JP2004281700A - ブレード着脱補助装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】高速回転可能なスピンドル24と;スピンドル24に装着されるブレードと;ブレード22をスピンドルに固定するためのナット40と;スピンドル24の回転を制限する回転制限部と;を備えた切削装置,のブレード着脱補助装置100が提供される。このブレード着脱補助装置100は,回転制限部によりスピンドルの回転が制限された状態で,ナット40の表面に形成された被係合部と係合してナット40を回転させる,ナット回転部60と;少なくともナット回転部60によりナット40を回転させる際に,ナット40の外周部を把持する,ナット把持部70と;を備えることを特徴とする。かかる構成により,ナットの外周部を把持しながら,ナットを締結/弛緩させる方向に回転させることができる。
【選択図】 図11
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,被加工物を切削加工する切削装置のブレードを脱着するためのブレード着脱補助装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイシング装置等の切削装置は,一般的に,半導体ウェハ等の被加工物を保持するチャックテーブルと,切削用のブレードが装着された切削ユニットとを備えており,高速回転させたブレードを被加工物に切り込ませながら双方を相対移動させることによって,被加工物を切削加工することができる。この切削ユニットは,高速回転可能なスピンドルの一端に,ブレードをフランジ等により挟持固定して装着する構成である。
【0003】
ところで,このようなブレードは,その消耗または破損により,あるいは被加工物の種類や切削加工の内容等に応じて,適宜交換する必要がある。また,かかるブレード交換に伴ってフランジをも交換する場合もある。このようなブレード交換時には,例えばフランジ或いはスピンドルと螺合するナットを締結/弛緩して,ブレードを脱着することが一般的であった(特許文献1参照)。ところが,このとき,ナットの回転に伴ってスピンドルもが回転してしまうと,ナットを好適に締結/弛緩できないという問題があった。
【0004】
かかる問題に対処するため,本願発明者らは,図14(a)に示すように,切削ユニット120に,スピンドル124をロック可能なロック機構150を設ける発明に想到した(特許文献2参照)。このロック機構150を利用することにより,ブレード交換時において,スピンドル124の回転をロックした上で,ナット回転用治具160を用いてナット140を締結/弛緩させることができる。
【0005】
具体的には,図14(a)(b)に示すように,まず,ロック機構150の係止部材152を係合孔158に係合させることにより,スピンドル124を回転しないように固定する。次いで,ナット140に対して,その係合孔142に係合するような係合ピン162を備えたナット回転用治具160を取り付ける。さらに,かかるナット回転用治具160の六角孔164に挿入したレンチ110を,ナット140が螺脱する方向に回転させる。これにより,固定されたスピンドル124に対してナット140が相対的に回転するため,ナット140の締結が緩み,その結果,ナット140が螺脱される。その後,フランジ121の一側を取り外してブレード122等を交換した上で,上記と同様な手法で,ナット140を螺入して締結し,新たなブレード122をスピンドル124に固定していた。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−179619号公報
【特許文献2】
特願2003−19350号
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,上記従来のナット回転用治具では,その係合ピンをナットの係合孔に挿入して係合させた状態を維持することが困難であった。このため,かかるナット回転用治具によってナットを回転させたときに,係合ピンが係合孔から逃げて空回りしてしまうので,ナットの締結/弛緩作業が困難であり,また,ナットの表面を傷つけてしまうという問題もあった。
【0007】
また,従来のナット回転用治具では,単に係合孔に挿入された係合ピンによってのみ,ナットを支持する構成であった。このため,ブレード交換時において,取り外した或いは取り付けようとするナットが,ナット回転用治具から容易に外れて,落下してしまうという問題もあった。従って,ブレード交換作業におけるナットの取り扱いが不便であり,ナットを紛失してしまうこともあった。
【0008】
本発明は,上記問題点に鑑みてなされたものであり,本発明の目的は,ブレードを固定するためのナットを,傷つけたり落下させたりすることなく,容易かつ好適に締結/弛緩することが可能な,新規かつ改良されたブレード着脱補助装置を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため,本発明の第1の観点によれば,高速回転可能なスピンドルと;スピンドルに装着されるブレードと;ブレードをスピンドルに固定するためのナットと;スピンドルの回転を制限する回転制限部と;を備えた切削装置,のブレード着脱補助装置が提供される。このブレード着脱補助装置は,回転制限部によりスピンドルの回転が制限された状態で,ナットの表面部に形成された被係合部と係合してナットを回転させる,ナット回転部と;少なくともナット回転部によりナットを回転させる際に,ナットの外周部を把持する,ナット把持部と;を備えることを特徴とする。
【0010】
かかる構成により,ブレードの交換作業等を行うためブレードをスピンドルから脱着する際には,回転制限部が動作して,スピンドルが回転しないように固定できる。このようにスピンドルが固定された状態で,ブレード着脱補助装置は,ナット把持部によってナットの外周部を把持しながら,ナット回転部によって,係合したナットを締結/弛緩させる方向に回転させることができる。また,ナット把持部は,取り外したナットをそのまま保持することができる。
【0011】
また,上記ナット把持部は,ナットの外周部を把持する複数の係止爪を備えるように構成してもよい。ここで,掛止爪がナットの外周部を把持するとは,掛止爪がナットの外周部を係止することを含むものとする。かかる構成により,ナット把持部は,複数の掛止爪によってナットの外周部を安定的かつ好適に把持できる。また,掛止爪は可動であるので,容易にナットに取り付ける/取り外すことができる。また,少なくともこの掛止爪を弾性材料で形成してもよい。
【0012】
また,上記ナット把持部の係止爪は,ナットの外周部に形成された被係合部と係合するように構成してもよい。かかる構成により,ナット外周部に取り付けられた掛止爪は,係合部と係合することにより外れにくいので,ナット外周部をより好適に把持できる。
【0013】
また,上記ナット把持部は,ナットの外周部に取り付け可能な取付位置と,ナットの外周部を把持して,ナット回転部とナットとの係合を維持する固定位置と,の間において,移動可能であり;取付位置においては,ナットの外周部の把持開放動作が可能であり;固定位置においては,ナットの外周部の開放動作が制限されるように構成してもよい。かかる構成により,取付位置では,ナット回転部をナットに係合/係合解除可能であるとともに,ナット把持部をナットの外周部に取り付け/取り外し可能となる。このため,取付位置では,ブレード着脱補助装置をナットに取り付けたり,取り外したりすることができる。一方,固定位置では,ナット把持部をナット外周部から取り外し不能となり,ナット回転部とナットとの係合を維持しながら,ナット把持部によるナットの外周部の保持状態を維持することができる。このため,固定位置では,ブレード着脱補助装置は,ナットから外れることなく,当該ナットを好適に回転させることができる。
【0014】
また,上記ブレード着脱補助装置は,少なくとも取付位置および固定位置を位置決めする,位置決め手段を備えるように構成してもよい。かかる構成により,上記ナット把持部の取付位置と固定位置の位置決めを容易に制御できる。
【0015】
また,上記回転制限部は,スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングに設けられるようにしてもよい。また,この回転制限部は,スピンドルの回転をロックするスピンドルに設けられた少なくとも1の係合孔と係合することにより,スピンドルを係止する係止部材を備える,ように構成してもよい。かかる構成により,係止部材は,その一端が挿入された係合孔と係合するとにより,スピンドルが回転しないように係止できる。また,この回転制限部は,加圧媒体によって前記係止部材を前記係合孔に挿入する方向に押圧する押圧手段を備える,ように構成してもよい。また,この回転制限部は,前記係止部材に対して前記係合孔から抜脱する方向に弾性力を加える弾性部材を備える,ように構成してもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
(第1の実施の形態)
以下に,本発明の第1の実施形態について説明する。以下では,まず,本実施形態にかかる切削装置およびこの切削装置に設けられたロック装置の概要について説明した上で,本実施形態にかかる特徴であるブレード着脱補助装置について詳細に説明する。
【0018】
まず,図1に基づいて,本実施形態にかかる切削装置の一例として構成されたダイシング装置10の全体構成について説明する。なお,図1は,本実施形態にかかるダイシング装置10を示す全体斜視図である。
【0019】
図1に示すように,ダイシング装置10は,半導体ウェハなどの被加工物12を切削加工する切削ユニット20と,被加工物12を保持するチャックテーブル30とを主に備える。切削ユニット20は,切削用のブレード(詳細は後述する。)を備えており,かかるブレードを高速回転させながら被加工物12に切り込ませることで,被加工物12を切削加工することができる。また,チャックテーブル30は,例えば,ウェハテープ13によりフレーム14に支持された状態の被加工物12を,例えば真空吸着して保持することができる。かかる構成のダイシング装置10は,高速回転するブレードを被加工物12に切り込ませながら,切削ユニット20とチャックテーブル30とを相対移動させることにより,被加工物12をダイシング加工することができる。
【0020】
次に,図2に基づいて,本実施形態にかかる切削ユニット20の全体構成について説明する。なお,図2は,本実施形態にかかる切削ユニット20を示す斜視図である。
【0021】
図2に示すように,切削ユニット20は,例えば,フランジ21と,ブレード22と,スピンドル24と,スピンドルハウジング26と,切削水供給ノズル28と,ホイルカバー29と,ナット40と,ロック機構50と,を主に備える。
【0022】
ブレード22は,例えば,リング形状を有する極数の切削砥石である。かかるブレード22は,例えば,フランジ21により両側より挟持された状態で,スピンドル24に軸設される。また,スピンドル24は,例えば,モータ(図示せず。)などの回転駆動力をブレード22に伝達するための回転軸であり,装着されたブレード22を例えば30000rpmで高速回転させることができる。また,スピンドルハウジング26は,このスピンドル24を覆うようにして設けられ,内部に備えたベアリング機構などにより当該スピンドル24を高速回転可能に支持することができる。また,切削水供給ノズル28は,例えばブレード22の側方に脱着可能に設けられ,加工点付近に切削水を供給して冷却することができる。また,ホイルカバー29は,ブレード22の外周を覆うにして設けられ,切削水や切り屑などの飛散を防止することができる。
【0023】
また,ナット40は,ブレード22をスピンドル24に固定するために,例えば,フランジ21に締結されるナット部材である。このナット42の表面(切削ユニット20に取り付けたときに外側(オペレータ側)に現れる面をいう。)には例えば4つの係合孔42が,例えば略等間隔で形成されている。このナット40の詳細については後述する。
【0024】
かかる構成の切削ユニット20は,スピンドル24の回転駆動力によりブレード22を高速回転させ,かかるブレード22を被加工物12に切り込ませながら相対移動させることができる。これにより,例えば,被加工物12の加工面を切削加工して,ストリートに沿って極薄の切溝(カーフ)を形成することができる。
【0025】
また,このような切削ユニット20においては,図2に示すように,例えば,スピンドルハウジング26の一側面にロック機構50が設けられている。かかるロック機構50は,本実施形態にかかる回転制限部として構成されており,スピンドル24をロックして,その回転を制限することができる。このロック機構50の詳細については後述する。
【0026】
次に,図3に基づいて,本実施形態にかかる切削ユニット20においてブレード22をスピンドル24に装着する態様について説明する。なお,図3は,本実施形態にかかる切削ユニット20を分解して示した分解組立斜視図である。
【0027】
図3に示すように,スピンドル24は,例えば,先端部24bが略テーパ形状を有しており,かかる先端部24bにフランジ21等が軸設される。また,スピンドル24の先端部24bには,ボルト27と螺合する雌ねじ部24aが形成されている。
【0028】
また,フランジ21は,例えば,フランジアセンブリとして第1フランジ21aおよび第2フランジ21bからなり,双方を組み合わせることによってブレード22を両側より挟持することができる。第1フランジ21aには,ナット40と螺合するフランジ雄ねじ部21cが形成されている。また,第1フランジ21aには,スピンドル24の先端部24bを途中まで挿通させるための所定径を有する中心孔21dが形成されている。なお,フランジアセンブリとしては,多様な形態が考えられ,図3に示すような第1フランジ21aと第2フランジ21bの形態に限定されるものではない。
【0029】
以下に,かかるフランジ21を用いて,ブレード22をスピンドル24に装着する手順例について説明する。
【0030】
まず,ブレード22を第1フランジ21aに嵌め,次いで,第2フランジ21bを第1フランジ21aに嵌合させて,双方の間にブレード22を挟み込む。さらに,ナット40を第1フランジ21aのフランジ雄ねじ部21cに螺合して締め付けることにより,ブレード22は第1フランジ21aと第2フランジ21bによって挟持・固定される。
【0031】
次いで,ブレード22を挟持しているフランジ21(即ち,第1フランジ21a及び第2フランジ21b)の中心孔21dに,スピンドル24の先端部24bを挿通する。その後,例えば,ボルト27をスピンドル24の雌ねじ部24aに螺合して締め付ける。このボルト27の締め付け作業は,例えば,ボルト27の頭に形成された六角穴27aにトルクレンチ(図示せず。)などを挿入し,このトルクレンチをボルト27が螺入する方向に回転させることによって行われる。
【0032】
このボルト27の締結により,略テーパ形状の先端部24bがフランジ21の中心孔21dに十部に押入されて,双方が密接するので,フランジ21がスピンドル24に安定的に固定される。以上のようにして,フランジ21に挟持されたブレード22が,スピンドル24に軸着される。
【0033】
なお,上記のように,図3の例の切削ユニット20は,スピンドル24に形成された雌ネジ部24aに螺合するボルト27を用いて,ブレード22を挟持するフランジ21をスピンドル24に固定するボルトタイプの切削ユニットである。しかし,切削ユニット20は,かかる例に限定されず,例えば,スピンドル24に形成された雄ネジ部(図示せず。)に螺合するナット(図示せず。)を用いて,ブレード22を挟持するフランジ21をスピンドル24に固定するナットタイプの切削ユニットであってもよい。
【0034】
このようにスピンドル24に対して,装着されたブレード22を交換するときには,例えば,上記ナット40を弛緩して第1フランジ21aから螺脱した上で,第2フランジ21bを取り外してブレード22を交換した後,再度ナット40を螺合させて締結する必要がある。なお,このナット40の締結/弛緩作業は,例えば,後述するブレード脱着装置を用いて行われる。また,フランジ21ごとブレード22を交換するときには,例えば,上記ボルト27を弛緩させてスピンドル24の雌ねじ部24aから螺脱した上で,ブレード22及びフランジ21を交換した後,再度ボルト27を螺合させて締結する必要がある。
【0035】
しかし,このとき,スピンドル24が自由に回転したのでは,ナット40またはボルト27を好適に締結/弛緩できない。従って,スピンドル24を固定して回転不能とする必要がある。
【0036】
そこで,本実施形態では,例えば,切削ユニット20に,スピンドル24を必要に応じてロックするロック装置50が設けられている。これにより,上記のようなブレード22及び/又はフランジ21の脱着時におけるナット40またはボルト27の締結/弛緩作業などを,確実,迅速かつ容易に行うことができる。
【0037】
ここで,図4に基づいて,本実施形態にかかるロック装置50の構成およびスピンドルハウジング26の内部構成について説明する。なお,図4は,本実施形態にかかるロック装置50の構成およびスピンドルハウジング26の内部構成を示す部分切り欠き側面図である。この図4では,説明の便宜上,スピンドルハウジング26およびシリンダ部54の一部を,スピンドル24の中心軸を含む水平面で切断した断面で表してある。
【0038】
図4に示すように,スピンドルハウジング26は,その内周面に,例えば2つのラジアルエアベアリング262a,262bと,例えば1つのスラストエアベアリング262c(以下では,これらをベアリング262と総称する場合もある。)を備える。かかるベアリング262は,例えば,エアを噴出することによって,非接触の状態でスピンドル24をラジアル方向及びスラスト方向に支持することができる。このため,スピンドルハウジング26は,回転するスピンドル24を安定して支持することができる。
【0039】
また,スピンドル24は,例えば,モータを構成するロータ242に連結されており,ロータ242の回転に伴って高速回転することができる。また,このスピンドル24の外周面には,例えば,スラスト方向の中央付近に,例えば3つの係合孔58(1つはスピンドルの裏側にあるため図示されていない。)が,例えば円周方向に等間隔で設けられている。この係合孔58は,例えば略円形状の凹部であり,後述するロック装置50の係止部材52と係合可能な形状に成形されている。また,かかる係合孔58のスラスト方向の位置は,当該係止部材52に対応した位置となるように調整されている。
【0040】
また,ロック装置50は,例えば,スピンドルハウジング26の中央部付近の一側などに設置されている。このロック装置50は,例えば,係止部材52と,シリンダ部54と,バネ部材56と,を備える。
【0041】
係止部材52は,例えば,金属材料などで形成された棒状部材であり,例えば係止ピンなどで構成できる。この係止部材52は,例えば,比較的大径で短い頭部52aと,比較的小径で長い胴部52bとからなる。この頭部52aの径は,例えば,シリンダ部54の内径と略同一となるように調整されているので,頭部52aの外周面がシリンダ部54内周面と密接する。このため,頭部52aは,その一側と他側との間を気密状態に保ちながら,シリンダ部54内をスピンドル24に近づく或いは遠ざかる方向に円滑に往復移動できる。これにより,係止部材52は,シリンダ部54内でピストンとして機能できる。
【0042】
かかる構成の係止部材52は,胴部52bの先端が上記スピンドル24の係合孔58と係合するとともに,頭部52aがシリンダ部54によって支持されることにより,スピンドル24を係止することができる。
【0043】
シリンダ部52は,例えば,各種の金属類などで形成されたシリンダユニットであり,略円柱形状の内部空間に収容した上記係止部材52をピストンとして機能せしめるシリンダとして構成されている。また,シリンダ部54の内部空間に突出形成された突起部54bは,係止部材52の頭部52aと当接して,係止部材52がスピンドル24から離れる方向に過度に移動することを制限できる。
【0044】
また,このシリンダ部52には,例えば,その一端にエア供給用ノズル59が装着されるとともに,このエア供給用ノズル59と係止部材52を収容している内部空間とを連通する連通孔54aが内部に形成されている。かかる構成により,シリンダ部54は,例えば,外部に設けられたエア供給用ポンプ(図示せず。)などから供給されたエアを,エア供給用ノズル59および連通孔54aを介して,係止部材52の頭部52a側の内部空間に供給することができる。かかるエアの供給により,当該頭部52a側の内部空間内の気圧を高めて,係止部材52を頭部52a側から加圧することができる。即ち,例えば高圧のエアが加圧媒体として機能して,係止部材52を頭部52a側から押圧することができる。これにより,係止部材52は,シリンダ部54の内周面に沿ってスピンドル24方向に押し出されるので,係合孔58と係合することができる。なお,かかるエアによる係止部材52に対する押圧力(加圧されたエアが係止部材52を押圧する力)が,例えば,後述するバネ部材56の弾性力よりも大きくなるように,エアの供給量が調整されている。これにより,当該エアによる押圧力が当該弾性力に打ち勝って,係止部材52を係合孔58に押入させることができる。
【0045】
このように,本実施形態では,かかるシリンダ部52,エア供給用ノズル59およびエア供給用ポンプなどは,加圧媒体(エア)を用いて係止部材52を押圧して,係合孔58に挿入する押圧手段として構成されている。
【0046】
バネ部材56は,例えば,スプリングなどであり,本実施形態にかかる弾性部材として構成されている。このバネ部材56の径は,係止部材52の胴部52bの外径より大きく,シリンダ部54の内径より小さくなるように調整されている。かかるバネ部材56は,例えば,その内部に係止部材52の胴部52bが挿入された状態で,シリンダ部54の内部空間に設置される。これにより,バネ部材56は,係止部材52の頭部52aとシリンダ部54の張出部54cとの間に挟まれて収縮した状態となるので,双方を引き離す方向の弾性力を継続的に作用させることができる。
【0047】
かかるバネ部材56は,上記のようにエア圧力により係止部材52がスピンドル24方向に移動してきた場合には,係止部材52の頭部52aとシリンダ部54の張出部54cとの間に挟まれて,さらに収縮する。このように収縮したバネ部材56は,係止部材52に対して,スピンドル56から離隔する方向にさらに大きい弾性力を作用させる。このため,例えば,上記エアの供給が停止した場合には,バネ部材56は,当該弾性力により,係止部材52をスピンドル24から離隔する方向に移動させて,係合孔58から抜脱させることができる。
【0048】
以上のような構成のロック装置50は,例えば,供給されたエアの布勢力を利用して,スピンドル24の係合孔58に対して係止部材52を挿入することにより,スピンドル24が回転しないようにロックすることができる。また,エアの供給が停止された場合には,バネ部材56の弾性力を利用して,係止部材52を係合孔58から抜脱することにより,スピンドル24のロックを解除することができる。即ち,ロック装置50は,エアの供給をON/OFFするだけで,係止部材52を係合孔58に対して挿抜して,スピンドル24のロック開閉を自動的に行うことができる。
【0049】
次に,図5および図6に基づいて,本実施形態にかかる特徴であるブレード着脱補助装置100について説明する。なお,図5は,本実施形態にかかるブレード着脱補助装置100の全体構成を示す分解組立斜視図である。また,図6は,本実施形態にかかるブレード着脱補助装置100の全体構成を示す分解組立断面図である。
【0050】
図5および図6に示すように,ブレード着脱補助装置100は,例えば,ブレード22をスピンドル24から脱着するための補助装置である。このブレード着脱補助装置100は,例えば,上記切削ユニット20のナット40に取り付けられ,かかるナット40を回転させて,締結或いは弛緩することができる。かかるブレード着脱補助装置100は,例えば,ナット回転部60と,ナット把持部70と,本体部70と,から構成されている。
【0051】
ナット回転部60は,例えば,係合したナット40を回転させるための治具であり,その材質は例えばステンレスなどである。このナット回転部60は,例えば,比較的大径の略円筒状形状を有するナット回転本体部66と,回転本体部68の一側に連結された比較的小径の略円筒状を有する底部68とから構成されている。
【0052】
このナット回転部60は,例えば,ナット回転本体部66の一側に例えば4つの係合ピン62が固設されている。この係合ピン62は,例えば,略円柱形状等を有するピン部材であり,ナット40の表面に形成された係合孔42と係合することができる。この係合ピン62は,当該ナット40の係合孔42と好適に係合できるように,その大きさおよび形状が調整されている。また,例えば4つの係合ピン62の配置も,当該ナット40に形成された例えば4つの係合孔42の配置に合うように調整されている。
【0053】
また,ナット回転部60の底部68には,例えば,L型のレンチ等と係合するレンチ用係合孔64が設けられている。このレンチ用係合孔64は,例えば,挿入されるレンチの形状に応じて成形され,例えば六角孔などとすることができる。
【0054】
このような,ナット回転部60は,例えば,上記係合ピン62をナット40の係合孔42に挿入して係合させた状態で,円周方向に回転することにより,ナット40を回転させることができる。このときのナット回転部60の回転は,例えば,上記レンチ用係合孔64に挿入されたレンチ等によってなされてもよく,或いは,本体部80を把持した作業者がブレード着脱補助装置100全体を回転させることによってなされてもよい。
【0055】
ナット把持部70は,例えば,ナット40の外周部を保持するための治具であり,その材質は例えばプラスチック等の合成樹脂などである。この回転本体部66は,例えば,ナット保持本体部71と,複数の係止爪72とから形成されている。
【0056】
ナット保持本体部71は,例えば,略円柱形状の基台であり,その外周面には,例えば環状の第1の溝74および第2の溝76が所定間隔で形成されている。また,このナット保持本体部71の中心には,上記ナット回転部60の底部68を挿入するための連結孔78が形成されている。この連結孔78の径は,底部68と好適に嵌合可能な大きさに調整されている。また,ナット保持本体部71の一側の外周部には,例えば,円周方向に配列された複数の掛止爪72が延長形成されている。この複数の係止爪72は,全体としては,例えば略円筒形状をなしており,この円筒形状の内径は,例えば,ナット40の外径よりわずかに小さく(例えば0.5mm程度),かつ,上記ナット回転本体部66の外形よりも大きくなるように調整されている。かかる係止爪72は,ナット40の外周部を把持する機能を有するが詳細については後述する。
【0057】
本体部80は,例えば,上記ナット回転部60およびナット把持部70を収容するための治具であり,その材質は例えばアルミニウムなどである。この本体部80は,全体としては,例えば,略円筒形状を有しており,その内径は,上記ナット保持本体部71の外径と略同一である。また,本体部80は,例えば,外周面の中央付近に段差82を有するとともに,その内周面にも段差84を有する。
【0058】
かかる本体部80は,その内部に上記ナット回転部60およびナット把持部70を収容して,支持することができる。また,本体部80は,このようにして本体部80に収容されたナット回転部60およびナット把持部70は,一体となって,当該本体部80に対して,例えば,軸方向(図5の上下方向)に所定距離だけ移動可能である。このように軸方向に移動したときの位置は,後述する位置決め手段によって位置決めされる。一方,円周方向には,ナット回転部60およびナット把持部70は,本体部80に対して回転できないように固定されている。このため,作業員が,本体部80の外周面を把持して回転させることにより,この本体部80に収容されているナット回転部60およびナット把持部70も,ともに回転することとなる。なお,この本体部80の外周面には,例えば,作業員が把持して回転させるときに滑らないように,複数の溝,切れ込みまたは突起などを形成したり,ゴム等の滑り止めとなる部材を取り付けたりして,摩擦力を向上するようにしてもよい。
【0059】
以上のように,ブレード着脱補助装置100を構成する3つの部材について説明した。かかる3つの部材を組み立てる時には,例えば,図6に示すように,まず,ナット回転部60の底部68を,ナット把持部70の連結孔78に挿入して嵌合するようにして,ナット回転部60とナット把持部70とを接合する。これにより,例えば,ナット回転部60の外周部が複数の掛止爪72によって覆い包まれるようになる。次いで,このように接合されたナット回転部60およびナット把持部70を,本体部80の内部に挿入する。このとき,例えば,ナット把持部70の底部に形成された例えば2つの凹部77と,本体部80の底部側に取り付けられる例えば2つの連結プレート86と,の位置を合わせるようする。さらに,例えば,本体部80の底部側から,ネジ部材87を,連結プレート86の雌ネジ部89,ナット把持部70の雌ネジ部79,およびナット回転部60の雌ネジ部69に螺合させることによって,ナット回転部60,ナット把持部70および本体部80を連結する。
【0060】
なお,例えば,ナット把持部70と本体部80との連結は連結プレート86を介してなされるが,この連結プレート86は,一端がナット把持部70の凹部77に係合して固定され,他端が本体部80の内周面に形成された凹部88に係止される。このような連結プレート86により,上記のように,例えば,ナット把持部70が,軸方向には移動できるものの,本体部80に対して回転しないようにできる。
【0061】
次に,ナット把持部70の係止爪72がナット40の外周部を保持する態様について説明する。
【0062】
まず,図7に基づいて,本実施形態にかかるナット把持部70の係止爪72について詳細に説明する。なお,図7(a),(b)は,本実施形態にかかるナット把持部70を示す平面図およびA−A断面図である。
【0063】
図7(a)に示すように,ナット保持本体部71の上部には,例えば,24つの掛止爪72が円周方向に沿って略均等に配列されている。この係止爪72は,上記のように合成樹脂などの弾性材料で形成されているので,外力が加わると,例えばナット把持部70の直径方向に弾力的に可動である。よって,このように円環状に配列された複数の係止爪72をナット40の外周部に合わせて押し付けると,各々の係止爪72が拡径する方向(外側)に撓んで,ナット40の外周部と係合することができる。換言すると,例えば,ナット把持部70をナット40に押圧することにより,複数の係止爪72の内側にナット40を嵌め込むようにして,ナット把持部70をナット40に取り付けることができる。
【0064】
この係止爪72は,図7(b)に示すように,先端に形成された係止用凸部72aと,その下部に形成された係止用凹部72bとを有している。このような係止用凸部72aおよび係止用凹部72bは,ナット40の外周部に形成された被係合部(詳細は後述する。)と好適に係合するような形状で形成されている。このため,ナット40に取り付けられた当該係止爪72は,ナット40の外周部を安定的に係止することができる。このようにして,それぞれの係止爪72がナット40の外周部を係止するので,ナット把持部70はナット40の外周部を好適に把持することができる。
【0065】
次に,図8に基づいて,本実施形態にかかる特徴の1つであるナット40について詳細に説明する。なお,図8(a),(b)は,本実施形態にかかるブレード着脱補助装置100によって脱着されるナット40を示す平面図および側面図である。また,図8(c)は,従来のナット40’を示す側面図である。
【0066】
図8(a)に示すように,ナット40は,例えば,その表面に例えば4つの係合孔42が略均等に配されたフランジナットである。この係合孔42は,本実施形態にかかる「ナットの表面部に形成された被係合部」として構成されており,上記ナット回転部60の係合ピン62と係合することができる。また,ナットの表面部とは,ナット40を切削ユニット20に取り付けたときに外側(ブレードと反対側)に現れる例えば略平坦面(例えば図8(a)に示されている面)である。
【0067】
また,図8(b)に示すように,このナット40の外周部には,例えば,略テーパ形状の被係合部44が形成されている。この被係合部44は,上記係止爪72の先端部の形状に応じた形状を有しており,係止爪72がナット40を係止しやすいように改良されている。
【0068】
即ち,従来のナット40は,図8(c)に示すように,その外周部には段差がなく,係止爪72が引っかかりにくい形状であった。これに対して,本実施形態にかかるナット40は,例えば,比較的大径な中央部分から裏面側(フランジ21側)に向かうにつれてその径が徐々に小さくなるような被係合部44が形成されている。このため,上記係止爪72は,例えば,その掛止用凸部72aを被係合部44の小径な部分と接合させ,掛止用凹部72bを被係合部44からナット40の中央部分にかけての部分と接合させることで,被係合部44と好適に係合することができる。このため,係止爪72は,ナット40の外周部を係止した状態を容易に維持することができる。従って,ナット把持部70は,大きな外力が加わらない限り,ナット40の外周部を安定的に保持することができる。
【0069】
次に,図9に基づいて,本実施形態にかかるブレード着脱補助装置100の位置決め手段について説明する。なお,図9は,本実施形態にかかるブレード着脱補助装置100のナット把持部70,本体部80および位置決め手段を示す説明図である。なお,図9では,説明の便宜上,ナット把持部70を側面図として,本体部80を一部切り欠き断面図として示してある。
【0070】
図9に示すように,本実施形態にかかる位置決め手段は,例えば,本体部80に設けられた例えば1組のボール部材82およびばね部材84と,ナット把持部材70の外周面に形成された第1の溝74および第2の溝76と,から構成される。
【0071】
ボール部材82およびばね部材84は,例えば,円筒形状を有する本体部80に穿孔されたシリンダ内に配置される。ボール部材82は,第1の溝74または第2の溝76と嵌合可能な形状を有しており,ばね部材84の弾性力によってナット把持部材70の外周面に向けて付勢されている。このため,ボール部材82は,ナット把持部70の移動により第1の溝74または第2の溝76が対応する位置にきたときには,当該溝74,76に嵌合することができる。
【0072】
かかる構成により,位置決め手段は,例えば,本体部80に対するナット把持部70の位置として,取付位置と,固定位置という2つの位置を位置決めすることができる。
【0073】
取付位置は,図9(a)に示すように,例えば,ボール部材82と第2の溝76が嵌合するときのナット把持部70およびナット回転部60の位置である。この取付位置では,ナット把持部70の係止爪72の大部分が本体部80から脱しており,当該係止爪72はナット40の外周部の把持開放動作を行うことができる。即ち,かかる位置では,係止爪72は,例えば,本体部80の内側面85によって移動が制限されていないので,拡径する方向に撓むことが可能である。このため,係止爪72は,ナット40の外周部に対して押圧された場合には,このナット40の外周部を把持する動作(把持動作)が可能であり,ナット40の外周部と係合することができる。また,係止爪72は,ナット40の外周部を既に把持しているときに,ナット40の外周部から引き抜かれるような外力が働いた場合には,当該ナット40の外周部を開放する動作(開放動作)が可能であり,ナット40の外周部から離脱することができる。このように,ナット把持部70が取付位置にあるときには,ナット把持部70を,ナット40の外周部に取り付け/取り外し可能であり,同時に,ナット回転部60の係合ピン62も,ナット40の係合孔42に取り付け/取り外し可能である。
【0074】
一方,固定位置は,図9(b)に示すように,例えば,ボール部材82と第1の溝74が嵌合するときのナット把持部70およびナット回転部60の位置である。この固定位置では,ナット把持部70の係止爪72の大部分が本体部80内に収容されており,当該係止爪72はナット40の外周部の開放動作を行うことができない。即ち,かかる位置では,係止爪72は,例えば,本体部80の内側面上部85によって移動が制限されているので,拡径する方向に撓むことが不可能である。このため,係止爪72は,既にナット40の外周部を把持している場合には,ナット40に対してナット把持部70から引き抜くような力が働いたとしても,このナット40の外周部を開放する動作(開放動作)が制限されるので,ナット40の外周部を保持した状態を維持できる。このように,ナット把持部70が固定位置にあるときには,ナット把持部70を,ナット40の外周部から取り外し不能であり,よって,ナット回転部60の係合ピン62と,ナット40の係合孔42との係合を維持することができる。
【0075】
以上のように,位置決め手段は,例えば,ナット回転部60およびナット把持部70をナット40に着脱させるための取付位置と、ナット40を固定維持するための固定位置とを制御することができる。
【0076】
次に,図10および図11に基づいて,本実施形態にかかるブレード着脱補助装置100を用いたブレード脱着方法について説明する。なお,図10は,本実施形態にかかるブレード着脱補助装置100を用いたブレード脱着方法を示すフローチャートである。また,図11は,本実施形態にかかるブレード着脱補助装置100を用いたブレード脱着方法の各工程を示す工程断面図である。
【0077】
図10に示すように,まず,ステップS100では,ロック装置50を用いてスピンドル24をロックする(ステップS100)。
【0078】
次いで,ステップS102では,ナット把持部70およびナット回転部60が取付位置にセットされる(ステップS102)。例えば,ブレード着脱補助装置100のナット把持部70を押すことによって、図11(a)に示すように,ナット把持部70およびナット回転部60を本体部80から突出させて,取付位置にセットする。この取付位置は,第2の溝76にボール部材82が係合する位置で位置決めされる。このようにナット把持部70およびナット回転部60を取付位置にセットすることにより,ナット把持部70によるナット40外周部の把持動作が可能となる。
【0079】
さらに,ステップS104では,ブレード着脱補助装置100がナット40に取り付けられる(ステップS104)。まず,図11(a)に示すように,ナット40の係合孔42とナット回転部60の係合ピン62の位置を合致させる。次いで,双方が合致したところで,ブレード着脱補助装置100をナット40側に押圧する。これにより,図11(b)に示すように,ナット回転部60の係合ピン62を係合孔42に挿入して係合させるとともに,ナット把持部70の係止爪72をナット40の外周部に係合させることができる。
【0080】
その後,ステップS106では,ナット把持部70およびナット回転部60が固定位置にセットされる(ステップS106)。例えば,ブレード着脱補助装置100の本体部80を押すことによって、図11(c)に示すように,ナット把持部70およびナット回転部60を本体部80に収容して,本体部80の底部と同じ位置まで戻し,固定位置にセットする。この固定位置は,第1の溝74にボール部材82が係合する位置で位置決めされる。このようにナット把持部70およびナット回転部60を固定位置にセットすることにより,係止爪72によるナット40外周部の開放動作が制限されるようになる。従って,係止爪72によるナット40外周部の係止を保ちながら,ナット回転部60の係合ピン62と係合孔42との係合を好適に維持できる。ブレード着脱補助装置にナットが固定維持された状態にする。
【0081】
次いで,ステップS108では,ナット40が切削ユニット20から取り外される(ステップS108)。ブレード着脱補助装置100の底部側には、例えば,ナット回転部60の底部68に穿孔されたレンチ用係合孔64が現れるようになっている。このレンチ用係合孔64に,例えば,L型のレンチ(図示せず。)等を係合して,ナット40を弛緩する方向に回転させて,例えばフランジ21のフランジ雄ねじ部21cから螺脱させる。このようにL型のレンチ等を使用してナットを回転させるのは,例えば,締結されているナット40を人力のみで弛緩させることが困難な弛緩作業の最初の段階だけであってもよい。この場合には、ナット40をある程度弛緩させた後は,例えば,L型のレンチ等をレンチ用係合孔64から取り外し、本体部80の外周面等を把持してブレード着脱補助装置100全体を回転させることによって、ナット40を回転させて,取り外してもよい。
【0082】
このように,本ステップでは,ナット回転部60およびナット把持部70が固定位置にある状態で,例えば,ナット40と係合している状態のナット回転部60を,当該ナット40を螺脱する方向に回転させることにより,当該ナット40を弛緩させてフランジ21から取り外す。このとき,ナット回転部60の係合ピン62とナット40の係合孔42とが係合しているため,このナット回転部60の回転力がナット40にも好適に伝わる。
【0083】
さらに,この弛緩時には,ナット把持部70の開放動作が制限されており,掛止爪72がナット40の外周部を安定的に把持しているので,ナット回転部60の係合ピン62とナット40の係合孔42との係合状態を確実に維持することができる。従って,係合ピン62が係合孔42から外れないので,当該ナット40の弛緩作業を容易かつ確実に行うことができる上に,係合ピン62が空回りしてナット40の表面を傷つけることもない。
【0084】
なお,このような弛緩作業中には,スピンドル24はロック装置50によりロックされており回転しないので,ブレード着脱補助装置100を用いてナット40のみを好適に回転させることができる。
【0085】
さらに,ステップS110では,ブレード22が交換される(ステップS110)。このブレード22の交換は,具体的には,まず,第2フランジ21bを取り外した上で,ブレード22を第1フランジ21aから取り外し,次いで,新たなブレード22を第1フランジ21aに嵌め込んで,再び第2フランジ21bを取り付けて,当該新たなブレード22を第1フランジ21aおよび第2フランジ21bで挟み込むようにして成される。
【0086】
その後,ステップS112では,例えば,上記取り外されたナット40が再び切削ユニット20に取り付けられる(ステップS112)。上記ステップS104〜S108のようなナット40の取り外しと逆の手順で,ナット40がフランジ21に取り付けられる。
【0087】
即ち,まず,ブレード着脱補助装置100のナット回転部60およびナット把持部70が固定位置にある状態で,当該ナット把持部70によって把持されているナット40を,フランジ21のフランジ雄ねじ部21cに位置合わせする。次いで,例えば,ブレード着脱補助装置100を,ナット40が螺入する方向に回転させることにより,図11(c)に示すように,当該ナット40をフランジ21に締結していく。このとき,ナット回転部60の係合ピン62とナット40の係合孔42とが係合しているため,このナット回転部60の回転力がナット40にも好適に伝わる。さらに,最終的な締結段階では,例えば,上記のようなL型のレンチ等を用いて当該ナット40の締結を確実に行ってもよい。
【0088】
このようなナット40の締結時においても,ナット把持部70の開放動作が制限されており,掛止爪72がナット40の外周部を安定的に把持しているので,ナット回転部60の係合ピン62とナット40の係合孔42との係合状態を確実に維持することができる。従って,係合ピン62が係合孔42から外れないので,当該ナット40の締結作業を容易かつ確実に行うことができる上に,係合ピン62が空回りしてナット40の表面を傷つけることもない。
【0089】
次いで,ステップS114では,ナット把持部70およびナット回転部60が取付位置にセットされる(ステップS114)。図11(b)に示すように,ナット把持部70およびナット回転部60を本体部80から突出させて,取付位置にセットする。このようにナット把持部70およびナット回転部60を取付位置にセットすることにより,ナット把持部70によるナット40外周部の開放動作が可能となる。
【0090】
さらに,ステップS116では,ブレード着脱補助装置100がナット40から取り外される(ステップS116)。ブレード着脱補助装置100をナット40とは反対側に引っ張ることで,図11(a)に示すように,係合ピン62を係合孔42から抜き出すとともに,係止爪72をナット40の外周部から取り外す。このとき,ナット把持部70は取付位置にあるため,係止爪72が本体部80内周面によってその開放動作を制限されることがなく,ナット40外周部から好適に取り外し可能である。
【0091】
その後,ステップS118では,ロック装置50によるスピンドル24をロックが解除される(ステップS118)。以上までのステップで,ブレード22の交換作業が終了する。
【0092】
以上,第1の実施形態にかかるブレード着脱補助装置100およびこれを用いたブレード脱着方法について説明した。かかるブレード着脱補助装置100を用いてブレード22及び/又はフランジ21などを交換する場合には,以下のような利点がある。
【0093】
まず,かかる交換作業では,ブレード着脱補助装置100の係合ピン62をナットの係合孔42に挿入して係合させた状態を,容易かつ確実に維持することができる。このため,かかるブレード着脱補助装置100によってナット40を回転させたときに,係合ピン62が係合孔42から逃げて空回りしないので,ナット40の締結/弛緩作業を容易かつ迅速に行うことができる。さらに,空回りした係合ピン62によってナット40表面を傷つけてしまうこともない。
【0094】
また,ブレード着脱補助装置100は,ナット把持部70の掛止爪72が,ナット40の外周部と好適に係合した状態で当該ナット40を把持できる。このため,ブレード交換時において,切削ユニット20から取り外したナット40,或いはこれから切削ユニット20に取り付けようとするナット40が,ブレード着脱補助装置100から簡単に外れることがない。従って,ブレード交換作業におけるナット40の取り扱いが便利になり,ナット40を落下させて紛失してしまうこともない。
【0095】
また,ブレード22等の交換作業時には,ロック装置50によってスピンドル24を固定できる。このため,オペレータは,ブレード着脱補助装置100を両手で取り扱うことができるので,容易かつ迅速にナット40の締結・弛緩作業を行える。従って,かかる締結作業等には強い力が不要となり,女性などでも容易かつ確実に当該作業を行うことができる。また,ブレード着脱補助装置100という力を入れやすく簡便な工具を1つだけ使用すれば済むので,当該交換作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0096】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0097】
例えば,上記実施形態では,切削装置としてダイシング装置10の例を挙げて説明したが,本発明は,かかる例に限定されない。例えば,スピンドルにより高速回転するブレードを用いて被加工物を切削加工する装置であれば,例えば,ダイシング加工以外の切削加工を行う各種の切削装置であってもよい。
【0098】
また,上記実施形態では,ブレード22としてリング状の切刃部のみからなるいわゆるワッシャーブレードを用いたが,本発明は,かかる例に限定されない。例えば,図12に示すように,基台となるハブ(HUB)22b’と切刃部22a’を一体形成したハブブレード22’を用いてもよい。
【0099】
さらに,上記実施形態では,ブレード22をスピンドル24に装着する手段としてフランジ21を用いたが,本発明は,かかる例に限定されない。例えば,図12に示すように,フランジ21を用いることなく,ハブブレード22’をナット40により直接スピンドル24に装着してもよい。
【0100】
また,上記実施形態では,ボルトタイプの切削ユニット20(ボルト27を用いてフランジ21等をスピンドル24に装着するタイプ)に対して,ブレード着脱補助装置100を適用する例について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。上記ブレード着脱補助装置100は,例えば,ナットタイプの切削ユニット20(ナットを用いてブレード22及び/又はフランジ21をスピンドル24に装着するタイプ)に対して,適用されてもよい。かかるナットタイプの切削ユニット20は,例えば,図13に示すように,ナット400をスピンドル24の雄ねじ部24dに締結することにより,例えば,ブレード22を挟持したフランジ21をスピンドル24に装着することができる。ブレード着脱補助装置100は,上記実施形態のようなフランジ21を締結するためのナット40のみならず,このようなナットタイプの切削ユニット20におけるナット400を脱着するために用いることも可能である。
【0101】
また,上記実施形態では,係止部材52を係合孔58に押入するために加圧媒体としてエアを供給したが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,ロック装置50の押圧手段は,加圧媒体として水や油などの流体を利用して,係止部材52を押入するように構成してもよい。また,上記のように加圧媒体を利用するのではなく,各種の駆動装置を用いて機械的に直接,係止部材52を押圧して,係合孔58に挿入するように構成してもよい。
【0102】
また,上記実施形態では,弾性部材としてバネ部材56を用いたが,かかる例に限定されず,弾性部材は,ゴム,その他の各種弾性体を用いて構成されてもよい。
【0103】
また,上記実施形態では,弾性部材であるバネ部材56は,係止部材52の頭部52aとシリンダ部54の張出部54cとの間に挟み込まれるようにして装着されたが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,弾性部材は,自然長より伸張した状態で,その両端がそれぞれ,係止部材52の頭部52aと,シリンダ部54の突起部54b周辺に対して固定されるように設置されてもよい。かかる構成によっても,当該弾性部材は,収縮しようとする方向の弾性力により,係止部材52に対してスピンドル24から離隔する方向の力を作用させることができる。
【0104】
また,上記実施形態にかかる回転制限部は,上記ロック装置50として構成されていたが,かかるロック装置50の例に限定されない。例えば,回転制限部は上記スピンドル24の回転を制限することができる構成であれば,多様に設計変更可能である。例えば,回転制限部は,上記係止部材52を手動で係合孔58に挿抜するようなロック装置として構成されもよい。また,回転制限部の設置位置は,上記のように切削ユニット20のスピンドルハウジング26に限定されず,ダイシング装置10内の任意の位置に設置されてもよい。
【0105】
また,上記実施形態にかかるブレード着脱補助装置100では,ナット把持部70の複数の掛止爪72がナット40外周部を把持するように構成したが,本発明はかかる例に限定されない。ナット把持部70は,ナット40外周部を把持可能な治具であれば,多様に設計変更可能である。また,掛止爪72は,上記実施形態の例に限定されず,その形状,配置態様,設置数等を任意に変更可能である。
【0106】
また,上記実施形態にかかるブレード着脱補助装置100では,ナット回転部60およびナット把持部70を別体に構成したが,かかる例に限定されず,例えば,双方を一体形成してもよい。また,上記実施形態では,ナット把持部70をナット本体部80に収容するように構成したが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,ブレード着脱補助装置100は,本体部80を必ずしも具備しなくてもよい。
【0107】
また,上記実施形態にかかるブレード着脱補助装置100では,ナット回転部60の係合ピン62と,ナット40の係合孔42とを係合させたが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,ナット回転部60に係合孔を設け,一方,ナット40に係合ピンを設けるなどして,ナット回転部60とナット40とが係合できるように構成してもよい。
【0108】
上記実施形態にかかるブレード着脱補助装置100では,位置決め手段を,例えば,第1および第2の溝74,76,ボール部材82およびバネ部材84で構成したが,本発明はかかる例に限定されない。例えば,位置決め手段としては,例えば,本体部80に対する,ナット回転部60およびナット把持部70の位置を決定できるものであれば,多様に変更可能である。また,例えば,ボール部材82およびバネ部材84を複数組,本体部80に設置してもよい。また,位置決め手段が決定する位置として,上記のような取付位置および固定位置以外の任意の位置を追加してもよい。
【0109】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明にかかるブレード着脱補助装置は,ブレードを固定するためのナットを締結/弛緩する際に,当該ナットの外周部を把持することで,ナット回転部と当該ナットとの係合を確実に維持することができる。このため,かかるブレード着脱補助装置によってナットを回転させたときに,ナット回転部とナットとが空回りしないので,当該締結/弛緩作業を容易かつ迅速に行うことができるとともに,ナットを傷つけたり落下させたりすることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は,第1の実施形態にかかるダイシング装置を示す全体斜視図である。
【図2】図2は,第1の実施形態にかかる切削ユニットを示す斜視図である。
【図3】図3は,第1の実施形態にかかる切削ユニットを分解して示した分解組立斜視図である。
【図4】図4は,第1の実施形態にかかるロック装置の構成およびスピンドルハウジングの内部構成を示す部分切り欠き側面図である。
【図5】図5は,第1の実施形態にかかるブレード着脱補助装置の全体構成を示す分解組立斜視図である。
【図6】図6は,第1の実施形態にかかるブレード着脱補助装置の全体構成を示す分解組立断面図である。
【図7】図7(a),(b)は,第1の実施形態にかかるナット把持部を示す平面図および正面図である。
【図8】図8(a),(b)は,第1の実施形態にかかるブレード着脱補助装置によって脱着されるナットを示す平面図および側面図である。図8(c)は,従来のナットを示す側面図である。
【図9】図9は,第1の実施形態にかかるブレード着脱補助装置のナット把持部,本体部および位置決め手段を示す説明図である。
【図10】図10は,第1の実施形態にかかるブレード着脱補助装置を用いたブレード脱着方法を示すフローチャートである。
【図11】図11は,第1の実施形態にかかるブレード着脱補助装置を用いたブレード脱着方法の各工程を示す工程断面図である。
【図12】図12は,変更例にかかる切削ユニットを分解して示した分解組立斜視図である。
【図13】図13は,変更例にかかるナットタイプの切削ユニットに対して,ブレード着脱補助装置を用いてナットを締結弛緩する態様を示す説明図である。
【図14】図14は,従来のナット回転用治具を用いてナットを締結弛緩する態様を示す説明図である。
【符号の説明】
10 : ダイシング装置
20 : 切削ユニット
21 : フランジ
21a : 第1フランジ
21b : 第2フランジ
21c : フランジ雄ねじ部
22 : ブレード
24 : スピンドル
26 : スピンドルハウジング
30 : チャックテーブル
40 : ナット
42 : 係合孔
44 : 被係合部
50 : ロック装置
52 : 係止部材
54 : シリンダ部
56 : バネ部材
58 : 係合孔
60 : ナット回転部
62 : 係合ピン
64 : レンチ用係合孔
70 : ナット把持部
72 : 掛止爪
74 : 第1の溝
76 : 第2の溝
80 : 本体部
82 : ボール部材
84 : バネ部材
86 : 連結プレート
Claims (5)
- 高速回転可能なスピンドルと;前記スピンドルに装着されるブレードと;前記ブレードを前記スピンドルに固定するためのナットと;前記スピンドルの回転を制限する回転制限部と;を備えた切削装置,のブレード着脱補助装置であって:
前記回転制限部により前記スピンドルの回転が制限された状態で,前記ナットの表面部に形成された被係合部と係合して前記ナットを回転させる,ナット回転部と;
少なくとも前記ナット回転部によりナットを回転させる際に,前記ナットの外周部を把持する,ナット把持部と;
を備えることを特徴とするブレード着脱補助装置。 - 前記ナット把持部は,前記ナットの外周部を把持する複数の係止爪を備えることを特徴とする,請求項1に記載のブレード着脱補助装置。
- 前記ナット把持部の係止爪は,前記ナットの外周部に形成された被係合部と係合することを特徴とする,請求項2に記載のブレード着脱補助装置。
- 前記ナット把持部は,
前記ナットの外周部に取り付け可能な取付位置と,前記ナットの外周部を把持して,前記ナット回転部と前記ナットとの係合を維持する固定位置と,の間において,移動可能であり,
前記取付位置においては,前記ナットの外周部の把持開放動作が可能であり,
前記固定位置においては,前記ナットの外周部の開放動作が制限されることを特徴とする,請求項1または2,3のいずれかに記載のブレード着脱補助装置。 - 前記ブレード着脱補助装置は,
少なくとも前記取付位置および前記固定位置を位置決めする,位置決め手段を備えることを特徴とする,請求項4に記載のブレード着脱補助装置。
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