JP2004261057A - 低食塩濃度の酵母エキスの保存方法 - Google Patents

低食塩濃度の酵母エキスの保存方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低食塩濃度の液状ないしペースト状の酵母エキスの保存方法を提供する。
【解決手段】酵母の自己消化物あるいは酵素分解物から得られる、食塩濃度が5重量%未満の液状ないしペースト状の酵母エキスを保存するに際し、固形分濃度を50重量%以上、水分活性値を0.90以下にする。
【選択図】なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低食塩濃度の液状ないしペースト状の酵母エキスの保存方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、酵母エキスについては、その製造方法に関して酵母自体から様々なエキス成分を如何に溶出させるか、溶出したエキスを如何に抽出するか、抽出したエキスの味、匂い、色等の外観等を如何に改善するか等の観点から様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1〜3には母自体が持つ酵素を利用した自己消化によって得る方法が、特許文献4〜6には自己消化と新たに種々の核酸分解酵素やタンパク分解酵素を加える方法が提案されている。また、特許文献7〜9には、乾燥酵母に放線菌や担子菌類の産生する酵素を接触させて酵母エキス等の5’−ヌクレオチド類含有食品を製造する方法が提案され、特許文献10には酵母の自己消化物、酵素分解物、熱水抽出物を0.05〜1.0μmのポリアクリルニトリル等の高分子材質の濾過膜を使用した精密濾過することにより旨味成分を保持した酵母エキスを得る方法が、特許文献11には、含水率70%以下のエチルまたはメチルアルコール存在下で抽出し、さらに得られた抽出液を活性炭で処理して嗜好性に富む酵母エキスを得る方法が提案されている。
しかしながら、酵母エキスの液体ないしは濃縮したペースト状の形態における保存方法に関する技術についての提案は見当たらない。
現在市販に供される酵母エキスには、一般に、酵母の自己消化や様々な酵素分解物中のエキスと、酵母菌体等の不溶物を分離して得られたエキスを、例えば、常圧加熱濃縮、減圧加熱濃縮、冷凍濃縮等によって濃縮し、この濃縮物を小分けしたものと、濃縮後、噴霧乾燥等で乾燥させて粉末化したものがある。
乾燥タイプの酵母エキスは、通常、水分が約10%以下であれば特に腐敗等の問題はなく、保存性はよいと言われている。
一方、液状ないしは濃縮タイプの酵母エキスの場合、例えば、エキスの成分の違いや、水分と固形分の比率あるいは水分活性により、腐敗が起こるか否か異なる。酵母エキスには、タンパク質、ペプチド、遊離アミノ酸、糖質として単糖類、二糖類、核酸、有機酸、ミネラル等の種々の成分が存在するが、例えば、エチルアルコール等のアルコール分が2〜3%存在すると、保存効果あると言われたり、有機酸のクエン酸、リンゴ酸などが多く存在すると保存効果があると言われたり、あるペプチド(例、ポリリジン等)に保存効果があると言われたりしている。また、遊離アミノ酸ではグリシン、アラニンが食品の日保ち向上剤として知られている。
さらには、漬物に代表されるように食塩含量も保存性に欠かせない要素である。一般に、食塩含量により保存日数が異なると言われているが、例えば、約5%以下では漬物では長期保存は難しく、長期保存の場合、15%以上必要との説がある。種々の加工食品の保存は合成保存料添加を考慮しない場合、品質の加熱殺菌等の前処理の有無にも大きく関係するが、通常、食塩量とアルコール、有機酸の単独または併用等で保存性を持たせている。液状ないしは濃縮タイプの酵母エキスにおいても、食塩濃度を高くして保存性を持たせているが、近年、特に加工食品からの食塩の過剰摂取が健康上問題とされたり、加工食品の原料自体に食塩が存在すると加工食品中の食塩調整が困難となり、風味等の観点からは、食塩濃度が低い方が望ましい場合が多い。また、保存性を重視し、固形分濃度を60〜80%とすると非常に高い粘性を生じ、扱いにくいため、粘性が低い方が望ましい。かくして、保存性と使い易さの向上が望まれている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭62−19822号公報
【特許文献2】
特公平4−72505号公報
【特許文献3】
特開平10−179084号公報
【特許文献4】
特開昭63−112965号公報
【特許文献5】
特許第2604301号公報
【特許文献6】
特開平9−56361号公報
【特許文献7】
特公昭44−791号公報
【特許文献8】
特公昭44−792号公報
【特許文献9】
特公昭44−793号公報
【特許文献10】
特開平09−313130号公報
【特許文献11】
特開2000−316523号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、低食塩濃度の液状ないしはペースト状の酵母エキスの保存性を向上させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは食塩濃度、固形分濃度および水分活性の関係に着目し、濃縮酵母エキスの保存性について鋭意検討した。その結果、多数の市販品の分析から、食塩濃度が約11重量%以上で、かつ水分活性値が0.64〜0.89の範囲であれば、保存性に問題がないことが判明した。一方、意外にも、固形分濃度を50重量%以上にすると、5.0重量%未満の食塩濃度で、水分活性値を0.90まで上昇させても微生物の繁殖が妨げられることを見出した。
【0006】
本発明は、このような知見に基いて完成されたものであって、
(1)酵母の自己消化物あるいは酵素分解物から得られる、食塩濃度が5重量%未満の液状ないしペースト状の酵母エキスを保存するに際し、固形分濃度を50重量%以上、水分活性値を0.90以下にすることを特徴とする低食塩濃度の液状ないしペースト状酵母エキスの保存方法、
(2)酵母エキスが、食用乾燥酵母を、放線菌産生酵素類と接触させた後、担子菌産生酵素類とを接触させて得られる酵素分解物からのものである上記(1)記載の保存方法、
(3)酵母の自己消化物あるいは酵素分解物から得られる液状ないしペースト状の酵母エキスであって、固形分濃度が50重量%以上、食塩濃度が5重量%未満、水分活性地が0.90以下の酵母エキス、
(4)酵母エキスが、食用乾燥酵母を、放線菌産生酵素類と接触させた後、担子菌産生酵素類とを接触させて得られる酵素分解物からのものである上記(3)記載の酵母エキス等を提供するものである。
水分活性値は、食品中の含水量を活性度で示す値で、食品の示す水蒸気圧と、その温度における最大水蒸気圧との比であり(改訂新版食品化学、朝倉書店1981年2月25日発行、II.食品成分の化学、4頁)、種々の測定法があるが、本明細書においては、以下の実施例に示す方法で、酵母エキスの置かれた測定環境が平衡状態となった相対湿度から算出した値を水分活性値とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明における酵母の自己消化物あるいは酵素分解物は特に限定するものではなく、自体公知の方法により食用酵母より得られるものいずれでもでよい。
酵母も特に限定するものではなく、生酵母、自体公知の方法で適宜乾燥した乾燥酵母いずれでもよく、例えば、ワイン酵母、パン酵母、清酒酵母、ビール酵母等が使用できる。
酵母は、前処理なしにそのまま使用してもよく、また、前処理を行なった後に使用してもよい。例えば、水洗後に使用しても、酸、アルカリ、低級アルコール等での洗浄後、水洗して使用してもよい。さらに、例えば、800kg/cm〜5000kg/cmの高圧ホモジナイザーで処理した後に使用してもよい。
【0008】
本発明は、限定するものではないが、原料酵母から放線菌産生酵素類と担子菌産生酵素類を用いて得られた酵母の酵素分解物に好適に適用できる。この際、まず、放線菌産生酵素類で分解し、ついで担子菌産生酵素類で分解することが好ましい。さらに詳しくは、原料酵母を、まず、放線菌産生酵素類と接触させ、反応温度およびpHを変化させた2段階で反応させたることにより、5’−ヌクレオチド類の生成量を高めた後、さらに担子菌産生酵素類を反応させると、風味や匂いの良好な酵母エキスが得られる。以下、このようにして得られる酵素分解物を用いる場合を例として、本発明を説明するが、他の酵素分解物や、自己消化物、水抽出物(含熱水抽出物)を使用する場合も同様に実施できる。
原料酵母は、工業的生産性を考慮し、例えば、乾燥酵母の場合、通常、5〜30重量%、好ましくは、10〜25重量%の濃度で、水(例えば、イオン交換水等)に懸濁し、酵素類と接触させる。懸濁液の濃度が低すぎる場合は生産性の低下を招き、また、濃度が高すぎる場合は、粘度が高くなりすぎ、撹拌等が困難となる。
用いる放線菌産生酵素類としては、例えば、ストレプトミセス属に属する菌株を自体公知の方法により培養し、5’−リン酸生成型ヌクレアーゼ、デアミナーゼおよびプロテアーゼを含有する培養物をそのまま、または培養濾液、菌体、菌体破砕物、これらの抽出液、その乾燥物等を使用することができ、あるいは自体公知の方法により5’−リン酸生成型ヌクレアーゼ、デアミナーゼおよびプロテアーゼを必須構成酵素とする酵素類を採取し、粗製のまま、または精製酵素として用いることができる。
培養液は、工業的生産に適した乾燥酵素(水分10%以下)、特に、酵素力価を落とさず粉末化した酵素として用いることが望ましい。乾燥方法としては、自体公知の方法が挙げられるが、酵素を失活させない方法として、例えば、凍結乾燥方法等がある。
放線菌産生酵素類として、例えば、培養液の水溶性部分を乾燥した乾燥物を使用する場合、通常、酵母に対して、0.3〜1.5重量%程度使用する。この乾燥物換算の力価を基準として、培養液の水溶性部分を乾燥したものを適宜、水で記載して使用することもでき、また、培養液そのものとして使用する場合は、通常、酵母に対して7.5〜37.5重量%程度の割合で使用できる。
また、例えば、力価の異なる2種以上の培養物や精製酵素を混合したり、水等での希釈や、要すれば、商業的に入手しうる酵素類を使用して力価を調整することもできる。
【0009】
担子菌産生酵素類としては、例えば、ホウロクタケ属に属する担子菌、好ましくはヒイロタケを自体公知の方法により培養し、プロテアーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼ含有する培養濾液、その抽出物等を使用することができ、あるいは自体公知の方法により、プロテアーゼ、セルラーゼおよびグルカナーゼを必須構成酵素とする酵素類を採取し、粗製のまま、または精製酵素として用いることができる。
放線菌産生酵素類と同様、担子菌産生酵素類も酵素力価を落とさず粉末化して使用することが望ましい。
担子菌産生酵素類として、例えば、培養液の水溶性部分を乾燥した乾燥物を使用する場合、通常、酵母に対して、0.3〜1.5重量%程度使用する。この乾燥物換算の力価を基準として、培養液の水溶性部分を乾燥したものを適宜、水で記載して使用することもでき、また、培養液そのものとして使用する場合は、通常、酵母に対して7.5〜37.5重量%程度の割合で使用できる。
また、例えば、力価の異なる2種以上の培養物や精製酵素を混合したり、水等での希釈や、要すれば、商業的に入手しうる酵素類を使用して力価を調整することもできる。
【0010】
酵母エキスを製造するには、例えば、食用乾燥酵母(ワイン酵母、パン酵母、清酒酵母、ビール酵母等)の5〜25重量%水懸濁(pH6.5〜8.0)に放線菌産生酵素類の乾燥物を40℃〜60℃で0.3〜1.5重量%(対固形分)の割合で3〜8時間接触させ、ついで同液を62〜68℃で2〜6時間保持した後、pHを2.0〜5.5に調整する。これに担子菌産生酵素類の乾燥物を45〜55℃で0.3〜1.5重量%(対固形分)の割合で8〜15時間接触させる。得られた酵母の酵素分解物のスラリーを平均孔径0.05〜0.2μmのセラミック膜を通過させて精密濾過して酵母等の不溶物と酵母エキス部とを分離した後、酵母エキス部の固形分濃度を50重量%以上、好ましくは50〜75重量%に濃縮する。さらに、木材炭化品を原料とし、水蒸気賦活法にて950℃〜1100℃で賦活した細孔容積(ml/g)が0.2〜0.6で且つ細孔直径(nm)1〜30である活性炭を固形分に対して1〜5重量%添加し、濾過する。
酵母エキスの水分活性値は、例えば、濃縮度合を調整したり、要すれば、グリセリンやプロピレングリコールのような水分活性低下物質を適宜添加する等により、0.90以下、好ましくは0.78〜0.88に調整する。
pHの調整は、常法に従い、必要に応じて酸(例、塩酸等)またはアルカリ(例、水酸化ナトリウム等)を用いて行う。
【0011】
本発明の酵母エキスは、低食塩濃度であるにもかかわらず、1年以上、室温で保存することができ、公知の酵母エキスと同様に使用することができ、例えば、得られた酵母エキスを農産加工食品(野菜、果実、穀物等の加工品を含む)、水産加工食品(魚介類、海藻等の加工品を含む)畜産加工食品(卵・乳製品等の加工品を含む)、だし・つゆ・ソース・醤油・みそ、合わせ調味料等に使用することができる。
【0012】
【実施例】
以下の参考例、実施例および試験例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「%」は重量%を意味する。
試験例における固形分濃度、食塩濃度および水分活性の測定は、つぎのようにして行なった。
固形分濃度
食品衛生検査指針 理化学編 厚生省監修 社団法人日本食品衛生協会(1991年)の試験法 1.水分(3)乾燥助剤法に従って、105℃3時間で水分を測定し、100から同測定水分を差し引いて算出した。
食塩濃度
衛生試験法注解 日本薬学会編 金原出版(1990年)(10)塩素イオン1)モール法により測定した。
水分活性測定
測定機種:水分活性測定システム(オートニック社製)を使用。
測定法:サンプルカップに試料を約1gを採取して本装置にセットし、システムの測定環境が平衡状態となった相対湿度から以下の算式により水分活性を求めた。
水分活性=相対湿度/100
【0013】
参考例1
放線菌産生酵素類の調製
(1)ストレプトミセス・アウレウス(Streptomyces aureus IFO 3175)の胞子懸濁液(10個/ml以上)1白金耳を種培地(可溶性コーンスターチ30g/l、コーン・スティープ・リカー30g/l、硫酸アンモニウム1g/l、硫酸マグネシウム0.5g/l、炭酸カルシウム3g/l、pH7.0)20mlに接種し、28℃、200rpmで24時間培養し、種培養終了液を得た。
(2)得られた種培養終了液1mlを主培地(可溶性コーンスターチ30g/l、コーン・スティープ・リカー15g/l、硫酸アンモニウム1g/l、硫酸マグネシウム0.5g/l、炭酸カルシウム3g/l、pH7.0)20mlに移植し、28℃、200rpmで40時間培養し、主培養終了液を得た。
(3)得られた主培養終了液20mlを28℃、200rpmで3時間撹拌し、ついでイソブタノール1.2mlを加え、さらに28℃、200rpmで3時間撹拌して溶菌し、酵素処理液を得た。これを品温が80℃以下で乾燥し、放線菌産生酵素類の乾燥粉末を得た。
【0014】
ヒイロタケ産生酵素類の調製
(1)ヒイロタケ(Trametes sanguinea)の胞子懸濁液(10個/ml以上)2mlを種培地(塩化カルシウム1g/l、硫酸マグネシウム1g/l、硫酸アンモニウム2g/ml、リン酸一カリウム2g/l、ショ糖50g/l、コーン・スティープ・リカー30g/l、pH7.0)20mlに接種し、28℃、200rpmで48時間培養し、種培養終了液を得た。
(2)得られた種培養終了液2mlを主培地(塩化カルシウム1g/l、硫酸マグネシウム1g/l、硫酸アンモニウム2g/l、リン酸一カリウム2g/l、ショ糖80g/l、脱脂大豆粉35g/l、pH6.0)20mlに移植し、28℃、200rpmで96時間培養し、主培養終了液を得た。
主培養終了液を、濾紙で濾過し、得られた酵素液を真空乾燥してヒイロタケ産生酵素類の乾燥粉末を得た。
【0015】
実施例1
ビール酵母を純水に懸濁して11%懸濁液を調製し、30%水酸化ナトリウム溶液でpH7.7に調整した。これに、酵母固形分に対して0.62%の割合で、上記で得られた放線菌産生酵素類液を加え、40〜60℃で5時間、ついで65℃で3時間保持した。このときのpHは6.7〜6.8であった。
当初の5時間は、5’−ヌクレオチド類の生成量が経時的に上昇したが、その後、5’−ヌクレオチド類の生成量はほぼ横這状態であった。
ついで、50℃に冷却し、35%塩酸でpH4.0に調整し、酵母固形分に対して0.6%の割合で、上記で得られた担子菌産生酵素を加え、50℃で12時間反応させた。
反応終了後、90℃で10分間加熱殺菌し、60℃に冷却した。反応液を0.1〜0.2μmの平均孔径を有するセラミック膜で濾過した。残渣を3倍量の純水と共に撹拌し、再度濾過して、濾液を上記の濾液と合した。この液のpHは4.0、エキス濃度はBx11.5であった。35%塩酸でpH5.5に調整し、薄膜流下式真空濃縮によりBx30〜35まで濃縮した。これを90℃まで急速加熱した後、60℃まで急速冷却し、固形分に対して1.5%の活性炭(武田薬品工業製、白鷺A)を加えて濾過し、濾液をさらに薄膜流下式真空濃縮によりBx55〜60まで濃縮した。
濃縮物を、25℃で2週間熟成し、濾過して所望の酵母エキスを得た。
【0016】
参考例3
市販の酵母エキスの食塩濃度、固形分濃度および水分活性を調査した結果を表1に示す。
【表1】
Figure 2004261057
【0017】
試験例1
種々の食塩濃度、固形分濃度、水分活性の酵母エキスに、微生物を接種し、所定期間、各温度に保存後、生菌数を計測した。
1)試料
実施例1と同様にして固形分濃度:70%のペースト状酵母エキスを製造し、これを、固形分濃度約25%、30%、40%、45%、50%、52%、60%に滅菌水で希釈し、試料とした。
各試料の食塩濃度、固形分濃度、水分活性を表2に示す。
【表2】
Figure 2004261057
【0018】
2)微生物の接種
各試料液を4本の滅菌ポリプロピレン製遠沈管(50ml用)に20mlずつ分注後、以下の微生物を0.2ml接種して密栓し、これを検液とした。
3)接種微生物
細菌:エシェリヒア・コリ(Escherichia coli ATCC 8739)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis ATCC 6633)、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus ATCC 6538)
真菌:カンジダ・アルビカンス(Candida albicans ATCC 10231)、アスペルギルス・ニガー(Asperigillus niger IFO 4414)
上記の接種微生物は、各凍結保存菌液(−80℃保存、生菌数は10〜10cfu/ml(colony forming unit/ml))を使用した。使用時、リン酸緩衝液(pH7.2)で以下の方法で適宜希釈した。細菌は上記3種の菌を混合し、1×10cfu/mlとした。真菌は上記2種の菌を混合し、1×10cfu/mlとした。
3)保存試験
検液を5℃、15℃、25℃、35℃および40℃の恒温器に保存した。
4)生菌数試験
検液の生菌数は、0日(初発)、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後に測定した。測定は、食品衛生検査指針1990(2汚染指標菌 1.細菌数、第2章真菌2.生菌数試験)に準じた。
なお、細菌用の測定培地(ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト寒天培地)に生育したカビ以外の集落を計測して細菌数とした。真菌用の培地(サブロー・ブドウ糖寒天培地)に生育した集落は、カビと酵母を分別して計測した。
結果を以下の表に示す。
【0019】
【表3】
Figure 2004261057
【0020】
【表4】
Figure 2004261057
【0021】
【表5】
Figure 2004261057
表3〜5に示すごとく、固形分濃度が50%以上になると、食塩濃度が5%以下でも、水分活性0.90において細菌、カビ、酵母の増殖が共に抑制され、保存性が向上する。
【0022】
【発明の効果】
以上記載したごとく、本発明によれば、低食塩濃度の液状ないしペースト状の酵母エキスでも、保存性にすぐれた製品を提供できる。

Claims (4)

  1. 酵母の自己消化物あるいは酵素分解物から得られる、食塩濃度が5重量%未満の液状ないしペースト状の酵母エキスを保存するに際し、固形分濃度を50重量%以上、水分活性値を0.90以下にすることを特徴とする低食塩濃度の液状ないしペースト状酵母エキスの保存方法。
  2. 酵母エキスが、食用乾燥酵母を、放線菌産生酵素類と接触させた後、担子菌産生酵素類とを接触させて得られる酵素分解物からのものである請求項1記載の保存方法。
  3. 酵母の自己消化物あるいは酵素分解物から得られる液状ないしペースト状の酵母エキスであって、固形分濃度が50重量%以上、食塩濃度が5重量%未満、水分活性地が0.90以下の酵母エキス。
  4. 酵母エキスが、食用乾燥酵母を、放線菌産生酵素類と接触させた後、担子菌産生酵素類とを接触させて得られる酵素分解物からのものである請求項3記載の酵母エキス。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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