JP2004259311A - 記録再生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】VTR等で記録信号を元に適応フィルタによって生成した擬似クロストーク信号を再生信号から減じることで、再生信号のクロストーク成分を低減するとともに、記録ヘッドが切換わるたびに発生する適応フィルタの再収束動作の開始を安定かつ高速におこなうことで、良好な同時再生機能を提供する。
【解決手段】本発明の記録再生装置は、適応フィルタ25が再生信号に至るクロストーク成分の周波数特性を近似して疑似クロストーク信号を出力し、それを減算回路8において再生信号から差し引くことによりクロストーク成分を除去するとともに、クロック間位相検出回路101で再生及び記録クロックの位相差を検出し、その位相ズレ量ごとにタップ係数制御回路103によってタップ係数を記憶する。さらに、適応フィルタの再収束動作の開始時の位相ズレ量と等しいズレ量の時に記憶したタップ係数を読み出し、各タップの初期値として設定する。
【選択図】 図3
【解決手段】本発明の記録再生装置は、適応フィルタ25が再生信号に至るクロストーク成分の周波数特性を近似して疑似クロストーク信号を出力し、それを減算回路8において再生信号から差し引くことによりクロストーク成分を除去するとともに、クロック間位相検出回路101で再生及び記録クロックの位相差を検出し、その位相ズレ量ごとにタップ係数制御回路103によってタップ係数を記憶する。さらに、適応フィルタの再収束動作の開始時の位相ズレ量と等しいズレ量の時に記憶したタップ係数を読み出し、各タップの初期値として設定する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録動作と同時に再生を行う同時再生機能を備えた記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
放送局用ビデオテープレコーダ(以下、放送用VTRと略称する)では、録画のやり直しが困難であることが多いため、記録の失敗は避けなければならない。このような失敗を防ぐ目的から、放送用VTRには記録動作中に、記録とほぼ同時にその記録内容を再生して確認することのできる同時再生機能が必要である。この同時再生機能を実現する際の課題は、近接した距離に配置された記録ヘッドと再生ヘッド、さらにそれらに信号を伝送する記録用と再生用のロータリトランスなどが同時に動作することから、微弱な再生信号に記録信号が混入するクロストーク妨害をいかに抑えるかという点にあった。例えば、再生ヘッドにより再生される再生信号は、記録ヘッドに供給される記録信号に比べて70dB程度低い。したがって、記録信号が再生信号に漏れ込むクロストーク妨害を防止するためには、記録信号レベルの再生信号レベルに対する許容値を−30dBとすれば、記録信号レベルと再生信号レベルとの間は100dB以上分離しなければならなかった。記録信号から再生信号へのクロストーク妨害を物理的に抑えるための従来の技術としては、記録用のロータリトランスと再生用のロータリトランスを分離して配置したり、記録ヘッドと再生ヘッドとの間を導電部材などで電磁的に遮蔽する方法が知られている。
【0003】
しかし、小型回転ドラムで構成される放送VTRでは、物理的な方法ではクロストーク妨害を十分に低減することが困難であり、特許第3059394号で示されているように、記録信号から適応フィルタを用いて、擬似クロストーク信号を生成し、その擬似クロストーク信号を再生信号から減じることによってクロストーク妨害を低減する方式が提案されている。以下に、図を用いてこの先行例について説明する。
【0004】
図20は先行例の磁気記録再生装置におけるブロック図である。なお、図20では、太線で示す信号線は複数のビット数で表現されるディジタル信号を表し、細線で示す信号線はアナログ信号ないしは1ビットのディジタル信号を表す。図20において、第1の記録ヘッド4および第2の記録ヘッド14は、回転シリンダ上に180度の位置に対向して搭載され、磁気テープ40に交互に接触して記録が行われる。記録すべきディジタルデータである記録データ1は、回転シリンダの回転に同期した記録ヘッドスイッチ信号29により制御される記録切換スイッチ51に入力される。第1の記録ヘッド4が磁気テープ40に接触している期間は、記録切換スイッチ51が図20における上側の端子に接続される。このとき、記録切換スイッチ51からの記録されるべき信号は、第1の記録アンプ2により増幅される。増幅された記録されるべき信号は、第1の記録ロータリトランス3を経て回転シリンダ上の第1の記録ヘッド4に導かれ、磁気テープ40上に記録される。また、第2の記録ヘッド14が磁気テープ40に接触している期間は、記録切換スイッチ51が図20における下側の端子に接続される。このとき、記録切換スイッチ51からの記録されるべき信号は、第2の記録アンプ12、第2の記録ロータリトランス13を経て回転シリンダ上の第2の記録ヘッド14に導かれ、磁気テープ40上に記録される。
【0005】
第1の再生ヘッド5および第2の再生ヘッド15も同様に、記録ヘッドに対し所定の位相ずれて回転シリンダ上に搭載され、磁気テープ40に交互に接触して、前記記録動作と同時に再生が行われる。図20に示す再生切換スイッチ61は、回転シリンダに同期した再生ヘッドスイッチ信号30により制御されている。再生切換スイッチ61は、第1の再生ヘッド5が磁気テープ40に接触している期間は図20における上側の端子に接続され、第2の再生ヘッド15が磁気テープに接触している期間は図20における下側の端子にそれぞれ接続するよう構成されている。したがって、第1の再生ヘッド5が磁気テープ40に接触している期間は、回転シリンダ上の第1の再生ヘッド5により再生された信号が、第1の再生ロータリトランス6を経て第1の再生アンプ7により増幅される。増幅された信号は、再生切換スイッチ61を経て等化回路9に入力される。また、第2の再生ヘッド15が磁気テープ40に接触している期間は、回転シリンダ上の第2の再生ヘッド15により再生された信号が、第2の再生ロータリトランス16を経て第2の再生アンプ17により増幅される。増幅された信号は、再生切換スイッチ61を経て等化回路9へ入力される。等化回路9では、記録から再生に至る系における周波数特性の補正を行い、記録されたデータをディジタル符号の判別が可能なように等化する。等化された信号は、クロック再生回路22およびAD変換器50に入力される。
【0006】
クロック再生回路22は、等化された信号から再生データに同期した再生クロック23を発生する。また、AD変換器50は、等化された信号を再生クロック23で標本化し、ディジタル信号の形態に変換する。AD変換器50でディジタル化された信号は、演算手段としての減算回路8に入力される。減算回路8の出力である信号20は、復号回路21に入力され、データの符号が判別されて、再生データ24として復号回路21から出力される。復号回路21としては、振幅をしきい値と比較する方式のものや、公知のビタビ復号アルゴリズムを用いるものなどがある。上記再生動作において、第1の再生ヘッド5ないし第2の再生ヘッド15により磁気テープ40から再生される信号は極めて微弱である。この再生信号の電流は、第1の記録ヘッド4ないし第2の記録ヘッド14に流れる記録電流に比べておよそ70dB低い。このため記録信号が再生信号に漏れ込むクロストークが生じている。
【0007】
この記録信号から再生信号へのクロストークの発生は、多くの経路を通じて発生する。例えば、第1の記録ヘッド4ないし第2の記録ヘッド14から第1の再生ヘッド5ないし第2の記録ヘッド15へ、あるいは第1の記録ロータリトランス3ないし第2の記録ロータリトランス13から第1の再生ロータリトランス6ないし第2の再生ロータリトランス16へ、あるいは記録ロータリトランスと記録ヘッド間の配線から再生ロータリトランスと再生ヘッド間の配線へなどの、多くの経路を通じてクロストークは発生する。しかしながら、これら多くの経路を経て最終的に等化回路9の出力信号に混入するクロストーク成分は、記録データ1に特定のインパルス応答を畳み込んだ信号と見なすことができる。したがって、記録データ1に対してこのインパルス応答を畳み込むことでクロストーク成分を人為的に作成することができる。そこで、記録データ1を入力とし、誤差信号28によって制御される適応フィルタ25が設けられている。そして、適応フィルタ25のインパルス応答は、記録データ1から等化回路9の出力に至る系のクロストークのインパルス応答と近似した特性を持つよう制御される。これにより、適応フィルタ25の出力は、人為的に作成した疑似クロストーク信号26となる。なお、疑似クロストーク信号26はディジタル信号の形態で表現されている。減算回路8においては、AD変換器50の出力信号から疑似クロストーク信号26を差し引く。したがって、再生信号に混入したクロストーク成分はキャンセルされる。この結果、クロストーク妨害は大幅に低減される。また、適応フィルタ25の適応動作のアルゴリズムについては前記先行例の中で詳しく説明されているので、その詳細は省略するが、減算回路8の出力である信号20から誤差検出手段としての誤差検出回路27において残留するクロストーク成分を検出し、誤差信号28として適応フィルタ25に帰還し、残留誤差を最少自乗法等でより少なくなるよう制御することで、回転シリンダの回転位相に応じてクロストークの状態が変化したり、ヘッドや電気部品の温度変化や経時変化による特性変化があっても、適応フィルタ25はクロストークを最良に近似する特性となるよう常に制御されている。
【0008】
しかしながら、前記先行例によってクロストーク妨害を大幅に低減できるものの、以下に示すような問題がある。
【0009】
図21は前記先行例の問題点を説明する説明図である。図21(a)は図20における記録ヘッドスイッチ信号29のタイムチャートである。図21(b)は記録データ1のエンベロープを示しており、図21の(期間a1)の間は記録切換スイッチ51、記録アンプ2、記録ロータリトランス3を経て記録ヘッド4によってテープ上にデータが記録されている。また、図21の(期間a2)の間は記録切換スイッチ51、記録アンプ12、記録ロータリトランス13を経て記録ヘッド14によってテープ上にデータが記録されている。図を見てわかるように、一般に上記のようなヘリカルスキャン型VTRでは180度分の全ての期間を記録するのでなく、ヘッドスイッチ信号の変化点の前後にあたる数度分はヘッドスイッチマージンとしてデータを記録しない期間がある。図21(c)は再生ヘッドスイッチ信号30のタイムチャートである。図21(d)はAD変換器50の出力信号であり、図21の(期間c1)の間は再生ヘッド5によってテープ上のデータが再生され、(期間c2)の間は再生ヘッド15によってテープ上のデータが再生されたものである。図21(e)は図21(d)の一部を拡大し、詳細に記載したもので、等化回路9の等化特性の一例として、一般に用いられているパーシャルレスポンス・クラス4で等化した信号を再生クロックで離散的にAD変換したサンプルをプロットしたものである。図でわかるようにパーシャルレスポンス・クラス4による検出特性である3値の検出値に分かれていることがわかる。図21(e)のように、期間a1や期間a2と重なっている部分では記録からのクロストーク妨害により、3値の検出点が広がり、劣化していることがわかる。図21(f)は減算器8の出力である信号20であり、適応フィルタ25により生成された擬似クロストーク信号をAD変換器50が出力する第1の再生検出信号から減算して得られる第2の再生検出信号である。図でわかるように適応フィルタ25が収束して、適切な擬似クロストーク信号を生成すれば、第1の再生検出信号からクロストーク妨害をきわめて良好に除去できていることがわかる。
【0010】
しかし、図21(f)のp2の時点で再度検出信号が乱れていることがわかる。これは、p1からp2の期間は記録状態でないため、クロストークの妨害がない。すなわち、この期間は適応フィルタのタップ係数を一旦、ゼロにする必要があるため、p2の時点で再度、適応フィルタが収束しなおすためである。クロストークによる妨害の程度が大きいと、図21(f)のp2の時点のように定常的に検出信号が乱れ、必ずエラーが発生する。これによって再生データの品質が著しく低下する問題が発生する。通常、適応フィルタの適応動作に不連続があれば、その不連続点での収束を高速化にするために、一周期前あるいはそれ以前に記憶したタップ係数をp2の時点で設定し、その係数を初期値として適応動作を開始する方法が用いられる。しかし、記録クロックに対し、再生クロックはシリンダ回転のむらやテープの伸張によって、ジッタが発生し、位相が刻々と変化している。このため、記録信号が再生信号に漏れ込むクロストークのインパルス応答も、それに合わせ変化しており、以前に記憶したタップ係数の値とp2の時点で収束すべきタップ係数の値とは、必ずとも一致していない。従って、単純にp2の時点で以前に記憶したタップ係数でもって設定しても、収束にかかる時間を改善できないばかりか、さらに悪化させる問題が起こる。
【0011】
【特許文献1】
特許第3059394号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
近年、回転シリンダ部を大幅に縮小した、小型で軽量の放送局用VTRが要望されている。しかしながら、このような小型の回転シリンダ部を用いた場合には、記録用のロータリトランスと再生用のロータリトランスを分離して配置することや、記録ヘッドと再生ヘッドとの間を導電部材や磁性部材などで物理的に遮蔽することが困難であった。さらに、前記先行例で述べたように記録信号から適応フィルタを用いて擬似クロストーク信号を生成し、再生信号から減じることによって、クロストーク妨害を軽減する方法では、記録ヘッドが切り替わる度におこるタップ係数の再収束のためにクロストーク妨害の多い装置では、一時的に検出点での乱れが発生してしまい、定常的にエラーをおこしてしまう課題があった。そこで、本発明は、電磁的に記録信号と再生信号間の十分な分離が困難な小型の回転シリンダ部を用いても、再生信号に混入する記録信号のクロストーク成分を低減するとともに、記録ヘッドが切り替わるような不連続点であっても、検出点での劣化がほとんどなく、良好な同時再生機能を備えた記録再生装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る記録再生装置は、記録データを入力とする適応フィルタと、再生信号から前記適応フィルタの出力を減算する演算手段と、前記演算手段の出力信号から誤差信号を検出して前記適応フィルタに帰還する誤差検出手段などより構成され、前記適応フィルタが記録データから再生信号に至るクロストーク成分の周波数特性を近似して疑似クロストーク信号を出力し、これを演算手段において再生信号から差し引くことでクロストーク成分をキャンセルするとともに、記録クロックと再生クロックとの位相関係を検出するクロック間位相検出手段と前記クロック間位相検出手段が出力する位相ズレ量の関係ごとに、前記適応フィルタのタップ係数を記憶するクロック位相別タップ係数記憶手段と、前記適応フィルタが適応動作を開始するときに得られるクロック間位相検出手段の位相ズレ量と等しいまたは最も近い値で以前に記憶したタップ係数を読み出し、前記適応フィルタのタップ係数として設定するタップ係数制御手段とを備えることで、記録ヘッドが切り替わるたび起こる適応フィルタの再収束動作時の検出点での乱れを解消し、収束動作をスムーズに行い、電磁的に記録信号と再生信号間の十分な分離が困難であっても、同時再生機能が実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の記録再生装置の実施の形態について記載する。本発明の第1の発明による記録再生装置は、記録データを磁気記録媒体に記録する記録ヘッドと、記録された信号を再生する再生ヘッドと、前記記録データを入力とする適応フィルタと、前記再生ヘッドにより再生された再生信号から前記適応フィルタの出力を減算する演算手段と、前記演算手段の出力信号から誤差信号を検出して前記適応フィルタに帰還する誤差検出手段と、再生信号から再生データに同期した再生クロックを発生する再生クロック発生手段とを備え、前記適応フィルタが、記録データ列から連続するK個(Kは自然数)の記録データを前記再生クロックに同期して第1のデータ群として出力し、前記記録データ列から他の連続するK個の記録データを前記再生クロックに同期して第2のデータ群として出力する信号配列手段と、前記第2のデータ群のK個のデータを一方の入力とし、前記誤差信号を他方の入力とするK個の乗算手段からなる第1の乗算手段群と、前記第1の乗算手段群のK個の乗算手段の出力信号をそれぞれ積分するK個の積分手段と、前記第1のデータ群のK個の出力を一方の入力とし、前記K個の積分手段のそれぞれの出力を他方の入力とするK個の乗算手段からなる第2の乗算手段群と、前記第2の乗算手段群のK個の乗算手段の出力の総和を得て適応フィルタの出力とする演算手段と、前記記録データに同期した記録クロックと前記再生クロックとの位相関係を検出するクロック間位相検出手段と、前記クロック間位相検出手段が出力する位相関係ごとに、前記適応フィルタのそれぞれの積分手段の値をタップ係数とし記憶するクロック位相別タップ係数記憶手段と、前記適応フィルタが適応動作を開始するときに得られるクロック間位相検出手段の検出値と等しいまたは最も近い値で以前に記憶したタップ係数を読み出し、前記適応フィルタのタップ係数として設定するタップ係数制御手段とを備えている。このため、記録ヘッドが切り替わるたびに必要となる適応フィルタの再収束動作の開始時に、前記クロック間位相検出手段が検出する再生クロックと記録クロックの位相関係からそのときの最適なタップ係数を適応フィルタの初期値として設定できるため、検出点での乱れを解消し、収束動作をスムーズに行い、従来技術で問題であった定常的に発生するデータ誤りを解消でき、きわめて良好な同時再生機能が実現できる。
【0015】
本発明に係る第2の発明による記録再生装置は、前記第1の発明による記録再生装置の構成に加え、前記適応フィルタの演算手段が、第2の乗算手段群のK個の乗算手段の出力の総和に所定の収束係数を乗じて適応フィルタの出力とする演算手段であって、前記適応フィルタがおこなう適応動作の開始時点から所定の期間を収束初期期間とし、それ以降を通常期間としたとき、前記収束係数を収束初期期間内はaとし、通常期間はb(a>bかつa,b>0)となるように設定する収束係数制御手段を備えていることを特徴とする。このため、記録ヘッドが切り替わるたびに必要となる適応フィルタの再収束動作の開始時に、前記クロック間位相検出手段が検出する再生クロックと記録クロックの位相関係からそのときの最適なタップ係数を適応フィルタの初期値として設定するとともに、収束初期期間内は通常期間よりも高いループゲインでフィードバックされるため、前記第1の記録再生装置よりも高速に収束することができ、検出点での乱れをより早く解消し、収束動作がスムーズに行える。さらに、収束初期期間以外の通常期間は係数aよりも小さい係数bに戻されるため、ノイズによるタップ係数の揺られも最小限にとどめることができ、きわめて良好な同時再生機能が実現できる。
【0016】
本発明に係る第3の発明による記録再生装置は、第1または第2の記録再生装置構成を有するとともに、前記クロック間位相検出手段の検出信号に基づき、再生クロックの立ち上がりエッジが、記録クロックの立ち上がりエッジを追い越すまたは追い越された瞬間を検出し、第1のタイミング信号を出力する第1タイミング検出手段と、再生クロックの立ち上がりエッジが、記録クロックの立ち下がりエッジを追い越すまたは追い越された瞬間を検出し、第2のタイミング信号を出力する第2タイミング検出手段と、前記第1のタイミングで前記適応フィルタの第1のタップ係数を記憶する第1のタップ係数記憶手段と、前記第2のタイミングで第2のタップ係数を記録する第2のタップ係数記憶手段と、前記適応フィルタが適応動作を開始する時点のクロック間位相検出手段の出力に基づき、以前に記憶した前記第1のタップ係数及び第2のタップ係数より、最適なタップ係数を演算する最適タップ係数演算手段と、前記適応フィルタが適応動作を開始するときに前記最適タップ係数演算手段で求めたタップ係数でもって、前記適応フィルタのタップ係数を設定するタップ係数制御手段とを備えていることを特徴とする。このため、前記クロック間位相検出手段が検出する全ての位相に毎にタップ係数を記憶する必要が無く、前記第1及び第2のタイミングのみのタップ係数記憶手段で済むため、きわめて少ない回路規模で従来の課題を解決するとともに、良好な同時再生機能が実現できる。
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の記録再生装置の実施の形態1である磁気記録再生装置について説明する。実施の形態1の磁気記録再生装置は、小型の回転シリンダ上に一対の記録ヘッドと一対の再生ヘッドを備え、回転シリンダに斜めに巻つけられて走行する磁気テープにディジタルデータを記録し、また再生する装置である。図1は実施例1の磁気記録再生装置における回転シリンダ31上のヘッド配置を示す概略図である。図1において、回転シリンダ31は直径がおよそ20mm程度の小型のものであり、図1に示すように反時計方向へ回転する。回転シリンダ31には、第1の記録ヘッド4および第2の記録ヘッド14、第1の再生ヘッド5および第2の再生ヘッド15が配置されている。磁気テープ(図示せず)は、回転シリンダ31のおよそ半周(180度)の区間に渡って斜めに巻つけられて走行する。
【0018】
図2は、磁気テープ40上の記録トラックパターンと各ヘッドの位置関係を示す図である。図2において、磁気テープ40には斜めにトラック41a、41b、42a、42b、43a、43b、・・・が形成されている。トラック41a、42a、43aは、いずれも第1の記録ヘッド4により磁気テープ40上に記録されたトラックである。また、トラック41b、42b、43bは、第2の記録ヘッド14により磁気テープ40上に記録されたトラックである。図2に示すように、トラック44aは第1の記録ヘッド4によって現在記録しつつあるトラックである。このとき、第1の再生ヘッド5は、第1の記録ヘッド4より90度遅れてトラック44aをトレースして再生を行っている。このため、実施の形態1の磁気記録再生装置は、記録とほぼ同時に再生を行うことができ、記録状態の確認を行うことができる。また、図示は省略するが、第1の記録ヘッド4および第1の再生ヘッド5と同様に、第2の記録ヘッド14により記録されたトラック41b、42b、43bは、第2の再生ヘッド15により記録とほぼ同時に再生が行われる。
【0019】
図3は実施の形態1の磁気記録再生装置におけるブロック図である。なお、図3では、太線で示す信号線は複数のビット数で表現されるディジタル信号を表し、細線で示す信号線はアナログ信号ないしは1ビットのディジタル信号を表す。図3において、番号1〜9,12〜17,20〜30,40,51,58,61は先行例で示したつながり及び機能と同様であるため、その説明を省略する。本発明のために新たに付け加えられた番号100〜104、120,121と、それに関わる適応フィルタ25について、以下に詳細に説明する。
【0020】
図3において、本発明の適応フィルタとしての適応フィルタ25が設けられている。適応フィルタ25は、記録データ1を入力とし、誤差信号28によって制御される。適応フィルタ25のインパルス応答は、記録データ1から等化回路9の出力に至る系のクロストークのインパルス応答と近似した特性を持つよう制御される。これにより、適応フィルタ25の出力は、人為的に作成した疑似クロストーク信号26となる。なお、疑似クロストーク信号26はディジタル信号の形態で表現されている。減算回路8においては、AD変換器50の出力信号から疑似クロストーク信号26を差し引く。したがって、再生信号に混入したクロストーク成分はキャンセルされる。この結果、クロストーク妨害は大幅に低減される。この適応フィルタの適応動作の原理は先行例で詳細に説明されているので、その説明を省略するが、減算回路8の出力である信号20から誤差検出手段としての誤差検出回路27において残留するクロストーク成分を検出し、誤差信号28として適応フィルタ25に帰還する。そして、この誤差信号を最小自乗法等を用いて最小になるように制御していく。これにより、回転シリンダ31の回転位相に応じてクロストークの状態が変化したり、ヘッドや電気部品の温度変化や経時変化による特性変化があっても、適応フィルタ25はクロストークを最良に近似する特性となるよう常に制御される。
【0021】
さらに、図4を用いて、この適応フィルタ25について具体的に説明する。図4は本実施の形態の適応フィルタ25の具体的構成を示すブロック図である。図4に示した適応フィルタ25は、4タップのFIR型フィルタで構成されており、誤差信号28の自乗平均値が常に最小になるよう適応的に動作するものである。図4において、信号配列手段としての記録信号配列回路59には、記録データ1、記録データ1に同期した記録クロック58、および再生データ24に同期した再生クロック23が入力される。また、記録信号配列回路59から出力される信号55a、55b、55c、55dは、記録データ1の連続する4ビットの信号を再生クロック23に同期化して出力したものである。さらに、記録信号配列回路59から出力される信号56a、56b、56c、56dは、信号55a、55b、55c、55dよりもそれぞれMビット遅れた記録データ1を再生クロック23に同期化して出力したものである。例えば、時刻nにおける記録データ1をr(n)とあらわすとき、ある時刻における信号55a、55b、55c、55dは、それぞれr(i)、r(i−1)、r(i−2)、r(i−3)であり、信号56a、56b、56c、56dは、それぞれr(i−M)、r(i−M−1)、r(i−M−2)、r(i−M−3)である。なお、本例では、M=1である。なお、この記録信号配列回路59の構成については後に詳細に示す。
【0022】
図4において、符号65a、65b、65c、65dはそれぞれ乗算回路を示しており、4つの乗算回路65a、65b、65c、65dにより第1の乗算手段群が構成されている。乗算回路65a、65b、65c、65dの一方の入力には、誤差信号28をDフリップフロップ54において再生クロックでラッチした遅延誤差信号52が入力されている。また、乗算回路65a、65b、65c、65dの他の一方の入力には、それぞれ信号56a、56b、56c、56dが入力されている。なお、信号56a、56b、56c、56dは「0」ないし「1」を表す1ビットの信号であるが、これをそれぞれ「−1」ないし「1」を表すものとして乗算を行う。図4の符号68a、68b、68c、68dは積分手段としての積分回路を示しており、これらの積分回路68a、68b、68c、68dは乗算回路65a、65b、65c、65dの出力信号をそれぞれ積分して出力する。図5は、一つの積分回路68aの構成を示すブロック図である。図5に示すように、積分回路68aは、加算回路66と、Dフリップフロップ67及びスイッチ108より構成されており、通常積分動作を行うときは信号107の制御により加算器回路66側に接続されている。Dフリップフロップ67には、図に示していないが、再生クロック23がクロックとして入力され、加算回路66の出力信号を1クロック期間遅延して再び加算回路66に帰還する。これにより、積分回路68aに入力される信号は1クロックごとに累積され、積分が行われる。このDフリップフロップ67に蓄積される値は各タップ係数に相当し、適切なタップ係数を外部より設定する場合は、前記信号107の制御によりスイッチ108が、1再生クロック周期間だけ105側に接続され、設定される。また、信号106を介して、Dフリップフロップ67の値、すなわちタップ係数を読み出すことが出来る。なお、図5における信号105,106,107をまとめて、信号バス110aとし、他の積分回路68b、68c、68dは、図5に示した積分回路68aとそれぞれ全く同じ構成であり、図4のように各積分回路から同様に信号バス110b、110c、110dが入出力されている。
【0023】
図4において、符号57a、57b、57c、57dは乗算回路を示しており、4つの乗算回路57a、57b、57c、57dにより第2の乗算手段群が構成されている。乗算回路57a、57b、57c、57dの一方の入力には、信号55a、55b、55c、55dがそれぞれ入力されている。さらに、乗算回路57a、57b、57c、57dの他の一方の入力には、積分回路68a、68b、68c、68dの出力がそれぞれ入力されている。なお、信号55a、55b、55c、55dは「0」ないし「1」を表す1ビットの信号であるが、これをそれぞれ「−1」ないし「1」を表すものとして乗算を行う。乗算回路57a、57b、57c、57dの出力は、演算手段としての加算回路60に入力され、その総和が係数回路69に入力される。係数回路69では、加算回路60の出力信号に信号112がハイレベルの時、所定の係数αを乗じ、ローレベルの時所定の係数β(α>β,α,β>0)を乗じて疑似クロストーク信号26として出力する。なお、本例において誤差信号28を乗算回路65a、65b、65c、65dに直接供給しないで、Dフリップフロップ54において再生クロックでラッチした遅延誤差信号52を供給している。これは、誤差信号28を得る系が帰還ループで構成されており、帰還ループ内の回路の遅延時間を再生クロックでラッチすることにより吸収させるためである。また、すでに述べたように、記録信号配列回路59から出力される信号56a、56b、56c、56dは、信号55a、55b、55c、55dよりもそれぞれMビット遅れた記録データを再生クロック23に同期化して出力したものである。このMの値は、信号55aから疑似クロストーク信号26、減算回路8、誤差検出回路27などを経て遅延誤差信号52として乗算回路65aに至る系の遅延時間に等しい。本実施例では、この系の遅延時間はDフリップフロップ54による1クロック期間であるためM=1である。なお、乗算回路65a、65b、65c、65d、および乗算回路57a、57b、57c、57dは、上述のように一方の入力が「−1」ないし「1」を表す1ビットの信号である。したがって、これらの乗算回路は、一方の入力信号である1ビットの信号の符号に応じて、他の一方の入力をそのまま出力するか反転して出力するかの切り替えを行うスイッチ回路で実現することもできる。
【0024】
次に、図4に示した記録信号配列回路59の具体的構成について図を参照しつつ説明する。図6は記録信号配列回路59の具体的構成を示すブロック図である。図6において、符号78は記録クロック58を4分周する4分周回路を示しており、符号79a、79b、79cはDフリップフロップ(以下ではD−FFと称す)を示している。4分周回路78の出力はD−FF 79a、79b、79cにより記録クロック58で順次遅延される。符号70a、70b、70c、70dは記録クロック58をクロックとするD−FFを示しており、D−FF 70a、70b、70c、70dは記録データ1を順次遅延する。また、符号74a、74b、74c、74d、74eは4分周回路78の出力をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF 74a、74b、74c、74d、74eは記録データ1、70a、70b、70c、70dのそれぞれの出力信号を入力としている。同様にして、符号73a、73b、73c、73d、73eはD−FF 79aの出力をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF 73a、73b、73c、73d、73eは記録データ1、70a、70b、70c、70dのそれぞれの出力信号を入力としている。また、符号72a、72b、72c、72d、72eはD−FF 79bの出力をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF 72a、72b、72c、72d、72eは記録データ1、70a、70b、70c、70dのそれぞれの出力信号を入力としている。さらに、符号71a、71b、71c、71d、71eはD−FF79cの出力をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF 71a、71b、71c、71d、71eは記録データ1、70a、70b、70c、70dのそれぞれの出力信号を入力としている。
【0025】
図6において、符号80aは再生クロック23をクロックとする2ビットのD−FFを示しており、このD−FF 80aは4分周回路78の出力とD−FF79aの出力とを入力とし、それぞれを再生クロック23でラッチして信号82a、82bを出力するラッチ手段として機能する。また、符号80bは再生クロック23をクロックとする2ビットのD−FFを示しており、D−FF 80bは信号82a、82bをそれぞれを再生クロック23で遅延して信号83a、83bを出力する遅延手段として機能する。また、状態設定回路81は、信号82a、82b、83a、83bに応じて、状態信号84を再生クロック23のタイミングで出力する。この状態設定回路81は、記録クロックの立ち上がりエッジが再生クロックの立ち上がりエッジに対して時間的に追い越されたか、或いは、追い越したかを検出する位相変化検出手段として機能する。なお、4分周回路78、D−FF 79a、80a、80b、状態設定回路81からなる部分は、記録クロック58と再生クロック23の位相変化関係を検出するクロック位相変化検出手段としてのクロック位相変化検出回路85を構成している。
【0026】
選択回路76aはD−FF 71a、72a、73a、74aの出力信号を入力とし、信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。同様に、選択回路76bはD−FF 71b、72b、73b、74bの出力信号を入力として信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。選択回路76cはD−FF 71c、72c、73c、74cの出力信号を入力として信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。選択回路76dはD−FF 71d、72d、73d、74dの出力信号を入力として信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。さらに選択回路76eはD−FF 71e、72e、73e、74eの出力信号を入力として信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。図6において、符号75a、75b、75c、75d、75eは再生クロック23をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF75a、75b、75c、75d、75eは選択回路76a、76b、76c、76d、76eのそれぞれの出力信号を入力としている。並べ換え回路77は、D−FF 75a、75b、75c、75d、75eの出力信号を入力とし、状態信号84に応じて並べ換えを行って信号55a、55b、55c、55dおよび信号56a、56b、56c、56dを出力する。この並べ換え回路77は、配列切換手段として機能する。
【0027】
さて、図6に示した記録信号配列回路59の動作について、図7、図8、及び図10を参照して説明する。図7、図8、及び図10は、図6の記録信号配列回路59の各部の信号を示すタイミングチャートである。図7において、(a)は記録クロック58を示している。図7の(b)は、A,B,C,・・・という順で入力される記録データ1を示している。図7の(c)は4分周回路78において分周された信号を示しており、図7の(d)、(e)、(f)は、4分周回路78の出力信号を、D−FF 79a、79b、79cで遅延した信号をそれぞれ示している。ここで、信号のHレベルを”1”、Lレベルを”0”で表すと、4分周回路78の出力信号とD−FF 79aの出力信号との組み合わせを(4分周回路78の出力信号,D−FF 79aの出力信号)で表すと、(0,0)、(1,0)、(1,1)、(0,1)、(0,0)・・・という順序で繰り返され、隣り合う期間では2ビットのうち1ビットのみが異なるグレーコードとなっている。すなわち、4分周回路78とD−FF 79aは、分周位相をグレイコード化して出力する分周手段として機能している。図7の(g)において、(0,0)、(1,0)、(1,1)、(0,1)の状態をそれぞれ”0”、”1”、”2”、”3”の分周位相として示した。
【0028】
前述のように再生クロック23は回転シリンダの回転むらなどにより周期が変動している。図7の(h)に示したように、時刻t1および時刻t3において再生クロック23の立ち上がり時点と記録クロック58の位相関係が変化している。このため、4分周回路78の出力信号,D−FF 79aの出力信号をそれぞれ再生クロック23でラッチした信号82a、82bは、図7の(i)、(j)に示す信号となる。図7の(k)においてグレイコードで表される信号82a、82bの分周位相は、”0”,”1”,”2”,”3”,”0”,”1”,・・・というように連続的には変化せず、時刻t1および時刻t3において不連続となっている。分周位相は4分周回路78の出力信号、D−FF 79aの出力信号をそれぞれ再生クロック23でラッチした信号82a、82bで認識されている。先に述べたように、これら2ビットは分周位相をグレイコード化して表現したものである。このようにグレーコードを用いるのは、これら2ビットの間で微妙なタイミングのずれがあったとしても、隣り合う期間では2ビットのうち1ビットのみが異なるため、位相を誤って検出することがないからである。図6の選択回路76aは、信号82a、82bで示される分周位相が、”0”のときにはD−FF 72aの出力を選択して出力する。また、選択された信号はD−FF75aで再生クロック23の立ち上がりタイミングでラッチされる。記録クロック58の周期をTとしたとき、図7の(e)に示されたD−FF 79bの出力の立ち上がり時点は、図7の(k)に示した信号82a、82bで示される分周位相が”0”に変化する時点よりも1T〜2T前にある。このため、D−FF79bの出力をクロックとしているD−FF 72aの出力は、図7の(k)に示した分周位相は”0”の期間が必ず安定しており、選択回路76aにおいてD−FF 72aの出力を選択することにより、D−FF 75aにおいて再生クロック23により確実にラッチすることができる。
【0029】
選択回路76aは、さらに信号82a、82bで示される分周位相が”1”のときにはD−FF 71aの出力を選択し、”2”のときにはD−FF 74aの出力を選択し、”3”のときにはD−FF 73aの出力をそれぞれ選択して出力する。これにより、その周期が変動する再生クロック23が記録クロック58に対してどのような位相関係にあっても、D−FF 75aで確実に記録データを再生クロック23に同期させることができる。選択回路76b〜76eも、前述の選択回路76aと同様に動作する。以上の動作の結果、D−FF 75a〜75eの出力は、それぞれ図8の(l)〜(p)に示すように、再生クロック23が変動しても、どの時点においても常に連続する5ビットの記録データが再生クロック23に同期して出力される。他方、例えば図8の(m)に示すD−FF 75bの出力系列を時間軸方向に見たとき、時刻t2および時刻t4でデータの不連続が生じている。このため、図8の(l)〜(o)に示す信号をそのまま信号55a〜55dとして出力した場合には、図4の積分回路68a〜68dで出力されるべきクロストークのインパルス応答の値がt2、t4で不連続となり、疑似クロストーク信号26に大きな誤差を生じてしまう。そこで、図6において、状態設定回路81は位相変化検出手段として機能し、また並べ換え回路77は配列切換手段として機能して、記録クロック58と再生クロック23の位相関係が変化しても図4の疑似クロストーク信号26に大きな誤差を生じないよう処理している。
【0030】
次に、上記状態設定回路81と並べ換え回路77の動作について具体的に説明する。図8において、(q)と(r)は信号83a、83bをそれぞれ示している。ここで、図8の(i)に示した信号82aと(q)に示した信号83aとを比較し、また図8の(j)に示した信号82bと(r)に示した信号83bとを比較したとき、時刻t1とt2の間の期間ではいずれの比較結果も異なり、時刻t3とt4の間ではいずれの比較結果も等しい。また、その他の期間では、2つの比較のうちいずれか一方のみが異なっている。これからわかるように、信号82aと信号83aとの比較結果、および信号82bと信号83bとの比較結果から、記録クロック58と再生クロック23の位相関係の変化を知ることができる。これを利用し、図6の状態設定回路81は、状態”0”、”1”、”2”、”3”の4つの状態のいずれかを保持して状態信号84を出力するものである。図9は状態設定回路81の4つの状態”0”、”1”、”2”、”3”の関係を示す状態遷移図である。図9において、信号82aと信号83aが等しく、信号82bと信号83bも等しい事象をAとする。また、信号82aと信号83aが異なり、信号82bと信号83bも異なる事象をBとし、上記事象A及びB以外の事象をCとする。すなわち、いずれの比較結果も等しいという事象をA、いずれの比較結果も異なるという事象をB、いずれか一方のみの比較結果が異なるという事象をCとする。このとき、状態設定回路81は、図9に示すように保持する状態を遷移する。図8の(s)に状態信号84で表される状態変化の様子を示している。なお、状態信号84は外部に出力されており、任意の時点で読み出すことが可能で、信号117の制御により外部から信号116を介して、状態設定回路81に初期状態を設定できる。この、信号117,116,84をまとめて信号バス111とする。信号バス111は図4における信号111と等しく、先に説明した図4の信号バス110a〜dと信号バス111をまとめて、後で説明するタップ係数制御バス120を構成している。
【0031】
図6に示した並べ換え回路77は、状態信号84で示される状態が”0”の場合には、D−FF 75a、75b、75c、75dをそれぞれ信号55a、55b、55c、55dとして出力し、D−FF 75b、75c、75d、75eをそれぞれ信号56a、56b、56c、56dとして出力する。また、状態信号84で示される状態が”1”の場合には、D−FF 75b、75c、75d、75aをそれぞれ信号55a、55b、55c、55dとして出力し、D−FF75c、75d、75e、75bをそれぞれ信号56a、56b、56c、56dとして出力する。さらに、状態信号84で示される状態が”2”の場合には、D−FF 75c、75d、75a、75bをそれぞれ信号55a、55b、55c、55dとして出力し、D−FF 75d、75e、75b、75cをそれぞれ信号56a、56b、56c、56dとして出力する。また、状態信号84で示される状態が”3”の場合には、D−FF 75d、75a、75b、75cをそれぞれ信号55a、55b、55c、55dとして出力し、D−FF75e、75b、75c、75dをそれぞれ信号56a、56b、56c、56dとして出力する。その結果得られる信号55a、55b、55c、55dの変化の様子を、図10の(t)、(u)、(v)、(w)にそれぞれ示す。図10に示すように、(u)に示す信号55bおよび(v)に示す信号55cでは、時間軸方向に信号の変化を見たとき、記録データの不連続が生じていない。この例に見られるように、記録データの連続する4データのうちの中央の2データについては、記録クロック58と再生クロック23の位相関係が変化しても常に連続性が維持される。また図示していないが、信号56a、56b、56c、56dについても同様である。
【0032】
図4に示した積分回路68a〜68dで出力されるべきクロストークのインパルス応答の絶対値は、一般に連続する4データに対するインパルス応答のうちの中央部の値が大きく、両端にいくほど小さくなる。このため、両端部に対するインパルス応答にデータの不連続による誤差があっても、中央部を含むその他の部分の連続性が維持されれば疑似クロストーク信号26に生じる誤差は小さい。以上説明したように、記録信号配列回路59は、記録データ1の連続する4ビットのデータを再生クロック23に同期化して信号55a、55b、55c、55dとして出力し、また信号55a、55b、55c、55dよりもそれぞれMビット遅れた記録データ(ここではM=1)を再生クロック23に同期化して信号56a、56b、56c、56dとして出力する。さらに、記録クロック58と再生クロック23の位相関係が変化しても安定して疑似クロストーク信号26が得られるよう、位相関係の変化に応じて連続する4ビットの信号間でのローテーションを行い、信号配列を変更する機能も有している。
【0033】
上記信号配列を変更する動作をより一般的に表現すると、以下のように言うことができる。信号55a、55b、55c、55dを{q[0],q[1],q[2],q[3]}とし、記録クロック58の時刻nにおける記録データ1をr[n]とし、記録クロック時刻がnで再生クロックの時刻がmにおいてq[mod(i+j)]としてr[n−h−i](i=0,1,2,3,j,hは整数,mod(A)は整数Aを4で除したときの余りを表す)を出力していると仮定する。このとき、再生クロックの時刻m+1において記録クロック時刻がnである場合にはq[mod(i+j+1)]としてr[n−h−i]を出力し、再生クロックの時刻m+1において記録クロック時刻がn+1である場合にはq[mod(i+j)]としてr[n−h−i+1]を出力し、再生クロックの時刻m+1において記録クロック時刻がn+2である場合にはq[mod(i+j−1)]としてr[n−h−i+2]を出力するよう信号配列を変換する。なお整数hは、記録データ1を再生クロック23に同期化する処理に伴う遅延時間を表している。
【0034】
上記の配列を変更することによる効果を、さらにわかりやすくするため図11を用いて説明する。図11において、波形aは記録系から再生系へ漏れ込むクロストーク妨害の信号をFFTなどにより、計算して求めたインパルス応答である。このクロストーク妨害の信号を再生系でディジタル的にサンプルするため、検出点で影響を与えるクロストーク妨害のインパルス応答も波形aを離散的にサンプルした応答となる。いま図11Aの(1−1)の×印は(1−2)で示すようなクロック位相の時に収束する各タップ係数の値である。これが、回転シリンダの回転むらなどで徐々に位相が遅れ、図11のBの(1−2)のようなクロック位相になった時、各タップ係数が収束するべきタップ係数も徐々にずれ、図11Bの(1−1)の様になる。さらに、再生クロックが徐々に遅れ、図11Cの(1−2)の位相までなると、各タップ係数は図11Cの(1−1)になる。ここで、前記の信号間でのローテーションをおこなわないで、再生クロックがさらに遅れ、記録クロックの立ち上がりエッジを超えて、図11Aの(1−2)のクロック位相になれば、収束すべきタップ係数も図11の(1−1)にもどる。このため、例えば図11Cのタップ68bの値は図11Aのタップ68bの値まで収束する必要があり、大きな誤差が発生し、一時的に生成される擬似クロストーク信号のズレが大きくなり、キャンセル動作に支障をきたす。しかし、再生クロックのエッジが記録クロックのエッジを追い越した瞬間に前記のローテーションをおこなうことにより、図11Cのタップ68のa〜cまでは図11Aのタップ68のb〜dのポジションに変わり、不連続が発生しない。唯一不連続の発生する図11Cのタップ68dは、図11Aのタップ68のaのポジションを担当することになる。しかしながら、インパルス応答の端ではその振幅が小さく、収束するための誤差も小さいため、擬似クロストーク信号のズレも小さい。このため、記録クロックと再生クロックの位相関係が変化しても良好なキャンセル動作を継続できる。
【0035】
このように適応フィルタの適応動作が収束した後は、安定したキャンセルが可能である。しかし、これだけでは前記した課題があり、記録ヘッドが切り替わったときに起こる再収束時にエラーが発生する問題がある。
【0036】
そこで、本発明おいて追加した主要素とその機能について説明する。
【0037】
100は記録クロックと、再生クロック間の位相ズレ量をディジタル的にサンプルするのに用いる位相検出クロックで記録クロックよりも高い周波数で、かつ水晶発振器等で構成された高精度のクロックである。101はクロック間位相検出回路で、記録クロック58及び再生クロック23と位相検出クロック100が入力され、58,23の両クロック間の位相ズレを位相検出クロック100によってディジタル的に検出し、そのクロック位相ズレ量102を出力する。103はタップ係数制御回路で、前記クロック位相ズレ量102と記録ヘッドスイッチ信号29が入力されており、クロック位相ズレ量102が変化した瞬間の各位相におけるタップ係数及び状態信号84の値を、先に説明したタップ係数制御バス120を介して読み出し、メモリ制御バス121を介してメモリ104に記憶する。では、図12にクロック間位相検出回路の一例を示す。図12において、58は記録クロック、23は再生クロック、100は位相検出クロック、125a〜eは入力を位相検出クロックの1周期分遅延させるDフリップフロップである。126aおよびbは125a・cと125b・dの反転とのアンドをとるアンド回路である。127は1クロック周期前の出力に1を加算するカウンタ回路で、アンド回路126aがハイレベルの時にゼロにリセットされる。128はデータホールド回路で125eの出力がハイレベルの時の129の値をホールドし102に出力する。この、クロック間位相検出回路例の動作を図13を用いて説明する。図13において、(a)は位相検出クロック100のタイムチャートであり、一例として、記録クロックの8倍の周波数とした。(b)は記録クロック58、(c)は再生クロック23、(d)は図12のアンド回路126aの出力、(e)はカウンタ127の出力129、(f)は125eの出力、(g)はデータホールド回路128の出力102を示している。図13をみると、記録クロックに対し再生クロックが徐々に遅れていることが分かる。そしてデータホールド回路がホールドする値も1から2へと変化している。位相検出クロック100が記録クロックに対し8倍の周波数としたので、このクロック間位相検出回路の例では8つの位相ズレ量を検出できる。すなわち、タップ係数制御回路103は8つの位相ズレ量に応じて、各タップごとに8種のタップ係数を適応フィルタからタップ係数制御バスを介して読み出し、メモリ104に記憶する。そして、さらに、タップ係数制御回路103では、記録ヘッドスイッチ信号29のエッジから記録フォーマットにより規定された所定の時間遅れた記録開始時点で、前記クロック位相ズレ量102の値に応じて、以前に記憶したもっとも適当なタップ係数をメモリ104から読み出し、タップ係数制御バス120を介して、適応フィルタの各タップに設定する。これにより、記録ヘッドが切り替わることによって発生する適応フィルタの再収束動作は、前記の設定される最適なタップ係数を初期値として開始される。
【0038】
図14にその動作の概略を示した。図14において、(a)は図19でも示したように図3の20での検出信号の様子である。また、68bは適応フィルタのタップである積分回路68bの値の変化を示している。(b)はそのときの位相ズレ量102の変化である。この図で分かるように、p2時点で位相ズレ量102の値が1であることから、それより以前で位相ズレ量が0から1へ変化したときに記憶したタップ係数を読み出し、p2時点に設定している。これにより、各タップは収束すべきタップ係数にもっとも近い値を初期値として、収束動作を開始することが可能となり、検出信号の乱れもわずかに押さえることができている。
【0039】
(実施の形態2)
以下、本発明の記録再生装置の実施の形態2である磁気記録再生装置について説明する。前記第1の実施の形態の説明でわかるが、実施の形態1の構成では記録クロックと再生クロックとの位相差を8倍の周波数でサンプルし、それに応じたタップ係数を記憶・設定するため、極めて精度良く再収束動作を開始できる。しかし、タップ係数を記憶するメモリ回路のレジスタ数は各タップのビット数とタップ数と位相ズレ量の種類数とヘッドの数の積であたえられることになり、回路規模が極めて多くなる。
【0040】
本発明の第2の実施の形態では、この回路規模の問題を大幅に改善するとともに、第1の実施の形態と同様な性能を確保するものである。
【0041】
以下に、図を参照しながら第2の実施の形態について説明する。図15は第2の実施の形態におけるブロック図であり、第1の実施の形態の構成である図3のクロック間位相検出回路101以外は構成が同じである。図15でクロック間位相検出回路101の替わりに第2のクロック位相変化検出回路85’が追加されている。図16は、その第2のクロック位相変化検出回路85’の一例を示している。図16を見てわかるが、78’、79a’、80a’、80b’、82a’、82b’、83a’、83b’、81’は、図6におけるクロック位相変化検出回路85と同じで、動作・機能とも等しい。ただ、4分周回路78’及びDフリップフロップ79a’に入力されるクロックは記録クロック58を反転回路131で反転した反転記録クロック58’になっている。これにより、第2のクロック位相変化検出回路85’は記録クロック58のたち下がりエッジを再生クロックの立ち上がりエッジが追い越すまたは追い越されたことを検出し、図9の状態遷移図に従ってクロック間の位相変化を状態設定回路81’から状態信号84’として出力する。また、Dフリップフロップ132にはクロックとして再生クロック23が入力され、データとして記録クロック58が入力されており、再生クロックの立ち上がりエッジが記録クロックの前半にあるか後半にあるかを検出し、半周期検出信号133を出力する。この信号133と84’をまとめ、信号バス130としタップ係数制御回路103に出力している。図15における信号バス130が、それである。図17に第2のクロック位相変化検出回路85’と適応フィルタ25内に含まれるクロック位相変化検出回路85の動作について信号タイムチャートによって示した。図17において、信号58は記録クロック58で、信号58’は反転記録クロック58’で、信号23は再生クロック23で、信号84は状態設定回路81の出力である状態信号84で、信号84’は状態設定回路81’の出力である状態信号84’で、信号133は半周器検出信号133である。記録クロック58及び反転記録クロック58’に対し、再生クロック23が徐々に遅れていく様子が示されており、再生クロック23の立ち上がりエッジが記録クロック58の立ち上がりエッジを超えたときに信号84は0から1へ変化している。また、再生クロック23の立ち上がりエッジが反転記録クロック58’の立ち上がりエッジを超えたときに信号84’は0から1へ変化している。さらに、記録クロック58のハイレベルの期間に再生クロックの立ち上がりエッジがあるとき、信号133はハイレベルになり、逆の時はローレベルになっている。これらの信号84、84’、133はタップ係数制御回路103に入力されている。タップ係数制御回路103では図17の信号84及び84’の色塗りしたX1、X2の時点を識別し、その時の各タップ係数を読み出し、それぞれをメモり回路104に記憶する。図17のX1時点とは、図11における(C)から(A)に変化した点に相当し、その時記憶するタップ係数は図11(A)の(1−1)のタップ係数の値となる。このタップ係数の値を第1タップ係数とする。また、同様にX2時点とは、図11における(A)から(B)に変化した点に相当し、その時記憶するタップ係数は図11(B)の(1−1)のタップ係数の値となる。このタップ係数の値を第2タップ係数とする。
【0042】
次にメモリ回路104からタップ係数を読み出し、適応フィルタのタップ係数として設定する動作について説明する。これまでで説明したように図14のp2で記録ヘッドが切り替わり適応フィルタの再収束動作が開始される。タップ係数制御回路103は、この時点での半周器検出信号133の状態がハイレベルであれば、第1のタップ係数の68aと第2のタップ係数の68aとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68aの値として設定し、第1のタップ係数の68bと第2のタップ係数の68bとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68bの値として設定し、第1のタップ係数の68cと第2のタップ係数の68cとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68cの値として設定し、第1のタップ係数の68dと第2のタップ係数の68dとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68dの値として設定する。すなわち、図11における(A)から(B)への変化時の平均のタップ係数を設定する。さらに同様に、半周器検出信号133の状態がローレベルであれば、第1のタップ係数の68bと第2のタップ係数の68aとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68aの値として設定し、第1のタップ係数の68cと第2のタップ係数の68bとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68bの値として設定し、第1のタップ係数の68dと第2のタップ係数の68cとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68cの値として設定し、第1のタップ係数の68aと第2のタップ係数の68dとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68dの値として設定する。すなわち、図11における(B)から(C)への変化時の平均のタップ係数を設定する。
【0043】
上記のように適応フィルタのタップ係数を設定したときの動作を図18で説明する。図18において、(a)は図19でも示したように図15の20での検出信号の様子である。また、68bは適応フィルタのタップである積分回路68bの値の変化を示している。(b)はそのときの半周器検出信号133の変化である。いま、タップ係数制御回路103は半周器検出信号133のはじめの立ち上がりで第1のタップ係数を記憶し、たち下がりで第2のタップ係数を記憶する。そして、p2の時点で双方のタップ係数を読み出し、先に説明した方式によりタップの平均値を算出し、適応フィルタの各積分回路に初期タップ係数として設定する。これによりタップ係数の値が大きいタップではゼロから再収束をおこなうよりも半分の値で済むことになり、図21の(f)で示したものより、検出点での乱れが改善していることがわかる。しかし、前記第1の実施の形態で示したものよりも設定するタップ係数の精度が悪いため、図14で示した検出波形と比べると劣化が大きい。そこで、タップ係数制御回路103から図4の112を介して、p2の時点から所定の時間、係数回路69で乗算する値を通常時より大きな所定の値αに変更する。これによりp2の時点から所定の期間は通常より高速に収束動作がおこなわれる高速収束モードとなる。このときの様子を図19に示した。図19において、(b)は信号112で、p2時点から所定の時間ハイレベルとなり高速収束モードになっている。図19であきらかなようにp2での検出点での乱れは解消され、第1の実施の形態と同程度の性能が確保されていることがわかる。
【0044】
以上のように、第2の実施の形態では記録クロックの立ち上がりエッジとたち下がりエッジを再生クロックの立ち上がりエッジが追い越すまたは追い越された時点のタップ係数を記憶し、記録ヘッドが切り替わったときに起こる適応フィルタの再収束時に、前記記憶したタップ係数から、その時点での平均のタップ係数を算出し設定することともに、再収束開始から所定の期間、適応フィルタの収束を高速モードにすることで、第1の実施の形態とほぼ同性能のキャンセル動作を確保できる。さらに、記憶するタップ係数の種類が大幅に削減できることから、回路規模を大きく向上するとともに、記録クロックよりも高い周波数を必要としないため、回路動作全体の高レート化とともに、より実現しやすい構成となる。
【0045】
なお、第1及び第2の実施の形態において、便宜上p2で設定するタップ係数の元となるタップ係数を直前の別の記録ヘッドが動作しているときに記憶したものを用いる説明をおこなった。しかし、記録系から漏れ込むクロストークの特性はヘッド毎に異なるため、本来は1周期前に記憶したタップ係数を用いて設定することが望ましい。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、回転シリンダ部を大幅に小さくした小型の放送局用VTRなどのように、電磁的に記録信号と再生信号間の十分な分離が困難な装置であっても、再生信号に混入する記録信号のクロストーク成分を低減した同時再生機能を実現できる。また、本発明によれば、適応フィルタを用いて適応的にクロストーク成分を低減することにより、回転シリンダの回転位相に応じてクロストークの状態が変化したり、ヘッドや電気部品の温度変化や経時変化による特性変化によってクロストークの状態が変わっても、常に最良の状態で同時再生が可能となる。さらに、回転シリンダの回転むらなどにより記録クロックと再生クロックとの位相が順次変化していても、記録ヘッドが切り替わることによる適応フィルタの再収束動作開始時に最適なタップ係数を初期値として設定することが可能で、安定かつスムーズにクロストークのキャンセル動作を継続することができ、極めて良好な同時再生が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置の回転シリンダ上のヘッド配置を示す概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における磁気テープ上の記録トラックと磁気ヘッドとの位置関係を示す図
【図3】本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置における信号系統を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における適応フィルタの構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における積分回路の構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の動作を説明するタイミング図
【図8】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の動作を説明するタイミング図
【図9】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の動作を説明する状態遷移図
【図10】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の動作を説明するタイミング図
【図11】本発明の実施の形態1および2のにおけるクロストーク信号のインパルス応答に対する適応フィルタのタップ係数の変化を示す説明図
【図12】本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置におけるクロック間位相検出回路の1具体例の構成を示すブロック図
【図13】本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置におけるクロック間位相検出回路の動作を説明するタイミング図
【図14】本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置における検出点での信号の改善効果を説明する説明図
【図15】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における信号系統を示すブロック図
【図16】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における第2のクロック位相変化検出回路の1具体例の構成を示すブロック図
【図17】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における第2のクロック位相変化検出回路の動作を説明するタイミング図
【図18】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における検出点での信号での第1の改善効果を説明する説明図
【図19】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における検出点での信号での第2の改善効果を説明する説明図
【図20】従来例における信号系統を示すブロック図
【図21】従来例の課題を説明する説明図
【符号の説明】
4 第1の記録ヘッド
5 第1の再生ヘッド
8 減算回路
9 等化回路
14 第2の記録ヘッド
15 第2の再生ヘッド
22 クロック再生回路
25 適応フィルタ
26 疑似クロストーク信号
27 誤差検出回路
28 誤差信号
100 位相検出クロック
101 クロック間位相検出回路
103 タップ係数制御回路
104 メモリ回路
85’ 第2のクロック位相変化検出回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録動作と同時に再生を行う同時再生機能を備えた記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
放送局用ビデオテープレコーダ(以下、放送用VTRと略称する)では、録画のやり直しが困難であることが多いため、記録の失敗は避けなければならない。このような失敗を防ぐ目的から、放送用VTRには記録動作中に、記録とほぼ同時にその記録内容を再生して確認することのできる同時再生機能が必要である。この同時再生機能を実現する際の課題は、近接した距離に配置された記録ヘッドと再生ヘッド、さらにそれらに信号を伝送する記録用と再生用のロータリトランスなどが同時に動作することから、微弱な再生信号に記録信号が混入するクロストーク妨害をいかに抑えるかという点にあった。例えば、再生ヘッドにより再生される再生信号は、記録ヘッドに供給される記録信号に比べて70dB程度低い。したがって、記録信号が再生信号に漏れ込むクロストーク妨害を防止するためには、記録信号レベルの再生信号レベルに対する許容値を−30dBとすれば、記録信号レベルと再生信号レベルとの間は100dB以上分離しなければならなかった。記録信号から再生信号へのクロストーク妨害を物理的に抑えるための従来の技術としては、記録用のロータリトランスと再生用のロータリトランスを分離して配置したり、記録ヘッドと再生ヘッドとの間を導電部材などで電磁的に遮蔽する方法が知られている。
【0003】
しかし、小型回転ドラムで構成される放送VTRでは、物理的な方法ではクロストーク妨害を十分に低減することが困難であり、特許第3059394号で示されているように、記録信号から適応フィルタを用いて、擬似クロストーク信号を生成し、その擬似クロストーク信号を再生信号から減じることによってクロストーク妨害を低減する方式が提案されている。以下に、図を用いてこの先行例について説明する。
【0004】
図20は先行例の磁気記録再生装置におけるブロック図である。なお、図20では、太線で示す信号線は複数のビット数で表現されるディジタル信号を表し、細線で示す信号線はアナログ信号ないしは1ビットのディジタル信号を表す。図20において、第1の記録ヘッド4および第2の記録ヘッド14は、回転シリンダ上に180度の位置に対向して搭載され、磁気テープ40に交互に接触して記録が行われる。記録すべきディジタルデータである記録データ1は、回転シリンダの回転に同期した記録ヘッドスイッチ信号29により制御される記録切換スイッチ51に入力される。第1の記録ヘッド4が磁気テープ40に接触している期間は、記録切換スイッチ51が図20における上側の端子に接続される。このとき、記録切換スイッチ51からの記録されるべき信号は、第1の記録アンプ2により増幅される。増幅された記録されるべき信号は、第1の記録ロータリトランス3を経て回転シリンダ上の第1の記録ヘッド4に導かれ、磁気テープ40上に記録される。また、第2の記録ヘッド14が磁気テープ40に接触している期間は、記録切換スイッチ51が図20における下側の端子に接続される。このとき、記録切換スイッチ51からの記録されるべき信号は、第2の記録アンプ12、第2の記録ロータリトランス13を経て回転シリンダ上の第2の記録ヘッド14に導かれ、磁気テープ40上に記録される。
【0005】
第1の再生ヘッド5および第2の再生ヘッド15も同様に、記録ヘッドに対し所定の位相ずれて回転シリンダ上に搭載され、磁気テープ40に交互に接触して、前記記録動作と同時に再生が行われる。図20に示す再生切換スイッチ61は、回転シリンダに同期した再生ヘッドスイッチ信号30により制御されている。再生切換スイッチ61は、第1の再生ヘッド5が磁気テープ40に接触している期間は図20における上側の端子に接続され、第2の再生ヘッド15が磁気テープに接触している期間は図20における下側の端子にそれぞれ接続するよう構成されている。したがって、第1の再生ヘッド5が磁気テープ40に接触している期間は、回転シリンダ上の第1の再生ヘッド5により再生された信号が、第1の再生ロータリトランス6を経て第1の再生アンプ7により増幅される。増幅された信号は、再生切換スイッチ61を経て等化回路9に入力される。また、第2の再生ヘッド15が磁気テープ40に接触している期間は、回転シリンダ上の第2の再生ヘッド15により再生された信号が、第2の再生ロータリトランス16を経て第2の再生アンプ17により増幅される。増幅された信号は、再生切換スイッチ61を経て等化回路9へ入力される。等化回路9では、記録から再生に至る系における周波数特性の補正を行い、記録されたデータをディジタル符号の判別が可能なように等化する。等化された信号は、クロック再生回路22およびAD変換器50に入力される。
【0006】
クロック再生回路22は、等化された信号から再生データに同期した再生クロック23を発生する。また、AD変換器50は、等化された信号を再生クロック23で標本化し、ディジタル信号の形態に変換する。AD変換器50でディジタル化された信号は、演算手段としての減算回路8に入力される。減算回路8の出力である信号20は、復号回路21に入力され、データの符号が判別されて、再生データ24として復号回路21から出力される。復号回路21としては、振幅をしきい値と比較する方式のものや、公知のビタビ復号アルゴリズムを用いるものなどがある。上記再生動作において、第1の再生ヘッド5ないし第2の再生ヘッド15により磁気テープ40から再生される信号は極めて微弱である。この再生信号の電流は、第1の記録ヘッド4ないし第2の記録ヘッド14に流れる記録電流に比べておよそ70dB低い。このため記録信号が再生信号に漏れ込むクロストークが生じている。
【0007】
この記録信号から再生信号へのクロストークの発生は、多くの経路を通じて発生する。例えば、第1の記録ヘッド4ないし第2の記録ヘッド14から第1の再生ヘッド5ないし第2の記録ヘッド15へ、あるいは第1の記録ロータリトランス3ないし第2の記録ロータリトランス13から第1の再生ロータリトランス6ないし第2の再生ロータリトランス16へ、あるいは記録ロータリトランスと記録ヘッド間の配線から再生ロータリトランスと再生ヘッド間の配線へなどの、多くの経路を通じてクロストークは発生する。しかしながら、これら多くの経路を経て最終的に等化回路9の出力信号に混入するクロストーク成分は、記録データ1に特定のインパルス応答を畳み込んだ信号と見なすことができる。したがって、記録データ1に対してこのインパルス応答を畳み込むことでクロストーク成分を人為的に作成することができる。そこで、記録データ1を入力とし、誤差信号28によって制御される適応フィルタ25が設けられている。そして、適応フィルタ25のインパルス応答は、記録データ1から等化回路9の出力に至る系のクロストークのインパルス応答と近似した特性を持つよう制御される。これにより、適応フィルタ25の出力は、人為的に作成した疑似クロストーク信号26となる。なお、疑似クロストーク信号26はディジタル信号の形態で表現されている。減算回路8においては、AD変換器50の出力信号から疑似クロストーク信号26を差し引く。したがって、再生信号に混入したクロストーク成分はキャンセルされる。この結果、クロストーク妨害は大幅に低減される。また、適応フィルタ25の適応動作のアルゴリズムについては前記先行例の中で詳しく説明されているので、その詳細は省略するが、減算回路8の出力である信号20から誤差検出手段としての誤差検出回路27において残留するクロストーク成分を検出し、誤差信号28として適応フィルタ25に帰還し、残留誤差を最少自乗法等でより少なくなるよう制御することで、回転シリンダの回転位相に応じてクロストークの状態が変化したり、ヘッドや電気部品の温度変化や経時変化による特性変化があっても、適応フィルタ25はクロストークを最良に近似する特性となるよう常に制御されている。
【0008】
しかしながら、前記先行例によってクロストーク妨害を大幅に低減できるものの、以下に示すような問題がある。
【0009】
図21は前記先行例の問題点を説明する説明図である。図21(a)は図20における記録ヘッドスイッチ信号29のタイムチャートである。図21(b)は記録データ1のエンベロープを示しており、図21の(期間a1)の間は記録切換スイッチ51、記録アンプ2、記録ロータリトランス3を経て記録ヘッド4によってテープ上にデータが記録されている。また、図21の(期間a2)の間は記録切換スイッチ51、記録アンプ12、記録ロータリトランス13を経て記録ヘッド14によってテープ上にデータが記録されている。図を見てわかるように、一般に上記のようなヘリカルスキャン型VTRでは180度分の全ての期間を記録するのでなく、ヘッドスイッチ信号の変化点の前後にあたる数度分はヘッドスイッチマージンとしてデータを記録しない期間がある。図21(c)は再生ヘッドスイッチ信号30のタイムチャートである。図21(d)はAD変換器50の出力信号であり、図21の(期間c1)の間は再生ヘッド5によってテープ上のデータが再生され、(期間c2)の間は再生ヘッド15によってテープ上のデータが再生されたものである。図21(e)は図21(d)の一部を拡大し、詳細に記載したもので、等化回路9の等化特性の一例として、一般に用いられているパーシャルレスポンス・クラス4で等化した信号を再生クロックで離散的にAD変換したサンプルをプロットしたものである。図でわかるようにパーシャルレスポンス・クラス4による検出特性である3値の検出値に分かれていることがわかる。図21(e)のように、期間a1や期間a2と重なっている部分では記録からのクロストーク妨害により、3値の検出点が広がり、劣化していることがわかる。図21(f)は減算器8の出力である信号20であり、適応フィルタ25により生成された擬似クロストーク信号をAD変換器50が出力する第1の再生検出信号から減算して得られる第2の再生検出信号である。図でわかるように適応フィルタ25が収束して、適切な擬似クロストーク信号を生成すれば、第1の再生検出信号からクロストーク妨害をきわめて良好に除去できていることがわかる。
【0010】
しかし、図21(f)のp2の時点で再度検出信号が乱れていることがわかる。これは、p1からp2の期間は記録状態でないため、クロストークの妨害がない。すなわち、この期間は適応フィルタのタップ係数を一旦、ゼロにする必要があるため、p2の時点で再度、適応フィルタが収束しなおすためである。クロストークによる妨害の程度が大きいと、図21(f)のp2の時点のように定常的に検出信号が乱れ、必ずエラーが発生する。これによって再生データの品質が著しく低下する問題が発生する。通常、適応フィルタの適応動作に不連続があれば、その不連続点での収束を高速化にするために、一周期前あるいはそれ以前に記憶したタップ係数をp2の時点で設定し、その係数を初期値として適応動作を開始する方法が用いられる。しかし、記録クロックに対し、再生クロックはシリンダ回転のむらやテープの伸張によって、ジッタが発生し、位相が刻々と変化している。このため、記録信号が再生信号に漏れ込むクロストークのインパルス応答も、それに合わせ変化しており、以前に記憶したタップ係数の値とp2の時点で収束すべきタップ係数の値とは、必ずとも一致していない。従って、単純にp2の時点で以前に記憶したタップ係数でもって設定しても、収束にかかる時間を改善できないばかりか、さらに悪化させる問題が起こる。
【0011】
【特許文献1】
特許第3059394号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
近年、回転シリンダ部を大幅に縮小した、小型で軽量の放送局用VTRが要望されている。しかしながら、このような小型の回転シリンダ部を用いた場合には、記録用のロータリトランスと再生用のロータリトランスを分離して配置することや、記録ヘッドと再生ヘッドとの間を導電部材や磁性部材などで物理的に遮蔽することが困難であった。さらに、前記先行例で述べたように記録信号から適応フィルタを用いて擬似クロストーク信号を生成し、再生信号から減じることによって、クロストーク妨害を軽減する方法では、記録ヘッドが切り替わる度におこるタップ係数の再収束のためにクロストーク妨害の多い装置では、一時的に検出点での乱れが発生してしまい、定常的にエラーをおこしてしまう課題があった。そこで、本発明は、電磁的に記録信号と再生信号間の十分な分離が困難な小型の回転シリンダ部を用いても、再生信号に混入する記録信号のクロストーク成分を低減するとともに、記録ヘッドが切り替わるような不連続点であっても、検出点での劣化がほとんどなく、良好な同時再生機能を備えた記録再生装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る記録再生装置は、記録データを入力とする適応フィルタと、再生信号から前記適応フィルタの出力を減算する演算手段と、前記演算手段の出力信号から誤差信号を検出して前記適応フィルタに帰還する誤差検出手段などより構成され、前記適応フィルタが記録データから再生信号に至るクロストーク成分の周波数特性を近似して疑似クロストーク信号を出力し、これを演算手段において再生信号から差し引くことでクロストーク成分をキャンセルするとともに、記録クロックと再生クロックとの位相関係を検出するクロック間位相検出手段と前記クロック間位相検出手段が出力する位相ズレ量の関係ごとに、前記適応フィルタのタップ係数を記憶するクロック位相別タップ係数記憶手段と、前記適応フィルタが適応動作を開始するときに得られるクロック間位相検出手段の位相ズレ量と等しいまたは最も近い値で以前に記憶したタップ係数を読み出し、前記適応フィルタのタップ係数として設定するタップ係数制御手段とを備えることで、記録ヘッドが切り替わるたび起こる適応フィルタの再収束動作時の検出点での乱れを解消し、収束動作をスムーズに行い、電磁的に記録信号と再生信号間の十分な分離が困難であっても、同時再生機能が実現できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の記録再生装置の実施の形態について記載する。本発明の第1の発明による記録再生装置は、記録データを磁気記録媒体に記録する記録ヘッドと、記録された信号を再生する再生ヘッドと、前記記録データを入力とする適応フィルタと、前記再生ヘッドにより再生された再生信号から前記適応フィルタの出力を減算する演算手段と、前記演算手段の出力信号から誤差信号を検出して前記適応フィルタに帰還する誤差検出手段と、再生信号から再生データに同期した再生クロックを発生する再生クロック発生手段とを備え、前記適応フィルタが、記録データ列から連続するK個(Kは自然数)の記録データを前記再生クロックに同期して第1のデータ群として出力し、前記記録データ列から他の連続するK個の記録データを前記再生クロックに同期して第2のデータ群として出力する信号配列手段と、前記第2のデータ群のK個のデータを一方の入力とし、前記誤差信号を他方の入力とするK個の乗算手段からなる第1の乗算手段群と、前記第1の乗算手段群のK個の乗算手段の出力信号をそれぞれ積分するK個の積分手段と、前記第1のデータ群のK個の出力を一方の入力とし、前記K個の積分手段のそれぞれの出力を他方の入力とするK個の乗算手段からなる第2の乗算手段群と、前記第2の乗算手段群のK個の乗算手段の出力の総和を得て適応フィルタの出力とする演算手段と、前記記録データに同期した記録クロックと前記再生クロックとの位相関係を検出するクロック間位相検出手段と、前記クロック間位相検出手段が出力する位相関係ごとに、前記適応フィルタのそれぞれの積分手段の値をタップ係数とし記憶するクロック位相別タップ係数記憶手段と、前記適応フィルタが適応動作を開始するときに得られるクロック間位相検出手段の検出値と等しいまたは最も近い値で以前に記憶したタップ係数を読み出し、前記適応フィルタのタップ係数として設定するタップ係数制御手段とを備えている。このため、記録ヘッドが切り替わるたびに必要となる適応フィルタの再収束動作の開始時に、前記クロック間位相検出手段が検出する再生クロックと記録クロックの位相関係からそのときの最適なタップ係数を適応フィルタの初期値として設定できるため、検出点での乱れを解消し、収束動作をスムーズに行い、従来技術で問題であった定常的に発生するデータ誤りを解消でき、きわめて良好な同時再生機能が実現できる。
【0015】
本発明に係る第2の発明による記録再生装置は、前記第1の発明による記録再生装置の構成に加え、前記適応フィルタの演算手段が、第2の乗算手段群のK個の乗算手段の出力の総和に所定の収束係数を乗じて適応フィルタの出力とする演算手段であって、前記適応フィルタがおこなう適応動作の開始時点から所定の期間を収束初期期間とし、それ以降を通常期間としたとき、前記収束係数を収束初期期間内はaとし、通常期間はb(a>bかつa,b>0)となるように設定する収束係数制御手段を備えていることを特徴とする。このため、記録ヘッドが切り替わるたびに必要となる適応フィルタの再収束動作の開始時に、前記クロック間位相検出手段が検出する再生クロックと記録クロックの位相関係からそのときの最適なタップ係数を適応フィルタの初期値として設定するとともに、収束初期期間内は通常期間よりも高いループゲインでフィードバックされるため、前記第1の記録再生装置よりも高速に収束することができ、検出点での乱れをより早く解消し、収束動作がスムーズに行える。さらに、収束初期期間以外の通常期間は係数aよりも小さい係数bに戻されるため、ノイズによるタップ係数の揺られも最小限にとどめることができ、きわめて良好な同時再生機能が実現できる。
【0016】
本発明に係る第3の発明による記録再生装置は、第1または第2の記録再生装置構成を有するとともに、前記クロック間位相検出手段の検出信号に基づき、再生クロックの立ち上がりエッジが、記録クロックの立ち上がりエッジを追い越すまたは追い越された瞬間を検出し、第1のタイミング信号を出力する第1タイミング検出手段と、再生クロックの立ち上がりエッジが、記録クロックの立ち下がりエッジを追い越すまたは追い越された瞬間を検出し、第2のタイミング信号を出力する第2タイミング検出手段と、前記第1のタイミングで前記適応フィルタの第1のタップ係数を記憶する第1のタップ係数記憶手段と、前記第2のタイミングで第2のタップ係数を記録する第2のタップ係数記憶手段と、前記適応フィルタが適応動作を開始する時点のクロック間位相検出手段の出力に基づき、以前に記憶した前記第1のタップ係数及び第2のタップ係数より、最適なタップ係数を演算する最適タップ係数演算手段と、前記適応フィルタが適応動作を開始するときに前記最適タップ係数演算手段で求めたタップ係数でもって、前記適応フィルタのタップ係数を設定するタップ係数制御手段とを備えていることを特徴とする。このため、前記クロック間位相検出手段が検出する全ての位相に毎にタップ係数を記憶する必要が無く、前記第1及び第2のタイミングのみのタップ係数記憶手段で済むため、きわめて少ない回路規模で従来の課題を解決するとともに、良好な同時再生機能が実現できる。
【0017】
(実施の形態1)
以下、本発明の記録再生装置の実施の形態1である磁気記録再生装置について説明する。実施の形態1の磁気記録再生装置は、小型の回転シリンダ上に一対の記録ヘッドと一対の再生ヘッドを備え、回転シリンダに斜めに巻つけられて走行する磁気テープにディジタルデータを記録し、また再生する装置である。図1は実施例1の磁気記録再生装置における回転シリンダ31上のヘッド配置を示す概略図である。図1において、回転シリンダ31は直径がおよそ20mm程度の小型のものであり、図1に示すように反時計方向へ回転する。回転シリンダ31には、第1の記録ヘッド4および第2の記録ヘッド14、第1の再生ヘッド5および第2の再生ヘッド15が配置されている。磁気テープ(図示せず)は、回転シリンダ31のおよそ半周(180度)の区間に渡って斜めに巻つけられて走行する。
【0018】
図2は、磁気テープ40上の記録トラックパターンと各ヘッドの位置関係を示す図である。図2において、磁気テープ40には斜めにトラック41a、41b、42a、42b、43a、43b、・・・が形成されている。トラック41a、42a、43aは、いずれも第1の記録ヘッド4により磁気テープ40上に記録されたトラックである。また、トラック41b、42b、43bは、第2の記録ヘッド14により磁気テープ40上に記録されたトラックである。図2に示すように、トラック44aは第1の記録ヘッド4によって現在記録しつつあるトラックである。このとき、第1の再生ヘッド5は、第1の記録ヘッド4より90度遅れてトラック44aをトレースして再生を行っている。このため、実施の形態1の磁気記録再生装置は、記録とほぼ同時に再生を行うことができ、記録状態の確認を行うことができる。また、図示は省略するが、第1の記録ヘッド4および第1の再生ヘッド5と同様に、第2の記録ヘッド14により記録されたトラック41b、42b、43bは、第2の再生ヘッド15により記録とほぼ同時に再生が行われる。
【0019】
図3は実施の形態1の磁気記録再生装置におけるブロック図である。なお、図3では、太線で示す信号線は複数のビット数で表現されるディジタル信号を表し、細線で示す信号線はアナログ信号ないしは1ビットのディジタル信号を表す。図3において、番号1〜9,12〜17,20〜30,40,51,58,61は先行例で示したつながり及び機能と同様であるため、その説明を省略する。本発明のために新たに付け加えられた番号100〜104、120,121と、それに関わる適応フィルタ25について、以下に詳細に説明する。
【0020】
図3において、本発明の適応フィルタとしての適応フィルタ25が設けられている。適応フィルタ25は、記録データ1を入力とし、誤差信号28によって制御される。適応フィルタ25のインパルス応答は、記録データ1から等化回路9の出力に至る系のクロストークのインパルス応答と近似した特性を持つよう制御される。これにより、適応フィルタ25の出力は、人為的に作成した疑似クロストーク信号26となる。なお、疑似クロストーク信号26はディジタル信号の形態で表現されている。減算回路8においては、AD変換器50の出力信号から疑似クロストーク信号26を差し引く。したがって、再生信号に混入したクロストーク成分はキャンセルされる。この結果、クロストーク妨害は大幅に低減される。この適応フィルタの適応動作の原理は先行例で詳細に説明されているので、その説明を省略するが、減算回路8の出力である信号20から誤差検出手段としての誤差検出回路27において残留するクロストーク成分を検出し、誤差信号28として適応フィルタ25に帰還する。そして、この誤差信号を最小自乗法等を用いて最小になるように制御していく。これにより、回転シリンダ31の回転位相に応じてクロストークの状態が変化したり、ヘッドや電気部品の温度変化や経時変化による特性変化があっても、適応フィルタ25はクロストークを最良に近似する特性となるよう常に制御される。
【0021】
さらに、図4を用いて、この適応フィルタ25について具体的に説明する。図4は本実施の形態の適応フィルタ25の具体的構成を示すブロック図である。図4に示した適応フィルタ25は、4タップのFIR型フィルタで構成されており、誤差信号28の自乗平均値が常に最小になるよう適応的に動作するものである。図4において、信号配列手段としての記録信号配列回路59には、記録データ1、記録データ1に同期した記録クロック58、および再生データ24に同期した再生クロック23が入力される。また、記録信号配列回路59から出力される信号55a、55b、55c、55dは、記録データ1の連続する4ビットの信号を再生クロック23に同期化して出力したものである。さらに、記録信号配列回路59から出力される信号56a、56b、56c、56dは、信号55a、55b、55c、55dよりもそれぞれMビット遅れた記録データ1を再生クロック23に同期化して出力したものである。例えば、時刻nにおける記録データ1をr(n)とあらわすとき、ある時刻における信号55a、55b、55c、55dは、それぞれr(i)、r(i−1)、r(i−2)、r(i−3)であり、信号56a、56b、56c、56dは、それぞれr(i−M)、r(i−M−1)、r(i−M−2)、r(i−M−3)である。なお、本例では、M=1である。なお、この記録信号配列回路59の構成については後に詳細に示す。
【0022】
図4において、符号65a、65b、65c、65dはそれぞれ乗算回路を示しており、4つの乗算回路65a、65b、65c、65dにより第1の乗算手段群が構成されている。乗算回路65a、65b、65c、65dの一方の入力には、誤差信号28をDフリップフロップ54において再生クロックでラッチした遅延誤差信号52が入力されている。また、乗算回路65a、65b、65c、65dの他の一方の入力には、それぞれ信号56a、56b、56c、56dが入力されている。なお、信号56a、56b、56c、56dは「0」ないし「1」を表す1ビットの信号であるが、これをそれぞれ「−1」ないし「1」を表すものとして乗算を行う。図4の符号68a、68b、68c、68dは積分手段としての積分回路を示しており、これらの積分回路68a、68b、68c、68dは乗算回路65a、65b、65c、65dの出力信号をそれぞれ積分して出力する。図5は、一つの積分回路68aの構成を示すブロック図である。図5に示すように、積分回路68aは、加算回路66と、Dフリップフロップ67及びスイッチ108より構成されており、通常積分動作を行うときは信号107の制御により加算器回路66側に接続されている。Dフリップフロップ67には、図に示していないが、再生クロック23がクロックとして入力され、加算回路66の出力信号を1クロック期間遅延して再び加算回路66に帰還する。これにより、積分回路68aに入力される信号は1クロックごとに累積され、積分が行われる。このDフリップフロップ67に蓄積される値は各タップ係数に相当し、適切なタップ係数を外部より設定する場合は、前記信号107の制御によりスイッチ108が、1再生クロック周期間だけ105側に接続され、設定される。また、信号106を介して、Dフリップフロップ67の値、すなわちタップ係数を読み出すことが出来る。なお、図5における信号105,106,107をまとめて、信号バス110aとし、他の積分回路68b、68c、68dは、図5に示した積分回路68aとそれぞれ全く同じ構成であり、図4のように各積分回路から同様に信号バス110b、110c、110dが入出力されている。
【0023】
図4において、符号57a、57b、57c、57dは乗算回路を示しており、4つの乗算回路57a、57b、57c、57dにより第2の乗算手段群が構成されている。乗算回路57a、57b、57c、57dの一方の入力には、信号55a、55b、55c、55dがそれぞれ入力されている。さらに、乗算回路57a、57b、57c、57dの他の一方の入力には、積分回路68a、68b、68c、68dの出力がそれぞれ入力されている。なお、信号55a、55b、55c、55dは「0」ないし「1」を表す1ビットの信号であるが、これをそれぞれ「−1」ないし「1」を表すものとして乗算を行う。乗算回路57a、57b、57c、57dの出力は、演算手段としての加算回路60に入力され、その総和が係数回路69に入力される。係数回路69では、加算回路60の出力信号に信号112がハイレベルの時、所定の係数αを乗じ、ローレベルの時所定の係数β(α>β,α,β>0)を乗じて疑似クロストーク信号26として出力する。なお、本例において誤差信号28を乗算回路65a、65b、65c、65dに直接供給しないで、Dフリップフロップ54において再生クロックでラッチした遅延誤差信号52を供給している。これは、誤差信号28を得る系が帰還ループで構成されており、帰還ループ内の回路の遅延時間を再生クロックでラッチすることにより吸収させるためである。また、すでに述べたように、記録信号配列回路59から出力される信号56a、56b、56c、56dは、信号55a、55b、55c、55dよりもそれぞれMビット遅れた記録データを再生クロック23に同期化して出力したものである。このMの値は、信号55aから疑似クロストーク信号26、減算回路8、誤差検出回路27などを経て遅延誤差信号52として乗算回路65aに至る系の遅延時間に等しい。本実施例では、この系の遅延時間はDフリップフロップ54による1クロック期間であるためM=1である。なお、乗算回路65a、65b、65c、65d、および乗算回路57a、57b、57c、57dは、上述のように一方の入力が「−1」ないし「1」を表す1ビットの信号である。したがって、これらの乗算回路は、一方の入力信号である1ビットの信号の符号に応じて、他の一方の入力をそのまま出力するか反転して出力するかの切り替えを行うスイッチ回路で実現することもできる。
【0024】
次に、図4に示した記録信号配列回路59の具体的構成について図を参照しつつ説明する。図6は記録信号配列回路59の具体的構成を示すブロック図である。図6において、符号78は記録クロック58を4分周する4分周回路を示しており、符号79a、79b、79cはDフリップフロップ(以下ではD−FFと称す)を示している。4分周回路78の出力はD−FF 79a、79b、79cにより記録クロック58で順次遅延される。符号70a、70b、70c、70dは記録クロック58をクロックとするD−FFを示しており、D−FF 70a、70b、70c、70dは記録データ1を順次遅延する。また、符号74a、74b、74c、74d、74eは4分周回路78の出力をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF 74a、74b、74c、74d、74eは記録データ1、70a、70b、70c、70dのそれぞれの出力信号を入力としている。同様にして、符号73a、73b、73c、73d、73eはD−FF 79aの出力をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF 73a、73b、73c、73d、73eは記録データ1、70a、70b、70c、70dのそれぞれの出力信号を入力としている。また、符号72a、72b、72c、72d、72eはD−FF 79bの出力をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF 72a、72b、72c、72d、72eは記録データ1、70a、70b、70c、70dのそれぞれの出力信号を入力としている。さらに、符号71a、71b、71c、71d、71eはD−FF79cの出力をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF 71a、71b、71c、71d、71eは記録データ1、70a、70b、70c、70dのそれぞれの出力信号を入力としている。
【0025】
図6において、符号80aは再生クロック23をクロックとする2ビットのD−FFを示しており、このD−FF 80aは4分周回路78の出力とD−FF79aの出力とを入力とし、それぞれを再生クロック23でラッチして信号82a、82bを出力するラッチ手段として機能する。また、符号80bは再生クロック23をクロックとする2ビットのD−FFを示しており、D−FF 80bは信号82a、82bをそれぞれを再生クロック23で遅延して信号83a、83bを出力する遅延手段として機能する。また、状態設定回路81は、信号82a、82b、83a、83bに応じて、状態信号84を再生クロック23のタイミングで出力する。この状態設定回路81は、記録クロックの立ち上がりエッジが再生クロックの立ち上がりエッジに対して時間的に追い越されたか、或いは、追い越したかを検出する位相変化検出手段として機能する。なお、4分周回路78、D−FF 79a、80a、80b、状態設定回路81からなる部分は、記録クロック58と再生クロック23の位相変化関係を検出するクロック位相変化検出手段としてのクロック位相変化検出回路85を構成している。
【0026】
選択回路76aはD−FF 71a、72a、73a、74aの出力信号を入力とし、信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。同様に、選択回路76bはD−FF 71b、72b、73b、74bの出力信号を入力として信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。選択回路76cはD−FF 71c、72c、73c、74cの出力信号を入力として信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。選択回路76dはD−FF 71d、72d、73d、74dの出力信号を入力として信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。さらに選択回路76eはD−FF 71e、72e、73e、74eの出力信号を入力として信号82aおよび信号82bに応じて4つの入力信号のうちの1つを選択して出力する。図6において、符号75a、75b、75c、75d、75eは再生クロック23をクロックとするD−FFを示しており、それぞれのD−FF75a、75b、75c、75d、75eは選択回路76a、76b、76c、76d、76eのそれぞれの出力信号を入力としている。並べ換え回路77は、D−FF 75a、75b、75c、75d、75eの出力信号を入力とし、状態信号84に応じて並べ換えを行って信号55a、55b、55c、55dおよび信号56a、56b、56c、56dを出力する。この並べ換え回路77は、配列切換手段として機能する。
【0027】
さて、図6に示した記録信号配列回路59の動作について、図7、図8、及び図10を参照して説明する。図7、図8、及び図10は、図6の記録信号配列回路59の各部の信号を示すタイミングチャートである。図7において、(a)は記録クロック58を示している。図7の(b)は、A,B,C,・・・という順で入力される記録データ1を示している。図7の(c)は4分周回路78において分周された信号を示しており、図7の(d)、(e)、(f)は、4分周回路78の出力信号を、D−FF 79a、79b、79cで遅延した信号をそれぞれ示している。ここで、信号のHレベルを”1”、Lレベルを”0”で表すと、4分周回路78の出力信号とD−FF 79aの出力信号との組み合わせを(4分周回路78の出力信号,D−FF 79aの出力信号)で表すと、(0,0)、(1,0)、(1,1)、(0,1)、(0,0)・・・という順序で繰り返され、隣り合う期間では2ビットのうち1ビットのみが異なるグレーコードとなっている。すなわち、4分周回路78とD−FF 79aは、分周位相をグレイコード化して出力する分周手段として機能している。図7の(g)において、(0,0)、(1,0)、(1,1)、(0,1)の状態をそれぞれ”0”、”1”、”2”、”3”の分周位相として示した。
【0028】
前述のように再生クロック23は回転シリンダの回転むらなどにより周期が変動している。図7の(h)に示したように、時刻t1および時刻t3において再生クロック23の立ち上がり時点と記録クロック58の位相関係が変化している。このため、4分周回路78の出力信号,D−FF 79aの出力信号をそれぞれ再生クロック23でラッチした信号82a、82bは、図7の(i)、(j)に示す信号となる。図7の(k)においてグレイコードで表される信号82a、82bの分周位相は、”0”,”1”,”2”,”3”,”0”,”1”,・・・というように連続的には変化せず、時刻t1および時刻t3において不連続となっている。分周位相は4分周回路78の出力信号、D−FF 79aの出力信号をそれぞれ再生クロック23でラッチした信号82a、82bで認識されている。先に述べたように、これら2ビットは分周位相をグレイコード化して表現したものである。このようにグレーコードを用いるのは、これら2ビットの間で微妙なタイミングのずれがあったとしても、隣り合う期間では2ビットのうち1ビットのみが異なるため、位相を誤って検出することがないからである。図6の選択回路76aは、信号82a、82bで示される分周位相が、”0”のときにはD−FF 72aの出力を選択して出力する。また、選択された信号はD−FF75aで再生クロック23の立ち上がりタイミングでラッチされる。記録クロック58の周期をTとしたとき、図7の(e)に示されたD−FF 79bの出力の立ち上がり時点は、図7の(k)に示した信号82a、82bで示される分周位相が”0”に変化する時点よりも1T〜2T前にある。このため、D−FF79bの出力をクロックとしているD−FF 72aの出力は、図7の(k)に示した分周位相は”0”の期間が必ず安定しており、選択回路76aにおいてD−FF 72aの出力を選択することにより、D−FF 75aにおいて再生クロック23により確実にラッチすることができる。
【0029】
選択回路76aは、さらに信号82a、82bで示される分周位相が”1”のときにはD−FF 71aの出力を選択し、”2”のときにはD−FF 74aの出力を選択し、”3”のときにはD−FF 73aの出力をそれぞれ選択して出力する。これにより、その周期が変動する再生クロック23が記録クロック58に対してどのような位相関係にあっても、D−FF 75aで確実に記録データを再生クロック23に同期させることができる。選択回路76b〜76eも、前述の選択回路76aと同様に動作する。以上の動作の結果、D−FF 75a〜75eの出力は、それぞれ図8の(l)〜(p)に示すように、再生クロック23が変動しても、どの時点においても常に連続する5ビットの記録データが再生クロック23に同期して出力される。他方、例えば図8の(m)に示すD−FF 75bの出力系列を時間軸方向に見たとき、時刻t2および時刻t4でデータの不連続が生じている。このため、図8の(l)〜(o)に示す信号をそのまま信号55a〜55dとして出力した場合には、図4の積分回路68a〜68dで出力されるべきクロストークのインパルス応答の値がt2、t4で不連続となり、疑似クロストーク信号26に大きな誤差を生じてしまう。そこで、図6において、状態設定回路81は位相変化検出手段として機能し、また並べ換え回路77は配列切換手段として機能して、記録クロック58と再生クロック23の位相関係が変化しても図4の疑似クロストーク信号26に大きな誤差を生じないよう処理している。
【0030】
次に、上記状態設定回路81と並べ換え回路77の動作について具体的に説明する。図8において、(q)と(r)は信号83a、83bをそれぞれ示している。ここで、図8の(i)に示した信号82aと(q)に示した信号83aとを比較し、また図8の(j)に示した信号82bと(r)に示した信号83bとを比較したとき、時刻t1とt2の間の期間ではいずれの比較結果も異なり、時刻t3とt4の間ではいずれの比較結果も等しい。また、その他の期間では、2つの比較のうちいずれか一方のみが異なっている。これからわかるように、信号82aと信号83aとの比較結果、および信号82bと信号83bとの比較結果から、記録クロック58と再生クロック23の位相関係の変化を知ることができる。これを利用し、図6の状態設定回路81は、状態”0”、”1”、”2”、”3”の4つの状態のいずれかを保持して状態信号84を出力するものである。図9は状態設定回路81の4つの状態”0”、”1”、”2”、”3”の関係を示す状態遷移図である。図9において、信号82aと信号83aが等しく、信号82bと信号83bも等しい事象をAとする。また、信号82aと信号83aが異なり、信号82bと信号83bも異なる事象をBとし、上記事象A及びB以外の事象をCとする。すなわち、いずれの比較結果も等しいという事象をA、いずれの比較結果も異なるという事象をB、いずれか一方のみの比較結果が異なるという事象をCとする。このとき、状態設定回路81は、図9に示すように保持する状態を遷移する。図8の(s)に状態信号84で表される状態変化の様子を示している。なお、状態信号84は外部に出力されており、任意の時点で読み出すことが可能で、信号117の制御により外部から信号116を介して、状態設定回路81に初期状態を設定できる。この、信号117,116,84をまとめて信号バス111とする。信号バス111は図4における信号111と等しく、先に説明した図4の信号バス110a〜dと信号バス111をまとめて、後で説明するタップ係数制御バス120を構成している。
【0031】
図6に示した並べ換え回路77は、状態信号84で示される状態が”0”の場合には、D−FF 75a、75b、75c、75dをそれぞれ信号55a、55b、55c、55dとして出力し、D−FF 75b、75c、75d、75eをそれぞれ信号56a、56b、56c、56dとして出力する。また、状態信号84で示される状態が”1”の場合には、D−FF 75b、75c、75d、75aをそれぞれ信号55a、55b、55c、55dとして出力し、D−FF75c、75d、75e、75bをそれぞれ信号56a、56b、56c、56dとして出力する。さらに、状態信号84で示される状態が”2”の場合には、D−FF 75c、75d、75a、75bをそれぞれ信号55a、55b、55c、55dとして出力し、D−FF 75d、75e、75b、75cをそれぞれ信号56a、56b、56c、56dとして出力する。また、状態信号84で示される状態が”3”の場合には、D−FF 75d、75a、75b、75cをそれぞれ信号55a、55b、55c、55dとして出力し、D−FF75e、75b、75c、75dをそれぞれ信号56a、56b、56c、56dとして出力する。その結果得られる信号55a、55b、55c、55dの変化の様子を、図10の(t)、(u)、(v)、(w)にそれぞれ示す。図10に示すように、(u)に示す信号55bおよび(v)に示す信号55cでは、時間軸方向に信号の変化を見たとき、記録データの不連続が生じていない。この例に見られるように、記録データの連続する4データのうちの中央の2データについては、記録クロック58と再生クロック23の位相関係が変化しても常に連続性が維持される。また図示していないが、信号56a、56b、56c、56dについても同様である。
【0032】
図4に示した積分回路68a〜68dで出力されるべきクロストークのインパルス応答の絶対値は、一般に連続する4データに対するインパルス応答のうちの中央部の値が大きく、両端にいくほど小さくなる。このため、両端部に対するインパルス応答にデータの不連続による誤差があっても、中央部を含むその他の部分の連続性が維持されれば疑似クロストーク信号26に生じる誤差は小さい。以上説明したように、記録信号配列回路59は、記録データ1の連続する4ビットのデータを再生クロック23に同期化して信号55a、55b、55c、55dとして出力し、また信号55a、55b、55c、55dよりもそれぞれMビット遅れた記録データ(ここではM=1)を再生クロック23に同期化して信号56a、56b、56c、56dとして出力する。さらに、記録クロック58と再生クロック23の位相関係が変化しても安定して疑似クロストーク信号26が得られるよう、位相関係の変化に応じて連続する4ビットの信号間でのローテーションを行い、信号配列を変更する機能も有している。
【0033】
上記信号配列を変更する動作をより一般的に表現すると、以下のように言うことができる。信号55a、55b、55c、55dを{q[0],q[1],q[2],q[3]}とし、記録クロック58の時刻nにおける記録データ1をr[n]とし、記録クロック時刻がnで再生クロックの時刻がmにおいてq[mod(i+j)]としてr[n−h−i](i=0,1,2,3,j,hは整数,mod(A)は整数Aを4で除したときの余りを表す)を出力していると仮定する。このとき、再生クロックの時刻m+1において記録クロック時刻がnである場合にはq[mod(i+j+1)]としてr[n−h−i]を出力し、再生クロックの時刻m+1において記録クロック時刻がn+1である場合にはq[mod(i+j)]としてr[n−h−i+1]を出力し、再生クロックの時刻m+1において記録クロック時刻がn+2である場合にはq[mod(i+j−1)]としてr[n−h−i+2]を出力するよう信号配列を変換する。なお整数hは、記録データ1を再生クロック23に同期化する処理に伴う遅延時間を表している。
【0034】
上記の配列を変更することによる効果を、さらにわかりやすくするため図11を用いて説明する。図11において、波形aは記録系から再生系へ漏れ込むクロストーク妨害の信号をFFTなどにより、計算して求めたインパルス応答である。このクロストーク妨害の信号を再生系でディジタル的にサンプルするため、検出点で影響を与えるクロストーク妨害のインパルス応答も波形aを離散的にサンプルした応答となる。いま図11Aの(1−1)の×印は(1−2)で示すようなクロック位相の時に収束する各タップ係数の値である。これが、回転シリンダの回転むらなどで徐々に位相が遅れ、図11のBの(1−2)のようなクロック位相になった時、各タップ係数が収束するべきタップ係数も徐々にずれ、図11Bの(1−1)の様になる。さらに、再生クロックが徐々に遅れ、図11Cの(1−2)の位相までなると、各タップ係数は図11Cの(1−1)になる。ここで、前記の信号間でのローテーションをおこなわないで、再生クロックがさらに遅れ、記録クロックの立ち上がりエッジを超えて、図11Aの(1−2)のクロック位相になれば、収束すべきタップ係数も図11の(1−1)にもどる。このため、例えば図11Cのタップ68bの値は図11Aのタップ68bの値まで収束する必要があり、大きな誤差が発生し、一時的に生成される擬似クロストーク信号のズレが大きくなり、キャンセル動作に支障をきたす。しかし、再生クロックのエッジが記録クロックのエッジを追い越した瞬間に前記のローテーションをおこなうことにより、図11Cのタップ68のa〜cまでは図11Aのタップ68のb〜dのポジションに変わり、不連続が発生しない。唯一不連続の発生する図11Cのタップ68dは、図11Aのタップ68のaのポジションを担当することになる。しかしながら、インパルス応答の端ではその振幅が小さく、収束するための誤差も小さいため、擬似クロストーク信号のズレも小さい。このため、記録クロックと再生クロックの位相関係が変化しても良好なキャンセル動作を継続できる。
【0035】
このように適応フィルタの適応動作が収束した後は、安定したキャンセルが可能である。しかし、これだけでは前記した課題があり、記録ヘッドが切り替わったときに起こる再収束時にエラーが発生する問題がある。
【0036】
そこで、本発明おいて追加した主要素とその機能について説明する。
【0037】
100は記録クロックと、再生クロック間の位相ズレ量をディジタル的にサンプルするのに用いる位相検出クロックで記録クロックよりも高い周波数で、かつ水晶発振器等で構成された高精度のクロックである。101はクロック間位相検出回路で、記録クロック58及び再生クロック23と位相検出クロック100が入力され、58,23の両クロック間の位相ズレを位相検出クロック100によってディジタル的に検出し、そのクロック位相ズレ量102を出力する。103はタップ係数制御回路で、前記クロック位相ズレ量102と記録ヘッドスイッチ信号29が入力されており、クロック位相ズレ量102が変化した瞬間の各位相におけるタップ係数及び状態信号84の値を、先に説明したタップ係数制御バス120を介して読み出し、メモリ制御バス121を介してメモリ104に記憶する。では、図12にクロック間位相検出回路の一例を示す。図12において、58は記録クロック、23は再生クロック、100は位相検出クロック、125a〜eは入力を位相検出クロックの1周期分遅延させるDフリップフロップである。126aおよびbは125a・cと125b・dの反転とのアンドをとるアンド回路である。127は1クロック周期前の出力に1を加算するカウンタ回路で、アンド回路126aがハイレベルの時にゼロにリセットされる。128はデータホールド回路で125eの出力がハイレベルの時の129の値をホールドし102に出力する。この、クロック間位相検出回路例の動作を図13を用いて説明する。図13において、(a)は位相検出クロック100のタイムチャートであり、一例として、記録クロックの8倍の周波数とした。(b)は記録クロック58、(c)は再生クロック23、(d)は図12のアンド回路126aの出力、(e)はカウンタ127の出力129、(f)は125eの出力、(g)はデータホールド回路128の出力102を示している。図13をみると、記録クロックに対し再生クロックが徐々に遅れていることが分かる。そしてデータホールド回路がホールドする値も1から2へと変化している。位相検出クロック100が記録クロックに対し8倍の周波数としたので、このクロック間位相検出回路の例では8つの位相ズレ量を検出できる。すなわち、タップ係数制御回路103は8つの位相ズレ量に応じて、各タップごとに8種のタップ係数を適応フィルタからタップ係数制御バスを介して読み出し、メモリ104に記憶する。そして、さらに、タップ係数制御回路103では、記録ヘッドスイッチ信号29のエッジから記録フォーマットにより規定された所定の時間遅れた記録開始時点で、前記クロック位相ズレ量102の値に応じて、以前に記憶したもっとも適当なタップ係数をメモリ104から読み出し、タップ係数制御バス120を介して、適応フィルタの各タップに設定する。これにより、記録ヘッドが切り替わることによって発生する適応フィルタの再収束動作は、前記の設定される最適なタップ係数を初期値として開始される。
【0038】
図14にその動作の概略を示した。図14において、(a)は図19でも示したように図3の20での検出信号の様子である。また、68bは適応フィルタのタップである積分回路68bの値の変化を示している。(b)はそのときの位相ズレ量102の変化である。この図で分かるように、p2時点で位相ズレ量102の値が1であることから、それより以前で位相ズレ量が0から1へ変化したときに記憶したタップ係数を読み出し、p2時点に設定している。これにより、各タップは収束すべきタップ係数にもっとも近い値を初期値として、収束動作を開始することが可能となり、検出信号の乱れもわずかに押さえることができている。
【0039】
(実施の形態2)
以下、本発明の記録再生装置の実施の形態2である磁気記録再生装置について説明する。前記第1の実施の形態の説明でわかるが、実施の形態1の構成では記録クロックと再生クロックとの位相差を8倍の周波数でサンプルし、それに応じたタップ係数を記憶・設定するため、極めて精度良く再収束動作を開始できる。しかし、タップ係数を記憶するメモリ回路のレジスタ数は各タップのビット数とタップ数と位相ズレ量の種類数とヘッドの数の積であたえられることになり、回路規模が極めて多くなる。
【0040】
本発明の第2の実施の形態では、この回路規模の問題を大幅に改善するとともに、第1の実施の形態と同様な性能を確保するものである。
【0041】
以下に、図を参照しながら第2の実施の形態について説明する。図15は第2の実施の形態におけるブロック図であり、第1の実施の形態の構成である図3のクロック間位相検出回路101以外は構成が同じである。図15でクロック間位相検出回路101の替わりに第2のクロック位相変化検出回路85’が追加されている。図16は、その第2のクロック位相変化検出回路85’の一例を示している。図16を見てわかるが、78’、79a’、80a’、80b’、82a’、82b’、83a’、83b’、81’は、図6におけるクロック位相変化検出回路85と同じで、動作・機能とも等しい。ただ、4分周回路78’及びDフリップフロップ79a’に入力されるクロックは記録クロック58を反転回路131で反転した反転記録クロック58’になっている。これにより、第2のクロック位相変化検出回路85’は記録クロック58のたち下がりエッジを再生クロックの立ち上がりエッジが追い越すまたは追い越されたことを検出し、図9の状態遷移図に従ってクロック間の位相変化を状態設定回路81’から状態信号84’として出力する。また、Dフリップフロップ132にはクロックとして再生クロック23が入力され、データとして記録クロック58が入力されており、再生クロックの立ち上がりエッジが記録クロックの前半にあるか後半にあるかを検出し、半周期検出信号133を出力する。この信号133と84’をまとめ、信号バス130としタップ係数制御回路103に出力している。図15における信号バス130が、それである。図17に第2のクロック位相変化検出回路85’と適応フィルタ25内に含まれるクロック位相変化検出回路85の動作について信号タイムチャートによって示した。図17において、信号58は記録クロック58で、信号58’は反転記録クロック58’で、信号23は再生クロック23で、信号84は状態設定回路81の出力である状態信号84で、信号84’は状態設定回路81’の出力である状態信号84’で、信号133は半周器検出信号133である。記録クロック58及び反転記録クロック58’に対し、再生クロック23が徐々に遅れていく様子が示されており、再生クロック23の立ち上がりエッジが記録クロック58の立ち上がりエッジを超えたときに信号84は0から1へ変化している。また、再生クロック23の立ち上がりエッジが反転記録クロック58’の立ち上がりエッジを超えたときに信号84’は0から1へ変化している。さらに、記録クロック58のハイレベルの期間に再生クロックの立ち上がりエッジがあるとき、信号133はハイレベルになり、逆の時はローレベルになっている。これらの信号84、84’、133はタップ係数制御回路103に入力されている。タップ係数制御回路103では図17の信号84及び84’の色塗りしたX1、X2の時点を識別し、その時の各タップ係数を読み出し、それぞれをメモり回路104に記憶する。図17のX1時点とは、図11における(C)から(A)に変化した点に相当し、その時記憶するタップ係数は図11(A)の(1−1)のタップ係数の値となる。このタップ係数の値を第1タップ係数とする。また、同様にX2時点とは、図11における(A)から(B)に変化した点に相当し、その時記憶するタップ係数は図11(B)の(1−1)のタップ係数の値となる。このタップ係数の値を第2タップ係数とする。
【0042】
次にメモリ回路104からタップ係数を読み出し、適応フィルタのタップ係数として設定する動作について説明する。これまでで説明したように図14のp2で記録ヘッドが切り替わり適応フィルタの再収束動作が開始される。タップ係数制御回路103は、この時点での半周器検出信号133の状態がハイレベルであれば、第1のタップ係数の68aと第2のタップ係数の68aとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68aの値として設定し、第1のタップ係数の68bと第2のタップ係数の68bとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68bの値として設定し、第1のタップ係数の68cと第2のタップ係数の68cとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68cの値として設定し、第1のタップ係数の68dと第2のタップ係数の68dとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68dの値として設定する。すなわち、図11における(A)から(B)への変化時の平均のタップ係数を設定する。さらに同様に、半周器検出信号133の状態がローレベルであれば、第1のタップ係数の68bと第2のタップ係数の68aとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68aの値として設定し、第1のタップ係数の68cと第2のタップ係数の68bとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68bの値として設定し、第1のタップ係数の68dと第2のタップ係数の68cとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68cの値として設定し、第1のタップ係数の68aと第2のタップ係数の68dとの和の1/2を適応フィルタ25の積分回路68dの値として設定する。すなわち、図11における(B)から(C)への変化時の平均のタップ係数を設定する。
【0043】
上記のように適応フィルタのタップ係数を設定したときの動作を図18で説明する。図18において、(a)は図19でも示したように図15の20での検出信号の様子である。また、68bは適応フィルタのタップである積分回路68bの値の変化を示している。(b)はそのときの半周器検出信号133の変化である。いま、タップ係数制御回路103は半周器検出信号133のはじめの立ち上がりで第1のタップ係数を記憶し、たち下がりで第2のタップ係数を記憶する。そして、p2の時点で双方のタップ係数を読み出し、先に説明した方式によりタップの平均値を算出し、適応フィルタの各積分回路に初期タップ係数として設定する。これによりタップ係数の値が大きいタップではゼロから再収束をおこなうよりも半分の値で済むことになり、図21の(f)で示したものより、検出点での乱れが改善していることがわかる。しかし、前記第1の実施の形態で示したものよりも設定するタップ係数の精度が悪いため、図14で示した検出波形と比べると劣化が大きい。そこで、タップ係数制御回路103から図4の112を介して、p2の時点から所定の時間、係数回路69で乗算する値を通常時より大きな所定の値αに変更する。これによりp2の時点から所定の期間は通常より高速に収束動作がおこなわれる高速収束モードとなる。このときの様子を図19に示した。図19において、(b)は信号112で、p2時点から所定の時間ハイレベルとなり高速収束モードになっている。図19であきらかなようにp2での検出点での乱れは解消され、第1の実施の形態と同程度の性能が確保されていることがわかる。
【0044】
以上のように、第2の実施の形態では記録クロックの立ち上がりエッジとたち下がりエッジを再生クロックの立ち上がりエッジが追い越すまたは追い越された時点のタップ係数を記憶し、記録ヘッドが切り替わったときに起こる適応フィルタの再収束時に、前記記憶したタップ係数から、その時点での平均のタップ係数を算出し設定することともに、再収束開始から所定の期間、適応フィルタの収束を高速モードにすることで、第1の実施の形態とほぼ同性能のキャンセル動作を確保できる。さらに、記憶するタップ係数の種類が大幅に削減できることから、回路規模を大きく向上するとともに、記録クロックよりも高い周波数を必要としないため、回路動作全体の高レート化とともに、より実現しやすい構成となる。
【0045】
なお、第1及び第2の実施の形態において、便宜上p2で設定するタップ係数の元となるタップ係数を直前の別の記録ヘッドが動作しているときに記憶したものを用いる説明をおこなった。しかし、記録系から漏れ込むクロストークの特性はヘッド毎に異なるため、本来は1周期前に記憶したタップ係数を用いて設定することが望ましい。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、回転シリンダ部を大幅に小さくした小型の放送局用VTRなどのように、電磁的に記録信号と再生信号間の十分な分離が困難な装置であっても、再生信号に混入する記録信号のクロストーク成分を低減した同時再生機能を実現できる。また、本発明によれば、適応フィルタを用いて適応的にクロストーク成分を低減することにより、回転シリンダの回転位相に応じてクロストークの状態が変化したり、ヘッドや電気部品の温度変化や経時変化による特性変化によってクロストークの状態が変わっても、常に最良の状態で同時再生が可能となる。さらに、回転シリンダの回転むらなどにより記録クロックと再生クロックとの位相が順次変化していても、記録ヘッドが切り替わることによる適応フィルタの再収束動作開始時に最適なタップ係数を初期値として設定することが可能で、安定かつスムーズにクロストークのキャンセル動作を継続することができ、極めて良好な同時再生が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置の回転シリンダ上のヘッド配置を示す概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における磁気テープ上の記録トラックと磁気ヘッドとの位置関係を示す図
【図3】本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置における信号系統を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における適応フィルタの構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における積分回路の構成を示すブロック図
【図6】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の構成を示すブロック図
【図7】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の動作を説明するタイミング図
【図8】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の動作を説明するタイミング図
【図9】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の動作を説明する状態遷移図
【図10】本発明の実施の形態1および2の磁気記録再生装置における記録信号配列回路の動作を説明するタイミング図
【図11】本発明の実施の形態1および2のにおけるクロストーク信号のインパルス応答に対する適応フィルタのタップ係数の変化を示す説明図
【図12】本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置におけるクロック間位相検出回路の1具体例の構成を示すブロック図
【図13】本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置におけるクロック間位相検出回路の動作を説明するタイミング図
【図14】本発明の実施の形態1の磁気記録再生装置における検出点での信号の改善効果を説明する説明図
【図15】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における信号系統を示すブロック図
【図16】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における第2のクロック位相変化検出回路の1具体例の構成を示すブロック図
【図17】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における第2のクロック位相変化検出回路の動作を説明するタイミング図
【図18】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における検出点での信号での第1の改善効果を説明する説明図
【図19】本発明の実施の形態2の磁気記録再生装置における検出点での信号での第2の改善効果を説明する説明図
【図20】従来例における信号系統を示すブロック図
【図21】従来例の課題を説明する説明図
【符号の説明】
4 第1の記録ヘッド
5 第1の再生ヘッド
8 減算回路
9 等化回路
14 第2の記録ヘッド
15 第2の再生ヘッド
22 クロック再生回路
25 適応フィルタ
26 疑似クロストーク信号
27 誤差検出回路
28 誤差信号
100 位相検出クロック
101 クロック間位相検出回路
103 タップ係数制御回路
104 メモリ回路
85’ 第2のクロック位相変化検出回路
Claims (3)
- 記録データを磁気記録媒体に記録する記録ヘッドと、
記録された信号を再生する再生ヘッドと、
前記記録データを入力とする適応フィルタと、
前記再生ヘッドにより再生された再生信号から前記適応フィルタの出力を減算する減算手段と、前記演算手段の出力信号から誤差信号を検出して前記適応フィルタに帰還する誤差検出手段と、
再生信号から再生データに同期した再生クロックを発生する再生クロック発生手段とを備え、
前記適応フィルタが、記録データ列から連続するK個(Kは自然数)の記録データを前記再生クロックに同期して第1のデータ群として出力し、前記記録データ列から他の連続するK個の記録データを前記再生クロックに同期して第2のデータ群として出力する信号配列手段と、
前記第2のデータ群のK個のデータを一方の入力とし、前記誤差信号を他方の入力とするK個の乗算手段からなる第1の乗算手段群と、
前記第1の乗算手段群のK個の乗算手段の出力信号をそれぞれ積分するK個の積分手段と、
前記第1のデータ群のK個の出力を一方の入力とし、前記K個の積分手段のそれぞれの出力を他方の入力とするK個の乗算手段からなる第2の乗算手段群と、
前記第2の乗算手段群のK個の乗算手段の出力の総和を得て適応フィルタの出力とする演算手段と、
前記記録データに同期した記録クロックと前記再生クロックとの位相関係を検出するクロック間位相検出手段と、
前記クロック間位相検出手段が出力する位相関係ごとに、前記適応フィルタのそれぞれの積分手段の値をタップ係数とし記憶するクロック位相別タップ係数記憶手段と、
前記適応フィルタが適応動作を開始するときに得られるクロック間位相検出手段の検出値と等しいまたは最も近い値で以前に記憶したタップ係数を読み出し、前記適応フィルタのタップ係数として設定するタップ係数制御手段とを備えた記録動作と同時に再生を行う記録再生装置。 - 前記適応フィルタの演算手段が、第2の乗算手段群のK個の乗算手段の出力の総和に所定の収束係数を乗じて適応フィルタの出力とする演算手段であって、
前記適応フィルタがおこなう適応動作の開始時点から所定の期間を収束初期期間とし、それ以降を通常期間としたとき、
前記収束係数を収束初期期間内はaとし、通常期間をbとしてa>b(a,b>0)となるように設定する収束係数制御手段を具備した請求項1記載の記録再生装置。 - 前記クロック間位相検出手段の検出信号に基づき、再生クロックの立ち上がりエッジが、記録クロックの立ち上がりエッジを追い越すまたは追い越された瞬間を検出し、第1のタイミング信号を出力する第1タイミング検出手段と、
再生クロックの立ち上がりエッジが、記録クロックの立ち下がりエッジを追い越すまたは追い越された瞬間を検出し、第2のタイミング信号を出力する第2タイミング検出手段と、
前記第1のタイミングで前記適応フィルタの第1のタップ係数を記憶する第1のタップ係数記憶手段と、
前記第2のタイミングで第2のタップ係数を記録する第2のタップ係数記憶手段と、
前記適応フィルタが適応動作を開始する時点のクロック間位相検出手段の出力に基づき、以前に記憶した前記第1のタップ係数及び第2のタップ係数より、最適なタップ係数を演算する最適タップ係数演算手段と、
前記適応フィルタが適応動作を開始するときに前記最適タップ係数演算手段で求めたタップ係数でもって、前記適応フィルタのタップ係数を設定するタップ係数制御手段とを備えた請求項1及び2の記録再生装置。
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Cited By (1)
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JP2010032328A (ja) * | 2008-07-28 | 2010-02-12 | Panasonic Electric Works Co Ltd | 超音波センサ |
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2003
- 2003-02-24 JP JP2003045620A patent/JP2004259311A/ja not_active Withdrawn
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