JP2004283128A - 生体触媒を用いた高品質(メタ)アクリルアミド系ポリマーの製造法 - Google Patents

生体触媒を用いた高品質(メタ)アクリルアミド系ポリマーの製造法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、より高粘度でより無色に近い(メタ)アクリルアミド系ポリマーを提供することを目的とする。
【解決手段】生体触媒の存在下、青酸の濃度が1mg/Kg以下である(メタ)アクリロニトリルを、反応液の滞留時間θ(L)と生体触媒の滞留時間θ(c)が式I:
θ(c)/θ(L)<1.2 (I)
で表される関係を満たす条件下で反応させることによって(メタ)アクリルアミドを生成し、生成した(メタ)アクリルアミドを含むモノマーを重合することを特徴とする(メタ)アクリルアミド系ポリマーの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、凝集剤及び抄紙用増粘剤等に好適な高品質(メタ)アクリルアミド系ポリマーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
アクリルアミド系ポリマーは、無機系廃水の処理に用いられており、特にPAC(ポリ塩化アルミニウム)、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、ポリリン酸鉄等の無機凝集剤と併用して水処理を行うと凝集沈降性が非常に高いことから広く用いられている。凝集剤用途でアクリルアミド系ポリマーを使用する場合、水溶液の粘度が高いものが、凝集性が良く好ましい。
【0003】
また、抄紙用増粘剤用途でもアクリルアミド系ポリマーは広く用いられており、少ない量で粘度が高いものが望まれている。さらに、当該用途においては、色調が無色である必要がある。
【0004】
従って、上記のような用途に使用されるアクリルアミド系ポリマーにおいては、高粘度でより無色に近いものが求められている。
【0005】
アクリルアミドは、現在、還元銅を用いた銅触媒法又は生体触媒を用いた酵素法のいずれかでアクリロニトリルから製造されているが、一般に生体触媒で製造されたアクリルアミドは不純物が少ないことから、高品質のアクリルアミド系ポリマーの原料として優れている。
【0006】
生体触媒由来の不純物がアクリルアミド系ポリマーの粘度に与える影響については、これまであまり知られていなかった。しかし、より高品質なアクリルアミド系ポリマーが求められる中で、生体触媒由来の糖を含有しているアクリルアミドを用いるとアクリルアミド系ポリマーの粘度が向上するということが報告されている。
【0007】
また、アクリロニトリルに含まれる不純物の影響については、アクロレインやオキサゾールによってアクリルアミド系ポリマーの溶解性が低下すること(例えば、特許文献1参照)、アクリルアミドモノマーの安定性が低下すること(例えば、特許文献2参照)などが報告されている。しかしながら、アクリロニトリル中に含まれる青酸が、アクリルアミド系ポリマーの特性に与える影響については知られていない。
【0008】
また、生体触媒による(メタ)アクリルアミドの製造法については、非常に多くの報告がある。例えば、生体触媒の費用を削減するために、固定化微生物触媒を使用し、反応槽内に金網等の分離設備を設置することで反応時の触媒滞留時間を増加させ、生体触媒の使用量を削減させる方法が報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
【特許文献1】
特開平10−007638
【特許文献2】
特開昭63−118305
【特許文献3】
WO03/000914
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、より高粘度でより無色に近い(メタ)アクリルアミド系ポリマーを提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(メタ)アクリロニトリルから生体触媒によって製造された(メタ)アクリルアミドを用いて(メタ)アクリルアミド系ポリマーを製造する工程において、出発原料である(メタ)アクリロニトリルに含まれる青酸の濃度、生体触媒による(メタ)アクリルアミド生成反応における反応液及び生体触媒の滞留時間を調整することにより、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)生体触媒の存在下、青酸の濃度が1mg/Kg以下である(メタ)アクリロニトリルを、反応液の滞留時間θ(L)と生体触媒の滞留時間θ(c)が式I:
θ(c)/θ(L)<1.2 (I)
で表される関係を満たす条件下で反応させることによって(メタ)アクリルアミドを生成し、生成した(メタ)アクリルアミドを含むモノマーを重合することを特徴とする(メタ)アクリルアミド系ポリマーの製造方法。
(2)(メタ)アクリルアミドの生成において、(メタ)アクリルアミドを、反応液中の濃度が30質量%以上になるまで蓄積させる(1)に記載の方法。
(3)生体触媒が微生物菌体又はその処理物である(1)又は(2)に記載の方法。
(4)(メタ)アクリルアミドを含むモノマーが、(メタ)アクリルアミドと重合可能な別のモノマーをさらに含む(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明において生体触媒とは、生体に由来する触媒であって、ニトリル基をアミド基に変換する活性を有する触媒を意味する。従って、本発明における生体触媒は、通常、ニトリル基をアミド基に変換する活性を有する酵素を産生する能力のある生体細胞及びその処理物を意味する。このような生体細胞として微生物菌体、動物細胞及び植物細胞を用いることができる。ニトリル基をアミド基に変換する活性を有する酵素としては、例えば、ニトリルヒドラターゼが挙げられる。
【0014】
生体細胞として微生物を用いる場合には、微生物を培養して得られる培養液をそのまま用いるか、又は、該培養液から遠心分離等の集菌操作によって得られる菌体又はその処理物等を用いることができる。菌体外に酵素が産生される場合は、遠心分離等の除菌操作を施した後の培養液をそのまま用いることもできるが、硫安処理等の濃縮精製操作を実施することがより有効である。菌体処理物としては、アセトン、トルエン等で処理した菌体、凍結乾燥菌体、菌体破砕物、菌体を破砕した無細胞抽出物、これらから酵素を抽出した粗酵素液、精製酵素等が挙げられる。
【0015】
これまでに、ニトリルヒドラターゼを産生する多くの微生物が報告されており、本発明に使用できるものとしては、特に制限されないが、例えば、バチルス(Bacillus)属、バクテリジューム(Bacteridium)属、マイクロコッカス(Micrococcus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属〔特公昭62−21519号〕、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属、ノカルディア(Nocardia)属〔特公昭56−17918号〕、シュードモナス(Pseudomonas)属〔特公昭59−37951号〕、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属〔特公平4−4873号〕、ロドコッカス(Rhodococcus)属〔特公平4−40948号〕、フザリウム(Fusarium)属〔特開昭64−86889号〕、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属〔特開平5−103681号、特開平6−14786号〕に属する微生物などが挙げられる。
【0016】
本発明においては、バチルス属、シュードノカルディア属、ロドコッカス属由来の生体触媒、具体的には、ロドコッカス・ロドクロス(Rhodococcus rhodochrous)種〔特公平6−55148号、SU1731814号〕、シュードノカルディア・サーモフィラ(Pseudonocardia thermophila)種由来の生体触媒を使用するのが、その酵素の活性が高い又は安定性が高いという観点から特に好ましい。
【0017】
本発明においては、ニトリルヒドロターゼを産生する微生物として、ニトリルヒドラターゼ遺伝子を導入することにより得られる形質転換体を使用することもできる。このような形質転換体は、上記のような天然のニトリルヒドラターゼ産生微生物からニトリルヒドラターゼ遺伝子を取得し、そのまま又は人為的に改良し、任意の宿主に導入することにより得ることができる。このような形質転換体としては、例えば、アクロモバクター(Achromobacter)属由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子で形質転換した大腸菌MT10770(FERM P−14756)〔特開平8−266277号〕、シュードノカルディア(Pseudonocardia)属由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子で形質転換した大腸菌MT10822(FERM BP−5785)〔特開平9−275978号〕又はロドコッカス・ロドクロウス(Rhodococcus rhodochrous)種由来のニトリルヒドラターゼ遺伝子〔特開平4−211379号〕で形質転換した微生物を例示することができる。上記形質転換体の作製は、当技術分野における通常の方法で実施することができる(Molecular Cloning 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。
【0018】
本発明の方法において生体触媒を反応に供するに際しては、該触媒が酵素活性を示す限りその使用形態は特に限定されず、これら生体触媒を常法により適当な担体に固定化して用いることもできる。固定化は、例えば、架橋したアクリルアミドゲル多糖類などで生体触媒を包括したり、又は、イオン交換樹脂、珪藻土、セラミックなどの固体担体に生体触媒を物理的、化学的に固定化することにより実施できる。生体触媒を固定化して用いることにより、触媒活性が上昇する場合が多い。更に、反応終了後の生体触媒の分離、回収が容易になるため、生体触媒を再利用できるとともに、反応生成物の単離も容易となる。
【0019】
また、これら生体触媒に、凍結乾燥もしくは真空乾燥等の処理を施すことにより、又はアセトン、メタノール、エタノール等の有機溶媒処理を施すことにより、該生体触媒の水分含有量を減じることができ、このように処理した生体触媒を使用すると反応が円滑に進行する場合が多い。
【0020】
本発明において、通常これら生体触媒を1種類用いるが、同様な能力を有する2種以上の生体触媒を混合して用いることも可能である。
【0021】
本発明において、生体触媒源の一つである微生物の培養は、通常これらの微生物が生育し得るものであれば何れのものでも使用できる。炭素源としては、例えば、グルコース、シュークロースやマルトース等の糖類、酢酸、クエン酸やフマル酸等の有機酸又はその塩、エタノールやグリセロール等のアルコール類等を使用できる。窒素源としては、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキスやアミノ酸等の一般天然窒素源の他、各種無機アンモニウム塩、有機酸アンモニウム塩等が使用できる。その他、無機塩、微量金属塩、ビタミン等が必要に応じて適宜添加される。また、高い触媒活性を得るために、オリーブオイル、大豆油等を含有する培地、又はエステル結合もしくはアミド結合を持つ化合物等を含有する培地で培養することも有効である。
【0022】
その培養は常法に従って行えばよく、例えば、pH4〜10、温度15〜40℃の範囲にて好気的に6〜96時間培養する。
【0023】
本発明において、青酸の濃度が1mg/Kg以下の(メタ)アクリロニトリルとは、原料となる(メタ)アクリロニトリル1Kg中に含まれる青酸が1mg以下の(メタ)アクリロニトリルを意味する。一般に市販されている(メタ)アクリロニトリル中には、0.1mg/Kg〜5mg/Kgの青酸が含まれており、本発明において、青酸の濃度が1mg/Kg以下の(メタ)アクリロニトリルとは、青酸濃度がもともと1mg/Kg以下であるもの、ならびにイオン交換樹脂処理やアルカリ処理を用いた青酸の(メタ)アクリロニトリルへの付加などによって青酸を1mg/Kg以下に除去、低減させたものの双方を含む。好ましくは青酸の濃度が0.7mg/Kg以下の(メタ)アクリロニトリルを使用する。
【0024】
(メタ)アクリロニトリル中の青酸の濃度は、NPD検出器(例えば、アリジェントテクノロジー社製)を備えたキャピラリーガスクロマトグラフ(例えば、DV225(アリジェントテクノロジー社製)カラム)を用いる方法、アルカリ水溶液で抽出した後硝酸銀水溶液で滴定する方法(ASTM E1178−87)等により測定できる。但し、測定方法によって(メタ)アクリロニトリル中の青酸濃度の測定値が異なる場合もあり、そのような場合には、本発明における(メタ)アクリロニトリル中の青酸の濃度とは、ASTM(E1178−87)で測定された値を意味するものとする。
【0025】
(メタ)アクリロニトリル中の青酸を除去又は低減させる方法としては、当技術分野で通常用いられる方法を使用でき、特に限定されないが、例えば、アルカリ水溶液で抽出する方法〔特開2001−288256〕、アルカリを添加することで(メタ)アクリロニトリルに青酸を付加させる方法〔特開平11−123098〕などが挙げられる。
【0026】
本発明において、生体触媒の存在下、(メタ)アクリロニトリルから(メタ)アクリルアミドを生成する反応は、いわゆる回分反応や半回分反応ではなく、(メタ)アクリロニトリルが連続的に又は断続的に反応槽に添加され、かつ同時に、反応槽から(メタ)アクリルアミドを含んだ反応液が連続的に又は断続的に抜き出されるようないわゆる連続反応によって製造される。
【0027】
この反応を行う系は、特に限定されないが、連続反応に適した系、例えば、連続攪拌槽、管型反応槽又は塔型反応槽を使用する系が好ましい。
【0028】
本発明においては、反応液の滞留時間θ(L)と生体触媒の滞留時間θ(c)が、式I:
θ(c)/θ(L)<1.2 (I)
で表される関係を満たす条件下で(メタ)アクリルアミド生成反応を行うが、このθ(L)とθ(c)の関係について以下に説明する。
【0029】
滞留時間とは、特定の物質が1つの系内に滞留している平均の時間を意味する。即ち、反応液の滞留時間θ(L)とは、反応液が反応槽内に滞留している平均の時間を意味し、「反応槽内の液量/反応槽内から流出する反応液の流速」により算出できる。同様に、生体触媒の滞留時間θ(c)は、「反応槽内の触媒量/反応槽から流出する単位時間当りの触媒量」により算出できる。反応槽内の触媒量は、反応槽内の反応液における触媒濃度と反応槽内に含まれる反応液の量により算出できる。
【0030】
このとき、反応槽内に触媒と反応液とを分離するもの、例えば、フィルター類及び生体触媒に対し親和性が高いものが存在しない場合、又はこれらが反応槽外に存在するがこれらによって分離された触媒を再度反応槽に戻さない場合であって、反応系内で触媒が滞留することがない場合にはθ(c)/θ(L)=1となる。一方、触媒と反応液に比重差等の物性の違いがあり触媒が滞る場合にはθ(c)/θ(L)>1となる。
【0031】
即ち、反応液の滞留時間θ(L)と生体触媒の滞留時間θ(c)が、θ(c)/θ(L)<1.2で表される関係を満たす条件とは、反応槽内に上記のような生体触媒と反応液とを分離する装置が存在しない場合、又はこれらが反応槽外に存在するがこれらによって分離された生体触媒を再度反応槽に戻さない場合であって、かつ触媒が滞ることが殆どないような条件を意味する。本発明においては、θ(c)/θ(L)の値が1.0〜1.2であることがより好ましい。
【0032】
多槽連続攪拌槽において、触媒、反応基質及び溶剤などを最上流からでなく途中で分割添加するような場合は、滞留時間の考え方は種々あるが、本発明では各反応槽における滞留時間の合計として考えることができる。このとき特に反応に寄与しない目的で触媒を蓄積させた槽がある場合、その槽内の量は除外して考えるものとする。
【0033】
反応槽内における生体触媒の濃度は、その生体触媒の活性により決定される。本発明においては、高活性な生体触媒を用いて触媒濃度を低くすることが好ましい。なぜなら、そうすることで生体触媒に由来する不純物が(メタ)アクリルアミドに混入する量を低減することができ、高品質な(メタ)アクリルアミド系ポリマーが得られるからである。具体的には、生体触媒が微生物菌体である場合には、微生物菌体の乾燥重量として、通常、10g/L以下、好ましくは0.001〜5g/Lである。
【0034】
また、生体触媒の滞留時間θ(c)は、通常、20日以内、好ましくは1時間〜10日である。適度な滞留時間とすることで、触媒由来の不純物が過剰に(メタ)アクリルアミド水溶液中に混入することを防止できる。一方、反応液の滞留時間は、通常、1時間〜20日、好ましくは3時間〜10日である。
【0035】
(メタ)アクリルアミド生成反応の反応条件は、酵素反応における通常の反応条件を使用することができ、酵素が失活しないものであれば特に制限されない。通常、反応温度は0〜50℃、水溶液のpHは5〜9、反応時間は1時間〜20日程度である。
【0036】
酵素法により水溶液中で(メタ)アクリルアミドを製造する際は、より高濃度に(メタ)アクリルアミドを蓄積させた方が経済的に好ましい。(メタ)アクリルアミド生成反応において(メタ)アクリルアミドは、通常30質量%以上、好ましくは40質量%以上の濃度になるまで蓄積させることが好ましい。また、本発明の(メタ)アクリルアミド系ポリマーの製造方法においては、(メタ)アクリルアミド生成工程において(メタ)アクリルアミドを30質量%以上の濃度になるまで蓄積させた場合に、特に高品質な(メタ)アクリルアミド系ポリマーが得られる。
【0037】
(メタ)アクリルアミド生成工程で得られた(メタ)アクリルアミドは、反応後の(メタ)アクリルアミド水溶液をそのまま重合反応に付してもよいが、必要であれば蒸発濃縮操作などの濃縮操作、ならびに活性炭処理、イオン交換処理及びろ過処理などの精製操作を行った後に重合反応に付してもよい。
【0038】
本発明において(メタ)アクリルアミド系ポリマーとは、(メタ)アクリルアミド単位を含むポリマーを意味する。すなわち、(メタ)アクリルアミドのホモポリマー、及び(メタ)アクリルアミドとこれと共重合可能な別の1種以上のモノマーとのコポリマーの双方を意味する。従って、本発明の(メタ)アクリルアミド系ポリマーの製造方法には、(メタ)アクリルアミド生成反応後の(メタ)アクリルアミド水溶液又は該水溶液を精製したものをそのまま重合反応に付すことにより(メタ)アクリルアミドホモポリマーを製造する方法、ならびに上記(メタ)アクリルアミド水溶液又はこれを精製したものに(メタ)アクリルアミドと共重合可能な1種以上の別のモノマーを添加してこれを重合反応に付すことにより(メタ)アクリルアミドコポリマーを製造する方法の双方が包含される。但し、本発明においては、(メタ)アクリルアミドのホモポリマーとする方が好ましい。
【0039】
(メタ)アクリルアミドと共重合可能なモノマーは、少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を有するものであれば特に限定されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリル酸のアルキルエステル。ここでアルキルは、低級アルキル、すなわち炭素数1〜5のアルキルであることが好ましい。具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチルなどが挙げられる。上記低級アルキルエステルにおいて、アルキルがヒドロキシル基等で置換されているものでもよく、例えば、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピルが挙げられる。
【0041】
(メタ)アクリル酸のN,N−ジアルキルアミノアルキルエステル及びその第四級アンモニウム塩。ここでアルキルは、低級アルキル、すなわち炭素数1〜5のアルキルであることが好ましい。具体的には、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノプロピル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノプロピルなどが挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリルアミド及びエタクリルアミドならびに(メタ)アクリルアミドのアミド基が置換されているアクリルアミド誘導体。例えば、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルキルアミノ、アルキルアミノアルキルでモノ置換又はジ置換されたものが挙げられる。ここで、アルキルは、低級アルキル、即ち、炭素数1〜5のアルキルが好ましく、ヒドロキシル基などで置換されていてもよい。具体的には、N−メチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0043】
(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸及びその水溶性塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩)。
【0044】
ビニル又はアリル置換複素環式化合物。具体的には、ビニルピロリドン、ビニルピリミジン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ビニルイミダゾリン、ビニルカプロラクタム、ビニルオキサゾリン及びこれらの第四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0045】
ビニルエーテル(メチル、エチル、ブチル又はドデシルビニルエーテル)、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、ビニルアミン、酢酸ビニルなども使用できる。
【0046】
上記のうちアミノ基を有するモノマーの第四級アンモニウム化合物も使用することができる。アミンの四級化は、例えば、塩化メチル、臭化メチル、塩化ベンジルなどを用いて実施できる。
【0047】
(メタ)アクリルアミドと共重合させるモノマーは、水溶性モノマーが好ましいが、得られるコポリマーの水溶性を損なわない限り、(メタ)アクリロニトリル及びスチレン等の難水溶性又は疎水性モノマーを使用することもできる。
【0048】
これらのうち、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド及びこれらの第四級アンモニウム塩;(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びこれら酸の水溶性塩;アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸ヒロドキシプロピル;メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、2−ビニルイミダゾリン、2−ビニルピリミジン及びこれらの第四級アンモニウム化合物;N−ビニルアセトアミド、酢酸ビニル、ビニルピロリドン等が好ましい。また、(メタ)アクリルアミドに添加するこれらのモノマーは、単独で添加してもよいし、複数種を組み合わせて添加してもよい。
【0049】
本発明の(メタ)アクリルアミド系コポリマーは、ランダムコポリマーでもブロックコポリマーでもよいが、ランダムコポリマーが好ましい。
【0050】
本発明の製造方法において、重合にあたってのモノマー溶液中における(メタ)アクリルアミドの濃度、又は共重合の場合は(メタ)アクリルアミドとこれと共重合可能なモノマーとの合計の濃度は、通常10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%である。10質量%以上とすることにより、高分子量の(メタ)アクリルアミド系ポリマーが得られ、90質量%以下とすることにより、重合中の架橋反応を防止し、ポリマーの溶解性低下や不溶化を抑えることができる。
【0051】
(メタ)アクリルアミドとその他のモノマーを重合させる場合、反応液における(メタ)アクリルアミドとその他のモノマーとのモル比は、通常、99.5:0.5〜5:95、好ましくは99:1〜10:90である。
【0052】
本発明における重合方法は、水系溶媒中で重合する方法が好ましい。重合方法としては、溶液重合、乳化重合、逆乳化重合、懸濁重合、逆懸濁重合又は沈殿重合などを使用できる。該水系溶媒は、水の他に水と混和性の有機溶媒、無機塩等を含んでいてもよい。
【0053】
重合温度は、0〜120℃の範囲、好ましくは10〜90℃の範囲であり、断熱重合方式又はベルト上で除熱しながらシート重合する方式などを必要に応じて採用できる。
【0054】
本発明の製造方法において使用される、重合開始剤としては、従来より知られている一般的なものが使用可能であり、特に限定されないが、例えば、過硫酸カリウムなどの過硫酸アルカリ金属、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、t−ブチルハイドロペルオキシド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−(2−アミジノプロパン)ジクロリド及び2,2′−アゾビス(2−メチル−ブチロニトリル)等のアゾ化合物、又はベンゾインエチルエール等の光分解型の重合開始剤が挙げられる。更には、上記過酸化物とのレドックス反応により開始剤を形成する亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウム、トリエタノールアミン、硫酸第一鉄等の還元剤も重合開始剤として使用することができる。これらの重合開始剤は、単独又は2種類以上を、常法に従って使用することができる。開始剤の量は、使用するモノマーの質量に基づいて、0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜1質量%である。
【0055】
得られた(メタ)アクリルアミド系ポリマーを、ミートチョッパーなどの解砕機を用いて解砕した後、乾燥し、更に、常法に従って粉砕器で粉砕することにより、粉末状の(メタ)アクリルアミド系ポリマー乾燥品が得られる。乾燥装置は特に制限はなく、棚段式乾燥機、ベルト乾燥機、回転乾燥機、流動乾燥機、赤外線乾燥機、高周波乾燥機など、適宜使用できる。
【0056】
本発明の方法によって製造した(メタ)アクリルアミド系ポリマーは、該ポリマーを4質量%の食塩水中に1質量%で溶解し、B型粘度計を用いてNo.3ロータで、回転数6rpm、25℃にて測定した場合に、2000mPa・s以上、更には3000mPa・s以上の粘度において、顕著な効果を有する。この粘度2000mPa・sは、アクリルアミド系ポリマーの分子量約1000万程度に相当する。
【0057】
本発明の(メタ)アクリルアミド系ポリマーは、水溶性で粘度が高いため廃水、特に無機系廃水を処理するための凝集剤として好適に使用することができる。該凝集剤は、従来の無機系凝集剤、例えば、ポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム及びポリリン酸鉄等をさらに含んでいてもよい。
【0058】
本発明の(メタ)アクリルアミド系ポリマーは、粘度が高く、かつ無色に近いことから、抄紙用増粘剤としても好適に使用することができる。
【0059】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例における%表示は質量%である。
【0060】
【実施例】
実施例
(1)菌体の調製
ニトリルヒドラターゼ活性を有するロドコッカス・ロドクロス J−1株(Rhodococcus rhodochrous J−1:FERM BP−1478)〔特公平6−55148号公報〕を、グルコース2%、尿素1%、ペプトン0.5%、酵母エキス0.3%、塩化コバルト0.05%を含む培地(pH7.0)により好気的に培養した。これを50mMリン酸緩衝液(pH7.0)にて洗浄して得られた菌体懸濁液(乾燥菌体換算20%)500gに、アクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド及び2−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが、それぞれ20、2及び2%濃度のモノマー混合溶液500gを加え、良く懸濁した。これに5%の過硫酸アンモニウム2g、50%のN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン2gを加え、重合、ゲル化させた。これを0.5〜1mm角の立方体に切断した後、0.5%の硫酸ナトリウム1Lで5回洗浄することにより、アクリルアミド製造触媒である固定化菌体粒子を得た。
【0061】
(2)使用するアクリロニトリル
オキサゾールの濃度が10mg/Kg、青酸の濃度が0.7mg/Kg(ASTM(E1178−87)での測定値)であるアクリロニトリル(ダイヤニトリックス社製)を、強酸性イオン交換樹脂Amberlyst15wet(オルガノ社製)で処理して、オキサゾールの濃度が5mg/Kg以下(アリジェントテクノロジー社ガスクロマトグラフ、カラムDB225、FID検出器で未検出)、青酸の濃度が0.7mg/Kgであるアクリロニトリルを調製し、これを使用した。
【0062】
(3)アクリルアミドの製造
内容積1Lのジャケットつき攪拌槽4個と内容積5Lのジャケットつき攪拌槽1個を、オーバーフローした反応液が次槽に入るように直列に繋いだ。各反応槽中の反応液の温度が20℃となるように制御した。第1槽目に、純水、(1)で調製した固定化菌体粒子、(2)で調製したアクリロニトリルを各々、120mL/hr、0.4g/hr、40mL/hrで連続的に添加した。更に第2槽、第3槽、第4槽にはアクリロニトリルのみを各々30mL/hr、10mL/hr、10mL/hrで添加した。第5槽目には何も添加せず第4槽から流入してくる触媒を伴った反応液を攪拌した。各反応槽は触媒が均一に分散するように攪拌し、オーバーフロー部でも反応液と触媒が区別なく同伴していた。第5槽目から流出してくる反応液は180メッシュの金網で固定化菌体を除去し、50%アクリルアミド水溶液を得た。この反応を10日間継続し、反応が安定した5日後からアクリルアミド50%溶液を採取した(約25L)。
【0063】
このときの滞留時間は、各反応槽での滞留時間の総和であり、反応液の滞留時間θ(L)は48.5時間であった。反応終了時各反応槽内の触媒を抜き出して、純水で洗浄後その重量を測定したところ、その合計は20gであった。即ちθ(c)は50時間であった。従って、θ(c)/θ(L)=1.03である。
【0064】
(4)アクリルアミド系ポリマーの製造
得られた50%アクリルアミド水溶液348質量部に98質量%のアクリル酸2質量部を加えたものを1Lビーカーに秤取した。これにイオン交換水400質量部を加え、苛性ソーダで中和してからイオン交換水を加えて全体を797質量部にし、液温を10℃に調整してから、溶液を1Lジュワー瓶に移した。この溶液を窒素ガスで30分間パージした後、重合開始剤として、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジクロリド10%水溶液1.5質量部、ハイドロサルファイトナトリウム0.2%水溶液1質量部、t−ブチルハイドロペルオキシド0.2%水溶液0.5質量部を添加し、重合を開始した。重合は断熱的に進行し、ピーク温度は約74℃に達した。ピーク温度に達してから30分後、ポリマーを取り出し、鋏で5cm角に切り、目皿5mmφの解砕機(ミートチョッパー)で解砕した。解砕したゲルを温風乾燥器にて60℃で16時間乾燥したものを目皿2mmφのウイレー型粉砕器にて粉砕した。次に、粒径0.15〜1.0mmに篩別しアクリルアミドとアクリル酸の共重合ポリマー粉体を得た。
【0065】
(5)ポリマーの評価
得られたポリマー粉体を1質量%濃度で4質量%食塩水中に溶解し、B型粘度計を用いて、25℃で1%塩粘度を測定した。
また、ポリマーの色調についてはポリマー粉体を目視にて観察した。
結果を表1に示す。
【0066】
比較例1
アクリロニトリルとして、意図的に青酸を添加し、青酸の濃度が5mg/Kg、オキサゾールの濃度が5mg/Kg以下のアクリロニトリルを使用したこと以外は実施例1と同様にして、アクリルアミドとアクリル酸の共重合ポリマー粉体を作成し、その評価を実施した。
【0067】
比較例2
各反応槽のオーバーフロー部に目開き1.5mmの金網を設置し固定化菌体粒子の流出を不完全に阻害することで、各反応槽内の固定化菌体粒子の量を増やしてアクリルアミドの製造を実施したこと以外は実施例1と同様にして、アクリルアミドとアクリル酸の共重合ポリマー粉体を作成し、その評価を実施した。尚、アクリルアミド製造反応終了時反応槽内に残っている触媒量を実施例1と同様に測定したところ43gであった。即ちθ(c)は107.5時間であり、従って、θ(c)/θ(L)=2.2である。
【0068】
【表1】
Figure 2004283128
【0069】
【発明の効果】
本発明により、従来品と比較してより粘度が高く色調が良いという、高品質で非常に有用性が高い(メタ)アクリルアミド系ポリマーを得ることができる。そして、本発明により、優れた凝集剤及び抄紙用増粘剤を提供できる。

Claims (4)

  1. 生体触媒の存在下、青酸の濃度が1mg/Kg以下である(メタ)アクリロニトリルを、反応液の滞留時間θ(L)と生体触媒の滞留時間θ(c)が式I:
    θ(c)/θ(L)<1.2 (I)
    で表される関係を満たす条件下で反応させることによって(メタ)アクリルアミドを生成し、生成した(メタ)アクリルアミドを含むモノマーを重合することを特徴とする(メタ)アクリルアミド系ポリマーの製造方法。
  2. (メタ)アクリルアミドの生成において、(メタ)アクリルアミドを、反応液中の濃度が30質量%以上になるまで蓄積させる請求項1に記載の方法。
  3. 生体触媒が微生物菌体又はその処理物である請求項1又は2に記載の方法。
  4. (メタ)アクリルアミドを含むモノマーが、(メタ)アクリルアミドと重合可能な別のモノマーをさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
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