JP2004268346A - 液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体貯蔵部とキャリッジとを連結した可撓性を有する液体供給チューブがキャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置において、液体供給チューブからキャリッジへ作用する力による液体噴射精度の低下を低減させる。
【解決手段】インク供給チューブ87は、キャリッジ1の往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分Wを有した状態で配設されており、ガイド部材89によってインク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する曲げ部分Wの復元力の方向が、主走査方向Xと略直交する方向となる如く、曲げ部分W近傍の曲げ形状が規定されるようにガイド部材89の配設位置及び配設角度が設定されている。
【選択図】 図12
【解決手段】インク供給チューブ87は、キャリッジ1の往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分Wを有した状態で配設されており、ガイド部材89によってインク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する曲げ部分Wの復元力の方向が、主走査方向Xと略直交する方向となる如く、曲げ部分W近傍の曲げ形状が規定されるようにガイド部材89の配設位置及び配設角度が設定されている。
【選択図】 図12
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部と、液体貯蔵部から液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、液体供給チューブがキャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置に関する。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、記録ヘッドから記録紙等の被記録材へインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えて特定の用途に対応する液体を前述した記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから、被記録材に相当する被噴射材に噴射して、液体を被噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。また、液体噴射ヘッドとしては、前述した記録ヘッド以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料を噴射する試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0003】
【従来の技術】
被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジを備え、キャリッジを所定の走査方向に往復動させながら被噴射材に液体を噴射する液体噴射装置の一例としては、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドを搭載したキャリッジを被噴射材としての被記録材上を主走査方向に往復動させながら被記録材の記録面に記録ヘッドからインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置が公知である。このような形態のインクジェット式記録装置は、インクが充填されたインクカートリッジがキャリッジに着脱交換可能に格納されているのが一般的である。つまり、インクカートリッジと記録ヘッドとがキャリッジに搭載されて所定の走査方向へ一緒に往復動する構成を成している。
【0004】
また、比較的大型のインクジェット式記録装置においては、インクカートリッジがインクジェット式記録装置本体に実装されており、可撓性を有するインク供給用チューブでインクカートリッジとキャリッジとを連結したものも公知である(例えば、特許文献1又は特許文献2を参照)。つまり、所定の走査方向に往復動するキャリッジに搭載された記録ヘッドには、インク供給用チューブを介してインクジェット式記録装置本体に格納されたインクカートリッジからインクが供給される構成を成している。したがって、インク供給用チューブは、キャリッジの往復動作範囲の全域にわたってキャリッジの往復動作に追従して、動かないインクカートリッジから動くキャリッジへインクを供給可能な長さでなければならないので、少なくともキャリッジとインクカートリッジとの距離が最も遠くなるキャリッジの位置に合わせた長さ以上に設定されており、一般的には、さらに十分な余裕を持たせた長さに設定されている。
【0005】
近年のインックジェット式記録装置における記録実行速度の飛躍的な高速化に伴って、キャリッジに搭載できるような比較的小型のインクカートリッジでは、すぐにインクカートリッジ内のインクが無くなってしまう傾向となる。そのため、インクカートリッジの交換サイクルが極端に短時間になってしまうことになり利便性が良くない。したがって、このように、大容量のインクカートリッジをインクジェット式記録装置本体に配置し、インクカートリッジとキャリッジとをインク供給用チューブで接続する構成とすることによって、高速でかつ大量の記録を実行することが可能なインクジェット式記録装置を実現することができる。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−130020号公報
【特許文献2】
特開2001−171145号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インクカートリッジをインクジェット式記録装置本体に配置し、インクカートリッジとキャリッジとをインク供給用チューブで接続する構成であることにより様々な問題が生じる虞がある。その1つとして、可撓性を有するインク供給用チューブからキャリッジへ作用する力による記録画質の低下が挙げられる。前述したように、インク供給用チューブは、キャリッジとインクカートリッジとの距離が最も遠くなるキャリッジの位置に合わせた長さ以上で、さらに余裕を持たせた長さに設定されており、キャリッジの往復動作に無理なく追従させるために、一般的に略U字形状の曲げ部分を有した状態でインクカートリッジとキャリッジとを連結している。したがって、略U字状に曲げられた可撓性を有するインク供給用チューブが真っ直ぐな状態に戻ろうとする復元力がキャリッジに作用することになり、それによって、キャリッジの姿勢がわずかに傾いて記録画質が低下してしまうことになる。従来は、この可撓性を有するインク供給用チューブからキャリッジへ作用する力による記録画質の低下が問題になることはほとんどなかったが、近年のインクジェット式記録装置の飛躍的な高画質化に伴ってもはや無視できないものとなってきた。
【0008】
そして、上述したような問題は、インクジェット式記録装置以外の様々な液体噴射装置においても同様に生じる問題である。つまり、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部(インクカートリッジに相当)と、液体貯蔵部から液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、液体供給チューブがキャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置において、可撓性を有する液体供給チューブからキャリッジへ作用する力によって液体噴射精度が低下してしまうという問題が生じる。したがって、このような構成を成す全ての液体噴射装置に共通した問題であると言える。
【0009】
本願発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、液体貯蔵部とキャリッジとを連結した可撓性を有する液体供給チューブがキャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置において、液体供給チューブからキャリッジへ作用する力による液体噴射精度の低下を低減させることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本願発明の第1の態様は、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、前記液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部と、該液体貯蔵部から前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、前記液体供給チューブが前記キャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置であって、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力の方向が、前記走査方向と略直交する方向となる如く、前記略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定して前記液体供給チューブを支持する液体供給チューブ支持手段を備えている、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0011】
このように、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力の方向は、液体噴射ヘッドの走査方向と略直交する方向となるので、液体噴射ヘッドの走査方向に対してキャリッジが傾く方向の力、つまり、液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力を小さくすることができる。したがって、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力による液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができる。
【0012】
これにより、本願発明の第1の態様に示した液体噴射装置によれば、液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができるので、液体噴射ヘッドの走査方向に対して傾いた状態の液体噴射ヘッドから液体を噴射することによる液体噴射精度の低下を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0013】
本願発明の第2の態様は、前述した第1の態様において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記略U字状の曲げ部分に前記キャリッジが最も近づいた状態において、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力の方向が、前記走査方向と略直交する方向となる如く、前記略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定して前記液体供給チューブを支持する構成を成している、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0014】
液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態、つまり、曲げ分からキャリッジまでの液体供給チューブの長さが最も短くなった状態において、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなる。そこで、液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態において、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力の方向が液体噴射ヘッドの走査方向と略直交する方向となるように液体供給チューブの曲げ部分近傍の曲げ形状を規定する。それによって、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなった状態において、液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力が最も小さくなるようにすることができる。
【0015】
本願発明の第3の態様は、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、前記液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部と、該液体貯蔵部から前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、前記液体供給チューブが前記キャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置であって、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力によって前記キャリッジが回転しようとする力が所定の大きさ以下となる如く、前記略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定して前記液体供給チューブを支持する液体供給チューブ支持手段を備えている、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0016】
このように、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力によるキャリッジが回転しようとする力が所定の大きさ以下となるので、液体噴射ヘッドの走査方向に対してキャリッジが傾く方向の力、つまり、液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力を所定の大きさ以下に小さくすることができる。したがって、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力による液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができる。
【0017】
これにより、本願発明の第3の態様に示した液体噴射装置によれば、液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができるので、液体噴射ヘッドの走査方向に対して傾いた状態の液体噴射ヘッドから液体を噴射することによる液体噴射精度の低下を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0018】
本願発明の第4の態様は、前述した第3の態様において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記略U字状の曲げ部分に前記キャリッジが最も近づいた状態において、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力によって前記キャリッジが回転しようとする力が最も小さくなる構成を成している、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0019】
液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態、つまり、曲げ分からキャリッジまでの液体供給チューブの長さが最も短くなった状態において、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなる。そこで、液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態において、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力によってキャリッジが回転しようとする力が最も小さくなるように液体供給チューブの曲げ部分近傍の曲げ形状を規定する。それによって、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなった状態において、液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力が最も小さくなるようにすることができる。
【0020】
本願発明の第5の態様は、前述した第1の態様〜第4の態様のいずれかにおいて、前記液体供給チューブ支持手段は、前記略U字状の曲げ部分より前記液体貯蔵部側の前記液体供給チューブの姿勢を規定するガイド部材を有している、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0021】
このように、ガイド部材によって略U字状の曲げ部分より液体貯蔵部側の液体供給チューブの姿勢を規定することによって、液体供給チューブの略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定することができる。
【0022】
本願発明の第6の態様は、前述した第5の態様において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記液体供給チューブに当接して前記液体供給チューブの姿勢を規定する平坦な当接面を有する前記ガイド部材を有し、前記ガイド部材は、前記当接面が前記走査方向に対して一定の角度を有した状態で配置されており、前記略U字状の曲げ部分に前記キャリッジが近づくにしたがって、前記略U字状の曲げ部分の曲げ半径が小さくなっていく構成を成している、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0023】
前述したように、液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態、つまり、曲げ分からキャリッジまでの液体供給チューブの長さが最も短くなった状態において、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなる。そこで、液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが近づくにしたがって、略U字状の曲げ部分の曲げ半径を小さくしていくことによって、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力によってキャリッジが回転しようとする力の方向は、キャリッジの走査方向に対して略直交する方向に近づいていく。それによって、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が大きくなるにしたがって、液体供給チューブから液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力が小さくなっていくようにすることができる。したがって、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力による液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができる。
【0024】
本願発明の第7の態様は、前述した第6の態様において、複数の前記液体貯蔵部と複数の前記液体供給チューブとを備え、複数の前記液体供給チューブは、少なくとも前記当接面に当接する部分より前記キャリッジ側が前記当接面と平行に隣接した状態で配設されている、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0025】
このように、複数の液体貯蔵部と複数の液体供給チューブを備えた液体噴射装置においては、各液体貯蔵部からキャリッジへ連結される各液体供給チューブの配設経路を少なくともガイド部材の当接面に当接する部分よりキャリッジ側で当接面と平行に隣接していることによって、1つのガイド部材で複数の液体供給チューブの姿勢を均等に規制して、各液体供給チューブからキャリッジに作用する力の大きさと方向を均等にすることができる。したがって、液体供給チューブからキャリッジに偏った力が作用してキャリッジの姿勢が不安定になる虞を少なくすることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、本願発明に係る「液体噴射装置」としてのインクジェット式記録装置の概略構成について説明する。
【0027】
図1は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の外観を示した斜視図であり、図2は、前面のインクカートリッジ収容部を開いた状態のインクジェット式記録装置の外観を示した斜視図である。また、図3は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の概略構成を示した概略側面図であり、図4は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部斜視図であり、図5は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部平面図である。図6は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の一部を拡大して示した要部斜視図であり、図7は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の一部を拡大して示した要部側面図であり、図8は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部側面図である。
【0028】
インクジェット式記録装置50は、普通紙等の印刷用紙Pを積重可能な給紙カセット7が前面に着脱可能に配設されており、給紙カセット7から給紙された印刷用紙Pに印刷が行われて排紙トレイ7aに印刷後の印刷用紙Pが排出される。給紙カセット7の内部には、給紙カセット7に積重された印刷用紙Pを自動給紙するための「自動給送手段」を構成するホッパー71が軸72を揺動軸として揺動可能に配設されている。給紙時には、縮設されたばね71aのばね力によってホッパー71が上方に揺動し、ホッパー71に積重されている印刷用紙Pの最上位の印刷用紙Pが給紙カセット7側に配設されているピックアップローラ73に押圧される。ピックアップローラ73の回転によって印刷用紙Pは、給紙カセット7から引き出され、インクジェット式記録装置50側に配設されている給紙ローラ74及びリバースローラ75に向けて給紙方向Aへ送り出される。
【0029】
インクジェット式記録装置50には、「自動給送手段」を構成する給紙ローラ74、リバースローラ75が配設されている。給紙ローラ74は、給紙駆動用モータ58の回転駆動力が伝達されて給紙回転方向AFに駆動回転する。リバースローラ75は、一定の回転抵抗を有する状態で従動回転可能に軸751に軸支されて給紙ローラ74へ押圧されており、軸751は、給紙駆動用モータ58の回転駆動力が伝達されて紙戻し回転方向RRに駆動回転する。ピックアップローラ73の回転によって給紙カセット7から引き出された印刷用紙Pは、リバースローラ75と給紙ローラ74との間に挟持された状態で給紙ローラ74の給紙回転方向AFへの駆動回転により搬送駆動ローラ51及び搬送従動ローラ52へ向けて給紙される。
【0030】
リバースローラ75は、紙戻し回転方向RRに駆動回転する軸751に一定の回転抵抗を有する状態で従動回転可能に軸支されている。この回転抵抗は、給紙ローラ74の周面の摩擦抵抗より小さく、かつ重なった印刷用紙P同士の摩擦抵抗より大きい抵抗に設定されている。即ち、給紙ローラ74と印刷用紙Pとの間の摩擦係数をμ1、印刷用紙P間の摩擦係数をμ2、印刷用紙Pとリバースローラ75との間の摩擦係数をμ3とすると、μ1>μ3>μ2の関係が成立するように、給紙ローラ74及びリバースローラ75の外周面を形成する高摩擦材が選定されている。
【0031】
したがって、給紙ローラ74とリバースローラ75との間に複数の印刷用紙Pが挟持されている状態では、最上位の印刷用紙Pのみが給紙ローラ74の周面に接した状態で給紙ローラ74の駆動回転によって給紙される。リバースローラ75の従動回転抵抗が重なった印刷用紙P同士の摩擦抵抗より大きいので、軸751の駆動回転(紙戻し回転方向RR)によってリバースローラ75が紙戻し回転方向RRに回転し、最上位の印刷用紙P以外の印刷用紙Pは、リバースローラ75の紙戻し回転方向RRへの回転によって給紙カセット7に戻される。そして、給紙ローラ74とリバースローラ75との間に挟持されている印刷用紙Pが1枚だけになると、リバースローラ75の従動回転抵抗より給紙ローラ74周面の摩擦抵抗の方が大きいので、リバースローラ75は、給紙ローラ74によって給紙される印刷用紙Pに接した状態で給紙従動回転方向RFへ従動回転する。このようにして、給紙ローラ74と重送しようとする印刷用紙Pを分離する機能を果たすリバースローラ75とによって、複数の印刷用紙Pが重なった状態で給紙されてしまうことなく、給紙カセット7から印刷用紙Pを1枚ずつ給紙される。
【0032】
給紙された印刷用紙Pは、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52との間に挟持された状態で、搬送駆動ローラ51の駆動回転によって副走査方向Yへ所定の搬送量で搬送される。搬送駆動ローラ51は、印刷用紙Pが接する周面に高摩擦抵抗被膜が形成されており、搬送駆動用モータ59の回転駆動力が無端ベルト591を介して伝達されて回転する。複数の搬送従動ローラ52は、個々に搬送従動ローラホルダ521に従動回転可能に軸支された状態で搬送駆動ローラ51に付勢されている。印刷用紙Pは、搬送従動ローラ52の付勢力によって搬送駆動ローラ51の周面に密着し、所定の回転量で回転制御される搬送駆動ローラ51の回転によって副走査方向Yへ所定の搬送量で高精度に搬送される。尚、リバースローラ75は、印刷用紙P先端が搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とに挟持された後、搬送駆動ローラ51による印刷用紙Pの搬送動作を阻害しない様に、つまり、搬送負荷を与えない様に給紙ローラ74から離間するようになっている。
【0033】
インクジェット式記録装置50は、搬送駆動ローラ51の回転によってプラテン53上を副走査方向Yへ搬送される印刷用紙Pの印刷面にインクを噴射する手段として、「液体噴射ヘッド」としての記録ヘッド4を搭載したキャリッジ1を備えている。キャリッジ1は、主走査方向Xに往復動可能にキャリッジガイド軸61に軸支されるメインキャリッジ2と、記録ヘッド4を搭載したサブキャリッジ3と、サブキャリッジ3を印刷用紙Pの印刷面に対して垂直方向に変位可能にメインキャリッジ2に支持し、サブキャリッジ3を変位させて記録ヘッド4のヘッド面と印刷用紙Pの印刷面との間隔(以下PGとする)を切り換えるPG切換ユニット(図示せず)を備えている。
【0034】
キャリッジ1は、メインキャリッジ2の軸受部21がキャリッジガイド軸61に軸支され、凸部22が後述する排紙フレーム503に摺接した状態で、主走査方向Xに往復動可能に支持されている。キャリッジガイド軸61は、主走査方向Xと平行にインクジェット式記録装置50本体に支持されており、右側端部近傍が右サイドフレーム501にキャリッジガイド軸支持部505で、左側端部近傍が左サイドフレーム502にキャリッジガイド軸支持部504でそれぞれ固定支持されている。キャリッジ1には、キャリッジガイド軸61と平行に張設された無端ベルト63が連結されている。無端ベルト63は、キャリッジ駆動用モータ67の駆動回転軸64と従動プーリー62との間に張設されており、キャリッジ駆動用モータ67の駆動回転によって双方向に回転する。キャリッジ1は、この無端ベルト63の双方向回転によって主走査方向Xに往復動する。
【0035】
また、インクジェット式記録装置50は、印刷後の印刷用紙Pを排紙トレイ7aに排出する手段として、排紙駆動ローラ54と排紙従動ローラ55、及び排紙補助ローラ56が配設されている。排紙駆動ローラ54は、前述した搬送駆動用モータ59の回転駆動力が伝達されて回転する。排紙従動ローラ55は、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が印刷用紙Pの印刷面に点接触するように鋭角的に尖っている歯付きローラになっている。複数の排紙従動ローラ55は、それぞれ個々に排紙フレーム503に従動回転可能に軸支された状態で排紙駆動ローラ54に付勢されており、印刷用紙Pが排紙駆動ローラ55の回転により排出される際に印刷用紙Pに接して印刷用紙Pを排紙駆動ローラ54に付勢しつつ、印刷用紙Pの排出に従動して回転する。また、排紙補助ローラ56も排紙フレーム503に従動回転可能に軸支されており、排出方向Bへ排出される印刷用紙Pの印刷面に接して従動回転しながら排紙トレイ7aに排出される印刷用紙Pをガイドする。
【0036】
さらに、インクジェット式記録装置50は、キャリッジ1の絶対位置を検出するためのリニアエンコーダ装置を備えている。リニアエンコーダ装置は、キャリッジガイド軸61と平行にリニアスケール65と、キャリッジ1に搭載されたリニアスケールセンサ12とを有している。リニアスケール65は、帯状の透明な柔軟性のあるフィルムに主走査方向Xに等間隔で多数のスリットが形成されており、真っ直ぐたるみ無く配置するためにばね66によって一定の張力が加えられた状態で張設されている。リニアスケールセンサ12は、リニアスケール65のスリットを検出し、スリットの検出状態を電気パルス信号に変換して出力する。
【0037】
さらに、インクジェット式記録装置50は、4つのインクカートリッジ82がキャリッジ1内ではなく、インクカートリッジ収容部8内に並設されており、インクカートリッジ収容部8の前面の蓋8aを開くと、正面向かって左側からブラックインクカートリッジ82K、シアンインクカートリッジ82C、マゼンダインクカートリッジ82M、及びイエローインクカートリッジ82Yが着脱可能に並設されている。ブラックインクカートリッジ82Kには、ブラックインクに関する情報を担持したICチップ83Kが装着されており、シアンインクカートリッジ82Cには、シアンインクに関する情報を担持したICチップ83Cが装着されており、マゼンダインクカートリッジ82Mには、マゼンダインクに関する情報を担持したICチップ83Mが装着されており、イエローインクカートリッジ82Yには、イエローインクに関する情報を担持したICチップ83Yが装着されている。各ICチップ83は、インク色などの固定情報の他、インク残量などの変動情報を記憶する記憶装置(図示せず)と、キャリッジ1に搭載された通信回路基板84と無線通信するための通信装置(図示せず)とを内蔵している。
【0038】
一方、主走査方向Xに往復動するキャリッジ1には、この各ICチップ83と通信するための通信回路基板84が通信回路基板フレーム81によって略垂直に立設されている。そして、通信回路基板84は、キャリッジ1が主走査方向Xに移動することにより、主走査方向Xに並んで配設された4つのインクカートリッジ82のいずれか1つのインクカートリッジ82のICチップ83と対向する。そして、ICチップ83と通信することにより、ICチップ83に記憶された各種情報の読込と書換を行うことができるようになっている。通信回路基板84は、接続部85を介してキャリッジ1内部の回路に電気的に接続される。
【0039】
また、通信回路基板フレーム81は、通信回路基板84の周囲を可能な限り覆う形状をした金属製の取付フレームであり、通信回路基板84を略垂直に高精度に立設させるとともに、通信回路基板84からの不要輻射ノイズをシールドしている。通信回路基板フレーム81は、インクジェット式記録装置50の筐体に電気的に接続されて筐体アースされており、それによって、通信回路基板84からの不要輻射ノイズを低減させる効果が得られる。
【0040】
さらに、インクジェット式記録装置50は、キャリッジ1の移動位置がホームポジションにある状態で記録ヘッド4のメンテナンスを行うインクシステム100を備えている。インクシステム100は、給紙駆動用モータ58を駆動力源として、キャリッジ1をロックして記録ヘッド4のヘッド面を封止するとともに、必要に応じて記録ヘッド4のヘッド面のインクを吸引してメニスカスを整えたりする。インクシステム100は、記録ヘッド4を封止する「封止部材」としてのキャップ571を搭載し、給紙駆動用モータ58を駆動力源として記録ヘッド4のヘッド面に対して垂直方向(符号R)に往復動してキャリッジ1の移動領域に進出/退避可能に配設された「封止部材ホルダ」としてのキャップケース57を備えている。キャップケース57には、キャリッジ1と係合してキャリッジ1をロックする「キャリッジ係止部材」としてのキャリッジロック572と、トリガ部材573が一体に形成されている。
【0041】
キャリッジ1がホームポジションに位置している状態でキャップケース57をキャリッジ1の移動領域に進出させることによって、キャリッジロック572がキャリッジ1と係合してキャリッジ1がロックされるとともに、キャップ571によって記録ヘッド4のヘッド面が封止される。また、トリガ部材573は、キャップケース57がキャリッジ1の移動領域に進出した状態で、キャリッジ1と係合することによって前述した図示していないPG切換ユニットを動作させてPGを切り換える。
【0042】
そして、インクジェット式記録装置50は、各種センサの情報に基づいて各種駆動力源を駆動制御して印刷制御を行う制御部200を有しており、制御部200は主に以下のような制御を行う。給紙経路に配設された印刷用紙の先端を検出する用紙センサ(図示せず)からの情報に基づいて給紙駆動用モータ58を駆動制御して印刷用紙Pを給紙する。リニアスケールセンサ12が出力する電気パルス信号をカウントしてキャリッジ1の絶対位置を演算し、その絶対位置に基づいてキャリッジ駆動用モータ67を駆動制御してキャリッジ1を主走査方向Xに往復動させるとともに、リニアスケールセンサ12が出力する電気パルス信号からインク噴射タイミング信号を生成し、インク噴射タイミング信号に基づいて記録ヘッド4の駆動回路を駆動制御して印刷用紙Pの印刷面へインクを噴射する。
【0043】
公知のロータリーエンコーダ装置等の回転量検出手段(図示せず)によって搬送駆動ローラ51の回転量を検出し、その回転量検出手段の情報に基づいて、印刷用紙Pが副動作方向Yに所定の搬送量で搬送されるように搬送駆動用モータ59を駆動制御して搬送駆動ローラ51を駆動回転させる。キャリッジ1を主走査方向Xに往復動させながら印刷用紙Pの印刷面にインクを噴射する動作と、印刷用紙Pを所定の搬送量で搬送する動作とを交互に繰り返して印刷を実行し、印刷実行後もさらに搬送駆動用モータ59を回転制御して排紙駆動ローラ54を回転させて印刷実行後の印刷用紙Pを排紙トレイ7aへ排出する。
【0044】
図9は、インクカートリッジ収容部8の底面側を示した斜視図であり、図10は、同じくインクカートリッジ収容部8の底面側を違う角度から示した斜視図である。また、図11は、インクカートリッジ収容部8の底面側を示した平面図である。
【0045】
インクカートリッジ収容部8の底面には、インクカートリッジ83からキャリッジ1へインクを供給する駆動力源としてのインクポンプ80が配設されており、インクポンプ80からは、「液体供給チューブ」としてのインク供給チューブ87が4本配設されている。インク供給チューブ87は、ブラックインク供給チューブ87K、シアンインク供給チューブ87C、マゼンダインク供給チューブ87M、及びイエローインク供給チューブ87Yの4本のチューブで構成されている。ブラックインクカートリッジ82Kに貯蔵されているブラックインクは、チューブ86Kを介してインクポンプ80に吸引され、インクポンプ80によってブラックインク供給チューブ87Kを介してキャリッジ1へ供給される。
【0046】
同様に、シアンインクカートリッジ82Cに貯蔵されているシアンインクは、チューブ86Cを介してインクポンプ80に吸引され、インクポンプ80によってシアンインク供給チューブ87Cを介してキャリッジ1へ供給され、マゼンダインクカートリッジ82Mに貯蔵されているマゼンダインクは、チューブ86Mを介してインクポンプ80に吸引され、インクポンプ80によってマゼンダインク供給チューブ87Mを介してキャリッジ1へ供給され、イエローインクカートリッジ82Yに貯蔵されているイエローインクは、チューブ86Yを介してインクポンプ80に吸引され、インクポンプ80によってイエローインク供給チューブ87Yを介してキャリッジ1へ供給される。
【0047】
チューブ86K、チューブ86C、チューブ86M、及びチューブ86Yは、それぞれチューブガイド861にガイドされつつ、チューブホルダ862によってインクカートリッジ収容部8の裏面に図示の如く配設されている。ブラックインク供給チューブ87K、シアンインク供給チューブ87C、マゼンダインク供給チューブ87M、及びイエローインク供給チューブ87Yは、キャリッジ1の往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分Wを有した状態で配設されており、ガイド部材89によって4本のインク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する曲げ部分Wの復元力の方向が、主走査方向Xと略直交する方向となる如く、曲げ部分W近傍の曲げ形状が規定されるようになっている。ブラックインク供給チューブ87K、シアンインク供給チューブ87C、マゼンダインク供給チューブ87M、及びイエローインク供給チューブ87Yは、ガイド部材89の当接面891と平行に隣接して配置されており、図示の如くガイド部材89の当接面891に当接して同じ経路に配置されている。また、キャリッジ1と制御部200とを電気的に接続するためのフレキシブルフラットケーブル88がインク供給チューブ87と平行に配設されている。
【0048】
図12は、インクカートリッジ収容部8の底面側を示した平面図であり、キャリッジ1を主走査方向Xに往復動させたときのインク供給チューブ87の状態を模式的に示したものである。
【0049】
インク供給チューブ87の曲げ部分Wからキャリッジ1が遠ざかるにしたがって、インク供給チューブ87の曲げ部分Wの曲げ半径が大きくなっていき、インク供給チューブ87の曲げ部分Wにキャリッジ1が近づくにしたがって、インク供給チューブ87の曲げ部分Wの曲げ半径が小さくなっていくようにガイド部材89の位置、及び当接面891の角度が設定されている。インク供給チューブ87の曲げ部分Wにキャリッジ1が近づくにしたがって、インク供給チューブ87の曲げ部分Wの曲げ半径が小さくなっていくことによって、インク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する略U字状の曲げ部分Wの復元力は大きくなっていくが、その復元力の方向(符号Fで示した方向)は、主走査方向Xに対して略直交方向に近づいていく。
【0050】
したがって、インク供給チューブ87の曲げ部分Wからキャリッジ1に作用する力が大きくなるにしたがって、インク供給チューブ87から主走査方向Xに対して斜めにキャリッジ1に作用する力が小さくなっていくようにすることができる。それによって、インク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する略U字状の曲げ部分Wの復元力による主走査方向Xに対するキャリッジ1の傾きを小さくすることができる。
【0051】
そして、ガイド部材89の配設位置、及び当接面891の角度は、キャリッジ1の位置に応じて、インク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する略U字状の曲げ部分Wの復元力の方向(符号Fで示した方向)が、常に主走査方向Xと略直交する方向となるように設定されている。それによって、主走査方向Xに対してキャリッジ1が傾く方向の力、つまり、主走査方向Xに対して斜めにキャリッジ1に作用する力を小さくすることができる。また、ガイド部材89の配設位置、及び当接面891の角度をインク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する略U字状の曲げ部分Wの復元力によるキャリッジ1が回転しようとする力が所定の大きさ以下となるように設定しても良く、それによって、主走査方向Xに対してキャリッジ1が傾く方向の力、つまり、主走査方向Xに対して斜めにキャリッジ1に作用する力を所定の大きさ以下に小さくすることができる。
【0052】
図13は、インクカートリッジ収容部8の底面側を示した平面図であり、ガイド部材89の配設位置の違いによるインク供給チューブ87の状態を模式的に示したものである。
【0053】
このように、最適な配設位置で当接面891の角度が最適に設定されているガイド部材89の位置よりもガイド部材89をキャリッジガイド軸61寄りに配設すると(仮想線で示した符号89aの位置)、インク供給チューブ87は、図示の如く(仮想線で示した符号87a)、キャリッジ1への接続部分が斜めに曲がってしまうほど強くキャリッジ1に押しつけられることになる。そのため、キャリッジ1に作用するインク供給チューブ87の復元力の方向が、符号F1で示したようにキャリッジ1に対して斜めになってしまい、主走査方向Xに対してキャリッジ1が傾いてしまう方向に強い力が作用してしまうことになる。一方、ガイド部材89を設けなかったとすると、インク供給チューブ87は、図示の如く(仮想線で示した符号87b)、U字状の曲げ部分Wの曲げ半径が大きくなる。それによって、キャリッジ1に作用するインク供給チューブ87の復元力の大きさは小さくなるものの、その力の方向は、符号F2で示したようにキャリッジ1に対して斜めになってしまい、主走査方向Xに対してキャリッジ1が傾いてしまう方向に力が作用してしまうことになる。
【0054】
したがって、インク供給チューブ87の略U字状の曲げ部分の曲げ半径を規制するガイド部材89を最適な位置(実線で示したガイド部材89の位置)に配設することによって、つまり、キャリッジ1に作用するインク供給チューブ87の略U字状の曲げ部分の復元力の方向が主走査方向Xに対して略直交方向となるように設定することによって、主走査方向Xに対して略直交方向の力がキャリッジ1に作用してキャリッジ1が傾いてしまう方向に作用する力を最小限にすることができる。この最適なガイド部材89の配設位置、及び当接面891の角度は、インク供給チューブ87の太さや硬度、及び長さによって異なり、例えば、キャリッジ1に作用する荷重の方向を測定しながらインク供給チューブ87から作用する荷重の方向が主走査方向Xに対して略直交する方向となるように、ガイド部材89の配設位置、及び当接面891の角度を設定する。
【0055】
このようにして、インク供給チューブ87からキャリッジ1へ作用する力によってキャリッジ1が傾くことによるインク噴射精度の低下を低減させることができる。
【0056】
尚、本願発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本願発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るインクジェット式記録装置の外観斜視図である。
【図2】本願発明に係るインクジェット式記録装置の外観斜視図である。
【図3】本願発明に係るインクジェット式記録装置の概略側面図である。
【図4】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部斜視図である。
【図5】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部平面図である。
【図6】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部斜視図である。
【図7】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部側面図である。
【図8】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部側面図である。
【図9】インクカートリッジ収容部の底面側を示した斜視図である。
【図10】インクカートリッジ収容部の底面側を示した斜視図である。
【図11】インクカートリッジ収容部の底面側を示した平面図である。
【図12】インクカートリッジ収容部の底面側を示した平面図である。
【図13】インクカートリッジ収容部の底面側を示した平面図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ、2 メインキャリッジ、3 サブキャリッジ、4 記録ヘッド、7 給紙カセット、8 インクカートリッジ収容部、11 キャリッジカバー、50 インクジェット式記録装置、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排紙駆動ローラ、55 排紙従動ローラ、56 排紙補助ローラ、57 キャップケース、61 キャリッジガイド軸、73 ピックアップローラ、74 給紙ローラ、75 リバースローラ、80 インクポンプ、81 通信回路基板フレーム、82K、82C、82M、82Y インクカートリッジ、84 通信回路基板、87K、87C、87M、87Y インク供給チューブ、88 フレキシブルフラットケーブル、89 ガイド部材、200 制御部、X 主走査方向、Y 副走査方向
【発明の属する技術分野】
本願発明は、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部と、液体貯蔵部から液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、液体供給チューブがキャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置に関する。
【0002】
ここで、液体噴射装置とは、記録ヘッドから記録紙等の被記録材へインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置、複写機及びファクシミリ等の記録装置に限らず、インクに代えて特定の用途に対応する液体を前述した記録ヘッドに相当する液体噴射ヘッドから、被記録材に相当する被噴射材に噴射して、液体を被噴射材に付着させる装置を含む意味で用いる。また、液体噴射ヘッドとしては、前述した記録ヘッド以外に、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイや面発光ディスプレイ(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッド、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド、精密ピペットとしての試料を噴射する試料噴射ヘッド等が挙げられる。
【0003】
【従来の技術】
被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジを備え、キャリッジを所定の走査方向に往復動させながら被噴射材に液体を噴射する液体噴射装置の一例としては、液体噴射ヘッドとしての記録ヘッドを搭載したキャリッジを被噴射材としての被記録材上を主走査方向に往復動させながら被記録材の記録面に記録ヘッドからインクを噴射して被記録材への記録を実行するインクジェット式記録装置が公知である。このような形態のインクジェット式記録装置は、インクが充填されたインクカートリッジがキャリッジに着脱交換可能に格納されているのが一般的である。つまり、インクカートリッジと記録ヘッドとがキャリッジに搭載されて所定の走査方向へ一緒に往復動する構成を成している。
【0004】
また、比較的大型のインクジェット式記録装置においては、インクカートリッジがインクジェット式記録装置本体に実装されており、可撓性を有するインク供給用チューブでインクカートリッジとキャリッジとを連結したものも公知である(例えば、特許文献1又は特許文献2を参照)。つまり、所定の走査方向に往復動するキャリッジに搭載された記録ヘッドには、インク供給用チューブを介してインクジェット式記録装置本体に格納されたインクカートリッジからインクが供給される構成を成している。したがって、インク供給用チューブは、キャリッジの往復動作範囲の全域にわたってキャリッジの往復動作に追従して、動かないインクカートリッジから動くキャリッジへインクを供給可能な長さでなければならないので、少なくともキャリッジとインクカートリッジとの距離が最も遠くなるキャリッジの位置に合わせた長さ以上に設定されており、一般的には、さらに十分な余裕を持たせた長さに設定されている。
【0005】
近年のインックジェット式記録装置における記録実行速度の飛躍的な高速化に伴って、キャリッジに搭載できるような比較的小型のインクカートリッジでは、すぐにインクカートリッジ内のインクが無くなってしまう傾向となる。そのため、インクカートリッジの交換サイクルが極端に短時間になってしまうことになり利便性が良くない。したがって、このように、大容量のインクカートリッジをインクジェット式記録装置本体に配置し、インクカートリッジとキャリッジとをインク供給用チューブで接続する構成とすることによって、高速でかつ大量の記録を実行することが可能なインクジェット式記録装置を実現することができる。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−130020号公報
【特許文献2】
特開2001−171145号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インクカートリッジをインクジェット式記録装置本体に配置し、インクカートリッジとキャリッジとをインク供給用チューブで接続する構成であることにより様々な問題が生じる虞がある。その1つとして、可撓性を有するインク供給用チューブからキャリッジへ作用する力による記録画質の低下が挙げられる。前述したように、インク供給用チューブは、キャリッジとインクカートリッジとの距離が最も遠くなるキャリッジの位置に合わせた長さ以上で、さらに余裕を持たせた長さに設定されており、キャリッジの往復動作に無理なく追従させるために、一般的に略U字形状の曲げ部分を有した状態でインクカートリッジとキャリッジとを連結している。したがって、略U字状に曲げられた可撓性を有するインク供給用チューブが真っ直ぐな状態に戻ろうとする復元力がキャリッジに作用することになり、それによって、キャリッジの姿勢がわずかに傾いて記録画質が低下してしまうことになる。従来は、この可撓性を有するインク供給用チューブからキャリッジへ作用する力による記録画質の低下が問題になることはほとんどなかったが、近年のインクジェット式記録装置の飛躍的な高画質化に伴ってもはや無視できないものとなってきた。
【0008】
そして、上述したような問題は、インクジェット式記録装置以外の様々な液体噴射装置においても同様に生じる問題である。つまり、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部(インクカートリッジに相当)と、液体貯蔵部から液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、液体供給チューブがキャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置において、可撓性を有する液体供給チューブからキャリッジへ作用する力によって液体噴射精度が低下してしまうという問題が生じる。したがって、このような構成を成す全ての液体噴射装置に共通した問題であると言える。
【0009】
本願発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、液体貯蔵部とキャリッジとを連結した可撓性を有する液体供給チューブがキャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置において、液体供給チューブからキャリッジへ作用する力による液体噴射精度の低下を低減させることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するため、本願発明の第1の態様は、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、前記液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部と、該液体貯蔵部から前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、前記液体供給チューブが前記キャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置であって、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力の方向が、前記走査方向と略直交する方向となる如く、前記略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定して前記液体供給チューブを支持する液体供給チューブ支持手段を備えている、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0011】
このように、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力の方向は、液体噴射ヘッドの走査方向と略直交する方向となるので、液体噴射ヘッドの走査方向に対してキャリッジが傾く方向の力、つまり、液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力を小さくすることができる。したがって、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力による液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができる。
【0012】
これにより、本願発明の第1の態様に示した液体噴射装置によれば、液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができるので、液体噴射ヘッドの走査方向に対して傾いた状態の液体噴射ヘッドから液体を噴射することによる液体噴射精度の低下を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0013】
本願発明の第2の態様は、前述した第1の態様において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記略U字状の曲げ部分に前記キャリッジが最も近づいた状態において、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力の方向が、前記走査方向と略直交する方向となる如く、前記略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定して前記液体供給チューブを支持する構成を成している、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0014】
液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態、つまり、曲げ分からキャリッジまでの液体供給チューブの長さが最も短くなった状態において、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなる。そこで、液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態において、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力の方向が液体噴射ヘッドの走査方向と略直交する方向となるように液体供給チューブの曲げ部分近傍の曲げ形状を規定する。それによって、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなった状態において、液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力が最も小さくなるようにすることができる。
【0015】
本願発明の第3の態様は、被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、前記液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部と、該液体貯蔵部から前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、前記液体供給チューブが前記キャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置であって、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力によって前記キャリッジが回転しようとする力が所定の大きさ以下となる如く、前記略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定して前記液体供給チューブを支持する液体供給チューブ支持手段を備えている、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0016】
このように、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力によるキャリッジが回転しようとする力が所定の大きさ以下となるので、液体噴射ヘッドの走査方向に対してキャリッジが傾く方向の力、つまり、液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力を所定の大きさ以下に小さくすることができる。したがって、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力による液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができる。
【0017】
これにより、本願発明の第3の態様に示した液体噴射装置によれば、液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができるので、液体噴射ヘッドの走査方向に対して傾いた状態の液体噴射ヘッドから液体を噴射することによる液体噴射精度の低下を低減させることができるという作用効果が得られる。
【0018】
本願発明の第4の態様は、前述した第3の態様において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記略U字状の曲げ部分に前記キャリッジが最も近づいた状態において、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力によって前記キャリッジが回転しようとする力が最も小さくなる構成を成している、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0019】
液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態、つまり、曲げ分からキャリッジまでの液体供給チューブの長さが最も短くなった状態において、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなる。そこで、液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態において、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力によってキャリッジが回転しようとする力が最も小さくなるように液体供給チューブの曲げ部分近傍の曲げ形状を規定する。それによって、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなった状態において、液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力が最も小さくなるようにすることができる。
【0020】
本願発明の第5の態様は、前述した第1の態様〜第4の態様のいずれかにおいて、前記液体供給チューブ支持手段は、前記略U字状の曲げ部分より前記液体貯蔵部側の前記液体供給チューブの姿勢を規定するガイド部材を有している、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0021】
このように、ガイド部材によって略U字状の曲げ部分より液体貯蔵部側の液体供給チューブの姿勢を規定することによって、液体供給チューブの略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定することができる。
【0022】
本願発明の第6の態様は、前述した第5の態様において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記液体供給チューブに当接して前記液体供給チューブの姿勢を規定する平坦な当接面を有する前記ガイド部材を有し、前記ガイド部材は、前記当接面が前記走査方向に対して一定の角度を有した状態で配置されており、前記略U字状の曲げ部分に前記キャリッジが近づくにしたがって、前記略U字状の曲げ部分の曲げ半径が小さくなっていく構成を成している、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0023】
前述したように、液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが最も近づいた状態、つまり、曲げ分からキャリッジまでの液体供給チューブの長さが最も短くなった状態において、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が最も大きくなる。そこで、液体供給チューブの曲げ部分にキャリッジが近づくにしたがって、略U字状の曲げ部分の曲げ半径を小さくしていくことによって、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力によってキャリッジが回転しようとする力の方向は、キャリッジの走査方向に対して略直交する方向に近づいていく。それによって、液体供給チューブの曲げ部分からキャリッジに作用する力が大きくなるにしたがって、液体供給チューブから液体噴射ヘッドの走査方向に対して斜めにキャリッジに作用する力が小さくなっていくようにすることができる。したがって、液体供給チューブからキャリッジに作用する略U字状の曲げ部分の復元力による液体噴射ヘッドの走査方向に対するキャリッジの傾きを小さくすることができる。
【0024】
本願発明の第7の態様は、前述した第6の態様において、複数の前記液体貯蔵部と複数の前記液体供給チューブとを備え、複数の前記液体供給チューブは、少なくとも前記当接面に当接する部分より前記キャリッジ側が前記当接面と平行に隣接した状態で配設されている、ことを特徴とした液体噴射装置である。
【0025】
このように、複数の液体貯蔵部と複数の液体供給チューブを備えた液体噴射装置においては、各液体貯蔵部からキャリッジへ連結される各液体供給チューブの配設経路を少なくともガイド部材の当接面に当接する部分よりキャリッジ側で当接面と平行に隣接していることによって、1つのガイド部材で複数の液体供給チューブの姿勢を均等に規制して、各液体供給チューブからキャリッジに作用する力の大きさと方向を均等にすることができる。したがって、液体供給チューブからキャリッジに偏った力が作用してキャリッジの姿勢が不安定になる虞を少なくすることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本願発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。まず、本願発明に係る「液体噴射装置」としてのインクジェット式記録装置の概略構成について説明する。
【0027】
図1は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の外観を示した斜視図であり、図2は、前面のインクカートリッジ収容部を開いた状態のインクジェット式記録装置の外観を示した斜視図である。また、図3は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の概略構成を示した概略側面図であり、図4は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部斜視図であり、図5は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部平面図である。図6は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の一部を拡大して示した要部斜視図であり、図7は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の一部を拡大して示した要部側面図であり、図8は、本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部側面図である。
【0028】
インクジェット式記録装置50は、普通紙等の印刷用紙Pを積重可能な給紙カセット7が前面に着脱可能に配設されており、給紙カセット7から給紙された印刷用紙Pに印刷が行われて排紙トレイ7aに印刷後の印刷用紙Pが排出される。給紙カセット7の内部には、給紙カセット7に積重された印刷用紙Pを自動給紙するための「自動給送手段」を構成するホッパー71が軸72を揺動軸として揺動可能に配設されている。給紙時には、縮設されたばね71aのばね力によってホッパー71が上方に揺動し、ホッパー71に積重されている印刷用紙Pの最上位の印刷用紙Pが給紙カセット7側に配設されているピックアップローラ73に押圧される。ピックアップローラ73の回転によって印刷用紙Pは、給紙カセット7から引き出され、インクジェット式記録装置50側に配設されている給紙ローラ74及びリバースローラ75に向けて給紙方向Aへ送り出される。
【0029】
インクジェット式記録装置50には、「自動給送手段」を構成する給紙ローラ74、リバースローラ75が配設されている。給紙ローラ74は、給紙駆動用モータ58の回転駆動力が伝達されて給紙回転方向AFに駆動回転する。リバースローラ75は、一定の回転抵抗を有する状態で従動回転可能に軸751に軸支されて給紙ローラ74へ押圧されており、軸751は、給紙駆動用モータ58の回転駆動力が伝達されて紙戻し回転方向RRに駆動回転する。ピックアップローラ73の回転によって給紙カセット7から引き出された印刷用紙Pは、リバースローラ75と給紙ローラ74との間に挟持された状態で給紙ローラ74の給紙回転方向AFへの駆動回転により搬送駆動ローラ51及び搬送従動ローラ52へ向けて給紙される。
【0030】
リバースローラ75は、紙戻し回転方向RRに駆動回転する軸751に一定の回転抵抗を有する状態で従動回転可能に軸支されている。この回転抵抗は、給紙ローラ74の周面の摩擦抵抗より小さく、かつ重なった印刷用紙P同士の摩擦抵抗より大きい抵抗に設定されている。即ち、給紙ローラ74と印刷用紙Pとの間の摩擦係数をμ1、印刷用紙P間の摩擦係数をμ2、印刷用紙Pとリバースローラ75との間の摩擦係数をμ3とすると、μ1>μ3>μ2の関係が成立するように、給紙ローラ74及びリバースローラ75の外周面を形成する高摩擦材が選定されている。
【0031】
したがって、給紙ローラ74とリバースローラ75との間に複数の印刷用紙Pが挟持されている状態では、最上位の印刷用紙Pのみが給紙ローラ74の周面に接した状態で給紙ローラ74の駆動回転によって給紙される。リバースローラ75の従動回転抵抗が重なった印刷用紙P同士の摩擦抵抗より大きいので、軸751の駆動回転(紙戻し回転方向RR)によってリバースローラ75が紙戻し回転方向RRに回転し、最上位の印刷用紙P以外の印刷用紙Pは、リバースローラ75の紙戻し回転方向RRへの回転によって給紙カセット7に戻される。そして、給紙ローラ74とリバースローラ75との間に挟持されている印刷用紙Pが1枚だけになると、リバースローラ75の従動回転抵抗より給紙ローラ74周面の摩擦抵抗の方が大きいので、リバースローラ75は、給紙ローラ74によって給紙される印刷用紙Pに接した状態で給紙従動回転方向RFへ従動回転する。このようにして、給紙ローラ74と重送しようとする印刷用紙Pを分離する機能を果たすリバースローラ75とによって、複数の印刷用紙Pが重なった状態で給紙されてしまうことなく、給紙カセット7から印刷用紙Pを1枚ずつ給紙される。
【0032】
給紙された印刷用紙Pは、搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52との間に挟持された状態で、搬送駆動ローラ51の駆動回転によって副走査方向Yへ所定の搬送量で搬送される。搬送駆動ローラ51は、印刷用紙Pが接する周面に高摩擦抵抗被膜が形成されており、搬送駆動用モータ59の回転駆動力が無端ベルト591を介して伝達されて回転する。複数の搬送従動ローラ52は、個々に搬送従動ローラホルダ521に従動回転可能に軸支された状態で搬送駆動ローラ51に付勢されている。印刷用紙Pは、搬送従動ローラ52の付勢力によって搬送駆動ローラ51の周面に密着し、所定の回転量で回転制御される搬送駆動ローラ51の回転によって副走査方向Yへ所定の搬送量で高精度に搬送される。尚、リバースローラ75は、印刷用紙P先端が搬送駆動ローラ51と搬送従動ローラ52とに挟持された後、搬送駆動ローラ51による印刷用紙Pの搬送動作を阻害しない様に、つまり、搬送負荷を与えない様に給紙ローラ74から離間するようになっている。
【0033】
インクジェット式記録装置50は、搬送駆動ローラ51の回転によってプラテン53上を副走査方向Yへ搬送される印刷用紙Pの印刷面にインクを噴射する手段として、「液体噴射ヘッド」としての記録ヘッド4を搭載したキャリッジ1を備えている。キャリッジ1は、主走査方向Xに往復動可能にキャリッジガイド軸61に軸支されるメインキャリッジ2と、記録ヘッド4を搭載したサブキャリッジ3と、サブキャリッジ3を印刷用紙Pの印刷面に対して垂直方向に変位可能にメインキャリッジ2に支持し、サブキャリッジ3を変位させて記録ヘッド4のヘッド面と印刷用紙Pの印刷面との間隔(以下PGとする)を切り換えるPG切換ユニット(図示せず)を備えている。
【0034】
キャリッジ1は、メインキャリッジ2の軸受部21がキャリッジガイド軸61に軸支され、凸部22が後述する排紙フレーム503に摺接した状態で、主走査方向Xに往復動可能に支持されている。キャリッジガイド軸61は、主走査方向Xと平行にインクジェット式記録装置50本体に支持されており、右側端部近傍が右サイドフレーム501にキャリッジガイド軸支持部505で、左側端部近傍が左サイドフレーム502にキャリッジガイド軸支持部504でそれぞれ固定支持されている。キャリッジ1には、キャリッジガイド軸61と平行に張設された無端ベルト63が連結されている。無端ベルト63は、キャリッジ駆動用モータ67の駆動回転軸64と従動プーリー62との間に張設されており、キャリッジ駆動用モータ67の駆動回転によって双方向に回転する。キャリッジ1は、この無端ベルト63の双方向回転によって主走査方向Xに往復動する。
【0035】
また、インクジェット式記録装置50は、印刷後の印刷用紙Pを排紙トレイ7aに排出する手段として、排紙駆動ローラ54と排紙従動ローラ55、及び排紙補助ローラ56が配設されている。排紙駆動ローラ54は、前述した搬送駆動用モータ59の回転駆動力が伝達されて回転する。排紙従動ローラ55は、周囲に複数の歯を有し、各歯の先端が印刷用紙Pの印刷面に点接触するように鋭角的に尖っている歯付きローラになっている。複数の排紙従動ローラ55は、それぞれ個々に排紙フレーム503に従動回転可能に軸支された状態で排紙駆動ローラ54に付勢されており、印刷用紙Pが排紙駆動ローラ55の回転により排出される際に印刷用紙Pに接して印刷用紙Pを排紙駆動ローラ54に付勢しつつ、印刷用紙Pの排出に従動して回転する。また、排紙補助ローラ56も排紙フレーム503に従動回転可能に軸支されており、排出方向Bへ排出される印刷用紙Pの印刷面に接して従動回転しながら排紙トレイ7aに排出される印刷用紙Pをガイドする。
【0036】
さらに、インクジェット式記録装置50は、キャリッジ1の絶対位置を検出するためのリニアエンコーダ装置を備えている。リニアエンコーダ装置は、キャリッジガイド軸61と平行にリニアスケール65と、キャリッジ1に搭載されたリニアスケールセンサ12とを有している。リニアスケール65は、帯状の透明な柔軟性のあるフィルムに主走査方向Xに等間隔で多数のスリットが形成されており、真っ直ぐたるみ無く配置するためにばね66によって一定の張力が加えられた状態で張設されている。リニアスケールセンサ12は、リニアスケール65のスリットを検出し、スリットの検出状態を電気パルス信号に変換して出力する。
【0037】
さらに、インクジェット式記録装置50は、4つのインクカートリッジ82がキャリッジ1内ではなく、インクカートリッジ収容部8内に並設されており、インクカートリッジ収容部8の前面の蓋8aを開くと、正面向かって左側からブラックインクカートリッジ82K、シアンインクカートリッジ82C、マゼンダインクカートリッジ82M、及びイエローインクカートリッジ82Yが着脱可能に並設されている。ブラックインクカートリッジ82Kには、ブラックインクに関する情報を担持したICチップ83Kが装着されており、シアンインクカートリッジ82Cには、シアンインクに関する情報を担持したICチップ83Cが装着されており、マゼンダインクカートリッジ82Mには、マゼンダインクに関する情報を担持したICチップ83Mが装着されており、イエローインクカートリッジ82Yには、イエローインクに関する情報を担持したICチップ83Yが装着されている。各ICチップ83は、インク色などの固定情報の他、インク残量などの変動情報を記憶する記憶装置(図示せず)と、キャリッジ1に搭載された通信回路基板84と無線通信するための通信装置(図示せず)とを内蔵している。
【0038】
一方、主走査方向Xに往復動するキャリッジ1には、この各ICチップ83と通信するための通信回路基板84が通信回路基板フレーム81によって略垂直に立設されている。そして、通信回路基板84は、キャリッジ1が主走査方向Xに移動することにより、主走査方向Xに並んで配設された4つのインクカートリッジ82のいずれか1つのインクカートリッジ82のICチップ83と対向する。そして、ICチップ83と通信することにより、ICチップ83に記憶された各種情報の読込と書換を行うことができるようになっている。通信回路基板84は、接続部85を介してキャリッジ1内部の回路に電気的に接続される。
【0039】
また、通信回路基板フレーム81は、通信回路基板84の周囲を可能な限り覆う形状をした金属製の取付フレームであり、通信回路基板84を略垂直に高精度に立設させるとともに、通信回路基板84からの不要輻射ノイズをシールドしている。通信回路基板フレーム81は、インクジェット式記録装置50の筐体に電気的に接続されて筐体アースされており、それによって、通信回路基板84からの不要輻射ノイズを低減させる効果が得られる。
【0040】
さらに、インクジェット式記録装置50は、キャリッジ1の移動位置がホームポジションにある状態で記録ヘッド4のメンテナンスを行うインクシステム100を備えている。インクシステム100は、給紙駆動用モータ58を駆動力源として、キャリッジ1をロックして記録ヘッド4のヘッド面を封止するとともに、必要に応じて記録ヘッド4のヘッド面のインクを吸引してメニスカスを整えたりする。インクシステム100は、記録ヘッド4を封止する「封止部材」としてのキャップ571を搭載し、給紙駆動用モータ58を駆動力源として記録ヘッド4のヘッド面に対して垂直方向(符号R)に往復動してキャリッジ1の移動領域に進出/退避可能に配設された「封止部材ホルダ」としてのキャップケース57を備えている。キャップケース57には、キャリッジ1と係合してキャリッジ1をロックする「キャリッジ係止部材」としてのキャリッジロック572と、トリガ部材573が一体に形成されている。
【0041】
キャリッジ1がホームポジションに位置している状態でキャップケース57をキャリッジ1の移動領域に進出させることによって、キャリッジロック572がキャリッジ1と係合してキャリッジ1がロックされるとともに、キャップ571によって記録ヘッド4のヘッド面が封止される。また、トリガ部材573は、キャップケース57がキャリッジ1の移動領域に進出した状態で、キャリッジ1と係合することによって前述した図示していないPG切換ユニットを動作させてPGを切り換える。
【0042】
そして、インクジェット式記録装置50は、各種センサの情報に基づいて各種駆動力源を駆動制御して印刷制御を行う制御部200を有しており、制御部200は主に以下のような制御を行う。給紙経路に配設された印刷用紙の先端を検出する用紙センサ(図示せず)からの情報に基づいて給紙駆動用モータ58を駆動制御して印刷用紙Pを給紙する。リニアスケールセンサ12が出力する電気パルス信号をカウントしてキャリッジ1の絶対位置を演算し、その絶対位置に基づいてキャリッジ駆動用モータ67を駆動制御してキャリッジ1を主走査方向Xに往復動させるとともに、リニアスケールセンサ12が出力する電気パルス信号からインク噴射タイミング信号を生成し、インク噴射タイミング信号に基づいて記録ヘッド4の駆動回路を駆動制御して印刷用紙Pの印刷面へインクを噴射する。
【0043】
公知のロータリーエンコーダ装置等の回転量検出手段(図示せず)によって搬送駆動ローラ51の回転量を検出し、その回転量検出手段の情報に基づいて、印刷用紙Pが副動作方向Yに所定の搬送量で搬送されるように搬送駆動用モータ59を駆動制御して搬送駆動ローラ51を駆動回転させる。キャリッジ1を主走査方向Xに往復動させながら印刷用紙Pの印刷面にインクを噴射する動作と、印刷用紙Pを所定の搬送量で搬送する動作とを交互に繰り返して印刷を実行し、印刷実行後もさらに搬送駆動用モータ59を回転制御して排紙駆動ローラ54を回転させて印刷実行後の印刷用紙Pを排紙トレイ7aへ排出する。
【0044】
図9は、インクカートリッジ収容部8の底面側を示した斜視図であり、図10は、同じくインクカートリッジ収容部8の底面側を違う角度から示した斜視図である。また、図11は、インクカートリッジ収容部8の底面側を示した平面図である。
【0045】
インクカートリッジ収容部8の底面には、インクカートリッジ83からキャリッジ1へインクを供給する駆動力源としてのインクポンプ80が配設されており、インクポンプ80からは、「液体供給チューブ」としてのインク供給チューブ87が4本配設されている。インク供給チューブ87は、ブラックインク供給チューブ87K、シアンインク供給チューブ87C、マゼンダインク供給チューブ87M、及びイエローインク供給チューブ87Yの4本のチューブで構成されている。ブラックインクカートリッジ82Kに貯蔵されているブラックインクは、チューブ86Kを介してインクポンプ80に吸引され、インクポンプ80によってブラックインク供給チューブ87Kを介してキャリッジ1へ供給される。
【0046】
同様に、シアンインクカートリッジ82Cに貯蔵されているシアンインクは、チューブ86Cを介してインクポンプ80に吸引され、インクポンプ80によってシアンインク供給チューブ87Cを介してキャリッジ1へ供給され、マゼンダインクカートリッジ82Mに貯蔵されているマゼンダインクは、チューブ86Mを介してインクポンプ80に吸引され、インクポンプ80によってマゼンダインク供給チューブ87Mを介してキャリッジ1へ供給され、イエローインクカートリッジ82Yに貯蔵されているイエローインクは、チューブ86Yを介してインクポンプ80に吸引され、インクポンプ80によってイエローインク供給チューブ87Yを介してキャリッジ1へ供給される。
【0047】
チューブ86K、チューブ86C、チューブ86M、及びチューブ86Yは、それぞれチューブガイド861にガイドされつつ、チューブホルダ862によってインクカートリッジ収容部8の裏面に図示の如く配設されている。ブラックインク供給チューブ87K、シアンインク供給チューブ87C、マゼンダインク供給チューブ87M、及びイエローインク供給チューブ87Yは、キャリッジ1の往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分Wを有した状態で配設されており、ガイド部材89によって4本のインク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する曲げ部分Wの復元力の方向が、主走査方向Xと略直交する方向となる如く、曲げ部分W近傍の曲げ形状が規定されるようになっている。ブラックインク供給チューブ87K、シアンインク供給チューブ87C、マゼンダインク供給チューブ87M、及びイエローインク供給チューブ87Yは、ガイド部材89の当接面891と平行に隣接して配置されており、図示の如くガイド部材89の当接面891に当接して同じ経路に配置されている。また、キャリッジ1と制御部200とを電気的に接続するためのフレキシブルフラットケーブル88がインク供給チューブ87と平行に配設されている。
【0048】
図12は、インクカートリッジ収容部8の底面側を示した平面図であり、キャリッジ1を主走査方向Xに往復動させたときのインク供給チューブ87の状態を模式的に示したものである。
【0049】
インク供給チューブ87の曲げ部分Wからキャリッジ1が遠ざかるにしたがって、インク供給チューブ87の曲げ部分Wの曲げ半径が大きくなっていき、インク供給チューブ87の曲げ部分Wにキャリッジ1が近づくにしたがって、インク供給チューブ87の曲げ部分Wの曲げ半径が小さくなっていくようにガイド部材89の位置、及び当接面891の角度が設定されている。インク供給チューブ87の曲げ部分Wにキャリッジ1が近づくにしたがって、インク供給チューブ87の曲げ部分Wの曲げ半径が小さくなっていくことによって、インク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する略U字状の曲げ部分Wの復元力は大きくなっていくが、その復元力の方向(符号Fで示した方向)は、主走査方向Xに対して略直交方向に近づいていく。
【0050】
したがって、インク供給チューブ87の曲げ部分Wからキャリッジ1に作用する力が大きくなるにしたがって、インク供給チューブ87から主走査方向Xに対して斜めにキャリッジ1に作用する力が小さくなっていくようにすることができる。それによって、インク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する略U字状の曲げ部分Wの復元力による主走査方向Xに対するキャリッジ1の傾きを小さくすることができる。
【0051】
そして、ガイド部材89の配設位置、及び当接面891の角度は、キャリッジ1の位置に応じて、インク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する略U字状の曲げ部分Wの復元力の方向(符号Fで示した方向)が、常に主走査方向Xと略直交する方向となるように設定されている。それによって、主走査方向Xに対してキャリッジ1が傾く方向の力、つまり、主走査方向Xに対して斜めにキャリッジ1に作用する力を小さくすることができる。また、ガイド部材89の配設位置、及び当接面891の角度をインク供給チューブ87からキャリッジ1に作用する略U字状の曲げ部分Wの復元力によるキャリッジ1が回転しようとする力が所定の大きさ以下となるように設定しても良く、それによって、主走査方向Xに対してキャリッジ1が傾く方向の力、つまり、主走査方向Xに対して斜めにキャリッジ1に作用する力を所定の大きさ以下に小さくすることができる。
【0052】
図13は、インクカートリッジ収容部8の底面側を示した平面図であり、ガイド部材89の配設位置の違いによるインク供給チューブ87の状態を模式的に示したものである。
【0053】
このように、最適な配設位置で当接面891の角度が最適に設定されているガイド部材89の位置よりもガイド部材89をキャリッジガイド軸61寄りに配設すると(仮想線で示した符号89aの位置)、インク供給チューブ87は、図示の如く(仮想線で示した符号87a)、キャリッジ1への接続部分が斜めに曲がってしまうほど強くキャリッジ1に押しつけられることになる。そのため、キャリッジ1に作用するインク供給チューブ87の復元力の方向が、符号F1で示したようにキャリッジ1に対して斜めになってしまい、主走査方向Xに対してキャリッジ1が傾いてしまう方向に強い力が作用してしまうことになる。一方、ガイド部材89を設けなかったとすると、インク供給チューブ87は、図示の如く(仮想線で示した符号87b)、U字状の曲げ部分Wの曲げ半径が大きくなる。それによって、キャリッジ1に作用するインク供給チューブ87の復元力の大きさは小さくなるものの、その力の方向は、符号F2で示したようにキャリッジ1に対して斜めになってしまい、主走査方向Xに対してキャリッジ1が傾いてしまう方向に力が作用してしまうことになる。
【0054】
したがって、インク供給チューブ87の略U字状の曲げ部分の曲げ半径を規制するガイド部材89を最適な位置(実線で示したガイド部材89の位置)に配設することによって、つまり、キャリッジ1に作用するインク供給チューブ87の略U字状の曲げ部分の復元力の方向が主走査方向Xに対して略直交方向となるように設定することによって、主走査方向Xに対して略直交方向の力がキャリッジ1に作用してキャリッジ1が傾いてしまう方向に作用する力を最小限にすることができる。この最適なガイド部材89の配設位置、及び当接面891の角度は、インク供給チューブ87の太さや硬度、及び長さによって異なり、例えば、キャリッジ1に作用する荷重の方向を測定しながらインク供給チューブ87から作用する荷重の方向が主走査方向Xに対して略直交する方向となるように、ガイド部材89の配設位置、及び当接面891の角度を設定する。
【0055】
このようにして、インク供給チューブ87からキャリッジ1へ作用する力によってキャリッジ1が傾くことによるインク噴射精度の低下を低減させることができる。
【0056】
尚、本願発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本願発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明に係るインクジェット式記録装置の外観斜視図である。
【図2】本願発明に係るインクジェット式記録装置の外観斜視図である。
【図3】本願発明に係るインクジェット式記録装置の概略側面図である。
【図4】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部斜視図である。
【図5】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部平面図である。
【図6】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部斜視図である。
【図7】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部側面図である。
【図8】本願発明に係るインクジェット式記録装置の要部側面図である。
【図9】インクカートリッジ収容部の底面側を示した斜視図である。
【図10】インクカートリッジ収容部の底面側を示した斜視図である。
【図11】インクカートリッジ収容部の底面側を示した平面図である。
【図12】インクカートリッジ収容部の底面側を示した平面図である。
【図13】インクカートリッジ収容部の底面側を示した平面図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ、2 メインキャリッジ、3 サブキャリッジ、4 記録ヘッド、7 給紙カセット、8 インクカートリッジ収容部、11 キャリッジカバー、50 インクジェット式記録装置、51 搬送駆動ローラ、52 搬送従動ローラ、53 プラテン、54 排紙駆動ローラ、55 排紙従動ローラ、56 排紙補助ローラ、57 キャップケース、61 キャリッジガイド軸、73 ピックアップローラ、74 給紙ローラ、75 リバースローラ、80 インクポンプ、81 通信回路基板フレーム、82K、82C、82M、82Y インクカートリッジ、84 通信回路基板、87K、87C、87M、87Y インク供給チューブ、88 フレキシブルフラットケーブル、89 ガイド部材、200 制御部、X 主走査方向、Y 副走査方向
Claims (7)
- 被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、前記液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部と、該液体貯蔵部から前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、前記液体供給チューブが前記キャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置であって、
前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力の方向が、前記走査方向と略直交する方向となる如く、前記略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定して前記液体供給チューブを支持する液体供給チューブ支持手段を備えている、ことを特徴とした液体噴射装置。 - 請求項1において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記略U字状の曲げ部分に前記キャリッジが最も近づいた状態において、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力の方向が、前記走査方向と略直交する方向となる如く、前記略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定して前記液体供給チューブを支持する構成を成している、ことを特徴とした液体噴射装置。
- 被噴射材に液体を噴射する液体噴射ヘッドを搭載し、所定の走査方向に往復動可能に支持されたキャリッジと、前記液体噴射ヘッドから噴射する液体が貯蔵される液体貯蔵部と、該液体貯蔵部から前記液体噴射ヘッドへ液体を供給する可撓性を有する液体供給チューブとを備え、前記液体供給チューブが前記キャリッジの往復動に追従可能な如く略U字状の曲げ部分を有した状態で配設されている液体噴射装置であって、
前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力によって前記キャリッジが回転しようとする力が所定の大きさ以下となる如く、前記略U字状の曲げ部分近傍の曲げ形状を規定して前記液体供給チューブを支持する液体供給チューブ支持手段を備えている、ことを特徴とした液体噴射装置。 - 請求項3において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記略U字状の曲げ部分に前記キャリッジが最も近づいた状態において、前記液体供給チューブから前記キャリッジに作用する前記略U字状の曲げ部分の復元力によって前記キャリッジが回転しようとする力が最も小さくなる構成を成している、ことを特徴とした液体噴射装置。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記略U字状の曲げ部分より前記液体貯蔵部側の前記液体供給チューブの姿勢を規定するガイド部材を有している、ことを特徴とした液体噴射装置。
- 請求項5において、前記液体供給チューブ支持手段は、前記液体供給チューブに当接して前記液体供給チューブの姿勢を規定する平坦な当接面を有する前記ガイド部材を有し、前記ガイド部材は、前記当接面が前記走査方向に対して一定の角度を有した状態で配置されており、前記略U字状の曲げ部分に前記キャリッジが近づくにしたがって、前記略U字状の曲げ部分の曲げ半径が小さくなっていく構成を成している、ことを特徴とした液体噴射装置。
- 請求項6において、複数の前記液体貯蔵部と複数の前記液体供給チューブとを備え、複数の前記液体供給チューブは、少なくとも前記当接面に当接する部分より前記キャリッジ側が前記当接面と平行に隣接した状態で配設されている、ことを特徴とした液体噴射装置。
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2003
- 2003-03-06 JP JP2003060505A patent/JP2004268346A/ja active Pending
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