JP2004269637A - 難燃性樹脂組成物およびそれを用いたシート - Google Patents

難燃性樹脂組成物およびそれを用いたシート Download PDF

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Abstract

【課題】難燃性を有し、耐候性、施工性に優れた塩化ビニルに替わる柔軟なシートの提供。
【解決手段】イソシアネート基と反応可能な官能基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種の構造を側鎖に有するビニル系重合体(A)、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(B)、レゾルシンポリホスフェート化合物(C)、およびヒドロカルビルオキシアミンまたはヒドロキシヒドロカルビルオキシアミンからなるNOR−立体障害性アミン(D)を含む難燃性樹脂組成物であって、難燃性樹脂組成物の固形分を基準として、前記レゾルシンポリホスフェート化合物(C)の含有量が3〜30重量%であり、かつNOR−立体障害性アミン(D)の含有量が0.05〜5重量%である難燃性樹脂組成物、およびその硬化物からなるシート。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、着色、装飾、表示、包装または保護を目的として、主に建築構造物、屋外看板、土木構造物、産業機器、交通標識等表面に施工される、特に耐候性、施工性に優れかつ難燃性を付与したシート、および該シートの作成に好適な難燃性樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、現在、自動車、二輪車、モーターボート、スノーモービル、家電、電子機器等の部品として様々なプラスチックシートの成形体が使用されている。また、プラスチックシートは、外装板、内装材、建材、各種案内板、交通標識、屋内・屋外広告、看板、シャッター、ウインドウなどに、着色、装飾、表示を施したり、さらには、耐候性や、防汚性、各種耐性等の種々の表面機能を付与する際にも使用されている。また、各種の物品の品質低下を防いだり、各機能を保護するための包装材料としても、様々なプラスチックシートが使用されている。
【0003】
屋外屋内を問わず不燃性または難燃性を必要とする壁紙、看板等の用途には、多くの場合、プラスチックシート用材料として、着色性、施工性、耐久性に優れ、自己消火性を有する半硬質もしくは軟質の塩化ビニル樹脂が用いられている。しかし、塩化ビニル樹脂シートは、火災の際に塩化水素や猛毒のダイオキシンを発生する懸念がある。また、塩化ビニル樹脂シートは、シート中の可塑剤の移行により外観を損ねたり、被着体に移行して接着力を低下させたり、シートの膨張によりふくれ、しわを発生させるという問題がある。さらに、シート中の可塑剤が、表面や被着体に移行することにより、塩化ビニル樹脂シートの伸張性が失われ、成形加工時の状態が保持できなくなるという問題がある。
【0004】
そのため、近年塩化ビニル樹脂シートに代わる着色性、施工性、耐久性に優れるプラスチックシートとして、側鎖にポリエーテル、ポリエステル等の構造を有するビニル系重合体およびポリイソシアネート化合物を含む樹脂組成物の硬化物からなるシートが開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
このシートは、強靭で、伸張性、柔軟性を有し、成型加工性、耐候性、耐薬品性に優れており、従来使用されていた塩化ビニル樹脂シートの問題点を解消するものである。
【0005】
一方、火災時の有害ガスの発生またはリサイクル時の設備の腐食を生じることなく樹脂に難燃性を付与するために、ハロゲンを含まない難燃剤として、芳香族リン酸エステル化合物が使用されている(例えば、特許文献2参照。)。
また、ハロゲンを含まない難燃剤としては、高分子ヒンダードアミン系光安定剤も知られている(例えば、特許文献3参照。)。
さらに、樹脂に難燃性および安定性を付与するために、難燃剤と立体障害性アミンを組み合わせた組成物も知られている(例えば、特許文献4、5参照。)。
【0006】
【特許文献1】
国際公開WO02/057332号のパンフレット
【特許文献2】
特開2001−40172号公報
【特許文献3】
特開2001−254225号公報
【特許文献4】
特開2002−69384号公報
【特許文献5】
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、側鎖にポリエーテル、ポリエステル等の構造を有するビニル系重合体およびポリイソシアネート化合物を含む樹脂組成物の硬化物からなるシートは、塩化ビニル樹脂と異なり不燃性・難燃性という性質を備えていないため、不燃性・難燃性を必要とする用途に使用することができなかった。
また、一般的に難燃剤、難燃助剤は、添加される樹脂との相溶性や分散性等によって、さらには光安定剤、紫外線吸収剤、水分等の補助的な働きにより難燃性の効果の発現も様々であり、一般的な難燃剤、難燃助剤を添加しても、非塩化ビニル樹脂からなるシートに、必ずしも難燃性を付与することができなかった。
そこで、本発明は、難燃性を有し、耐候性、施工性に優れた塩化ビニルに替わる柔軟なシートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の難燃性樹脂組成物は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種の構造を側鎖に有するビニル系重合体及びポリイソシアネート化合物を含む非塩化ビニル樹脂系の樹脂組成物に、特定のレゾルシンポリホスフェート化合物および特定のNOR−立体障害性アミンを特定の割合で配合することにより、優れた難燃性を付与したものである。
【0009】
すなわち、本発明の難燃性樹脂組成物は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種の構造を側鎖に有するビニル系重合体(A)、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(B)、下記一般式(1)で表されるレゾルシンポリホスフェート化合物(C)、およびヒドロカルビルオキシアミンまたはヒドロキシヒドロカルビルオキシアミンからなるNOR−立体障害性アミン(D)を含む難燃性樹脂組成物であって、前記レゾルシンポリホスフェート化合物(C)の含有量が、難燃性樹脂組成物の固形分を基準として3〜30重量%であり、かつNOR−立体障害性アミン(D)の含有量が、難燃性樹脂組成物の固形分を基準として0.05〜5重量%であることを特徴とする。
【0010】
一般式(1)
【化2】
Figure 2004269637
(式中、Rは水素またはメチル基であり、nは1〜5の整数を示す。)
【0011】
本発明の難燃性樹脂組成物には、更に、イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種(E)を含有させることができる。また、難燃性樹脂組成物には、更に、リン酸基または、リン酸エステル基とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(a1)、イソシアネート基と反応可能な官能基とエチレン性不飽和二重結合を有する(x1)以外の単量体(x2)、及びエチレン性不飽和二重結合を有する(x1)および(x2)以外の単量体(x3)を共重合してなるビニル系重合体(X)を含有させることができる。さらに、難燃性樹脂組成物には着色剤を含有させることができる。
また、本発明のシートは、上記難燃性樹脂組成物の硬化物からなるシートであり、該シートの片面または両面には、粘着剤層を設けることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
難燃性樹脂組成物は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種の構造を側鎖に有するビニル系重合体(A)、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(B)、上記一般式(1)で表されるレゾルシンポリホスフェート化合物(C)、およびヒドロカルビルオキシアミンまたはヒドロキシヒドロカルビルオキシアミンからなるNOR−立体障害性アミン(D)を含むものである。
【0013】
難燃性樹脂組成物に用いられるレゾルシンポリホスフェート化合物(C)は、上記一般式(1)で表される化合物であり、難燃剤として働くものである。
レゾルシンポリホスフェート化合物(C)は、一般式(1)中のnが1に近づくほど結晶性を有するようになることから融点が高くなり、また有機溶剤に溶解するようになるため、nが1〜2の化合物であることが好ましく、1または1に限りなく近い化合物であることがより好ましい。一般式(1)中のnが1〜2であるレゾルシンポリホスフェート化合物(C)を用いる場合には、得られる樹脂組成物の常温付近の温度における機械強度を低下させることが少なく、また、有機溶剤に溶解することから樹脂組成物を構成する他の成分との混合が容易となるまた、レゾルシンポリホスフェート化合物(C)は、一般式(1)中のRがメチル基である化合物の方が立体障害によりリン酸基の加水分解を防止する効果が高いため好ましい。
【0014】
レゾルシンポリホスフェート化合物(C)の含有量は、難燃性樹脂組成物の固形分を基準として3〜30重量%である。含有量が3重量%未満では難燃効果が不十分であり、30重量%より多いとレゾルシンポリホスフェート化合物(C)が経時で表面に析出してくる(ブルーム)などの問題を生じる。上記範囲内では、樹脂組成物を構成する他の成分と相溶し得る限り、レゾルシンポリホスフェート化合物(C)の含有量が多いほど難燃性は高まるが、コスト、難燃性の効果、外観の変化、機械強度の変化等の点から、レゾルシンポリホスフェート化合物(C)の含有量は3〜20重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。レゾルシンポリホスフェート化合物(C)の市販品としては、大八化学(株)製の「PX−200」や旭電化工業(株)製の「アデカスタブFP−500」等が挙げられる。
【0015】
難燃性樹脂組成物に用いられるNOR−立体障害性アミン(D)は、ヒドロカルビルオキシアミンまたはヒドロキシヒドロカルビルオキシアミンからなり、難燃助剤として働くものである。
立体障害性アミン(D)としては、特表2002−507238号公報、特開2002−234964号公報に記載されている、次式で表される基を含む化合物、あるいはその反応生成物を用いることができる。
【0016】
【化3】
Figure 2004269637
(式中、GおよびGは独立して炭素原子数1ないし4のアルキル基を表わすか、または一緒になってペンタメチレン基を表わし、そしてEは炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基または炭素原子数7ないし15のアラルキル基を表わすか、またはEは、それぞれ脂肪族部分で1ないし3個のOH基により置換されている炭素原子数1ないし18のアルキル基、炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基または炭素原子数7ないし15のアラルキル基を表わす。)
【0017】
立体障害性アミン(D)は、次式(I)で表される環式立体障害性アミンであるか、あるいはジアルキルエステルもしくはイソシアネートと次式(I)(式中、EはOH基を1個含み、そしてTは−CH−CH(OH)−CH−を表わす。)で表わされる化合物との反応から製造されたオリゴマー性またはポリマー性立体障害性アミン分子であるか、あるいは次式(I)(式中、EはOH基を1個含み、そしてTは−CH−CH(OH)−CH−を表わす。)で表わされる化合物の単一ジエステルまたはウレタン誘導体であることが好ましい。
【0018】
【化4】
Figure 2004269637
(式中、G、GおよびEは、上記で定義された通りであり、Tは、立体障害性アミンの窒素原子ならびにGおよびGにより置換された第四炭素原子2個と一緒になって、5−または6−員脂肪族環構造、特にピペリジン環を形成して式(I)を完成するために必要とされる二価の有機基を表わす。)
【0019】
特に、立体障害性アミン(D)は、次式(II)および/または(III)で表わされる基を含む環式立体障害性アミンであることが好ましい。
【化5】
Figure 2004269637
(式中、Gは水素原子またはメチル基を表わし、そしてGおよびGは互いに独立して水素原子、メチル基または一緒になって置換基=Oを表わす。)
【0020】
中でも、次式(1)で表わされるポリアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(塩化シアヌル)との反応により得られた中間体生成物を、次式(2)で表わされる化合物と反応させることにより得られる生成物が望ましい。
【化6】
Figure 2004269637
(式中、m’、m’’およびm’’’は互いに独立して2ないし12の整数である。)
【化7】
Figure 2004269637
(式中、Gは水素原子、炭素原子数1ないし12のアルキル基、炭素原子数5ないし12のシクロアルキル基、フェニル基または炭素原子数7ないし9のフェニルアルキル基を表わし、そしてGはO・、ヒドロキシル基、炭素原子数1ないし18のアルコキシ基、炭素原子数5ないし12のシクロアルコキシ基、炭素原子数7ないし15のフェニルアルコキシ基を表わすか、またはGは、それぞれ脂肪族部分にOH基1ないし3個により置換された、炭素原子数1ないし18のアルコキシ基、炭素原子数5ないし12のシクロアルコキシ基または炭素原子数7ないし15のフェニルアルコキシ基を表わす。)
【0021】
炭素原子数1ないし18のアルコキシ基としてのGは、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、ペントキシ基、イソペントキシ基、ヘキソキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、デシロキシ基、ドデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基およびオクタデシルオキシ基である。炭素原子数1ないし18のアルコキシ基は、炭素原子数6ないし12のアルコキシ基、特にヘプトキシ基およびオクトキシ基が好ましい。炭素原子数5ないし12のシクロアルコキシ基としてのGは、例えばシクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基、シクロヘプトキシ基、シクロオクトキシ基、シクロデシルオキシ基およびシクロドデシルオキシ基である。炭素原子数5ないし8のシクロアルコキシ基は、特にシクロペントキシ基およびシクロヘキソキシ基が好ましい。炭素原子数7ないし9のフェニルアルコキシ基は、例えばベンジルオキシ基である。
【0022】
脂肪族部分に1ないし3個のOH基により置換された炭素原子数1ないし18のアルコキシ基、炭素原子数5ないし12のシクロアルコキシ基または炭素原子数7ないし15のフェニルアルコキシ基としてのGは、好ましくは2−メチル−2−プロパノール(第三ブタノール)、2−プロパノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ドデカノール、1−オクタデカノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロオクタノール、アリルアルコール、フェネチルアルコールまたは1−フェニル−1−エタノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジオール、グリセロール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)メタン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、1,2,4−ブタントリオールまたは1,2,6−ヘキサントリオールからの炭素結合水素原子の抽出により形成された基である。
【0023】
NOR−立体障害性アミン(D)の含有量は、難燃性樹脂組成物の固形分を基準として0.05〜5重量%である。NOR−立体障害性アミン(D)の含有量が0.05重量%未満では難燃性の向上効果はなく、5重量%より多いと白濁、ブルームの問題や、機械強度が低下する。NOR−立体障害性アミン(D)の含有量は、機械強度、コスト等の点から0.1〜1重量%であることが好ましい。
【0024】
難燃性樹脂組成物に用いられるビニル系重合体(A)は、エチレン性不飽和二重結合を有する単量体を重合させて得られるビニル系共重合体の主鎖に、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種の構造を側鎖として導入した、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエングラフトビニル系重合体である。
イソシアネート基と反応可能な官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基等が挙げられるが、反応性および得られるシートの成形加工性の点で水酸基が好適である。
【0025】
側鎖の導入方法は、特に限定されることはないが、例えば、不飽和二塩基酸とエチレン性不飽和二重結合を有する他の単量体との共重合体(a)を合成し、共重合体(a)のカルボン酸または無水カルボン酸部分と、カルボキシル基と反応可能な官能基と、イソシアネート基と反応可能な官能基とを有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種の化合物(b)のカルボキシル基と反応可能な官能基とを縮合反応させることにより導入することができる。
【0026】
共重合体(a)の合成に使用可能な不飽和二塩基酸の例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、ジフェニルメタン−ジ−γ−ケトクロトン酸等が挙げられる。
不飽和二塩基酸は、要求性能に応じて、1種または2種以上を混合して用いることができる。また、共重合体(a)の原料となる単量体中の不飽和二塩基酸の割合は、好ましくは0.01〜30重量%、更に好ましくは0.05〜10重量%である。不飽和二塩基酸の割合が30重量%を越える場合には得られる重合体(A)の安定性が低下し、0.01重量%未満の場合には最終的に得られるシートの伸張性、柔軟性が不充分となる。
【0027】
エチレン性不飽和二重結合を有する他の単量体としては、(メタ)アクリル系単量体、芳香族ビニル単量体、オレフィン系炭化水素単量体、ビニルエーテル単量体等を用いることができる。他の単量体は、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基等の官能基を有していてもよい。
水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
アミノ基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、tブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のモノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノ(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
エポキシ基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
N−メチロール基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
N−アルコキシメチル基を有する(メタ)アクリル系単量体としては、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−モノアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(エトキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(プロポキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ブトキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルコキシメチル基を有する(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0030】
上記以外の(メタ)アクリル系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。
オレフィン系炭化水素単量体としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブチレン、イソプレン、1,4−ペンタジエン等が挙げられる。
ビニルエーテル単量体の例としては、ビニルメチルエーテルが挙げられる。
エチレン性不飽和二重結合を有する他の単量体は、要求性能に応じて、1種、または2種以上を混合して用いることができる。
【0031】
共重合体(a)は、公知の方法、例えば、溶液重合で得ることができる。溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテルなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメンなどの芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などの使用が可能である。溶剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0032】
合成時の単量体の仕込み濃度は、0〜80重量%が好ましい。
重合開始剤としては、過酸化物またはアゾ化合物、例えば、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチルバレノニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジt−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルオクトエート、クメンヒドロキシペルオキシド等を使用することができ、重合温度は、50〜200℃、特に70〜140℃が好ましい。
【0033】
共重合体(a)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜100,000である。共重合体(a)の重量平均分子量が500,000を越える場合には得られるシートの伸張性が低下し、5,000未満の場合には得られるシートの強靱性、耐薬品性が低くなる。
共重合体(a)のガラス転移温度は、好ましくは0〜150℃、更に好ましくは10〜100℃である。共重合体(a)のガラス転移温度が150℃を越える場合には得られるシートの伸張性が低下し、0℃未満の場合には得られるシートの耐薬品性、表面硬度が低下する。
【0034】
化合物(b)としては、例えば、直鎖の末端または分岐した末端に、カルボキシル基と反応可能な官能基と、イソシアネート基と反応可能な官能基とをそれぞれ1個以上ずつ有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンを用いることができる。中でも、得られるシートの伸張性、強靱性のバランスおよび成形加工性の点からポリエステルが好適である。
化合物(b)のカルボキシル基と反応可能な官能基としては、水酸基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基等が挙げられるが、反応性および得られるシートの成形加工性の点で水酸基が好適である。また、化合物(b)のイソシアネート基と反応可能な官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基等が挙げられるが、反応性および得られるシートの成形加工性の点で水酸基が好適である。化合物(b)のカルボキシル基と反応可能な官能基と、イソシアネート基と反応可能な官能基とは、同一の官能基でも構わないし、異なる官能基でも構わない。
【0035】
ポリエステルとして具体的には、ジカルボン酸の少なくとも1種と、多価アルコール、多価フェノール、またはこれらのアルコキシ変性物等のポリオールの少なくとも1種とをエステル化して得られる末端水酸基含有エステル化合物、及び末端の水酸基をアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基、またはN−アルコキシメチル基に変性したエステル化合物などが挙げられる。
ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等が挙げられる。
【0036】
多価アルコールの例としては、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,2−ジメチル−1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3−エチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、2−エチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールプロパンエチレングリコール、グリセリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。
【0037】
多価フェノールの例としては、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ヘキシルレゾルシン、トリヒドロキシベンゼン、ジメチロールフェノール等が挙げられる。
市販の水酸基を2個以上有するポリエステル(ポリエステルポリオール)としては、例えば、株式会社クラレ製のクラレポリオールP−510、P−1010、P−1510、P−2010、P−3010、P−4010、P−5010、P−6010、P−2011、P−2013、P−520、P−1020、P−2020、P−1012、P−2012、P−530、P−1030、P−2030、PMHC−2050、PMHC−2050R、PMHC−2070、PMHC−2090、PMSA−1000、PMSA−2000、PMSA−3000、PMSA−4000、F−2010、F−3010、N−2010、PNOA−1010、PNOA−2014、O−2010、住友バイエルウレタン株式会社製のデスモフェン650MPA、651MPA/X、670、670BA、680X、680MPA、800、800MPA、850、1100、1140、1145、1150、1155、1200、1300X、1652、1700、1800、RD181、RD181X、C200、東洋紡績株式会社製のバイロン200、560、600、GK130、GK860、GK870、290、GK590、GK780、GK790等が挙げられる。
【0038】
また、ポリエーテルの例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、及び末端の水酸基をアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基に変性したエーテル化合物が挙げられる。市販の水酸基を2個以上有するポリエーテル(ポリエーテルポリオール)としては、例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のデスモフェン250U、550U、1600U、1900U、1915U、1920D等が挙げられる。
【0039】
また、ポリカーボネートの例としては、下記一般式で表されるポリカーボネートジオール、及び末端の水酸基をアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基に変性したカーボネート化合物が挙げられる。
H−(O−R−OCO−)nR−OH
(式中、Rはアルキレン鎖またはジエチレングリコール等のアルキレングリコール鎖を表し、nは5〜500の整数を表す。)
市販の水酸基を2個以上有するポリカーボネートとしては、例えば、株式会社クラレ製のクラレポリオールPNOC−1000、PNOC−2000、PMHC−2050、PMHC−2050R、PMHC−2070、PMHC−2070R、PMHC−2090R、C−2090等が挙げられる。
【0040】
また、ポリブタジエンの例としては、α,ω−ポリブタジエングリコール、α、β−ポリブタジエングリコール、及び末端の水酸基をアミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基またはN−アルコキシメチル基に変性したブタジエン化合物が挙げられる。市販の水酸基を2個以上有するポリブタジエンとしては、例えば、日本曹達株式会社製のNISSO−PB G−1000、G−2000、G−3000、GI−1000、GI−2000、GI−3000、GQ−1000、GQ−2000等が挙げられる。市販のエポキシ基を2個以上有するポリブタジエンとしては、例えば、日本曹達株式会社製のNISSO−PB BF−1000、EPB−13、EPB−1054等が挙げられる。
【0041】
化合物(b)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは500〜25,000、更に好ましくは1,000〜10,000である。化合物(b)の重量平均分子量が25,000を越える場合には、溶剤への溶解性、共重合体(a)との相溶性、共重合体(a)との反応性が低下し、また得られるシートの強靱性が低下する。また、500未満の場合には、シートに充分な伸張性、柔軟性を付与することができない。
【0042】
重合体(A)は、共重合体(a)のカルボン酸、もしくは無水カルボン酸部分と、化合物(b)のカルボキシル基と反応可能な官能基とを、公知の方法、例えば、化合物(b)のカルボキシル基と反応可能な官能基が水酸基、エポキシ基の場合はエステル化、アミノ基の場合はアミド化、イソシアネート基の場合はイミド化して得ることができる。溶剤としては、共重合体(a)合成時の溶媒をそのまま用いることができ、更に、合成時の条件、塗工時の条件などに応じて、他の溶媒を加えたり、脱溶媒したりしても構わない。
反応触媒としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミンなどの3級アミンなどが用いられ、反応温度は、50〜300℃が好ましい。
【0043】
共重合体(a)と化合物(b)との反応比率は、共重合体(a)のカルボン酸または無水カルボン酸1モルに対して、化合物(b)のカルボキシル基と反応可能な官能基が、0.2〜5モルとなるのが好ましく、0.5〜2モルとなるのが更に好ましい。化合物(b)の反応比率が5モルを越える場合には、樹脂組成物の塗工性、シートの強靱性が損なわれ、0.2未満の場合には、得られるシートの伸張性、柔軟性が低下する。
また、共重合体(a)、化合物(b)は、それぞれ1種類ずつを用いる必要はなく、目的、必要物性に応じて、それぞれ複数種を用いても構わない。
【0044】
重合体(A)が水酸基を有する場合、その水酸基価は、固形分換算で好ましくは1〜300KOHmg/g、更に好ましくは10〜100KOHmg/gである。重合体(A)の水酸基価が300KOHmg/gを越える場合には重合体(A)の保存安定性が低下し、1KOHmg/g未満の場合には得られるシートの強靱性、伸張性、耐薬品性が低くなる。
また、重合体(A)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜100,000である。重合体(A)の重量平均分子量が500,000を越える場合には、溶剤への溶解性、シートの伸張性が低下し、5,000未満の場合には、得られるシートの強靱性、耐薬品性が低下する。
【0045】
難燃性樹脂組成物に用いられる、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(B)は、重合体(A)と重合体(A)を架橋させ、強靱で且つ伸張性、柔軟性、成形加工性、耐薬品性を有するシートを形成するために用いられる。なお、難燃性樹脂組成物に後述の化合物(E)および/または重合体(X)を含有させる場合には、ポリイソシアネート化合物(B)は、重合体(A)と後述の化合物(E)および/または重合体(X)、後述の化合物(E)と後述の重合体(X)も架橋させる。
得られるシートを外装用途に用いる場合には、シートが経時で黄色から褐色に変色することを防ぐために、脂環族または脂肪族の化合物のみを用いることが好ましい。
【0046】
脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添4,4’ −ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’ −ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0047】
芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、上記化合物とグリコール類またはジアミン類との両末端イソシアネートアダクト体、ビウレット変性体、イソシアヌレート変性体を用いても構わない。
【0048】
特に、ポリイソシアネート化合物(B)がイソシアヌレート変性体、特にイソシアヌレート環含有トリイソシアネートを含む場合には、より強靱、且つ伸張性を有するシートを得ることができるため好ましい。イソシアヌレート環含有トリイソシアネートとして具体的には、イソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のデスモジュールZ4470MPA/X)、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールN3300)、イソシアヌレート変性トルイレンジイソシアネート(例えば、住友バイエルウレタン株式会社製のスミジュールFL−2、FL−3、FL−4、HL BA)が挙げられる。
【0049】
また、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、例えば、メタノール、エタノール、n−ペンタノール、エチレンクロルヒドリン、イソプロピルアルコール、フェノール、p−ニトロフェノール、m−クレゾール、アセチルアセトン、アセト酢酸エチル、ε− カプロラクタムなどのブロック剤と反応させてブロック化した、ブロック変性体を用いても構わない。
【0050】
更に、ポリイソシアネート化合物(B)として、イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有するポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種(c)と両末端にイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物(d)とを反応させてなる、両末端イソシアネートプレポリマーを用いても構わない。化合物(B)が上記両末端イソシアネートプレポリマーを含む場合には、少量で伸張性が得られ、塗膜の強靱性も損なわれない。また、重合体(A)と後述の化合物(E)の相溶性を向上させる効果も有している。
【0051】
化合物(c)としては、後述の化合物(E)と同様の化合物を用いることができる。化合物(d)としては、例えば、トルイレンジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、o−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’ −ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添4,4’ −ジフェニルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0052】
両末端イソシアネートプレポリマーは、化合物(c)のイソシアネート基と反応可能な官能基1モルに対して、化合物(d)のイソシアネート基数が1モルより大きくなるような比率で化合物(c)と化合物(d)を混合し、加熱撹拌して反応させることにより得られる。プレポリマーのポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1 ,000〜50,000、更に好ましくは1,000〜10,000である。プレポリマーの重量平均分子量が50,000を越える場合には溶剤への溶解性、他成分との相溶性が低下し、1 ,000未満の場合には、得られるシートの強靱性、及び伸張性が不足する。
【0053】
ポリイソシアネート化合物(B)は、要求性能に応じて、重合体(A)と後述の化合物(E)と後述の重合体(X)の有するイソシアネート基と反応可能な官能基の総数に対して、イソシアネート基の総数が、好ましくは0.1倍〜5.0倍、更に好ましくは0.5倍〜3.0倍となるような比率で、1種、または2種以上を混合して用いることができる。
なお、上記化合物(B)と化合物(E)とは、あらかじめ反応させて末端イソシアネートプレポリマーとしておいてもよい。この場合、難燃性樹脂組成物は、上記重合体(A)、及び化合物(B)と化合物(E)とを反応させてなる末端イソシアネートプレポリマーを含む組成物となる。
【0054】
難燃性樹脂組成物には、シートに柔軟性、伸張性を、樹脂組成物に顔料分散性を付与するため、イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種(E)を含有させることができ。化合物(E)は、重合体(A)の側鎖どうしをつなぎ、シートの架橋密度を増加させ、シートの強靱性、伸張性、柔軟性をより向上させるためにも用いられる。
化合物(E)は、例えば、直鎖の末端または分岐した末端にイソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有するポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンである。中でも、得られるシートの伸張性、強靱性のバランスおよび成形加工性の点からポリエステルが好適である。
【0055】
イソシアネート基と反応可能な官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、N−メチロール基、N−アルコキシメチル基等が挙げられるが、反応性および得られるシートの成形加工性の点で水酸基が好適である。
また、イソシアネート基と反応可能な官能基数は、2個の場合と比べて少量で伸張性が得られ、塗膜の強靱性も損なわれないため、3個が特に好ましい。
【0056】
化合物(E)としては、上記化合物(b)と同様の化合物を用いることができる。
化合物(E)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは500〜25,000、更に好ましくは1,000〜10,000である。化合物(E)の重量平均分子量が25,000を越える場合には、溶剤への溶解性が低下し、また得られるシートの伸張性が低下する。また、500未満の場合には、他の成分との相溶性が低下し、均一かつ平滑なシートの作成が困難となり、また得られるシートの強靱性が低下する。
化合物(E)は、要求性能に応じて、1種、または2種以上を混合して用いることができる。得られるシートを外装用途に用いる場合には、シートが経時で黄色から褐色に変色することを防ぐために、脂環族または脂肪族の化合物のみを用いることが好ましい。
【0057】
化合物(E)を用いる場合の重合体(A)と化合物(E)との混合比(重量比)は、好ましくは(A):(E)=99:1〜10:90、更に好ましくは(A):(E)=95:5〜30:70、特に好ましくは(A):(E)=95:5〜50:50である。重合体(A)の比率が上記範囲より多い場合には、顔料分散性、得られるシートの伸張性、柔軟性、成形加工性が低下し、上記範囲より少ない場合には、得られるシートの強靱性、耐薬品性が低くなる。
【0058】
また、難燃性樹脂組成物には、難燃性の向上させるため、またはレゾルシンポリホスフェート化合物(C)の相溶化剤として、リン酸基またはリン酸エステル基と、イソシアネート基と反応可能な官能基とを有するビニル系重合体(X)を含有させることができる。
ビニル系共重合体(X)は、リン酸基またはリン酸エステル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(x1)、イソシアネートと反応可能な官能基とエチレン性不飽和二重結合を有する(x1)以外の単量体(x2)、及びエチレン性不飽和二重結合を有する(x1)および(x2)以外の単量体(x3)を共重合させることにより得ることができる。
【0059】
重合体(X)を構成するリン酸基またはリン酸エステル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(x1)としては、リン酸基またはリン酸エステル基を有する(メタ)アクリル系単量体、ビニル単量体等を用いることができる。中でも、反応性および得られるシートの成形加工性の点で(メタ)アクリル系単量体が好適である。
リン酸基またはリン酸エステル基を有する(メタ)アクリル系単量体(x1)としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジメチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジエチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジプロピル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジヘキシル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジヘプチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジノニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジデシル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
【0060】
リン酸基またはリン酸エステル基とエチレン性不飽和二重結合とを有する単量体(x1)は、要求性能に応じて、1種、または2種以上を混合して用いることができる。また、重合体(X)の原料となる単量体中の単量体(x1)の割合は、好ましくは10.00〜99.99重量%、更に好ましくは30〜90重量%、特に好ましくは50〜90重量%である。単量体(x1)の割合が99.99重量%を越える場合には、シートの耐候性、加工性が低下し、10.00重量%未満の場合には充分な難燃性向上効果、及びレゾルシンポリホスフェート化合物(C)との相溶性が得られないことがある。
【0061】
重合体(X)を構成する、イソシアネート基と反応可能な官能基とエチレン性不飽和二重結合を有する(x1)以外の単量体(x2)としては、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する(メタ)アクリル系単量体、ビニル単量体等を用いることができる。中でも、反応性および得られるシートの成形加工性の点で(メタ)アクリル系単量体が好適である。
イソシアネート基と反応可能な官能基としては、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等が挙げられるが、反応性および得られるシートの成形加工性の点で水酸基が好適である。
単量体(x2)としては、重合体(A)を構成する単量体(a2)と同様の単量体を用いることができる。
【0062】
イソシアネート基と反応可能な官能基とエチレン性不飽和二重結合を有する(x1)以外の単量体(x2)は、要求性能に応じて、1種、または2種以上を混合して用いることができる。また、重合体(X)の原料となる単量体中の単量体(x2)の割合は、好ましくは0.01〜50重量%、更に好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは1〜20重量%である。単量体(x2)の割合が50重量%を越える場合には得られる重合体(X)の保存安定性が低下し、0.01重量%未満の場合には、シートの耐候性、耐溶剤性、難燃性の持続性が低下する場合がある。
【0063】
重合体(X)を構成するエチレン性不飽和二重結合を有する(x1)および(x2)以外の単量体(x3)としては、重合体(A)を構成する単量体(a3)と同様の(メタ)アクリル系単量体、芳香族ビニル単量体、オレフィン系炭化水素単量体、ビニルエーテル単量体等を用いることができる。単量体(c1)は、要求性能に応じて、1種、または2種以上を混合して用いることができる。
重合体(X)は、重合体(A)と同様の方法で得ることができる。
重合体(X)のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜100,000である。重合体(X)の重量平均分子量が500,000を越える場合には、得られる重合体(X)の安定性が低下し、5,000未満の場合には、得られるシートの強靱性、耐候性、耐薬品性が低下する場合がある。
【0064】
難燃性樹脂組成物には、重合体(A)、化合物(E)、重合体(X)と化合物(B)との架橋反応を促進させるために、それぞれの官能基に応じて、種々の架橋触媒を含有させることができる。代表的な架橋触媒としては、有機金属化合物、酸及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩、アミン類、有機過酸化物などが挙げられる。
有機金属化合物として具体的には、酢酸ナトリウム、オクチル酸錫、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレートジブチル錫ジ(2−エチルヘキソエート)、ジエチル亜鉛、テトラ(n−ブトキシ)チタンなどが挙げられる。
【0065】
酸として具体的には、トリクロロ酢酸、リン酸、モノアルキルリン酸、ジアルキルリン酸、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのリン酸エステル、モノアルキル亜リン酸、ジアルキル亜リン酸、p−トルエンスルホン酸、無水フタル酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、イタコン酸、シュウ酸、マレイン酸などが挙げられる。
アミン類として具体的には、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N,N’ ,N’ −テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルエチルアミンなどが挙げられる。
【0066】
有機過酸化物としては、ヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジアセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t− ブチルペルオキシラウレートなどが挙げられる。
【0067】
これらの架橋触媒の中で、重合体(A)等の官能基が水酸基の場合は、酸及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩などの使用が好ましい。アミノ基の場合は、有機過酸化物、酸無水物、カルボン酸、酸化亜鉛−マグネシウムなどの使用が好ましい。カルボキシル基の場合は、酸及びそれらのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩などの使用が好ましい。エポキシ基の場合は、有機金属化合物、アミン類などの使用が好ましい。N−メチロール基または、N−アルコキシメチル基の場合は、酸、そのアンモニウム塩、低級アミン塩、多価金属塩などの使用が好ましい。
これらの架橋触媒は2種類以上使用してもよく、その総使用量は、重合体(A)、化合物(B)、化合物(E)および重合体(X)の総量100重量%に対して、0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%の範囲であることが好ましい。
【0068】
難燃性樹脂組成物には、必要に応じ、本発明の効果を妨げない範囲で、顔料や染料等の各種の着色剤を含有させてもよい。
顔料としては、従来公知のものを用いることができるが、なかでも、耐光性、耐候性の高いものが好ましい。具体的には、例えば、キナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスアンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、インダンスロン系等の有機顔料や、ニッケルジオキシンイエロー、銅アゾメチンイエロー等の金属錯体、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウムなどの金属塩、カーボンブラック、アルミニウム、雲母などの無機顔料、アルミニウムなどの金属微粉やマイカ微粉等が挙げられる。
染料としては、例えば、アゾ系、キノリン系、スチルベン系、チアゾール系、インジゴイド系、アントラキノン系、オキサジン系等が挙げられる。
着色剤は、粉体をそのまま用いても構わないし、あらかじめ着色ペースト、着色ペレット等に加工してから用いても構わない。
【0069】
また、難燃性樹脂組成物には、シートの強度を上げるために、本発明の効果を妨げない範囲で、重合体(A)、化合物(E)および重合体(X)以外の各種の熱可塑性樹脂を含有させてもよい。
かかる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、アイオノマー、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアミド樹脂、ポリアセタール、ポリエステル等が挙げられる。
【0070】
重合体(A)等以外の熱可塑性樹脂の添加量は、重合体(A)、化合物(E)および重合体(X)の合計重量の50重量%以下が好ましく、30重量%以下が更に好ましい。この上限を越えると、他成分との相溶性が低下する場合がある。
また、難燃性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、ラジカル補足剤、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、硬化剤、増粘剤、顔料分散剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
【0071】
難燃性樹脂組成物は、ビニル系重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、レゾルシンポリホスフェート化合物(C)、NOR−立体障害性アミン(D)、必要に応じて化合物(E)、ビニル系重合体(X)、着色剤、架橋触媒、添加剤、及び溶剤を混合して得られる。
溶剤は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などの内から樹脂組成物の組成に応じ適当なものを使用する。溶剤は2種以上用いてもよい。
【0072】
混合方法に特に限定はないが、通常は、ビニル系重合体(A)の重合時に得られる重合体溶液に、ポリイソシアネート化合物(B)、レゾルシンポリホスフェート化合物(C)、NOR−立体障害性アミン(D)、必要に応じて化合物(E)、ビニル系重合体(X)及び他の成分を混合し、攪拌羽根、振とう攪拌機、回転攪拌機などで攪拌すればよい。また、アトライター、サンドミル、3本ロール、2本ロールなどを用いて混合してもよい。塗工性などの向上のために、さらに溶剤を追加したり、濃縮してもよい。
レゾルシンポリホスフェート化合物(C)およびNOR−立体障害性アミン(D)は、固体状態で重合体溶液に混合すると粒子として重合体溶液中に分散することになり、難燃性樹脂組成物の白濁、ブルーム等の外観変化が避けられないため、有機溶剤に溶解するものが好適に用いられる。
【0073】
例えば、有機溶剤100重量部に対し0.1〜10000重量部溶解可能なレゾルシンポリホスフェート化合物(C)または有機溶剤100重量部に対し0.1〜10000重量部溶解可能なNOR−立体障害性アミン(D)を有機溶剤に溶解した上で重合体溶液に配合することにより、ディスパーなどの攪拌機を用いて、容易にレゾルシンポリホスフェート化合物(C)およびNOR−立体障害性アミン(D)を重合体溶液に均一に溶解することができる。その結果、白濁、ブルームを生じることもなく、外観も機械的強度も難燃化していないものと差異がない難燃性樹脂組成物を製造することができる。レゾルシンポリホスフェート化合物(C)およびNOR−立体障害性アミン(D)を有機溶剤に溶解する際には、加熱しても差し支えない。
有機溶剤としては、先に例示したアルコール類、ケトン類、エーテル類、炭化水素類、芳香族類、エステル類などの内から適当なものを使用する。溶剤は2種以上用いてもよい。
【0074】
また、着色剤、特に顔料を添加する場合は、まず、着色剤、分散樹脂、必要に応じて分散剤、及び溶剤を混合した顔料ペーストを作成した後、他の成分と混合するのが好ましい。分散樹脂としては、化合物(E)を用いるのが好ましいが、特に限定はなく、顔料分散性に優れた極性基、例えば水酸基、カルボキシル基、チオール基、アミノ基、アミド基、ケトン基等を有する、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリエステル樹脂等を用いることができる。分散剤としては、例えば、顔料誘導体、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、チタンカップリング剤、シランカップリング剤等が挙げられる。また、金属キレート、樹脂コートなどにより、顔料表面の改質を行うこともできる。
【0075】
こうして得られた難燃性樹脂組成物を剥離シート上に塗布し、硬化して成膜させ、難燃性樹脂組成物の硬化物からなるシートとすることができる。剥離シートとしては、例えば、紙、またはポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロースアセテート等のプラスチックフィルムや、アルミ、ステンレスなどの金属箔等を用いることができ、厚みが10〜250μm のものが好適に使用される。
【0076】
難燃性樹脂組成物の塗布は、従来公知の方法、例えば、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式、バーコート方式等により行うことができる。難燃性樹脂組成物は、数回に分けて塗布してもよいし、1回で塗布してもよい。また、異なる方式を複数組み合わせてもよい。
難燃性樹脂組成物の塗布膜厚は、通常、10〜200μm 程度であるが、この範囲内に限定されるものではなく、用途、要求性能に適した膜厚となるように塗布すればよい。
難燃性樹脂組成物の硬化は、樹脂組成物の種類、剥離シートの種類、膜厚、及び用途に応じた温度、時間で行えばよく、通常、室温〜350℃で行われるが、硬化の効率化および生産性の向上の点から、30〜350℃に加熱して行うことが好ましい。また、樹脂組成物成分の分解を防止する点から、より好ましくは30〜250℃の範囲が好ましい。
【0077】
上記方法で得られる本発明のシートの片面または両面には、必要に応じて、粘着剤層を設けることができる。その際、難燃性樹脂組成物の硬化物からなる層に被着した剥離シートは、そのままにしても、剥がしてもよいが、両面に粘着剤層を設ける場合には、剥離シートを剥がす。
粘着剤としては、例えば、一般的な天然ゴム、合成イソプレンゴム、再生ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレンゴム等を主成分とするゴム系粘着剤や、(メタ)アクリル酸エステル(C2〜C12)を主体にアクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン等の単量体を共重合した重合体を主成分とするアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコン系粘着剤等を用いることができ、用途、被着体の材質に応じた適当な接着力を有する物を選択することができる。
【0078】
粘着剤層は、粘着剤の種類、塗工適性に応じ、従来公知の方法、例えば、キスコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、バーコート方式等の種々の方式を利用して、樹脂組成物の硬化物からなるシート上に直接塗工して積層させてもよいし、一旦工程紙上に塗工した粘着剤を、難燃性樹脂組成物の硬化物からなるシート上にラミネートして積層させてもよい。
【0079】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明する。なお、実施例中の部および%は、すべて重量部および重量%を示している。また、得られた重合体等のポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー装置を用いて測定した。
【0080】
(重合体(A)の合成例)
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、表1に示す組成の不飽和二塩基酸、エチレン性不飽和二重結合を有する他の単量体と、単量体の合計100部に対して50部の割合の溶媒(酢酸ブチルとトルエンを重量比1:1で混合したもの)とを仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、アゾビスイソブチロニトリルを表1に示す配合量の70%加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを表1に示す配合量の15%加えてさらに2時間重合反応を行い、更にアゾビスイソブチロニトリルを表1に示す配合量の15%加えてさらに2時間重合反応を行い、共重合体(a)の溶液を得た。得られた共重合体(a)の重量平均分子量、ガラス転移温度を表1に示す。
【0081】
【表1】
Figure 2004269637
【0082】
MAH:無水マレイン酸 FA:フマル酸 ST:スチレン
MMA:メチルメタクリレート AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
BMA:n−ブチルメタクリレート Mw:重量平均分子量
Tg:ガラス転移温度 OHV:水酸基価
P−3010:ポリエステルポリオール
((株)クラレ製「クラレポリオールP−3010」、Mw=3000 )
【0083】
共重合体(a)を重合した後、共重合体(a)を重合したフラスコに、表1に示す化合物(b)を共重合体(a)100部に対し20部となる配合比(固形分重量比)で添加し、窒素雰囲気下で撹拌しながら80℃まで昇温し、トリエチルアミンを共重合体(a)100部に対し0.5部となるように加え、6時間加熱撹拌を行い、重合体(A)溶液を得た。得られた重合体(A)の重量平均分子量、水酸基価を表1に示す。
【0084】
(重合体(X)の合成例1)
ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート(大八化学工業(株)製「MR−260」)50部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部、ノルマルブチルメタクリレート40部、酢酸ブチル200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル0.8部を加えて2時間重合反応を行い、更にアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加えて2時間重合を行い、更にアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加えて2時間重合を行い、重合体(X1)溶液を得た。得られた重合体(X1)の重量平均分子量は約39,000であった。
【0085】
(重合体(X)の合成例2)
ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート(大八化学工業(株)製「MR−260」)80部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部、ノルマルブチルメタクリレート15部、酢酸ブチル200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル0.8部を加えて2時間重合反応を行い、更にアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加えて2時間重合を行い、更にアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加えて2時間重合を行い、重合体(X2)溶液を得た。得られた重合体(X2)の重量平均分子量は約34,000であった。
【0086】
(重合体(X)の合成例3)
ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート80部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.5部、ノルマルブチルメタクリレート19.5部、酢酸ブチル200部を冷却管、攪拌装置、温度計を備えた4つ口フラスコに仕込み、窒素気流下で攪拌しながら110℃まで昇温してアゾビスイソブチロニトリル0.8部を加えて2時間重合反応を行い、更にアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加えて2時間重合を行い、更にアゾビスイソブチロニトリル0.1部を加えて2時間重合を行い、重合体(X3)溶液を得た。得られた重合体(X3)溶液の重量平均分子量は約34,000であった。
【0087】
(実施例1〜6、比較例1〜9)
重合体(A)、化合物(B)、化合物(C)、重合体(X1〜X3)及び添加剤を、固形分換算で表2に示す割合となるように混合し、ディスパーで攪拌して樹脂組成物A〜Dを調製した。添加剤は、化合物Cと70:30の重量比率で混合し三本ロールで4回混練した後、表2の濃度となるように添加した。
【0088】
【表2】
Figure 2004269637
【0089】
F−2010:ポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールF−2010」、Mw=2000 )
F−3010:ポリエステルポリオール((株)クラレ製「クラレポリオールF−3010」、Mw=3000 )
NCO 当量:イソシアネート基総数/重合体(A)と重合体(X)と化合物(C)の官能基総数
E−41 :イソホロンジイソシアネート系プレポリマー(住友バイエルウレタン(株)製「デスモジュール E−41」)
Z4470 :イソシアヌレート変性イソホロンジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製「デスモジュール Z4470 MPA/X」)
N3300 :イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製「スミジュール N3300」
D−140N:アダクト変性イソホロンジイソシアネート(三井武田ケミカル(株)製「タケネートD−140N」)
白:酸化チタン顔料(石原産業(株)製「タイペーク CR97」)
【0090】
得られた樹脂組成物に、表3に示す難燃剤および難燃助剤(ヒンダードアミン系光安定剤:HALS)を表3に示す方法で添加し、ディスパーで混合した後、トルエン/酢酸ブチル=50/50(重量比)の混合溶媒で固形分濃度が60%となるよう希釈して難燃性樹脂組成物を調製した。難燃性樹脂組成物は、静置して脱泡した後、塗工に供した。
なお、難燃剤(a)は固形であるため、トルエンに50%の濃度になるよう溶解した後に添加する方法(「溶解後」と表示)と、難燃剤(a)と化合物Bとを70:30の重量比率で混合し三本ロールで4回混練した後に添加する方法(「分散」と表示)の両方を用いた。難燃剤(b)、(c)、(d)並びにHALS(2)は液状なのでそのまま添加し、ディスパーで攪拌して樹脂組成物と混合した。また、HALS(1)は固形であるため、トルエンに50%の濃度になるよう溶解した後に添加した。
【0091】
【表3】
Figure 2004269637
【0092】
難燃剤(a):旭電化工業(株)製「アデカスタブFP−500」(化8)
【化8】
Figure 2004269637
【0093】
難燃剤(b):旭電化工業(株)製「アデカスタブPFR」(化9)
【化9】
Figure 2004269637
(式中、nは1.3〜1.5を表す。)
【0094】
難燃剤(c):旭電化工業(株)製「アデカスタブFP−600」(化10)
【化10】
Figure 2004269637
(式中においてn=1.3〜1.5)
【0095】
難燃剤(d):トリス(ブトキシエチル)ホスフェート(味の素ファインテクノ(株)製「KP−140」)
(CHCHCHCHOCHCHO−)−P=O
【0096】
HALS(1):チバスペシャルティーケミカルジャパン(株)製「FLAMESTAB NOR116 FF」(過酸化処理した4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンと、シクロヘキサンと、N,N’−エタン−1,2−ジイルビス(1,3−プロパンジアミン)との反応生成物(化11))
【化11】
Figure 2004269637
【0097】
HALS(2):チバスペシャルティーケミカルズ(株)製「チヌビン292」(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−セパケートと1−(メチル)−8−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−セパケートの混合物(化12))
【化12】
Figure 2004269637
【0098】
得られた難燃性樹脂組成物を、膜厚100μm の剥離シートA(リンテック(株)製「PET100X」)上に、ブレードコーターを用いて、乾燥時の膜厚が約60μm となるように塗布し、150℃のガスオーブン中で2分間加熱して乾燥、硬化させ、難燃性樹脂組成物の硬化物からなるシートを作成した。
また、粘着剤溶液(2液硬化型アクリル系粘着剤/硬化剤=100/8.7)を、膜厚100μm の剥離シートB(カイト化学株式会社製「TSM−110K」)上に、コンマコーターを用いて、乾燥時の膜厚が約25μm となるように塗布し、80℃のオーブン中で2分間加熱して乾燥、硬化させ粘着剤シートを作成した。
作成した粘着剤シートと先に作成した難燃性樹脂組成物の硬化物からなるシートをそれぞれ、粘着剤塗布面と難燃性樹脂組成物硬化物面とを貼り合わせるかたちでラミネート接着して、さらに剥離シートAを取り除き粘着シートを作成した。得られた粘着シートについて、下記の方法で燃焼性試験、引張強度試験、伸張性試験および促進耐候性試験を行った。結果を表3に示す。
【0099】
燃焼性試験:粘着シートを140mm×65mmのアルミ板の片側に貼り付け、燃焼性試験試料とした。水平面に対して45度に保持した燃焼性試験試料の表面に10秒間ガスバーナーの炎を接炎させ、ガスバーナーから離し燃焼時間を計測した。燃焼が止まったところで再び接炎させた。接炎を5回繰り返し、合計の燃焼時間を計測した。燃焼性の程度を4段階で評価した(◎:0秒、○:1秒〜5秒、△:6秒〜15秒、×:16秒以上)
【0100】
引張強度試験:粘着シートから、幅1cm×長さ5cmの試験片を切り抜き、引張試験機(不動工業(株)製「REO METER NRM―2010J―CW」)に取り付け、レンジ10kg、速度30cm/分の条件で引っ張り、試験片の破断に至るまでの最大荷重と試験片の断面積から降伏値と引張強度(破断応力×レンジ/サンプルの断面積)を測定した、降伏値は3段階(○:100kg/cm以上、△:80kg/cm以上100kg/cm未満、×:80kg/cm未満)で、また引張強度は同じく3段階(○:400kg/cm以上、△:300kg/cm以上400kg/cm未満、×:300kg/cm未満)で評価した。
【0101】
伸張性試験:引張強度試験と同様の方法で試験を行い、試験片が破断に至るまでの伸張率を測定し、3段階(伸張前を0%として、○:150%以上、△:50%以上150%未満、×:50%未満)で評価した。
促進耐候性試験:JIS B7750規定の紫外線カーボンアーク燈式耐候性試験機(スガ試験機(株)製)で、JIS K5400 6.17に準拠した試験を行い、1000時間経過後の外観の変化を目視にて3段階(○:変化無し、△:変化有り、×:劣化)で評価した。
【0102】
【発明の効果】
レゾルシンポリホスフェート化合物およびNOR−立体障害性アミンを非塩化ビニル系の樹脂組成物に添加することにより、白濁、ブルームを生じることがなく、外観的にも機械的にも難燃化していないものと差異がない、塩化ビニルに替わる柔軟な難燃性樹脂シートが得られるようになった。

Claims (6)

  1. イソシアネート基と反応可能な官能基を有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種の構造を側鎖に有するビニル系重合体(A)、2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(B)、下記一般式(1)で表されるレゾルシンポリホスフェート化合物(C)、およびヒドロカルビルオキシアミンまたはヒドロキシヒドロカルビルオキシアミンからなるNOR−立体障害性アミン(D)を含む難燃性樹脂組成物であって、前記レゾルシンポリホスフェート化合物(C)の含有量が、難燃性樹脂組成物の固形分を基準として3〜30重量%であり、かつNOR−立体障害性アミン(D)の含有量が、難燃性樹脂組成物の固形分を基準として0.05〜5重量%である難燃性樹脂組成物。
    一般式(1)
    Figure 2004269637
    (式中、Rは水素またはメチル基であり、nは1〜5の整数を示す。)
  2. 更に、イソシアネート基と反応可能な官能基を2個以上有する、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、またはポリブタジエンから選ばれる少なくとも1種(E)を含むことを特徴とする請求項1記載の難燃性樹脂組成物。
  3. 更に、リン酸基またはリン酸エステル基とエチレン性不飽和二重結合を有する単量体(x1)、イソシアネート基と反応可能な官能基とエチレン性不飽和二重結合を有する(x1)以外の単量体(x2)、及びエチレン性不飽和二重結合を有する(x1)および(x2)以外の単量体(x3)を共重合してなるビニル系重合体(X)を含有することを特徴とする請求項1または2記載の難燃性樹脂組成物。
  4. 更に、着色剤を含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれか記載の難燃性樹脂組成物。
  5. 請求項1ないし4いずれか記載の難燃性樹脂組成物の硬化物からなるシート。
  6. 片面または両面に粘着剤層を有する請求項4記載のシート。
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