JP2004279776A - 感光性樹脂組成物及び平版印刷版原版 - Google Patents
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Abstract
【課題】デジタル信号に基づいた走査露光による直接製版が可能であり、現像ラチュードに優れた平版印刷版原版の画像記録材料として好適な感光性樹脂組成物、及びそれを用いた平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換剤と、(C)ラクトン基を有する高分子化合物と、を含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大することを特徴とする。
また、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、上記感光性樹脂組成物を含む記録層を設けてなることを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換剤と、(C)ラクトン基を有する高分子化合物と、を含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大することを特徴とする。
また、本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、上記感光性樹脂組成物を含む記録層を設けてなることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大する感光性樹脂組成物と、該感光性組成物を記録層成分として用いた平版印刷版原版に関し、詳細には、コンピュータ等のディジタル信号から直接製版できる、いわゆるダイレクト製版用の平版印刷版原版の画像記録材料に好適な感光性樹脂組成物、及びそれを用いた平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、波長300nm〜1200nmの紫外光、可視光、赤外光を放射する固体レーザ及び半導体レーザ、ガスレーザは高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、平版印刷の分野においては、これらのレーザがコンピューター等のデジタルデータから直接製版する際の記録光源として、非常に有用である。中でも、波長760nmから1200nmの赤外線レーザを用いるものが注目されている。
【0003】
従来公知のダイレクト製版用のポジ型平板印刷版原版の画像記録材料としては、通常、ノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂と、特定の波長の光を吸収して熱エネルギーに変換する光熱変換剤と、が含有されており、このようなポジ型平版印刷版原版に、上記光熱変物質が吸収しうる波長の光を露光することで露光部に熱を発生させ、この熱の作用によりノボラック樹脂の会合状態が解除され、露光部と未露光部とのアルカリ水溶液に対する溶解性に差が生じ、アルカリ現像液によって露光部のみが除去されて画像を形成する。しかしながら、画像部と非画像部との溶解速度差(現像ラチチュード)が狭く、画像のコントラストがつきにくいといった問題があった。
【0004】
そこで、アルカリ溶解阻止剤(溶解インヒビター)によって現像ラチチュードを拡大させる技術の開発が活発に行なわれており、例えば、水素結合基を有する化合物を現像ラチチュード拡大用溶解インヒビターとして用いることなどが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、水素結合性の相互作用は露光部における結合解離後にも、経時により抑制若しくは可逆反応による再結合を起こし、感度低下や、焼きだめ性の悪化を引き起こす懸念があった。さらに、記録層内に該溶解抑止剤を添加した場合、経時により水素結合するサイト数が変動し、現像可能な現像液のアルカリ活性度が変化して現像ラチチュードの変動を生じるといった問題があった。
【0005】
また、ノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂に、光熱変換剤と、種々のオニウム塩、キノンジアジド化合物類等を添加した画像記録材料も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。これらの画像記録材料は、画像部ではオニウム塩、キノンジアジド化合物類等が、アルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、非画像部ではこれらの化合物が熱により分解されて溶解阻止剤としては働かず、アルカリ現像液により除去されて画像を形成する。しかしながら、この画像記録材料では、オニウム塩、キノンジアジド化合物類等が、可視領域に光吸収域(350〜500nm)を有するため、蛍光灯などの白灯下での取扱いに制限があるという問題があった。
【0006】
上記のように、従来公知のダイレクト製版用のポジ型平版印刷版原版は、画像部と非画像部との識別性を高めようとすれば、その他実用上必要な付随特性が伴わない状況にあった。
【0007】
【特許文献1】
国際公開第98/42507号パンフレット
【特許文献2】
特開平7−285275号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた本発明の目的は、デジタル信号に基づいた走査露光による直接製版が可能であり、現像ラチュードに優れた平版印刷版原版の画像記録材料として好適な感光性樹脂組成物、及びそれを用いた平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する感光性樹脂組成物に、ラクトン基を有する高分子化合物を添加することにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1に記載の本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)光熱変換剤と(C)ラクトン基を有する高分子化合物とを含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大することを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)光熱変換剤と(C)ラクトン基を有する高分子化合物とを含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大する感光性樹脂組成物を含む記録層を設けてなることを特徴とする。
ここで、(C)ラクトン基を有する高分子化合物は、該ラクトン基と共に、酸基を有する化合物であることが好ましい態様として挙げられる。
【0010】
本発明の作用は明確ではないが、本発明の感光性樹脂組成物は、その成分中に、ラクトン基を有する高分子化合物を含有することを特徴とする。画像部においては、このラクトン基が通常疎水的な性質を有すること、また、この化合物がポリマー構造であることなどにより、アルカリ現像液に対する耐性が高まるものと考えられる。さらに、ラクトン基のカルボニル構造が、他の必須成分であるアルカリ可溶性樹脂と水素結合などの相互作用を形成し、現像液耐性を高めている可能性も考えられる。
一方、非画像部においては、露光により上記ラクトン基とアルカリ可溶性樹脂との相互作用が解除されるため、非画像部にアルカリ現像液が接触することにより、ラクトン基の環構造が開環してカルボン酸と水酸基とを生成し、アルカリ可溶性の特性を発現することで、非画像部の溶解性が高まるものと考えられる。
即ち、本発明に係るラクトン基を有する高分子化合物は、通常は疎水性で且つアルカリ可溶性樹脂と相互作用を形成しているが、露光によりアルカリ可溶性樹脂との相互作用が解除され、且つ、現像によりラクトン基がアルカリ可溶性に変性するため、画像部においてはアルカリ現像液耐性を維持しながら、非画像部においては現像性(非画像部の溶解性)が高まるものと推測される。したがって、本発明の平版印刷版原版は、広い現像ラチチュードを実現するとともにコントラストに優れた画像が得られるものと考えられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)光熱変換剤と(C)ラクトン基を有する高分子化合物とを含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大することを特徴とする。以下、本発明の感光性樹脂組成物の各構成について詳細に説明する。
【0012】
〔(C)ラクトン基を有する高分子化合物〕
本発明に係るラクトン基を有する高分子化合物(以下、適宜「特定重合体」と称する)は、その化合物内にラクトン環構造を有するものであれば特に制限はなく、中でも、5員環ラクトン構造を有するものが特に好ましい。また、このようなラクトン基を高分子化合物中に導入する方法としては、例えば、ラクトン基を有するモノマーを、公知の重合方法により、重合または共重合する方法が挙げられる。
【0013】
ラクトン基を有するモノマーとしては、分子内にラクトン基と、ビニル基、アリル基、または(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基と、を有するモノマーが挙げられる。また、一つのモノマー内に、ラクトン基を2つ以上有するものであってもよい。
また、ラクトン基と、エチレン性不飽和基とは、単結合または連結基を介して結合されており、そのような連結基の分子量としては1000以下のものが好ましい。
【0014】
本発明に係るラクトン基を有するモノマーの具体例としては、パントイルラクトン(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン、または、下記化合物などが挙げられる。特に原料の入手性、合成の容易性などの点でα位に重合性基が連結したγ−ブチロラクトンが特に好ましい。なお、本発明はこれらに限定されるものではない(本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある)。
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】
本発明に係る特定重合体は、上記ラクトン基を有するモノマー1種類以上を重合させて得られるか、必要に応じて、後述する酸基を有するモノマー1種類以上や、その他のモノマー成分1種類以上と、を組み合わせて、共重合させて得ることができる。重合方法としては、一般的に公知の懸濁重合法、あるいは溶液重合法などを用いて容易に重合あるいは共重合することができる。また、共重合体の構成としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0018】
特定重合体中のラクトン基を有する構造単位の含有率としては、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがさらに好ましく、20モル%以上であることが最も好ましい。このような特定重合体は、ラクトン基を有する構造単位のみで構成されていてもよいが、耐刷性を維持するために、ラクトン基を有する構造単位の含有量が40〜95%であることが好ましい。
【0019】
また、特定重合体の重量平均分子量としては、500〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜500,000であることがより好ましい。
【0020】
(酸基を有する特定重合体)
本発明に係る特定重合体としては、現像性向上の目的から、上記ラクトン基以外に、酸基を有することが、さらに好ましい態様として挙げられる。
本発明に好適に用いられる酸基としては、例えば、−COOH、−SO3H、−OSO3H、−PO3H2、−OPO3H2、−CONHSO2、−SO2NHSO2等が挙げられ、中でも、−COOH(カルボン酸基)、−SO3H(スルホン酸基)、−PO3H2(ホスホン酸基)が特に好ましい。
【0021】
このような酸基を特定重合体に導入する方法としては、例えば、酸基を有するモノマーと、上述のラクトン基を有するモノマーと、を共重合する方法が挙げられ、そのような酸基を有するモノマーとしては、分子内に、上記した酸基と、ビニル基、アリル基、または(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性二重結合)と、を有するモノマーが挙げられる。
【0022】
<酸基を有するモノマー>
ここで、特定重合体に導入される酸基として特に好ましい、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基を有するモノマーを例に挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
−カルボン酸基を有するモノマー−
カルボン酸基を有するモノマーとしては、カルボン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
このようなカルボン酸基を有するモノマーの好ましい例としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0024】
【化3】
【0025】
一般式(1)中、R1〜R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は下記一般式(2)で示される有機基を表し、R1〜R4の少なくとも1つは下記一般式(2)で表される有機基である。
ここで、特定重合体を製造する際の共重合性や原料入手性の観点からは、R1〜R4中に、下記一般式(2)で表される有機基を1〜2個有することが好ましく、1個有することが特に好ましい。重合の結果として得られる特定重合体の柔軟性の観点からは、R1〜R4のうち、下記一般式(2)で表される有機基の他は、アルキル基又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
また、同様の理由から、R1〜R4のいずれかがアルキル基である場合は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0026】
【化4】
【0027】
一般式(2)中、Xは、単結合、アルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は下記構造式(i)〜(iii)で表されるうちのいずれかを表す。重合性、入手性等の観点からは、単結合、フェニレン基に代表されるアリーレン基、又は下記構造式(i)で表されるもの好ましく、アリーレン基又は下記構造式(i)で表されるものがより好ましく、下記構造式(i)で表されるものが特に好ましい。
【0028】
【化5】
【0029】
構造式(i)〜(iii)中、Yは2価の連結基、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Yとしては、炭素原子数1〜16のアルキレン基又は単結合が好ましい。アルキレン基内のメチレン(−CH2−)は、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONR−;Rは水素原子又はアルキル基)で置換されていてもよく、メチレン基を置換する結合としては、エーテル結合又はエステル結合が特に好ましい。
このような2価の連結基のうち、特に好ましい具体例を以下に挙げる。
【0030】
【化6】
【0031】
一般式(1)で表されるカルボン酸基を有する共重合成分として、特に好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化7】
【0033】
−スルホン酸基を有するモノマー−
スルホン酸基を有するモノマーとしては、スルホン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
このようなスルホン酸基を有するモノマーの好ましい具体例としては、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、及び4−スチレンスルホン酸、等が挙げられる。
【0034】
−ホスホン酸基を有するモノマー−
ホスホン酸基を有するモノマーとしては、ホスホン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
このようなホスホン酸基を有するモノマーの好ましい具体例としては、アシッドホスホキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、等が挙げられる。
特定重合体中の酸基を有する構造単位の含有量としては、1〜95モル%であることが好ましく、20〜80モル%であることがさらに好ましく、30〜60モル%であることが最も好ましい。
【0035】
(その他のモノマー成分)
本発明に係る特定重合体は、上述のラクトン基を有するモノマーと、必要に応じて共重合される酸基を有するモノマーの他に、他のモノマー成分を共重合してもよい。以下、そのようなモノマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド又はN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン、o−又はm−ブロモーp−ヒドロキシステレン、o−又はm−クロル−p−ヒドロキンスチレン、o−、m−又はp−ヒドロキシフェニルアクリレート又はメタクリレート等の芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類及びヒドロキシスチレン類;
(2)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びそのハーフエステル、イタコン駿、無水イタコン酸及びそのハーフエステルなどの不飽和カルボン酸;
【0036】
(3)N−(o−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕アクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)アクリルアミドなどのアクリルアミド類、N−(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕メタクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミドなどのメタクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフェニルアクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)アクリレートなどのアクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド、o−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタタリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)メタクリレートなどのメタクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド;
【0037】
(4)トシルアクリルアミドのように置換基があってもよいフェニルスルホニルアクリルアミド、及びトシルメタクリルアミドのような置換基があってもよいフェニルスルホニルメタクリルアミド;
(5)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート;
【0038】
(6)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸へキシル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの(置換)アクリル酸エステル;
(7)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸へキシル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの(置換)メタクリル酸エステル;
【0039】
(8)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロへキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド及びN−エチル−N−フェニルメタクリルアミドなどのアクリルアミド若しくはメタクリルアミド;
(9)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;
【0040】
(10)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;
(11)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類;
(12)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン類;
(13)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィン類;
【0041】
(14)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(15)パントイルラクトン(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラトン、β−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトンなどのラクトン基含有モノマー;
(16)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アタリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのエチレンオキシド基含有モノマーなどが挙げられる。
特定重合体中のその他のモノマーの含有率としては、30モル%以下であることが好ましい。
【0042】
本発明に係るラクトン基を有する高分子化合物(特定重合体)は、感光性樹脂組成物の全固形分中、0.2〜20質量%添加されることが好ましく、0.5〜10質量%添加されることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると、本発明の効果である優れた現像ラチチュードおよび画像コントラストが得難く、添加量が多すぎると塗膜の皮膜特性が低下する傾向にある。
【0043】
〔(A)アルカリ可溶性樹脂〕
本発明の感光性樹脂組成物に使用可能な(A)アルカリ可溶性樹脂としては、水に不溶性で、且つ、アルカリ性水溶液に対して可溶性であれば特に制限はなく、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体又はこれらの混合物を包含する。酸性基に関しては、予め酸性基を有しているモノマーを重合して導入する方法と、重合後の高分子反応によって導入する方法、及びそれらを併用する方法のいずれの方法で導入してもよい。
【0044】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、プラスチック・エージ株式会社“フェノール樹脂”、アイピーシー株式会社“フェノール樹脂の合成・硬化・強靱化及び応用”、日刊工業新聞社“プラスチック材料講座(15)フェノール樹脂”、工業調査会株式会社“プラスチック全書(15)フェノール樹脂”等に記載されるフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体の他、特開平7−28244号公報記載のスルホニルイミド系ポリマー、特開平7−36184号公報記載のカルボキシル基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物を用いることができ、特に制限はないが、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖及び/又は側鎖中に有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点、溶解抑制能発現の点で好ましい。
【0045】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
【0046】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0047】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基(3)活性イミド基、及び(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基又は(2)スルホンアミド基、及び(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を充分に確保する点から最も好ましい。
【0048】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも画像形成性や熱硬化性の観点からノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましく、安定性の点からノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂がより好ましく、原料入手性、汎用性の観点からノボラック樹脂が特に好ましい。
【0049】
ノボラック樹脂とは、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール、4,4’−ビフェニルジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類の少なくとも1種を、酸性触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いてもよい)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させた樹脂のことを指す。
【0050】
本発明においては、フェノール類として、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましく、特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で0〜100:0〜70:0〜60の(混合)フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0051】
なお、本発明の感光性樹脂組成物には、後述する溶剤抑止剤を含有することが好ましく、その場合は、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0052】
また、フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール基を有する重合性モノマーの重合体を挙げることができる。
フェノール基を有する重合性モノマーとしては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。
【0053】
また、酸基前駆体を重合し、高分子化した後で酸基へと誘導してもよい。例えば、酸基前駆体としてp−アセトキシスチレンを重合した後、エステル部を加水分解しフェノール性水酸基へと誘導してもよい。また、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体も好適な例として挙げることができる。
【0054】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【化8】
【0056】
一般式(i)〜(v)中、X1及びX2は、それぞれ独立に−O−又は−NR7を表す。R1及びR4は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及びR16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及びR13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6及びR17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、及びR14は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R11及びR15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。
【0057】
一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物のうち、本発明の感光性樹脂組成物では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0058】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0059】
【化9】
【0060】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0061】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0062】
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
【0063】
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0064】
本発明に係るアルカリ可溶性樹脂を構成する、前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、又は異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0065】
前記共重合体は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、アルカリ可溶性が不充分となりやすく、現像ラチチュードの拡大効果が充分達成されないことがある。
【0066】
本発明では、化合物を共重合してアルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、前記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m13)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0068】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
【0069】
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)無水マレイン酸、イタコン酸無水物、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等。
(m13)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特願2001−115595号明細書、特願2001−115598号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0070】
本発明において、前記アルカリ可溶性樹脂が、前記(1)フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、(2)スルホンアミド基を有する重合性モノマー、(3)活性イミド基を有する重合性モノマー、(4)カルボン酸基を有する重合性モノマー、(5)スルホン酸基を有する重合性モノマー、及び(6)リン酸基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体の場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に重量平均分子量という)が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましく、更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
【0071】
また、本発明において、前記アルカリ可溶性高分子化合物がノボラック樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜100,000であり、数平均分子量が200〜50,000のものが好ましい。特願2001−126278号明細書に記載されるような低分子成分の比率が少ないノボラック樹脂を用いてもよい。
【0072】
これらアルカリ可溶性樹脂は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、アルカリ可溶性樹脂は、本発明の感光性樹脂組成物全固形分中、30〜98質量%、好ましくは40〜95質量%の添加量で用いられる。アルカリ可溶性樹脂の添加総量が30質量%未満であると、耐キズ性が劣化する傾向にあり、また、98質量%を超えると、感度、画像形成性が低下する懸念がある。
【0073】
ここで、2種類以上のアルカリ可溶性樹脂を併用する場合、どのような組み合わせを用いてもよいが、特に好適な例としては、フェノール性水酸基を有するポリマーとスルホンアミド酸基を有するポリマーとの併用、フェノール性水酸基を有するポリマーとカルボン酸基を有するポリマーとの併用、フェノール性水酸基を有するポリマー2種以上の併用、例えば米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂などとの併用を挙げることができる。
【0074】
〔(B)光熱変換剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、感度の観点から、記録に使用する光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する光熱変換剤を含有することを特徴とする。特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から波長760nmから1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収剤(赤外線吸収性染料又は顔料)が好ましく挙げられる。
【0075】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0076】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0077】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0078】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0079】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の感光性樹脂組成物中で使用した場合に、高い重合活性を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0080】
【化10】
【0081】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0082】
【化11】
【0083】
前記式中、Xa−は後述するZa−と同様に定義され、Raは水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0084】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0085】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0086】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特願平11−310623号明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特願2000−224031号明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特願2000−211147号明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0087】
【化12】
【0088】
【化13】
【0089】
【化14】
【0090】
【化15】
【0091】
【化16】
【0092】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0093】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0094】
【化17】
【0095】
【化18】
【0096】
前記一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0097】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0098】
【化19】
【0099】
【化20】
【0100】
前記一般式(d)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X1及びX2は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X1及びX2の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0101】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0102】
【化21】
【0103】
【化22】
【0104】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0105】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0106】
【化23】
【0107】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0108】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0109】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0110】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
【0111】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0112】
これらの顔料もしくは染料を併用する場合、感光性樹脂組成物全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。顔料もしくは染料の添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなる傾向にあり、また50質量%を越えると樹脂組成物の均一性が失われ、膜耐性が悪化する懸念がある。
【0113】
〔その他の成分〕
本発明の感光性樹脂組成物には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。例えば、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することは、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点では、好ましい。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、アジニウム塩等を挙げることができる。
【0114】
本発明において用いられる他のオニウム塩として、好適なものとしては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同4,491,628号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,PolymerChem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等が挙げられる。
【0115】
オニウム塩のなかでも、ジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載のものがあげられる。
【0116】
上記他のオニウム塩における対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0117】
好適なキノンジアジド類としては、o−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物或いは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0118】
さらに、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば、特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号などの各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
【0119】
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、及び/又は、o−キノンジアジド化合物の添加量としては、本発明の感光性樹脂組成物を平版印刷版原版の記録層に用いる場合、好ましくは記録層の全固形分に対し、0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0120】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量としては、好ましくは該記録層の全固形分に対し、0.5質量%未満、更に好ましくは0.2質量%未満、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。なお、本発明における添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0121】
また、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の感光性樹脂組成物中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0122】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光性樹脂組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0123】
本発明の感光性樹脂組成物には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0124】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料をあげることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で添加することができる。更に本発明の感光性樹脂組成物には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0125】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、さらには、特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物、及び、本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物などを目的に応じて適宜添加することができる。
【0126】
[平版印刷版原版]
以下、本発明の平版印刷版原版について説明する。
【0127】
〔画像記録層〕
本発明の平版印刷版原版は、前記感光性樹脂組成物を溶媒に溶かして記録層塗布液とし、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。また、目的に応じて設けられる、保護層、樹脂中間層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む感光性樹脂組成物全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0128】
また、塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版の画像記録層についていえば、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録層の皮膜特性は低下する。
【0129】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
本発明における画像記録層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、画像記録層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0130】
〔樹脂中間層〕
本発明の平版印刷版原版には、必要に応じて、支持体と記録層との間に樹脂中間層を設けることができる。
この樹脂中間層を設けることで、支持体と記録層との間の高分子からなる樹脂中間層が断熱層として機能し、露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。また、本発明に係る記録層は、この樹脂中間層を設ける際にも、露光面或いはその近傍に位置するため、露光に対する感度は良好に維持される。
なお、未露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性である記録層自体が樹脂中間層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、露光部においては、溶解抑制能が解除された記録層の成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの樹脂中間層自体がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解し、現像性の向上にも寄与し、この樹脂中間層は有用であると考えられる。
【0131】
〔支持体〕
本発明に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙、若しくはプラスチックフィルム等が含まれる。
本発明に係る支持体としては、特に平版印刷版原版に使用する場合、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0132】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0133】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不充分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号明細書、同第3,181,461号明細書、第3,280,734号明細書及び第3,902,734号明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に、特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号明細書、同第4,153,461号明細書、同第4,689,272号明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0134】
中でも、特に好ましい支持体処理法としては、上記アルミニウム板に、機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理、硝酸を含有する電解液を用いた電気化学的粗面化処理および塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法が挙げられる。このような処理を行った支持体は非常に高い表面積と局所的に深い凹部を有しており、画像記録層との密着性に優れるという観点では耐刷性向上には有利であるが、特に局所的な深い凹部内に存在する画像記録層が現像により完全に除去し難く、非画像部の汚れの原因となるといった懸念があった。
しかし、本発明に係る(C)ラクトン基を有する高分子化合物を記録層の成分として用いることにより、画像部の耐現像性を維持しながら、非画像部の記録層のみを良好に溶解することができる。このため、上記のような高表面積を有する支持体との組み合わせにおいて特に顕著な効果を発揮しうると考えられる。
このような好ましい効果を発現する理由については明確ではないが、前述したように、画像部においてはこのラクトン基が通常疎水的な性質を有し、且つ、他の必須成分であるアルカリ可溶性樹脂と水素結合などの相互作用を形成し現像液耐性を高めるものでありながら、一方、非画像部においては、露光により上記アルカリ可溶性樹脂との相互作用が解除され、非画像部にアルカリ現像液が接触することにより、ラクトン基の環構造が開環してアルカリ可溶性となり、非画像部の溶解性が高まるものと推測される。
【0135】
本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて支持体と記録層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0136】
この有機下塗層は、次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。
また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2よりも少ないと充分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
【0137】
〔露光・現像〕
上記のようにして作製されたポジ型平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。
像露光に用いられる光線の光源としては、赤外線レーザ、紫外線ランプ、可視光レーザ、サーマルヘッド等により記録することができる。本発明においては、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。
【0138】
本発明の平版印刷版原版の現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。
例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由は、ケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号公報に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0139】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0140】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤があげられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷版原版の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0141】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0142】
本発明においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば、特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0143】
以上のようにして得られた平版印刷版は、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、或いは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0144】
整面液の塗布量は、一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0145】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0146】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0147】
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を組み合わせて処理することで支持体A、B、C、Dを作製した。
【0148】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0149】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0150】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0151】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0152】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0153】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0154】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0155】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0156】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0157】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0158】
<支持体A>
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.4g/m2となるようにして支持体を作製した。
【0159】
<支持体B>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。
【0160】
<支持体C>
上記工程のうち(a)及び(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。
【0161】
<支持体D>
上記工程のうち(a)及び(d)(e)(f)の工程を省略した以外は各工程を順に行い、(g)工程における電気量の総和が450C/dm2となるようにして支持体を作製した。
上記によって得られた支持体A、B、C、Dは続けて下記の親水化処理、下塗り処理を行った。
【0162】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.6mg/m2であった。
【0163】
(下塗り処理)
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0164】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1.0g
【0165】
【化24】
【0166】
[特定重合体(P−1)の合成]
MFG(1−メトキシ−2−プロパノール)14.5gを加えた200ml三口フラスコに75℃、窒素雰囲気下で、p−ビニル安息香酸(北興化学工業)8g(54.0mmol)、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチルラクトン(ダイセル化学工業(株)製)6.1g(36.0mmol)、V601(2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル)0.414g、MFG36.5gの溶液を2時間かけて滴下し、さらに5時間反応させた。反応液を酢酸エチルで再沈し、ろ過乾燥して、下記組成の本発明に係る特定重合体(P−1)を12.55g(酸価3.42meq/g、Mw9.42×104)を得た。
【0167】
[特定重合体(P−2)の合成]
200ml三口フラスコに、DMAc(ジメチルアセトアミド)41.1g、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチルラクトン(ダイセル化学工業(株)製)10g(58.8mmol)、V601(2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル)0.27gを加え、75℃、窒素雰囲気下で5時間反応させた。反応液を酢酸エチルで再沈し、ろ過乾燥して、下記組成の本発明に係る特定重合体(P−2)を9.7g(Mw2.62×105)を得た。
【0168】
[特定重合体(P−3)の合成]
DMAc(ジメチルアセトアミド)14.0gを加えた200ml三口フラスコに75℃、窒素雰囲気下で、ライトエステルHOMS(共栄社化学(株)製)10g(40.8mmol)、パントイルラクトンメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製)5.39g(27.2mmol)、V601(2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル)0.314g、DMAc46.2gの溶液を2時間かけて滴下し、さらに5時間反応させた。反応液を水で再沈し、ろ過乾燥して、下記組成の本発明に係る特定重合体(P−3)を13.1g(酸価2.52meq/g、Mw9.00×104)を得た。
【0169】
【化25】
【0170】
[アルカリ可溶性樹脂1の作製]
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三ツ口フラスコにメタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を攪拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴をとり去り、室温下で30分間混合物を攪拌した。
この反応混合物に、p−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間攪拌した。反応終了後、この混合物を水1リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間得られた混合物を攪拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することによりN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)。
【0171】
次に攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた100ml三ツ口フラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g(0.0210モル)、メタクリル酸エチル2.05g(0.0180モル)、アクリロニトリル1.11g(0.021モル)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物に「V−65」(和光純薬(株)製)0.15gを加え65℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を攪拌した。この反応混合物に更にN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g、メタクリル酸エチル2.05g、アクリロニトリル1.11g、N,N−ジメチルアセトアミド20g及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後更に65℃で2時間得られた混合物を攪拌した。反応終了後メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりこのアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ53,000であった。
【0172】
〔実施例1〜4、比較例1〜2〕
得られた支持体に以下の画像記録層用塗布液1を塗布し、150℃のオーブンで1分乾燥後、乾燥膜厚が1.8g/m2のポジ型画像記録層を有する平版印刷版原版を作製した。
【0173】
【0174】
【化26】
【0175】
〔現像ラチチュードの評価〕
得られた平版印刷版原版を温度25℃相対湿度50%の条件下で5日間保存した後に、Creo社製Trendsetter3244にてビーム強度9.0W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。
その後、下記A組成又はB組成のアルカリ現像液の水の量を変更することにより、希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなくコントラストの良好な画像を与える現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の差を現像ラチチュードとして評価した。なお、この差が大きい程、現像ラチチュードに優れ、コントラストに優れた画像を形成し得る。なお、用いた現像液の種類を表1に示す。
【0176】
【0178】
〔感度の評価〕
得られた平版印刷用原板をCreo社製Trendsetter3244にて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、上記現像ラチチュードの評価において画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなくコントラストの良好な画像を与える現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の中間(平均値)の電導度のアルカリ現像液で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
これらの評価結果を表1に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
なお、比較例2で用いた高分子化合物(P−4)の構造を以下に示す。
【0181】
【化27】
【0182】
表1に明らかなように、(C)特定重合体を含有する本発明の感光性樹脂組成物を記録層に用いた実施例1〜4の平版印刷版原版は、シリケート系現像液、または非シリケート系現像液のいずれを用いた場合においても、現像ラチチュード及び感度に優れていることが確認された。
一方、本発明に係る(C)特定重合体を記録層の成分として用いなかった比較例1の平版印刷版原版は、現像ラチチュード、感度ともに劣っており、(C)特定重合体の代わりにP−4を用いた比較例2の平版印刷版原版は、感度に差は見られなかったものの、現像ラチチュードに劣ることが確認された。
【0183】
〔実施例5、6〕
得られた支持体Aに、実施例1〜4と同様に前記下塗り液を塗布した後、下記組成の下層用塗布液を、ウェット塗布量が28ml/m2のワイヤーバーで塗布して塗布量を1.5g/m2としたのち、150℃の乾燥オーブンで60秒間乾燥した。
得られた下層付き支持体に、下記組成の画像記録層(上層)用塗布液を、ウエット塗布量が11ml/m2のワイヤーバーで塗布を行い総塗布量を1.8g/m2とした。塗布後、乾燥オーブンで、140℃で70秒間の乾燥を行いポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0184】
【0185】
【0186】
【化28】
【0187】
〔現像ラチチュードおよび感度の評価〕
得られた平版印刷版原版に対し、現像液を富士写真フイルム(株)製現像液DT−1希釈液に替え、現像時間を14秒に変更した以外は実施例1〜4と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュードおよび感度を評価した。結果を表2に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
表2に明らかなように、(C)特定重合体を含有した本発明の感光性樹脂組成物を下層として用いた実施例5〜6の平版印刷版原版は、このように記録層が重層構造をとった場合でも、現像ラチチュード及び感度に優れ、単層構造と同様の効果を奏することが確認された。
【0190】
〔実施例7〜8〕
得られた支持体Cに、実施例1〜4と同様に前記下塗り液を塗布した後、下記組成の画像記録層用塗布液3を塗布し、150℃のオーブンで1分間乾燥後、乾燥膜厚が1.8g/m2の画像記録層を有するポジ型平版印刷版原版を得た。
【0191】
【0192】
〔現像ラチチュードのおよび感度の評価〕
得られた平版印刷版原版に対し、実施例1〜4と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュードおよび感度を評価した。結果を表3に示す。
【0193】
【表3】
【0194】
表3に明らかなように、(C)特定重合体を含有する本発明の感光性樹脂組成物を記録層に用いた実施例7〜8の平版印刷版原版は、シリケート系現像液、または非シリケート系現像液のいずれを用いた場合においても、現像ラチチュード及び感度に優れていることが確認された。
【0195】
【発明の効果】
本発明によれば、デジタル信号に基づいた走査露光による直接製版が可能であり、現像ラチュードに優れた平版印刷版原版の画像記録材料に好適な感光性樹脂組成物、及びそれを用いた平版印刷版原版を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大する感光性樹脂組成物と、該感光性組成物を記録層成分として用いた平版印刷版原版に関し、詳細には、コンピュータ等のディジタル信号から直接製版できる、いわゆるダイレクト製版用の平版印刷版原版の画像記録材料に好適な感光性樹脂組成物、及びそれを用いた平版印刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、波長300nm〜1200nmの紫外光、可視光、赤外光を放射する固体レーザ及び半導体レーザ、ガスレーザは高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになっており、平版印刷の分野においては、これらのレーザがコンピューター等のデジタルデータから直接製版する際の記録光源として、非常に有用である。中でも、波長760nmから1200nmの赤外線レーザを用いるものが注目されている。
【0003】
従来公知のダイレクト製版用のポジ型平板印刷版原版の画像記録材料としては、通常、ノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂と、特定の波長の光を吸収して熱エネルギーに変換する光熱変換剤と、が含有されており、このようなポジ型平版印刷版原版に、上記光熱変物質が吸収しうる波長の光を露光することで露光部に熱を発生させ、この熱の作用によりノボラック樹脂の会合状態が解除され、露光部と未露光部とのアルカリ水溶液に対する溶解性に差が生じ、アルカリ現像液によって露光部のみが除去されて画像を形成する。しかしながら、画像部と非画像部との溶解速度差(現像ラチチュード)が狭く、画像のコントラストがつきにくいといった問題があった。
【0004】
そこで、アルカリ溶解阻止剤(溶解インヒビター)によって現像ラチチュードを拡大させる技術の開発が活発に行なわれており、例えば、水素結合基を有する化合物を現像ラチチュード拡大用溶解インヒビターとして用いることなどが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、水素結合性の相互作用は露光部における結合解離後にも、経時により抑制若しくは可逆反応による再結合を起こし、感度低下や、焼きだめ性の悪化を引き起こす懸念があった。さらに、記録層内に該溶解抑止剤を添加した場合、経時により水素結合するサイト数が変動し、現像可能な現像液のアルカリ活性度が変化して現像ラチチュードの変動を生じるといった問題があった。
【0005】
また、ノボラック樹脂等のアルカリ可溶性樹脂に、光熱変換剤と、種々のオニウム塩、キノンジアジド化合物類等を添加した画像記録材料も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。これらの画像記録材料は、画像部ではオニウム塩、キノンジアジド化合物類等が、アルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる溶解阻止剤として働き、非画像部ではこれらの化合物が熱により分解されて溶解阻止剤としては働かず、アルカリ現像液により除去されて画像を形成する。しかしながら、この画像記録材料では、オニウム塩、キノンジアジド化合物類等が、可視領域に光吸収域(350〜500nm)を有するため、蛍光灯などの白灯下での取扱いに制限があるという問題があった。
【0006】
上記のように、従来公知のダイレクト製版用のポジ型平版印刷版原版は、画像部と非画像部との識別性を高めようとすれば、その他実用上必要な付随特性が伴わない状況にあった。
【0007】
【特許文献1】
国際公開第98/42507号パンフレット
【特許文献2】
特開平7−285275号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた本発明の目的は、デジタル信号に基づいた走査露光による直接製版が可能であり、現像ラチュードに優れた平版印刷版原版の画像記録材料として好適な感光性樹脂組成物、及びそれを用いた平版印刷版原版を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、露光によりアルカリ現像液に対する溶解性が増大する感光性樹脂組成物に、ラクトン基を有する高分子化合物を添加することにより、前記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、請求項1に記載の本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)光熱変換剤と(C)ラクトン基を有する高分子化合物とを含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大することを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)光熱変換剤と(C)ラクトン基を有する高分子化合物とを含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大する感光性樹脂組成物を含む記録層を設けてなることを特徴とする。
ここで、(C)ラクトン基を有する高分子化合物は、該ラクトン基と共に、酸基を有する化合物であることが好ましい態様として挙げられる。
【0010】
本発明の作用は明確ではないが、本発明の感光性樹脂組成物は、その成分中に、ラクトン基を有する高分子化合物を含有することを特徴とする。画像部においては、このラクトン基が通常疎水的な性質を有すること、また、この化合物がポリマー構造であることなどにより、アルカリ現像液に対する耐性が高まるものと考えられる。さらに、ラクトン基のカルボニル構造が、他の必須成分であるアルカリ可溶性樹脂と水素結合などの相互作用を形成し、現像液耐性を高めている可能性も考えられる。
一方、非画像部においては、露光により上記ラクトン基とアルカリ可溶性樹脂との相互作用が解除されるため、非画像部にアルカリ現像液が接触することにより、ラクトン基の環構造が開環してカルボン酸と水酸基とを生成し、アルカリ可溶性の特性を発現することで、非画像部の溶解性が高まるものと考えられる。
即ち、本発明に係るラクトン基を有する高分子化合物は、通常は疎水性で且つアルカリ可溶性樹脂と相互作用を形成しているが、露光によりアルカリ可溶性樹脂との相互作用が解除され、且つ、現像によりラクトン基がアルカリ可溶性に変性するため、画像部においてはアルカリ現像液耐性を維持しながら、非画像部においては現像性(非画像部の溶解性)が高まるものと推測される。したがって、本発明の平版印刷版原版は、広い現像ラチチュードを実現するとともにコントラストに優れた画像が得られるものと考えられる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と(B)光熱変換剤と(C)ラクトン基を有する高分子化合物とを含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大することを特徴とする。以下、本発明の感光性樹脂組成物の各構成について詳細に説明する。
【0012】
〔(C)ラクトン基を有する高分子化合物〕
本発明に係るラクトン基を有する高分子化合物(以下、適宜「特定重合体」と称する)は、その化合物内にラクトン環構造を有するものであれば特に制限はなく、中でも、5員環ラクトン構造を有するものが特に好ましい。また、このようなラクトン基を高分子化合物中に導入する方法としては、例えば、ラクトン基を有するモノマーを、公知の重合方法により、重合または共重合する方法が挙げられる。
【0013】
ラクトン基を有するモノマーとしては、分子内にラクトン基と、ビニル基、アリル基、または(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基と、を有するモノマーが挙げられる。また、一つのモノマー内に、ラクトン基を2つ以上有するものであってもよい。
また、ラクトン基と、エチレン性不飽和基とは、単結合または連結基を介して結合されており、そのような連結基の分子量としては1000以下のものが好ましい。
【0014】
本発明に係るラクトン基を有するモノマーの具体例としては、パントイルラクトン(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン、β−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトン、または、下記化合物などが挙げられる。特に原料の入手性、合成の容易性などの点でα位に重合性基が連結したγ−ブチロラクトンが特に好ましい。なお、本発明はこれらに限定されるものではない(本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある)。
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】
本発明に係る特定重合体は、上記ラクトン基を有するモノマー1種類以上を重合させて得られるか、必要に応じて、後述する酸基を有するモノマー1種類以上や、その他のモノマー成分1種類以上と、を組み合わせて、共重合させて得ることができる。重合方法としては、一般的に公知の懸濁重合法、あるいは溶液重合法などを用いて容易に重合あるいは共重合することができる。また、共重合体の構成としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0018】
特定重合体中のラクトン基を有する構造単位の含有率としては、1モル%以上であることが好ましく、5モル%以上であることがさらに好ましく、20モル%以上であることが最も好ましい。このような特定重合体は、ラクトン基を有する構造単位のみで構成されていてもよいが、耐刷性を維持するために、ラクトン基を有する構造単位の含有量が40〜95%であることが好ましい。
【0019】
また、特定重合体の重量平均分子量としては、500〜1,000,000であることが好ましく、1,000〜500,000であることがより好ましい。
【0020】
(酸基を有する特定重合体)
本発明に係る特定重合体としては、現像性向上の目的から、上記ラクトン基以外に、酸基を有することが、さらに好ましい態様として挙げられる。
本発明に好適に用いられる酸基としては、例えば、−COOH、−SO3H、−OSO3H、−PO3H2、−OPO3H2、−CONHSO2、−SO2NHSO2等が挙げられ、中でも、−COOH(カルボン酸基)、−SO3H(スルホン酸基)、−PO3H2(ホスホン酸基)が特に好ましい。
【0021】
このような酸基を特定重合体に導入する方法としては、例えば、酸基を有するモノマーと、上述のラクトン基を有するモノマーと、を共重合する方法が挙げられ、そのような酸基を有するモノマーとしては、分子内に、上記した酸基と、ビニル基、アリル基、または(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性二重結合)と、を有するモノマーが挙げられる。
【0022】
<酸基を有するモノマー>
ここで、特定重合体に導入される酸基として特に好ましい、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基を有するモノマーを例に挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
−カルボン酸基を有するモノマー−
カルボン酸基を有するモノマーとしては、カルボン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
このようなカルボン酸基を有するモノマーの好ましい例としては、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0024】
【化3】
【0025】
一般式(1)中、R1〜R4は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又は下記一般式(2)で示される有機基を表し、R1〜R4の少なくとも1つは下記一般式(2)で表される有機基である。
ここで、特定重合体を製造する際の共重合性や原料入手性の観点からは、R1〜R4中に、下記一般式(2)で表される有機基を1〜2個有することが好ましく、1個有することが特に好ましい。重合の結果として得られる特定重合体の柔軟性の観点からは、R1〜R4のうち、下記一般式(2)で表される有機基の他は、アルキル基又は水素原子であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
また、同様の理由から、R1〜R4のいずれかがアルキル基である場合は、炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0026】
【化4】
【0027】
一般式(2)中、Xは、単結合、アルキレン基、置換基を有していてもよいアリーレン基、又は下記構造式(i)〜(iii)で表されるうちのいずれかを表す。重合性、入手性等の観点からは、単結合、フェニレン基に代表されるアリーレン基、又は下記構造式(i)で表されるもの好ましく、アリーレン基又は下記構造式(i)で表されるものがより好ましく、下記構造式(i)で表されるものが特に好ましい。
【0028】
【化5】
【0029】
構造式(i)〜(iii)中、Yは2価の連結基、Arは置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。Yとしては、炭素原子数1〜16のアルキレン基又は単結合が好ましい。アルキレン基内のメチレン(−CH2−)は、エーテル結合(−O−)、チオエーテル結合(−S−)、エステル結合(−COO−)、アミド結合(−CONR−;Rは水素原子又はアルキル基)で置換されていてもよく、メチレン基を置換する結合としては、エーテル結合又はエステル結合が特に好ましい。
このような2価の連結基のうち、特に好ましい具体例を以下に挙げる。
【0030】
【化6】
【0031】
一般式(1)で表されるカルボン酸基を有する共重合成分として、特に好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
【化7】
【0033】
−スルホン酸基を有するモノマー−
スルホン酸基を有するモノマーとしては、スルホン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
このようなスルホン酸基を有するモノマーの好ましい具体例としては、3−スルホプロピルアクリレート、3−スルホプロピルメタクリレート、及び4−スチレンスルホン酸、等が挙げられる。
【0034】
−ホスホン酸基を有するモノマー−
ホスホン酸基を有するモノマーとしては、ホスホン酸基及び重合性二重結合をその構造中に有する重合性化合物であれば特に限定されるものではない。
このようなホスホン酸基を有するモノマーの好ましい具体例としては、アシッドホスホキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、等が挙げられる。
特定重合体中の酸基を有する構造単位の含有量としては、1〜95モル%であることが好ましく、20〜80モル%であることがさらに好ましく、30〜60モル%であることが最も好ましい。
【0035】
(その他のモノマー成分)
本発明に係る特定重合体は、上述のラクトン基を有するモノマーと、必要に応じて共重合される酸基を有するモノマーの他に、他のモノマー成分を共重合してもよい。以下、そのようなモノマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド又はN−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−、m−又はp−ヒドロキシスチレン、o−又はm−ブロモーp−ヒドロキシステレン、o−又はm−クロル−p−ヒドロキンスチレン、o−、m−又はp−ヒドロキシフェニルアクリレート又はメタクリレート等の芳香族水酸基を有するアクリルアミド類、メタクリルアミド類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類及びヒドロキシスチレン類;
(2)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸及びそのハーフエステル、イタコン駿、無水イタコン酸及びそのハーフエステルなどの不飽和カルボン酸;
【0036】
(3)N−(o−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕アクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)アクリルアミドなどのアクリルアミド類、N−(o−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(m−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−〔1−(3−アミノスルホニル)ナフチル〕メタクリルアミド、N−(2−アミノスルホニルエチル)メタクリルアミドなどのメタクリルアミド類、また、o−アミノスルホニルフェニルアクリレート、m−アミノスルホニルフェニルアクリレート、p−アミノスルホニルフェニルアクリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)アクリレートなどのアクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド、o−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、p−アミノスルホニルフェニルメタタリレート、1−(3−アミノスルホニルフェニルナフチル)メタクリレートなどのメタクリル酸エステル類などの不飽和スルホンアミド;
【0037】
(4)トシルアクリルアミドのように置換基があってもよいフェニルスルホニルアクリルアミド、及びトシルメタクリルアミドのような置換基があってもよいフェニルスルホニルメタクリルアミド;
(5)脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート;
【0038】
(6)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸へキシル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルアクリレート、N−ジメチルアミノエチルアクリレートなどの(置換)アクリル酸エステル;
(7)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸へキシル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、グリシジルメタクリレート、N−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの(置換)メタクリル酸エステル;
【0039】
(8)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N−ヘキシルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロへキシルアクリルアミド、N−シクロヘキシルメタクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、N−ベンジルアクリルアミド、N−ベンジルメタクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルメタクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド及びN−エチル−N−フェニルメタクリルアミドなどのアクリルアミド若しくはメタクリルアミド;
(9)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;
【0040】
(10)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;
(11)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン類;
(12)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのビニルケトン類;
(13)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレンなどのオレフィン類;
【0041】
(14)N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、4−ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど;
(15)パントイルラクトン(メタ)アクリレート、α−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラトン、β−(メタ)アクリロイル−γ−ブチロラクトンなどのラクトン基含有モノマー;
(16)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アタリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのエチレンオキシド基含有モノマーなどが挙げられる。
特定重合体中のその他のモノマーの含有率としては、30モル%以下であることが好ましい。
【0042】
本発明に係るラクトン基を有する高分子化合物(特定重合体)は、感光性樹脂組成物の全固形分中、0.2〜20質量%添加されることが好ましく、0.5〜10質量%添加されることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると、本発明の効果である優れた現像ラチチュードおよび画像コントラストが得難く、添加量が多すぎると塗膜の皮膜特性が低下する傾向にある。
【0043】
〔(A)アルカリ可溶性樹脂〕
本発明の感光性樹脂組成物に使用可能な(A)アルカリ可溶性樹脂としては、水に不溶性で、且つ、アルカリ性水溶液に対して可溶性であれば特に制限はなく、高分子中の主鎖及び/又は側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体又はこれらの混合物を包含する。酸性基に関しては、予め酸性基を有しているモノマーを重合して導入する方法と、重合後の高分子反応によって導入する方法、及びそれらを併用する方法のいずれの方法で導入してもよい。
【0044】
このようなアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、プラスチック・エージ株式会社“フェノール樹脂”、アイピーシー株式会社“フェノール樹脂の合成・硬化・強靱化及び応用”、日刊工業新聞社“プラスチック材料講座(15)フェノール樹脂”、工業調査会株式会社“プラスチック全書(15)フェノール樹脂”等に記載されるフェノール樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、ハイドロキノンモノメタクリレート共重合体の他、特開平7−28244号公報記載のスルホニルイミド系ポリマー、特開平7−36184号公報記載のカルボキシル基含有ポリマー、特開昭51−34711号公報に開示されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号公報に記載のスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物を用いることができ、特に制限はないが、下記(1)〜(6)に挙げる酸性基を高分子の主鎖及び/又は側鎖中に有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点、溶解抑制能発現の点で好ましい。
【0045】
(1)フェノール基(−Ar−OH)
(2)スルホンアミド基(−SO2NH−R)
(3)置換スルホンアミド系酸基(以下、「活性イミド基」という。)
〔−SO2NHCOR、−SO2NHSO2R、−CONHSO2R〕
(4)カルボン酸基(−CO2H)
(5)スルホン酸基(−SO3H)
(6)リン酸基(−OPO3H2)
【0046】
上記(1)〜(6)中、Arは置換基を有していてもよい2価のアリール連結基を表し、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基を表す。
【0047】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂の中でも、(1)フェノール基、(2)スルホンアミド基(3)活性イミド基、及び(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が好ましく、特に、(1)フェノール基又は(2)スルホンアミド基、及び(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂が、アルカリ現像液に対する溶解性、現像ラチチュード、膜強度を充分に確保する点から最も好ましい。
【0048】
上記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、フェノール性水酸基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも画像形成性や熱硬化性の観点からノボラック樹脂、レゾール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂が好ましく、安定性の点からノボラック樹脂、ポリビニルフェノール樹脂がより好ましく、原料入手性、汎用性の観点からノボラック樹脂が特に好ましい。
【0049】
ノボラック樹脂とは、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、1−ナフトール、2−ナフトール、ピロカテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、1,2,4−ベンゼントリオール、フロログルシノール、4,4’−ビフェニルジオール、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類の少なくとも1種を、酸性触媒下、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラール等のアルデヒド類(ホルムアルデヒドに代えてパラホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドに代えてパラアルデヒドを、用いてもよい)、又は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、の少なくとも1種と重縮合させた樹脂のことを指す。
【0050】
本発明においては、フェノール類として、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノールと、アルデヒド類又はケトン類としてホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドとの重縮合体が好ましく、特に、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で40〜100:0〜50:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で0〜100:0〜70:0〜60の(混合)フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0051】
なお、本発明の感光性樹脂組成物には、後述する溶剤抑止剤を含有することが好ましく、その場合は、m−クレゾール:p−クレゾール:2,5−キシレノール:3,5−キシレノール:レゾルシノールの混合割合がモル比で70〜100:0〜30:0〜20:0〜20:0〜20の混合フェノール類、又は、フェノール:m−クレゾール:p−クレゾールの混合割合がモル比で10〜100:0〜60:0〜40の混合フェノール類と、ホルムアルデヒドとの重縮合体が好ましい。
【0052】
また、フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール基を有する重合性モノマーの重合体を挙げることができる。
フェノール基を有する重合性モノマーとしては、フェノール基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
具体的には、N−(2−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、o−ヒドロキシフェニルアクリレート、m−ヒドロキシフェニルアクリレート、p−ヒドロキシフェニルアクリレート、o−ヒドロキシフェニルメタクリレート、m−ヒドロキシフェニルメタクリレート、p−ヒドロキシフェニルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルアクリレート、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルメタクリレート等を好適に使用することができる。
【0053】
また、酸基前駆体を重合し、高分子化した後で酸基へと誘導してもよい。例えば、酸基前駆体としてp−アセトキシスチレンを重合した後、エステル部を加水分解しフェノール性水酸基へと誘導してもよい。また、米国特許第4,123,279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールホルムアルデヒド樹脂、オクチルフェノールホルムアルデヒド樹脂のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体も好適な例として挙げることができる。
【0054】
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スルホンアミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、窒素原子に少なくとも一つの水素原子が結合したスルホンアミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物が挙げられる。中でも、アクリロイル基、アリル基、又はビニロキシ基と、置換或いはモノ置換アミノスルホニル基又は置換スルホニルイミノ基と、を分子内に有する低分子化合物が好ましく、例えば、下記一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【化8】
【0056】
一般式(i)〜(v)中、X1及びX2は、それぞれ独立に−O−又は−NR7を表す。R1及びR4は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R2、R5、R9、R12、及びR16は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。R3、R7、及びR13は、それぞれ独立に水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。また、R6及びR17は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基を表す。R8、R10、及びR14は、それぞれ独立に水素原子又は−CH3を表す。R11及びR15は、それぞれ独立に単結合又は置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基又はアラルキレン基を表す。Y1及びY2は、それぞれ独立に単結合又はCOを表す。
【0057】
一般式(i)〜一般式(v)で表される化合物のうち、本発明の感光性樹脂組成物では、特に、m−アミノスルホニルフェニルメタクリレート、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド、N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0058】
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、活性イミド基を有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分として構成される重合体を挙げることができる。上記のような化合物としては、下記構造式で表される活性イミド基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物を挙げることができる。
【0059】
【化9】
【0060】
具体的には、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
【0061】
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0062】
(5)スルホン酸基を有するアルカリ可溶性高分子としては、例えば、スルホン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成単位とする重合体を挙げることができる。
【0063】
(6)リン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、リン酸基と、重合可能な不飽和基と、を分子内にそれぞれ1以上有する化合物に由来する最小構成単位を主要構成成分とする重合体を挙げることができる。
【0064】
本発明に係るアルカリ可溶性樹脂を構成する、前記(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する最小構成単位は、特に1種類のみである必要はなく、同一の酸性基を有する最小構成単位を2種以上、又は異なる酸性基を有する最小構成単位を2種以上共重合させたものを用いることもできる。
【0065】
前記共重合体は、共重合させる(1)〜(6)より選ばれる酸性基を有する化合物が共重合体中に10モル%以上含まれているものが好ましく、20モル%以上含まれているものがより好ましい。10モル%未満であると、アルカリ可溶性が不充分となりやすく、現像ラチチュードの拡大効果が充分達成されないことがある。
【0066】
本発明では、化合物を共重合してアルカリ可溶性樹脂を共重合体として用いる場合、共重合させる化合物として、前記(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物を用いることもできる。(1)〜(6)の酸性基を含まない他の化合物の例としては、下記(m1)〜(m13)に挙げる化合物を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
(m1)2−ヒドロキシエチルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルメタクリレート等の脂肪族水酸基を有するアクリル酸エステル類、及びメタクリル酸エステル類。
(m2)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルアクリレート、等のアルキルアクリレート。
(m3)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸−2−クロロエチル、グリシジルメタクリレート、等のアルキルメタクリレート。
(m4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−ヘキシルメタクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−ニトロフェニルアクリルアミド、N−エチル−N−フェニルアクリルアミド等のアクリルアミド若しくはメタクリルアミド。
【0068】
(m5)エチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル等のビニルエーテル類。
(m6)ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルブチレート、安息香酸ビニル等のビニルエステル類。
(m7)スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、クロロメチルスチレン、p−アセトキシスチレン等のスチレン類。
(m8)メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、プロピルビニルケトン、フェニルビニルケトン等のビニルケトン類。
(m9)エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン類。
【0069】
(m10)N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等。
(m11)マレイミド、N−アクリロイルアクリルアミド、N−アセチルメタクリルアミド、N−プロピオニルメタクリルアミド、N−(p−クロロベンゾイル)メタクリルアミド等の不飽和イミド。
(m12)無水マレイン酸、イタコン酸無水物、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等。
(m13)α位にヘテロ原子が結合したメタクリル酸系モノマー。例えば、特願2001−115595号明細書、特願2001−115598号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
【0070】
本発明において、前記アルカリ可溶性樹脂が、前記(1)フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、(2)スルホンアミド基を有する重合性モノマー、(3)活性イミド基を有する重合性モノマー、(4)カルボン酸基を有する重合性モノマー、(5)スルホン酸基を有する重合性モノマー、及び(6)リン酸基を有する重合性モノマーの単独重合体或いは共重合体の場合、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、単に重量平均分子量という)が2,000以上、数平均分子量が500以上のものが好ましく、更に好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000で、数平均分子量が800〜250,000であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.1〜10のものである。
【0071】
また、本発明において、前記アルカリ可溶性高分子化合物がノボラック樹脂である場合には、重量平均分子量が500〜100,000であり、数平均分子量が200〜50,000のものが好ましい。特願2001−126278号明細書に記載されるような低分子成分の比率が少ないノボラック樹脂を用いてもよい。
【0072】
これらアルカリ可溶性樹脂は、それぞれ1種類或いは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、アルカリ可溶性樹脂は、本発明の感光性樹脂組成物全固形分中、30〜98質量%、好ましくは40〜95質量%の添加量で用いられる。アルカリ可溶性樹脂の添加総量が30質量%未満であると、耐キズ性が劣化する傾向にあり、また、98質量%を超えると、感度、画像形成性が低下する懸念がある。
【0073】
ここで、2種類以上のアルカリ可溶性樹脂を併用する場合、どのような組み合わせを用いてもよいが、特に好適な例としては、フェノール性水酸基を有するポリマーとスルホンアミド酸基を有するポリマーとの併用、フェノール性水酸基を有するポリマーとカルボン酸基を有するポリマーとの併用、フェノール性水酸基を有するポリマー2種以上の併用、例えば米国特許第4123279号明細書に記載されているような、t−ブチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体や、オクチルフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体のような、炭素数3〜8のアルキル基を置換基として有するフェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、特開2000−241972号公報に記載の芳香環上に電子吸引性基を有するフェノール構造を有するアルカリ可溶性樹脂などとの併用を挙げることができる。
【0074】
〔(B)光熱変換剤〕
本発明の感光性樹脂組成物は、感度の観点から、記録に使用する光エネルギー照射線を吸収し、熱を発生する光熱変換剤を含有することを特徴とする。特に吸収波長域の制限はなく用いることができるが、入手容易な高出力レーザーへの適合性の観点から波長760nmから1200nmに吸収極大を有する赤外線吸収剤(赤外線吸収性染料又は顔料)が好ましく挙げられる。
【0075】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体、オキソノール染料、ジイモニウム染料、アミニウム染料、クロコニウム染料等の染料が挙げられる。
【0076】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクアリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0077】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0078】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0079】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、フタロシアニン染料、オキソノール染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、チオピリリウム染料、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、下記一般式(a)〜一般式(e)で示される染料が光熱変換効率に優れるため好ましく、特に下記一般式(a)で示されるシアニン色素は、本発明の感光性樹脂組成物中で使用した場合に、高い重合活性を与え、且つ、安定性、経済性に優れるため最も好ましい。
【0080】
【化10】
【0081】
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子又は、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
【0082】
【化11】
【0083】
前記式中、Xa−は後述するZa−と同様に定義され、Raは水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
【0084】
R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0085】
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za−は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素がその構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合は、Za−は必要ない。好ましいZa−は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0086】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、以下に例示するものの他、特願平11−310623号明細書の段落番号[0017]〜[0019]、特願2000−224031号明細書の段落番号[0012]〜[0038]、特願2000−211147号明細書の段落番号[0012]〜[0023]に記載されたものを挙げることができる。
【0087】
【化12】
【0088】
【化13】
【0089】
【化14】
【0090】
【化15】
【0091】
【化16】
【0092】
前記一般式(b)中、Lは共役炭素原子数7以上のメチン鎖を表し、該メチン鎖は置換基を有していてもよく、置換基が互いに結合して環構造を形成していてもよい。Zb+は対カチオンを示す。好ましい対カチオンとしては、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピリジニウム、アルカリ金属カチオン(Ni+、K+、Li+)などが挙げられる。R9〜R14及びR15〜R20は互いに独立に水素原子又はハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基から選択される置換基、或いは、これらを2つ若しくは3つ組合せた置換基を表し、互いに結合して環構造を形成していてもよい。ここで、前記一般式(b)中、Lが共役炭素原子数7のメチン鎖を表すもの、及び、R9〜R14及びR15〜R20がすべて水素原子を表すものが入手の容易性と効果の観点から好ましい。
【0093】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(b)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0094】
【化17】
【0095】
【化18】
【0096】
前記一般式(c)中、Y3及びY4は、それぞれ、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、又はテルル原子を表す。Mは、共役炭素数5以上のメチン鎖を表す。R21〜R24及びR25〜R28は、それぞれ同じであっても異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、又はアミノ基を表す。また、式中Za−は対アニオンを表し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0097】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(c)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0098】
【化19】
【0099】
【化20】
【0100】
前記一般式(d)中、R29ないしR31は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を示す。R33及びR34は各々独立に、アルキル基、置換オキシ基、又はハロゲン原子を示す。n及びmは各々独立に0ないし4の整数を示す。R29とR30、又はR31とR32はそれぞれ結合して環を形成してもよく、またR29及び/又はR30はR33と、またR31及び/又はR32はR34と結合して環を形成しても良く、さらに、R33或いはR34が複数存在する場合に、R33同士あるいはR34同士は互いに結合して環を形成してもよい。X1及びX2は各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基であり、X1及びX2の少なくとも一方は水素原子又はアルキル基を示す。Qは置換基を有していてもよいトリメチン基又はペンタメチン基であり、2価の有機基とともに環構造を形成してもよい。Zc−は対アニオンを示し、前記一般式(a)におけるZa−と同義である。
【0101】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(d)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0102】
【化21】
【0103】
【化22】
【0104】
前記一般式(e)中、R35〜R50はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、水酸基、カルボニル基、チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、オキシ基、アミノ基、オニウム塩構造を示す。Mは2つの水素原子若しくは金属原子、ハロメタル基、オキシメタル基を示すが、そこに含まれる金属原子としては、周期律表のIA、IIA、IIIB、IVB族原子、第一、第二、第三周期の遷移金属、ランタノイド元素が挙げられ、中でも、銅、マグネシウム、鉄、亜鉛、コバルト、アルミニウム、チタン、バナジウムが好ましい。
【0105】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(e)で示される染料の具体例としては、以下に例示するものを挙げることができる。
【0106】
【化23】
【0107】
本発明において赤外線吸収剤として使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が挙げられる。
【0108】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0109】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0110】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。顔料の粒径が0.01μm未満のときは分散物の画像記録層塗布液中での安定性の点で好ましくなく、また、10μmを越えると画像記録層の均一性の点で好ましくない。
【0111】
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0112】
これらの顔料もしくは染料を併用する場合、感光性樹脂組成物全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。顔料もしくは染料の添加量が0.01質量%未満であると感度が低くなる傾向にあり、また50質量%を越えると樹脂組成物の均一性が失われ、膜耐性が悪化する懸念がある。
【0113】
〔その他の成分〕
本発明の感光性樹脂組成物には、更に必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。例えば、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の熱分解性であり、分解しない状態ではアルカリ水可溶性高分子化合物の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することは、画像部の現像液への溶解阻止性の向上を図る点では、好ましい。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレノニウム塩、アルソニウム塩、アジニウム塩等を挙げることができる。
【0114】
本発明において用いられる他のオニウム塩として、好適なものとしては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)、特開平5−158230号公報に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号、特開平3−140140号の明細書に記載のアンモニウム塩、D.C.Necker et al,Macromolecules,17,2468(1984)、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、Chem.&Eng.News,Nov.28,p31(1988)、欧州特許第104,143号、米国特許第5,041,358号、同4,491,628号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al,Polymer J.17,73(1985)、J.V.Crivello et al.J.Org.Chem.,43,3055(1978)、W.R.Watt et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,22,1789(1984)、J.V.Crivello et al,Polymer Bull.,14,279(1985)、J.V.Crivello et al,Macromorecules,14(5),1141(1981)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,2877(1979)、欧州特許第370,693号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同3,902,114号、同5,041,358号、同4,491,628号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,PolymerChem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等が挙げられる。
【0115】
オニウム塩のなかでも、ジアゾニウム塩が特に好ましい。また、特に好適なジアゾニウム塩としては、特開平5−158230号公報に記載のものがあげられる。
【0116】
上記他のオニウム塩における対イオンとしては、四フッ化ホウ酸、六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−o−トルエンスルホン酸、5−スルホサリチル酸、2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、2−ニトロベンゼンスルホン酸、3−クロロベンゼンスルホン酸、3−ブロモベンゼンスルホン酸、2−フルオロカプリルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、1−ナフトール−5−スルホン酸、2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイル−ベンゼンスルホン酸、及びパラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも特に六フッ化リン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸や2,5−ジメチルベンゼンスルホン酸のごときアルキル芳香族スルホン酸が好適である。
【0117】
好適なキノンジアジド類としては、o−キノンジアジド化合物を挙げることができる。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物は、少なくとも1個のo−キノンジアジド基を有する化合物で、熱分解によりアルカリ可溶性を増すものであり、種々の構造の化合物を用いることができる。つまり、o−キノンジアジドは熱分解により結着剤の溶解抑制能を失うことと、o−キノンジアジド自身がアルカリ可溶性の物質に変化することの両方の効果により感材系の溶解性を助ける。本発明に用いられるo−キノンジアジド化合物としては、例えば、J.コーサー著「ライト−センシティブ・システムズ」(John Wiley&Sons.Inc.)第339〜352頁に記載の化合物が使用できるが、特に種々の芳香族ポリヒドロキシ化合物或いは芳香族アミノ化合物と反応させたo−キノンジアジドのスルホン酸エステル又はスルホン酸アミドが好適である。また、特公昭43−28403号公報に記載されているようなベンゾキノン(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステル、米国特許第3,046,120号及び同第3,188,210号に記載されているベンゾキノン−(1,2)−ジアジドスルホン酸クロライド又はナフトキノン−(1,2)−ジアジド−5−スルホン酸クロライドとフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステルも好適に使用される。
【0118】
さらに、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとフェノールホルムアルデヒド樹脂あるいはクレゾール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、ナフトキノン−(1,2)−ジアジド−4−スルホン酸クロライドとピロガロール−アセトン樹脂とのエステルも同様に好適に使用される。その他の有用なo−キノンジアジド化合物としては、数多くの特許に報告され知られている。例えば、特開昭47−5303号、特開昭48−63802号、特開昭48−63803号、特開昭48−96575号、特開昭49−38701号、特開昭48−13354号、特公昭41−11222号、特公昭45−9610号、特公昭49−17481号などの各公報、米国特許第2,797,213号、同第3,454,400号、同第3,544,323号、同第3,573,917号、同第3,674,495号、同第3,785,825号、英国特許第1,227,602号、同第1,251,345号、同第1,267,005号、同第1,329,888号、同第1,330,932号、ドイツ特許第854,890号などの各明細書中に記載されているものを挙げることができる。
【0119】
分解性溶解抑止剤であるオニウム塩、及び/又は、o−キノンジアジド化合物の添加量としては、本発明の感光性樹脂組成物を平版印刷版原版の記録層に用いる場合、好ましくは記録層の全固形分に対し、0.1〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%、特に好ましくは0.2〜2質量%の範囲である。これらの化合物は単一で使用できるが、数種の混合物として使用してもよい。
【0120】
o−キノンジアジド化合物以外の添加剤の添加量としては、好ましくは該記録層の全固形分に対し、0.5質量%未満、更に好ましくは0.2質量%未満、特に好ましくは0.1〜1.5質量%である。なお、本発明における添加剤と結着剤は、同一層へ含有させることが好ましい。
【0121】
また、更に感度を向上させる目的で、環状酸無水物類、フェノール類、有機酸類を併用することもできる。環状酸無水物としては米国特許第4,115,128号明細書に記載されている無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、3,6−エンドオキシ−Δ4−テトラヒドロ無水フタル酸、テトラクロル無水フタル酸、無水マレイン酸、クロル無水マレイン酸、α−フェニル無水マレイン酸、無水コハク酸、無水ピロメリット酸などが使用できる。フェノール類としては、ビスフェノールA、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4′−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4′,4″−トリヒドロキシトリフェニルメタン、4,4′,3″,4″−テトラヒドロキシ−3,5,3′,5′−テトラメチルトリフェニルメタンなどが挙げられる。更に、有機酸類としては、特開昭60−88942号公報、特開平2−96755号公報などに記載されている、スルホン酸類、スルフィン酸類、アルキル硫酸類、ホスホン酸類、リン酸エステル類及びカルボン酸類などがあり、具体的には、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、リン酸フェニル、リン酸ジフェニル、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸、アスコルビン酸などが挙げられる。上記の環状酸無水物、フェノール類及び有機酸類の感光性樹脂組成物中に占める割合は、0.05〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜15質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0122】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、EP950517公報に記載されているようなシロキサン系化合物、特開平11−288093号公報に記載されているようなフッ素含有のモノマー共重合体を添加することができる。
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。両面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインやN−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名「アモーゲンK」:第一工業(株)製)等が挙げられる。
シロキサン系化合物としては、ジメチルシロキサンとポリアルキレンオキシドのブロック共重合体が好ましく、具体例として、(株)チッソ社製、DBE−224,DBE−621,DBE−712,DBP−732,DBP−534、独Tego社製、Tego Glide100等のポリアルキレンオキシド変性シリコーンを挙げることが出来る。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の感光性樹脂組成物中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0123】
本発明の感光性樹脂組成物には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
焼き出し剤としては、露光による加熱によって酸を放出する化合物(光酸放出剤)と塩を形成し得る有機染料の組合せを代表として挙げることができる。具体的には、特開昭50−36209号、同53−8128号の各公報に記載されているo−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸ハロゲニドと塩形成性有機染料の組合せや、特開昭53−36223号、同54−74728号、同60−3626号、同61−143748号、同61−151644号及び同63−58440号の各公報に記載されているトリハロメチル化合物と塩形成性有機染料の組合せを挙げることができる。かかるトリハロメチル化合物としては、オキサゾール系化合物とトリアジン系化合物とがあり、どちらも経時安定性に優れ、明瞭な焼き出し画像を与える。
【0124】
画像の着色剤としては、前述の塩形成性有機染料以外に他の染料を用いることができる。塩形成性有機染料を含めて、好適な染料として油溶性染料と塩基性染料をあげることができる。具体的にはオイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)などを挙げることができる。また、特開昭62−293247号公報に記載されている染料は特に好ましい。これらの染料は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で添加することができる。更に本発明の感光性樹脂組成物には必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸又はメタクリル酸のオリゴマー及びポリマー等が用いられる。
【0125】
また、これら以外にも、エポキシ化合物、ビニルエーテル類、さらには、特開平8−276558号公報に記載のヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、アルコキシメチル基を有するフェノール化合物、及び、本発明者らが先に提案した特開平11−160860号公報に記載のアルカリ溶解抑制作用を有する架橋性化合物などを目的に応じて適宜添加することができる。
【0126】
[平版印刷版原版]
以下、本発明の平版印刷版原版について説明する。
【0127】
〔画像記録層〕
本発明の平版印刷版原版は、前記感光性樹脂組成物を溶媒に溶かして記録層塗布液とし、適当な支持体上に塗布することにより製造することができる。また、目的に応じて設けられる、保護層、樹脂中間層、バックコート層なども同様にして形成することができる。
ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。
溶媒中の上記成分(添加剤を含む感光性樹脂組成物全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0128】
また、塗布、乾燥後に得られる支持体上の塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版の画像記録層についていえば、一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録層の皮膜特性は低下する。
【0129】
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
本発明における画像記録層中には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、画像記録層全固形分中0.01〜1質量%、さらに好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0130】
〔樹脂中間層〕
本発明の平版印刷版原版には、必要に応じて、支持体と記録層との間に樹脂中間層を設けることができる。
この樹脂中間層を設けることで、支持体と記録層との間の高分子からなる樹脂中間層が断熱層として機能し、露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく使用されることから、高感度化が図れるという利点を有する。また、本発明に係る記録層は、この樹脂中間層を設ける際にも、露光面或いはその近傍に位置するため、露光に対する感度は良好に維持される。
なお、未露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性である記録層自体が樹脂中間層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、露光部においては、溶解抑制能が解除された記録層の成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの樹脂中間層自体がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解し、現像性の向上にも寄与し、この樹脂中間層は有用であると考えられる。
【0131】
〔支持体〕
本発明に使用される支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート、若しくは蒸着された紙、若しくはプラスチックフィルム等が含まれる。
本発明に係る支持体としては、特に平版印刷版原版に使用する場合、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、その中でも寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板は特に好ましい。好適なアルミニウム板は、純アルミニウム板及びアルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板であり、更にアルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムでもよい。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがある。合金中の異元素の含有量は高々10質量%以下である。本発明において特に好適なアルミニウムは、純アルミニウムであるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のアルミニウム板を適宜に利用することができる。本発明で用いられるアルミニウム板の厚みはおよそ0.1mm〜0.6mm程度、好ましくは0.15mm〜0.4mm、特に好ましくは0.2mm〜0.3mmである。
【0132】
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤又はアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われる。アルミニウム板の表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的に粗面化する方法、電気化学的に表面を溶解粗面化する方法及び化学的に表面を選択溶解させる方法により行われる。機械的方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法などの公知の方法を用いることができる。また、電気化学的な粗面化法としては塩酸又は硝酸電解液中で交流又は直流により行う方法がある。また、特開昭54−63902号公報に開示されているように両者を組み合わせた方法も利用することができる。この様に粗面化されたアルミニウム板は、必要に応じてアルカリエッチング処理及び中和処理された後、所望により表面の保水性や耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理が施される。アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成する種々の電解質の使用が可能で、一般的には硫酸、リン酸、蓚酸、クロム酸或いはそれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
【0133】
陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが一般的には電解質の濃度が1〜80質量%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲であれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2より少ないと耐刷性が不充分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。陽極酸化処理を施された後、アルミニウム表面は必要により親水化処理が施される。本発明に使用される親水化処理としては、米国特許第2,714,066号明細書、同第3,181,461号明細書、第3,280,734号明細書及び第3,902,734号明細書に開示されているようなアルカリ金属シリケート(例えばケイ酸ナトリウム水溶液)法がある。この方法においては、支持体がケイ酸ナトリウム水溶液で浸漬処理されるか又は電解処理される。他に、特公昭36−22063号公報に開示されているフッ化ジルコン酸カリウム及び米国特許第3,276,868号明細書、同第4,153,461号明細書、同第4,689,272号明細書に開示されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法などが用いられる。
【0134】
中でも、特に好ましい支持体処理法としては、上記アルミニウム板に、機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理、硝酸を含有する電解液を用いた電気化学的粗面化処理および塩酸を含有する水溶液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法が挙げられる。このような処理を行った支持体は非常に高い表面積と局所的に深い凹部を有しており、画像記録層との密着性に優れるという観点では耐刷性向上には有利であるが、特に局所的な深い凹部内に存在する画像記録層が現像により完全に除去し難く、非画像部の汚れの原因となるといった懸念があった。
しかし、本発明に係る(C)ラクトン基を有する高分子化合物を記録層の成分として用いることにより、画像部の耐現像性を維持しながら、非画像部の記録層のみを良好に溶解することができる。このため、上記のような高表面積を有する支持体との組み合わせにおいて特に顕著な効果を発揮しうると考えられる。
このような好ましい効果を発現する理由については明確ではないが、前述したように、画像部においてはこのラクトン基が通常疎水的な性質を有し、且つ、他の必須成分であるアルカリ可溶性樹脂と水素結合などの相互作用を形成し現像液耐性を高めるものでありながら、一方、非画像部においては、露光により上記アルカリ可溶性樹脂との相互作用が解除され、非画像部にアルカリ現像液が接触することにより、ラクトン基の環構造が開環してアルカリ可溶性となり、非画像部の溶解性が高まるものと推測される。
【0135】
本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて支持体と記録層との間に下塗層を設けることができる。
下塗層成分としては、種々の有機化合物が用いられ、例えば、カルボキシメチルセルロース、デキストリン、アラビアガム、2−アミノエチルホスホン酸などのアミノ基を有するホスホン酸類、置換基を有してもよいフェニルホスホン酸、ナフチルホスホン酸、アルキルホスホン酸、グリセロホスホン酸、メチレンジホスホン酸及びエチレンジホスホン酸などの有機ホスホン酸、置換基を有してもよいフェニルリン酸、ナフチルリン酸、アルキルリン酸及びグリセロリン酸などの有機リン酸、置換基を有してもよいフェニルホスフィン酸、ナフチルホスフィン酸、アルキルホスフィン酸及びグリセロホスフィン酸などの有機ホスフィン酸、グリシンやβ−アラニンなどのアミノ酸類、及びトリエタノールアミンの塩酸塩などのヒドロキシ基を有するアミンの塩酸塩等から選ばれるが、2種以上混合して用いてもよい。
【0136】
この有機下塗層は、次のような方法で設けることができる。即ち、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液をアルミニウム板上に塗布、乾燥して設ける方法と、水又はメタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤若しくはそれらの混合溶剤に上記の有機化合物を溶解させた溶液に、アルミニウム板を浸漬して上記化合物を吸着させ、その後水などによって洗浄、乾燥して有機下塗層を設ける方法である。前者の方法では、上記の有機化合物の0.005〜10質量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。
また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜5質量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。これに用いる溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸などの酸性物質によりpH1〜12の範囲に調整することもできる。また、画像記録材料の調子再現性改良のために黄色染料を添加することもできる。
有機下塗層の被覆量は、2〜200mg/m2が適当であり、好ましくは5〜100mg/m2である。上記の被覆量が2mg/m2よりも少ないと充分な耐刷性能が得られない。また、200mg/m2より大きくても同様である。
【0137】
〔露光・現像〕
上記のようにして作製されたポジ型平版印刷版原版は、通常、像露光、現像処理を施される。
像露光に用いられる光線の光源としては、赤外線レーザ、紫外線ランプ、可視光レーザ、サーマルヘッド等により記録することができる。本発明においては、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。
【0138】
本発明の平版印刷版原版の現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。
例えば、ケイ酸ナトリウム、同カリウム、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同アンモニウム、同カリウム及び同リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
これらのアルカリ剤の中で特に好ましい現像液は、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩水溶液である。その理由は、ケイ酸塩の成分である酸化珪素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率と濃度によって現像性の調節が可能となるためであり、例えば、特開昭54−62004号公報、特公昭57−7427号公報に記載されているようなアルカリ金属ケイ酸塩が有効に用いられる。
【0139】
更に、自動現像機を用いて現像する場合には、現像液よりもアルカリ強度の高い水溶液(補充液)を現像液に加えることによって、長時間現像タンク中の現像液を交換することなく、多量の平版印刷版原版を処理できることが知られている。本発明においてもこの補充方式が好ましく適用される。
【0140】
現像液及び補充液には現像性の促進や抑制、現像カスの分散及び印刷版画像部の親インキ性を高める目的で必要に応じて種々の界面活性剤や有機溶剤を添加できる。
好ましい界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系及び両性界面活性剤があげられる。更に現像液及び補充液には必要に応じて、ハイドロキノン、レゾルシン、亜硫酸、亜硫酸水素酸などの無機酸のナトリウム塩、カリウム塩等の還元剤、更に有機カルボン酸、消泡剤、硬水軟化剤を加えることもできる。
上記現像液及び補充液を用いて現像処理された印刷版は水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理される。本発明の平版印刷版原版の後処理としては、これらの処理を種々組み合わせて用いることができる。
【0141】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷版用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷版を搬送する装置と各処理液槽及びスプレー装置からなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって印刷版を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0142】
本発明においては、画像露光し、現像し、水洗及び/又はリンス及び/又はガム引きして得られた平版印刷版に不必要な画像部(例えば原画フィルムのフィルムエッジ跡など)がある場合には、その不必要な画像部の消去が行なわれる。このような消去は、例えば、特公平2−13293号公報に記載されているような消去液を不必要画像部に塗布し、そのまま所定の時間放置したのちに水洗することにより行なう方法が好ましいが、特開平59−174842号公報に記載されているようなオプティカルファイバーで導かれた活性光線を不必要画像部に照射したのち現像する方法も利用できる。
【0143】
以上のようにして得られた平版印刷版は、所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合にはバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。
その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布などが適用される。また、塗布した後でスキージ、或いは、スキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。
【0144】
整面液の塗布量は、一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥質量)が適当である。整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:「BP−1300」)などで高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、180〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0145】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引きなどの従来より行なわれている処理を施こすことができるが水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。この様な処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0146】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0147】
〔支持体の作製〕
厚さ0.3mmのJIS−A−1050アルミニウム板を用いて、下記に示す工程を組み合わせて処理することで支持体A、B、C、Dを作製した。
【0148】
(a)機械的粗面化処理
比重1.12の研磨剤(ケイ砂)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的な粗面化を行った。研磨剤の平均粒径は8μm、最大粒径は50μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
【0149】
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板に温度70℃のNaOH水溶液(濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%)をスプレーしてエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m2溶解した。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0150】
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0151】
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル)、温度50℃であった。交流電源波形は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、DUTY比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助陽極にはフェライトを用いた。使用した電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0152】
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.20g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0153】
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーで水洗した。前記デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的な粗面化を行う工程の廃液を用いた。
【0154】
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/リットル水溶液(アルミニウムイオンを5g/リットル含む)、温度35℃であった。交流電源波形は矩形波であり、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電解槽はラジアルセルタイプのものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dm2であった。
その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0155】
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0156】
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
【0157】
(j)陽極酸化処理
電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度は43℃であった。その後、井水を用いてスプレーによる水洗を行った。
電流密度はともに約30A/dm2であった。最終的な酸化皮膜量は2.7g/m2であった。
【0158】
<支持体A>
上記(a)〜(j)の各工程を順に行い(e)工程におけるエッチング量は3.4g/m2となるようにして支持体を作製した。
【0159】
<支持体B>
上記工程のうち(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。
【0160】
<支持体C>
上記工程のうち(a)及び(g)(h)(i)の工程を省略した以外は各工程を順に行い支持体を作製した。
【0161】
<支持体D>
上記工程のうち(a)及び(d)(e)(f)の工程を省略した以外は各工程を順に行い、(g)工程における電気量の総和が450C/dm2となるようにして支持体を作製した。
上記によって得られた支持体A、B、C、Dは続けて下記の親水化処理、下塗り処理を行った。
【0162】
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理層中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行った。その際のシリケート付着量は3.6mg/m2であった。
【0163】
(下塗り処理)
上記のようにして得られたアルカリ金属ケイ酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は15mg/m2であった。
【0164】
<下塗り液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1.0g
【0165】
【化24】
【0166】
[特定重合体(P−1)の合成]
MFG(1−メトキシ−2−プロパノール)14.5gを加えた200ml三口フラスコに75℃、窒素雰囲気下で、p−ビニル安息香酸(北興化学工業)8g(54.0mmol)、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチルラクトン(ダイセル化学工業(株)製)6.1g(36.0mmol)、V601(2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル)0.414g、MFG36.5gの溶液を2時間かけて滴下し、さらに5時間反応させた。反応液を酢酸エチルで再沈し、ろ過乾燥して、下記組成の本発明に係る特定重合体(P−1)を12.55g(酸価3.42meq/g、Mw9.42×104)を得た。
【0167】
[特定重合体(P−2)の合成]
200ml三口フラスコに、DMAc(ジメチルアセトアミド)41.1g、α−メタクリロイルオキシ−γ−ブチルラクトン(ダイセル化学工業(株)製)10g(58.8mmol)、V601(2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル)0.27gを加え、75℃、窒素雰囲気下で5時間反応させた。反応液を酢酸エチルで再沈し、ろ過乾燥して、下記組成の本発明に係る特定重合体(P−2)を9.7g(Mw2.62×105)を得た。
【0168】
[特定重合体(P−3)の合成]
DMAc(ジメチルアセトアミド)14.0gを加えた200ml三口フラスコに75℃、窒素雰囲気下で、ライトエステルHOMS(共栄社化学(株)製)10g(40.8mmol)、パントイルラクトンメタクリレート(ダイセル化学工業(株)製)5.39g(27.2mmol)、V601(2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル)0.314g、DMAc46.2gの溶液を2時間かけて滴下し、さらに5時間反応させた。反応液を水で再沈し、ろ過乾燥して、下記組成の本発明に係る特定重合体(P−3)を13.1g(酸価2.52meq/g、Mw9.00×104)を得た。
【0169】
【化25】
【0170】
[アルカリ可溶性樹脂1の作製]
攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた500ml三ツ口フラスコにメタクリル酸31.0g(0.36モル)、クロロギ酸エチル39.1g(0.36モル)及びアセトニトリル200mlを入れ、氷水浴で冷却しながら混合物を攪拌した。この混合物にトリエチルアミン36.4g(0.36モル)を約1時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後、氷水浴をとり去り、室温下で30分間混合物を攪拌した。
この反応混合物に、p−アミノベンゼンスルホンアミド51.7g(0.30モル)を加え、油浴にて70℃に温めながら混合物を1時間攪拌した。反応終了後、この混合物を水1リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分間得られた混合物を攪拌した。この混合物をろ過して析出物を取り出し、これを水500mlでスラリーにした後、このスラリーをろ過し、得られた固体を乾燥することによりN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミドの白色固体が得られた(収量46.9g)。
【0171】
次に攪拌機、冷却管及び滴下ロートを備えた100ml三ツ口フラスコに、N−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g(0.0210モル)、メタクリル酸エチル2.05g(0.0180モル)、アクリロニトリル1.11g(0.021モル)及びN,N−ジメチルアセトアミド20gを入れ、湯水浴により65℃に加熱しながら混合物を攪拌した。この混合物に「V−65」(和光純薬(株)製)0.15gを加え65℃に保ちながら窒素気流下2時間混合物を攪拌した。この反応混合物に更にN−(p−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド5.04g、メタクリル酸エチル2.05g、アクリロニトリル1.11g、N,N−ジメチルアセトアミド20g及び「V−65」0.15gの混合物を2時間かけて滴下ロートにより滴下した。滴下終了後更に65℃で2時間得られた混合物を攪拌した。反応終了後メタノール40gを混合物に加え、冷却し、得られた混合物を水2リットルにこの水を攪拌しながら投入し、30分混合物を攪拌した後、析出物をろ過により取り出し、乾燥することにより15gの白色固体を得た。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりこのアルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(ポリスチレン標準)を測定したところ53,000であった。
【0172】
〔実施例1〜4、比較例1〜2〕
得られた支持体に以下の画像記録層用塗布液1を塗布し、150℃のオーブンで1分乾燥後、乾燥膜厚が1.8g/m2のポジ型画像記録層を有する平版印刷版原版を作製した。
【0173】
【0174】
【化26】
【0175】
〔現像ラチチュードの評価〕
得られた平版印刷版原版を温度25℃相対湿度50%の条件下で5日間保存した後に、Creo社製Trendsetter3244にてビーム強度9.0W、ドラム回転速度150rpmでテストパターンを画像状に描き込みを行った。
その後、下記A組成又はB組成のアルカリ現像液の水の量を変更することにより、希釈率を変えて電導度を変化させたものを仕込んだ富士写真フイルム(株)製PSプロセッサー900Hを用い、液温を30℃に保ち、現像時間20秒で現像した。この時、画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなくコントラストの良好な画像を与える現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の差を現像ラチチュードとして評価した。なお、この差が大きい程、現像ラチチュードに優れ、コントラストに優れた画像を形成し得る。なお、用いた現像液の種類を表1に示す。
【0176】
【0178】
〔感度の評価〕
得られた平版印刷用原板をCreo社製Trendsetter3244にて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、上記現像ラチチュードの評価において画像部が溶出されず、かつ、現像不良の記録層残膜に起因する汚れや着色がなくコントラストの良好な画像を与える現像液の電導度の一番高いものと、一番低い物の中間(平均値)の電導度のアルカリ現像液で現像し、この現像液で非画像部が現像できる露光量(ドラム回転速度150rpmのときのビーム強度)を測定し、感度とした。数値が小さいほど高感度であると評価する。
これらの評価結果を表1に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
なお、比較例2で用いた高分子化合物(P−4)の構造を以下に示す。
【0181】
【化27】
【0182】
表1に明らかなように、(C)特定重合体を含有する本発明の感光性樹脂組成物を記録層に用いた実施例1〜4の平版印刷版原版は、シリケート系現像液、または非シリケート系現像液のいずれを用いた場合においても、現像ラチチュード及び感度に優れていることが確認された。
一方、本発明に係る(C)特定重合体を記録層の成分として用いなかった比較例1の平版印刷版原版は、現像ラチチュード、感度ともに劣っており、(C)特定重合体の代わりにP−4を用いた比較例2の平版印刷版原版は、感度に差は見られなかったものの、現像ラチチュードに劣ることが確認された。
【0183】
〔実施例5、6〕
得られた支持体Aに、実施例1〜4と同様に前記下塗り液を塗布した後、下記組成の下層用塗布液を、ウェット塗布量が28ml/m2のワイヤーバーで塗布して塗布量を1.5g/m2としたのち、150℃の乾燥オーブンで60秒間乾燥した。
得られた下層付き支持体に、下記組成の画像記録層(上層)用塗布液を、ウエット塗布量が11ml/m2のワイヤーバーで塗布を行い総塗布量を1.8g/m2とした。塗布後、乾燥オーブンで、140℃で70秒間の乾燥を行いポジ型平版印刷版原版を作製した。
【0184】
【0185】
【0186】
【化28】
【0187】
〔現像ラチチュードおよび感度の評価〕
得られた平版印刷版原版に対し、現像液を富士写真フイルム(株)製現像液DT−1希釈液に替え、現像時間を14秒に変更した以外は実施例1〜4と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュードおよび感度を評価した。結果を表2に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
表2に明らかなように、(C)特定重合体を含有した本発明の感光性樹脂組成物を下層として用いた実施例5〜6の平版印刷版原版は、このように記録層が重層構造をとった場合でも、現像ラチチュード及び感度に優れ、単層構造と同様の効果を奏することが確認された。
【0190】
〔実施例7〜8〕
得られた支持体Cに、実施例1〜4と同様に前記下塗り液を塗布した後、下記組成の画像記録層用塗布液3を塗布し、150℃のオーブンで1分間乾燥後、乾燥膜厚が1.8g/m2の画像記録層を有するポジ型平版印刷版原版を得た。
【0191】
【0192】
〔現像ラチチュードのおよび感度の評価〕
得られた平版印刷版原版に対し、実施例1〜4と同様の方法により露光及び現像を行い、現像ラチチュードおよび感度を評価した。結果を表3に示す。
【0193】
【表3】
【0194】
表3に明らかなように、(C)特定重合体を含有する本発明の感光性樹脂組成物を記録層に用いた実施例7〜8の平版印刷版原版は、シリケート系現像液、または非シリケート系現像液のいずれを用いた場合においても、現像ラチチュード及び感度に優れていることが確認された。
【0195】
【発明の効果】
本発明によれば、デジタル信号に基づいた走査露光による直接製版が可能であり、現像ラチュードに優れた平版印刷版原版の画像記録材料に好適な感光性樹脂組成物、及びそれを用いた平版印刷版原版を提供することができる。
Claims (2)
- (A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換剤と、(C)ラクトン基を有する高分子化合物と、を含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大する感光性樹脂組成物。
- (A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)光熱変換剤と、(C)ラクトン基を有する高分子化合物と、を含有し、露光によりアルカリ現像液への溶解性が増大する感光性樹脂組成物を含む記録層を設けてなる平版印刷版原版。
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