JP2004260907A - ハイブリッドシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】ハイブリッドシステムにおいて、発電とエンジン動力負荷との分担を適切に制御すること。
【解決手段】ハイブリッドシステムにおいて、航走を行わず発電のみを行う動作モードでは、予め設定された最大目標回転数RH以下のエンジン回転数で発電機10による発電を行い、かつ、航走および発電を行う動作モードでは、エンジン2の回転数を検出する回転数センサ35と、検出されたエンジン回転数に基づいて予め記憶されたエンジン回転数とエンジン航走負荷との関係よりエンジン航走負荷を演算するエンジン航走負荷演算手段と、予め記憶されたエンジン回転数と発電機の最大発電量との関係より最大発電量を演算する最大発電量演算手段と、得られた最大発電量からエンジン航走負荷を減ずることにより発電可能量を演算する発電可能量演算手段とを備え、得られた発電可能量を発電機10により発電する。
【選択図】 図3
【解決手段】ハイブリッドシステムにおいて、航走を行わず発電のみを行う動作モードでは、予め設定された最大目標回転数RH以下のエンジン回転数で発電機10による発電を行い、かつ、航走および発電を行う動作モードでは、エンジン2の回転数を検出する回転数センサ35と、検出されたエンジン回転数に基づいて予め記憶されたエンジン回転数とエンジン航走負荷との関係よりエンジン航走負荷を演算するエンジン航走負荷演算手段と、予め記憶されたエンジン回転数と発電機の最大発電量との関係より最大発電量を演算する最大発電量演算手段と、得られた最大発電量からエンジン航走負荷を減ずることにより発電可能量を演算する発電可能量演算手段とを備え、得られた発電可能量を発電機10により発電する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッドシステムに関し、特に、エンジンを動力伝達装置の駆動に用いるとともに発電機器の駆動源としても用いる場合に、エンジン出力の分担を適切に制御するハイブリッドシステムに関する。なお、本発明における「ハイブリッド」とは、エンジンから少なくとも機械的駆動力と電力を取り出すという意味である。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハイブリッドシステムとして、例えば、電気自動車や船舶等の移動体に用いられているものがあり、移動(走行または航走)に必要な負荷トルクを、エンジンが負担するトルクとモータ(電動機器)が負担するトルクとに分担する技術が知られており、この技術においては、負荷トルクの分担制御は制御マップに基づいて行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。そして、エンジンの駆動により発電機器にて発電された電力を、モータを駆動するのに必要な電力に応じて制御しており、また、このモータの駆動電力は発電機器で発電した電力により補うこととしていた。また、バッテリの充電状態(SOC)を所定範囲内に管理することにより、バッテリの寿命の延長を図ることとしていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−190237号公報
【特許文献2】
特開2002−252904号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のハイブリッドシステムにおいては、以下のような不具合があった。
発電機器で発電した出力を、単にモータ駆動電力にしたがって制御するのみであったため、移動に伴い発電出力が大きく変動してしまうという不具合が合った。また、この発電出力の変動(負荷変動)によりエンジンの回転数が変動する問題があり、このため、移動中、操作者に違和感と与えてしまうという不具合があった。
また、モータ駆動電力を供給する際には、発電機器で発電した電力を一度バッテリに充電した後にモータに供給していたため、バッテリの充放電に伴うエネルギーを損失するという不具合が合った。
そこで、本発明では、発電(電気負荷)と、エンジン動力負荷(走行負荷または航走負荷)との分担を適切に制御することを課題とする。また、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態と、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態とを使い分け、移動中の発電量を抑えることにより、発電の際の回転変動を抑えて、移動中の操作者に違和感を与えないことを課題とする。また、バッテリ充放電に伴うエネルギー損失については、バッテリを介さずに発電された電力をそのままモータに供給する動作形態を、新たに設けることにより、ハイブリッドシステムの各動作形態にしたがった発電およびバッテリ充放電管理を行うことを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態と、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態とを有するとともに、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態では、予めエンジン回転数の最大目標回転数を設定し、最大目標回転数以下のエンジン回転数で発電機器による発電を行い、かつ、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態では、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、検出されたエンジン回転数に基づいて予め記憶されたエンジン回転数とエンジン動力負荷との関係よりエンジン動力負荷を演算するエンジン動力負荷演算手段と、予め記憶されたエンジン回転数と発電機の最大発電量との関係より最大発電量を演算する最大発電量演算手段と、得られた最大発電量からエンジン動力負荷を減ずることにより発電可能量を演算する発電可能量演算手段とを備え、得られた発電可能量を発電機器により発電するものである。
【0006】
請求項2においては、請求項1記載のハイブリッドシステムにおいて、エンジン回転数に対して複数の回転域を設定し、それぞれの回転域において、前記エンジン動力負荷手段により演算されるエンジン動力負荷を回転域の上限の回転数における値とし、前記最大発電量により演算される最大発電量を回転域の下限の回転数における値としたものである。
【0007】
請求項3においては、請求項1または請求項2記載のハイブリッドシステムにおいて、前記発電可能量を表示出力可能とする表示出力手段を備えるものである。
【0008】
請求項4においては、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、発電機器により発電された電力を、コンバータを介して電動機器に供給して、電動機器を動力伝達装置の駆動源として用いるとともに、発電された電力によりバッテリを充電しないものである。
【0009】
請求項5においては、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、インバータに接続するトローリング用の電気負荷を備えるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について添付の図面を用いて説明する。
図1は本発明の一つである「エンジン、発電機、モータ、インバータ、および動力伝達装置」よりなるハイブリッドシステム(以下、「ハイブリッドシステムA」という。)を示す図、図2はハイブリッドシステムAの動作モードの一例を示す図、図3は発電機の発電可能領域を示す図、図4は通常航走時での発電機の発電可能量を決定する手順を示す図、図5は本発明の一つである「エンジン、発電機、インバータ、および動力伝達装置」よりなるハイブリッドシステム(以下、「ハイブリッドシステムB」という。)を示す図、図6はハイブリッドシステムBの動作モードの一例を示す図、図7は本発明の一つである「エンジン、モータジェネレータ、インバータ、および動力伝達装置」よりなるハイブリッドシステム(以下、「ハイブリッドシステムC」という。)を示す図、図8はハイブリッドシステムCの動作モードの一例を示す図、図9はハイブリッドシステムCのスタータ機能を示す図、図10はハイブリッドシステムCのモータジェネレータによる動力アシスト機能を示す図、図11はハイブリッドシステムCの電力供給(発電あり)機能を示す図、図12はハイブリッドシステムCの電力供給(発電なし)機能を示す図である。
【0011】
本発明の一つであるハイブリッドシステムAについて説明する。
ハイブリッドシステムAは、図1に示すような構成である。ハイブリッドシステムAでは、水中推進用に備えられるプロペラ4の駆動をエンジン2とモータ5との両方により可能としている。なお、後述するように、図5に示すハイブリッドシステムB、あるいは、図7に示すハイブリッドシステムCのような構成とすることも可能である。また、以下では、ハイブリッドシステムを船舶について適用した実施例について説明しているが、その他の移動体(例えば、自動車等)に適用することも可能である。
【0012】
図1において、システム1は、エンジン2および動力伝達装置3を有しており、該動力伝達装置3としてはセイルドライブが用いられ、その後下部にはプロペラ4が接続されている。これにより、システム1は船舶の推進システムとして利用することができる。
エンジン2からの駆動力は動力伝達装置3によりプロペラ4に伝達され、その結果プロペラ4が回転駆動される。動力伝達装置3内にはクラッチが備えられており、該クラッチによりエンジン2からの駆動力の断接と動力伝達の回転方向(プロペラ4の回転方向)の切り換えを行うようにしている。
なお、本実施例においては、システム1は動力伝達装置3がエンジン2の下方へ大きく延出し、該動力伝達装置3に直接プロペラ4が取り付けられたセイルドライブに構成されているが、動力伝達装置3の後端部に、プロペラ4のプロペラ軸が装着されるマリンギアに構成することもできる。
【0013】
また、本システムにおいては、エンジン2と動力伝達装置(セイルドライブ)3との間に、発電機器である発電機10を介装している。エンジン2により発電機10を駆動して、該発電機10により発電された電力は、後述するように電動機駆動用に用いられたり、船内電力として供給されたりするようにしている。
【0014】
発電機10は、例えば、高周波発電機に構成されており、該発電機10の出力部には、リレー(電磁開閉器)11、整流機器12、インバータ15が接続されている。
また、発電機10は前記整流機器12を介して、DC/DCコンバータ(直流/直流コンバータ)13と接続されている。
【0015】
整流機器12は、例えば、平滑用コンデンサで構成されており、発電機10により発電された交流電力を整流・平滑化して、直流に変換する。整流機器12からDC/DCコンバータ13に送られた電力は、該DC/DCコンバータ13により所定の電圧に変圧されて、リレー17を介してバッテリ14を充電する。
【0016】
一方、整流機器12からインバータ15に送られた電力は、該インバータ15により交流に変換されて、切換機器19を介して出力ソケット20から交流電力として船内供給可能とされる。切換機器19にて商用電源(外部電源)とインバータ15により変換された交流電力とを切換可能としている。このように、インバータ15を介して電気負荷(AC出力)が接続できるようにしている。なお、切換機器19を切換スイッチで構成して手動により切り換えを行ってもよく、また、電磁接触器で構成してインバータ出力と商用電源との切り換えを自動で行ってもよい。電磁接触器で構成する場合には、該電磁接触器にシステムコントローラ7からオン・オフ信号が入力されるように、システムコントローラ7と接続しておく。そして、インバータ15には、リレー15aが内蔵されており、該リレー15aはシステムコントローラ7と接続されている。
【0017】
動力伝達装置3の上端部には電動機器(モータ)5が設置されており、該モータ5の出力軸は動力伝達装置3の伝達軸と接続されている。モータ5はモータコントローラ6と接続されており、該モータコントローラ6によりモータ5を制御する構成としている。また、モータコントローラ6はシステムコントローラ7と接続されており、該システムコントローラ7からの指令がモータコントローラ6へ入力されるようにしている。
また、モータコントローラ6は、リレー18を介して、前記DC/DCコンバータ13とバッテリ14に接続されており、バッテリ14、またはDC/DCコンバータ13を介して発電機10から電力供給を受けて、フィールド電流(界磁電流)で発生させた磁界とアマチュア電流(電機子電流)によりモータ5を駆動する。そして、モータコントローラ6がこれらの電流または電圧を制御してモータ5の回転数およびトルクを制御する。
【0018】
船体の前後進の切り換えやエンジン2の駆動力の調節は、船舶の操作部8に配設されるレバー9等の操作具を操作することによって行われる。レバー9には、例えば、シフトレバー、レギュレータレバー、モード切換レバー等があり、それぞれシステムコントローラ7と接続されている。そして、レバー9を操作することにより、システムコントローラ7にレバー位置に対応した信号が入力される。
【0019】
例えば、操作部8のシフトレバーを操作すると、シフトレバー位置(前進・中立・後進)に対応する信号がシステムコントローラ7に入力され、該システムコントローラ7によりシフトアクチュエータ21を作動させるようにしている。シフトアクチュエータ21は動力伝達装置3のクラッチに接続されており、該シフトアクチュエータ21の作動により、動力伝達装置3の伝動軸の正転・中立・逆転を切り換えて、前進・中立・後進の切り換えを行うこととしている。このように、シフトレバーを操作することにより、船体の前後進の切り換えを行っている。
【0020】
また、操作部8のレギュレータレバーを操作すると、レギュレータレバー位置に対応する信号がシステムコントローラ7に入力され、該システムコントローラ7によりレギュレータアクチュエータ22を作動させるようにしている。レギュレータアクチュエータ22はエンジン2のレギュレータに接続されており、該レギュレータアクチュエータ22の作動により、エンジン2における燃料噴射量を調節して、エンジン2の駆動力を調節可能としている。このように、レギュレータレバーを操作することにより、エンジン2の駆動力の調整を行っている。
【0021】
また、操作部8にはモード切換レバーが配設されており、該モード切換レバーを操作することにより、本システムの動作モード(動作形態)を切換可能としている。この動作モードの例としては、図2に示すようなものがあり、モード切換レバーにより、「航走モード」の切り換えを行う。そして、「航走モード」の切り換えを行うと、システムコントローラ7へモード信号が入力されて、該システムコントローラ7により各「航走モード」に対応した本システムの制御が行われるようにしている。
具体的には、図2に示すように「航走モード」の切り換えにより、プロペラ4の駆動を、エンジン2のみにより駆動するモード、エンジン2により駆動しつつ、モータ5により駆動をアシストするモード、モータ5のみにより駆動するモード、の3種類のパターンにより行うことを可能としている。また、これらの「航走モード」に加えて、船舶停船時における停船モードを有している。
【0022】
エンジン2内にはエンジン2始動用のスタータモータ2aと機関付発電機であるオルタネータ2bが備えられており、該スタータモータ2aはリレー25を介してスタータバッテリ24と接続され、該スタータバッテリ24はオルタネータ2bと接続されている。また、スタータモータ2a、オルタネータ2b、スタータバッテリ24はメインリレー26を介して前記システムコントローラ7と接続されている。オルタネータ2bからの発電出力は、エンジン2のスタータモータ2aを駆動するためのスタータバッテリ24に充電され、該スタータバッテリ24に蓄積された電力をエンジン2始動の際に用いるようにしている。
【0023】
以上のように構成される本システムにおいて、メインコントローラとしてのシステムコントローラ7は次のように機能して、本システムの制御を行う。前述したように、システムコントローラ7は操作部8のレバー9(シフトレバー、レギュレータレバー、モード切換レバー)と接続されている。また、システムコントローラ7はシフトアクチュエータ21およびレギュレータアクチュエータ22と接続されている。
【0024】
また、システムコントローラ7はエンジン2と接続されており、該エンジン2からシステムコントローラ7にエンジン回転数が入力される。エンジン2の回転数は、エンジン2に付設される回転数センサ35により検出される。
また、システムコントローラ7はモータ5と接続されており、該モータ5からシステムコントローラ7にモータ回転数およびモータ5の温度が入力される。モータ5の回転数は、モータ5に付設される回転数センサ36により検出され、モータ5の温度は、サーミスタ等の温度センサ(図示せず)により検出される。
【0025】
また、システムコントローラ7はモータコントローラ6と接続されており、該システムコントローラ7はモータコントローラ6に対して回転方向信号、出力信号、モード信号等を出力する。一方、モータコントローラ6は、モータ5に異常が発生した場合には、アラーム信号をシステムコントローラ7へ送る。
また、システムコントローラ7は発電機10と接続されており、該発電機10からシステムコントローラ7に発電機10の温度が入力される。発電機10の温度は、サーミスタ等の温度センサ(図示せず)により検出される。
【0026】
また、システムコントローラ7はリレー11・15a・17・18と接続されており、該システムコントローラ7は、図2に示すように、リレー11・15a・17・18のオン・オフ(開閉)を制御する。このオン・オフ制御は、船舶の航走状態、バッテリ14の充放電状態、インバータ15に接続される電気負荷(インバータ負荷)等の状態に基づいて行われている。
また、システムコントローラ7はDC/DCコンバータ13に接続されており、該システムコントローラ7はDC/DCコンバータ13に対して充電電流指示を送る。
【0027】
また、システムコントローラ7はバッテリ14と接続されており、該バッテリ14からシステムコントローラ7にバッテリ14の充放電状態を表す電圧値・電流値が入力される。バッテリ14の電圧値および電流値はそれぞれ、電圧センサ33、電流センサ34により検出される。
【0028】
また、システムコントローラ7はインバータ15に接続されており、該システムコントローラ7はインバータ15(リレー15a)に対してオン・オフ信号を出力する。一方、インバータ15はシステムコントローラ7に対してインバータ15に接続される電気負荷の状態を表すインバータ入力電圧値、インバータ入力電流値、アラーム信号を出力する。インバータ入力電圧値およびインバータ入力電流値は、それぞれ、電圧センサ31および電流センサ32により検出される。
【0029】
また、システムコントローラ7は表示モニタ23と接続されており、該表示モニタ23は表示出力手段として機能し、システムコントローラ7に入力される種々の検出値等を表示して、操船者が本システムの状態を把握できるようにしている。
【0030】
本システムでは、例えば、図2に示すようなH1からH17までの動作モードがある。以下、各モードについて説明する。
【0031】
H1およびH2は、モータ5のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するモードであり、モータ5の駆動源はバッテリ14である。これらのモードによりエンジン停止状態でも航行可能となる。
【0032】
H3およびH8は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するモードであり、モータ5の駆動源はバッテリ14である。これらのモードにより、発電機10が損傷等でその電力が使用できない場合であっても、モータ5によるエンジンアシストが可能となる。なお、本実施例で「エンジンアシスト」とは、セイルドライブ3およびプロペラ4の駆動負荷の一部をモータ5により賄うことを意味する。
【0033】
H4およびH9は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するモードであり、モータ5の駆動源は発電機10の電力である。これらのモードにより、バッテリ14が損傷等でその電力が使用できない場合であっても、モータ5によるエンジンアシストが可能となる。詳しくは後述する。
【0034】
H5およびH10は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動し、モータ5を駆動するに当たって発電機10の電力が不足するときはバッテリ14の放電により不足電力を補い、発電機10の電力に余裕があるときはバッテリ14を充電するモードである。これらのモードにより、モータ5の所要駆動力を確保してバッテリ14の充電が可能となる。
【0035】
H6およびH11は、エンジン2および発電機10の電力により駆動されるモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、インバータ15を介して発電機10の電力を供給するモードである。これらのモードにより、インバータ15の電気負荷への電力供給とモータ5によるエンジンアシストの両立が可能となる。詳しくは後述する。
【0036】
H7およびH12は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、インバータ15を介して発電機10の電力を供給し、モータ5を駆動するに当たって発電機10の電力が不足するときはバッテリ14の放電により不足電力を補い、モータ5の駆動およびインバータ15を介しての電力供給に当たって発電機10の電力に余裕があるときはバッテリ14を充電するモードである。これらのモードにより、インバータ15を介しての電力供給を安定化できるとともに、モータ5の所要駆動力を確保してエンジンアシストが可能となる。
【0037】
H13はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するのみであり発電機10はエンジン2と同期回転するが実質停止しているモードである。このモードにより、インバータ15を介しての電力供給およびモータ5の駆動が不要またはこれらの機器の損傷等により不能の場合にあってもエンジン航行が可能となる。
【0038】
H14はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でバッテリ14を充電するモードである。このモードにより、航行しながらバッテリ14の充電が可能となる。
【0039】
H15はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でバッテリ14を充電およびインバータ15を介して電力供給を行うモードである。このモードにより、航行、インバータ15を介しての電力供給およびバッテリ14の充電を並立できる。詳しくは後述する。
【0040】
H16はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、インバータ15を介して発電機10の電力を供給するモードである。このモードにより、航行およびインバータ15を介しての電力供給を並立できる。詳しくは後述する。
H17の停船モードについては、後述する。
【0041】
なお、H1とH2との違いは、本システムを搭載した船舶が定常(=定速)航行状態か加速航行状態かの違いである。H3とH8との違い、H4とH9との違い、H5とH10との違い、H6とH11との違い、およびH7とH12との違いについても同様である。
また、モータ5によるエンジンアシストによりエンジン2を燃費の良い回転域で使用することができ、かつ、モータ5の駆動源もバッテリ14またはエンジン2により駆動される発電機10の電力であるので本システムの燃費性を向上できる。
一方、エンジン2により駆動される発電機10の電力を、インバータ15を介して電気負荷へ供給できるので別個の発電機が不要とでき、本システムを搭載した船舶の空間利用性を向上できる。
【0042】
次に、本システムにおける発電・負荷の分担制御について説明する。この発電・負荷分担の制御は、前述した本システムにおける動作モードH15およびH16(図2)に対応する制御である。
図3には、インバータ15への電力供給可能領域が表されており、この領域内で、インバータ15の電気負荷への電力供給を可能としている。この電力供給可能領域は、インバータ入力電圧限界を表す曲線D、インバータ最大出力を表す直線E、インバータ入力電流の上限を表す曲線F、機関最低速を表す直線J、によって囲まれた領域(イ)として予め設定されている。インバータ15に対しては、インバータ15を保護するため、その入力電流と入力電圧に対して、予め有効範囲(所定の上限値)が設定されている。この有効範囲を、図3には、インバータ入力電流の上限を曲線Fとして、インバータ入力電圧限界を曲線Dとして表している。なお、曲線Fは発電機10の発電機出力上限を示す曲線でもあり、また、所定のエンジン回転数での最大発電量を表す曲線でもある。
また、図3に示すインバータ15への電力供給可能領域は、言い換えれば、発電機10の発電出力可能領域であり、つまり、図3に表されている領域(イ)内において、発電機10は発電出力を行うことを可能としている。
【0043】
図3において、横軸はエンジン回転数である。エンジン回転数がRHのときインバータ15が最大出力(直線E)となっており、このとき、発電機10の発電量は最大である。つまり、回転数をRH以上に増加させても、発電機10の発電量はこれ以上増加しない。後述するように、このRHは最大目標回転数として設定されている。
なお、以上の図3についての説明においては、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷(エンジン航走負荷)については、言及していない。以下では、このセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷についても考慮するものとする。
【0044】
ここで、本システムにおける動作モードH15およびH16について、図2を参照して説明する。H15およびH16は、リレー18がオフとなっているためモータ5によるエンジンアシストを行わず、エンジン2のみの駆動による航走モードとなっている。つまり、H15およびH16は、セイルドライブ3への動力出力、および発電を行う動作形態となっている。
また、H15では、リレー11・15a・17がオンとなっているため、発電機10、インバータ15、およびバッテリ14が作動状態となっている。つまり、H15はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でバッテリ14を充電およびインバータ15の電気負荷に電力供給を行うモードである。
このH15に対し、H16では、リレー17がオフとなっているため、バッテリ14が停止状態となっておりバッテリ14の充放電を行っていない。つまり、H16はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でインバータ15の電気負荷に電力供給を行うモードである。
【0045】
このように、H15およびH16では、エンジン2の駆動により、発電機10を作動させて発電した電力は、インバータ15の電気負荷への電力供給、またはバッテリ14の充電により消費される。このとき、発電機10の発電出力可能な範囲が、領域(イ)として図3に表されているのである。
ところが、船舶が航走状態にあるH15およびH16では、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷を考慮する必要があるため、エンジン2の駆動力をすべて発電機10の発電に利用できるわけではない。通常航走時には、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷は、舶用3乗負荷という形で表され、この舶用3乗負荷に相当する負荷を、図3では、曲線Lで表している。ここで、「舶用3乗負荷」とは、通常航走時である定常状態では、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷は、プロペラ4の回転数の3乗に比例するというものである。
このように、通常航走時においては、エンジン2の駆動力は、発電機10による発電出力と、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力とに振り分けられ、以下、この分担制御について説明する。
【0046】
まず、本システムの通常航走時の分担制御について説明する前に、船舶の停船時の制御について説明する。停船時においては、前述したセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷を必要としないため、エンジン2の駆動力を全て発電機10の発電に利用することができる。よって、停船時には、通常航走時における後述するような分担制御を行う必要はない。
【0047】
停船時においては、本システムは、例えば図2のH17の停船モードとなっている。図2に示すように、停船モードは、各リレー11・15a・17・18のオン・オフ、エンジン2、発電機10、インバータ15、バッテリ17、モータ5、およびDC/DCコンバータ13の動作状態は、前述したH15またはH16の動作モードと同様であるが、セイルドライブ3のクラッチが「断」となっているため、エンジン2の駆動力がセイルドライブ3およびプロペラ4に伝達されず、これにより船舶は航走を行わず停船する。ただし、図2においては、H17をH15に対応させたモードとしており、H16に対応するモードについては図示していない。
H17では、エンジン2を作動させ、リレー11・15a・17をオンとして、発電機10、インバータ15、およびバッテリ14を作動させ、リレー18をオフとして、モータ5を停止させている。そして、セイルドライブ3のクラッチが「断」となっている。つまり、H17は、エンジン2の駆動力を全て発電機10の発電に用いて、これにより発電された電力でバッテリ14を充電し、インバータ15の電気負荷に電力を供給するモードである。また、言い換えれば、H17は、セイルドライブ3への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態となっている。
【0048】
前述したように、図3に示すような発電機10の発電出力可能領域が領域(イ)として設定されているため、次のような発電制御を行う。停船時には、まず、エンジン回転数に対して最大目標回転数RHを予め設定し、この最大目標回転数RH以下のエンジン回転数で発電制御を行うこととする。ここで、最大目標回転数RHは、インバータ15への入力電流が最大であるインバータ最大出力(図3の直線E)を、出力可能な最小のエンジン回転数として設定される。
H17では、バッテリ14の充電およびインバータ15の電気負荷への電力供給を行うだけの電力が必要とされるが、最大目標回転数RH以下のエンジン回転数で、エンジン回転数を制御して、必要な電力だけ発電機10で発電を行うこととする。つまり、必要な電力を確保できるように、最大目標回転数RHの範囲内で発電を行う。
このように、停船時には、予め設定された最大目標回転数RH以下の回転数でエンジン2の運転を行うことにより、必要となる電力だけ効率よく発電を行い、インバータ15の電気負荷に対しても効率よく電力供給を行うことができる。なお、H16に対応する停船モードでは、バッテリ14の充電を行わないため、インバータ15に接続される電気負荷に必要な電力に応じて、最大目標回転数RHの範囲内で、発電機10による発電を行うこととする。
【0049】
次に、本システムの通常航走時の発電・負荷分担制御について、図3、図4を用いて説明する。通常航走時には、エンジン2の駆動力の発電・負荷分担制御を、エンジン回転数に応じて行うこととしている。H15およびH16の通常航走時には、発電機10による発電機出力と、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力とが必要となる。このセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷は、図3において、曲線L(舶用3乗負荷に相当する曲線)で表されている。つまり、通常航走時である定常状態においては、曲線Lで表される分だけ、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力としてエンジン2の駆動力が消費され、残りのエンジン2の駆動力が発電機10の発電機出力として利用可能となる。つまり、この分担制御は、エンジン出力のうち、エンジン航走負荷であるセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷に必要な出力を、まず確保し、余剰のエンジン出力を発電機10の発電に用いるというものである。発電機10により発電された電力は、H15ではインバータ15の電気負荷への電力供給およびバッテリ14の充電に充てられ、H16ではインバータ15の電気負荷への電力供給に充てられる。
そして、通常航走時での発電機10の発電出力可能領域を、図3において、前述した領域(イ)から曲線Jより下の部分を差し引いた領域として、設定する。つまり、発電機10の発電出力可能領域は、インバータ入力電圧限界を表す曲線D、インバータ最大出力を表す直線E、インバータ入力電流の上限(発電機出力上限)を表す曲線F、機関最低速を表す曲線J、および舶用3乗負荷に相当する曲線Lによって囲まれた領域(ロ)として予め設定される。
例えば、図3において、エンジン回転数がR1のときには、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷に必要な出力として、まずP1が必要となる。このP1は予めシステムコントローラ7により記憶されたエンジン回転数とエンジン航走負荷との関係(図3の曲線J)から演算される。また、システムコントローラ7には、予めエンジン回転数と発電機10の最大発電量との関係(図3の曲線F)が記憶されており、この関係よりエンジン回転数R1での最大発電量G1が演算される。そして、最大発電量G1からP1を減ずることにより得られる(G1−P1)が、発電機10により発電出力可能な電力となる。
このように、この発電・負荷分担制御では、回転数センサ35がエンジン回転数検出手段として、システムコントローラ7がエンジン航走負荷(動力負荷)演算手段、最大発電量演算手段、および発電可能量演算手段として、それぞれ機能している。
【0050】
このような発電・負荷分担制御を、通常航走時のエンジン回転数に応じて自動的に行うようにする。このため、図3に示すように、機関最低速RLと前記最大目標回転数RHとの間を、予め幾つかの所定の回転数R1・R2・R3・R4で区切り、複数の回転域に分割する。図3においては、機関最低速RLと最大目標回転数RHとの間に、5つの回転域を設定しており、それぞれの回転域に応じて分担制御を行うこととしている。
【0051】
次に、本システムの発電・負荷分担制御における、所定のエンジン回転数に対応する発電可能量を決定する手順について、図4を参照しながら説明する。この手順は、所定のエンジン回転数の回転域(例えば、図3のR2〜R3の回転域)での発電機10による発電可能量を決定する手順である。
まず、システムコントローラ7の指示によってエンジン2の回転数を回転数センサ35により検出する(ステップS1)。このとき、検出されたエンジン回転数はシステムコントローラ7に入力される。次に、検出されたエンジン回転数が、所定の回転域(図3、図4では、R2〜R3の回転域)に属するか否かが判定される(ステップS2)。所定の回転域に属しない場合には、この回転域に対応する制御を行わず、終了する。一方、所定の回転域に属する場合には、システムコントローラ7には、予めエンジン回転数とプロペラ負荷トルクTとの関係が記憶されており、この関係を用いて、この回転域の上限値R3に対応するプロペラ負荷トルクTを決定する(ステップS3)。プロペラ負荷トルクTは、通常航走時に、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するために必要なトルクである。なお、システムコントローラ7には、それぞれの回転域の上限値に対応するプロペラ負荷トルクを、最低限記憶させておけばよい。
【0052】
次に、求められたプロペラ負荷トルクTからPS(馬力)単位の出力を算出し、算出されたPS単位の出力を、kW(キロワット)単位の出力に変換する(ステップS4)。PS単位の出力は、次式(1)を用いて、プロペラ負荷トルクTから算出される。
T=75×60×PS/2π×N ・・・(1)
ここで、PSはPS単位の出力、Nはエンジン回転数である。PSとkWとの間には、次式(2)の関係がある。
1PS=0.7355kW ・・・(2)
この式(2)を用いて、PS単位の出力をkW単位の出力P3に換算する。このように得られたkW単位の出力P3は、図3においては、曲線L上にある。なお、以上のステップS3乃至ステップS5に替えて、予めシステムコントローラ7にエンジン回転数と、kW単位の出力P3との関係(図3の曲線Lのような関係)を記憶させておき、この関係を用いて、ある所定の回転域の上限値に対応するkW単位の出力P3を決定することとしてもよい。
【0053】
次に、図3の曲線Fを用いて所定の回転域の下限値(図3、図4では、R2)に対応する最大発電量G2(単位はkW)を算出する(ステップS5)。最大発電量とは、停船時、つまり、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷がかかっていない場合の発電機10の発電可能量であり、前述したように図3においては、インバータ入力電流の上限を示す曲線Fにより表されている。そして、算出された最大発電量G2から前記出力P3を減ずる(ステップS6)。こうして、得られた値(G2−P3)を発電可能量として決定し、この発電可能量(G2−P3)を表示モニタ23にモニタ出力する(ステップS7)。
【0054】
このように算出された発電可能量(G2−P3)は、エンジン回転数が回転域R2〜R3にある場合の発電機10の発電出力可能な電力である。そして、発電機10により発電量(G2−P3)だけ発電を行う場合には、エンジン2の回転数を所定の回転域の下限値(図3、図4では、R2)まで減少させて(図3の太い矢印)、行うこととする。
【0055】
以上のように、通常航走時の発電機10の発電可能量をエンジン回転数に応じて自動的に算出して発電を行う場合には、予め設定された複数の回転域に対応させて、段階的に発電可能量を決定している。図3においては、機関最低速RLと最大目標回転数RHとの間に5つの回転域を設定し、検出されたエンジン回転数が、回転域RL〜R1に属すれば発電可能量をGL−P1、回転域R1〜R2に属すれば発電可能量をG1−P2、回転域R2〜R3に属すれば発電可能量をG2−P3、回転域R3〜R4に属すれば発電可能量をG3−P4、回転域R4〜RHに属すれば発電可能量をG4−PHとしている。つまり、エンジン回転数が所定の回転域に属する場合には、所定の発電量を発電機10で発電することとしている。このように、エンジン回転数に対して複数の回転域を設定し、それぞれの回転域において、回転域の下限の回転数での最大発電量から回転域の上限の回転数でのエンジン航走負荷である出力を減じた値を、発電可能量としている。なお、区切りとなるエンジン回転数を変更したり、増減させたりすることにより、回転域の設定を変更することが可能である。
【0056】
また、エンジン回転数が最大目標回転数RHよりも大きい場合には、最大目標回転数RH以下の回転数までエンジン回転数を減少させることとする(例えば、図3の細い矢印)。
また、決定された発電可能量が、必要となる供給電力に比べて特に多い場合には、エンジン回転数を複数の回転域にわたって、段階的に減少させて、発電を行うこととする。
【0057】
このようにエンジン回転数に応じた発電・負荷分担制御を行っている。すなわち、通常航走時に必要となるエンジン航走負荷を、まず確保して、残りのエンジン出力により発電機10を作動させて発電を行っている。そして、発電機10の発電電力は、H15ではインバータ15の電気負荷への電力供給およびバッテリ14の充電に充てられ、H16ではインバータ15の電気負荷への電力供給に充てられている。
これにより、発電機10の発電出力可能領域(イ)内において、エンジン回転数に応じて発電機出力とエンジン航走負荷との分担を適切に制御することができる。また、停船時に発電のみを行う動作モードと、航走および発電を行う動作モードとを使い分けることにより目的にしたがった適切な発電ができ、航走中の発電量を抑えることにより、発電の際の回転変動を抑えることができ、航走中の操作者に違和感を与えることがなくなる。
また、エンジン回転数に対して複数の回転域を設定して、エンジン回転数が所定の回転域に属する場合には所定の発電量を発電機10で発電することにより、発電量を容易に決定することができ、簡便な制御とすることができる。また、発電可能量を表示モニタ23に表示することにより、予め発電可能な量を知ることができ、操船者にとって航走中に電気負荷を使用しやすくなり、安心して航走できる。
【0058】
次に、本システムにおける動作モードH4およびH9、並びにH6およびH11に対応する制御について、図1、図2を用いて説明する。モードH4およびH9、並びにH6およびH11は、リレー18がオンとなっているためモータ5によるエンジンアシストを行って、エンジン2とモータ5により航走を行うモードである。また、リレー17がオフとなっているためバッテリ14の充放電は行っていない。
また、H4およびH9では、リレー11がオン、リレー15aがオフとなっているため、発電機10が作動状態、インバータ15が停止状態となっている。つまり、H4およびH9は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するモードであり、モータ5の駆動源は発電機10の電力であり、発電機10により発電された電力は、DC/DCコンバータ13により降圧されて全てモータコントローラ6に供給される。
H4およびH9に対し、H6およびH11では、リレー15aがオンとなっており、インバータ15が作動状態となっている。つまり、H6およびH11は、エンジン2および発電機10の電力により駆動されるモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でインバータ15の電気負荷に電力供給を行うモードである。
前述したように、H4とH9との違い、およびH6とH11との違いは、本システムを搭載した船舶が定常(=定速)航行状態か加速航行状態かの違いである。よって、以下では、主としてH4およびH6について、説明することとする。
【0059】
H4およびH6では、モータ5を作動させて、その回転力をセイルドライブ3およびプロペラ4に伝達するエンジンアシストを行っている。モータ5を駆動するためには、モータコントローラ6に電力供給を行う必要がある。この電力供給は、発電機10により発電された電力を、整流機器12により整流・平滑し、DC/DCコンバータ13により降圧して、モータコントローラ6に供給することとしている。そして、リレー17をオフとしてバッテリ14からは、電力供給を行わないこととしている。つまり、H4およびH6は、エンジン2の駆動により発電機10を作動させ、発電機10で発電された電力を、バッテリ14を介さずにモータコントローラ6に供給して、モータ5を作動させるモードとしている。このとき、発電機10の発電電力は、H4では、全てモータ5を駆動するためにモータコントローラ6に供給されるが、H6では、インバータ15が作動しているため、インバータ15の電気負荷とモータコントローラ6とに供給される。電力供給を受けたモータコントローラ6は、前述したように、界磁電流で発生させた磁界と電機子電流によりモータ5を駆動させ、これらの電流または電圧を制御することによりモータ5の回転数およびトルクを制御している。
【0060】
このように、モータ5によるエンジンアシストを行う場合に、発電機10の発電電力を、バッテリ14を介さずに、モータコントローラ6に供給することで、バッテリ14への充電による電力のロスをなくすことができる。
また、リレー17をオンとすることにより、H4またはH6から、バッテリ14の充放電を行うモードであるH5(H10)またはH7(H12)に移行することが可能である。例えば、発電機10の発電電力よりもモータ5駆動のための電力が多い場合には、リレー17をオンとすることによりバッテリ14を放電状態とし、逆に、少ない場合には、リレー17をオンとすることによりバッテリ14を充電状態とすることができる。このように、必要となるモータ5の出力を発電機10の発電電力により賄うとともに、エンジン航走負荷およびインバータ15の電気負荷の変動分を、バッテリ14の充放電により補正することを可能としている。また、これにより、バッテリ14の寿命が延び、常にバッテリ14の充放電を行う制御と比べて、細かなSOC管理を必要としない。
【0061】
次に、トローリング用の電気負荷を用いてプロペラ4の回転数を減少させる制御について説明する。この制御は、前述した本システムにおける動作モードH15およびH16(図2)に対応する制御である。「トローリング」とは、船舶、特に漁船における運転の一つであり、海面上の所定位置に船舶を止めて漁を行う場合に、潮の流れに対して船舶を安定させるために、プロペラ4を低回転数に保って行う運転をいう。
H15およびH16は、前述したように、エンジン2の駆動によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でバッテリ14を充電(H15のみ)およびインバータ15の電気負荷に電力供給を行うモードである。この制御では、トローリング用の電気負荷を別に設けて、該トローリング用の電気負荷をインバータ15に接続しておき、トローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ回転数を減少させてトローリング運転の実現を図る。トローリング運転を行う場合には、操作部8のレバーあるいはボタンを操作して、インバータ15に接続される負荷をトローリング用の電気負荷に切り換えて、トローリングモードとする。
【0062】
H15およびH16では、エンジン2の駆動力は、セイルドライブ3およびプロペラ4の駆動と発電機10での発電に充てられる。そして、発電機10にて発電された電力は、バッテリ14の充電(H15のみ)に用いられるほか、インバータ15に接続されるトローリング用の電気負荷により消費される。トローリングモードとなったH15およびH16では、エンジン2の出力のうち、トローリング用の電気負荷により消費される電力を、発電機10での発電出力として確保し、余剰のエンジン出力によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動することとしている。つまり、エンジン回転数が一定であれば、インバータ15に接続されるトローリング用の電気負荷が大きいほどトローリング用の電気負荷により消費される電力が多くなり、これによりセイルドライブ3およびプロペラ4の駆動に用いられるエンジン出力が少なくなり、プロペラ4の回転数は減少する。プロペラ4の回転数が減少すると、船舶の航走速度が低下し、トローリング運転を実現できる。トローリング時の船舶の速度は、プロペラ4の回転数によって定まるため、速度調節を行うには、インバータ15に接続するトローリング用の電気負荷の量を調節することにより、プロペラ4の回転数を増減させればよい。
【0063】
このように、インバータ15にトローリング用の電気負荷を接続して、このトローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ4の回転数を減少させたトローリング運転を実現できる。また、セイルドライブ3のクラッチを滑らせることにより、機械的にプロペラ4の回転数減少を行う必要がないため、セイルドライブ3のクラッチの焼け付き等を防止できる。
【0064】
以上に述べたハイブリッドシステムAに替えて、図5に示すようなハイブリッドシステムBでも前述したような制御を行うことが可能である。
ハイブリッドシステムBは、ハイブリッドシステムAを簡略化した構成をしており、ハイブリッドシステムAからモータ5、モータコントローラ6、DC/DCコンバータ13、バッテリ14等を除いた構成となっている。そして、ハイブリッドシステムBでは、ハイブリッドシステムAのようにモータ5を備えていないため、モータ5のみによる駆動するモードおよびモータ5によるエンジンアシストをするモードはなく、エンジン2のみにより駆動するモードのみとなっている。図6のP1は図2のH13と同様のモードであり、P2はH16と同様のモードであり、また、P3の停船モードはH17と同様のモードである。ハイブリッドシステムBでは、ハイブリッドシステムAと比べてきめ細かなモードは実現できない代わりに機器点数を低減できるので本質的に生産性(特に組立性)および信頼性が向上できる。
【0065】
ハイブリッドシステムBにも、システム1に発電機10およびインバータ15が備えられており、前述したハイブリッドシステムAと略同様の制御を行っている(図3、図4参照)。
図5に示すように、発電機10がエンジン2と動力伝達装置3との間に介装されており、該発電機10はエンジン2により作動される。発電機10により発電された電力は、整流機器12により、整流・平滑された後、インバータ15に入力され、該インバータ15により交流に変換されて、切換機器19を介して出力ソケット20から船内供給できるようにしている。つまり、発電機10の発電機出力は全てインバータ15を介して電気負荷に供給される。
【0066】
発電・負荷の分担制御は、図6の本システムにおける動作モードP2に対応する制御となっており、この制御では、回転数センサ35がエンジン回転数検出手段として、システムコントローラ7がエンジン航走負荷(動力負荷)演算手段、最大発電量演算手段、および発電可能量演算手段として、表示モニタ23が表示出力手段として、それぞれ機能している。
【0067】
また、トローリングを行う制御は、図6の本システムの動作モードP2に対応する制御となっており、この制御では、インバータ15にトローリング用の電気負荷を接続して、このトローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ4の回転数を減少させて、トローリング運転を実現させている。
【0068】
また、図7に示すようなハイブリッドシステムCにおいて、前述したような制御を行うことも可能である。
ハイブリッドシステムCの構成は、ハイブリッドシステムAの構成を変更したものとなっており、その機能は略同様のものとなっている。すなわち、ハイブリッドシステムCにおけるモータジェネレータ(M/G)40が、ハイブリッドシステムAのモータ5と発電機10に相当する。また、ハイブリッドシステムCにおけるVVVFインバータコンバータ(可変電圧可変周波数インバータコンバータ)42と単相CVCFインバータ(単相定電圧定周波数インバータ)43と昇降圧チョッパ44とにより構成されるインバータ部41が、ハイブリッドシステムAにおけるモータコントローラ6とDC/DCコンバータ13と整流機器12とインバータ15に相当する。また、ハイブリッドシステムCは、後述するようにスタータ機能を備えているため、ハイブリッドシステムAにおけるエンジン2始動用のスタータモータ2a、スタータバッテリ24等に相当するものを備えていない。
【0069】
図7に示すように、モータジェネレータ40は、システム1において、エンジン2と動力伝達装置3との間に介装されている。モータジェネレータ40が発電機器として機能する場合(図8のM4からM7、および図11の電力供給機能の場合)には、エンジン2の駆動によりモータジェネレータ40が作動され、該モータジェネレータ40により発電された電力(発電機出力)はインバータ部41に入力され、該インバータ部41からバッテリ14への充電や、切換機器19、出力ソケット20を介して船内供給を行っている。また、モータジェネレータ40が、モータとして機能する場合(図8のM1からM3、図9のスタータ機能、および図10のアシスト機能の場合)には、エンジン2の始動や、航走のアシストを行っている。
【0070】
インバータ部41のVVVFインバータコンバータ42は、モータジェネレータ40が発電機器として機能する場合にはインバータ部41に入力される発電機出力の整流・平滑を行い、また、モータジェネレータ40がモータとして機能する場合にはモータ制御を行う。また、VVVFインバータコンバータ42はシステムコントローラ7と接続されており、該システムコントローラ7はVVVFインバータコンバータ42に対し、モータとしてのモータジェネレータ40の起動(回転数)指示、およびアシスト(トルク)指令を出力する。一方、VVVFインバータコンバータ42はシステムコントローラ7へモータとしてのモータジェネレータ40の回転数、トルク、アラーム、直流電圧を送る。モータジェネレータ40の回転数は、回転数センサ(図示略)により検出される。ここで、モータジェネレータ40は、エンジン2のクランク軸と常時同期回転する構成としているため、回転数センサでモータジェネレータ40の回転数を検出することにより、エンジン2の回転数を知ることができる。よって、回転数センサは、エンジン回転数検出手段として機能することとなる。
【0071】
単相CVCFインバータ43は、該単相CVCFインバータ43に接続される電気負荷に電力を供給するときに作動して、その供給電力を所定の周波数の交流電力として供給できるようにしている。単相CVCFインバータ43には、該単相CVCFインバータ43に接続される電気負荷に供給される電流および電圧を検出するための電流センサおよび電圧センサ(図示略)が備えられている。また、単相CVCFインバータ43はシステムコントローラ7と接続されており、該システムコントローラ7は単相CVCFインバータ43に対し、運転・停止指示を出力する。一方、単相CVCFインバータ43はシステムコントローラ7へ前記電圧センサにより検出した交流電圧、電流センサにより検出した交流電流、交流電力、アラームを送る。
【0072】
昇降圧チョッパ44はバッテリ14と接続されており、該バッテリ14が放電を行う場合には、昇圧チョッパとして機能してバッテリ14の放電電圧を所定の電圧に昇圧し、また、バッテリ14への充電を行う場合には、降圧チョッパとして機能して、バッテリ14への充電電圧を所定の電圧に降圧する。また、昇降圧チョッパ44はシステムコントローラ7と接続されており、該システムコントローラ7は昇降圧チョッパ44に対し、運転・停止指示、充電電流指示、充電指示を出力する。一方、昇降圧チョッパ44はシステムコントローラ7へバッテリ電圧、充放電電流、アラームを送る。
【0073】
ハイブリッドシステムCの動作モードを図8から図12により詳しく説明する。
図9には、エンジン2を始動するときの電気回路の作動および駆動力の伝達状態が示されている。バッテリ14から昇降圧チョッパ44により昇圧された電力がVVVFインバータコンバータ42により所要の電圧および周波数に変換されて、モータジェネレータ40に供給され、モータジェネレータ40がモータとして機能してエンジン2を始動する。これは、ハイブリッドシステムAおよびハイブリッドシステムBと比べてハイブリッドシステムC特有のモードである。ハイブリッドシステムAおよびハイブリッドシステムBに用いられる発電機10、並びにハイブリッドシステムCに用いられるモータジェネレータ40は、エンジン2のクランク軸と常時同期回転する構成である。このため、モータジェネレータ40をモータとして駆動すればエンジン2の始動が可能となる。一方、ハイブリッドシステムAの場合、モータ5はセイルドライブ3およびプロペラ4と常時同期回転する構成であり、エンジン2とはセイルドライブ3に内装されるクラッチにより断接されるからである。これにより、エンジン2を始動するためのスタータバッテリ24等を削減できる。
【0074】
図10には、モータジェネレータ40によりエンジンアシストを行うときの電気回路の作動および駆動力の伝達状態が示されている。バッテリ14からモータジェネレータ40までの電気回路の作動状態は図9と同様である。モータジェネレータ40およびエンジン2の駆動力の和が、セイルドライブ3およびプロペラ4の駆動力となる。これにより、モータジェネレータ40によるエンジンアシストによりエンジン2を燃費の良い回転域で使用することができ、かつ、モータジェネレータ40の駆動源もバッテリ14であるので本システムの燃費性を向上できる。
【0075】
図11には、モータジェネレータ40により発電された電力により単相CVCFインバータ43を介して電力供給、またはバッテリ14の充電を行うときの電気回路の作動および駆動力の伝達状態が示されている。エンジン2によりセイルドライブ3およびプロペラ4並びにモータジェネレータ40が駆動される。これにより、モータジェネレータ40が発電を行い、その電力がVVVFインバータコンバータ42により整流・平滑され、その後、単相CVCFインバータ43により所定の電圧および周波数に変換されて電気負荷へ供給される。このとき、整流・平滑後の電力に余剰があれば昇降圧チョッパ44により降圧されてバッテリ14の充電に費やされる。これにより、航行および単相CVCFインバータ43の電気負荷への電力供給が並立できる。更にバッテリ14の充電も可能となる。
【0076】
図12には、バッテリ14により昇降圧チョッパ44および単相CVCFインバータ43を介して電力供給を行うときの電気回路の作動状態が示されている。バッテリ14から昇降圧チョッパ44により昇圧された電力が単相CVCFインバータ43により所定の電圧および周波数に変換されて電気負荷へ供給される。これは、ハイブリッドシステムAおよびハイブリッドシステムBと比べてハイブリッドシステムC特有のモードである。これにより、モータジェネレータ40で発電される電力が不足するときにその補償が可能となる。また、エンジン2の停止中でも単相CVCFインバータ43の電気負荷への電力供給が可能となる。
【0077】
そして、図8で示すM1は、図9または図10で表される動作モードである。M2は、図10で表される動作モードである。M3は、図9または図10、および図12で表される動作モードの組合せモードである。M4は、図2のH13と同様の動作モードである。M5は、図11の内、単相CVCFインバータ43による電力供給が停止している動作モードである。M6は、図11で表される動作モードである。M7は、図11の内、バッテリ14の充電が停止している動作モードである。M8は、図12で表される動作モードである。
【0078】
ハイブリッドシステムCでは、ハイブリッドシステムAと比べてきめ細かなモードは実現できない代わりに配線を低減できるので本質的に生産性(特に組立性)および信頼性が向上できる。更に、ハイブリッドシステムAおよびハイブリッドシステムBと比べてエンジン2の始動のためのスタータバッテリ24等が削減できるので、本システムを搭載した船舶の空間利用性を向上できる。また、モータジェネレータ40で発電される電力が不足するときにその補償が可能となるとともに、エンジン2の停止中でも単相CVCFインバータ43の電気負荷への電力供給が可能となるので、電力使用の利便性が向上する。
【0079】
ハイブリッドシステムCには、システム1に発電機器として機能するモータジェネレータ40およびインバータ部41が備えられており、前述したハイブリッドシステムAと略同様の制御を行っている(図3、図4参照)。発電・負荷の分担制御は、図8の本システムにおける動作モードM6およびM7に対応する制御となっており、この制御では、モータジェネレータ40に備えられる回転数センサがエンジン回転数検出手段として、システムコントローラ7がエンジン航走負荷(動力負荷)演算手段、最大発電量演算手段、および発電可能量演算手段として、表示モニタ23が表示出力手段として、それぞれ機能している。
【0080】
また、トローリングを行う制御は、図8の本システムの動作モードM6およびM7に対応する制御となっており、この制御では、単相CVCFインバータ43にトローリング用の電気負荷を接続して、このトローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ4の回転数を減少させて、トローリング運転を実現させている。
【0081】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、請求項1に示す如く、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態と、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態とを有するとともに、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態では、予めエンジン回転数の最大目標回転数を設定し、最大目標回転数以下のエンジン回転数で発電機器による発電を行い、かつ、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態では、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、検出されたエンジン回転数に基づいて予め記憶されたエンジン回転数とエンジン動力負荷との関係よりエンジン動力負荷を演算するエンジン動力負荷演算手段と、予め記憶されたエンジン回転数と発電機の最大発電量との関係より最大発電量を演算する最大発電量演算手段と、得られた最大発電量からエンジン動力負荷を減ずることにより発電可能量を演算する発電可能量演算手段とを備え、得られた発電可能量を発電機器により発電するので、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態では、最大目標回転数以下の回転数でエンジンの運転を行うことにより、必要となる電力だけ効率よく発電することができ、インバータの電気負荷に対しても効率よく電力供給を行うことができる。また、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態では、エンジン回転数に応じて発電機出力とエンジン動力負荷との分担を適切に制御することができる。更には、この二つの動作形態を使い分けることにより目的にしたがった適切な発電を行うことができ、移動中の発電量を抑えることにより発電の際の回転変動を抑えることができ、移動中の操作者に違和感を与えることがなくなる。
【0082】
請求項2に示す如く、請求項1記載のハイブリッドシステムにおいて、エンジン回転数に対して複数の回転域を設定し、それぞれの回転域において、前記エンジン動力負荷手段により演算されるエンジン動力負荷を回転域の上限の回転数における値とし、前記最大発電量により演算される最大発電量を回転域の下限の回転数における値としたので、エンジン回転数が所定の回転域に属する場合には所定の発電量を発電機器で発電することにより、発電量を容易に決定することができ、簡便な制御とすることができる。
【0083】
請求項3に示す如く、請求項1または請求項2記載のハイブリッドシステムにおいて、前記発電可能量を表示出力可能とする表示出力手段を備えるので、予め発電可能な量を知ることができ、操作者にとって移動中に電気負荷を使用しやすくなり、安心して航走できる。
【0084】
請求項4に示す如く、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、発電機器により発電された電力を、コンバータを介して電動機器に供給して、電動機器を動力伝達装置の駆動源として用いるとともに、発電された電力によりバッテリを充電しないので、バッテリへの充電による電力のロスをなくすことができる。また、必要な場合にはバッテリの充放電を行うことができるため、バッテリの寿命を延ばすことができ、常にバッテリの充放電を行う制御と比べて、細かなSOC管理が必要でなくなる。
【0085】
請求項5に示す如く、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、インバータに接続するトローリング用の電気負荷を備えるので、トローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ回転数を減少させたトローリング運転を実現できる。また、動力伝達装置のクラッチを滑らせて、プロペラ回転数を減少させる必要がないため、動力伝達装置のクラッチの焼け付き等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハイブリッドシステムAを示す図。
【図2】ハイブリッドシステムAにおける動作モードの一例を示す図。
【図3】発電機の発電可能領域を示す図。
【図4】通常航走時での発電機の発電可能量を決定する手順を示す図。
【図5】ハイブリッドシステムBを示す図。
【図6】ハイブリッドシステムBにおける動作モードの一例を示す図。
【図7】ハイブリッドシステムCを示す図。
【図8】ハイブリッドシステムCにおける動作モードの一例を示す図。
【図9】ハイブリッドシステムCにおけるスタータ機能を示す図。
【図10】ハイブリッドシステムCにおけるモータジェネレータによる動力アシスト機能を示す図。
【図11】ハイブリッドシステムCにおける電力供給(発電あり)機能を示す図。
【図12】ハイブリッドシステムCにおける電力供給(発電なし)機能を示す図。
【符号の説明】
1 システム
2 エンジン
3 動力伝達装置
4 プロペラ
7 システムコントローラ
10 発電機
15 インバータ
35 回転数センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハイブリッドシステムに関し、特に、エンジンを動力伝達装置の駆動に用いるとともに発電機器の駆動源としても用いる場合に、エンジン出力の分担を適切に制御するハイブリッドシステムに関する。なお、本発明における「ハイブリッド」とは、エンジンから少なくとも機械的駆動力と電力を取り出すという意味である。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ハイブリッドシステムとして、例えば、電気自動車や船舶等の移動体に用いられているものがあり、移動(走行または航走)に必要な負荷トルクを、エンジンが負担するトルクとモータ(電動機器)が負担するトルクとに分担する技術が知られており、この技術においては、負荷トルクの分担制御は制御マップに基づいて行われている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。そして、エンジンの駆動により発電機器にて発電された電力を、モータを駆動するのに必要な電力に応じて制御しており、また、このモータの駆動電力は発電機器で発電した電力により補うこととしていた。また、バッテリの充電状態(SOC)を所定範囲内に管理することにより、バッテリの寿命の延長を図ることとしていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−190237号公報
【特許文献2】
特開2002−252904号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のハイブリッドシステムにおいては、以下のような不具合があった。
発電機器で発電した出力を、単にモータ駆動電力にしたがって制御するのみであったため、移動に伴い発電出力が大きく変動してしまうという不具合が合った。また、この発電出力の変動(負荷変動)によりエンジンの回転数が変動する問題があり、このため、移動中、操作者に違和感と与えてしまうという不具合があった。
また、モータ駆動電力を供給する際には、発電機器で発電した電力を一度バッテリに充電した後にモータに供給していたため、バッテリの充放電に伴うエネルギーを損失するという不具合が合った。
そこで、本発明では、発電(電気負荷)と、エンジン動力負荷(走行負荷または航走負荷)との分担を適切に制御することを課題とする。また、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態と、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態とを使い分け、移動中の発電量を抑えることにより、発電の際の回転変動を抑えて、移動中の操作者に違和感を与えないことを課題とする。また、バッテリ充放電に伴うエネルギー損失については、バッテリを介さずに発電された電力をそのままモータに供給する動作形態を、新たに設けることにより、ハイブリッドシステムの各動作形態にしたがった発電およびバッテリ充放電管理を行うことを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態と、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態とを有するとともに、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態では、予めエンジン回転数の最大目標回転数を設定し、最大目標回転数以下のエンジン回転数で発電機器による発電を行い、かつ、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態では、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、検出されたエンジン回転数に基づいて予め記憶されたエンジン回転数とエンジン動力負荷との関係よりエンジン動力負荷を演算するエンジン動力負荷演算手段と、予め記憶されたエンジン回転数と発電機の最大発電量との関係より最大発電量を演算する最大発電量演算手段と、得られた最大発電量からエンジン動力負荷を減ずることにより発電可能量を演算する発電可能量演算手段とを備え、得られた発電可能量を発電機器により発電するものである。
【0006】
請求項2においては、請求項1記載のハイブリッドシステムにおいて、エンジン回転数に対して複数の回転域を設定し、それぞれの回転域において、前記エンジン動力負荷手段により演算されるエンジン動力負荷を回転域の上限の回転数における値とし、前記最大発電量により演算される最大発電量を回転域の下限の回転数における値としたものである。
【0007】
請求項3においては、請求項1または請求項2記載のハイブリッドシステムにおいて、前記発電可能量を表示出力可能とする表示出力手段を備えるものである。
【0008】
請求項4においては、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、発電機器により発電された電力を、コンバータを介して電動機器に供給して、電動機器を動力伝達装置の駆動源として用いるとともに、発電された電力によりバッテリを充電しないものである。
【0009】
請求項5においては、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、インバータに接続するトローリング用の電気負荷を備えるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について添付の図面を用いて説明する。
図1は本発明の一つである「エンジン、発電機、モータ、インバータ、および動力伝達装置」よりなるハイブリッドシステム(以下、「ハイブリッドシステムA」という。)を示す図、図2はハイブリッドシステムAの動作モードの一例を示す図、図3は発電機の発電可能領域を示す図、図4は通常航走時での発電機の発電可能量を決定する手順を示す図、図5は本発明の一つである「エンジン、発電機、インバータ、および動力伝達装置」よりなるハイブリッドシステム(以下、「ハイブリッドシステムB」という。)を示す図、図6はハイブリッドシステムBの動作モードの一例を示す図、図7は本発明の一つである「エンジン、モータジェネレータ、インバータ、および動力伝達装置」よりなるハイブリッドシステム(以下、「ハイブリッドシステムC」という。)を示す図、図8はハイブリッドシステムCの動作モードの一例を示す図、図9はハイブリッドシステムCのスタータ機能を示す図、図10はハイブリッドシステムCのモータジェネレータによる動力アシスト機能を示す図、図11はハイブリッドシステムCの電力供給(発電あり)機能を示す図、図12はハイブリッドシステムCの電力供給(発電なし)機能を示す図である。
【0011】
本発明の一つであるハイブリッドシステムAについて説明する。
ハイブリッドシステムAは、図1に示すような構成である。ハイブリッドシステムAでは、水中推進用に備えられるプロペラ4の駆動をエンジン2とモータ5との両方により可能としている。なお、後述するように、図5に示すハイブリッドシステムB、あるいは、図7に示すハイブリッドシステムCのような構成とすることも可能である。また、以下では、ハイブリッドシステムを船舶について適用した実施例について説明しているが、その他の移動体(例えば、自動車等)に適用することも可能である。
【0012】
図1において、システム1は、エンジン2および動力伝達装置3を有しており、該動力伝達装置3としてはセイルドライブが用いられ、その後下部にはプロペラ4が接続されている。これにより、システム1は船舶の推進システムとして利用することができる。
エンジン2からの駆動力は動力伝達装置3によりプロペラ4に伝達され、その結果プロペラ4が回転駆動される。動力伝達装置3内にはクラッチが備えられており、該クラッチによりエンジン2からの駆動力の断接と動力伝達の回転方向(プロペラ4の回転方向)の切り換えを行うようにしている。
なお、本実施例においては、システム1は動力伝達装置3がエンジン2の下方へ大きく延出し、該動力伝達装置3に直接プロペラ4が取り付けられたセイルドライブに構成されているが、動力伝達装置3の後端部に、プロペラ4のプロペラ軸が装着されるマリンギアに構成することもできる。
【0013】
また、本システムにおいては、エンジン2と動力伝達装置(セイルドライブ)3との間に、発電機器である発電機10を介装している。エンジン2により発電機10を駆動して、該発電機10により発電された電力は、後述するように電動機駆動用に用いられたり、船内電力として供給されたりするようにしている。
【0014】
発電機10は、例えば、高周波発電機に構成されており、該発電機10の出力部には、リレー(電磁開閉器)11、整流機器12、インバータ15が接続されている。
また、発電機10は前記整流機器12を介して、DC/DCコンバータ(直流/直流コンバータ)13と接続されている。
【0015】
整流機器12は、例えば、平滑用コンデンサで構成されており、発電機10により発電された交流電力を整流・平滑化して、直流に変換する。整流機器12からDC/DCコンバータ13に送られた電力は、該DC/DCコンバータ13により所定の電圧に変圧されて、リレー17を介してバッテリ14を充電する。
【0016】
一方、整流機器12からインバータ15に送られた電力は、該インバータ15により交流に変換されて、切換機器19を介して出力ソケット20から交流電力として船内供給可能とされる。切換機器19にて商用電源(外部電源)とインバータ15により変換された交流電力とを切換可能としている。このように、インバータ15を介して電気負荷(AC出力)が接続できるようにしている。なお、切換機器19を切換スイッチで構成して手動により切り換えを行ってもよく、また、電磁接触器で構成してインバータ出力と商用電源との切り換えを自動で行ってもよい。電磁接触器で構成する場合には、該電磁接触器にシステムコントローラ7からオン・オフ信号が入力されるように、システムコントローラ7と接続しておく。そして、インバータ15には、リレー15aが内蔵されており、該リレー15aはシステムコントローラ7と接続されている。
【0017】
動力伝達装置3の上端部には電動機器(モータ)5が設置されており、該モータ5の出力軸は動力伝達装置3の伝達軸と接続されている。モータ5はモータコントローラ6と接続されており、該モータコントローラ6によりモータ5を制御する構成としている。また、モータコントローラ6はシステムコントローラ7と接続されており、該システムコントローラ7からの指令がモータコントローラ6へ入力されるようにしている。
また、モータコントローラ6は、リレー18を介して、前記DC/DCコンバータ13とバッテリ14に接続されており、バッテリ14、またはDC/DCコンバータ13を介して発電機10から電力供給を受けて、フィールド電流(界磁電流)で発生させた磁界とアマチュア電流(電機子電流)によりモータ5を駆動する。そして、モータコントローラ6がこれらの電流または電圧を制御してモータ5の回転数およびトルクを制御する。
【0018】
船体の前後進の切り換えやエンジン2の駆動力の調節は、船舶の操作部8に配設されるレバー9等の操作具を操作することによって行われる。レバー9には、例えば、シフトレバー、レギュレータレバー、モード切換レバー等があり、それぞれシステムコントローラ7と接続されている。そして、レバー9を操作することにより、システムコントローラ7にレバー位置に対応した信号が入力される。
【0019】
例えば、操作部8のシフトレバーを操作すると、シフトレバー位置(前進・中立・後進)に対応する信号がシステムコントローラ7に入力され、該システムコントローラ7によりシフトアクチュエータ21を作動させるようにしている。シフトアクチュエータ21は動力伝達装置3のクラッチに接続されており、該シフトアクチュエータ21の作動により、動力伝達装置3の伝動軸の正転・中立・逆転を切り換えて、前進・中立・後進の切り換えを行うこととしている。このように、シフトレバーを操作することにより、船体の前後進の切り換えを行っている。
【0020】
また、操作部8のレギュレータレバーを操作すると、レギュレータレバー位置に対応する信号がシステムコントローラ7に入力され、該システムコントローラ7によりレギュレータアクチュエータ22を作動させるようにしている。レギュレータアクチュエータ22はエンジン2のレギュレータに接続されており、該レギュレータアクチュエータ22の作動により、エンジン2における燃料噴射量を調節して、エンジン2の駆動力を調節可能としている。このように、レギュレータレバーを操作することにより、エンジン2の駆動力の調整を行っている。
【0021】
また、操作部8にはモード切換レバーが配設されており、該モード切換レバーを操作することにより、本システムの動作モード(動作形態)を切換可能としている。この動作モードの例としては、図2に示すようなものがあり、モード切換レバーにより、「航走モード」の切り換えを行う。そして、「航走モード」の切り換えを行うと、システムコントローラ7へモード信号が入力されて、該システムコントローラ7により各「航走モード」に対応した本システムの制御が行われるようにしている。
具体的には、図2に示すように「航走モード」の切り換えにより、プロペラ4の駆動を、エンジン2のみにより駆動するモード、エンジン2により駆動しつつ、モータ5により駆動をアシストするモード、モータ5のみにより駆動するモード、の3種類のパターンにより行うことを可能としている。また、これらの「航走モード」に加えて、船舶停船時における停船モードを有している。
【0022】
エンジン2内にはエンジン2始動用のスタータモータ2aと機関付発電機であるオルタネータ2bが備えられており、該スタータモータ2aはリレー25を介してスタータバッテリ24と接続され、該スタータバッテリ24はオルタネータ2bと接続されている。また、スタータモータ2a、オルタネータ2b、スタータバッテリ24はメインリレー26を介して前記システムコントローラ7と接続されている。オルタネータ2bからの発電出力は、エンジン2のスタータモータ2aを駆動するためのスタータバッテリ24に充電され、該スタータバッテリ24に蓄積された電力をエンジン2始動の際に用いるようにしている。
【0023】
以上のように構成される本システムにおいて、メインコントローラとしてのシステムコントローラ7は次のように機能して、本システムの制御を行う。前述したように、システムコントローラ7は操作部8のレバー9(シフトレバー、レギュレータレバー、モード切換レバー)と接続されている。また、システムコントローラ7はシフトアクチュエータ21およびレギュレータアクチュエータ22と接続されている。
【0024】
また、システムコントローラ7はエンジン2と接続されており、該エンジン2からシステムコントローラ7にエンジン回転数が入力される。エンジン2の回転数は、エンジン2に付設される回転数センサ35により検出される。
また、システムコントローラ7はモータ5と接続されており、該モータ5からシステムコントローラ7にモータ回転数およびモータ5の温度が入力される。モータ5の回転数は、モータ5に付設される回転数センサ36により検出され、モータ5の温度は、サーミスタ等の温度センサ(図示せず)により検出される。
【0025】
また、システムコントローラ7はモータコントローラ6と接続されており、該システムコントローラ7はモータコントローラ6に対して回転方向信号、出力信号、モード信号等を出力する。一方、モータコントローラ6は、モータ5に異常が発生した場合には、アラーム信号をシステムコントローラ7へ送る。
また、システムコントローラ7は発電機10と接続されており、該発電機10からシステムコントローラ7に発電機10の温度が入力される。発電機10の温度は、サーミスタ等の温度センサ(図示せず)により検出される。
【0026】
また、システムコントローラ7はリレー11・15a・17・18と接続されており、該システムコントローラ7は、図2に示すように、リレー11・15a・17・18のオン・オフ(開閉)を制御する。このオン・オフ制御は、船舶の航走状態、バッテリ14の充放電状態、インバータ15に接続される電気負荷(インバータ負荷)等の状態に基づいて行われている。
また、システムコントローラ7はDC/DCコンバータ13に接続されており、該システムコントローラ7はDC/DCコンバータ13に対して充電電流指示を送る。
【0027】
また、システムコントローラ7はバッテリ14と接続されており、該バッテリ14からシステムコントローラ7にバッテリ14の充放電状態を表す電圧値・電流値が入力される。バッテリ14の電圧値および電流値はそれぞれ、電圧センサ33、電流センサ34により検出される。
【0028】
また、システムコントローラ7はインバータ15に接続されており、該システムコントローラ7はインバータ15(リレー15a)に対してオン・オフ信号を出力する。一方、インバータ15はシステムコントローラ7に対してインバータ15に接続される電気負荷の状態を表すインバータ入力電圧値、インバータ入力電流値、アラーム信号を出力する。インバータ入力電圧値およびインバータ入力電流値は、それぞれ、電圧センサ31および電流センサ32により検出される。
【0029】
また、システムコントローラ7は表示モニタ23と接続されており、該表示モニタ23は表示出力手段として機能し、システムコントローラ7に入力される種々の検出値等を表示して、操船者が本システムの状態を把握できるようにしている。
【0030】
本システムでは、例えば、図2に示すようなH1からH17までの動作モードがある。以下、各モードについて説明する。
【0031】
H1およびH2は、モータ5のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するモードであり、モータ5の駆動源はバッテリ14である。これらのモードによりエンジン停止状態でも航行可能となる。
【0032】
H3およびH8は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するモードであり、モータ5の駆動源はバッテリ14である。これらのモードにより、発電機10が損傷等でその電力が使用できない場合であっても、モータ5によるエンジンアシストが可能となる。なお、本実施例で「エンジンアシスト」とは、セイルドライブ3およびプロペラ4の駆動負荷の一部をモータ5により賄うことを意味する。
【0033】
H4およびH9は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するモードであり、モータ5の駆動源は発電機10の電力である。これらのモードにより、バッテリ14が損傷等でその電力が使用できない場合であっても、モータ5によるエンジンアシストが可能となる。詳しくは後述する。
【0034】
H5およびH10は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動し、モータ5を駆動するに当たって発電機10の電力が不足するときはバッテリ14の放電により不足電力を補い、発電機10の電力に余裕があるときはバッテリ14を充電するモードである。これらのモードにより、モータ5の所要駆動力を確保してバッテリ14の充電が可能となる。
【0035】
H6およびH11は、エンジン2および発電機10の電力により駆動されるモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、インバータ15を介して発電機10の電力を供給するモードである。これらのモードにより、インバータ15の電気負荷への電力供給とモータ5によるエンジンアシストの両立が可能となる。詳しくは後述する。
【0036】
H7およびH12は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、インバータ15を介して発電機10の電力を供給し、モータ5を駆動するに当たって発電機10の電力が不足するときはバッテリ14の放電により不足電力を補い、モータ5の駆動およびインバータ15を介しての電力供給に当たって発電機10の電力に余裕があるときはバッテリ14を充電するモードである。これらのモードにより、インバータ15を介しての電力供給を安定化できるとともに、モータ5の所要駆動力を確保してエンジンアシストが可能となる。
【0037】
H13はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するのみであり発電機10はエンジン2と同期回転するが実質停止しているモードである。このモードにより、インバータ15を介しての電力供給およびモータ5の駆動が不要またはこれらの機器の損傷等により不能の場合にあってもエンジン航行が可能となる。
【0038】
H14はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でバッテリ14を充電するモードである。このモードにより、航行しながらバッテリ14の充電が可能となる。
【0039】
H15はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でバッテリ14を充電およびインバータ15を介して電力供給を行うモードである。このモードにより、航行、インバータ15を介しての電力供給およびバッテリ14の充電を並立できる。詳しくは後述する。
【0040】
H16はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、インバータ15を介して発電機10の電力を供給するモードである。このモードにより、航行およびインバータ15を介しての電力供給を並立できる。詳しくは後述する。
H17の停船モードについては、後述する。
【0041】
なお、H1とH2との違いは、本システムを搭載した船舶が定常(=定速)航行状態か加速航行状態かの違いである。H3とH8との違い、H4とH9との違い、H5とH10との違い、H6とH11との違い、およびH7とH12との違いについても同様である。
また、モータ5によるエンジンアシストによりエンジン2を燃費の良い回転域で使用することができ、かつ、モータ5の駆動源もバッテリ14またはエンジン2により駆動される発電機10の電力であるので本システムの燃費性を向上できる。
一方、エンジン2により駆動される発電機10の電力を、インバータ15を介して電気負荷へ供給できるので別個の発電機が不要とでき、本システムを搭載した船舶の空間利用性を向上できる。
【0042】
次に、本システムにおける発電・負荷の分担制御について説明する。この発電・負荷分担の制御は、前述した本システムにおける動作モードH15およびH16(図2)に対応する制御である。
図3には、インバータ15への電力供給可能領域が表されており、この領域内で、インバータ15の電気負荷への電力供給を可能としている。この電力供給可能領域は、インバータ入力電圧限界を表す曲線D、インバータ最大出力を表す直線E、インバータ入力電流の上限を表す曲線F、機関最低速を表す直線J、によって囲まれた領域(イ)として予め設定されている。インバータ15に対しては、インバータ15を保護するため、その入力電流と入力電圧に対して、予め有効範囲(所定の上限値)が設定されている。この有効範囲を、図3には、インバータ入力電流の上限を曲線Fとして、インバータ入力電圧限界を曲線Dとして表している。なお、曲線Fは発電機10の発電機出力上限を示す曲線でもあり、また、所定のエンジン回転数での最大発電量を表す曲線でもある。
また、図3に示すインバータ15への電力供給可能領域は、言い換えれば、発電機10の発電出力可能領域であり、つまり、図3に表されている領域(イ)内において、発電機10は発電出力を行うことを可能としている。
【0043】
図3において、横軸はエンジン回転数である。エンジン回転数がRHのときインバータ15が最大出力(直線E)となっており、このとき、発電機10の発電量は最大である。つまり、回転数をRH以上に増加させても、発電機10の発電量はこれ以上増加しない。後述するように、このRHは最大目標回転数として設定されている。
なお、以上の図3についての説明においては、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷(エンジン航走負荷)については、言及していない。以下では、このセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷についても考慮するものとする。
【0044】
ここで、本システムにおける動作モードH15およびH16について、図2を参照して説明する。H15およびH16は、リレー18がオフとなっているためモータ5によるエンジンアシストを行わず、エンジン2のみの駆動による航走モードとなっている。つまり、H15およびH16は、セイルドライブ3への動力出力、および発電を行う動作形態となっている。
また、H15では、リレー11・15a・17がオンとなっているため、発電機10、インバータ15、およびバッテリ14が作動状態となっている。つまり、H15はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でバッテリ14を充電およびインバータ15の電気負荷に電力供給を行うモードである。
このH15に対し、H16では、リレー17がオフとなっているため、バッテリ14が停止状態となっておりバッテリ14の充放電を行っていない。つまり、H16はエンジン2のみでセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でインバータ15の電気負荷に電力供給を行うモードである。
【0045】
このように、H15およびH16では、エンジン2の駆動により、発電機10を作動させて発電した電力は、インバータ15の電気負荷への電力供給、またはバッテリ14の充電により消費される。このとき、発電機10の発電出力可能な範囲が、領域(イ)として図3に表されているのである。
ところが、船舶が航走状態にあるH15およびH16では、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷を考慮する必要があるため、エンジン2の駆動力をすべて発電機10の発電に利用できるわけではない。通常航走時には、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷は、舶用3乗負荷という形で表され、この舶用3乗負荷に相当する負荷を、図3では、曲線Lで表している。ここで、「舶用3乗負荷」とは、通常航走時である定常状態では、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷は、プロペラ4の回転数の3乗に比例するというものである。
このように、通常航走時においては、エンジン2の駆動力は、発電機10による発電出力と、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力とに振り分けられ、以下、この分担制御について説明する。
【0046】
まず、本システムの通常航走時の分担制御について説明する前に、船舶の停船時の制御について説明する。停船時においては、前述したセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷を必要としないため、エンジン2の駆動力を全て発電機10の発電に利用することができる。よって、停船時には、通常航走時における後述するような分担制御を行う必要はない。
【0047】
停船時においては、本システムは、例えば図2のH17の停船モードとなっている。図2に示すように、停船モードは、各リレー11・15a・17・18のオン・オフ、エンジン2、発電機10、インバータ15、バッテリ17、モータ5、およびDC/DCコンバータ13の動作状態は、前述したH15またはH16の動作モードと同様であるが、セイルドライブ3のクラッチが「断」となっているため、エンジン2の駆動力がセイルドライブ3およびプロペラ4に伝達されず、これにより船舶は航走を行わず停船する。ただし、図2においては、H17をH15に対応させたモードとしており、H16に対応するモードについては図示していない。
H17では、エンジン2を作動させ、リレー11・15a・17をオンとして、発電機10、インバータ15、およびバッテリ14を作動させ、リレー18をオフとして、モータ5を停止させている。そして、セイルドライブ3のクラッチが「断」となっている。つまり、H17は、エンジン2の駆動力を全て発電機10の発電に用いて、これにより発電された電力でバッテリ14を充電し、インバータ15の電気負荷に電力を供給するモードである。また、言い換えれば、H17は、セイルドライブ3への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態となっている。
【0048】
前述したように、図3に示すような発電機10の発電出力可能領域が領域(イ)として設定されているため、次のような発電制御を行う。停船時には、まず、エンジン回転数に対して最大目標回転数RHを予め設定し、この最大目標回転数RH以下のエンジン回転数で発電制御を行うこととする。ここで、最大目標回転数RHは、インバータ15への入力電流が最大であるインバータ最大出力(図3の直線E)を、出力可能な最小のエンジン回転数として設定される。
H17では、バッテリ14の充電およびインバータ15の電気負荷への電力供給を行うだけの電力が必要とされるが、最大目標回転数RH以下のエンジン回転数で、エンジン回転数を制御して、必要な電力だけ発電機10で発電を行うこととする。つまり、必要な電力を確保できるように、最大目標回転数RHの範囲内で発電を行う。
このように、停船時には、予め設定された最大目標回転数RH以下の回転数でエンジン2の運転を行うことにより、必要となる電力だけ効率よく発電を行い、インバータ15の電気負荷に対しても効率よく電力供給を行うことができる。なお、H16に対応する停船モードでは、バッテリ14の充電を行わないため、インバータ15に接続される電気負荷に必要な電力に応じて、最大目標回転数RHの範囲内で、発電機10による発電を行うこととする。
【0049】
次に、本システムの通常航走時の発電・負荷分担制御について、図3、図4を用いて説明する。通常航走時には、エンジン2の駆動力の発電・負荷分担制御を、エンジン回転数に応じて行うこととしている。H15およびH16の通常航走時には、発電機10による発電機出力と、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力とが必要となる。このセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷は、図3において、曲線L(舶用3乗負荷に相当する曲線)で表されている。つまり、通常航走時である定常状態においては、曲線Lで表される分だけ、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力としてエンジン2の駆動力が消費され、残りのエンジン2の駆動力が発電機10の発電機出力として利用可能となる。つまり、この分担制御は、エンジン出力のうち、エンジン航走負荷であるセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷に必要な出力を、まず確保し、余剰のエンジン出力を発電機10の発電に用いるというものである。発電機10により発電された電力は、H15ではインバータ15の電気負荷への電力供給およびバッテリ14の充電に充てられ、H16ではインバータ15の電気負荷への電力供給に充てられる。
そして、通常航走時での発電機10の発電出力可能領域を、図3において、前述した領域(イ)から曲線Jより下の部分を差し引いた領域として、設定する。つまり、発電機10の発電出力可能領域は、インバータ入力電圧限界を表す曲線D、インバータ最大出力を表す直線E、インバータ入力電流の上限(発電機出力上限)を表す曲線F、機関最低速を表す曲線J、および舶用3乗負荷に相当する曲線Lによって囲まれた領域(ロ)として予め設定される。
例えば、図3において、エンジン回転数がR1のときには、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷に必要な出力として、まずP1が必要となる。このP1は予めシステムコントローラ7により記憶されたエンジン回転数とエンジン航走負荷との関係(図3の曲線J)から演算される。また、システムコントローラ7には、予めエンジン回転数と発電機10の最大発電量との関係(図3の曲線F)が記憶されており、この関係よりエンジン回転数R1での最大発電量G1が演算される。そして、最大発電量G1からP1を減ずることにより得られる(G1−P1)が、発電機10により発電出力可能な電力となる。
このように、この発電・負荷分担制御では、回転数センサ35がエンジン回転数検出手段として、システムコントローラ7がエンジン航走負荷(動力負荷)演算手段、最大発電量演算手段、および発電可能量演算手段として、それぞれ機能している。
【0050】
このような発電・負荷分担制御を、通常航走時のエンジン回転数に応じて自動的に行うようにする。このため、図3に示すように、機関最低速RLと前記最大目標回転数RHとの間を、予め幾つかの所定の回転数R1・R2・R3・R4で区切り、複数の回転域に分割する。図3においては、機関最低速RLと最大目標回転数RHとの間に、5つの回転域を設定しており、それぞれの回転域に応じて分担制御を行うこととしている。
【0051】
次に、本システムの発電・負荷分担制御における、所定のエンジン回転数に対応する発電可能量を決定する手順について、図4を参照しながら説明する。この手順は、所定のエンジン回転数の回転域(例えば、図3のR2〜R3の回転域)での発電機10による発電可能量を決定する手順である。
まず、システムコントローラ7の指示によってエンジン2の回転数を回転数センサ35により検出する(ステップS1)。このとき、検出されたエンジン回転数はシステムコントローラ7に入力される。次に、検出されたエンジン回転数が、所定の回転域(図3、図4では、R2〜R3の回転域)に属するか否かが判定される(ステップS2)。所定の回転域に属しない場合には、この回転域に対応する制御を行わず、終了する。一方、所定の回転域に属する場合には、システムコントローラ7には、予めエンジン回転数とプロペラ負荷トルクTとの関係が記憶されており、この関係を用いて、この回転域の上限値R3に対応するプロペラ負荷トルクTを決定する(ステップS3)。プロペラ負荷トルクTは、通常航走時に、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するために必要なトルクである。なお、システムコントローラ7には、それぞれの回転域の上限値に対応するプロペラ負荷トルクを、最低限記憶させておけばよい。
【0052】
次に、求められたプロペラ負荷トルクTからPS(馬力)単位の出力を算出し、算出されたPS単位の出力を、kW(キロワット)単位の出力に変換する(ステップS4)。PS単位の出力は、次式(1)を用いて、プロペラ負荷トルクTから算出される。
T=75×60×PS/2π×N ・・・(1)
ここで、PSはPS単位の出力、Nはエンジン回転数である。PSとkWとの間には、次式(2)の関係がある。
1PS=0.7355kW ・・・(2)
この式(2)を用いて、PS単位の出力をkW単位の出力P3に換算する。このように得られたkW単位の出力P3は、図3においては、曲線L上にある。なお、以上のステップS3乃至ステップS5に替えて、予めシステムコントローラ7にエンジン回転数と、kW単位の出力P3との関係(図3の曲線Lのような関係)を記憶させておき、この関係を用いて、ある所定の回転域の上限値に対応するkW単位の出力P3を決定することとしてもよい。
【0053】
次に、図3の曲線Fを用いて所定の回転域の下限値(図3、図4では、R2)に対応する最大発電量G2(単位はkW)を算出する(ステップS5)。最大発電量とは、停船時、つまり、セイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するための動力負荷がかかっていない場合の発電機10の発電可能量であり、前述したように図3においては、インバータ入力電流の上限を示す曲線Fにより表されている。そして、算出された最大発電量G2から前記出力P3を減ずる(ステップS6)。こうして、得られた値(G2−P3)を発電可能量として決定し、この発電可能量(G2−P3)を表示モニタ23にモニタ出力する(ステップS7)。
【0054】
このように算出された発電可能量(G2−P3)は、エンジン回転数が回転域R2〜R3にある場合の発電機10の発電出力可能な電力である。そして、発電機10により発電量(G2−P3)だけ発電を行う場合には、エンジン2の回転数を所定の回転域の下限値(図3、図4では、R2)まで減少させて(図3の太い矢印)、行うこととする。
【0055】
以上のように、通常航走時の発電機10の発電可能量をエンジン回転数に応じて自動的に算出して発電を行う場合には、予め設定された複数の回転域に対応させて、段階的に発電可能量を決定している。図3においては、機関最低速RLと最大目標回転数RHとの間に5つの回転域を設定し、検出されたエンジン回転数が、回転域RL〜R1に属すれば発電可能量をGL−P1、回転域R1〜R2に属すれば発電可能量をG1−P2、回転域R2〜R3に属すれば発電可能量をG2−P3、回転域R3〜R4に属すれば発電可能量をG3−P4、回転域R4〜RHに属すれば発電可能量をG4−PHとしている。つまり、エンジン回転数が所定の回転域に属する場合には、所定の発電量を発電機10で発電することとしている。このように、エンジン回転数に対して複数の回転域を設定し、それぞれの回転域において、回転域の下限の回転数での最大発電量から回転域の上限の回転数でのエンジン航走負荷である出力を減じた値を、発電可能量としている。なお、区切りとなるエンジン回転数を変更したり、増減させたりすることにより、回転域の設定を変更することが可能である。
【0056】
また、エンジン回転数が最大目標回転数RHよりも大きい場合には、最大目標回転数RH以下の回転数までエンジン回転数を減少させることとする(例えば、図3の細い矢印)。
また、決定された発電可能量が、必要となる供給電力に比べて特に多い場合には、エンジン回転数を複数の回転域にわたって、段階的に減少させて、発電を行うこととする。
【0057】
このようにエンジン回転数に応じた発電・負荷分担制御を行っている。すなわち、通常航走時に必要となるエンジン航走負荷を、まず確保して、残りのエンジン出力により発電機10を作動させて発電を行っている。そして、発電機10の発電電力は、H15ではインバータ15の電気負荷への電力供給およびバッテリ14の充電に充てられ、H16ではインバータ15の電気負荷への電力供給に充てられている。
これにより、発電機10の発電出力可能領域(イ)内において、エンジン回転数に応じて発電機出力とエンジン航走負荷との分担を適切に制御することができる。また、停船時に発電のみを行う動作モードと、航走および発電を行う動作モードとを使い分けることにより目的にしたがった適切な発電ができ、航走中の発電量を抑えることにより、発電の際の回転変動を抑えることができ、航走中の操作者に違和感を与えることがなくなる。
また、エンジン回転数に対して複数の回転域を設定して、エンジン回転数が所定の回転域に属する場合には所定の発電量を発電機10で発電することにより、発電量を容易に決定することができ、簡便な制御とすることができる。また、発電可能量を表示モニタ23に表示することにより、予め発電可能な量を知ることができ、操船者にとって航走中に電気負荷を使用しやすくなり、安心して航走できる。
【0058】
次に、本システムにおける動作モードH4およびH9、並びにH6およびH11に対応する制御について、図1、図2を用いて説明する。モードH4およびH9、並びにH6およびH11は、リレー18がオンとなっているためモータ5によるエンジンアシストを行って、エンジン2とモータ5により航走を行うモードである。また、リレー17がオフとなっているためバッテリ14の充放電は行っていない。
また、H4およびH9では、リレー11がオン、リレー15aがオフとなっているため、発電機10が作動状態、インバータ15が停止状態となっている。つまり、H4およびH9は、エンジン2およびモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動するモードであり、モータ5の駆動源は発電機10の電力であり、発電機10により発電された電力は、DC/DCコンバータ13により降圧されて全てモータコントローラ6に供給される。
H4およびH9に対し、H6およびH11では、リレー15aがオンとなっており、インバータ15が作動状態となっている。つまり、H6およびH11は、エンジン2および発電機10の電力により駆動されるモータ5の両方によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でインバータ15の電気負荷に電力供給を行うモードである。
前述したように、H4とH9との違い、およびH6とH11との違いは、本システムを搭載した船舶が定常(=定速)航行状態か加速航行状態かの違いである。よって、以下では、主としてH4およびH6について、説明することとする。
【0059】
H4およびH6では、モータ5を作動させて、その回転力をセイルドライブ3およびプロペラ4に伝達するエンジンアシストを行っている。モータ5を駆動するためには、モータコントローラ6に電力供給を行う必要がある。この電力供給は、発電機10により発電された電力を、整流機器12により整流・平滑し、DC/DCコンバータ13により降圧して、モータコントローラ6に供給することとしている。そして、リレー17をオフとしてバッテリ14からは、電力供給を行わないこととしている。つまり、H4およびH6は、エンジン2の駆動により発電機10を作動させ、発電機10で発電された電力を、バッテリ14を介さずにモータコントローラ6に供給して、モータ5を作動させるモードとしている。このとき、発電機10の発電電力は、H4では、全てモータ5を駆動するためにモータコントローラ6に供給されるが、H6では、インバータ15が作動しているため、インバータ15の電気負荷とモータコントローラ6とに供給される。電力供給を受けたモータコントローラ6は、前述したように、界磁電流で発生させた磁界と電機子電流によりモータ5を駆動させ、これらの電流または電圧を制御することによりモータ5の回転数およびトルクを制御している。
【0060】
このように、モータ5によるエンジンアシストを行う場合に、発電機10の発電電力を、バッテリ14を介さずに、モータコントローラ6に供給することで、バッテリ14への充電による電力のロスをなくすことができる。
また、リレー17をオンとすることにより、H4またはH6から、バッテリ14の充放電を行うモードであるH5(H10)またはH7(H12)に移行することが可能である。例えば、発電機10の発電電力よりもモータ5駆動のための電力が多い場合には、リレー17をオンとすることによりバッテリ14を放電状態とし、逆に、少ない場合には、リレー17をオンとすることによりバッテリ14を充電状態とすることができる。このように、必要となるモータ5の出力を発電機10の発電電力により賄うとともに、エンジン航走負荷およびインバータ15の電気負荷の変動分を、バッテリ14の充放電により補正することを可能としている。また、これにより、バッテリ14の寿命が延び、常にバッテリ14の充放電を行う制御と比べて、細かなSOC管理を必要としない。
【0061】
次に、トローリング用の電気負荷を用いてプロペラ4の回転数を減少させる制御について説明する。この制御は、前述した本システムにおける動作モードH15およびH16(図2)に対応する制御である。「トローリング」とは、船舶、特に漁船における運転の一つであり、海面上の所定位置に船舶を止めて漁を行う場合に、潮の流れに対して船舶を安定させるために、プロペラ4を低回転数に保って行う運転をいう。
H15およびH16は、前述したように、エンジン2の駆動によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動しつつ、発電機10の電力でバッテリ14を充電(H15のみ)およびインバータ15の電気負荷に電力供給を行うモードである。この制御では、トローリング用の電気負荷を別に設けて、該トローリング用の電気負荷をインバータ15に接続しておき、トローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ回転数を減少させてトローリング運転の実現を図る。トローリング運転を行う場合には、操作部8のレバーあるいはボタンを操作して、インバータ15に接続される負荷をトローリング用の電気負荷に切り換えて、トローリングモードとする。
【0062】
H15およびH16では、エンジン2の駆動力は、セイルドライブ3およびプロペラ4の駆動と発電機10での発電に充てられる。そして、発電機10にて発電された電力は、バッテリ14の充電(H15のみ)に用いられるほか、インバータ15に接続されるトローリング用の電気負荷により消費される。トローリングモードとなったH15およびH16では、エンジン2の出力のうち、トローリング用の電気負荷により消費される電力を、発電機10での発電出力として確保し、余剰のエンジン出力によりセイルドライブ3およびプロペラ4を駆動することとしている。つまり、エンジン回転数が一定であれば、インバータ15に接続されるトローリング用の電気負荷が大きいほどトローリング用の電気負荷により消費される電力が多くなり、これによりセイルドライブ3およびプロペラ4の駆動に用いられるエンジン出力が少なくなり、プロペラ4の回転数は減少する。プロペラ4の回転数が減少すると、船舶の航走速度が低下し、トローリング運転を実現できる。トローリング時の船舶の速度は、プロペラ4の回転数によって定まるため、速度調節を行うには、インバータ15に接続するトローリング用の電気負荷の量を調節することにより、プロペラ4の回転数を増減させればよい。
【0063】
このように、インバータ15にトローリング用の電気負荷を接続して、このトローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ4の回転数を減少させたトローリング運転を実現できる。また、セイルドライブ3のクラッチを滑らせることにより、機械的にプロペラ4の回転数減少を行う必要がないため、セイルドライブ3のクラッチの焼け付き等を防止できる。
【0064】
以上に述べたハイブリッドシステムAに替えて、図5に示すようなハイブリッドシステムBでも前述したような制御を行うことが可能である。
ハイブリッドシステムBは、ハイブリッドシステムAを簡略化した構成をしており、ハイブリッドシステムAからモータ5、モータコントローラ6、DC/DCコンバータ13、バッテリ14等を除いた構成となっている。そして、ハイブリッドシステムBでは、ハイブリッドシステムAのようにモータ5を備えていないため、モータ5のみによる駆動するモードおよびモータ5によるエンジンアシストをするモードはなく、エンジン2のみにより駆動するモードのみとなっている。図6のP1は図2のH13と同様のモードであり、P2はH16と同様のモードであり、また、P3の停船モードはH17と同様のモードである。ハイブリッドシステムBでは、ハイブリッドシステムAと比べてきめ細かなモードは実現できない代わりに機器点数を低減できるので本質的に生産性(特に組立性)および信頼性が向上できる。
【0065】
ハイブリッドシステムBにも、システム1に発電機10およびインバータ15が備えられており、前述したハイブリッドシステムAと略同様の制御を行っている(図3、図4参照)。
図5に示すように、発電機10がエンジン2と動力伝達装置3との間に介装されており、該発電機10はエンジン2により作動される。発電機10により発電された電力は、整流機器12により、整流・平滑された後、インバータ15に入力され、該インバータ15により交流に変換されて、切換機器19を介して出力ソケット20から船内供給できるようにしている。つまり、発電機10の発電機出力は全てインバータ15を介して電気負荷に供給される。
【0066】
発電・負荷の分担制御は、図6の本システムにおける動作モードP2に対応する制御となっており、この制御では、回転数センサ35がエンジン回転数検出手段として、システムコントローラ7がエンジン航走負荷(動力負荷)演算手段、最大発電量演算手段、および発電可能量演算手段として、表示モニタ23が表示出力手段として、それぞれ機能している。
【0067】
また、トローリングを行う制御は、図6の本システムの動作モードP2に対応する制御となっており、この制御では、インバータ15にトローリング用の電気負荷を接続して、このトローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ4の回転数を減少させて、トローリング運転を実現させている。
【0068】
また、図7に示すようなハイブリッドシステムCにおいて、前述したような制御を行うことも可能である。
ハイブリッドシステムCの構成は、ハイブリッドシステムAの構成を変更したものとなっており、その機能は略同様のものとなっている。すなわち、ハイブリッドシステムCにおけるモータジェネレータ(M/G)40が、ハイブリッドシステムAのモータ5と発電機10に相当する。また、ハイブリッドシステムCにおけるVVVFインバータコンバータ(可変電圧可変周波数インバータコンバータ)42と単相CVCFインバータ(単相定電圧定周波数インバータ)43と昇降圧チョッパ44とにより構成されるインバータ部41が、ハイブリッドシステムAにおけるモータコントローラ6とDC/DCコンバータ13と整流機器12とインバータ15に相当する。また、ハイブリッドシステムCは、後述するようにスタータ機能を備えているため、ハイブリッドシステムAにおけるエンジン2始動用のスタータモータ2a、スタータバッテリ24等に相当するものを備えていない。
【0069】
図7に示すように、モータジェネレータ40は、システム1において、エンジン2と動力伝達装置3との間に介装されている。モータジェネレータ40が発電機器として機能する場合(図8のM4からM7、および図11の電力供給機能の場合)には、エンジン2の駆動によりモータジェネレータ40が作動され、該モータジェネレータ40により発電された電力(発電機出力)はインバータ部41に入力され、該インバータ部41からバッテリ14への充電や、切換機器19、出力ソケット20を介して船内供給を行っている。また、モータジェネレータ40が、モータとして機能する場合(図8のM1からM3、図9のスタータ機能、および図10のアシスト機能の場合)には、エンジン2の始動や、航走のアシストを行っている。
【0070】
インバータ部41のVVVFインバータコンバータ42は、モータジェネレータ40が発電機器として機能する場合にはインバータ部41に入力される発電機出力の整流・平滑を行い、また、モータジェネレータ40がモータとして機能する場合にはモータ制御を行う。また、VVVFインバータコンバータ42はシステムコントローラ7と接続されており、該システムコントローラ7はVVVFインバータコンバータ42に対し、モータとしてのモータジェネレータ40の起動(回転数)指示、およびアシスト(トルク)指令を出力する。一方、VVVFインバータコンバータ42はシステムコントローラ7へモータとしてのモータジェネレータ40の回転数、トルク、アラーム、直流電圧を送る。モータジェネレータ40の回転数は、回転数センサ(図示略)により検出される。ここで、モータジェネレータ40は、エンジン2のクランク軸と常時同期回転する構成としているため、回転数センサでモータジェネレータ40の回転数を検出することにより、エンジン2の回転数を知ることができる。よって、回転数センサは、エンジン回転数検出手段として機能することとなる。
【0071】
単相CVCFインバータ43は、該単相CVCFインバータ43に接続される電気負荷に電力を供給するときに作動して、その供給電力を所定の周波数の交流電力として供給できるようにしている。単相CVCFインバータ43には、該単相CVCFインバータ43に接続される電気負荷に供給される電流および電圧を検出するための電流センサおよび電圧センサ(図示略)が備えられている。また、単相CVCFインバータ43はシステムコントローラ7と接続されており、該システムコントローラ7は単相CVCFインバータ43に対し、運転・停止指示を出力する。一方、単相CVCFインバータ43はシステムコントローラ7へ前記電圧センサにより検出した交流電圧、電流センサにより検出した交流電流、交流電力、アラームを送る。
【0072】
昇降圧チョッパ44はバッテリ14と接続されており、該バッテリ14が放電を行う場合には、昇圧チョッパとして機能してバッテリ14の放電電圧を所定の電圧に昇圧し、また、バッテリ14への充電を行う場合には、降圧チョッパとして機能して、バッテリ14への充電電圧を所定の電圧に降圧する。また、昇降圧チョッパ44はシステムコントローラ7と接続されており、該システムコントローラ7は昇降圧チョッパ44に対し、運転・停止指示、充電電流指示、充電指示を出力する。一方、昇降圧チョッパ44はシステムコントローラ7へバッテリ電圧、充放電電流、アラームを送る。
【0073】
ハイブリッドシステムCの動作モードを図8から図12により詳しく説明する。
図9には、エンジン2を始動するときの電気回路の作動および駆動力の伝達状態が示されている。バッテリ14から昇降圧チョッパ44により昇圧された電力がVVVFインバータコンバータ42により所要の電圧および周波数に変換されて、モータジェネレータ40に供給され、モータジェネレータ40がモータとして機能してエンジン2を始動する。これは、ハイブリッドシステムAおよびハイブリッドシステムBと比べてハイブリッドシステムC特有のモードである。ハイブリッドシステムAおよびハイブリッドシステムBに用いられる発電機10、並びにハイブリッドシステムCに用いられるモータジェネレータ40は、エンジン2のクランク軸と常時同期回転する構成である。このため、モータジェネレータ40をモータとして駆動すればエンジン2の始動が可能となる。一方、ハイブリッドシステムAの場合、モータ5はセイルドライブ3およびプロペラ4と常時同期回転する構成であり、エンジン2とはセイルドライブ3に内装されるクラッチにより断接されるからである。これにより、エンジン2を始動するためのスタータバッテリ24等を削減できる。
【0074】
図10には、モータジェネレータ40によりエンジンアシストを行うときの電気回路の作動および駆動力の伝達状態が示されている。バッテリ14からモータジェネレータ40までの電気回路の作動状態は図9と同様である。モータジェネレータ40およびエンジン2の駆動力の和が、セイルドライブ3およびプロペラ4の駆動力となる。これにより、モータジェネレータ40によるエンジンアシストによりエンジン2を燃費の良い回転域で使用することができ、かつ、モータジェネレータ40の駆動源もバッテリ14であるので本システムの燃費性を向上できる。
【0075】
図11には、モータジェネレータ40により発電された電力により単相CVCFインバータ43を介して電力供給、またはバッテリ14の充電を行うときの電気回路の作動および駆動力の伝達状態が示されている。エンジン2によりセイルドライブ3およびプロペラ4並びにモータジェネレータ40が駆動される。これにより、モータジェネレータ40が発電を行い、その電力がVVVFインバータコンバータ42により整流・平滑され、その後、単相CVCFインバータ43により所定の電圧および周波数に変換されて電気負荷へ供給される。このとき、整流・平滑後の電力に余剰があれば昇降圧チョッパ44により降圧されてバッテリ14の充電に費やされる。これにより、航行および単相CVCFインバータ43の電気負荷への電力供給が並立できる。更にバッテリ14の充電も可能となる。
【0076】
図12には、バッテリ14により昇降圧チョッパ44および単相CVCFインバータ43を介して電力供給を行うときの電気回路の作動状態が示されている。バッテリ14から昇降圧チョッパ44により昇圧された電力が単相CVCFインバータ43により所定の電圧および周波数に変換されて電気負荷へ供給される。これは、ハイブリッドシステムAおよびハイブリッドシステムBと比べてハイブリッドシステムC特有のモードである。これにより、モータジェネレータ40で発電される電力が不足するときにその補償が可能となる。また、エンジン2の停止中でも単相CVCFインバータ43の電気負荷への電力供給が可能となる。
【0077】
そして、図8で示すM1は、図9または図10で表される動作モードである。M2は、図10で表される動作モードである。M3は、図9または図10、および図12で表される動作モードの組合せモードである。M4は、図2のH13と同様の動作モードである。M5は、図11の内、単相CVCFインバータ43による電力供給が停止している動作モードである。M6は、図11で表される動作モードである。M7は、図11の内、バッテリ14の充電が停止している動作モードである。M8は、図12で表される動作モードである。
【0078】
ハイブリッドシステムCでは、ハイブリッドシステムAと比べてきめ細かなモードは実現できない代わりに配線を低減できるので本質的に生産性(特に組立性)および信頼性が向上できる。更に、ハイブリッドシステムAおよびハイブリッドシステムBと比べてエンジン2の始動のためのスタータバッテリ24等が削減できるので、本システムを搭載した船舶の空間利用性を向上できる。また、モータジェネレータ40で発電される電力が不足するときにその補償が可能となるとともに、エンジン2の停止中でも単相CVCFインバータ43の電気負荷への電力供給が可能となるので、電力使用の利便性が向上する。
【0079】
ハイブリッドシステムCには、システム1に発電機器として機能するモータジェネレータ40およびインバータ部41が備えられており、前述したハイブリッドシステムAと略同様の制御を行っている(図3、図4参照)。発電・負荷の分担制御は、図8の本システムにおける動作モードM6およびM7に対応する制御となっており、この制御では、モータジェネレータ40に備えられる回転数センサがエンジン回転数検出手段として、システムコントローラ7がエンジン航走負荷(動力負荷)演算手段、最大発電量演算手段、および発電可能量演算手段として、表示モニタ23が表示出力手段として、それぞれ機能している。
【0080】
また、トローリングを行う制御は、図8の本システムの動作モードM6およびM7に対応する制御となっており、この制御では、単相CVCFインバータ43にトローリング用の電気負荷を接続して、このトローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ4の回転数を減少させて、トローリング運転を実現させている。
【0081】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、請求項1に示す如く、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態と、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態とを有するとともに、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態では、予めエンジン回転数の最大目標回転数を設定し、最大目標回転数以下のエンジン回転数で発電機器による発電を行い、かつ、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態では、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、検出されたエンジン回転数に基づいて予め記憶されたエンジン回転数とエンジン動力負荷との関係よりエンジン動力負荷を演算するエンジン動力負荷演算手段と、予め記憶されたエンジン回転数と発電機の最大発電量との関係より最大発電量を演算する最大発電量演算手段と、得られた最大発電量からエンジン動力負荷を減ずることにより発電可能量を演算する発電可能量演算手段とを備え、得られた発電可能量を発電機器により発電するので、動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態では、最大目標回転数以下の回転数でエンジンの運転を行うことにより、必要となる電力だけ効率よく発電することができ、インバータの電気負荷に対しても効率よく電力供給を行うことができる。また、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態では、エンジン回転数に応じて発電機出力とエンジン動力負荷との分担を適切に制御することができる。更には、この二つの動作形態を使い分けることにより目的にしたがった適切な発電を行うことができ、移動中の発電量を抑えることにより発電の際の回転変動を抑えることができ、移動中の操作者に違和感を与えることがなくなる。
【0082】
請求項2に示す如く、請求項1記載のハイブリッドシステムにおいて、エンジン回転数に対して複数の回転域を設定し、それぞれの回転域において、前記エンジン動力負荷手段により演算されるエンジン動力負荷を回転域の上限の回転数における値とし、前記最大発電量により演算される最大発電量を回転域の下限の回転数における値としたので、エンジン回転数が所定の回転域に属する場合には所定の発電量を発電機器で発電することにより、発電量を容易に決定することができ、簡便な制御とすることができる。
【0083】
請求項3に示す如く、請求項1または請求項2記載のハイブリッドシステムにおいて、前記発電可能量を表示出力可能とする表示出力手段を備えるので、予め発電可能な量を知ることができ、操作者にとって移動中に電気負荷を使用しやすくなり、安心して航走できる。
【0084】
請求項4に示す如く、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、発電機器により発電された電力を、コンバータを介して電動機器に供給して、電動機器を動力伝達装置の駆動源として用いるとともに、発電された電力によりバッテリを充電しないので、バッテリへの充電による電力のロスをなくすことができる。また、必要な場合にはバッテリの充放電を行うことができるため、バッテリの寿命を延ばすことができ、常にバッテリの充放電を行う制御と比べて、細かなSOC管理が必要でなくなる。
【0085】
請求項5に示す如く、エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、インバータに接続するトローリング用の電気負荷を備えるので、トローリング用の電気負荷に対して電力供給を行うことにより、プロペラ回転数を減少させたトローリング運転を実現できる。また、動力伝達装置のクラッチを滑らせて、プロペラ回転数を減少させる必要がないため、動力伝達装置のクラッチの焼け付き等を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ハイブリッドシステムAを示す図。
【図2】ハイブリッドシステムAにおける動作モードの一例を示す図。
【図3】発電機の発電可能領域を示す図。
【図4】通常航走時での発電機の発電可能量を決定する手順を示す図。
【図5】ハイブリッドシステムBを示す図。
【図6】ハイブリッドシステムBにおける動作モードの一例を示す図。
【図7】ハイブリッドシステムCを示す図。
【図8】ハイブリッドシステムCにおける動作モードの一例を示す図。
【図9】ハイブリッドシステムCにおけるスタータ機能を示す図。
【図10】ハイブリッドシステムCにおけるモータジェネレータによる動力アシスト機能を示す図。
【図11】ハイブリッドシステムCにおける電力供給(発電あり)機能を示す図。
【図12】ハイブリッドシステムCにおける電力供給(発電なし)機能を示す図。
【符号の説明】
1 システム
2 エンジン
3 動力伝達装置
4 プロペラ
7 システムコントローラ
10 発電機
15 インバータ
35 回転数センサ
Claims (5)
- エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、
動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態と、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態とを有するとともに、
動力伝達装置への動力出力を伴わず発電のみを行う動作形態では、予めエンジン回転数の最大目標回転数を設定し、最大目標回転数以下のエンジン回転数で発電機器による発電を行い、
かつ、動力伝達装置への動力出力、および発電を行う動作形態では、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、検出されたエンジン回転数に基づいて予め記憶されたエンジン回転数とエンジン動力負荷との関係よりエンジン動力負荷を演算するエンジン動力負荷演算手段と、予め記憶されたエンジン回転数と発電機の最大発電量との関係より最大発電量を演算する最大発電量演算手段と、得られた最大発電量からエンジン動力負荷を減ずることにより発電可能量を演算する発電可能量演算手段とを備え、得られた発電可能量を発電機器により発電することを特徴とするハイブリッドシステム。 - 請求項1記載のハイブリッドシステムにおいて、エンジン回転数に対して複数の回転域を設定し、それぞれの回転域において、前記エンジン動力負荷手段により演算されるエンジン動力負荷を回転域の上限の回転数における値とし、前記最大発電量により演算される最大発電量を回転域の下限の回転数における値としたことを特徴とするハイブリッドシステム。
- 請求項1または請求項2記載のハイブリッドシステムにおいて、前記発電可能量を表示出力可能とする表示出力手段を備えることを特徴とするハイブリッドシステム。
- エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、
発電機器により発電された電力を、コンバータを介して電動機器に供給して、電動機器を動力伝達装置の駆動源として用いるとともに、発電された電力によりバッテリを充電しないことを特徴とするハイブリッドシステム。 - エンジン、動力伝達装置、および発電機器からなり、動力伝達装置の駆動源の一つとして、および発電機器の駆動源としてエンジンが用いられ、インバータを介して発電された電力を供給するハイブリッドシステムにおいて、
インバータに接続するトローリング用の電気負荷を備えることを特徴とするハイブリッドシステム。
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JP2003047776A JP2004260907A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | ハイブリッドシステム |
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JP2003047776A Pending JP2004260907A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | ハイブリッドシステム |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006291927A (ja) * | 2005-04-14 | 2006-10-26 | Yamaha Motor Co Ltd | 船外型発電機 |
JP2013501693A (ja) * | 2009-08-13 | 2013-01-17 | ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー | 作業機械用の少なくとも1つの電気機器を動作させるための電気操作システムおよび電気操作システムを備えた作業機械 |
JP2013546297A (ja) * | 2010-12-17 | 2013-12-26 | ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング | 電気的駆動部の余裕電力を決定するための方法及び装置 |
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- 2003-02-25 JP JP2003047776A patent/JP2004260907A/ja active Pending
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