JP2004259651A - 白熱電球 - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂バルブの温度上昇を抑制された樹脂バルブを有する白熱電球を提供すること。
【解決手段】フィラメント4にマイクロキャビティ6を設けることにより、赤外放射の量を減らし、かつ、可視放射を多くすることができ、ランプ効率の向上とともにバルブに樹脂製バルブ1を用いた場合でも樹脂製バルブ1の温度を格段に低く保つことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】フィラメント4にマイクロキャビティ6を設けることにより、赤外放射の量を減らし、かつ、可視放射を多くすることができ、ランプ効率の向上とともにバルブに樹脂製バルブ1を用いた場合でも樹脂製バルブ1の温度を格段に低く保つことができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、白熱電球に関し、特に、樹脂製バルブを有する白熱電球に関する。
【0002】
【従来の技術】
白熱電球は、演色性に優れ簡単な使用器具で点灯でき、また歴史的に長く使用されている関係で広く普及している。しかし、フィラメントの発熱による放射を利用する白熱電球は、可視波長域の放射が全体の10%程度で、それ以外は主に赤外放射が70%、封入ガスによる熱伝導や対流による熱損失が20%である。ランプ効率は15[lm/W]程度と低く、赤外放射や封入ガスによる熱損失により、バルブ表面の温度は最大150℃まで達する。このため、バルブにソーダガラス、硬質ガラスなど耐熱性のガラス材を使用しており、ランプ取扱い時に破損し、割れたガラス破片でケガをするため、安全性の向上という課題があった。
【0003】
この安全性を良くする発明として、不燃性ガラスファイバーを混合した合成樹脂をバルブに使用する白熱電球がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4764707号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1では、合成樹脂に25%ガラスファイバーを混合することによりバルブの耐熱温度が142℃と記載されているが、従来白熱電球のバルブ表面温度が150℃にまで達することを考えると、バルブ温度を低減するためにフィラメントとバルブの距離を大きくする必要があり、白熱電球が大型化する。さらに密閉器具などの熱がこもる器具に使用した場合は、バルブ温度が更に上昇し、バルブの耐熱温度以上になる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、樹脂バルブの温度上昇を抑制された樹脂バルブを有する白熱電球を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の白熱電球は、樹脂製バルブと、前記樹脂製バルブに封着されたステムと、前記ステムに配置された一対のリード線と、一対の前記リード線に架け渡され、前記樹脂製バルブ内に配置されたフィラメントと、前記リード線に電気的に接続され、前記フィラメントに電力を供給する口金と、を備え、前記フィラメントには、複数のマイクロキャビティが設けられている。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の一つの実施形態は、樹脂製バルブと、前記樹脂製バルブに封着されたステムと、前記ステムに配置された一対のリード線と、一対の前記リード線に架け渡され、前記樹脂製バルブ内に配置されたフィラメントと、前記リード線に電気的に接続され、前記フィラメントに電力を供給する口金と、を備え、前記フィラメントは、複数のマイクロキャビティが設けられている白熱電球である。
【0009】
また別の白熱電球の実施形態は、前記ステムは樹脂製であり、前記ステムと前記フィラメントとの間に一対の前記リード線を含むように構成されたガラス構造体が配置される。
【0010】
さらに別の白熱電球の実施形態は、前記樹脂製バルブの内部に不活性ガスが封入されている。
【0011】
さらに別の白熱電球の実施形態は、前記マイクロキャビティが円柱形状の孔であり、前記マイクロキャビティのピッチが該円柱形状の直径の2倍以下である。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡素化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0013】
(実施の形態1)
図1にマイクロキャビティを加工したフィラメントと樹脂製バルブを使用した白熱電球の例を示す。白熱電球は、樹脂製バルブ1と、樹脂製バルブ1に封着されたステム2と、ステム2に配置された一対のリード線3と、一対のリード線3に架け渡されて樹脂製バルブ内に配置されたフィラメント4と、リード線3に電気的に接続されて商用電源からフィラメントに電力を供給する口金5とから大きく構成されている。
【0014】
樹脂製バルブ1は、従来のガラス製のバルブから構成される白熱電球と略同一な形状を持ち、最大径60mmのポリプロピレンでできた透光性の樹脂からなる。樹脂製バルブ1にはアルゴン(Ar)92%、窒素(N2)8%からなる不活性ガスが封入されている(図示せず)。不活性ガスは点灯時に1気圧程度になる量で封入されている。1気圧程度に合わせることで、点灯時の樹脂製バルブ1内部と外部との圧力差を無くすことができ、樹脂製バルブ1の厚みを薄くしても樹脂製バルブ1の破損を抑制できる。なお、不活性ガスは点灯時に1気圧程度になる量で限定されることはなく、1気圧以下でも構わない。不活性ガス量が減るにつれ、不活性ガスの対流による樹脂製バルブ1への熱伝導が少なくなり、樹脂製バルブの温度上昇を抑制するには好ましい。樹脂バルブ1の厚みを厚くすれば、樹脂バルブ1内は真空でも構わない。
【0015】
ステム2は、鉛ガラスを用いた。なお、樹脂製バルブ1とステム2とは接着剤によって接着している。リード線3は、ニッケルメッキ珪銅製からなり、ステム2に覆われる部分はジュメット線(鉄−ニッケル合金に津尾を被覆した線)からできている。口金5は、E26(JIS C 7709)を使用した。口金5はE26には限定されない。
【0016】
フィラメント4は幅0.5mm、厚さ0.05mmのリボン形状のものをコイル形状にしたものである。コイル形状にしたフィラメント4の樹脂製バルブ1の外に向く外表面には、複数のマイクロキャビティ6が設けている。マイクロキャビティ6は円柱形状の孔であり、フェムト秒レーザで加工した。マイクロキャビティ6は直径0.4μm、ピッチ(隣接するマイクロキャビティ同士の中心軸間の距離)0.8μm、深さ2.0μmである。
【0017】
図2に上記フィラメント4が2200Kになるように口金5から電力を投入し、放射強度を測定した結果を示す。横軸は放射波長であり、縦軸は分光放射強度である。比較例としてフィラメントにマイクロキャビティ6を加工しなかった従来型フィラメントの例も示す。従来型フィラメントの場合と比較して、本発明のマイクロキャビティ6が設けられたフィラメントを使用した場合は、波長0.8μm以上の放射強度が抑えられる傾向にあることがわかる。すなわち、赤外放射を抑制する傾向にある。しかし、波長0.8μm以下の放射強度は2倍以上になることが初めてわかった。この作用により、ランプ効率(lm/W)は従来の白熱電球の15(lm/W)よりも際だって高くなり、50(lm/W)という3倍以上の効率が得られた。
【0018】
さらに、樹脂製バルブ1の表面温度を測定した。口金5を上にした状態で2200Kに点灯したところ、樹脂製バルブ1の表面温度は最も高い部分で70℃であり、従来の白熱電球よりもおよそ80℃低くなることがわかった。なお、樹脂製バルブ内に不活性ガスを封入しない場合、すなわち、1.0×10−2Paに減圧した場合は口金5を上にして2200Kで点灯したときの樹脂バルブ1の表面温度の最も高い部分は50℃であり、従来の白熱電球よりもおよそ100℃低くなることがわかった。
【0019】
以上のようにフィラメント4にマイクロキャビティ6を設けることにより、赤外放射の量を減らし、かつ、可視放射を多くすることができ、ランプ効率の向上とともにバルブに樹脂製バルブ1を用いた場合でも樹脂製バルブ1の温度を格段に低く保つことができる。このことにより、樹脂製バルブ1の有した白熱電球の小型化や密閉器具の使用においても、樹脂製バルブ1の耐熱温度以上になる割合をかなり抑制できる。
【0020】
(実施の形態2)
本実施形態の白熱電球は、図1の実施形態1と比較して、ステム2とフィラメント4との間に一対のリード線3を含むように構成されたガラス構造体7を有している点、および、ステム2が樹脂製(ポリプロピレン製)である点で相違する。その他の構成は図1の実施形態1と同一であるので、実施形態1と同一符号を記して説明を省略する。
【0021】
ガラス構造体7は鉛ガラスでできており、一対のリード線3を内部に貫通させている。このガラス構造体7は、フィラメント4からの熱がリード線3を伝導して樹脂製のステム2に達し、リード線3に接しているステム2の部分が溶融することを防止する。すなわち、フィラメント4から伝導してきた熱はガラス構造体7全体に拡散し、樹脂製バルブ1内にその熱を放出する。
【0022】
ステム2とフィラメント4との間に一対のリード線3を含むように構成されたガラス構造体7を設けることによって、フィラメント4からの熱がステム2に達することを抑制でき、ステム2を樹脂製にすることができる。ステム2を樹脂製にすることにより、樹脂製バルブ1とステム2とを同一の樹脂で作ることができ、封着が容易にできる。
【0023】
続いて、本実施形態の製造方法について説明する。
【0024】
まず、図4に示すような、フィラメント4が架け渡された一対のリード線3とその一対のリード線3を含むように配置されたガラス構造体7とからなる第1の電極構造体8を準備する。続いて、ポリプロピレン製の第2の電極構造体9を準備する。第2の電極構造体は同材料でできたステム2と排気管10とを有し、ステム2には一対のリード線3が貫通するリード線3の径よりも僅かに大きい貫通穴が空いている。さらにステム2にはねじ山が形成されている。準備された第1の電極構造体8のリード線3を第2の電極構造体9の貫通穴に通し、第2の電極構造体9を加熱して柔らかくした後、型で成形して貫通穴を埋めてリード線3と第2の電極構造体9とを密着させて第3の電極構造体11を作る。なお、第2の電極構造体を予め用意せず、リード線3を第2の電極構造体の型に挿入し、溶融したポリプロピレンを型に流し込んで、第2の電極構造体を形成してもよい。
【0025】
続いて、図5に示すように、ねじ山が設けられた樹脂製バルブ1を準備し、第3の電極構造体11のステム2に設けられたねじ山と樹脂製バルブ1のねじ山とで接合する。ねじ山構造による接合部は接着剤を流し込んで封着されている。なお、接着剤を用いず、ねじ山同士を熱で溶着させてもよいし、ねじ山自体を設けなくても封着できればよい。
【0026】
その後、排気管10から排気し、不活性ガスを封入して排気管10を溶かして機械で押し切る。最後に、樹脂製バルブ1に口金5を接着剤で取り付け、ステム2から外部に取り出されているリード線3と口金5とを半田付けして白熱電球が完成する。
【0027】
(他の実施の形態)
上記実施形態では、赤外放射を抑制する構造として、円柱形状のマイクロキャビティ6を用いたが、四角柱形状でも同様な効果が得られる。
【0028】
隣接するマイクロキャビティ6を上から見た時のマイクロキャビティ6の中心点を結ぶ図形(図1を参照)が正三角形になるようにマイクロキャビティ6を配置した場合、マイクロキャビティ6のピッチは、マイクロキャビティ6の直径の2倍以下が好ましい。これは、マイクロキャビティ6が加工されている面の面積に対するマイクロキャビティ6の孔の面積の比率(開口率)が20%以上になり、赤外放射を抑制する効果が顕著になるからである。なお、マイクロキャビティ6の外周と隣接するマイクロキャビティ6の外周との最短距離(図1を参照)は、0.1μm以上であることが構造的に好ましい。
【0029】
更に、赤外放射のすべてをカットするには、マイクロキャビティ6の直径は約0.39μmとするのが好ましい。また、マイクロキャビティ6の直径をコントロールすることによりカットする波長がコントロールできるので、マイクロキャビティ6の直径を0.39μm以下とすることにより、白熱電球の可視放射の赤成分をカットでき、光色をコントロールできる。ただし、マイクロキャビティ6の直径を0.27μm以下にすると、0.555μm以上の波長がカットされ、ランプ効率(lm/W)を悪化させるので、マイクロキャビティ6の直径は、0.30μm以上が好ましい。
【0030】
また、フィラメント4の外表面にマイクロキャビティ6を施したが、外表面とその裏面の両方、あるいは側面も含めた全表面に施しても同様な効果が得られる。
【0031】
更に、フィラメント4はリボン形状のものをコイル形状にしたが、リボン形状に限定されず、また望む電気特性に合わせて、1重コイル、2重コイルや3重コイルにしてもよい。
【0032】
樹脂製バルブ1はポリプロピレンを用いたが、耐熱温度が80℃以上で、成形加工性の優れた材質であれば、他の樹脂でもかまわず、機械的強度の強いポリカーボネートやポリスルフォンなども使用可能である。
【0033】
また、バルブ形状において、本実施形態では白熱電球形状であるが、白熱電球形状に限定されず、楕円形状、円柱形状、星形状など樹脂成形できる形状から選択できる。
【0034】
【発明の効果】
フィラメント4にマイクロキャビティ6を設けることにより、赤外放射の量を減らし、かつ、可視放射を多くすることができ、ランプ効率の向上とともにバルブに樹脂製バルブ1を用いた場合でも樹脂製バルブ1の温度を格段に低く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の白熱電球の断面図
【図2】マイクロキャビティ6有無による放射強度の傾向を示す図
【図3】本発明の実施形態2の白熱電球の断面図
【図4】電極構造体8,9,11を示す図
【図5】樹脂バルブ1と電極構造体11との接合状態を示す図
【符号の説明】
1 樹脂製バルブ
2 ステム
3 リード線
4 フィラメント
5 口金
6 マイクロフィラメント
7 ガラス構造体
8 第1の電極構造体
9 第2の電極構造体
10 排気管
11 第3の電極構造体
【発明の属する技術分野】
本発明は、白熱電球に関し、特に、樹脂製バルブを有する白熱電球に関する。
【0002】
【従来の技術】
白熱電球は、演色性に優れ簡単な使用器具で点灯でき、また歴史的に長く使用されている関係で広く普及している。しかし、フィラメントの発熱による放射を利用する白熱電球は、可視波長域の放射が全体の10%程度で、それ以外は主に赤外放射が70%、封入ガスによる熱伝導や対流による熱損失が20%である。ランプ効率は15[lm/W]程度と低く、赤外放射や封入ガスによる熱損失により、バルブ表面の温度は最大150℃まで達する。このため、バルブにソーダガラス、硬質ガラスなど耐熱性のガラス材を使用しており、ランプ取扱い時に破損し、割れたガラス破片でケガをするため、安全性の向上という課題があった。
【0003】
この安全性を良くする発明として、不燃性ガラスファイバーを混合した合成樹脂をバルブに使用する白熱電球がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】
米国特許第4764707号明細書
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1では、合成樹脂に25%ガラスファイバーを混合することによりバルブの耐熱温度が142℃と記載されているが、従来白熱電球のバルブ表面温度が150℃にまで達することを考えると、バルブ温度を低減するためにフィラメントとバルブの距離を大きくする必要があり、白熱電球が大型化する。さらに密閉器具などの熱がこもる器具に使用した場合は、バルブ温度が更に上昇し、バルブの耐熱温度以上になる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、樹脂バルブの温度上昇を抑制された樹脂バルブを有する白熱電球を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の白熱電球は、樹脂製バルブと、前記樹脂製バルブに封着されたステムと、前記ステムに配置された一対のリード線と、一対の前記リード線に架け渡され、前記樹脂製バルブ内に配置されたフィラメントと、前記リード線に電気的に接続され、前記フィラメントに電力を供給する口金と、を備え、前記フィラメントには、複数のマイクロキャビティが設けられている。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の一つの実施形態は、樹脂製バルブと、前記樹脂製バルブに封着されたステムと、前記ステムに配置された一対のリード線と、一対の前記リード線に架け渡され、前記樹脂製バルブ内に配置されたフィラメントと、前記リード線に電気的に接続され、前記フィラメントに電力を供給する口金と、を備え、前記フィラメントは、複数のマイクロキャビティが設けられている白熱電球である。
【0009】
また別の白熱電球の実施形態は、前記ステムは樹脂製であり、前記ステムと前記フィラメントとの間に一対の前記リード線を含むように構成されたガラス構造体が配置される。
【0010】
さらに別の白熱電球の実施形態は、前記樹脂製バルブの内部に不活性ガスが封入されている。
【0011】
さらに別の白熱電球の実施形態は、前記マイクロキャビティが円柱形状の孔であり、前記マイクロキャビティのピッチが該円柱形状の直径の2倍以下である。
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を詳細に説明する。以下の図面においては、説明の簡素化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0013】
(実施の形態1)
図1にマイクロキャビティを加工したフィラメントと樹脂製バルブを使用した白熱電球の例を示す。白熱電球は、樹脂製バルブ1と、樹脂製バルブ1に封着されたステム2と、ステム2に配置された一対のリード線3と、一対のリード線3に架け渡されて樹脂製バルブ内に配置されたフィラメント4と、リード線3に電気的に接続されて商用電源からフィラメントに電力を供給する口金5とから大きく構成されている。
【0014】
樹脂製バルブ1は、従来のガラス製のバルブから構成される白熱電球と略同一な形状を持ち、最大径60mmのポリプロピレンでできた透光性の樹脂からなる。樹脂製バルブ1にはアルゴン(Ar)92%、窒素(N2)8%からなる不活性ガスが封入されている(図示せず)。不活性ガスは点灯時に1気圧程度になる量で封入されている。1気圧程度に合わせることで、点灯時の樹脂製バルブ1内部と外部との圧力差を無くすことができ、樹脂製バルブ1の厚みを薄くしても樹脂製バルブ1の破損を抑制できる。なお、不活性ガスは点灯時に1気圧程度になる量で限定されることはなく、1気圧以下でも構わない。不活性ガス量が減るにつれ、不活性ガスの対流による樹脂製バルブ1への熱伝導が少なくなり、樹脂製バルブの温度上昇を抑制するには好ましい。樹脂バルブ1の厚みを厚くすれば、樹脂バルブ1内は真空でも構わない。
【0015】
ステム2は、鉛ガラスを用いた。なお、樹脂製バルブ1とステム2とは接着剤によって接着している。リード線3は、ニッケルメッキ珪銅製からなり、ステム2に覆われる部分はジュメット線(鉄−ニッケル合金に津尾を被覆した線)からできている。口金5は、E26(JIS C 7709)を使用した。口金5はE26には限定されない。
【0016】
フィラメント4は幅0.5mm、厚さ0.05mmのリボン形状のものをコイル形状にしたものである。コイル形状にしたフィラメント4の樹脂製バルブ1の外に向く外表面には、複数のマイクロキャビティ6が設けている。マイクロキャビティ6は円柱形状の孔であり、フェムト秒レーザで加工した。マイクロキャビティ6は直径0.4μm、ピッチ(隣接するマイクロキャビティ同士の中心軸間の距離)0.8μm、深さ2.0μmである。
【0017】
図2に上記フィラメント4が2200Kになるように口金5から電力を投入し、放射強度を測定した結果を示す。横軸は放射波長であり、縦軸は分光放射強度である。比較例としてフィラメントにマイクロキャビティ6を加工しなかった従来型フィラメントの例も示す。従来型フィラメントの場合と比較して、本発明のマイクロキャビティ6が設けられたフィラメントを使用した場合は、波長0.8μm以上の放射強度が抑えられる傾向にあることがわかる。すなわち、赤外放射を抑制する傾向にある。しかし、波長0.8μm以下の放射強度は2倍以上になることが初めてわかった。この作用により、ランプ効率(lm/W)は従来の白熱電球の15(lm/W)よりも際だって高くなり、50(lm/W)という3倍以上の効率が得られた。
【0018】
さらに、樹脂製バルブ1の表面温度を測定した。口金5を上にした状態で2200Kに点灯したところ、樹脂製バルブ1の表面温度は最も高い部分で70℃であり、従来の白熱電球よりもおよそ80℃低くなることがわかった。なお、樹脂製バルブ内に不活性ガスを封入しない場合、すなわち、1.0×10−2Paに減圧した場合は口金5を上にして2200Kで点灯したときの樹脂バルブ1の表面温度の最も高い部分は50℃であり、従来の白熱電球よりもおよそ100℃低くなることがわかった。
【0019】
以上のようにフィラメント4にマイクロキャビティ6を設けることにより、赤外放射の量を減らし、かつ、可視放射を多くすることができ、ランプ効率の向上とともにバルブに樹脂製バルブ1を用いた場合でも樹脂製バルブ1の温度を格段に低く保つことができる。このことにより、樹脂製バルブ1の有した白熱電球の小型化や密閉器具の使用においても、樹脂製バルブ1の耐熱温度以上になる割合をかなり抑制できる。
【0020】
(実施の形態2)
本実施形態の白熱電球は、図1の実施形態1と比較して、ステム2とフィラメント4との間に一対のリード線3を含むように構成されたガラス構造体7を有している点、および、ステム2が樹脂製(ポリプロピレン製)である点で相違する。その他の構成は図1の実施形態1と同一であるので、実施形態1と同一符号を記して説明を省略する。
【0021】
ガラス構造体7は鉛ガラスでできており、一対のリード線3を内部に貫通させている。このガラス構造体7は、フィラメント4からの熱がリード線3を伝導して樹脂製のステム2に達し、リード線3に接しているステム2の部分が溶融することを防止する。すなわち、フィラメント4から伝導してきた熱はガラス構造体7全体に拡散し、樹脂製バルブ1内にその熱を放出する。
【0022】
ステム2とフィラメント4との間に一対のリード線3を含むように構成されたガラス構造体7を設けることによって、フィラメント4からの熱がステム2に達することを抑制でき、ステム2を樹脂製にすることができる。ステム2を樹脂製にすることにより、樹脂製バルブ1とステム2とを同一の樹脂で作ることができ、封着が容易にできる。
【0023】
続いて、本実施形態の製造方法について説明する。
【0024】
まず、図4に示すような、フィラメント4が架け渡された一対のリード線3とその一対のリード線3を含むように配置されたガラス構造体7とからなる第1の電極構造体8を準備する。続いて、ポリプロピレン製の第2の電極構造体9を準備する。第2の電極構造体は同材料でできたステム2と排気管10とを有し、ステム2には一対のリード線3が貫通するリード線3の径よりも僅かに大きい貫通穴が空いている。さらにステム2にはねじ山が形成されている。準備された第1の電極構造体8のリード線3を第2の電極構造体9の貫通穴に通し、第2の電極構造体9を加熱して柔らかくした後、型で成形して貫通穴を埋めてリード線3と第2の電極構造体9とを密着させて第3の電極構造体11を作る。なお、第2の電極構造体を予め用意せず、リード線3を第2の電極構造体の型に挿入し、溶融したポリプロピレンを型に流し込んで、第2の電極構造体を形成してもよい。
【0025】
続いて、図5に示すように、ねじ山が設けられた樹脂製バルブ1を準備し、第3の電極構造体11のステム2に設けられたねじ山と樹脂製バルブ1のねじ山とで接合する。ねじ山構造による接合部は接着剤を流し込んで封着されている。なお、接着剤を用いず、ねじ山同士を熱で溶着させてもよいし、ねじ山自体を設けなくても封着できればよい。
【0026】
その後、排気管10から排気し、不活性ガスを封入して排気管10を溶かして機械で押し切る。最後に、樹脂製バルブ1に口金5を接着剤で取り付け、ステム2から外部に取り出されているリード線3と口金5とを半田付けして白熱電球が完成する。
【0027】
(他の実施の形態)
上記実施形態では、赤外放射を抑制する構造として、円柱形状のマイクロキャビティ6を用いたが、四角柱形状でも同様な効果が得られる。
【0028】
隣接するマイクロキャビティ6を上から見た時のマイクロキャビティ6の中心点を結ぶ図形(図1を参照)が正三角形になるようにマイクロキャビティ6を配置した場合、マイクロキャビティ6のピッチは、マイクロキャビティ6の直径の2倍以下が好ましい。これは、マイクロキャビティ6が加工されている面の面積に対するマイクロキャビティ6の孔の面積の比率(開口率)が20%以上になり、赤外放射を抑制する効果が顕著になるからである。なお、マイクロキャビティ6の外周と隣接するマイクロキャビティ6の外周との最短距離(図1を参照)は、0.1μm以上であることが構造的に好ましい。
【0029】
更に、赤外放射のすべてをカットするには、マイクロキャビティ6の直径は約0.39μmとするのが好ましい。また、マイクロキャビティ6の直径をコントロールすることによりカットする波長がコントロールできるので、マイクロキャビティ6の直径を0.39μm以下とすることにより、白熱電球の可視放射の赤成分をカットでき、光色をコントロールできる。ただし、マイクロキャビティ6の直径を0.27μm以下にすると、0.555μm以上の波長がカットされ、ランプ効率(lm/W)を悪化させるので、マイクロキャビティ6の直径は、0.30μm以上が好ましい。
【0030】
また、フィラメント4の外表面にマイクロキャビティ6を施したが、外表面とその裏面の両方、あるいは側面も含めた全表面に施しても同様な効果が得られる。
【0031】
更に、フィラメント4はリボン形状のものをコイル形状にしたが、リボン形状に限定されず、また望む電気特性に合わせて、1重コイル、2重コイルや3重コイルにしてもよい。
【0032】
樹脂製バルブ1はポリプロピレンを用いたが、耐熱温度が80℃以上で、成形加工性の優れた材質であれば、他の樹脂でもかまわず、機械的強度の強いポリカーボネートやポリスルフォンなども使用可能である。
【0033】
また、バルブ形状において、本実施形態では白熱電球形状であるが、白熱電球形状に限定されず、楕円形状、円柱形状、星形状など樹脂成形できる形状から選択できる。
【0034】
【発明の効果】
フィラメント4にマイクロキャビティ6を設けることにより、赤外放射の量を減らし、かつ、可視放射を多くすることができ、ランプ効率の向上とともにバルブに樹脂製バルブ1を用いた場合でも樹脂製バルブ1の温度を格段に低く保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の白熱電球の断面図
【図2】マイクロキャビティ6有無による放射強度の傾向を示す図
【図3】本発明の実施形態2の白熱電球の断面図
【図4】電極構造体8,9,11を示す図
【図5】樹脂バルブ1と電極構造体11との接合状態を示す図
【符号の説明】
1 樹脂製バルブ
2 ステム
3 リード線
4 フィラメント
5 口金
6 マイクロフィラメント
7 ガラス構造体
8 第1の電極構造体
9 第2の電極構造体
10 排気管
11 第3の電極構造体
Claims (4)
- 樹脂製バルブと、
前記樹脂製バルブに封着されたステムと、
前記ステムに配置された一対のリード線と、
一対の前記リード線に架け渡され、前記樹脂製バルブ内に配置されたフィラメントと、
前記リード線に電気的に接続され、前記フィラメントに電力を供給する口金と、
を備え、
前記フィラメントには複数のマイクロキャビティが設けられている、白熱電球。 - 前記ステムは樹脂からなり、
前記ステムと前記フィラメントとの間に、一対の前記リード線を含むように構成されたガラス構造体が配置された、請求項1に記載の白熱電球。 - 前記樹脂製バルブの内部に不活性ガスが封入されている、請求項1または請求項2に記載の白熱電球。
- 前記マイクロキャビティが円柱形状の孔であり、前記マイクロキャビティのピッチが該円柱形状の直径の2倍以下である、請求項1から3の何れか一つに記載の白熱電球。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003050840A JP2004259651A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 白熱電球 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2003050840A JP2004259651A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 白熱電球 |
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---|---|
JP2004259651A true JP2004259651A (ja) | 2004-09-16 |
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ID=33116147
Family Applications (1)
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004259651A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US8138675B2 (en) | 2009-02-27 | 2012-03-20 | General Electric Company | Stabilized emissive structures and methods of making |
-
2003
- 2003-02-27 JP JP2003050840A patent/JP2004259651A/ja active Pending
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US8138675B2 (en) | 2009-02-27 | 2012-03-20 | General Electric Company | Stabilized emissive structures and methods of making |
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