JP2004276546A - 可逆的感熱記録媒体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】可逆的感熱記録層および支持体を少なくとも備える可逆的感熱記録媒体であって、下記条件の折り曲げ試験を、満足する可逆的感熱記録媒体。
折り曲げ試験:
20mm幅で長さ150mmの短冊状試料に切り出したとき、中央で二つ折りにして、JIS Z 0237(1991年)の8.2.3項圧着装置に規定するスプリング硬さ80±5Hs、厚さ6mmのゴム層で被覆された幅約45mm、直径(ゴム層を含む。)約95mm、質量2000±50gのローラーで20往復させて目視可能な折り目が付き、その後、温度25±2℃、湿度60±5%の環境下で24時間放置後、折り目を頂角とした角度が90度以上180度未満になる。
【選択図】無し
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は熱により可逆的に発色状態、消色状態を繰り返し表示可能な可逆的感熱記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題の意識の高まりから森林保護のために紙の使用を抑えようとする動きが活発化している。紙の代替となる表示媒体としてはパーソナルコンピュータなどのブラウン管モニタや液晶パネルなどがあげられ、近年液晶方式や電気泳動を応用した電子ペーパーなどの電子デバイスが提案されてきている。
また、一覧性や柔軟性、質感が紙に近いことなどから、熱により記録消去が可能な種々の可逆的感熱記録媒体もその有力な候補として実用化されるようになってきた。
【0003】
従来からこのような可逆的感熱記録媒体は磁気カードに搭載され、チェーン店の蓄積ポイント表示に使用されてきた。また、リユースタイプの定期券用非接触ICカードやスキー場のリフト券などに搭載されて使用期限の表示などに使用されている。しかしながら、これらはカードとしての形状に限定された比較的固い媒体であり、リユースの回数もせいぜい数十回程度できれば良いと考えられてきた。紙の代替表示媒体として使用する場合は、柔軟性のあるもっと大きなA6版以上の大きさが要求されるのが一般的であり、カードサイズではほとんど問題になることのなかった、折れ、変形などが発生し、実用耐久性上の問題として浮かび上がっている。
【0004】
実際、可逆的感熱記録媒体はカルテなどのオフィス用途、工場や物流での現場指示書やカンバンなどの用途に実用化実験が進められているが、可逆的感熱記録媒体の繰り返し書き換え能力自体は500百回程度はあると想定されているにもかかわらず、実際には使用していくうちに発生する、汚れ、変形、折れなどのために数十回程度しか使用できない実情にある。
【0005】
汚れや変形や折れは人間が取り扱うときに発生するほか、掲示に使用される場合の気流によるはためき、表面に重量物を置かれたり、外来物がぶつかったりして発生する。さらに可逆的感熱記録や消去に使用するプリンタ内でのジャミングなどによっても発生する。
【0006】
特に汚れは異物との擦れのほか、媒体表面への水や油脂付着、静電気による塵付着などでも発生する。汚れの場合、プリンタ内部のサーマルヘッドの熱量が適正に媒体に印加されないために印字不良や消去不良の原因となり、さらにプリンタ内のサーマルヘッドや搬送ローラーに転写した汚れが次の媒体表面に再転写するために汚染が他のきれいな媒体にも波及することになる。
【0007】
これらのリスクを軽減するために、定期的に媒体を洗浄することが有効と考えられるが、この洗浄工程自体も媒体の変形を発生させる原因のひとつになり、媒体寿命を延ばす有効な手法が待たれていた。
【0008】
カルテなどのオフィス用途では比較的清浄かつ温和な環境で使用されるため比較的不都合は少ないが、工場の現場で使用に供される場合は折れ/曲げ等の物理的変形を受けるリスクが高く、また原則としてリユースするためにはグリス汚れなどを落とす洗浄工程を経る必要があり、特に媒体寿命が短く、可逆的感熱記録媒体を紙の代替として導入する上での大きな障害となっていた。
【0009】
従来提案されてきた可逆的感熱記録媒体は支持体として紙、不織布、織布、合成樹脂フィルム、合成紙、金属箔、ガラス、あるいはこれらの複合材料を使用していた。実際には支持体としてPET(ポリエチレンテレフタレート)などに代表される柔軟で比較的寸法安定に優れたプラスチックフィルムが使用されることが多かった。
【0010】
しかしながらこれらの素材は、折り目や伸びなどの物理的変形を受けるとそれが永久に残り、再使用する際にサーマルヘッドやヒートロールに対する接触不良を起こし、その部分の印字や消去ができない問題があった。
【0011】
可逆的感熱記録媒体のリユース性を改善するための従来技術として、下記のものが提案されてきている。
【0012】
特許文献1には支持体とは個別の、ゴム弾性を持つ高分子を主成分とする弾性層を一層または二層以上設けることを特徴とする可逆的感熱記録媒体が提案されている。これは感熱記録層と熱印加用加熱体間の密着性不良に基づく再現性不良を改善し、長期間にわたって再現性良く、鮮明な画像と充分な消色状態を得ることを目的としたものである。実施例で100μmのポリエステルフィルムに5ないし20μmの弾性層を積層しているが、この組み合わせで後述の本願発明の目的である、折り目や変形の防止、一旦形成された折り目部分に対するサーマルヘッドの適切な密着は実現できず、折り目や変形に対する対策として想定されたものではない。
【0013】
可逆的感熱記録媒体の媒体全体の折れ、シワ、変形による印字不良改善の提案としては特許文献2に支持体が結晶化度5%以下の低結晶性の熱可塑性樹脂シート、または非晶性樹脂と結晶性樹脂との共押し出しによって作られた両面非晶性シートがある。実際に提案されている支持体樹脂はテレフタル酸とシクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコールとの共重合体(PET−G)、またはその共重合体とポリカーボネートのアロイ(耐熱PET−G)であったり、テレフタル酸あるいはイソフタル酸とエチレングリコールの共重合体(PET)、ポリエステル樹脂,ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸メチル、ポリメチルメタアクリレート、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等の非晶性熱可塑性樹脂の単体または混合物となっている。これらの樹脂は後述する本願発明の「支持体ゴム弾性」を持たない塑性流動性の強い成形性を有する熱可塑性樹脂である。本願発明の反発弾性に注目したエラスティックな物性を持つものを意図したものに比べると、可逆的感熱記録媒体全体の折れ、シワ、変形による印字不良の改善は不充分であり、数十回程度のリユースしか達成できていない。
【0014】
さらに可逆的感熱記録媒体の媒体全体の折れジワ、変形改善の提案としては特許文献3がある。これは構成層が一層または二層以上で厚みが800μm以下の支持体であって、三角錐の圧子を用いて4.9mNの荷重を1秒間保持させたときの微小硬度計により測定される最大変異が1.1μm以上であり、かつ空洞含有率が25%以下、剛直度が4mN以上である支持体を有することを特徴とするカード用被記録材である。剛直度と加工性の面から、支持体としてポリエチレンテレフタレートと塩化ビニルのフィルムが上げられており、支持体ゴム弾性に着目した本発明の思想とは異なることが分かる。また、実施例として提示されている空洞含有ポリエチレンテレフタレートフィルムや、白色ポリエチレンテレフタレートと熱可塑性ポリウレタンフィルム接合体の構成比率は本発明の範囲と異なっている。
【0015】
これも本願発明の「支持体ゴム弾性」に注目したエラスティックな物性を持つものを意図したものに比べると、可逆的感熱記録媒体全体の折れ、シワ、変形による印字不良の改善は不充分であり、数十回程度のリユースしか達成できていない。
【0016】
【特許文献1】
特開平5−221152号公報(請求項1、第12−13頁)
【特許文献2】
特開2000−137782号公報(請求項1、第3−4頁)
【特許文献3】
特開2002−275286号公報(請求項1、第2−3頁)
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は潜在的には500回のリユースに耐えるといわれている可逆的感熱記録層の潜在的な寿命に見合うように、媒体の折れ、曲がり、変形に対する耐久性を改善することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る可逆的感熱記録媒体は、可逆的感熱記録層および支持体を少なくとも備える可逆的感熱記録媒体であって、下記条件の折り曲げ試験を、満足する可逆的感熱記録媒体である。
折り曲げ試験:
20mm幅で長さ150mmの短冊状試料に切り出したとき、中央で二つ折りにして、JIS Z 0237(1991年)の8.2.3項圧着装置に規定するのローラーで20往復させて目視可能な折り目が付き、その後、温度25±2℃、湿度60±5%の環境下で24時間放置後、折り目を頂角とした角度が90度以上180度未満になる。
尚、本ローラはJISに規定されるようにスプリング硬さ80±5Hs、厚さ6mmのゴム層で被覆された幅約45mm、直径(ゴム層を含む。)約95mm、質量2000±50gのローラである。
【0019】
前記可逆的感熱記録媒体が140MPa以下の引張り強さおよび150%以上の伸び率の物理特性を有することが好ましい。
【0020】
また、前記支持体が一層以上から構成され、その少なくとも一層が下記条件にて定義される「支持体ゴム弾性」を有する樹脂を25質量%以上含有する支持体であることが好ましい。
支持体ゴム弾性:
JIS K 6262(1997年)に規定される引張永久ひずみ試験において25%の引張ひずみを与えたときの引張り永久ひずみが5%以下であること。引張永久ひずみは次式により算出する。
Ts={(L2−L0)/(L1−L0)}*100
ここに
Ts:引張永久ひずみ(%)
L0:引張り前の標線間距離(mm)
L1:引張り時の標線間距離(mm)
L2:収縮後の標線間距離(mm)
【0021】
また、前記支持体が多層から構成され、その支持体全体として前記「支持体ゴム弾性」を有する1種以上の樹脂を25質量%以上含有することも好ましい。
また、支持体と可逆的感熱記録層の間、支持体の感熱記録層のない側、感熱記録層の表面側の少なくとも一個所に更に一層以上の層、を備えることも好ましい。
また、支持体の厚さが75μmから2000μmの範囲であることも好ましい。
【0022】
また、「支持体ゴム弾性」を有する樹脂が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、動的加硫型ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーおよび塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の熱可塑性エラストマーであることも好ましい。
【0023】
【発明の実施の形態】
本発明は可逆的感熱記録媒体に折れ、曲げ、変形が発生した際にその変形の恒久化しないように、塑性流動を軽減するものである。可逆的感熱記録媒体全体として特定のエラスティックな性質を与えることが重要であることに着目し、その性質が先に説明した折り曲げ試験を満足することであることを見出した。
【0024】
更には、そのような特定の性質を持つためには主に上記に説明したような性質を満足する素材を支持体として使用することがそのような性質を簡単に得る上で好ましいことを見出したわけである。
【0025】
従来のPETやPET−Gに代表される支持体では塑性変形して折り目やシワになる変形量であっても、本発明に説明した「支持体ゴム弾性」を持つエラスティックな成分を含む素材を支持体にすることにより、媒体が塑性流動による永久変形を起こし、サーマルヘッドや消去用ヒートロールと媒体の接触不良から表示不具合を惹起するリスクを大幅に軽減することができる。
【0026】
また折り目が実際に入ってしまった場合でも、媒体自体の反発弾性によって折り目の頂角が開きやすく、サーマルヘッドやヒートロールが折り目の谷間付近まで接触することができるために、印字抜けや消去不良の程度を大幅に軽減できるようになった。
【0027】
これらの効果により、媒体が汚れた場合でも安心して洗浄して再使用することが可能となり、媒体を可逆的感熱記録層の潜在寿命近くまで実際に使用することが可能となった。
【0028】
本発明に使用する可逆的感熱記録層としては加熱により高濃度に発色し、さらに再加熱により消色するタイプであり画像のコントラストが大きく画像認識しやすいものが好ましい。このタイプとして、通常無色ないし淡色の染料前駆体と、加熱後の冷却速度の違いにより該染料前駆体に可逆的な色調変化を生じせしめる可逆顕色剤とを主成分としてなる可逆的感熱記録層が好ましく使用される。
本発明に用いる可逆顕色剤としては、加熱により染料前駆体に可逆的な色調変化を起こさせる化合物であれば特に限定されないが、例えば特開平6−210954号公報に開示されるような炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を有する電子受容性化合物が好ましく、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基を少なくとも一つ有するフェノール性化合物などが使用できる。
【0029】
本発明に用いる無色ないし淡色の染料前駆体としては、一般に感圧記録紙、感熱記録紙、通電感熱記録紙、感熱転写紙などに用いられる電子供与製化合物が上げられる。例えばトリアリールメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、キサンテン系化合物、スピロ系化合物などが上げられる。
【0030】
可逆的感熱記録層の強度を上げるなどの目的で各種バインダーが配合される。例えばデンプン類、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース類、変性ポリビニルアルコール類、ゼラチン、カゼイン、アクリル酸エステル系樹脂、無水マレイン酸を含む水溶性高分子、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、スチレン−ブタジエン共重合体などのラテックス類が上げられる。
【0031】
その他、発色感度、消色温度を調節するための添加剤として、80〜180℃の融点を持つ熱可融性物質や一般の感熱紙に使用される増感剤をを可逆的感熱記録層に添加することも好ましい。
【0032】
本発明に使用する支持体としては、本発明に既定した条件を満足できる、紙、合成紙、各種不織布、織布、樹脂フィルム、金属箔、網、これらを組み合わせたシートなどが使用できる。
【0033】
可逆的感熱記録層を上記の支持体上に形成する方法に特に制限はないが、エアーナイフコーティング、ブレードコーティング、バーコーティング、カーテンコーティングなどのような塗工方式や、グラビア、オフセット、スクリーン、フレキソなどの印刷方法を採ることができる。
【0034】
本発明に係る可逆的感熱記録媒体はその記録媒体全体として先に説明したような折り曲げ試験において所定の特性を満足することが必要である。ここでいう折り目とは、折り返した部分のみに直線的な折り癖が永久変形として残ることを指す。この現象が全く見られないほどエラスティックな可逆的感熱記録媒体では、実用的な薄さの範囲では使用に耐える腰(剛性)がなく、ストッカからの送り出しやプリンタ内での搬送が上手く行かないなどの理由から実際には使用できないと考えられる。またこのように折り癖が残らない媒体は上記のような折り曲げ試験では折が完全に戻り180度になると考えられる。
【0035】
この条件を満足する可逆的感熱記録媒体であれば、使用時や洗浄時に一時的に折れ、曲がりが発生してもその変形が恒久的に残留する程度が極めて低い。またたとえ折り目がついた場合でも、自分自身の反発弾性で折り目部分が開くため、リユースしたときにプリンタのサーマルヘッドが折り目部分にも適切にタッチすることができ、消え残りや印字の欠けが発生しにくい。また、温度25±2℃、湿度60±5%の環境下で24時間放置したときの折り目を頂角とした角度は、より好ましくは100度以上180度未満である。
【0036】
一般に可逆的感熱記録媒体の支持体として使用されるのポリエチレンテレフタレートは引張り強さ170〜220MPa程度、伸び率120%、比重1.4g/cm2程度であり、発泡ポリエチレンテレフタレートでも引張り強さ120〜150MPa程度、伸び率60〜90%、比重1.1g/cm2程度である。媒体として引張り強さが140MPaを越えたり、伸び率150%未満となる場合は、結局、後述する充分な「支持体ゴム弾性」が得られておらず、折れ、曲げによる永久変形が残りやすくなる。比重に関しては、搬送上で実用的な腰を持った媒体の物理特性を確保するためには、一般論的には支持体にフィラーなどの適切な充填剤を混練することが望ましく、これらの寄与により一般的なゴムに比べると0.95g/cm2 以上程度と比較的大きな比重になり易い。このようなタイプの支持体を使用した媒体としては1.1g/cm2 以上がより好ましい。
また、さらに、本発明による可逆的感熱記録媒体のより望ましい物理特性は、130MPa以下の引張り強さ、200%以上の伸び率、を同時に満たすことである。
【0037】
従来のPETやPET−Gに代表される支持体では塑性変形して折り目やシワになる変形量であっても、媒体が塑性流動による永久変形を起こし、サーマルヘッドや消去用ヒートロールと媒体の接触不良から表示不具合を惹起するリスクを大幅に軽減することができ、さらには折り目が実際に入ってしまった場合でも、媒体自体の反発弾性によって折り目の頂角が開きやすく、サーマルヘッドやヒートロールを折り目の谷間付近まで接触させ、印字抜けや消去不良の程度を大幅に軽減する上で「支持体ゴム弾性」を支持体を構成する少なくとも一つの層に付与することが好ましい。そのためにはその層が上記記載の引張り永久ひずみ範囲内の物理特性を持つ樹脂を25質量%以上含むことが好ましい。更に好ましくは30質量%以上含有することがより実用的である。
【0038】
このように支持体を構成する少なくとも一層が上記の「支持体ゴム弾性」を有する樹脂を特定の割合以上含んでいれば、他の層がそのような性質をあまり持たない、またはまったく持たない場合でも記録媒体としては上述の条件を満足できる。
【0039】
このような例としては、相対的に安価に流通しているポリエチレンテレフタレートなどの素材と「支持体ゴム弾性」を有する樹脂を特定以上含む層を積層して可逆的感熱記録媒体の支持体として使用することが可能である。
【0040】
PETフィルムのような「支持体ゴム弾性」を持たない樹脂上にシリコンペーストや例えば東レ・ダウ・コーニングシリコーン社製SE738のような液状シリコンゴムをブレードコーティングし、熱あるいは湿気硬化させ、多層構成の支持体を形成することもできる。
【0041】
また、ブタジエン樹脂のようなゴム弾性を持つ樹脂やその共重合体などをPETフィルムのようなゴム弾性を持たない樹脂上にキャストして多層構成の支持体を形成することも可能である。
【0042】
このような「支持体ゴム弾性」を有する樹脂として、他に、ポリマーアロイ(ブレンド)、例えば汎用のHIPS(ハイインパクトポリスチレン)であるポリスチレン/ブタジエンゴムの組み合わせや、樹脂/ゴム/樹脂系で相溶化剤としてゴム(熱可塑性エラストマー)を含むPOM(ポリアセタール)/SEBS(スチレン/エチレン・ブチレン/スチレンブロック共重合体)/ナイロン(PA)のような均一系が挙げられる。
【0043】
また、コロナ処理やプライマー塗工などの適切な易接着処理をしたポリエチレンテレフタレートフィルムの上に「支持体ゴム弾性」を有する熱可塑性エラストマーをTダイなどから押し出して接合することによって本発明の支持体を作成することも可能である。
【0044】
以上は「支持体ゴム弾性」を有する樹脂を特定量以上含む層が少なくとも一つあるような場合を説明したが、更に本発明の好ましい態様では、支持体が多層から構成され、その支持体全体として前記「支持体ゴム弾性」を有する1種以上の樹脂を25質量%以上含有することが好ましい。すなわち多層構造の支持体において、折れ・変形に抵抗する「支持体ゴム弾性」機能を特定の各層にそれぞれ分担させておけば、それ以外の層で一般的に使用されている折れ・曲げがつく素材を使用しても媒体全体の折れ、曲がり、変形に対する耐久性を改善することが可能になる。すなわち、「支持体ゴム弾性」を有する樹脂を含む層が多層あってそれらが支持体全体として「支持体ゴム弾性」を有する樹脂をその特定量以上含む場合も当然含まれる。その場合は以上に挙げたような樹脂を含む層を2層以上有する支持体となる。
【0045】
上記に定義した「支持体ゴム弾性」を有する樹脂としては一般的なゴムや熱可塑性エラストマー、一般的なゴムや熱可塑性エラストマーと種々の樹脂等とのアロイ、一般的なゴムや熱可塑性エラストマーの組成物を使用することができる。
以下に本発明に使用可能な例を上げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
固形ゴムとしては天然ゴム、グラフト天然ゴム、天然トランスポリイソプレン、イソプレンゴム、トランスポリイソプレン、高シスブタジエンゴム、低シスブタジエンゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴム、溶液重合スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、カルボキシル化ニトリルゴム、ニトリルゴム・塩化ビニルブレンド、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロビレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、アクリルゴム、エチレンアクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、多硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴム、エピクロルヒドリンエチレンオキシドゴム、ポリエーテルウレタンゴム、ポリエステルウレタンゴム、メチルシリコーンゴム、ビニルメチルシリコーンゴム、フェニルメチルシリコーンゴム、フッ化シリコーンゴム、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレンプロピレンゴム、四フッ化エチレンパーフルオロメチルビニルエーテルゴム、フォスファゼン系フッ素ゴム等が上げられる。
【0046】
また、熱可塑性エラストマーとしてはスチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン・ブチレン/スチレンブロック共重合体、スチレン/エチレン・プロピレン/スチレンブロック共重合体、水素添加型スチレンブタジエンランダム共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、動的加硫型ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマー、トランスポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーなどが上げられる。
【0047】
更に本発明の実施態様の中には、支持体と可逆的感熱記録層の間、支持体の感熱記録層のない側、感熱記録層の表面側の少なくとも一個所に更に一層以上の層、を備える可逆的感熱記録媒体がある。これらの層は具体的には支持体と可逆的感熱記録層の間に形成されうる下塗り層であったり、支持体の感熱記録層のない側に形成されうる摩擦や帯電をコントロールする等の機能を持つバック層であったり、感熱記録層の表面側に形成されうる保護層である。
【0048】
これらの層を形成する上でエアーナイフコーティング、ブレードコーティング、バーコーティング、カーテンコーティングなどのような塗工方式や、グラビア、オフセット、スクリーン、フレキソなどの印刷方法を採ることができる。
【0049】
予め下塗り層、バック層、保護層などを形成したポリエチレンテレフタレート(PET)基材などを支持体に接合するなどの手法で下塗り層、バック層、保護層などを媒体に付与することもできるが、PETフィルムの厚さが厚すぎると、媒体全体の物理特性に影響を与えて、請求項1〜4の条件を満足できなくなる可能性があり、媒体全体の折れ、曲がり、変形に対する耐久性の改善が不完全になる場合があるため、充分な配慮が必要である。このような場合はこれらの下塗り層等として使用される上記のような基材を、実質的には支持体の方の基材とみなして、上記請求項の条件を満足する方向を試行してもよい。
【0050】
先ず支持体と可逆的感熱記録層の間に形成されうる下塗り層の例について述べる。下塗り層を設ける理由には下記のようなものがあるが、複数の機能を一層の下塗り層に兼備させることが困難である場合には、各機能を有する層を複数層設けそれらを総して下塗り層としても良い。下塗り層の皮膜は後に有機溶剤系の可逆的感熱記録層を積層する場合に用いられる有機溶剤に著しい溶解・膨潤を受けないものであることが好ましい。
【0051】
下塗り層を設ける理由の第一は断熱効果を得るためである。可逆的感熱記録媒体の消去・印字にはサーマルヘッドで200℃前後に媒体を加熱する場合があり、このような場合でも比較的耐熱性の低い熱可塑性エラストマーを支持体として使用できるようにするためである。熱可塑性エラストマーは加熱成形性がある点が長所であり、靴底やチューブ、ホース、スポーツ用品や医療用品に成形品が実用化されている。このような特徴があるため、可逆的感熱記録媒体のフィルム・シートを支持体として使用すると、サーマルヘッドやヒートロールの熱によって変形することが考えられる。この熱から支持体を守ることが断熱効果を奏することの目的である。
【0052】
さらにこの断熱効果は可逆的感熱記録層に少ない加熱で充分な熱量を与える上でも有効である。可逆的感熱記録層が発色・消去プロセスにおいて温度にさらされる時間が短すぎると、充分な印字濃度を得ることができなかったり、完全に消去を行なうことができず、画像残りが発生する場合がある。
【0053】
これを解決するためにサーマルヘッドから可逆的感熱記録層に与える熱量を増やすことが考えられるが、過剰な熱量は可逆的感熱記録層や後述する保護層などにダメージを与え、発色・消去機能の繰り返し耐久性が低下する場合がある。断熱効果が得られると少ない熱量を支持体側へ逃がすさずに可逆的感熱記録層へ効果的に留めることが可能となるため、発色・消去機能の繰り返し耐久性の低下を防ぐ効果がある。
断熱効果を持つ下塗層としては空気やガスを密閉したボイドを含むポリウレタン・ポリスチレン・塩化ビニルなどのプラスチックフォーム、ガラスやセラミックスなどからなる中空微粒子をバインダーに分散させて形成しても良い。また、延伸などによってボイドを形成したポリエステルフィルム等を支持体の上に積層して形成してもよい。有機・無機フィラーを各種バインダーに分散させたものを塗工し、フィラーの隙間にボイドを確保する手法を用いることも可能である。
【0054】
下塗り層を設ける理由の第二は可逆的感熱記録層と支持体の接着強度を改善することにある。ポリエステルレジンやポリ酢酸ビニル樹脂を含有する下塗り層を塗工することによって、可逆的感熱記録媒体と支持体との接着強度を改善することが可能である場合がある。
【0055】
下塗り層を設ける理由の第三は、可逆的感熱記録層の顕色剤や染料が支持体に拡散することを防ぐためである。顕色剤や染料が拡散すると、印字濃度不良や消え残りが発生する。これを防ぐためにバリア効果を持つ層を下塗り層の多層構成に加えても良いし、下塗り層自体にバリア効果を持たせることが好ましい。特に本発明の特徴であるエラスティックな素材は、ゴム弾性を出すために比較的疎な分子密度の空間を持っていることが多く、顕色剤や添加剤が拡散・吸着されやすいことが多いので、このようなバリア効果を有する下塗り層は効果的である。
【0056】
下塗り層を設ける理由の第四は、上記第三の理由とは逆に、支持体が可逆的感熱記録層形成用の塗液に侵されることを防ぐためのバリア効果を奏することである。すなわち支持体が好ましく持ちうる、「支持体ゴム弾性」を満足する素材の中には耐溶剤性に劣るものがある。例えば有機溶剤系の可逆的感熱記録層を使用する場合にも、有機溶剤を遮断する機能を有するバリア効果をもつ層を設けて「支持体ゴム弾性」を有する素材を含む支持体が膨潤したり溶解しないように保護してやることも可能である。
【0057】
これらのバリア効果のある層の例としては溶剤として比較的溶解性の低いアルコールを含有するアクリルとウレタンのハイブリッド樹脂を塗工乾燥して得られる皮膜や、水性UV硬化型のエステルアクリレート樹脂やウレタンアクリレート樹脂の硬化皮膜が上げられる。その他スチレン/ブタジエン共重合体やエチレン/酢酸ビニル共重合体のようなラテックスのような疎水性高分子エマルジョン、またメラミンやポリアミド樹脂を加えて縮合反応や架橋反応を起こすことにより耐水化させたポリビニルアルコールやセルロース誘導体およびアクリルアミドを含む共重合体などの水溶性高分子が挙げられる。尚、このようなバリア効果のある層は後述の保護層を使用する場合にその構成層として追加されても良い。下塗り層は塗工、印刷のほか、フィルムの積層、蒸着やスパッタのような手法で形成しても良い。
【0058】
支持体の可逆的感熱記録層と反対側の面に一層以上から構成され得るバック層を備えることが好ましい。ここでいうバック層は主に摩擦抵抗の軽減や帯電防止を目的とした層である。反発弾性を有する「支持体ゴム弾性」成分を含むエラスティックな支持体はそのままでは、多くの場合ガイドレールや重ね合わされた他の可逆的感熱記録媒体との滑り摩擦抵抗が高い。従って媒体ストッカからの円滑な送り出し、プリンタ内でのスムースな搬送のためには可逆的感熱記録媒体裏面に滑りの良い機能層をバック層として塗布し、覆ってやることが好ましい。これはシリコン樹脂粒子やポリテトラフルオロエチレン樹脂粒子、2硫化モリブデン粒子、サーマルブラックと呼ばれるカーボンブラック粒子などをバインダーに分散させたものを塗工したり、シリコン樹脂を含有するインク・ニス・塗料などを印刷・塗工することによって実現可能である。
【0059】
静電気による媒体同士の張り付きや埃の吸着を防止するために、媒体の表面抵抗を1013Ω/□未満にコントロールすることが好ましい。しかしながら請求項1の可逆的感熱記録媒体を実現するための反発弾性を有する「支持体ゴム弾性」成分を含むエラスティックな支持体は多くの場合絶縁体である。本発明に規定する物理特性を満足するために、ブレンドなどで添加できる添加剤の量が制限され、支持体自体で1013Ω/□未満の表面抵抗を実現できない場合がある。このような場合はバック層を多層構成としてケッチェンブラックのようなストラクチャ構造の発達した導電性のあるカーボンブラックやホワイトカーボンといわれる非晶質シリカ粉、あるいは4級アンモニウム塩のような帯電防止効果のある添加剤などを含有する帯電防止能を有する層を、印刷・塗工などの手法を用いて形成することにより表面抵抗を1013Ω/□未満にすることが可能である。
【0060】
またバック層にカール矯正機能を奏させることも有効である。充分な反発弾性を有する「支持体ゴム弾性」成分を含むエラスティックな支持体上に、可逆的感熱記録層を予め形成したポリエチレンテレフタレートフィルムを接着剤などを介して熱プレスで積層することを考えた場合、プレス処理中の支持体は圧力と熱によってZ軸方向に縮み、X−Y方向に伸びている状態である。これに対してポリエチレンテレフタレートフィルムは相対的に固いため、ほとんど変形を受けない。このため、プレスの熱と圧力が除去された後に「支持体ゴム弾性」成分を含む支持体が弾性収縮し深刻な可逆的感熱記録層面側を凸にしたカールを発生することがある。これを補償して防止するために可逆的感熱記録層と反対側の面にバック層としてポリエチレンテレフタレートフィルムを積層することもできる。このようなバック層としての本ポリエチレンテレフタレートフィルムに前述の潤滑機能や・帯電防止機能を有する層を予め塗工や印刷によって付与することもできる。
【0061】
次に可逆的感熱記録層の表面側に保護層を形成することも好ましい。むしろ、より一般的には可逆的感熱記録層の表面には保護層が形成されることが常である。保護層は、染料・顕色剤を高い比率で含有するために相対的に物理的強度の低い感熱記録層を水分などの外部の環境条件および印字消去に用いられるサーマルヘッドやヒートロールとの熱摺動によるダメージから保護するために設けられる。保護層を形成する材料としてはポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、アクリル酸エステルなどが挙げられる。膜強度の向上や緻密性を改善するために必要に応じてエポキシ化合物、ビニル化合物などの架橋剤を添加することも可能である。また、必要に応じてシリコン樹脂粒子やシリコーンオイル、ワックスのような滑剤、アルミナのようなヘッドクリーニング剤、帯電防止剤を配合することも好ましい。
【0062】
本発明の記録媒体において支持体の厚さが75μmから2000μmの範囲であることが好ましい。これは、実用的な構成を考えた場合、下塗り層は5μm以下、可逆的感熱記録層の厚さは10μm以下、保護層は5μm以下、可逆的感熱記録層と支持体を挟んで反対側に設けられる機能層は5μm以下であることが多く、支持体を75μm以上とすれば、それらの層を総和しても支持体に対して相対的に薄くなることから、媒体の物理特性に支配的になるのは支持体の物理特性であるということができるからである。
【0063】
可逆的感熱記録媒体に折れや変形に対する抵抗性を付与するために、本発明では「支持体ゴム弾性」を有する成分を支持体に配合するが、媒体全体の厚さが75μm未満であると充分な反発弾性の効果が得られないため折れや変形を防ぐ効果を十分得にくくなる。また通常使用されることの多いポリエチレンテレフタレートのような材質に比べると「支持体ゴム弾性」有する支持体は引っ張り強度に劣る傾向があるのでやはりある程度の厚さが必要となる。また、そのような支持体は同じ厚さで比較した場合腰がない場合が多いので、75μmより薄い媒体では取り扱いや機械搬送が困難となる虞が高い。
【0064】
逆に厚さが2000μmを越えて厚くなり過ぎる場合、サイズによっては自立させることができるなどのメリットもあるが、重量が大きくなるため大量輸送の便から望ましくなく、ストッカに収納できる枚数が限られる等、不経済な面が大きくなるので適切ではない。より好ましい支持体の厚さの範囲は100μm以上1500μm以下である。
【0065】
以上の説明から明らかなように、支持体以外の各層、下塗り層、バック層等がかなり厚い場合や、先に説明したバック層のように層中にポリエチレンテレフタレートフィルムを含むような場合がある。このような場合は、支持体の「支持体ゴム弾性」のような性質に、記録媒体としては上記各層も大きく寄与することもあり、そのような「支持体ゴム弾性」を有する樹脂が、支持体以外の各層に存在することを無視できなくなる。このような場合、すなわち、以上の層が基材的な樹脂層を含む場合や各層のバインダー等にそのような性質の樹脂を含み、それらの層が厚く形成される場合は、それらの樹脂の量も実質的に「支持体の含有する」樹脂として考慮することが実際的な場合もある。
【0066】
「支持体ゴム弾性」を有する樹脂としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、動的加硫型ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーおよび塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の熱可塑性エラストマーが選択されることが好ましい。これらの熱可塑性エラストマーは化学合成で製造することが可能であり、各種物理特性をコントロールすることが比較的容易である。また、必要に応じてブレンドその他の手法で新たな特性を付与することも可能であり、可逆的感熱記録媒体の支持体構成成分として好ましい。
【0067】
【実施例】
下記に実施例を挙げて説明する。本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0068】
実施例1
<可逆的感熱記録層>
3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン25部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液80部とともにボールミルで24時間分散し、染料前駆体分散液を得た。次いで4’−ヒドロキシ−n−ヘプタンアニリド63部を2.5%ポリビニルアルコール水溶液200部と共にボールミルで24時間分散し、可逆顕色剤分散液を得た。選られた2種の分散液を混合し、10%ポリビニルアルコール水溶液130部を添加し、攪拌し可逆的感熱記録層塗料を得た。
【0069】
得られた塗料をマイヤーバーにより、乾燥厚さ5μmになるように支持体となる東レデュポン社製ハイトレル4057;300μm厚上に塗工した後、スーパーカレンダー処理し、可逆的感熱記録層を形成した。尚このハイトレル支持体はハードセグメントとしてのポリブチレンテレフタレートとソフトセグメントとしてのポリエーテルのブロック共重合体により構成されるものであり、「支持体ゴム弾性」を有する樹脂そのものである。
【0070】
<保護層>
荒川化学工業社製ウレタンアクリレート系紫外線硬化樹脂ビームセットEM92に開始剤イルガキュア184(対固形分5%)とレベリング剤としてポリフロー425(対固形分0.15%)を添加し、マイヤーバーで3μmの厚さになるように塗工し、UV硬化させて形成した。
<バック層>
支持体裏面の摩擦抵抗を下げるため、大日精化社製UV硬化ニスPPC−D9改0.05g/m2の厚さでオフセット印刷してバック層を形成しサンプルを得た。
【0071】
実施例2
支持体を帝人化成社製ポリエステルエラストマーヌーベランP4110AN;300μm厚に変更した以外は実施例1と同様に試料調製してサンプルを得た。
尚このヌーベラン支持体は「支持体ゴム弾性」を有する樹脂そのものであるポリエステルエラストマー系の樹脂により構成されている。
【0072】
実施例3
支持体を帝人デュポン社製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムメリネックスSタイプ;75μm厚の上に東レデュポン社製熱可塑性エラストマーハイトレル4057;300μm厚を5μm厚さのセメダイン株式会社製EP001接着剤で接合したものに変更し、可逆的感熱記録層と保護層をPET側に塗工した以外は実施例1と同様に試料調製しサンプルを得た。
【0073】
実施例4
支持体を帝人デュポン社製乳白PETフィルムU298W;188μmの上に東レデュポン社製ハイトレル6347;100μmを5μm厚さのセメダイン株式会社製EP001接着剤で接合したものに変更し、可逆的感熱記録層と保護層をPET側に塗工した以外は実施例1と同様に試料調製しサンプルを得た。
【0074】
実施例5
イソフタル酸ジメチルとセバシン酸ジメチル、ヘキサメチレングリコールをジブチル錫ジアセテート触媒でエステル交換反応後、縮合反応によって合成した非晶性のポリエステルと、別途同様の縮合反応物であるポリブチレンテレフタレートを、加熱反応させてることによって得られた、ポリエステルブロック共重合体を250℃で溶融しTダイより押し出して、PETフィルム75μm厚の上に300μmの厚さでキャストしたものを支持体とした。なおこのPETフィルムは帝人デュポン社製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムメリネックスSタイプ;75μm厚であり、あらかじめエアープロダクツ社製アクリルウレタンハイブリッド樹脂ハイブリデュールHY560を1μmの厚さになるようにマイヤーバーにて塗工・乾燥したものである。尚、キャスト側にPETフィルムの該ハイブリッド樹脂をあらかじめ塗工した面がくるようにしてキャストした。その後、PETフィルム側に可逆的感熱記録層を形成した以外は実施例1と同様に試料調製しサンプルを得た。
【0075】
比較例1
支持体を帝人デュポン社製乳白PETU298W;250μm厚に変更した以外は実施例1と同様に試料を調整した。
比較例2
支持体を東洋紡績株式会社製クリスパーG1212;250μm厚、に変更した以外は実施例1と同様に試料を調整した。
【0076】
比較例3
支持体をユポコーポレーション株式会社製ポリプロピレン合成紙FGS130;130μm厚に変更した以外は実施例1と同様に試料を調整した。
比較例4
市販のPETベースのリライトシートリコー社製430−BD(黒色);135μm厚をそのまま使用した。
【0077】
比較例5
支持体をシリコンゴムシート(厚さ0.5mm)に変更した以外は実施例1と同様に試料調製した。
比較例6
支持体を筒中プラスチック工業株式会社製PET−G EPC410; 280μm厚に変更した以外は実 施例1と同様に試料を調整した。
比較例7
支持体を帝人デュポン社製乳白PETU298W;188μm厚の上に東レデュポン社製ハイトレル6347;50μm厚を5μm厚さのセメダイン株式会社製EP001接着剤で接合したものに変更し、可逆的感熱記録層と保護層をPET側に塗工した以外は実施例1と同様に試料調製した。
【0078】
評価
<折り目の頂角>
折り曲げ試験:
20mm幅で長さ150mmの短冊状試料に切り出したとき、中央で可逆的感熱記録層面を内側に二つ折りにして、JIS Z 0237(1991年)の8.2.3項圧着装置に規定に準拠したスプリング硬さ80Hs、厚さ6mmのゴム層で被覆された幅45mm、直径(ゴム層を含む。)約95mm、質量2000gのローラーで折り目と平行方向に20往復させて目視可能な折り目を付け、その後、温度25±2℃、湿度60±5%の環境下で24時間放置後、折り目を頂角とした角度を分度器で測定した。
【0079】
<物理特性>
引張り強さ、伸び率の測定はJIS C 2318(1997年)によって行った。
【0080】
<リライト回数>
サンプルサイズはA5版に統一し、王子製紙試作リライトプリンタ(サーマルヘッド書き込み、消去はヒートロールで実施)でリライト耐久性評価(印字→消去/回)を実施した。実用時の汚れを想定し、10回リライト終了のたびに0.1重量%の洗剤(花王株式会社製アタック)水溶液にて洗濯機(松下電器産業社製NA−FD6001型)で3分間洗浄した。流水ですすいだ後、水切りし、40℃のオーブン内で20分乾燥してリライト耐久評価を再開した。
【0081】
通常、リライト回数の増加にしたがって、媒体にプリンタでの媒体送り方向と平行にワカメ状の波打ち変形が生じる。また、各洗濯の前後で攪拌・衝突によると思われる折れや変形の傾向が見られることもあった。これらが最終的に折れや波打ちシワとなって印字・消去抜けが発生する。これが発生するまでのリライト回数を計数した。
上記評価試験結果をまとめて表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
<評価>
折り目の頂角が90°以上である各実施例では500回以上のリライトが可能であった。
比較例1、4からポリエチレンテレフタレートを単体で支持体としたものは100〜200回のリライトでシートに変形が発生し印字不良を起こし、寿命となることがわかった。
比較例2から発泡ポリエチレンテレフタレートの有するボイドによるクッション性では通常のPETに比べて寿命が殆ど改善されないことがわかった。
比較例3、6から、熱可塑性樹脂であっても「支持体ゴム弾性」を有する樹脂を含まないポリプロピレン合成紙やPET−G樹脂では寿命が改善されないことがわかった。
比較例5では、「支持体ゴム弾性」を有する樹脂を一定量以上含む支持体であっても折り目の頂角が180°となり、折り返した部分に直線的な折り癖が永久変形として残らない。つまり、目視できる折り目が確認できないということが見出された。このようにエラスティックな可逆的感熱記録媒体では、実用的な薄さの範囲では使用に耐える腰(剛性)がなく、ストッカからの送り出しやプリンタ内での搬送が上手く行かないなどの理由から実際には使用できないことがわかった。
実施例4と比較例7の比較により、「支持体ゴム弾性」を有する樹脂の構成率が20%程度の支持体ではリライト寿命に大きく寄与できないことがわかった。25%以上あれば十分である。
【0084】
【発明の効果】
本発明で規定する折り目試験を満足する可逆的感熱記録媒体であれば、リライト回数の増加に伴って媒体に発生するワカメ状の波打ち変形の発生を抑制でき、最終的に折れや波打ちシワ部に発生する印字・消去抜けがを防ぐことが可能となり、従来のPETベースの可逆的感熱記録媒体に比べてリライト寿命を大幅に改善できることが明らとなった。
Claims (7)
- 可逆的感熱記録層および支持体を少なくとも備える可逆的感熱記録媒体であって、下記条件の折り曲げ試験を、満足する可逆的感熱記録媒体。
折り曲げ試験:
20mm幅で長さ150mmの短冊状試料に切り出したとき、中央で二つ折りにして、JIS Z 0237(1991年)の8.2.3項圧着装置に規定するローラーで20往復させて目視可能な折り目が付き、その後、温度25±2℃、湿度60±5%の環境下で24時間放置後、折り目を頂角とした角度が90度以上180度未満になる。 - 前記可逆的感熱記録媒体が140MPa以下の引張り強さおよび150%以上の伸び率の物理特性を有する請求項1記載の可逆的感熱記録媒体。
- 前記支持体が一層以上から構成され、その少なくとも一層が下記条件にて定義される「支持体ゴム弾性」を有する樹脂を25質量%以上含有する支持体である請求項1または2記載の可逆的感熱記録媒体。
支持体ゴム弾性:
JIS K 6262(1997年)に規定される引張永久ひずみ試験において25%の引張ひずみを与えたときの引張り永久ひずみが5%以下であること。引張永久ひずみは次式により算出する。
Ts={(L2−L0)/(L1−L0)}*100
ここに
Ts:引張永久ひずみ(%)
L0:引張り前の標線間距離(mm)
L1:引張り時の標線間距離(mm)
L2:収縮後の標線間距離(mm) - 前記支持体が多層から構成され、その支持体全体として前記「支持体ゴム弾性」を有する1種以上の樹脂を25質量%以上含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の可逆的感熱記録媒体。
- 支持体と可逆的感熱記録層の間、支持体の感熱記録層のない側、感熱記録層の表面側の少なくとも一個所に更に一層以上の層、を備える請求項1〜4のいずれか一項に記載の可逆的感熱記録媒体。
- 支持体の厚さが75μmから2000μmの範囲である請求項1〜5のいずれか一項に記載の可逆的感熱記録媒体。
- 「支持体ゴム弾性」を有する樹脂が、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、動的加硫型ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、フッ素ゴム系熱可塑性エラストマーおよび塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーから選ばれる1種以上の熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項3〜6のいずれか一項に記載の可逆的感熱記録媒体。
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