JP2004285795A - 立体交差橋の架け替え工法 - Google Patents

立体交差橋の架け替え工法 Download PDF

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Abstract

【課題】既設橋の一部解体から新設橋の架設完了までの期間中に、交通を遮断することなく、暫定的な対面通行車線を得るための既設橋の橋幅を大きく確保でき、安全に工事が進められる架け替え工法を提供する。
【解決手段】既設橋の一方の複数車線6で対面通行車線を確保し、他方の閉鎖複数車線における一車線分の幅範囲W1を撤去して第1新設桁9を架設し、対面通行車線の一方の車線をこの第1新設桁上に移し、次いで、既設橋の別の一車線分の幅範囲W2を撤去して第2新設桁14を架設し、対面通行車線の他方の車線をこの第2新設桁上に移して、第1、第2新設桁により上下側対面通行車線を確保しておいて、既設橋の残部撤去跡に同様の第3、第4の新設桁を架設する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設の立体交差橋を交通遮断することなく新設橋に架け替えることのできる工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来における立体交差橋の架け替え工法としては、第1に、既設橋を一括して撤去し、この撤去部分に新設橋を架設するという工法と、第2に、まず、架け替えるべき既設橋の半分を上り下りの対面通行車線として利用し、既設橋の残る半分を撤去して最初の複数車線分の新設橋を架設し、次に、この新設橋を上り下り用の対面通行車線に使用して、残りの既設橋を撤去し、そこに後の複数車線分の新設橋を架設して、架け替え完了とする工法が知られている。
【0003】
【発明が解決すべき課題】
上記の架け替え工法のうち、第1の、既設橋を一括して撤去して、その部分に新設橋を架設する工法は、架け替え期間中車両が全面通行止めとなるため、よほどの条件がそろわない限り実施は困難であり、利用性はきわめて低いという問題がある。
【0004】
一方、上記の架け替え工法のうち、第2の工法は、例えば、橋幅が上り側複数車線50%、下り側複数車線50%からなるような既設橋において、いずれか一方の複数車線を上り側と下り側の対面通行二車線に分けて利用し、残る他方の複数車線を撤去するという方法であるが、橋幅の50%に相当する片側複数車線に相当する部分を撤去してしまうと、残る50%の橋幅の複数線では、対面通行二車線としては、十分な路幅を確保することができず、通行に危険が生ずるという問題を有している。
【0005】
このような理由から、既設橋に上り側と下り側の対面通行二車線を残す工法では、そのための車線幅として既設橋の橋幅の55〜60%程度を確保しておかなければならず、従って、撤去した既設橋の橋幅の40〜45%程の範囲に新設橋を架設したとしても、この新設橋では、上り下り側の対面通行二車線を設けるためには橋幅が狭すぎて、対面通行に必要な中央分離線を備える十分な広さの車線幅を得ることができないという問題を有している。
【0006】
さらに、第2の工法では、既設橋における桁の構造や桁の配置によって、対面通行二車線の確保ができないことがあり、工事の途中で、全面通行止めあるいは片側通行として工事を進めなければならないという問題を有している。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、従来の立体交差橋架け替え工事における上記のような問題点を解決するための手段として、交通を遮断することなく、既設橋の一部解体から新設橋の架設完了までの期間中に、暫定的な対面通行車線を得るための既設橋の橋幅を大きく確保でき、安全かつ迅速に工事が進められる架け替え工法の提供を目的としたものである。
【0008】
本発明に係る立体交差橋の架け替え工法は、そのための具体的手段として、既設の立体交差橋を、交通遮断することなく新設橋に架け替えるための工法であって、既設橋の上り側複数車線と下り側複数車線のうち、いずれか一方の複数車線で上り側と下り側の対面通行車線を確保しておいて、他方の複数車線を閉鎖し、閉鎖複数車線における新設桁架設可能な幅範囲の既設橋を撤去して、この撤去された部分に第1新設桁を架設し、前記対面通行車線における一方の車線を前記第1新設桁上に移し替えた後に、既設橋における別の新設桁架設可能な幅範囲を撤去して、この撤去された部分に第2新設桁を架設し、前記対面通行車線における他方の車線を前記第2新設桁上に移し替えて、この第2新設桁と前記第1新設桁とにより上下側対面通行車線を確保しておいて、既設橋の残部を全て撤去し、この撤去部分に残りの複数車線幅からなる新設桁を架設することを特徴とする。
【0009】
既設橋の一部を撤去して、第1新設桁を架設した後に、第2新設桁を架設する部分としては、第1新設桁と隣接した位置でもよく、また、既設橋の一部を撤去して、第1新設桁を架設した後に、第2新設桁を架設する部分が、第1新設桁とは既設橋の他の一部を隔てて離間した位置であってもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る立体交差橋の架け替え工法を、図面に示す自動車道路の実施例について説明すると、図1はこの工法の一工程における既設橋1と新設桁9の形状を示す斜視図、図2から図11は、いずれも橋脚4の部分における橋桁2により支持された片側二車線の床版3を有する既設橋1と、間隔をおいて立設された橋脚10により支持される新設桁9,14,15,16の同じ位置の断面図である。
【0011】
図2は、架け替え工事開始前における既設橋1の形状を示しており、床版3上には、上り側複数車線5と下り側複数車線6が、中央分離線7を隔てて設けられている。なお、この実施例では、上り側複数車線5および下り側複数車線6はいずれも二車線として示されているが、上り側複数車線5および下り側複数車線6は二車線に限られることはなく、三車線、四車線であってもよい。また、この架け替え工事に直接関係はないが、既設橋1の両側には上り用および下り用の側道8が設けられている。
【0012】
工事は、図3に示すように、まず、上り側複数車線5もしくは下り側複数車線6のいずれか一方の複数車線、例えば、下り側複数車線6の通行を停止して閉鎖し、上り側複数車線5のみで、上り側車線と下り側車線の対面通行車線を確保し既設橋1における左側の一車線分を含む新設桁架設可能な幅範囲W1を橋の長さ方向に沿って撤去する。
【0013】
次に、図4に示すように、この撤去された部分に一車線分の幅からなる第1新設桁9を架設する。この第1新設桁9は、間隔をおいて立設され複数の橋脚10によって支持された橋桁11と、この橋桁11上に設けられた両側縁に安全柵13を備えた床版12とから構成されている。なお、この実施例の図面では、新設桁9の橋桁11として箱桁を使用した形状を示したが、橋桁11としては既設橋1のようなI型形状であってもよい。
【0014】
第1新設桁9が架設されたなら、図5に示すように、上り側複数車線5で使用していた下り側および上り側の対面通行二車線のうち、いずれか一方の車線、例えば中央分離線7寄りの下り側車線Bを前記第1新設桁9上に移し替える。また、その時、既設橋1の右外側に、両側縁に安全柵13を備えた上り側車線Aを残しておき、既設橋1における中央分離線7側の一車線分を含む新設桁架設可能な幅範囲W2を橋の長さ方向に沿って撤去する。
【0015】
図5に示すように、既設橋1における中央分離線7側の新設桁架設可能な幅範囲W2を撤去したのち、図6に示すように、この撤去部分に第2新設桁14を第1新設桁9と平行に架設する。この第2新設桁14の架設に際しては、第1新設桁9の既設橋1側に設けられた一方の安全柵13を撤去して、第1新設桁9の床版12と第2新設桁14の床版12とを一体に接続し、第2新設桁14の既設橋1側に安全柵13を設ける。
【0016】
上記のように、第2新設桁14が架設されたのち、図7のように、既設橋1に使用されていた上り側車線Aを第2新設桁14上に移し替えて、第1新設桁9と第2新設桁14とにより、上り側車線Aと下り側車線Bによる対面通行二車線を確保する。
【0017】
次いで、既設橋1の残りの幅範囲W3を撤去して、この撤去した跡のスペースに図8に示すように、前記第1新設桁9および第2新設桁14と同様な第3新設桁15と第4新設桁16とを架設し、第2新設桁14と第3新設桁15との間に中央分離線17を設けるとともに、第4新設桁16の外側に安全柵13を設けて架け替え作業を完了する。
【0018】
図8に示すように、第3新設桁15と第4新設桁16とが架設されたのちは、図7で示した第1新設桁9と第2新設桁14とによる対面通行二車線を閉鎖して、第3新設桁15と第4新設桁16とをいずれも上り側複数車線25とし、第1新設桁9および第2新設桁14とをいずれも下り側複数車線26として全面交通開放とする。
【0019】
上記の実施例では、工程順として、図3に示すように、上り側および下り側複数車線5、6のうち、下り側複数車線6を閉鎖して、上り側複数車線5で上り側と下り側車線の対面通行車線を確保し、既設橋1における左側の一車線分を含む新設桁架設可能な幅範囲W1を撤去したが、必ずしもこの順序に限られることはなく、上り側複数車線5を閉鎖して、下り側複数車線6で、上り側と下り側車線の対面通行車線を確保し、最初に、既設橋1における右側の一車線分を含む新設桁架設可能な幅範囲を撤去して、ここに第1新設桁を架設してもよい。
【0020】
また、上記実施例では、既設橋1の新設桁架設可能な幅範囲W1,W2を、一車線分を含むものとしたが、幅範囲W1,W2は必ずしも一車線分を含むことに限られることはなく、二車線分、三車線分を含むものであってもよい。従って、第1新設桁9,第2新設桁14についても、一車線分の幅からなることに限定されるわけではなく、二車線分、三車線分を含むものであってもよい。
【0021】
図9乃至図11は、架設工法の第2の実施例を示している。この架設工法では、図9の状態に到る前の方法が、前記第1の実施例における図2、図3、図4と同じであり、図9、図10、図11に示す状態が、第1実施例の図4、図5、図6に示す工法とは別の工法として説明されている。
【0022】
第1の実施例の図3、図4に示すように、下り側複数車線6の一部W1を撤去して、この位置に第1新設桁9を架設した後、この第2実施例の工法では、図9の状態となる。つまり、上り側複数車線5で使用していた上下二車線A,B(図4参照)のうちの、いずれか一方の車線、例えば中央分離線7寄りの下り側車線Bを第1新設桁9に移し替える。
【0023】
また、その時、図3、図4に示されている既設橋1の中央分離線7を撤去して、図9のように、この既設橋1の中央部分に、両側に安全柵13を設けた上り側車線Aを設けるとともに、既設橋1における第1新設桁9と対称的な位置の一車線分を含む新設桁架設可能な幅範囲W2を橋の長さ方向に沿って撤去して、図10に示すように、既設橋1の一部W2を撤去した跡に第2新設桁14を架設し、次いで図11のように、既設橋1の中央部分の上り側車線Aを、この第2新設桁14に移し換える。
【0024】
その後、第1新設桁9と第2新設桁14との間の残る幅範囲W3を撤去し、この既設橋1の撤去された跡に、図8で示したように第3新設桁15と第4新設桁16とを架設し、次いで、図11で示した第1新設桁9と第2新設桁14とによる二車線を閉鎖して、第3新設桁15と第4新設桁16とをいずれも上り側複数車線25とし、第1新設桁9および第2新設桁14とをいずれも下り側複数車線26として全面交通開放とする。
【0025】
【発明の効果】
この発明に係る架け替え工法では、第一の工程として、閉鎖した複数車線を橋幅全てにわたり撤去してしまうのではなく、既設橋における左側もしくは右側の一車線分を含む新設桁架設可能な幅範囲W1を撤去して、その部分に一車線分の第1新設桁9を架設するので、図3および図4に示すように、この第1新設桁9を架設している期間中に、既設橋1に、上り下り用の対面通行車線としては十分に広い車線幅を確保することができ、余裕のあるスペースで安全な対面通行二車線を運行することができる。
【0026】
第1新設桁9が架設されたなら、対面通行車線における一車線を第1新設桁に移し替えることができ、また、図5のように、既設橋1における中央分離線付近の左内側一車線分を含む新設桁架設工可能な幅範囲W2か、もしくは図9のように、既設橋1の右外側一車線分を含む新設桁架設可能な幅範囲W2を撤去するので、いずれも残された既設橋1には、一車線分としては十分に広くて安全な車線を確保でき、第1新設桁9とともに幅の広い安全な対面通行車線を得ることができる。
【0027】
図7および図11のように、第2新設桁14が架設されて、既設橋1上の対面通行一車線がこの第2新設桁14に移し替えられると、これらの新設桁はもともと一車線分の十分な幅を有するような大きさに設計されているので、第1新設桁9と第2新設桁14とによって、安全な対面通行車線として使用することができる。
【0028】
この発明の工法では、閉鎖した既設橋の一部を撤去して、一車線分の第1新設桁9を架設し、架設された第1新設桁9は、早速対面通行用一車線として利用するので、対面通行用の別の一車線の残されている既設桁の一部を撤去することで、第2新設桁14を架設することができるが、これらの第1と第2の新設桁は、いずれも既設桁の構造や桁の配置、形状などに依存することなく施工できるので、最後の工程まで、既設桁の構造による影響を受けずに安全に工事を進めることができる。
【0029】
第1新設桁9と第2新設桁14とが架設された後は、図7では右側に残された既設橋1、もしくは、図11では中央部に残された既設橋1を一度に撤去して、図8のように、第3新設桁15と第4新設桁16とを一度に併行して架設することができるので、第3新設桁15と第4新設桁16とによる残りの二車線を短期間に能率よく架設でき、複数車線の立体交差橋を交通遮断することなく安全に架設することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る架け替え工事の一工程における既設桁と新設桁の断面形状を示す斜視図。
【図2】架け替え工事開始前の既設橋の断面形状を示す断面図。
【図3】既設橋の撤去すべき範囲と、残る既設橋を対面通行車線に使用している状態の断面図。
【図4】既設橋の一部を撤去した跡に第1新設桁を架設した状態の断面図。
【図5】第1新設桁を対面通行一車線に使用している状態と、既設橋の次に撤去すべき範囲を示す断面図。
【図6】図5で示した既設橋の撤去部分に第2新設桁を架設した状態の断面図。
【図7】第1新設桁と第2新設桁とを対面通行二車線に使用し、既設橋の次に撤去すべき範囲を示す断面図。
【図8】第1および第2新設桁の隣に第3および第4新設桁を架設して、架け替えを完了した状態の断面図。
【図9】別の実施例としての架設法であり、図5に対応する断面図。
【図10】図9の実施例による架設法であって、図6に対応する断面図。
【図11】図9の実施例による架設法であって、図7に対応する断面図。
【符号の説明】
1:既設橋、
2:橋桁、
3:床版、
4:ブロック、
5:上り側複数車線、
6:下り側複数車線、
7:中央分離線、
8:側道、
9:第1新設桁、
10:橋脚、
11:橋桁、
12:床版、
13:安全柵、
14:第2新設桁、
15:第3新設桁、
16:第4新設桁

Claims (3)

  1. 既設の立体交差橋を、交通遮断することなく新設橋に架け替えるための工法であって、
    既設橋の上り側複数車線と下り側複数車線のうち、いずれか一方の複数車線で上り側と下り側の対面通行車線を確保しておいて、他方の複数車線を閉鎖し、
    閉鎖複数車線における新設桁架設可能な幅範囲の既設橋を撤去して、この撤去された部分に第1新設桁を架設し、
    前記対面通行車線における一方の車線を前記第1新設桁上に移し替えた後に、既設橋における別の新設桁架設可能な幅範囲を撤去して、この撤去された部分に第2新設桁を架設し、
    前記対面通行車線における他方の車線を前記第2新設桁上に移し替えて、この第2新設桁と前記第1新設桁とにより上下側対面通行車線を確保しておいて、既設橋の残部を全て撤去し、
    この撤去部分に残りの複数車線幅からなる新設桁を架設する立体交差橋の架け替え工法。
  2. 既設橋の一部を撤去して、第1新設桁を架設した後に第2新設桁を架設する部分が、第1新設桁と隣接した位置である請求項1に記載の立体交差橋の架け替え工法。
  3. 既設橋の一部を撤去して、第1新設桁を架設した後に第2新設桁を架設する部分が、第1新設桁とは既設橋の他の一部を隔てて離間した位置である請求項1に記載の立体交差橋の架け替え工法。
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