JP2004269823A - 着色微粒子分散体とそれを含有する水性インク - Google Patents
着色微粒子分散体とそれを含有する水性インク Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004269823A JP2004269823A JP2003066289A JP2003066289A JP2004269823A JP 2004269823 A JP2004269823 A JP 2004269823A JP 2003066289 A JP2003066289 A JP 2003066289A JP 2003066289 A JP2003066289 A JP 2003066289A JP 2004269823 A JP2004269823 A JP 2004269823A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- colored fine
- fine particle
- polymer
- particle dispersion
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Ink Jet (AREA)
- Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
- Pigments, Carbon Blacks, Or Wood Stains (AREA)
- Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)
Abstract
【課題】本発明の目的は、製造安定性、分散安定性に優れた耐溶剤性の向上したインクジェットインク用として好適な着色微粒子分散体を得ることにある。
【解決手段】色材と樹脂を混合し水に分散させてなる着色微粒子分散体であって、着色微粒子が架橋構造を有し、該架橋構造が、ブロックイソシアネートの反応により形成されていることを特徴とする着色微粒子分散体。
【選択図】 なし
【解決手段】色材と樹脂を混合し水に分散させてなる着色微粒子分散体であって、着色微粒子が架橋構造を有し、該架橋構造が、ブロックイソシアネートの反応により形成されていることを特徴とする着色微粒子分散体。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は色材および樹脂からなる着色微粒子分散体に関し、特に水性インク特にインクジェット用インクに適した着色微粒子分散体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プリンタ、印刷機、マーカー、筆記具等に用いられる記録材料、インキング材料、特にインクジェット用インクとしては水溶性染料の水溶液を主体としたもの、顔料の微分散体を主体としたものが広く用いられている。
【0003】
水溶性染料を用いたインクは、顔料インクに比べて、鮮やかな色再現性を有するものの、染料の水溶液であるが故に記録紙上でにじみやすく、耐水性にも劣り、また耐光堅牢度も顔料インクに比較して、非常に低いという問題がある。一方で、顔料インクは、耐水性、耐光堅牢度等にはこれまでが多くなされているが、これらの欠点を充分改善できているとはいいがたい。
【0004】
これに対し、油溶性染料ないし疎水性染料で水分散性樹脂を着色して水系の分散体として用いる水性インク、即ち、着色されたポリマー微粒子を記録材として用いる水性インクが、前記水溶性染料を用いたインクにかわるものとして、期待されており、染料、ポリマーの組成や、着色微粒子の微粒化や構成などこれまで、種々の面から検討がおこなわれている。
【0005】
例えば特開2001−98194には、親水性重合連鎖部分と疎水性重合連鎖部分からなる共重合体樹脂をもちいるものが、特開2000−191968には、ビニルポリマー重合性不飽和酸モノマー、水酸基含有モノマー、スチレンマクロマー等を用いるものが、特開平9−157508号には、シクロヘキセンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂を用いるものが、また米国特許第6,384,108号明細書においては、自己乳化型ポリマーを、溶媒に染料とともに溶解して、水相で乳化、形成した微粒子が等それぞれ開示されている。
【0006】
しかしながらインクジェットにおいては各種の水性有機溶剤を混合して用いるため、これらの方法により形成した着色微粒子を用いる際には、耐溶剤性が大きな問題となる。
【0007】
耐溶剤性の問題を樹脂の架橋により解決しようとしたものとして、例えば、表面を架橋したコアシェル粒子を用いる技術が開示されている(特許文献1)。
【0008】
また、自己乳化性、かつウレタン結合により架橋されたポリマー粒子を用いる技術も開示されており(特許文献2)、いずれも着色微粒子の分散の後に架橋を導入し、分子量を増大させて耐溶剤性を向上させようとするものである。
【0009】
架橋を効果的に導入すれば、樹脂の分子量が上がり耐溶剤性は高まるが、分散液粒子表面を架橋して分子量を増大させるときに粒子間の架橋が起きて粒子の凝集が起きやすかったり、また、架橋剤を樹脂中に混合することで、微粒子分散液製造の過程で、活性の高い架橋剤の一部が分解を起こしたり、乳化分散中にゲル化を起こしたりする問題が発生する。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−121417号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平8−218015号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、製造安定性、分散安定性に優れた耐溶剤性の向上したインクジェットインク用として好適な着色微粒子分散体を得ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0014】
1.色材と樹脂を混合し水に分散させてなる着色微粒子分散体であって、着色微粒子が架橋構造を有し、該架橋構造が、ブロックイソシアネートの反応により形成されていることを特徴とする着色微粒子分散体。
【0015】
2.ブロックイソシアネートが100℃以下で開裂することを特徴とする前記1に記載の着色微粒子分散体。
【0016】
3.ブロックイソシアネートが重亜硫酸塩でブロックされていることを特徴とする前記1または2に記載の着色微粒子分散体。
【0017】
4.ブロックイソシアネートを有するポリマーを用いて微粒子内部に架橋構造を有する着色微粒子を製造する着色微粒子の製造方法において、ブロックイソシアネートの開裂温度以下で、ポリマーと色材を非水性有機溶剤中に溶解して水中に乳化分散し、架橋剤を添加した後、乳化分散液をブロックイソシアネートの開裂温度以上に加熱することで架橋反応を行うことを特徴とする着色微粒子の製造方法。
【0018】
5.架橋された樹脂が前記一般式であらわされる基を有していることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
【0019】
6.重合可能な乳化剤が用いられていることを特徴とする前記1〜3および5のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
【0020】
7.体積換算平均粒径が10〜100nmであることを特徴とする前記1〜3、5および6のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
【0021】
8.体積平均粒径の変動係数が80%以下であることを特徴とする前記1〜3および5〜7のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
【0022】
9.前記1〜3および5〜8のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体を含むことを特徴とする水性インク。
【0023】
10.インクジェット用インクであることを特徴とする前記9に記載の水性インク。
【0024】
11.デジタル信号に基づきインクジェットヘッドより前記10に記載の水性インクを液滴として吐出させインク受容体に付着させることを特徴とする画像形成方法。
【0025】
イソシアネート架橋を有するポリマー微粒子の作製法として、ウレタンプレポリマーを用いることは知られている。例えば、特開平8−218015号には、乳化性が付与されたポリマーにウレタン結合による架橋が導入され、架橋はイソシアネートおよびポリアミンを用いて構成されている。
【0026】
しかしながら、高反応性のイソシアネートをそのままの状態で乳化し、後でアミンで架橋させる手法は、乳化時に水との反応でイソシアネートの一部が分解したり、ゲル化を起こしやすいなどの問題がある。
【0027】
本発明は、水の沸点以下で開裂するブロックイソシアネートを用いて、乳化分散中のゲル化等を防止しながら架橋を効率的に行う手法を提案するものである。
【0028】
油溶性染料ないし疎水性染料で着色した樹脂(ポリマー)の水系分散体(着色微粒子分散体)を作製するには、樹脂(ポリマー)と染料を溶剤に溶解して乳化、溶剤を除去し、作製する方法がよく知られている。分子量が大きく耐溶剤性の高い樹脂を用いようとすると、樹脂の溶剤に対する溶解性不足や、色材との相溶性の低下から、得られる着色微粒子は、分散が不安定であるという問題がある。
【0029】
また、樹脂の原料モノマー中に染料を溶解してそのまま重合する方法もあるが、染料による重合禁止作用により、重合が必ずしもうまくゆかない。
【0030】
そのため、染料および溶剤に対する相溶性の高い樹脂(ポリマー)を用いて、溶解後に乳化して着色微粒子分散体を形成し、乳化後に樹脂架橋を導入する方法を検討した。
【0031】
樹脂(ポリマー)の油溶性染料との相溶性が損なわれると、染料と樹脂とが相分離を起こし、粒子全体の分散安定性を低下させる原因となる。即ち、ポリマーに予め架橋構造を導入し分子量を増加させた耐溶剤性の高い樹脂を用いると、染料との相溶性を損なう原因となり、乳化後に染料が相分離してしまう。
【0032】
またインクジェットインクは微粒子であることが要求されるため、乳化粒径を(例えば、粒径100nm以下)小さくするためにポリマーの分子量を余り大きくすることはできない。分子量の増加によって、ポリマー溶液の粘度が増加すると、分散体の微粒化も阻害される。更に余りに分子量が大きい場合には、溶剤に対する溶解性も低下してしまう。
【0033】
従って、ポリマーに架橋構造を導入するには、染料および溶剤に対する相溶性の高い樹脂(ポリマー)を用いて色材との混合、溶解、分散等を先行して行い、乳化時、或いは乳化後に架橋する方法が好ましい。
【0034】
本発明において、乳化散後に架橋構造を形成する反応は、ポリマー分子内に、架橋構造を構成する結合を形成しうる基を有するモノマーを用いて、これを他のモノマーとの共重合あるいは縮合(後からペンダント基として導入してもよい)により導入した樹脂(ポリマー)を用い、これを架橋性化合物と接触させ、架橋結合を形成させる。
【0035】
前記、特開平8−218015号には、ウレタン結合により架橋されたポリマーの着色微粒子分散体が記載されており、架橋はイソシアネートおよびポリアミンを用いて構成されている。
【0036】
例えば、架橋反応を形成する官能基として、ポリマー中にイソシアネート基を導入しておき、(イソシアネート基を分子内に有する、例えばカレンズMOI(昭和電工製)等のモノマーをアクリル酸エステル等他の共重合成分と共重合させポリマー中にイソシアネート基を導入することが出来る。このようにして形成されたイソシアネート基を有するポリマーを、染料と共に例えば酢酸エチル等の溶剤に溶解し、水性媒体中に分散することで水性の分散体を形成し、分散体形成後に、例えば、アミン類、好ましくは1級アミンで処理することで、ポリマー中のイソシアネート基がアミンと反応してウレイド結合を形成し、樹脂中において架橋を形成する。
【0037】
アミン類としては、イソシアネート基との反応点を二つ以上有するポリアミン、ジアミン類(例えば、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等)、更にヒドロキシル基含有アミン類、例えば3−アミノプロパノール、またヒドロキシエチルアミノプロピルアミン等が好ましい架橋剤として用いられる。
【0038】
或いは逆にポリマー中にはイソシアネート基と反応するポリマー成分例えばアミノ基等を有する成分を含有させておき、乳化分散後、多官能イソシアネート架橋剤を導入して、架橋する方法がある。
【0039】
しかしながら、イソシアネートは高活性な官能性基であり、樹脂中の水分等により、変質する可能性があり、事実、イソシアネート基を有する樹脂をそのまま用いて色材と共に乳化し、後でアミンで架橋させる手法においては、乳化時に水との反応でイソシアネートの一部が分解し、分散体が凝集を起こしたり、またゲル化を起こすなどの問題があり、注意が必要であった。
【0040】
本発明においては、ブロックイソシアネートを用いて、乳化分散中の凝集、ゲル化などを防止しながら架橋を効率的に行う。
【0041】
ブロックイソシアネートを用いることで、分散時に高活性なイソシアネート基がないため、ブロック基の開裂温度以下の温度で、溶解、乳化等を実施することで、イソシアネートの一部が分解したりすることがなく、乳化状態には悪影響を与えないので、着色微粒子の乳化(分散)が安定に実施出来る。
【0042】
ブロックイソシアネートとしては、水系分散体において、分散状態を維持したままで適用出来るものであればよいので、ブロック基が100℃以下の温度で開裂するもならばいかなるものでもよい。
【0043】
ブロックイソシアネートは、樹脂中或いは架橋剤中のイソシアネート基をブロック剤と反応させて、完全にブロックすることによって得られる。ブロック剤としては、例えばフェノール、クレゾール、p−エチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のフェノール系、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、ベンジルアルコール等のアルコール系、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系、アセトアニリド、アセトアミド等の酸アミド系、その他イミド系、アミン系、イミダゾール系、尿素系、カルバミン酸系、イミン系、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系、メルカプタン系、重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系、ラクタム系等がある。即ち本発明でいうブロックイソシアネートは、一般的にブロックイソシアネート、マスクドイソシアネート、反応性ウレタンと呼ばれる化合物又はこれに類するものを含む。しかしながら、本発明においては、100℃以下の温度にて、開裂し易いものが好ましく、オキシム系、亜硫酸塩系が好ましく、特に亜硫酸塩系が好ましい。
【0044】
例えば、架橋反応を形成する官能基として、ポリマー中にイソシアネート基を導入するためには、イソシアネート基を分子内に有する、例えばカレンズMOI(昭和電工製)等のモノマーをアクリル酸エステル等他の重合性分と共重合させポリマー中にイソシアネート基を導入する。
【0045】
或いは樹脂材料中のアミノ基、ヒドロキシル基あるいはエポキシ基等の官能基を利用して、これと反応する基を有するイソシアネート化合物を反応させて調製する。例えばジイソシアネート化合物をもちいて、一方のイソシアネート基を前記樹脂材料中の官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基等)と反応させて調製出来る。
【0046】
このようにイソシアネート基を有する成分は全体の重合或いは縮合単位でみたときに、30質量%以下含有されていればよく、実質的には15質量%以下で充分である。
【0047】
このようにして形成されるイソシアネート基を有するポリマーを、染料と共に例えば酢酸エチル等の溶剤に溶解し、水性媒体中において、乳化するまでに、好ましくは樹脂自身を溶剤に溶解した後、樹脂溶液に前記ブロック剤を混合し反応させる。こうして形成したブロックイソシアネートを有する樹脂(ポリマー)を用いて、これを色材と共に溶剤に混合溶解して、乳化、色材を含有する着色微粒子分散体を形成する。着色微粒子分散体形成後に、例えば、前記1級アミン類、例えば、3−アミノプロパノール等を添加して、一定温度以上の、ブロックイソシアネートが開裂する温度においてアミンと反応させることで、ポリマー中にウレイド結合による架橋を形成させる。
【0048】
【化1】
【0049】
ここで、R′はイソシアネート基が結合するポリマーの残基を表し、R″は同じくアミン残基を表す(以下同様である)。
【0050】
また、前記イソシアネート基と反応させる3−アミノプロパノール等の架橋剤となる化合物は架橋剤の種類、又、ブロックイソシアネートを有する樹脂の種類により異なるが、前記樹脂全体の量に対して、0.01%〜10%の範囲であり、好ましくは0.05〜5%の範囲である。
【0051】
従って、本発明において、好ましい態様は、イソシアネートを有するポリマーをブロック基と反応させた前記のような、ブロックイソシアネートを有するポリマーを用い、ブロックイソシアネートの開裂温度以下で、ポリマーと色材を非水性有機溶剤中に溶解して水中に乳化分散し、架橋剤を添加した後、乳化分散液をブロックイソシアネートの開裂温度以上に加熱することで架橋反応を行うことである。
【0052】
これにより微粒子内部に有効な架橋構造を有する着色微粒子分散体が製造できる。
【0053】
また、逆にポリマーが、例えばアミノ基やヒドロキシル基等、イソシアネート基と反応する基を側鎖に有し、複数のイソシアネート基を有する多官能性イソシアネート化合物を架橋剤として反応させる際にも、架橋剤としてブロックイソシアネートをもちいるのがよい。後からこれら架橋剤を添加する場合にも、乳化分散された水性の分散体に架橋剤を添加することになるので、ブロックイソシアネートを、この開裂温度以下の温度で添加し、均一に混合後、開裂温度以上の温度に分散体の温度を上げて架橋反応を起こさせることで、凝集等が少なく、ゲル化を起こしにくい着色微粒子分散体の製造方法が得られる。
【0054】
これら架橋剤となる、多官能のイソシアネート類としては、例えば、日本ポリウレタン社製:コロネートシリーズ、住友バイエル社製:デスモジュールシリーズ等の架橋剤が挙げられる。
【0055】
このようなアミノ基やヒドロキシル基等、イソシアネート基と反応する基を有する成分についても重合或いは縮合単位でみたとき30質量%以下でよく、好ましくは、20質量%以下である。
【0056】
本発明に係わるブロックイソシアネートは、一定温度以上で解離して、前記アミノ基、或いはヒドロキシル基と反応するものであり、化合物によりブロック基の解離温度は異なってくるが、通常60℃〜180℃の範囲でブロックイソシアネート基よりイソシアネート基が再生する。水の沸点以上では、分散状態を維持したまま架橋を行うことは困難であるため、前記ブロックイソシアネート基を有するもののうち、100℃以下の温度で開裂するものが本発明においては好ましい。水性分散体が凝集等を引き起こさずに加温出来る温度範囲、即ち、50℃〜95℃の範囲において、1分から5時間の範囲の加温にてブロック基がはずれるものが好ましい。前記オキシム或いは亜硫酸塩ブロック基が好ましい。
【0057】
ブロックイソシアネートの開裂温度は、pHによっても影響を受け、高pHになれば、開裂温度は低下し、例えばpHが10を超える領域では、50℃程度或いはこれ以下で開裂反応が起こる可能性があるが、乳化の温度では開裂が起こらず、分散体を形成した後に、加温で架橋が形成されるように乳化pH、温度を調整することが好ましい。乳化のpHが高いと、分散体自身の変質も考えられるので、例えばおおよそpH5〜9の範囲とし、50℃以下の温度で乳化を行い、後に50℃〜95℃、好ましくは60℃〜95℃の範囲に加温して架橋させるのが好ましい。
【0058】
本発明において、着色微粒子を構成する樹脂(ポリマー)について更に説明する。本発明に係わる樹脂(ポリマー)については各種用いることが可能であるが、該樹脂(ポリマー)のTgは、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であるものを用いる方が好ましく、本発明において使用可能な樹脂(ポリマー)は、前記のブロックイソシアネート基(イソシアネート基)或いはエポキシ基の様な官能基、また水酸基やカルボキシル基等を有するポリマーであり、それぞれの構成成分となるモノマーが入手可能であることから、重合性ビニルモノマーとの共重合から得られる共重合ポリマーが好ましい。これらの基を有するポリマーは、常法に従いラジカル重合法によって容易に合成することができる。
【0059】
前記の基をそれぞれ有するビニルモノマーと共に、共重合体を形成する好ましい共重合ビニルモノマーの具体例としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、2−フェノキシエチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸〔2−アセトアセトキシエチル〕、トリエチレングリコールメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸フェニル、スチレン、α−メチルスチレン、マレイン酸、アクリロニトリル等のビニルモノマーが挙げられる。
【0060】
架橋結合を形成するためのイソシアネート基を有するモノマー成分(例えば前記カレンズMOI;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製))は、0.1〜30質量%、好ましくは0.3〜15質量%の範囲で含有されることで、前記イソシアネート基を有する樹脂が形成される。少ない場合架橋結合の形成が少ないために、本発明の効果がなく、また、多すぎると、樹脂の染料との相互作用や溶剤に対する親和性が大きく変化してしまう。
【0061】
本発明に係わる樹脂(ポリマー)としては、前記架橋に寄与する以外にも、また、ヒドロキシル基、カルボキシル基を有するモノマーを、また、スルホン酸基、燐酸基、4級アンモニウム基等の親水性基を有するモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のモノマーを20質量%以下の比率で用いてもよい。これらにより乳化後の分散体の対溶剤安定性が向上する。
【0062】
これら重合性ビニルモノマーを公知の手法を用い、前記イソシアネート基を有するビニルモノマーとラジカル共重合させることによって、本発明に係わる、未架橋のポリマーが得られる。これら前記イソシアネート基を有する未架橋の樹脂(ポリマー)を更に前記ブロック基と反応させることでイソシアネート基がブロックイソシアネートとなる。
【0063】
又、イソシアネート架橋剤、好ましくはブロックイソシアネート架橋剤と反応させ、樹脂架橋を導入する場合には、イソシアネート基をもたない成分、即ち、前記のビニルモノマーおよび例えば、アミノ基、ヒドロキシル基等の官能基を有するモノマー成分を共重合させた樹脂を用いることができる。
【0064】
ヒドロキシル基を有する成分を導入するには、ヒドロキル基を有するモノマー成分としては、例えばヒドロキシルエチルメタアクリレートがありこれらのモノマーを予め共重合(30質量%以内の比率で)させて形成する。
【0065】
アミノ基を有する成分を導入するには、例えば、エポキシ基を含有するモノマー(例えば、グリシジルアクリレート等)を構成成分とする重合体(0.1〜30質量%、好ましくは0.3〜15質量%の範囲でエポキシ基を含有するモノマーが含有されている)をもちいることで、例えば、3−アミノプロパノール等の1級アミン化合物とこれを反応させ、活性な水素をもつアミノ基を有する樹脂を形成することが出来る。
【0066】
これらのヒドロキシル基あるいはアミノ基を有する樹脂は、色材と混合し、乳化した後、イソシアネート、好ましくはブロックイソシアネート基を有する架橋剤と混合することで架橋構造を導入出来る。
【0067】
また、こうして製造したヒドロキシル基あるいはアミノ基等を有する未架橋の樹脂(ポリマー)に、更に、イソシアネート基を有する化合物を反応させ、前記ヒドロキシル基或いはアミノ基と反応させることでペンダントしてイソシアネート基を樹脂中に導入することが出来る。例えばイソシアネート基を有する成分として、ポリイソシアネート化合物を反応させてイソシアネート基を導入することができる。
【0068】
本発明に係わる未架橋の樹脂(ポリマー)には、立体障害性を有する基を有する成分を導入することがより好ましい。立体障害性を有する基としては、粒子の安定性から親水性、かつ長鎖のポリエチレンオキサイド或いはポリプロピレンオキサイド等の基が好ましく、例えば、下記一般式(1)で表される構造を同時に含有している成分を有する樹脂が好ましい。
【0069】
一般式(1)
−(EO)m−(PO)n−(TO)p−R
ここにおいて、EOはエチレンオキサイド基、POはプロピレンオキサイド基、TOはテトラメチレンオキサイド基を表し、それぞれランダム或いはブロック共重合している。EO、POまたはTOで表されるこれらのエチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、更にテトラメチレンオキサイド基は更に置換されていてもよい。m、n、pはそれぞれ0〜500までの整数であり、2≦m+n+p≦500、Rは水素原子、又は置換基を表し、好ましい置換基としてはヒドロキシル基またはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基等の置換基が挙げられる。アルキル基としては、メチル、エチル、ブチル等炭素数1〜22までの直鎖、或いは分岐のアルキル基、またやはり炭素数1〜22までのシクロプロピル基、シクロペンチル基等の脂環式基であってもよい。これらはさらに他の置換基で置換されていてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の基であり、さらに置換基で置換されていてもよい。また、ヘテロ環基としては、アジリジン、ピロリジン、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリダジン等のヘテロ環基があげられ、これらに限定されないが、これらのヘテロ環基はさらに置換基を有していてもよい。
【0070】
一般式(1)で表される、親水性かつ立体障害性を有するポリエチレンオキサイド或いはポリプロピレンオキサイド等の基を有する樹脂は、これを別に調製して、架橋構造を形成するために用いられる前記イソシアネート基或いはブロックイソシアネート基を有する樹脂と混合して用いてもよいが、好ましいのは、親水性かつ立体障害性を有するポリエチレンオキサイド或いはポリプロピレンオキサイド等の基を有する樹脂が、同時に架橋構造を形成するための前記イソシアネート基或いはブロックイソシアネート基を有する樹脂であって、樹脂ポリマー中にこれらの基を同時に有する均一な構造を有する樹脂(ポリマー)であれば好ましい。
【0071】
ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基等の基は、親水性の基であるが、前記調製された着色微粒子の表面を立体的に保護すると考えられ、粒子間の架橋を抑え、凝集を抑え、それにより微粒子で安定な分散体を得ることができる。あまり疎水性の高い基では、粒子表面を覆う効果が小さくなるためと考えられるが、本発明の効果が小さくなる。特に分散後に、ブロックイソシアネートにより架橋する場合にも、ブロック基を開裂させるために加温等が必要であり、微粒子分散体の安定性を高める効果がある。
【0072】
前記親水性のポリエチレンオキサイド鎖やポリプロピレンオキサイド鎖をポリマー中に導入するには、前記一般式(1)で表される基を含有するビニルモノマーを用いて前記のビニルモノマーと共重合するのが好ましく、これらビニルモノマーの具体的な例としては日本油脂製ブレンマーシリーズ、代表的には、ブレンマーAMEシリーズ(ブレンマーAME−400等)、ブレンマーPMEシリーズ、(ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000等)、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー55PETシリーズ(ブレンマー55PET800等)、ブレンマーPPシリーズ(ブレンマーPP800等)がある。
【0073】
また、これらのポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基の末端となる前記一般式(1)においてRで表される基は、アミノ等の活性な水素を含有しないものが好ましい。活性水素を有する場合、架橋剤によって粒子間架橋が起こる可能性がある。
【0074】
本発明に用いる前記一般式(1)で表されるポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基又テトラメチレンオキサイド基を有する重合性ビニルモノマーを他の共重合成分とラジカル共重合させることで、これらの構成成分を有する樹脂(ポリマー)を得ることができるが、ポリマー成分中にポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基を有するモノマー成分は1〜60質量%、好ましくは3〜30質量%の割合で含有しているものが好ましい。少ない場合には当然、架橋剤による架橋反応が粒子間で起こるため凝集が避けられない。また、多すぎるるとポリマー全体が親水性となるため、色材との親和性が低下し、相分離等を起こすためやはり安定な微粒子分散体を形成しない或いは凝集が大きくなる等好ましくない。
【0075】
本発明において、好ましい樹脂(ポリマー)の例について、実施例中にいくつかの組成例を示した。
【0076】
次に、上記樹脂ポリマーとともに粒子中に封入される色材について説明する。
該色材としては、上記ポリマーに溶解或いは分散可能な色材であれば特に制限無く用いることができ、例えば、油性染料、分散染料、直接染料、酸性染料及び塩基性染料等を挙げることができるが、良好な封入性の観点から油性染料及び分散染料を用いることが好ましい。上記分散染料として、特に好ましい具体例を以下に示すが、これのみに限定されるものではない。特に好ましい具体例としては、C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレッド33;C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等が挙げられる。一方、上記油性染料としては、以下に限定されるものではないが、特に好ましい具体例としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29及び34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、19、29、56及び82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73、132及び218;C.I.ソルベント・バイオレット3;C.I.ソルベント・ブルー2、11及び70;C.I.ソルベント・グリーン3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
【0077】
また、水や各種有機溶剤に不溶な顔料をポリマー媒体中に分散して用いることも可能である。
【0078】
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0079】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0080】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0081】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0082】
本発明のインクに使用する顔料分散体の平均粒径は10〜200nmであることが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。顔料分散体の平均粒径が150nmを越えると光沢メディアに記録した画像では光沢感の劣化が起こり、トランスペアレンシーメディアに記録した画像では著しい透明感の劣化が起こる。また、顔料分散体の平均粒径が10nm未満になると顔料分散体の安定性が悪くなり易く、インクの保存安定性が劣化し易くなる。
【0083】
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0084】
色材として、あるいは、特開平9−277693号、特開平10−20559号、特開平10−30061号に示されるような、金属錯体色素も使用可能である。たとえば、特開平10−20559号に記載の一般式(I)及び一般式(II)で表される色素が使用可能である。
【0085】
【化2】
【0086】
一般式(I)において、X1は、金属イオンと少なくとも2座の配位結合を形成可能な構造を有する原子の集まりを表し、Y1は芳香族炭化水素環、5員或いは6員の複素環又は−L4=Y2を表し、Y2は含窒素の5員或いは6員の複素環を表す。L1、L4は置換又は非置換のメチン基並びに窒素原子を表し、L2、L3は置換又は非置換のメチン基を表す。Mは金属イオンを表し、X1で形成される原子の集まりと少なくとも2座の配位結合を形成している。mは0、1、2又は3の整数を表し、n1は1、2又は3の整数を表す。又、一般式(II)において、X3、Y3、M及びn2はそれぞれ上記X1、Y1、M及びn1と同義である。
【0087】
さらにこれらの具体例として以下の色素が挙げられる。
【0088】
【化3】
【0089】
【化4】
【0090】
【化5】
【0091】
【化6】
【0092】
【化7】
【0093】
【化8】
【0094】
【化9】
【0095】
【化10】
【0096】
【化11】
【0097】
【化12】
【0098】
【化13】
【0099】
【化14】
【0100】
【化15】
【0101】
【化16】
【0102】
本発明においては、これらのポリマーを色材および有機溶剤共に混合し、水性媒体中おいて、必要であれば乳化剤を用いて、乳化・分散し、その後、有機溶剤等を留去することで、架橋前の着色微粒子分散体が得られるが、乳化の際にもちいることのできる乳化剤としては、通常のノニオン系乳化剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンオクアルキルエーテル類;例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類等、
またアニオン系乳化剤として、例えば、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、等のアルキルスルホコハク酸エステル塩及びその誘導体類等を用いることができる。
【0103】
また、前記の乳化剤に代え、或いはそれに加え、重合可能な乳化剤(反応性乳化剤)を用いるのが好ましい。
【0104】
反応性乳化剤としては、アニオン系及びノニオン系のいづれの乳化剤でも特に限定されず、例えば、(メタ)アリル基、(メタ)アクリル基、スチリル基などのラジカル重合性不飽和基を有する乳化剤が単独で又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0105】
反応性乳化剤としては、アニオン系及びノニオン系のいづれの乳化剤でも特に限定されず、例えば、(メタ)アリル基、(メタ)アクリル基、スチリル基などのラジカル重合性不飽和基を有する乳化剤が単独で又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0106】
このようなアニオン系反応性乳化剤としては、例えば、下記一般式(2)〜(5)で表される反応性乳化剤を挙げることができる。
【0107】
【化17】
【0108】
式中、R2は水素、メチル基、R3は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、R4は水素又はメチル基、R5は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、Xは単結合またはメチレン基、Mはアルカリ金属、mは1〜50の自然数、nは1〜50の自然数、qは0又は1である。
【0109】
上記一般式(2)で表されるアニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば、「アデカリアソープ SE−10N」、「アデカリアソープ SE−20N」、「アデカリアソープ SE−30N」(以上、旭電化工業(株)製)が、上記一般式(3)で表されるアニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば、「アクアロン HS−05」、「アクアロン HS−10」、「アクアロン HS−20」、「アクアロン HS−30」(以上、第一工業製薬(株)製)等が、また、上記一般式(4)のアニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば「ラテムル S−120」、「ラテムル S−120A」、「ラテムル S−180」、「ラテムル S−180A」(以上、花王(株)製)、「エレミノールJS−21」(以上、三洋化成工業(株)製)等が、一般式(5)のアニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば「アントックス MS−60」(日本乳化剤(株)製)を挙げることができる。
【0110】
その他、アニオン系反応性乳化剤としては、例えば「ラテムル ASK」(花王(株)製)等のアルキルアルケニルコハク酸エステル塩系反応性乳化剤;例えば「エレミノール RS−30」(三洋化成工業(株)製)等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート硫酸エステル塩系反応性乳化剤;例えば「RA−1120」、「RA−2614」(以上、日本乳化剤(株)製)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪族不飽和ジカルボン酸エステル塩系反応性乳化剤;例えば「アントックス MS−2N」(日本乳化剤(株)製)等の(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩系反応性乳化剤;フタル酸ジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート硫酸エステル塩系反応性乳化剤;例えば「H−3330PL」(第一工業製薬(株)製)等のモノもしくはジ(グリセロール−1−アルキルフェニル−3−アリル−2−ポリオキシアルキレンエーテル)リン酸エステル塩系反応性乳化剤等が、また、ノニオン系反応乳化剤としては、例えば、下記一般式(6)及び(7)で示される反応性乳化剤を挙げることができる。
【0111】
【化18】
【0112】
式中、R2は水素、メチル基、R3は炭素数6〜18のアルキル基、mは1〜50の自然数、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、R4は水素又はメチル基、Xは単結合またはメチレン基、Mはアルカリ金属である。
【0113】
上記一般式(6)で表されるノニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」(以上、旭電化工業(株)製)等が、一般式(6)で表されるノニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば「アクアロン RN−10」、「アクアロン RN−20」、「アクアロン RN−30」、「アクアロン RN−50」(以上、第一工業製薬(株)製)等が、またその他、例えば「RMA−564」、「RMA−568」(以上、日本乳化剤(株)製)等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系反応性乳化剤;例えば「RMA−1114」(日本乳化剤(株)製)等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系反応性乳化剤等も挙げることができる。
【0114】
これら反応性乳化剤の使用量は、ポリマーの合計100質量部当たり、一般に0.1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部、特に好ましくは3〜20質量部の範囲で用いるのがよい。
【0115】
これらの乳化剤は、粒子近傍に安定な電気二重層を形成すると同時に、樹脂との反応性を有するために、乳化時或いは乳化後に、樹脂中にポリエチレンオキサイド鎖、ポリプロピレンオキサイド鎖と共に架橋を導入でき好ましい。
【0116】
これらの色材および前記樹脂からなる着色微粒子については、各種の乳化法で製造することができる。乳化法としては、各種の方法を用いることができる。それらの例は、例えば、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エムシー」の86ページの記載にまとめられている。本発明においては、特に、超音波、高速回転せん断、高圧による乳化分散装置を使用することが好ましい。
【0117】
超音波による乳化分散では、いわゆるバッチ式と連続式の2通りが使用可能である。バッチ式は、比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、たとえば、UH−600SR(株式会社エスエムテー製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は、分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計としてもとめられる。超音波の照射時間は実際上は10000秒以下である。また、10000秒以上必要であると、工程の負荷が大きく、実際上は乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10000秒以上は必要でない。さらに好ましくは、10秒以上、2000秒以内である。
【0118】
高速回転せん断による乳化分散装置としては、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エム シー」の255〜256ページに記載されているような、ディスパーミキサーや、251ページに記載されているようなホモミキサー、256ページに記載されているようなウルトラミキサーなどが使用できる。これらの型式は、乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。これらの高速回転せん断による乳化分散機では、攪拌翼の回転数が重要である。ステーターを有する装置の場合、攪拌翼とステーターとのクリアランスは通常0.5mm程度で、極端に狭くはできないので、せん断力は主として攪拌翼の周速に依存する。周速が5m/S以上150m/S以内であれば本発明の乳化・分散に使用できる。周速が遅い場合、乳化時間を延ばしても小粒径化が達成できない場合が多く、150m/Sにするにはモーターの性能を極端に上げる必要があるからである。さらに好ましくは、20〜100m/sである。
【0119】
高圧による乳化分散では、LAB2000(エスエムテー社製)などが使用できるが、その乳化・分散能力は、試料にかけられる圧力に依存する。圧力は104kPa〜5×105kPaの範囲が好ましい。また、必要に応じて数回乳化・分散を行い、目的の粒径を得ることができる。圧力が低すぎる場合、何度乳化分散を行っても目的の粒径は達成できない場合が多く、また、圧力を5×105kPaにするためには、装置に大きな負荷がかかり実用的ではない。さらに好ましくは5×104kPa〜2×105kPaの範囲である。
【0120】
これらの乳化・分散装置は単独で用いてもよいが、必要に応じて組み合わせて使用することが可能である。コロイドミルや、フロージェットミキサなども単独では本発明の目的を達成できないが、本発明の装置との組み合わせにより、短時間で乳化・分散を可能にするなど本発明の効果を高めることが可能である。
【0121】
本発明においては、前記油溶性染料を、前記ブロックイソシアネート基等の官能基を有する、また好ましくは、さらにポリエチレンオキサイド基またはポリプロピレンオキサイド基等を有する重合ポリマー樹脂と共に、酢酸エチル等の有機溶剤に溶解・混合した後、前記分散装置により乳化・分散し、溶剤を除去して水性の分散体を形成した後、架橋剤として例えば、前記ジエチレントリアミン、3−アミノプロパノール等のアミン化合物を架橋剤として、乳化、分散した水性分散体に混合して架橋させる。尚乳化分散は、ブロック基を開裂温度以下60℃以下、好ましくは50℃以下の温度で行う。架橋剤と混合後は、ブロック基の開裂反応を促進するために、水性分散体を60〜100℃、好ましくは60〜95℃の範囲で加温し、十分な時間、形成される架橋結合によって異なるが、例えば、1分〜5時間反応させ、微粒子内部での架橋反応を十分行わせる。
【0122】
ここにおいて水性分散体とは水を主体とする水系の媒体中に前記着色微粒子が分散しているものをいい、例えば非水溶性、或いは水溶性の有機溶媒が混合されていてもよいが、水を主体とする水系の媒体とは、媒体中での水の割合が50%以上のものをいい、水性インクの水性も同じ意味である。
【0123】
また、前記本発明に係わる、前記の樹脂ポリマー、色材等を溶解分散する有機溶剤としては、低沸点(例えば150℃以下、好ましくは100℃以下)の有機溶剤が好ましく、具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ブタノール、シクロヘキサノン等の溶剤を好ましく用いることができる。
【0124】
本発明に係わる着色微粒子分散体は、このようにして形成した色材および樹脂(ポリマー)を含有する着色微粒子散体を種粒子として、これに重合可能な素材を添加、重合させ、さらにコアシェル構造とすることが好ましい。
【0125】
重合可能な素材を添加して、種粒子上でシード重合させる方法としては、色材と樹脂を含有する着色微粒子の分散体を前記により形成した後、重合可能な素材として重合性不飽和二重結合を有するモノマーを添加し活性剤の存在下、乳化重合を行って、重合と同時に種粒子となる着色微粒子表面に沈着させる方法が本発明においては好ましい。この方法で形成した場合、好ましい場合には、後添加した重合性不飽和二重結合を有するモノマーは、前記種粒子上で重合してポリマーシェルを形成する。
【0126】
色材と樹脂からなる前記着色微粒子を種粒子として、これに後添加して、種粒子上で重合させる重合性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸等、アクリルアミド類等から選ばれる化合物、特スチレンや(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が好ましいが、これらのモノマーに加えて、分子内にヒドロキシル基を含有する重合性不飽和二重結合を有するモノマー、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、或いはヒドロキシル基を有する重合性不飽和二重結合を有するモノマーを、後添加する原料モノマー全体の中で、最大50%、その他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと混合して用い共重合させることが粒子の安定性を得る上で好ましい。
【0127】
このような共重合体として、例えば、スチレン/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレン/アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が好ましい例としてあげられる。
【0128】
また、シェルの安定性を増す等の理由から、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸を含有するモノマー或いはスルホン酸を含有するモノマー等、pKa値で3〜7の解離性基を含有するエチレン性不飽和モノマーを共重合成分の10%以下用いてもよい。これらのモノマー成分をシェル形成に用いることによって、当該コア/シェル着色微粒子の水分散体の安定性が向上する。
【0129】
また、シェル形成中、シェル形成後に架橋剤により架橋反応をさせることができる。
【0130】
前記酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類等の重合性不飽和二重結合を有するモノマーと共に、多官能性ビニルモノマー例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレートまたはジビニルベンゼン等を共重合成分として最大10%程度含有させて用いたり、イソシアネート基、エポキシ基等を含有する前記ビニルモノマーを最大50%含有させて混合し、これと反応する架橋剤を調製後に用い反応させ架橋構造を導入したり、樹脂成分中の官能基と反応する架橋剤をもちいたり、シェル形成と同時に、或いはシェル形成後にシェル内で3次元架橋反応をさせることができる。
【0131】
本発明においては、シェルに用いられるポリマー量は総ポリマー量の5質量%以上95質量%以下である。5質量%より少ないとシェルの厚みが不十分で、色材を多く含有するコアの一部が粒子表面に現れ易くなる。また、シェルのポリマーが多すぎると、コアの色材保護能低下を起こし易い。さらに好ましくは10質量%以上90質量%以下である。
【0132】
色材の総量は総ポリマー量に対して20質量%以上1000質量%以下であることが好ましい。色材量がポリマーに比して少なすぎると吐出後の画像濃度が上がらず、また、色材質量が多すぎるとポリマーの保護能が十分に得られない。
【0133】
このようにして形成された本発明に係わる着色微粒子分散体の着色微粒子の体積換算平均粒径は10〜100nm、好ましくは20〜80nmであり、この粒径範囲において安定であるため、鮮やかな色を有すると同時に、インクとしたときの安定性に優れる。
【0134】
前記架橋反応により、染料含有したコアを形成する樹脂については、あまり架橋を導入して、色材との相分離を起こさない範囲で、また、シェルについては、好ましくは最表面であるが、後述するように、架橋の導入により粒子間架橋が起こらないような適度な範囲で架橋を導入する必要がある。
【0135】
また、シェルについても、粒子間架橋を抑えるために、シェル形成するモノマー成分として、多官能性ビニルモノマーのような架橋を形成する基、或いは架橋剤と反応して共に架橋結合を形成する基を含有するモノマー成分に加えて、前記のように、ポリエチレンオキサイド或いはポリプロピレンオキサイド等の立体障害性を有する基を有する成分を導入して、粒子間架橋を抑制することも好ましい。
【0136】
この様にしてシェルを形成した場合、本発明に係わる着色微粒子分散体が、実際にコアシェル化されているかを評価することは重要である。本発明においては、個々の粒子径が100nm以下と非常に微小であるため、分析手法は分解能の観点から限られる。このような目的に沿う分析手法としては、TEMやTOF−SIMSなどが適用できる。TEMによりコアシェル化した微粒子を観察する場合、カーボン支持膜上に分散液を塗布、乾燥させ観察することができる。TEMの観察像は、有機物であるポリマーの種類のみではコントラスト差が小さいため、コアシェル化されているかどうかを評価するために、微粒子を、4酸化オスミウム、4酸化ルテニウム、クロロスルホン酸/酢酸ウラニル、硫化銀等を用いて染色する必要がある。コアだけの微粒子を染色しそのTEM観察を行い、シェルを設けたものと比較する。さらに、シェルを設けた微粒子と設けていない微粒子を混合後、染色し、染色度合いの異なる微粒子の割合がシェルの有無に一致しているかの確認を行う。
【0137】
TOF−SIMSような質量分析装置では、粒子表面にシェルを設けることで表面近傍の色材量がコアだけの時よりも減少していることを確認する。色材にコアシェルのポリマーに含有されていない元素がある場合、その元素をプローブとして色材含有量の少ないシェルが設けられたかを確認することができる。
【0138】
即ち、色材含有率(濃度)は、TOF−SIMSによって、個々の微粒子表面について、先ず質量数1〜1000のイオンの総量を測定し、その中で染料に含有されるコアシェルのポリマーに含有されていない元素に由来するイオンの総量との比から求めることができる。この方法によりシェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの色材含有率を比較することによりそれぞれの色素含有率(濃度)を測定できる。TOF−SIMSでは、表面から深さ方向に数nmの元素分析ができるため本発明の様なコア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0139】
そのような元素がない場合、適当な染色剤を用いてシェル中の色材含有量がシェルを設けていないものと比較することができる。
【0140】
又、コアシェル粒子をエポキシ樹脂内に埋胞し、ミクロトームで超薄い切片を作製、染色を行うことでコアシェル化はより明瞭に観察できる。上記のように、ポリマーや、色材にプローブとなりうる元素がある場合、TOF−SIMSやTEMによってコアシェルの組成、色材のコアとシェルへの分布量を見積もることもできる。
【0141】
本発明においては、シェルにおける色材含有率(濃度)が、コア/シェル化を行っていないコアにおける色材含有率(濃度)の0.8以下である。好ましくは0.5以下であり、更に好ましくは0.2以下である(勿論0或いは限りなく0に近い値であってもよい)。これにより、ポリマーコアが、色材の主たる部分を包含することで、その堅牢性や色調を保持するのに寄与し、一方ポリマーシェルは色材を包含したこれら微粒子のインクサスペンションとしての安定性を増す事に寄与すると共にメディア上での色材の定着促進、凝集の防止、画質の向上や色材の堅牢性、色調の保持にも貢献する。
【0142】
必要な粒子径を得るには、処方の最適化と、適当な乳化法の選定が重要である。処方は用いる色材、ポリマーによって異なるが、水中のサスペンションであるので、コアを構成するポリマーよりシェルを構成するポリマーの方が一般的に親水性が高いことが必要である。また、シェルを構成するポリマーに含有される色材は、前記のようにコアを構成するポリマー中より少ないことが好ましく、色材もシェルを構成するポリマーよりも親水性の低いことが必要である。親水性、疎水性は、例えば溶解性パラメータ(SP)を用いて見積もることができる。溶解性パラメータは、その値や、測定、計算法がPOLYMER HANDBOOK第4版(JOHN WILEY & SONS,INC.)675ページからの記載が参考になる。
【0143】
また、コア/シェルで用いられるポリマーは、その数平均分子量が500〜100000、特に1000〜30000であることが、印刷後の製膜性、その耐久性及びサスペンションの形成性の点から好ましい。
【0144】
また、本発明に係わる着色微粒子分散体の体積平均粒径の変動係数は80%以下が好ましく経時での粒径変動も少ない。変動係数は50%以下がさらに好ましい。
【0145】
体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求めた。また、体積平均粒径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒径で割ることで変動係数を求めた。或いは、動的光散乱法を利用して変動係数を求めることも出来る。例えば、大塚電子製レーザー粒径解析システムや、マルバーン社製、ゼータサイザーを用いて求める事が出来る。
【0146】
粒径の変動係数は、粒径の標準偏差を粒径で割った値であるが、この値が大きいほど粒径の分布が広い事を意味する。体積平均粒径の変動係数が80%以上であると、粒径分布が非常に広くなり、粒子間の表面物性にばらつきが生じ、これにより粒子の凝集を招きやすい。また、粒子の凝集はメディア上で、色材の光散乱を招き易く、画質の低下も招き易くする。
【0147】
この様にして形成された、本発明にかわる着色微粒子分散体は、トータルのポリマー量として本発明のポリマーエマルジョン型水性インク中にポリマーが0.5〜50質量%配合されることが好ましく、0.5〜30質量%配合されることが更に好ましい。上記ポリマーの配合量が0.5質量%に満たないと、色材の保護能が十分でなく、50質量%を超えると、サスペンションのインクとしての保存安定性が低下したり、ノズル先端部でのインク蒸発に伴うインクの増粘やサスペンションの凝集が起こることによってプリンタヘッドの目詰りが起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0148】
一方、上記色材は、該インク中に1〜30質量%配合されることが好ましく、1.5〜25質量%配合されることが更に好ましい。上記色材の配合量が1質量%に満たないと印字濃度が不十分であり、30質量%を超えるとエマルジョンの経時安定性が低下し、凝集等による粒径増大の傾向があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0149】
本発明の水性インクは、水を主体とする水性媒体とし、上記色材を封入したポリマーのエマルジョンからなり、該エマルジョンには従来公知の各種添加剤、例えば多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、シリコーン系等の消泡剤、クロロメチルフェノール系等の防黴剤及び/又はEDTA等のキレート剤、又、亜硫酸塩等の酸素吸収剤等が含有されていてもよい。
【0150】
本発明に係わる着色微粒子分散体は、内部が架橋されており、耐溶剤性が高いため、これらの添加剤のうち、各種の有機溶剤、特に多価アルコール類のような以下に示す湿潤剤(低表面張力を実現する効果がある)との共存下での安定性が高く、凝集を起こしにくい。
【0151】
湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等、また、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルサルフォキサイド等のような水溶性有機溶剤があげられる。これらの一種又は二種以上を湿潤剤として使用することができる。これらの湿潤剤の配合量に特に制限はないが、上記インク中に好ましくは0.1〜50質量%配合することができ、更に好ましくは0.1〜30質量%配合することができる。
【0152】
また、上記分散剤としては、特に制限されるものではないが、そのHLB値が8〜18であることが、分散剤としての効果が発現し、サスペンションの粒径の増大抑制効果がある点から好ましい。
【0153】
分散剤として市販品も使用することができる。そのような市販品としては、例えば花王(株)製の分散剤デモールSNB,MS,N,SSL,ST,P(商品名)が挙げられる。
【0154】
分散剤の配合量に特に制限はないが、本発明のインク中に、0.01〜10質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.01質量%に満たないとサスペンションの小粒径化が困難であり、10質量%を超えるとエマルジョンの粒径が増大したりエマルジョン安定性が低下し、ゲル化するおそれがあり、上記範囲内とすることが好ましい。
【0155】
また、上記消泡剤としては、特に制限なく、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば信越シリコーン社製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F(商品名)等が挙げられる。これら化合物の配合量に特に制限はないが、本発明のポリマーエマルジョン型水系インク中に、0.001〜2質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、又、インク内での小泡の除去が難しく、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際、インク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0156】
本発明のインクジェット記録用水性インクを使用するインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(R)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
【0157】
本発明のインクジェット記録用水性インクを用いた画像形成においては、例えば、インクジェット記録用水性インクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを液滴として吐出させインク受容体に付着させることで、例えばインクジェット画像記録媒体上にインクジェット記録画像が形成されたインクジェットプリントが得られる。
【0158】
インクジェット画像記録媒体としては、例えば、普通紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙、光沢フィルム、OHPフィルムのいずれも使用することができ、なかでも例えば多孔質層が形成されている所謂空隙層を有する被記録媒体であれば好ましい。上述した支持体の素材或いは形状に特に限定されるものではなく、例えばシート状に形成されたもの以外に立体的な構造を有するものであってもよい。
【0159】
本発明の水性インクは、インクジェット記録用のインクとして以外に、例えば、一般の万年筆、ボールペン、サインペン等の筆記具用のインクとしても使用可能である。本発明のサスペンションを乾燥し、微粒の粉体を得ることもできる。得られた粉体は、電子写真のトナーなどにも使用可能である。
【0160】
【実施例】
以下に、合成例、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例の範囲に限定されるものではない。
【0161】
《樹脂合成1》
0.3リットルの四つ口セパラブルフラスコに滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置及び還流冷却管を付し、脱水したメチルエチルケトン20gをしこみ、70℃に加熱した。表1の組成割合のモノマー(単位g)を秤量し、更にN,N′−アゾビスイソバレロニトリル2gを前記モノマーに加えた混合液を、フラスコ中に2時間かけて滴下し、同温度にて5時間反応させた。その後メチルエチルケトン80gを添加し冷却、ポリマー50質量%のポリマー溶液を得た。
【0162】
【表1】
【0163】
ブレンマーPME−1000:
−(EO)m−CH3 (m≒23)を有するメタアクリレート系樹脂
ブレンマーPME−4000:
−(EO)m−CH3 (m≒90)を有するメタアクリレート系樹脂
ブレンマーG:
グリシジルメタクリレート
上記はすべて日本油脂製。
【0164】
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ST:スチレン、MMA:メタクリル酸メチル、MAA:メタアクリル酸、SMA:メタクリル酸ステアリル、カレンズMOI:2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製)。
【0165】
モノマーAは、10gのブレンマーGとハイドロキノンモノメチルエーテル(ブレンマーGに対して0.1質量%)を50℃に保温した3−アミノプロパノール5.5gに1時間かけ滴下、8時間反応させたもの。
【0166】
《着色微粒子分散体の製造》
実施例1
〈主ポリマー中のイソシアネートをブロックイソシアネートとした着色微粒子分散体の製造〉
表1の樹脂R1を12g含む液24gに、2gのイソホロンジイソシアネートと0.1gのジブチルチンジラウレートを加え40℃で60分反応させた。MEK12g添加後、その溶液に、激しく攪拌ながら1gのNaHSO3を含む15質量%の水溶液を添加し、完全に反応させた(樹脂▲2▼)。得られた樹脂液をクレアミックスCLM−0.8S(エムテクニック(株)社製)のポットに12gのC.I.Solvent Yellow 162(▲1▼染料)、及び120gの酢酸エチルと共に入れ、攪拌して染料を完全溶解させた。さらに、KH−05(第一工業製)(▲3▼乳化剤)を2質量%含む水溶液240gを添加後、40℃に温度を保ちながら回転数12000rpmで5分間乳化した。溶剤を40℃で減圧除去した後、ジエチレントリアミン0.35gを添加した。そのまま90℃に昇温し120分架橋反応させた。
【0167】
この分散液を65℃に保温して、MMA3gと、エチレングリコールジメタクリレートを0.15g、過硫酸カリウム0.1gを含む水溶液3gをそれぞれ1時間かけて添加し、そのまま5時間反応させて、コアシェル構造を有する着色微粒子分散体1を得た。
【0168】
比較例1
実施例1で、ブロック剤のNaHSO3を用いなかったこと、また架橋反応は、60℃で120分行った以外は同様にして比較の着色微粒子分散体1を得た。
【0169】
実施例2
表1の樹脂R2を12gを含む液24gに、激しく攪拌ながら0.9gのNaHSO3を含む15%の水溶液を添加し、完全に反応させた(樹脂▲2▼)。得られた樹脂液をクレアミックスCLM−0.8S(エムテクニック(株)社製)のポットに12gのC.I.Solvent Yellow 162(▲1▼染料)、及び120gの酢酸エチルと共に入れ、攪拌して染料を完全溶解させた。さらに、KH−05(第一工業製)(▲3▼乳化剤)を2質量%含む水溶液240gを添加後、40℃に温度を保ちながら回転数12000rpmで5分間乳化した。溶剤を40℃で減圧除去した後、ジエチレントリアミン0.3gを添加した。そのまま90℃に昇温し120分架橋反応させた。
【0170】
この分散液を65℃に保温して、MMA3gと、エチレングリコールジメタクリレートを0.15g、ABN−V(2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル);日本ヒドラジン製)0.1gの混合液を1時間かけて添加し、そのまま5時間反応させて、コアシェル構造を有する着色微粒子分散体2を得た。
【0171】
比較例2
実施例2で、NaHSO3を使用しなかったこと及び架橋反応は、60℃で120分行った以外は同様にして比較の着色微粒子分散体2を得た。
【0172】
実施例3
表1の樹脂R3を12gを含む液24gを50℃に保温し、3−アミノプロパノール5.5gに1時間かけ滴下、8時間反応させた(樹脂▲2▼)。その樹脂をクレアミックスCLM−0.8S(エムテクニック(株)社製)のポットに、12gのシアン染料FSB1504(▲1▼染料)、及び120gの酢酸エチルと共に入れ、攪拌して染料を完全溶解させた。さらに、ドデシル硫酸ナトリウム(▲3▼乳化剤)を1.5質量%含む水溶液260gを添加後、40℃に温度を保ちながら回転数12000rpmで5分間乳化した。酢酸エチルを40℃で減圧除去した後、ブロックイソシアネートF8879D(第一工業製薬製)5.0gを添加し、pH7.5に調整後、90℃で120分架橋反応させた。着色微粒子分散体3を作製した。
【0173】
比較例3
実施例3において、ブロックイソシアネートF8879Dの代わりに、スミジュールN3300(住化バイエルウレタン製)を添加した以外は同様にして比較の着色微粒子分散体3を作製した。
【0174】
実施例4
表1の樹脂R4を12gを含む液24g(樹脂▲2▼)にトリエタノールアミン2.0gを添加後、クレアミックスCLM−0.8S(エムテクニック(株)社製)のポットに12gのマゼンタ染料JD−263(三井化学製)(▲1▼染料)、酸無水物EPICLON B−4400(大日本インキ製)及び120gの酢酸エチルを入れ、攪拌して染料を完全溶解させた。さらに、KH−05(第一工業製)(▲3▼乳化剤)を2質量%含む水溶液270gを添加後、40℃に温度を保ちながら回転数12000rpmで5分間乳化した。酢酸エチルを40℃で減圧除去した後、ブロックイソシアネートF8879D(第一工業製薬製)3.0gを添加し、60℃で120分架橋反応させた。この様に着色微粒子分散体4を作製した。
【0175】
比較例4
実施例4で、ブロックイソシアネートF8879Dの代わりにスミジュールN3300(ポリイソシアネート硬化剤;住化バイエルウレタン製)を添加した以外は同様にして比較の着色微粒子分散体4を作製した。
【0176】
《評価》
得られた分散液中での粒子径(体積平均粒子径)を比較した。体積平均粒子径は、大塚電子製レーザー粒径解析システムを用いて測定した(nm)。
【0177】
濾過性を、0.45μmのシリンジフィルターの濾過量で求めた。濾過量が多いほど、粗大粒子が少なく、分散体の均一性に優れている事を示す。
【0178】
また、TEM写真の投影面積の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して体積平均粒子径とその標準偏差を求め体積平均粒子径で割ることで変動係数(%)を求めた。
【0179】
【表2】
【0180】
以上のように、本発明により、粒子径がより小さく、分布が狭く、濾過性に優れた架橋粒子を得られることが示された。
【0181】
【発明の効果】
凝集が少なく製造安定性、分散安定性に優れた耐溶剤性の向上したインクジェットインク用として好適な着色微粒子分散体が得られた。
【発明の属する技術分野】
本発明は色材および樹脂からなる着色微粒子分散体に関し、特に水性インク特にインクジェット用インクに適した着色微粒子分散体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、プリンタ、印刷機、マーカー、筆記具等に用いられる記録材料、インキング材料、特にインクジェット用インクとしては水溶性染料の水溶液を主体としたもの、顔料の微分散体を主体としたものが広く用いられている。
【0003】
水溶性染料を用いたインクは、顔料インクに比べて、鮮やかな色再現性を有するものの、染料の水溶液であるが故に記録紙上でにじみやすく、耐水性にも劣り、また耐光堅牢度も顔料インクに比較して、非常に低いという問題がある。一方で、顔料インクは、耐水性、耐光堅牢度等にはこれまでが多くなされているが、これらの欠点を充分改善できているとはいいがたい。
【0004】
これに対し、油溶性染料ないし疎水性染料で水分散性樹脂を着色して水系の分散体として用いる水性インク、即ち、着色されたポリマー微粒子を記録材として用いる水性インクが、前記水溶性染料を用いたインクにかわるものとして、期待されており、染料、ポリマーの組成や、着色微粒子の微粒化や構成などこれまで、種々の面から検討がおこなわれている。
【0005】
例えば特開2001−98194には、親水性重合連鎖部分と疎水性重合連鎖部分からなる共重合体樹脂をもちいるものが、特開2000−191968には、ビニルポリマー重合性不飽和酸モノマー、水酸基含有モノマー、スチレンマクロマー等を用いるものが、特開平9−157508号には、シクロヘキセンジカルボン酸を含むポリエステル樹脂を用いるものが、また米国特許第6,384,108号明細書においては、自己乳化型ポリマーを、溶媒に染料とともに溶解して、水相で乳化、形成した微粒子が等それぞれ開示されている。
【0006】
しかしながらインクジェットにおいては各種の水性有機溶剤を混合して用いるため、これらの方法により形成した着色微粒子を用いる際には、耐溶剤性が大きな問題となる。
【0007】
耐溶剤性の問題を樹脂の架橋により解決しようとしたものとして、例えば、表面を架橋したコアシェル粒子を用いる技術が開示されている(特許文献1)。
【0008】
また、自己乳化性、かつウレタン結合により架橋されたポリマー粒子を用いる技術も開示されており(特許文献2)、いずれも着色微粒子の分散の後に架橋を導入し、分子量を増大させて耐溶剤性を向上させようとするものである。
【0009】
架橋を効果的に導入すれば、樹脂の分子量が上がり耐溶剤性は高まるが、分散液粒子表面を架橋して分子量を増大させるときに粒子間の架橋が起きて粒子の凝集が起きやすかったり、また、架橋剤を樹脂中に混合することで、微粒子分散液製造の過程で、活性の高い架橋剤の一部が分解を起こしたり、乳化分散中にゲル化を起こしたりする問題が発生する。
【0010】
【特許文献1】
特開2002−121417号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平8−218015号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、製造安定性、分散安定性に優れた耐溶剤性の向上したインクジェットインク用として好適な着色微粒子分散体を得ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0014】
1.色材と樹脂を混合し水に分散させてなる着色微粒子分散体であって、着色微粒子が架橋構造を有し、該架橋構造が、ブロックイソシアネートの反応により形成されていることを特徴とする着色微粒子分散体。
【0015】
2.ブロックイソシアネートが100℃以下で開裂することを特徴とする前記1に記載の着色微粒子分散体。
【0016】
3.ブロックイソシアネートが重亜硫酸塩でブロックされていることを特徴とする前記1または2に記載の着色微粒子分散体。
【0017】
4.ブロックイソシアネートを有するポリマーを用いて微粒子内部に架橋構造を有する着色微粒子を製造する着色微粒子の製造方法において、ブロックイソシアネートの開裂温度以下で、ポリマーと色材を非水性有機溶剤中に溶解して水中に乳化分散し、架橋剤を添加した後、乳化分散液をブロックイソシアネートの開裂温度以上に加熱することで架橋反応を行うことを特徴とする着色微粒子の製造方法。
【0018】
5.架橋された樹脂が前記一般式であらわされる基を有していることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
【0019】
6.重合可能な乳化剤が用いられていることを特徴とする前記1〜3および5のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
【0020】
7.体積換算平均粒径が10〜100nmであることを特徴とする前記1〜3、5および6のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
【0021】
8.体積平均粒径の変動係数が80%以下であることを特徴とする前記1〜3および5〜7のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
【0022】
9.前記1〜3および5〜8のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体を含むことを特徴とする水性インク。
【0023】
10.インクジェット用インクであることを特徴とする前記9に記載の水性インク。
【0024】
11.デジタル信号に基づきインクジェットヘッドより前記10に記載の水性インクを液滴として吐出させインク受容体に付着させることを特徴とする画像形成方法。
【0025】
イソシアネート架橋を有するポリマー微粒子の作製法として、ウレタンプレポリマーを用いることは知られている。例えば、特開平8−218015号には、乳化性が付与されたポリマーにウレタン結合による架橋が導入され、架橋はイソシアネートおよびポリアミンを用いて構成されている。
【0026】
しかしながら、高反応性のイソシアネートをそのままの状態で乳化し、後でアミンで架橋させる手法は、乳化時に水との反応でイソシアネートの一部が分解したり、ゲル化を起こしやすいなどの問題がある。
【0027】
本発明は、水の沸点以下で開裂するブロックイソシアネートを用いて、乳化分散中のゲル化等を防止しながら架橋を効率的に行う手法を提案するものである。
【0028】
油溶性染料ないし疎水性染料で着色した樹脂(ポリマー)の水系分散体(着色微粒子分散体)を作製するには、樹脂(ポリマー)と染料を溶剤に溶解して乳化、溶剤を除去し、作製する方法がよく知られている。分子量が大きく耐溶剤性の高い樹脂を用いようとすると、樹脂の溶剤に対する溶解性不足や、色材との相溶性の低下から、得られる着色微粒子は、分散が不安定であるという問題がある。
【0029】
また、樹脂の原料モノマー中に染料を溶解してそのまま重合する方法もあるが、染料による重合禁止作用により、重合が必ずしもうまくゆかない。
【0030】
そのため、染料および溶剤に対する相溶性の高い樹脂(ポリマー)を用いて、溶解後に乳化して着色微粒子分散体を形成し、乳化後に樹脂架橋を導入する方法を検討した。
【0031】
樹脂(ポリマー)の油溶性染料との相溶性が損なわれると、染料と樹脂とが相分離を起こし、粒子全体の分散安定性を低下させる原因となる。即ち、ポリマーに予め架橋構造を導入し分子量を増加させた耐溶剤性の高い樹脂を用いると、染料との相溶性を損なう原因となり、乳化後に染料が相分離してしまう。
【0032】
またインクジェットインクは微粒子であることが要求されるため、乳化粒径を(例えば、粒径100nm以下)小さくするためにポリマーの分子量を余り大きくすることはできない。分子量の増加によって、ポリマー溶液の粘度が増加すると、分散体の微粒化も阻害される。更に余りに分子量が大きい場合には、溶剤に対する溶解性も低下してしまう。
【0033】
従って、ポリマーに架橋構造を導入するには、染料および溶剤に対する相溶性の高い樹脂(ポリマー)を用いて色材との混合、溶解、分散等を先行して行い、乳化時、或いは乳化後に架橋する方法が好ましい。
【0034】
本発明において、乳化散後に架橋構造を形成する反応は、ポリマー分子内に、架橋構造を構成する結合を形成しうる基を有するモノマーを用いて、これを他のモノマーとの共重合あるいは縮合(後からペンダント基として導入してもよい)により導入した樹脂(ポリマー)を用い、これを架橋性化合物と接触させ、架橋結合を形成させる。
【0035】
前記、特開平8−218015号には、ウレタン結合により架橋されたポリマーの着色微粒子分散体が記載されており、架橋はイソシアネートおよびポリアミンを用いて構成されている。
【0036】
例えば、架橋反応を形成する官能基として、ポリマー中にイソシアネート基を導入しておき、(イソシアネート基を分子内に有する、例えばカレンズMOI(昭和電工製)等のモノマーをアクリル酸エステル等他の共重合成分と共重合させポリマー中にイソシアネート基を導入することが出来る。このようにして形成されたイソシアネート基を有するポリマーを、染料と共に例えば酢酸エチル等の溶剤に溶解し、水性媒体中に分散することで水性の分散体を形成し、分散体形成後に、例えば、アミン類、好ましくは1級アミンで処理することで、ポリマー中のイソシアネート基がアミンと反応してウレイド結合を形成し、樹脂中において架橋を形成する。
【0037】
アミン類としては、イソシアネート基との反応点を二つ以上有するポリアミン、ジアミン類(例えば、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等)、更にヒドロキシル基含有アミン類、例えば3−アミノプロパノール、またヒドロキシエチルアミノプロピルアミン等が好ましい架橋剤として用いられる。
【0038】
或いは逆にポリマー中にはイソシアネート基と反応するポリマー成分例えばアミノ基等を有する成分を含有させておき、乳化分散後、多官能イソシアネート架橋剤を導入して、架橋する方法がある。
【0039】
しかしながら、イソシアネートは高活性な官能性基であり、樹脂中の水分等により、変質する可能性があり、事実、イソシアネート基を有する樹脂をそのまま用いて色材と共に乳化し、後でアミンで架橋させる手法においては、乳化時に水との反応でイソシアネートの一部が分解し、分散体が凝集を起こしたり、またゲル化を起こすなどの問題があり、注意が必要であった。
【0040】
本発明においては、ブロックイソシアネートを用いて、乳化分散中の凝集、ゲル化などを防止しながら架橋を効率的に行う。
【0041】
ブロックイソシアネートを用いることで、分散時に高活性なイソシアネート基がないため、ブロック基の開裂温度以下の温度で、溶解、乳化等を実施することで、イソシアネートの一部が分解したりすることがなく、乳化状態には悪影響を与えないので、着色微粒子の乳化(分散)が安定に実施出来る。
【0042】
ブロックイソシアネートとしては、水系分散体において、分散状態を維持したままで適用出来るものであればよいので、ブロック基が100℃以下の温度で開裂するもならばいかなるものでもよい。
【0043】
ブロックイソシアネートは、樹脂中或いは架橋剤中のイソシアネート基をブロック剤と反応させて、完全にブロックすることによって得られる。ブロック剤としては、例えばフェノール、クレゾール、p−エチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のフェノール系、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、ベンジルアルコール等のアルコール系、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系、アセトアニリド、アセトアミド等の酸アミド系、その他イミド系、アミン系、イミダゾール系、尿素系、カルバミン酸系、イミン系、ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系、メルカプタン系、重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系、ラクタム系等がある。即ち本発明でいうブロックイソシアネートは、一般的にブロックイソシアネート、マスクドイソシアネート、反応性ウレタンと呼ばれる化合物又はこれに類するものを含む。しかしながら、本発明においては、100℃以下の温度にて、開裂し易いものが好ましく、オキシム系、亜硫酸塩系が好ましく、特に亜硫酸塩系が好ましい。
【0044】
例えば、架橋反応を形成する官能基として、ポリマー中にイソシアネート基を導入するためには、イソシアネート基を分子内に有する、例えばカレンズMOI(昭和電工製)等のモノマーをアクリル酸エステル等他の重合性分と共重合させポリマー中にイソシアネート基を導入する。
【0045】
或いは樹脂材料中のアミノ基、ヒドロキシル基あるいはエポキシ基等の官能基を利用して、これと反応する基を有するイソシアネート化合物を反応させて調製する。例えばジイソシアネート化合物をもちいて、一方のイソシアネート基を前記樹脂材料中の官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル基等)と反応させて調製出来る。
【0046】
このようにイソシアネート基を有する成分は全体の重合或いは縮合単位でみたときに、30質量%以下含有されていればよく、実質的には15質量%以下で充分である。
【0047】
このようにして形成されるイソシアネート基を有するポリマーを、染料と共に例えば酢酸エチル等の溶剤に溶解し、水性媒体中において、乳化するまでに、好ましくは樹脂自身を溶剤に溶解した後、樹脂溶液に前記ブロック剤を混合し反応させる。こうして形成したブロックイソシアネートを有する樹脂(ポリマー)を用いて、これを色材と共に溶剤に混合溶解して、乳化、色材を含有する着色微粒子分散体を形成する。着色微粒子分散体形成後に、例えば、前記1級アミン類、例えば、3−アミノプロパノール等を添加して、一定温度以上の、ブロックイソシアネートが開裂する温度においてアミンと反応させることで、ポリマー中にウレイド結合による架橋を形成させる。
【0048】
【化1】
【0049】
ここで、R′はイソシアネート基が結合するポリマーの残基を表し、R″は同じくアミン残基を表す(以下同様である)。
【0050】
また、前記イソシアネート基と反応させる3−アミノプロパノール等の架橋剤となる化合物は架橋剤の種類、又、ブロックイソシアネートを有する樹脂の種類により異なるが、前記樹脂全体の量に対して、0.01%〜10%の範囲であり、好ましくは0.05〜5%の範囲である。
【0051】
従って、本発明において、好ましい態様は、イソシアネートを有するポリマーをブロック基と反応させた前記のような、ブロックイソシアネートを有するポリマーを用い、ブロックイソシアネートの開裂温度以下で、ポリマーと色材を非水性有機溶剤中に溶解して水中に乳化分散し、架橋剤を添加した後、乳化分散液をブロックイソシアネートの開裂温度以上に加熱することで架橋反応を行うことである。
【0052】
これにより微粒子内部に有効な架橋構造を有する着色微粒子分散体が製造できる。
【0053】
また、逆にポリマーが、例えばアミノ基やヒドロキシル基等、イソシアネート基と反応する基を側鎖に有し、複数のイソシアネート基を有する多官能性イソシアネート化合物を架橋剤として反応させる際にも、架橋剤としてブロックイソシアネートをもちいるのがよい。後からこれら架橋剤を添加する場合にも、乳化分散された水性の分散体に架橋剤を添加することになるので、ブロックイソシアネートを、この開裂温度以下の温度で添加し、均一に混合後、開裂温度以上の温度に分散体の温度を上げて架橋反応を起こさせることで、凝集等が少なく、ゲル化を起こしにくい着色微粒子分散体の製造方法が得られる。
【0054】
これら架橋剤となる、多官能のイソシアネート類としては、例えば、日本ポリウレタン社製:コロネートシリーズ、住友バイエル社製:デスモジュールシリーズ等の架橋剤が挙げられる。
【0055】
このようなアミノ基やヒドロキシル基等、イソシアネート基と反応する基を有する成分についても重合或いは縮合単位でみたとき30質量%以下でよく、好ましくは、20質量%以下である。
【0056】
本発明に係わるブロックイソシアネートは、一定温度以上で解離して、前記アミノ基、或いはヒドロキシル基と反応するものであり、化合物によりブロック基の解離温度は異なってくるが、通常60℃〜180℃の範囲でブロックイソシアネート基よりイソシアネート基が再生する。水の沸点以上では、分散状態を維持したまま架橋を行うことは困難であるため、前記ブロックイソシアネート基を有するもののうち、100℃以下の温度で開裂するものが本発明においては好ましい。水性分散体が凝集等を引き起こさずに加温出来る温度範囲、即ち、50℃〜95℃の範囲において、1分から5時間の範囲の加温にてブロック基がはずれるものが好ましい。前記オキシム或いは亜硫酸塩ブロック基が好ましい。
【0057】
ブロックイソシアネートの開裂温度は、pHによっても影響を受け、高pHになれば、開裂温度は低下し、例えばpHが10を超える領域では、50℃程度或いはこれ以下で開裂反応が起こる可能性があるが、乳化の温度では開裂が起こらず、分散体を形成した後に、加温で架橋が形成されるように乳化pH、温度を調整することが好ましい。乳化のpHが高いと、分散体自身の変質も考えられるので、例えばおおよそpH5〜9の範囲とし、50℃以下の温度で乳化を行い、後に50℃〜95℃、好ましくは60℃〜95℃の範囲に加温して架橋させるのが好ましい。
【0058】
本発明において、着色微粒子を構成する樹脂(ポリマー)について更に説明する。本発明に係わる樹脂(ポリマー)については各種用いることが可能であるが、該樹脂(ポリマー)のTgは、少なくとも1種以上はTgが10℃以上であるものを用いる方が好ましく、本発明において使用可能な樹脂(ポリマー)は、前記のブロックイソシアネート基(イソシアネート基)或いはエポキシ基の様な官能基、また水酸基やカルボキシル基等を有するポリマーであり、それぞれの構成成分となるモノマーが入手可能であることから、重合性ビニルモノマーとの共重合から得られる共重合ポリマーが好ましい。これらの基を有するポリマーは、常法に従いラジカル重合法によって容易に合成することができる。
【0059】
前記の基をそれぞれ有するビニルモノマーと共に、共重合体を形成する好ましい共重合ビニルモノマーの具体例としては、例えば、酢酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、2−フェノキシエチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸〔2−アセトアセトキシエチル〕、トリエチレングリコールメタクリレート、エトキシトリエチレングリコールメタクリレート、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸フェニル、スチレン、α−メチルスチレン、マレイン酸、アクリロニトリル等のビニルモノマーが挙げられる。
【0060】
架橋結合を形成するためのイソシアネート基を有するモノマー成分(例えば前記カレンズMOI;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製))は、0.1〜30質量%、好ましくは0.3〜15質量%の範囲で含有されることで、前記イソシアネート基を有する樹脂が形成される。少ない場合架橋結合の形成が少ないために、本発明の効果がなく、また、多すぎると、樹脂の染料との相互作用や溶剤に対する親和性が大きく変化してしまう。
【0061】
本発明に係わる樹脂(ポリマー)としては、前記架橋に寄与する以外にも、また、ヒドロキシル基、カルボキシル基を有するモノマーを、また、スルホン酸基、燐酸基、4級アンモニウム基等の親水性基を有するモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のモノマーを20質量%以下の比率で用いてもよい。これらにより乳化後の分散体の対溶剤安定性が向上する。
【0062】
これら重合性ビニルモノマーを公知の手法を用い、前記イソシアネート基を有するビニルモノマーとラジカル共重合させることによって、本発明に係わる、未架橋のポリマーが得られる。これら前記イソシアネート基を有する未架橋の樹脂(ポリマー)を更に前記ブロック基と反応させることでイソシアネート基がブロックイソシアネートとなる。
【0063】
又、イソシアネート架橋剤、好ましくはブロックイソシアネート架橋剤と反応させ、樹脂架橋を導入する場合には、イソシアネート基をもたない成分、即ち、前記のビニルモノマーおよび例えば、アミノ基、ヒドロキシル基等の官能基を有するモノマー成分を共重合させた樹脂を用いることができる。
【0064】
ヒドロキシル基を有する成分を導入するには、ヒドロキル基を有するモノマー成分としては、例えばヒドロキシルエチルメタアクリレートがありこれらのモノマーを予め共重合(30質量%以内の比率で)させて形成する。
【0065】
アミノ基を有する成分を導入するには、例えば、エポキシ基を含有するモノマー(例えば、グリシジルアクリレート等)を構成成分とする重合体(0.1〜30質量%、好ましくは0.3〜15質量%の範囲でエポキシ基を含有するモノマーが含有されている)をもちいることで、例えば、3−アミノプロパノール等の1級アミン化合物とこれを反応させ、活性な水素をもつアミノ基を有する樹脂を形成することが出来る。
【0066】
これらのヒドロキシル基あるいはアミノ基を有する樹脂は、色材と混合し、乳化した後、イソシアネート、好ましくはブロックイソシアネート基を有する架橋剤と混合することで架橋構造を導入出来る。
【0067】
また、こうして製造したヒドロキシル基あるいはアミノ基等を有する未架橋の樹脂(ポリマー)に、更に、イソシアネート基を有する化合物を反応させ、前記ヒドロキシル基或いはアミノ基と反応させることでペンダントしてイソシアネート基を樹脂中に導入することが出来る。例えばイソシアネート基を有する成分として、ポリイソシアネート化合物を反応させてイソシアネート基を導入することができる。
【0068】
本発明に係わる未架橋の樹脂(ポリマー)には、立体障害性を有する基を有する成分を導入することがより好ましい。立体障害性を有する基としては、粒子の安定性から親水性、かつ長鎖のポリエチレンオキサイド或いはポリプロピレンオキサイド等の基が好ましく、例えば、下記一般式(1)で表される構造を同時に含有している成分を有する樹脂が好ましい。
【0069】
一般式(1)
−(EO)m−(PO)n−(TO)p−R
ここにおいて、EOはエチレンオキサイド基、POはプロピレンオキサイド基、TOはテトラメチレンオキサイド基を表し、それぞれランダム或いはブロック共重合している。EO、POまたはTOで表されるこれらのエチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基、更にテトラメチレンオキサイド基は更に置換されていてもよい。m、n、pはそれぞれ0〜500までの整数であり、2≦m+n+p≦500、Rは水素原子、又は置換基を表し、好ましい置換基としてはヒドロキシル基またはアルキル基、アリール基またはヘテロ環基等の置換基が挙げられる。アルキル基としては、メチル、エチル、ブチル等炭素数1〜22までの直鎖、或いは分岐のアルキル基、またやはり炭素数1〜22までのシクロプロピル基、シクロペンチル基等の脂環式基であってもよい。これらはさらに他の置換基で置換されていてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等の基であり、さらに置換基で置換されていてもよい。また、ヘテロ環基としては、アジリジン、ピロリジン、フラン、チオフェン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピリジン、ピリダジン等のヘテロ環基があげられ、これらに限定されないが、これらのヘテロ環基はさらに置換基を有していてもよい。
【0070】
一般式(1)で表される、親水性かつ立体障害性を有するポリエチレンオキサイド或いはポリプロピレンオキサイド等の基を有する樹脂は、これを別に調製して、架橋構造を形成するために用いられる前記イソシアネート基或いはブロックイソシアネート基を有する樹脂と混合して用いてもよいが、好ましいのは、親水性かつ立体障害性を有するポリエチレンオキサイド或いはポリプロピレンオキサイド等の基を有する樹脂が、同時に架橋構造を形成するための前記イソシアネート基或いはブロックイソシアネート基を有する樹脂であって、樹脂ポリマー中にこれらの基を同時に有する均一な構造を有する樹脂(ポリマー)であれば好ましい。
【0071】
ポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基等の基は、親水性の基であるが、前記調製された着色微粒子の表面を立体的に保護すると考えられ、粒子間の架橋を抑え、凝集を抑え、それにより微粒子で安定な分散体を得ることができる。あまり疎水性の高い基では、粒子表面を覆う効果が小さくなるためと考えられるが、本発明の効果が小さくなる。特に分散後に、ブロックイソシアネートにより架橋する場合にも、ブロック基を開裂させるために加温等が必要であり、微粒子分散体の安定性を高める効果がある。
【0072】
前記親水性のポリエチレンオキサイド鎖やポリプロピレンオキサイド鎖をポリマー中に導入するには、前記一般式(1)で表される基を含有するビニルモノマーを用いて前記のビニルモノマーと共重合するのが好ましく、これらビニルモノマーの具体的な例としては日本油脂製ブレンマーシリーズ、代表的には、ブレンマーAMEシリーズ(ブレンマーAME−400等)、ブレンマーPMEシリーズ、(ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000等)、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー55PETシリーズ(ブレンマー55PET800等)、ブレンマーPPシリーズ(ブレンマーPP800等)がある。
【0073】
また、これらのポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基の末端となる前記一般式(1)においてRで表される基は、アミノ等の活性な水素を含有しないものが好ましい。活性水素を有する場合、架橋剤によって粒子間架橋が起こる可能性がある。
【0074】
本発明に用いる前記一般式(1)で表されるポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基又テトラメチレンオキサイド基を有する重合性ビニルモノマーを他の共重合成分とラジカル共重合させることで、これらの構成成分を有する樹脂(ポリマー)を得ることができるが、ポリマー成分中にポリエチレンオキサイド基、ポリプロピレンオキサイド基を有するモノマー成分は1〜60質量%、好ましくは3〜30質量%の割合で含有しているものが好ましい。少ない場合には当然、架橋剤による架橋反応が粒子間で起こるため凝集が避けられない。また、多すぎるるとポリマー全体が親水性となるため、色材との親和性が低下し、相分離等を起こすためやはり安定な微粒子分散体を形成しない或いは凝集が大きくなる等好ましくない。
【0075】
本発明において、好ましい樹脂(ポリマー)の例について、実施例中にいくつかの組成例を示した。
【0076】
次に、上記樹脂ポリマーとともに粒子中に封入される色材について説明する。
該色材としては、上記ポリマーに溶解或いは分散可能な色材であれば特に制限無く用いることができ、例えば、油性染料、分散染料、直接染料、酸性染料及び塩基性染料等を挙げることができるが、良好な封入性の観点から油性染料及び分散染料を用いることが好ましい。上記分散染料として、特に好ましい具体例を以下に示すが、これのみに限定されるものではない。特に好ましい具体例としては、C.I.ディスパーズイエロー5、42、54、64、79、82、83、93、99、100、119、122、124、126、160、184:1、186、198、199、204、224及び237;C.I.ディスパーズオレンジ13、29、31:1、33、49、54、55、66、73、118、119及び163;C.I.ディスパーズレッド54、60、72、73、86、88、91、92、93、111、126、127、134、135、143、145、152、153、154、159、164、167:1、177、181、204、206、207、221、239、240、258、277、278、283、311、323、343、348、356及び362;C.I.ディスパーズバイオレッド33;C.I.ディスパーズブルー56、60、73、87、113、128、143、148、154、158、165、165:1、165:2、176、183、185、197、198、201、214、224、225、257、266、267、287、354、358、365及び368;並びにC.I.ディスパーズグリーン6:1及び9等が挙げられる。一方、上記油性染料としては、以下に限定されるものではないが、特に好ましい具体例としては、例えば、C.I.ソルベント・ブラック3、7、27、29及び34;C.I.ソルベント・イエロー14、16、19、29、56及び82;C.I.ソルベント・レッド1、3、8、18、24、27、43、51、72、73、132及び218;C.I.ソルベント・バイオレット3;C.I.ソルベント・ブルー2、11及び70;C.I.ソルベント・グリーン3及び7;並びにC.I.ソルベント・オレンジ2等が挙げられる。
【0077】
また、水や各種有機溶剤に不溶な顔料をポリマー媒体中に分散して用いることも可能である。
【0078】
本発明に使用できる顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0079】
具体的な有機顔料を以下に例示する。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0080】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138等が挙げられる。
【0081】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0082】
本発明のインクに使用する顔料分散体の平均粒径は10〜200nmであることが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。顔料分散体の平均粒径が150nmを越えると光沢メディアに記録した画像では光沢感の劣化が起こり、トランスペアレンシーメディアに記録した画像では著しい透明感の劣化が起こる。また、顔料分散体の平均粒径が10nm未満になると顔料分散体の安定性が悪くなり易く、インクの保存安定性が劣化し易くなる。
【0083】
顔料分散体の粒径測定は、光散乱法、電気泳動法、レーザードップラー法等を用いた市販の粒径測定機器により求めることができる。また、透過型電子顕微鏡による粒子像撮影を少なくとも100粒子以上に対して行い、この像をImage−Pro(メディアサイバネティクス製)等の画像解析ソフトを用いて統計的処理を行うことによっても求めることが可能である。
【0084】
色材として、あるいは、特開平9−277693号、特開平10−20559号、特開平10−30061号に示されるような、金属錯体色素も使用可能である。たとえば、特開平10−20559号に記載の一般式(I)及び一般式(II)で表される色素が使用可能である。
【0085】
【化2】
【0086】
一般式(I)において、X1は、金属イオンと少なくとも2座の配位結合を形成可能な構造を有する原子の集まりを表し、Y1は芳香族炭化水素環、5員或いは6員の複素環又は−L4=Y2を表し、Y2は含窒素の5員或いは6員の複素環を表す。L1、L4は置換又は非置換のメチン基並びに窒素原子を表し、L2、L3は置換又は非置換のメチン基を表す。Mは金属イオンを表し、X1で形成される原子の集まりと少なくとも2座の配位結合を形成している。mは0、1、2又は3の整数を表し、n1は1、2又は3の整数を表す。又、一般式(II)において、X3、Y3、M及びn2はそれぞれ上記X1、Y1、M及びn1と同義である。
【0087】
さらにこれらの具体例として以下の色素が挙げられる。
【0088】
【化3】
【0089】
【化4】
【0090】
【化5】
【0091】
【化6】
【0092】
【化7】
【0093】
【化8】
【0094】
【化9】
【0095】
【化10】
【0096】
【化11】
【0097】
【化12】
【0098】
【化13】
【0099】
【化14】
【0100】
【化15】
【0101】
【化16】
【0102】
本発明においては、これらのポリマーを色材および有機溶剤共に混合し、水性媒体中おいて、必要であれば乳化剤を用いて、乳化・分散し、その後、有機溶剤等を留去することで、架橋前の着色微粒子分散体が得られるが、乳化の際にもちいることのできる乳化剤としては、通常のノニオン系乳化剤として、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンオクアルキルエーテル類;例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ソルビタンモノラウレート等のソルビタン高級脂肪酸エステル類等、
またアニオン系乳化剤として、例えば、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類;例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;例えば、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類;例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、等のアルキルスルホコハク酸エステル塩及びその誘導体類等を用いることができる。
【0103】
また、前記の乳化剤に代え、或いはそれに加え、重合可能な乳化剤(反応性乳化剤)を用いるのが好ましい。
【0104】
反応性乳化剤としては、アニオン系及びノニオン系のいづれの乳化剤でも特に限定されず、例えば、(メタ)アリル基、(メタ)アクリル基、スチリル基などのラジカル重合性不飽和基を有する乳化剤が単独で又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0105】
反応性乳化剤としては、アニオン系及びノニオン系のいづれの乳化剤でも特に限定されず、例えば、(メタ)アリル基、(メタ)アクリル基、スチリル基などのラジカル重合性不飽和基を有する乳化剤が単独で又は2種類以上組み合わせて使用できる。
【0106】
このようなアニオン系反応性乳化剤としては、例えば、下記一般式(2)〜(5)で表される反応性乳化剤を挙げることができる。
【0107】
【化17】
【0108】
式中、R2は水素、メチル基、R3は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、R4は水素又はメチル基、R5は炭素数6〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、Xは単結合またはメチレン基、Mはアルカリ金属、mは1〜50の自然数、nは1〜50の自然数、qは0又は1である。
【0109】
上記一般式(2)で表されるアニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば、「アデカリアソープ SE−10N」、「アデカリアソープ SE−20N」、「アデカリアソープ SE−30N」(以上、旭電化工業(株)製)が、上記一般式(3)で表されるアニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば、「アクアロン HS−05」、「アクアロン HS−10」、「アクアロン HS−20」、「アクアロン HS−30」(以上、第一工業製薬(株)製)等が、また、上記一般式(4)のアニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば「ラテムル S−120」、「ラテムル S−120A」、「ラテムル S−180」、「ラテムル S−180A」(以上、花王(株)製)、「エレミノールJS−21」(以上、三洋化成工業(株)製)等が、一般式(5)のアニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば「アントックス MS−60」(日本乳化剤(株)製)を挙げることができる。
【0110】
その他、アニオン系反応性乳化剤としては、例えば「ラテムル ASK」(花王(株)製)等のアルキルアルケニルコハク酸エステル塩系反応性乳化剤;例えば「エレミノール RS−30」(三洋化成工業(株)製)等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート硫酸エステル塩系反応性乳化剤;例えば「RA−1120」、「RA−2614」(以上、日本乳化剤(株)製)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪族不飽和ジカルボン酸エステル塩系反応性乳化剤;例えば「アントックス MS−2N」(日本乳化剤(株)製)等の(メタ)アクリル酸スルホアルキルエステル塩系反応性乳化剤;フタル酸ジヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート硫酸エステル塩系反応性乳化剤;例えば「H−3330PL」(第一工業製薬(株)製)等のモノもしくはジ(グリセロール−1−アルキルフェニル−3−アリル−2−ポリオキシアルキレンエーテル)リン酸エステル塩系反応性乳化剤等が、また、ノニオン系反応乳化剤としては、例えば、下記一般式(6)及び(7)で示される反応性乳化剤を挙げることができる。
【0111】
【化18】
【0112】
式中、R2は水素、メチル基、R3は炭素数6〜18のアルキル基、mは1〜50の自然数、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基、R4は水素又はメチル基、Xは単結合またはメチレン基、Mはアルカリ金属である。
【0113】
上記一般式(6)で表されるノニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」(以上、旭電化工業(株)製)等が、一般式(6)で表されるノニオン系反応性乳化剤の具体例としては、例えば「アクアロン RN−10」、「アクアロン RN−20」、「アクアロン RN−30」、「アクアロン RN−50」(以上、第一工業製薬(株)製)等が、またその他、例えば「RMA−564」、「RMA−568」(以上、日本乳化剤(株)製)等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系反応性乳化剤;例えば「RMA−1114」(日本乳化剤(株)製)等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(メタ)アクリレート系反応性乳化剤等も挙げることができる。
【0114】
これら反応性乳化剤の使用量は、ポリマーの合計100質量部当たり、一般に0.1〜30質量部、好ましくは2〜25質量部、特に好ましくは3〜20質量部の範囲で用いるのがよい。
【0115】
これらの乳化剤は、粒子近傍に安定な電気二重層を形成すると同時に、樹脂との反応性を有するために、乳化時或いは乳化後に、樹脂中にポリエチレンオキサイド鎖、ポリプロピレンオキサイド鎖と共に架橋を導入でき好ましい。
【0116】
これらの色材および前記樹脂からなる着色微粒子については、各種の乳化法で製造することができる。乳化法としては、各種の方法を用いることができる。それらの例は、例えば、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エムシー」の86ページの記載にまとめられている。本発明においては、特に、超音波、高速回転せん断、高圧による乳化分散装置を使用することが好ましい。
【0117】
超音波による乳化分散では、いわゆるバッチ式と連続式の2通りが使用可能である。バッチ式は、比較的少量のサンプル作製に適し、連続式は大量のサンプル作製に適する。連続式では、たとえば、UH−600SR(株式会社エスエムテー製)のような装置を用いることが可能である。このような連続式の場合、超音波の照射時間は、分散室容積/流速×循環回数で求めることができる。超音波照射装置が複数ある場合は、それぞれの照射時間の合計としてもとめられる。超音波の照射時間は実際上は10000秒以下である。また、10000秒以上必要であると、工程の負荷が大きく、実際上は乳化剤の再選択などにより乳化分散時間を短くする必要がある。そのため10000秒以上は必要でない。さらに好ましくは、10秒以上、2000秒以内である。
【0118】
高速回転せん断による乳化分散装置としては、「機能性乳化剤・乳化技術の進歩と応用展開 シー エム シー」の255〜256ページに記載されているような、ディスパーミキサーや、251ページに記載されているようなホモミキサー、256ページに記載されているようなウルトラミキサーなどが使用できる。これらの型式は、乳化分散時の液粘度によって使い分けることができる。これらの高速回転せん断による乳化分散機では、攪拌翼の回転数が重要である。ステーターを有する装置の場合、攪拌翼とステーターとのクリアランスは通常0.5mm程度で、極端に狭くはできないので、せん断力は主として攪拌翼の周速に依存する。周速が5m/S以上150m/S以内であれば本発明の乳化・分散に使用できる。周速が遅い場合、乳化時間を延ばしても小粒径化が達成できない場合が多く、150m/Sにするにはモーターの性能を極端に上げる必要があるからである。さらに好ましくは、20〜100m/sである。
【0119】
高圧による乳化分散では、LAB2000(エスエムテー社製)などが使用できるが、その乳化・分散能力は、試料にかけられる圧力に依存する。圧力は104kPa〜5×105kPaの範囲が好ましい。また、必要に応じて数回乳化・分散を行い、目的の粒径を得ることができる。圧力が低すぎる場合、何度乳化分散を行っても目的の粒径は達成できない場合が多く、また、圧力を5×105kPaにするためには、装置に大きな負荷がかかり実用的ではない。さらに好ましくは5×104kPa〜2×105kPaの範囲である。
【0120】
これらの乳化・分散装置は単独で用いてもよいが、必要に応じて組み合わせて使用することが可能である。コロイドミルや、フロージェットミキサなども単独では本発明の目的を達成できないが、本発明の装置との組み合わせにより、短時間で乳化・分散を可能にするなど本発明の効果を高めることが可能である。
【0121】
本発明においては、前記油溶性染料を、前記ブロックイソシアネート基等の官能基を有する、また好ましくは、さらにポリエチレンオキサイド基またはポリプロピレンオキサイド基等を有する重合ポリマー樹脂と共に、酢酸エチル等の有機溶剤に溶解・混合した後、前記分散装置により乳化・分散し、溶剤を除去して水性の分散体を形成した後、架橋剤として例えば、前記ジエチレントリアミン、3−アミノプロパノール等のアミン化合物を架橋剤として、乳化、分散した水性分散体に混合して架橋させる。尚乳化分散は、ブロック基を開裂温度以下60℃以下、好ましくは50℃以下の温度で行う。架橋剤と混合後は、ブロック基の開裂反応を促進するために、水性分散体を60〜100℃、好ましくは60〜95℃の範囲で加温し、十分な時間、形成される架橋結合によって異なるが、例えば、1分〜5時間反応させ、微粒子内部での架橋反応を十分行わせる。
【0122】
ここにおいて水性分散体とは水を主体とする水系の媒体中に前記着色微粒子が分散しているものをいい、例えば非水溶性、或いは水溶性の有機溶媒が混合されていてもよいが、水を主体とする水系の媒体とは、媒体中での水の割合が50%以上のものをいい、水性インクの水性も同じ意味である。
【0123】
また、前記本発明に係わる、前記の樹脂ポリマー、色材等を溶解分散する有機溶剤としては、低沸点(例えば150℃以下、好ましくは100℃以下)の有機溶剤が好ましく、具体例としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、ブタノール、シクロヘキサノン等の溶剤を好ましく用いることができる。
【0124】
本発明に係わる着色微粒子分散体は、このようにして形成した色材および樹脂(ポリマー)を含有する着色微粒子散体を種粒子として、これに重合可能な素材を添加、重合させ、さらにコアシェル構造とすることが好ましい。
【0125】
重合可能な素材を添加して、種粒子上でシード重合させる方法としては、色材と樹脂を含有する着色微粒子の分散体を前記により形成した後、重合可能な素材として重合性不飽和二重結合を有するモノマーを添加し活性剤の存在下、乳化重合を行って、重合と同時に種粒子となる着色微粒子表面に沈着させる方法が本発明においては好ましい。この方法で形成した場合、好ましい場合には、後添加した重合性不飽和二重結合を有するモノマーは、前記種粒子上で重合してポリマーシェルを形成する。
【0126】
色材と樹脂からなる前記着色微粒子を種粒子として、これに後添加して、種粒子上で重合させる重合性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸等、アクリルアミド類等から選ばれる化合物、特スチレンや(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が好ましいが、これらのモノマーに加えて、分子内にヒドロキシル基を含有する重合性不飽和二重結合を有するモノマー、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、或いはヒドロキシル基を有する重合性不飽和二重結合を有するモノマーを、後添加する原料モノマー全体の中で、最大50%、その他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーと混合して用い共重合させることが粒子の安定性を得る上で好ましい。
【0127】
このような共重合体として、例えば、スチレン/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレン/アクリル酸2−ヒドロキシエチル等が好ましい例としてあげられる。
【0128】
また、シェルの安定性を増す等の理由から、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸を含有するモノマー或いはスルホン酸を含有するモノマー等、pKa値で3〜7の解離性基を含有するエチレン性不飽和モノマーを共重合成分の10%以下用いてもよい。これらのモノマー成分をシェル形成に用いることによって、当該コア/シェル着色微粒子の水分散体の安定性が向上する。
【0129】
また、シェル形成中、シェル形成後に架橋剤により架橋反応をさせることができる。
【0130】
前記酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル類等の重合性不飽和二重結合を有するモノマーと共に、多官能性ビニルモノマー例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレートまたはジビニルベンゼン等を共重合成分として最大10%程度含有させて用いたり、イソシアネート基、エポキシ基等を含有する前記ビニルモノマーを最大50%含有させて混合し、これと反応する架橋剤を調製後に用い反応させ架橋構造を導入したり、樹脂成分中の官能基と反応する架橋剤をもちいたり、シェル形成と同時に、或いはシェル形成後にシェル内で3次元架橋反応をさせることができる。
【0131】
本発明においては、シェルに用いられるポリマー量は総ポリマー量の5質量%以上95質量%以下である。5質量%より少ないとシェルの厚みが不十分で、色材を多く含有するコアの一部が粒子表面に現れ易くなる。また、シェルのポリマーが多すぎると、コアの色材保護能低下を起こし易い。さらに好ましくは10質量%以上90質量%以下である。
【0132】
色材の総量は総ポリマー量に対して20質量%以上1000質量%以下であることが好ましい。色材量がポリマーに比して少なすぎると吐出後の画像濃度が上がらず、また、色材質量が多すぎるとポリマーの保護能が十分に得られない。
【0133】
このようにして形成された本発明に係わる着色微粒子分散体の着色微粒子の体積換算平均粒径は10〜100nm、好ましくは20〜80nmであり、この粒径範囲において安定であるため、鮮やかな色を有すると同時に、インクとしたときの安定性に優れる。
【0134】
前記架橋反応により、染料含有したコアを形成する樹脂については、あまり架橋を導入して、色材との相分離を起こさない範囲で、また、シェルについては、好ましくは最表面であるが、後述するように、架橋の導入により粒子間架橋が起こらないような適度な範囲で架橋を導入する必要がある。
【0135】
また、シェルについても、粒子間架橋を抑えるために、シェル形成するモノマー成分として、多官能性ビニルモノマーのような架橋を形成する基、或いは架橋剤と反応して共に架橋結合を形成する基を含有するモノマー成分に加えて、前記のように、ポリエチレンオキサイド或いはポリプロピレンオキサイド等の立体障害性を有する基を有する成分を導入して、粒子間架橋を抑制することも好ましい。
【0136】
この様にしてシェルを形成した場合、本発明に係わる着色微粒子分散体が、実際にコアシェル化されているかを評価することは重要である。本発明においては、個々の粒子径が100nm以下と非常に微小であるため、分析手法は分解能の観点から限られる。このような目的に沿う分析手法としては、TEMやTOF−SIMSなどが適用できる。TEMによりコアシェル化した微粒子を観察する場合、カーボン支持膜上に分散液を塗布、乾燥させ観察することができる。TEMの観察像は、有機物であるポリマーの種類のみではコントラスト差が小さいため、コアシェル化されているかどうかを評価するために、微粒子を、4酸化オスミウム、4酸化ルテニウム、クロロスルホン酸/酢酸ウラニル、硫化銀等を用いて染色する必要がある。コアだけの微粒子を染色しそのTEM観察を行い、シェルを設けたものと比較する。さらに、シェルを設けた微粒子と設けていない微粒子を混合後、染色し、染色度合いの異なる微粒子の割合がシェルの有無に一致しているかの確認を行う。
【0137】
TOF−SIMSような質量分析装置では、粒子表面にシェルを設けることで表面近傍の色材量がコアだけの時よりも減少していることを確認する。色材にコアシェルのポリマーに含有されていない元素がある場合、その元素をプローブとして色材含有量の少ないシェルが設けられたかを確認することができる。
【0138】
即ち、色材含有率(濃度)は、TOF−SIMSによって、個々の微粒子表面について、先ず質量数1〜1000のイオンの総量を測定し、その中で染料に含有されるコアシェルのポリマーに含有されていない元素に由来するイオンの総量との比から求めることができる。この方法によりシェルとコア/シェル化を行っていないコア、それぞれの色材含有率を比較することによりそれぞれの色素含有率(濃度)を測定できる。TOF−SIMSでは、表面から深さ方向に数nmの元素分析ができるため本発明の様なコア/シェル微粒子の分析が可能である。
【0139】
そのような元素がない場合、適当な染色剤を用いてシェル中の色材含有量がシェルを設けていないものと比較することができる。
【0140】
又、コアシェル粒子をエポキシ樹脂内に埋胞し、ミクロトームで超薄い切片を作製、染色を行うことでコアシェル化はより明瞭に観察できる。上記のように、ポリマーや、色材にプローブとなりうる元素がある場合、TOF−SIMSやTEMによってコアシェルの組成、色材のコアとシェルへの分布量を見積もることもできる。
【0141】
本発明においては、シェルにおける色材含有率(濃度)が、コア/シェル化を行っていないコアにおける色材含有率(濃度)の0.8以下である。好ましくは0.5以下であり、更に好ましくは0.2以下である(勿論0或いは限りなく0に近い値であってもよい)。これにより、ポリマーコアが、色材の主たる部分を包含することで、その堅牢性や色調を保持するのに寄与し、一方ポリマーシェルは色材を包含したこれら微粒子のインクサスペンションとしての安定性を増す事に寄与すると共にメディア上での色材の定着促進、凝集の防止、画質の向上や色材の堅牢性、色調の保持にも貢献する。
【0142】
必要な粒子径を得るには、処方の最適化と、適当な乳化法の選定が重要である。処方は用いる色材、ポリマーによって異なるが、水中のサスペンションであるので、コアを構成するポリマーよりシェルを構成するポリマーの方が一般的に親水性が高いことが必要である。また、シェルを構成するポリマーに含有される色材は、前記のようにコアを構成するポリマー中より少ないことが好ましく、色材もシェルを構成するポリマーよりも親水性の低いことが必要である。親水性、疎水性は、例えば溶解性パラメータ(SP)を用いて見積もることができる。溶解性パラメータは、その値や、測定、計算法がPOLYMER HANDBOOK第4版(JOHN WILEY & SONS,INC.)675ページからの記載が参考になる。
【0143】
また、コア/シェルで用いられるポリマーは、その数平均分子量が500〜100000、特に1000〜30000であることが、印刷後の製膜性、その耐久性及びサスペンションの形成性の点から好ましい。
【0144】
また、本発明に係わる着色微粒子分散体の体積平均粒径の変動係数は80%以下が好ましく経時での粒径変動も少ない。変動係数は50%以下がさらに好ましい。
【0145】
体積平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)写真の投影面積(少なくとも100粒子以上に対して求める)の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して求めた。また、体積平均粒径とその標準偏差を求め、標準偏差を体積平均粒径で割ることで変動係数を求めた。或いは、動的光散乱法を利用して変動係数を求めることも出来る。例えば、大塚電子製レーザー粒径解析システムや、マルバーン社製、ゼータサイザーを用いて求める事が出来る。
【0146】
粒径の変動係数は、粒径の標準偏差を粒径で割った値であるが、この値が大きいほど粒径の分布が広い事を意味する。体積平均粒径の変動係数が80%以上であると、粒径分布が非常に広くなり、粒子間の表面物性にばらつきが生じ、これにより粒子の凝集を招きやすい。また、粒子の凝集はメディア上で、色材の光散乱を招き易く、画質の低下も招き易くする。
【0147】
この様にして形成された、本発明にかわる着色微粒子分散体は、トータルのポリマー量として本発明のポリマーエマルジョン型水性インク中にポリマーが0.5〜50質量%配合されることが好ましく、0.5〜30質量%配合されることが更に好ましい。上記ポリマーの配合量が0.5質量%に満たないと、色材の保護能が十分でなく、50質量%を超えると、サスペンションのインクとしての保存安定性が低下したり、ノズル先端部でのインク蒸発に伴うインクの増粘やサスペンションの凝集が起こることによってプリンタヘッドの目詰りが起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0148】
一方、上記色材は、該インク中に1〜30質量%配合されることが好ましく、1.5〜25質量%配合されることが更に好ましい。上記色材の配合量が1質量%に満たないと印字濃度が不十分であり、30質量%を超えるとエマルジョンの経時安定性が低下し、凝集等による粒径増大の傾向があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0149】
本発明の水性インクは、水を主体とする水性媒体とし、上記色材を封入したポリマーのエマルジョンからなり、該エマルジョンには従来公知の各種添加剤、例えば多価アルコール類のような湿潤剤、分散剤、シリコーン系等の消泡剤、クロロメチルフェノール系等の防黴剤及び/又はEDTA等のキレート剤、又、亜硫酸塩等の酸素吸収剤等が含有されていてもよい。
【0150】
本発明に係わる着色微粒子分散体は、内部が架橋されており、耐溶剤性が高いため、これらの添加剤のうち、各種の有機溶剤、特に多価アルコール類のような以下に示す湿潤剤(低表面張力を実現する効果がある)との共存下での安定性が高く、凝集を起こしにくい。
【0151】
湿潤剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、ジエチルカルビトール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等、また、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びそのエーテル、アセテート類、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、トリエタノールアミン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素化合物類、ジメチルサルフォキサイド等のような水溶性有機溶剤があげられる。これらの一種又は二種以上を湿潤剤として使用することができる。これらの湿潤剤の配合量に特に制限はないが、上記インク中に好ましくは0.1〜50質量%配合することができ、更に好ましくは0.1〜30質量%配合することができる。
【0152】
また、上記分散剤としては、特に制限されるものではないが、そのHLB値が8〜18であることが、分散剤としての効果が発現し、サスペンションの粒径の増大抑制効果がある点から好ましい。
【0153】
分散剤として市販品も使用することができる。そのような市販品としては、例えば花王(株)製の分散剤デモールSNB,MS,N,SSL,ST,P(商品名)が挙げられる。
【0154】
分散剤の配合量に特に制限はないが、本発明のインク中に、0.01〜10質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.01質量%に満たないとサスペンションの小粒径化が困難であり、10質量%を超えるとエマルジョンの粒径が増大したりエマルジョン安定性が低下し、ゲル化するおそれがあり、上記範囲内とすることが好ましい。
【0155】
また、上記消泡剤としては、特に制限なく、市販品を使用することができる。そのような市販品としては、例えば信越シリコーン社製のKF96、66、69、KS68、604、607A、602、603、KM73、73A、73E、72、72A、72C、72F、82F、70、71、75、80、83A、85、89、90、68−1F、68−2F(商品名)等が挙げられる。これら化合物の配合量に特に制限はないが、本発明のポリマーエマルジョン型水系インク中に、0.001〜2質量%配合されることが好ましい。該化合物の配合量が0.001質量%に満たないとインク調製時に泡が発生し易く、又、インク内での小泡の除去が難しく、2質量%を超えると泡の発生は抑えられるものの、印字の際、インク内でハジキが発生し印字品質の低下が起こる場合があるので、上記範囲内とすることが好ましい。
【0156】
本発明のインクジェット記録用水性インクを使用するインクジェットヘッドはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。又吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(R)型等)等など何れの吐出方式を用いても構わない。
【0157】
本発明のインクジェット記録用水性インクを用いた画像形成においては、例えば、インクジェット記録用水性インクを装填したプリンター等により、デジタル信号に基づきインクジェットヘッドよりインクを液滴として吐出させインク受容体に付着させることで、例えばインクジェット画像記録媒体上にインクジェット記録画像が形成されたインクジェットプリントが得られる。
【0158】
インクジェット画像記録媒体としては、例えば、普通紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙、光沢フィルム、OHPフィルムのいずれも使用することができ、なかでも例えば多孔質層が形成されている所謂空隙層を有する被記録媒体であれば好ましい。上述した支持体の素材或いは形状に特に限定されるものではなく、例えばシート状に形成されたもの以外に立体的な構造を有するものであってもよい。
【0159】
本発明の水性インクは、インクジェット記録用のインクとして以外に、例えば、一般の万年筆、ボールペン、サインペン等の筆記具用のインクとしても使用可能である。本発明のサスペンションを乾燥し、微粒の粉体を得ることもできる。得られた粉体は、電子写真のトナーなどにも使用可能である。
【0160】
【実施例】
以下に、合成例、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これら実施例の範囲に限定されるものではない。
【0161】
《樹脂合成1》
0.3リットルの四つ口セパラブルフラスコに滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、撹拌装置及び還流冷却管を付し、脱水したメチルエチルケトン20gをしこみ、70℃に加熱した。表1の組成割合のモノマー(単位g)を秤量し、更にN,N′−アゾビスイソバレロニトリル2gを前記モノマーに加えた混合液を、フラスコ中に2時間かけて滴下し、同温度にて5時間反応させた。その後メチルエチルケトン80gを添加し冷却、ポリマー50質量%のポリマー溶液を得た。
【0162】
【表1】
【0163】
ブレンマーPME−1000:
−(EO)m−CH3 (m≒23)を有するメタアクリレート系樹脂
ブレンマーPME−4000:
−(EO)m−CH3 (m≒90)を有するメタアクリレート系樹脂
ブレンマーG:
グリシジルメタクリレート
上記はすべて日本油脂製。
【0164】
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ST:スチレン、MMA:メタクリル酸メチル、MAA:メタアクリル酸、SMA:メタクリル酸ステアリル、カレンズMOI:2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工製)。
【0165】
モノマーAは、10gのブレンマーGとハイドロキノンモノメチルエーテル(ブレンマーGに対して0.1質量%)を50℃に保温した3−アミノプロパノール5.5gに1時間かけ滴下、8時間反応させたもの。
【0166】
《着色微粒子分散体の製造》
実施例1
〈主ポリマー中のイソシアネートをブロックイソシアネートとした着色微粒子分散体の製造〉
表1の樹脂R1を12g含む液24gに、2gのイソホロンジイソシアネートと0.1gのジブチルチンジラウレートを加え40℃で60分反応させた。MEK12g添加後、その溶液に、激しく攪拌ながら1gのNaHSO3を含む15質量%の水溶液を添加し、完全に反応させた(樹脂▲2▼)。得られた樹脂液をクレアミックスCLM−0.8S(エムテクニック(株)社製)のポットに12gのC.I.Solvent Yellow 162(▲1▼染料)、及び120gの酢酸エチルと共に入れ、攪拌して染料を完全溶解させた。さらに、KH−05(第一工業製)(▲3▼乳化剤)を2質量%含む水溶液240gを添加後、40℃に温度を保ちながら回転数12000rpmで5分間乳化した。溶剤を40℃で減圧除去した後、ジエチレントリアミン0.35gを添加した。そのまま90℃に昇温し120分架橋反応させた。
【0167】
この分散液を65℃に保温して、MMA3gと、エチレングリコールジメタクリレートを0.15g、過硫酸カリウム0.1gを含む水溶液3gをそれぞれ1時間かけて添加し、そのまま5時間反応させて、コアシェル構造を有する着色微粒子分散体1を得た。
【0168】
比較例1
実施例1で、ブロック剤のNaHSO3を用いなかったこと、また架橋反応は、60℃で120分行った以外は同様にして比較の着色微粒子分散体1を得た。
【0169】
実施例2
表1の樹脂R2を12gを含む液24gに、激しく攪拌ながら0.9gのNaHSO3を含む15%の水溶液を添加し、完全に反応させた(樹脂▲2▼)。得られた樹脂液をクレアミックスCLM−0.8S(エムテクニック(株)社製)のポットに12gのC.I.Solvent Yellow 162(▲1▼染料)、及び120gの酢酸エチルと共に入れ、攪拌して染料を完全溶解させた。さらに、KH−05(第一工業製)(▲3▼乳化剤)を2質量%含む水溶液240gを添加後、40℃に温度を保ちながら回転数12000rpmで5分間乳化した。溶剤を40℃で減圧除去した後、ジエチレントリアミン0.3gを添加した。そのまま90℃に昇温し120分架橋反応させた。
【0170】
この分散液を65℃に保温して、MMA3gと、エチレングリコールジメタクリレートを0.15g、ABN−V(2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル);日本ヒドラジン製)0.1gの混合液を1時間かけて添加し、そのまま5時間反応させて、コアシェル構造を有する着色微粒子分散体2を得た。
【0171】
比較例2
実施例2で、NaHSO3を使用しなかったこと及び架橋反応は、60℃で120分行った以外は同様にして比較の着色微粒子分散体2を得た。
【0172】
実施例3
表1の樹脂R3を12gを含む液24gを50℃に保温し、3−アミノプロパノール5.5gに1時間かけ滴下、8時間反応させた(樹脂▲2▼)。その樹脂をクレアミックスCLM−0.8S(エムテクニック(株)社製)のポットに、12gのシアン染料FSB1504(▲1▼染料)、及び120gの酢酸エチルと共に入れ、攪拌して染料を完全溶解させた。さらに、ドデシル硫酸ナトリウム(▲3▼乳化剤)を1.5質量%含む水溶液260gを添加後、40℃に温度を保ちながら回転数12000rpmで5分間乳化した。酢酸エチルを40℃で減圧除去した後、ブロックイソシアネートF8879D(第一工業製薬製)5.0gを添加し、pH7.5に調整後、90℃で120分架橋反応させた。着色微粒子分散体3を作製した。
【0173】
比較例3
実施例3において、ブロックイソシアネートF8879Dの代わりに、スミジュールN3300(住化バイエルウレタン製)を添加した以外は同様にして比較の着色微粒子分散体3を作製した。
【0174】
実施例4
表1の樹脂R4を12gを含む液24g(樹脂▲2▼)にトリエタノールアミン2.0gを添加後、クレアミックスCLM−0.8S(エムテクニック(株)社製)のポットに12gのマゼンタ染料JD−263(三井化学製)(▲1▼染料)、酸無水物EPICLON B−4400(大日本インキ製)及び120gの酢酸エチルを入れ、攪拌して染料を完全溶解させた。さらに、KH−05(第一工業製)(▲3▼乳化剤)を2質量%含む水溶液270gを添加後、40℃に温度を保ちながら回転数12000rpmで5分間乳化した。酢酸エチルを40℃で減圧除去した後、ブロックイソシアネートF8879D(第一工業製薬製)3.0gを添加し、60℃で120分架橋反応させた。この様に着色微粒子分散体4を作製した。
【0175】
比較例4
実施例4で、ブロックイソシアネートF8879Dの代わりにスミジュールN3300(ポリイソシアネート硬化剤;住化バイエルウレタン製)を添加した以外は同様にして比較の着色微粒子分散体4を作製した。
【0176】
《評価》
得られた分散液中での粒子径(体積平均粒子径)を比較した。体積平均粒子径は、大塚電子製レーザー粒径解析システムを用いて測定した(nm)。
【0177】
濾過性を、0.45μmのシリンジフィルターの濾過量で求めた。濾過量が多いほど、粗大粒子が少なく、分散体の均一性に優れている事を示す。
【0178】
また、TEM写真の投影面積の平均値から得られた円換算平均粒径を、球形換算して体積平均粒子径とその標準偏差を求め体積平均粒子径で割ることで変動係数(%)を求めた。
【0179】
【表2】
【0180】
以上のように、本発明により、粒子径がより小さく、分布が狭く、濾過性に優れた架橋粒子を得られることが示された。
【0181】
【発明の効果】
凝集が少なく製造安定性、分散安定性に優れた耐溶剤性の向上したインクジェットインク用として好適な着色微粒子分散体が得られた。
Claims (11)
- 色材と樹脂を混合し水に分散させてなる着色微粒子分散体であって、着色微粒子が架橋構造を有し、該架橋構造が、ブロックイソシアネートの反応により形成されていることを特徴とする着色微粒子分散体。
- ブロックイソシアネートが100℃以下で開裂することを特徴とする請求項1に記載の着色微粒子分散体。
- ブロックイソシアネートが重亜硫酸塩でブロックされていることを特徴とする請求項1または2に記載の着色微粒子分散体。
- ブロックイソシアネートを有するポリマーを用いて微粒子内部に架橋構造を有する着色微粒子を製造する着色微粒子の製造方法において、ブロックイソシアネートの開裂温度以下で、ポリマーと色材を非水性有機溶剤中に溶解して水中に乳化分散し、架橋剤を添加した後、乳化分散液をブロックイソシアネートの開裂温度以上に加熱することで架橋反応を行うことを特徴とする着色微粒子の製造方法。
- 架橋された樹脂が下記一般式であらわされる基を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
−(EO)l−(PO)m−(TO)n−R
(式中、Eはエチレン基、Pはプロピレン基をTはテトラメチレン基を表し、l、m、nはそれぞれ0〜500迄の整数を表し、2≦l+m+n≦500、Rは水素原子または置換基を表す。) - 重合可能な乳化剤が用いられていることを特徴とする請求項1〜3および5のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
- 体積換算平均粒径が10〜100nmであることを特徴とする請求項1〜3、5および6のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
- 体積平均粒径の変動係数が80%以下であることを特徴とする請求項1〜3および5〜7のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体。
- 請求項1〜3および5〜8のいずれか1項に記載の着色微粒子分散体を含むことを特徴とする水性インク。
- インクジェット用インクであることを特徴とする請求項9に記載の水性インク。
- デジタル信号に基づきインクジェットヘッドより請求項10に記載の水性インクを液滴として吐出させインク受容体に付着させることを特徴とする画像形成方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003066289A JP2004269823A (ja) | 2003-03-12 | 2003-03-12 | 着色微粒子分散体とそれを含有する水性インク |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003066289A JP2004269823A (ja) | 2003-03-12 | 2003-03-12 | 着色微粒子分散体とそれを含有する水性インク |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004269823A true JP2004269823A (ja) | 2004-09-30 |
Family
ID=33127053
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003066289A Pending JP2004269823A (ja) | 2003-03-12 | 2003-03-12 | 着色微粒子分散体とそれを含有する水性インク |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004269823A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008156463A (ja) * | 2006-12-22 | 2008-07-10 | Kao Corp | 架橋コアシェルポリマー粒子の分散体の製造方法 |
JP2016138229A (ja) * | 2015-01-29 | 2016-08-04 | 株式会社シマノ | インクジェット印刷用インク |
WO2019044511A1 (ja) | 2017-08-29 | 2019-03-07 | 富士フイルム株式会社 | インク組成物及びその製造方法、並びに画像形成方法 |
WO2022111689A1 (zh) * | 2020-11-30 | 2022-06-02 | 珠海天威新材料股份有限公司 | 一种水性颜料色浆及其制备方法 |
-
2003
- 2003-03-12 JP JP2003066289A patent/JP2004269823A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008156463A (ja) * | 2006-12-22 | 2008-07-10 | Kao Corp | 架橋コアシェルポリマー粒子の分散体の製造方法 |
JP2016138229A (ja) * | 2015-01-29 | 2016-08-04 | 株式会社シマノ | インクジェット印刷用インク |
WO2019044511A1 (ja) | 2017-08-29 | 2019-03-07 | 富士フイルム株式会社 | インク組成物及びその製造方法、並びに画像形成方法 |
US11421120B2 (en) | 2017-08-29 | 2022-08-23 | Fujifilm Corporation | Ink composition, method for producing the same, and image-forming method |
WO2022111689A1 (zh) * | 2020-11-30 | 2022-06-02 | 珠海天威新材料股份有限公司 | 一种水性颜料色浆及其制备方法 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2004269558A (ja) | 着色微粒子分散体およびそれを含有する水性インク | |
JP3829370B2 (ja) | 記録液用アニオン性マイクロカプセル化顔料含有水性分散液及び記録液 | |
EP0796901B1 (en) | Ink jet recording liquid | |
EP2216375B1 (en) | Ink, ink jet recording method, ink cartridge, and ink jet recording apparatus | |
JP2010513649A (ja) | 水性インクジェット流体 | |
JP2012036251A (ja) | インクジェット用水性顔料分散液およびインク | |
EP1897919A1 (en) | Crosslinked core/shell polymer particles | |
JP5722617B2 (ja) | インクジェット記録用着色剤分散体の製造方法 | |
WO2010071177A1 (ja) | インクジェット記録用水系インク | |
JP2002338856A (ja) | 色材含有微粒子及びポリマーエマルジョン型水系インク | |
JP4281318B2 (ja) | 着色微粒子分散体、水性インク及びそれを用いた画像形成方法 | |
JP2004269823A (ja) | 着色微粒子分散体とそれを含有する水性インク | |
JPH0881646A (ja) | インク | |
JP3207838B2 (ja) | スターポリマー添加剤含有インクジェット用インキ | |
JP5451057B2 (ja) | インクジェット記録用水分散体の製造方法 | |
JP3483372B2 (ja) | 水系微粒子分散インク | |
JP2004285215A (ja) | 着色微粒子分散体とそれを含有する水性インク | |
JP2001247800A (ja) | 水系インクの製造法 | |
JP2004217788A (ja) | 着色微粒子分散体とそれを含有する水系インク | |
JP2004182878A (ja) | 着色微粒子分散体および水性インク | |
JP4277479B2 (ja) | 着色微粒子分散体インク、インクジェット用水性インクおよび画像形成方法 | |
JP2004067861A (ja) | インクジェット用水性インクセット | |
JP2000219749A (ja) | 水性顔料分散体、ならびに水性記録液 | |
JP2004059614A (ja) | インクジェット用インク及びそれを用いたインクジェット画像形成方法及びインクジェット記録物 | |
JP4389444B2 (ja) | 着色微粒子分散体、水性インク及びそれを用いた画像形成方法。 |