JP2004267117A - 自動培養装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】培養室内における清浄度の低下を低減しながら、培養容器の出し入れを容易に行う。
【解決手段】細胞を収容した培養容器3を出し入れ可能に収容し、所定の培養条件を維持しつつ細胞を培養する培養室4と、培養容器3内に収容された細胞に対して所定の処理を施す処理部S2と、これら培養室4と処理部S2との間において培養容器3を搬送する搬送機構5,9とを備え、培養室4に、該培養室4を開閉する扉4aが設けられ、培養室4の外側に退避可能に、培養容器3を出し入れするための全ての移動機構5a〜5dが備えられている自動培養装置1を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】細胞を収容した培養容器3を出し入れ可能に収容し、所定の培養条件を維持しつつ細胞を培養する培養室4と、培養容器3内に収容された細胞に対して所定の処理を施す処理部S2と、これら培養室4と処理部S2との間において培養容器3を搬送する搬送機構5,9とを備え、培養室4に、該培養室4を開閉する扉4aが設けられ、培養室4の外側に退避可能に、培養容器3を出し入れするための全ての移動機構5a〜5dが備えられている自動培養装置1を提供する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動培養装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動培養装置としては、複数の培養容器を収納可能な固定式の収納棚と、水平・昇降・回転移動可能な搬送手段とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この自動培養装置は、培養室内に配置された収納棚に、鉛直方向および水平方向に並ぶ複数の小部屋を備え、各小部屋の中に培養容器を収容して培養を行い、培養途中あるいは培養終了時に搬送手段を作動させて、小部屋から培養容器を取り出し、あるいは、小部屋へ培養容器を収容するよう構成されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−78477号公報(図1、図2等)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
培養装置においては、一般に、培養容器内において培養される細胞等への汚染を防止する必要があり、培養室内の清浄度は、比較的高い清浄度に維持されなければならない。
しかしながら、特許文献1に示された培養装置では、培養室内から培養室外へ培養容器を取り出し、あるいは、培養室内において培養容器を移動させるための搬送手段が、培養室内に設けられている。このため、搬送手段が作動させられると、搬送手段の有する機構部、例えば、モータ、ボールネジ、ベアリングやシール部品等の可動部から微細な塵埃が発生し、培養室内の清浄度が著しく低下する不都合が考えられる。また、培養室内は、所定の培養条件、例えば、温度37±0.5℃、湿度100%およびCO2濃度5%等に維持される必要があるが、これらの条件は機構部にとって好ましいものではなく、その耐久性が低下するとともに、腐食等によって発生する塵埃が増大する等の不都合も考えられる。
【0005】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、培養室内における清浄度の低下を低減しながら、培養容器の出し入れを容易に行うことができる自動培養装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、細胞を収容した培養容器を出し入れ可能に収容し、所定の培養条件を維持しつつ細胞を培養する培養室と、培養容器内に収容された細胞に対して所定の処理を施す処理部と、これら培養室と処理部との間において培養容器を搬送する搬送機構とを備え、前記培養室に、該培養室を開閉する扉が設けられ、前記培養室の外側に退避可能に、培養容器を出し入れするための全ての移動機構が備えられている自動培養装置を提供する。
【0007】
この発明によれば、細胞を入れた培養容器を培養室内に収容し、培養室内を所定の培養条件に維持して、効率的な培養を行うことが可能となる。この場合に、培養室内には移動機構が存在しないので、移動機構の腐食や、移動機構の作動による塵埃の増加等の不都合が生ずることがない。また、培養容器内の細胞に所定の処理を行う場合には、培養室の外側に配置されている移動機構を作動させて培養容器を培養室外に取り出し、搬送機構で処理部へ移動させて、処理部で所定の処理を行う。この場合に、移動機構は、培養室の外部から培養室内の培養容器に作用してこれを取り出すとともに、取り出した後には培養室の外側に退避させられるので、培養室内への塵埃の混入を抑えることが可能となる。また、培養容器を培養室内へ収容する場合も同様である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の自動培養装置において、前記移動機構が、前記搬送機構に設けられている自動培養装置を提供する。
この発明によれば、搬送機構と移動機構とを一体化することにより、装置構成を簡易なものとしてコストを削減するとともに、移動装置と搬送機構との間の培養容器の受け渡し作業をなくして、培養作業の円滑化、迅速化を図ることが可能となる。
【0009】
請求項3に係る発明は、細胞を収容した培養容器を出し入れ可能に収容し、所定の培養条件を維持しつつ細胞を培養する培養室と、該培養室から前記培養容器を出し入れするための移動機構とを備え、前記培養室に、該培養室を開閉可能な扉が設けられ、前記培養室から前記培養容器を出し入れするための移動機構の全てが、前記培養室の扉の外側に退避可能に備えられている自動培養装置を提供する。
【0010】
この発明によれば、細胞を入れた培養容器を培養室内に収容して扉を閉じることにより、培養室内を所定の培養条件に維持して、効率的な培養を行うことが可能となる。この場合に、培養室内には移動機構が存在しないので、移動機構の腐食や、移動機構の作動による塵埃の増加等の不都合が生ずることがない。また、培養容器内の細胞に所定の処理を行う場合には、扉を開けて培養容器内を開放し、扉の外側に配置されている移動機構を作動させて培養容器を培養室外に取り出す。この場合に、移動機構は、培養室の外部から培養室内の培養容器に作用してこれを取り出すとともに、取り出した後には培養室の外側に退避させられるので、培養室内への塵埃の混入を抑えることが可能となる。また、培養容器を培養室内へ収容する場合も同様である。
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動培養装置において、前記培養室を複数備える自動培養装置を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態に係る自動培養装置について、図1〜図4を参照して説明する。
本実施形態に係る自動培養装置1は、外部から観察可能な透明な壁材により密閉され、シャッタ2を介して相互に連絡する第1空間S1と第2空間S2とを備えている。
【0012】
第1空間S1の両側空間S11,S13には、培養容器3を収容する培養室4が2個ずつ計4個配置され、中央空間S12には、培養容器3を移動するための搬送ロボット(搬送機構)5が備えられている。中央空間S12の上部には、中央空間S12内の空気を浄化するために清浄な下降空気流を送る空気清浄部6が設けられている。
4個の培養室4は、それぞれ中央空間S12に向けて扉4aを配置することにより、横に並んだ2個ずつが相互に扉4aを対向させて、間隔をあけて配置されている。
【0013】
前記各培養室4は、図2および図3に示されるように、一側面に開口部4bを有し、該開口部4bを開閉可能な扉4aを備えている。開口部4bに向かって左右の側壁には、対応する高さ位置に複数のレール状のトレイ保持部材4cが設けられており、左右対となる各トレイ保持部材4cに掛け渡すようにして、トレイ7を上下方向に複数段収容できるようになっている。各培養室4内は、所定の培養条件、例えば、温度37±0.5℃、湿度100%およびCO2濃度5%等に維持されている。なお、トレイ保持部材はレール状に限定されず、トレイを出し入れ可能に支持することができれば任意の形態でよい。
【0014】
各トレイ7には、複数個、例えば、10個の培養容器3を並べて載置できるようになっている。各培養容器3は、図4に示されるように、容器本体3aと、該容器本体3aの上面に設けられた蓋体3bとからなり、容器本体3aの左右の側面には、後述する第2空間内のハンドにより引っかけられる突起3cが設けられている。
【0015】
各培養室4の下方には、未使用の培養容器3をトレイ7に搭載した状態で複数収容するストッカ8が配置されている。ストッカ8は、前記培養室4の扉とは反対側の第1空間S1の外部に向かう側面に開閉可能なドア8aを有している。該ドア8aは、ストッカ8の一側面全体を開放する大きさに形成されている。
【0016】
前記搬送ロボット5は、4個の培養室4の間隔位置のほぼ中央に配置されている。該搬送ロボット5は、水平回転可能な第1アーム5aと、該第1アーム5aの先端に鉛直軸回りに回転可能に連結された第2アーム5bと、該第2アーム5bの先端に鉛直軸回りに回転可能に取り付けられ、それ自身は駆動部、伝導機構などの培養室内の環境を劣化させる機構を持たないハンド5cと、これら第1アーム5a、第2アーム5bおよびハンド5cを昇降可能な昇降機構5dとを備えている。これにより、搬送ロボット5は、4個の培養室4内の全てのトレイ7にアクセスするとともに、前記シャッタ2を跨いで第1空間S1と第2空間S2との間に配置されたコンベア9上にトレイ7を引き渡すことができる水平方向の動作範囲を有している。
【0017】
前記コンベア9は、搬送ロボット5のハンド5cの幅寸法より大きな間隔をあけて左右に配置された2本の無端ベルト9aを備え、これら無端ベルト9aに掛け渡してトレイ7を載置できるようになっている。また、搬送ロボット5は、培養室4内の全てのトレイ7にアクセスするとともに、前記ストッカ8内の少なくとも最上段のトレイ7にアクセスできる垂直方向の動作範囲を有している。
なお、ベルト9aは無端ベルトに限られない。
【0018】
前記ハンド5cは、トレイを載置可能に水平方向に伸びる平坦な形状に形成されており、培養室4に収容されているトレイ7間の隙間に挿入可能な厚さ寸法に形成されている。そして、ハンド5cは、トレイ7間の隙間に挿入された状態から上昇させられることにより、2本の腕によってトレイ7を下方から押し上げてトレイ保持部材4cから取り上げるとともに、トレイ7を安定して保持できるようになっている。
【0019】
前記第2空間S2には、シャッタ2が開かれた状態で第1空間S1からコンベア9によって搬送されてきたトレイ7上の培養容器3を取り扱うハンドリングロボット10と、培養容器3内の培地から細胞を分離する遠心分離機11と、血清や試薬等の種々の液体を分注するための電動ピペット12を備えた水平回転および昇降移動可能な2台の分注ロボット13と、これら分注ロボット13の電動ピペット12先端に取り付ける使い捨て可能なチップ14を複数収容していて分注ロボット13の動作範囲内に提供可能な3台のチップ供給装置15と、使用済みのチップ14を廃棄回収するチップ回収部(図示略)と、血清や試薬等の種々の液体を複数の容器に貯留する試薬等供給装置16と、培養容器3内における細胞の様子を観察可能な顕微鏡17と、各試薬および培地交換等により廃棄される廃液をそれぞれ貯留する複数の貯留タンク18と、前記コンベア9と各ロボット10,13との間で培養容器3を受け渡し可能とするように培養容器3を移動させる水平移動機構19と、該水平移動機構19のスライダ20に取り付けられ、受け取った培養容器3を載置して振動を加えるシェーカ21とを備えている。
なお、第2空間S2にも、該第2空間S2内の空気を浄化するために清浄な下降気流を送る空気清浄部(図示略)が設けられている。
【0020】
前記ハンドリングロボット10は、培養容器3を取り扱う把持ハンド10aを水平移動および昇降移動させる水平多関節型ロボットである。例えば、図1に示す例では、相互に連結された3つの水平アーム10b,10c,10dと、これら水平アーム10b〜10dを昇降させる昇降機構10eとを備えている。また、水平アーム10b〜10dの先端には、培養容器3を把持する把持ハンド10aの他に、培養容器3内から細胞や培地を出し入れするチップ14を着脱可能な電動ピペット(図示略)と、培養容器3の蓋体3bを引っかけて開閉する蓋体開閉ハンド(図示略)とが備えられている。
【0021】
ハンドリングロボット10は、コンベヤ9で搬送されてきたトレイ7上の培養容器3の蓋体3bを開閉し、培養容器3を把持して搬送することによりシェーカ21および顕微鏡17に供給し、電動ピペット先端のチップ14を交換し、培養容器3内から取り出した細胞入り培地を遠心分離機11に投入するようになっている。したがって、ハンドリングロボット10は、コンベア9、シェーカ21、顕微鏡17、チップ供給装置15、チップ回収部(図示略)および遠心分離機11等の種々の装置をその動作範囲内に配置している。
【0022】
前記遠心分離機11は、ハンドリングロボット10から供給された細胞入り培地を高速回転させることにより培地内に浮遊していた比重の重い細胞を培地から分離して沈下させるようになっている。
【0023】
前記分注ロボット13は、先端にチップ14を着脱可能に取り付ける電動ピペット12を備えた水平回転可能なアーム13aと、該アーム13aを昇降させる昇降機構13bとを備えている。分注ロボット13は、水平移動機構19によって搬送されて来た培養容器3内へ、培地や種々の試薬を供給するようになっている。したがって、分注ロボット13は、水平移動機構19上のシェーカ21、チップ供給装置15、チップ回収部および試薬等供給装置16等の種々の装置をその動作範囲内に配置している。
【0024】
前記チップ供給装置15は、上方に開口した容器15a内に、電動ピペット12への取付口を上向きにして複数のチップ14を配列状態に収容しており、ハンドリングロボット10や分注ロボット13が、新たなチップ14を必要とするときに、電動ピペット12を上方から挿入するだけで、電動ピペット12の先端にチップ14を取り付けるように構成されている。容器15aは、ハンドリングロボット10や分注ロボット13の動作範囲と、蓋体15bとの間で往復移動させられるように移動機構15cに取り付けられており、チップ14の交換が不要なときには、チップ14への塵埃等の付着を防止するために、移動機構15cを作動させて蓋体15bの下方に配置されるようになっている。
【0025】
前記チップ回収装置は、回収容器の入口に、チップ14を把持する把持装置を備えていて、ハンドリングロボット10や分注ロボット13において使用されたチップ14が把持装置に挿入されると、これを把持するようになっている。そして、この状態でハンドリングロボット10や分注ロボット13が電動ピペット12を移動させることにより、電動ピペット12先端から使用済みチップ14が取り外され、回収容器内に回収されるようになっている。
【0026】
前記試薬等供給装置16は、例えば、図1に示されるように、円筒状のケーシング内部に、水平回転可能なテーブル16aを収容し、該テーブル16a上に、扇型の底面形状を有する筒状の試薬等容器16bを周方向に複数配列して搭載している。各試薬等容器16bには、種々の試薬等が貯留されている。例えば、細胞を培養するために必要な培地を構成するMEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)やヒト血清のような血清、培養容器3内の細胞を剥離させるトリプシンのような蛋白質分解酵素や、培養に際して細胞を成長させるサイトカインのような成長因子、細胞を分化させるデキサメタゾンのような分化誘導因子、ペニシリン系抗生物質のような抗生剤、エストロゲン等のホルモン剤や、ビタミン等の栄養剤が貯留されている。
【0027】
試薬等供給装置16のケーシングの上面には、分注ロボット13が電動ピペット12先端のチップ14を挿入する挿入口16cが設けられている。この挿入口16cは、前記分注ロボット13の動作範囲内に配置されている。また、各試薬等容器16bは、その上面に、前記挿入口16cに一致する位置に配置される開口部(図示略)を備えている。これにより、テーブル16aを回転させて試薬等容器16bの開口部をケーシングの挿入口16cの鉛直下方に配置することで、分注ロボット13が、電動ピペット12先端のチップ14を上方から試薬等容器16b内へ挿入して、内部に貯留されている試薬等を吸引することができるようになっている。試薬等供給装置16と、分注ロボット13とを2台ずつ設けているのは、検体に共通のトリプシンのような薬液と、検体に固有の血清のような液体とを分離して取り扱うようにしているためである。
【0028】
前記顕微鏡17は、培養工程の途中、あるいは、培地交換の際に、培養容器3内の細胞数を計数する場合などに使用されるようになっている。顕微鏡17のXYステージや作動距離調整、倍率の変更等は全て遠隔操作により行うことができるように構成されている。第2空間S2の外方に向けて接眼レンズを配置しておくことにより、自動培養装置1の外部から培養容器3内の細胞の状態を目視できるようにしてもよい。
【0029】
前記貯留タンク18は、例えば、全ての検体に共通して使用できるMEMやPBS(リン酸緩衝液)等を貯留しておき、必要に応じて試薬等供給装置16内の試薬等容器16a内に供給するようになっている。また、貯留タンク18には、廃液タンクとして、培地交換の際に排出される廃培地等を貯留するものもある。
【0030】
前記水平移動機構19は、直線移動機構により水平方向に移動可能なスライダ20を備えている。スライダ20上には前記シェーカ21が搭載されており、シェーカ21に搭載された培養容器3を、コンベア3から分注ロボット13の動作範囲まで移動させることができるようになっている。
【0031】
前記シェーカ21は、コンベア9上のトレイ7内から移載された培養容器3を搭載して保持する保持機構(図示略)を備えるとともに、該培養容器3に振動を付与する加振装置(図示略)を備えている。加振装置は、例えば、培養容器3を所定の角度範囲で往復揺動させる装置である。なお、加振装置として、超音波振動を加える装置や、水平方向の振動を加える装置を採用してもよい。
本実施形態に係る自動培養装置1の各種装置には、図示しない制御装置が接続されている。制御装置は、各工程の順序や動作タイミング等を制御するとともに、動作履歴等を記録保存するようになっている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る自動培養装置1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る自動培養装置1を用いて、細胞を培養するには、まず、患者から採取された骨髄液を遠心分離容器(図示略)に入れた状態で遠心分離機11に投入する。この工程は、作業者が行ってもよく、また、ハンドリングロボット10に行わせてもよい。これにより、遠心分離機11の作動により、骨髄液中から比重の重い骨髄細胞が抽出される。
【0033】
抽出された骨髄細胞は、ハンドリングロボット10により、培養容器3に投入される。このとき、コンベア9の作動により、トレイ7に載せた10個の空の培養容器3が、第1空間S1から第2空間S2に差し出されている。ハンドリングロボット10は、差し出された培養容器3の内の2個の蓋体3bを開けた後に、把持ハンド10aを作動させてこれを把持してすることにより、シェーカ21上に移載する。なお、蓋体3bを開けるロボットを別途設けてもよい。これにより処理直前に蓋体3bを開けることができ、容器本体3a内に異物が入る確率を低減することができる。
【0034】
チップ供給装置15が移動機構15cを作動させることにより、未使用のチップ14をハンドリングロボット10の動作範囲内に配すると、ハンドリングロボット10は、チップ供給装置15から未使用のチップ14を受け取って電動ピペットの先端に取り付ける。
この状態で、ハンドリングロボット10を作動させて、電動ピペット先端のチップ14を遠心分離機11内に抽出された骨髄細胞に接触させる。そして、電動ピペットを作動させることにより、チップ14内に骨髄細胞を吸引する。吸引された骨髄細胞はハンドリングロボット10を作動させることにより、シェーカ21上に蓋体3bを開けて移載されている培養容器3内に投入される。
【0035】
骨髄細胞を培養容器3内に投入し終わると、ハンドリングロボット10は、チップ回収部までチップ14を搬送してチップ14を取り外す。また、チップ供給装置15は、移動機構15cの作動により容器15aを蓋体15bの下方に配置する。
【0036】
次に、骨髄細胞が投入された培養容器3は、水平移動機構17を作動させることにより、シェーカ21ごと水平移動させられ、各分注ロボット13の動作範囲内に配置される。分注ロボット13は、チップ供給装置15から受け取った未使用のチップ14を先端に取り付けた電動ピペット12を作動させることにより、試薬等供給装置16の試薬等容器16b内からMEMや血清、あるいは各種試薬を適量吸引した後に、培養容器3の上方まで搬送して培養容器3内に注入する。血清や各試薬の吸引は、各試薬等の吸引毎にチップ供給装置15から未使用のチップ14に交換して行われる。これにより、培養容器3内においては、適正な培地内に骨髄細胞が混合された状態で存在することになる。なお、培地内において骨髄細胞を均一に分布させるために、シェーカ21を作動させて、培養容器3ごと加振することにしてもよい。そして、全ての処理を終えた培養容器3は水平移動機構17の作動により、ハンドリングロボット10の動作範囲に戻される。ハンドリングロボット10は、培養容器本体3aに蓋体3bを被せた上で、培養容器3をトレイ7上に戻す。
【0037】
トレイ7上の全ての培養容器3に対して所定の処理が行われた後に、コンベア9を作動させることにより、トレイ7に載せられた培養容器3が第2空間S2から第1空間S1の中央空間S12内に挿入される。この状態で、搬送ロボット5を作動させることにより、ハンド5cによってトレイ7を持ち上げる。そして、トレイ7を収容する培養室4の前まで搬送したところで、当該培養室4の扉4aを開き、搬送ロボット5によって、空いているトレイ保持部材4c上にトレイ7を挿入する。そして、再度、扉4aを閉じることにより、培養室4内の培養条件を一定に保持して細胞の培養が行われることになる。なお、骨髄細胞投入や、MEM、血清、各種試薬の投入や吸引の順序は適宜変更してもよいのは言うまでもない。
【0038】
また、培地交換や容器交換の際にも、上記と同様にして、培養室4外に配置されている搬送ロボット5の作動により、培養室4内の培養容器3がトレイ7ごと取り出され、第1空間S1から第2空間S2へ受け渡される。第2空間S2では、培養容器3内にトリプシンが注入されて、培養容器3内の細胞が剥離させられた状態で、ハンドリングロボット10の作動によって遠心分離機11内に投入され、間葉系幹細胞等の必要なもののみが抽出される。その他の処理工程は上記と同様である。
【0039】
そして、複数回の培地交換や容器交換を介した所定期間に渡る培養工程を行うことにより、間葉系幹細胞が十分な細胞数まで増殖させられることになる。十分な細胞数に達したか否かは、ハンドリングロボット10の作動により、間葉系幹細胞が底面に付着した培養容器3を顕微鏡17まで搬送することにより、測定され、判断される。なお、トレイ7上には、同一検体の培養容器3が載置されていてもよいし、異なる検体の培養容器3が混在していてもよい。また、シェーカ21上には同一検体の培養容器3が載置されてもよいし、異なる検体の培養容器3が混在していてもよい。
【0040】
このようにして、本実施形態に係る自動培養装置1により、患者から採取した骨髄液から十分な細胞数の間葉系幹細胞を自動的に培養することが可能となる。なお、十分な間葉系幹細胞が得られた後には、培養容器3内にリン酸カルシウムのような生体組織補填材およびデキサメタゾンのような分化誘導因子を投入して、再度培養工程を継続することにより、生体の欠損部に補填可能な、生体組織補填体を製造することにしてもよい。
【0041】
この場合において、本実施形態に係る自動培養装置1によれば、培養室4内に、培養容器3を取り出すための機構部が存在しない。すなわち、培養室4内には、トレイ7を載置した状態に支持するトレイ支持部材4cが設けられているのみであり、培養容器3を取り出すための機構部は全て培養室4外に配置された搬送ロボット5に集約されている。そして、搬送ロボット5は、トレイ7の出し入れ作業が行われた後には、培養室4の扉4aの外側に完全に退避することができるようになっている。
【0042】
したがって、扉4aが閉じられた状態では、培養室4内に機構部が存在せず、機構部の作動によって発生するような塵埃の発生は全く存在しない。また、培養室4内は、温度37±0.5℃、湿度100%およびCO2濃度5%等に維持されるが、機構部が存在しないために、このような環境下においても、腐食等の問題が生ずることがない。また、扉4aが開かれた状態においても、培養室4内に挿入されるのは搬送ロボット5のハンド5c先端のみであり、実質的に回転機構や摺動機構が培養室4内に入ることはない。したがって、培養室4内への塵埃の侵入が抑制され、培養室4内部の清浄度を高めることができる。
なお、培養室4はCO2インキュベータ、マルチガスインキュベータ、インキュベータ、保冷庫等のように、培養に利用されるものあるいはその組合せで構成されていてもよい。
【0043】
さらに、本実施形態に係る自動培養装置1は、搬送ロボット5の設置されている中央空間S12の上部に、空気清浄部6を備えているので、搬送ロボット5の存在する中央空間S12内も常に清浄度が維持されている。したがって、培養室4の扉4aが開かれときにも、培養室4内に塵埃が流入することを最小限に抑えることが可能となる。
したがって、本実施形態に係る自動培養装置1によれば、培養中の細胞が塵埃等によって汚染される可能性を低減し、健全な細胞を培養することができるという効果がある。
【0044】
なお、この発明は、上記実施形態に示した構成に限定されるものではない。すなわち、培養室4の形状や数、搬送ロボット5、ハンドリングロボット10および分注ロボット13の形態や数、各種装置の形態や数等は、何ら限定されることなく、適用条件に合わせて任意に設定することができる。
また、成長因子としては、サイトカインの他に、例えば、濃縮血小板、BMP、FGF、TGF−β、IGF、PDGF、VEGF、HGFやこれらを複合させたもの等の成長に寄与する物質を採用することにしてもよい。また、抗生剤としては、ペニシリン系抗生物質の他、セフェム系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ホスホマイシン系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系等任意の抗生物質を採用することができる。
【0045】
また、生体組織補填材としては、リン酸カルシウムに代えて、生体組織に親和性のある材料であれば任意のものでよく、生体吸収性の材料であればさらに好ましい。特に、生体適合性を有する多孔性のセラミックスや、コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒアルロン酸、またはこれらの組合せを用いてもよい。また、チタンの様な金属であってもよい。また、生体組織補填材は、顆粒状でもブロック状でもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る自動培養装置によれば、培養室内に機構部が存在せず、培養室の扉の外側に退避可能に培養容器を出し入れするための全ての移動機構が備えられているので、培養室内における塵埃の発生を抑制して高い清浄度に保つことができる。その結果、細胞の汚染を防止して、健全な細胞を自動的に培養することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る自動培養装置を示す斜視図である。
【図2】図1の自動培養装置の第1空間を概略的に示す縦断面図である。
【図3】図1の自動培養装置の第1空間を概略的に示す平面図である。
【図4】図1の自動培養装置において用いられる培養容器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 自動培養装置
3 培養容器
4 培養室
4a 扉
5 搬送ロボット(搬送機構)
5a 第1アーム(移動機構)
5b 第2アーム(移動機構)
5c ハンド(移動機構)
5d 昇降機構(移動機構)
9 コンベア(搬送機構)
S2 第2空間(処理部)
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動培養装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動培養装置としては、複数の培養容器を収納可能な固定式の収納棚と、水平・昇降・回転移動可能な搬送手段とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この自動培養装置は、培養室内に配置された収納棚に、鉛直方向および水平方向に並ぶ複数の小部屋を備え、各小部屋の中に培養容器を収容して培養を行い、培養途中あるいは培養終了時に搬送手段を作動させて、小部屋から培養容器を取り出し、あるいは、小部屋へ培養容器を収容するよう構成されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−78477号公報(図1、図2等)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
培養装置においては、一般に、培養容器内において培養される細胞等への汚染を防止する必要があり、培養室内の清浄度は、比較的高い清浄度に維持されなければならない。
しかしながら、特許文献1に示された培養装置では、培養室内から培養室外へ培養容器を取り出し、あるいは、培養室内において培養容器を移動させるための搬送手段が、培養室内に設けられている。このため、搬送手段が作動させられると、搬送手段の有する機構部、例えば、モータ、ボールネジ、ベアリングやシール部品等の可動部から微細な塵埃が発生し、培養室内の清浄度が著しく低下する不都合が考えられる。また、培養室内は、所定の培養条件、例えば、温度37±0.5℃、湿度100%およびCO2濃度5%等に維持される必要があるが、これらの条件は機構部にとって好ましいものではなく、その耐久性が低下するとともに、腐食等によって発生する塵埃が増大する等の不都合も考えられる。
【0005】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、培養室内における清浄度の低下を低減しながら、培養容器の出し入れを容易に行うことができる自動培養装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、以下の手段を提供する。
請求項1に係る発明は、細胞を収容した培養容器を出し入れ可能に収容し、所定の培養条件を維持しつつ細胞を培養する培養室と、培養容器内に収容された細胞に対して所定の処理を施す処理部と、これら培養室と処理部との間において培養容器を搬送する搬送機構とを備え、前記培養室に、該培養室を開閉する扉が設けられ、前記培養室の外側に退避可能に、培養容器を出し入れするための全ての移動機構が備えられている自動培養装置を提供する。
【0007】
この発明によれば、細胞を入れた培養容器を培養室内に収容し、培養室内を所定の培養条件に維持して、効率的な培養を行うことが可能となる。この場合に、培養室内には移動機構が存在しないので、移動機構の腐食や、移動機構の作動による塵埃の増加等の不都合が生ずることがない。また、培養容器内の細胞に所定の処理を行う場合には、培養室の外側に配置されている移動機構を作動させて培養容器を培養室外に取り出し、搬送機構で処理部へ移動させて、処理部で所定の処理を行う。この場合に、移動機構は、培養室の外部から培養室内の培養容器に作用してこれを取り出すとともに、取り出した後には培養室の外側に退避させられるので、培養室内への塵埃の混入を抑えることが可能となる。また、培養容器を培養室内へ収容する場合も同様である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の自動培養装置において、前記移動機構が、前記搬送機構に設けられている自動培養装置を提供する。
この発明によれば、搬送機構と移動機構とを一体化することにより、装置構成を簡易なものとしてコストを削減するとともに、移動装置と搬送機構との間の培養容器の受け渡し作業をなくして、培養作業の円滑化、迅速化を図ることが可能となる。
【0009】
請求項3に係る発明は、細胞を収容した培養容器を出し入れ可能に収容し、所定の培養条件を維持しつつ細胞を培養する培養室と、該培養室から前記培養容器を出し入れするための移動機構とを備え、前記培養室に、該培養室を開閉可能な扉が設けられ、前記培養室から前記培養容器を出し入れするための移動機構の全てが、前記培養室の扉の外側に退避可能に備えられている自動培養装置を提供する。
【0010】
この発明によれば、細胞を入れた培養容器を培養室内に収容して扉を閉じることにより、培養室内を所定の培養条件に維持して、効率的な培養を行うことが可能となる。この場合に、培養室内には移動機構が存在しないので、移動機構の腐食や、移動機構の作動による塵埃の増加等の不都合が生ずることがない。また、培養容器内の細胞に所定の処理を行う場合には、扉を開けて培養容器内を開放し、扉の外側に配置されている移動機構を作動させて培養容器を培養室外に取り出す。この場合に、移動機構は、培養室の外部から培養室内の培養容器に作用してこれを取り出すとともに、取り出した後には培養室の外側に退避させられるので、培養室内への塵埃の混入を抑えることが可能となる。また、培養容器を培養室内へ収容する場合も同様である。
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動培養装置において、前記培養室を複数備える自動培養装置を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この発明の実施形態に係る自動培養装置について、図1〜図4を参照して説明する。
本実施形態に係る自動培養装置1は、外部から観察可能な透明な壁材により密閉され、シャッタ2を介して相互に連絡する第1空間S1と第2空間S2とを備えている。
【0012】
第1空間S1の両側空間S11,S13には、培養容器3を収容する培養室4が2個ずつ計4個配置され、中央空間S12には、培養容器3を移動するための搬送ロボット(搬送機構)5が備えられている。中央空間S12の上部には、中央空間S12内の空気を浄化するために清浄な下降空気流を送る空気清浄部6が設けられている。
4個の培養室4は、それぞれ中央空間S12に向けて扉4aを配置することにより、横に並んだ2個ずつが相互に扉4aを対向させて、間隔をあけて配置されている。
【0013】
前記各培養室4は、図2および図3に示されるように、一側面に開口部4bを有し、該開口部4bを開閉可能な扉4aを備えている。開口部4bに向かって左右の側壁には、対応する高さ位置に複数のレール状のトレイ保持部材4cが設けられており、左右対となる各トレイ保持部材4cに掛け渡すようにして、トレイ7を上下方向に複数段収容できるようになっている。各培養室4内は、所定の培養条件、例えば、温度37±0.5℃、湿度100%およびCO2濃度5%等に維持されている。なお、トレイ保持部材はレール状に限定されず、トレイを出し入れ可能に支持することができれば任意の形態でよい。
【0014】
各トレイ7には、複数個、例えば、10個の培養容器3を並べて載置できるようになっている。各培養容器3は、図4に示されるように、容器本体3aと、該容器本体3aの上面に設けられた蓋体3bとからなり、容器本体3aの左右の側面には、後述する第2空間内のハンドにより引っかけられる突起3cが設けられている。
【0015】
各培養室4の下方には、未使用の培養容器3をトレイ7に搭載した状態で複数収容するストッカ8が配置されている。ストッカ8は、前記培養室4の扉とは反対側の第1空間S1の外部に向かう側面に開閉可能なドア8aを有している。該ドア8aは、ストッカ8の一側面全体を開放する大きさに形成されている。
【0016】
前記搬送ロボット5は、4個の培養室4の間隔位置のほぼ中央に配置されている。該搬送ロボット5は、水平回転可能な第1アーム5aと、該第1アーム5aの先端に鉛直軸回りに回転可能に連結された第2アーム5bと、該第2アーム5bの先端に鉛直軸回りに回転可能に取り付けられ、それ自身は駆動部、伝導機構などの培養室内の環境を劣化させる機構を持たないハンド5cと、これら第1アーム5a、第2アーム5bおよびハンド5cを昇降可能な昇降機構5dとを備えている。これにより、搬送ロボット5は、4個の培養室4内の全てのトレイ7にアクセスするとともに、前記シャッタ2を跨いで第1空間S1と第2空間S2との間に配置されたコンベア9上にトレイ7を引き渡すことができる水平方向の動作範囲を有している。
【0017】
前記コンベア9は、搬送ロボット5のハンド5cの幅寸法より大きな間隔をあけて左右に配置された2本の無端ベルト9aを備え、これら無端ベルト9aに掛け渡してトレイ7を載置できるようになっている。また、搬送ロボット5は、培養室4内の全てのトレイ7にアクセスするとともに、前記ストッカ8内の少なくとも最上段のトレイ7にアクセスできる垂直方向の動作範囲を有している。
なお、ベルト9aは無端ベルトに限られない。
【0018】
前記ハンド5cは、トレイを載置可能に水平方向に伸びる平坦な形状に形成されており、培養室4に収容されているトレイ7間の隙間に挿入可能な厚さ寸法に形成されている。そして、ハンド5cは、トレイ7間の隙間に挿入された状態から上昇させられることにより、2本の腕によってトレイ7を下方から押し上げてトレイ保持部材4cから取り上げるとともに、トレイ7を安定して保持できるようになっている。
【0019】
前記第2空間S2には、シャッタ2が開かれた状態で第1空間S1からコンベア9によって搬送されてきたトレイ7上の培養容器3を取り扱うハンドリングロボット10と、培養容器3内の培地から細胞を分離する遠心分離機11と、血清や試薬等の種々の液体を分注するための電動ピペット12を備えた水平回転および昇降移動可能な2台の分注ロボット13と、これら分注ロボット13の電動ピペット12先端に取り付ける使い捨て可能なチップ14を複数収容していて分注ロボット13の動作範囲内に提供可能な3台のチップ供給装置15と、使用済みのチップ14を廃棄回収するチップ回収部(図示略)と、血清や試薬等の種々の液体を複数の容器に貯留する試薬等供給装置16と、培養容器3内における細胞の様子を観察可能な顕微鏡17と、各試薬および培地交換等により廃棄される廃液をそれぞれ貯留する複数の貯留タンク18と、前記コンベア9と各ロボット10,13との間で培養容器3を受け渡し可能とするように培養容器3を移動させる水平移動機構19と、該水平移動機構19のスライダ20に取り付けられ、受け取った培養容器3を載置して振動を加えるシェーカ21とを備えている。
なお、第2空間S2にも、該第2空間S2内の空気を浄化するために清浄な下降気流を送る空気清浄部(図示略)が設けられている。
【0020】
前記ハンドリングロボット10は、培養容器3を取り扱う把持ハンド10aを水平移動および昇降移動させる水平多関節型ロボットである。例えば、図1に示す例では、相互に連結された3つの水平アーム10b,10c,10dと、これら水平アーム10b〜10dを昇降させる昇降機構10eとを備えている。また、水平アーム10b〜10dの先端には、培養容器3を把持する把持ハンド10aの他に、培養容器3内から細胞や培地を出し入れするチップ14を着脱可能な電動ピペット(図示略)と、培養容器3の蓋体3bを引っかけて開閉する蓋体開閉ハンド(図示略)とが備えられている。
【0021】
ハンドリングロボット10は、コンベヤ9で搬送されてきたトレイ7上の培養容器3の蓋体3bを開閉し、培養容器3を把持して搬送することによりシェーカ21および顕微鏡17に供給し、電動ピペット先端のチップ14を交換し、培養容器3内から取り出した細胞入り培地を遠心分離機11に投入するようになっている。したがって、ハンドリングロボット10は、コンベア9、シェーカ21、顕微鏡17、チップ供給装置15、チップ回収部(図示略)および遠心分離機11等の種々の装置をその動作範囲内に配置している。
【0022】
前記遠心分離機11は、ハンドリングロボット10から供給された細胞入り培地を高速回転させることにより培地内に浮遊していた比重の重い細胞を培地から分離して沈下させるようになっている。
【0023】
前記分注ロボット13は、先端にチップ14を着脱可能に取り付ける電動ピペット12を備えた水平回転可能なアーム13aと、該アーム13aを昇降させる昇降機構13bとを備えている。分注ロボット13は、水平移動機構19によって搬送されて来た培養容器3内へ、培地や種々の試薬を供給するようになっている。したがって、分注ロボット13は、水平移動機構19上のシェーカ21、チップ供給装置15、チップ回収部および試薬等供給装置16等の種々の装置をその動作範囲内に配置している。
【0024】
前記チップ供給装置15は、上方に開口した容器15a内に、電動ピペット12への取付口を上向きにして複数のチップ14を配列状態に収容しており、ハンドリングロボット10や分注ロボット13が、新たなチップ14を必要とするときに、電動ピペット12を上方から挿入するだけで、電動ピペット12の先端にチップ14を取り付けるように構成されている。容器15aは、ハンドリングロボット10や分注ロボット13の動作範囲と、蓋体15bとの間で往復移動させられるように移動機構15cに取り付けられており、チップ14の交換が不要なときには、チップ14への塵埃等の付着を防止するために、移動機構15cを作動させて蓋体15bの下方に配置されるようになっている。
【0025】
前記チップ回収装置は、回収容器の入口に、チップ14を把持する把持装置を備えていて、ハンドリングロボット10や分注ロボット13において使用されたチップ14が把持装置に挿入されると、これを把持するようになっている。そして、この状態でハンドリングロボット10や分注ロボット13が電動ピペット12を移動させることにより、電動ピペット12先端から使用済みチップ14が取り外され、回収容器内に回収されるようになっている。
【0026】
前記試薬等供給装置16は、例えば、図1に示されるように、円筒状のケーシング内部に、水平回転可能なテーブル16aを収容し、該テーブル16a上に、扇型の底面形状を有する筒状の試薬等容器16bを周方向に複数配列して搭載している。各試薬等容器16bには、種々の試薬等が貯留されている。例えば、細胞を培養するために必要な培地を構成するMEM(Minimal Essential Medium:最小必須培地)、FBS(Fetal Bovine Serum:ウシ胎児血清)やヒト血清のような血清、培養容器3内の細胞を剥離させるトリプシンのような蛋白質分解酵素や、培養に際して細胞を成長させるサイトカインのような成長因子、細胞を分化させるデキサメタゾンのような分化誘導因子、ペニシリン系抗生物質のような抗生剤、エストロゲン等のホルモン剤や、ビタミン等の栄養剤が貯留されている。
【0027】
試薬等供給装置16のケーシングの上面には、分注ロボット13が電動ピペット12先端のチップ14を挿入する挿入口16cが設けられている。この挿入口16cは、前記分注ロボット13の動作範囲内に配置されている。また、各試薬等容器16bは、その上面に、前記挿入口16cに一致する位置に配置される開口部(図示略)を備えている。これにより、テーブル16aを回転させて試薬等容器16bの開口部をケーシングの挿入口16cの鉛直下方に配置することで、分注ロボット13が、電動ピペット12先端のチップ14を上方から試薬等容器16b内へ挿入して、内部に貯留されている試薬等を吸引することができるようになっている。試薬等供給装置16と、分注ロボット13とを2台ずつ設けているのは、検体に共通のトリプシンのような薬液と、検体に固有の血清のような液体とを分離して取り扱うようにしているためである。
【0028】
前記顕微鏡17は、培養工程の途中、あるいは、培地交換の際に、培養容器3内の細胞数を計数する場合などに使用されるようになっている。顕微鏡17のXYステージや作動距離調整、倍率の変更等は全て遠隔操作により行うことができるように構成されている。第2空間S2の外方に向けて接眼レンズを配置しておくことにより、自動培養装置1の外部から培養容器3内の細胞の状態を目視できるようにしてもよい。
【0029】
前記貯留タンク18は、例えば、全ての検体に共通して使用できるMEMやPBS(リン酸緩衝液)等を貯留しておき、必要に応じて試薬等供給装置16内の試薬等容器16a内に供給するようになっている。また、貯留タンク18には、廃液タンクとして、培地交換の際に排出される廃培地等を貯留するものもある。
【0030】
前記水平移動機構19は、直線移動機構により水平方向に移動可能なスライダ20を備えている。スライダ20上には前記シェーカ21が搭載されており、シェーカ21に搭載された培養容器3を、コンベア3から分注ロボット13の動作範囲まで移動させることができるようになっている。
【0031】
前記シェーカ21は、コンベア9上のトレイ7内から移載された培養容器3を搭載して保持する保持機構(図示略)を備えるとともに、該培養容器3に振動を付与する加振装置(図示略)を備えている。加振装置は、例えば、培養容器3を所定の角度範囲で往復揺動させる装置である。なお、加振装置として、超音波振動を加える装置や、水平方向の振動を加える装置を採用してもよい。
本実施形態に係る自動培養装置1の各種装置には、図示しない制御装置が接続されている。制御装置は、各工程の順序や動作タイミング等を制御するとともに、動作履歴等を記録保存するようになっている。
【0032】
このように構成された本実施形態に係る自動培養装置1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係る自動培養装置1を用いて、細胞を培養するには、まず、患者から採取された骨髄液を遠心分離容器(図示略)に入れた状態で遠心分離機11に投入する。この工程は、作業者が行ってもよく、また、ハンドリングロボット10に行わせてもよい。これにより、遠心分離機11の作動により、骨髄液中から比重の重い骨髄細胞が抽出される。
【0033】
抽出された骨髄細胞は、ハンドリングロボット10により、培養容器3に投入される。このとき、コンベア9の作動により、トレイ7に載せた10個の空の培養容器3が、第1空間S1から第2空間S2に差し出されている。ハンドリングロボット10は、差し出された培養容器3の内の2個の蓋体3bを開けた後に、把持ハンド10aを作動させてこれを把持してすることにより、シェーカ21上に移載する。なお、蓋体3bを開けるロボットを別途設けてもよい。これにより処理直前に蓋体3bを開けることができ、容器本体3a内に異物が入る確率を低減することができる。
【0034】
チップ供給装置15が移動機構15cを作動させることにより、未使用のチップ14をハンドリングロボット10の動作範囲内に配すると、ハンドリングロボット10は、チップ供給装置15から未使用のチップ14を受け取って電動ピペットの先端に取り付ける。
この状態で、ハンドリングロボット10を作動させて、電動ピペット先端のチップ14を遠心分離機11内に抽出された骨髄細胞に接触させる。そして、電動ピペットを作動させることにより、チップ14内に骨髄細胞を吸引する。吸引された骨髄細胞はハンドリングロボット10を作動させることにより、シェーカ21上に蓋体3bを開けて移載されている培養容器3内に投入される。
【0035】
骨髄細胞を培養容器3内に投入し終わると、ハンドリングロボット10は、チップ回収部までチップ14を搬送してチップ14を取り外す。また、チップ供給装置15は、移動機構15cの作動により容器15aを蓋体15bの下方に配置する。
【0036】
次に、骨髄細胞が投入された培養容器3は、水平移動機構17を作動させることにより、シェーカ21ごと水平移動させられ、各分注ロボット13の動作範囲内に配置される。分注ロボット13は、チップ供給装置15から受け取った未使用のチップ14を先端に取り付けた電動ピペット12を作動させることにより、試薬等供給装置16の試薬等容器16b内からMEMや血清、あるいは各種試薬を適量吸引した後に、培養容器3の上方まで搬送して培養容器3内に注入する。血清や各試薬の吸引は、各試薬等の吸引毎にチップ供給装置15から未使用のチップ14に交換して行われる。これにより、培養容器3内においては、適正な培地内に骨髄細胞が混合された状態で存在することになる。なお、培地内において骨髄細胞を均一に分布させるために、シェーカ21を作動させて、培養容器3ごと加振することにしてもよい。そして、全ての処理を終えた培養容器3は水平移動機構17の作動により、ハンドリングロボット10の動作範囲に戻される。ハンドリングロボット10は、培養容器本体3aに蓋体3bを被せた上で、培養容器3をトレイ7上に戻す。
【0037】
トレイ7上の全ての培養容器3に対して所定の処理が行われた後に、コンベア9を作動させることにより、トレイ7に載せられた培養容器3が第2空間S2から第1空間S1の中央空間S12内に挿入される。この状態で、搬送ロボット5を作動させることにより、ハンド5cによってトレイ7を持ち上げる。そして、トレイ7を収容する培養室4の前まで搬送したところで、当該培養室4の扉4aを開き、搬送ロボット5によって、空いているトレイ保持部材4c上にトレイ7を挿入する。そして、再度、扉4aを閉じることにより、培養室4内の培養条件を一定に保持して細胞の培養が行われることになる。なお、骨髄細胞投入や、MEM、血清、各種試薬の投入や吸引の順序は適宜変更してもよいのは言うまでもない。
【0038】
また、培地交換や容器交換の際にも、上記と同様にして、培養室4外に配置されている搬送ロボット5の作動により、培養室4内の培養容器3がトレイ7ごと取り出され、第1空間S1から第2空間S2へ受け渡される。第2空間S2では、培養容器3内にトリプシンが注入されて、培養容器3内の細胞が剥離させられた状態で、ハンドリングロボット10の作動によって遠心分離機11内に投入され、間葉系幹細胞等の必要なもののみが抽出される。その他の処理工程は上記と同様である。
【0039】
そして、複数回の培地交換や容器交換を介した所定期間に渡る培養工程を行うことにより、間葉系幹細胞が十分な細胞数まで増殖させられることになる。十分な細胞数に達したか否かは、ハンドリングロボット10の作動により、間葉系幹細胞が底面に付着した培養容器3を顕微鏡17まで搬送することにより、測定され、判断される。なお、トレイ7上には、同一検体の培養容器3が載置されていてもよいし、異なる検体の培養容器3が混在していてもよい。また、シェーカ21上には同一検体の培養容器3が載置されてもよいし、異なる検体の培養容器3が混在していてもよい。
【0040】
このようにして、本実施形態に係る自動培養装置1により、患者から採取した骨髄液から十分な細胞数の間葉系幹細胞を自動的に培養することが可能となる。なお、十分な間葉系幹細胞が得られた後には、培養容器3内にリン酸カルシウムのような生体組織補填材およびデキサメタゾンのような分化誘導因子を投入して、再度培養工程を継続することにより、生体の欠損部に補填可能な、生体組織補填体を製造することにしてもよい。
【0041】
この場合において、本実施形態に係る自動培養装置1によれば、培養室4内に、培養容器3を取り出すための機構部が存在しない。すなわち、培養室4内には、トレイ7を載置した状態に支持するトレイ支持部材4cが設けられているのみであり、培養容器3を取り出すための機構部は全て培養室4外に配置された搬送ロボット5に集約されている。そして、搬送ロボット5は、トレイ7の出し入れ作業が行われた後には、培養室4の扉4aの外側に完全に退避することができるようになっている。
【0042】
したがって、扉4aが閉じられた状態では、培養室4内に機構部が存在せず、機構部の作動によって発生するような塵埃の発生は全く存在しない。また、培養室4内は、温度37±0.5℃、湿度100%およびCO2濃度5%等に維持されるが、機構部が存在しないために、このような環境下においても、腐食等の問題が生ずることがない。また、扉4aが開かれた状態においても、培養室4内に挿入されるのは搬送ロボット5のハンド5c先端のみであり、実質的に回転機構や摺動機構が培養室4内に入ることはない。したがって、培養室4内への塵埃の侵入が抑制され、培養室4内部の清浄度を高めることができる。
なお、培養室4はCO2インキュベータ、マルチガスインキュベータ、インキュベータ、保冷庫等のように、培養に利用されるものあるいはその組合せで構成されていてもよい。
【0043】
さらに、本実施形態に係る自動培養装置1は、搬送ロボット5の設置されている中央空間S12の上部に、空気清浄部6を備えているので、搬送ロボット5の存在する中央空間S12内も常に清浄度が維持されている。したがって、培養室4の扉4aが開かれときにも、培養室4内に塵埃が流入することを最小限に抑えることが可能となる。
したがって、本実施形態に係る自動培養装置1によれば、培養中の細胞が塵埃等によって汚染される可能性を低減し、健全な細胞を培養することができるという効果がある。
【0044】
なお、この発明は、上記実施形態に示した構成に限定されるものではない。すなわち、培養室4の形状や数、搬送ロボット5、ハンドリングロボット10および分注ロボット13の形態や数、各種装置の形態や数等は、何ら限定されることなく、適用条件に合わせて任意に設定することができる。
また、成長因子としては、サイトカインの他に、例えば、濃縮血小板、BMP、FGF、TGF−β、IGF、PDGF、VEGF、HGFやこれらを複合させたもの等の成長に寄与する物質を採用することにしてもよい。また、抗生剤としては、ペニシリン系抗生物質の他、セフェム系、マクロライド系、テトラサイクリン系、ホスホマイシン系、アミノグリコシド系、ニューキノロン系等任意の抗生物質を採用することができる。
【0045】
また、生体組織補填材としては、リン酸カルシウムに代えて、生体組織に親和性のある材料であれば任意のものでよく、生体吸収性の材料であればさらに好ましい。特に、生体適合性を有する多孔性のセラミックスや、コラーゲン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒアルロン酸、またはこれらの組合せを用いてもよい。また、チタンの様な金属であってもよい。また、生体組織補填材は、顆粒状でもブロック状でもよい。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明に係る自動培養装置によれば、培養室内に機構部が存在せず、培養室の扉の外側に退避可能に培養容器を出し入れするための全ての移動機構が備えられているので、培養室内における塵埃の発生を抑制して高い清浄度に保つことができる。その結果、細胞の汚染を防止して、健全な細胞を自動的に培養することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る自動培養装置を示す斜視図である。
【図2】図1の自動培養装置の第1空間を概略的に示す縦断面図である。
【図3】図1の自動培養装置の第1空間を概略的に示す平面図である。
【図4】図1の自動培養装置において用いられる培養容器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 自動培養装置
3 培養容器
4 培養室
4a 扉
5 搬送ロボット(搬送機構)
5a 第1アーム(移動機構)
5b 第2アーム(移動機構)
5c ハンド(移動機構)
5d 昇降機構(移動機構)
9 コンベア(搬送機構)
S2 第2空間(処理部)
Claims (4)
- 細胞を収容した培養容器を出し入れ可能に収容し、所定の培養条件を維持しつつ細胞を培養する培養室と、培養容器内に収容された細胞に対して所定の処理を施す処理部と、これら培養室と処理部との間において培養容器を搬送する搬送機構とを備え、
前記培養室に、該培養室を開閉する扉が設けられ、
前記培養室の外側に退避可能に、培養容器を出し入れするための全ての移動機構が備えられている自動培養装置。 - 前記移動機構が、前記搬送機構に設けられている請求項1に記載の自動培養装置。
- 細胞を収容した培養容器を出し入れ可能に収容し、所定の培養条件を維持しつつ細胞を培養する培養室と、該培養室から前記培養容器を出し入れするための移動機構とを備え、
前記培養室に、該培養室を開閉可能な扉が設けられ、
前記培養室から前記培養容器を出し入れするための移動機構の全てが、前記培養室の扉の外側に退避可能に備えられている自動培養装置。 - 前記培養室を複数備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の自動培養装置。
Priority Applications (1)
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