JP2004273134A - 画像表示装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】封着材のばらつきに応じて適切に通電条件を設定することができ、封着作業を迅速かつ安定して行うことが可能な画像表示装置の製造方法を提供することにある。
【解決手段】前面基板11および背面基板12の少なくとも一方の周縁部に沿って、導電性を有した封着材を配置して封着層21a、21bを形成し、封着層を通電によって溶融させ、前面基板および背面基板を接合する。その際、封着層が溶融しない大きさの電流を封着層に前通電した後、封着層に本通電して封着層を加熱溶融させ、本通電の通電条件を、前通電の通電状態に応じて決定する。
【選択図】 図10
【解決手段】前面基板11および背面基板12の少なくとも一方の周縁部に沿って、導電性を有した封着材を配置して封着層21a、21bを形成し、封着層を通電によって溶融させ、前面基板および背面基板を接合する。その際、封着層が溶融しない大きさの電流を封着層に前通電した後、封着層に本通電して封着層を加熱溶融させ、本通電の通電条件を、前通電の通電状態に応じて決定する。
【選択図】 図10
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、対向配置されているとともに周縁部同士が接合された一対の基板を備えた画像表示装置の製造方法および画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、陰極線管(以下、CRTと称する)に代わる次世代の軽量、薄型の表示装置として様々な画像表示装置が開発されている。このような画像表示装置には、液晶の配向を利用して光の強弱を制御する液晶ディスプレイ(以下、LCDと称する)、プラズマ放電の紫外線により蛍光体を発光させるプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)、電界放出型電子放出素子の電子ビームにより蛍光体を発光させるフィールドエミッションディスプレイ(以下、FEDと称する)、表面伝導型電子放出素子の電子ビームにより蛍光体を発光させる表面伝導電子放出ディスプレイ(以下、SEDと称する)などがある。
【0003】
例えばFEDやSEDでは、一般に、所定の隙間を置いて対向配置された前面基板および背面基板を有し、これらの基板は、矩形枠状の側壁を介して周辺部同士を互いに接合することにより真空の外囲器を構成している。前面基板の内面には蛍光体スクリーンが形成され、背面基板の内面には蛍光体を励起して発光させる電子放出源として多数の電子放出素子が設けられている。
【0004】
また、背面基板および前面基板に加わる大気圧荷重を支えるために、これら基板の間には複数の支持部材が配設されている。背面基板側の電位はほぼアース電位であり、蛍光面にはアノード電圧が印加される。そして、蛍光体スクリーンを構成する赤、緑、青の蛍光体に電子放出素子から放出された電子ビームを照射し、蛍光体を発光させることによって画像を表示する。
【0005】
このようなFEDやSEDでは、表示装置の厚さを数mm程度にまで薄くすることができ、現在のテレビやコンピュータのディスプレイとして使用されているCRTと比較して、軽量化、薄型化を達成することができる。
【0006】
例えば、上記のようなFEDにおいて、外囲器を構成する前面基板および背面基板を矩形枠状の側壁を介して接合するために様々な製造方法が検討されている。例えば、真空装置内において、前面基板と背面基板を十分に離した状態で両基板をべーキングしながら真空装置全体を高真空になるまで排気し、所定の温度および真空度に到達したときに前面基板と背面基板を、側壁を介して接合する方法が挙げられる。この方法では、ゲッターの吸着能力を低下させないように、シール材として、比較的低温で封着が可能なインジウムが用いられる。
【0007】
しかしながら、インジウムは低融点金属とはいえ、その溶融温度は約160℃であり、この温度でもゲッターの吸着能力は低下することが確かめられている。また、この温度で封着した画像表示装置を動作させると、そのライフ特性が劣化することが実験で確認された。
【0008】
これらの問題を解決する方法として、基板間にインジウム等の低融点封着材を充填した状態で、封着材に通電しそのジュール熱により封着材自身を発熱、溶解させ、基板同志を接合する方法(以下、通電加熱と称する)が検討されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、低融点封着材のみを高温にし、ゲッター形成領域は低温のまま保つことができるため、ゲッターの吸着能力低下を防止することができる。また、基板の加熱、冷却に膨大な時間を費やす必要がなく、短時間で基板を接合し外囲器を形成することが可能となる。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−319346号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、基板あるいは側壁に対してインジウムを所定位置に充填する際、温度、超音波のエネルギー、充填ジグの経時変化などにより、充填幅、厚さにばらつきが発生する。また、通電加熱の場合、溶融後の封着材には表面張力によりある程度の凹凸または粗密が発生する。これに加えて、封着時、片方の基板はその封着面を下向きにして配置する必要があり、この場合、溶融した封着材の凹凸が重力によって更に大きくなる。約160℃で加熱封着を行う場合、上記のような封着材のばらつきは許容範囲であり全く問題にならなかった。
【0011】
しかし、通電加熱では、封着剤の充填幅、厚さにばらつきがあると、幅の狭い部分あるいは薄い部分で発熱が大きくなる。また、封着材に凹凸があると、凸部、密の部分に比較して、凹部または粗の部分で発熱が大きくなり、封着材の加熱温度にばらつきが生じる。そのため、一定の通電条件で封着材を通電加熱した場合でも、温度が高くなりすぎて冷却時間が延びたり、逆に温度が低く封着材が完全に溶融する前に基板が加圧されて封着ができなくなるといった問題が生じる。このような問題は、対角寸法が概ね30インチ以上の大型画像表示装置の場合に顕著となる。
【0012】
この発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、封着材のばらつきに応じて適切に通電条件を設定することができ、封着作業を迅速かつ安定して行うことが可能な画像表示装置の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明の態様に係る画像表示装置の製造方法は、対向配置された前面基板および背面基板を有した外囲器と、上記前面基板および背面基板の周辺部間に設けられ導電性の封着層と、上記外囲器に形成された複数の画素とを備え、上記封着層を通電によって溶融させ、上記前面基板および背面基板を接合して外囲器を形成する画像表示装置の製造方法において、
上記封着層が溶融しない大きさの電流を上記封着層に前通電する前通電工程と、上記封着層に本通電して封着層を加熱し溶融させる本通電工程とを備え、上記本通電工程の通電条件を、上記前通電工程の通電状態に応じて決定することを特徴としている。
【0014】
また、この発明の他の態様の製造方法は、対向配置されているとともに導電性の封着材により周辺部同士が接合された前面基板および背面基板を有した外囲器と、上記外囲器内に形成された複数の画素とを備えた画像表示装置の製造方法において、上記前面基板および背面基板の少なくとも一方の周辺部に沿って、導電性を有した封着材を配置して封着層を形成し、上記前面基板および背面基板を対向配置した状態で、上記封着層が溶融しない大きさの電流を上記封着層に前通電し、上記前通電の通電状態に応じて本通電の通電条件を決定し、上記決定された通電条件に基き上記封着層に本通電して封着層を加熱溶融させ、上記前面基板および背面基板の周辺部同士を接合することを特徴としている。
【0015】
上述のような画像表示装置の製造方法とすると、基板ごとに導電性部材の幅や厚さにばらつきが生じても、そのばらつき情報を前通電工程によって取得し、ばらつきに応じて本通電の通電条件を決定することができ、基板ごとの温度上昇を同じにすることができる。これにより、基板全体を低温に維持しながら、同じ通電工程時間で迅速かつ安定して封着作業を行うことが可能な画像表示装置の製造方法を提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係る画像表示装置の製造方法について詳細に説明する。まず、本製造方法により製造される画像表示装置として、FEDの構成について説明する。
【0017】
図1ないし図4に示すように、FEDは、それぞれ矩形状のガラス板からなる前面基板11、および背面基板12を備え、これらの基板は1mmの隙間を置いて対向配置されている。背面基板12は前面基板11よりも大きな寸法に形成され、その周縁部には、後述する画像信号を入力するための引出し線23が設けられている。そして、前面基板11および背面基板12は、矩形枠状の側壁18を介して周縁部同士が接合され、内部が真空状態に維持された扁平な矩形状の真空外囲器10を構成している。真空外囲器10の対角寸法は、例えば、10インチに形成されている。
【0018】
背面基板12と側壁18との間は、フリットガラス等の低融点ガラス19によって封着されている。また、前面基板11と側壁18との間は、導電性を有する低融点封着材としてインジウム(In)を含んだ封着層21によって封着されている。
【0019】
導電性を有した低融点封着材としては、インジウムの代わりに、In、Ga、Pb、Sn及びZnよりなる群から選択される単体金属か、もしくはIn、Ga、Pb、Sn及びZnよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する合金を用いることができる。特に、In及びGaよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含む合金、In金属、Ga金属を使用することが望ましい。InもしくはGaを含む低融点封着材は、SiO2を主成分とするガラス製基板との濡れ性に優れるため、低融点封着材の配置される基板がSiO2を主成分とするガラスで形成されている場合に特に適している。最も好ましい低融点封着材は、In金属、Inを含む合金である。Inを含む合金としては、例えば、InとAgを含む合金、InとSnを含む合金、InとZnを含む合金、InとAuを含む合金などを挙げることができる。
【0020】
真空外囲器10の内部には、前面基板11および背面基板12に加わる大気圧荷重を支えるため、複数の板状の支持部材14が設けられている。これらの支持部材14は、真空外囲器10の一辺と平行な方向にそれぞれ延在しているとともに、上記一辺と直交する方向に沿って所定の間隔を置いて配置されている。なお、支持部材14は板状に限らず、柱状のものを用いてもよい。
【0021】
前面基板11の内面には、画像表示面として機能する蛍光体スクリーン16が形成されている。この蛍光体スクリーン16は、赤、緑、青の蛍光体層R、G、B、およびこれらの蛍光体層間に位置した遮光層20を並べて構成されている。蛍光体層R、G、Bは、真空外囲器10の上記一辺と平行な方向に延在しているとともに、この一辺と直交する方向に沿って所定の間隔を置いて配置されている。なお、蛍光体スクリーン16上には、たとえばアルミニウムからなるメタルバック層17およびゲッター膜15が形成されている。
【0022】
図3に示すように、背面基板12の内面上には、蛍光体スクリーン16の蛍光体層を励起する電子放出源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の電子放出素子22が設けられている。これらの電子放出素子22は、画素毎に対応して複数列および複数行に配列されている。詳細に述べると、背面基板12の内面上には、導電性カソード層24が形成され、この導電性カソード層上には多数のキャビティ25を有した二酸化シリコン膜26が形成されている。二酸化シリコン膜26上には、モリブデンやニオブ等からなるゲート電極28が形成されている。そして、背面基板12の内面上において各キャビティ25内にはモリブデンなどからなるコーン状の電子放出素子22が設けられている。
【0023】
また、FEDは、複数、例えば、一対の電極30を備え、これらの電極は、封着層21に電気的に導通した状態で外囲器10に取り付けられている。電極30は、封着層21に通電する際の電極として用いられる。図5に示すように、各電極30は、導電部材として例えば0.2mm厚の銅板を折り曲げ加工して形成されている。すなわち、電極30は、断面がほぼU字形状となるように折曲げられ、前面基板11あるいは背面基板12の周縁部を挟持して取り付け可能なクリップ部32、クリップ部に並んで位置した楔状の胴体部34、胴体部の延出端に位置した接触部36、およびクリップ部および胴体部の背面部により形成された平坦な導通部38を一体に備えている。接触部36は、水平方向の延出長さLが2mm以上に形成されている。
【0024】
図1ないし図3に示すように、電極30は、真空外囲器10の例えば、背面基板12に弾性的に係合した状態で取り付けられている。すなわち、電極30は、クリップ部32により背面基板12の周縁部を弾性的に挟持した状態で真空外囲器10に取り付けられている。そして、各電極30の接触部36は、それぞれ封着層21に接触し、電気的に導通している。また、胴体部34は接触部36から真空外囲器10の外側に延出しているとともに、導通部38は、背面基板12の側面と対向し真空外囲器10の外面に露出している。一対の電極30は、真空外囲器10の対角方向に離間した2つの角部にそれぞれ設けられ、封着層21に対して対称に配置されている。
【0025】
上記のように構成されたFEDにおいて、映像信号は、単純マトリックス方式に形成された電子放出素子22とゲート電極28に入力される。電子放出素子22を基準とした場合、最も輝度の高い状態の時、+100Vのゲート電圧が印加される。また、蛍光体スクリーン16には+10kVが印加される。これにより、電子放出素子22から電子ビームが放出される。そして、電子放出素子から放出される電子ビームの大きさは、ゲート電極28の電圧によって変調され、この電子ビームが蛍光体スクリーン16の蛍光体層を励起して発光させることにより画像を表示する。
【0026】
このように蛍光体スクリーン16には高電圧が印加されるため、前面基板11、背面基板12、側壁18、および支持部材14用の板ガラスには、高歪点ガラスが使用されている。
【0027】
次に、上記構成を有するFEDの製造方法について詳細に説明する。
【0028】
まず、前面基板11となる板ガラスに蛍光体スクリーン16を形成する。これは、前面基板11と同じ大きさの板ガラスを準備し、この板ガラスにプロッターマシンで蛍光体ストライプパターンを形成する。この蛍光体ストライプパターンを形成した板ガラスと前面基板用の板ガラスとを位置決め治具に載せて露光台にセットする。この状態で、露光、現像することにより、前面基板11となるガラス板上に蛍光体スクリーンを形成する。その後、蛍光体スクリーン16に重ねてメタルバック層17を形成する。
【0029】
続いて、背面基板12用の板ガラスに電子放出素子22を形成する。これは、マトリックス状の導電性カソード層24を板ガラス上に形成し、このカソード層上に例えば熱酸化法やCVD法あるいはスパッタリング法により2酸化シリコン膜の絶縁膜を形成する。この後、この絶縁膜上に、例えばスパッタリング法や電子ビーム蒸着法によりモリブデンやニオブなどのゲート電極形成用の金属膜を形成する。次に、この金属膜上に、形成すべきゲート電極に対応した形状のレジストパターンをリソグラフィーにより形成する。このレジストパターンをマスクとして金属膜をウェットエッチング法またはドライエッチング法によりエッチングし、ゲート電極28を形成する。
【0030】
その後、レジストパターン及びゲート電極28をマスクとして絶縁膜をウェットエッチングまたはドライエッチング法によりエッチングして、キャビティ25を形成する。そして、レジストパターンを除去した後、背面基板表面に対して所定角度傾斜した方向から電子ビーム蒸着を行うことにより、ゲート電極28上に例えばアルミニウムやニッケルからなる剥離層を形成する。その後、背面基板表面に対して垂直な方向からカソード形成用の材料として例えばモリブデンを電子ビーム蒸着法により蒸着する。これによって、キャビティ25の内部に電子放出素子22が形成される。次に、剥離層をその上に形成された金属膜とともにリフトオフ法により除去する。
【0031】
続いて、大気中で低融点ガラス19により側壁18および支持部材14を背面基板12の内面上に封着する。その後、図6(a)、6(b)に示すように、側壁18の封着面の全周に渡ってインジウムを所定の幅および厚さに塗布し封着層21aを形成する。同様に、前面基板11の側壁と対向する封着面にインジウムを所定の幅および厚さで矩形枠状に塗布し封着層21bを形成する。なお、側壁18および前面基板11の封着面に対する封着層21a、21bの充填は、上述したように、溶融したインジウムを封着面に塗布する方法、あるいは、固体状態のインジウムを封着面に載置する方法等によって行う。
【0032】
続いて、図7に示すように、側壁18が接合されている背面基板12に一対の電極30を装着する。この際、側壁18上で各電極30の接触部36を封着層21aに接触させることにより、電極を封着層に対して電気的に接続する。電極30は、基板上で+極と−極の一対を必要とし、一対の電極間で並列に通電される封着層21a、21bの各々の通電経路はその長さを等しくすることが望ましい。そこで、一対の電極30は、背面基板12の対角方向に対向する2つの角部に装着され、電極間に位置した封着層21a、21bの長さは、各電極の両側でほぼ等しく設定されている。
【0033】
一対の電極30を装着した後、これら背面基板12、前面基板11を所定間隔離して対向配置し、この状態で、真空処理装置内に投入する。ここでは、例えば図8に示すような真空処理装置100を用いる。真空処理装置100は、並んで配設されたロード室101、ベーキング、電子線洗浄室102、冷却室103、ゲッター膜の蒸着室104、組立室105、冷却室106、およびアンロード室107を備えている。組立室105には、通電用の直流を供給する電源120、および、この電源を制御する制御部としてのコンピュータ122が接続されている。また、真空処理装置100の各室は、真空処理が可能な処理室として構成され、FEDの製造時には全室が真空排気されている。これら各処理室間は図示しないゲートバルブ等により接続されている。
【0034】
所定間隔離して配置された上述の前面基板11および背面基板12は、まず、ロード室101に投入される。そして、ロード室101内の雰囲気を真空雰囲気とした後、ベーキング、電子線洗浄室102へ送られる。
【0035】
ベーキング、電子線洗浄室102では、各種部材を300℃の温度に加熱し、各基板の表面吸着ガスを放出させる。同時にベーキング、電子線洗浄室102に取り付けられた図示しない電子線発生装置から電子線を、前面基板11の蛍光体スクリーン面、および背面基板12の電子放出素子面に照射する。その際、電子線発生装置外部に装着された偏向装置によって電子線を偏向走査することにより、蛍光体スクリーン面および電子放出素子面の全面をそれぞれ電子線洗浄する。
【0036】
電子線洗浄を行った前面基板11および背面基板12は冷却室103に送られ、約100℃の温度まで冷却された後、ゲッター膜の蒸着室104へと送られる。この蒸着室104では、蛍光体層の外側にゲッター膜としてBa膜が蒸着形成される。Ba膜は表面が酸素や炭素などで汚染されることを防止することができ、活性状態を維持することができる。
【0037】
続いて、前面基板11および背面基板12は組立室105に送られる。この組立室105において、図9に示すように、前面基板11および背面基板12は、対向配置された状態で組立室内のホットプレート131、132にそれぞれ保持される。前面基板11は落下しないように、固定治具133により上側のホットプレート131に固定する。
【0038】
次に、前面基板11および背面基板12を約120℃にまで加熱した後、互いに接近する方向へ移動させ、所定の圧力で加圧する。それにより、封着層21a、21bを互いに接触させるとともに、各電極30の接触部36を前面基板11側の封着層21bと背面基板12側の封着層21aとの間に挟持し、各電極30を封着層21a、21bに電気的に接続する。この際、接触部36は2mm以上の水平方向長さに形成されているため、封着層21a、21bに対し安定して接触することができる。なお、電極30の接触部36に予めインジウムを塗布しておくことにより、一層安定して封着材に通電することが可能となる。
【0039】
この状態で、図10に示すように、一対の電極30に電源120を電気的に接続し、側壁18側の封着層21aおよび前面基板11側の封着層21bのそれぞれに通電する。これにより、封着層21a、21bを加熱しインジウムを溶融させる。
【0040】
以下、封着層21a、21bの通電加熱について詳細に説明する。
【0041】
封着工程においては、まず、封着層を溶融させる前に、封着材の温度が上がらない程度の低電流を短時間流して電流、電圧データを取得する。そして、得られたデータに基づいて本通電、すなわち封着層を溶融するための通電条件を設定する。ここで、電流、電圧データを取得するための通電を前通電、封着層を溶融させるための通電を本通電と称する。前通電の条件を封着層の温度が上がらない程度としたのは、封着層の温度に応じて封着層の電気抵抗自体が変化するため、温度が上がりすぎると本通電の条件を算出することが難しくなるためである。封着層の温度が約5℃以内であれば、取得したデータの誤差は小さくなる。従って、前通電の電流は、封着層の材質、厚さ、幅等によって異なるが、例えば、5〜20Aに設定することが望ましい。また、前通電は、定電流、定電圧のどちらでもよいが、電気抵抗率が材料固有の値であるため、得られた電流、電圧値から電気抵抗を算出すると比較が容易となる。
【0042】
本実施の形態において、FEDにとって不所望な水分子を脱離でき、ゲッター膜の吸着能力を低下させない封着温度として、100〜130℃の範囲が望ましく、より好ましくは120℃が設定される。また、低融点封着材としてインジウムを用いた場合、通電を開始してから冷却が終了するまでの温度は10分である。ここで冷却が終了する温度とは、インジウムの温度が130℃を下回ったときを指している。封着材の温度が130℃未満であれば、前面基板および背面基板同士は強固に接着され、搬送しても基板同士がずれることはない。上記の温度は材料の選択によって変わりうる設計事項であり、上記値に限定されるものではない。
【0043】
限定された封着時間内で安定した封着を行うためには、充填インジウムのばらつきに関わらず封着層の温度上昇が同じになる必要がある。インジウム単体の発熱は、
(電流)2×(電気抵抗)
で表され、温度上昇は
(発熱)/{(比熱)×(質量)}
で表される。よって、変化量は
{(電流)/(断面積)}2
となるので、インジウムの断面積に比例するように電流値を定めることになる。
【0044】
しかし、これはあくまでもインジウム単体の場合であり、温度上昇が比較的緩やかな場合やインジウム面が開けた環境にある場合には、基板への熱伝導や外部への熱放射の影響があり、上記関係からのずれが大きくなる。この場合の関係を解析的に表すことは一般に困難であるが、発明者等の実験などにより確認したところ、通常用いられる通電範囲では近似的に封着層の(断面積)の2次式に合うことがわかった。よって、前通電で得られた電気抵抗値Rを封着層の断面積Sに換算し、
I= c2S2+c1S+c0 ……(1)
により電流値Iを定めると、インジウムの充填ばらつきにかかわらずほぼ同程度の通電封着時間にすることができた。あるいは、電気抵抗値Rから直接
I=d2/R2+d1/R+d0 ……(2)
によって電流値Iを定めてもよい。
【0045】
なお、式(1)、(2)において、c1、c2、c0、d1、d2、d0は定数であり、基板の大きさ、材質、封着材の材質、寸法等に応じて決定する。
【0046】
本実施の形態では、まず、前通電において、組立室105に接続されている電源120から一対の電極30を介して10Aの定電流を3秒間、封着層21a、21bに通電する。この通電により得られた電流値、電圧値は、電源120からコンピュータ122に入力され、コンピュータは入力されたデータに基づいて抵抗値を算出する。前通電の最初の1秒間は電源立ち上がりのために抵抗値が安定しないため、残り2秒のデータにより抵抗値の平均値を算出する。120℃におけるインジウムの電気抵抗率は12.9×10−8Ωmであることから、この電気低効率と上記算出した抵抗値とに基づいて封着層の平均断面積Sを算出する。そして、得られた平均断面積Sと前述した式(1)から、
I= −26.5S2+106.6S−6.0
によって本通電の電流値Iを決定する。なお、前通電により得られた抵抗値および前述した式(2)に基づいて本通電の電流値Iを決定してもよい。
【0047】
そして、得られた電流値Iをコンピュータ122から電源120に入力し、電源120から封着層21a、21bに40秒間、本通電する。これにより、封着層21a、21bが溶融し、前面基板11および背面基板12同士が接合される。すなわち、上記のように通電加熱により封着層21a、21bを融合させて封着層21を形成し、この封着層によって前面基板11の周縁部と側壁18とを封着する。
【0048】
上記工程により形成された真空外囲器10は、冷却室106で常温まで冷却され、アンロード室107から取り出される。これにより、FEDが完成する。なお、FEDが完成した後、必要であれば電極30を切除してもよい。
【0049】
以上のように構成されたFEDの製造方法によれば、真空雰囲気中で前面基板および背面基板の封着、接合を行うことから、ベーキングと電子線洗浄の併用によって表面吸着ガスを十分に放出させることができ、吸着能力が優れたゲッター膜を得ることができる。また、封着層を通電加熱することによって封着、接合することにより、前面基板および背面基板全体を加熱する必要がなく、ゲッター膜の劣化、封着工程中に基板が割れるなどの不具合をなくすことができる。同時に、短時間で封着を完了することができ、量産性に優れた製造方法とすることが可能となる。
【0050】
更に、封着材の通電加熱時、前通電で封着層の電気抵抗値を測定し、あらかじめ定められた換算式で本電流の電流値を算出して本通電することにより、基板ごとに充填封着材のばらつきがあった場合でも、すなわち、封着層の幅、厚さにばらつきがあった場合でも、封着材の温度上昇を同一にすることができる。従って、FEDの製造工程において、いずれのFEDでも同じ工程時間で封着材を溶融し基板を安定して封着することが可能となる。これにより、量産性に優れ、同時に、迅速かつ安定した封着が可能なFEDの製造方法を得ることができ、かつ良好な画像表示が可能なFEDを安価に得ることが可能となる。
【0051】
次に、この発明の他の実施の形態に係る画像表示装置の製造方法について説明する。他の実施の形態では、本通電の電流値を大きくして封着工程時間をさらに短縮している。FEDの構成および製造方法の主要部は前述した実施の形態と同一であり、同一部分の詳細な説明は省略する。
【0052】
本実施の形態では、電流値が大きいため、インジウムの温度上昇が、インジウム単体の場合に近くなる。よって電流値Iを算出する前述の式(1)において、定数を近似的にc0=0とすることができる。封着工程においては、まず、前通電により封着層の抵抗値の平均値を算出する。120℃におけるインジウムの電気抵抗率は12.9×10−8Ωmであることから、この電気低効率と上記算出した抵抗値とに基づいて封着層の平均断面積Sを算出する。そして、得られた平均断面積Sと前述の簡略化した式(1)から、
I= 42.0S+49.0
によって本通電の電流値を決定する。得られた電流値Iをコンピュータ122から電源120に入力し、電源120から封着層21a、21bに25秒間、本通電する。これにより、封着層21a、21bが溶融し、前面基板11および背面基板12同士が接合される。
【0053】
上記他の実施の形態によれば、封着層の温度上昇を前述した実施の形態と同じにしつつ、通電封着に要する工程時間を短縮することができる。
【0054】
なお、上述したいずれの実施の形態においても、前通電により得られた抵抗値および前述した式(2)に基づいて本通電の電流値Iを決定してもよい。また、上記実施の形態では定電流通電について記述したが、定電圧通電であってもなんら問題はない。さらに、上記実施の形態では、前通電の直後に本通電を行う構成としたが、これらの通電工程を時間間隔をおいて実行してもよい。
【0055】
その他、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、基板の対向する対角部分に一対の電極を取付けた状態で封着層に通電する構成としたが、複数の電極は、電極間に位置する封着層の通電経路が互いに等しい長さとなるように配置されていれば、あるいは、封着層に対して対称な位置に配設されていればよく、外囲器の角部に限らず、他の位置に設けてもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態では、背面基板側および前面基板側の両方にそれぞれインジウムからなる封着層を設ける構成としたが、いずれか一方のみに封着層を設けた状態で、前面基板と背面基板とを封着する構成としても良い。外囲器の側壁は、予め背面基板あるいは前面基板と共に一体的に成形された構成としてもよい。真空外囲器の外形状や支持部材の構成は上記実施の形態に限られることなく、必要に応じて変形可能である。マトリックス型の黒色光吸収層と蛍光体層を形成し、断面が十字型の柱状支持部材を黒色光吸収層に対して位置決めして封着する構成としてもよい。
【0057】
さらに、上述した実施の形態では、組立室で固定された前面基板と背面基板を加圧してから通電したが、それぞれの基板の封着層に別々に通電した後加圧するプロセスであってもよい。この場合には、例えば前面基板と背面基板のそれぞれに電極を取り付けて通電を行い、本通電の電流値算出もそれぞれの基板で行うようにする。よって、電源および制御コンピュータも2台ずつ必要になる。
【0058】
また、電子放出素子は、pn型の冷陰極素子あるいは表面伝導型の電子放出素子等を用いてもよい。上記実施の形態では、真空雰囲気中で基板を接合する工程について述べたが、その他の雰囲気環境において本発明を適用することも可能である。更に、この発明は、FEDに限定されることなく、SEDやPDP等の他の画像表示装置、あるいは、外囲器内部が高真空とならない画像表示装置にも適用することができる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように本願発明によれば、封着材のばらつきに応じて適切に通電条件を設定することができ、封着作業を迅速かつ安定して行うことが可能な画像表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係るFED全体を示す斜視図。
【図2】上記FEDの内部構成を示す斜視図。
【図3】図1の線A−Aに沿った断面図。
【図4】上記FEDの蛍光体スクリーンの一部を拡大して示す平面図。
【図5】上記FEDの電極を示す斜視図。
【図6】上記FEDの製造に用いられる前面基板および背面基板をそれぞれ示す平面図。
【図7】上記FEDの背面基板に電極を取り付けた状態を示す斜視図。
【図8】上記FEDの製造に用いる真空処理装置を概略的に示す図。
【図9】封着層が配置された背面基板と前面基板とを対向配置した状態を示す断面図。
【図10】上記FEDの製造工程において、FEDの電極に電源を接続した状態を模式的に示す平面図。
【符号の説明】
10…真空外囲器、 11…前面基板、 12…背面基板、
14…支持部材、 16…蛍光体スクリーン、 18…側壁、
21、21a、21b…封着層、 22…電子放出素子、
30…電極、 50a、50b…導線、 100…真空処理装置
120…電源、 122…コンピュータ
【発明の属する技術分野】
この発明は、対向配置されているとともに周縁部同士が接合された一対の基板を備えた画像表示装置の製造方法および画像表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、陰極線管(以下、CRTと称する)に代わる次世代の軽量、薄型の表示装置として様々な画像表示装置が開発されている。このような画像表示装置には、液晶の配向を利用して光の強弱を制御する液晶ディスプレイ(以下、LCDと称する)、プラズマ放電の紫外線により蛍光体を発光させるプラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)、電界放出型電子放出素子の電子ビームにより蛍光体を発光させるフィールドエミッションディスプレイ(以下、FEDと称する)、表面伝導型電子放出素子の電子ビームにより蛍光体を発光させる表面伝導電子放出ディスプレイ(以下、SEDと称する)などがある。
【0003】
例えばFEDやSEDでは、一般に、所定の隙間を置いて対向配置された前面基板および背面基板を有し、これらの基板は、矩形枠状の側壁を介して周辺部同士を互いに接合することにより真空の外囲器を構成している。前面基板の内面には蛍光体スクリーンが形成され、背面基板の内面には蛍光体を励起して発光させる電子放出源として多数の電子放出素子が設けられている。
【0004】
また、背面基板および前面基板に加わる大気圧荷重を支えるために、これら基板の間には複数の支持部材が配設されている。背面基板側の電位はほぼアース電位であり、蛍光面にはアノード電圧が印加される。そして、蛍光体スクリーンを構成する赤、緑、青の蛍光体に電子放出素子から放出された電子ビームを照射し、蛍光体を発光させることによって画像を表示する。
【0005】
このようなFEDやSEDでは、表示装置の厚さを数mm程度にまで薄くすることができ、現在のテレビやコンピュータのディスプレイとして使用されているCRTと比較して、軽量化、薄型化を達成することができる。
【0006】
例えば、上記のようなFEDにおいて、外囲器を構成する前面基板および背面基板を矩形枠状の側壁を介して接合するために様々な製造方法が検討されている。例えば、真空装置内において、前面基板と背面基板を十分に離した状態で両基板をべーキングしながら真空装置全体を高真空になるまで排気し、所定の温度および真空度に到達したときに前面基板と背面基板を、側壁を介して接合する方法が挙げられる。この方法では、ゲッターの吸着能力を低下させないように、シール材として、比較的低温で封着が可能なインジウムが用いられる。
【0007】
しかしながら、インジウムは低融点金属とはいえ、その溶融温度は約160℃であり、この温度でもゲッターの吸着能力は低下することが確かめられている。また、この温度で封着した画像表示装置を動作させると、そのライフ特性が劣化することが実験で確認された。
【0008】
これらの問題を解決する方法として、基板間にインジウム等の低融点封着材を充填した状態で、封着材に通電しそのジュール熱により封着材自身を発熱、溶解させ、基板同志を接合する方法(以下、通電加熱と称する)が検討されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば、低融点封着材のみを高温にし、ゲッター形成領域は低温のまま保つことができるため、ゲッターの吸着能力低下を防止することができる。また、基板の加熱、冷却に膨大な時間を費やす必要がなく、短時間で基板を接合し外囲器を形成することが可能となる。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−319346号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、基板あるいは側壁に対してインジウムを所定位置に充填する際、温度、超音波のエネルギー、充填ジグの経時変化などにより、充填幅、厚さにばらつきが発生する。また、通電加熱の場合、溶融後の封着材には表面張力によりある程度の凹凸または粗密が発生する。これに加えて、封着時、片方の基板はその封着面を下向きにして配置する必要があり、この場合、溶融した封着材の凹凸が重力によって更に大きくなる。約160℃で加熱封着を行う場合、上記のような封着材のばらつきは許容範囲であり全く問題にならなかった。
【0011】
しかし、通電加熱では、封着剤の充填幅、厚さにばらつきがあると、幅の狭い部分あるいは薄い部分で発熱が大きくなる。また、封着材に凹凸があると、凸部、密の部分に比較して、凹部または粗の部分で発熱が大きくなり、封着材の加熱温度にばらつきが生じる。そのため、一定の通電条件で封着材を通電加熱した場合でも、温度が高くなりすぎて冷却時間が延びたり、逆に温度が低く封着材が完全に溶融する前に基板が加圧されて封着ができなくなるといった問題が生じる。このような問題は、対角寸法が概ね30インチ以上の大型画像表示装置の場合に顕著となる。
【0012】
この発明は、以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、封着材のばらつきに応じて適切に通電条件を設定することができ、封着作業を迅速かつ安定して行うことが可能な画像表示装置の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明の態様に係る画像表示装置の製造方法は、対向配置された前面基板および背面基板を有した外囲器と、上記前面基板および背面基板の周辺部間に設けられ導電性の封着層と、上記外囲器に形成された複数の画素とを備え、上記封着層を通電によって溶融させ、上記前面基板および背面基板を接合して外囲器を形成する画像表示装置の製造方法において、
上記封着層が溶融しない大きさの電流を上記封着層に前通電する前通電工程と、上記封着層に本通電して封着層を加熱し溶融させる本通電工程とを備え、上記本通電工程の通電条件を、上記前通電工程の通電状態に応じて決定することを特徴としている。
【0014】
また、この発明の他の態様の製造方法は、対向配置されているとともに導電性の封着材により周辺部同士が接合された前面基板および背面基板を有した外囲器と、上記外囲器内に形成された複数の画素とを備えた画像表示装置の製造方法において、上記前面基板および背面基板の少なくとも一方の周辺部に沿って、導電性を有した封着材を配置して封着層を形成し、上記前面基板および背面基板を対向配置した状態で、上記封着層が溶融しない大きさの電流を上記封着層に前通電し、上記前通電の通電状態に応じて本通電の通電条件を決定し、上記決定された通電条件に基き上記封着層に本通電して封着層を加熱溶融させ、上記前面基板および背面基板の周辺部同士を接合することを特徴としている。
【0015】
上述のような画像表示装置の製造方法とすると、基板ごとに導電性部材の幅や厚さにばらつきが生じても、そのばらつき情報を前通電工程によって取得し、ばらつきに応じて本通電の通電条件を決定することができ、基板ごとの温度上昇を同じにすることができる。これにより、基板全体を低温に維持しながら、同じ通電工程時間で迅速かつ安定して封着作業を行うことが可能な画像表示装置の製造方法を提供することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照しながら、この発明の実施の形態に係る画像表示装置の製造方法について詳細に説明する。まず、本製造方法により製造される画像表示装置として、FEDの構成について説明する。
【0017】
図1ないし図4に示すように、FEDは、それぞれ矩形状のガラス板からなる前面基板11、および背面基板12を備え、これらの基板は1mmの隙間を置いて対向配置されている。背面基板12は前面基板11よりも大きな寸法に形成され、その周縁部には、後述する画像信号を入力するための引出し線23が設けられている。そして、前面基板11および背面基板12は、矩形枠状の側壁18を介して周縁部同士が接合され、内部が真空状態に維持された扁平な矩形状の真空外囲器10を構成している。真空外囲器10の対角寸法は、例えば、10インチに形成されている。
【0018】
背面基板12と側壁18との間は、フリットガラス等の低融点ガラス19によって封着されている。また、前面基板11と側壁18との間は、導電性を有する低融点封着材としてインジウム(In)を含んだ封着層21によって封着されている。
【0019】
導電性を有した低融点封着材としては、インジウムの代わりに、In、Ga、Pb、Sn及びZnよりなる群から選択される単体金属か、もしくはIn、Ga、Pb、Sn及びZnよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含有する合金を用いることができる。特に、In及びGaよりなる群から選択される少なくとも1種類の元素を含む合金、In金属、Ga金属を使用することが望ましい。InもしくはGaを含む低融点封着材は、SiO2を主成分とするガラス製基板との濡れ性に優れるため、低融点封着材の配置される基板がSiO2を主成分とするガラスで形成されている場合に特に適している。最も好ましい低融点封着材は、In金属、Inを含む合金である。Inを含む合金としては、例えば、InとAgを含む合金、InとSnを含む合金、InとZnを含む合金、InとAuを含む合金などを挙げることができる。
【0020】
真空外囲器10の内部には、前面基板11および背面基板12に加わる大気圧荷重を支えるため、複数の板状の支持部材14が設けられている。これらの支持部材14は、真空外囲器10の一辺と平行な方向にそれぞれ延在しているとともに、上記一辺と直交する方向に沿って所定の間隔を置いて配置されている。なお、支持部材14は板状に限らず、柱状のものを用いてもよい。
【0021】
前面基板11の内面には、画像表示面として機能する蛍光体スクリーン16が形成されている。この蛍光体スクリーン16は、赤、緑、青の蛍光体層R、G、B、およびこれらの蛍光体層間に位置した遮光層20を並べて構成されている。蛍光体層R、G、Bは、真空外囲器10の上記一辺と平行な方向に延在しているとともに、この一辺と直交する方向に沿って所定の間隔を置いて配置されている。なお、蛍光体スクリーン16上には、たとえばアルミニウムからなるメタルバック層17およびゲッター膜15が形成されている。
【0022】
図3に示すように、背面基板12の内面上には、蛍光体スクリーン16の蛍光体層を励起する電子放出源として、それぞれ電子ビームを放出する多数の電子放出素子22が設けられている。これらの電子放出素子22は、画素毎に対応して複数列および複数行に配列されている。詳細に述べると、背面基板12の内面上には、導電性カソード層24が形成され、この導電性カソード層上には多数のキャビティ25を有した二酸化シリコン膜26が形成されている。二酸化シリコン膜26上には、モリブデンやニオブ等からなるゲート電極28が形成されている。そして、背面基板12の内面上において各キャビティ25内にはモリブデンなどからなるコーン状の電子放出素子22が設けられている。
【0023】
また、FEDは、複数、例えば、一対の電極30を備え、これらの電極は、封着層21に電気的に導通した状態で外囲器10に取り付けられている。電極30は、封着層21に通電する際の電極として用いられる。図5に示すように、各電極30は、導電部材として例えば0.2mm厚の銅板を折り曲げ加工して形成されている。すなわち、電極30は、断面がほぼU字形状となるように折曲げられ、前面基板11あるいは背面基板12の周縁部を挟持して取り付け可能なクリップ部32、クリップ部に並んで位置した楔状の胴体部34、胴体部の延出端に位置した接触部36、およびクリップ部および胴体部の背面部により形成された平坦な導通部38を一体に備えている。接触部36は、水平方向の延出長さLが2mm以上に形成されている。
【0024】
図1ないし図3に示すように、電極30は、真空外囲器10の例えば、背面基板12に弾性的に係合した状態で取り付けられている。すなわち、電極30は、クリップ部32により背面基板12の周縁部を弾性的に挟持した状態で真空外囲器10に取り付けられている。そして、各電極30の接触部36は、それぞれ封着層21に接触し、電気的に導通している。また、胴体部34は接触部36から真空外囲器10の外側に延出しているとともに、導通部38は、背面基板12の側面と対向し真空外囲器10の外面に露出している。一対の電極30は、真空外囲器10の対角方向に離間した2つの角部にそれぞれ設けられ、封着層21に対して対称に配置されている。
【0025】
上記のように構成されたFEDにおいて、映像信号は、単純マトリックス方式に形成された電子放出素子22とゲート電極28に入力される。電子放出素子22を基準とした場合、最も輝度の高い状態の時、+100Vのゲート電圧が印加される。また、蛍光体スクリーン16には+10kVが印加される。これにより、電子放出素子22から電子ビームが放出される。そして、電子放出素子から放出される電子ビームの大きさは、ゲート電極28の電圧によって変調され、この電子ビームが蛍光体スクリーン16の蛍光体層を励起して発光させることにより画像を表示する。
【0026】
このように蛍光体スクリーン16には高電圧が印加されるため、前面基板11、背面基板12、側壁18、および支持部材14用の板ガラスには、高歪点ガラスが使用されている。
【0027】
次に、上記構成を有するFEDの製造方法について詳細に説明する。
【0028】
まず、前面基板11となる板ガラスに蛍光体スクリーン16を形成する。これは、前面基板11と同じ大きさの板ガラスを準備し、この板ガラスにプロッターマシンで蛍光体ストライプパターンを形成する。この蛍光体ストライプパターンを形成した板ガラスと前面基板用の板ガラスとを位置決め治具に載せて露光台にセットする。この状態で、露光、現像することにより、前面基板11となるガラス板上に蛍光体スクリーンを形成する。その後、蛍光体スクリーン16に重ねてメタルバック層17を形成する。
【0029】
続いて、背面基板12用の板ガラスに電子放出素子22を形成する。これは、マトリックス状の導電性カソード層24を板ガラス上に形成し、このカソード層上に例えば熱酸化法やCVD法あるいはスパッタリング法により2酸化シリコン膜の絶縁膜を形成する。この後、この絶縁膜上に、例えばスパッタリング法や電子ビーム蒸着法によりモリブデンやニオブなどのゲート電極形成用の金属膜を形成する。次に、この金属膜上に、形成すべきゲート電極に対応した形状のレジストパターンをリソグラフィーにより形成する。このレジストパターンをマスクとして金属膜をウェットエッチング法またはドライエッチング法によりエッチングし、ゲート電極28を形成する。
【0030】
その後、レジストパターン及びゲート電極28をマスクとして絶縁膜をウェットエッチングまたはドライエッチング法によりエッチングして、キャビティ25を形成する。そして、レジストパターンを除去した後、背面基板表面に対して所定角度傾斜した方向から電子ビーム蒸着を行うことにより、ゲート電極28上に例えばアルミニウムやニッケルからなる剥離層を形成する。その後、背面基板表面に対して垂直な方向からカソード形成用の材料として例えばモリブデンを電子ビーム蒸着法により蒸着する。これによって、キャビティ25の内部に電子放出素子22が形成される。次に、剥離層をその上に形成された金属膜とともにリフトオフ法により除去する。
【0031】
続いて、大気中で低融点ガラス19により側壁18および支持部材14を背面基板12の内面上に封着する。その後、図6(a)、6(b)に示すように、側壁18の封着面の全周に渡ってインジウムを所定の幅および厚さに塗布し封着層21aを形成する。同様に、前面基板11の側壁と対向する封着面にインジウムを所定の幅および厚さで矩形枠状に塗布し封着層21bを形成する。なお、側壁18および前面基板11の封着面に対する封着層21a、21bの充填は、上述したように、溶融したインジウムを封着面に塗布する方法、あるいは、固体状態のインジウムを封着面に載置する方法等によって行う。
【0032】
続いて、図7に示すように、側壁18が接合されている背面基板12に一対の電極30を装着する。この際、側壁18上で各電極30の接触部36を封着層21aに接触させることにより、電極を封着層に対して電気的に接続する。電極30は、基板上で+極と−極の一対を必要とし、一対の電極間で並列に通電される封着層21a、21bの各々の通電経路はその長さを等しくすることが望ましい。そこで、一対の電極30は、背面基板12の対角方向に対向する2つの角部に装着され、電極間に位置した封着層21a、21bの長さは、各電極の両側でほぼ等しく設定されている。
【0033】
一対の電極30を装着した後、これら背面基板12、前面基板11を所定間隔離して対向配置し、この状態で、真空処理装置内に投入する。ここでは、例えば図8に示すような真空処理装置100を用いる。真空処理装置100は、並んで配設されたロード室101、ベーキング、電子線洗浄室102、冷却室103、ゲッター膜の蒸着室104、組立室105、冷却室106、およびアンロード室107を備えている。組立室105には、通電用の直流を供給する電源120、および、この電源を制御する制御部としてのコンピュータ122が接続されている。また、真空処理装置100の各室は、真空処理が可能な処理室として構成され、FEDの製造時には全室が真空排気されている。これら各処理室間は図示しないゲートバルブ等により接続されている。
【0034】
所定間隔離して配置された上述の前面基板11および背面基板12は、まず、ロード室101に投入される。そして、ロード室101内の雰囲気を真空雰囲気とした後、ベーキング、電子線洗浄室102へ送られる。
【0035】
ベーキング、電子線洗浄室102では、各種部材を300℃の温度に加熱し、各基板の表面吸着ガスを放出させる。同時にベーキング、電子線洗浄室102に取り付けられた図示しない電子線発生装置から電子線を、前面基板11の蛍光体スクリーン面、および背面基板12の電子放出素子面に照射する。その際、電子線発生装置外部に装着された偏向装置によって電子線を偏向走査することにより、蛍光体スクリーン面および電子放出素子面の全面をそれぞれ電子線洗浄する。
【0036】
電子線洗浄を行った前面基板11および背面基板12は冷却室103に送られ、約100℃の温度まで冷却された後、ゲッター膜の蒸着室104へと送られる。この蒸着室104では、蛍光体層の外側にゲッター膜としてBa膜が蒸着形成される。Ba膜は表面が酸素や炭素などで汚染されることを防止することができ、活性状態を維持することができる。
【0037】
続いて、前面基板11および背面基板12は組立室105に送られる。この組立室105において、図9に示すように、前面基板11および背面基板12は、対向配置された状態で組立室内のホットプレート131、132にそれぞれ保持される。前面基板11は落下しないように、固定治具133により上側のホットプレート131に固定する。
【0038】
次に、前面基板11および背面基板12を約120℃にまで加熱した後、互いに接近する方向へ移動させ、所定の圧力で加圧する。それにより、封着層21a、21bを互いに接触させるとともに、各電極30の接触部36を前面基板11側の封着層21bと背面基板12側の封着層21aとの間に挟持し、各電極30を封着層21a、21bに電気的に接続する。この際、接触部36は2mm以上の水平方向長さに形成されているため、封着層21a、21bに対し安定して接触することができる。なお、電極30の接触部36に予めインジウムを塗布しておくことにより、一層安定して封着材に通電することが可能となる。
【0039】
この状態で、図10に示すように、一対の電極30に電源120を電気的に接続し、側壁18側の封着層21aおよび前面基板11側の封着層21bのそれぞれに通電する。これにより、封着層21a、21bを加熱しインジウムを溶融させる。
【0040】
以下、封着層21a、21bの通電加熱について詳細に説明する。
【0041】
封着工程においては、まず、封着層を溶融させる前に、封着材の温度が上がらない程度の低電流を短時間流して電流、電圧データを取得する。そして、得られたデータに基づいて本通電、すなわち封着層を溶融するための通電条件を設定する。ここで、電流、電圧データを取得するための通電を前通電、封着層を溶融させるための通電を本通電と称する。前通電の条件を封着層の温度が上がらない程度としたのは、封着層の温度に応じて封着層の電気抵抗自体が変化するため、温度が上がりすぎると本通電の条件を算出することが難しくなるためである。封着層の温度が約5℃以内であれば、取得したデータの誤差は小さくなる。従って、前通電の電流は、封着層の材質、厚さ、幅等によって異なるが、例えば、5〜20Aに設定することが望ましい。また、前通電は、定電流、定電圧のどちらでもよいが、電気抵抗率が材料固有の値であるため、得られた電流、電圧値から電気抵抗を算出すると比較が容易となる。
【0042】
本実施の形態において、FEDにとって不所望な水分子を脱離でき、ゲッター膜の吸着能力を低下させない封着温度として、100〜130℃の範囲が望ましく、より好ましくは120℃が設定される。また、低融点封着材としてインジウムを用いた場合、通電を開始してから冷却が終了するまでの温度は10分である。ここで冷却が終了する温度とは、インジウムの温度が130℃を下回ったときを指している。封着材の温度が130℃未満であれば、前面基板および背面基板同士は強固に接着され、搬送しても基板同士がずれることはない。上記の温度は材料の選択によって変わりうる設計事項であり、上記値に限定されるものではない。
【0043】
限定された封着時間内で安定した封着を行うためには、充填インジウムのばらつきに関わらず封着層の温度上昇が同じになる必要がある。インジウム単体の発熱は、
(電流)2×(電気抵抗)
で表され、温度上昇は
(発熱)/{(比熱)×(質量)}
で表される。よって、変化量は
{(電流)/(断面積)}2
となるので、インジウムの断面積に比例するように電流値を定めることになる。
【0044】
しかし、これはあくまでもインジウム単体の場合であり、温度上昇が比較的緩やかな場合やインジウム面が開けた環境にある場合には、基板への熱伝導や外部への熱放射の影響があり、上記関係からのずれが大きくなる。この場合の関係を解析的に表すことは一般に困難であるが、発明者等の実験などにより確認したところ、通常用いられる通電範囲では近似的に封着層の(断面積)の2次式に合うことがわかった。よって、前通電で得られた電気抵抗値Rを封着層の断面積Sに換算し、
I= c2S2+c1S+c0 ……(1)
により電流値Iを定めると、インジウムの充填ばらつきにかかわらずほぼ同程度の通電封着時間にすることができた。あるいは、電気抵抗値Rから直接
I=d2/R2+d1/R+d0 ……(2)
によって電流値Iを定めてもよい。
【0045】
なお、式(1)、(2)において、c1、c2、c0、d1、d2、d0は定数であり、基板の大きさ、材質、封着材の材質、寸法等に応じて決定する。
【0046】
本実施の形態では、まず、前通電において、組立室105に接続されている電源120から一対の電極30を介して10Aの定電流を3秒間、封着層21a、21bに通電する。この通電により得られた電流値、電圧値は、電源120からコンピュータ122に入力され、コンピュータは入力されたデータに基づいて抵抗値を算出する。前通電の最初の1秒間は電源立ち上がりのために抵抗値が安定しないため、残り2秒のデータにより抵抗値の平均値を算出する。120℃におけるインジウムの電気抵抗率は12.9×10−8Ωmであることから、この電気低効率と上記算出した抵抗値とに基づいて封着層の平均断面積Sを算出する。そして、得られた平均断面積Sと前述した式(1)から、
I= −26.5S2+106.6S−6.0
によって本通電の電流値Iを決定する。なお、前通電により得られた抵抗値および前述した式(2)に基づいて本通電の電流値Iを決定してもよい。
【0047】
そして、得られた電流値Iをコンピュータ122から電源120に入力し、電源120から封着層21a、21bに40秒間、本通電する。これにより、封着層21a、21bが溶融し、前面基板11および背面基板12同士が接合される。すなわち、上記のように通電加熱により封着層21a、21bを融合させて封着層21を形成し、この封着層によって前面基板11の周縁部と側壁18とを封着する。
【0048】
上記工程により形成された真空外囲器10は、冷却室106で常温まで冷却され、アンロード室107から取り出される。これにより、FEDが完成する。なお、FEDが完成した後、必要であれば電極30を切除してもよい。
【0049】
以上のように構成されたFEDの製造方法によれば、真空雰囲気中で前面基板および背面基板の封着、接合を行うことから、ベーキングと電子線洗浄の併用によって表面吸着ガスを十分に放出させることができ、吸着能力が優れたゲッター膜を得ることができる。また、封着層を通電加熱することによって封着、接合することにより、前面基板および背面基板全体を加熱する必要がなく、ゲッター膜の劣化、封着工程中に基板が割れるなどの不具合をなくすことができる。同時に、短時間で封着を完了することができ、量産性に優れた製造方法とすることが可能となる。
【0050】
更に、封着材の通電加熱時、前通電で封着層の電気抵抗値を測定し、あらかじめ定められた換算式で本電流の電流値を算出して本通電することにより、基板ごとに充填封着材のばらつきがあった場合でも、すなわち、封着層の幅、厚さにばらつきがあった場合でも、封着材の温度上昇を同一にすることができる。従って、FEDの製造工程において、いずれのFEDでも同じ工程時間で封着材を溶融し基板を安定して封着することが可能となる。これにより、量産性に優れ、同時に、迅速かつ安定した封着が可能なFEDの製造方法を得ることができ、かつ良好な画像表示が可能なFEDを安価に得ることが可能となる。
【0051】
次に、この発明の他の実施の形態に係る画像表示装置の製造方法について説明する。他の実施の形態では、本通電の電流値を大きくして封着工程時間をさらに短縮している。FEDの構成および製造方法の主要部は前述した実施の形態と同一であり、同一部分の詳細な説明は省略する。
【0052】
本実施の形態では、電流値が大きいため、インジウムの温度上昇が、インジウム単体の場合に近くなる。よって電流値Iを算出する前述の式(1)において、定数を近似的にc0=0とすることができる。封着工程においては、まず、前通電により封着層の抵抗値の平均値を算出する。120℃におけるインジウムの電気抵抗率は12.9×10−8Ωmであることから、この電気低効率と上記算出した抵抗値とに基づいて封着層の平均断面積Sを算出する。そして、得られた平均断面積Sと前述の簡略化した式(1)から、
I= 42.0S+49.0
によって本通電の電流値を決定する。得られた電流値Iをコンピュータ122から電源120に入力し、電源120から封着層21a、21bに25秒間、本通電する。これにより、封着層21a、21bが溶融し、前面基板11および背面基板12同士が接合される。
【0053】
上記他の実施の形態によれば、封着層の温度上昇を前述した実施の形態と同じにしつつ、通電封着に要する工程時間を短縮することができる。
【0054】
なお、上述したいずれの実施の形態においても、前通電により得られた抵抗値および前述した式(2)に基づいて本通電の電流値Iを決定してもよい。また、上記実施の形態では定電流通電について記述したが、定電圧通電であってもなんら問題はない。さらに、上記実施の形態では、前通電の直後に本通電を行う構成としたが、これらの通電工程を時間間隔をおいて実行してもよい。
【0055】
その他、この発明は上述した実施の形態に限定されることなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。例えば、上述した実施の形態では、基板の対向する対角部分に一対の電極を取付けた状態で封着層に通電する構成としたが、複数の電極は、電極間に位置する封着層の通電経路が互いに等しい長さとなるように配置されていれば、あるいは、封着層に対して対称な位置に配設されていればよく、外囲器の角部に限らず、他の位置に設けてもよい。
【0056】
また、上述した実施の形態では、背面基板側および前面基板側の両方にそれぞれインジウムからなる封着層を設ける構成としたが、いずれか一方のみに封着層を設けた状態で、前面基板と背面基板とを封着する構成としても良い。外囲器の側壁は、予め背面基板あるいは前面基板と共に一体的に成形された構成としてもよい。真空外囲器の外形状や支持部材の構成は上記実施の形態に限られることなく、必要に応じて変形可能である。マトリックス型の黒色光吸収層と蛍光体層を形成し、断面が十字型の柱状支持部材を黒色光吸収層に対して位置決めして封着する構成としてもよい。
【0057】
さらに、上述した実施の形態では、組立室で固定された前面基板と背面基板を加圧してから通電したが、それぞれの基板の封着層に別々に通電した後加圧するプロセスであってもよい。この場合には、例えば前面基板と背面基板のそれぞれに電極を取り付けて通電を行い、本通電の電流値算出もそれぞれの基板で行うようにする。よって、電源および制御コンピュータも2台ずつ必要になる。
【0058】
また、電子放出素子は、pn型の冷陰極素子あるいは表面伝導型の電子放出素子等を用いてもよい。上記実施の形態では、真空雰囲気中で基板を接合する工程について述べたが、その他の雰囲気環境において本発明を適用することも可能である。更に、この発明は、FEDに限定されることなく、SEDやPDP等の他の画像表示装置、あるいは、外囲器内部が高真空とならない画像表示装置にも適用することができる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように本願発明によれば、封着材のばらつきに応じて適切に通電条件を設定することができ、封着作業を迅速かつ安定して行うことが可能な画像表示装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態に係るFED全体を示す斜視図。
【図2】上記FEDの内部構成を示す斜視図。
【図3】図1の線A−Aに沿った断面図。
【図4】上記FEDの蛍光体スクリーンの一部を拡大して示す平面図。
【図5】上記FEDの電極を示す斜視図。
【図6】上記FEDの製造に用いられる前面基板および背面基板をそれぞれ示す平面図。
【図7】上記FEDの背面基板に電極を取り付けた状態を示す斜視図。
【図8】上記FEDの製造に用いる真空処理装置を概略的に示す図。
【図9】封着層が配置された背面基板と前面基板とを対向配置した状態を示す断面図。
【図10】上記FEDの製造工程において、FEDの電極に電源を接続した状態を模式的に示す平面図。
【符号の説明】
10…真空外囲器、 11…前面基板、 12…背面基板、
14…支持部材、 16…蛍光体スクリーン、 18…側壁、
21、21a、21b…封着層、 22…電子放出素子、
30…電極、 50a、50b…導線、 100…真空処理装置
120…電源、 122…コンピュータ
Claims (9)
- 対向配置された前面基板および背面基板を有した外囲器と、上記前面基板および背面基板の周辺部間に設けられた導電性の封着層と、上記外囲器に形成された複数の画素とを備え、上記封着層を通電によって溶融させ、上記前面基板および背面基板を接合して外囲器を形成する画像表示装置の製造方法において、
上記封着層が溶融しない大きさの電流を上記封着層に前通電する前通電工程と、上記封着層に本通電して封着層を加熱し溶融させる本通電工程とを備え、上記本通電工程の通電条件を、上記前通電工程の通電状態に応じて決定することを特徴とする画像表示装置の製造方法。 - 対向配置されているとともに導電性の封着材により周辺部同士が接合された前面基板および背面基板を有した外囲器と、上記外囲器内に形成された複数の画素とを備えた画像表示装置の製造方法において、
上記前面基板および背面基板の少なくとも一方の周辺部に沿って、導電性を有した封着材を配置して封着層を形成し、
上記前面基板および背面基板を対向配置した状態で、上記封着層が溶融しない大きさの電流を上記封着層に前通電し、
上記前通電の通電状態に応じて本通電の通電条件を決定し、
上記決定された通電条件に基き上記封着層に本通電して封着層を加熱溶融させ、上記前面基板および背面基板の周辺部同士を接合することを特徴とする画像表示装置の製造方法。 - 上記前通電において、通電電流値および通電電圧値を取得し、得られた通電電流値および通電電圧値に基づいて上記封着層の断面積を算出し、算出した断面積に基づいて、上記本通電の通電条件を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置の製造方法。
- 上記断面積をS、およびc2、c1、c0を定数とするとき、
c2S2+c1S+c0
によって上記本通電の通電条件を決定することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置の製造方法。 - 上記前通電において、通電電流値および通電電圧値を取得し、得られた通電電流値および通電電圧値に基づいて上記封着層の電気抵抗値を算出し、算出した電気抵抗値に基づいて、上記本通電の通電条件を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示装置の製造方法。
- 上記電気抵抗値をR、およびd2、d1、d0を定数とするとき、
d2/R2+d1/R+d0
により上記本通電の通電条件を決定することを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置の製造方法。 - 上記封着材としてInあるいはGaを含む金属を用いることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
- 真空雰囲気中で上記封着層に前通電および本通電することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
- 上記前面基板および背面基板の少なくとも一方にゲッターを形成した後、上記前通電および本通電を行うことを特徴とする請求項8に記載の画像表示装置の製造方法。
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