JP2004288377A - 外ひだ懸垂碍子 - Google Patents

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Masahiro Akizuki
優宏 秋月
Kenji Sato
健次 佐藤
Osamu Kaminogo
修 上之郷
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Abstract

【課題】外ひだ懸垂碍子において、汚損耐電圧特性の向上を図る。
【解決手段】本発明に係る碍子は、碍子本体10、碍子本体10の頭部の外周に嵌着されているキャップ金具20、碍子本体10の頭部の内側凹部に嵌着されているピン金具30を備え、碍子本体10は、頭部の根本から外側へ水平状またはわずかに下降傾斜して延びる円盤状の上笠部12、上笠部12の下面の途中から下降傾斜して延びる裾広がりの円錐状の下笠部13を有して、内周面が滑らかな曲面状または平面状を呈する外ひだ懸垂碍子である。当該外ひだ懸垂碍子は、碍子本体10の内周面に、キャップ金具20の外周縁に対応する部位より外周側に環状の導電域18aと、導電域18aからピン金具30へ延びる表面抵抗(1cm×1cm)が4MΩ以下の抵抗域18bを備えている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外ひだ懸垂碍子に関する。
【0002】
【従来の技術】
高電圧送電用の懸垂碍子においては、送電施設に設置された状態ではその周面に、風雨によって運ばれる海水塩分、工場等の排煙中の塵埃、その他空中の浮遊粉塵等の汚損物が付着し易く、付着した汚損物が雨水、雪、霧等によって湿潤状態になると、碍子本体の表面の絶縁抵抗が低下してフラッシュオーバが発生する等、耐電圧特性が大きく低下するという問題がある。このため、送電施設の絶縁設計に当たっては、懸垂碍子の汚損物に起因する耐電圧特性の低下を防止することが、重要な技術的な解決課題となっている。
【0003】
懸垂碍子における耐電圧特性の低下を防止する手段には、大別して、汚損された碍子本体の所定の部位に積極的に乾燥帯が形成されるようにして汚損耐電圧特性を向上させる手段と、碍子本体の周面に汚損物が付着し難くかつ付着した汚損物が雨水等によって容易に洗い流されるような形状および構造に碍子本体を形成する手段とがある。
【0004】
前者の手段を施して汚損耐電圧特性を向上させた懸垂碍子については、すでに提案されている(特許文献1参照)。また、碍子本体を後者のごとき形状および構造に構成した懸垂碍子についても、外ひだ懸垂碍子の名称ですでに提案されている(特許文献2参照)。本発明は、外ひだ懸垂碍子に関する。
【0005】
懸垂碍子の一形式である外ひだ懸垂碍子は、碍子本体と、碍子本体の頭部の外周に嵌着されているキャップ金具と、碍子本体の頭部の内面側凹所に嵌着されているピン金具を備え、碍子本体は、頭部の根本から外側へ水平状またはわずかに下降傾斜して延びる円盤状の上笠部と同上笠部の下面の途中から下降傾斜して延びる裾広がりの円錐状の下笠部を有して、内周面が滑らかな曲面状または平面状を呈しているものである。
【0006】
当該外ひだ懸垂碍子は、空中の浮遊粉塵が著しい地域に設置される懸垂碍子の耐電圧特性を、碍子本体の形状および構造の面から向上すべく意図して開発されたもので、碍子本体の特殊な形状および構造によって、空気中に浮遊している汚損物の付着を抑制し、かつ、汚損物の累積付着を防止するものである。
【0007】
すなわち、当該外ひだ懸垂碍子を構成する碍子本体は、その頭部の根本から外側へ水平状またはわずかに下降傾斜して延びる円盤状の上笠部と同上笠部の下面の途中から下降傾斜して延びる裾広がりの円錐状の下笠部を有する、内周面が凹凸のない滑らかな形状である。このため、碍子本体の内周面には、空気中に浮遊する粉塵等の汚損物が累積付着し難い。また、外ひだ笠部にあっては、各笠部の下降傾斜角度が比較的小さいため、汚損物が付着し難い上に雨による洗浄効果が大きく、汚損物の付着を低減できる利点がある。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−150862
【0009】
【特許文献2】
特開2000−260241
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
このように、当該外ひだ懸垂碍子においては、碍子本体の形状および構造の面から、空気中に浮遊する粉塵等の汚損物の碍子本体への付着や累積付着を抑制して、付着する汚損物に起因する耐電圧特性の低下を防止するものである。しかしながら、当該外ひだ懸垂碍子においても、設置場所によっては、海水塩分や排煙中の微粒物等の極めて付着し易くかつ離脱し難い汚損物による汚損は、十分には避け難い。
【0011】
このため、当該外ひだ懸垂碍子においては、碍子本体の形状および構造の面からの汚損防止による耐電圧特性の低下を防止することに併せて、汚損耐電圧特性の向上をも図ることが望ましい。本発明の目的は、このような要望に対処することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、外ひだ懸垂碍子に関する。本発明に係る外ひだ懸垂碍子は、碍子本体と、同碍子本体の頭部の外周に嵌着されているキャップ金具と、前記碍子本体の頭部の内側凹部に嵌着されているピン金具を備え、前記碍子本体は、前記頭部の根本から外側へ水平状またはわずかに下降傾斜して延びる円盤状の上笠部と、同上笠部の下面の途中から下降傾斜して延びる裾広がりの円錐状の下笠部を有して、内周面が滑らかな曲面状または平面状を呈している外ひだ懸垂碍子である。
【0013】
しかして、本発明に係る外ひだ懸垂碍子においては、前記碍子本体の内周面に、前記キャップ金具の外周縁に対応する部位より外周側に環状の導電域と、同導電域から前記ピン金具へ延びる表面抵抗(1cm×1cm)が4MΩ以下の抵抗域を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
本発明に係る外ひだ懸垂碍子においては、前記抵抗域を環状の抵抗帯とし、かつ、前記導電域を環状の導電帯とすることができる。また、前記導電域の表面抵抗を前記抵抗域の1/2以下とすることができる。また、前記抵抗域を、碍子本体の内周面におけるピン金具の部位と少なくともキャップ金具の外周縁に対応する部位間に位置させることができる。
【0015】
本発明に係る外ひだ懸垂碍子においては、前記碍子本体が有する抵抗域の形成材料として、酸化鉄系もしくは酸化錫系の導電釉、導電ゴムまたは導電樹脂を採用すること、前記碍子本体が有する導電域の形成材料として、金属、低抵抗の酸化鉄系もしくは酸化錫系の導電釉、導電ゴムまたは導電樹脂を採用することができる。
【0016】
本発明に係る外ひだ懸垂碍子においては、前記碍子本体が有する導電域および抵抗域を同一の導電釉、導電ゴムまたは導電樹脂で形成して、前記導電域の厚みを前記抵抗域の厚みより厚く形成するようにすることができる。また、前記碍子本体が有する導電域については、前記碍子本体の内周面における所定の部位に設けた環状の溝部に、前記導電域の形成材料である導電釉、導電ゴムまたは導電樹脂を充填することにより形成することができる。
【0017】
【発明の作用・効果】
本発明に係る外ひだ懸垂碍子においては、第1には、碍子本体の外ひだ型の形状および構造によって、空気中に浮遊する粉塵等の汚損物の付着や累積付着を抑制し得て、累積付着する汚損物に起因する耐電圧特性の低下を抑制することができる。このため、当該外ひだ懸垂碍子は、空気中の浮遊粉塵が極めて多い設置場所での、耐電圧特性の低下防止にとって極めて有効である。
【0018】
また、本発明に係る外ひだ懸垂碍子においては、第2には、碍子本体の内周面における特定の部位に設けた導電域と抵抗域との共同作用により、汚損耐電圧特性を向上させてフラッシオーバの発生を防止することができる。このため、当該外ひだ懸垂碍子は、空気中における浮遊粉塵の多少の如何に関わらず、海水塩分や、付着し易い微粒状の汚損物を多く含有する排煙の多い設置場所での、汚損耐電圧特性の向上と、これに起因するフラッシオーバの発生防止にとって極めて有効である。
【0019】
上記した第2の作用効果を奏するために最も重要なことは、碍子本体の内周面に設ける導電域と、碍子本体の頭部に嵌着しているキャップ金具との位置関係である。具体的には、導電域は、碍子本体の内周面では、導電域の内周縁がキャップ金具の外周縁に対応する部位より外周側に位置させることが必要である。導電域がこのような位置関係にない場合には、上記した第2の作用効果が奏し得ないことを確認している。
【0020】
なお、碍子本体における内周面の特定の部位に、導電域と抵抗域を設けることによって、碍子本体が外ひだ型である形式の外ひだ懸垂碍子に、上記した第2の作用効果が得られる理由については、本発明の「発明の実施の形態」の項で、本発明に係る外ひだ懸垂碍子を模式的に示す添付図面を利用して詳述するので、本項ではその詳細な説明を省略する。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明は、外ひだ懸垂碍子に関するもので、図1には、本発明の一実施形態に係る外ひだ懸垂碍子の一部縦断側面を示している。また、図2には、当該外ひだ懸垂碍子の底面を、接着剤であるポルトランドセメントを省略した状態で示している。
【0022】
当該外ひだ懸垂碍子は、碍子本体10と、キャップ金具20と、ピン金具30を備えている。碍子本体10は磁器製品であって、中央部に位置する頭部11と、頭部11の根元部から外側へ延びる円盤状の上笠部12と、上笠部12の下面の途中から下降傾斜して外側に延びる裾広がりの円錐状の下笠部13と、上笠部12と下笠部13の中間部からわずかに下降傾斜して外側に延びる円盤状の中間笠部14とからなる。
【0023】
当該碍子本体10においては、頭部11は頂部を有して下方に開口する筒体であり、また、上笠部12はほんのわずか下降傾斜して外側へ延びている。上笠部12の上面の下降傾斜角度は、4度〜15度の範囲で適宜に設定される。また、下笠部13は、上笠部12の下面の略中央部から下降傾斜して裾広がり状に延びている。下笠部13の上面の下降傾斜角度は、15度〜35度の範囲で適宜に設定される。また、中間笠部14は、下笠部13の上面の略中央部から下降傾斜して外側へ延びている。中間笠部14の下降傾斜角度は、上下両笠部12,13の中間の下降傾斜角度であって、5度〜20度の範囲で適宜に設定される。当該碍子本体10は、この状態では、頭部11の内周面に連続する内周面15を備えている。当該内周面15は、裾広がり状の曲面であって、凹凸のない円滑な面である。
【0024】
当該碍子本体10においては、頭部11の外周には、ポルトランドセメント16を介してキャップ金具20が嵌合している。キャップ金具20は、この嵌合状態で、ポルトランドセメント16を介して頭部11に嵌着している。また、頭部11の円形凹所には、ピン金具30がポルトランドセメント17を介して嵌合している。ピン金具20は、この嵌合状態で、ポルトランドセメント17を介して頭部11に嵌着して下方に所定長さ延びている。
【0025】
当該外ひだ懸垂碍子において、キャップ金具20は接地側金具であり、かつ、ピン金具30は課電側金具である。キャップ金具20は、図示しない直上の他の外ひだ懸垂碍子のピン金具30における下端部に嵌合して連結される。また、ピン金具30は、図示しない直下の他の外ひだ懸垂碍子のキャップ金具20における頭部凹所に嵌合して連結される。この状態で、各外ひだ懸垂碍子は互いに直列して連を構成する。
【0026】
当該碍子本体10においては、当該内周面15に、導電域を形成する導電帯18aと抵抗域を形成する抵抗帯18bが設けられている。導電帯18aの外周縁a1は、キャップ金具20の最外周縁に対応する部位bより外周側に位置している。抵抗帯18bは、碍子本体10の内周面15における導電帯18aの内周縁a2からセメント充填部までの全ての面に形成されている。
【0027】
導電帯18aを形成する方法としては、導電釉等の導電帯18aの形成材料への導電性粉末の添加量を増やして形成材料自体の抵抗を下げる方法や、碍子本体10の内周面15の所定部位に凹溝を形成して、同凹溝に形成材料を充填して導電層を厚くして抵抗を下げる方法等を採ることができる。抵抗帯18bの表面抵抗(1cm×1cm)は、4MΩ以下に設定されており、かつ、導電帯18aの表面抵抗(1cm×1cm)は、抵抗帯18bの表面抵抗の1/2以下に設定されている。
【0028】
かかる構成の当該外ひだ懸垂碍子においては、外ひだ型である形状および構造に起因して汚損物の付着およびその累積汚損を抑制し得て、耐電圧特性の低下を防止することができ、合わせて、碍子本体10の表面を流れる微弱電流を有効に利用して汚損耐電圧特性の向上を図ることができる。
【0029】
当該外ひだ懸垂碍子においては、特に、外ひだ型であるという特殊な形状および構造の懸垂碍子においても、汚損耐電圧特性の向上を図ることができる。汚損耐電圧特性の向上に関しては、碍子本体10の表面を流れる微弱電流によって、碍子本体10における汚損物による汚損部位の乾燥を促進させ、電位傾度を緩和させることによって、部分的に急峻な電界に起因する放電を防止することができ、これによって、汚損耐電圧特性が向上する。
【0030】
図3は、当該外ひだ懸垂碍子において、汚損耐電圧特性が向上するメカニズムを解析するために、当該外ひだ懸垂碍子を模式的に示した図面である。図3に示す各外ひだ懸垂碍子では、当該外ひだ懸垂碍子10における導電帯18aを環状電極a3として簡略的に表示し、かつ、抵抗帯18bを抵抗体a4として簡略表示している。従って、環状電極a3は導電帯18aと同等に機能するものと考慮し、また、抵抗体a4は抵抗帯18bと同等に機能するものと考慮して、以下での汚損耐電圧特性の向上メカニズムの解析では、導電帯18aを環状電極a3に置き換えかつ抵抗帯18bを抵抗体a4に置き換えて説明することとする。
【0031】
当該外ひだ懸垂碍子においては、碍子本体10における内周面の特定の部位に、特定の関係で導電帯18a(環状電極a3)と抵抗帯18b(抵抗体a4)を位置させることにより、碍子本体10の表面を流れる微弱電流の作用で、先ず第1に、碍子本体10の表面における電流密度が高いキャップ金具20の周辺部位G1や下笠部13の上笠部12に対する付根部位G2に乾燥帯(乾燥帯G1,G2ともいう)が形成される(図3aを参照)。
【0032】
碍子本体10における表面に乾燥帯G1,G2が形成されると、キャップ金具20の周辺部位G1や下笠部13の付根部位G2の熱(最高30℃〜35℃)が、碍子本体10における内周面の乾燥帯G1,G2に対応する部位G3に伝達される。この結果、碍子本体10においては、第2には、その内周面の当該部位G3が乾燥して乾燥帯G3となる(図3bを参照)。
【0033】
しかしながら、当該碍子本体10にこのような乾燥帯G3が形成された場合には、抵抗帯18b(抵抗体a4)がこれに並列する状態にあって、碍子本体10の内周面側では放電の発生には至らない。
【0034】
また、当該碍子本体10にこのような乾燥帯G3が形成された場合は、当該碍子本体10における放電は、電圧分担の高いキャップ金具20の周辺部位G1の近傍や下笠部13の付根部位G2の近傍で発生した場合(図3cの矢印参照)、導電帯18a(環状電極a3)とピン金具30間の抵抗帯18b(抵抗体a4)が直列に接続されているため、放電電流が抑制されて放電が進展し難い。
【0035】
当該外ひだ懸垂碍子においては、このようなメカニズムから、汚損耐電圧特性が向上しているものと推測される。当該汚損耐電圧特性の向上を図るためには、抵抗帯18bの表面抵抗(1cm×1cm)が4MΩ以下であることが必要であり、また、導電帯18aの外周縁a1はキャップ金具20の外周縁に対応する部位bより外周側に位置していることが必要である。この場合、導電帯18aの表面抵抗(1cm×1cm)は、抵抗帯18bの1/2以下とすることが好ましい。
【0036】
導電帯18aおよび抵抗帯18bは、環状電極a3および抵抗体a4と同等の機能を有するものであるが、導電帯18aおよび抵抗帯18bは環状電極a3および抵抗体a4に比較して、碍子本体10の内周面15側への配設が容易である。また、環状電極a3および抵抗体a4を導電帯18aおよび抵抗帯18bに置き換えることにより、これらの機能を一層的確に発揮させることができる。
【0037】
導電帯18aおよび抵抗帯18bの形成材料としては、酸化鉄系もしくは酸化錫系の導電釉、導電ゴムまたは導電樹脂を採用することができる。導電帯18aは、同一の形成材料を使用して抵抗体18bより厚く形成し、または、抵抗体18bの形成材料より導電性粉末の添加量が多い形成材料を使用して形成する。これによって、表面抵抗(1cm×1cm)が4MΩ以下の抵抗帯18b、および、表面抵抗(1cm×1cm)が抵抗帯18bの1/2以下の導電帯18aを容易に形成することができる。
【0038】
また、導電帯18aを抵抗帯18bより厚く形成するには、予め、碍子本体10における内周面15の所定の部位に、所定深さで所定幅の帯状の環状溝を設けておき、当該環状溝に上記した導電釉等の形成材料を充填状態に塗布することが好ましい。これにより、導電帯18aの導電層を、抵抗帯18bの抵抗層より厚く形成しても、導電帯18aおよび抵抗帯18b間は段差のない円滑な内周面となる。
【0039】
【実施例】
本実施例では、実施形態に係る外ひだ懸垂碍子と同一形状で、導電帯18aを環状電極a3に置き換え、抵抗帯18bを抵抗体a4に置き換えて形成した外ひだ懸垂碍子の5個連を懸垂吊りした状態で、環状電極a3の配設位置と汚損耐電圧特性との関係を確認する実験を試みた。
【0040】
(供試碍子):実験に供した外ひだ懸垂碍子は、碍子本体10における上笠部12の直径が340mm、下笠部13の直径が310mm、キャップ金具20における最外周の直径が120mmの大きさのものである。
【0041】
供試碍子は、碍子本体10の内周面15における直径120mmの部位に環状電極a3を配設して、これを470kΩの抵抗体a4でピン金具30に接続した碍子(供試碍子1)、碍子本体10の内周面15における直径210mmの部位に環状電極a3を配設して、これを800kΩの抵抗体a4でピン金具30に接続した碍子(供試碍子2)、碍子本体10の内周面15における直径290mmの部位に環状電極a3を配設して、これを800kΩの抵抗体a4でピン金具30に接続した碍子(供試碍子3)、碍子本体10の内周面15側には環状電極a3および抵抗体a4を配設していない本発明が適用対象とする通常の碍子(供試碍子4)の4種類とした。
【0042】
(各供試碍子の人工的汚損):各供試碍子については、2種類の汚損状態を人工的に形成した。汚損状態の第1は、上下面不平等汚損状態であって、碍子本体10における塩分付着密度については、上面および中間面を0.17mg/cmに、下側内周面を0.5mg/cmにし、また、不溶性物質付着密度については、上面および中間面を0.5mg/cmに、下側内周面を1.4mg/cmにした。汚損状態の第2は、上下面平等汚損状態であって、碍子本体10における塩分付着密度については0.5mg/cmとし、不溶性物質付着密度については1.4mg/cmとした。
【0043】
(耐電圧特性の試験):これらの外ひだ懸垂碍子の5個連を懸垂吊りにした状態で、交流電圧絶縁試験(電気学会、電気規格調査会標準規格JEC−0201)の定印霧中試験法に準じて汚損耐電圧を求めた。上下面不平等汚損条件での試験結果を表1に、平等汚損条件での試験結果を表2に示す。
【0044】
【表1】
Figure 2004288377
【0045】
【表2】
Figure 2004288377
【0046】
(試験結果の考察):表1を参照すると、上下面不平等汚損状態の碍子での耐電圧試験では、耐電圧手段のない供試碍子4(通常品)の耐電圧は78kVであり、また、環状電極a3が碍子本体10の内周面における直径120mmの部位にある供試碍子1の耐電圧もこれと略同等またはこれ以下である。これに対して、環状電極a3が碍子本体10の内周面における直径210mmの部位にある供試碍子2の耐電圧は104kVであって、供試碍子4である通常品の1.3倍である。また、環状電極a3が碍子本体10の内周面における直径290mmの部位にある供試碍子3の耐電圧は91kVであって、供試碍子1である通常品の1.2倍である。
【0047】
また、表2を参照すると、平等汚損状態の碍子での耐電圧試験では、通常品である供試碍子4の耐電圧は46.4kVである。これに対して、供試碍子2の耐電圧は92.7kV(通常品の2倍)であり、供試碍子3の耐電圧は77.1kV(通常品の1.6倍)である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る外ひだ懸垂碍子の一部縦断側面図である。
【図2】同外ひだ懸垂碍子の底面図である。
【図3】本発明に係る外ひだ懸垂碍子の耐電圧向上メカニズムを解説するための碍子の模式図である。
【符号の説明】
10…碍子本体、20…キャップ金具、30…ピン金具、11…頭部、12…上笠部、13…下笠部、14…中間笠部、15…内周面、16,17…ポルトランドセメント、18a…導電帯、18b…抵抗帯、a3…環状電極、a4…抵抗体。

Claims (8)

  1. 碍子本体と、同碍子本体の頭部の外周に嵌着されているキャップ金具と、前記碍子本体の頭部の内側凹部に嵌着されているピン金具を備え、前記碍子本体は、前記頭部の根本から外側へ水平状またはわずかに下降傾斜して延びる円盤状の上笠部および同上笠部の下面の途中から下降傾斜して延びる裾広がりの円錐状の下笠部を有して、内周面が滑らかな曲面状または平面状を呈している外ひだ懸垂碍子であり、当該外ひだ懸垂碍子は、前記碍子本体の内周面に、前記キャップ金具の外周縁に対応する部位より外周側に環状の導電域と、同導電域から前記ピン金具へ延びる表面抵抗(1cm×1cm)が4MΩ以下の抵抗域を備えていることを特徴とする外ひだ懸垂碍子。
  2. 請求項1に記載の外ひだ懸垂碍子において、前記抵抗域は環状の抵抗帯であり、かつ、前記導電域は環状の導電帯であることを特徴とする外ひだ懸垂碍子。
  3. 請求項1または2に記載の外ひだ懸垂碍子において、前記導電域の表面抵抗が前記抵抗域の1/2以下であることを特徴とする外ひだ懸垂碍子。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の外ひだ懸垂碍子において、前記抵抗域は、碍子本体の下笠部の内周面におけるピン金具の部位とキャップ金具の外周縁に対応する部位間に位置していることを特徴とする外ひだ懸垂碍子。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の外ひだ懸垂碍子において、碍子本体が有する抵抗域の形成材料は、酸化鉄系もしくは酸化錫系の導電釉、導電ゴム、または導電樹脂であることを特徴とする外ひだ懸垂碍子。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の外ひだ懸垂碍子において、碍子本体が有する導電域の形成材料は、金属、低抵抗の酸化鉄系もしくは酸化錫系の導電釉、導電ゴム、または導電樹脂であることを特徴とする外ひだ懸垂碍子。
  7. 請求項5または6に記載の外ひだ懸垂碍子において、前記碍子本体が有する導電域および抵抗域は同一の導電釉、導電ゴム、または導電樹脂で形成されていて、前記導電域の厚みが前記抵抗域の厚みより厚く形成されていることを特徴とする外ひだ懸垂碍子。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の外ひだ懸垂碍子において、碍子本体が有する導電域は、同記碍子本体の内周面における所定の部位に設けた環状の溝部に、前記導電域の形成材料である導電釉、導電ゴム、または導電樹脂を充填することにより形成されていることを特徴する外ひだ懸垂碍子。
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