JP2004269360A - 光学活性アミドニトリル化合物 - Google Patents
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Abstract
【課 題】本発明の目的は、農薬、医薬の中間体として有用な、高い光学純度を有する光学活性アミドニトリル類およびアミノニトリル類を、効率よく提供することにある。
【解決手段】本発明者等は、ラセミ体あるいは光学純度の低いアミノニトリル類とエステル類とを加水分解酵素、特にリパーゼの存在下、反応させることにより光学純度の高いアミドニトリル類が製造できることを見出した。また、本発明者等は、この光学活性アミドニトリル類は、アルミニウム触媒の存在下アミン類と反応させると反応性の高いニトリル基を損なうことなく、容易にかつ好収率で光学純度の高いアミノニトリル類に変換することを見出し、本発明を完成させた。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明者等は、ラセミ体あるいは光学純度の低いアミノニトリル類とエステル類とを加水分解酵素、特にリパーゼの存在下、反応させることにより光学純度の高いアミドニトリル類が製造できることを見出した。また、本発明者等は、この光学活性アミドニトリル類は、アルミニウム触媒の存在下アミン類と反応させると反応性の高いニトリル基を損なうことなく、容易にかつ好収率で光学純度の高いアミノニトリル類に変換することを見出し、本発明を完成させた。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、農薬(除草剤)、医薬の中間体として有用な、光学活性アミノニトリル類の製法およびその中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性アミン類は、多くの生理活性物質に含まれる、非常に重要な化合物である。特に、下記光学活性なアミノニトリル化合物は、
【化20】
複雑な骨格構築に適する官能基であるニトリルを有しており、農薬・医薬の中間体として非常に重要な化合物である。従って、これを安価に供給する方法を開発する事は重要である。
【0003】
一般に、光学活性アミンを得る方法としては、塩の優先晶析技術によるものや、不斉還元反応・酵素反応等が利用される。特に、酵素反応は、BASFによるフェニルエチルアミンの合成の様に、ラセミ体のアミンの一方のみをアシル化する方法などがよく知られている。しかしながら、酵素反応では、通常、片方の光学活性体(天然のアミノ酸と同じ立体を持つ構造)が消費され、もう一方が残存するため、必ずしも望む立体を与える訳ではない。
【0004】
例えば、ラセミ体の下記アミノニトリル化合物
【化21】
を、酵素によるアシル化反応に供した結果、スクリーニングに用いた全ての酵素において、立体配置がRのアミンが、優先的に対応するアミドとなる事が判った。従って、Rアミンを得る場合には、必ずしも有利な方法ではない。また、得られたSアミン、及びRのアミド、共に、光学純度も必ずしも高いものではなく、医農薬中間体として求められる高光学純度の化合物を得る為には、好ましくない。
【0005】
さらに、通常のアミドは、ニトリルの存在下で脱アシルを行う事が困難であり、従来の方法では下記アミド化合物を、
【化22】
ニトリル基を残したまま加水分解により下記アミン化合物
【化23】
に導く事は困難であった。
また、わずかにクロロ酢酸アミドに関しては、チオ尿素、もしくはピリジンを用いて脱離する方法が知られていたが、いずれも収率50%に及ばなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、農薬、医薬の中間体として有用な、高い光学純度を有する光学活性アミノニトリル類を、効率よく提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ラセミ体あるいは光学純度の低いアミノニトリル類とエステル類とを加水分解酵素、特にリパーゼの存在下、反応させることにより光学純度の高いアミドニトリル類が製造できることを見出した。こうして得られるアミドニトリル類は、非常に結晶性がよく、わずか2回の晶析で、光学純度が99%以上となる事が判明した。また、本発明者等は、この光学活性アミドニトリル類は、アルミニウム触媒の存在下でアミン類又は硫黄化合物と反応させると反応性の高いニトリル基を損なうことなく、容易にかつ好収率で光学純度の高いアミノニトリル類に変換することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)一般式(2)
【化24】
(式中、R2は炭化水素基を示し、A2はスペーサーを示す。)で表されるアミノニトリル類と一般式(3)
【化25】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R3は炭化水素基を示し、A1はスペーサー又は結合手を示す。但し、R1がハロゲン原子のときは、A1はスペーサーである。)で表されるエステル類とを加水分解酵素の存在下で反応させることを特徴とする一般式(1)
【化26】
(式中、*は不斉炭素を示し、R1、R2、A1及びA2は前記と同じ。)で表される光学活性アミドニトリル化合物の製造方法、
(2) 加水分解酵素がリパーゼである前記1に記載の製造方法、
(3) 一般式(1)
【化27】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R2は炭化水素基を示し、A1はスペーサー又は結合手を示し、A2はスペーサーを示し、*は不斉炭素を示す。但し、R1がハロゲン原子のときは、A1はスペーサーである。)で表される光学活性アミドニトリル化合物とアミン類又は硫黄化合物とを反応させることを特徴とする一般式(4)
【化28】
(式中、R2、A2及び*は前記と同じ。)で表される光学活性アミノニトリル類の製造方法、
(4)一般式(2)
【化29】
(式中、R2は炭化水素基を示し、A2はスペーサーを示す。)で表されるアミノニトリル類と一般式(3)
【化30】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R3は炭化水素基を示し、A1はスペーサー又は結合手を示す。但し、R1がハロゲン原子のときは、A1はスペーサーである。)で表されるエステル類とを加水分解酵素の存在下で反応させて一般式(1)
【化31】
(式中、*は不斉炭素を示し、R1、R2、A1及びA2は前記と同じ。)で表される光学活性アミドニトリル化合物を製造し、得られた前記一般式(1)で表される光学活性アミドニトリル化合物とアミン類又は硫黄化合物とを反応させることを特徴とする一般式(4)
【化32】
(式中、R2、A2及び*は前記と同じ。)で表される光学活性アミノニトリル類の製造方法、
に関する。
【0009】
さらに本発明は、
(5)加水分解酵素がリパーゼである上記(4)に記載の製造方法、
(6)アルミニウムトリアルコキシドの存在下で行う上記(3)又は(4)に記載の製造方法、
【0010】
(7)一般式(5)
【化33】
(式中、R2は炭化水素基を示し、A4はスペーサーを示し、A2はスペーサーを示し、X1はハロゲン原子を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される光学活性アミドニトリル化合物と3級アミン類、芳香族アミン、又は有機硫黄化合物とを反応させることを特徴とする一般式(4)
【化34】
(式中、R2、A2及び*は前記と同じ。)で表される光学活性アミノニトリル類の製造方法、
【0011】
(8)下記一般式(1b)で表されるアミドニトリル化合物、
【化35】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R2は炭化水素基を示し、A2はスペーサーを示し、A3はスペーサーを示す。)(9)一般式(1b)で表されるアミドニトリル化合物が下記一般式(1c)で表される光学活性アミドニトリル化合物である上記(8)に記載のアミドニトリル化合物、
【化36】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R2は炭化水素基を示し、A2はスペーサーを示し、A3はスペーサーを示し、*は不斉炭素を示す。)
に関する。
【0012】
さらに本発明は、
(10)下記一般式(5b)で表されるカチオン性オニウム化合物、
【化37】
(式中、R2は炭化水素基を示し、A5はスペーサーを示し、A2はスペーサーを示し、Z+はアンモニウムもしくはスルホニウムを示し、X−はハロゲン化物イオンを示す。)
(11)上記一般式(5b)で表されるカチオン性オニウム化合物が、下記一般式(5c)で表される光学活性カチオン性オニウム化合物である上記(10)に記載の化合物、
【化38】
(式中、*は不斉炭素を示し、A2、A5、Z+及びX−は前記と同じ。)
(12)N−アシルアミノ化合物を脱アシル化反応させるアミノ化合物の製造方法において、アミン類又は硫黄化合物を用いることを特徴とするアミノ化合物の製造方法、
【0013】
(13)一般式(6)
【化39】
(式中、R7は炭化水素基又は置換炭化水素基を示し、R8は炭化水素基又はA6−R13(A6はスペーサーを示し、R13は炭化水素基又はハロゲン原子を示す。)を示す。)で表されるアミド化合物とアミン類又は硫黄化合物とを脱アシル化反応させることを特徴とする一般式(7)
【化40】
(式中、R7は前記と同じ。)で表されるアミノ化合物の製造方法、
に関する。
【0014】
さらに本発明は、
(14)一般式(8)
【化41】
(式中、*は不斉炭素を示し、R9、R10及びR11は夫々独立して水素原子、炭化水素基又は置換炭化水素基を示し、R12は炭化水素基又はA7−R14(A7はスペーサーを示し、R14は炭化水素基又はハロゲン原子を示す。)を示す。但し、R9〜R11が同一の基となることはない。)で表される光学活性アミド化合物とアミン類又は硫黄化合物とを脱アシル化反応させることを特徴とする一般式(9)
【化42】
(式中、*は不斉炭素を示し、R9〜R11は前記と同じ。)で表される光学活性アミノ化合物の製造方法、
(15)脱アシル化反応をトリアルコキシアルミニウムの存在下で行うことを特徴とする上記(13)又は(14)に記載の製造方法、
に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
上記式中の各官能基について説明する。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0016】
アルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0017】
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられ、具体的にはエテニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられ、中でも炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。
【0018】
アルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜10のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられ、中でも炭素数2〜6のアルキニル基が好ましい。
【0019】
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0020】
アラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記アリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0021】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0022】
ハロゲン化アルキル基としては、上記アルキル基の少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子によりハロゲン化(例えばフッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化等)された炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基が挙げられ、具体的にはクロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、3−ブロモプロピル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基、フルオロペンチル基、フルオロヘキシル基、フルオロヘプチル基、フルオロオクチル基、フルオロノニル基、フルオロデシル基、ジフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、フルオロシクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロイソペンチル基、ペルフルオロ−tert−ペンチル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基、ペルフルオロイソヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、2−ペルフルオロオクチルエチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。これらハロゲン化アルキル基は、中でも炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基が好ましい。
【0023】
スペーサーとしては、アルキレン基、二価の芳香族基等の二価の有機基、−((CH2)n1−CO−(CH2)n2)n3−、−((CH2)n4−CONH−(CH2)n5)n6−、−((CH2)n7−O−(CH2)n8)n9−等が挙げられる。
【0024】
アルキレン基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい例えば炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられ、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、2−メチルプロピレン基、ペンチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、2−エチルプロピレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。なお、上記式中、好ましい−A2−CNは、炭素数1〜6のシアノアルキル基である。
【0025】
二価の芳香族基としては、例えば炭素数1〜12のアルキレン基が挙げられ、具体的にはフェニレン基、ビフェニルジイル基、−CH2C6H5−、−CH2C6H4CH2−等が挙げられる。
n1〜n9は夫々独立して自然数を示し、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の自然数を示す。
A1はスペーサー又は結合手を表すが、好ましいのはスペーサーである。
【0026】
本発明で用いられる上記一般式(2)で表されるアミノニトリル類(以下、アミノニトリル類(2)、という。)の具体例としては、例えば3−アミノペンタンニトリル、3−アミノヘキサンニトリル、3−アミノヘプタンニトリル、3−アミノオクタンニトリル等が挙げられる。
【0027】
本発明で用いられる上記一般式(3)で表されるエステル類(以下、エステル類(3)、という。)の具体例としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸イソプロピル等が挙げられ、中でも酢酸エチル、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル等が好ましい。
【0028】
本発明の製造方法により得られる上記一般式(4)で表される光学活性アミノニトリル類(以下、光学活性アミノニトリル類(4)、という。)は、下記一般式(4a)又は(4b)で表される光学活性アミノニトリル類が挙げられる。
【化43】
これら具体例としては、例えば3R−アミノペンタンニトリル、3S−アミノペンタンニトリル、3R−アミノヘキサンニトリル、3S−アミノヘキサンニトリル、3R−アミノヘプタンニトリル、3S−アミノヘプタンニトリル、3R−アミノオクタンニトリル、3S−アミノオクタンニトリル等が挙げられる。
光学活性アミノニトリル類(4)は、上記一般式(4a)で表される光学活性アミノニトリル類が好ましい。
【0029】
本発明に係る上記一般式(1)で表される光学活性アミドニトリル化合物(以下、光学活性アミドニトリル化合物(1)、という。)の具体例としては、例えば3−アセトアミドペンタンニトリル、3−クロロアセトアミドペンタンニトリル、3−プロピオニルアミドペンタンニトリル等が挙げられる。
【0030】
上記一般式(1)におけるR1がハロゲン原子である光学活性アミドニトリル化合物(5)と3級アミン又は芳香族アミンとの反応において、光学活性アミドニトリル化合物(5)を3級アミン又は芳香族アミンと反応させることにより光学活性アミドニトリル化合物(1)が得られる前に、中間体として上記一般式(5b)におけるZ+がアンモニウムである4級アンモニウム化合物が得られ、好ましくは上記一般式(5c)におけるZ+がアンモニウムである光学活性4級アンモニウム化合物が得られ、より好ましくは一般式(5d)
【化44】
(式中、Z+、R2、A1、A2及びX−は前記と同じ。)におけるZ+がアンモニウムである光学活性4級アンモニウム化合物が得られる。
【0031】
一般式(5b)、(5c)及び(5d)において、X−で示されるハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。
Z+で示されるアンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、ジイソプロピルエチルアンモニウム基、ピリジニウム基等が挙げられる。
【0032】
光学活性アミドニトリル化合物(5)を3級アミンと反応させると、一般式(5g)
【化45】
(式中、R2、R16〜R18、A1、A2及びX−は前記と同じ。)で表されるアンモニウム塩が得られ、好ましくは一般式(5h)
【化46】
(式中、*は不斉炭素を示し、R2、R16〜R18、A1、A2及びX−は前記と同じ。)で表される光学活性アンモニウム塩が得られる。
【0033】
また、光学活性アミドニトリル化合物(5)を芳香族アミン類と反応させると、一般式(5e)
【化47】
(ピリジン環Aは、1)ピリジン環、又は2)置換ピリジン環或いはピリジン骨格を有する縮合環を示し、R2、A1、A2、及びX−は前記と同じ。)で表されるピリジニウム塩が得られ、好ましくは一般式(5f)
【化48】
(*は不斉炭素を示し、ピリジン環A、R2、A1、A2及びX−は前記と同じ。)で表される光学活性ピリジニウム塩が得られる。
【0034】
ピリジン環Aは、単環でも多環でも或いは縮合環でもよく、さらに1個〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を有してもよい。また、アルキル基、置換アミノ基等の置換基を有する置換ピリジン環でもよい。
ピリジン環Aが単環である場合はピリジン環であり、縮合環である場合はキノリン環等が挙げられる。
置換アミノ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基で置換されたアミノ基が挙げられる。
置換ピリジン環の具体例としては、ジメチルアミノピリジン環等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(5f)で表される光学活性ピリジニウム塩は、中でも一般式(5i)
【化49】
で表される光学活性ピリジニウム塩が好ましく、下記式で表される光学活性ピリジニウム塩がより好ましい。
【化50】
また、一般式(1)におけるR1がハロゲン原子である光学活性アミドニトリル化合物(1)のハロゲン部位は、アミン類以外でも、硫黄化合物の様な求核性の強い化合物とは、容易にオニウム塩を形成する。硫黄化合物としては、有機硫黄化合物が好ましく、具体的にはチオ尿素等が挙げられる。例えば、チオ尿素と反応すると
【化51】
を与え、好ましくは
【化52】
を与え、より好ましくは
【化53】
を与え(上記式中、R2,A1,A2及び*は前記と同じ。)、このものも容易に加水分解を受け、アミン化合物(4)を高光学純度で与える。
【0036】
本発明の上記一般式(1b)で表されるアミドニトリル化合物において、該アミドニトリル化合物は、光学活性アミドニトリル化合物(1)の好ましい化合物として挙げられ、上記一般式(1c)で表されるアミドニトリル化合物がより好ましく、更に好ましくは下記一般式(1d)で表されるアミドニトリル化合物である。
【化54】
(式中、R1、R2、A2及びA3は前記と同じ。)
一般式(1d)で表される光学活性アミドニトリル化合物の具体例としては、例えば3R−アセトアミドペンタンニトリル、3R−クロロアセトアミドペンタンニトリル、3R−プロピオニルアミドペンタンニトリル等が挙げられる。
【0037】
本発明の製造方法において、光学活性アミドニトリル化合物(1)は、アミノニトリル類(2)とエステル類(3)とを加水分解酵素の存在下で反応させることにより得ることができる。
アミノニトリル類(2)及びエステル類(3)の使用量は、アミノニトリル類(2)に対してエステル類を通常0.3〜10当量、好ましくは0.5〜1当量の範囲から適宜選択される。
【0038】
本発明で用いられる加水分解酵素としては、例えば、カルボキシエステラーゼ、アリルエステラーゼ、コリンエステラーゼ、リパーゼなどが挙げられ、具体的にはAspergillus nigerを起源とするリパーゼ、Mucor javanicusを起源とするリパーゼ、豚膵臓を起源とするリパーゼ、Pseudomonas aeruginosaを起源とするリパーゼ、Pseudomonas cepasiaを起源とするリパーゼ、 Pseudomonas fluorescenceを起源とするリパーゼ、 Rhizopus sp.を起源とするリパーゼ、 Rhizomucor mieheiを起源とするリパーゼ、 Candida rugosaを起源とするリパーゼ、 Candida antarcticaを起源とするリパーゼ、豚肝臓を起源とするエステラーゼ等が挙げられる。これら加水分解酵素は、好ましくはリパーゼであり、シュードモナス属菌、アルカリゲネス属菌などの細菌由来のリパーゼ、Candida antarcticaを起源とするリパーゼ等がより好ましい。また、本発明で用いられる加水分解酵素は、市販品も使用可能である。例えば天野エンザイム株式会社製PS、PS−D、PS−C(シュードモナス属菌由来)、天野エンザイム株式会社製AK−20(シュードモナス属菌由来)、天野エンザイム株式会社製AH(シュードモナス属菌由来)、名糖産業株式会社製Lipase QL、QLC、QLG(アルカリゲネス属菌由来)、ノボザイムズ社製Novozym435などが好ましく用いられる。これらの加水分解酵素は市販品をそのまま用いることができる。また、本発明で用いられる加水分解酵素は、それぞれ単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0039】
酵素は、反応溶液に一時に直接添加すればよい。
酵素の使用量は、アミノニトリル類(2)に対して、通常0.1〜100質量%(w/w)、好ましくは10〜50質量%(w/w)の範囲から適宜選択される。
【0040】
アミノニトリル類(2)とエステル類(3)との反応は、用いるエステル類(3)の種類により、必要に応じて溶媒の存在下で行うことができる。
溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコール類、N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、アセトニトリル等の含シアノ有機化合物類、N−メチルピロリドン、水等が挙げられる。これら溶媒は、夫々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0041】
溶媒の使用量は、アミノニトリル類(2)に対して、通常0〜100倍容、好ましくは5〜20倍容の範囲から適宜選択される。
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜50℃の範囲から適宜選択される。
反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは5〜18時間の範囲から適宜選択される。
【0042】
アミノニトリル類(2)は、ラセミ体の化合物が用いられるが、ラセミ体ばかりでなく、更に高光学純度のアミノニトリル類(2)を得るために、低光学純度のアミノニトリル類(2)や高光学純度のアミノニトリル類(2)も使用可能である。
このようにして得られた光学活性アミドニトリル化合物(1)は、高光学純度のものであるが、必要に応じて後処理を行うことにより、より高光学純度のものが得られる。前記後処理は、晶析等が好ましい。
【0043】
晶析は、前記光学活性アミドニトリル化合物(1)と反応しない溶媒であれば、特に制限は無く何れも使用可能であり、通常晶析に用いられる溶媒であればよい。晶析に使用可能な溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、アセトニトリル等の含シアノ有機化合物類等が挙げられる。これら溶媒は、夫々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。溶媒は、中でも酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類や該エステル類とジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類との混合溶媒が好ましい。
【0044】
上記のようにして得られた光学活性アミドニトリル化合物(1)は、アミン類と反応させることにより、光学活性アミノニトリル類(4)を得ることができる。
アミン類は、用いる光学活性アミドニトリル化合物(1)により適宜選択すればよい。アミン類の具体例としては、例えば、アンモニア、下記一般式(11a)で表される1級アミン、下記一般式(11b)で表される2級アミン、下記一般式(11c)で表される3級アミン、芳香族アミン類が挙げられる。
【化55】
(上記式中、R13〜R18は夫々独立してアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヒドロキシル基を示す。また、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R16とR18とが結合して環を形成してもよい。)
【0045】
一般式(11a)、(11b)及び(11c)において、アルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0046】
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
置換アルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基等の置換基で置換されたアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、5−メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
置換アリール基としては、上記アリール基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、アミノ基等の置換基で置換されたアリール基であり、アルキル基、アルコキシ基は上記と同じである。
一般式(11b)におけるR14又はR15がヒドロキシル基のときは、R14又はR15の何れか一方がヒドロキシル基である。また、一般式(11c)におけるR16〜R18がヒドロキシル基のときは、R16〜R18の何れか一個がヒドロキシル基である。
【0048】
一般式(11a)で表される1級アミンの具体例としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、1−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、エチレンジアミン、ヒドロキシルアミン、3−(2−エチルへキシルオキシ)プロピルアミン、1−アミノドデカン、1、2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
一般式(11b)で表される2級アミンの具体例としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等が挙げられる。
一般式(11c)で表される3級アミンの具体例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。
芳香族アミン類の具体例としては、例えば、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0049】
上記アミン類は、上記一般式(1)におけるR1が水素原子、アルキル基又はアリール基である光学活性アミドニトリル化合物(1)のときは、1級アミン又は2級アミンが好ましく、より好ましくは1級アミンであり、更に好ましくはブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、1−アミノドデカンなどである。また、上記一般式(1)におけるR1がハロゲン原子である光学活性アミドニトリル化合物(1)、即ち、上記一般式(5)で表される光学活性アミドニトリル化合物(以下、光学活性アミドニトリル化合物(5)、という。)のときは、3級アミン又は芳香族アミンが好ましく、芳香族アミンがより好ましい。更に、高圧装置を用いてアンモニアを使用してもよい。
【0050】
光学活性アミドニトリル化合物(1)及びアミン類の使用量は、アミドニトリル化合物(1)に対してアミン類を通常1〜100当量、好ましくは2〜50当量の範囲から適宜選択される。
光学活性アミドニトリル化合物(1)とアミン類との反応は、上記一般式(1)におけるR1が水素原子、アルキル基又はアリール基である光学活性アミドニトリル化合物(1)を用いた場合には、該反応を一般式(10)
【化56】
(式中、R4〜R6は夫々独立してアルキル基又は置換アルキル基を示す。)で表されるトリアルコキシアルミニウムの存在下で行うことが好ましい。
【0051】
一般式(10)において、アルキル基としては、直鎖状又は分岐状でもよい、例えば炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基等が挙げられる。
置換アルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アシル基等の置換基で置換されたアルキル基が挙げられる。アルコキシ基は上記と同じである。
アシル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい。例えば、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等のカルボン酸由来の炭素数1〜18のアシル基が挙げられ、具体的にはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ラウロイル基、ステアロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0052】
一般式(10)で表されるトリアルコキシアルミニウムの具体例としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられ、中でもアルミニウムトリエトキシド等が好ましい。
トリアルコキシアルミニウムの使用量は、アミドニトリル化合物(1)に対して通常0.1〜100当量、好ましくは1〜3当量の範囲から適宜選択される。
【0053】
得られた光学活性アミノニトリル類(4)は、必要に応じて蒸留や精製等の後処理を適宜行ってもよい。
このようにして得られた光学活性アミノニトリル類(4)は、高光学純度のものが得られる。
本発明の製造方法により得られる光学活性アミノニトリル類(4)の光学純度は、90%ee以上、好ましくは95%ee以上、より好ましくは98%ee以上である。
本発明の製造方法により得られる上記一般式(7)で表されるアミン類は、上記一般式(6)で表されるアミド化合物とアミン類又は硫黄化合物とを脱アシル化反応させることにより得ることができる。ここで、一般式(6)で表されるアミド化合物が、一般式(6)中のR8におけるR13がハロゲン原子である場合には3級アミン、芳香族アミン又は硫黄化合物が好ましく、一般式(6)中のR8が炭化水素基である場合には1級アミン又は2級アミンが好ましい。1級アミン、2級アミン、3級アミン、芳香族アミン及び硫黄化合物は上記と同じである。
【0054】
また、前記脱アシル化反応は、一般式(6)中のR8が炭化水素基である場合にはトリアルコキシアルミニウムの存在下で行うことが好ましい。前記トリアルコキシアルミニウムは、上記と同じである。
本発明で用いられる上記一般式(6)で表されるアミド化合物は、上記一般式(8)で表される光学活性アミド化合物、上記一般式(1)で表される光学活性アミドニトリル化合物等が挙げられる。
また、得られる上記一般式(7)で表されるアミン類は、上記一般式(9)で表される光学活性アミノ化合物、上記一般式(4)で表される光学活性アミノニトリル類等が挙げられる。
【0055】
【実施例】
以下に、実施例を示すが、それらは何ら本発明を制限するものではない。以下の実施例において、物性等の測定に用いた装置は次の通りである。
分析条件
GLC: HP5890 (Hewlett Packerd社製)
アミド化化学純度
GC:Neutrabond−1,0.25mm x 30 m
アミド光学純度
GC:CHIRALDEX B−TA,0.25 mm X 30 m
脱アミド化転化率
Neutrabond−1,0.25mm x 30 m
【0056】
実施例1 リパーゼを使ったアミド化
500ml坂口フラスコに、3−アミノペンタンニトリル 14.0g、Lipase PS 6.0g、ジイソプロピルエーテル 240ml、クロロ酢酸エチル 8.98gを混合し、25℃で振とうした。23時間で反応を停止し、転化率50%で3−クロロアセチルアミノペンタンニトリルを得た。光学純度は65.03%eeであった。このとき生成物が析出しており、ろ過により生成物および酵素の混合固体部と母液とに分け、さらに酵素混合物から生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを留去した後、ジイソプロピルエーテル−酢酸エチル混合溶媒により二度再結晶を行い、3.18gの(R)−3−クロロアセチルアミノペンタンニトリルを得た(化学純度>99.0%、光学純度>99.9%ee)。また、始めに分取した母液から同様に晶析を行い、0.43gを得た(化学純度>99.0%、光学純度98.72%ee)。合計で3.61gの生成物を得、収率は29.0%であった。
【0057】
実施例2 アミド化
実施例1と同様にして、アシル化剤に酢酸エチルを用い、35℃16時間反応を行った。結果は以下の通り。
【表1】
【0058】
実施例3 ピリジニウム塩の合成
15g(85.9mmol)の3−クロロアセチルアミノペンタンニトリルを90gのピリジンに溶かし、90℃で攪拌すると塩が析出してくる。3時間攪拌し、得られた塩を濾過する。21.5g(84.7mmol)、収率98.6%。
【0059】
実施例4 加水分解
15.6g(61.4mmol)のピリジニウム塩を1N NaOH 225mlに溶かし、室温で18時間攪拌する。1N HCl(220ml程度) をゆっくり滴下し、pHを11−12にする。酢酸エチル225gで8回抽出を行う。抽出液を濃縮し、蒸留する。3R−アミノペンタンニトリル4.4g
(44.8mmol)、収率73%。光学純度:>99%ee。
【0060】
実施例5
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた200ミリリットル4口反応フラスコに、3−アセトアミノペンタンニトリル 3.50g(0.025mol)、アルミニウムエトキシド 4.05g(0.025mol)及び1−アミノドデカン139.0g(0.75mol)を入れ、釜内温度を150℃に加熱して3時間攪拌した。得られた反応溶液をビグロー蒸留器を用いて単蒸留を行い、沸点86℃/1862Paのフラクション2.87gを得た。このフラクションをn−テトラデカンを内部標準物質としてガスクロマトグラフィーで分析定量した結果、3R−アミノペンタンニトリル生成量は0.925g(0.00942mol)、アミドペンタンニトリルに対する収率は37.7%であった。光学純度:>99%ee。
【0061】
実施例6 チオウレアによる脱アシル化
5g(28.6mmol)の3−クロロアセチルアミノペンタンニトリル、2.17g(28.6mmol)のチオ尿素を79gのエタノールに溶かし、60℃で一時間攪拌した後、13時間還流させる。溶媒を濃縮して、酢酸エチル90gを加える。100mlの0.1N HClで分液し、水層に25mlの1N NaOHを加え、酢酸エチル90gで10回抽出する。硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を濃縮し、蒸留する。3R−アミノペンタンニトリル940mg(9.6mmol)、収率33.5%。光学純度:>99%ee。
【0062】.
【発明の効果】
本発明によれば、農薬(除草剤)、医薬の中間体として有用な高い光学純度を有する光学活性アミドニトリル類、アミノニトリル類を提供することができる。これらの中間体は非常に結晶性がよく、高い光学純度を有し、優れた特性を有する。また、光学活性アミドニトリル類から光学活性アミノニトリル類への変換は、アルミニウム触媒の存在下、反応性の高いニトリル基を損なうことなく、容易に達成できる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、農薬(除草剤)、医薬の中間体として有用な、光学活性アミノニトリル類の製法およびその中間体に関する。
【0002】
【従来の技術】
光学活性アミン類は、多くの生理活性物質に含まれる、非常に重要な化合物である。特に、下記光学活性なアミノニトリル化合物は、
【化20】
複雑な骨格構築に適する官能基であるニトリルを有しており、農薬・医薬の中間体として非常に重要な化合物である。従って、これを安価に供給する方法を開発する事は重要である。
【0003】
一般に、光学活性アミンを得る方法としては、塩の優先晶析技術によるものや、不斉還元反応・酵素反応等が利用される。特に、酵素反応は、BASFによるフェニルエチルアミンの合成の様に、ラセミ体のアミンの一方のみをアシル化する方法などがよく知られている。しかしながら、酵素反応では、通常、片方の光学活性体(天然のアミノ酸と同じ立体を持つ構造)が消費され、もう一方が残存するため、必ずしも望む立体を与える訳ではない。
【0004】
例えば、ラセミ体の下記アミノニトリル化合物
【化21】
を、酵素によるアシル化反応に供した結果、スクリーニングに用いた全ての酵素において、立体配置がRのアミンが、優先的に対応するアミドとなる事が判った。従って、Rアミンを得る場合には、必ずしも有利な方法ではない。また、得られたSアミン、及びRのアミド、共に、光学純度も必ずしも高いものではなく、医農薬中間体として求められる高光学純度の化合物を得る為には、好ましくない。
【0005】
さらに、通常のアミドは、ニトリルの存在下で脱アシルを行う事が困難であり、従来の方法では下記アミド化合物を、
【化22】
ニトリル基を残したまま加水分解により下記アミン化合物
【化23】
に導く事は困難であった。
また、わずかにクロロ酢酸アミドに関しては、チオ尿素、もしくはピリジンを用いて脱離する方法が知られていたが、いずれも収率50%に及ばなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、農薬、医薬の中間体として有用な、高い光学純度を有する光学活性アミノニトリル類を、効率よく提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ラセミ体あるいは光学純度の低いアミノニトリル類とエステル類とを加水分解酵素、特にリパーゼの存在下、反応させることにより光学純度の高いアミドニトリル類が製造できることを見出した。こうして得られるアミドニトリル類は、非常に結晶性がよく、わずか2回の晶析で、光学純度が99%以上となる事が判明した。また、本発明者等は、この光学活性アミドニトリル類は、アルミニウム触媒の存在下でアミン類又は硫黄化合物と反応させると反応性の高いニトリル基を損なうことなく、容易にかつ好収率で光学純度の高いアミノニトリル類に変換することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)一般式(2)
【化24】
(式中、R2は炭化水素基を示し、A2はスペーサーを示す。)で表されるアミノニトリル類と一般式(3)
【化25】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R3は炭化水素基を示し、A1はスペーサー又は結合手を示す。但し、R1がハロゲン原子のときは、A1はスペーサーである。)で表されるエステル類とを加水分解酵素の存在下で反応させることを特徴とする一般式(1)
【化26】
(式中、*は不斉炭素を示し、R1、R2、A1及びA2は前記と同じ。)で表される光学活性アミドニトリル化合物の製造方法、
(2) 加水分解酵素がリパーゼである前記1に記載の製造方法、
(3) 一般式(1)
【化27】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R2は炭化水素基を示し、A1はスペーサー又は結合手を示し、A2はスペーサーを示し、*は不斉炭素を示す。但し、R1がハロゲン原子のときは、A1はスペーサーである。)で表される光学活性アミドニトリル化合物とアミン類又は硫黄化合物とを反応させることを特徴とする一般式(4)
【化28】
(式中、R2、A2及び*は前記と同じ。)で表される光学活性アミノニトリル類の製造方法、
(4)一般式(2)
【化29】
(式中、R2は炭化水素基を示し、A2はスペーサーを示す。)で表されるアミノニトリル類と一般式(3)
【化30】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R3は炭化水素基を示し、A1はスペーサー又は結合手を示す。但し、R1がハロゲン原子のときは、A1はスペーサーである。)で表されるエステル類とを加水分解酵素の存在下で反応させて一般式(1)
【化31】
(式中、*は不斉炭素を示し、R1、R2、A1及びA2は前記と同じ。)で表される光学活性アミドニトリル化合物を製造し、得られた前記一般式(1)で表される光学活性アミドニトリル化合物とアミン類又は硫黄化合物とを反応させることを特徴とする一般式(4)
【化32】
(式中、R2、A2及び*は前記と同じ。)で表される光学活性アミノニトリル類の製造方法、
に関する。
【0009】
さらに本発明は、
(5)加水分解酵素がリパーゼである上記(4)に記載の製造方法、
(6)アルミニウムトリアルコキシドの存在下で行う上記(3)又は(4)に記載の製造方法、
【0010】
(7)一般式(5)
【化33】
(式中、R2は炭化水素基を示し、A4はスペーサーを示し、A2はスペーサーを示し、X1はハロゲン原子を示し、*は不斉炭素を示す。)で表される光学活性アミドニトリル化合物と3級アミン類、芳香族アミン、又は有機硫黄化合物とを反応させることを特徴とする一般式(4)
【化34】
(式中、R2、A2及び*は前記と同じ。)で表される光学活性アミノニトリル類の製造方法、
【0011】
(8)下記一般式(1b)で表されるアミドニトリル化合物、
【化35】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R2は炭化水素基を示し、A2はスペーサーを示し、A3はスペーサーを示す。)(9)一般式(1b)で表されるアミドニトリル化合物が下記一般式(1c)で表される光学活性アミドニトリル化合物である上記(8)に記載のアミドニトリル化合物、
【化36】
(式中、R1は水素原子、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子を示し、R2は炭化水素基を示し、A2はスペーサーを示し、A3はスペーサーを示し、*は不斉炭素を示す。)
に関する。
【0012】
さらに本発明は、
(10)下記一般式(5b)で表されるカチオン性オニウム化合物、
【化37】
(式中、R2は炭化水素基を示し、A5はスペーサーを示し、A2はスペーサーを示し、Z+はアンモニウムもしくはスルホニウムを示し、X−はハロゲン化物イオンを示す。)
(11)上記一般式(5b)で表されるカチオン性オニウム化合物が、下記一般式(5c)で表される光学活性カチオン性オニウム化合物である上記(10)に記載の化合物、
【化38】
(式中、*は不斉炭素を示し、A2、A5、Z+及びX−は前記と同じ。)
(12)N−アシルアミノ化合物を脱アシル化反応させるアミノ化合物の製造方法において、アミン類又は硫黄化合物を用いることを特徴とするアミノ化合物の製造方法、
【0013】
(13)一般式(6)
【化39】
(式中、R7は炭化水素基又は置換炭化水素基を示し、R8は炭化水素基又はA6−R13(A6はスペーサーを示し、R13は炭化水素基又はハロゲン原子を示す。)を示す。)で表されるアミド化合物とアミン類又は硫黄化合物とを脱アシル化反応させることを特徴とする一般式(7)
【化40】
(式中、R7は前記と同じ。)で表されるアミノ化合物の製造方法、
に関する。
【0014】
さらに本発明は、
(14)一般式(8)
【化41】
(式中、*は不斉炭素を示し、R9、R10及びR11は夫々独立して水素原子、炭化水素基又は置換炭化水素基を示し、R12は炭化水素基又はA7−R14(A7はスペーサーを示し、R14は炭化水素基又はハロゲン原子を示す。)を示す。但し、R9〜R11が同一の基となることはない。)で表される光学活性アミド化合物とアミン類又は硫黄化合物とを脱アシル化反応させることを特徴とする一般式(9)
【化42】
(式中、*は不斉炭素を示し、R9〜R11は前記と同じ。)で表される光学活性アミノ化合物の製造方法、
(15)脱アシル化反応をトリアルコキシアルミニウムの存在下で行うことを特徴とする上記(13)又は(14)に記載の製造方法、
に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
上記式中の各官能基について説明する。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0016】
アルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜10のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、中でも炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。
【0017】
アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられ、具体的にはエテニル基、プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等が挙げられ、中でも炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい。
【0018】
アルキニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい、例えば炭素数2〜10のアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基等が挙げられ、中でも炭素数2〜6のアルキニル基が好ましい。
【0019】
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0020】
アラルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が前記アリール基で置換された基が挙げられ、例えば炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、具体的にはベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルプロピル基、3−ナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0021】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0022】
ハロゲン化アルキル基としては、上記アルキル基の少なくとも1個の水素原子がハロゲン原子によりハロゲン化(例えばフッ素化、塩素化、臭素化、ヨウ素化等)された炭素数1〜10のハロゲン化アルキル基が挙げられ、具体的にはクロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、3−ブロモプロピル基、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基、フルオロペンチル基、フルオロヘキシル基、フルオロヘプチル基、フルオロオクチル基、フルオロノニル基、フルオロデシル基、ジフルオロメチル基、ジフルオロエチル基、フルオロシクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、3,3,4,4,4−ペンタフルオロブチル基、ペルフルオロ−n−プロピル基、ペルフルオロイソプロピル基、ペルフルオロ−n−ブチル基、ペルフルオロイソブチル基、ペルフルオロ−tert−ブチル基、ペルフルオロ−sec−ブチル基、ペルフルオロペンチル基、ペルフルオロイソペンチル基、ペルフルオロ−tert−ペンチル基、ペルフルオロ−n−ヘキシル基、ペルフルオロイソヘキシル基、ペルフルオロヘプチル基、ペルフルオロオクチル基、ペルフルオロノニル基、ペルフルオロデシル基、2−ペルフルオロオクチルエチル基、ペルフルオロシクロプロピル基、ペルフルオロシクロペンチル基、ペルフルオロシクロヘキシル基等が挙げられる。これらハロゲン化アルキル基は、中でも炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基が好ましい。
【0023】
スペーサーとしては、アルキレン基、二価の芳香族基等の二価の有機基、−((CH2)n1−CO−(CH2)n2)n3−、−((CH2)n4−CONH−(CH2)n5)n6−、−((CH2)n7−O−(CH2)n8)n9−等が挙げられる。
【0024】
アルキレン基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい例えば炭素数1〜6のアルキレン基が挙げられ、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、2−メチルプロピレン基、ペンチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、2−エチルプロピレン基、ヘキシレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。なお、上記式中、好ましい−A2−CNは、炭素数1〜6のシアノアルキル基である。
【0025】
二価の芳香族基としては、例えば炭素数1〜12のアルキレン基が挙げられ、具体的にはフェニレン基、ビフェニルジイル基、−CH2C6H5−、−CH2C6H4CH2−等が挙げられる。
n1〜n9は夫々独立して自然数を示し、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の自然数を示す。
A1はスペーサー又は結合手を表すが、好ましいのはスペーサーである。
【0026】
本発明で用いられる上記一般式(2)で表されるアミノニトリル類(以下、アミノニトリル類(2)、という。)の具体例としては、例えば3−アミノペンタンニトリル、3−アミノヘキサンニトリル、3−アミノヘプタンニトリル、3−アミノオクタンニトリル等が挙げられる。
【0027】
本発明で用いられる上記一般式(3)で表されるエステル類(以下、エステル類(3)、という。)の具体例としては、例えば酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸イソプロピル、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸イソプロピル等が挙げられ、中でも酢酸エチル、クロロ酢酸メチル、クロロ酢酸エチル等が好ましい。
【0028】
本発明の製造方法により得られる上記一般式(4)で表される光学活性アミノニトリル類(以下、光学活性アミノニトリル類(4)、という。)は、下記一般式(4a)又は(4b)で表される光学活性アミノニトリル類が挙げられる。
【化43】
これら具体例としては、例えば3R−アミノペンタンニトリル、3S−アミノペンタンニトリル、3R−アミノヘキサンニトリル、3S−アミノヘキサンニトリル、3R−アミノヘプタンニトリル、3S−アミノヘプタンニトリル、3R−アミノオクタンニトリル、3S−アミノオクタンニトリル等が挙げられる。
光学活性アミノニトリル類(4)は、上記一般式(4a)で表される光学活性アミノニトリル類が好ましい。
【0029】
本発明に係る上記一般式(1)で表される光学活性アミドニトリル化合物(以下、光学活性アミドニトリル化合物(1)、という。)の具体例としては、例えば3−アセトアミドペンタンニトリル、3−クロロアセトアミドペンタンニトリル、3−プロピオニルアミドペンタンニトリル等が挙げられる。
【0030】
上記一般式(1)におけるR1がハロゲン原子である光学活性アミドニトリル化合物(5)と3級アミン又は芳香族アミンとの反応において、光学活性アミドニトリル化合物(5)を3級アミン又は芳香族アミンと反応させることにより光学活性アミドニトリル化合物(1)が得られる前に、中間体として上記一般式(5b)におけるZ+がアンモニウムである4級アンモニウム化合物が得られ、好ましくは上記一般式(5c)におけるZ+がアンモニウムである光学活性4級アンモニウム化合物が得られ、より好ましくは一般式(5d)
【化44】
(式中、Z+、R2、A1、A2及びX−は前記と同じ。)におけるZ+がアンモニウムである光学活性4級アンモニウム化合物が得られる。
【0031】
一般式(5b)、(5c)及び(5d)において、X−で示されるハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等が挙げられる。
Z+で示されるアンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、ジイソプロピルエチルアンモニウム基、ピリジニウム基等が挙げられる。
【0032】
光学活性アミドニトリル化合物(5)を3級アミンと反応させると、一般式(5g)
【化45】
(式中、R2、R16〜R18、A1、A2及びX−は前記と同じ。)で表されるアンモニウム塩が得られ、好ましくは一般式(5h)
【化46】
(式中、*は不斉炭素を示し、R2、R16〜R18、A1、A2及びX−は前記と同じ。)で表される光学活性アンモニウム塩が得られる。
【0033】
また、光学活性アミドニトリル化合物(5)を芳香族アミン類と反応させると、一般式(5e)
【化47】
(ピリジン環Aは、1)ピリジン環、又は2)置換ピリジン環或いはピリジン骨格を有する縮合環を示し、R2、A1、A2、及びX−は前記と同じ。)で表されるピリジニウム塩が得られ、好ましくは一般式(5f)
【化48】
(*は不斉炭素を示し、ピリジン環A、R2、A1、A2及びX−は前記と同じ。)で表される光学活性ピリジニウム塩が得られる。
【0034】
ピリジン環Aは、単環でも多環でも或いは縮合環でもよく、さらに1個〜3個の例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の異種原子を有してもよい。また、アルキル基、置換アミノ基等の置換基を有する置換ピリジン環でもよい。
ピリジン環Aが単環である場合はピリジン環であり、縮合環である場合はキノリン環等が挙げられる。
置換アミノ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基で置換されたアミノ基が挙げられる。
置換ピリジン環の具体例としては、ジメチルアミノピリジン環等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(5f)で表される光学活性ピリジニウム塩は、中でも一般式(5i)
【化49】
で表される光学活性ピリジニウム塩が好ましく、下記式で表される光学活性ピリジニウム塩がより好ましい。
【化50】
また、一般式(1)におけるR1がハロゲン原子である光学活性アミドニトリル化合物(1)のハロゲン部位は、アミン類以外でも、硫黄化合物の様な求核性の強い化合物とは、容易にオニウム塩を形成する。硫黄化合物としては、有機硫黄化合物が好ましく、具体的にはチオ尿素等が挙げられる。例えば、チオ尿素と反応すると
【化51】
を与え、好ましくは
【化52】
を与え、より好ましくは
【化53】
を与え(上記式中、R2,A1,A2及び*は前記と同じ。)、このものも容易に加水分解を受け、アミン化合物(4)を高光学純度で与える。
【0036】
本発明の上記一般式(1b)で表されるアミドニトリル化合物において、該アミドニトリル化合物は、光学活性アミドニトリル化合物(1)の好ましい化合物として挙げられ、上記一般式(1c)で表されるアミドニトリル化合物がより好ましく、更に好ましくは下記一般式(1d)で表されるアミドニトリル化合物である。
【化54】
(式中、R1、R2、A2及びA3は前記と同じ。)
一般式(1d)で表される光学活性アミドニトリル化合物の具体例としては、例えば3R−アセトアミドペンタンニトリル、3R−クロロアセトアミドペンタンニトリル、3R−プロピオニルアミドペンタンニトリル等が挙げられる。
【0037】
本発明の製造方法において、光学活性アミドニトリル化合物(1)は、アミノニトリル類(2)とエステル類(3)とを加水分解酵素の存在下で反応させることにより得ることができる。
アミノニトリル類(2)及びエステル類(3)の使用量は、アミノニトリル類(2)に対してエステル類を通常0.3〜10当量、好ましくは0.5〜1当量の範囲から適宜選択される。
【0038】
本発明で用いられる加水分解酵素としては、例えば、カルボキシエステラーゼ、アリルエステラーゼ、コリンエステラーゼ、リパーゼなどが挙げられ、具体的にはAspergillus nigerを起源とするリパーゼ、Mucor javanicusを起源とするリパーゼ、豚膵臓を起源とするリパーゼ、Pseudomonas aeruginosaを起源とするリパーゼ、Pseudomonas cepasiaを起源とするリパーゼ、 Pseudomonas fluorescenceを起源とするリパーゼ、 Rhizopus sp.を起源とするリパーゼ、 Rhizomucor mieheiを起源とするリパーゼ、 Candida rugosaを起源とするリパーゼ、 Candida antarcticaを起源とするリパーゼ、豚肝臓を起源とするエステラーゼ等が挙げられる。これら加水分解酵素は、好ましくはリパーゼであり、シュードモナス属菌、アルカリゲネス属菌などの細菌由来のリパーゼ、Candida antarcticaを起源とするリパーゼ等がより好ましい。また、本発明で用いられる加水分解酵素は、市販品も使用可能である。例えば天野エンザイム株式会社製PS、PS−D、PS−C(シュードモナス属菌由来)、天野エンザイム株式会社製AK−20(シュードモナス属菌由来)、天野エンザイム株式会社製AH(シュードモナス属菌由来)、名糖産業株式会社製Lipase QL、QLC、QLG(アルカリゲネス属菌由来)、ノボザイムズ社製Novozym435などが好ましく用いられる。これらの加水分解酵素は市販品をそのまま用いることができる。また、本発明で用いられる加水分解酵素は、それぞれ単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0039】
酵素は、反応溶液に一時に直接添加すればよい。
酵素の使用量は、アミノニトリル類(2)に対して、通常0.1〜100質量%(w/w)、好ましくは10〜50質量%(w/w)の範囲から適宜選択される。
【0040】
アミノニトリル類(2)とエステル類(3)との反応は、用いるエステル類(3)の種類により、必要に応じて溶媒の存在下で行うことができる。
溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコール類、N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、アセトニトリル等の含シアノ有機化合物類、N−メチルピロリドン、水等が挙げられる。これら溶媒は、夫々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0041】
溶媒の使用量は、アミノニトリル類(2)に対して、通常0〜100倍容、好ましくは5〜20倍容の範囲から適宜選択される。
反応温度は、通常0〜100℃、好ましくは20〜50℃の範囲から適宜選択される。
反応時間は、通常1〜48時間、好ましくは5〜18時間の範囲から適宜選択される。
【0042】
アミノニトリル類(2)は、ラセミ体の化合物が用いられるが、ラセミ体ばかりでなく、更に高光学純度のアミノニトリル類(2)を得るために、低光学純度のアミノニトリル類(2)や高光学純度のアミノニトリル類(2)も使用可能である。
このようにして得られた光学活性アミドニトリル化合物(1)は、高光学純度のものであるが、必要に応じて後処理を行うことにより、より高光学純度のものが得られる。前記後処理は、晶析等が好ましい。
【0043】
晶析は、前記光学活性アミドニトリル化合物(1)と反応しない溶媒であれば、特に制限は無く何れも使用可能であり、通常晶析に用いられる溶媒であればよい。晶析に使用可能な溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−エトキシエタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、グリセリン等の多価アルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類、アセトニトリル等の含シアノ有機化合物類等が挙げられる。これら溶媒は、夫々単独で用いても2種以上適宜組み合わせて用いてもよい。溶媒は、中でも酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類や該エステル類とジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン等のエーテル類との混合溶媒が好ましい。
【0044】
上記のようにして得られた光学活性アミドニトリル化合物(1)は、アミン類と反応させることにより、光学活性アミノニトリル類(4)を得ることができる。
アミン類は、用いる光学活性アミドニトリル化合物(1)により適宜選択すればよい。アミン類の具体例としては、例えば、アンモニア、下記一般式(11a)で表される1級アミン、下記一般式(11b)で表される2級アミン、下記一般式(11c)で表される3級アミン、芳香族アミン類が挙げられる。
【化55】
(上記式中、R13〜R18は夫々独立してアルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、ヒドロキシル基を示す。また、R14とR15、R16とR17、R17とR18、R16とR18とが結合して環を形成してもよい。)
【0045】
一般式(11a)、(11b)及び(11c)において、アルキル基としては、直鎖状でも、分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0046】
アリール基としては、例えば炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
置換アルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基等の置換基で置換されたアルキル基が挙げられる。
アルコキシ基としては、直鎖状でも分岐状でも或いは環状でもよい、例えば炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられ、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、2−プロポキシ基、n−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、3−メチルブトキシ、2,2−ジメチルプロピルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、4−メチルペンチルオキシ基、5−メチルペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
置換アリール基としては、上記アリール基の少なくとも1個の水素原子がアルキル基、アルコキシ基、アミノ基等の置換基で置換されたアリール基であり、アルキル基、アルコキシ基は上記と同じである。
一般式(11b)におけるR14又はR15がヒドロキシル基のときは、R14又はR15の何れか一方がヒドロキシル基である。また、一般式(11c)におけるR16〜R18がヒドロキシル基のときは、R16〜R18の何れか一個がヒドロキシル基である。
【0048】
一般式(11a)で表される1級アミンの具体例としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、1−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、エチレンジアミン、ヒドロキシルアミン、3−(2−エチルへキシルオキシ)プロピルアミン、1−アミノドデカン、1、2−ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
一般式(11b)で表される2級アミンの具体例としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン等が挙げられる。
一般式(11c)で表される3級アミンの具体例としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等が挙げられる。
芳香族アミン類の具体例としては、例えば、ピリジン、キノリン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0049】
上記アミン類は、上記一般式(1)におけるR1が水素原子、アルキル基又はアリール基である光学活性アミドニトリル化合物(1)のときは、1級アミン又は2級アミンが好ましく、より好ましくは1級アミンであり、更に好ましくはブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、1−アミノドデカンなどである。また、上記一般式(1)におけるR1がハロゲン原子である光学活性アミドニトリル化合物(1)、即ち、上記一般式(5)で表される光学活性アミドニトリル化合物(以下、光学活性アミドニトリル化合物(5)、という。)のときは、3級アミン又は芳香族アミンが好ましく、芳香族アミンがより好ましい。更に、高圧装置を用いてアンモニアを使用してもよい。
【0050】
光学活性アミドニトリル化合物(1)及びアミン類の使用量は、アミドニトリル化合物(1)に対してアミン類を通常1〜100当量、好ましくは2〜50当量の範囲から適宜選択される。
光学活性アミドニトリル化合物(1)とアミン類との反応は、上記一般式(1)におけるR1が水素原子、アルキル基又はアリール基である光学活性アミドニトリル化合物(1)を用いた場合には、該反応を一般式(10)
【化56】
(式中、R4〜R6は夫々独立してアルキル基又は置換アルキル基を示す。)で表されるトリアルコキシアルミニウムの存在下で行うことが好ましい。
【0051】
一般式(10)において、アルキル基としては、直鎖状又は分岐状でもよい、例えば炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−ペンチル基、tert−ペンチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2−メチルペンタン−3−イル基等が挙げられる。
置換アルキル基としては、前記アルキル基の少なくとも1個の水素原子が、アルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシル基、アシル基等の置換基で置換されたアルキル基が挙げられる。アルコキシ基は上記と同じである。
アシル基としては、直鎖状でも分岐状でもよい。例えば、脂肪酸カルボン酸、芳香族カルボン酸等のカルボン酸由来の炭素数1〜18のアシル基が挙げられ、具体的にはホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ラウロイル基、ステアロイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
【0052】
一般式(10)で表されるトリアルコキシアルミニウムの具体例としては、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられ、中でもアルミニウムトリエトキシド等が好ましい。
トリアルコキシアルミニウムの使用量は、アミドニトリル化合物(1)に対して通常0.1〜100当量、好ましくは1〜3当量の範囲から適宜選択される。
【0053】
得られた光学活性アミノニトリル類(4)は、必要に応じて蒸留や精製等の後処理を適宜行ってもよい。
このようにして得られた光学活性アミノニトリル類(4)は、高光学純度のものが得られる。
本発明の製造方法により得られる光学活性アミノニトリル類(4)の光学純度は、90%ee以上、好ましくは95%ee以上、より好ましくは98%ee以上である。
本発明の製造方法により得られる上記一般式(7)で表されるアミン類は、上記一般式(6)で表されるアミド化合物とアミン類又は硫黄化合物とを脱アシル化反応させることにより得ることができる。ここで、一般式(6)で表されるアミド化合物が、一般式(6)中のR8におけるR13がハロゲン原子である場合には3級アミン、芳香族アミン又は硫黄化合物が好ましく、一般式(6)中のR8が炭化水素基である場合には1級アミン又は2級アミンが好ましい。1級アミン、2級アミン、3級アミン、芳香族アミン及び硫黄化合物は上記と同じである。
【0054】
また、前記脱アシル化反応は、一般式(6)中のR8が炭化水素基である場合にはトリアルコキシアルミニウムの存在下で行うことが好ましい。前記トリアルコキシアルミニウムは、上記と同じである。
本発明で用いられる上記一般式(6)で表されるアミド化合物は、上記一般式(8)で表される光学活性アミド化合物、上記一般式(1)で表される光学活性アミドニトリル化合物等が挙げられる。
また、得られる上記一般式(7)で表されるアミン類は、上記一般式(9)で表される光学活性アミノ化合物、上記一般式(4)で表される光学活性アミノニトリル類等が挙げられる。
【0055】
【実施例】
以下に、実施例を示すが、それらは何ら本発明を制限するものではない。以下の実施例において、物性等の測定に用いた装置は次の通りである。
分析条件
GLC: HP5890 (Hewlett Packerd社製)
アミド化化学純度
GC:Neutrabond−1,0.25mm x 30 m
アミド光学純度
GC:CHIRALDEX B−TA,0.25 mm X 30 m
脱アミド化転化率
Neutrabond−1,0.25mm x 30 m
【0056】
実施例1 リパーゼを使ったアミド化
500ml坂口フラスコに、3−アミノペンタンニトリル 14.0g、Lipase PS 6.0g、ジイソプロピルエーテル 240ml、クロロ酢酸エチル 8.98gを混合し、25℃で振とうした。23時間で反応を停止し、転化率50%で3−クロロアセチルアミノペンタンニトリルを得た。光学純度は65.03%eeであった。このとき生成物が析出しており、ろ過により生成物および酵素の混合固体部と母液とに分け、さらに酵素混合物から生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチルを留去した後、ジイソプロピルエーテル−酢酸エチル混合溶媒により二度再結晶を行い、3.18gの(R)−3−クロロアセチルアミノペンタンニトリルを得た(化学純度>99.0%、光学純度>99.9%ee)。また、始めに分取した母液から同様に晶析を行い、0.43gを得た(化学純度>99.0%、光学純度98.72%ee)。合計で3.61gの生成物を得、収率は29.0%であった。
【0057】
実施例2 アミド化
実施例1と同様にして、アシル化剤に酢酸エチルを用い、35℃16時間反応を行った。結果は以下の通り。
【表1】
【0058】
実施例3 ピリジニウム塩の合成
15g(85.9mmol)の3−クロロアセチルアミノペンタンニトリルを90gのピリジンに溶かし、90℃で攪拌すると塩が析出してくる。3時間攪拌し、得られた塩を濾過する。21.5g(84.7mmol)、収率98.6%。
【0059】
実施例4 加水分解
15.6g(61.4mmol)のピリジニウム塩を1N NaOH 225mlに溶かし、室温で18時間攪拌する。1N HCl(220ml程度) をゆっくり滴下し、pHを11−12にする。酢酸エチル225gで8回抽出を行う。抽出液を濃縮し、蒸留する。3R−アミノペンタンニトリル4.4g
(44.8mmol)、収率73%。光学純度:>99%ee。
【0060】
実施例5
攪拌機、温度計、還流冷却器を備えた200ミリリットル4口反応フラスコに、3−アセトアミノペンタンニトリル 3.50g(0.025mol)、アルミニウムエトキシド 4.05g(0.025mol)及び1−アミノドデカン139.0g(0.75mol)を入れ、釜内温度を150℃に加熱して3時間攪拌した。得られた反応溶液をビグロー蒸留器を用いて単蒸留を行い、沸点86℃/1862Paのフラクション2.87gを得た。このフラクションをn−テトラデカンを内部標準物質としてガスクロマトグラフィーで分析定量した結果、3R−アミノペンタンニトリル生成量は0.925g(0.00942mol)、アミドペンタンニトリルに対する収率は37.7%であった。光学純度:>99%ee。
【0061】
実施例6 チオウレアによる脱アシル化
5g(28.6mmol)の3−クロロアセチルアミノペンタンニトリル、2.17g(28.6mmol)のチオ尿素を79gのエタノールに溶かし、60℃で一時間攪拌した後、13時間還流させる。溶媒を濃縮して、酢酸エチル90gを加える。100mlの0.1N HClで分液し、水層に25mlの1N NaOHを加え、酢酸エチル90gで10回抽出する。硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を濃縮し、蒸留する。3R−アミノペンタンニトリル940mg(9.6mmol)、収率33.5%。光学純度:>99%ee。
【0062】.
【発明の効果】
本発明によれば、農薬(除草剤)、医薬の中間体として有用な高い光学純度を有する光学活性アミドニトリル類、アミノニトリル類を提供することができる。これらの中間体は非常に結晶性がよく、高い光学純度を有し、優れた特性を有する。また、光学活性アミドニトリル類から光学活性アミノニトリル類への変換は、アルミニウム触媒の存在下、反応性の高いニトリル基を損なうことなく、容易に達成できる。
Claims (15)
- 加水分解酵素がリパーゼである請求項1に記載の製造方法。
- 一般式(2)
- 加水分解酵素がリパーゼである請求項4に記載の製造方法。
- アルミニウムトリアルコキシドの存在下で行う請求項3又は4に記載の製造方法。
- N−アシルアミノ化合物を脱アシル化反応させるアミノ化合物の製造方法において、アミン類又は硫黄化合物を用いることを特徴とするアミノ化合物の製造方法。
- 脱アシル化反応をトリアルコキシアルミニウムの存在下で行うことを特徴とする請求項13又は14に記載の製造方法。
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