JP2004259401A - 光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置 - Google Patents
光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】光記録媒体の傾きに対するフォーマット情報の検出特性を向上できる光記録媒体を提供する。
【解決手段】プリグルーブ1の所定位置に、ピットマーク2が、フォーマット情報に対応して形成される。ピットマーク2は、記録トラックG2側の縁部では、突出幅W1で、ほぼ台形状に記録トラックG1からランド部4に突出しており、記録トラックG2と反対側の縁部が、切込み幅W2で、ほぼ三角形状に記録トラックG1内に切れ込んでいる。
【選択図】 図1
【解決手段】プリグルーブ1の所定位置に、ピットマーク2が、フォーマット情報に対応して形成される。ピットマーク2は、記録トラックG2側の縁部では、突出幅W1で、ほぼ台形状に記録トラックG1からランド部4に突出しており、記録トラックG2と反対側の縁部が、切込み幅W2で、ほぼ三角形状に記録トラックG1内に切れ込んでいる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置(記録装置、再生装置、又は、記録及び再生装置)に関し、特に、安定的にフォーマット情報の検出が可能な光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、そのような光記録媒体にデータを記録・再生する記録装置・再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、DVD−RやDVD−RWなど、記録可能な光記録媒体が広く普及している。光記録媒体では、同心円状又はスパイラル状の記録トラック上に光スポットを形成して、データの記録又は再生が行なわれる。例えば、DVD−RやDVD−RWでは、光源波長0.65μm、集光レンズの開口数0.6の光学系を使用して、光記録媒体の記録面上に0.9μm径程度の光スポットを形成し、データの記録又は再生が行なわれる。通常、記録型の光記録媒体の記録面には、光スポットを記録トラックに追従させるためのプリグルーブと、アドレス情報などの制御情報(フォーマット情報)を記録するためのランドプリピットとが、あらかじめ形成される。
【0003】
図9は、従来の光記録媒体の記録トラックの一部を平面図として示している。光記録媒体20には、所定の周期(トラックピッチ)Pで、記録トラックとなるプリグルーブ1が形成される。例えば、DVD−RやDVD−RWでは、トラックピッチPは、0.74μmである。隣接する2つのプリグルーブ1間のランド部4の所定位置には、記録トラックG1と記録トラックG2とをつなぐように、ランドプリピット3が形成される。このランドプリピット3のトラック方向位置によって、アドレス情報などのフォーマット情報があらかじめ記載される。同図の例では、ランドプリピット3は、記録トラックG1のフォーマット情報を表している。
【0004】
一般に、光記録媒体の記録・再生装置では、光記録媒体上に形成される光スポットを、プリグルーブ1に追従するようにトラッキング制御して、記録又は再生が行なわれる。トラッキング制御では、プッシュプル信号検出方式により、記録トラックと直交する方向(トラック横断方向)における光スポットの反射光のファーフィールド分布の偏りの変化が検出される。プッシュプル信号検出では、一般に差信号と呼ばれる、2分割光検出器の2つの受光部の光量の差が検出される。
【0005】
図10は、トラック直交方向に光スポットが移動したときの差信号の変化をグラフとして示している。光スポットがトラック直交方向に移動する場合、差信号は、プリグルーブ1の中心、及び、隣接する2つのプリグルーブ間の中心で値が0となり、同図に示すように、トラックピッチPを1周期として、ほぼ正弦波状に変化する。例えばDVD−RやDVD−RWでは、差信号は、プリグルーブ1上での総反射光量を表す和信号を100%として、±10〜±20%程度の範囲で変化する。
【0006】
図11(a)、(b)は、それぞれ図9の記録トラックを光スポットが追従するときの和信号、差信号の変化の様子をグラフとして示している。記録トラックG1上を追従する光スポットが、ランドプリピット3付近を通過するとき、記録トラックG1のトラック直交方向の形状が、記録トラックG1の中心に対して非対称となるため、差信号が、同図(a)に示すように変化し、ピークを示す。この差信号のピークを検出することで、ランドプリピット3の位置を知ることができ、記録トラックG1のフォーマット情報の検出が可能となる。
【0007】
ランドプリピット3による差信号の変化量の絶対値(ピーク値)は、DVD−Rでは和信号を基準として20%前後の値となる。この値は、図10に示す、トラック直交方向に光スポットが移動したときの差信号の絶対値の最大値とほぼ同じである。光記録媒体20では、ランドプリピット3による差信号のピーク値が十分に大きな値であるため、安定的にフォーマット情報が検出できる。
【0008】
ところで、隣接する記録トラックG2上を追従する光スポットが、ランドプリピット3付近を通過する際にも、記録トラックG2のトラック直交方向の形状が、記録トラックG2の中心に対して非対称となるため、差信号は、図11(b)に示すように変化し、同図(a)に示す差信号とは符号が逆であるが、同図(a)と同じ程度の大きさのピークを示すことになる。このように、光スポットをある記録トラックに追従させると、ランドプリピット3によるクロストークが発生し、その記録トラック自身のフォーマット情報を示すランドプリピット3による差信号のピークと、その記録トラックに隣接する記録トラックのアドレス情報を示すランドプリピット3による差信号のピークとの双方が検出されることになる。
【0009】
光記録媒体の記録・再生装置では、差信号のピークが検出されると、差信号の符号によって、光スポットを追従させている記録トラックのアドレス情報を示すランドプリピット3によるピークであるか、或いは、その記録トラックに隣接する記録トラックのアドレス情報を示すランドプリピット3によるピークであるかを判別する。しかし、信号検出の安定性などの問題を考慮すると、クロストークの発生自体は好ましくない。
【0010】
また、光記録媒体20では、ランドプリピット3が形成される位置で、プリグルーブの幅が変わるように見えるため、図11(a)や(b)に示すように、記録トラックG1や記録トラックG2を追従する光スポットが、ランドプリピット3付近を通過する際に、和信号レベルが増加する変動を示す。和信号の変動は、データ記録後の再生信号のエンベロープ変動につながり、データ再生において、ビットエラー発生率(ビットエラーレート)の上昇を招く。
【0011】
上記した問題点を解決する技術として、例えば特開2002−260239号公報には、プリグルーブのシフト構造を利用して、光記録媒体にフォーマット情報を記載する技術が記載されている。図12(a)は、該文献に記載された光記録媒体の記録トラックの一部を平面図として示し、(b)、(c)は、それぞれ記録トラックを光スポットが追従するときの和信号、差信号の変化の様子をグラフとして示している。この光記録媒体21は、同図(a)に示すように、記録トラックG1の一部がトラック直交方向に変位量(シフト量)Sだけシフトされるシフトマーク5を有する。このシフトマーク5は、ランドプリピット3とは異なり、記録トラックG2とはつながっていない。記録媒体21では、シフトマーク5が、図9に示すランドプリピット3に代わり、フォーマット情報を記載する。
【0012】
シフトマーク5が形成された記録トラックG1を光スポットが追従すると、図12(b)に示すように、記録トラックG1が蛇行するシフトマーク5付近で値が変化し、差信号がピークを示す。一方、記録トラックG1に隣接する記録トラックG2を光スポットが追従する場合にも、図12(c)に示すように、差信号の値が変化してピークを取るが、記録トラックG2とシフトマーク5との間にはランド部4が存在するため、このときの差信号のピーク値は、同図(b)と比較して、小さな値となる。このようなシフトマーク5を用いることで、クロストークによる影響を、ある程度抑制できる。
【0013】
図13は、シフトマーク5の変位量Sと差信号のピーク値との関係をグラフとして示している。同図では、光スポットをシフトマーク5が形成される記録トラック(自トラック)に追従させた場合を実線で示し、光スポットを自トラックに隣接する記録トラックに追従させた場合を点線で示している。同図に示すように、この光記録媒体21では、変位量Sの増加に伴って、自トラック及び隣接トラックの双方において、差信号のピーク値が増加する。しかし、変位量Sが0〜P/2の範囲では、自トラックのピーク値の増加量が、隣接トラックの差信号のピーク値の増加量に比して大きいので、安定的にフォーマット情報が検出できる。
【0014】
【特許文献1】
特開2002−260239号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に、光記録媒体では、透明基板を介して記録トラック上に微小な光スポットを形成し、データの記録又は再生が行なわれるため、光記録媒体に傾きが生じている場合には、その傾きによって透明基板の透過光に収差が発生し、光スポットが変形するため、記録・再生特性が劣化することが知られている。特に円盤状の光ディスク媒体では、トラック直交方向(ディスク半径方向)での傾き発生量が大きくなると、記録・再生特性の劣化が顕著になる傾向がある。光記録媒体には、傾きとビットエラーレートとの相関から、許容傾き量が、規格値として定められている。
【0016】
図14は、トラック直交方向での光記録媒体の傾き量と、ビットエラーレートとの関係をグラフとして示している。ビットエラーレートは、記録媒体の傾き量0付近で最も低く、傾き量が、正の方向又は負の方向に増加するに従って増大する。エラーレートの増大は、正の傾き量と負の傾き量とでほぼ対称となるが、これは光記録媒体の記録面におけるトラック構造が、トラック中心に対して対称となっているためである。破線に示すエラーレートを下回る傾き量の限界値を許容傾き量として定めると、同図では、一点鎖線で示す範囲が許容傾き範囲となる。例えば、DVD−RやDVD−RWでは、±3.5度が許容傾き量の規格値として定められている。
【0017】
図15は、図12(a)に示す特許文献1に記載の光記録媒体の媒体傾き量に対する差信号のピーク値の変化の様子をグラフとして示している。特許文献1では、グルーブシフト量Sの最適範囲として、トラックピッチPに対して、変位量SがP/8〜3・P/8の範囲にあると記載されている。実験により、変位量S=3・P/8のときの光記録媒体21の媒体傾き量に対する差信号のピーク値の変化の様子を求めた。その結果、図15に示すように、シフトマーク5による差信号のピーク値は、媒体傾き量が正の値のときに大きく、媒体傾き量が負の値のときに小さくなり、媒体傾き量0に対して、非対称な特性を示した。許容傾き量範囲内で、差信号のピーク値が最小となるとき、その最小値は、差信号のピーク値の最大値を100%とすると50%以下となる。このように、特許文献1に記載の光記録媒体は、媒体の傾きに対して、差信号のピーク値の変動が大きいことが明らかになった。
【0018】
一般に、光記録媒体では、光記録媒体に傾きが生じた場合であっても、その傾きが上記した許容傾き量範囲内にあるときには、ビットエラーレート等の記録・再生特性に加えて、フォーマット情報の検出特性も、良好である必要がある。しかし、特許文献1に記載の技術では、記録トラック中心からみて、シフトマーク5が形成される部分のトラック直交方向での非対称性が大きいために、光記録媒体21の傾きに対して、差信号のピーク値の変動が大きいという問題がある。媒体傾き量に対して差信号のピーク値の変動が大きい場合には、シフトマーク5の位置を安定に検出するのが難しくなる。
【0019】
図16は、シフトマーク5の変位量Sと和信号のピーク値との関係を示している。同図では、光スポットをシフトマーク5が形成される記録トラック(自トラック)に追従させた場合を実線で示し、光スポットを自トラックに隣接する記録トラックに追従させた場合を点線で示している。同図に示すように、特許文献1に記載の技術では、上記した問題点に加えて、変位量Sの増加に伴って、自トラックでの和信号のピーク値の増加に比して、隣接トラックでの和信号のピーク値の増加が大きいという問題もある。このため、シフトマーク5の形成に際して、自トラックのシフトマーク5による和信号の変動に加えて、隣接トラックのシフトマーク5による和信号の変動も考慮する必要が生じる。
【0020】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、光記録媒体の傾きに対するフォーマット情報の検出特性を向上し、また、フォーマット情報の記載による和信号の変動を低減して、安定的にフォーマット情報の検出が可能な光記録媒体、及び、その原盤作成方法を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、本発明の光記録媒体を記録又は再生する記録・再生装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光ディスク媒体は、同心円状又はスパイラル状の記録トラックを備え、該記録トラックに沿って光スポットを案内するためのプリグルーブが形成された光ディスク媒体において、該プリグルーブは、該プリグルーブの一方の縁部が略台形状にプリグルーブ外側に突出し、他方の縁部が略三角形状又は略円弧状にプリグルーブ内側に突出することによって形成されるピットマークを有することを特徴とする。
【0023】
本発明の光ディスク媒体では、プリグルーブに、一方の縁部がほぼ台形状にプリグルーブ外側に突き出し、他方の縁部がほぼ三角形状又はほぼ円弧状にプリグルーブ内側に突き出すピットマークが形成される。ピットマークをこのように形成することで、プリグルーブを追従する光スポットがピットマーク形成位置を通過する際の差信号のピークを、十分に大きくできると共に、プリグルーブ中心に関してプリグルーブの対称性がある程度確保されているために、媒体傾きに関して差信号のピークの対称性を十分に高くすることができる。このため、本発明の光ディスク媒体では、安定的に、ピットマークの形成位置を検出することができる。
【0024】
本発明の光ディスク媒体は、光スポットが前記プリグルーブに対応する記録トラックを追従する際に、前記ピットマークが形成されるマーク位置で得られるプッシュプル信号の最大振幅が、トラック横断で得られるプッシュプル信号の最大振幅と同程度であり、且つ、光スポットが前記記録トラックに隣接する記録トラックを追従する際に前記マーク位置と同じ角度位置で得られるプッシュプル信号の最大振幅よりも大きいことが好ましい。この場合、ピットマーク形成位置の検出が良好となると共に、クロストークによる影響を抑え、光ディスク媒体の良好な記録・再生が可能となる。
【0025】
また、本発明の光ディスク媒体は、光ディスク媒体のトラックと直交方向の傾き量の許容範囲内で光ディスク媒体の傾き量を変化させた際における、前記ピットマーク位置で得られるプッシュプル信号の振幅の最小値と最大値との比率が50%以上であることが好ましい。この場合、媒体傾きに対する、ピットマーク検出特性が向上する。
【0026】
本発明の光ディスク媒体は、光スポットが前記プリグルーブに対応する記録トラック及び該記録トラックに隣接する記録トラックを追従する際に、和信号の振幅変動率が5%以内であることが好ましい。この場合、ピットマークによる和信号の変動が小さいことで、特に、光ディスク媒体の再生特性が向上する。
【0027】
本発明の光ディスク媒体では、前記一方の縁部の突出幅と、前記他方の縁部の突出幅とを同程度にすることが好ましい。この場合、ピットマーク通過の際の差信号を十分に高くすると共に、ピットマーク通過の際の和信号の変動を十分に低くすることができる。
【0028】
本発明の光記録媒体では、前記ピットマークを、プリフォーマット情報に対応して形成することができる。この場合、光ディスク媒体では、安定的に、フォーマット情報を検出することができる。
【0029】
本発明の光ディスク媒体では、前記プリグルーブをウォブルグルーブとして形成することができる。
【0030】
本発明のディスク原盤の製造方法は、上記本発明の光ディスク媒体を形成するためのディスク原盤の製造方法であって、前記プリグルーブを形成するための第1の露光ビームを照射する工程と、前記第1の露光ビームの照射を停止して、前記ピットマークを形成するための第2の露光ビームを照射する工程とを有することを特徴とする
【0031】
本発明のディスク原盤製造方法では、光ディスクの原盤に、第1露光ビームを移動させつつ照射してプリグルーブの形状を形成し、ピットマーク形成位置では、第1露光ビームの照射を停止して、第2露光ビームを照射する。これより、原盤上に、一方の縁部がほぼ台形状に外側に突き出し、他方の縁部がほぼ三角形状又はほぼ円弧状に内側に突き出すピットマークの形状が形成できる。上記本発明の光ディスク媒体は、このような原盤を使用して得ることができる。光ディスク媒体に形成されるピットマークの形状は、原盤上に照射する第1露光ビーム及び第2露光ビームの強度や照射時間を適切に設定することで、調整することができる。
【0032】
本発明の光記録・再生装置は、上記本発明の光ディスク媒体で、データを記録、再生、又は、記録及び再生することを特徴とする。
【0033】
本発明の光記録・再生装置は、光ディスク媒体に形成されるピットマークによる差信号のピーク値を十分に大きくすることができるため、ピットマーク形成位置を検出するための回路を、簡易な構成であるスライス回路で形成した場合であっても、ピットマーク形成位置を安定的に検出できる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態例の光記録媒体の記録トラックの一部を平面図として示し、同図(b)及び(c)は、それぞれ、光スポットが記録トラックG1、G2を追従するときの和信号及び差信号をグラフとして示している。光記録媒体10は、例えばDVD−R又はDVD−RWとして構成される。光記録媒体10には、記録トラックとなるプリグルーブ1がトラックピッチPで周期的に形成され、プリグルーブ1の所定位置には、フォーマット情報に対応して、プリグルーブ1からランド部4に突出するピットマーク2が形成される。
【0035】
ピットマーク2は、記録トラックG1のフォーマット情報に対応して形成され、記録トラックG1と記録トラックG2との間のランド部4に突き出している。ピットマーク2は、記録トラックG2側の縁部では、突出幅W1で、ほぼ台形状に記録トラックG1からランド部4に突出しており、記録トラックG2と反対側の縁部が、切込み幅W2で、ほぼ三角形状に記録トラックG1内に切れ込んで(突出して)いる。光スポットが、記録トラックG1の中心を、図1(a)に一点鎖線で示すように追従すると、差信号は、同図(b)に示すように値が変化し、ピットマーク2付近で、ピークを示す。光記録媒体10では、このようなピークを検出することで、記録トラックG1のフォーマット情報を検出可能である。
【0036】
一方、光スポットが、隣接する記録トラックG2の中心を、図1(a)中に一点鎖線で示すように追従すると、差信号は、同図(c)に示すように変化し、ピットマーク2付近で、同図(b)の差信号のピークとは符号が逆のピークを示す。このように、光スポットが記録トラックG2を追従する際には、記録トラックG1のフォーマット情報を示すピットマーク2によってクロストークが発生するが、同図(c)のピークにおける差信号の変化量の絶対値(ピーク値)は、記録トラックG1と記録トラックG2との間にランド部4が確保されているために、同図(b)の差信号のピーク値と比較して、小さな値となっている。
【0037】
図2(a)及び(b)は、それぞれ、突出幅W1(=切込み幅W2)を変化させたときの差信号及び和信号のピーク値をグラフとして示している。同図では、光スポットをピットマーク2が形成される記録トラック(以下、自トラックとも呼ぶ)に追従させた場合を実線で示し、光スポットをピットマーク2が突出する側で自トラックに隣接する記録トラック(以下、隣接トラックとも呼ぶ)に追従させた場合を点線で示している。
【0038】
図2(a)に示すように、ピットマーク2により検出される差信号のピーク値は、突出幅W1及び切込み幅W2が0〜P/2の範囲では、常に、自トラックで検出される差信号のピーク値が、隣接トラックで検出される差信号のピーク値に比して大きな値となる。また、突出幅W1及び切込み幅W2がP/4程度であれば、自トラックで検出される差信号のピーク値が、図10に示す差信号の振幅の最大値とほぼ同じレベルになる。つまり、ピットマーク2による差信号のピーク値は、ランドプリピット3(図9)による差信号のピーク値と同じ程度の値となり、光記録媒体10では、ピットマーク2によって、フォーマット情報を安定的に検出できる。
【0039】
図3は、本実施形態例及び従来の光記録媒体の媒体傾き量に対する差信号のピーク値の変化をグラフとして示している。なお、同図では、突出幅W1=切込み幅W2としている。自トラックで、ピットマーク2によって検出される差信号のピーク値は、従来の記録媒体21(図12(a))のシフトマーク5(変異量S=突出幅W1)によって検出される差信号のピーク値に比して、媒体傾きに関して非対称性の度合いが減少している。また、本実施形態例の光記録媒体10では、許容傾き量範囲内において記録媒体を傾けた際に、差信号のピーク値の最小値と最大値との比が50%以上となり、本実施形態例の光記録媒体10は、媒体の傾きに対する差信号のピーク値の変動が、従来の光記録媒体21に比して小さい。つまり、光記録媒体10は、従来の光記録媒体21に比して、記録媒体の傾きに対するフォーマット情報の検出特性が向上している。
【0040】
図2に戻り、突出幅W1及び切込み幅W2を0〜P/2の範囲で変化させたとき、和信号のピーク値は、同図(b)に示すように変化する。和信号のピーク値は、自トラック及び隣接トラックともに、ほぼ同じレベルの値となる。例えばDVDでは、和信号の変動が和信号の信号レベルに対して5%以下となる範囲が、データエラー特性に影響を与えない許容変動範囲として規定されている。同図(b)に示す和信号のピーク値は、プリグルーブ1の深さや幅の設定などに応じて変動するが、プリグルーブ1の光学深さをλ/8に設定し、幅をP/2と設定する場合には、和信号の振幅変動率は5%以下となって、光記録媒体10では、和信号の変動が、データエラー特性に影響を与えない許容変動範囲を満足する。
【0041】
図4は、突出幅W1を一定にし、切込み幅W2を変化させたときの差信号及び和信号のピーク値の変化の様子をグラフとして示している。切込み幅W2を0から切込み幅W1に向かって大きくしていくと、差信号のピーク値はあまり変化しないが、和信号のピーク値は、切込み幅W2が突出幅W1とほぼ等しくなる付近で最小となる。光記録媒体10では、切込み幅W2を、突出幅W1と同等かそれ以上とすることで、差信号のピーク値を十分に確保すると共に、和信号のピーク値を低減して、光スポットが記録トラックG1又は記録トラックG2を追従する際の和信号の変動を十分に低減できる。
【0042】
上記のように、本実施形態例の光記録媒体10では、プリグルーブ1のトラック直交方向の一方の縁部で、突出幅W1でほぼ台形状に突出し、他方の縁部で、切込み幅W2でほぼ三角形状に切れ込むシフトマーク2に、記録トラックG1のフォーマット信号を記載する。これにより、ランドプリピット3を用いる従来の光記録媒体20(図9)に比して隣接トラックでのクロストークの影響を低減でき、シフトマーク5を用いる従来の光記録媒体21(図12(a))に比して、媒体傾きに対するフォーマット信号の検出特性を向上できる。このため、本実施形態例の光記録媒体10では、従来の光記録媒体に比して、安定的にフォーマット信号を検出できる。また、和信号の変動を、従来の光記録媒体に比して、低く抑えることができ、和信号の変動が、データエラー特性に影響を与えない範囲を満足する。
【0043】
図3に示すように、従来の光記録媒体21では、シフトマーク5のトラック中心に関して非対称性の度合いが大きいため、差信号のピーク値の、記録媒体の傾きに関して非対称性の度合いが大きかった。本実施形態例における光記録媒体10では、ピットマーク2が、切込み幅W2の三角形状の切欠きを有するため、トラック中心に関して非対称性の度合いが緩和し、差信号のピーク値の変化の記録媒体の傾きに関して非対称性が減少する。同図に示されるように、媒体傾き0での差信号のピーク値は、従来光記録媒体に比して多少低下するが、媒体傾きによる差信号のピーク値の変動が減少するため、トータルとしてみれば、フォーマット情報の検出特性の安定性を向上させることができる。
【0044】
図5は、突出幅W1を固定し、切込み幅W2を変化させたときの光記録媒体の媒体傾き量に対する差信号のピーク値の変化の様子をグラフとして示している。切込み幅W2が小さいときには、切込み幅W2が大きいときに比して、全体的にピットマーク2による差信号のピーク値が小さくなる。しかし、切込み幅W2が小さいときには、媒体傾きに関して差信号のピーク値の対称性が更に改善される。差信号のピーク値の検出に、十分なマージンがある場合には、切込み幅W2を減少させて、媒体傾きに対する安定性を、更に向上させることもできる。
【0045】
図6は、光記録媒体の原盤作成時の露光ビームの軌跡を示している。光記録媒10体の原盤の作成では、露光装置によって、プリグルーブ1を形成するためのプリグルーブ形成ビームと、ピットマーク2を形成するためのピットマーク形成ビームとを、原盤に照射する。図1(a)に示すピットマーク2を有する光記録媒体10の原盤は、以下のようにして形成できる。
【0046】
光記録媒体10の原盤に、図6に示すように、プリグルーブ形成ビームを、プリグルーブ1の形成方向に沿って移動しながら照射する。プリグルーブ形成ビームが、光記録媒体10でピットマーク2が形成される位置まで移動すると、プリグルーブ形成ビームを一旦オフにし、プリグルーブ1の中心からずれた位置に、ピットマーク形成用のビームを照射する。再び、プリグルーブ形成ビームをオンにし、プリグルーブの形成方向に沿って移動しながらプリグルーブ形成ビームを照射する。このようなプリグルーブ形成用ビーム及びピットマーク形成用ビームの軌跡をつなげたものが、ピットマーク2の周辺のプリグルーブ1の形状となる。原盤の作成では、プリグルーブ形成用ビームをオフにし、再びプリグルーブ形成用ビームをオンにするまでの時間を適切に調整することで、ほぼ三角形状の、切込み幅W2の切欠きを有するピットマーク2を形成することができる。
【0047】
図7は、本発明の一実施形態例の光記録媒体の記録・再生装置の構成を機能ブロック図として示している。光記録媒体の記録・再生装置100は、スピンドル11と、光ヘッド12と、ピットマーク検出回路13とを備える。スピンドル11は、光記録媒体10を回転させる。光ヘッド12は、光学系からの光を光記録媒体10の記録面に照射し、光記録媒体10からの反射光を読み取って、差信号を含む各種の信号を出力する。ピットマーク検出回路13は、光ヘッド12から差信号を入力し、その差信号のピーク値を検出してフォーマット検出信号を出力する。
【0048】
光記録媒体の記録・再生装置100では、光記録媒体10に形成されたピットマーク2による差信号のピーク値が、媒体の傾きに対しても安定的に検出できるため、ピットマーク検出回路13を、簡易な回路構成のスライス回路で構成することができる。このため、光記録媒体の記録・再生装置100では、フォーマット信号検出のための回路構成を複雑な回路で構成する必要がなく、コストが低く抑えられる。
【0049】
なお、上記実施形態例では、プリグルーブが通常の直線状のグルーブとして形成される例について説明したが、光記録媒体では、トラック直交方向に周期的に蛇行したウォブルグルーブとマークピット2とを組み合わせて、フォーマット情報を記載することも可能である。また、ピットマーク2によるフォーマット情報の記載は、ランド部4とプリグルーブ1との双方を記録トラックとして使用するような高密度の光記録媒体にも、適用可能である。
【0050】
上記実施形態例では、光記録媒体が、DVD−RやDVD−RWとして構成される例について説明したが、これに限られず、例えば、光記録媒体は、次世代の青色光源を使用して記録又は再生が行なわれる光ディスクとして構成されていてもよい。青色光源を使用する光ディスクとしては、例えば、光源波長が405nm、集光レンズの開口数が0.65の光学系を用い、記録トラックがトラックピッチ0.4μm程度で形成される光ディスク上に直径0.5μm程度の光スポットを形成して記録再生を行なう光ディスクが知られている。このような光ディスクに、フォーマット情報を記載するピットマーク2を形成する場合であっても、上記実施形態例と同様に、安定的にフォーマット情報が検出できる。
【0051】
図8は、図6に示す露光ビームの軌跡により形成されるピットマーク2の別の例を示している。図6に示す露光ビームの軌跡により、ピットマーク2を有する光記録媒体10の原盤を作成すると、露光条件や、原盤作成時に使用するレジスト材料の特性によって、最終的に光記録媒体10に形成されるピットマーク2の形状は、図8(a)及び(b)に示すように、丸みを持った突出部や、切欠き部となることが多い。実験により、ピットマーク2が、図8(a)や同図(b)のように形成された場合にも、ピットマーク2が図1(a)のように形成された場合と同様に、良好にピットマークが検出できることが確認された。つまり、このような丸みを持った突出部や切欠き部も、近似的に、台形の突出形状や三角形の切欠き形状とみなすことができる。
【0052】
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明の光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置は、上記実施形態例にのみ限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施した光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置も、本発明の範囲に含まれる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光ディスク媒体では、一方の縁部が略台形状にプリグルーブ外側に突出し、他方の縁部が略三角形状又は略円弧状にプリグルーブ内側に突出するピットマークを用いることで、ピットマークによる差信号のピーク値を十分に大きくすできると共に、光記録媒体の傾きに対するフォーマット情報の検出特性を向上させることができる。このような光ディスク媒体は、本発明の光ディスク媒体の原盤作成方法を使用することで得られる。
また、本発明の光記録媒体の記録・再生装置は、本発明の光ディスク媒体の記録・再生において、安定的に、ピットマーク形成位置を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態例の光記録媒体の記録トラックの一部を示す平面図、(b)及び(c)は、それぞれ、光スポットを記録トラックG1及びG2に追従させたときの和信号と差信号とを示すグラフ。
【図2】(a)及び(b)は、それぞれ、突出幅W1及び切込み幅W2を変化させたときの差信号及び和信号のピーク値を示すグラフ。
【図3】光記録媒体の媒体傾き量と差信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図4】切込み幅W2と、差信号及び和信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図5】切込み幅W2を変化させたときの、光記録媒体の媒体傾き量と差信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図6】光記録媒体の原盤作成時の露光ビームの軌跡を示す平面図。
【図7】本発明の一実施形態例の光記録媒体の記録・再生装置の構成を示す機能ブロック図。
【図8】(a)及び(b)は、それぞれ、図6に示す露光ビームの軌跡により形成されるピットマーク2の別の例を示す平面図。
【図9】従来の光記録媒体の記録トラックの一部を示す平面図。
【図10】トラック直交方向に光スポットが移動したときの差信号を示すグラフ。
【図11】(a)及び(b)は、それぞれ、図9の記録トラックG1及びG2を光スポットが追従するときの差信号及び和信号を示すグラフ。
【図12】(a)は、特許文献1に記載の光記録媒体の記録トラックの一部を示す平面図、(b)及び(c)は、それぞれ、記録トラックG1及びG2を光スポットが追従するときの和信号と差信号とを示すグラフ。
【図13】シフトマーク5の変位量Sと差信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図14】トラック直交方向での光記録媒体の傾き量と、ビットエラーレートとの関係を示すグラフ。
【図15】従来の光記録媒体の媒体傾き量と、差信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図16】シフトマーク5の変位量Sと和信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1:プリグルーブ
2:ピットマーク
3:ランドプリピット
4:ランド
5:シフトマーク
10:光ディスク
11:スピンドル
12:光ヘッド
13:ピットマーク検出回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置(記録装置、再生装置、又は、記録及び再生装置)に関し、特に、安定的にフォーマット情報の検出が可能な光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、そのような光記録媒体にデータを記録・再生する記録装置・再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、DVD−RやDVD−RWなど、記録可能な光記録媒体が広く普及している。光記録媒体では、同心円状又はスパイラル状の記録トラック上に光スポットを形成して、データの記録又は再生が行なわれる。例えば、DVD−RやDVD−RWでは、光源波長0.65μm、集光レンズの開口数0.6の光学系を使用して、光記録媒体の記録面上に0.9μm径程度の光スポットを形成し、データの記録又は再生が行なわれる。通常、記録型の光記録媒体の記録面には、光スポットを記録トラックに追従させるためのプリグルーブと、アドレス情報などの制御情報(フォーマット情報)を記録するためのランドプリピットとが、あらかじめ形成される。
【0003】
図9は、従来の光記録媒体の記録トラックの一部を平面図として示している。光記録媒体20には、所定の周期(トラックピッチ)Pで、記録トラックとなるプリグルーブ1が形成される。例えば、DVD−RやDVD−RWでは、トラックピッチPは、0.74μmである。隣接する2つのプリグルーブ1間のランド部4の所定位置には、記録トラックG1と記録トラックG2とをつなぐように、ランドプリピット3が形成される。このランドプリピット3のトラック方向位置によって、アドレス情報などのフォーマット情報があらかじめ記載される。同図の例では、ランドプリピット3は、記録トラックG1のフォーマット情報を表している。
【0004】
一般に、光記録媒体の記録・再生装置では、光記録媒体上に形成される光スポットを、プリグルーブ1に追従するようにトラッキング制御して、記録又は再生が行なわれる。トラッキング制御では、プッシュプル信号検出方式により、記録トラックと直交する方向(トラック横断方向)における光スポットの反射光のファーフィールド分布の偏りの変化が検出される。プッシュプル信号検出では、一般に差信号と呼ばれる、2分割光検出器の2つの受光部の光量の差が検出される。
【0005】
図10は、トラック直交方向に光スポットが移動したときの差信号の変化をグラフとして示している。光スポットがトラック直交方向に移動する場合、差信号は、プリグルーブ1の中心、及び、隣接する2つのプリグルーブ間の中心で値が0となり、同図に示すように、トラックピッチPを1周期として、ほぼ正弦波状に変化する。例えばDVD−RやDVD−RWでは、差信号は、プリグルーブ1上での総反射光量を表す和信号を100%として、±10〜±20%程度の範囲で変化する。
【0006】
図11(a)、(b)は、それぞれ図9の記録トラックを光スポットが追従するときの和信号、差信号の変化の様子をグラフとして示している。記録トラックG1上を追従する光スポットが、ランドプリピット3付近を通過するとき、記録トラックG1のトラック直交方向の形状が、記録トラックG1の中心に対して非対称となるため、差信号が、同図(a)に示すように変化し、ピークを示す。この差信号のピークを検出することで、ランドプリピット3の位置を知ることができ、記録トラックG1のフォーマット情報の検出が可能となる。
【0007】
ランドプリピット3による差信号の変化量の絶対値(ピーク値)は、DVD−Rでは和信号を基準として20%前後の値となる。この値は、図10に示す、トラック直交方向に光スポットが移動したときの差信号の絶対値の最大値とほぼ同じである。光記録媒体20では、ランドプリピット3による差信号のピーク値が十分に大きな値であるため、安定的にフォーマット情報が検出できる。
【0008】
ところで、隣接する記録トラックG2上を追従する光スポットが、ランドプリピット3付近を通過する際にも、記録トラックG2のトラック直交方向の形状が、記録トラックG2の中心に対して非対称となるため、差信号は、図11(b)に示すように変化し、同図(a)に示す差信号とは符号が逆であるが、同図(a)と同じ程度の大きさのピークを示すことになる。このように、光スポットをある記録トラックに追従させると、ランドプリピット3によるクロストークが発生し、その記録トラック自身のフォーマット情報を示すランドプリピット3による差信号のピークと、その記録トラックに隣接する記録トラックのアドレス情報を示すランドプリピット3による差信号のピークとの双方が検出されることになる。
【0009】
光記録媒体の記録・再生装置では、差信号のピークが検出されると、差信号の符号によって、光スポットを追従させている記録トラックのアドレス情報を示すランドプリピット3によるピークであるか、或いは、その記録トラックに隣接する記録トラックのアドレス情報を示すランドプリピット3によるピークであるかを判別する。しかし、信号検出の安定性などの問題を考慮すると、クロストークの発生自体は好ましくない。
【0010】
また、光記録媒体20では、ランドプリピット3が形成される位置で、プリグルーブの幅が変わるように見えるため、図11(a)や(b)に示すように、記録トラックG1や記録トラックG2を追従する光スポットが、ランドプリピット3付近を通過する際に、和信号レベルが増加する変動を示す。和信号の変動は、データ記録後の再生信号のエンベロープ変動につながり、データ再生において、ビットエラー発生率(ビットエラーレート)の上昇を招く。
【0011】
上記した問題点を解決する技術として、例えば特開2002−260239号公報には、プリグルーブのシフト構造を利用して、光記録媒体にフォーマット情報を記載する技術が記載されている。図12(a)は、該文献に記載された光記録媒体の記録トラックの一部を平面図として示し、(b)、(c)は、それぞれ記録トラックを光スポットが追従するときの和信号、差信号の変化の様子をグラフとして示している。この光記録媒体21は、同図(a)に示すように、記録トラックG1の一部がトラック直交方向に変位量(シフト量)Sだけシフトされるシフトマーク5を有する。このシフトマーク5は、ランドプリピット3とは異なり、記録トラックG2とはつながっていない。記録媒体21では、シフトマーク5が、図9に示すランドプリピット3に代わり、フォーマット情報を記載する。
【0012】
シフトマーク5が形成された記録トラックG1を光スポットが追従すると、図12(b)に示すように、記録トラックG1が蛇行するシフトマーク5付近で値が変化し、差信号がピークを示す。一方、記録トラックG1に隣接する記録トラックG2を光スポットが追従する場合にも、図12(c)に示すように、差信号の値が変化してピークを取るが、記録トラックG2とシフトマーク5との間にはランド部4が存在するため、このときの差信号のピーク値は、同図(b)と比較して、小さな値となる。このようなシフトマーク5を用いることで、クロストークによる影響を、ある程度抑制できる。
【0013】
図13は、シフトマーク5の変位量Sと差信号のピーク値との関係をグラフとして示している。同図では、光スポットをシフトマーク5が形成される記録トラック(自トラック)に追従させた場合を実線で示し、光スポットを自トラックに隣接する記録トラックに追従させた場合を点線で示している。同図に示すように、この光記録媒体21では、変位量Sの増加に伴って、自トラック及び隣接トラックの双方において、差信号のピーク値が増加する。しかし、変位量Sが0〜P/2の範囲では、自トラックのピーク値の増加量が、隣接トラックの差信号のピーク値の増加量に比して大きいので、安定的にフォーマット情報が検出できる。
【0014】
【特許文献1】
特開2002−260239号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般に、光記録媒体では、透明基板を介して記録トラック上に微小な光スポットを形成し、データの記録又は再生が行なわれるため、光記録媒体に傾きが生じている場合には、その傾きによって透明基板の透過光に収差が発生し、光スポットが変形するため、記録・再生特性が劣化することが知られている。特に円盤状の光ディスク媒体では、トラック直交方向(ディスク半径方向)での傾き発生量が大きくなると、記録・再生特性の劣化が顕著になる傾向がある。光記録媒体には、傾きとビットエラーレートとの相関から、許容傾き量が、規格値として定められている。
【0016】
図14は、トラック直交方向での光記録媒体の傾き量と、ビットエラーレートとの関係をグラフとして示している。ビットエラーレートは、記録媒体の傾き量0付近で最も低く、傾き量が、正の方向又は負の方向に増加するに従って増大する。エラーレートの増大は、正の傾き量と負の傾き量とでほぼ対称となるが、これは光記録媒体の記録面におけるトラック構造が、トラック中心に対して対称となっているためである。破線に示すエラーレートを下回る傾き量の限界値を許容傾き量として定めると、同図では、一点鎖線で示す範囲が許容傾き範囲となる。例えば、DVD−RやDVD−RWでは、±3.5度が許容傾き量の規格値として定められている。
【0017】
図15は、図12(a)に示す特許文献1に記載の光記録媒体の媒体傾き量に対する差信号のピーク値の変化の様子をグラフとして示している。特許文献1では、グルーブシフト量Sの最適範囲として、トラックピッチPに対して、変位量SがP/8〜3・P/8の範囲にあると記載されている。実験により、変位量S=3・P/8のときの光記録媒体21の媒体傾き量に対する差信号のピーク値の変化の様子を求めた。その結果、図15に示すように、シフトマーク5による差信号のピーク値は、媒体傾き量が正の値のときに大きく、媒体傾き量が負の値のときに小さくなり、媒体傾き量0に対して、非対称な特性を示した。許容傾き量範囲内で、差信号のピーク値が最小となるとき、その最小値は、差信号のピーク値の最大値を100%とすると50%以下となる。このように、特許文献1に記載の光記録媒体は、媒体の傾きに対して、差信号のピーク値の変動が大きいことが明らかになった。
【0018】
一般に、光記録媒体では、光記録媒体に傾きが生じた場合であっても、その傾きが上記した許容傾き量範囲内にあるときには、ビットエラーレート等の記録・再生特性に加えて、フォーマット情報の検出特性も、良好である必要がある。しかし、特許文献1に記載の技術では、記録トラック中心からみて、シフトマーク5が形成される部分のトラック直交方向での非対称性が大きいために、光記録媒体21の傾きに対して、差信号のピーク値の変動が大きいという問題がある。媒体傾き量に対して差信号のピーク値の変動が大きい場合には、シフトマーク5の位置を安定に検出するのが難しくなる。
【0019】
図16は、シフトマーク5の変位量Sと和信号のピーク値との関係を示している。同図では、光スポットをシフトマーク5が形成される記録トラック(自トラック)に追従させた場合を実線で示し、光スポットを自トラックに隣接する記録トラックに追従させた場合を点線で示している。同図に示すように、特許文献1に記載の技術では、上記した問題点に加えて、変位量Sの増加に伴って、自トラックでの和信号のピーク値の増加に比して、隣接トラックでの和信号のピーク値の増加が大きいという問題もある。このため、シフトマーク5の形成に際して、自トラックのシフトマーク5による和信号の変動に加えて、隣接トラックのシフトマーク5による和信号の変動も考慮する必要が生じる。
【0020】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、光記録媒体の傾きに対するフォーマット情報の検出特性を向上し、また、フォーマット情報の記載による和信号の変動を低減して、安定的にフォーマット情報の検出が可能な光記録媒体、及び、その原盤作成方法を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は、本発明の光記録媒体を記録又は再生する記録・再生装置を提供することを目的とする。
【0022】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光ディスク媒体は、同心円状又はスパイラル状の記録トラックを備え、該記録トラックに沿って光スポットを案内するためのプリグルーブが形成された光ディスク媒体において、該プリグルーブは、該プリグルーブの一方の縁部が略台形状にプリグルーブ外側に突出し、他方の縁部が略三角形状又は略円弧状にプリグルーブ内側に突出することによって形成されるピットマークを有することを特徴とする。
【0023】
本発明の光ディスク媒体では、プリグルーブに、一方の縁部がほぼ台形状にプリグルーブ外側に突き出し、他方の縁部がほぼ三角形状又はほぼ円弧状にプリグルーブ内側に突き出すピットマークが形成される。ピットマークをこのように形成することで、プリグルーブを追従する光スポットがピットマーク形成位置を通過する際の差信号のピークを、十分に大きくできると共に、プリグルーブ中心に関してプリグルーブの対称性がある程度確保されているために、媒体傾きに関して差信号のピークの対称性を十分に高くすることができる。このため、本発明の光ディスク媒体では、安定的に、ピットマークの形成位置を検出することができる。
【0024】
本発明の光ディスク媒体は、光スポットが前記プリグルーブに対応する記録トラックを追従する際に、前記ピットマークが形成されるマーク位置で得られるプッシュプル信号の最大振幅が、トラック横断で得られるプッシュプル信号の最大振幅と同程度であり、且つ、光スポットが前記記録トラックに隣接する記録トラックを追従する際に前記マーク位置と同じ角度位置で得られるプッシュプル信号の最大振幅よりも大きいことが好ましい。この場合、ピットマーク形成位置の検出が良好となると共に、クロストークによる影響を抑え、光ディスク媒体の良好な記録・再生が可能となる。
【0025】
また、本発明の光ディスク媒体は、光ディスク媒体のトラックと直交方向の傾き量の許容範囲内で光ディスク媒体の傾き量を変化させた際における、前記ピットマーク位置で得られるプッシュプル信号の振幅の最小値と最大値との比率が50%以上であることが好ましい。この場合、媒体傾きに対する、ピットマーク検出特性が向上する。
【0026】
本発明の光ディスク媒体は、光スポットが前記プリグルーブに対応する記録トラック及び該記録トラックに隣接する記録トラックを追従する際に、和信号の振幅変動率が5%以内であることが好ましい。この場合、ピットマークによる和信号の変動が小さいことで、特に、光ディスク媒体の再生特性が向上する。
【0027】
本発明の光ディスク媒体では、前記一方の縁部の突出幅と、前記他方の縁部の突出幅とを同程度にすることが好ましい。この場合、ピットマーク通過の際の差信号を十分に高くすると共に、ピットマーク通過の際の和信号の変動を十分に低くすることができる。
【0028】
本発明の光記録媒体では、前記ピットマークを、プリフォーマット情報に対応して形成することができる。この場合、光ディスク媒体では、安定的に、フォーマット情報を検出することができる。
【0029】
本発明の光ディスク媒体では、前記プリグルーブをウォブルグルーブとして形成することができる。
【0030】
本発明のディスク原盤の製造方法は、上記本発明の光ディスク媒体を形成するためのディスク原盤の製造方法であって、前記プリグルーブを形成するための第1の露光ビームを照射する工程と、前記第1の露光ビームの照射を停止して、前記ピットマークを形成するための第2の露光ビームを照射する工程とを有することを特徴とする
【0031】
本発明のディスク原盤製造方法では、光ディスクの原盤に、第1露光ビームを移動させつつ照射してプリグルーブの形状を形成し、ピットマーク形成位置では、第1露光ビームの照射を停止して、第2露光ビームを照射する。これより、原盤上に、一方の縁部がほぼ台形状に外側に突き出し、他方の縁部がほぼ三角形状又はほぼ円弧状に内側に突き出すピットマークの形状が形成できる。上記本発明の光ディスク媒体は、このような原盤を使用して得ることができる。光ディスク媒体に形成されるピットマークの形状は、原盤上に照射する第1露光ビーム及び第2露光ビームの強度や照射時間を適切に設定することで、調整することができる。
【0032】
本発明の光記録・再生装置は、上記本発明の光ディスク媒体で、データを記録、再生、又は、記録及び再生することを特徴とする。
【0033】
本発明の光記録・再生装置は、光ディスク媒体に形成されるピットマークによる差信号のピーク値を十分に大きくすることができるため、ピットマーク形成位置を検出するための回路を、簡易な構成であるスライス回路で形成した場合であっても、ピットマーク形成位置を安定的に検出できる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。図1(a)は、本発明の一実施形態例の光記録媒体の記録トラックの一部を平面図として示し、同図(b)及び(c)は、それぞれ、光スポットが記録トラックG1、G2を追従するときの和信号及び差信号をグラフとして示している。光記録媒体10は、例えばDVD−R又はDVD−RWとして構成される。光記録媒体10には、記録トラックとなるプリグルーブ1がトラックピッチPで周期的に形成され、プリグルーブ1の所定位置には、フォーマット情報に対応して、プリグルーブ1からランド部4に突出するピットマーク2が形成される。
【0035】
ピットマーク2は、記録トラックG1のフォーマット情報に対応して形成され、記録トラックG1と記録トラックG2との間のランド部4に突き出している。ピットマーク2は、記録トラックG2側の縁部では、突出幅W1で、ほぼ台形状に記録トラックG1からランド部4に突出しており、記録トラックG2と反対側の縁部が、切込み幅W2で、ほぼ三角形状に記録トラックG1内に切れ込んで(突出して)いる。光スポットが、記録トラックG1の中心を、図1(a)に一点鎖線で示すように追従すると、差信号は、同図(b)に示すように値が変化し、ピットマーク2付近で、ピークを示す。光記録媒体10では、このようなピークを検出することで、記録トラックG1のフォーマット情報を検出可能である。
【0036】
一方、光スポットが、隣接する記録トラックG2の中心を、図1(a)中に一点鎖線で示すように追従すると、差信号は、同図(c)に示すように変化し、ピットマーク2付近で、同図(b)の差信号のピークとは符号が逆のピークを示す。このように、光スポットが記録トラックG2を追従する際には、記録トラックG1のフォーマット情報を示すピットマーク2によってクロストークが発生するが、同図(c)のピークにおける差信号の変化量の絶対値(ピーク値)は、記録トラックG1と記録トラックG2との間にランド部4が確保されているために、同図(b)の差信号のピーク値と比較して、小さな値となっている。
【0037】
図2(a)及び(b)は、それぞれ、突出幅W1(=切込み幅W2)を変化させたときの差信号及び和信号のピーク値をグラフとして示している。同図では、光スポットをピットマーク2が形成される記録トラック(以下、自トラックとも呼ぶ)に追従させた場合を実線で示し、光スポットをピットマーク2が突出する側で自トラックに隣接する記録トラック(以下、隣接トラックとも呼ぶ)に追従させた場合を点線で示している。
【0038】
図2(a)に示すように、ピットマーク2により検出される差信号のピーク値は、突出幅W1及び切込み幅W2が0〜P/2の範囲では、常に、自トラックで検出される差信号のピーク値が、隣接トラックで検出される差信号のピーク値に比して大きな値となる。また、突出幅W1及び切込み幅W2がP/4程度であれば、自トラックで検出される差信号のピーク値が、図10に示す差信号の振幅の最大値とほぼ同じレベルになる。つまり、ピットマーク2による差信号のピーク値は、ランドプリピット3(図9)による差信号のピーク値と同じ程度の値となり、光記録媒体10では、ピットマーク2によって、フォーマット情報を安定的に検出できる。
【0039】
図3は、本実施形態例及び従来の光記録媒体の媒体傾き量に対する差信号のピーク値の変化をグラフとして示している。なお、同図では、突出幅W1=切込み幅W2としている。自トラックで、ピットマーク2によって検出される差信号のピーク値は、従来の記録媒体21(図12(a))のシフトマーク5(変異量S=突出幅W1)によって検出される差信号のピーク値に比して、媒体傾きに関して非対称性の度合いが減少している。また、本実施形態例の光記録媒体10では、許容傾き量範囲内において記録媒体を傾けた際に、差信号のピーク値の最小値と最大値との比が50%以上となり、本実施形態例の光記録媒体10は、媒体の傾きに対する差信号のピーク値の変動が、従来の光記録媒体21に比して小さい。つまり、光記録媒体10は、従来の光記録媒体21に比して、記録媒体の傾きに対するフォーマット情報の検出特性が向上している。
【0040】
図2に戻り、突出幅W1及び切込み幅W2を0〜P/2の範囲で変化させたとき、和信号のピーク値は、同図(b)に示すように変化する。和信号のピーク値は、自トラック及び隣接トラックともに、ほぼ同じレベルの値となる。例えばDVDでは、和信号の変動が和信号の信号レベルに対して5%以下となる範囲が、データエラー特性に影響を与えない許容変動範囲として規定されている。同図(b)に示す和信号のピーク値は、プリグルーブ1の深さや幅の設定などに応じて変動するが、プリグルーブ1の光学深さをλ/8に設定し、幅をP/2と設定する場合には、和信号の振幅変動率は5%以下となって、光記録媒体10では、和信号の変動が、データエラー特性に影響を与えない許容変動範囲を満足する。
【0041】
図4は、突出幅W1を一定にし、切込み幅W2を変化させたときの差信号及び和信号のピーク値の変化の様子をグラフとして示している。切込み幅W2を0から切込み幅W1に向かって大きくしていくと、差信号のピーク値はあまり変化しないが、和信号のピーク値は、切込み幅W2が突出幅W1とほぼ等しくなる付近で最小となる。光記録媒体10では、切込み幅W2を、突出幅W1と同等かそれ以上とすることで、差信号のピーク値を十分に確保すると共に、和信号のピーク値を低減して、光スポットが記録トラックG1又は記録トラックG2を追従する際の和信号の変動を十分に低減できる。
【0042】
上記のように、本実施形態例の光記録媒体10では、プリグルーブ1のトラック直交方向の一方の縁部で、突出幅W1でほぼ台形状に突出し、他方の縁部で、切込み幅W2でほぼ三角形状に切れ込むシフトマーク2に、記録トラックG1のフォーマット信号を記載する。これにより、ランドプリピット3を用いる従来の光記録媒体20(図9)に比して隣接トラックでのクロストークの影響を低減でき、シフトマーク5を用いる従来の光記録媒体21(図12(a))に比して、媒体傾きに対するフォーマット信号の検出特性を向上できる。このため、本実施形態例の光記録媒体10では、従来の光記録媒体に比して、安定的にフォーマット信号を検出できる。また、和信号の変動を、従来の光記録媒体に比して、低く抑えることができ、和信号の変動が、データエラー特性に影響を与えない範囲を満足する。
【0043】
図3に示すように、従来の光記録媒体21では、シフトマーク5のトラック中心に関して非対称性の度合いが大きいため、差信号のピーク値の、記録媒体の傾きに関して非対称性の度合いが大きかった。本実施形態例における光記録媒体10では、ピットマーク2が、切込み幅W2の三角形状の切欠きを有するため、トラック中心に関して非対称性の度合いが緩和し、差信号のピーク値の変化の記録媒体の傾きに関して非対称性が減少する。同図に示されるように、媒体傾き0での差信号のピーク値は、従来光記録媒体に比して多少低下するが、媒体傾きによる差信号のピーク値の変動が減少するため、トータルとしてみれば、フォーマット情報の検出特性の安定性を向上させることができる。
【0044】
図5は、突出幅W1を固定し、切込み幅W2を変化させたときの光記録媒体の媒体傾き量に対する差信号のピーク値の変化の様子をグラフとして示している。切込み幅W2が小さいときには、切込み幅W2が大きいときに比して、全体的にピットマーク2による差信号のピーク値が小さくなる。しかし、切込み幅W2が小さいときには、媒体傾きに関して差信号のピーク値の対称性が更に改善される。差信号のピーク値の検出に、十分なマージンがある場合には、切込み幅W2を減少させて、媒体傾きに対する安定性を、更に向上させることもできる。
【0045】
図6は、光記録媒体の原盤作成時の露光ビームの軌跡を示している。光記録媒10体の原盤の作成では、露光装置によって、プリグルーブ1を形成するためのプリグルーブ形成ビームと、ピットマーク2を形成するためのピットマーク形成ビームとを、原盤に照射する。図1(a)に示すピットマーク2を有する光記録媒体10の原盤は、以下のようにして形成できる。
【0046】
光記録媒体10の原盤に、図6に示すように、プリグルーブ形成ビームを、プリグルーブ1の形成方向に沿って移動しながら照射する。プリグルーブ形成ビームが、光記録媒体10でピットマーク2が形成される位置まで移動すると、プリグルーブ形成ビームを一旦オフにし、プリグルーブ1の中心からずれた位置に、ピットマーク形成用のビームを照射する。再び、プリグルーブ形成ビームをオンにし、プリグルーブの形成方向に沿って移動しながらプリグルーブ形成ビームを照射する。このようなプリグルーブ形成用ビーム及びピットマーク形成用ビームの軌跡をつなげたものが、ピットマーク2の周辺のプリグルーブ1の形状となる。原盤の作成では、プリグルーブ形成用ビームをオフにし、再びプリグルーブ形成用ビームをオンにするまでの時間を適切に調整することで、ほぼ三角形状の、切込み幅W2の切欠きを有するピットマーク2を形成することができる。
【0047】
図7は、本発明の一実施形態例の光記録媒体の記録・再生装置の構成を機能ブロック図として示している。光記録媒体の記録・再生装置100は、スピンドル11と、光ヘッド12と、ピットマーク検出回路13とを備える。スピンドル11は、光記録媒体10を回転させる。光ヘッド12は、光学系からの光を光記録媒体10の記録面に照射し、光記録媒体10からの反射光を読み取って、差信号を含む各種の信号を出力する。ピットマーク検出回路13は、光ヘッド12から差信号を入力し、その差信号のピーク値を検出してフォーマット検出信号を出力する。
【0048】
光記録媒体の記録・再生装置100では、光記録媒体10に形成されたピットマーク2による差信号のピーク値が、媒体の傾きに対しても安定的に検出できるため、ピットマーク検出回路13を、簡易な回路構成のスライス回路で構成することができる。このため、光記録媒体の記録・再生装置100では、フォーマット信号検出のための回路構成を複雑な回路で構成する必要がなく、コストが低く抑えられる。
【0049】
なお、上記実施形態例では、プリグルーブが通常の直線状のグルーブとして形成される例について説明したが、光記録媒体では、トラック直交方向に周期的に蛇行したウォブルグルーブとマークピット2とを組み合わせて、フォーマット情報を記載することも可能である。また、ピットマーク2によるフォーマット情報の記載は、ランド部4とプリグルーブ1との双方を記録トラックとして使用するような高密度の光記録媒体にも、適用可能である。
【0050】
上記実施形態例では、光記録媒体が、DVD−RやDVD−RWとして構成される例について説明したが、これに限られず、例えば、光記録媒体は、次世代の青色光源を使用して記録又は再生が行なわれる光ディスクとして構成されていてもよい。青色光源を使用する光ディスクとしては、例えば、光源波長が405nm、集光レンズの開口数が0.65の光学系を用い、記録トラックがトラックピッチ0.4μm程度で形成される光ディスク上に直径0.5μm程度の光スポットを形成して記録再生を行なう光ディスクが知られている。このような光ディスクに、フォーマット情報を記載するピットマーク2を形成する場合であっても、上記実施形態例と同様に、安定的にフォーマット情報が検出できる。
【0051】
図8は、図6に示す露光ビームの軌跡により形成されるピットマーク2の別の例を示している。図6に示す露光ビームの軌跡により、ピットマーク2を有する光記録媒体10の原盤を作成すると、露光条件や、原盤作成時に使用するレジスト材料の特性によって、最終的に光記録媒体10に形成されるピットマーク2の形状は、図8(a)及び(b)に示すように、丸みを持った突出部や、切欠き部となることが多い。実験により、ピットマーク2が、図8(a)や同図(b)のように形成された場合にも、ピットマーク2が図1(a)のように形成された場合と同様に、良好にピットマークが検出できることが確認された。つまり、このような丸みを持った突出部や切欠き部も、近似的に、台形の突出形状や三角形の切欠き形状とみなすことができる。
【0052】
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明の光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置は、上記実施形態例にのみ限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施した光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置も、本発明の範囲に含まれる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光ディスク媒体では、一方の縁部が略台形状にプリグルーブ外側に突出し、他方の縁部が略三角形状又は略円弧状にプリグルーブ内側に突出するピットマークを用いることで、ピットマークによる差信号のピーク値を十分に大きくすできると共に、光記録媒体の傾きに対するフォーマット情報の検出特性を向上させることができる。このような光ディスク媒体は、本発明の光ディスク媒体の原盤作成方法を使用することで得られる。
また、本発明の光記録媒体の記録・再生装置は、本発明の光ディスク媒体の記録・再生において、安定的に、ピットマーク形成位置を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態例の光記録媒体の記録トラックの一部を示す平面図、(b)及び(c)は、それぞれ、光スポットを記録トラックG1及びG2に追従させたときの和信号と差信号とを示すグラフ。
【図2】(a)及び(b)は、それぞれ、突出幅W1及び切込み幅W2を変化させたときの差信号及び和信号のピーク値を示すグラフ。
【図3】光記録媒体の媒体傾き量と差信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図4】切込み幅W2と、差信号及び和信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図5】切込み幅W2を変化させたときの、光記録媒体の媒体傾き量と差信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図6】光記録媒体の原盤作成時の露光ビームの軌跡を示す平面図。
【図7】本発明の一実施形態例の光記録媒体の記録・再生装置の構成を示す機能ブロック図。
【図8】(a)及び(b)は、それぞれ、図6に示す露光ビームの軌跡により形成されるピットマーク2の別の例を示す平面図。
【図9】従来の光記録媒体の記録トラックの一部を示す平面図。
【図10】トラック直交方向に光スポットが移動したときの差信号を示すグラフ。
【図11】(a)及び(b)は、それぞれ、図9の記録トラックG1及びG2を光スポットが追従するときの差信号及び和信号を示すグラフ。
【図12】(a)は、特許文献1に記載の光記録媒体の記録トラックの一部を示す平面図、(b)及び(c)は、それぞれ、記録トラックG1及びG2を光スポットが追従するときの和信号と差信号とを示すグラフ。
【図13】シフトマーク5の変位量Sと差信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図14】トラック直交方向での光記録媒体の傾き量と、ビットエラーレートとの関係を示すグラフ。
【図15】従来の光記録媒体の媒体傾き量と、差信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【図16】シフトマーク5の変位量Sと和信号のピーク値との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1:プリグルーブ
2:ピットマーク
3:ランドプリピット
4:ランド
5:シフトマーク
10:光ディスク
11:スピンドル
12:光ヘッド
13:ピットマーク検出回路
Claims (9)
- 同心円状又はスパイラル状の記録トラックを備え、該記録トラックに沿って光スポットを案内するためのプリグルーブが形成された光ディスク媒体において、
前記プリグルーブは、該プリグルーブの一方の縁部が略台形状にプリグルーブ外側に突出し、他方の縁部が略三角形状又は略円弧状にプリグルーブ内側に突出することによって形成されるピットマークを有することを特徴とする光ディスク媒体。 - 光スポットが前記プリグルーブに対応する記録トラックを追従する際に、前記ピットマークが形成されるマーク位置で得られるプッシュプル信号の最大振幅が、トラック横断で得られるプッシュプル信号の最大振幅と同程度であり、且つ、光スポットが前記記録トラックに隣接する記録トラックを追従する際に前記マーク位置と同じ角度位置で得られるプッシュプル信号の最大振幅よりも大きい、請求項1に記載の光ディスク媒体。
- 光ディスク媒体のトラックと直交方向の傾き量の許容範囲内で光ディスク媒体の傾き量を変化させた際における、前記ピットマーク位置で得られるプッシュプル信号の振幅の最小値と最大値との比率が50%以上である、請求項1又は2に記載の光ディスク媒体。
- 光スポットが前記プリグルーブに対応する記録トラック及び該記録トラックに隣接する記録トラックを追従する際に、和信号の振幅変動率が5%以内である、請求項1〜3の何れかに記載の光ディスク媒体。
- 前記一方の縁部の突出幅と、前記他方の縁部の突出幅とが同程度である、請求項1〜4の何れかに記載の光ディスク媒体。
- 前記ピットマークが、プリフォーマット情報に対応して形成される、請求項1〜5の何れかに記載の光ディスク媒体。
- 前記プリグルーブをウォブルグルーブとして形成する、請求項1〜6の何れかに記載の光ディスク媒体。
- 請求項1〜7の何れかに記載の光ディスク媒体を形成するためのディスク原盤の製造方法であって、
前記プリグルーブを形成するための第1の露光ビームを照射する工程と、
前記第1の露光ビームの照射を停止して、前記ピットマークを形成するための第2の露光ビームを照射する工程とを有することを特徴とするディスク原盤の製造方法。 - 請求項1〜7の何れかに記載の光ディスク媒体で、データを記録、再生、又は、記録及び再生することを特徴とする光記録・再生装置。
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JP2003051213A JP2004259401A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2003051213A JP2004259401A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置 |
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JP2004259401A true JP2004259401A (ja) | 2004-09-16 |
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Family Applications (1)
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JP2003051213A Pending JP2004259401A (ja) | 2003-02-27 | 2003-02-27 | 光ディスク媒体、その原盤作成方法、及び、光記録媒体の記録・再生装置 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2004259401A (ja) |
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2003
- 2003-02-27 JP JP2003051213A patent/JP2004259401A/ja active Pending
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