JP2004288575A - 携帯機器用燃料電池電源システムとその駆動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期的安定性に優れた携帯機器用燃料電池電源システムを得る。
【解決手段】携帯機器用燃料電池電源システムを、燃料貯蔵容器4と燃料電池セル2とを結合する燃料供給配管5に設けられ空間内の燃料ガス圧力を機械的動作量に変換する圧力感知手段10と、圧力感知手段10の機械的動作を伝達する機械的伝達手段30と、燃料電池セル2と携帯機器本体部1間を接続する電気配線6の一部に設けられ伝達された機械的動作によって電気配線6の接続をオン・オフさせる機械的接続遮断手段20a,bで構成し、燃料ガス圧力が所定の下限圧力Plow以下の場合に、機械的接続遮断手段20により電気配線6の接続をオフすることとした。
【選択図】 図1
【解決手段】携帯機器用燃料電池電源システムを、燃料貯蔵容器4と燃料電池セル2とを結合する燃料供給配管5に設けられ空間内の燃料ガス圧力を機械的動作量に変換する圧力感知手段10と、圧力感知手段10の機械的動作を伝達する機械的伝達手段30と、燃料電池セル2と携帯機器本体部1間を接続する電気配線6の一部に設けられ伝達された機械的動作によって電気配線6の接続をオン・オフさせる機械的接続遮断手段20a,bで構成し、燃料ガス圧力が所定の下限圧力Plow以下の場合に、機械的接続遮断手段20により電気配線6の接続をオフすることとした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、携帯電話やノート型パーソナル・コンピュータ等の携帯機器に用いられる携帯機器用燃料電池電源システムとその駆動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やノート型パーソナル・コンピュータ(PC)等の携帯機器の内部電源として、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の二次電池と充電アダプターで構成される電源システムが広く用いられている。近年、携帯機器の高機能化に伴う消費電力の増大や携帯電話のインターネット接続、無線LANや地上波ディジタルテレビ放送等の普及により携帯機器の常時使用、駆動時間の長時間化から従来の二次電池では容量が不足し携帯機器の機能を充分に発揮できない恐れが出てきている。このような状況に鑑み、水素と空気を用いて発電する超小型の携帯機器用燃料電池電源システムが提案されている。
【0003】
燃料電池は、電解質を介して一対の電極を接触させ、一方の電極に燃料を、他方の電極に酸化剤を供給して、燃料の酸化を電池内で電気化学的に反応させることにより化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。燃料電池には用いる電解質によりいくつかの型があるが、近年、高出力が得られる燃料電池として、電解質に固体高分子電解質膜を用いた固体高分子形燃料電池が注目されている。固体高分子形燃料電池の駆動原理は、酸化されて水素イオンを生成する燃料を燃料極(アノード)に、水素イオンにより還元される酸化剤を空気極(カソード)に供給して化学反応により電気を発生させて、外部回路より電流を取り出す、というものである。
【0004】
従来の燃料電池電源システムは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1中の図1に示されるように、携帯機器内に電池装置収納部が内蔵され、電池装置収納部に着脱自在に燃料電池ユニットが収納され、携帯機器の内部機器と燃料電池ユニットとは機械的かつ電気的に接続されている。特許文献1中の図2は燃料電池ユニットの斜視図であり、燃料電池ケース内部に燃料電池本体と燃料電池本体で使用する水素を貯蔵する水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵容器、水素貯蔵容器から燃料電池本体に水素を導入する燃料供給配管、この燃料供給配管と水素貯蔵容器を水素の漏洩なく着脱自在に接続する接続部、燃料電池本体に発電のための空気を供給する空気ブロア、がそれぞれ配置されている。
【0005】
燃料電池ケースには携帯機器に収納したときに携帯機器の内部機器に電力を送るために電気的に接続される出力端子が設けられ、また、吸排気口および燃料電池ケースから水素貯蔵容器を出し入れするための水素貯蔵容器着脱蓋が設けられている。さらに、燃料電池起動時に空気ブロアの始動を補助し起動直後の発電特性を改善したり、発電停止期間における水素漏れ等の緊急時の対応用に補助電池を燃料電池ケースに内蔵する例も示されている。
【0006】
従来の携帯機器は、電池装置収納部に収納した燃料電池ユニットによって水素貯蔵容器の水素と空気中の酸素をそれぞれ燃料および酸化剤として発電した電力を燃料電池ケースに設けられた出力端子から出力することにより、電気的に駆動される。燃料電池による発電容量は二次電池の数倍から数十倍と言われており、携帯機器の高機能化、長時間駆動が可能となる。
【0007】
水素貯蔵容器の水素が無くなれば、燃料電池ケースから水素貯蔵容器を取り外して新たに水素が充填された水素貯蔵容器に取り替えるか、あるいは取り出した水素貯蔵容器に水素を充填し燃料電池ケースに装着すれば瞬時に発電が再開される。このように水素燃料を用いることにより二次電池に比べ大容量で、かつ繰返し使用可能な燃料電池電源システムが可能となった。
【0008】
【特許文献1】
特開平09−213359号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
燃料電池に供する燃料としては、水素やメタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類、酸化剤として空気が一般的に使用される。燃料として水素、酸化剤として空気(酸素)を使用した場合、燃料電池では以下の電池反応により発電が生じる。
アノード反応:H2→2H++2e− (1)
カソード反応:2H++2e−+1/2O2→H2O (2)
燃料電池に燃料と空気を送り続ける限り正常に発電し続けるが、燃料や酸化剤の供給が停止した場合には、もはや発電を継続できない。発電時に酸化剤が停止した場合は、水素イオンにより還元される物質、つまりこの場合は酸素が枯渇するため、水素イオン自らが還元されて水素ガスを発生する。
【0010】
一方、発電時に燃料の供給が停止した場合は、水素イオンを生成するための物質、つまりこの場合は水素が欠乏するため、燃料電池の電極触媒である貴金属を担持したカーボンが以下の反応式に示すように、水分子中の酸素で酸化されて水素イオンを発生しようとする。
C+H2O→CO+2H++2e− (3)
この反応により燃料電池の電極触媒は腐食され、電池性能が低下する不具合が生じる。
【0011】
上述の従来の携帯機器用燃料電池電源システムでは燃料として水素を使用しているが、水素貯蔵容器内の水素の貯蔵量の低下を感知する手段が無かった。したがって、携帯機器の使用中に水素が無くなっていることに気付かない場合もあり、このような水素が完全に欠乏した状態で発電を継続すると、燃料電池内の電極触媒が腐食して燃料電池が不可逆的な損傷を受け、携帯機器用電源としての長期的な安定性が低下する問題があった。また、水素が無くなった場合には外部から水素を補給する必要があるが、携帯機器使用者に水素補給時期を迅速に知らせる手段が無い問題もあった。
【0012】
本発明は上記諸問題を解決するためになされたものであり、燃料欠乏による燃料電池の不可逆的な損傷を未然に防止することにより長期的な安定性に優れた携帯機器用燃料電池電源システムとその駆動方法を提供することを目的とする。さらに、燃料が無くなりつつあることを携帯機器使用者に警告表示できる携帯機器用燃料電池電源システムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る携帯機器用燃料電池電源システムは、燃料極を具備する燃料電池セルと燃料供給配管を介して上記燃料電池セルに供給する燃料を貯蔵する燃料貯蔵容器とを有する携帯機器用燃料電池電源システムであって、上記燃料極内、上記燃料貯蔵容器内または上記燃料供給配管のいずれかの箇所に設けられ空間内の燃料ガス圧力を機械的動作量に変換する圧力感知手段と、上記圧力感知手段の機械的動作を伝達する機械的伝達手段と、上記燃料電池セルと携帯機器本体部間を接続する電気配線の一部に設けられ上記伝達された機械的動作によって上記電気配線の接続をオン・オフさせる機械的接続遮断手段と、を備え、上記空間内の燃料ガス圧力が所定の下限圧力Plow以下の場合に、上記機械的接続遮断手段により上記電気配線の接続をオフすることとした。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による携帯機器用燃料電池電源システムの構成を示した概観図である。図1において、1は携帯機器本体部、2は燃料電池セルで、2aの燃料極(アノード)、2bの固体高分子電解質膜および2cの酸化剤極(カソード)とで構成されている。固体高分子電解質膜2bとしては、デュポン社のナフィオン膜に代表されるパーフルオロスルホン酸膜が好適であるが、その他の水素イオン伝導性材料も利用可能である。3は直流蓄電装置、4は燃料貯蔵容器、5は上記燃料貯蔵容器4と燃料電池セル2を結合する燃料供給配管、6は電気配線、をそれぞれ示す。直流蓄電装置3は電気配線6により携帯機器本体部1に燃料電池セル2と電気的に並列に接続されている。ここで、携帯機器本体部1とは、携帯機器内で燃料電池セル2あるいは直流蓄電装置3から供給される電気によって駆動される部分を指す。
【0015】
燃料貯蔵容器4は燃料供給配管5によって燃料電池セル2の燃料極(アノード)2aに結合されている。燃料電池セル2による発電に供する燃料として酸化反応により水素イオンを発生する物質が利用可能であり、本実施の形態では燃料として水素を使用している。また、燃料貯蔵容器4としては、水素吸蔵合金(図示せず)を充填した金属タンクを適用した例を示している。
【0016】
10は燃料ガス圧力、つまり、本実施の形態では水素ガス圧力を感知する圧力センサー(圧力感知手段)を示し、図1に示した携帯機器用燃料電池電源システムの概観図では燃料電池セル2と燃料貯蔵容器4間の燃料供給配管5に配置されている。しかしながら、燃料ガス圧力の圧力センサー10の設置位置自体は燃料ガス圧力を直接感知できる部位であれば上述の部位に特に限定されるものではなく、例えば、燃料貯蔵容器4内や燃料電池セル2の燃料極2aに配置可能である。
【0017】
燃料として水素の他にメタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のケトン類の他、水素を含む炭化水素系燃料が利用可能であるが、本実施の形態のような圧力センサー10で燃料貯蔵容器4内の燃料ガス圧力に基づき燃料貯蔵量を感知するシステムでは、燃料は圧縮性の流体が望ましい。かかる理由は、以下の通りである。燃料貯蔵量を圧力センサー10で感知するには、燃料貯蔵量と燃料ガス圧力が相関している必要がある。つまり、燃料ガス圧力と燃料貯蔵量との間に相関があると燃料貯蔵容器4に燃料を充填するに従い、燃料貯蔵量に応じて燃料貯蔵容器4内の燃料ガス圧力が上昇するため、圧力センサー10で燃料ガス圧力を測定し、その圧力測定値から燃料貯蔵量を間接的に知ることができるからである。また、燃料が圧縮性流体の場合、燃料を高圧で燃料貯蔵容器に充填する程、多くの燃料が充填可能となる。一方、燃料が非圧縮性の流体の場合は圧力を高めても燃料の体積は変化せず、燃料貯蔵容器4の容積以上に燃料を充填できない。さらに、燃料ガス圧力と燃料貯蔵量の間には相関が無く、圧力センサー10で間接的に燃料貯蔵量を知ることはできなからである。
【0018】
20a、20bは開閉スイッチ(機械的接続遮断手段)で、燃料電池セル2と携帯機器本体部1の間の電気配線6中に設置される。開閉スイッチ20a、20bは燃料ガスの圧力センサー10と連結部(機械的伝達手段)30を介して機械的に接続されているため、圧力センサー10の機械的動作量に連動して開閉し、燃料電池セル2と携帯機器本体部1の電気的な接続を遮断できる。40は携帯機器使用者に燃料残量低下の警告表示を発生させるための外部信号発生器で、圧力センサー10と連動して作動する。
【0019】
次に、本実施の形態における携帯機器用燃料電池電源システムの動作について説明する。燃料貯蔵容器4に貯蔵された燃料用の水素は、燃料供給配管5を経て燃料電池セル2の燃料極2aに供給される。燃料電池セル2の燃料極2aでは供給された水素が水素イオンに変化すると同時に電子を発生させる。発生した電子は電気配線6を流れ、携帯機器本体部1に設けられたマイナス側の端子に供給される。電子は携帯機器本体部1を駆動し、プラス側端子から電気配線6を流れて燃料電池セル2の酸化剤極2cに戻り、固体高分子電解質膜2bを通過した水素イオンと空気等の酸化剤とが反応して水を生成する。携帯機器本体部1の負荷が小さい場合、あるいは全く電力を消費していない場合には、燃料電池セル2で発生した電気は並列に接続された直流蓄電装置3に充電される。
【0020】
水素貯蔵容器4の水素貯蔵量は、圧力センサー10によって水素貯蔵容器4内の内圧、つまり水素ガス圧力を測定することによって常時感知されている。水素貯蔵容器4内の内圧が十分高い場合は水素の貯蔵量が十分で、燃料電池セル2の燃料極2aで水素が欠乏することはないので、開閉スイッチ20はオンの状態で燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気的な接続を保持し続ける。燃料電池セル2の発電の進行に伴い水素は徐々に消費され水素貯蔵容器4内の内圧が所定値以下に低下する。水素ガス圧力を感知する圧力センサー10では、水素ガス圧力の変化が機械的動作量に変換される。かかる機械的動作が連結部30を介して伝達され、開閉スイッチ20a、20bを機械的に動作させて燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気配線6の接続を遮断する。遮断により電気配線6内の電子の流れが絶たれると燃料電池セル2内の反応も停止するが、燃料電池セル2への水素供給は直ちに停止する訳ではないので、発電停止後も水素ガスは燃料セル2内にある程度残存する。よって、本実施の形態の携帯機器用燃料電池電源システムでは従来システムで問題となった燃料電池セル2において燃料が完全に欠乏して燃料電池セル2が不可逆的な損傷を受ける事態を未然に防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性が向上する。
【0021】
圧力センサー(圧力感知手段)10としては、機械式の圧力センサーや電気式の圧力センサーが利用可能であるが、前者が好適である。圧力センサー10の機械的動作を直接開閉スイッチ20に伝達して機械的に電気配線6を開閉すれば、開閉スイッチ20の動作に要する電力消費は全く発生しないので、携帯機器に厳しく要求される低消費電力化に極めて有効だからである。機械式の圧力センサーとしてはダイアフラムやブルドン管等の材料の弾性を利用したものが良い。
【0022】
一方、電気式の圧力センサー10としては、圧電素子を利用した圧力センサーが利用可能で、圧力変化に伴う圧電素子の例えば電圧のような電気信号の変化を感知して圧電素子と開閉スイッチ20間の電気配線(電気的伝達手段)を通して、開閉スイッチ(電気的接続遮断手段)20aのオン・オフを行うことができる。但し、一定の消費電力が要求される。
【0023】
なお、上述の携帯機器用燃料電池電源システムでは、直流蓄電装置3としてリチウムイオン二次電池を適用したが、例えばニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の他の二次電池や、電気二重層コンデンサ、キャパシタ等、直流を蓄電できる手段も同様に利用可能である。また、直流蓄電装置3を燃料電池セル2と携帯機器本体部1に並列に接続したが、直流蓄電装置3を含まない燃料電池セル2と携帯機器本体部1のみを組合せた携帯機器用燃料電池電源システムも可能である。なお、直流蓄電装置3を組合せた場合は、燃料電池セル2の燃料が枯渇して発電不可能な場合のバックアップや、燃料電池だけでは対応ができない瞬間的な負荷変動に追従するために有効である。
【0024】
以上、本実施の形態の携帯機器用燃料電池電源システムでは、燃料貯蔵容器の燃料ガス圧力を圧力感知手段によって感知し、かかる圧力感知手段からの出力を伝達して燃料電池セルと携帯機器本体部間の電気配線に設けられた開閉スイッチをオフさせるので、燃料欠乏による燃料電池の不可逆的な損傷を容易に防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性が向上する。
【0025】
実施の形態2.
図2および図3に実施の形態2における携帯機器用燃料電池電源システムの一部で使用される機械的に圧力を感知する圧力センサーおよび開閉スイッチの模式図を示す。図中、12はバネ(圧力感知手段の一部)、13および16は燃料供給配管5の一部に設けられた屈曲部、14はピストンヘッド(圧力感知手段の一部)、15はシリンダ(圧力感知手段の一部)、22は開閉スイッチ20(機械的接続遮断手段)の接点、21は開閉スイッチ20の接触子、30は圧力センサー10のピストンヘッド14と開閉スイッチ20の接触子を結合して両者を機械的に連動させるクランク(機械的伝達手段)である。
【0026】
次に、実施の形態2における携帯機器用燃料電池電源システムの動作について説明する。燃料貯蔵容器4内に十分な燃料が貯蔵されて燃料ガス圧力が所定値より高い場合は、図2(a)のように、燃料供給配管5内の燃料ガス圧力によりピストンヘッド14が押圧されてバネ12が収縮する。バネ12に連動したクランク30の機械的動作により開閉スイッチ20の接触子21が接点22に押さえつけられる結果、電気配線6は接続状態となるので、燃料電池セル2と携帯機器本体部1間は導通する。ピストンヘッド14とシリンダ15あるいはクランク30がシリンダ15を貫通する部位は、燃料供給配管5から外部に燃料ガスが漏洩しないようシールが施されている。
【0027】
一方、図2(b)のように、燃料貯蔵容器4内の燃料貯蔵量が減少して燃料ガス圧力が低下すると、圧力感知手段の一部であるバネ12の復元力によりピストンヘッド14が押し戻される。つまり圧力感知手段において、ピストンヘッド14の位置が変化するという機械的動作量が発生する。バネ12に連動したクランク30の機械的動作により開閉スイッチ20の接触子21が接点22から離れる結果、電気配線6は遮断されて燃料電池セル2と携帯機器本体部1間が非導通となる。なお、燃料電池セル2と携帯機器本体部1間が非導通の間は直流蓄電装置30から携帯機器本体部1に電気が供給されるので、上述の電気配線6の遮断と同時に携帯機器の動作が停止する訳ではない。
【0028】
本実施の形態では圧力感知手段の一部としてピストンヘッド14を用いたが、ダイアフラムやブルドン管等、弾性を有する構造体を使用しても同様の機能を発揮する。さらに、ダイアフラムやブルドン管はピストンヘッド14のようにスライドする部分がないため、ガスシールしやすいという点で一層好適である。また、バネ12の種類として、金属バネ、セラミックスバネ、ガスバネ等の弾性体を用いても良い。バネ12の弾性率は、燃料ガス圧力が所定の圧力値になった場合に開閉スイッチ20のオン・オフ動作が行われるように設定する。一方、接触子21には曲げ弾性のある金属板が好適である。曲げ弾性によりクランク30が多少移動しても接触子21と接点22が離れることはないが、クランク30が所定の機械的動作量以上移動してはじめて接触子21と接点22が離れる。これにより、所定の燃料ガス圧力値以下で開閉スイッチ20をオフするような制御が可能となる。
【0029】
図2に示した圧力センサー10は圧力を感知する機能のみを有するが、圧力センサー10に燃料ガスを遮断するバルブとしての機能を併有させるのも有効である。図3は、圧力センサー10にバルブ機能を併有させた例である。燃料供給配管5の一部に屈曲部13および16を設け、外側屈曲部13の内壁に橋渡しするように弾力性のあるダイアフラム11を設ける。ダイアフラム11には金属、ゴム等、弾性のある材料が使用可能である。ダイアフラム以外に上述のピストン構造等も採用できる。
【0030】
燃料ガス圧力が低下した場合には、ダイアフラム11の撓みが無くなって平面形状を呈するので、ダイアフラム11主面と外側屈曲部16が接触してバルブの機能を果たすため、燃料の流路が遮断される。同時にダイアフラム11とクランク30により結合された開閉スイッチ20の接触子21と接点22が離れて電気配線6は遮断される(図3(a))。
【0031】
一方、燃料ガス圧力が高い場合にはダイアフラム11が撓んで湾曲形状を呈するので、燃料ガスの流路が確保される。この際、ダイアフラム11にクランク30を介して接続された開閉スイッチ20では、接触子21と接点22が接触して電気配線6が導通状態、つまりオンとなる(図3(b))。
【0032】
本実施の形態で例示した圧力センサー10は機械加工により作製したり、MEMS(Micro−Electromechanical System)技術を用いてシリコンウエハにエッチングする等の微細加工により作製可能なため、サイズの大きなものから小さなものまで幅広く適用可能である。
【0033】
また、本実施の形態で例示した他に、圧電素子を使用した電気式の圧力センサーや機械式のセンサーと電気式のセンサーを組合せたセンサー等いずれについても適用可能である。電気式の圧力センサーを使用した場合、燃料ガス圧力を信号線でCPU(図示せす)に送信し、さらに、CPUから開閉スイッチ20に開閉信号を送信する形態も有効である。開閉スイッチ20についても機械式の開閉スイッチ(機械的接続遮断手段)、電磁開閉スイッチ(電気的接続遮断手段)、半導体スイッチ等、電流を遮断する機能を有するなら、いずれも適用可能である。また、図1中で開閉スイッチ20はプラス側20bおよびマイナス側20aのいずれの側にも設置したが、一方のみでも機械的あるいは電気的接続遮断手段として機能することができる。
【0034】
以上、本実施の形態によると、燃料貯蔵容器の燃料ガス圧力を圧力センサーによって感知し、圧力センサーに基づく機械的あるいは電気的動作によって電機配線中に設けられた開閉スイッチをオン・オフするので、燃料欠乏が防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性が向上する。特に、機械的動作の場合は付加的な消費消費電力を要しないため、携帯機器には好適である。
【0035】
実施の形態3.
本実施の形態の携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法を図4に基づき説明する。ここで、図4は典型的な水素吸蔵合金容器の水素吸蔵量と圧力の関係を示したグラフである。
【0036】
先ず、携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法において、燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気配線6を遮断する時点について説明する。燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気配線6は燃料電池セル2の燃料極2aから燃料が完全に枯渇する前に遮断されなければならないが、燃料貯蔵容器4に燃料が大量に残存している状態で電気配線6を遮断した場合、燃料電池セル2の燃料極2aの腐食は防止できるものの、燃料の補充を頻繁に行わなければならないという携帯機器の利便性に関わる大きな問題が生じる。したがって、燃料電池セル2が損傷を受けず、かつ燃料貯蔵容器4に蓄えられている燃料を可能な限り消費し得る時点で燃料電池セル2と携帯機器1間の電気配線6を遮断する必要がある。
【0037】
図4に典型的な水素吸蔵合金容器の水素吸蔵量と水素圧力の関係を示す。図中、横軸が水素の吸蔵量、縦軸が水素圧力(燃料ガス圧力)を表す。水素吸蔵合金は一般的に許容水素貯蔵量の上限まで水素を吸蔵した状態から順次水素を放出する場合、初期的に水素ガス圧力は低下するものの、その後ほぼ一定圧力で水素を放出し続ける。以下、かかる一定圧力を平衡圧力Peqと呼ぶ。平衡圧力Peqの下で燃料貯蔵容器4から大半の水素を放出し、残存水素量がある一定値より減少すると急激に水素ガス圧力が低下して、最終的に水素残量がゼロとなる。
【0038】
燃料電池セル2と携帯機器本体部1とを電気的に接続する電気配線6を遮断する時点、すなわち燃料貯蔵量の下限値に対応した下限圧力Plowとして平衡圧力Peqを設定した場合、圧力センサー10の感度によっては、まだ水素が十分放出されていない状態で圧力センサー10が作動し、電気配線6を遮断する不具合が起こる可能性がある。一方、下限圧力Plowを大気圧Pa以下とした場合には、燃料電池セル2の燃料極2aが大気圧Paに対して負圧にならないと電気配線6が遮断されないため、携帯機器用燃料電池電源システム外部からの空気の混入等により水素が直接化学的に酸化されて欠乏する危険性が高い。以上の理由から燃料の下限圧力Plowを大気圧Pa以上でかつ水素吸蔵合金の平衡圧力Peq以下の範囲内に設定すると効率良く携帯機器用燃料電池電源システムを駆動できる。すなわち、
Pa≦Plow≦Peq (4)
を満たす範囲であれば良い。
【0039】
より効率良く携帯機器用燃料電池電源システムを稼動させるには、下限圧力Plowと大気圧Paの差Plow‐Paが、平衡圧力Peqと大気圧Paの差Peq‐Paに対して30〜90%の範囲内、つまり、
0.3(Peq‐Pa)≦Plow‐Pa≦0.9(Peq‐Pa) (5)
に設定するのが良く、さらに、平衡圧力Peqと大気圧Paの差Peq‐Paに対して50〜80%の範囲内が一層好適である。
【0040】
水素吸蔵合金の平衡圧力―吸蔵量の曲線は、使用温度の低下に伴い同一水素吸蔵量でも低圧力側にシフトする。したがって、燃料貯蔵量の下限圧力Plowを携帯機器を使用する温度域で最も低い温度域の平衡圧力Peqに設定するのが好適である。さらに、水素吸蔵合金の温度を温度センサー等によって常時測定して、かかる測定温度に対応した平衡圧力Peqに基づき燃料貯蔵量の下限圧力Plowを設定するとより効率良く携帯機器用燃料電池電源システムを稼動できる。なお、水素吸蔵合金の温度毎の平衡圧力Peqは、携帯機器内の記憶メモリ等に参照テーブルとして予め記憶させておき、適宜記憶メモリにアクセスして該当値を取り出せば良い。また、物質によっては圧力―吸蔵量曲線の平衡領域(直線領域)が水平ではなく一定の傾斜を持っている場合もある。そのような場合は直線域を吸蔵量ゼロまで外挿した圧力を平衡圧力Peqとみなすと、取り扱いが一層便利となる。
【0041】
また、圧力センサー10により開閉する開閉スイッチ20と連動して外部信号発生器40を作動させることにより、携帯機器使用者に対して燃料の補充を知らせるサイン、つまり警告表示すると、適切な時期に水素充填を行えるので、携帯機器用電源としての長期的安定性が一層向上する。外部信号発生器40としては、携帯機器のディスプレイ上に燃料の補充が必要等の警告内容を表示する、燃料補充ランプを点灯あるいは点滅させる、ブザー、サイレン、音声、メロディー等、音を鳴らして知らせる、振動して知らせる等、人間の五感に訴える手段を使用できる。またこれらの手段を複合的に組み合わせて使用するのも有効である。
【0042】
以上、本実施の形態の携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法では、燃料電池セルと携帯機器本体部とを電気的に接続する電気配線を遮断する時点、すなわち燃料貯蔵量の下限量に対応した下限圧力Plowを例えば大気圧Pa以上平衡圧力Peq以下の範囲に設定したので、燃料欠乏による燃料電池の不可逆的な損傷を容易に防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性の向上が図れるとともに効率良く駆動できる。
【0043】
実施例1.
図5は、本発明の携帯機器用燃料電池電源システムおよびその駆動方法の有効性を確認するために実施の形態1に基づき作製した携帯機器用燃料電池電源システム(図5中の実施例)と本システムから圧力センサー10と開閉スイッチ20を除いた携帯機器用燃料電池電源システム(図5中の比較例)について、運転試験を実施した結果である。図5中、横軸は携帯機器動作時間、縦軸は携帯機器の電池電圧を示す。
【0044】
実施例の携帯機器用燃料電池電源システムは圧力センサー10と開閉スイッチ20を装備している。したがって、燃料である水素が欠乏する前に燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気配線6が遮断され、さらに、ブザー等の外部信号発生器40により使用者に水素の補充の必要性を警告できるので、携帯機器に対して適切な時期に水素が供給された。本発明に係る携帯機器用燃料電池電源システムでは水素が欠乏する前に外部から水素を補充できるため、再び運転しても燃料電池は安定した電圧で駆動した。一方、比較例においては、燃料の欠乏が頻発し、かつ欠乏毎に燃料電池が損傷を受けるので、再度水素を補充しても、もはや燃料電池の電圧は完全には回復せず徐々に低下する傾向、つまり、携帯機器用電源としての長期安定性が損なわれていく傾向が確認された。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係る携帯機器用燃料電池電源システムでは、燃料極を具備する燃料電池セルと燃料供給配管を介して上記燃料電池セルに供給する燃料を貯蔵する燃料貯蔵容器とを有する携帯機器用燃料電池電源システムであって、上記燃料極内、上記燃料貯蔵容器内または上記燃料供給配管のいずれかの箇所に設けられ空間内の燃料ガス圧力を機械的動作量に変換する圧力感知手段と、上記圧力感知手段の機械的動作を伝達する機械的伝達手段と、上記燃料電池セルと携帯機器本体部間を接続する電気配線の一部に設けられ上記伝達された機械的動作によって上記電気配線の接続をオン・オフさせる機械的接続遮断手段と、を備え、上記空間内の燃料ガス圧力が所定の下限圧力Plow以下の場合に、上記機械的接続遮断手段により上記電気配線の接続をオフすることとしたので、燃料欠乏による燃料電池の不可逆的な損傷を容易に防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1による携帯機器用燃料電池電源システムの構成を示した概観図である。
【図2】実施の形態2における携帯機器用燃料電池電源システムの一部で使用される機械的に圧力を感知する圧力センサーおよび開閉スイッチの模式図である。
【図3】実施の形態2における携帯機器用燃料電池電源システムの一部で使用される機械的に圧力を感知する圧力センサーおよび開閉スイッチの模式図である。
【図4】典型的な水素吸蔵合金容器の水素吸蔵量と圧力の関係を示したグラフである。
【図5】実施の形態1に基づき作製した携帯機器用燃料電池電源システムと本システムから燃料の貯蔵量を感知する圧力センサーと開閉スイッチを除いた携帯機器用燃料電池電源システムについて、運転試験を実施した結果である。
【符号の説明】
1 携帯機器本体部、 2 燃料電池セル、 3 直流蓄電装置、 4 燃料貯蔵容器、 5 燃料供給配管、 6 電気配線、 10 圧力センサー、 11 ダイアフラム、 12 バネ、 13 屈曲部、 14 ピストンヘッド、15 シリンダ、 16 屈曲部、 20、20a、20b 開閉スイッチ、21 接触子、 22 接点、 30 クランクまたは信号線、 40 外部信号発生器。
【発明の属する技術分野】
この発明は、携帯電話やノート型パーソナル・コンピュータ等の携帯機器に用いられる携帯機器用燃料電池電源システムとその駆動方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話やノート型パーソナル・コンピュータ(PC)等の携帯機器の内部電源として、ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の二次電池と充電アダプターで構成される電源システムが広く用いられている。近年、携帯機器の高機能化に伴う消費電力の増大や携帯電話のインターネット接続、無線LANや地上波ディジタルテレビ放送等の普及により携帯機器の常時使用、駆動時間の長時間化から従来の二次電池では容量が不足し携帯機器の機能を充分に発揮できない恐れが出てきている。このような状況に鑑み、水素と空気を用いて発電する超小型の携帯機器用燃料電池電源システムが提案されている。
【0003】
燃料電池は、電解質を介して一対の電極を接触させ、一方の電極に燃料を、他方の電極に酸化剤を供給して、燃料の酸化を電池内で電気化学的に反応させることにより化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する装置である。燃料電池には用いる電解質によりいくつかの型があるが、近年、高出力が得られる燃料電池として、電解質に固体高分子電解質膜を用いた固体高分子形燃料電池が注目されている。固体高分子形燃料電池の駆動原理は、酸化されて水素イオンを生成する燃料を燃料極(アノード)に、水素イオンにより還元される酸化剤を空気極(カソード)に供給して化学反応により電気を発生させて、外部回路より電流を取り出す、というものである。
【0004】
従来の燃料電池電源システムは、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1中の図1に示されるように、携帯機器内に電池装置収納部が内蔵され、電池装置収納部に着脱自在に燃料電池ユニットが収納され、携帯機器の内部機器と燃料電池ユニットとは機械的かつ電気的に接続されている。特許文献1中の図2は燃料電池ユニットの斜視図であり、燃料電池ケース内部に燃料電池本体と燃料電池本体で使用する水素を貯蔵する水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵容器、水素貯蔵容器から燃料電池本体に水素を導入する燃料供給配管、この燃料供給配管と水素貯蔵容器を水素の漏洩なく着脱自在に接続する接続部、燃料電池本体に発電のための空気を供給する空気ブロア、がそれぞれ配置されている。
【0005】
燃料電池ケースには携帯機器に収納したときに携帯機器の内部機器に電力を送るために電気的に接続される出力端子が設けられ、また、吸排気口および燃料電池ケースから水素貯蔵容器を出し入れするための水素貯蔵容器着脱蓋が設けられている。さらに、燃料電池起動時に空気ブロアの始動を補助し起動直後の発電特性を改善したり、発電停止期間における水素漏れ等の緊急時の対応用に補助電池を燃料電池ケースに内蔵する例も示されている。
【0006】
従来の携帯機器は、電池装置収納部に収納した燃料電池ユニットによって水素貯蔵容器の水素と空気中の酸素をそれぞれ燃料および酸化剤として発電した電力を燃料電池ケースに設けられた出力端子から出力することにより、電気的に駆動される。燃料電池による発電容量は二次電池の数倍から数十倍と言われており、携帯機器の高機能化、長時間駆動が可能となる。
【0007】
水素貯蔵容器の水素が無くなれば、燃料電池ケースから水素貯蔵容器を取り外して新たに水素が充填された水素貯蔵容器に取り替えるか、あるいは取り出した水素貯蔵容器に水素を充填し燃料電池ケースに装着すれば瞬時に発電が再開される。このように水素燃料を用いることにより二次電池に比べ大容量で、かつ繰返し使用可能な燃料電池電源システムが可能となった。
【0008】
【特許文献1】
特開平09−213359号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
燃料電池に供する燃料としては、水素やメタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類、酸化剤として空気が一般的に使用される。燃料として水素、酸化剤として空気(酸素)を使用した場合、燃料電池では以下の電池反応により発電が生じる。
アノード反応:H2→2H++2e− (1)
カソード反応:2H++2e−+1/2O2→H2O (2)
燃料電池に燃料と空気を送り続ける限り正常に発電し続けるが、燃料や酸化剤の供給が停止した場合には、もはや発電を継続できない。発電時に酸化剤が停止した場合は、水素イオンにより還元される物質、つまりこの場合は酸素が枯渇するため、水素イオン自らが還元されて水素ガスを発生する。
【0010】
一方、発電時に燃料の供給が停止した場合は、水素イオンを生成するための物質、つまりこの場合は水素が欠乏するため、燃料電池の電極触媒である貴金属を担持したカーボンが以下の反応式に示すように、水分子中の酸素で酸化されて水素イオンを発生しようとする。
C+H2O→CO+2H++2e− (3)
この反応により燃料電池の電極触媒は腐食され、電池性能が低下する不具合が生じる。
【0011】
上述の従来の携帯機器用燃料電池電源システムでは燃料として水素を使用しているが、水素貯蔵容器内の水素の貯蔵量の低下を感知する手段が無かった。したがって、携帯機器の使用中に水素が無くなっていることに気付かない場合もあり、このような水素が完全に欠乏した状態で発電を継続すると、燃料電池内の電極触媒が腐食して燃料電池が不可逆的な損傷を受け、携帯機器用電源としての長期的な安定性が低下する問題があった。また、水素が無くなった場合には外部から水素を補給する必要があるが、携帯機器使用者に水素補給時期を迅速に知らせる手段が無い問題もあった。
【0012】
本発明は上記諸問題を解決するためになされたものであり、燃料欠乏による燃料電池の不可逆的な損傷を未然に防止することにより長期的な安定性に優れた携帯機器用燃料電池電源システムとその駆動方法を提供することを目的とする。さらに、燃料が無くなりつつあることを携帯機器使用者に警告表示できる携帯機器用燃料電池電源システムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る携帯機器用燃料電池電源システムは、燃料極を具備する燃料電池セルと燃料供給配管を介して上記燃料電池セルに供給する燃料を貯蔵する燃料貯蔵容器とを有する携帯機器用燃料電池電源システムであって、上記燃料極内、上記燃料貯蔵容器内または上記燃料供給配管のいずれかの箇所に設けられ空間内の燃料ガス圧力を機械的動作量に変換する圧力感知手段と、上記圧力感知手段の機械的動作を伝達する機械的伝達手段と、上記燃料電池セルと携帯機器本体部間を接続する電気配線の一部に設けられ上記伝達された機械的動作によって上記電気配線の接続をオン・オフさせる機械的接続遮断手段と、を備え、上記空間内の燃料ガス圧力が所定の下限圧力Plow以下の場合に、上記機械的接続遮断手段により上記電気配線の接続をオフすることとした。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による携帯機器用燃料電池電源システムの構成を示した概観図である。図1において、1は携帯機器本体部、2は燃料電池セルで、2aの燃料極(アノード)、2bの固体高分子電解質膜および2cの酸化剤極(カソード)とで構成されている。固体高分子電解質膜2bとしては、デュポン社のナフィオン膜に代表されるパーフルオロスルホン酸膜が好適であるが、その他の水素イオン伝導性材料も利用可能である。3は直流蓄電装置、4は燃料貯蔵容器、5は上記燃料貯蔵容器4と燃料電池セル2を結合する燃料供給配管、6は電気配線、をそれぞれ示す。直流蓄電装置3は電気配線6により携帯機器本体部1に燃料電池セル2と電気的に並列に接続されている。ここで、携帯機器本体部1とは、携帯機器内で燃料電池セル2あるいは直流蓄電装置3から供給される電気によって駆動される部分を指す。
【0015】
燃料貯蔵容器4は燃料供給配管5によって燃料電池セル2の燃料極(アノード)2aに結合されている。燃料電池セル2による発電に供する燃料として酸化反応により水素イオンを発生する物質が利用可能であり、本実施の形態では燃料として水素を使用している。また、燃料貯蔵容器4としては、水素吸蔵合金(図示せず)を充填した金属タンクを適用した例を示している。
【0016】
10は燃料ガス圧力、つまり、本実施の形態では水素ガス圧力を感知する圧力センサー(圧力感知手段)を示し、図1に示した携帯機器用燃料電池電源システムの概観図では燃料電池セル2と燃料貯蔵容器4間の燃料供給配管5に配置されている。しかしながら、燃料ガス圧力の圧力センサー10の設置位置自体は燃料ガス圧力を直接感知できる部位であれば上述の部位に特に限定されるものではなく、例えば、燃料貯蔵容器4内や燃料電池セル2の燃料極2aに配置可能である。
【0017】
燃料として水素の他にメタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のケトン類の他、水素を含む炭化水素系燃料が利用可能であるが、本実施の形態のような圧力センサー10で燃料貯蔵容器4内の燃料ガス圧力に基づき燃料貯蔵量を感知するシステムでは、燃料は圧縮性の流体が望ましい。かかる理由は、以下の通りである。燃料貯蔵量を圧力センサー10で感知するには、燃料貯蔵量と燃料ガス圧力が相関している必要がある。つまり、燃料ガス圧力と燃料貯蔵量との間に相関があると燃料貯蔵容器4に燃料を充填するに従い、燃料貯蔵量に応じて燃料貯蔵容器4内の燃料ガス圧力が上昇するため、圧力センサー10で燃料ガス圧力を測定し、その圧力測定値から燃料貯蔵量を間接的に知ることができるからである。また、燃料が圧縮性流体の場合、燃料を高圧で燃料貯蔵容器に充填する程、多くの燃料が充填可能となる。一方、燃料が非圧縮性の流体の場合は圧力を高めても燃料の体積は変化せず、燃料貯蔵容器4の容積以上に燃料を充填できない。さらに、燃料ガス圧力と燃料貯蔵量の間には相関が無く、圧力センサー10で間接的に燃料貯蔵量を知ることはできなからである。
【0018】
20a、20bは開閉スイッチ(機械的接続遮断手段)で、燃料電池セル2と携帯機器本体部1の間の電気配線6中に設置される。開閉スイッチ20a、20bは燃料ガスの圧力センサー10と連結部(機械的伝達手段)30を介して機械的に接続されているため、圧力センサー10の機械的動作量に連動して開閉し、燃料電池セル2と携帯機器本体部1の電気的な接続を遮断できる。40は携帯機器使用者に燃料残量低下の警告表示を発生させるための外部信号発生器で、圧力センサー10と連動して作動する。
【0019】
次に、本実施の形態における携帯機器用燃料電池電源システムの動作について説明する。燃料貯蔵容器4に貯蔵された燃料用の水素は、燃料供給配管5を経て燃料電池セル2の燃料極2aに供給される。燃料電池セル2の燃料極2aでは供給された水素が水素イオンに変化すると同時に電子を発生させる。発生した電子は電気配線6を流れ、携帯機器本体部1に設けられたマイナス側の端子に供給される。電子は携帯機器本体部1を駆動し、プラス側端子から電気配線6を流れて燃料電池セル2の酸化剤極2cに戻り、固体高分子電解質膜2bを通過した水素イオンと空気等の酸化剤とが反応して水を生成する。携帯機器本体部1の負荷が小さい場合、あるいは全く電力を消費していない場合には、燃料電池セル2で発生した電気は並列に接続された直流蓄電装置3に充電される。
【0020】
水素貯蔵容器4の水素貯蔵量は、圧力センサー10によって水素貯蔵容器4内の内圧、つまり水素ガス圧力を測定することによって常時感知されている。水素貯蔵容器4内の内圧が十分高い場合は水素の貯蔵量が十分で、燃料電池セル2の燃料極2aで水素が欠乏することはないので、開閉スイッチ20はオンの状態で燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気的な接続を保持し続ける。燃料電池セル2の発電の進行に伴い水素は徐々に消費され水素貯蔵容器4内の内圧が所定値以下に低下する。水素ガス圧力を感知する圧力センサー10では、水素ガス圧力の変化が機械的動作量に変換される。かかる機械的動作が連結部30を介して伝達され、開閉スイッチ20a、20bを機械的に動作させて燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気配線6の接続を遮断する。遮断により電気配線6内の電子の流れが絶たれると燃料電池セル2内の反応も停止するが、燃料電池セル2への水素供給は直ちに停止する訳ではないので、発電停止後も水素ガスは燃料セル2内にある程度残存する。よって、本実施の形態の携帯機器用燃料電池電源システムでは従来システムで問題となった燃料電池セル2において燃料が完全に欠乏して燃料電池セル2が不可逆的な損傷を受ける事態を未然に防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性が向上する。
【0021】
圧力センサー(圧力感知手段)10としては、機械式の圧力センサーや電気式の圧力センサーが利用可能であるが、前者が好適である。圧力センサー10の機械的動作を直接開閉スイッチ20に伝達して機械的に電気配線6を開閉すれば、開閉スイッチ20の動作に要する電力消費は全く発生しないので、携帯機器に厳しく要求される低消費電力化に極めて有効だからである。機械式の圧力センサーとしてはダイアフラムやブルドン管等の材料の弾性を利用したものが良い。
【0022】
一方、電気式の圧力センサー10としては、圧電素子を利用した圧力センサーが利用可能で、圧力変化に伴う圧電素子の例えば電圧のような電気信号の変化を感知して圧電素子と開閉スイッチ20間の電気配線(電気的伝達手段)を通して、開閉スイッチ(電気的接続遮断手段)20aのオン・オフを行うことができる。但し、一定の消費電力が要求される。
【0023】
なお、上述の携帯機器用燃料電池電源システムでは、直流蓄電装置3としてリチウムイオン二次電池を適用したが、例えばニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の他の二次電池や、電気二重層コンデンサ、キャパシタ等、直流を蓄電できる手段も同様に利用可能である。また、直流蓄電装置3を燃料電池セル2と携帯機器本体部1に並列に接続したが、直流蓄電装置3を含まない燃料電池セル2と携帯機器本体部1のみを組合せた携帯機器用燃料電池電源システムも可能である。なお、直流蓄電装置3を組合せた場合は、燃料電池セル2の燃料が枯渇して発電不可能な場合のバックアップや、燃料電池だけでは対応ができない瞬間的な負荷変動に追従するために有効である。
【0024】
以上、本実施の形態の携帯機器用燃料電池電源システムでは、燃料貯蔵容器の燃料ガス圧力を圧力感知手段によって感知し、かかる圧力感知手段からの出力を伝達して燃料電池セルと携帯機器本体部間の電気配線に設けられた開閉スイッチをオフさせるので、燃料欠乏による燃料電池の不可逆的な損傷を容易に防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性が向上する。
【0025】
実施の形態2.
図2および図3に実施の形態2における携帯機器用燃料電池電源システムの一部で使用される機械的に圧力を感知する圧力センサーおよび開閉スイッチの模式図を示す。図中、12はバネ(圧力感知手段の一部)、13および16は燃料供給配管5の一部に設けられた屈曲部、14はピストンヘッド(圧力感知手段の一部)、15はシリンダ(圧力感知手段の一部)、22は開閉スイッチ20(機械的接続遮断手段)の接点、21は開閉スイッチ20の接触子、30は圧力センサー10のピストンヘッド14と開閉スイッチ20の接触子を結合して両者を機械的に連動させるクランク(機械的伝達手段)である。
【0026】
次に、実施の形態2における携帯機器用燃料電池電源システムの動作について説明する。燃料貯蔵容器4内に十分な燃料が貯蔵されて燃料ガス圧力が所定値より高い場合は、図2(a)のように、燃料供給配管5内の燃料ガス圧力によりピストンヘッド14が押圧されてバネ12が収縮する。バネ12に連動したクランク30の機械的動作により開閉スイッチ20の接触子21が接点22に押さえつけられる結果、電気配線6は接続状態となるので、燃料電池セル2と携帯機器本体部1間は導通する。ピストンヘッド14とシリンダ15あるいはクランク30がシリンダ15を貫通する部位は、燃料供給配管5から外部に燃料ガスが漏洩しないようシールが施されている。
【0027】
一方、図2(b)のように、燃料貯蔵容器4内の燃料貯蔵量が減少して燃料ガス圧力が低下すると、圧力感知手段の一部であるバネ12の復元力によりピストンヘッド14が押し戻される。つまり圧力感知手段において、ピストンヘッド14の位置が変化するという機械的動作量が発生する。バネ12に連動したクランク30の機械的動作により開閉スイッチ20の接触子21が接点22から離れる結果、電気配線6は遮断されて燃料電池セル2と携帯機器本体部1間が非導通となる。なお、燃料電池セル2と携帯機器本体部1間が非導通の間は直流蓄電装置30から携帯機器本体部1に電気が供給されるので、上述の電気配線6の遮断と同時に携帯機器の動作が停止する訳ではない。
【0028】
本実施の形態では圧力感知手段の一部としてピストンヘッド14を用いたが、ダイアフラムやブルドン管等、弾性を有する構造体を使用しても同様の機能を発揮する。さらに、ダイアフラムやブルドン管はピストンヘッド14のようにスライドする部分がないため、ガスシールしやすいという点で一層好適である。また、バネ12の種類として、金属バネ、セラミックスバネ、ガスバネ等の弾性体を用いても良い。バネ12の弾性率は、燃料ガス圧力が所定の圧力値になった場合に開閉スイッチ20のオン・オフ動作が行われるように設定する。一方、接触子21には曲げ弾性のある金属板が好適である。曲げ弾性によりクランク30が多少移動しても接触子21と接点22が離れることはないが、クランク30が所定の機械的動作量以上移動してはじめて接触子21と接点22が離れる。これにより、所定の燃料ガス圧力値以下で開閉スイッチ20をオフするような制御が可能となる。
【0029】
図2に示した圧力センサー10は圧力を感知する機能のみを有するが、圧力センサー10に燃料ガスを遮断するバルブとしての機能を併有させるのも有効である。図3は、圧力センサー10にバルブ機能を併有させた例である。燃料供給配管5の一部に屈曲部13および16を設け、外側屈曲部13の内壁に橋渡しするように弾力性のあるダイアフラム11を設ける。ダイアフラム11には金属、ゴム等、弾性のある材料が使用可能である。ダイアフラム以外に上述のピストン構造等も採用できる。
【0030】
燃料ガス圧力が低下した場合には、ダイアフラム11の撓みが無くなって平面形状を呈するので、ダイアフラム11主面と外側屈曲部16が接触してバルブの機能を果たすため、燃料の流路が遮断される。同時にダイアフラム11とクランク30により結合された開閉スイッチ20の接触子21と接点22が離れて電気配線6は遮断される(図3(a))。
【0031】
一方、燃料ガス圧力が高い場合にはダイアフラム11が撓んで湾曲形状を呈するので、燃料ガスの流路が確保される。この際、ダイアフラム11にクランク30を介して接続された開閉スイッチ20では、接触子21と接点22が接触して電気配線6が導通状態、つまりオンとなる(図3(b))。
【0032】
本実施の形態で例示した圧力センサー10は機械加工により作製したり、MEMS(Micro−Electromechanical System)技術を用いてシリコンウエハにエッチングする等の微細加工により作製可能なため、サイズの大きなものから小さなものまで幅広く適用可能である。
【0033】
また、本実施の形態で例示した他に、圧電素子を使用した電気式の圧力センサーや機械式のセンサーと電気式のセンサーを組合せたセンサー等いずれについても適用可能である。電気式の圧力センサーを使用した場合、燃料ガス圧力を信号線でCPU(図示せす)に送信し、さらに、CPUから開閉スイッチ20に開閉信号を送信する形態も有効である。開閉スイッチ20についても機械式の開閉スイッチ(機械的接続遮断手段)、電磁開閉スイッチ(電気的接続遮断手段)、半導体スイッチ等、電流を遮断する機能を有するなら、いずれも適用可能である。また、図1中で開閉スイッチ20はプラス側20bおよびマイナス側20aのいずれの側にも設置したが、一方のみでも機械的あるいは電気的接続遮断手段として機能することができる。
【0034】
以上、本実施の形態によると、燃料貯蔵容器の燃料ガス圧力を圧力センサーによって感知し、圧力センサーに基づく機械的あるいは電気的動作によって電機配線中に設けられた開閉スイッチをオン・オフするので、燃料欠乏が防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性が向上する。特に、機械的動作の場合は付加的な消費消費電力を要しないため、携帯機器には好適である。
【0035】
実施の形態3.
本実施の形態の携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法を図4に基づき説明する。ここで、図4は典型的な水素吸蔵合金容器の水素吸蔵量と圧力の関係を示したグラフである。
【0036】
先ず、携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法において、燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気配線6を遮断する時点について説明する。燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気配線6は燃料電池セル2の燃料極2aから燃料が完全に枯渇する前に遮断されなければならないが、燃料貯蔵容器4に燃料が大量に残存している状態で電気配線6を遮断した場合、燃料電池セル2の燃料極2aの腐食は防止できるものの、燃料の補充を頻繁に行わなければならないという携帯機器の利便性に関わる大きな問題が生じる。したがって、燃料電池セル2が損傷を受けず、かつ燃料貯蔵容器4に蓄えられている燃料を可能な限り消費し得る時点で燃料電池セル2と携帯機器1間の電気配線6を遮断する必要がある。
【0037】
図4に典型的な水素吸蔵合金容器の水素吸蔵量と水素圧力の関係を示す。図中、横軸が水素の吸蔵量、縦軸が水素圧力(燃料ガス圧力)を表す。水素吸蔵合金は一般的に許容水素貯蔵量の上限まで水素を吸蔵した状態から順次水素を放出する場合、初期的に水素ガス圧力は低下するものの、その後ほぼ一定圧力で水素を放出し続ける。以下、かかる一定圧力を平衡圧力Peqと呼ぶ。平衡圧力Peqの下で燃料貯蔵容器4から大半の水素を放出し、残存水素量がある一定値より減少すると急激に水素ガス圧力が低下して、最終的に水素残量がゼロとなる。
【0038】
燃料電池セル2と携帯機器本体部1とを電気的に接続する電気配線6を遮断する時点、すなわち燃料貯蔵量の下限値に対応した下限圧力Plowとして平衡圧力Peqを設定した場合、圧力センサー10の感度によっては、まだ水素が十分放出されていない状態で圧力センサー10が作動し、電気配線6を遮断する不具合が起こる可能性がある。一方、下限圧力Plowを大気圧Pa以下とした場合には、燃料電池セル2の燃料極2aが大気圧Paに対して負圧にならないと電気配線6が遮断されないため、携帯機器用燃料電池電源システム外部からの空気の混入等により水素が直接化学的に酸化されて欠乏する危険性が高い。以上の理由から燃料の下限圧力Plowを大気圧Pa以上でかつ水素吸蔵合金の平衡圧力Peq以下の範囲内に設定すると効率良く携帯機器用燃料電池電源システムを駆動できる。すなわち、
Pa≦Plow≦Peq (4)
を満たす範囲であれば良い。
【0039】
より効率良く携帯機器用燃料電池電源システムを稼動させるには、下限圧力Plowと大気圧Paの差Plow‐Paが、平衡圧力Peqと大気圧Paの差Peq‐Paに対して30〜90%の範囲内、つまり、
0.3(Peq‐Pa)≦Plow‐Pa≦0.9(Peq‐Pa) (5)
に設定するのが良く、さらに、平衡圧力Peqと大気圧Paの差Peq‐Paに対して50〜80%の範囲内が一層好適である。
【0040】
水素吸蔵合金の平衡圧力―吸蔵量の曲線は、使用温度の低下に伴い同一水素吸蔵量でも低圧力側にシフトする。したがって、燃料貯蔵量の下限圧力Plowを携帯機器を使用する温度域で最も低い温度域の平衡圧力Peqに設定するのが好適である。さらに、水素吸蔵合金の温度を温度センサー等によって常時測定して、かかる測定温度に対応した平衡圧力Peqに基づき燃料貯蔵量の下限圧力Plowを設定するとより効率良く携帯機器用燃料電池電源システムを稼動できる。なお、水素吸蔵合金の温度毎の平衡圧力Peqは、携帯機器内の記憶メモリ等に参照テーブルとして予め記憶させておき、適宜記憶メモリにアクセスして該当値を取り出せば良い。また、物質によっては圧力―吸蔵量曲線の平衡領域(直線領域)が水平ではなく一定の傾斜を持っている場合もある。そのような場合は直線域を吸蔵量ゼロまで外挿した圧力を平衡圧力Peqとみなすと、取り扱いが一層便利となる。
【0041】
また、圧力センサー10により開閉する開閉スイッチ20と連動して外部信号発生器40を作動させることにより、携帯機器使用者に対して燃料の補充を知らせるサイン、つまり警告表示すると、適切な時期に水素充填を行えるので、携帯機器用電源としての長期的安定性が一層向上する。外部信号発生器40としては、携帯機器のディスプレイ上に燃料の補充が必要等の警告内容を表示する、燃料補充ランプを点灯あるいは点滅させる、ブザー、サイレン、音声、メロディー等、音を鳴らして知らせる、振動して知らせる等、人間の五感に訴える手段を使用できる。またこれらの手段を複合的に組み合わせて使用するのも有効である。
【0042】
以上、本実施の形態の携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法では、燃料電池セルと携帯機器本体部とを電気的に接続する電気配線を遮断する時点、すなわち燃料貯蔵量の下限量に対応した下限圧力Plowを例えば大気圧Pa以上平衡圧力Peq以下の範囲に設定したので、燃料欠乏による燃料電池の不可逆的な損傷を容易に防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性の向上が図れるとともに効率良く駆動できる。
【0043】
実施例1.
図5は、本発明の携帯機器用燃料電池電源システムおよびその駆動方法の有効性を確認するために実施の形態1に基づき作製した携帯機器用燃料電池電源システム(図5中の実施例)と本システムから圧力センサー10と開閉スイッチ20を除いた携帯機器用燃料電池電源システム(図5中の比較例)について、運転試験を実施した結果である。図5中、横軸は携帯機器動作時間、縦軸は携帯機器の電池電圧を示す。
【0044】
実施例の携帯機器用燃料電池電源システムは圧力センサー10と開閉スイッチ20を装備している。したがって、燃料である水素が欠乏する前に燃料電池セル2と携帯機器本体部1間の電気配線6が遮断され、さらに、ブザー等の外部信号発生器40により使用者に水素の補充の必要性を警告できるので、携帯機器に対して適切な時期に水素が供給された。本発明に係る携帯機器用燃料電池電源システムでは水素が欠乏する前に外部から水素を補充できるため、再び運転しても燃料電池は安定した電圧で駆動した。一方、比較例においては、燃料の欠乏が頻発し、かつ欠乏毎に燃料電池が損傷を受けるので、再度水素を補充しても、もはや燃料電池の電圧は完全には回復せず徐々に低下する傾向、つまり、携帯機器用電源としての長期安定性が損なわれていく傾向が確認された。
【0045】
【発明の効果】
本発明に係る携帯機器用燃料電池電源システムでは、燃料極を具備する燃料電池セルと燃料供給配管を介して上記燃料電池セルに供給する燃料を貯蔵する燃料貯蔵容器とを有する携帯機器用燃料電池電源システムであって、上記燃料極内、上記燃料貯蔵容器内または上記燃料供給配管のいずれかの箇所に設けられ空間内の燃料ガス圧力を機械的動作量に変換する圧力感知手段と、上記圧力感知手段の機械的動作を伝達する機械的伝達手段と、上記燃料電池セルと携帯機器本体部間を接続する電気配線の一部に設けられ上記伝達された機械的動作によって上記電気配線の接続をオン・オフさせる機械的接続遮断手段と、を備え、上記空間内の燃料ガス圧力が所定の下限圧力Plow以下の場合に、上記機械的接続遮断手段により上記電気配線の接続をオフすることとしたので、燃料欠乏による燃料電池の不可逆的な損傷を容易に防止でき、携帯機器用電源としての長期的安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1による携帯機器用燃料電池電源システムの構成を示した概観図である。
【図2】実施の形態2における携帯機器用燃料電池電源システムの一部で使用される機械的に圧力を感知する圧力センサーおよび開閉スイッチの模式図である。
【図3】実施の形態2における携帯機器用燃料電池電源システムの一部で使用される機械的に圧力を感知する圧力センサーおよび開閉スイッチの模式図である。
【図4】典型的な水素吸蔵合金容器の水素吸蔵量と圧力の関係を示したグラフである。
【図5】実施の形態1に基づき作製した携帯機器用燃料電池電源システムと本システムから燃料の貯蔵量を感知する圧力センサーと開閉スイッチを除いた携帯機器用燃料電池電源システムについて、運転試験を実施した結果である。
【符号の説明】
1 携帯機器本体部、 2 燃料電池セル、 3 直流蓄電装置、 4 燃料貯蔵容器、 5 燃料供給配管、 6 電気配線、 10 圧力センサー、 11 ダイアフラム、 12 バネ、 13 屈曲部、 14 ピストンヘッド、15 シリンダ、 16 屈曲部、 20、20a、20b 開閉スイッチ、21 接触子、 22 接点、 30 クランクまたは信号線、 40 外部信号発生器。
Claims (12)
- 燃料極を具備する燃料電池セルと燃料供給配管を介して前記燃料電池セルに供給する燃料を貯蔵する燃料貯蔵容器とを有する携帯機器用燃料電池電源システムであって、
前記燃料極内、前記燃料貯蔵容器内または前記燃料供給配管のいずれかの箇所に設けられ空間内の燃料ガス圧力を機械的動作量に変換する圧力感知手段と、
前記圧力感知手段の機械的動作を伝達する機械的伝達手段と、
前記燃料電池セルと携帯機器本体部間を接続する電気配線の一部に設けられ前記伝達された機械的動作によって前記電気配線の接続をオン・オフさせる機械的接続遮断手段と、を備え、
前記空間内の燃料ガス圧力が所定の下限圧力Plow以下の場合に、前記機械的接続遮断手段により前記電気配線の接続をオフすることを特徴とする携帯機器用燃料電池電源システム。 - 前記圧力感知手段が、前記空間内の燃料ガス圧力を電気信号に変換する圧力センサーで構成され、
前記機械的伝達手段に代えて前記電気信号を伝達する電気的伝達手段と、
前記機械的接続遮断手段に代えて前記電気的伝達手段から伝達される電気信号によって作動する電気的接続遮断手段と、を備え、
前記電気信号が所定の下限値以下の場合に前記電気的接続遮断手段によって前記電気配線の接続をオフすることを特徴とする請求項1記載の携帯機器用燃料電池電源システム。 - 前記空間内の燃料ガス圧力の所定の下限圧力Plowが、前記燃料貯蔵量の下限値に対応していることを特徴とする請求項1または2記載の携帯機器用燃料電池電源システム。
- 前記燃料が水素であり、前記燃料貯蔵器が水素吸蔵合金容器であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の携帯機器用燃料電池電源システム。
- 前記下限圧力Plowは、大気圧をPa、前記水素吸蔵合金の平衡圧力をPeqとすると、Pa≦Plow≦Peqの関係を満たすことを特徴とする請求項4記載の携帯機器用燃料電池電源システム。
- 前記機械的または電気的接続遮断手段のオフ動作に連動して携帯機器に設けられた外部信号発生器によって警告表示をさせることを特徴とする請求項1または2記載の携帯機器用燃料電池電源システム。
- 燃料極を具備する燃料電池セルと燃料供給配管を介して前記燃料電池セルに供給する燃料を貯蔵する燃料貯蔵容器とを有する携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法であって、
前記燃料極内、前記燃料貯蔵容器内または前記燃料供給配管のいずれかの箇所に設けられた圧力感知手段によって空間内の燃料ガス圧力を機械的動作または電気信号に変換し、伝達手段によって前記機械的動作または電気信号を前記燃料電池セルと携帯機器本体部とを接続する電気配線の一部に設けられた接続遮断手段に伝達して、前記燃料ガス圧力が所定の下限圧力Plow以下である場合に前記接続遮断手段によって前記電気配線の接続をオフすることを特徴とする携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法。 - 前記燃料が水素であり、前記燃料貯蔵器が水素吸蔵合金容器であることを特徴とする請求項7記載の携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法。
- 前記下限圧力Plowは、大気圧をPa、前記水素吸蔵合金の平衡圧力をPeqとすると、Pa≦Plow≦Peqの関係を満たすことを特徴とする請求項8記載の携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法。
- 前記下限圧力Plowは、大気圧をPa、前記水素吸蔵合金の平衡圧力をPeqとすると、
0.3(Peq‐Pa)≦Plow‐Pa≦0.9(Peq‐Pa)
を満たすことを特徴とする請求項8記載の携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法。 - 前記水素吸蔵合金の温度を温度センサーによって測定し、前記平衡圧力Peqは、前記測定温度に対応した平衡圧力値が適用されることを特徴とする請求項9または10記載の携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法。
- 前記空間内の燃料ガス圧力が所定の下限圧力Plow以下である場合に、前記接続遮断手段によって前記電気配線の接続をオフすると同時に前記燃料電池セルへの燃料の供給も停止させることを特徴とする請求項7記載の携帯機器用燃料電池電源システムの駆動方法。
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