好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 透明基板上に形成された正電極層上に、発光層、負電極層がこの順に積層してなる有機エレクトロルミネッセンス素子において、該発光層が、一般式(1)で表されるイリジウム(III)錯体からなる燐光発光材料を含有し、且つ、カルバゾール基を有する重合体を含有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2004288623
    (1)
    (式中、Yは二座配位子を表し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表し、少なくとも一方はアルコキシ基を表す。nは3〜8の整数を表す。)
  2. 前記一般式(1)においてRがブトキシ基である、請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記一般式(1)において、nが3又は4である請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記一般式(1)において、Yが一般式(2)で表される配位子である請求項1〜3のいずれかに記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2004288623
    (2)
    (式(2)中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜10のアルコキシ基を表し、少なくとも一方はアルコキシ基を表す、nは3〜8の整数を表す。)
  5. 前記一般式(1)の化合物が式(3)で表されるイリジウム(III)錯体である請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
    Figure 2004288623
    (3)
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