JP2004266158A - シリコン窒化膜、その形成方法及び装置、並びに半導体素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】WRを充分に低減できると共に、イオン拡散の充分な抑制等が可能なシリコン窒化膜、及びそれを備える半導体素子等を提供する。
【解決手段】トランジスタ11は、LDDタイプのC−MOSを構成し、シリコンウエハWの表面にゲート絶縁膜14を介してゲート電極12が設けられたものである。その側壁には、本発明によるシリコン窒化膜から成るサイドウォール13が被着されている。その下方には、ゲート絶縁膜14を通してBイオンがドープされたエクステンション領域15が形成されている。
【選択図】 図2
【解決手段】トランジスタ11は、LDDタイプのC−MOSを構成し、シリコンウエハWの表面にゲート絶縁膜14を介してゲート電極12が設けられたものである。その側壁には、本発明によるシリコン窒化膜から成るサイドウォール13が被着されている。その下方には、ゲート絶縁膜14を通してBイオンがドープされたエクステンション領域15が形成されている。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン窒化膜、その形成方法及び装置、並びに半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスや液晶デバイスといった電子部品の製造分野では、シリコンの原料としてSiH2(NH(C4H9))2(ビス(t−ブチルアミノ)シラン:BTBAS)、及び窒素の原料としてNH3を反応ガスとする熱CVD法により、加熱炉内に収容した基板上にシリコン窒化膜(SixNy)を成膜する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−230248公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シリコン窒化膜は絶縁膜であって、エッチストッパ、エッチングマスク、種々の保護膜、例えば、C−MOSのLDD構造を形成する際のゲート電極の側壁に設けられる、いわゆるサイドウォールとして半導体装置及びその製造に広く用いられている。
【0005】
(1)近年、半導体素子の微細化・多層化の要求に伴って、C−MOS構造ひいてはゲート寸法・形状の制約がますます大きくなっている。この為、LDD構造が形成される領域寸法もこれまでより更に縮小される傾向にある。こうなると、例えば、ショートチャネル効果による漏れ電流の発生や、閾値電圧(Vth)変動の不都合な増大を抑制することが一層肝要となる。これを達成するには、サイドウォールの形状維持、及び形状制御を確実且つ充分に行うべく、サイドウォールのエッチング耐性、イオン衝撃耐性といった諸特性を更に向上させる必要がある。
【0006】
かかる状況下、本発明者が従来方法で得たシリコン窒化膜の膜特性について詳細に検討したところ、そのウエットエッチレート(以下、「WR」という)が場合によっては数百Å/minに達することが確認された。また、本発明者のさらなる知見によれば、このようなWRを発現する膜は、次世代のMOSトランジスタに採用されるべきLDDサイドウォールに用いるには不適当であると考えられる。
【0007】
(2)また、例えばLDD構造のサイドウォールでは、イオン(例えばBイオン)注入で形成した所定濃度領域のドーパントイオン濃度の変動を防止すべく、ドーパントイオンの拡散を充分に抑制することが要求される。これに関し、従来方法で得たシリコン窒化膜を用いてテストストラクチャを形成し、ドーパントイオンの拡散現象をシート抵抗の実測から間接的に評価した結果、かかる従来のシリコン窒化膜の拡散防止性は必ずしも充分なものとは言えなかった。
【0008】
(3)さらに、パターンの疎密及び凹凸に応じて、そのパターン上に形成される膜厚が変動する現象(パターンローディング、成膜速度のマイクロローディング)の発生を抑制し、良好なパターンローディング特性及びステップカバレッジ特性を発現させることも同時に熱望される。
【0009】
これに対し、従来方法で得たシリコン窒化膜では、そのようなローディング効果、すなわちパターンの疎密によって、パターンが密な部分で膜厚が過度に薄くなる傾向にあることが確認された。さらに、ステップカバレッジも不充分であり、凸部の膜厚が凹部の膜厚に比して過度に厚くなることが判明した。従って、シリコン窒化膜を一定の所望膜厚で均一に成膜することが極めて困難な場合があった。
【0010】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、WRを充分に低減できると共に、イオン拡散を充分に抑制することが可能であり、しかもパターンローディングの発生を防止して膜厚の均一性を向上できるシリコン窒化膜、その形成方法及び装置、並びに半導体素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明によるシリコン窒化膜は、CVD法によって基体上に形成されるものであって、当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が一定の値となるように、分子中に炭素原子を含む化合物から成る第1のガスと、分子中に窒素原子を含む化合物から成る第2のガスとが、所定の温度に加熱された基体上に供給されて形成されたものであることを特徴とする。
【0012】
本発明者の研究によれば、シリコン窒化膜中の炭素原子量とWRとが極めて密接な関係を有することが判明した。具体的には、膜中の炭素原子の割合が増加するほどWRが小さくなるという傾向が認められた。その詳細な機構は、未だ充分に解明されていないものの、炭素原子とケイ素原子との共有結合性が窒素原子とケイ素原子との共有結合性よりも強いことに起因し、このような強結合スポットがSi−Nのネットワーク中に適度に分散された状態が生起されることが要因の一つと考えられる。但し、作用はこれに限定されない。
【0013】
よって、膜中の炭素原子の含有割合(濃度)が所望の一定値に調整された本発明のシリコン窒化膜は、従来のシリコン窒化膜のWRより低いWRを発現し得る。従って、エッチストッパ、エッチング用のマスク、種々の保護膜(パッシベーション膜)、例えばLDD構造を有するトランジスタのサイドウォールとして好適である。さらに、適宜設定されたCVD法における成膜条件(プロセスパラメータ)で形成された本発明のシリコン窒化膜は、炭素原子の含有割合が適宜調整され得るため、そのWRが任意且つ所望の値に調整される。従って、プロセス適合性及び汎用性が高められ、上述した種々の用途に最適な膜となり得る。
【0014】
また、例えばLDD構造のサイドウォール等、P型又はN型領域上に設けられる膜又は層としてこのシリコン窒化膜を用いた場合、ドーパントイオンのシリコン窒化膜中への拡散が抑制されることが判明した。これにより、サイドウォールの拡散防止性が向上される。
【0015】
かかる作用の詳細な機構も未だ厳密に解明されていないものの、本発明者は、シリコン窒化膜中に炭素原子が一定の含有割合で存在することにより、膜構造がアモルファス化されることが要因の一つと推定している。つまり、従来方法によって得られる比較的結晶性が高いと考えられるSi3N4膜又はその組成比に近いストイキオメトリを有する膜に比して、イオンの熱拡散による移動/流動が阻害され、そのような拡散を有効に抑止される観点において、膜の‘均質性’が高められることによると考えられる。
【0016】
また、LDD構造を形成した後の状態を得て詳細に評価したところ、シリコン窒化膜から成るサイドウォール下のエクステンション領域(浅い接合)において、有意量の炭素の存在が認められた。これは、サイドウォールの成膜時、或いはその後の処理が行われた時に、そのシリコン窒化膜の原料ガス(BTBAS等)に由来する炭素が、拡散等により基板側に移動したものと推定される。但し、作用はこれらに限定されない。このため、LDD構造を例にとると、サイドウォールの下方に形成されたエクステンション領域のドーパントイオン濃度が高濃度に維持される(リテンション効果)。
【0017】
さらに、このように炭素原子量が制御されたシリコン窒化膜は、パターンローディング(成膜速度のマイクロローディング)効果が抑制され、コンフォーマルすなわち等方的でステップカバレッジに優れることも判明した。これは、炭素原子が一定量存在することで上述の如く共有結合性が高められることにより、膜全体としての安定性が増大すると共に、ニュークリエーションによる結晶成長が緩和され、その結果、膜の異方性成長が抑制されることが要因の一つと考えられる。但し、作用はこれに限定されない。
【0018】
具体的には、膜中の炭素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、及び炭素原子の総和の2〜25atom%であると好ましく、3〜12atom%であるとより好ましく、5〜8atom%であると特に好ましい。この割合が2atom%未満であると、炭素原子の存在によってもたらされる上述した各効果のうちローディング特性は担保されるものの他の効果が十分に奏されない傾向にある。一方、この割合が25atom%を超えると、炭素原子間のネットワークにより導電経路が形成され易くなり、絶縁性能が不都合な程に悪化するおそれがある。
【0019】
さらに、膜中の酸素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子、及び酸素原子の総和の1atom%以下であると好適であり、この割合が1atom%を超えるとドーパントイオンの突き抜けが顕著となることがあり、ドーパントイオンの拡散を抑制し難くなる。これは、膜中にSi−O結合が過度に含まれる場合、シリコン酸化膜とのアナロジーから想定するに、ドーパントイオンの移動度が不都合に増大することに起因すると考えられる。但し、作用はこれに限定されない。なお、酸素原子は通常、膜中に不可避的に含まれるものである。
【0020】
また、本発明の炭素原子を含むシリコン窒化膜は、以下に示す組成で規定されてもよい。すなわち、ケイ素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、及び炭素原子の総和に対して、40〜60atom%、好ましくは45〜55atom%、より好ましくは48〜52atom%であり、炭素原子の含有割合が上述の通り2〜25atom%、より好ましくは3〜12atom%、特に好ましくは5〜8atom%でありであり、残部が窒素原子の含有割合とされる。さらに、この場合においても、シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子、及び酸素原子の総和の、1atom%以下であることが望ましい。
【0021】
また、本発明によるシリコン窒化膜の形成方法は、本発明によるシリコン窒化膜を有効に形成するためのものであり、CVD法によってチャンバ内の基体上にシリコン窒化膜を形成する方法であって、(a)チャンバ内の圧力を調整する圧力調整工程と、(b)基体上に、分子中に炭素原子を含む化合物から成る第1のガスと、分子中に窒素原子を含む化合物から成る第2のガスとを供給するガス供給工程と、(c)基体を所定の温度に加熱する基体加熱工程と、(d)当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が一定の値となるように、圧力、第1のガスの供給量、第2のガスの供給量、第1のガスと第2のガスとの供給量の比、第1のガスの種類、第2のガスの種類、及び基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第1の制御工程とを備えることを特徴とする。
【0022】
このように構成されたシリコン窒化膜の形成方法においては、圧力調整工程でチャンバ内の圧力が調整され、ガス供給工程で第1のガス及び第2のガスが基体上に供給され、基体加熱工程で基体が所定温度に加熱されると、基体の略直上で両ガスの気相反応が生じる。こうして、一定の含有割合で炭素原子を含むシリコン窒化膜が形成される。また、第1の制御工程において、上記プロセスパラメータを調整することにより、膜中の炭素原子量が任意且つ所望の値となるような成膜が実現される。具体的には、第1の制御工程においては、炭素原子の含有割合が、当該シリコン窒化膜中に含まれるケイ素原子、窒素原子、及び炭素原子の総和の2〜25atom%となるように、少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する。
【0023】
さらに、当該シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が一定の値となるように、圧力、第1のガスの供給量、第2のガスの供給量、第1のガスと第2のガスとの供給量の比、第1のガスの種類、第2のガスの種類、及び基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第2の制御工程を備えてもよい。この場合、第2の制御工程においては、当該シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子、及び酸素原子の総和の1atom%以下となるように少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する。
【0024】
また、本発明によるシリコン窒化膜形成装置は、本発明によるシリコン窒化膜の形成方法を有効に実施するためのものであり、CVD法によって基体上にシリコン窒化膜が形成されるものであって、(1)基体が収容されるチャンバと、(2)チャンバに接続されており、分子中に炭素原子を含む化合物から成る第1のガス供給源と、(3)分子中に窒素原子を含む化合物から成る第2のガス供給源とを有するガス供給部と、(4)基体を所定の温度に加熱する基体加熱部と、(5)当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が一定の値となるように、圧力、第1のガスの供給量、第2のガスの供給量、第1のガスと第2のガスとの供給量の比、該第1のガスの種類、該第2のガスの種類、及び基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第1の制御部とを備えることを特徴とする。
【0025】
さらに、当該シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が一定の値となるように、圧力、第1のガスの供給量、第2のガスの供給量、第1のガスと第2のガスとの供給量の比、第1のガスの種類、第2のガスの種類、及び基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第2の制御部を備えることが望ましい。
【0026】
また、本発明による半導体素子は、基体上に、本発明のシリコン窒化膜が形成されて成ることを特徴とする。特に、基体が、LDD構造を含むトランジスタのゲート電極を有しており、シリコン窒化膜がゲート電極の側壁に被着されたサイドウォールを構成するものであると好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、同一要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。
【0028】
図1は、本発明によるシリコン窒化膜形成装置の好適な一実施形態を模式的に示す断面図(一部構成図)である。シリコン窒化膜形成装置としてのCVD装置1は、シリコンウエハW(基体)が収容されるチャンバ2にガス供給部30が接続されたものである。チャンバ2は、シリコンウエハWが載置されるサセプタ5を有しており、このサセプタ5の上方には、中空の円盤状をなすシャワーヘッド4が設けられている。
【0029】
また、サセプタ5は、Oリング、メタルシール等により、チャンバ2に気密に設けられると共に、図示しない可動機構により上下駆動可能に設けられている。この可動機構により、シリコンウエハWとシャワーヘッド4との間隔Dが調整されるようになっている。さらに、サセプタ5にはヒーター51(基体加熱部)が内設されており、これによりシリコンウエハWが所望の所定温度に加熱される。
【0030】
一方、シャワーヘッド4は、略円筒状をなし且つガス供給口9が設けられたベースプレートを上壁とする胴部41の下端部に、複数の貫通孔45aが穿設された多孔板状のフェイスプレート45が結合されたものである。また、シャワーヘッド4の内部には、フェイスプレート45と略平行に、複数の貫通孔43aが穿設された多孔板状のブロッカープレート43が設置されている。そして、胴部41とブロッカープレート43によって空間部Saが画成されており、胴部41とフェイスプレート45によって空間部Sbが画成されている。
【0031】
さらに、チャンバ2の下部には、開口部7が設けられている。この開口部7には、チャンバ2の内部を減圧するための真空ポンプ(図示せず)を有する排気系70が接続されており、チャンバ2内の圧力を所定圧力に調整している。
【0032】
また、図示を省略したが、シリコンウエハWの表面側のチャンバ2内空間と裏面側のチャンバ2内空間とは、互いにガス封止されるようになっている。すなわち、表面側には上記ガス供給部30からシャワーヘッド4を通して後述する原料ガス等が供給され、裏面側には図示しないバックサイドパージ系からパージガスが供給されるようにされており、両ガスが互いに反対面側の領域へ混入しないようになっている。
【0033】
また、ガス供給部30は、BTBAS供給源31(第1のガス供給源)、アンモニアガス供給源32(第2のガス供給源)、キャリアガス又は希釈ガス供給源33、34を有している。これらの各ガス供給源31〜34は、各ガスのガス流量(供給量)を制御するMFC(質量流量コントローラ)31a〜34aが設けられた配管10を介して、シャワーヘッド4のガス供給口9に接続されている。これらにより、BTBAS(第1のガス)、アンモニアガス(第2のガス)、及びキャリアガス又は希釈ガスがシャワーヘッド4内に導入され、ブロッカープレート43及びフェイスプレート45を介してチャンバ2内に供給される。
【0034】
さらに、ヒーター51、排気系70、及びMFC31a〜34aには、これらを制御する制御コンピュータC(第1の制御部及び第2の制御部)が接続されている。制御コンピュータCは、形成されるシリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合(濃度)が一定の値となるように、成膜時のプロセスパラメータを調整するための演算制御装置である。ここで、プロセスパラメータとは、チャンバ2内の圧力、ガス供給部30からチャンバ2に供給される原料ガスの種類(本実施形態では、BTBASとアンモニアガスに固定;以下この場合について例示する)、BTBASの供給量、アンモニアガスの供給量、それらの流量比(供給量の比)、及びシリコンウエハWの温度のうち少なくとも一つが挙げられる。これらの調整方法として具体的には、ヒーター51の出力を制御することでシリコンウエハWの温度を調整し、排気系70の運転制御によりチャンバ2内の圧力を調整し、MFC31a,32aの開度を制御することでそれぞれBTBAS及びアンモニアガスの供給量又は流量比を調整する。また、MCP33a,34aの開度制御によりそれぞれBTBAS及びアンモニアガスの供給濃度を調節することができる。
【0035】
このように構成されたCVD装置1を用いた本発明によるシリコン窒化膜の形成方法の一例について説明する。なお、CVD装置1の以下に述べる各動作は、自動又は操作者による操作に基づく。
【0036】
まず、チャンバ2内を真空ポンプにより減圧する。この減圧下において、シリコンウエハWを、ロードロックチャンバ、他のチャンバ、他のウエハ準備室等の所定場所からチャンバ2内へと搬送し、サセプタ5上に載置して収容する。次に、キャリアガス及び/又は希釈ガスをガス供給源33,34から配管10を通してチャンバ2内へ供給すると共に、チャンバ2内が所定の圧力、例えば、275Torr(36.7kPa)となるように制御コンピュータCにより排気系70の運転を制御する(圧力調整工程)。
【0037】
チャンバ2内の圧力が所定値で安定した後、成膜用の原料ガスとしてBTBAS及びアンモニアガスをそれぞれの供給源31,32から配管10を通してシャワーヘッド4へ供給する(ガス供給工程)。このとき、チャンバ2内の圧力及びBTBASとアンモニアガスのそれぞれのガス流量は、制御コンピュータCにおいて調節・制御され、一定の圧力及びガス流量に維持される(第1の制御工程及び第2の制御工程)。
【0038】
ここで、BTBASとアンモニアガスとの流量比は、特に制限されず、BTBAS:アンモニアガスが好ましくは1:0〜1:10、より好ましくは1:0〜1:1、特に好ましくは1:0.25〜1:1とされる。なお、この比の値が1:0とはアンモニアガスを用いずにBTBASのみを使用することを示す。この場合、BTBASが第1のガスと第2のガスを兼ねる。
【0039】
このようにガス供給口9から空間部Saに導入されたBTBAS及びアンモニアガスは、ブロッカープレート43により分散されて十分に混合され、複数の貫通孔43aを通して空間部6bへ流出する。こうにして空間部Sbへ導入されたアンモニアガス及びBTBASの混合ガスは、フェイスプレート45の貫通孔45aを通してシャワーヘッド4の下方に流出し、シリコンウエハW上に供給される。
【0040】
一方、BTBAS及びアンモニアガスをチャンバ2内に供給すると共に、ヒーター51に電力を供給してサセプタ5を介してシリコンウエハWを加熱する(基体加熱工程)。この際、制御コンピュータCによりシリコンウエハWが所定温度となるように電力出力を調整する(第1の制御工程及び第2の制御工程)。サセプタ温度は600〜700℃が好ましく、本実施形態では例えば650℃とする。この場合、シリコンウエハWは約640℃に加熱される。これにより、シリコンウエハW上に達したBTBASとアンモニアガスとを反応させることでシリコンウエハW上にシリコン窒化物を堆積せしめる。成膜速度に応じて所望膜厚の炭素含有シリコン窒化膜(SixNyCx、SixNyCzOw、又はSixNy:C,O,H等と表記できる)が形成された後、BTBAS及びアンモニアガスの供給を停止する。さらに、必要に応じて、チャンバ2内に残留するBTBAS及びアンモニアガスをパージした後、シリコンウエハWをチャンバ2の外部に搬出する。
【0041】
図2は、本発明によるシリコン窒化膜を有する半導体素子の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。半導体素子としてのトランジスタ11はLDD構造を有するものであり、シリコンウエハWの表面にゲート絶縁膜14を介して形成されたゲート電極12を有している。ゲート電極12の側壁には、本発明によるシリコン窒化膜から成るサイドウォール13が被着されている。ゲート電極12及びサイドウォール13はゲート絶縁膜14を土台として設置されており、サイドウォール13の下方にはゲート絶縁膜14を通してBイオンがドープされたエクステンション領域15(浅い接合)が形成されている。さらに、エクステンション領域15の外側に隣接してBイオンがドープされたコンタクト領域16(やや深い接合)が形成されている。
【0042】
このサイドウォール13を形成するには、まずゲート電極12及びエクステンション領域15が設けられたシリコンウエハWに上述のCVD装置1及び方法を用いてシリコン窒化膜を成膜する。さらに、そのシリコンウエハWの表面全体に反応性イオンエッチング(RIE)を施してゲート電極12の側壁にだけシリコン窒化膜を残す。これによりサイドウォール13が形成される。その後、サイドウォール13をマスクとしてBイオン注入を施し、エクステンション領域15の外側にコンタクト領域16を形成してLDD構造を有するトランジスタ11が得られる。
【0043】
このようなCVD装置1及びそれを用いた成膜方法によれば、以下の優れた特性を発現するシリコン窒化膜及びそれから成るサイドウォール13を得ることが可能となる。
【0044】
すなわち、本発明のシリコン窒化膜は一定の含有割合、詳しくは先述した好適範囲で炭素原子を含むので、膜の共有結合性が高められ、従来のシリコン窒化膜に比して低いWRを達成できる。また、炭素原子濃度を増加させると、そのWRは更に低下する傾向がある。よって、プロセスパラメータを調整して成膜条件を制御することで所望の炭素原子濃度を有し、ひいては所望のWRを達成できるシリコン窒化膜を得ることが可能である。
【0045】
また、このような低WR化が達成されるので、本発明のシリコン窒化膜は、トランジスタ11のサイドウォール13として非常に有用である。LDD構造のトランジスタ11は、通常、他の種類の半導体デバイスと共にシリコンウエハW上に形成される。LDD構造におけるコンタクト領域16をイオン注入によって形成するときには、一般に、他の種類の半導体デバイスを保護するためにレジストが設けられる。このレジストは、コンタクト領域16を形成した後、通常、薬液を用いて剥離除去される。この時、サイドウォール13はレジスト剥離液に晒され、腐食環境に置かれるが、本実施形態のシリコン窒化膜から成るサイドウォール13はWRが上述の如く極めて低いので、レジスト剥離の際に高いエッチング耐性を発揮する。
【0046】
さらに、このシリコン窒化膜を半導体素子に適用した場合、一定の炭素原子の存在によって非晶質化が促進され、優れたドーパントイオンの拡散防止効果が奏される。よって、イオン拡散に起因する素子性能の劣化を十分に抑えることができ、良好なデバイス特性を有し、且つ信頼性に優れた長寿命のトランジスタ11を得ることができる。
【0047】
またさらに、サイドウォール13中の炭素原子濃度が増大すると、それに伴い拡散防止性が向上する傾向にある。すなわち、炭素原子の濃度を増加させるとドーパントイオンの侵入を阻害する効果が更に向上する。
【0048】
これに対し、高い結晶性を有する純粋なSi3N4膜、又はそれに近い化学量論的な組成を有するシリコン窒化膜は、その成膜過程において他の不純物、例えば炭素原子等を排除することが望まれていた。しかしながら、不可避不純物を全く含まず、且つ完全なストイキオメトリを有するSi3N4を形成させることは非常に困難であり、少量の不純物が含まれていると、例えば格子欠陥による不均質が生じて却って膜質が悪化してしまうことがあった。このため、ドーパントイオンの突き抜けが好ましくない程度に大きくなってしまい、十分な拡散防止性能が得られない傾向にあった。
【0049】
さらにまた、本発明のシリコン窒化膜は良好なパターンローディング特性及びステップカバレッジ特性を有しており、シリコン窒化膜中の炭素原子濃度の増加に伴い、これらの特性はそれに応じて向上する傾向にある。これは、LDD構造のサイドウォール13にとって非常に有益である。すなわち、LDD構造の製造においては、前述の如くシリコンウエハWの全面に設けたサイドウォール13の母体となる膜にRIEを施して膜を一定の厚さだけ除去してサイドウォール13を形成するので、膜厚の均一性は極めて重要である。
【0050】
なお、第1のガスは分子中に炭素原子を有する化合物であればよく、この炭素原子がシリコン窒化膜中に炭素原子を供給する。一方、第2のガスは分子中に窒素原子を有する化合物であればよく、これによりシリコン窒化膜中の炭素原子の濃度を調整する。
【0051】
さらに、第1のガスとしてBTBAS以外の炭素及び窒素含有シリコン有機アミノ系ガス、例えばTDMAS(テトラジメチルアミノシリコン)、TDEAS(テトラジエチルアミノシリコン)等を用いてもよい。また、炭素原子の供給源として、テトラメチルシラン、トリエチルジシランをSiH4/NH3に入れてもよい。これらのように複数のガスを組み合わせて用いてもよい。この場合、制御コンピュータCにより供給するガスの種類を選択し、且つ、そのガス流量を調整するようにしても構わない。
【0052】
【実施例】
以下、本発明のシリコン窒化膜に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
図1に示すCVD装置1と同様の構成を有するシリコン窒化膜の形成装置を使用し、原料ガスとしてBTBAS及びアンモニアガスを用い、上述した本発明のシリコン窒化膜の形成方法と同様にして、以下に示す種々の成膜条件下でシリコンベアウエハ上にシリコン窒化膜を形成した。なお、これらの条件が異なる成膜処理により得られた複数のシリコン窒化膜をまとめて実施例1とする。
(成膜条件)
・成膜温度:700℃
・チャンバ圧力:275Torr
・シャワーヘッド/ウエハ間距離(図1における距離D):550mils
・BTBAS流量:100sccm
・アンモニアガス流量:0,100,200,300,400,500sccm
・膜厚:300Å
【0054】
<実施例2>
シリコンベアウエハ上にポリシリコン及びオゾン−TEOSが積層されて成る疎密凹凸パターンを形成し、その凸部の膜厚を約270nm、凹部間隔を170nmとした。このパターン上に、膜厚を約100Å(目標値)としたこと以外は実施例1と同様にして種々のシリコン窒化膜を形成した。
【0055】
<実施例3>
まず、自然酸化膜を有するシリコンベアウエハにBイオンを深さ約50Åまでインプラントした(エクステンション領域15に相当)。次いで、そのシリコンウエハ上にゲート絶縁膜14を模擬してシリコン酸化膜を約150Å厚で成膜した後、その上にサイドウォール13を模擬したシリコン窒化膜を実施例1と同様にして堆積させた。さらに、その上に約500Å厚のシリコン酸化膜を成膜した後、ウエハ全体を約1000℃で数秒間アニールした。こうして、本発明のシリコン窒化膜をサイドウォール13に適用した場合のテストストラクチャを得た。
【0056】
<比較例1>
原料ガスとしてアンモニアガス及びシランガスを用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にしてウエハ上にシリコン窒化膜を形成した。なお、各ガス流量は適宜調整した。
【0057】
<膜特性評価>
(原子含有割合の定量)
実施例1及び比較例1で得た各シリコン窒化膜に含まれる炭素原子、窒素原子、及びケイ素原子及び酸素原子の膜中含有割合(atom%)をESCA(XPS)により分析した。なお、後述する表1中、炭素原子、窒素原子、及びケイ素原子についてはそれら3元素の総和を100%とし、酸素原子については、それらに酸素原子を加えた4元素の総和を100%とする百分率を示した。
【0058】
(WR評価)
実施例1及び比較例1で得たシリコン窒化膜に対し、エッチャントとして5%HF溶液を用いてウエットエッチングを施した。エッチング前後の膜厚を断面SEM観察により測定し、両者の差厚とエッチング時間から各シリコン窒化膜のWR(Å/min)を算出し、さらに、代表的なシリコン酸化膜に対する各シリコン窒化膜のWR実測値の比率Rを算出した。
【0059】
(パターンローディング特性評価)
実施例2及び比較例1で得たシリコン窒化膜について断面SEM観察により、パターンの疎な部分、及び密な部分の膜厚を複数箇所で測定すると共に、それらの実測値から平均膜厚を算出した。さらに、疎密部の膜厚の差を平均膜厚で除し、膜厚変化率を求めた。なお、この数値が小さい程パターンローディング効果が少ないことを示し、理想的には0%となる。
【0060】
(ステップカバレッジ特性評価)
実施例2及び比較例1で得たシリコン窒化膜について、パターンが密な部分における凹部の底部膜厚及び凸部の頂部膜厚を実測し、前者を後者で除して膜厚比を算出した。この数値が100%に近い程、コンフォーマルな膜であることを示す。
【0061】
(シート抵抗値測定)
実施例3及び比較例1で得たテストストラクチャに対し、アニール後に上記シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の剥離処理を施し、そのウエハのシート抵抗を測定した。このシート抵抗は、サイドウォール13におけるドーパントイオンの拡散防止性を間接的に評価するためのものである。換言すれば、このシート抵抗の大小は、エクステンション領域15に含有されるドーパントイオン濃度の低高を示す指標の一つである。すなわち、シート抵抗が小さいということは、エクステンション領域15に含有されるドーパントイオンのサイドウォール13への拡散が抑制され、ドーパントイオンがエクステンション領域15内に維持されており、サイドウォール13による拡散防止性能が優れていることを示す。さらに、比較例1におけるシート抵抗の測定値を1としたときの、実施例3の各膜のシート抵抗値の比を算出した。
【0062】
これらの膜特性評価の結果を、条件の一部と併せて表1〜3に示す。なお、表中の「含有割合(atom%)」は測定誤差を含むため、合計は必ずしも100%とならない。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表1より、シリコン窒化膜の組成は、BTBASに対するアンモニアガスのガス流量の割合を制御することで、シリコン窒化膜中の炭素原子濃度が簡易に一定の値に調整されることが判明した。また、このような調整・制御により炭素原子濃度を所望の値に増加させ、WRを任意に減少させることが可能であることが確認された。さらに、表2より、それと同時にパターンローディング及びステップカバレッジを有意に向上できることが理解される。また、表3より、本発明のシリコン窒化膜のシート抵抗は、比較例1に比して確実に低減していることが確認された。
【0067】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によるシリコン窒化膜形成方法及び装置によれば、WRを充分に低減できると共に、イオン拡散を充分に抑制することが可能であり、しかもパターンローディングの発生を防止して膜厚の均一性を向上できるシリコン窒化膜を形成できる。また、そのようなシリコン窒化膜を備える本発明の半導体素子によれば、素子特性の更なる向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるシリコン窒化膜形成装置の好適な一実施形態を模式的に示す断面図(一部構成図)である。
【図2】本発明によるシリコン窒化膜を有する半導体素子の好適な一実施形態を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
1…CVD装置(シリコン窒化膜形成装置)、2…チャンバ、4…シャワーヘッド、5…サセプタ、30…ガス供給部、31…BTBAS供給源(第1のガス供給源)、32…アンモニアガス供給源(第2のガス供給源)、31a〜34a…MFC、51…ヒーター(基体加熱部)、70…排気系、W…シリコンウエハ(基体)、C…制御コンピュータ(第1及び第2の制御部)。
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン窒化膜、その形成方法及び装置、並びに半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスや液晶デバイスといった電子部品の製造分野では、シリコンの原料としてSiH2(NH(C4H9))2(ビス(t−ブチルアミノ)シラン:BTBAS)、及び窒素の原料としてNH3を反応ガスとする熱CVD法により、加熱炉内に収容した基板上にシリコン窒化膜(SixNy)を成膜する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−230248公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、シリコン窒化膜は絶縁膜であって、エッチストッパ、エッチングマスク、種々の保護膜、例えば、C−MOSのLDD構造を形成する際のゲート電極の側壁に設けられる、いわゆるサイドウォールとして半導体装置及びその製造に広く用いられている。
【0005】
(1)近年、半導体素子の微細化・多層化の要求に伴って、C−MOS構造ひいてはゲート寸法・形状の制約がますます大きくなっている。この為、LDD構造が形成される領域寸法もこれまでより更に縮小される傾向にある。こうなると、例えば、ショートチャネル効果による漏れ電流の発生や、閾値電圧(Vth)変動の不都合な増大を抑制することが一層肝要となる。これを達成するには、サイドウォールの形状維持、及び形状制御を確実且つ充分に行うべく、サイドウォールのエッチング耐性、イオン衝撃耐性といった諸特性を更に向上させる必要がある。
【0006】
かかる状況下、本発明者が従来方法で得たシリコン窒化膜の膜特性について詳細に検討したところ、そのウエットエッチレート(以下、「WR」という)が場合によっては数百Å/minに達することが確認された。また、本発明者のさらなる知見によれば、このようなWRを発現する膜は、次世代のMOSトランジスタに採用されるべきLDDサイドウォールに用いるには不適当であると考えられる。
【0007】
(2)また、例えばLDD構造のサイドウォールでは、イオン(例えばBイオン)注入で形成した所定濃度領域のドーパントイオン濃度の変動を防止すべく、ドーパントイオンの拡散を充分に抑制することが要求される。これに関し、従来方法で得たシリコン窒化膜を用いてテストストラクチャを形成し、ドーパントイオンの拡散現象をシート抵抗の実測から間接的に評価した結果、かかる従来のシリコン窒化膜の拡散防止性は必ずしも充分なものとは言えなかった。
【0008】
(3)さらに、パターンの疎密及び凹凸に応じて、そのパターン上に形成される膜厚が変動する現象(パターンローディング、成膜速度のマイクロローディング)の発生を抑制し、良好なパターンローディング特性及びステップカバレッジ特性を発現させることも同時に熱望される。
【0009】
これに対し、従来方法で得たシリコン窒化膜では、そのようなローディング効果、すなわちパターンの疎密によって、パターンが密な部分で膜厚が過度に薄くなる傾向にあることが確認された。さらに、ステップカバレッジも不充分であり、凸部の膜厚が凹部の膜厚に比して過度に厚くなることが判明した。従って、シリコン窒化膜を一定の所望膜厚で均一に成膜することが極めて困難な場合があった。
【0010】
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、WRを充分に低減できると共に、イオン拡散を充分に抑制することが可能であり、しかもパターンローディングの発生を防止して膜厚の均一性を向上できるシリコン窒化膜、その形成方法及び装置、並びに半導体素子を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明によるシリコン窒化膜は、CVD法によって基体上に形成されるものであって、当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が一定の値となるように、分子中に炭素原子を含む化合物から成る第1のガスと、分子中に窒素原子を含む化合物から成る第2のガスとが、所定の温度に加熱された基体上に供給されて形成されたものであることを特徴とする。
【0012】
本発明者の研究によれば、シリコン窒化膜中の炭素原子量とWRとが極めて密接な関係を有することが判明した。具体的には、膜中の炭素原子の割合が増加するほどWRが小さくなるという傾向が認められた。その詳細な機構は、未だ充分に解明されていないものの、炭素原子とケイ素原子との共有結合性が窒素原子とケイ素原子との共有結合性よりも強いことに起因し、このような強結合スポットがSi−Nのネットワーク中に適度に分散された状態が生起されることが要因の一つと考えられる。但し、作用はこれに限定されない。
【0013】
よって、膜中の炭素原子の含有割合(濃度)が所望の一定値に調整された本発明のシリコン窒化膜は、従来のシリコン窒化膜のWRより低いWRを発現し得る。従って、エッチストッパ、エッチング用のマスク、種々の保護膜(パッシベーション膜)、例えばLDD構造を有するトランジスタのサイドウォールとして好適である。さらに、適宜設定されたCVD法における成膜条件(プロセスパラメータ)で形成された本発明のシリコン窒化膜は、炭素原子の含有割合が適宜調整され得るため、そのWRが任意且つ所望の値に調整される。従って、プロセス適合性及び汎用性が高められ、上述した種々の用途に最適な膜となり得る。
【0014】
また、例えばLDD構造のサイドウォール等、P型又はN型領域上に設けられる膜又は層としてこのシリコン窒化膜を用いた場合、ドーパントイオンのシリコン窒化膜中への拡散が抑制されることが判明した。これにより、サイドウォールの拡散防止性が向上される。
【0015】
かかる作用の詳細な機構も未だ厳密に解明されていないものの、本発明者は、シリコン窒化膜中に炭素原子が一定の含有割合で存在することにより、膜構造がアモルファス化されることが要因の一つと推定している。つまり、従来方法によって得られる比較的結晶性が高いと考えられるSi3N4膜又はその組成比に近いストイキオメトリを有する膜に比して、イオンの熱拡散による移動/流動が阻害され、そのような拡散を有効に抑止される観点において、膜の‘均質性’が高められることによると考えられる。
【0016】
また、LDD構造を形成した後の状態を得て詳細に評価したところ、シリコン窒化膜から成るサイドウォール下のエクステンション領域(浅い接合)において、有意量の炭素の存在が認められた。これは、サイドウォールの成膜時、或いはその後の処理が行われた時に、そのシリコン窒化膜の原料ガス(BTBAS等)に由来する炭素が、拡散等により基板側に移動したものと推定される。但し、作用はこれらに限定されない。このため、LDD構造を例にとると、サイドウォールの下方に形成されたエクステンション領域のドーパントイオン濃度が高濃度に維持される(リテンション効果)。
【0017】
さらに、このように炭素原子量が制御されたシリコン窒化膜は、パターンローディング(成膜速度のマイクロローディング)効果が抑制され、コンフォーマルすなわち等方的でステップカバレッジに優れることも判明した。これは、炭素原子が一定量存在することで上述の如く共有結合性が高められることにより、膜全体としての安定性が増大すると共に、ニュークリエーションによる結晶成長が緩和され、その結果、膜の異方性成長が抑制されることが要因の一つと考えられる。但し、作用はこれに限定されない。
【0018】
具体的には、膜中の炭素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、及び炭素原子の総和の2〜25atom%であると好ましく、3〜12atom%であるとより好ましく、5〜8atom%であると特に好ましい。この割合が2atom%未満であると、炭素原子の存在によってもたらされる上述した各効果のうちローディング特性は担保されるものの他の効果が十分に奏されない傾向にある。一方、この割合が25atom%を超えると、炭素原子間のネットワークにより導電経路が形成され易くなり、絶縁性能が不都合な程に悪化するおそれがある。
【0019】
さらに、膜中の酸素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子、及び酸素原子の総和の1atom%以下であると好適であり、この割合が1atom%を超えるとドーパントイオンの突き抜けが顕著となることがあり、ドーパントイオンの拡散を抑制し難くなる。これは、膜中にSi−O結合が過度に含まれる場合、シリコン酸化膜とのアナロジーから想定するに、ドーパントイオンの移動度が不都合に増大することに起因すると考えられる。但し、作用はこれに限定されない。なお、酸素原子は通常、膜中に不可避的に含まれるものである。
【0020】
また、本発明の炭素原子を含むシリコン窒化膜は、以下に示す組成で規定されてもよい。すなわち、ケイ素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、及び炭素原子の総和に対して、40〜60atom%、好ましくは45〜55atom%、より好ましくは48〜52atom%であり、炭素原子の含有割合が上述の通り2〜25atom%、より好ましくは3〜12atom%、特に好ましくは5〜8atom%でありであり、残部が窒素原子の含有割合とされる。さらに、この場合においても、シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子、及び酸素原子の総和の、1atom%以下であることが望ましい。
【0021】
また、本発明によるシリコン窒化膜の形成方法は、本発明によるシリコン窒化膜を有効に形成するためのものであり、CVD法によってチャンバ内の基体上にシリコン窒化膜を形成する方法であって、(a)チャンバ内の圧力を調整する圧力調整工程と、(b)基体上に、分子中に炭素原子を含む化合物から成る第1のガスと、分子中に窒素原子を含む化合物から成る第2のガスとを供給するガス供給工程と、(c)基体を所定の温度に加熱する基体加熱工程と、(d)当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が一定の値となるように、圧力、第1のガスの供給量、第2のガスの供給量、第1のガスと第2のガスとの供給量の比、第1のガスの種類、第2のガスの種類、及び基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第1の制御工程とを備えることを特徴とする。
【0022】
このように構成されたシリコン窒化膜の形成方法においては、圧力調整工程でチャンバ内の圧力が調整され、ガス供給工程で第1のガス及び第2のガスが基体上に供給され、基体加熱工程で基体が所定温度に加熱されると、基体の略直上で両ガスの気相反応が生じる。こうして、一定の含有割合で炭素原子を含むシリコン窒化膜が形成される。また、第1の制御工程において、上記プロセスパラメータを調整することにより、膜中の炭素原子量が任意且つ所望の値となるような成膜が実現される。具体的には、第1の制御工程においては、炭素原子の含有割合が、当該シリコン窒化膜中に含まれるケイ素原子、窒素原子、及び炭素原子の総和の2〜25atom%となるように、少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する。
【0023】
さらに、当該シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が一定の値となるように、圧力、第1のガスの供給量、第2のガスの供給量、第1のガスと第2のガスとの供給量の比、第1のガスの種類、第2のガスの種類、及び基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第2の制御工程を備えてもよい。この場合、第2の制御工程においては、当該シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子、及び酸素原子の総和の1atom%以下となるように少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する。
【0024】
また、本発明によるシリコン窒化膜形成装置は、本発明によるシリコン窒化膜の形成方法を有効に実施するためのものであり、CVD法によって基体上にシリコン窒化膜が形成されるものであって、(1)基体が収容されるチャンバと、(2)チャンバに接続されており、分子中に炭素原子を含む化合物から成る第1のガス供給源と、(3)分子中に窒素原子を含む化合物から成る第2のガス供給源とを有するガス供給部と、(4)基体を所定の温度に加熱する基体加熱部と、(5)当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が一定の値となるように、圧力、第1のガスの供給量、第2のガスの供給量、第1のガスと第2のガスとの供給量の比、該第1のガスの種類、該第2のガスの種類、及び基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第1の制御部とを備えることを特徴とする。
【0025】
さらに、当該シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が一定の値となるように、圧力、第1のガスの供給量、第2のガスの供給量、第1のガスと第2のガスとの供給量の比、第1のガスの種類、第2のガスの種類、及び基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第2の制御部を備えることが望ましい。
【0026】
また、本発明による半導体素子は、基体上に、本発明のシリコン窒化膜が形成されて成ることを特徴とする。特に、基体が、LDD構造を含むトランジスタのゲート電極を有しており、シリコン窒化膜がゲート電極の側壁に被着されたサイドウォールを構成するものであると好ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、同一要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。
【0028】
図1は、本発明によるシリコン窒化膜形成装置の好適な一実施形態を模式的に示す断面図(一部構成図)である。シリコン窒化膜形成装置としてのCVD装置1は、シリコンウエハW(基体)が収容されるチャンバ2にガス供給部30が接続されたものである。チャンバ2は、シリコンウエハWが載置されるサセプタ5を有しており、このサセプタ5の上方には、中空の円盤状をなすシャワーヘッド4が設けられている。
【0029】
また、サセプタ5は、Oリング、メタルシール等により、チャンバ2に気密に設けられると共に、図示しない可動機構により上下駆動可能に設けられている。この可動機構により、シリコンウエハWとシャワーヘッド4との間隔Dが調整されるようになっている。さらに、サセプタ5にはヒーター51(基体加熱部)が内設されており、これによりシリコンウエハWが所望の所定温度に加熱される。
【0030】
一方、シャワーヘッド4は、略円筒状をなし且つガス供給口9が設けられたベースプレートを上壁とする胴部41の下端部に、複数の貫通孔45aが穿設された多孔板状のフェイスプレート45が結合されたものである。また、シャワーヘッド4の内部には、フェイスプレート45と略平行に、複数の貫通孔43aが穿設された多孔板状のブロッカープレート43が設置されている。そして、胴部41とブロッカープレート43によって空間部Saが画成されており、胴部41とフェイスプレート45によって空間部Sbが画成されている。
【0031】
さらに、チャンバ2の下部には、開口部7が設けられている。この開口部7には、チャンバ2の内部を減圧するための真空ポンプ(図示せず)を有する排気系70が接続されており、チャンバ2内の圧力を所定圧力に調整している。
【0032】
また、図示を省略したが、シリコンウエハWの表面側のチャンバ2内空間と裏面側のチャンバ2内空間とは、互いにガス封止されるようになっている。すなわち、表面側には上記ガス供給部30からシャワーヘッド4を通して後述する原料ガス等が供給され、裏面側には図示しないバックサイドパージ系からパージガスが供給されるようにされており、両ガスが互いに反対面側の領域へ混入しないようになっている。
【0033】
また、ガス供給部30は、BTBAS供給源31(第1のガス供給源)、アンモニアガス供給源32(第2のガス供給源)、キャリアガス又は希釈ガス供給源33、34を有している。これらの各ガス供給源31〜34は、各ガスのガス流量(供給量)を制御するMFC(質量流量コントローラ)31a〜34aが設けられた配管10を介して、シャワーヘッド4のガス供給口9に接続されている。これらにより、BTBAS(第1のガス)、アンモニアガス(第2のガス)、及びキャリアガス又は希釈ガスがシャワーヘッド4内に導入され、ブロッカープレート43及びフェイスプレート45を介してチャンバ2内に供給される。
【0034】
さらに、ヒーター51、排気系70、及びMFC31a〜34aには、これらを制御する制御コンピュータC(第1の制御部及び第2の制御部)が接続されている。制御コンピュータCは、形成されるシリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合(濃度)が一定の値となるように、成膜時のプロセスパラメータを調整するための演算制御装置である。ここで、プロセスパラメータとは、チャンバ2内の圧力、ガス供給部30からチャンバ2に供給される原料ガスの種類(本実施形態では、BTBASとアンモニアガスに固定;以下この場合について例示する)、BTBASの供給量、アンモニアガスの供給量、それらの流量比(供給量の比)、及びシリコンウエハWの温度のうち少なくとも一つが挙げられる。これらの調整方法として具体的には、ヒーター51の出力を制御することでシリコンウエハWの温度を調整し、排気系70の運転制御によりチャンバ2内の圧力を調整し、MFC31a,32aの開度を制御することでそれぞれBTBAS及びアンモニアガスの供給量又は流量比を調整する。また、MCP33a,34aの開度制御によりそれぞれBTBAS及びアンモニアガスの供給濃度を調節することができる。
【0035】
このように構成されたCVD装置1を用いた本発明によるシリコン窒化膜の形成方法の一例について説明する。なお、CVD装置1の以下に述べる各動作は、自動又は操作者による操作に基づく。
【0036】
まず、チャンバ2内を真空ポンプにより減圧する。この減圧下において、シリコンウエハWを、ロードロックチャンバ、他のチャンバ、他のウエハ準備室等の所定場所からチャンバ2内へと搬送し、サセプタ5上に載置して収容する。次に、キャリアガス及び/又は希釈ガスをガス供給源33,34から配管10を通してチャンバ2内へ供給すると共に、チャンバ2内が所定の圧力、例えば、275Torr(36.7kPa)となるように制御コンピュータCにより排気系70の運転を制御する(圧力調整工程)。
【0037】
チャンバ2内の圧力が所定値で安定した後、成膜用の原料ガスとしてBTBAS及びアンモニアガスをそれぞれの供給源31,32から配管10を通してシャワーヘッド4へ供給する(ガス供給工程)。このとき、チャンバ2内の圧力及びBTBASとアンモニアガスのそれぞれのガス流量は、制御コンピュータCにおいて調節・制御され、一定の圧力及びガス流量に維持される(第1の制御工程及び第2の制御工程)。
【0038】
ここで、BTBASとアンモニアガスとの流量比は、特に制限されず、BTBAS:アンモニアガスが好ましくは1:0〜1:10、より好ましくは1:0〜1:1、特に好ましくは1:0.25〜1:1とされる。なお、この比の値が1:0とはアンモニアガスを用いずにBTBASのみを使用することを示す。この場合、BTBASが第1のガスと第2のガスを兼ねる。
【0039】
このようにガス供給口9から空間部Saに導入されたBTBAS及びアンモニアガスは、ブロッカープレート43により分散されて十分に混合され、複数の貫通孔43aを通して空間部6bへ流出する。こうにして空間部Sbへ導入されたアンモニアガス及びBTBASの混合ガスは、フェイスプレート45の貫通孔45aを通してシャワーヘッド4の下方に流出し、シリコンウエハW上に供給される。
【0040】
一方、BTBAS及びアンモニアガスをチャンバ2内に供給すると共に、ヒーター51に電力を供給してサセプタ5を介してシリコンウエハWを加熱する(基体加熱工程)。この際、制御コンピュータCによりシリコンウエハWが所定温度となるように電力出力を調整する(第1の制御工程及び第2の制御工程)。サセプタ温度は600〜700℃が好ましく、本実施形態では例えば650℃とする。この場合、シリコンウエハWは約640℃に加熱される。これにより、シリコンウエハW上に達したBTBASとアンモニアガスとを反応させることでシリコンウエハW上にシリコン窒化物を堆積せしめる。成膜速度に応じて所望膜厚の炭素含有シリコン窒化膜(SixNyCx、SixNyCzOw、又はSixNy:C,O,H等と表記できる)が形成された後、BTBAS及びアンモニアガスの供給を停止する。さらに、必要に応じて、チャンバ2内に残留するBTBAS及びアンモニアガスをパージした後、シリコンウエハWをチャンバ2の外部に搬出する。
【0041】
図2は、本発明によるシリコン窒化膜を有する半導体素子の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。半導体素子としてのトランジスタ11はLDD構造を有するものであり、シリコンウエハWの表面にゲート絶縁膜14を介して形成されたゲート電極12を有している。ゲート電極12の側壁には、本発明によるシリコン窒化膜から成るサイドウォール13が被着されている。ゲート電極12及びサイドウォール13はゲート絶縁膜14を土台として設置されており、サイドウォール13の下方にはゲート絶縁膜14を通してBイオンがドープされたエクステンション領域15(浅い接合)が形成されている。さらに、エクステンション領域15の外側に隣接してBイオンがドープされたコンタクト領域16(やや深い接合)が形成されている。
【0042】
このサイドウォール13を形成するには、まずゲート電極12及びエクステンション領域15が設けられたシリコンウエハWに上述のCVD装置1及び方法を用いてシリコン窒化膜を成膜する。さらに、そのシリコンウエハWの表面全体に反応性イオンエッチング(RIE)を施してゲート電極12の側壁にだけシリコン窒化膜を残す。これによりサイドウォール13が形成される。その後、サイドウォール13をマスクとしてBイオン注入を施し、エクステンション領域15の外側にコンタクト領域16を形成してLDD構造を有するトランジスタ11が得られる。
【0043】
このようなCVD装置1及びそれを用いた成膜方法によれば、以下の優れた特性を発現するシリコン窒化膜及びそれから成るサイドウォール13を得ることが可能となる。
【0044】
すなわち、本発明のシリコン窒化膜は一定の含有割合、詳しくは先述した好適範囲で炭素原子を含むので、膜の共有結合性が高められ、従来のシリコン窒化膜に比して低いWRを達成できる。また、炭素原子濃度を増加させると、そのWRは更に低下する傾向がある。よって、プロセスパラメータを調整して成膜条件を制御することで所望の炭素原子濃度を有し、ひいては所望のWRを達成できるシリコン窒化膜を得ることが可能である。
【0045】
また、このような低WR化が達成されるので、本発明のシリコン窒化膜は、トランジスタ11のサイドウォール13として非常に有用である。LDD構造のトランジスタ11は、通常、他の種類の半導体デバイスと共にシリコンウエハW上に形成される。LDD構造におけるコンタクト領域16をイオン注入によって形成するときには、一般に、他の種類の半導体デバイスを保護するためにレジストが設けられる。このレジストは、コンタクト領域16を形成した後、通常、薬液を用いて剥離除去される。この時、サイドウォール13はレジスト剥離液に晒され、腐食環境に置かれるが、本実施形態のシリコン窒化膜から成るサイドウォール13はWRが上述の如く極めて低いので、レジスト剥離の際に高いエッチング耐性を発揮する。
【0046】
さらに、このシリコン窒化膜を半導体素子に適用した場合、一定の炭素原子の存在によって非晶質化が促進され、優れたドーパントイオンの拡散防止効果が奏される。よって、イオン拡散に起因する素子性能の劣化を十分に抑えることができ、良好なデバイス特性を有し、且つ信頼性に優れた長寿命のトランジスタ11を得ることができる。
【0047】
またさらに、サイドウォール13中の炭素原子濃度が増大すると、それに伴い拡散防止性が向上する傾向にある。すなわち、炭素原子の濃度を増加させるとドーパントイオンの侵入を阻害する効果が更に向上する。
【0048】
これに対し、高い結晶性を有する純粋なSi3N4膜、又はそれに近い化学量論的な組成を有するシリコン窒化膜は、その成膜過程において他の不純物、例えば炭素原子等を排除することが望まれていた。しかしながら、不可避不純物を全く含まず、且つ完全なストイキオメトリを有するSi3N4を形成させることは非常に困難であり、少量の不純物が含まれていると、例えば格子欠陥による不均質が生じて却って膜質が悪化してしまうことがあった。このため、ドーパントイオンの突き抜けが好ましくない程度に大きくなってしまい、十分な拡散防止性能が得られない傾向にあった。
【0049】
さらにまた、本発明のシリコン窒化膜は良好なパターンローディング特性及びステップカバレッジ特性を有しており、シリコン窒化膜中の炭素原子濃度の増加に伴い、これらの特性はそれに応じて向上する傾向にある。これは、LDD構造のサイドウォール13にとって非常に有益である。すなわち、LDD構造の製造においては、前述の如くシリコンウエハWの全面に設けたサイドウォール13の母体となる膜にRIEを施して膜を一定の厚さだけ除去してサイドウォール13を形成するので、膜厚の均一性は極めて重要である。
【0050】
なお、第1のガスは分子中に炭素原子を有する化合物であればよく、この炭素原子がシリコン窒化膜中に炭素原子を供給する。一方、第2のガスは分子中に窒素原子を有する化合物であればよく、これによりシリコン窒化膜中の炭素原子の濃度を調整する。
【0051】
さらに、第1のガスとしてBTBAS以外の炭素及び窒素含有シリコン有機アミノ系ガス、例えばTDMAS(テトラジメチルアミノシリコン)、TDEAS(テトラジエチルアミノシリコン)等を用いてもよい。また、炭素原子の供給源として、テトラメチルシラン、トリエチルジシランをSiH4/NH3に入れてもよい。これらのように複数のガスを組み合わせて用いてもよい。この場合、制御コンピュータCにより供給するガスの種類を選択し、且つ、そのガス流量を調整するようにしても構わない。
【0052】
【実施例】
以下、本発明のシリコン窒化膜に係る具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
<実施例1>
図1に示すCVD装置1と同様の構成を有するシリコン窒化膜の形成装置を使用し、原料ガスとしてBTBAS及びアンモニアガスを用い、上述した本発明のシリコン窒化膜の形成方法と同様にして、以下に示す種々の成膜条件下でシリコンベアウエハ上にシリコン窒化膜を形成した。なお、これらの条件が異なる成膜処理により得られた複数のシリコン窒化膜をまとめて実施例1とする。
(成膜条件)
・成膜温度:700℃
・チャンバ圧力:275Torr
・シャワーヘッド/ウエハ間距離(図1における距離D):550mils
・BTBAS流量:100sccm
・アンモニアガス流量:0,100,200,300,400,500sccm
・膜厚:300Å
【0054】
<実施例2>
シリコンベアウエハ上にポリシリコン及びオゾン−TEOSが積層されて成る疎密凹凸パターンを形成し、その凸部の膜厚を約270nm、凹部間隔を170nmとした。このパターン上に、膜厚を約100Å(目標値)としたこと以外は実施例1と同様にして種々のシリコン窒化膜を形成した。
【0055】
<実施例3>
まず、自然酸化膜を有するシリコンベアウエハにBイオンを深さ約50Åまでインプラントした(エクステンション領域15に相当)。次いで、そのシリコンウエハ上にゲート絶縁膜14を模擬してシリコン酸化膜を約150Å厚で成膜した後、その上にサイドウォール13を模擬したシリコン窒化膜を実施例1と同様にして堆積させた。さらに、その上に約500Å厚のシリコン酸化膜を成膜した後、ウエハ全体を約1000℃で数秒間アニールした。こうして、本発明のシリコン窒化膜をサイドウォール13に適用した場合のテストストラクチャを得た。
【0056】
<比較例1>
原料ガスとしてアンモニアガス及びシランガスを用いたこと以外は、実施例1〜3と同様にしてウエハ上にシリコン窒化膜を形成した。なお、各ガス流量は適宜調整した。
【0057】
<膜特性評価>
(原子含有割合の定量)
実施例1及び比較例1で得た各シリコン窒化膜に含まれる炭素原子、窒素原子、及びケイ素原子及び酸素原子の膜中含有割合(atom%)をESCA(XPS)により分析した。なお、後述する表1中、炭素原子、窒素原子、及びケイ素原子についてはそれら3元素の総和を100%とし、酸素原子については、それらに酸素原子を加えた4元素の総和を100%とする百分率を示した。
【0058】
(WR評価)
実施例1及び比較例1で得たシリコン窒化膜に対し、エッチャントとして5%HF溶液を用いてウエットエッチングを施した。エッチング前後の膜厚を断面SEM観察により測定し、両者の差厚とエッチング時間から各シリコン窒化膜のWR(Å/min)を算出し、さらに、代表的なシリコン酸化膜に対する各シリコン窒化膜のWR実測値の比率Rを算出した。
【0059】
(パターンローディング特性評価)
実施例2及び比較例1で得たシリコン窒化膜について断面SEM観察により、パターンの疎な部分、及び密な部分の膜厚を複数箇所で測定すると共に、それらの実測値から平均膜厚を算出した。さらに、疎密部の膜厚の差を平均膜厚で除し、膜厚変化率を求めた。なお、この数値が小さい程パターンローディング効果が少ないことを示し、理想的には0%となる。
【0060】
(ステップカバレッジ特性評価)
実施例2及び比較例1で得たシリコン窒化膜について、パターンが密な部分における凹部の底部膜厚及び凸部の頂部膜厚を実測し、前者を後者で除して膜厚比を算出した。この数値が100%に近い程、コンフォーマルな膜であることを示す。
【0061】
(シート抵抗値測定)
実施例3及び比較例1で得たテストストラクチャに対し、アニール後に上記シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の剥離処理を施し、そのウエハのシート抵抗を測定した。このシート抵抗は、サイドウォール13におけるドーパントイオンの拡散防止性を間接的に評価するためのものである。換言すれば、このシート抵抗の大小は、エクステンション領域15に含有されるドーパントイオン濃度の低高を示す指標の一つである。すなわち、シート抵抗が小さいということは、エクステンション領域15に含有されるドーパントイオンのサイドウォール13への拡散が抑制され、ドーパントイオンがエクステンション領域15内に維持されており、サイドウォール13による拡散防止性能が優れていることを示す。さらに、比較例1におけるシート抵抗の測定値を1としたときの、実施例3の各膜のシート抵抗値の比を算出した。
【0062】
これらの膜特性評価の結果を、条件の一部と併せて表1〜3に示す。なお、表中の「含有割合(atom%)」は測定誤差を含むため、合計は必ずしも100%とならない。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
表1より、シリコン窒化膜の組成は、BTBASに対するアンモニアガスのガス流量の割合を制御することで、シリコン窒化膜中の炭素原子濃度が簡易に一定の値に調整されることが判明した。また、このような調整・制御により炭素原子濃度を所望の値に増加させ、WRを任意に減少させることが可能であることが確認された。さらに、表2より、それと同時にパターンローディング及びステップカバレッジを有意に向上できることが理解される。また、表3より、本発明のシリコン窒化膜のシート抵抗は、比較例1に比して確実に低減していることが確認された。
【0067】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によるシリコン窒化膜形成方法及び装置によれば、WRを充分に低減できると共に、イオン拡散を充分に抑制することが可能であり、しかもパターンローディングの発生を防止して膜厚の均一性を向上できるシリコン窒化膜を形成できる。また、そのようなシリコン窒化膜を備える本発明の半導体素子によれば、素子特性の更なる向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるシリコン窒化膜形成装置の好適な一実施形態を模式的に示す断面図(一部構成図)である。
【図2】本発明によるシリコン窒化膜を有する半導体素子の好適な一実施形態を模式的に示した断面図である。
【符号の説明】
1…CVD装置(シリコン窒化膜形成装置)、2…チャンバ、4…シャワーヘッド、5…サセプタ、30…ガス供給部、31…BTBAS供給源(第1のガス供給源)、32…アンモニアガス供給源(第2のガス供給源)、31a〜34a…MFC、51…ヒーター(基体加熱部)、70…排気系、W…シリコンウエハ(基体)、C…制御コンピュータ(第1及び第2の制御部)。
Claims (11)
- CVD法によって基体上に形成されるシリコン窒化膜であって、
当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が一定の値となるように、分子中に炭素原子を含む化合物から成る第1のガスと、分子中に窒素原子を含む化合物から成る第2のガスとが、所定の温度に加熱された前記基体上に供給されて形成されたシリコン窒化膜。 - 前記炭素原子の含有割合が、当該シリコン窒化膜中に含まれるケイ素原子、窒素原子、及び炭素原子の総和の2〜25atom%である、
ことを特徴とする請求項1に記載のシリコン窒化膜。 - 当該シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子、及び酸素原子の総和の1atom%以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコン窒化膜。 - CVD法によって基体上に形成されるシリコン窒化膜であって、
当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、及び炭素原子の総和の2〜25atom%であり、
当該シリコン窒化膜中のケイ素原子の含有割合が、前記総和の40〜60atom%であるシリコン窒化膜。 - 当該シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が、ケイ素原子、窒素原子、炭素原子、及び酸素原子の総和の1atom%以下である、
ことを特徴とする請求項4に記載のシリコン窒化膜。 - CVD法によってチャンバ内の基体上にシリコン窒化膜を形成する方法であって、
前記チャンバ内の圧力を調整する圧力調整工程と、
前記基体上に、分子中に炭素原子を含む化合物から成る第1のガスと、分子中に窒素原子を含む化合物から成る第2のガスとを供給するガス供給工程と、
前記基体を所定の温度に加熱する基体加熱工程と、
当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が一定の値となるように、前記圧力、前記第1のガスの供給量、前記第2のガスの供給量、該第1のガスと該第2のガスとの供給量の比、該第1のガスの種類、該第2のガスの種類、及び前記基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第1の制御工程と、
を備えるシリコン窒化膜の形成方法。 - 前記第1の制御工程においては、前記炭素原子の含有割合が、当該シリコン窒化膜中に含まれるケイ素原子、窒素原子、及び炭素原子の総和の2〜25atom%となるように、前記少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する、
ことを特徴とする請求項6に記載のシリコン窒化膜の形成方法。 - CVD法によって基体上にシリコン窒化膜が形成されるシリコン窒化膜形成装置であって、
前記基体が収容されるチャンバと、
前記チャンバに接続されており、分子中に炭素原子を含む化合物から成る第1のガス供給源と、分子中に窒素原子を含む化合物から成る第2のガス供給源とを有するガス供給部と、
前記基体を所定の温度に加熱する基体加熱部と、
当該シリコン窒化膜中の炭素原子の含有割合が一定の値となるように、前記圧力、前記第1のガスの供給量、前記第2のガスの供給量、該第1のガスと該第2のガスとの供給量の比、該第1のガスの種類、該第2のガスの種類、及び前記基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第1の制御部と、
を備えるシリコン窒化膜形成装置。 - 当該シリコン窒化膜中の酸素原子の含有割合が一定の値となるように、前記圧力、前記第1のガスの供給量、前記第2のガスの供給量、該第1のガスと該第2のガスとの供給量の比、該第1のガスの種類、該第2のガスの種類、及び前記基体の加熱温度のうち少なくとも一つのプロセスパラメータを調整する第2の制御部を備える、
ことを特徴とする請求項8に記載のシリコン窒化膜形成装置。 - 基体上に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシリコン窒化膜が形成されて成る半導体素子。
- 前記基体が、LDD構造を含むトランジスタのゲート電極を有しており、
前記シリコン窒化膜が前記ゲート電極の側壁に被着されたサイドウォールを構成するものである、
ことを特徴とする請求項10に記載の半導体素子。
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JP2006203202A (ja) * | 2005-01-18 | 2006-08-03 | Samsung Electronics Co Ltd | 不純物が除去されたシリコン窒化膜を備える半導体素子の製造方法 |
JP2008124211A (ja) * | 2006-11-10 | 2008-05-29 | Fujitsu Ltd | 半導体装置の製造方法 |
-
2003
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Cited By (3)
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