JP2004275007A - マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子中の多型を利用した高血圧症または低血圧症の遺伝子診断およびこれに用いるための核酸分子 - Google Patents
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Abstract
【課題】女性における高血圧症または低血圧症の遺伝子診断法の提供。
【解決手段】マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、Ala20Val多型におけるアラニンをコードするコドンを、女性における高血圧症のリスクファクターとして使用する。さらに、C(−1562)T多型におけるTアレルおよびArg668Gln多型におけるグルタミンをコードするコドンを、女性における低血圧症のリスクファクターとして使用する。
【選択図】 なし
【解決手段】マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、Ala20Val多型におけるアラニンをコードするコドンを、女性における高血圧症のリスクファクターとして使用する。さらに、C(−1562)T多型におけるTアレルおよびArg668Gln多型におけるグルタミンをコードするコドンを、女性における低血圧症のリスクファクターとして使用する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、高血圧症または低血圧症の遺伝子診断およびこれに用いるための核酸分子に関する。
【0002】
背景技術
細胞外基質を分解する主要酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ9(matrix metalloproteinase 9、以下「MMP9]という)は、ゼラチナーゼBおよび92kDaIV型コラゲナーゼとしても知られており、胚発生、形態発生、組織リモデリングの際の細胞外マトリックス分解に関与している。
【0003】
MMP9はヒトの動脈硬化病変においてその発現が確認されており、そのため、動脈硬化の進展と関係があると考えられることが報告されている(非特許文献1:Galis Z.S. et al., Increased expression of matrix metalloproteinases and matrix degrading activity in vulnerable regions of human atherosclerotic plaques, J. Clin. Invest., 1994;94:2493−2503;非特許文献2:Brown D.L. et al., Identification of 92−kD gelatinase in human coronary atherosclerotic lesions: association of active enzyme synthesis with unstable angina, Circulation, 1995;91:2125−2131;非特許文献3:Zaltsman A.B. et al., Increased secretion of gelatinases A and B from the aortas of cholesterol fed rabbits: relationship to lesion severity, Atherosclerosis, 1997;130:61−70)。また、MMP9はプロテオグリカン、エラスチン、変性コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、およびXI型コラーゲンに対して作用し、動脈硬化病変において同定されることが報告されている(非特許文献4:Wilhelm S.M. et al., SV40−transformed human lung fibroblasts secrete a 92−kDa type IV collagenase which is identical to that secreted by normal human macrophages, J. Biol. Chem., 1989;264:17213−17221)。さらに、MMP9の発現は、種々の成長因子およびサイトカインによって誘導されるとともに、翻訳段階においても統御される(非特許文献5:Kondapaka S.B. et al., Epidermal growth factor and amphiregulin up−regulate matrix metalloproteinase−9 (MMP−9) in human breast cancer cells, Int. J. Cancer, 1997;70:722−726)。
【0004】
平滑筋細胞は、細胞外マトリックスの分解に必要な全てのMMPを発現する能力を有している。正常な血管壁ではMMP2とTIMPを発現しているが、プラークにおいては、さらにMMP1、MMP3、MMP9も発現し、プラーク構築の改変あるいは破綻に、MMP9が深く関与していると考えられる。
【0005】
近年、関連遺伝子中の多型と疾患との関係が注目されている。MMP9については、そのプロモーター領域にC/Tの多型(C−1562T)が見出されている(非特許文献6:Zhang B. et al., Functional polymorphism in the regulatory region of gelatinase B gene in relation to severity of coronary atherosclerosis, Circulation, 1999;99:1788−1794)。この報告によれば、この多型は遺伝子の転写活性に影響を与え、C/C型では転写活性が低く、C/T型とT/T型では転写活性が高いことが判明しており、この遺伝子多型と動脈硬化の重篤度との間に関係があることが分かっている。また、この多型(C−1562T)が心血管病変と関連することも報告されている(非特許文献7:Pollanen P.J. et al., Coronary artery complicated lesion area is related to functional polymorphism of matrix metalloproteinase 9 gene −an Autopsy Study, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 2001;21:1446−1450)。さらに、MMP9遺伝子中の多型としては、第一エクソン中のC2419Tおよび第12エクソン中のG7906Aが知られている。
【0006】
しかしながら、MMP9遺伝子多型と血圧との関係に関しての報告はない。
【0007】
【非特許文献1】
Galis Z.S. et al., J. Clin. Invest., 1994;94:2493−2503
【非特許文献2】
Brown D.L. et al., Circulation, 1995;91:2125−2131
【非特許文献3】
Zaltsman A.B. et al., Atherosclerosis, 1997;130:61−70
【非特許文献4】
Wilhelm S.M. et al., J. Biol. Chem., 1989;264:17213−17221
【非特許文献5】
Kondapaka S.B. et al., Int. J. Cancer, 1997;70:722−726
【非特許文献6】
Zhang B. et al., Circulation, 1999;99:1788−1794
【非特許文献7】
Pollanen P.J. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 2001;21:1446−1450
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子上の、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第20番目のアミノ酸残基をコードするコドンにおけるアラニン残基をコードするコドンとバリン残基をコードするコドンとの多型が、女性における高血圧症の診断に利用可能であるとの知見を得た。さらに、本発明者らは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子上の、翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流におけるC/Tの一塩基多型が、女性における低血圧症の診断に利用可能であるとの知見を得た。さらに、本発明者らは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子上の、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第668番目のアミノ酸残基をコードするコドンにおけるアルギニン残基をコードするコドンとグルタミン残基をコードするコドンとの多型が、女性における低血圧症の診断に利用可能であるとの知見を得た。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0009】
従って、本発明は、高血圧症または低血圧症の遺伝子診断に用いるための核酸分子およびプライマーペアの提供を目的とする。
【0010】
そして、本発明の第一の態様による核酸分子は、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子において、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第20番目のアミノ酸残基をコードするコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。
【0011】
さらに、本発明の第一の態様によるプライマーペアは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子において、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第20番目のアミノ酸残基をコードするコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、配列番号3中の第20番目のアラニン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。
【0012】
さらに、本発明の第二の態様による核酸分子は、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、前記変異を有してなるマトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。
【0013】
さらに、本発明の第二の態様によるプライマーペアは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、前記変異を有してなるマトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドの、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。
【0014】
さらに、本発明の第三の態様による核酸分子は、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第668番目のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。
【0015】
さらに、本発明の第三の態様によるプライマーペアは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第668番目のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、前記グルタミン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。
【0016】
本発明によれば、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における多型部位のヌクレオチドを同定することにより、高血圧症または低血圧症の遺伝子診断が可能となる。
【0017】
【発明の具体的説明】
マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)遺伝子は、配列番号3で表されるアミノ酸配列をコードしている。該遺伝子のヌクレオチド配列は、本発明において特に制限されるものではないが、そのゲノム配列は、例えば、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を含んでなり、mRNAに対するcDNAは、例えば、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を含んでなる。
【0018】
MMP9遺伝子は、これによりコードされる配列番号3のアミノ酸配列中の第20番残基をコードするコドンにおいて、アラニン残基をコードするコドンとバリン残基をコードするコドンとの多型(以下「Ala20Val多型」という)を有しており、このような多型としては、例えば、前記コドンの第2ヌクレオチド残基におけるシトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「C2419T多型」という。NCBIデータベース登録番号:rs1805088)が挙げられる。この一塩基多型の位置は、配列番号1では第2419ヌクレオチド残基に相当し、配列番号2では第78ヌクレオチド残基に相当する。
【0019】
また、MMP9遺伝子は、Zhang B. et al., Circulation, 1999;99:1788−1794に記載されているとおり、そのプロモーター領域中において、翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するヌクレオチド残基におけるシトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「C(−1562)T多型」という。)を有する。この一塩基多型の位置は、配列番号1では第771ヌクレオチド残基に相当する。
【0020】
さらに、MMP9遺伝子は、これによりコードされる配列番号3のアミノ酸配列中の第668番残基をコードするコドンにおいて、アルギニン残基をコードするコドンとグルタミン残基をコードするコドンとの多型(以下「Arg668Gln多型」という)を有しており、このような多型としては、例えば、前記コドンの第2ヌクレオチド残基におけるグアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「G7906A多型」という。NCBIデータベース登録番号:rs2274756)が挙げられる。この一塩基多型の位置は、配列番号1では第7906ヌクレオチド残基に相当し、配列番号2では第2022ヌクレオチド残基に相当する。
【0021】
Ala20Val多型におけるアラニンをコードするコドン、例えば、C2419T多型におけるCアレル、特にCC遺伝子型は、女性における高血圧症のリスクファクターとして使用できる。従って、これらを検出することにより、女性における高血圧症の予測または診断が可能となる。また、C(−1562)T多型におけるTアレル、特にTT遺伝子型、ならびにArg668Gln多型におけるグルタミンをコードするコドン、例えば、G7906A多型におけるAアレル、特にAA遺伝子型は、女性における低血圧症のリスクファクターとして使用できる。従って、これらを検出することにより、低血圧症の予測または診断が可能となる。上記の高血圧症および低血圧症は、好ましくは、それぞれ本態性の高血圧症および低血圧症である。また、上記のコドン、アレルおよび遺伝子型の検出はいずれも、MMP9遺伝子上の上記多型部位におけるヌクレオチドの同定により行なうことができる。
【0022】
本発明によれば、MMP9遺伝子上の上記多型部位におけるヌクレオチドの同定に用いることのできる、女性における高血圧症または低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子が提供される。
【0023】
そして、本発明の第一の態様による核酸分子は、MMP9遺伝子において、Ala20Val多型部位のコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは配列番号1または配列番号2で表されるヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0024】
本発明の第二の態様による核酸分子は、MMP9遺伝子における、C(−1562)T多型部位でのシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、前記変異を有してなるMMP9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第771番目のシトシン(C)残基がチミン(T)残基に置換されたヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0025】
本発明の第三の態様による核酸分子は、MMP9遺伝子における、Arg668Gln多型部位のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第7906番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるもの、または配列番号2で表わされるヌクレオチド配列において第2022番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0026】
本発明において「ハイブリダイズする」とは、本発明による核酸分子がストリンジェントな条件下で標的ヌクレオチド分子にハイブリダイズし、標的ヌクレオチド分子以外のヌクレオチド分子にはハイブリダイズしないことを意味する。ストリンジェントな条件は、本発明による核酸分子とその相補鎖との二重鎖の融解温度Tm(℃)およびハイブリダイゼーション溶液の塩濃度などに依存して決定することができ、例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)等を参照することができる。例えば、使用する核酸分子の融解温度よりわずかに低い温度下でハイブリダイゼーションを行なうと、核酸分子を標的ヌクレオチド分子に特異的にハイブリダイズさせることができる。本発明の好ましい実施態様によれば、あるポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子は、そのポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドの全部または一部の配列を含んでなるものとされる。
【0027】
本発明において「核酸分子」は、DNA、RNA、およびPNA(peptide nucleic acid)を含む意味で用いられる。本発明の好ましい実施態様によれば、核酸分子はDNAである。
【0028】
本発明による核酸分子のヌクレオチド配列は、当業者により適宜設計されうる。例えば、本発明による核酸分子は、イントロンにハイブリダイズする部分だけでなく、エクソンにハイブリダイズする部分をも含むことができ、あるいは、これらのどちらか一方のみにより構成されていてもよい。
【0029】
本発明による核酸分子は、MMP9遺伝子における多型部位のヌクレオチドの同定において、核酸プローブとして用いることができる。この目的のためには、本発明による核酸分子は、それぞれの多型部位を含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。
【0030】
従って、本発明の第一の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、Ala20Val多型部位のコドンを含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。本発明の第二の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、C(−1562)T多型部位のヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。本発明の第三の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、Arg668Gln多型部位のコドンを含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。
【0031】
本発明による核酸分子を核酸プローブとして用いる場合、核酸分子の鎖長は10〜100ヌクレオチドとすることが好ましく、より好ましくは少なくとも12ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、さらに好ましくは15〜50ヌクレオチドとする。
【0032】
また、本発明による核酸分子は、MMP9遺伝子における多型部位のヌクレオチドの同定において、核酸増幅用プライマーとして用いることができる。この目的のためには、本発明による核酸分子は、多型部位を含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。
【0033】
従って、本発明の第一の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドの、Ala20Val多型部位のコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。本発明の第二の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドの、C(−1562)T多型部位のヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。本発明の第三の態様による核酸分子は、前記ポリヌクレオチドの、Arg668Gln多型部位のコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。
【0034】
本発明による核酸分子を核酸増幅用プライマーとして用いる場合、核酸分子の鎖長は10〜50ヌクレオチドとすることが好ましく、より好ましくは少なくとも12ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、さらに好ましくは15〜30ヌクレオチドとする。
【0035】
本発明の他の好ましい実施態様によれば、本発明による核酸分子の鎖長は、15〜100ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチド、さらに好ましくは17〜50ヌクレオチドとする。このような鎖長を有する本発明による核酸分子は、特に夾雑物を含む核酸試料において、MMP9遺伝子上の多型部位のヌクレオチドを同定する上で好ましいものである。
【0036】
核酸増幅法は通常プライマーのペアを用いて実施される。よって、本発明によれば、MMP9遺伝子上の上記多型部位におけるヌクレオチドの同定に用いることのできる、女性における高血圧症または低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアが提供される。
【0037】
そして、本発明の第一の態様によるプライマーペアは、MMP9遺伝子において、Ala20Val多型部位のコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、Ala20Val多型部位のコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは配列番号1または配列番号2で表されるヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0038】
本発明の第二の態様によるプライマーペアは、MMP9遺伝子における、C(−1562)T多型部位でのシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、前記変異を有してなるMMP9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドの、C(−1562)T多型部位のヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第771番目のシトシン(C)残基がチミン(T)残基に置換されたヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0039】
本発明の第三の態様によるプライマーペアは、MMP9遺伝子における、Arg668Gln多型部位のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、前記グルタミン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第7906番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるもの、または配列番号2で表わされるヌクレオチド配列において第2022番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0040】
このようなプライマーペアを構成する2本のプライマーとしては、本発明による核酸分子を用いることができる。このようなプライマーは、増幅の対象となる領域のヌクレオチド配列に基づいて当業者が適宜設計することができる。例えば、プライマーペアの一方のプライマーを、増幅対象領域のヌクレオチド配列中における5’末端部分の配列を有するものとし、他方のプライマーを、増幅対象領域の相補鎖のヌクレオチド配列中における5’末端部分の配列を有するものとすることができる。
【0041】
本発明による核酸分子または本発明によるプライマーペアを用いることにより、MMP9遺伝子における上記多型部位のヌクレオチドを同定することができ、これにより、女性における高血圧症または低血圧症を予知または検出することができる。従って、本発明によれば、本発明による核酸分子または本発明によるプライマーペアを用いる、女性における高血圧症または低血圧症を予知または検出する方法(予測または診断する方法)が提供される。
【0042】
そして、本発明の第一の態様による方法は、MMP9遺伝子中のヌクレオチドを同定することにより、女性における高血圧症を予知または検出する方法であって、本発明の第一の態様による核酸分子、および/または本発明の第一の態様によるプライマーペアを用いて、MMP9遺伝子において、Ala20Val多型部位のコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定する工程を含んでなるものである。この方法では、好ましくはC2419T多型におけるCアレルが検出され、より好ましくはCC遺伝子型が検出される。
【0043】
本発明の第二の態様による方法は、MMP9遺伝子の変異を検出することにより、女性における低血圧症を予知または検出する方法であって、本発明の第二の態様による核酸分子、および/または本発明の第二の態様によるプライマーペアを用いて、MMP9遺伝子における、C(−1562)T多型部位でのシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出する工程を含んでなるものである。この方法では、好ましくはC(−1562)T多型におけるTT遺伝子型が検出される。
【0044】
本発明の第三の態様による方法は、MMP9遺伝子中の変異を検出することにより、女性における低血圧症を予知または検出する方法であって、本発明の第三の態様による核酸分子、および/または本発明の第三の態様によるプライマーペアを用いて、MMP9遺伝子における、Arg668Gln多型部位のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出する工程を含んでなるものである。この方法では、好ましくはG7906A多型におけるAアレルが検出され、より好ましくはAA遺伝子型が検出される。
【0045】
具体的には、本発明による核酸分子または本発明によるプライマーペアは、MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定するための核酸増幅法においてプライマーとして用いることができる。従って、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明による核酸分子またはプライマーペアを用いて、被検者由来の核酸試料を鋳型とする核酸増幅法を行ない、得られた増幅産物中において上記各多型部位のヌクレオチドを同定する工程を含んでなる、女性における高血圧症または低血圧症の予知法もしくは検出法または予測法もしくは診断法が提供される。
【0046】
この方法による診断に当たっては、例えば、被験者から血液等の試料を採取し、得られた試料からゲノムDNA、mRNAに対するcDNA等の核酸試料を抽出し、得られた核酸試料を鋳型として、本発明による核酸分子またはプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施し、得られた増幅産物のヌクレオチド配列を解析することにより、MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定することができる。核酸増幅法およびこれによる前記ヌクレオチドの同定法としては、当技術分野において公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、核酸増幅法としてはPCR法等を用いることができる。
【0047】
核酸増幅法により得られた増幅産物のヌクレオチド配列の解析は、例えば、シークエンス用プライマーを用いるダイレクトシークエンス法等により容易に行なうことができる。このような方法は当技術分野において周知であり、例えば、市販のキットを用いて実施することができる。
【0048】
上記の核酸増幅法とダイレクトシークエンス法とにより上記各多型部位のヌクレオチドを同定する場合には、例えば、以下の配列を有するプライマーを用いて核酸増幅法を行ない、同プライマーをシークエンスプライマーとしてダイレクトシークエンス法を行なうことができる。
【0049】
C(−1562)T多型用:
フォワード:5’−TCATTGGTTAGTGAACTTTAGAACTTC−3’(配列番号4);
リバース:5’−TGGGAAAAACCTGCTAACAAC−3’(配列番号5)。
【0050】
Ala20Val多型用:
フォワード:5’−TGGCTGACCACTGGAGGCTTTCAG−3’(配列番号6);
リバース:5’−TTCAGATACGCCCATCACCACCAAC−3’(配列番号7)。
【0051】
Arg668Gln多型用:
フォワード:5’−GCGGGCACGCGGGCTAGGAAA−3’(配列番号8);
リバース:5’−GATCTTGTCTGTGCTGGGGCATT−3’(配列番号9)。
【0052】
本発明による予測法または診断法においては、アレル特異的PCR法を実施できるようにプライマーを設計することもできる。具体的には、一方のプライマーを多型部位に対合できるように設計し、他方のプライマーを多型部位を含まない領域に対合できるように設計することができる。このように設計されたプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施すると、核酸試料中に前記多型にかかるいずれかのアレルが存在する場合には増幅産物が得られ、これが存在しない場合には増幅産物が得られない。従って、この場合には、増幅産物の有無を検出することにより特定のアレルの有無を判定することができる。
【0053】
本発明による核酸分子は、ハイブリダイゼーション法等によるMMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドの同定にプローブとして用いることができる。従って、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明による核酸分子と被検者由来の核酸試料とのハイブリダイゼーションを行ない、次いでハイブリダイゼーション複合体の存在を検出する工程を含んでなる、女性における高血圧症または低血圧症の予知法もしくは検出法または予測法もしくは診断法が提供される。ハイブリダイゼーション複合体の存在は、MMP9遺伝子における上記各多型にかかるいずれかのアレルの存在を示す。このハイブリダイゼーション法を用いる方法は、上述の核酸増幅法を用いる方法により得られる増幅産物に対して適用することもできる。
【0054】
この方法による診断に当たっては、例えば、被検者から血液等の試料を採取し、得られた試料からゲノムDNA、mRNAに対するcDNA等の核酸試料を抽出し、ストリンジェントな条件下、本発明による核酸分子とのハイブリダイゼーションの有無を検出することにより、MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定することができる。核酸試料は必要であれば制限酵素処理等を施し、ハイブリダイゼーションに適切な長さとすることもできる。ハイブリダイゼーション法とこれによる前記ヌクレオチドの同定法としては、当技術分野において公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、サザンハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等の技術を用いることができ、これらの方法については、例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)を参照することができる。
【0055】
MMP9遺伝子における上記各多型が一塩基多型である場合において、該一塩基多型部位のヌクレオチドを同定するためには、本発明による核酸分子をプライマーとして使用するプライマーエクステンション法を用いることもできる。プライマーエクステンション法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、上記のプライマーエクステンション法としては、SNaPshotTM法またはPyrosequencing法として知られる方法が用いられる。
【0056】
SNaPshotTM法においては、一塩基多型の部位に隣接するプライマーであって、伸長反応によりその3’末端に付加するヌクレオチドが前記一塩基多型の部位に相補的なものとなるプライマーが用いられる。このようなプライマーを使用し、被検者からの核酸試料を鋳型としてプライマーの伸長反応が行なわれるが、その際にddNTP(ジデオキシNTP)を用いることにより、伸長反応は、上記の多型部位に対応する一個のヌクレオチドを取り込んだ時点で終了する。取り込まれたヌクレオチドは、蛍光標識等で予め標識しておくことにより容易に同定され、従って、多型部位のヌクレオチドが同定される。このような方法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0057】
Pyrosequencing法においては、被検者からの核酸試料を鋳型とするプライマーの伸長反応の際に、4種のdNTPを1種ずつ反応させる。dNTPのいずれかが取り込まれると、等量のピロリン酸塩(PPi)が遊離し、遊離したPPiはスルフリラーゼと反応してATPを生成させ、このATPによりルシフェラーゼの反応が起こり、発光が起こる。従って、ある特定のdNTPを加えたときに発光が起こった場合には、そのdNTPに対応するヌクレオチドが取り込まれたことが明らかとなり、これにより核酸試料中の対象部位のヌクレオチドが同定される。この方法においては、dNTPが用いられるため、SNaPshotTM法で用いられるような多型部位に隣接するプライマーを用いる必要はなく、数塩基はなれたプライマーを用いてもよい。このような方法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0058】
MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定する場合には、さらに、本発明による核酸分子をプローブおよび/またはプライマーとして使用する遺伝子型決定法(タイピング法)を用いることもできる。遺伝子型決定法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプローブおよび/またはプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、上記の遺伝子型決定法としては、TaqMan PCR法として知られる方法が用いられる。
【0059】
TaqMan PCR法においては、上記各多型部位のヌクレオチドを含む領域に対して、両アレルのそれぞれに特異的にハイブリダイズする2種のプローブであって、それぞれ別の蛍光標識物質が5’末端に付され、その蛍光標識に対するクエンチャー(消光物質)が3’末端に付されてなるプローブ(TaqManプローブ)が用いられ、これらをPCR反応液中に添加して、被検者由来の核酸試料を鋳型とするPCR反応を行なう。TaqManプローブおよびPCR用のプライマーとしては、本発明による核酸分子を用いることができ、それらの具体的なヌクレオチド配列は、当業者であれば適宜決定することができるため特に制限されないが、例えば、以下のようなヌクレオチド配列とすることができる。また、2種の蛍光標識物質は、互いに識別可能な組合せであればよく、そのような蛍光標識物質の組合せはそれぞれのクエンチャーとともに当業者に公知のものを用いることができるが、好ましくはFAM、VIC、およびTETのいずれかの組合せを用いる。
【0060】
(1)C(−1562)T多型用
TaqManプローブ:
Tアレル用:FAM−ATTATAGGCATGCGCCAC−MGB(配列番号10)、
Cアレル用:VIC−TATAGGCGTGCGCCAC−MGB(配列番号11);
プライマー:
フォワード:GATCTCGGCTCACTGCAACAT(配列番号12)、
リバース:GCCTGGTCAACGTAGTGAAACC(配列番号13);
【0061】
(2)C2419T多型用
TaqManプローブ:
Cアレル用:FAM−TGCTTTGCTGCCCCCAGACAGC−TAMRA(配列番号14)、
Tアレル用:TET−TGCTTTGCTGTCCCCAGACAGCG−TAMRA(配列番号15);
プライマー:
フォワード:ACAACAGCAGCTGCAGTCAGA(配列番号16)、
リバース:CCCCAACTCTAGACTAGGTGTTTGC(配列番号17);
【0062】
(3)G7906A多型用
TaqManプローブ:
Gアレル用:FAM−CCCTCACCTCGGTAC−MGB(配列番号18)、
Aアレル用:VIC−CCTCACCTTGGTACTG−MGB(配列番号19);
プライマー:
フォワード:GTCTCACGAAGGGATCCTCCT(配列番号20)、
リバース:TGGACACGCACGACGTCTT(配列番号21);
【0063】
TaqMan PCR法においては、まず、各アレルにTaqManプローブがハイブリダイズし、プライマーからの伸長反応がそのハイブリダイゼーション領域に到達した際にTaqDNAポリメラーゼの作用によって蛍光標識物質が遊離する。遊離した蛍光標識物質はクエンチャーの作用を受けないため、蛍光を発する。従って、この方法によれば、各アレルの存在量に対応する強度の各蛍光を観察することができ、これにより、被検者の遺伝子型が容易に決定される。
【0064】
本発明による予知法、検出法、予測法および診断法において、Ala20Val多型におけるアラニンをコードするコドン、例えば、C2419T多型におけるCアレル、特にCC遺伝子型が検出されたサンプルは、高血圧症、特に本態性高血圧症を有するものと、あるいは将来においてその可能性があるものと診断することができる。また、C(−1562)T多型におけるTアレル、特にTT遺伝子型、ならびにArg668Gln多型におけるグルタミンをコードするコドン、例えば、G7906A多型におけるAアレル、特にAA遺伝子型が検出されたサンプルは、低血圧症、特に本態性低血圧症を有するものと、あるいは将来においてその可能性があるものと診断することができる。本発明によれば、出生前および出生直後の診断も可能である。
【0065】
以上のような高血圧症または低血圧症の予知、検出、予測および診断のために、必要な試薬をまとめてキットとすることができる。従って、本発明によるキットは、本発明による核酸分子および/または本発明によるプライマーペアを含んでなる。本発明によるキットはさらに、MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定するための具体的方法に応じて、試薬類、反応容器、説明書等を含んでいてもよい。
【0066】
【実施例】
例1:MMP9遺伝子中の多型と血圧との関係
以下の解析においては、吹田市一般住民より性年齢階層別に無作為抽出された、男性1802名、女性1971名の計3773名を対象にした(平均年齢±標準偏差:59.8±11.8)。
【0067】
まず、被験者全員について、血圧を3回計測した。1回目は触診による血圧計測とし、2および3回目は水銀血圧計を用いての計測とした。
【0068】
次いで、被験者46人について、MMP9遺伝子をダイレクト・シークエンスした。これにより同定された一塩基多型のうち、プロモーター領域中に存在するかまたはアミノ酸変異を伴い、かつアレル頻度が5%以上となるものとして、プロモーター領域中のC/T多型(C(−1562)T多型)、第1エクソン内のC/T多型(C2419T多型、dbSNP:1805088)、第6エクソン内のA/G多型(A5020G多型、dbSNP:2664538)、および第12エクソン内のG/A多型(G7906A多型、dbSNP:rs2274756)を遺伝子解析用に選択した。なお、第10エクソン内のG/C多型(G7201C多型、dbSNP:rs2250889)も候補に挙がったが、これは第6エクソンA/G多型と連鎖不平衡を示すため、解析の対象とはしなかった。
【0069】
上記のように選択された多型に関し、TaqMan PCR法によるタイピングを行なった。TaqMan PCR法は、TaqManシステム(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて行なった。このTaqManシステムにおいては、TaqMan Universal PCR Master Mix(ABI)、10ngのゲノムDNA、下記のTaqManプローブ、および下記のプライマーを含む全12.5μlの反応溶液を96ウェルプレート上に調製し、95℃で10分間の反応の後、92℃で15秒間−下記アニーリング温度で1分間の反応を35サイクルまたは40サイクル行なった。PCR産物の蛍光は、ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System(ABI)を用いて測定した。また、G7906A多型については、384ウェルプレートを用いるタイピングも行なったが、その場合には、TaqMan Universal PCR Master Mix(ABI)、6ngのゲノムDNA、下記のTaqManプローブ、および下記のプライマーを含む全7.5μlの反応溶液を調製し、95℃で10分間の反応の後、92℃で15秒間−60℃で1分間の反応を40サイクル行なった。PCR産物の蛍光は、ABI PRISM(登録商標)7900HT Sequence Detection System(ABI)を用いて測定した。
【0070】
(1)C(−1562)T多型用条件
TaqManプローブ:
Tアレル用:FAM−ATTATAGGCATGCGCCAC−MGB(配列番号10)(231nM)、
Cアレル用:VIC−TATAGGCGTGCGCCAC−MGB(配列番号11)(209nM);
プライマー:
フォワード:GATCTCGGCTCACTGCAACAT(配列番号12)(800nM)、
リバース:GCCTGGTCAACGTAGTGAAACC(配列番号13)(800nM);
アニーリング温度:64℃;
サイクル数:35サイクル。
【0071】
(2)C2419T多型用条件
TaqManプローブ:
Cアレル用:FAM−TGCTTTGCTGCCCCCAGACAGC−TAMRA(配列番号14)(50nM)、
Tアレル用:TET−TGCTTTGCTGTCCCCAGACAGCG−TAMRA(配列番号15)(158nM);
プライマー:
フォワード:ACAACAGCAGCTGCAGTCAGA(配列番号16)(400nM)、
リバース:CCCCAACTCTAGACTAGGTGTTTGC(配列番号17)(400nM);
アニーリング温度:64℃;
サイクル数:40サイクル。
【0072】
(3)A5020G多型用条件
TaqManプローブ:
Gアレル用:FAM−AGGACTCTACACCCGGGACGGCA−TAMRA(配列番号22)(76.8nM)、
Aアレル用:TET−ACTCTACACCCAGGACGGCAATGCTG−TAMRA(配列番号23)(48nM);
プライマー:
フォワード:GATGAACTGCAGACCATCCAT(配列番号24)(400nM)、
リバース:AGTAGGATTGGCCTTGGAAGA(配列番号25)(400nM);
アニーリング温度:62℃;
サイクル数:40サイクル。
【0073】
(4)G7906A多型用条件
TaqManプローブ:
Gアレル用:FAM−CCCTCACCTCGGTAC−MGB(配列番号18)(234nM)、
Aアレル用:VIC−CCTCACCTTGGTACTG−MGB(配列番号19)(90nM);
プライマー:
フォワード:GTCTCACGAAGGGATCCTCCT(配列番号20)(800nM)、
リバース:TGGACACGCACGACGTCTT(配列番号21)(800nM);
アニーリング温度:60℃;
サイクル数:40サイクル。
【0074】
上記の血圧測定およびタイピングの結果に基づき、統計学的分析として、断面研究および症例対照研究を行なった。断面研究では、Tukey−Kramer法による多変量解析を用いて血圧と遺伝子多型との関連を解析した。その際に、性、年齢、BMI、喫煙、飲酒、降圧薬服用の有無、現病歴(糖尿病、高脂血症)を調整因子として用いた。
【0075】
プロモーター領域のC/T多型(C(−1562)T)については、男性1466名および女性1635名の計3101名を解析した。断面研究の結果を下記の表1に示す。断面研究では、女性の収縮期血圧(TT型:121.8±2.7mmHg、TC型:130.5±0.8mmHg、CC型:128.9±0.5mmHg、トレンドP=0.006)、および女性の拡張期血圧(TT型:75.7±1.5mmHg、TC型:79.7±0.5mmHg、CC型:79.2±0.3mmHg、トレンドP=0.035)において、TT型がTC型およびCC型よりも有意に低かった。
【0076】
【表1】
【0077】
第1エクソン内のC/T多型(C2419T)については、男性1135名および女性1216名の計2351名を解析した。断面研究の結果を下記の表2に示す。断面研究では、女性の収縮期血圧(TT型:129.0±0.5mmHg、TC型:129.4±1.4mmHg、CC型:140.0±5.4mmHg、TT型とCC型とでP=0.04)、男女を合わせた拡張期血圧(TT型:80.6±0.2mmHg、TC型:80.3±0.6mmHg、CC型:85.6±2.5mmHg、TT型とCC型とでP=0.03)において、CC型がTT型およびTC型よりも有意に高かった。
【0078】
【表2】
【0079】
第6エクソン内のA/G多型(A5020G)については、男性1211名および女性1342名の計2553名を解析した。断面研究の結果を下記の表3に示す。この多型については、断面研究および症例対照研究のいずれにおいても血圧との関連がみられなかった。
【0080】
【表3】
【0081】
第12エクソン内のG/A多型(G7906A)については、男性1551名および女性1696名の計3247名を解析した。断面研究の結果を下記の表4に示す。断面研究では、女性の収縮期血圧(AA型:122.8±2.4mmHg、AG型:129.4±0.9mmHg、GG型:128.6±0.5mmHg、トレンドP=0.032)および女性の脈圧(AA型:45.8±1.7mmHg、AG型:50.4±0.6mmHg、GG型:49.3±0.4mmHg、トレンドP=0.019)において、AA型がAG型およびGG型よりも有意に低かった。
【0082】
【表4】
【0083】
以上の結果から、MMP9のプロモーター領域C/T多型(C(−1562)T)、第1エクソンC/T多型(C2419T)、第12エクソンG/A多型(G7906A)は、日本人女性の血圧と有意に関連する遺伝子多型マーカーになりうることが示された。
【0084】
【配列表】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、高血圧症または低血圧症の遺伝子診断およびこれに用いるための核酸分子に関する。
【0002】
背景技術
細胞外基質を分解する主要酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ9(matrix metalloproteinase 9、以下「MMP9]という)は、ゼラチナーゼBおよび92kDaIV型コラゲナーゼとしても知られており、胚発生、形態発生、組織リモデリングの際の細胞外マトリックス分解に関与している。
【0003】
MMP9はヒトの動脈硬化病変においてその発現が確認されており、そのため、動脈硬化の進展と関係があると考えられることが報告されている(非特許文献1:Galis Z.S. et al., Increased expression of matrix metalloproteinases and matrix degrading activity in vulnerable regions of human atherosclerotic plaques, J. Clin. Invest., 1994;94:2493−2503;非特許文献2:Brown D.L. et al., Identification of 92−kD gelatinase in human coronary atherosclerotic lesions: association of active enzyme synthesis with unstable angina, Circulation, 1995;91:2125−2131;非特許文献3:Zaltsman A.B. et al., Increased secretion of gelatinases A and B from the aortas of cholesterol fed rabbits: relationship to lesion severity, Atherosclerosis, 1997;130:61−70)。また、MMP9はプロテオグリカン、エラスチン、変性コラーゲン、IV型コラーゲン、V型コラーゲン、およびXI型コラーゲンに対して作用し、動脈硬化病変において同定されることが報告されている(非特許文献4:Wilhelm S.M. et al., SV40−transformed human lung fibroblasts secrete a 92−kDa type IV collagenase which is identical to that secreted by normal human macrophages, J. Biol. Chem., 1989;264:17213−17221)。さらに、MMP9の発現は、種々の成長因子およびサイトカインによって誘導されるとともに、翻訳段階においても統御される(非特許文献5:Kondapaka S.B. et al., Epidermal growth factor and amphiregulin up−regulate matrix metalloproteinase−9 (MMP−9) in human breast cancer cells, Int. J. Cancer, 1997;70:722−726)。
【0004】
平滑筋細胞は、細胞外マトリックスの分解に必要な全てのMMPを発現する能力を有している。正常な血管壁ではMMP2とTIMPを発現しているが、プラークにおいては、さらにMMP1、MMP3、MMP9も発現し、プラーク構築の改変あるいは破綻に、MMP9が深く関与していると考えられる。
【0005】
近年、関連遺伝子中の多型と疾患との関係が注目されている。MMP9については、そのプロモーター領域にC/Tの多型(C−1562T)が見出されている(非特許文献6:Zhang B. et al., Functional polymorphism in the regulatory region of gelatinase B gene in relation to severity of coronary atherosclerosis, Circulation, 1999;99:1788−1794)。この報告によれば、この多型は遺伝子の転写活性に影響を与え、C/C型では転写活性が低く、C/T型とT/T型では転写活性が高いことが判明しており、この遺伝子多型と動脈硬化の重篤度との間に関係があることが分かっている。また、この多型(C−1562T)が心血管病変と関連することも報告されている(非特許文献7:Pollanen P.J. et al., Coronary artery complicated lesion area is related to functional polymorphism of matrix metalloproteinase 9 gene −an Autopsy Study, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 2001;21:1446−1450)。さらに、MMP9遺伝子中の多型としては、第一エクソン中のC2419Tおよび第12エクソン中のG7906Aが知られている。
【0006】
しかしながら、MMP9遺伝子多型と血圧との関係に関しての報告はない。
【0007】
【非特許文献1】
Galis Z.S. et al., J. Clin. Invest., 1994;94:2493−2503
【非特許文献2】
Brown D.L. et al., Circulation, 1995;91:2125−2131
【非特許文献3】
Zaltsman A.B. et al., Atherosclerosis, 1997;130:61−70
【非特許文献4】
Wilhelm S.M. et al., J. Biol. Chem., 1989;264:17213−17221
【非特許文献5】
Kondapaka S.B. et al., Int. J. Cancer, 1997;70:722−726
【非特許文献6】
Zhang B. et al., Circulation, 1999;99:1788−1794
【非特許文献7】
Pollanen P.J. et al., Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol., 2001;21:1446−1450
【0008】
【発明の概要】
本発明者らは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子上の、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第20番目のアミノ酸残基をコードするコドンにおけるアラニン残基をコードするコドンとバリン残基をコードするコドンとの多型が、女性における高血圧症の診断に利用可能であるとの知見を得た。さらに、本発明者らは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子上の、翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流におけるC/Tの一塩基多型が、女性における低血圧症の診断に利用可能であるとの知見を得た。さらに、本発明者らは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子上の、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第668番目のアミノ酸残基をコードするコドンにおけるアルギニン残基をコードするコドンとグルタミン残基をコードするコドンとの多型が、女性における低血圧症の診断に利用可能であるとの知見を得た。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0009】
従って、本発明は、高血圧症または低血圧症の遺伝子診断に用いるための核酸分子およびプライマーペアの提供を目的とする。
【0010】
そして、本発明の第一の態様による核酸分子は、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子において、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第20番目のアミノ酸残基をコードするコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。
【0011】
さらに、本発明の第一の態様によるプライマーペアは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子において、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第20番目のアミノ酸残基をコードするコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、配列番号3中の第20番目のアラニン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。
【0012】
さらに、本発明の第二の態様による核酸分子は、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、前記変異を有してなるマトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。
【0013】
さらに、本発明の第二の態様によるプライマーペアは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、前記変異を有してなるマトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドの、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。
【0014】
さらに、本発明の第三の態様による核酸分子は、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第668番目のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。
【0015】
さらに、本発明の第三の態様によるプライマーペアは、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第668番目のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、前記グルタミン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。
【0016】
本発明によれば、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における多型部位のヌクレオチドを同定することにより、高血圧症または低血圧症の遺伝子診断が可能となる。
【0017】
【発明の具体的説明】
マトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)遺伝子は、配列番号3で表されるアミノ酸配列をコードしている。該遺伝子のヌクレオチド配列は、本発明において特に制限されるものではないが、そのゲノム配列は、例えば、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を含んでなり、mRNAに対するcDNAは、例えば、配列番号2で表されるヌクレオチド配列を含んでなる。
【0018】
MMP9遺伝子は、これによりコードされる配列番号3のアミノ酸配列中の第20番残基をコードするコドンにおいて、アラニン残基をコードするコドンとバリン残基をコードするコドンとの多型(以下「Ala20Val多型」という)を有しており、このような多型としては、例えば、前記コドンの第2ヌクレオチド残基におけるシトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「C2419T多型」という。NCBIデータベース登録番号:rs1805088)が挙げられる。この一塩基多型の位置は、配列番号1では第2419ヌクレオチド残基に相当し、配列番号2では第78ヌクレオチド残基に相当する。
【0019】
また、MMP9遺伝子は、Zhang B. et al., Circulation, 1999;99:1788−1794に記載されているとおり、そのプロモーター領域中において、翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するヌクレオチド残基におけるシトシン残基(C)とチミン残基(T)との一塩基多型(以下「C(−1562)T多型」という。)を有する。この一塩基多型の位置は、配列番号1では第771ヌクレオチド残基に相当する。
【0020】
さらに、MMP9遺伝子は、これによりコードされる配列番号3のアミノ酸配列中の第668番残基をコードするコドンにおいて、アルギニン残基をコードするコドンとグルタミン残基をコードするコドンとの多型(以下「Arg668Gln多型」という)を有しており、このような多型としては、例えば、前記コドンの第2ヌクレオチド残基におけるグアニン残基(G)とアデニン残基(A)との一塩基多型(以下「G7906A多型」という。NCBIデータベース登録番号:rs2274756)が挙げられる。この一塩基多型の位置は、配列番号1では第7906ヌクレオチド残基に相当し、配列番号2では第2022ヌクレオチド残基に相当する。
【0021】
Ala20Val多型におけるアラニンをコードするコドン、例えば、C2419T多型におけるCアレル、特にCC遺伝子型は、女性における高血圧症のリスクファクターとして使用できる。従って、これらを検出することにより、女性における高血圧症の予測または診断が可能となる。また、C(−1562)T多型におけるTアレル、特にTT遺伝子型、ならびにArg668Gln多型におけるグルタミンをコードするコドン、例えば、G7906A多型におけるAアレル、特にAA遺伝子型は、女性における低血圧症のリスクファクターとして使用できる。従って、これらを検出することにより、低血圧症の予測または診断が可能となる。上記の高血圧症および低血圧症は、好ましくは、それぞれ本態性の高血圧症および低血圧症である。また、上記のコドン、アレルおよび遺伝子型の検出はいずれも、MMP9遺伝子上の上記多型部位におけるヌクレオチドの同定により行なうことができる。
【0022】
本発明によれば、MMP9遺伝子上の上記多型部位におけるヌクレオチドの同定に用いることのできる、女性における高血圧症または低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子が提供される。
【0023】
そして、本発明の第一の態様による核酸分子は、MMP9遺伝子において、Ala20Val多型部位のコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは配列番号1または配列番号2で表されるヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0024】
本発明の第二の態様による核酸分子は、MMP9遺伝子における、C(−1562)T多型部位でのシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、前記変異を有してなるMMP9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第771番目のシトシン(C)残基がチミン(T)残基に置換されたヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0025】
本発明の第三の態様による核酸分子は、MMP9遺伝子における、Arg668Gln多型部位のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第7906番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるもの、または配列番号2で表わされるヌクレオチド配列において第2022番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0026】
本発明において「ハイブリダイズする」とは、本発明による核酸分子がストリンジェントな条件下で標的ヌクレオチド分子にハイブリダイズし、標的ヌクレオチド分子以外のヌクレオチド分子にはハイブリダイズしないことを意味する。ストリンジェントな条件は、本発明による核酸分子とその相補鎖との二重鎖の融解温度Tm(℃)およびハイブリダイゼーション溶液の塩濃度などに依存して決定することができ、例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)等を参照することができる。例えば、使用する核酸分子の融解温度よりわずかに低い温度下でハイブリダイゼーションを行なうと、核酸分子を標的ヌクレオチド分子に特異的にハイブリダイズさせることができる。本発明の好ましい実施態様によれば、あるポリヌクレオチドにハイブリダイズする核酸分子は、そのポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドの全部または一部の配列を含んでなるものとされる。
【0027】
本発明において「核酸分子」は、DNA、RNA、およびPNA(peptide nucleic acid)を含む意味で用いられる。本発明の好ましい実施態様によれば、核酸分子はDNAである。
【0028】
本発明による核酸分子のヌクレオチド配列は、当業者により適宜設計されうる。例えば、本発明による核酸分子は、イントロンにハイブリダイズする部分だけでなく、エクソンにハイブリダイズする部分をも含むことができ、あるいは、これらのどちらか一方のみにより構成されていてもよい。
【0029】
本発明による核酸分子は、MMP9遺伝子における多型部位のヌクレオチドの同定において、核酸プローブとして用いることができる。この目的のためには、本発明による核酸分子は、それぞれの多型部位を含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。
【0030】
従って、本発明の第一の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、Ala20Val多型部位のコドンを含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。本発明の第二の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、C(−1562)T多型部位のヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。本発明の第三の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、Arg668Gln多型部位のコドンを含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなることが好ましい。
【0031】
本発明による核酸分子を核酸プローブとして用いる場合、核酸分子の鎖長は10〜100ヌクレオチドとすることが好ましく、より好ましくは少なくとも12ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、さらに好ましくは15〜50ヌクレオチドとする。
【0032】
また、本発明による核酸分子は、MMP9遺伝子における多型部位のヌクレオチドの同定において、核酸増幅用プライマーとして用いることができる。この目的のためには、本発明による核酸分子は、多型部位を含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。
【0033】
従って、本発明の第一の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドの、Ala20Val多型部位のコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。本発明の第二の態様による核酸分子は、上記ポリヌクレオチドの、C(−1562)T多型部位のヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。本発明の第三の態様による核酸分子は、前記ポリヌクレオチドの、Arg668Gln多型部位のコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものであることが好ましい。
【0034】
本発明による核酸分子を核酸増幅用プライマーとして用いる場合、核酸分子の鎖長は10〜50ヌクレオチドとすることが好ましく、より好ましくは少なくとも12ヌクレオチド、さらに好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、さらに好ましくは15〜30ヌクレオチドとする。
【0035】
本発明の他の好ましい実施態様によれば、本発明による核酸分子の鎖長は、15〜100ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも17ヌクレオチド、さらに好ましくは17〜50ヌクレオチドとする。このような鎖長を有する本発明による核酸分子は、特に夾雑物を含む核酸試料において、MMP9遺伝子上の多型部位のヌクレオチドを同定する上で好ましいものである。
【0036】
核酸増幅法は通常プライマーのペアを用いて実施される。よって、本発明によれば、MMP9遺伝子上の上記多型部位におけるヌクレオチドの同定に用いることのできる、女性における高血圧症または低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアが提供される。
【0037】
そして、本発明の第一の態様によるプライマーペアは、MMP9遺伝子において、Ala20Val多型部位のコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、Ala20Val多型部位のコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは配列番号1または配列番号2で表されるヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0038】
本発明の第二の態様によるプライマーペアは、MMP9遺伝子における、C(−1562)T多型部位でのシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、前記変異を有してなるMMP9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドの、C(−1562)T多型部位のヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第771番目のシトシン(C)残基がチミン(T)残基に置換されたヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0039】
本発明の第三の態様によるプライマーペアは、MMP9遺伝子における、Arg668Gln多型部位のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、前記グルタミン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができるものである。ここで、前記ポリヌクレオチドは、好ましくは、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第7906番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるもの、または配列番号2で表わされるヌクレオチド配列において第2022番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるものとされる。
【0040】
このようなプライマーペアを構成する2本のプライマーとしては、本発明による核酸分子を用いることができる。このようなプライマーは、増幅の対象となる領域のヌクレオチド配列に基づいて当業者が適宜設計することができる。例えば、プライマーペアの一方のプライマーを、増幅対象領域のヌクレオチド配列中における5’末端部分の配列を有するものとし、他方のプライマーを、増幅対象領域の相補鎖のヌクレオチド配列中における5’末端部分の配列を有するものとすることができる。
【0041】
本発明による核酸分子または本発明によるプライマーペアを用いることにより、MMP9遺伝子における上記多型部位のヌクレオチドを同定することができ、これにより、女性における高血圧症または低血圧症を予知または検出することができる。従って、本発明によれば、本発明による核酸分子または本発明によるプライマーペアを用いる、女性における高血圧症または低血圧症を予知または検出する方法(予測または診断する方法)が提供される。
【0042】
そして、本発明の第一の態様による方法は、MMP9遺伝子中のヌクレオチドを同定することにより、女性における高血圧症を予知または検出する方法であって、本発明の第一の態様による核酸分子、および/または本発明の第一の態様によるプライマーペアを用いて、MMP9遺伝子において、Ala20Val多型部位のコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定する工程を含んでなるものである。この方法では、好ましくはC2419T多型におけるCアレルが検出され、より好ましくはCC遺伝子型が検出される。
【0043】
本発明の第二の態様による方法は、MMP9遺伝子の変異を検出することにより、女性における低血圧症を予知または検出する方法であって、本発明の第二の態様による核酸分子、および/または本発明の第二の態様によるプライマーペアを用いて、MMP9遺伝子における、C(−1562)T多型部位でのシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出する工程を含んでなるものである。この方法では、好ましくはC(−1562)T多型におけるTT遺伝子型が検出される。
【0044】
本発明の第三の態様による方法は、MMP9遺伝子中の変異を検出することにより、女性における低血圧症を予知または検出する方法であって、本発明の第三の態様による核酸分子、および/または本発明の第三の態様によるプライマーペアを用いて、MMP9遺伝子における、Arg668Gln多型部位のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出する工程を含んでなるものである。この方法では、好ましくはG7906A多型におけるAアレルが検出され、より好ましくはAA遺伝子型が検出される。
【0045】
具体的には、本発明による核酸分子または本発明によるプライマーペアは、MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定するための核酸増幅法においてプライマーとして用いることができる。従って、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明による核酸分子またはプライマーペアを用いて、被検者由来の核酸試料を鋳型とする核酸増幅法を行ない、得られた増幅産物中において上記各多型部位のヌクレオチドを同定する工程を含んでなる、女性における高血圧症または低血圧症の予知法もしくは検出法または予測法もしくは診断法が提供される。
【0046】
この方法による診断に当たっては、例えば、被験者から血液等の試料を採取し、得られた試料からゲノムDNA、mRNAに対するcDNA等の核酸試料を抽出し、得られた核酸試料を鋳型として、本発明による核酸分子またはプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施し、得られた増幅産物のヌクレオチド配列を解析することにより、MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定することができる。核酸増幅法およびこれによる前記ヌクレオチドの同定法としては、当技術分野において公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、核酸増幅法としてはPCR法等を用いることができる。
【0047】
核酸増幅法により得られた増幅産物のヌクレオチド配列の解析は、例えば、シークエンス用プライマーを用いるダイレクトシークエンス法等により容易に行なうことができる。このような方法は当技術分野において周知であり、例えば、市販のキットを用いて実施することができる。
【0048】
上記の核酸増幅法とダイレクトシークエンス法とにより上記各多型部位のヌクレオチドを同定する場合には、例えば、以下の配列を有するプライマーを用いて核酸増幅法を行ない、同プライマーをシークエンスプライマーとしてダイレクトシークエンス法を行なうことができる。
【0049】
C(−1562)T多型用:
フォワード:5’−TCATTGGTTAGTGAACTTTAGAACTTC−3’(配列番号4);
リバース:5’−TGGGAAAAACCTGCTAACAAC−3’(配列番号5)。
【0050】
Ala20Val多型用:
フォワード:5’−TGGCTGACCACTGGAGGCTTTCAG−3’(配列番号6);
リバース:5’−TTCAGATACGCCCATCACCACCAAC−3’(配列番号7)。
【0051】
Arg668Gln多型用:
フォワード:5’−GCGGGCACGCGGGCTAGGAAA−3’(配列番号8);
リバース:5’−GATCTTGTCTGTGCTGGGGCATT−3’(配列番号9)。
【0052】
本発明による予測法または診断法においては、アレル特異的PCR法を実施できるようにプライマーを設計することもできる。具体的には、一方のプライマーを多型部位に対合できるように設計し、他方のプライマーを多型部位を含まない領域に対合できるように設計することができる。このように設計されたプライマーペアを用いて核酸増幅法を実施すると、核酸試料中に前記多型にかかるいずれかのアレルが存在する場合には増幅産物が得られ、これが存在しない場合には増幅産物が得られない。従って、この場合には、増幅産物の有無を検出することにより特定のアレルの有無を判定することができる。
【0053】
本発明による核酸分子は、ハイブリダイゼーション法等によるMMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドの同定にプローブとして用いることができる。従って、本発明の好ましい実施態様によれば、本発明による核酸分子と被検者由来の核酸試料とのハイブリダイゼーションを行ない、次いでハイブリダイゼーション複合体の存在を検出する工程を含んでなる、女性における高血圧症または低血圧症の予知法もしくは検出法または予測法もしくは診断法が提供される。ハイブリダイゼーション複合体の存在は、MMP9遺伝子における上記各多型にかかるいずれかのアレルの存在を示す。このハイブリダイゼーション法を用いる方法は、上述の核酸増幅法を用いる方法により得られる増幅産物に対して適用することもできる。
【0054】
この方法による診断に当たっては、例えば、被検者から血液等の試料を採取し、得られた試料からゲノムDNA、mRNAに対するcDNA等の核酸試料を抽出し、ストリンジェントな条件下、本発明による核酸分子とのハイブリダイゼーションの有無を検出することにより、MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定することができる。核酸試料は必要であれば制限酵素処理等を施し、ハイブリダイゼーションに適切な長さとすることもできる。ハイブリダイゼーション法とこれによる前記ヌクレオチドの同定法としては、当技術分野において公知のいずれの方法を用いてもよい。例えば、サザンハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション等の技術を用いることができ、これらの方法については、例えば、J. Sambrook, E. F. Frisch, T. Maniatis; Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Laboratory (1989)を参照することができる。
【0055】
MMP9遺伝子における上記各多型が一塩基多型である場合において、該一塩基多型部位のヌクレオチドを同定するためには、本発明による核酸分子をプライマーとして使用するプライマーエクステンション法を用いることもできる。プライマーエクステンション法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、上記のプライマーエクステンション法としては、SNaPshotTM法またはPyrosequencing法として知られる方法が用いられる。
【0056】
SNaPshotTM法においては、一塩基多型の部位に隣接するプライマーであって、伸長反応によりその3’末端に付加するヌクレオチドが前記一塩基多型の部位に相補的なものとなるプライマーが用いられる。このようなプライマーを使用し、被検者からの核酸試料を鋳型としてプライマーの伸長反応が行なわれるが、その際にddNTP(ジデオキシNTP)を用いることにより、伸長反応は、上記の多型部位に対応する一個のヌクレオチドを取り込んだ時点で終了する。取り込まれたヌクレオチドは、蛍光標識等で予め標識しておくことにより容易に同定され、従って、多型部位のヌクレオチドが同定される。このような方法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0057】
Pyrosequencing法においては、被検者からの核酸試料を鋳型とするプライマーの伸長反応の際に、4種のdNTPを1種ずつ反応させる。dNTPのいずれかが取り込まれると、等量のピロリン酸塩(PPi)が遊離し、遊離したPPiはスルフリラーゼと反応してATPを生成させ、このATPによりルシフェラーゼの反応が起こり、発光が起こる。従って、ある特定のdNTPを加えたときに発光が起こった場合には、そのdNTPに対応するヌクレオチドが取り込まれたことが明らかとなり、これにより核酸試料中の対象部位のヌクレオチドが同定される。この方法においては、dNTPが用いられるため、SNaPshotTM法で用いられるような多型部位に隣接するプライマーを用いる必要はなく、数塩基はなれたプライマーを用いてもよい。このような方法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0058】
MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定する場合には、さらに、本発明による核酸分子をプローブおよび/またはプライマーとして使用する遺伝子型決定法(タイピング法)を用いることもできる。遺伝子型決定法は当業者に公知であり、その操作手順および使用するプローブおよび/またはプライマーの具体的ヌクレオチド配列は、当業者であれば容易に決定することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、上記の遺伝子型決定法としては、TaqMan PCR法として知られる方法が用いられる。
【0059】
TaqMan PCR法においては、上記各多型部位のヌクレオチドを含む領域に対して、両アレルのそれぞれに特異的にハイブリダイズする2種のプローブであって、それぞれ別の蛍光標識物質が5’末端に付され、その蛍光標識に対するクエンチャー(消光物質)が3’末端に付されてなるプローブ(TaqManプローブ)が用いられ、これらをPCR反応液中に添加して、被検者由来の核酸試料を鋳型とするPCR反応を行なう。TaqManプローブおよびPCR用のプライマーとしては、本発明による核酸分子を用いることができ、それらの具体的なヌクレオチド配列は、当業者であれば適宜決定することができるため特に制限されないが、例えば、以下のようなヌクレオチド配列とすることができる。また、2種の蛍光標識物質は、互いに識別可能な組合せであればよく、そのような蛍光標識物質の組合せはそれぞれのクエンチャーとともに当業者に公知のものを用いることができるが、好ましくはFAM、VIC、およびTETのいずれかの組合せを用いる。
【0060】
(1)C(−1562)T多型用
TaqManプローブ:
Tアレル用:FAM−ATTATAGGCATGCGCCAC−MGB(配列番号10)、
Cアレル用:VIC−TATAGGCGTGCGCCAC−MGB(配列番号11);
プライマー:
フォワード:GATCTCGGCTCACTGCAACAT(配列番号12)、
リバース:GCCTGGTCAACGTAGTGAAACC(配列番号13);
【0061】
(2)C2419T多型用
TaqManプローブ:
Cアレル用:FAM−TGCTTTGCTGCCCCCAGACAGC−TAMRA(配列番号14)、
Tアレル用:TET−TGCTTTGCTGTCCCCAGACAGCG−TAMRA(配列番号15);
プライマー:
フォワード:ACAACAGCAGCTGCAGTCAGA(配列番号16)、
リバース:CCCCAACTCTAGACTAGGTGTTTGC(配列番号17);
【0062】
(3)G7906A多型用
TaqManプローブ:
Gアレル用:FAM−CCCTCACCTCGGTAC−MGB(配列番号18)、
Aアレル用:VIC−CCTCACCTTGGTACTG−MGB(配列番号19);
プライマー:
フォワード:GTCTCACGAAGGGATCCTCCT(配列番号20)、
リバース:TGGACACGCACGACGTCTT(配列番号21);
【0063】
TaqMan PCR法においては、まず、各アレルにTaqManプローブがハイブリダイズし、プライマーからの伸長反応がそのハイブリダイゼーション領域に到達した際にTaqDNAポリメラーゼの作用によって蛍光標識物質が遊離する。遊離した蛍光標識物質はクエンチャーの作用を受けないため、蛍光を発する。従って、この方法によれば、各アレルの存在量に対応する強度の各蛍光を観察することができ、これにより、被検者の遺伝子型が容易に決定される。
【0064】
本発明による予知法、検出法、予測法および診断法において、Ala20Val多型におけるアラニンをコードするコドン、例えば、C2419T多型におけるCアレル、特にCC遺伝子型が検出されたサンプルは、高血圧症、特に本態性高血圧症を有するものと、あるいは将来においてその可能性があるものと診断することができる。また、C(−1562)T多型におけるTアレル、特にTT遺伝子型、ならびにArg668Gln多型におけるグルタミンをコードするコドン、例えば、G7906A多型におけるAアレル、特にAA遺伝子型が検出されたサンプルは、低血圧症、特に本態性低血圧症を有するものと、あるいは将来においてその可能性があるものと診断することができる。本発明によれば、出生前および出生直後の診断も可能である。
【0065】
以上のような高血圧症または低血圧症の予知、検出、予測および診断のために、必要な試薬をまとめてキットとすることができる。従って、本発明によるキットは、本発明による核酸分子および/または本発明によるプライマーペアを含んでなる。本発明によるキットはさらに、MMP9遺伝子における上記各多型部位のヌクレオチドを同定するための具体的方法に応じて、試薬類、反応容器、説明書等を含んでいてもよい。
【0066】
【実施例】
例1:MMP9遺伝子中の多型と血圧との関係
以下の解析においては、吹田市一般住民より性年齢階層別に無作為抽出された、男性1802名、女性1971名の計3773名を対象にした(平均年齢±標準偏差:59.8±11.8)。
【0067】
まず、被験者全員について、血圧を3回計測した。1回目は触診による血圧計測とし、2および3回目は水銀血圧計を用いての計測とした。
【0068】
次いで、被験者46人について、MMP9遺伝子をダイレクト・シークエンスした。これにより同定された一塩基多型のうち、プロモーター領域中に存在するかまたはアミノ酸変異を伴い、かつアレル頻度が5%以上となるものとして、プロモーター領域中のC/T多型(C(−1562)T多型)、第1エクソン内のC/T多型(C2419T多型、dbSNP:1805088)、第6エクソン内のA/G多型(A5020G多型、dbSNP:2664538)、および第12エクソン内のG/A多型(G7906A多型、dbSNP:rs2274756)を遺伝子解析用に選択した。なお、第10エクソン内のG/C多型(G7201C多型、dbSNP:rs2250889)も候補に挙がったが、これは第6エクソンA/G多型と連鎖不平衡を示すため、解析の対象とはしなかった。
【0069】
上記のように選択された多型に関し、TaqMan PCR法によるタイピングを行なった。TaqMan PCR法は、TaqManシステム(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて行なった。このTaqManシステムにおいては、TaqMan Universal PCR Master Mix(ABI)、10ngのゲノムDNA、下記のTaqManプローブ、および下記のプライマーを含む全12.5μlの反応溶液を96ウェルプレート上に調製し、95℃で10分間の反応の後、92℃で15秒間−下記アニーリング温度で1分間の反応を35サイクルまたは40サイクル行なった。PCR産物の蛍光は、ABI PRISM(登録商標)7700 Sequence Detection System(ABI)を用いて測定した。また、G7906A多型については、384ウェルプレートを用いるタイピングも行なったが、その場合には、TaqMan Universal PCR Master Mix(ABI)、6ngのゲノムDNA、下記のTaqManプローブ、および下記のプライマーを含む全7.5μlの反応溶液を調製し、95℃で10分間の反応の後、92℃で15秒間−60℃で1分間の反応を40サイクル行なった。PCR産物の蛍光は、ABI PRISM(登録商標)7900HT Sequence Detection System(ABI)を用いて測定した。
【0070】
(1)C(−1562)T多型用条件
TaqManプローブ:
Tアレル用:FAM−ATTATAGGCATGCGCCAC−MGB(配列番号10)(231nM)、
Cアレル用:VIC−TATAGGCGTGCGCCAC−MGB(配列番号11)(209nM);
プライマー:
フォワード:GATCTCGGCTCACTGCAACAT(配列番号12)(800nM)、
リバース:GCCTGGTCAACGTAGTGAAACC(配列番号13)(800nM);
アニーリング温度:64℃;
サイクル数:35サイクル。
【0071】
(2)C2419T多型用条件
TaqManプローブ:
Cアレル用:FAM−TGCTTTGCTGCCCCCAGACAGC−TAMRA(配列番号14)(50nM)、
Tアレル用:TET−TGCTTTGCTGTCCCCAGACAGCG−TAMRA(配列番号15)(158nM);
プライマー:
フォワード:ACAACAGCAGCTGCAGTCAGA(配列番号16)(400nM)、
リバース:CCCCAACTCTAGACTAGGTGTTTGC(配列番号17)(400nM);
アニーリング温度:64℃;
サイクル数:40サイクル。
【0072】
(3)A5020G多型用条件
TaqManプローブ:
Gアレル用:FAM−AGGACTCTACACCCGGGACGGCA−TAMRA(配列番号22)(76.8nM)、
Aアレル用:TET−ACTCTACACCCAGGACGGCAATGCTG−TAMRA(配列番号23)(48nM);
プライマー:
フォワード:GATGAACTGCAGACCATCCAT(配列番号24)(400nM)、
リバース:AGTAGGATTGGCCTTGGAAGA(配列番号25)(400nM);
アニーリング温度:62℃;
サイクル数:40サイクル。
【0073】
(4)G7906A多型用条件
TaqManプローブ:
Gアレル用:FAM−CCCTCACCTCGGTAC−MGB(配列番号18)(234nM)、
Aアレル用:VIC−CCTCACCTTGGTACTG−MGB(配列番号19)(90nM);
プライマー:
フォワード:GTCTCACGAAGGGATCCTCCT(配列番号20)(800nM)、
リバース:TGGACACGCACGACGTCTT(配列番号21)(800nM);
アニーリング温度:60℃;
サイクル数:40サイクル。
【0074】
上記の血圧測定およびタイピングの結果に基づき、統計学的分析として、断面研究および症例対照研究を行なった。断面研究では、Tukey−Kramer法による多変量解析を用いて血圧と遺伝子多型との関連を解析した。その際に、性、年齢、BMI、喫煙、飲酒、降圧薬服用の有無、現病歴(糖尿病、高脂血症)を調整因子として用いた。
【0075】
プロモーター領域のC/T多型(C(−1562)T)については、男性1466名および女性1635名の計3101名を解析した。断面研究の結果を下記の表1に示す。断面研究では、女性の収縮期血圧(TT型:121.8±2.7mmHg、TC型:130.5±0.8mmHg、CC型:128.9±0.5mmHg、トレンドP=0.006)、および女性の拡張期血圧(TT型:75.7±1.5mmHg、TC型:79.7±0.5mmHg、CC型:79.2±0.3mmHg、トレンドP=0.035)において、TT型がTC型およびCC型よりも有意に低かった。
【0076】
【表1】
【0077】
第1エクソン内のC/T多型(C2419T)については、男性1135名および女性1216名の計2351名を解析した。断面研究の結果を下記の表2に示す。断面研究では、女性の収縮期血圧(TT型:129.0±0.5mmHg、TC型:129.4±1.4mmHg、CC型:140.0±5.4mmHg、TT型とCC型とでP=0.04)、男女を合わせた拡張期血圧(TT型:80.6±0.2mmHg、TC型:80.3±0.6mmHg、CC型:85.6±2.5mmHg、TT型とCC型とでP=0.03)において、CC型がTT型およびTC型よりも有意に高かった。
【0078】
【表2】
【0079】
第6エクソン内のA/G多型(A5020G)については、男性1211名および女性1342名の計2553名を解析した。断面研究の結果を下記の表3に示す。この多型については、断面研究および症例対照研究のいずれにおいても血圧との関連がみられなかった。
【0080】
【表3】
【0081】
第12エクソン内のG/A多型(G7906A)については、男性1551名および女性1696名の計3247名を解析した。断面研究の結果を下記の表4に示す。断面研究では、女性の収縮期血圧(AA型:122.8±2.4mmHg、AG型:129.4±0.9mmHg、GG型:128.6±0.5mmHg、トレンドP=0.032)および女性の脈圧(AA型:45.8±1.7mmHg、AG型:50.4±0.6mmHg、GG型:49.3±0.4mmHg、トレンドP=0.019)において、AA型がAG型およびGG型よりも有意に低かった。
【0082】
【表4】
【0083】
以上の結果から、MMP9のプロモーター領域C/T多型(C(−1562)T)、第1エクソンC/T多型(C2419T)、第12エクソンG/A多型(G7906A)は、日本人女性の血圧と有意に関連する遺伝子多型マーカーになりうることが示された。
【0084】
【配列表】
Claims (28)
- マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子において、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第20番目のアミノ酸残基をコードするコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、
配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子。 - 前記ポリヌクレオチドが、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項1に記載の核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドが、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項1に記載の核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、配列番号3中の第20番目のアラニン残基をコードするコドンを含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、請求項1に記載の核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドの、配列番号3中の第20番目のアラニン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができる、請求項1に記載の核酸分子。
- マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子において、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第20番目のアミノ酸残基をコードするコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定しうる、女性における高血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、
配列番号3で表わされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、配列番号3中の第20番目のアラニン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができる、プライマーペア。 - 前記ポリヌクレオチドが、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項6に記載のプライマーペア。
- 前記ポリヌクレオチドが、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項6に記載のプライマーペア。
- マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子中のヌクレオチドを同定することにより、女性における高血圧症を予知または検出する方法であって、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸分子、および/または請求項6〜8のいずれか一項に記載のプライマーペアを用いて、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子において、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第20番目のアミノ酸残基をコードするコドンがアラニン残基をコードするコドンであることを同定する工程を含んでなる、方法。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の核酸分子、および/または請求項6〜8のいずれか一項に記載のプライマーペアを含んでなる、女性における高血圧症の予測または診断用キット。
- マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、
前記変異を有してなるマトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子。 - 前記ポリヌクレオチドが、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第771番目のシトシン(C)残基がチミン(T)残基に置換されたヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項11に記載の核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、請求項11に記載の核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドの、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域を核酸増幅法において増幅することができる、請求項11に記載の核酸分子。
- マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、
前記変異を有してなるマトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子のヌクレオチド配列を含んでなるポリヌクレオチドの、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するヌクレオチド残基に対応するチミン残基(T)を含む領域を核酸増幅法において増幅することができる、プライマーペア。 - 前記ポリヌクレオチドが、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第771番目のシトシン(C)残基がチミン(T)残基に置換されたヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項15に記載のプライマーペア。
- マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子の変異を検出することにより、女性における低血圧症を予知または検出する方法であって、
請求項11〜14のいずれか一項に記載の核酸分子、および/または請求項15もしくは16に記載のプライマーペアを用いて、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、前記遺伝子の翻訳開始点に対して1590ヌクレオチド上流に位置するシトシン残基(C)のチミン残基(T)への変異を検出する工程を含んでなる、方法。 - 請求項11〜14のいずれか一項に記載の核酸分子、および/または請求項15もしくは16に記載のプライマーペアを含んでなる、女性における低血圧症の予測または診断用キット。
- マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第668番目のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるための核酸分子であって、
配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、核酸分子。 - 前記ポリヌクレオチドが、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第7906番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項19に記載の核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドが、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列において第2022番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項19に記載の核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドまたはこれに相補的なポリヌクレオチドの、配列番号3中の第668番目のアルギニン残基に対応するグルタミン残基をコードするコドンを含む領域にハイブリダイズするヌクレオチド断片を含んでなる、請求項19に記載の核酸分子。
- 前記ポリヌクレオチドの、配列番号3中の第668番目のアルギニン残基に対応するグルタミン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができる、請求項19に記載の核酸分子。
- マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第668番目のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出しうる、女性における低血圧症の予測または診断に用いるためのプライマーペアであって、
配列番号3で表わされるアミノ酸配列において第668番目のアルギニン残基がグルタミン残基に置換されてなるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの、前記グルタミン残基をコードするコドンを含む領域を核酸増幅法において増幅することができる、プライマーペア。 - 前記ポリヌクレオチドが、配列番号1で表わされるヌクレオチド配列において第7906番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項24に記載のプライマーペア。
- 前記ポリヌクレオチドが、配列番号2で表わされるヌクレオチド配列において第2022番目のグアニン残基(G)がアデニン残基(A)に置換されてなるヌクレオチド配列を含んでなるものである、請求項24に記載のプライマーペア。
- マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子中の変異を検出することにより、女性における低血圧症を予知または検出する方法であって、
請求項19〜23のいずれか一項に記載の核酸分子、および/または請求項24〜26のいずれか一項に記載のプライマーペアを用いて、マトリックスメタロプロテアーゼ9遺伝子における、該遺伝子によりコードされるアミノ酸配列中の第668番目のアルギニン残基をコードするコドンのグルタミン残基をコードするコドンへの変異を検出する工程を含んでなる、方法。 - 請求項19〜23のいずれか一項に記載の核酸分子、および/または請求項24〜26のいずれか一項に記載のプライマーペアを含んでなる、女性における低血圧症の予測または診断用キット。
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---|---|---|---|---|
WO2008087049A1 (en) * | 2007-01-15 | 2008-07-24 | Centre De Recherche Public De La Sante | Diagnostic marker and platform for drug design in myocardial infarction and heart failure |
-
2003
- 2003-03-12 JP JP2003066779A patent/JP2004275007A/ja active Pending
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WO2008087049A1 (en) * | 2007-01-15 | 2008-07-24 | Centre De Recherche Public De La Sante | Diagnostic marker and platform for drug design in myocardial infarction and heart failure |
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