JP2004268085A - 冷間圧延鋼帯の製造装置および製造方法 - Google Patents

冷間圧延鋼帯の製造装置および製造方法 Download PDF

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Kaneichiro Maeda
兼一郎 前田
Eiji Sagi
栄治 鷺
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Abstract

【課題】圧延スタンド出側に設けられるブライドルロールの寿命を長くし、長期間にわたって高い圧延能力を維持することのできる冷間圧延鋼帯の製造装置を提供する。
【解決手段】冷間圧延鋼帯の製造装置1は、装着されている鋼帯2を巻戻す巻戻しリール3と、巻戻しリール3によって巻戻される鋼帯2を圧延する圧延スタンド4と、圧延スタンド4の出側に設けられるブライドルロール9と、圧延スタンド4により圧延された鋼帯2を巻取る巻取りリール10とを備え、ブライドルロール9は、ロール表面にディンプル加工後クロムめっきが施され、ロール表面の中心線平均粗さ(Ra)が、3.0〜4.0μmである。このブライドルロール9は、耐磨耗寿命が長く、長期間にわたって鋼帯2とのスリップの発生が防止されるので、高い圧延能力を維持することができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷間圧延鋼帯の製造装置および製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼帯の冷間圧延においては、板厚精度の向上、形状特に平坦度の向上、圧延荷重の軽減および圧延速度を向上する目的で、圧延される鋼帯に圧延張力が負荷されている。この圧延されるべき鋼帯に対する圧延張力は、圧延された鋼帯を巻取る巻取りリールによって負荷され、巻取りリールをテンションリールとして用いることが、一般的に行なわれている。
【0003】
しかしながら、生産効率向上の観点から、複数の鋼帯を接続して連続的に冷間圧延する連続冷間圧延では、1つの鋼帯の圧延が終了し巻取りリールに巻取られた段階で、該鋼帯は、装置内に設けられた剪断機によって剪断されて連続鋼帯から分離される。剪断によって圧延の終了した先行鋼帯が分離されたとき、残る連続鋼帯の先頭に位置し、圧延途中の後行鋼帯は、巻取りリールに鋼帯の先端が噛込んで巻取られるまでの間、圧延張力がほぼ零(0)になる。このような無張力状態で圧延スタンドを通過して圧延された部位は、板厚精度および平坦度が低下するので、最悪の場合品質不良で製品化できないことがあり、品質歩留を低下させる一因ともなっている。
【0004】
このような問題を解決する従来技術に、冷間圧延装置の圧延スタンド出側にブライドルロールを設けるものがある。圧延スタンド出側にブライドルロールの設けられる冷間圧延装置では、鋼帯が圧延スタンドで圧延された後、ブライドルロールの外周面に接するように走行し、巻取りリールに巻取られる。鋼帯が、ブライドルロールに接しながら走行することによって、ブライドルロールと鋼帯との間に摩擦力が発生するので、ブライドルロールによって鋼帯に圧延張力を負荷することができる。したがって、前述のように圧延の終了した先行鋼帯が剪断されて連続鋼帯から分離され、後行鋼帯が巻取りリールに巻取られていない状態であっても、少なくともブライドルロールによる圧延張力を後行鋼帯に負荷することができるので、圧延張力が0で圧延される場合に比べて、良好な板厚精度と平坦度とを実現することができる。
【0005】
またブライドルロールを設けることによって、巻取りリールとブライドルロールとの両者によって鋼帯に圧延張力を負荷することができるので、巻取りリールのみによる圧延張力負荷に比べて、鋼帯に大きい圧延張力を負荷することができる。このように鋼帯に対する圧延張力を大きくすることによって、圧延速度を速くして生産能力を向上することができる。しかしながら、圧延速度を速くしていくと、鋼帯とブライドルロールとがスリップする現象が発生し、ブライドルロールを設けているにも関らず、鋼帯に対して所望の圧延張力を負荷できないことがある。このような場合、圧延速度を低速に抑制することによってスリップの発生を防止し、圧延加工を行なうけれども、圧延速度が低速なので生産能力が低下するという問題がある。前述の鋼帯とブライドルロールとの間のスリップ現象は、複数ある圧延スタンドのうち最終圧延スタンドに用いられるワークロールが、研磨仕上げのままで鋼帯の圧延を行なういわゆるスムース圧延の場合に顕著に発生する。
【0006】
鋼帯とブライドルロールとの間のスリップを防止する従来技術に、ブライドルロールのロール表面を、研磨仕上げ後グリットショットダル加工を行なって粗面化するものがある。図5は、グリットショットダル加工したブライドルロール表面のプロフィールを例示する図である。グリットショットダル加工によって、ブライドルロールの表面は粗面化されるけれども、図5に示すように、グリットショットダル加工による表面の凹凸は、凸部が鋭利に形成されるので、ブライドルロール表面と鋼帯との実効接触面積が少なく、摩擦力増大効果が発現されない。さらに、前述の凸部が鋭利なので、比較的短時間の使用によって凸部が磨耗して表面粗度が低下し、スリップが発生し易くなるという問題がある。
【0007】
この問題に対処するべく、ブライドルロールのグリットショットダル加工条件を操作して表面粗度を大きくすることやグリットショットダル加工後にクロムめっきを施すことも試みられているけれども、耐スリップ性改善効果および寿命延長効果ともに明らかではない。
【0008】
単に表面粗度を大きくする以外の鋼帯とのスリップを防止するロールの処理方法に関する従来技術には、ロール表面を球状粗化し、その後、当該表面にCrめっきまたはNi−W合金めっきを施すもの(特許文献1参照)、またロール本体に形成されているブラスト処理面にクロムめっき皮膜を施し、このクロムめっき皮膜に形成したブラスト処理面にさらにクロムめっき皮膜を施して多層クロムめっき皮膜を形成するもの(特許文献2参照)などがある。
【0009】
【特許文献1】
特開平4−120297号公報
【特許文献2】
特開2002−302793号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1の従来技術は、冷延鋼板の電気めっきラインで使用される通電用コンダクターロール、デフレクタロールおよびテンションロールに関するものである。また特許文献2の従来技術は、連続めっき鋼板製造工程において使用するコンダクターロールに関するものである。
【0011】
めっきラインを通板される鋼帯に負荷される張力と、冷間圧延ラインを通板される鋼帯に負荷される圧延張力とでは、まったく水準が異なるので、特許文献1および特許文献2に開示される従来技術が、そのまま冷間圧延装置に設けられて圧延される鋼帯に張力を負荷するブライドルロールについて適用されることを示唆するものではない。まして前記従来技術には、圧延速度を高く維持するとともに、冷延鋼帯の板厚精度や平坦度を所定の品位に維持することのできるような圧延張力を負荷するに適当なブライドルロールの表面状態について、何ら開示されてはいない。
【0012】
本発明の目的は、圧延スタンド出側に設けられるブライドルロールの寿命を長くし、長期間にわたって高い圧延能力を維持することのできる冷間圧延鋼帯の製造装置および製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、装着されている鋼帯を巻戻す巻戻しリールと、巻戻しリールによって巻戻される鋼帯を圧延する少なくとも1つの圧延スタンドと、圧延スタンドの出側に設けられるブライドルロールと、圧延スタンドにより圧延された鋼帯を巻取る巻取りリールとを備える冷間圧延鋼帯の製造装置において、
前記ブライドルロールは、
ロール表面にディンプル加工後クロムめっきが施され、ロール表面の中心線平均粗さ(Ra)が、3.0μm以上、4.0μm以下、好ましくは3.0μm以上、3.4μm以下であることを特徴とする冷間圧延鋼帯の製造装置である。
【0014】
本発明に従えば、冷間圧延装置は、圧延スタンド出側にブライドルロールを備え、そのブライドルロールは、ロール表面にディンプル加工後クロムめっきが施され、ロール表面の中心線平均粗さ(Ra)が、3.0〜4.0μm、好ましくは3.0〜3.4μmである。表面がディンプル加工されるとともに好適な表面粗さに調整されたブライドルロールを設けることによって、ブライドルロール表面と鋼帯表面との実効接触面積が大きくなるので、鋼帯に対して所望の圧延張力を負荷するに足る摩擦力を得ることができるとともに、鋼帯とのスリップの発生が防止される。さらにブライドルロールは、ディンプル加工され、かつクロムめっきが施されているので、耐磨耗寿命が長く、長期間にわたって鋼帯とのスリップの発生が防止される。
【0015】
このように、スリップの発生しにくい長寿命のブライドルロールを用いて鋼帯に所望の圧延張力を負荷しながら冷間圧延することができるので、長期間にわたって高い圧延能力を維持しながら冷間圧延鋼帯を製造することの可能な冷間圧延鋼帯の製造装置が実現される。
【0016】
また本発明は、前記ブライドルロールおよび形状測定ロールの表面のディンプル加工は、ロール表面に球状粒子を投射することによって行なわれることを特徴とする。
【0017】
本発明に従えば、ブライドルロールの表面のディンプル加工は、ロール表面に球状粒子を投射することによって行なわれる。ロール表面のディンプル加工方法には、ロール表面に球状粒子を投射するショットブラスト加工、ロール表面を腐食するエッチング加工、ロール表面と電極との間でアーク放電させる放電加工などがあるけれども、ショットブラスト加工は、球状粒子の種類や投射圧力条件の選定によって表面粗さを容易に調整することができ、ロールの加工処理能力も高いので、生産効率を向上することが可能である。
【0018】
また本発明は、圧延スタンド出側にブライドルロールの設けられる冷間圧延装置に、鋼帯を通板させて冷間圧延する冷間圧延鋼帯の製造方法において、
前記ブライドルロールのロール表面にディンプル加工後クロムめっきを施して、ロール表面の中心線平均粗さ(Ra)が、3.0μm以上、4.0μm以下になるように予め調整し、
前記鋼帯を、圧延スタンドを通過させることによって圧延し、その後前記ブライドルロールの外周面に接するようにして走行させることを特徴とする冷間圧延鋼帯の製造方法である。
【0019】
本発明に従えば、冷間圧延装置の圧延スタンド出側に設けられるブライドルロールは、ロール表面にディンプル加工後クロムめっきが施され、ロール表面の中心線平均粗さ(Ra)が、3.0〜4.0μmになるように予め調整され、装置を通板される鋼帯は、圧延スタンドを通過することによって圧延された後、ブライドルロールの外周面に接するようにして走行される。
【0020】
このようにして製造される冷間圧延鋼帯に対しては、冷間圧延装置に備わる巻取りリールによる圧延張力に加え、ブライドルロールによる圧延張力も負荷することができる。このことによって、冷間圧延鋼帯に負荷されるトータルの圧延張力を大きくすることができるので、圧延速度を速くして生産能力を向上することができる。またブライドルロールは、その表面がディンプル加工されるとともに好適な表面粗さに調整されているので、鋼帯表面との実効接触面積が大きく、鋼帯に対して所望の圧延張力を負荷するに足る摩擦力を得ることができる。さらにブライドルロールは、ディンプル加工され、かつクロムめっきが施されているので、耐磨耗寿命が長く、長期間にわたって鋼帯とのスリップの発生を防止することができる。したがって、耐磨耗寿命の延長されたスリップの発生しにくいブライドルロールを用いて鋼帯に所望の圧延張力を負荷することができるので、長期間にわたって高い圧延能力を維持しながら冷間圧延鋼帯を製造することが可能になる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の一形態である冷間圧延鋼帯の製造装置1の構成を簡略化して示す系統図である。冷間圧延鋼帯の製造装置1(以後、製造装置1と略称する)は、いわゆるタンデム式の冷間圧延装置であり、鋼帯2の冷間圧延加工に用いられる。
【0022】
製造装置1は、大略、コイル状に巻かれた状態で装着されている鋼帯2を巻戻す巻戻しリール3と、巻戻しリール3によって巻戻される鋼帯2を圧延する圧延スタンド4(本実施の形態ではNo.1〜No.4スタンド5,6,7,8の4つが設けられる)と、圧延スタンド4の出側に設けられるブライドルロール9と、圧延スタンド4により圧延された鋼帯2を巻取る巻取りリール10とを備える。巻戻しリール3、圧延スタンド4、ブライドルロール9、巻取りリール10は、鋼帯2が圧延のために走行される方向である矢符11に示す方向の上流側から下流側に向けて、この順に設けられる。
【0023】
圧延スタンド4を構成する4つのNo.1〜No.4スタンド5,6,7,8は、鋼帯走行方向上流側から下流側に向けて、この順に設けられる。No.1〜4の各スタンドは同一に構成されるので、No.1スタンド5を代表例として説明する。No.1スタンド5は、ハウジング12と、ハウジング12に回転自在に支持されるロールであって、鋼帯2を挟んで設けられる一対のワークロール13a,13bと、ワークロール13a,13bの外方に設けられる一対の中間ロール14a,14bと、さらに中間ロール14a,14bの外方に設けられる一対のバックアップロール15a,15bと、これらのロールを圧下および開放するように駆動する駆動手段16とを含む構成である。
【0024】
さらに本実施の形態の製造装置1には、以下のものが含まれる。No.1〜No.3スタンド5,6,7の鋼帯走行方向上流側、すなわち圧延入側には、鋼帯2の厚みを計測する第1〜第3X線厚み計17,18,19がそれぞれ設けられる。また圧延の最終スタンドであるNo.4スタンド8の鋼帯走行方向下流側、すなわち圧延出側には、圧延の仕上げ板厚を計測する第4X線厚み計20が設けられる。
【0025】
巻戻しリール3とNo.1スタンド5との間には、巻戻しリール3から巻戻された鋼帯2をNo.1スタンド5に導くためのピンチロール21と、鋼帯2の幅方向のずれを抑止するサイドガイド22とが設けられる。
【0026】
No.4スタンド8出側の第4X線厚み計20とブライドルロール9との間には、圧延された鋼帯2の形状を検出する形状検出ロール23が設けられ、ブライドルロール9と巻取りリール10との間には、圧延された鋼帯2を剪断する剪断機であるドラムシャー24および鋼帯2を巻取りリール10に導くデフレクタロール25が設けられる。
【0027】
ブライドルロール9は、本実施の形態では4つ(9a,9b,9c,9d)が設けられる。ブライドルロール9は、円筒状または円柱状に形成され、その寸法の一例を示すと、たとえば直径が800mm、長さが1800mmである。またブライドルロール9は、鋼製であり、好ましくは日本工業規格(JIS)G4051に規定されるS50Cに高周波焼入れを施し、表面の硬さをJIS Z2246に規定されるショア硬さ(HS)80以上とされる。
【0028】
このブライドルロール9のロール表面は、球状粒子、たとえば鋼球を投射するショットブラストによってディンプル加工が施され、さらにディンプル加工後にクロム(Cr)めっきが施される。Crめっきが施された後のブライドルロール表面の粗さは、JIS B0601に規定される中心線平均粗さ(Ra)で3.0〜4.0μm、好ましくは3.0〜3.4μmになるように調整される。
【0029】
ブライドルロール9の表面粗さの調整は、ショットブラスト加工時の鋼球の寸法および投射圧力を適宜選定するとともに、Crめっき厚さを好適範囲とすることによって実現される。Crめっきのめっき層厚さは、40〜60μmになるように施される。めっき層厚さが40μm未満では、ブライドルロールの磨耗寿命延長効果を充分に発現することができない。めっき層厚さが60μmを超えると、充分なロール寿命延長効果を発現することができるけれども、ディンプル加工によって形成されたロール表面の凹部をCrめっきで充填するようになり、所望のRaを得ることができない。したがって、Crめっき層厚さを40〜60μmとした。
【0030】
以下ブライドルロール9の表面の中心線平均粗さRaの範囲を限定する理由について説明する。ブライドルロール表面のRaが、3.0μm未満では、鋼帯との接触によって発生する摩擦力が小さいので、鋼帯とブライドルロールとのスリップが発生し易くなるとともに、所望の圧延張力を得ることができない。ブライドルロール表面のRaが、4.0μmを超えると、ブライドルロール表面の凹凸が鋼帯表面に転写され、鋼帯の表面品質を低下させる恐れがある。したがって、ブライドルロール表面のRaを、3.0〜4.0μmとした。
【0031】
図2は、好適範囲のRaになるように加工されたブライドルロール表面のプロフィールを例示する図である。図2では、横軸に表面粗さの検出走査距離L、縦軸に凹凸の倍率方向をとり、図中のライン31が、ブライドルロール表面の凹凸のプロフィールを示す。図2のライン31で示すように、好適範囲のRaになるように加工されたブライドルロール表面に形成される凸部31a,31b,31c,31dは、前述のグリットショットダル加工された凸部に比べて、なだらかである。したがって、鋼帯2と好適範囲のRaになるように加工されたブライドルロール9とが接するとき、その実効接触面積が大きいので、充分に大きな摩擦力を発生することができる。また凸部が長時間の使用に対して磨耗しにくいので、ブライドルロール9の耐磨耗寿命を長くすることができる。
【0032】
本実施の形態の製造装置1においては、冷間圧延鋼帯は以下のようにして製造される。巻戻しリール3から巻戻された鋼帯2は、ピンチロール21およびサイドガイド22に導かれてNo.1スタンド5に投入され、No.1スタンド5〜No.4スタンド8で順次冷間圧延される。この冷間圧延時においては、第1〜第3X線厚み計17,18,19によって検出される圧延入側板厚と、第4X線厚み計20によって検出される仕上板厚とが図示しない制御装置に入力され、制御装置は入力信号に応答してワークロール13a,13b等の圧延ロールの圧下を制御し、鋼帯2の板厚が、予め定める目標板厚になるようにフィードバック制御される。No.4スタンド8を出た鋼帯2は、形状検出ロール23を経てブライドルロール9の外周面に接するようにして走行し、巻取りリール10に巻取られる。
【0033】
本実施の形態の製造装置1では、鋼帯2が圧延スタンド4で圧延されているとき、鋼帯2に対して、テンションリールとしても機能する巻取りリール10によって約10トン、ブライドルロール9によって約5トンの圧延張力を負荷することができる。このように、巻取りリール10による圧延張力に加えて、ブライドルロール9による圧延張力も鋼帯2に負荷することができるので、圧延荷重を抑制し、圧延速度を向上することが可能になる。またブライドルロール9の耐磨耗寿命が長いので、長期間にわたってブライドルロール9と鋼帯2との間にスリップが発生しにくく、高い生産能力を維持することが可能になる。
【0034】
さらに圧延が終了して鋼帯2が巻取りリール10に巻取られ、ドラムシャー24によって鋼帯2が剪断され、圧延されている残部の鋼帯2に、巻取りリール10によって圧延張力を負荷することができない場合であっても、圧延されている残部の鋼帯2にブライドルロール9によって約5トンの圧延張力を負荷することができる。このことによって、鋼帯2が無張力状態で圧延されることがなくなるので、形状不良や板厚精度不良等の発生を防止することができる。
【0035】
(実施例)
以下本発明の実施例を説明する。本発明の構成を備える実施例のブライドルロールと、本発明の構成とは異なる比較例のブライドルロールとを準備し、実施例のブライドルロールを組込んだ図1に示す製造装置1と、ブライドルロールを比較例のものとしたこと以外は製造装置1と同一の構成を備える製造装置とを用いて、鋼帯を冷間圧延加工し、スリップ発生に至る寿命と生産能力とを試験した。
【0036】
実施例である本発明のブライドルロールは、直径:800mm、長さ:1800mmのS50CをHS80以上になるように高周波焼入れし、その後鋼球寸法と投射圧力とを適宜選定して表面をディンプル加工し、さらにCrめっきを層厚50μmになるように施して、Ra=3.2μmになるように調整した。
【0037】
比較例のブライドルロールは、直径:800mm、長さ:1800mmのS50CをHS80以上になるように高周波焼入れし、その後表面をグリットショットダル加工し、さらにCrめっきを層厚50μmになるように施して、Ra=3.2μmになるように調整した。
【0038】
実施例のブライドルロールを組込んだ製造装置と、比較例のブライドルロールを組込んだ製造装置との、それぞれにおいて、表1に示す条件の鋼帯を、月産約10万トンになるようにして冷間圧延試験した。
【0039】
【表1】
Figure 2004268085
【0040】
ブライドルロールの性能評価は、以下のようにして行なった。冷間圧延試験開始前に測定したブライドルロール表面のRaに対する所定期間経過後に測定したブライドルロール表面のRaの比(便宜上Ra比と呼ぶ)を求め、生産期間の経過に伴うRa比の変化とスリップ発生の有無とによって評価した。また冷間圧延試験開始初期における単位時間あたりの生産量に対する所定期間経過後における単位時間あたりの生産量の比(便宜上生産能力比と呼ぶ)を求め、生産期間の経過に伴う生産能力比の変化によって評価した。
【0041】
試験結果を図3および図4に示す。図3は、生産期間の経過に伴うRa比の変化とスリップ発生の有無を示す図である。図3中において、○印を連ねたライン33が実施例のブライドルロールについての結果を示し、×印連ねたライン34が比較例のブライドルロールについての結果を示す。実施例のブライドルロールでは、Ra比の低下し始める時期が、生産期間5カ月目であるのに対して、比較例のブライドルロールでは、2カ月を超えた時点において低下し始める。またブライドルロールと鋼帯とのスリップが発生し始めるまでの期間が、実施例のブライドルロールでは6カ月であるのに対して、比較例のブライドルロールでは、約1/2の期間である3カ月で発生した。このことから、実施例のブライドルロールが、耐磨耗寿命に優れ、鋼帯とのスリップ発生防止性能に優れることが明らかである。
【0042】
図4は、生産期間の経過に伴う生産能力比の変化を示す図である。図4中において、○印を連ねたライン35が実施例のブライドルロールについての結果を示し、×印連ねたライン36が比較例のブライドルロールについての結果を示す。図4から明らかなように、実施例のブライドルロールでは、約6カ月の生産期間経過時点においても、生産能力比が0.8を維持したのに対して、比較例のブライドルロールでは、生産期間が3カ月に満たない時点において、生産能力比が0.8未満に低下した。実施例のブライドルロールでは、先の図3において示したように、鋼帯とのスリップを長期間にわたって生じることがないので、長期間にわたって圧延速度を減速させることなく、高い生産能力比を維持して圧延加工することが可能であった。
【0043】
以上に述べたように、本実施の形態では、製造装置に設けられるブライドルロールは、4つであるけれども、これに限定されることなく、装置に設けられるブライドルロールの数は、生産目的に応じて適宜選択されてよい。
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、冷間圧延装置に備わる巻取りリールによる圧延張力に加え、圧延スタンド出側に設けられるブライドルロールによる圧延張力も負荷することによって、トータルの圧延張力を大きくすることができるので、圧延速度を速くすることができる。ブライドルロールは、表面がディンプル加工されるとともに好適な表面粗さに調整されることによって、ブライドルロール表面と鋼帯表面との実効接触面積が大きくなるので、鋼帯に対して所望の圧延張力を負荷するに足る摩擦力を生じるとともに、鋼帯とのスリップの発生を防止する。さらにブライドルロールは、ディンプル加工され、かつクロムめっきが施されているので、耐磨耗寿命が長く、長期間にわたって鋼帯とのスリップの発生が防止される。このように、スリップの発生しにくい長寿命のブライドルロールを用いて鋼帯に所望の圧延張力を負荷しながら冷間圧延することができるので、長期間にわたって高い圧延能力を維持しながら冷間圧延鋼帯を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態である冷間圧延鋼帯の製造装置1の構成を簡略化して示す系統図である。
【図2】好適範囲のRaになるように加工されたブライドルロール表面のプロフィールを例示する図である。
【図3】生産期間の経過に伴うRa比の変化とスリップ発生の有無を示す図である。
【図4】生産期間の経過に伴う生産能力比の変化を示す図である。
【図5】グリットショットダル加工したブライドルロール表面のプロフィールを例示する図である。
【符号の説明】
1 冷間圧延鋼帯の製造装置
2 鋼帯
3 巻戻しリール
4 圧延スタンド
9 ブライドルロール
10 巻取りリール

Claims (4)

  1. 装着されている鋼帯を巻戻す巻戻しリールと、巻戻しリールによって巻戻される鋼帯を圧延する少なくとも1つの圧延スタンドと、圧延スタンドの出側に設けられるブライドルロールと、圧延スタンドにより圧延された鋼帯を巻取る巻取りリールとを備える冷間圧延鋼帯の製造装置において、
    前記ブライドルロールは、
    ロール表面にディンプル加工後クロムめっきが施され、ロール表面の中心線平均粗さ(Ra)が、3.0μm以上、4.0μm以下であることを特徴とする冷間圧延鋼帯の製造装置。
  2. 前記ブライドルロールのロール表面の中心線平均粗さ(Ra)が、3.0μm以上、3.4μm以下であることを特徴とする請求項1記載の冷間圧延鋼帯の製造装置。
  3. 前記ブライドルロールのロール表面のディンプル加工は、
    ロール表面に球状粒子を投射することによって行なわれることを特徴とする請求項1または2記載の冷間圧延鋼帯の製造装置。
  4. 圧延スタンド出側にブライドルロールの設けられる冷間圧延装置に、鋼帯を通板させて冷間圧延する冷間圧延鋼帯の製造方法において、
    前記ブライドルロールのロール表面にディンプル加工後クロムめっきを施して、ロール表面の中心線平均粗さ(Ra)が、3.0μm以上、4.0μm以下になるように予め調整し、
    前記鋼帯を、圧延スタンドを通過させることによって圧延し、その後前記ブライドルロールの外周面に接するようにして走行させることを特徴とする冷間圧延鋼帯の製造方法。
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