JP2004285457A - 成形性に優れたチタン板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はチタン板の成形技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チタンは耐食性に優れ、かつ軽量であることから、発電プラントにおける海水冷却復水器、海水淡水化用プラント用熱交換器のほか、化学プラントの反応器、冷却器などに利用されており、近年ではカメラボディー、時計部品、眼鏡フレーム、レジャー用品等の民生品にまで用途が広がっている。これらの製品は板(チタン板)から塑性加工して製造されるため、チタン板は強度、延性、及び成形性等の機械的特性に優れていることが要求される。特にチタン板の成形性を向上させることは長年の課題であり、種々の検討がなされている。
【0003】
成形性の向上に関しては、特に結晶粒度の観点からの研究例が多く、例えば、結晶粒径を20μm以上にすること(特許文献1参照)、張り出し成形性を担保するためには結晶粒度番号を4〜5にすること(特許文献2参照)などが提案されている。また前記特許文献1は、チタン板がFeやOを含むとチタン板の硬度が高くなりすぎ、プレス加工時の成形性が低下することに着目し、Feを700ppm以下、Oを900ppm以下に制御することも提案している。
【0004】
また成形性のうち、特に深絞り性に関しては、ランクフォード値(r値)を高くすることも研究されているが、チタンは六方晶であって圧延面内の異方性が強いため、r値を高めるだけでは深絞り性の向上に限界があり、ますます厳しくなる成形性向上の要求のなかでさらなる改善が求められている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−30160号公報(請求項1、段落0005、段落0021、段落0023、段落0028)
【特許文献2】
特開平10−317118号公報(段落0001)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、新規なチタンの成形性向上策を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねる過程において、種々のチタン板を新規に製造し、これらチタン板の集合組織と成形性との関係を調べた。そして六方晶系のチタン板において、前記六方晶の(0001)面の法線が板面に対して略直交する方向に揃っているとき、成形性が著しく向上することを見出した。なおこのチタンの結晶方位の状態は、原子力炉の被覆管に使用されるジルカロイの集合組織を表すのに使用されているf値[(財)原子力安全研究協会編、実務テキストシリーズ No.3 軽水炉燃料のふるまい(1998)、第123頁;藤田和己、神戸製鋼技報、vol.37、No.1(1987)、第27〜30頁]を使用すれば適切に表現できる。すなわち本発明者らは、f値を所定値以上にすればチタン板の成形性を著しく向上できることを見出し、本発明を完成した。なお前記f値は、ジルカロイ管の分野において、機械的特性、音速等の物理的特性、水素化物の析出方位等の化学的特性などを集合組織の点から整理するのに使用されているが、成形性との関係は知られていない。
【0008】
すなわち本発明に係る成形性に優れたチタン板は六方晶系のチタン板であり、下記式(1)、式(2)、又は式(3)で定義されるキーンズ(Kearns)因子f値が0.60以上である点に要旨を有する。
【0009】
【数5】
【0010】
[式中βは、圧延面の法線(ND方向)に対するTi六方晶の(0001)面の法線の方位角(ただしND方向を0度、圧延面方向を90度(π/2)とする)を示す。Vβは、全てのTi六方晶の体積(この全体積を1とする)に対する、角度βを満足する結晶粒の体積比を示す]
【0011】
【数6】
【0012】
[式中、IはTi六方晶の(0001)面の法線方向に対応するX線強度を示す。αは、前記Iを圧延面に投影した成分の、ND方向に対する方位角(−圧延方向を0度、板幅方向を90度(π/2)、+圧延方向を180度(π)とする)を示し、βは前記式(1)と同じである]
【0013】
【数7】
【0014】
[式中、角度(ψ1,φ,ψ2)は、圧延(RD)方向−板幅(TD)方向−圧延面法線(ND)方向からなる試料座標系を、Ti六方晶の[10−10]方向−[−12−10]方向−[0001]方向からなる結晶座標系に変換するときのオイラー角(Bunge表示)を示している。すなわちψ1は、(1)試料座標系のRD−TD平面と結晶座標系の[10−10]−[−12−10]平面との交線と、(2)試料座標系のRD方向とがなす角度を示し;ψ2は、前記交線と、結晶座標系の[10−10]方向とがなす角度を示し;φは試料座標系のND方向と、結晶座標系の[0001]方向とがなす角度を示す。I(ψ1,φ,ψ2)は、全Ti六方晶に対する、前記オイラー角を示すTi六方晶の割合(分布密度)を示しており、結晶方位分布関数と称されるものである]
前記f値は、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)−後方電子散乱パターン(EBSP)法によって求められた結晶方位分布関数I(ψ1,φ,ψ2)に基づいて算出することができ、具体的には、上記式(3)の積分計算を下記式(4)の加算計算で代行することによって求めることができる。
【0015】
【数8】
【0016】
[式中のφkは、測定点kにおけるTi六方晶の傾きを示している。
すなわちTi六方晶の[10−10]方向−[−12−10]方向−[0001]方向からなる結晶座標系と、圧延方向(RD)−板幅方向(TD)−圧延面法線方向(ND)からなる試料座標系とを仮定し、
(1)試料座標系のRD−TD平面と結晶座標系の[10−10]−[−12−10]平面との交線と、(2)試料座標系のRD方向とがなす角度をψ1、
前記交線と、結晶座標系の[10−10]とがなす角度をψ2、
試料座標系のND方向と、結晶座標系の[0001]方向とがなす角度をφとするオイラー角ψ1、φ、ψ2(Bunge表示)に従って測定点kにおけるTi六方晶の角度φを測定したとき、
該測定点kにおける角度φをφkとする。
nは、測定点の数を示す]
本発明のチタン板は、平均結晶粒径が30μm以上であるのが望ましい。また水素0.013%以下(質量%の意。以下、同じ)、酸素0.2%以下、窒素0.05%以下、鉄0.25%以下の純チタン板であるのが望ましい。
【0017】
本発明にはf値を向上させることができるチタン板の製造方法も含まれる。チタン板は、例えば、熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍の順に処理することによって製造されるが、最終焼鈍の方式(連続式、バッチ式)に応じて中間焼鈍と最終焼鈍を適切に制御すればf値を向上できる。例えば最終焼鈍をバッチ式で行う場合、中間焼鈍は、得られる中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)が、該中間焼鈍に代えて温度800℃×30分間の条件で中間焼鈍を行ったときの中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)に比べて、10以上高くなるように制御することが推奨され、最終のバッチ式焼鈍は下記式(5)で規定されるY値が0.130%以上となるように設定することが推奨される。なお最終焼鈍をバッチ式で行う場合、中間焼鈍の温度は500℃以下にするのが望ましい。
【0018】
Y値=7.407×10−3×A+1.69×10−4×B+2.33×10−6×C …(5)
[式中、Aは平均昇温速度(℃/分)、Bは保持温度(℃)、Cは保持時間(分)を示す]
一方、最終焼鈍を連続式で行う場合、中間焼鈍は、温度630〜850℃の範囲で0.5〜15分行うことが推奨され、最終の連続式焼鈍は昇温速度:50〜500℃/分、焼鈍温度:650〜880℃、焼鈍時間:0.5〜15分の条件で行うことが推奨される。なお最終焼鈍を連続式で行う場合、中間焼鈍板の平均結晶粒径を20μm以下にしておくことが望ましい。
【0019】
最終焼鈍の方式によらず、熱間圧延の終了温度は600℃以下にするのが望ましく、冷間圧延の圧下率は60%以上にするのが望ましい。
【0020】
上述したような製造方法を適切に利用すれば、f値が0.60以上であるチタン板を製造できる。例えば最終焼鈍をバッチ式で行う場合、各工程を以下のように制御すればよい。
(1)熱間圧延の終了温度を400℃以下に制御する。
(2)中間焼鈍は、得られる中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)が、該中間焼鈍に代えて温度800℃×30分間の条件で中間焼鈍を行ったときの中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)に比べて、10以上高くなるように制御する。
(3)冷間圧延を圧下率が80%以上となるように行う。
(4)最終のバッチ式焼鈍の条件を上記式(5)で規定されるY値が0.135%以上となるように設定する。
【0021】
また最終焼鈍を連続式で行う場合には、各工程を以下のように制御すればよい。
(1)熱間圧延の終了温度を600℃以下に制御する。
(2)中間焼鈍は、温度650〜850℃の範囲で0.5〜10分行う。
(3)冷間圧延を圧下率が85%以上となるように行う。
(4)最終の連続式焼鈍は昇温速度:80℃/分以上、焼鈍温度:700〜850℃、焼鈍時間:0.5〜10分の条件で行う。
【0022】
【発明の実施の形態】
[チタン板]
純チタンは、温度882℃にα相(六方晶)とβ相(対心立方晶)の変態点を有しており、常温ではα相(六方晶)となっている。本発明のチタン板は、実質的に前記α相(六方晶)単相である六方晶系のチタン板である。本発明のチタン板は、純チタン板で形成されることが多いものの、実質的にα相(六方晶)単相で形成されている限り、チタン合金板を排除するものではなく、α相安定型平衡状態図を示す元素(Al,Sn,Zr,C,B,O,N,Beなど)を含有していてもよく、β相又はα+β相とならない範囲でβ相安定共析型平衡状態図を示す元素(Cr,Mn,Fe,Ni,Si,Cu,Hなど)やβ相安定固溶体型平衡状態図を示す元素(Mo,Nb,V,Taなど)を含有していてもよい。
【0023】
α相単相を示すチタン合金板としては、例えば、Ti−5Al−2.5Sn系合金板、Ti−6Al−4Zr−1V系合金板、Ti−8Al−1Mo−1V系合金板、Ti−8Al−2Nb−1Ta系合金板、Ti−8Al−12Zr系合金板などが挙げられる。
【0024】
好ましいチタン板は純チタン板である。純チタン板は、チタン合金板よりも柔らかく、成形性に優れている。純チタン板であるか否かは、例えば、水素、酸素、窒素、及び鉄の含有量の観点から定められる(なお、他の元素は実質的に含有しない)。
【0025】
水素含有量は、例えば、0.013%以下(質量%の意、以下、同じ)、好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.002%以下である。なお水素を0%とすることは困難であるため、通常、水素は0%超である。
【0026】
酸素含有量は、例えば、0.2%以下(質量%の意、以下、同じ)、好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。酸素が過剰であると強度が高くなり、成形性が低下する傾向がある。なおを酸素を0%とすることは困難であり、また強度を高める点では有効であるため、酸素は、通常、0%超、好ましくは0.01%以上、さらに好ましくは0.02%以上とする。
【0027】
窒素含有量は、例えば、0.05%以下、好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。なお窒素を0%とすることも困難であるため、通常、窒素は0%超である。
【0028】
鉄含有量は、例えば、0.25%以下、好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.05%以下である。鉄が過剰であると強度が高くなり、成形性が低下する傾向がある。なおFeは強度を高める点では有効であるため、例えば、0.01%以上、好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上とする。
【0029】
上記純チタン板としては、例えば、日本工業規格(JIS) H4600に規定する第1種、第2種などが使用できる。
【0030】
[f値]
そして本発明のチタン板は、前記六方晶の(0001)面の法線が板面に対して略直交する方向(ND方向)に比較的揃っている。図1は、本発明のチタン板の一例において、板面に対して垂直な方向からみたときの(0001)面の法線方向の分布を示す正極点図であり、図2はこの正極点図のイメージを示す概略斜視図である。これら図1及び図2から明らかなように、(0001)面の法線は圧延方向(RD方向)に対して垂直な方向に配向している。また横軸方向(TD方向)に対しても、正極点図の右半球側(+TD側)に傾く第1の方向と、左半球側(−TD側)に傾く第2の方向とに分布しているものの、その傾きは大きくなく、しかも合わせれば略垂直である。このように本発明のチタン板は、(0001)面が板面の法線方向(ND方向)に配向しているのである。このようなチタン板を使用すると、チタン板の成形性(例えば、張り出し成形性)を高めることができる。
【0031】
(0001)面のND方向への配向具合(集合組織)は、原子力炉の被覆管に使用されるジルカロイの集合組織を表すのに使用されているキーンズ(Kearns)因子であるf値を利用することによって定量的に評価できる。
【0032】
前記f値は、下記式(1)によって定義される。
【0033】
【数9】
【0034】
[式中βは、図3に示すように、Ti六方晶の(0001)面の法線Iの、ND方向に対する方位角(ただしND方向を0度、RD−TD平面方向を90度(π/2)とする)を示す。Vβは、全てのTi六方晶の体積(この全体積を1とする)に対する、角度βを満足する結晶粒の体積比を示す]
前記式(1)は、軽水炉燃料のふるまい編集委員会編、平成10年7月 財団法人原子力安全研究協会発行、「実務テキストシリーズNo.3 軽水炉燃料のふるまい」の第125頁;藤田和己、1987年 株式会社神戸製鋼所発行、「神戸製鋼技報」第37巻第1号の第29頁などに紹介されている。より詳細には前記式(1)の項cosβは、(0001)面の法線方向IをND方向とRD−TD平面方向とに分解したときのND方向成分の割合を示しており、cos2βは該cosβの寄与を2乗で表したものである。従って上記式(1)は、全てのTi六方晶の(0001)面の法線方向IをND方向とRD−TD平面方向とに分解したときのND方向成分の合計量と相関するようになっている。
【0035】
なお前記f値は、測定方法に応じて種々の適した式に変形して使用される。例えばX線回折によってTi六方晶の(0001)面の法線方向Iの分布を示す正極点図を求める場合、下記式(2)が利用できる。
【0036】
【数10】
【0037】
[式中、IはTi六方晶の(0001)面の法線方向に対応するX線強度を示す。αは、図3に示すように、前記IをRD−TD面(圧延面)に投影した成分の、ND方向に対する方位角(ただし−RD方向を0度、TD方向を90度(π/2)、+RD方向を180度(π)とする)を示し、βは前記式(1)と同じである]
前記式(2)も、上記「実務テキストシリーズNo.3 軽水炉燃料のふるまい」の第123頁に紹介されている。より詳細には前記式(2)は、前記式(1)のVβに変えてI(α,β)を使用し、このI(α,β)を規格化するために分子分母の両方にsinαを乗している(規格化の点については、井上博史、1992年社団法人軽金属学会発行、「軽金属」第42巻第6号の第359頁参照)。従ってその意味するところは上記式(1)と同じである。すなわちI(α,β)cosβは、X線強度I(α,β)のND方向成分を示しており、式(2)ではこれをα=0〜2πの範囲(すなわちND−TD平面全体)で積分し、次いでβ=0〜π/2の範囲(すなわち半球部分全体)で積分している。従ってf値は、Ti六方晶の(0001)面の法線方向IのND方向成分の合計量と相関するようになっている。
【0038】
またSEM−EBSP(Scanning Electron Microscope − Electron Backscattered Pattern)法によって、結晶方位の分布密度を示す結晶方位分布関数(Orientation Distribution Function)を求め、この結晶方位分布関数に基づいてf値を算出する場合には、下記式(3)を利用する。
【0039】
【数11】
【0040】
[式中、角度(ψ1,φ,ψ2)は、RD方向−TD方向−ND方向からなる試料座標系を、Ti六方晶の[10−10]方向−[−12−10]方向−[0001]方向からなる結晶座標系に変換するときのオイラー角(Bunge表示)を示している。すなわちψ1は、(1)試料座標系のRD−TD平面と結晶座標系の[10−10]−[−12−10]平面との交線と、(2)試料座標系のRD方向とがなす角度を示し;ψ2は、前記交線と、結晶座標系の[10−10]とがなす角度を示し;φは試料座標系のND方向と、結晶座標系の[0001]方向とがなす角度を示す。I(ψ1,φ,ψ2)は、全Ti六方晶に対する、前記オイラー角を示すTi六方晶の割合(分布密度)を示す]
このSEM−EBSP法ルートに関し、まず結晶方位分布関数について説明する。結晶方位分布関数については、井上博史、1992年社団法人軽金属学会発行、「軽金属」第42巻第6号の第358〜367頁に詳しいが、その概略は以下の通りである。すなわち結晶方位分布関数は、前記X線解析法で得られる正極点図を元に、各方位分布を定量的に評価する際に使用される関数であり、オイラー角(ψ1,φ,ψ2)を変数としたときに、該オイラー角で示される方向に配向している結晶の分布密度Iを示す関数である。従って結晶方位分布関数は、下記式によって与えられる。
【0041】
I(ψ1,φ,ψ2)
ここでオイラー角(ψ1,φ,ψ2)は、試料座標系[X,Y,Zの直交三次元座標系であり、圧延方向(RD方向)をX軸とし、板幅方向(TD方向)をY軸とし、圧延面法線方向(ND方向)をZ軸とする座標系]と、結晶座標系[X’’,Y’’’,Z’の直交三次元座標系であり、Ti六方晶の[10−10]方向をX’’軸とし、[−12−10]方向をY’’’軸とし、[0001]方向をZ’軸とする座標系]との間の角度関係を示している。すなわち図4に示すように、試料座標軸XYZをZ軸の周りに反時計方向に角度ψ1回転し(従ってX’,Y’,Z軸となる)、次にX’軸の周りに反時計方向に角度φ回転し(従ってX’,Y’’,Z’軸となる)、最後にZ’軸の周りに反時計方向に角度ψ2回転することによって結晶座標系X’’,Y’’’,Z’が与えられるときの角度ψ1,φ,ψ2がオイラー角である。なおより直接的には、ψ1は、(1)試料座標系のXY平面(RD−TD平面)と結晶座標系のX’’Y’’’平面([10−10]−[−12−10]平面)との交線(X’)と、(2)試料座標系のX軸(RD方向)とがなす角度であり;ψ2は、前記交線(X’)と、結晶座標系のX’’軸([10−10]方向)とがなす角度であり;φは、試料座標系のZ軸(ND方向)と、結晶座標系のZ’軸([0001]方向)とがなす角度であるといえる。
【0042】
この図4より明らかなように、φは、Ti六方晶の[0001]方向((0001)面の法線方向)とND方向との間の角度を示しているため、式(3)のcos2φの項は、上記式(1)及び式(2)のcos2βの項と同様の意味を有しており、従って式(1)、式(2)及び式(3)は互いに等価である。
【0043】
ところでX線結晶回折によって求まる極点図I(α,β)から、結晶方位分布関数I(ψ1,φ,ψ2)を求めるには、一般的にはBungeが提唱する球面調和関数による級数展開法(H.J.Bunge, Z.Metallk., 56(1965),872; H.J.Bunge, Texture Analysis in Materials Science, Butterworths, (1982))が利用されているが、六方晶の場合は計算が複雑となるため、SEM−EBSP法を用いて直接、結晶方位分布関数I(ψ1,φ,ψ2)を求めるのが簡便である。
【0044】
SEM−EBSP法とは、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)鏡体中での反射電子菊池線回折を用いる結晶方位解析法のことであり、菊池図形と呼ばれる回折図形(EBSP)は、結晶のわずかな傾きによって大きく変化するため、得られる菊池図形を解析することにより結晶方位の情報が得られる。従って、SEM−EBSP法によれば正極点図を測定することなく、直接結晶方位分布関数I(ψ1,φ,ψ2)を求めることができるのであり、その詳細は、梅澤修、平成13年社団法人日本熱処理技術協会発行、「熱処理」第41巻第5号第248〜257頁に紹介されている。本明細書においてその概略を説明すると以下の通りである。すなわちSEM−EBSP法では、斜め方向から試料表面に電子ビームを照射することによって生じる非弾性の後方散乱波の回折現象を、後方散乱波の進行方向に設けたスクリーンに描かせている。前記電子ビーム(入射ビーム)は、試料内(表面近傍)で一度非弾性散乱してわずかに運動エネルギーを失って球面波となったのち、この球面波が互いに平行する2つの格子面に対して再びブラッグ反射を起こすため、前記スクリーンには平行な1対の回折線(菊池線)が描かれる。このブラッグ回折現象は種々の格子面で生じるため、前記スクリーンには、全体として多数の菊池線による回折パターンが描かれ、このパターンを菊池図形(EBSP)と称している。得られるEBSPは結晶方位に固有であることから、照射した場所の結晶方位を知ることができる。
【0045】
すなわち得られたEBSPはディジタイズされ、コンピューターで画像解析する。画像解析に関しては、菊池線を自動認識させる手法が開発されており、Ti六方晶の結晶方位に対応する複数の菊池線を識別することによって、自動的に結晶方位を求めることができる。
【0046】
上記のようなSEM−EBSP法では、バルク試料表面を直接的に測定するため、任意の視野を比較的広範囲から選択でき、自動マッピング(オンライン結晶方位解析プログラム)による測定が可能である。すなわち全自動解析では、設定された領域を自動的に走査し、各測定点で得られるEBSPを検出し、オイラー角(ψ1,φ,ψ2)で表される結晶の方位を記録できる。そして上記マッピングを通じて得られる全測定点での方位データ(集合組織データ)から、結晶方位分布関数I(ψ1,φ,ψ2)を表示することができる。
【0047】
上記のようにして求めた結晶方位分布関数I(ψ1,φ,ψ2)の一例を図5に示す。図5は、ψ2=0°としたときのψ1−φ平面における結晶方位の分布を示しており、その結果を半球体の斜視図として表したものを図6に示す。図5より明らかなように、本発明のTi板の結晶方位分布関数I(ψ1,φ,ψ2)を測定すると、例えばψ2=0°となるTi六方晶については、ψ1=0°程度、φ=35°程度となる結晶の割合が多くなっており、これは図6より明らかなように図1及び図2に示す正極点図の結果と符号している。
【0048】
前記全自動EBSP測定システムは各社から市販されており、例えば、OXFORD社の“OPALTM”、TSL社の“OIMTM”、NORAN社の“ORKIDTM”、“PhaseIDTM”、“HKLTM”、Technology社の“CHANNEL4TM”などが利用できる。
【0049】
本発明で使用するf値は、上述したように、原理的には式(1)の積分計算を行うことによって求まるが、具体的にはX線解析結果に基づいて式(2)の積分計算を行ったり、SEM−EBSPの結果に基づいて式(3)の積分計算を行うことが多い。なお他の測定手段を採用する場合でも、式(1)を適当に変形すればf値を算出できる。
【0050】
ところで積分計算は計算機を用いて行うことが多く、計算機上は、積分計算は加算計算によって代行される。例えばSEM−EBSP法の結果に基づいて行う式(3)の積分計算を、加算計算によって代行する場合を例にとって説明する。この場合、SEM−EBSP法において各測定点における結晶のオイラー角(ψ1,φ,ψ2)を測定し、この測定結果を利用して下記式(4)に基づいてf値を算出する。
【0051】
【数12】
【0052】
[式中のφkは、測定点kにおけるTi六方晶の傾きを示している。
すなわちTi六方晶の[10−10]方向−[−12−10]方向−[0001]方向からなる結晶座標系と、圧延方向(RD)−板幅方向(TD)−圧延面法線方向(ND)からなる試料座標系とを仮定し、
(1)試料座標系のRD−TD平面と結晶座標系の[10−10]−[−12−10]平面との交線と、(2)試料座標系のRD方向とがなす角度をψ1、
前記交線と、結晶座標系の[10−10]とがなす角度をψ2、
試料座標系のND方向と、結晶座標系の[0001]方向とがなす角度をφとするオイラー角ψ1、φ、ψ2(Bunge表示)に従って測定点kにおけるTi六方晶の角度φを測定したとき、
該測定点kにおける角度φをφkとする。
nは、測定点の数を示す]
なお測定はチタン板の板面方向及び板厚方向の全体に亘って均等に行うのが望ましく、例えば板面方向には、1m2当たり5箇所以上(通常6〜10箇所程度)を均等に測定するのが望ましい。また1箇所当たり、2回以上(例えば、2〜5回程度)測定することとし、測定箇所間の間隔は10000〜20000μm程度は離すこととする。板厚方向には、表面部、1/4t(厚さ)部、及び中央部を測定するのが望ましい。
【0053】
各測定箇所における測定視野は、通常、200×200μm以上(例えば、300×300μm〜2,000×2,000μm程度)である。式(4)に示すn数は、通常、10,000以上(例えば、10,000〜200,000程度)であり、式(4)に示す各測定点の間隔(測定点kと測定点k+1との間隔)は、通常、0.5〜20μm程度の範囲内である。
【0054】
なおX線解析(又は他の測定手段)による場合も、上記SEM−EBSP法の場合と同様に、式(2)[又は式(1)]を加算計算可能に適当に変更すればよい。
【0055】
本発明のチタン板は、前記f値が0.60以上、好ましくは0.63以上、さらに好ましくは0.65以上である。f値が大きいほどチタン板の成形性を高めることができる。f値の上限は算術的には1であるが、通常は0.8程度(特に0.75程度)である。
【0056】
なおチタン板の全体に亘ってf値が上記所定値を満足するのが望ましいものの、少なくとも成形加工する部分において上記所定値を満足していればよい。
【0057】
なお本発明のチタン板は平均結晶粒径が大きい程望ましい。平均結晶粒径はチタン板の成形性を高めるのに有用であるとされているからである。平均結晶粒径は、例えば、10μm以上、好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上(例えば35μm以上)である。なお前記平均結晶粒径は、通常、60μm以下程度、例えば50μm以下程度である。なお成形性に対する寄与度は、平均結晶粒径に比べると、上述のf値の方が遙かに大きい。
【0058】
チタン板の板厚は、上記f値を達成できる限り特に限定されるものではないが、例えば、2mm以下、好ましくは1.5mm以下、さらに好ましくは1mm以下程度である。チタン板が厚くなると、後述する冷延率を高めることが困難となり、f値を大きくすることが難しくなる。板厚の下限も特に限定されないが、例えば、0.05mm以上、好ましくは0.1mm以上、さらに好ましくは0.2mm以上である。
【0059】
本発明のチタン板の引張強さは、例えば、250MPa以上(好ましくは300MPa以上、さらに好ましくは350MPa以上)、900MPa以下(好ましくは700MPa以下、さらに好ましくは550Mpa以下)程度である。
【0060】
[f値を向上可能なチタン板の製造方法]
上述したようにチタン板のf値を高くすると、チタン板の成形性を高めることができる。従ってf値が高くできるようなチタン板の製造方法もまた有用である。
【0061】
チタン板は、例えば、スポンジチタンを溶解して得られる鋳塊を鍛造した後、熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍の順に処理することによって製造できる。そしてチタン板(最終焼鈍板)のf値を高くするには、最終焼鈍工程における再結晶時に、[0001]方向が略ND方向となるような適切な結晶を増大させることが重要である。また最終焼鈍工程において適切な結晶を増大させるためには、中間焼鈍工程を適切に制御することも重要である。ところで最終焼鈍工程は、バッチ式(オフラインにおけるバッチ式の焼鈍)と連続式(オンラインにおける連続式の焼鈍)とに大別できる。従ってこれら最終焼鈍工程の方式に合わせて中間焼鈍工程を制御することが推奨される。
【0062】
具体的には、以下のようにすれば、チタン板(最終焼鈍板)のf値を高めることができる。
【0063】
(1)最終焼鈍工程がバッチ式の場合
最終焼鈍工程がバッチ式の場合、本発明者らは、中間焼鈍後のチタン板の硬度が大きい程、最終焼鈍後のチタン板のf値が大きくなることを見出した。従って中間焼鈍工程では、完全に歪みを取る一般の中間焼鈍(例えば、温度800℃程度、焼鈍時間30分程度の焼鈍)に比べれば、中間焼鈍後のチタン板が硬くなるように(歪みを残すように)焼鈍条件を設定する。
【0064】
すなわち(1)の場合には、得られる中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)が、(1)の場合の中間焼鈍に代えて完全な焼鈍(温度800℃程度、焼鈍時間30分程度)を行ったときの中間焼鈍板のビッカース硬さに比べて、10以上、好ましくは20以上、さらに好ましくは30以上高くなるように中間焼鈍条件を設定するのが推奨される。
【0065】
中間焼鈍板の硬さを制御するためには、中間焼鈍の温度を、500℃以下、好ましくは400℃以下、さらに好ましくは350℃以下、特に300℃以下とするのが推奨される。中間焼鈍の保持時間は、上記焼鈍温度に応じて適宜設定できるが、例えば、10〜3000分程度、好ましくは20〜3000分程度である。
【0066】
なお本発明者らは、中間焼鈍板の硬度が最終焼鈍板のf値と密接な関連があるのは、前記硬度がチタン板の組織状態と密接な関連があるためであると推察している。すなわち中間焼鈍後のチタン板の硬度が大きい程、f値を向上させるのに有効な方位を有する亜結晶粒を多く含むような組織にでき、冷間圧延に続く最終焼鈍工程においてこの望ましい方位成分を核とする再結晶が起こることにより、結晶粒の[0001]方向が板面の法線方向に配向するのではないかと推測している。
【0067】
そして中間焼鈍の温度を低くする程、望ましい方位成分を多くすることができ、最終焼鈍時の再結晶によってf値を向上できるものと推測している。
【0068】
またバッチ式の最終焼鈍は、上記再結晶によるf値の向上が可能となる範囲で条件設定することが重要である。ところでバッチ式焼鈍は、一段で又は複数段に分けて段階的に予備加熱した後、最終温度まで加熱するパターン、予備加熱することなく直接最終温度まで加熱するパターンなどの種々のヒートパターンが存在しており、各ヒートパターンに応じた最適条件を設定することは困難であるが、例えば、以下の式(5)で規定されるY値を大きくするようにすればf値を大きくできる。
【0069】
Y値=7.407×10−3×A+1.69×10−4×B+2.33×10−6×C …(5)
[式中、Aは平均昇温速度(℃/分)、Bは保持温度(℃)、Cは保持時間(分)を示す]
このY値は保持温度Bを大きくする程、保持時間Cを長くするほど大きくなるようになっており、再結晶が進行するほど大きくなるようになっている。なお平均昇温速度Aの項は、平均昇温速度が遅いと、f値が小さくなるという実験事実を反映させたものである。
【0070】
前記Y値は、例えば、0.130以上、好ましくは0.14以上、さらに好ましくは0.15以上とする。なおY値が大きいほど、再結晶が進行して結晶粒径が大きくなるため、この点でもY値は有効である。
【0071】
なお最終のバッチ式焼鈍の平均昇温速度、保持温度、及び保持時間は、上記Y値を達成できる限り特に限定されないが、例えば平均昇温速度は、1〜50℃/分程度、好ましくは2〜30℃/分程度の範囲から選択して設定できる。保持温度は、例えば、630〜900℃程度、好ましくは640〜850℃程度の範囲から選択して設定できる。保持時間は、例えば、50〜4000分程度、好ましくは100〜3000分程度の範囲から選択して設定できる。
【0072】
(2)最終焼鈍工程が連続式の場合
最終焼鈍工程が連続式の場合、上記バッチ式に比べて昇温速度が速くなる傾向にある。昇温速度が変わると、最終焼鈍時の再結晶の仕方が変化して再結晶後の結晶方位が変化してくるためか、バッチ式焼鈍を行う場合とは中間焼鈍条件が異なってくる。詳細な理由については不明であるが、いずれにせよ連続式焼鈍を採用する場合には、バッチ式焼鈍を採用する場合と異なり、中間焼鈍工程である程度再結晶を生じさせておいた方が、最終焼鈍時に望ましい方位成分が増大することは明らかである。
【0073】
すなわち最終焼鈍工程が連続式の場合、本発明者らは、中間焼鈍を過不足なく行うと、最終焼鈍後のチタン板のf値を向上できることを見出している。中間焼鈍の温度は、焼鈍時間を0.5〜15分程度に設定したとき、630℃以上(好ましくは650℃以上、さらに好ましくは670℃以上)、850℃以下(好ましくは840℃以下、さらに好ましくは830℃以下)が推奨される。温度が低すぎると再結晶が起こらず、加工組織のままとなるためか、最終焼鈍板のf値を十分に高めることができない。一方、温度が高すぎても望ましい方位成分が減少するためか、最終焼鈍板のf値を十分に高めることができない。
【0074】
なお中間焼鈍の時間は、好ましくは0.7分以上(さらに好ましくは0.8分以上)、13分以下(さらに好ましくは10分以下)である。
【0075】
また中間焼鈍板では、平均結晶粒径を20μm以下程度(特に18μm以下程度)としておくのが望ましい。中間焼鈍板の平均結晶粒径を小さくしておけば、最終焼鈍板の平均結晶粒径を30μm以下に制御するのが容易となる。
【0076】
最終の連続焼鈍は、必要量の再結晶を進行させることができ、しかも製造ラインを停止しない程度の速やかさで終了できる程度の条件に設定する必要がある。従って最終の連続焼鈍の昇温速度、保持温度、及び保持時間は、以下の範囲から設定できる。
【0077】
昇温速度:50℃/分以上(好ましくは80℃/分以上、さらに好ましくは100℃/分以上)
保持温度:650℃以上(好ましくは680℃以上、さらに好ましくは700℃以上)
保持時間:0.5分以上(好ましくは0.7分以上、さらに好ましくは0.8分以上)、15分以下(好ましくは12分以下、さらに好ましくは10分以下)
なお保持温度の上限は再結晶可能な範囲から選択でき、例えば880℃以下(好ましくは860℃以下、さらに好ましくは840℃以下)程度である。
【0078】
また昇温速度の上限は特に限定されないが、通常、500℃/分以下(特に400℃/分以下)程度である。
【0079】
なお最終焼鈍は、連続式及びバッチ式のいずれの場合でも、真空で行うことが多い。
【0080】
(3)熱間圧延工程及び冷間圧延工程
上記以外の工程、すなわち熱間圧延工程及び冷間圧延工程は、例えば以下のように設定するのが望ましい。
【0081】
(3−1)熱間圧延工程
熱間圧延終了後の温度(圧延コイルの巻取温度)は、例えば、600℃以下、好ましくは500℃以下、さらに好ましくは400℃以下、特に350℃以下(例えば300℃以下)とするのが望ましい。終了温度が低い程、f値を向上させ得る核を多くできるためか、最終焼鈍時の再結晶によってf値を向上できる。なお終了温度は、通常、250℃以上、好ましくは300℃以上、さらに好ましくは330℃以上である。終了温度が低すぎると熱間圧延できなくなる。
【0082】
なお熱間圧延開始温度は、前記終了温度を達成できる範囲で設定するのが望ましく、例えば、600〜870℃程度である。
【0083】
(3−2)冷間圧延工程
冷間圧延工程は、チタン板の歪量を増大させるため、その後の最終焼鈍工程において再結晶を促進するのに有効である。特に本発明では、中間焼鈍工程で(及び上記3−1の条件による場合には熱間圧延工程でも)、f値を向上させる方位成分の核が多くなるようにしているため、冷間圧延工程での歪蓄積量が多い程、再結晶によってf値が向上し易くなる。
【0084】
歪量を増大させるためには、圧下率を大きくするのが有効である。圧下率は、例えば、60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に87%以上の範囲から選択できる。なお圧下率の上限は特に限定されないが、圧延荷重の上限を考慮すると、通常、95%程度(特に93%程度)である。
【0085】
ところで冷間圧延は、例えば、10〜30段階(好ましくは15〜25段階)で行うことが多い。そして少なくとも1つの段階の圧下率を10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下とすることが望ましい。
【0086】
なお本発明では、上述したように、熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍の順に処理することによってチタン板を製造することが推奨されるが、熱間圧延後、中間焼鈍と冷間圧延を繰り返し行い、次いで最終焼鈍してもよい。そして中間焼鈍と冷間圧延を繰り返す場合にも、中間焼鈍工程は上述したようにして制御することが推奨される。例えば(1)のバッチ式の場合には、中間焼鈍板は、完全な中間焼鈍を行ったときよりもビッカース硬さが10Hv以上高くなるようにすることが推奨され、冷間圧延の圧下率は適宜設定できる。
【0087】
[所定のf値を有するチタン板の製造方法]
上述した製造方法を利用すれば、所望のf値のチタン板を製造することができる。例えばf値が0.60以上のチタン板は、以下のようにして製造できる。
【0088】
(1)最終焼鈍工程がバッチ式の場合
熱間圧延工程では、終了温度を400℃以下に制御する。
【0089】
中間焼鈍工程では、得られる中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)が、該中間焼鈍に代えて温度800℃×30分間の条件で中間焼鈍を行ったときの中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)に比べて、10以上高くなるように制御する。
【0090】
冷間圧延工程では圧下率を80%以上にする。
【0091】
最終焼鈍工程(バッチ式)では、上記式(5)で規定されるY値が0.135%以上となるように設定する。
【0092】
(2)最終焼鈍工程が連続式の場合
熱間圧延工程では、終了温度を600℃以下に制御する。
【0093】
中間焼鈍工程は、温度650〜850℃の範囲で0.5〜10分行う。
【0094】
冷間圧延工程では、圧下率を85%以上にする。
【0095】
最終焼鈍工程(連続式)は、昇温速度:80℃/分以上、焼鈍温度:700〜850℃、焼鈍時間:0.5〜10分の条件で行う。
【0096】
なおもしこのようにしてもf値が0.60以上とならない場合(又はさらなる高いf値のチタン板を製造する場合)、上述のf値向上方法を参照しながら条件をさらに厳しく設定すればよい。
【0097】
上記のようにして得られる本発明のチタン板は、f値が大きいため成形性(例えば、張り出し成形性)に優れる。そのため従来の種々の用途に使用することができ、特に複雑な形状を要求される用途に有用に使用することができる。
【0098】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0099】
実験例1
真空式誘導加熱炉(コールドクルーシブ溶解装置)でチタンを溶解させ、下記表1に示すようにして成分調整した。得られた造塊を下記表2に示す条件で熱間圧延した後、次いで下記表2に示す条件で中間焼鈍、冷間圧延、及び最終焼鈍の順に処理することにより、JIS H4600の第1種に相当するチタン板(厚さ0.5mm)を得た。なお前記最終焼鈍は、オフラインのバッチ式で行った。このチタン板(最終焼鈍板)の成形性、平均結晶粒径、及びf値を下記のようにして求めた。また中間焼鈍板のビッカース硬さを以下のようにして評価した。
【0100】
[成形性]
前記最終焼鈍板からJIS Z2247で規定する2号試験片を切り取り、該JIS Z2247に準拠してエリクセン試験を行った。
【0101】
[平均結晶粒径]
前記最終焼鈍板の組織を光学顕微鏡で撮影(倍率100倍)した。得られた写真に示される結晶粒界をトレースして画像解析することにより、結晶粒を同一の面積を有する円に変換し、この円の直径を計測した。
【0102】
なお上記測定は、板表面部、1/4t(厚さ)部、及び板厚中央部について行い、各場所ではそれぞれ10視野分の写真を撮影した。全ての円換算直径の平均を焼鈍板の平均結晶粒径とした。
【0103】
[f値]
前記チタン板(焼鈍板)から10mm×10mmの試験片を切り出し、TSL社製のSEM−EBSP測定装置(装置名:OIMTM)を用いて結晶方位分布関数(ODF)を求め、得られたデータに基づいて上記(4)式を利用して計算することによりf値を求めた。なお詳細な条件は、下記の通りである。
【0104】
測定箇所数:5箇所(一箇所あたりの測定回数3回)
測定視野:800×800μm
測定1回あたりの測定点数[式(4)に示すn数]:185031
各測定点間の間隔[式(4)に示すkとk+1の間隔]:2μm
なお上記測定は、板表面部、1/4t(厚さ)部、及び板厚中央部についておこない、各深さ部分のf値を平均してチタン板のf値とした。
【0105】
[中間焼鈍板のビッカース硬さ]
荷重100gを負荷することによって中間焼鈍板のビッカース硬さを測定した。測定箇所は、該焼鈍板の板厚断面における表層部、1/4t部、及び板厚中心部とし、1箇所当たり5点づつビッカース硬度測定を行い、それらの平均値を中間焼鈍板のビッカース硬さとした。
【0106】
一方、中間焼鈍条件を800℃×30分とする以外は、上記実験例と同様にして得られる中間焼鈍板(以下、完全焼鈍板という)の硬さを、前記と同様にして測定した。
【0107】
実験例の中間焼鈍板の硬さと完全焼鈍板の硬さとの差(Δ硬さ=実験例の中間焼鈍板の硬さ−完全焼鈍板の硬さ)を求めた。
【0108】
結果を表2並びに図7〜図10の●印に示す。またNo.5のチタン板を圧延面に対して垂直な方向からみたときの(0001)面の強度を示す正極点を図1に示すと共に、そのときの結晶方位分布関数を図5に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
図7より明らかなように、最終焼鈍をバッチ式で行う場合、中間焼鈍板の硬さ(Δ硬さ)が大きいほどf値が大きくなる傾向がある。また図8より明らかなように、中間焼鈍温度が低いほど(特に熱間圧延終了温度が600℃未満の場合には)、f値が大きくなる傾向がある。
【0112】
そして表2より明らかなように、熱間圧延条件、中間焼鈍条件、及び最終焼鈍条件のいずれか(又は全て)が不適切なNo.A8〜A14では、f値が小さくなっており、エリクセン値も小さい。ところが熱間圧延条件、中間焼鈍条件、及び最終焼鈍条件が適切なNo.A1〜A7では、f値が大きくなっており、エリクセン値も大きくなっている。
【0113】
さらに図9及び図10より明らかなように、結晶粒径が大きいほど、またf値が大きいほどエリクセン値が大きくなっており、特にf値とエリクセン値とは相関関係が強く出ている。
【0114】
実験例2
実験例1と同様にして板厚0.5mmのチタン板(最終焼鈍板)を製造した。ただし各チタン板の成分及び製造条件は、下記表3及び表4に示す通りで行い、最終焼鈍工程はオンラインの連続式で行った。
【0115】
得られたチタン板(最終焼鈍板)の成形性、平均結晶粒径、及びf値を実験例1と同様にして測定した。また中間焼鈍板の平均結晶粒径も、最終焼鈍板と同様にして測定した。
【0116】
結果を表4並びに図9〜図11の○印に示す。
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
図11より明らかなように、最終焼鈍を連続式で行う場合、適切な焼鈍温度を設定すればf値が大きくなる。
【0120】
そして表4より明らかなように、熱間圧延条件、中間焼鈍条件、及び最終焼鈍条件のいずれか(又は全て)が不適切なNo.B8〜B14では、f値が小さくなっており、エリクセン値も小さい。ところが熱間圧延条件、中間焼鈍条件、及び最終焼鈍条件が適切なNo.B1〜B7では、f値が大きくなっており、エリクセン値も大きくなっている。
【0121】
さらに図9及び図10より明らかなように、結晶粒径が大きいほど、またf値が大きいほどエリクセン値が大きくなっており、特にf値とエリクセン値とは相関関係が強く出ている。
【0122】
【発明の効果】
本発明では、六方晶系のチタン板において、Ti六方晶の(0001)面の法線を圧延面の法線方向に配向させているため(すなわちf値を所定値以上にしているため)、チタン板の成形性を高めることができる。また本発明によれば、最終焼鈍の方式に併せて中間焼鈍条件を適切に設定しているためf値を向上させることができる。加えて本発明によれば、最終焼鈍、中間焼鈍に加えて、熱間圧延条件、冷間圧延条件も適切に設定しているため、所定のf値を有するチタン板を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明のチタン板の一例におけるTi六方晶の(0001)の配向度合いを示す正極点図である。
【図2】図2は前記図1を説明するための概念図である。
【図3】図3は式(1)及び式(2)を説明するための概念図である。
【図4】図4は式(3)を説明するための概念図である。
【図5】図5は本発明のチタン板の一例における結晶方位分布関数を示す図である。
【図6】図6は図5を説明するための概念図である。
【図7】図7はバッチ式の最終焼鈍を行うときにおける、中間焼鈍板の硬さ(Δ硬さ)と最終焼鈍板のf値との関係を示すグラフである。
【図8】図8はバッチ式の最終焼鈍を行うときにおける、中間焼鈍温度と最終焼鈍板のf値との関係を示すグラフである。
【図9】図9は結晶粒径とエリクセン値の関係を示すグラフである。
【図10】図10はf値とエリクセン値の関係を示すグラフである。
【図11】図11は連続式の最終焼鈍を行うときにおける、中間焼鈍温度と最終焼鈍板のf値との関係を示すグラフである。
Claims (12)
- 六方晶系のチタン板において、下記式(1)、式(2)、又は式(3)で定義されるキーンズ(Kearns)因子f値が0.60以上であることを特徴とする成形性に優れたチタン板。
- 前記f値は、走査型電子顕微鏡(SEM)−後方電子散乱パターン(EBSP)法によって求められた結晶方位分布関数I(ψ1,φ,ψ2)に基づいて算出されるものであり、上記式(3)の積分計算を下記式(4)の加算計算で代行することによって求まるものである請求項1に記載のチタン板。
すなわちTi六方晶の[10−10]方向−[−12−10]方向−[0001]方向からなる結晶座標系と、圧延方向(RD)−板幅方向(TD)−圧延面法線方向(ND)からなる試料座標系とを仮定し、
(1)試料座標系のRD−TD平面と結晶座標系の[10−10]−[−12−10]平面との交線と、(2)試料座標系のRD方向とがなす角度をψ1、
前記交線と、結晶座標系の[10−10]とがなす角度をψ2、
試料座標系のND方向と、結晶座標系の[0001]方向とがなす角度をφとするオイラー角ψ1、φ、ψ2(Bunge表示)に従って測定点kにおけるTi六方晶の角度φを測定したとき、
該測定点kにおける角度φをφkとする。
nは、測定点の数を示す] - 平均結晶粒径が30μm以上である請求項1又は2に記載のチタン板。
- 前記チタン板は水素0.013%以下(質量%の意。以下、同じ)、酸素0.2%以下、窒素0.05%以下、鉄0.25%以下の純チタン板である請求項1〜3のいずれかに記載のチタン板。
- 熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍の順に処理することによってチタン板を製造する方法であって、
前記中間焼鈍は、得られる中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)が、該中間焼鈍に代えて温度800℃×30分間の条件で中間焼鈍を行ったときの中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)に比べて、10以上高くなるように制御するものであり、
前記最終焼鈍はバッチ式で行うこととし、この最終のバッチ式焼鈍の条件を下記式(5)で規定されるY値が0.130%以上となるように設定することを特徴とするチタン板の製造方法。
Y値=7.407×10−3×A+1.69×10−4×B+2.33×10−6×C …(5)
[式中、Aは平均昇温速度(℃/分)、Bは保持温度(℃)、Cは保持時間(分)を示す] - 前記中間焼鈍の温度は500℃以下である請求項5に記載のチタン板の製造方法。
- 熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍の順に処理することによってチタン板を製造する方法であって、
前記中間焼鈍は、温度630〜850℃の範囲で0.5〜15分行うものであり、
前記最終焼鈍は連続式で行うこととし、この最終の連続式焼鈍は昇温速度:50〜500℃/分、焼鈍温度:650〜880℃、焼鈍時間:0.5〜15分の条件で行うものであることを特徴とするチタン板の製造方法。 - 中間焼鈍板の平均結晶粒径が20μm以下である請求項7に記載のチタン板の製造方法。
- 前記熱間圧延の終了温度が600℃以下である請求項5〜8のいずれかに記載のチタン板の製造方法。
- 前記冷間圧延の圧下率が60%以上である請求項5〜9のいずれかに記載のチタン板の製造方法。
- 熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍の順に処理することによってチタン板を製造する方法であって、
前記熱間圧延の終了温度を400℃以下に制御し、
前記中間焼鈍は、得られる中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)が、該中間焼鈍に代えて温度800℃×30分間の条件で中間焼鈍を行ったときの中間焼鈍板のビッカース硬さ(Hv)に比べて、10以上高くなるように制御し、
前記冷間圧延を圧下率が80%以上となるように行い、
前記最終焼鈍はバッチ式で行うこととし、この最終のバッチ式焼鈍の条件を下記式(5)で規定されるY値が0.135%以上となるように設定する請求項1に記載のチタン板の製造方法。 - 熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延、最終焼鈍の順に処理することによってチタン板を製造する方法であって、
前記熱間圧延の終了温度を600℃以下に制御し、
前記中間焼鈍は、温度650〜850℃の範囲で0.5〜10分行うものであり、
前記冷間圧延を圧下率が85%以上となるように行い、
前記最終焼鈍は連続式で行うこととし、この最終の連続式焼鈍は昇温速度:80℃/分以上、焼鈍温度:700〜850℃、焼鈍時間:0.5〜10分の条件で行うものである請求項1に記載のチタン板の製造方法。
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