JP2004266077A - Cvdチャンバーのクリーニング方法およびそれに用いるクリーニングガス - Google Patents

Cvdチャンバーのクリーニング方法およびそれに用いるクリーニングガス Download PDF

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Abstract

【解決手段】CVD装置によって基板に成膜処理を行った後、
NOまたはFNOを含むクリーニングガスをリモートプラズマ発生装置によってプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成し、
該プラズマをCVDチャンバー内に導入し、
CVDチャンバー内壁表面上およびCVDチャンバー内に配置した部材表面上に付着したケイ素含有化合物を前記プラズマにより除去する。
【効果】従来、SiF除去性能に劣っていた、FNOまたはFNOを含有するクリーニングガスを用いても、迅速に、かつ排気経路内を閉塞させることなく、CVDチャンバー内をクリーニングすることができる
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、FNOまたはFNOを含有する、CVD(Chemical Vapor Deposition)チャンバー用クリーニングガスおよびそれを用いたCVDチャンバーのクリーニング方法に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
半導体製造等における薄膜デバイスの製造プロセスでは、SiOなどを製膜する方法としてCVD法が用いられている。この方法で基板などの目的物に薄膜を形成させる際、目的物以外のCVDチャンバー内壁、目的物を担持する治具、配管等にも薄膜原料が付着する。このような付着物は、半導体製品への微粒子の混入の原因となるため、クリーニングガスなどにより随時除去されている。
【0003】
このようなクリーニングガスに求められる基本性能は、クリーニング速度が速いことである。従来、このようなクリーニングガスとして、CF、C、SF、NFなどのパーフルオロ化合物が大量に用いられていた。これらのパーフルオロ化合物は非常に安定で、大気中での寿命が非常に長く、赤外線吸収率が高い。このため、これらのパーフルオロ化合物の地球温暖化係数の100年値は、COと比較して、CFが6500倍、Cが9200倍、SFが23900倍、NFが8000と非常に大きく、これらのガスが地球温暖化問題の原因の1つとされ、これらに代わるクリーニングガスの開発が求められていた。
【0004】
近年、これらの代替ガスとして、FNO、FNOなどのフッ素を含む窒素化合物が開発されている(特許文献1)。これらのフッ素を含む窒素化合物は、クリーニング性能に優れているだけでなく、それ自身が地球温暖化問題の原因となりにくく、かつクリーニング後に大気寿命が長く環境に有害なCF等のガスを発生しないという利点がある。
【0005】
NOまたはFNOを含有するクリーニングガスを図2に示すCVDチャンバー12に導入し、放電によりプラズマを発生させてCVDチャンバー12内のクリーニング(平行平板クリーニングともいう)を実施すると、十分なクリーニング速度は得られ、その速度はクリーニングガス濃度の増加とともに増大する。しかしながら、クリーニングにより生成するSiFがCVDチャンバー12外への排除される量(以下、SiF排除量という)は、クリーニングガス濃度が高濃度になると減少し、さらに排気経路16内で固体生成物が形成して排気経路16内に固体生成物が堆積するという問題があった。上記のような問題はクリーニングガスの流量が増大した場合にも生じていた。
【0006】
また、FNOまたはFNOを含有するクリーニングガスを、図1に示すリモートプラズマ発生装置30に供給してプラズマを発生させ、このプラズマをCVDチャンバー12に導入してCVDチャンバー12内のクリーニングを実施することもできる(特許文献2)。しかしながら、この方法においても十分なクリーニング速度は得られるが、クリーニングガス濃度が高濃度になるとSiF排除量は減少し、排気経路16内で固体生成物が形成して排気経路16内に固体生成物が堆積するという問題があった。
【0007】
すなわち、FNOまたはFNOを含有するクリーニングガスを用いて従来の方法でCVDチャンバーをクリーニングする場合に、クリーニング速度を高めるためにクリーニングガス濃度を増加させると、排気経路内の堆積物が増加するという問題があり、何度もCVD装置の使用と従来の方法でのクリーニングとを繰り返すと排気経路が閉塞する恐れがあった。
【0008】
【特許文献1】
国際公開番号WO0225713
【特許文献2】
特開2002−280376号公報
【0009】
【発明の目的】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、FNOまたはFNOを含有する、クリーニング性能およびSiF除去性能に優れたクリーニングガス、およびそれを用いるクリーニング方法を提供することを目的としている。
【0010】
【発明の概要】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究し、前記固体生成物がFNOとSiFとの反応により生成する(NO)SiFであって、CVDチャンバー内では気体であったものが、常温の配管内で析出することを見出した。また、前記FNOが、FNOをプラズマ化する過程で生成するFNO、またはFNOをプラズマ化する過程で残存した未プラズマ化のFNOに由来することを見出した。さらに、FNOが残存しない場合であっても、FNOやFNOがプラズマ化する過程で生成するNOが残存している場合には、このNOがすぐにFと結合してFNOを生成し(NO)SiFが形成されることを見出した。したがって、本発明者は、FNOまたはFNOを含有するクリーニングガスを予めプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成し、このプラズマをCVDチャンバーに導入することにより、(NO)SiFの生成を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る第一のCVDチャンバーのクリーニング方法は、
CVD装置によって基板に成膜処理を行った後、
NOを含むクリーニングガスをリモートプラズマ発生装置によってプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成し、
該プラズマをCVDチャンバー内に導入し、
CVDチャンバー内壁表面上およびCVDチャンバー内に配置した部材表面上に付着したケイ素含有化合物を前記プラズマにより除去する方法である。
【0012】
前記クリーニングガスは、FNOと不活性ガスとを含むことが好ましく、FNOを全ガス量に対して10〜70モル%の割合で含むことがより好ましい。
本発明に係る第二のCVDチャンバーのクリーニング方法は、
CVD装置によって基板に成膜処理を行った後、
FNOを含むクリーニングガスをリモートプラズマ発生装置によってプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成し、
該プラズマ化したクリーニングガスをCVDチャンバー内に導入し、
CVDチャンバー内壁表面上およびCVDチャンバー内に配置した部材表面上に付着したケイ素含有化合物を前記プラズマ化したクリーニングガスにより除去する方法である。
【0013】
前記クリーニングガスは、FNOと不活性ガスとを含むことが好ましく、FNOを全ガス量に対して10〜70モル%の割合で含むことがより好ましい。
本発明に係る第一および第二のCVDチャンバーのクリーニング方法において、前記不活性ガスは、N、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnからなる群から選択される少なくとも1種の不活性ガスであることが好ましい。
【0014】
前記ケイ素含有化合物は、
(1)ケイ素、
(2)酸素、窒素、フッ素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、ケイ素とからなる化合物、および
(3)高融点金属シリサイドからなる化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0015】
また、本発明に係る第一および第二のCVDチャンバーのクリーニング方法は前記クリーニングガスを100〜5000sccmの流量でリモートプラズマ発生装置に供給することが好ましい。
本発明に係る第一のクリーニングガスは、
CVD装置によって基板に成膜処理を行った後の、CVDチャンバー内壁表面上およびCVDチャンバー内に配置した部材表面上に付着したケイ素含有化合物を除去するためのクリーニングガスであって、
該クリーニングガスがFNOを含み、
該FNOをリモートプラズマ発生装置によってプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成した後、該プラズマをCVDチャンバー内に導入することを特徴としている。
【0016】
前記クリーニングガスは、FNOと不活性ガスとを含むことが好ましく、FNOが全ガス量に対して10〜70モル%の割合で含まれることがより好ましい。
本発明に係る第二のクリーニングガスは、
CVD装置によって基板に成膜処理を行った後の、CVDチャンバー内壁表面上およびCVDチャンバー内に配置した部材表面上に付着したケイ素含有化合物を除去するためのクリーニングガスであって、
該クリーニングガスがFNOを含み、
該FNOをリモートプラズマ発生装置によってプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成した後、該プラズマをCVDチャンバー内に導入することを特徴としている。
【0017】
前記クリーニングガスは、FNOと不活性ガスとを含むことが好ましく、前記FNOが全ガス量に対して10〜70モル%の割合で含まれることがより好ましい。
前記不活性ガスは、N、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnからなる群から選択される少なくとも1種の不活性ガスであることが好ましい。
【0018】
前記ケイ素含有化合物は、
(1)ケイ素、
(2)酸素、窒素、フッ素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、ケイ素とからなる化合物、および
(3)高融点金属シリサイドからなる化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0019】
【発明の具体的説明】
本発明に係るCVDチャンバーのクリーニング方法は、フッ素を含有する特定の窒素化合物を含むクリーニングガスをリモートプラズマ発生装置によって予めプラズマ化して実質的にFNO(フッ化ニトロシル)およびNO(一酸化窒素)を含有しないプラズマを形成して、このプラズマをCVDチャンバー内に導入することによって、迅速に、かつ排気経路内で固体生成物を形成、堆積させることなく、CVDチャンバー内をクリーニングすることができる方法である。また、本発明に係るクリーニングガスは、上記方法によりCVDチャンバーをクリーニングすることによって、優れたクリーニング性能を示すクリーニングガスである。
【0020】
以下、本発明に係るCVDチャンバーのクリーニング方法およびそれに用いるクリーニングガスについて詳細に説明する。
<FNOを含むクリーニングガスおよびそれを用いたクリーニング方法>
本発明に係る第一のCVDチャンバーのクリーニング方法に用いられるクリーニングガスは、FNO(三フッ化ニトロシル)を含有し、さらに不活性ガスを含むことが好ましい。また、必要に応じてOを含んでもよい。
【0021】
NOの製造方法は、特に限定されないが、たとえば、下記の2段階の反応により製造することができる。
NF + NO + 2SbF → NFSb11 + N
NFSb11 + 2NaF → FNO + 2NaSbF
本発明に用いられる不活性ガスとしては、N、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnが挙げられる。これらの不活性ガスは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本発明に係る第一のCVDチャンバーのクリーニング方法は、CVD装置によって基板に成膜処理を行った後、まず、FNOを含有する前記クリーニングガスをリモートプラズマ発生装置に導入してプラズマ化する。このとき、クリーニングガスを十分にプラズマ化して、FNOをプラズマ化する過程において生成するFNOおよびNOが、プラズマに実質的に含有しないことが必要である。もしFNOを含有するプラズマをCVDチャンバーに導入すると、このFNOが、後述するCVDチャンバーのクリーニング過程において生成するSiFと反応して、(NO)SiFを形成する。また、NOを含有するプラズマをCVDチャンバーに導入すると、このNOが、大量に存在するFと反応してFNOを形成し、上記と同様に(NO)SiFが生成する。この(NO)SiFは80℃で昇華するため、チャンバー内では気体であるが、常温の排気経路内で固体となり、排気経路内壁に堆積する。この堆積した(NO)SiFが排気経路の閉塞の原因となる恐れがある。
【0023】
本発明において、「実質的にFNOおよびNOを含有しない」とは、プラズマにFNOまたはNOが存在しないか、または存在するとしてもその濃度が、(NO)SiFを形成しない濃度、たとえば0.001モル%未満を意味する。
このような実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成させる条件は以下の範囲が好ましい。圧力は、好ましくは50〜1000Pa、より好ましくは100〜600Pa、特に好ましくは150〜400Paが望ましい。圧力が上記範囲にあると安定してプラズマを発生させることができる。
【0024】
クリーニングガス中のFNO量は、全ガス量に対して、好ましくは10〜70モル%、より好ましくは30〜60モル%、特に好ましくは40〜50モル%の割合であることが望ましい。FNO量が上記範囲にあると、平行平板クリーニング方法、すなわちCVDチャンバー内でクリーニングガスをプラズマ化してクリーニングする方法ではクリーニング速度を向上させるためにFNO濃度を増加させると、FNOが十分にプラズマ化せず、FNOやNOがプラズマ中に残存して(NO)SiFが形成され、SiF排除量が減少して排気経路で固体生成物が堆積することがあるが、本発明に係る第一のCVDチャンバーのクリーニング方法ではFNO濃度を増加させるとクリーニング速度とSiF排除量はともに増大し、排除経路で固体生成物が形成、堆積することなく迅速にCVDチャンバーをクリーニングすることができる。また、FNO量が少なすぎるとクリーニング速度が低下することがあり、FNO量が多すぎるとFNOが十分にプラズマ化せず、プラズマ中にFNOまたはNOが残存することがあり、その結果、(NO)SiFが生成することもある。
【0025】
リモートプラズマ発生装置へ供給するクリーニングガス流量は、好ましくは100〜5000sccm、より好ましくは500〜2000sccm、特に好ましくは600〜900sccmが望ましい。クリーニングガス流量が上記範囲にあると、平行平板クリーニング方法ではクリーニング速度を向上させるためにクリーニングガス流量を増加させると、FNOが十分にプラズマ化せず、FNOやNOがプラズマ中に残存して(NO)SiFが形成され、SiF排除量が減少して排気経路で固体生成物が堆積することがあるが、本発明に係る第一のCVDチャンバーのクリーニング方法ではクリーニングガス流量を増加させるとクリーニング速度とSiF排除量はともに増大し、排除経路で固体生成物が形成、堆積することなく迅速にCVDチャンバーをクリーニングすることができる。また、クリーニングガス流量が少なすぎるとクリーニング速度が低下することがあり、クリーニングガス流量が多すぎるとFNOが十分にプラズマ化する前にリモートプラズマ発生装置からCVDチャンバー内へプラズマが導入されるため、プラズマ中にFNOまたはNOが残存することがあり、その結果、(NO)SiFが生成することもある。
【0026】
リモートプラズマ発生装置においてプラズマを発生させるためのマイクロ波の出力電力および周波数は、FNOが十分にプラズマ化する条件であれば特に限定されないが、たとえば、出力電力が1000〜3000W、周波数が300〜500kHzの範囲で、FNOが十分にプラズマ化するような出力電力と周波数との組み合わせで適宜決定される。
【0027】
上記のような条件で、リモートプラズマ発生装置において実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成することによって、後述するCVDチャンバーのクリーニング過程において、CVDチャンバー内の付着物を迅速に除去することができるとともに、排気経路内での固体生成物の形成、堆積を抑制でき、排気経路の閉塞を防ぐことができる。
【0028】
次に、上記方法により得られる、実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを、CVDチャンバー内に導入してCVDチャンバー内に付着したケイ素含有化合物を除去する。具体的には、前記プラズマがCVDチャンバー内に付着したケイ素含有化合物と反応して常温で気体のSiFを形成し、このSiFをCVDチャンバー内から排気経路を通して排気する。この方法によるとプラズマ中にFNOまたはNOが実質的に存在しないため、(NO)SiFが生成せず、排気経路での固体生成物の形成、堆積を防ぐことができる。
【0029】
前記プラズマは、原料ガス経路を経由してCVDチャンバーに導入してもよいし、CVDチャンバーに直接導入してもよい。これらの方法のうち、CVDチャンバーに直接導入する方法が好ましい。この方法によって、より効率的にCVDチャンバー内に付着したケイ素含有化合物を除去することができる。
上記クリーニング方法を適用することができるCVD装置としては、リモートプラズマ発生装置を有するCVD装置であれば、従来の装置に適用することができる。また、図1に示すようなリモートプラズマ発生装置30とCVDチャンバー12とが接続配管32により直接結合した装置に適用することもできる。
【0030】
前記ケイ素含有化合物としては、たとえば、
(1)ケイ素、
(2)酸素、窒素、フッ素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、ケイ素とからなる化合物、および
(3)高融点金属シリサイドからなる化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられ、より具体的には、WSi等の高融点金属シリサイド、Si、SiO、SiNなどが挙げられる。
【0031】
本発明に係る第一のクリーニングガスは、FNOを含有し、上記方法によりプラズマ化してCVDチャンバーに導入されるクリーニングガスである。
前記クリーニングガスは、FNOと不活性ガスとを含むことが好ましく、FNOが全ガス量に対して好ましくは10〜70モル%、より好ましくは30〜60モル%、特に好ましくは40〜50モル%の割合で含まれることがより望ましい。
【0032】
前記不活性ガスとしては、N、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnが挙げられる。これらの不活性ガスは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<FNOを含むクリーニングガスおよびそれを用いたクリーニング方法>
本発明に係る第二のCVDチャンバーのクリーニング方法に用いられるクリーニングガスは、FNO(フッ化ニトロシル)を含有し、さらに不活性ガスを含むことが好ましい。また、必要に応じてOを含んでもよい。
【0033】
FNOの製造方法は、特に限定されないが、たとえば、下記の反応により製造することができる。
+ 2NO → 2FNO
本発明に用いられる不活性ガスとしては、N、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnが挙げられる。これらの不活性ガスは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明に係る第二のCVDチャンバーのクリーニング方法は、CVD装置によって基板に成膜処理を行った後、まず、FNOを含有する前記クリーニングガスをリモートプラズマ発生装置に導入してプラズマ化する。このとき、クリーニングガスを十分にプラズマ化して、FNOおよびNOがプラズマに実質的に含有しないことが必要である。もしFNOを含有するプラズマをCVDチャンバーに導入すると、このFNOが、後述するCVDチャンバーのクリーニング過程において生成するSiFと反応して、(NO)SiFを形成する。また、また、NOを含有するプラズマをCVDチャンバーに導入すると、このNOが、大量に存在するFと反応してFNOを形成し、上記と同様に(NO)SiFが生成する。この(NO)SiFは80℃で昇華するため、チャンバー内では気体であるが、常温の排気経路内で固体となり、排気経路内壁に堆積する。この堆積した(NO)SiFが排気経路の閉塞の原因となる恐れがある。
【0035】
本発明において、「実質的にFNOおよびNOを含有しない」とは、プラズマにFNOまたはNOが存在しないか、または存在するとしてもその濃度が、(NO)SiFを形成しない濃度、具体的には0.001モル%未満を意味する。このような実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成させる条件は以下の範囲が好ましい。圧力は、好ましくは50〜1000Pa、より好ましくは100〜600Pa、特に好ましくは150〜400Paが望ましい。圧力が上記範囲にあると安定してプラズマを発生させることができる。
【0036】
クリーニングガス中のFNO量は、全ガス量に対して、好ましくは10〜70モル%、より好ましくは30〜60モル%、特に好ましくは40〜50モル%の割合であることが望ましい。FNO量が上記範囲にあると、平行平板クリーニング方法、すなわちCVDチャンバー内でクリーニングガスをプラズマ化してクリーニングする方法ではクリーニング速度を向上させるためにFNO濃度を増加させると、FNOが十分にプラズマ化せず、FNOやNOがプラズマ中に残存して(NO)SiFが形成され、SiF排除量が減少して排気経路で固体生成物が堆積することがあるが、本発明に係る第一のCVDチャンバーのクリーニング方法ではFNO濃度を増加させるとクリーニング速度とSiF排除量はともに増大し、排除経路で固体生成物が形成、堆積することなく迅速にCVDチャンバーをクリーニングすることができる。また、FNO量が少なすぎるとクリーニング速度が低下することがあり、FNO量が多すぎるとFNOが十分にプラズマ化せず、プラズマ中にFNOまたはNOが残存することがあり、その結果、(NO)SiFが生成することもある。
【0037】
リモートプラズマ発生装置へ供給するクリーニングガス流量は、好ましくは100〜5000sccm、より好ましくは500〜2000sccm、特に好ましくは600〜900sccmが望ましい。クリーニングガス流量が上記範囲にあると、平行平板クリーニング方法ではクリーニング速度を向上させるためにクリーニングガス流量を増加させると、FNOが十分にプラズマ化せず、FNOやNOがプラズマ中に残存して(NO)SiFが形成され、SiF排除量が減少して排気経路で固体生成物が堆積することがあるが、本発明に係る第一のCVDチャンバーのクリーニング方法ではクリーニングガス流量を増加させるとクリーニング速度とSiF排除量はともに増大し、排除経路で固体生成物が形成、堆積することなく迅速にCVDチャンバーをクリーニングすることができる。また、クリーニングガス流量が少なすぎるとクリーニング速度が低下することがあり、クリーニングガス流量が多すぎるとFNOが十分にプラズマ化する前にリモートプラズマ発生装置からCVDチャンバー内へプラズマが導入されるため、プラズマ中にFNOまたはNOが残存することがあり、その結果、(NO)SiFが生成することもある。
【0038】
リモートプラズマ発生装置においてプラズマを発生させるためのマイクロ波の出力電力および周波数は、FNOが十分にプラズマ化する条件であれば特に限定されないが、たとえば、出力電力が1000〜3000W、周波数が300〜500kHzの範囲で、FNOが十分にプラズマ化するような出力電力と周波数との組み合わせで適宜決定される。
【0039】
上記のような条件で、リモートプラズマ発生装置において実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成することによって、後述するCVDチャンバーのクリーニング過程において、CVDチャンバー内の付着物を迅速に除去することができるとともに、排気経路内での固体生成物の形成、堆積を抑制でき、排気経路の閉塞を防ぐことができる。
【0040】
次に、上記方法により得られる、実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを、CVDチャンバー内に導入してCVDチャンバー内に付着したケイ素含有化合物を除去する。具体的には、前記プラズマがCVDチャンバー内に付着したケイ素含有化合物と反応して常温で気体のSiFを形成し、このSiFをCVDチャンバー内から排気経路を通して排気する。この方法によるとプラズマ中にFNOまたはNOが実質的に存在しないため、(NO)SiFが生成せず、排気経路での固体生成物の形成、堆積を防ぐことができる。
【0041】
前記プラズマは、原料ガス経路を経由してCVDチャンバーに導入してもよいし、CVDチャンバーに直接導入してもよい。これらの方法のうち、CVDチャンバーに直接導入する方法が好ましい。この方法によって、より効率的にCVDチャンバー内に付着したケイ素含有化合物を除去することができる。
上記クリーニング方法を適用することができるCVD装置としては、リモートプラズマ発生装置を有するCVD装置であれば、従来の装置に適用することができる。また、図1に示すようなリモートプラズマ発生装置30とCVDチャンバー12とが接続配管32により直接結合した装置に適用することもできる。
【0042】
前記ケイ素含有化合物としては、たとえば、
(1)ケイ素、
(2)酸素、窒素、フッ素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、ケイ素とからなる化合物、および
(3)高融点金属シリサイドからなる化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられ、より具体的には、WSi等の高融点金属シリサイド、Si、SiO、SiNなどが挙げられる。
【0043】
本発明に係る第二のクリーニングガスは、FNOを含有し、上記方法によりプラズマ化してCVDチャンバーに導入されるクリーニングガスである。
前記クリーニングガスは、FNOと不活性ガスとを含むことが好ましく、FNOが全ガス量に対して好ましくは10〜70モル%、より好ましくは30〜60モル%の割合で含まれることがより望ましい。
【0044】
前記不活性ガスとしては、N、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnが挙げられる。これらの不活性ガスは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
【実施例】
本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
【0046】
【調製例】
<FNOの合成>
乾燥した200mlのハステロイ製の反応容器に、5フッ化アンチモン(SbF)26g(0.12モル)を仕込み、これに三フッ化窒素(NF)14.2g(0.2モル)と亜酸化窒素(NO)8.8g(0.2モル)とを混合して、150℃で60時間反応させた。続いて、得られた生成物(NFSb11 )にフッ化ナトリウム(NaF)を10g(0.24モル)添加して210℃で20時間反応させた。反応生成物を分離精製してFNO3.5g(0.04モル)を得た。得られた化合物をガスクロマトグラフィーおよびFT−IRで分析し、得られた化合物がFNOであることを確認した。
【0047】
【実施例1〜9】
本発明に係るCVDチャンバーのクリーニング方法によるCVDチャンバーのクリーニングを、図1に示すリモートプラズマ発生装置30(ASTEX社製、商品名:ASTRON)を備えたCVD装置を用いて実施した。表1〜3に示す条件でクリーニング速度を測定することによりクリーニング性能を評価した。
【0048】
予めプラズマCVD法によりウエハー上に約11,000Åの厚さでSiOを製膜したシリコンウエハーAをCVDチャンバー12内の下部電極18上に配置した。
次いで、CVDチャンバー12内およびリモートプラズマ発生装置30内をポンプ14を用いて所定の圧力に維持し、リモートプラズマ発生装置30に、調製例で得られたFNOとArとを所定の比率で含むクリーニングガスを所定の流量で供給した。リモートプラズマ発生装置30内でプラズマを形成させた後、このプラズマ化したクリーニングガスをCVDチャンバーに2分間導入し、ウエハー上のSiOを除去した。クリーニング速度を、クリーニング前後のシリコンウエハーAについて、それぞれ9定点の膜厚を干渉式膜厚計で正確に測定し、膜厚の減少量より算出した。
【0049】
排気経路16からの排ガスを窒素で適宜希釈してFT−IRにより分析し、SiF排除量を測定した。また、クリーニング操作終了後、排気経路16を目視により観察し、析出物の有無を確認した。
結果を表1〜3に示す。
【0050】
【比較例1〜9】
平行平板クリーニング方法によるCVDチャンバーのクリーニングを図2に示すCVD装置を用いて実施した。表4および5に示す条件でクリーニング速度を測定することによりクリーニング性能を評価した。
予めプラズマCVD法によりウエハー上に約11,000Åの厚さでSiOを製膜したシリコンウエハーAをCVDチャンバー12内の下部電極18上に配置した。
【0051】
次いで、CVDチャンバー12内を、ポンプ14を用いて所定の圧力に維持し、調製例で得られたFNOとArとを所定の比率で含むクリーニングガスを所定の流量でCVDチャンバー12に供給しながら、入力Rf電力が750Wの条件でプラズマを形成させた。これを2分間継続してウエハー上のSiOを除去した。クリーニング速度を、クリーニング前後のシリコンウエハーAについて、それぞれ9定点の膜厚を干渉式膜厚計で正確に測定し、膜厚の減少量より算出した。
【0052】
排気経路16からの排ガスを窒素で適宜希釈してFT−IRにより分析し、SiF排除量を測定した。また、クリーニング操作終了後、排気経路16を目視により観察し、析出物の有無を確認した。
結果を表4および5に示す。
【0053】
【表1】
Figure 2004266077
【0054】
【表2】
Figure 2004266077
【0055】
【表3】
Figure 2004266077
【0056】
【表4】
Figure 2004266077
【0057】
【参考例1〜10】
本発明の特徴を検証するために、以下の実験を実施した。
まず、表5に示す流量でFNOとArとを、図1に示すリモートプラズマ発生装置30に供給して、実施例1〜9と同様の手順でCVDチャンバー12のクリーニングを実施した。SiF排除量を表5に示す。
【0058】
【表5】
Figure 2004266077
【0059】
次に、FNOと同等の原子を含有するF/N/O混合ガスをクリーニングガスとしてCVDチャンバーのクリーニングを実施した。このF/N/O混合ガスは、プラズマ発生過程において実質的にFNOおよびNOを形成しないクリーニングガスである。
参考例1〜5において発生させるプラズマに含まれるF、N、Oの各原子数と同等のF、N、Oの各原子数を含有するプラズマを発生するように、表6に示す流量でF、N、Oを図1に示すリモートプラズマ発生装置30に供給して、実施例1〜9と同様の手順でCVDチャンバー12のクリーニングを実施した。結果を表6に示す。参考例6〜10はそれぞれ参考例1〜5に相当する。
【0060】
【表6】
Figure 2004266077
【0061】
表5と表6とを比較すると、FNO/Ar混合ガスを用いた場合のSiF排除量(参考例1〜5)と、F/N/O/Ar混合ガスを用いた場合のSiF排除量(参考例6〜10)は同等であった。このことから、本発明によるクリーニング方法において発生させるプラズマは実質的にFNOおよびNOを含有していないことが確認された。
【0062】
【参考例11〜20】
上記参考例1〜5と参考例6〜10との比較について、NF/Ar混合ガスとF/N/Ar混合ガスとを比較することによって検証した。NFは、プラズマ発生過程においてFNOおよびNOを形成せず、またF/N混合ガスもプラズマ発生過程においてFNOおよびNOを形成しない。各混合ガスについて表7および8に示す条件で、参考例1〜10と同様にしてCVDチャンバーのクリーニングを実施した。結果を表7および8に示す。
【0063】
【表7】
Figure 2004266077
【0064】
【表8】
Figure 2004266077
【0065】
表7と表8とを比較すると、NF/Ar混合ガスを用いた場合のSiF排除量(参考例11〜15)と、F/N/Ar混合ガスを用いた場合のSiF排除量(参考例16〜20)は同等であった。このことから、化合物をクリーニングガスとして用いるクリーニング方法は、この化合物を構成する元素により構成される単体の混合ガスをクリーニングガスとして用いるクリーニング方法により実証できることが確認された。
【0066】
【発明の効果】
NOまたはFNOを含有するクリーニングガスをリモートプラズマ発生装置によりプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成して、このプラズマをCVDチャンバーに導入することによって、クリーニングガス濃度おまたはクリーニングガス流量を増加させてクリーニング速度を増大させる場合にも、SiF排除量を増大させることができ、固体生成物の形成、堆積を抑制でき、排気経路の閉塞を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明に係るCVDチャンバーのクリーニング方法の実施例に用いられたCVD装置の概略図である。
【図2】図2は、リモートプラズマ発生装置を有しないCVD装置の概略図である。
【符号の説明】
12 CVDチャンバー
14 ポンプ
16 排気経路
18 下部電極
20 上部電極
24 高周波電源
28 原料ガス供給源
30 リモートプラズマ発生装置
32 接続配管

Claims (17)

  1. CVD装置によって基板に成膜処理を行った後、
    NOを含むクリーニングガスをリモートプラズマ発生装置によってプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成し、
    該プラズマをCVDチャンバー内に導入し、
    CVDチャンバー内壁表面上およびCVDチャンバー内に配置した部材表面上に付着したケイ素含有化合物を前記プラズマにより除去するCVDチャンバーのクリーニング方法。
  2. 前記クリーニングガスがFNOと不活性ガスとを含むことを特徴とする請求項1に記載のCVDチャンバーのクリーニング方法。
  3. 前記クリーニングガスが、FNOを全ガス量に対して10〜70モル%の割合で含むことを特徴とする請求項2に記載のCVDチャンバーのクリーニング方法。
  4. CVD装置によって基板に成膜処理を行った後、
    FNOを含むクリーニングガスをリモートプラズマ発生装置によってプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成し、
    該プラズマ化したクリーニングガスをCVDチャンバー内に導入し、
    CVDチャンバー内壁表面上およびCVDチャンバー内に配置した部材表面上に付着したケイ素含有化合物を前記プラズマ化したクリーニングガスにより除去するCVDチャンバーのクリーニング方法。
  5. 前記クリーニングガスがFNOと不活性ガスとを含むことを特徴とする請求項4に記載のCVDチャンバーのクリーニング方法。
  6. 前記クリーニングガスが、FNOを全ガス量に対して10〜70モル%の割合で含むことを特徴とする請求項5に記載のCVDチャンバーのクリーニング方法。
  7. 前記不活性ガスが、N、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnからなる群から選択される少なくとも1種の不活性ガスであることを特徴とする請求項2、3、5および6のいずれかに記載のCVDチャンバーのクリーニング方法。
  8. 前記クリーニングガスを、100〜5000sccmの流量でリモートプラズマ発生装置に供給することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のCVDチャンバーのクリーニング方法。
  9. 前記ケイ素含有化合物が、
    (1)ケイ素、
    (2)酸素、窒素、フッ素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、ケイ素とからなる化合物、および
    (3)高融点金属シリサイドからなる化合物
    から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のCVDチャンバーのクリーニング方法。
  10. CVD装置によって基板に成膜処理を行った後の、CVDチャンバー内壁表面上およびCVDチャンバー内に配置した部材表面上に付着したケイ素含有化合物を除去するためのクリーニングガスであって、
    該クリーニングガスがFNOを含み、
    該FNOをリモートプラズマ発生装置によってプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成した後、該プラズマをCVDチャンバー内に導入することを特徴とするクリーニングガス。
  11. NOと不活性ガスとを含むことを特徴とする請求項10に記載のクリーニングガス。
  12. 前記FNOが、全ガス量に対して10〜70モル%の割合で含まれることを特徴とする請求項11に記載のクリーニングガス。
  13. CVD装置によって基板に成膜処理を行った後の、CVDチャンバー内壁表面上およびCVDチャンバー内に配置した部材表面上に付着したケイ素含有化合物を除去するためのクリーニングガスであって、
    該クリーニングガスがFNOを含み、
    該FNOをリモートプラズマ発生装置によってプラズマ化して実質的にFNOおよびNOを含有しないプラズマを形成した後、該プラズマをCVDチャンバー内に導入することを特徴とするクリーニングガス。
  14. FNOと不活性ガスとを含むことを特徴とする請求項13に記載のクリーニングガス。
  15. 前記FNOが、全ガス量に対して10〜70モル%の割合で含まれることを特徴とする請求項14に記載のクリーニングガス。
  16. 前記不活性ガスが、N、He、Ne、Ar、Kr、Xe、Rnからなる群から選択される少なくとも1種の不活性ガスであることを特徴とする請求項11、12、14および15のいずれかに記載のクリーニングガス。
  17. 前記ケイ素含有化合物が、
    (1)ケイ素、
    (2)酸素、窒素、フッ素および炭素のうち少なくとも1種の元素と、ケイ素とからなる化合物、および
    (3)高融点金属シリサイドからなる化合物
    から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項10〜16のいずれかに記載のクリーニングガス。
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