JP2004286043A - 動力伝達装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の確保あるいは増大、騒音や振動の低減等、使用用途によって様々な態様の設計が可能な動力伝達装置を提供する。
【解決手段】入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置300において、該動力伝達装置300の動力伝達機構を、入力軸302と出力軸306との間に配置され、僅少の歯数差を有する外歯歯車102及び内歯歯車104を備えた内接噛合遊星歯車機構100で構成すると共に、前記内歯歯車104と該内歯歯車104の内側で内接噛合する前記外歯歯車102との噛合態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路を、前記動力伝達機構内に並列に備えた。
【選択図】 図1
【解決手段】入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置300において、該動力伝達装置300の動力伝達機構を、入力軸302と出力軸306との間に配置され、僅少の歯数差を有する外歯歯車102及び内歯歯車104を備えた内接噛合遊星歯車機構100で構成すると共に、前記内歯歯車104と該内歯歯車104の内側で内接噛合する前記外歯歯車102との噛合態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路を、前記動力伝達機構内に並列に備えた。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンベア等に適用される動力伝達装置に関し、特に、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の確保あるいは増大、騒音や振動の低減等、使用用途によって様々な態様の設計が可能な動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置が多く知られており、これら動力伝達装置は、コンベアや生ごみ処理機の駆動等の用途に幅広く適用されている。このような動力伝達装置の一つとして、例えば特許文献1に示すような内接噛合遊星歯車減速機が提案されている。
【0003】
ところで、このような動力伝達装置がコンベアの駆動用途に適用された場合を例にとると、動力伝達装置は、特にコンベアの起動時や大きな搬送物を搬送する際に大きな反作用トルクをうけるため、このようなコンベアの起動時や加速時等の中・重負荷時には伝達容量の確保が特に要求される。一方、コンベアが一度起動され、定常運転状態になった場合には、コンベア起動時等の半分にも満たない小さな伝達容量があればコンベアを駆動可能であり、このような無・軽負荷時には伝達容量の確保よりも、低騒音化、低振動化が要求される。
【0004】
【特許文献1】
特公昭58−42382号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の内接噛合遊星歯車減速機は、トロコイド系歯形歯車を採用しているため、インボリュート系歯形歯車等に比べ、内歯歯車と外歯歯車との噛合い本数が理論上多くなる。そのため、相手機械を駆動するのに必要な出力トルクが小さい無・軽負荷領域においては、トルク伝達に必要な弾性変形量が各部の隙間や、加工誤差、組立て誤差よりも相対的に小さくなることがあり、内歯歯車と外歯歯車との噛合い本数が、トルク変動に伴う弾性変形量の大小によって変化しやすくなる。従って、このような無・軽負荷領域においては、僅かなトルク変化が噛合いの変化となり、騒音・振動の変動や増大が生じやすくなってしまうといった問題があった。
【0006】
一方、このような問題を解消する一手段として、内接噛合遊星歯車減速機を構成する部材を、弾性係数の低い(弾性変形量の大きい)樹脂やアルミ等の材料で製作することも考えられる。しかしながら、一般に弾性係数の低い材料は硬度や強度が低いため、減速機全体の剛性が低く(伝達容量が低く)なりやすい。従って、中・重負荷時に必要なトルクを十分に得ることができない上に、剛性を確保するためには装置を大型化せざるを得ず、材料のコストが高くなってしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであって、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の確保あるいは増大、騒音や振動の低減等、使用用途によって様々な態様の設計が可能な動力伝達装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置において、該動力伝達装置の動力伝達機構を、入力軸と出力軸との間に配置され、僅少の歯数差を有する外歯歯車及び内歯歯車を備えた内接噛合遊星歯車機構で構成すると共に、前記内歯歯車と該内歯歯車の内側で内接噛合する前記外歯歯車との噛合態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路を、前記動力伝達機構内に並列に備えたことにより、上記課題を解決したものである。
【0009】
なお、「動力伝達経路を動力伝達機構内に並列に備える」とは、動力伝達機構内に、動力の伝達され得る経路を2つ備えていることを意味する。ちなみに、「動力伝達経路を直列に備える」とは、ある系路を経た後に他の経路を通ることをいう。
【0010】
本発明によれば、動力伝達装置に入力される動力を、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路を介して、相手機械に伝達することが可能となり、組み合わせる動力伝達系路の各々の特性によって、動力伝達装置全体の特性を変えることができる。従って、伝達容量の確保あるいは増大、騒音や振動の低減等、使用用途によって様々な態様の設計が可能な動力伝達装置が提供可能である。
【0011】
なお、本発明では、具体的にどのようにして前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様に差異を持たせるかについては特に限定されず、種々の方法が採用できる。
【0012】
例えば、前記内歯歯車の複数の内歯を、剛性の相異なる第1の内歯と第2の内歯との2種の内歯で構成することによって前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様の差異を具現してもよく、又、前記第1、第2の内歯の材質を相異ならせることによって該第1、第2の内歯の剛性の差異を具現してもよく、更には、前記第1、第2の内歯の一方を略円柱形状とすると共に、他方を略円筒形状とすることによって該第1、第2の内歯の剛性の差異を具現してもよい。
【0013】
更に、前記内歯歯車の複数の内歯を、第1の内歯と第2の内歯との2種の内歯で構成すると共に、該第1、第2の内歯と前記外歯歯車との隙間にそれぞれ差異を持たせることによって、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様の差異を具現してもよい。なお、この場合において、前記第1、第2の内歯の剛性が異なる場合には、剛性の低い方の内歯と前記外歯歯車との隙間を、剛性の高い方の内歯と前記外歯歯車との隙間よりも小さくことが望ましい。
【0014】
又、前記内歯歯車の複数の内歯を、第1の内歯と第2の内歯との2種の内歯で構成すると共に、該第1、第2の内歯と前記外歯歯車との接触面積にそれぞれ差異を持たせることによって、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様の差異を具現してもよい。なお、この場合において、前記第1、第2の内歯の剛性が異なる場合には、剛性の低い方の内歯と前記外歯歯車との接触面積を、剛性の高い方の内歯と前記外歯歯車との接触面積よりも大きくすることが望ましい。
【0015】
これらの第1、第2の内歯は、前記内歯歯車の内周面に交互に配置するとよい。これにより、動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路を、動力伝達装置内にバランスよく並列に配置することができ、より高い効果を得ることが出来る。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態の例に係る動力伝達装置300を適用したギヤドモータ500の部分側断面図である。
【0018】
このギヤドモータ500は、モータ400(一部のみ図示)と、該モータ400に連結・一体化された動力伝達装置300とを備えている。
【0019】
該動力伝達装置300は、入力軸(モータ400のモータ軸)302と、出力軸306と、内接噛合遊星歯車機構100と、を備えている。この動力伝達装置300は、モータ400から入力される動力を、前記内接噛合遊星歯車機構100及び出力軸306を介して、相手機械(図示略)に伝達が可能である。
【0020】
前記入力軸302は、軸受330、332によって回転自在に両持ち支持されており、軸心L1を中心に回転可能である。
【0021】
前記出力軸306は、軸受334、336によって回転自在に支持されており、前記入力軸302と同じ軸心L1を中心に回転可能である。
【0022】
又、これら入力軸302及び出力軸306の間には、内接噛合遊星歯車機構100が配置されている。
【0023】
図2は、図1中におけるII−II線に沿う断面図であり、内接噛合遊星歯車機構100の断面を示したものである。
【0024】
図1、図2に示すように、内接噛合遊星歯車機構100は、外歯歯車102と、この外歯歯車102と僅少の歯数差を有する内歯歯車104と、偏心体106と、ころ軸受110とを備えている。
【0025】
該偏心体106は、入力軸302の軸心L1に対して偏心した外周を有しており、入力軸302の軸受330、332間の外周に設けられている。
【0026】
前記内歯歯車104は、図3に拡大して示すように、ケーシング312の内周面に複数形成された円弧溝312aに第1の外ピン(以下、単に第1外ピンと称す。)104a及び第2の外ピン(以下、単に第2外ピンと称す。)104bがそれぞれ嵌合した構造になっている。即ち、これら2種の第1、第2外ピン104a、104bがそれぞれ内歯歯車104の複数の内歯を形成している。なお、この例では、第1、第2外ピン104a、104bは、各18個ずつ、内歯歯車104の内周面に交互に配置されている。
【0027】
該第1外ピン104aは、中空部104a1を有する略円筒形状の部材からなり、該第1外ピン104aの外径は、前記円弧溝312aの内径と略同一寸法である。又、該第1外ピン104aは、後述する第2外ピン104bに比べ弾性係数の低い材料で製作されており、この例では、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックが材料として用いられている。
【0028】
一方、前記第2外ピン104bは、略円柱形状の部材からなり、該第2外ピン104bの外径は、前記第1外ピン104aよりもやや小径、すなわち前記円弧溝312aの内径よりもやや小径に設計されている。又、該第2外ピン104bは、第1外ピン104aに比べ弾性係数の高い材料で製作されており、この例では、軸受鋼が材料として用いられている。
【0029】
この結果、これら第1、2外ピン104a、104bと後述する外歯歯車102との隙間S1、S2、及び該第1、2外ピン104a、104bと外歯歯車102との接触面積A1、A2にはそれぞれ差異が持たされている。具体的には、第1外ピン104aと外歯歯車102との隙間S1は、第2外ピン104bと外歯歯車102との隙間S2よりも小さくなっている。又、第1外ピン104aと外歯歯車102との接触面積A1は、第2外ピン104bと外歯歯車102との接触面積A2よりも大きくなっている。なお、図3に図示する隙間S1、S2及び接触面積A1、A2は、説明の都度上、誇張して示されており、実際の寸法とは異なるものである。
【0030】
図1、2に戻って、前記外歯歯車102は、外周にトロコイド歯形や円弧歯形等の外歯を有しており、前記内歯歯車104の第1、第2外ピン104a、104bとそれぞれ内接噛合している。又、該外歯歯車102は、該外歯歯車102と偏心体106の間に設けられたころ軸受110を介して偏心体106に嵌合され、該偏心体106の回転に伴って揺動回転可能である。更に、外歯歯車102には内ローラ孔102aが複数個設けられ、内ピン308及び内ローラ310が、各ローラ孔102aに挿嵌されている。なお、図1に示すように、内ピン308の一端308aは、前記出力軸306によって片持ち支持されており、該内ピン308を介して外歯歯車102の自転成分を出力軸306に伝達可能である。
【0031】
このように、動力伝達装置300は、一見一系統の動力伝達経路しか有していないように見えるものの、実は、入力軸302→偏心体106→第1外ピン104aによって動力伝達特性が規定される外歯歯車102→内ピン308→出力軸306という第1の動力伝達経路(以下、単に第1動力伝達経路と称す。)と、入力軸302→偏心体106→第2外ピン104bによって動力伝達特性が規定される外歯歯車102→内ピン308→出力軸306という第2の動力伝達経路(以下、単に第2動力伝達経路と称す。)を並列に備えている(後述)。
【0032】
次に、動力伝達装置300の作用について説明する。
【0033】
モータ400に通電すると、入力軸302が軸心L1を中心に回転し、該入力軸302の外周に設けられた偏心体106が回転する。該偏心体106の回転により、外歯歯車102も入力軸302の周りで揺動回転を行おうとするが、第1、第2外ピン104a、104bからなる内歯歯車104によってその自転が拘束されているため、外歯歯車102は、内歯歯車104に内接しながらほとんど揺動のみを行うことになる。
【0034】
この外歯歯車102の回転は、内ピン孔102a及び内ピン308によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが出力軸306を介して相手機械へと伝達される。
【0035】
本発明の実施形態の例における動力伝達装置300では、動力伝達装置300に入力される動力を、前記内歯歯車104と前記外歯歯車102との噛合態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路(第1、第2動力伝達経路)を介して相手機械に伝達することが可能となる。従って、組み合わせる第1、第2動力伝達系路の各々の特性によって、動力伝達装置300全体の特性を変えることができる。
【0036】
具体的には、動力伝達装置300においては、第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との接触面積A1、A2にそれぞれ差異を持たせることによって、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異を設けている。
【0037】
即ち、第1外ピン104aと外歯歯車102との接触面積A1を、第2外ピン104bと外歯歯車102との接触面積A2よりも大きくしているため、第1外ピン104aと外歯歯車102とは安定した噛合いが可能であり、駆動時、特に軽負荷時における低騒音化、低振動化の実現が比較的容易である。一方、第2外ピン104bと外歯歯車102との接触面積A2は、第1外ピン104aと外歯歯車102との接触面積A1よりも小さいため、外歯歯車102の回転抵抗が小さく(回転効率が高く)、伝達容量の増大が可能となる。
【0038】
又、第1外ピン104aは、第2外ピン104bに比べ弾性係数の低い材料で製作されており、第1、第2外ピン104a、104bの材質を相異ならせることによっても、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異が設けられている。更に、第1外ピン104aは、中空部104a1を有する略円筒形状の部材であるのに対して、前記第2外ピン104bは、略円柱形状の部材であり、第1、第2外ピン104a、104bの形状を相異ならせることによっても、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異が設けられている。
【0039】
このように第1、第2外ピン104a、104bの材質及び形状に差異を設けているため、弾性係数が低く、略円筒形の形状を有する第1外ピン104aは、全体的に伝達トルクに対する変形量が大きい(剛性が低く、撓み易い)のに対して、弾性係数が高く、略円柱形状の形状を有する第2外ピン104bは、全体的に伝達トルクに対する変形量が小さい(剛性が高く、撓み難い)。
【0040】
更に、第1外ピン104aと外歯歯車102との隙間S1を、第2外ピン104bと外歯歯車102との隙間S2よりも小さく設計することによっても、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異が設けられている。
【0041】
このように第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との隙間S1、S2に差異を設けているため、外歯歯車102との隙間S1が小さい第1外ピン104aは、外歯歯車102の動きに対する反応、ひいては入力軸302や出力軸306の動き(トルクの変動)に対する反応が早いという特性を有する。
一方、外歯歯車102との隙間S2が大きい第2外ピン104bは、入力軸302及び出力軸306の双方の動き(トルクの変動)に対して反応が遅いという特性を有する。
【0042】
つまり、動力伝達装置300は、騒音や振動が少なく、剛性が低く(伝達容量が小さく)、トルク変動に対して反応が早い第1動力伝達経路と、回転抵抗が小さく(効率が高く)、剛性が高く(伝達容量が大きく)、トルク変動に対して反応が遅い第2動力伝達経路という動力伝達特性を相異ならせた2つの動力伝達経路を、同一の動力伝達装置300内に並列に備えていることになる。従って、動力伝達装置300に入力される動力は、起動当初は、入力軸302→偏心体106→第1外ピン104aによって動力伝達特性が規定される外歯歯車102→内ピン308→出力軸306という第1動力伝達経路を介して相手機械に動力が伝達され、その後は、入力軸302→偏心体106→第2外ピン104bによって動力伝達特性が規定される外歯歯車102→内ピン308→出力軸306という第2動力伝達経路を介して相手機械に伝達される。
【0043】
より具体的に説明すると、まず動力伝達装置300の起動直後には、トルク変動(入力軸302の動き)に対して反応が早い第1動力伝達経路がいち早く反応するため、主として第1動力伝達経路によって動力の伝達が行われる。そして、作用するトルクが未だ小さい起動直後、及び定常運転となって再び軽負荷となったときにおいては、この第1動力伝達経路が動力伝達を行う。これにより、低騒音、低振動での動力伝達が可能である。
【0044】
一方、第1動力伝達経路における第1外ピン104aは、第2動力伝達経路における第2外ピン104bに比べ剛性が低いため、起動後、作用するトルクが立ち上がって来た時や、加速時、中・重負荷時においては、その反力を支えきれなくなり、第1動力伝達経路は動力伝達をしなくなる。即ち、このような状態では、より剛性の高い第2動力伝達経路の方が主として動力の伝達を行うことになり、伝達容量の確保が可能である。しかも、第2動力伝達経路は、第1動力伝達経路に比べ回転効率が高い(回転抵抗が小さい)ため、動力伝達装置300全体の回転効率の向上を図ることができ、熱負荷も軽減できる。
【0045】
なお、本発明では、具体的にどのようにして内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異を持たせるかについては特に限定されず、種々の方法が採用できる。
【0046】
上記実施形態の例においては、前記第1、第2外ピン104a、104bの剛性の差異を大きくするため、弾性係数の低い材料で製作された第1外ピン104aを、中空部104a1を有する略円筒形状の部材としたが、本発明はこれに限定されるものではない。従って、例えば、図4に示すように、同形状の第1、第2外ピン154a、154bの材質のみを変えることによって、該第1、第2外ピン154a、154bの剛性の差異を具現してもよく、又、他の方法によって剛性の差異を具現してもよい。
【0047】
又、上記実施形態においては、第1外ピン104aの材料としてポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックを適用する一方で、第2外ピン104bの材料として軸受鋼を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1外ピン104aにアルミ等の材料を適用してもよい。
【0048】
更に、第1、第2外ピン104a、104bを、各18個ずつ、内歯歯車104の内周面に交互に配置したが、第1、第2外ピンの本数や配置等はこれに限定されるものではない。
【0049】
上記実施形態においては、第1、第2外ピン104a、104bの剛性、第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との隙間、第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との接触面積、の全てに差異を持たせ、それぞれの相乗効果によって効果の増大を実現したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
従って、例えば、第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との隙間S1、S2のみに差異を持たせることによって、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様の差異を具現してもよい。
【0051】
この場合、軽負荷時には、隙間S1の小さい(バックラッシ量の小さい)第1動力伝達経路が最初に立ち上がる;その後、トルクが立ち上がってくると、第1外ピン104aにかかる負荷(反力)が増大し、第1外ピン104aが反力を支えきれず大きく変形する;そして、隙間S2の大きい(バックラッシ量の大きい)第2動力伝達経路の第2外ピン104bが外歯歯車102と接触するようになり、第2動力伝達経路も動力伝達を行う;というような構成とする。このような構成により、中・高負荷時には、第1動力伝達経路の第1外ピン104a及び第2動力伝達経路の第2外ピン104b双方によってトルク伝達を行うため、伝達容量の確保が可能となり、その一方で、低バックラッシを実現できる。又、第2外ピン104bは隙間S2が狭く設定されているわけではないので、特に軽負荷時の回転の円滑性、低騒音性も実現できる。
【0052】
なお、同様に、第1、第2外ピン104a、104bの剛性のみ、あるいは第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との接触面積のみに差異を持たせることによって、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様の差異を具現してもよい。又、表面粗さ等の更に他の要素によって噛合態様の差異を具現してもよい。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の確保あるいは増大、騒音や振動の低減等、使用用途によって様々な態様の設計が可能な動力伝達装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の例に係る動力伝達装置の側断面図
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図
【図3】図2中のIIIで示す内歯歯車の一部分の拡大図
【図4】本発明の実施形態の他の例に係る動力伝達装置の側断面図
【符号の説明】
100、150…内接噛合遊星歯車機構
102…外歯歯車
102a…内ピン孔
104…内歯歯車
104a、154a…第1外ピン
104b、154b…第2外ピン
106…偏心体
110…ころ軸受
300…動力伝達装置
302…入力軸
306…出力軸
308…内ピン
312…ケーシング
330、332、334、336…軸受
400…モータ
500…ギヤドモータ
S1、S2…隙間
A1、A2…接触面積
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンベア等に適用される動力伝達装置に関し、特に、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の確保あるいは増大、騒音や振動の低減等、使用用途によって様々な態様の設計が可能な動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置が多く知られており、これら動力伝達装置は、コンベアや生ごみ処理機の駆動等の用途に幅広く適用されている。このような動力伝達装置の一つとして、例えば特許文献1に示すような内接噛合遊星歯車減速機が提案されている。
【0003】
ところで、このような動力伝達装置がコンベアの駆動用途に適用された場合を例にとると、動力伝達装置は、特にコンベアの起動時や大きな搬送物を搬送する際に大きな反作用トルクをうけるため、このようなコンベアの起動時や加速時等の中・重負荷時には伝達容量の確保が特に要求される。一方、コンベアが一度起動され、定常運転状態になった場合には、コンベア起動時等の半分にも満たない小さな伝達容量があればコンベアを駆動可能であり、このような無・軽負荷時には伝達容量の確保よりも、低騒音化、低振動化が要求される。
【0004】
【特許文献1】
特公昭58−42382号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の内接噛合遊星歯車減速機は、トロコイド系歯形歯車を採用しているため、インボリュート系歯形歯車等に比べ、内歯歯車と外歯歯車との噛合い本数が理論上多くなる。そのため、相手機械を駆動するのに必要な出力トルクが小さい無・軽負荷領域においては、トルク伝達に必要な弾性変形量が各部の隙間や、加工誤差、組立て誤差よりも相対的に小さくなることがあり、内歯歯車と外歯歯車との噛合い本数が、トルク変動に伴う弾性変形量の大小によって変化しやすくなる。従って、このような無・軽負荷領域においては、僅かなトルク変化が噛合いの変化となり、騒音・振動の変動や増大が生じやすくなってしまうといった問題があった。
【0006】
一方、このような問題を解消する一手段として、内接噛合遊星歯車減速機を構成する部材を、弾性係数の低い(弾性変形量の大きい)樹脂やアルミ等の材料で製作することも考えられる。しかしながら、一般に弾性係数の低い材料は硬度や強度が低いため、減速機全体の剛性が低く(伝達容量が低く)なりやすい。従って、中・重負荷時に必要なトルクを十分に得ることができない上に、剛性を確保するためには装置を大型化せざるを得ず、材料のコストが高くなってしまうといった問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題を解消するためになされたものであって、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の確保あるいは増大、騒音や振動の低減等、使用用途によって様々な態様の設計が可能な動力伝達装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置において、該動力伝達装置の動力伝達機構を、入力軸と出力軸との間に配置され、僅少の歯数差を有する外歯歯車及び内歯歯車を備えた内接噛合遊星歯車機構で構成すると共に、前記内歯歯車と該内歯歯車の内側で内接噛合する前記外歯歯車との噛合態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路を、前記動力伝達機構内に並列に備えたことにより、上記課題を解決したものである。
【0009】
なお、「動力伝達経路を動力伝達機構内に並列に備える」とは、動力伝達機構内に、動力の伝達され得る経路を2つ備えていることを意味する。ちなみに、「動力伝達経路を直列に備える」とは、ある系路を経た後に他の経路を通ることをいう。
【0010】
本発明によれば、動力伝達装置に入力される動力を、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路を介して、相手機械に伝達することが可能となり、組み合わせる動力伝達系路の各々の特性によって、動力伝達装置全体の特性を変えることができる。従って、伝達容量の確保あるいは増大、騒音や振動の低減等、使用用途によって様々な態様の設計が可能な動力伝達装置が提供可能である。
【0011】
なお、本発明では、具体的にどのようにして前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様に差異を持たせるかについては特に限定されず、種々の方法が採用できる。
【0012】
例えば、前記内歯歯車の複数の内歯を、剛性の相異なる第1の内歯と第2の内歯との2種の内歯で構成することによって前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様の差異を具現してもよく、又、前記第1、第2の内歯の材質を相異ならせることによって該第1、第2の内歯の剛性の差異を具現してもよく、更には、前記第1、第2の内歯の一方を略円柱形状とすると共に、他方を略円筒形状とすることによって該第1、第2の内歯の剛性の差異を具現してもよい。
【0013】
更に、前記内歯歯車の複数の内歯を、第1の内歯と第2の内歯との2種の内歯で構成すると共に、該第1、第2の内歯と前記外歯歯車との隙間にそれぞれ差異を持たせることによって、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様の差異を具現してもよい。なお、この場合において、前記第1、第2の内歯の剛性が異なる場合には、剛性の低い方の内歯と前記外歯歯車との隙間を、剛性の高い方の内歯と前記外歯歯車との隙間よりも小さくことが望ましい。
【0014】
又、前記内歯歯車の複数の内歯を、第1の内歯と第2の内歯との2種の内歯で構成すると共に、該第1、第2の内歯と前記外歯歯車との接触面積にそれぞれ差異を持たせることによって、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様の差異を具現してもよい。なお、この場合において、前記第1、第2の内歯の剛性が異なる場合には、剛性の低い方の内歯と前記外歯歯車との接触面積を、剛性の高い方の内歯と前記外歯歯車との接触面積よりも大きくすることが望ましい。
【0015】
これらの第1、第2の内歯は、前記内歯歯車の内周面に交互に配置するとよい。これにより、動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路を、動力伝達装置内にバランスよく並列に配置することができ、より高い効果を得ることが出来る。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の例を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態の例に係る動力伝達装置300を適用したギヤドモータ500の部分側断面図である。
【0018】
このギヤドモータ500は、モータ400(一部のみ図示)と、該モータ400に連結・一体化された動力伝達装置300とを備えている。
【0019】
該動力伝達装置300は、入力軸(モータ400のモータ軸)302と、出力軸306と、内接噛合遊星歯車機構100と、を備えている。この動力伝達装置300は、モータ400から入力される動力を、前記内接噛合遊星歯車機構100及び出力軸306を介して、相手機械(図示略)に伝達が可能である。
【0020】
前記入力軸302は、軸受330、332によって回転自在に両持ち支持されており、軸心L1を中心に回転可能である。
【0021】
前記出力軸306は、軸受334、336によって回転自在に支持されており、前記入力軸302と同じ軸心L1を中心に回転可能である。
【0022】
又、これら入力軸302及び出力軸306の間には、内接噛合遊星歯車機構100が配置されている。
【0023】
図2は、図1中におけるII−II線に沿う断面図であり、内接噛合遊星歯車機構100の断面を示したものである。
【0024】
図1、図2に示すように、内接噛合遊星歯車機構100は、外歯歯車102と、この外歯歯車102と僅少の歯数差を有する内歯歯車104と、偏心体106と、ころ軸受110とを備えている。
【0025】
該偏心体106は、入力軸302の軸心L1に対して偏心した外周を有しており、入力軸302の軸受330、332間の外周に設けられている。
【0026】
前記内歯歯車104は、図3に拡大して示すように、ケーシング312の内周面に複数形成された円弧溝312aに第1の外ピン(以下、単に第1外ピンと称す。)104a及び第2の外ピン(以下、単に第2外ピンと称す。)104bがそれぞれ嵌合した構造になっている。即ち、これら2種の第1、第2外ピン104a、104bがそれぞれ内歯歯車104の複数の内歯を形成している。なお、この例では、第1、第2外ピン104a、104bは、各18個ずつ、内歯歯車104の内周面に交互に配置されている。
【0027】
該第1外ピン104aは、中空部104a1を有する略円筒形状の部材からなり、該第1外ピン104aの外径は、前記円弧溝312aの内径と略同一寸法である。又、該第1外ピン104aは、後述する第2外ピン104bに比べ弾性係数の低い材料で製作されており、この例では、ポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックが材料として用いられている。
【0028】
一方、前記第2外ピン104bは、略円柱形状の部材からなり、該第2外ピン104bの外径は、前記第1外ピン104aよりもやや小径、すなわち前記円弧溝312aの内径よりもやや小径に設計されている。又、該第2外ピン104bは、第1外ピン104aに比べ弾性係数の高い材料で製作されており、この例では、軸受鋼が材料として用いられている。
【0029】
この結果、これら第1、2外ピン104a、104bと後述する外歯歯車102との隙間S1、S2、及び該第1、2外ピン104a、104bと外歯歯車102との接触面積A1、A2にはそれぞれ差異が持たされている。具体的には、第1外ピン104aと外歯歯車102との隙間S1は、第2外ピン104bと外歯歯車102との隙間S2よりも小さくなっている。又、第1外ピン104aと外歯歯車102との接触面積A1は、第2外ピン104bと外歯歯車102との接触面積A2よりも大きくなっている。なお、図3に図示する隙間S1、S2及び接触面積A1、A2は、説明の都度上、誇張して示されており、実際の寸法とは異なるものである。
【0030】
図1、2に戻って、前記外歯歯車102は、外周にトロコイド歯形や円弧歯形等の外歯を有しており、前記内歯歯車104の第1、第2外ピン104a、104bとそれぞれ内接噛合している。又、該外歯歯車102は、該外歯歯車102と偏心体106の間に設けられたころ軸受110を介して偏心体106に嵌合され、該偏心体106の回転に伴って揺動回転可能である。更に、外歯歯車102には内ローラ孔102aが複数個設けられ、内ピン308及び内ローラ310が、各ローラ孔102aに挿嵌されている。なお、図1に示すように、内ピン308の一端308aは、前記出力軸306によって片持ち支持されており、該内ピン308を介して外歯歯車102の自転成分を出力軸306に伝達可能である。
【0031】
このように、動力伝達装置300は、一見一系統の動力伝達経路しか有していないように見えるものの、実は、入力軸302→偏心体106→第1外ピン104aによって動力伝達特性が規定される外歯歯車102→内ピン308→出力軸306という第1の動力伝達経路(以下、単に第1動力伝達経路と称す。)と、入力軸302→偏心体106→第2外ピン104bによって動力伝達特性が規定される外歯歯車102→内ピン308→出力軸306という第2の動力伝達経路(以下、単に第2動力伝達経路と称す。)を並列に備えている(後述)。
【0032】
次に、動力伝達装置300の作用について説明する。
【0033】
モータ400に通電すると、入力軸302が軸心L1を中心に回転し、該入力軸302の外周に設けられた偏心体106が回転する。該偏心体106の回転により、外歯歯車102も入力軸302の周りで揺動回転を行おうとするが、第1、第2外ピン104a、104bからなる内歯歯車104によってその自転が拘束されているため、外歯歯車102は、内歯歯車104に内接しながらほとんど揺動のみを行うことになる。
【0034】
この外歯歯車102の回転は、内ピン孔102a及び内ピン308によってその揺動成分が吸収され、自転成分のみが出力軸306を介して相手機械へと伝達される。
【0035】
本発明の実施形態の例における動力伝達装置300では、動力伝達装置300に入力される動力を、前記内歯歯車104と前記外歯歯車102との噛合態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路(第1、第2動力伝達経路)を介して相手機械に伝達することが可能となる。従って、組み合わせる第1、第2動力伝達系路の各々の特性によって、動力伝達装置300全体の特性を変えることができる。
【0036】
具体的には、動力伝達装置300においては、第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との接触面積A1、A2にそれぞれ差異を持たせることによって、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異を設けている。
【0037】
即ち、第1外ピン104aと外歯歯車102との接触面積A1を、第2外ピン104bと外歯歯車102との接触面積A2よりも大きくしているため、第1外ピン104aと外歯歯車102とは安定した噛合いが可能であり、駆動時、特に軽負荷時における低騒音化、低振動化の実現が比較的容易である。一方、第2外ピン104bと外歯歯車102との接触面積A2は、第1外ピン104aと外歯歯車102との接触面積A1よりも小さいため、外歯歯車102の回転抵抗が小さく(回転効率が高く)、伝達容量の増大が可能となる。
【0038】
又、第1外ピン104aは、第2外ピン104bに比べ弾性係数の低い材料で製作されており、第1、第2外ピン104a、104bの材質を相異ならせることによっても、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異が設けられている。更に、第1外ピン104aは、中空部104a1を有する略円筒形状の部材であるのに対して、前記第2外ピン104bは、略円柱形状の部材であり、第1、第2外ピン104a、104bの形状を相異ならせることによっても、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異が設けられている。
【0039】
このように第1、第2外ピン104a、104bの材質及び形状に差異を設けているため、弾性係数が低く、略円筒形の形状を有する第1外ピン104aは、全体的に伝達トルクに対する変形量が大きい(剛性が低く、撓み易い)のに対して、弾性係数が高く、略円柱形状の形状を有する第2外ピン104bは、全体的に伝達トルクに対する変形量が小さい(剛性が高く、撓み難い)。
【0040】
更に、第1外ピン104aと外歯歯車102との隙間S1を、第2外ピン104bと外歯歯車102との隙間S2よりも小さく設計することによっても、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異が設けられている。
【0041】
このように第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との隙間S1、S2に差異を設けているため、外歯歯車102との隙間S1が小さい第1外ピン104aは、外歯歯車102の動きに対する反応、ひいては入力軸302や出力軸306の動き(トルクの変動)に対する反応が早いという特性を有する。
一方、外歯歯車102との隙間S2が大きい第2外ピン104bは、入力軸302及び出力軸306の双方の動き(トルクの変動)に対して反応が遅いという特性を有する。
【0042】
つまり、動力伝達装置300は、騒音や振動が少なく、剛性が低く(伝達容量が小さく)、トルク変動に対して反応が早い第1動力伝達経路と、回転抵抗が小さく(効率が高く)、剛性が高く(伝達容量が大きく)、トルク変動に対して反応が遅い第2動力伝達経路という動力伝達特性を相異ならせた2つの動力伝達経路を、同一の動力伝達装置300内に並列に備えていることになる。従って、動力伝達装置300に入力される動力は、起動当初は、入力軸302→偏心体106→第1外ピン104aによって動力伝達特性が規定される外歯歯車102→内ピン308→出力軸306という第1動力伝達経路を介して相手機械に動力が伝達され、その後は、入力軸302→偏心体106→第2外ピン104bによって動力伝達特性が規定される外歯歯車102→内ピン308→出力軸306という第2動力伝達経路を介して相手機械に伝達される。
【0043】
より具体的に説明すると、まず動力伝達装置300の起動直後には、トルク変動(入力軸302の動き)に対して反応が早い第1動力伝達経路がいち早く反応するため、主として第1動力伝達経路によって動力の伝達が行われる。そして、作用するトルクが未だ小さい起動直後、及び定常運転となって再び軽負荷となったときにおいては、この第1動力伝達経路が動力伝達を行う。これにより、低騒音、低振動での動力伝達が可能である。
【0044】
一方、第1動力伝達経路における第1外ピン104aは、第2動力伝達経路における第2外ピン104bに比べ剛性が低いため、起動後、作用するトルクが立ち上がって来た時や、加速時、中・重負荷時においては、その反力を支えきれなくなり、第1動力伝達経路は動力伝達をしなくなる。即ち、このような状態では、より剛性の高い第2動力伝達経路の方が主として動力の伝達を行うことになり、伝達容量の確保が可能である。しかも、第2動力伝達経路は、第1動力伝達経路に比べ回転効率が高い(回転抵抗が小さい)ため、動力伝達装置300全体の回転効率の向上を図ることができ、熱負荷も軽減できる。
【0045】
なお、本発明では、具体的にどのようにして内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様に差異を持たせるかについては特に限定されず、種々の方法が採用できる。
【0046】
上記実施形態の例においては、前記第1、第2外ピン104a、104bの剛性の差異を大きくするため、弾性係数の低い材料で製作された第1外ピン104aを、中空部104a1を有する略円筒形状の部材としたが、本発明はこれに限定されるものではない。従って、例えば、図4に示すように、同形状の第1、第2外ピン154a、154bの材質のみを変えることによって、該第1、第2外ピン154a、154bの剛性の差異を具現してもよく、又、他の方法によって剛性の差異を具現してもよい。
【0047】
又、上記実施形態においては、第1外ピン104aの材料としてポリアセタール等のエンジニアリングプラスチックを適用する一方で、第2外ピン104bの材料として軸受鋼を適用したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、第1外ピン104aにアルミ等の材料を適用してもよい。
【0048】
更に、第1、第2外ピン104a、104bを、各18個ずつ、内歯歯車104の内周面に交互に配置したが、第1、第2外ピンの本数や配置等はこれに限定されるものではない。
【0049】
上記実施形態においては、第1、第2外ピン104a、104bの剛性、第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との隙間、第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との接触面積、の全てに差異を持たせ、それぞれの相乗効果によって効果の増大を実現したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
従って、例えば、第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との隙間S1、S2のみに差異を持たせることによって、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様の差異を具現してもよい。
【0051】
この場合、軽負荷時には、隙間S1の小さい(バックラッシ量の小さい)第1動力伝達経路が最初に立ち上がる;その後、トルクが立ち上がってくると、第1外ピン104aにかかる負荷(反力)が増大し、第1外ピン104aが反力を支えきれず大きく変形する;そして、隙間S2の大きい(バックラッシ量の大きい)第2動力伝達経路の第2外ピン104bが外歯歯車102と接触するようになり、第2動力伝達経路も動力伝達を行う;というような構成とする。このような構成により、中・高負荷時には、第1動力伝達経路の第1外ピン104a及び第2動力伝達経路の第2外ピン104b双方によってトルク伝達を行うため、伝達容量の確保が可能となり、その一方で、低バックラッシを実現できる。又、第2外ピン104bは隙間S2が狭く設定されているわけではないので、特に軽負荷時の回転の円滑性、低騒音性も実現できる。
【0052】
なお、同様に、第1、第2外ピン104a、104bの剛性のみ、あるいは第1、第2外ピン104a、104bと外歯歯車102との接触面積のみに差異を持たせることによって、内歯歯車104と外歯歯車102との噛合態様の差異を具現してもよい。又、表面粗さ等の更に他の要素によって噛合態様の差異を具現してもよい。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、装置の小型化、省スペース化を実現しながら、同時に、伝達容量の確保あるいは増大、騒音や振動の低減等、使用用途によって様々な態様の設計が可能な動力伝達装置を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の例に係る動力伝達装置の側断面図
【図2】図1におけるII−II線に沿う断面図
【図3】図2中のIIIで示す内歯歯車の一部分の拡大図
【図4】本発明の実施形態の他の例に係る動力伝達装置の側断面図
【符号の説明】
100、150…内接噛合遊星歯車機構
102…外歯歯車
102a…内ピン孔
104…内歯歯車
104a、154a…第1外ピン
104b、154b…第2外ピン
106…偏心体
110…ころ軸受
300…動力伝達装置
302…入力軸
306…出力軸
308…内ピン
312…ケーシング
330、332、334、336…軸受
400…モータ
500…ギヤドモータ
S1、S2…隙間
A1、A2…接触面積
Claims (9)
- 入力される動力を相手機械に伝達可能な動力伝達装置において、
該動力伝達装置の動力伝達機構を、入力軸と出力軸との間に配置され、僅少の歯数差を有する外歯歯車及び内歯歯車を備えた内接噛合遊星歯車機構で構成すると共に、
前記内歯歯車と該内歯歯車の内側で内接噛合する前記外歯歯車との噛合態様に差異を持たせることによって動力伝達特性を相異ならせた動力伝達系路を、前記動力伝達機構内に並列に備えたことを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項1において、
前記内歯歯車の複数の内歯を、剛性の相異なる第1の内歯と第2の内歯との2種の内歯で構成することによって、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様の差異を具現することを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項2において、
前記第1、第2の内歯の材質を相異ならせることによって、該第1、第2の内歯の剛性の差異を具現することを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項2又は3において、
前記第1、第2の内歯の一方を略円柱形状とすると共に、他方を略円筒形状とすることによって、該第1、第2の内歯の剛性の差異を具現することを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項1において、
前記内歯歯車の複数の内歯を、第1の内歯と第2の内歯との2種の内歯で構成すると共に、該第1、第2の内歯と前記外歯歯車との隙間にそれぞれ差異を持たせることによって、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様の差異を具現することを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項5において、
前記第1、第2の内歯は、互いに剛性が異なっており、且つ、剛性の低い方の内歯と前記外歯歯車との隙間を、剛性の高い方の内歯と前記外歯歯車との隙間よりも小さくしたことを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項1において、
前記内歯歯車の複数の内歯を、第1の内歯と第2の内歯との2種の内歯で構成すると共に、該第1、第2の内歯と前記外歯歯車との接触面積にそれぞれ差異を持たせることによって、前記内歯歯車と前記外歯歯車との噛合態様の差異を具現することを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項7において、
前記第1、第2の内歯は、互いに剛性が異なっており、且つ、剛性の低い方の内歯と前記外歯歯車との接触面積を、剛性の高い方の内歯と前記外歯歯車との接触面積よりも大きくしたことを特徴とする動力伝達装置。 - 請求項2〜8のいずれかにおいて、
前記第1、第2の内歯を前記内歯歯車の内周面に交互に配置したことを特徴とする動力伝達装置。
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Legal Events
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Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20071002 |
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A02 | Decision of refusal |
Effective date: 20080304 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 |