JP2004288561A - 冷陰極電子源の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】カーボンナノチューブ(CNT)4とカーボン不純物5とを含む電子放出部3をカソード電極2上に形成する。そして、電子放出部3に対して、照射密度0.7〜8.6MW/cm2でレーザー照射を行って、CNT4をカーボン不純物5から露出させる。これにより、レーザー照射前は横臥状態であったCNT4が起立し、冷陰極電子源のエミッション特性が向上する。
【選択図】 図4
Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、カーボンナノチューブを電子放出源として備える冷陰極電子源の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、FED(Field Emission Display)などの表示装置に採用される電界放出型の冷陰極電子源として、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と呼ぶ)を電子放出源として利用した冷陰極電子源が提案されている。
【0003】
CNTは、長さ数μmのチューブ形状を成しており、CNTの先端に電界が集中しやすく電子が放出しやすい特性を有している。そのため、CNTを電子放出源として利用することによって、良好なエミッション特性を得ることができる。
【0004】
特許文献1には、電子放出源としてCNTを利用した冷陰極電子源の製造方法が開示されている。特許文献1に記載の技術では、複数のCNTが集合して構成されたバンドルを含むバンドルペーストから成る電子放出部を基板上に形成し、当該電子放出部にレーザーを照射することによって、電子放出部中のバンドル以外の物質を選択的に除去して、更に、バンドル中のCNT以外の炭素成分を選択的に除去してCNTを露出させている。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−36243号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
一般的に、基板上に形成された電子放出部には、起立状態のCNTばかりではなく横臥状態のCNTも存在するため、エミッション特性を向上するためには、この横臥状態のCNTの先端をも露出させる必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、CNTをそのままの状態で露出させているため、横臥状態のCNTの先端を露出させることが困難であり、十分なエミッション電流を得ることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は上述の問題に鑑みて成されたものであり、冷陰極電子源のエミッション特性を向上させることが可能な製造技術を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る冷陰極電子源の製造方法は、電子を放出するカーボンナノチューブ及びカーボン不純物を含む電子放出部を備える冷陰極電子源の製造方法であって、(a)カソード電極を形成する工程と、(b)前記カソード電極上に前記電子放出部を形成する工程と、(c)前記電子放出部に照射密度0.7〜8.6MW/cm2 でレーザーを照射して、前記カーボン不純物に埋もれている前記カーボンナノチューブを前記カーボン不純物から露出させる工程とを備える。
【0009】
また、この発明に係る冷陰極電子源の他の製造方法は、電子を放出するカーボンナノチューブ及びカーボン不純物を含む電子放出部を備える冷陰極電子源の製造方法であって、(a)カソード電極を形成する工程と、(b)前記カソード電極上に前記電子放出部を形成する工程と、(c)前記カソード電極上に、前記電子放出部を取り囲むゲート構造を形成する工程と、(d)前記工程(c)の後に、前記電子放出部にレーザーを照射して、前記カーボン不純物に埋もれている前記カーボンナノチューブを前記カーボン不純物から露出させる工程とを備える。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1〜6は本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。本実施の形態1に係る冷陰極電子源は電界放出型の電子源であって、例えば2極構造を有してる。そして、FEDなどの表示装置に適用することができる。以下に、図1〜6を参照して本実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法について説明する。
【0011】
まず図1に示されるように、例えば2mm角の大きさのカソード電極2を絶縁基板1上に形成する。そして、長さ数μmのCNTを複数含む導電性ペースト6を、カソード電極2上にスクリーン印刷法でパターンニングする。ここで使用した導電性ペースト6には、CNT以外に、アモルファスカーボンやそれ以外のカーボン生成物などから成るカーボン不純物、ブチルカルビトールなどの有機溶剤、エチルセルロースなどのバインダ、ホノゲノールなどの分散剤等が含まれている。また、印刷後の導電性ペースト6の厚みは例えば2〜4μmであり、カソード電極は例えばITO(Indium Titanium Oxide)から成る。
【0012】
次に、パターンニングされた導電性ペースト6を120℃程度の大気雰囲気中で乾燥し、さらに500〜550℃の大気雰囲気中で焼成する。これにより、導電性ペースト6中の有機溶剤、バインダ及び分散剤がほぼ消失し、図2に示されるように、CNT4とカーボン不純物5とを含む電子放出部3がカソード電極2上に形成される。図3は、電子顕微鏡を用いて図2に示す電子放出部3を上方から撮影した際の画像を示している。図2,3に示されるように、電子放出部3では、大部分のCNT4がカーボン不純物5に埋もれている。従って、一部のCNT4の先端だけがカーボン不純物5から露出しており、大部分のCNT4の先端はカーボン不純物5から露出していない。また、図2に示されるように、電子放出部3には、起立状態のCNT4だけではなく、横臥状態のCNT4も含まれている。
【0013】
次に図4に示されるように、大気中で、上方から電子放出部3に対してレーザーを照射して、カーボン不純物5を部分的に除去して、カーボン不純物5に埋もれているCNT4の先端を露出させる。このとき、レーザーの照射密度(「レーザーピーク強度」とも呼ばれる)を0.7MW/cm2以上に設定する。また、レーザーとしては、例えば波長308nmのエキシマレーザーを採用して、パルス幅17nsecで1ショットだけレーザー照射を行う。
【0014】
図5は、電子顕微鏡を用いて図4に示す電子放出部3を上方から撮影した際の画像を示している。図4,5に示されるように、レーザーの照射密度を0.7MW/cm2以上に設定すると、レーザー照射により電子放出部3内で発生した熱によってCNT4が変形し、レーザー照射前は横臥状態であったCNT4が起立状態となる。そのため、電子放出部3において、レーザー照射前よりも起立状態のCNT4の割合が増加する。
【0015】
次に図6に示されるように、カソード電極2と所定距離を成して対向するアノード電極9を配設する。本実施の形態1では、カソード電極2とアノード電極9との間の距離を100μmに設定する。
【0016】
このようにして、電界放出型の2極構造の冷陰極電子源が完成する。
【0017】
図7は、上述のようにして製造された冷陰極電子源のエミッション特性を示す図である。横軸は、電子放出部3に対してレーザー照射を行ってCNT4を露出させる際のレーザー照射密度を示し、縦軸はそのレーザー照射密度で製造された冷陰極電子源のエミッション電流を示している。
【0018】
図7に示すデータは、常温かつ圧力1.33×10−6Paの下で測定されており、測定時のカソード電極2及びアノード電極9の電圧は、それぞれ0V及び600Vに設定されている。また図中の一点鎖線は、従来から行われているテープ研磨によってカーボン不純物5を除去してCNT4を露出させた場合のエミッション電流を示している。つまり、図中の破線は、特許文献1に記載された技術と同様に、不純物に埋もれていたCNT4をそのままの状態で露出させた場合のエミッション電流を示している。
【0019】
図7に示されるように、レーザーの照射密度を0.7〜8.6MW/cm2に設定すると、CNT4を単に露出させた場合よりも大きいエミッション電流を得ることができる。以下に、この理由を説明する。
【0020】
上述のように、レーザー照射密度を0.7MW/cm2以上に設定すると、レーザー照射前は横臥状態であったCNT4が起立する。電子放出部3において、起立状態のCNT4の数が増加すると、CNT4の先端から出力される電子のうち、同一方向に進む電子の数が多くなるため、エミッション電流が増加する。そして、レーザー照射密度が大きくなるにつれて、起立状態のCNT4の数が増加するため、それに依存してエミッション電流も増加する。そして、レーザー照射密度がある値よりも大きくなると、それ以上起立状態のCNT4の数が増加しなくなる。
【0021】
一方、レーザー照射密度が大きくなると、レーザーによって破壊されるCNT4の数が増加する。従って、レーザー照射密度がある値よりも大きくなると、起立状態のCNT4の数の増加によるエミッション電流の増加効果よりも、CNT4の破壊によるエミッション電流の減少効果の方が大きくなるため、エミッション電流は、レーザー照射密度のある値で極大値を採り、レーザー照射密度がそれよりも大きくなるにつれて減少する。図7に示すデータでは、レーザー照射密度が5.2MW/cm2のときに、エミッション電流は極大値を採り、最も良好なエミッション特性を示す。
【0022】
エミッション電流はレーザー照射密度が大きくなるにつれて低下するため、レーザー照射密度がある値よりも大きくなれば、CNT4を単に露出させる従来技術よりもエミッション電流が低下する。図7に示すデータでは、レーザー照射密度が8.6MW/cm2以下であれば、エミッション電流が従来技術よりも大きい。
【0023】
このように、レーザー照射密度を0.7MW/cm2以上に設定することによって、レーザー照射前は横臥状態であったCNT4を容易に起立させることが可能になる。そして、レーザー照射によってCNT4が破壊したとしても、レーザー照射密度を8.6MW/cm2以下に設定することによって、従来技術よりも大きいエミッション電流を維持することが可能になる。つまり、レーザー照射密度を0.7〜8.6MW/cm2に設定することによって、CNT4をそのままの状態で露出させる従来技術よりも、良好なエミッション特性を容易に得ることができる。
【0024】
なお本実施の形態1では、レーザーとしてエキシマレーザーを採用したが、その代わりにYAGレーザーや炭酸ガスレーザーを用いても良いし、パルス照射の代わりに、周波数変調されたレーザーを用いても良い。また、レーザー照射方式はスキャン方式、スポット方式のいずれでも構わないし、レーザー照射雰囲気は大気中が望ましいが真空中でも構わない。なお、本実施の形態1のように大気中でレーザー照射を行った場合には、酸化の影響でレーザー照射密度が小さくできる効果がある。
【0025】
また本実施の形態1では、2極構造の冷陰極電子源の製造方法について説明したが、本発明は3極構造の冷陰極電子源にも適用することができる。すなわち、図8に示されるように、電子放出部3へのレーザー照射後に、ゲート絶縁膜11及びゲート電極12から成るゲート構造10を電子放出部3を取り囲みつつカソード電極2上に形成し、その後に、カソード電極2と所定距離を成して対向するアノード電極9を配設することによって、3極構造の冷陰極電子源を形成することができる。
【0026】
図9は、図8に示す構造を上方から見た場合の平面図である。図8,9に示されるように、ゲート絶縁膜11及びゲート電極12には、行列状に配列された複数のマイクロキャビティ13が形成されている。電子放出部3は、マイクロキャビティ13と一対一で対応して設けられており、カソード電極2上に行列状に配列されている。そして、電子放出部3はマイクロキャビティ13内に位置しており、CNT4から放出された電子はマイクロキャビティ13を通過してアノード電極9に到達する。なお、このような構造はマイクロキャビティ構造と呼ばれている。
【0027】
このように、本発明は3極構造の冷陰極電子源にも適用することができ、かかる冷陰極電子源のエミッション特性を向上することができる。
【0028】
実施の形態2.
上述の実施の形態1で説明した3極構造の冷陰極電子源の製造方法では、電子放出部3に対してレーザー照射を行った後にゲート構造10を形成していたが、ゲート構造10の形成後に電子放出部3に対してレーザー照射を行っても良い。本実施の形態2では、かかる場合の3極構造の冷陰極電子源について説明する。
【0029】
図10〜18は、本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。本実施の形態2に係る冷陰極電子源は、マイクロキャビティ構造を有する3極構造の電子源であって、例えばFEDなどの表示装置の電子源として採用することができる。以下に、図10〜18を参照して、本実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法について詳細に説明する。
【0030】
まず図10に示されるように、絶縁基板1上にカソード電極2を形成し、導電性ペースト6を、カソード電極2上にスクリーン印刷法でパターンニングする。
【0031】
次に、実施の形態1と同じ条件で、パターンニングされた導電性ペースト6を乾燥・焼成する。これにより、導電性ペースト6中の有機溶剤、バインダ及び分散剤がほぼ消失し、図11に示されるように、CNT4とカーボン不純物5とを含む複数の電子放出部3がカソード電極2上に行列状に形成される。このときの電子放出部3中のCNT4は、大部分がカーボン不純物5に埋もれている。また電子放出部3には、起立状態のCNT4だけではなく、横臥状態のCNT4も含まれている。
【0032】
次に図12に示されるように、電子放出部3を覆ってカソード電極2上にゲート絶縁膜材料21を形成し、その後図13に示されるように、ゲート絶縁膜材料21上にゲート電極材料22を形成する。ゲート絶縁膜材料21は厚さ4〜10μmの絶縁膜であって、本実施の形態2では例えばスピンコート法を用いて形成される。そして、ゲート絶縁膜材料21は、例えば酸化珪素系ガラスやPPSQ(Polyphenylsilsesquioxane)などから形成されている。また、ゲート電極材料22は例えば厚さ250nm程度のアルミニウム膜であって、本実施の形態2では例えば蒸着法を用いて形成される。
【0033】
次に図14に示されるように、所定の開口パターンを有するレジスト25をゲート電極材料22上に形成して、かかるレジスト25をマスクに用いて、ゲート電極材料22をウェットエッチングする。これにより、電子放出部3の上方のゲート電極材料22が除去されて、ゲート絶縁膜材料21が部分的に露出し、ゲート電極12が形成される。その後、レジスト25を除去する。
【0034】
次に図15に示されるように、ゲート電極12をマスクに用いて、ゲート絶縁膜材料21に対してドライエッチングを行う。このときのドライエッチングは、CF4とO2とが100:25の割合で混合されたガスを用いて40〜50分間実行される。これにより、図16に示されるように、電子放出部3が露出して、カソード電極2上にゲート絶縁膜11が形成される。
【0035】
なおこのとき、ゲート絶縁膜材料21の膜厚が完全には均一でないため、電子放出部3を確実に露出させるために、ゲート絶縁膜材料21に対してオーバーエッチングが実行される。そのため、電子放出部3に対してもドライエッチングが実行されて、図16に示されるように、カーボン不純物5が部分的に除去される。なお、図16中の破線がドライエッチング前のカーボン不純物5の形状を示している。また、ゲート絶縁膜材料21の一番薄い箇所の下方の電子放出部3は、10分程度ドライエッチングが実行される。
【0036】
このようにして、ゲート絶縁膜11とゲート電極12とから成り、各電子放出部3を取り囲むゲート構造10がカソード電極2上に形成される。
【0037】
実施の形態1でも説明したように、ゲート絶縁膜11及びゲート電極12には、上記エッチングよって、行列状に配列された複数のマイクロキャビティ13が形成されている。電子放出部3は、マイクロキャビティ13内に位置しており、図16に示す構造を上方から見た場合の平面図は、上述の図9の平面図と同じである。そして、電子放出部3の各CNT4から放出された電子はマイクロキャビティ13を通過して、後述するアノード電極9に到達する。
【0038】
次に図17に示されるように、大気中で、上方から電子放出部3に対してレーザーを照射して、カーボン不純物5を部分的に除去して、カーボン不純物5に埋もれているCNT4の先端を露出させる。そして、図18に示されるように、カソード電極2と所定距離を成して対向するアノード電極9を配設し、電界放出型の3極構造の冷陰極電子源が完成する。なお本実施の形態2では、カソード電極2とアノード電極9との間の距離を例えば550μmに設定する。
【0039】
上述のように、本実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法では、電子放出部3を取り囲むゲート構造10を形成した後に、電子放出部3に対してレーザー照射を行っているため、かかるレーザー照射によって発生する熱がこもり易くなる。従って、レーザー照射前に横臥状態であったCNTを、実施の形態1よりも低い照射密度のレーザーでもって起立させることができる。その結果、レーザー照射によるゲート構造10の損傷を低減しつつ、冷陰極電子源のエミッション特性を向上させることができる。
【0040】
また本実施の形態2では、電子放出部3に対するレーザー照射を実行する前に、電子放出部3に対してドライエッチングが実行されている。そのため、レーザー照射前にはカーボン不純物5が部分的にエッチングされているため、レーザー照射時にCNT4が露出しやすくなる。その結果、CNT4にレーザーが照射されやすくなり、CNT4が熱変形を生じやすくなる。従って、実施の形態1よりも低いレーザー照射密度で、つまり0.7MW/cm2よりも小さいレーザー照射密度でCNT4を起立させることができる。その結果、レーザー照射によるゲート構造10の損傷を低減しつつ、冷陰極電子源のエミッション特性を向上させることが可能になる。
【0041】
また、ゲート絶縁膜材料21をエッチングして電子放出部3を露出させるとともに、電子放出部3に対してもエッチングが行われるため、ゲート絶縁膜11を形成する工程と電子放出部3に対してエッチングを行う工程とを同時に実行することができる。従って、エミッション特性が良好な冷陰極電子源をより少ない工程で製造することができる。
【0042】
なお、本実施の形態2では設けていなかったが、レーザー照射前に、ゲート電極12上に例えば金から成る耐レーザー膜を形成することによって、レーザー照射によるゲート構造10の損傷の低減を図っても良い。
【0043】
実施の形態3.
上述の実施の形態2に係る製造方法では、ゲート絶縁膜材料21に対するオーバーエッチング時に電子放出部3に対するエッチングが実行されるため、エッチング時間を適切に調整しないと、電子放出部3の一部が露出しなかったり、電子放出部3が過剰にエッチングされてCNT4が消失することがあり、エッチングの時間管理が容易ではなかった。
【0044】
そこで、本実施の形態3では、実施の形態2に係る製造方法よりも工程管理が簡単な製造方法を提供する。
【0045】
図19〜22は、本発明の実施の形態3に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。本実施の形態3に係る冷陰極電子源は、実施の形態2と同様に、マイクロキャビティ構造を有する3極構造の電子源であって、例えばFEDなどの表示装置の電子源として採用することができる。以下に、図19〜22を参照して、本実施の形態3に係る冷陰極電子源の製造方法について詳細に説明する。
【0046】
まず、実施の形態2で説明した製造方法を用いて、図11に示す構造を得る。そして図19に示されるように、電子放出部3に対してドライエッチングを実行する。このとき、CF4とO2とが100:25の割合で混合されたガスを用いて、エッチングパワー170Wで10分間程度エッチングを行う。これにより、電子放出部3のカーボン不純物5が部分的に除去されて、レーザー照射時にCNT4が露出しやすくなる。なお、図19と後述する図20,21中の一点鎖線は、エッチング前のカーボン不純物5の形状を示している。
【0047】
次に図20に示されるように、スクリーン印刷法を用いて、マイクロキャビティ13の一部と成る貫通孔13aを複数有するゲート絶縁膜11をカソード電極2上に形成する。具体的には、カソード電極2及び電子放出部3の上方に、スクリーン印刷用のマスクを配置し、かかるマスクとスキージとの間にペースト状のゲート絶縁膜材料を置いて、スキージを移動させることによって、かかるゲート絶縁膜材料がマスクに設けられた穴を通ってカソード電極2上に付着する。これによって、カソード電極2上に印刷パターンが形成されて、複数の貫通孔13aを有するゲート絶縁膜11が形成される。なお、各電子放出部3は貫通孔13aの内部に位置しており、ゲート絶縁膜11によって取り囲まれている。
【0048】
次に図21に示されるように、マスク蒸着法を用いて、マイクロキャビティ13の一部と成る貫通孔13bを複数有するゲート電極12をゲート絶縁膜11上に形成する。具体的には、所定の開口パターンを有するメタルマスクをゲート絶縁膜11上に設けて、内部にゲート電極材料を有する坩堝をヒーターにより加熱すると、ゲート電極材料が蒸発してメタルマスクに設けれられた穴を通ってゲート絶縁膜11上に付着する。これによって、複数の貫通孔13bを有するゲート電極12がゲート絶縁膜11上に形成される。なお、ゲート電極12の貫通孔13bは、ゲート絶縁膜11の貫通孔13aに連通している。
【0049】
以上により、貫通孔13a,13bからなるマイクロキャビティ13を複数有するゲート構造10がカソード電極2上に完成し、各電子放出部3はかかるゲート構造10によって取り囲まれる。なお、図21に示す構造を上方から見た平面図は、上述の図9の平面図と同じである。
【0050】
次に図22に示されるように、大気中で、上方から電子放出部3に対してレーザーを照射して、カーボン不純物5を部分的に除去して、カーボン不純物5に埋もれているCNT4の先端を露出させる。そして、カソード電極2と所定距離を成して対向するアノード電極9(図示せず)を配設し、電界放出型の3極構造の冷陰極電子源が完成する。
【0051】
このように、本実施の形態3に係る冷陰極電子源の製造方法では、上述の実施の形態2とは異なり、スクリーン印刷法及びマスク蒸着法を用いてゲート構造10を形成しているため、ゲート構造10形成時に電子放出部3がエッチングされることがない。更に、電子放出部3に対しては、ゲート構造10を形成する工程とは別の工程でエッチングを行っている。従って、厳密なエッチングの時間管理が不要となり、冷陰極電子源のエミッション特性を向上しつつ、実施の形態2に係る製造方法よりも工程管理が簡単となる。
【0052】
【発明の効果】
この発明に係る冷陰極電子源の製造方法によれば、照射密度0.7〜8.6MW/cm2のレーザーを用いてカーボンナノチューブをカーボン不純物から露出させているため、レーザー照射前に横臥状態であったCNTが、レーザー照射後に起立し、冷陰極電子源のエミッション特性が向上する。
【0053】
また、この発明に係る冷陰極電子源の他の製造方法によれば、電子放出部を取り囲むゲート構造を形成した後に、電子放出部にレーザーを照射しているため、かかるレーザー照射によって発生する熱がこもり易くなる。従って、レーザー照射前に横臥状態であったCNTを、低い照射密度のレーザーでもって起立させることができる。その結果、低エネルギーのレーザーでもって、ゲート構造を損傷することなく、冷陰極電子源のエミッション特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る冷陰極電子源の製造方法の変形例を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図19】本発明の実施の形態3に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図20】本発明の実施の形態3に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図21】本発明の実施の形態3に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【図22】本発明の実施の形態3に係る冷陰極電子源の製造方法を工程順に示す断面図である。
【符号の説明】
2 カソード基板、3 電子放出部、4 カーボンナノチューブ、5 カーボン不純物、8 レーザー、10 ゲート構造、11 ゲート絶縁膜、12 ゲート電極、21 ゲート絶縁膜材料、22 ゲート電極材料。
Claims (5)
- 電子を放出するカーボンナノチューブ及びカーボン不純物を含む電子放出部を備える冷陰極電子源の製造方法であって、
(a)カソード電極を形成する工程と、
(b)前記カソード電極上に前記電子放出部を形成する工程と、
(c)前記電子放出部に照射密度0.7〜8.6MW/cm2 でレーザーを照射して、前記カーボン不純物に埋もれている前記カーボンナノチューブを前記カーボン不純物から露出させる工程と
を備える、冷陰極電子源の製造方法。 - 電子を放出するカーボンナノチューブ及びカーボン不純物を含む電子放出部を備える冷陰極電子源の製造方法であって、
(a)カソード電極を形成する工程と、
(b)前記カソード電極上に前記電子放出部を形成する工程と、
(c)前記カソード電極上に、前記電子放出部を取り囲むゲート構造を形成する工程と、
(d)前記工程(c)の後に、前記電子放出部にレーザーを照射して、前記カーボン不純物に埋もれている前記カーボンナノチューブを前記カーボン不純物から露出させる工程と
を備える、冷陰極電子源の製造方法。 - (e)前記工程(d)の前に、前記電子放出部に対してエッチングを実行する工程を更に備える、請求項2に記載の冷陰極電子源の製造方法。
- 前記ゲート構造はゲート絶縁膜及びゲート電極を含み、
前記工程(c)は、
(c−1)ゲート絶縁膜材料を、前記電子放出部を覆って前記カソード電極上に形成する工程と、
(c−2)ゲート電極材料を前記ゲート絶縁膜材料上に形成する工程と、
(c−3)前記電子放出部の上方の前記ゲート電極材料を除去して、前記ゲート電極を形成する工程と、
(c−4)前記工程(c−3)で露出した前記ゲート絶縁膜材料に対してエッチングを実行して前記電子放出部を露出し、前記ゲート絶縁膜を形成する工程とを含み、
前記工程(e)は、前記工程(c−4)において、前記電子放出部が露出される際に実行される、請求項3に記載の冷陰極電子源の製造方法。 - 前記ゲート構造はゲート絶縁膜及びゲート電極を含み、
前記工程(c)は、
(c−1)印刷法を用いて前記ゲート絶縁膜を前記カソード電極上に形成する工程と、
(c−2)蒸着法を用いて前記ゲート電極を前記ゲート絶縁膜上に形成する工程と
を含む、請求項3に記載の冷陰極電子源の製造方法。
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