JP2004258697A - 歯車列の動力伝達解析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】歯車列のトルク伝達特性の解析をきわめて効率良く行うことができる動力伝達解析方法を提供する。
【解決手段】複数の歯車軸を有する歯車列と、歯車軸を軸受部で支持して歯車列を収納するケースと、を備える動力伝達機構の動力伝達解析方法において、歯車列とケースとを分離し(分離工程:S1)、歯車列のメッシュモデルと、ケースのメッシュモデルと、を別々に構築する(モデル構築工程:S2)。そして、歯車列の歯車軸の支持位置を与えた上で、所定の入力トルクに対応する歯車軸の支持位置の荷重を算出し(荷重算出工程:S3)、この算出した荷重をケースの軸受部に入力して、軸受部の変形後の位置を算出する(位置算出工程:S4)。その後、ケースの各軸受部の位置と、歯車列の各歯車軸の支持位置と、を一致させて荷重の受け渡しを行いつつ、歯車列の伝達特性解析及びケースの変形解析を行う。
【選択図】 図1
【解決手段】複数の歯車軸を有する歯車列と、歯車軸を軸受部で支持して歯車列を収納するケースと、を備える動力伝達機構の動力伝達解析方法において、歯車列とケースとを分離し(分離工程:S1)、歯車列のメッシュモデルと、ケースのメッシュモデルと、を別々に構築する(モデル構築工程:S2)。そして、歯車列の歯車軸の支持位置を与えた上で、所定の入力トルクに対応する歯車軸の支持位置の荷重を算出し(荷重算出工程:S3)、この算出した荷重をケースの軸受部に入力して、軸受部の変形後の位置を算出する(位置算出工程:S4)。その後、ケースの各軸受部の位置と、歯車列の各歯車軸の支持位置と、を一致させて荷重の受け渡しを行いつつ、歯車列の伝達特性解析及びケースの変形解析を行う。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力伝達解析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原動機の動力(トルク)を、自動車の駆動輪や回転翼航空機の回転翼に伝達するために、歯車列を利用した動力伝達機構が実用化されている。かかる歯車列は、入力用歯車軸に入力されたトルクを、出力用歯車軸に所定の態様で伝達するものであり、所定のケースに収納される。そして、歯車列を構成する歯車軸は、ケースに設けられた軸受部に軸受を介して支持される。
【0003】
入力用歯車軸から出力用歯車軸へと大きい動力を直接的に伝達しようとすると、歯車の強度確保のために歯車を大型化する必要があるとともに、大きい荷重が歯車軸及びケースの軸受部に作用してこれら歯車軸及び軸受部が変形することを考慮して、歯車軸及び軸受部を大型化(又は補強)する必要がある。この結果、動力伝達機構全体が大型化する。
【0004】
かかる動力伝達機構の大型化を回避するために、近年においては、入力用歯車軸と出力用歯車軸との間に複数の分配用歯車軸を介在させ、入力用歯車軸に入力された大きい動力を分配用歯車軸によって複数のルートに分散させて出力用歯車軸に伝達する機構が採用されている。
【0005】
このように、入力用歯車軸に入力された動力を複数の分配用歯車軸に分配して伝達するような場合には、各分配用歯車軸やケースの軸受部に作用する荷重が不均一となり、分配用歯車軸間で強度に差異が生じる場合がある。かかる場合には、分配用歯車軸やケースの一部が変形・破壊されることがある。
【0006】
このため、複数の分配用歯車軸にトルクを等分配するなど「最適なトルク分配」を達成する目的で、歯車列のトルク伝達特性を解析する手法が種々提案されている。例えば、トルクが入力される第1軸に設けられた歯車の歯と、トルクが伝達される第2軸に設けられた歯車の歯と、の位置関係等から所定の数式を構築することにより、歯車列のトルク伝達特性を解析する手法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
また、トルク伝達特性の解析に直接的な関連性はないが、歯車列のような歯車機構系をモデル化して、駆動軸の動作に対する被駆動軸の動的挙動を解析する歯車設計支援方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−256265号公報(第1頁、第2図)
【非特許文献1】
Timothy L Krantz,「A Method to Analyze and Optimize the Load Sharing of Split Path Transmission」, NASA TM−107201,1996年 11月29日,ARL−TR−1066,p.2−11
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、非特許文献1に記載の手法を採用すると、解析にきわめて時間がかかり、最適なトルク分配を達成するために多大な労力を要することに加え、不具合の改善を目的とした設計変更に迅速に対応することができないという問題がある。一方、特許文献1に記載の方法によると、歯車列の歯形状の設計を支援することはできるが、歯車列のトルク伝達特性の解析を直接的に支援することはできない。
【0010】
本発明の課題は、歯車列のトルク伝達特性の解析をきわめて効率良く行うことができる動力伝達解析方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の歯車軸を有する歯車列と、前記歯車軸を軸受部で支持して前記歯車列を収納するケースと、を備える動力伝達機構の動力伝達解析方法において、前記歯車列を前記ケースから分離する分離工程と、前記歯車列及び前記ケースのメッシュモデルを構築するモデル構築工程と、前記歯車列のメッシュモデルにおいて、各歯車軸の支持位置を与えて前記歯車列に所定のトルクを入力し、各歯車軸の支持位置の荷重を算出する荷重算出工程と、前記ケースのメッシュモデルにおいて、前記軸受部に前記荷重を入力し、前記軸受部の変形後の位置を算出する位置算出工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、歯車列をケースから分離した上で歯車列及びケースのメッシュモデルを構築し、歯車列の各歯車軸の支持位置を与えて歯車列に所定のトルクを入力し、各歯車軸の支持位置の荷重を算出する。次いで、この算出した荷重をケースの各軸受部に入力し、軸受部の変形後の位置を算出する。
【0013】
すなわち、歯車列の荷重とケースの変形とを別々に計算するので、比較的容量の少ないコンピュータを用いて所望の解析結果を算出することができる。従って、大容量の大型コンピュータほど利用機会が限定される現在において、きわめて効率的に解析を進めることができる。また、歯車列とケースとの個別解析を実施することにより、歯車列又はケースのいずれかに不適切な設計箇所があった場合に、その箇所の発見及び修正を迅速に行うことが可能となる。
【0014】
また、歯車列及びケースのメッシュモデルを利用して、歯車列のトルク伝達特性の解析と、ケース変形の解析と、を組み合わせた解析を行うので、歯車列のトルク伝達特性を、試作品を製作することなく視覚的に予測することができる。従って、トルク伝達特性の確認に要する時間を大幅に短縮することができる。また、不具合の改善を目的とした設計変更に迅速に対応することができる。さらに、試作品を製作するコストを削減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の動力伝達解析方法において、前記位置算出工程で算出された前記軸受部の位置を前記歯車軸の支持位置として前記荷重算出工程を実施することにより前記歯車軸の支持位置の更新荷重を算出し、算出された前記更新荷重を用いて前記位置算出工程を実施することにより前記軸受部の変形後の更新位置を算出し、算出された前記更新位置と前記位置算出工程で算出した前記軸受部の位置とから変位を算出し、算出された前記変位を所定値と比較し、前記変位が前記所定値以下の場合に、荷重及び位置の算出を終了する一方、前記変位が前記所定値を超えている場合に、前記更新位置を前記歯車軸の支持位置として前記荷重算出工程を実施することにより前記歯車軸の支持位置の新たな更新荷重を算出し、算出された新たな更新荷重を用いて前記位置算出工程を実施することにより前記軸受部の変形後の新たな更新位置を算出し、算出された新たな更新位置と前回の更新位置とから更新変位を算出し、算出された前記更新変位を前記所定値と比較することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、歯車列のメッシュモデルにおいて、位置算出工程で算出したケースの軸受部の変形後の位置を、各歯車軸の支持位置として与えた上で、各歯車軸の支持位置の更新荷重を算出する。次いで、ケースのメッシュモデルにおいて、算出した更新荷重を各軸受部に入力して、ケースの軸受部の変形後の更新位置を算出する。続いて、かかる更新位置と、位置算出工程で算出した位置と、から変位を算出し、算出した変位が所定値以下である場合に、荷重及び位置の算出を終了する。
【0017】
一方、算出した変位が所定値を超えている場合に、更新位置を用いて、歯車軸の支持位置の新たな更新荷重を算出し、算出された新たな更新荷重を用いて、ケースの軸受部の変形後の新たな更新位置を算出する。そして、算出された新たな更新位置と、前回の更新位置と、から更新変位を算出し、算出した更新変位を再び所定値と比較する。
【0018】
すなわち、ケースの軸受部の変位が所定の範囲に収まるまで荷重算出工程及び位置算出工程を繰り返すため、歯車列の荷重とケースの変形とを分離した計算においても、十分に正確な解析結果を算出することができる。また、ケース変形の収束と、歯車列のトルク伝達特性と、の関連性を予測することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の動力伝達解析方法において、前記歯車列は、入力用歯車軸に入力された動力を複数の分配用歯車軸に分配して出力用歯車軸に伝達するものであって、前記分配用歯車軸の軸径を変更して前記分離工程、前記荷重算出工程及び前記位置算出工程を実施し、これら工程を実施した結果から前記分配用歯車軸のトルク分配比を算出するとともに、前記トルク分配比が予め設定した値になる各歯車軸の軸径を算出する歯車軸の解析工程をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本発明の実施の形態に係る動力伝達解析方法を、図1から図8を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る動力伝達解析方法を説明するためのフローチャートである。なお、本実施の形態では、入力用の歯車軸に入力されたトルクが2本のトルク分配用の歯車軸に分配されて伝達される機構において、適切な分配比を与える歯車軸の形状を算出することを目的としている。
【0022】
まず、任意の軸径と肉厚で歯車列及びケースを設計し(パラメータ設定工程:S10)、歯車列とケースとを分離した状態で(分離工程:S1)、各々についての三次元形状メッシュモデルを構築する(モデル構築工程:S2)。この際、歯車列の歯車軸毎に分離してメッシュモデルを作成し、これらを組み合わせて歯車列のメッシュモデルとする。図2は、歯車列Tのメッシュモデルを示す図であり、図3は、ケースCのメッシュモデルを示す図である。なお、パラメータ設定工程S10については、図7及び図8を用いて後述する。
【0023】
歯車列Tは、図2に示すように、左右に配置された2本の入力用歯車軸(以下、「入力軸」という)S1と、これら入力軸S1の各々の近傍に配置された2本1組のトルク分配用歯車軸(以下、「分配軸」という)S2と、分配軸S2を介して入力軸S1からのトルクが伝達される1本の出力用歯車軸(以下、「出力軸」という)S3と、を備えている。
【0024】
また、歯車列Tを収納するケースCは、図3に示すように、入力軸S1を支持する第1軸受部B1と、分配軸S2を支持する第2軸受部B2と、出力軸S3を支持する第3軸受部B3と、を有している。
【0025】
歯車列Tの入力軸S1の上下2箇所には歯車G1が設けられており、分配軸S2の上方2箇所及び下方1箇所には、各々、小径及び大径の歯車G2が設けられている。そして、入力軸S1の下方の歯車G1と一方の分配軸S2の大径の歯車G2とが噛み合い、入力軸S1の上方の歯車G1と他方の分配軸S2の大径の歯車G2とが噛み合っているため、入力軸S1に入力されたトルクは、2本の分配軸S2に分配されて伝達される。また、歯車列Tの出力軸S3の周囲には、上下2箇所に歯が設けられた大径の歯車G3が設けられている。そして、各分配軸S2の小径の歯車G2と出力軸S3の大径の歯車G3とが噛み合っているため、分配軸S2に伝達されたトルクは、最終的に出力軸S3に伝達されることとなる。
【0026】
また、歯車列Tの各歯車の相互位置が適切であり、かつ、歯車列Tが軸受を介してケースCに収納されることを確認するために、歯車列TとケースCとを組み合わせる。図4は、歯車列Tの三次元形状モデル(実線)と、ケースCの三次元形状モデル(二点鎖線)と、を組み合わせた状態を示したものである。
【0027】
歯車列TとケースCとが正確に組み合わせられることが確認できたら、再び歯車列TとケースCとを分離する。そして、ケースCの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)の中心位置を固定し、歯車列Tの出力軸S3を回転しないように固定して、有限要素法により、歯車列Tのメッシュモデルの入力軸S1に所定のトルクを入力した場合における、各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置に作用する荷重を算出する(荷重算出工程:S3)。
【0028】
荷重算出工程S3においては、各歯車軸の支持は単純支持であり、与えられた支持位置(ケースCの各軸受部の中心位置)は算出中に変化しないものとする。また、最初の算出の際には、歯車列Tのメッシュモデルの各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置の変位をゼロと仮定して、各歯車軸の支持位置に作用する荷重を算出する。
【0029】
次いで、有限要素法により、ケースCの各軸受部の変形後の中心位置を算出する(位置算出工程:S4)。この際には、荷重算出工程S3で算出した荷重が、ケースCのメッシュモデルの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)に作用するものと仮定して、ケースCの変形を算出する。また、荷重は、ケースの軸受部に、荷重の向きに等分布状態で入力させ、ケースのマウント位置が変形しないものと仮定する。
【0030】
次いで、この位置算出工程S4で算出されたケースCの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)の変形後の中心位置を、各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の新たな支持位置として与えて、有限要素法により、歯車列Tのメッシュモデルの入力軸S1に所定のトルクを入力した場合における、各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置に作用する荷重(更新荷重)を算出する(更新荷重算出工程:S5)。
【0031】
なお、本実施の形態においては、荷重算出工程S3及び更新荷重算出工程S5において荷重を算出する際には、有限要素法プログラム内の接触解析機能を用いて接触解析を行う。かかる接触解析について具体的に説明する。
【0032】
本実施の形態においては、噛み合わせを忠実に再現するために各歯車(歯車G1、歯車G2及び歯車G3)の歯部のメッシュモデルを構築しており、要素(メッシュ)数低減のために、噛み合っている歯部の前後1〜2枚以外は省略することとしている。そして、歯部の歯面のトルク伝達を模擬するため、接触すると相互に荷重が作用する「接触判定範囲」を歯面に設定して、歯部同士があたかも噛み合っているようなモデルを構築する。
【0033】
図5は、各歯車の歯部Hの歯面Hs近傍に設定された接触判定範囲Aを説明するための説明図である。接触判定範囲Aとは、歯面Hs同士の接触を判定する範囲、すなわち、一の歯面Hsと他の歯面Hsとの間に相互に反力が作用する範囲である。接触判定範囲Aの大きさは任意に設定することができるが、ゼロと設定すると、計算誤差により、歯面Hs同士が接触したものとみなされず歯面Hs同士が貫通してしまい、トルク伝達が正確に行われない場合がある(図6(a)参照)。
【0034】
このため、本実施の形態においては、トルク伝達に与える影響が少ない範囲内(例えば±0.02mm)で、接触判定範囲Aを設定し、一の歯面Hsに他の歯面Hsが近接して接触判定範囲Aに入った場合に、反力を作用させることとしている(図6(b)参照)。なお、本実施の形態においては、歯面Hsの接触判定を正確に行うために、高精度の結果が算出される8点積分法を採用している。
【0035】
また、接触解析の初期においては、歯車列Tの各歯車(歯車G1、歯車G2及び歯車G3)の歯部Hは任意の位置で作成されるので、多数ある歯部Hの歯面Hs同士を確実に接触させるための調整が必要となる。このため、まず、歯面Hsが所定範囲(歯面Hs同士が貫通しない範囲)に入るように各歯車(歯車G1、歯車G2及び歯車G3)を回転させ、各歯面Hsを調整する。そして、有限要素法プログラム内にある初期の接触状態を確認する機能を用いて、歯面Hsが貫通している箇所を検出し、トルク伝達への影響が少ない範囲内でその箇所のモデル形状を修正して、正確にトルクを伝達するモデルを作成し、トルク伝達特性の解析を実行するようにする。
【0036】
更新荷重算出工程S5において、各歯車軸の支持位置に作用する更新荷重を算出した後、この更新荷重を用いて、ケースCの各軸受部の変形後の中心位置(更新位置)を再び算出する(更新位置算出工程:S6)。この際には、更新荷重算出工程S5で算出した更新荷重が、ケースCのメッシュモデルの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)に作用するものと仮定して、ケースCの変形を算出する。
【0037】
次いで、更新位置算出工程S6で算出したケースCの各軸受部の中心位置(更新位置)と、位置算出工程S4で算出したケースCの各軸受部の中心位置と、を用いて、各軸受部の中心位置の変化量(すなわち変位)を算出する。そして、算出した変位が所定値以下であるか否かを判定する(変位判定工程:S7)。なお、この変位判定工程S7の判定においては、変位の大きさ(絶対値)のみが用いられるが、計算結果が正しいことを確認するために、各軸受部の中心位置の変位方向をも確認する。
【0038】
変位判定工程S7において、算出された変位が所定値より大きいと判定された場合には、更新荷重算出工程S5に戻り、前記した更新位置算出工程S6で算出したケースCの各軸受部の中心位置を用いて、歯車列Tのメッシュモデルの入力軸S1に所定のトルクを入力して、各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置に作用する新たな更新荷重を算出する。この後、算出された新たな更新荷重を用いて更新変位算出工程S6を実施してケースCの各軸受部の新たな更新位置を算出し、変位判定工程S7に戻る。
【0039】
一方、変位判定工程S7において、算出された変位が所定値以下であると判定された場合には、入力軸S1から出力軸S3に駆動力を伝達する2本の分配軸S2のトルク分配比を算出し、このトルク分配比が所定範囲内にあるか否かを判定する(トルク分配比判定工程:S8)。
【0040】
トルク分配比判定工程S8において、トルク分配比が所定範囲内にない場合には、パラメータ設定工程S10に戻って分配軸S2の軸径を再設定した上で、分離工程S1以降の各工程を実施する。そして、これら各工程(分離工程S1〜トルク分配比判定工程S8)を、2本の分配軸S2の軸径を変化させて所定回数繰り返し、必要なトルク分配比が得られるような分配軸S2の軸径を求める。なお、分配軸S2の軸径を求める方法については、図7及び図8を用いて後述する。
【0041】
分配軸S2の軸径を求めた後、2本の分配軸S2のトルク分配が適切であることを確認するために、分離工程S1からトルク分配比判定工程S8までの工程を再度実施する。この結果、トルク分配比判定工程S8においてトルク分配比が依然として所定範囲内にないと判定された場合には、さらに分配軸S2の軸径の調整を行う。一方、トルク分配比判定工程S8においてトルク分配比が所定範囲内にあると判定された場合には、算出結果を出力して解析を終了する(出力工程:S9)。
【0042】
図6は、前記各工程を経て求められた分配軸S2のトルク伝達の様子を、出力を経時変化させて確認したものである。図6のグラフは、縦軸にトルク(N・m)を、横軸に時間(s)を、各々とっており、2本の分配軸S2に伝達される各トルクの伝達開始時点から約0.1秒経過時点までの時間履歴を示している。なお、本実施の形態においては、2本の分配軸S2のうち、入力軸S1の下方の歯車G1と噛み合う方を「長軸」と称し、入力軸S1の上方の歯車G1と噛み合う方を「短軸」と称している。
【0043】
次に、分配軸S2のトルク分配比を所定範囲内に収めるために、分配軸S2の軸径を変更する方法について、図7及び図8を用いて具体的に説明する。図7は、分配軸S2の軸径を変更する方法を説明するためのフローチャートである。
【0044】
まず、歯車列Tの歯車軸の軸径や位置、ケースCの肉厚、歯車列T及びケースCの材質や細部形状、等の各種パラメータを入力する(パラメータ設定工程:S10)。本実施の形態の初期においては、歯車列Tの分配軸S2の長軸の内径を41.5mmと設定し、短軸の内径を43.5mmと設定している。
【0045】
次いで、歯車列T及びケースCの三次元形状モデルについて各々メッシュモデルを構築し、これらメッシュモデルを正規の位置に配置して組み合わせる。これは、歯車同士の位置関係や、歯車とケースとの位置関係を確認し、必要な場合は微調整を行って解析をスムースに行うために実施するものであり、CRTに表示して行われる。
【0046】
歯車の位置が適切であることを確認すると、歯車同士の位置関係を固定して、歯車列とケースとを分離し、歯車列T及びケースCのメッシュモデルを利用して、歯車列Tのメッシュモデルの分配軸S2全体に伝達されるトルクのうち長軸側に伝達されるトルクの割合(以下、「長軸トルク分配比」という)を算出し、算出結果を出力する(トルク分配出力工程:S20)。なお、トルク分配出力工程S20は、前記した分離工程S1〜変位判定工程S7の工程群を順次実施する工程である。
【0047】
図8は、トルク分配出力工程S20における算出結果をプロットしたグラフである。図8のグラフは、長軸トルク分配比(%)を縦軸にとり、捩り剛性比(分配軸S2の長軸と短軸の断面2次極モーメントの比)を横軸にとっている。
【0048】
本実施の形態の初期においては、歯車列Tの分配軸S2の長軸の歯車以外の部分の外径を58mm、内径を41.5mmと設定し、短軸の歯車以外の部分の外径を58mm、内径を43.5mmと設定しており、捩り剛性比は1.07である。一方、トルク分配出力工程S20により、長軸トルク分配比が53.8%と算出される。図8の点P1は、かかる算出結果をプロットしたものである。なお、入力トルクは、前記した歯車軸荷重やケース変形の算出に用いた値である。
【0049】
次いで、トルク分配出力工程S20で算出した長軸トルク分配比が所定値に達しているか否かを判定する(トルク分配判定工程:S8)。
【0050】
トルク分配判定工程S8において、長軸トルク分配比が所定値に達していないと判定された場合には、歯車列Tの分配軸S2の長軸の内径及び短軸の内径を所定の範囲内で変化させ、長軸トルク分配比が所定値に近付くような値を算出する(パラメータ変更工程:S30)。そして、パラメータ設定工程S10に戻り、パラメータ変更工程S30で算出された長軸の内径及び短軸の内径に係るデータを用いて、軸のパラメータ、具体的には軸の内径を(必要な場合には外径を含めて)更新(再設定)する。
【0051】
この後、トルク分配出力工程S20において、更新(再設定)したパラメータに基づいて、歯車列T及びケースCの三次元形状モデルについて各々メッシュモデルを構築し、これらメッシュモデルを利用して、再び歯車列Tのメッシュモデルの長軸トルク分配比を算出して、トルク分配判定工程S8に戻る。
【0052】
一方、トルク分配判定工程S8において、長軸トルク分配比が所定値に達していると判定された場合には、最適なトルク分配をもたらす軸形状が算出されたものとして、算出結果を出力して解析を終了する(出力工程:S9)。
【0053】
実際には、最適なトルク分配(長軸トルク分配比が所定値)に達するような軸形状を算出するのは時間がかかるため、本実施の形態においては、パラメータ設定工程S10、トルク分配出力工程S20、トルク分配判定工程S8及びパラメータ変更工程S30から構成される工程群を複数回実施して得た複数の算出結果(図8の点P1〜点P5)を用いて、軸形状の最適値を推定している。
【0054】
具体的に説明すると、図8に示される複数の算出結果(点P1〜点P5)を用いて、最小自乗法により、長軸トルク分配比と捩り剛性比との相関関係を近似的に表す直線を求める。そして、この直線と長軸トルク分配比50%の直線との交点を元に、最適なトルク分配を達成させる歯車列Tの分配軸S2の軸径(内径)を決定している(図8参照)。
【0055】
以上説明したパラメータ設定工程S10、トルク分配出力工程S20、トルク分配判定工程S8及びパラメータ変更工程S30から構成される工程群は、本発明における解析工程である。
【0056】
本実施の形態に係る動力伝達解析方法においては、歯車列TをケースCから分離した上で歯車列T及びケースCのメッシュモデルを構築し、歯車列Tの各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置を与えて歯車列Tに所定のトルクを入力し、有限要素法により各歯車軸の支持位置の荷重を算出する。次いで、この算出した荷重をケースCの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)に入力し、有限要素法により各軸受部の変形後の位置を算出する。
【0057】
すなわち、歯車列Tの荷重とケースCの変形とを別々に計算するので、比較的容量の少ないコンピュータを用いて所望の解析結果を算出することができる。従って、大容量の大型コンピュータほど利用機会が限定される現在において、きわめて効率的に解析を進めることができる。また、歯車列TとケースCとの個別解析を実施することにより、歯車列T又はケースCのいずれかに不適切な設計箇所があった場合に、その箇所の発見及び修正を迅速に行うことが可能となる。
【0058】
また、歯車列T及びケースCのメッシュモデルを利用して、歯車列のトルク伝達特性の有限要素法解析と、ケース変形の有限要素法解析と、を組み合わせた解析を行うので、歯車列のトルク伝達特性を、試作品を製作することなく視覚的に予測することができる。従って、トルク伝達特性の確認に要する時間を大幅に短縮することができる。また、不具合の改善を目的とした設計変更に迅速に対応することができる。さらに、試作品を製作するコストを削減することができる。
【0059】
また、本実施の形態に係る動力伝達解析方法においては、歯車列Tのメッシュモデルにおいて、位置算出工程S4で算出したケースCの軸受部の変形後の中心位置を、歯車列Tの各歯車軸の支持位置として与えた上で、各歯車軸の支持位置の更新荷重を算出する。次いで、ケースCのメッシュモデルにおいて、算出した更新荷重を各軸受部に入力して、ケースCの軸受部の変形後の中心位置(更新位置)を算出する。続いて、更新位置と、位置算出工程S4で算出した位置と、から変位を算出し、算出した変位が所定値以下である場合に、荷重及び位置の算出を終了する。
【0060】
一方、算出した変位が所定値を超えている場合に、更新位置を用いて、歯車軸の支持位置の新たな更新荷重を算出し、算出された新たな更新荷重を用いて、ケースの軸受部の変形後の新たな更新位置を算出する。そして、算出された新たな更新位置と、前回の更新位置と、から更新変位を算出し、算出した更新変位を再び所定値と比較する。
【0061】
すなわち、ケースCの軸受部の変位が所定の範囲に収まるまで荷重及び位置の算出を繰り返すため、歯車列Tの荷重とケースCの変形とを分離した計算においても、十分に正確な解析結果を算出することができる。また、ケース変形の収束と、歯車列のトルク伝達特性と、の関連性を予測することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る動力伝達解析方法においては、歯車列Tの各分配軸S2により伝達されるトルクの分配特性を、入力トルクを急激に経時変化させる遷移状態で解析して求めたが、こうした急激な変化でも各分配軸S2は略等しいトルクを伝えていることがわかる(図6参照)。
【0063】
また、本実施の形態に係る動力伝達解析方法においては、歯車列T及びケースCに係るパラメータを設定し、設定したパラメータを参照して歯車列T及びケースCのメッシュモデルを構築し、この構築したメッシュモデルを用いて、歯車列Tのメッシュモデルにおけるトルク分配特性(長軸トルク分配比)を出力する。そして、出力されたトルク分配特性(長軸トルク分配比)が、所定値に達しているか否かを判定し、所定値に達していないと判定された場合に、歯車列Tに係るパラメータ(軸径)を変更する。
【0064】
従って、変更したパラメータ(軸径)を用いて歯車列T及びケースCに係るパラメータ全体を更新し、更新したパラメータを参照して構築した歯車列T及びケースCのメッシュモデルを用いてトルク分配特性(長軸トルク分配比)を出力する、という工程を繰り返すことにより、最適なトルク分配を達成させる歯車列Tの分配軸S2の軸径(内径)を決定することができる。
【0065】
なお、以上の実施の形態においては、歯車列の伝達特性解析と、ケースの変形の解析と、を併せて行ったが、予め歯車列のみで伝達特性を解析して適切なトルク分配を与える分配軸の形状を決定しておき、その後にケース変形を考慮して前記した一連の解析を行うこともできる。歯車列のみで伝達特性を解析する際には、軸受部の変位をゼロと設定してもよいし、所定の値を与えてもよい。一方、予めケースのみで変形解析を行うこともできる。すなわち、ケースの軸受部に所定の荷重を与え、その荷重による軸受部の変位を所定値に収めた上で、前記した一連の解析を行ってもよい。
【0066】
【発明の効果】
本発明に係る動力伝達解析方法によれば、歯車列のメッシュモデルと、ケースのメッシュモデルと、を別々に構築し、ケースの各軸受部の位置と、歯車列の各歯車軸の支持位置と、を一致させて荷重の受け渡しを行いつつ、歯車列の伝達特性解析と、ケースの変形解析と、を行うので、歯車列とケースとを分離して解析でき、歯車列とケースとを別々に検討することができる。従って、使用するコンピュータも小型化することができるので、きわめて効率的に伝達特性を解析することができ、設計変更にも迅速に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る動力伝達解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において使用される歯車列のメッシュモデルを示す図である。
【図3】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において使用されるケースのメッシュモデルを示す図である。
【図4】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において使用される歯車列及びケースのメッシュモデルを示す図である。
【図5】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において使用される歯車列の歯車の歯面に設定された接触判定範囲を説明するための説明図である。
【図6】本実施の形態に係る動力伝達解析方法で出力されたトルク分配特性を示すグラフである。
【図7】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において、分配軸のパラメータを変更する工程を説明するためのフローチャートである。
【図8】本実施の形態に係る動力伝達解析方法のトルク分配出力工程における算出結果をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
T 歯車列
S1 入力用歯車軸
S2 分配用歯車軸
S3 出力用歯車軸
C ケース
B1 第1軸受部
B2 第2軸受部
B3 第3軸受部
S1 分離工程
S2 モデル構築工程
S3 荷重算出工程
S4 位置算出工程
S8 トルク分配判定工程(解析工程)
S10 パラメータ設定工程(解析工程)
S20 トルク分配出力工程(解析工程)
S30 パラメータ変更工程(解析工程)
【発明の属する技術分野】
本発明は、動力伝達解析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原動機の動力(トルク)を、自動車の駆動輪や回転翼航空機の回転翼に伝達するために、歯車列を利用した動力伝達機構が実用化されている。かかる歯車列は、入力用歯車軸に入力されたトルクを、出力用歯車軸に所定の態様で伝達するものであり、所定のケースに収納される。そして、歯車列を構成する歯車軸は、ケースに設けられた軸受部に軸受を介して支持される。
【0003】
入力用歯車軸から出力用歯車軸へと大きい動力を直接的に伝達しようとすると、歯車の強度確保のために歯車を大型化する必要があるとともに、大きい荷重が歯車軸及びケースの軸受部に作用してこれら歯車軸及び軸受部が変形することを考慮して、歯車軸及び軸受部を大型化(又は補強)する必要がある。この結果、動力伝達機構全体が大型化する。
【0004】
かかる動力伝達機構の大型化を回避するために、近年においては、入力用歯車軸と出力用歯車軸との間に複数の分配用歯車軸を介在させ、入力用歯車軸に入力された大きい動力を分配用歯車軸によって複数のルートに分散させて出力用歯車軸に伝達する機構が採用されている。
【0005】
このように、入力用歯車軸に入力された動力を複数の分配用歯車軸に分配して伝達するような場合には、各分配用歯車軸やケースの軸受部に作用する荷重が不均一となり、分配用歯車軸間で強度に差異が生じる場合がある。かかる場合には、分配用歯車軸やケースの一部が変形・破壊されることがある。
【0006】
このため、複数の分配用歯車軸にトルクを等分配するなど「最適なトルク分配」を達成する目的で、歯車列のトルク伝達特性を解析する手法が種々提案されている。例えば、トルクが入力される第1軸に設けられた歯車の歯と、トルクが伝達される第2軸に設けられた歯車の歯と、の位置関係等から所定の数式を構築することにより、歯車列のトルク伝達特性を解析する手法が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
また、トルク伝達特性の解析に直接的な関連性はないが、歯車列のような歯車機構系をモデル化して、駆動軸の動作に対する被駆動軸の動的挙動を解析する歯車設計支援方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特開2001−256265号公報(第1頁、第2図)
【非特許文献1】
Timothy L Krantz,「A Method to Analyze and Optimize the Load Sharing of Split Path Transmission」, NASA TM−107201,1996年 11月29日,ARL−TR−1066,p.2−11
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、非特許文献1に記載の手法を採用すると、解析にきわめて時間がかかり、最適なトルク分配を達成するために多大な労力を要することに加え、不具合の改善を目的とした設計変更に迅速に対応することができないという問題がある。一方、特許文献1に記載の方法によると、歯車列の歯形状の設計を支援することはできるが、歯車列のトルク伝達特性の解析を直接的に支援することはできない。
【0010】
本発明の課題は、歯車列のトルク伝達特性の解析をきわめて効率良く行うことができる動力伝達解析方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の歯車軸を有する歯車列と、前記歯車軸を軸受部で支持して前記歯車列を収納するケースと、を備える動力伝達機構の動力伝達解析方法において、前記歯車列を前記ケースから分離する分離工程と、前記歯車列及び前記ケースのメッシュモデルを構築するモデル構築工程と、前記歯車列のメッシュモデルにおいて、各歯車軸の支持位置を与えて前記歯車列に所定のトルクを入力し、各歯車軸の支持位置の荷重を算出する荷重算出工程と、前記ケースのメッシュモデルにおいて、前記軸受部に前記荷重を入力し、前記軸受部の変形後の位置を算出する位置算出工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、歯車列をケースから分離した上で歯車列及びケースのメッシュモデルを構築し、歯車列の各歯車軸の支持位置を与えて歯車列に所定のトルクを入力し、各歯車軸の支持位置の荷重を算出する。次いで、この算出した荷重をケースの各軸受部に入力し、軸受部の変形後の位置を算出する。
【0013】
すなわち、歯車列の荷重とケースの変形とを別々に計算するので、比較的容量の少ないコンピュータを用いて所望の解析結果を算出することができる。従って、大容量の大型コンピュータほど利用機会が限定される現在において、きわめて効率的に解析を進めることができる。また、歯車列とケースとの個別解析を実施することにより、歯車列又はケースのいずれかに不適切な設計箇所があった場合に、その箇所の発見及び修正を迅速に行うことが可能となる。
【0014】
また、歯車列及びケースのメッシュモデルを利用して、歯車列のトルク伝達特性の解析と、ケース変形の解析と、を組み合わせた解析を行うので、歯車列のトルク伝達特性を、試作品を製作することなく視覚的に予測することができる。従って、トルク伝達特性の確認に要する時間を大幅に短縮することができる。また、不具合の改善を目的とした設計変更に迅速に対応することができる。さらに、試作品を製作するコストを削減することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の動力伝達解析方法において、前記位置算出工程で算出された前記軸受部の位置を前記歯車軸の支持位置として前記荷重算出工程を実施することにより前記歯車軸の支持位置の更新荷重を算出し、算出された前記更新荷重を用いて前記位置算出工程を実施することにより前記軸受部の変形後の更新位置を算出し、算出された前記更新位置と前記位置算出工程で算出した前記軸受部の位置とから変位を算出し、算出された前記変位を所定値と比較し、前記変位が前記所定値以下の場合に、荷重及び位置の算出を終了する一方、前記変位が前記所定値を超えている場合に、前記更新位置を前記歯車軸の支持位置として前記荷重算出工程を実施することにより前記歯車軸の支持位置の新たな更新荷重を算出し、算出された新たな更新荷重を用いて前記位置算出工程を実施することにより前記軸受部の変形後の新たな更新位置を算出し、算出された新たな更新位置と前回の更新位置とから更新変位を算出し、算出された前記更新変位を前記所定値と比較することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、歯車列のメッシュモデルにおいて、位置算出工程で算出したケースの軸受部の変形後の位置を、各歯車軸の支持位置として与えた上で、各歯車軸の支持位置の更新荷重を算出する。次いで、ケースのメッシュモデルにおいて、算出した更新荷重を各軸受部に入力して、ケースの軸受部の変形後の更新位置を算出する。続いて、かかる更新位置と、位置算出工程で算出した位置と、から変位を算出し、算出した変位が所定値以下である場合に、荷重及び位置の算出を終了する。
【0017】
一方、算出した変位が所定値を超えている場合に、更新位置を用いて、歯車軸の支持位置の新たな更新荷重を算出し、算出された新たな更新荷重を用いて、ケースの軸受部の変形後の新たな更新位置を算出する。そして、算出された新たな更新位置と、前回の更新位置と、から更新変位を算出し、算出した更新変位を再び所定値と比較する。
【0018】
すなわち、ケースの軸受部の変位が所定の範囲に収まるまで荷重算出工程及び位置算出工程を繰り返すため、歯車列の荷重とケースの変形とを分離した計算においても、十分に正確な解析結果を算出することができる。また、ケース変形の収束と、歯車列のトルク伝達特性と、の関連性を予測することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の動力伝達解析方法において、前記歯車列は、入力用歯車軸に入力された動力を複数の分配用歯車軸に分配して出力用歯車軸に伝達するものであって、前記分配用歯車軸の軸径を変更して前記分離工程、前記荷重算出工程及び前記位置算出工程を実施し、これら工程を実施した結果から前記分配用歯車軸のトルク分配比を算出するとともに、前記トルク分配比が予め設定した値になる各歯車軸の軸径を算出する歯車軸の解析工程をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
本発明の実施の形態に係る動力伝達解析方法を、図1から図8を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る動力伝達解析方法を説明するためのフローチャートである。なお、本実施の形態では、入力用の歯車軸に入力されたトルクが2本のトルク分配用の歯車軸に分配されて伝達される機構において、適切な分配比を与える歯車軸の形状を算出することを目的としている。
【0022】
まず、任意の軸径と肉厚で歯車列及びケースを設計し(パラメータ設定工程:S10)、歯車列とケースとを分離した状態で(分離工程:S1)、各々についての三次元形状メッシュモデルを構築する(モデル構築工程:S2)。この際、歯車列の歯車軸毎に分離してメッシュモデルを作成し、これらを組み合わせて歯車列のメッシュモデルとする。図2は、歯車列Tのメッシュモデルを示す図であり、図3は、ケースCのメッシュモデルを示す図である。なお、パラメータ設定工程S10については、図7及び図8を用いて後述する。
【0023】
歯車列Tは、図2に示すように、左右に配置された2本の入力用歯車軸(以下、「入力軸」という)S1と、これら入力軸S1の各々の近傍に配置された2本1組のトルク分配用歯車軸(以下、「分配軸」という)S2と、分配軸S2を介して入力軸S1からのトルクが伝達される1本の出力用歯車軸(以下、「出力軸」という)S3と、を備えている。
【0024】
また、歯車列Tを収納するケースCは、図3に示すように、入力軸S1を支持する第1軸受部B1と、分配軸S2を支持する第2軸受部B2と、出力軸S3を支持する第3軸受部B3と、を有している。
【0025】
歯車列Tの入力軸S1の上下2箇所には歯車G1が設けられており、分配軸S2の上方2箇所及び下方1箇所には、各々、小径及び大径の歯車G2が設けられている。そして、入力軸S1の下方の歯車G1と一方の分配軸S2の大径の歯車G2とが噛み合い、入力軸S1の上方の歯車G1と他方の分配軸S2の大径の歯車G2とが噛み合っているため、入力軸S1に入力されたトルクは、2本の分配軸S2に分配されて伝達される。また、歯車列Tの出力軸S3の周囲には、上下2箇所に歯が設けられた大径の歯車G3が設けられている。そして、各分配軸S2の小径の歯車G2と出力軸S3の大径の歯車G3とが噛み合っているため、分配軸S2に伝達されたトルクは、最終的に出力軸S3に伝達されることとなる。
【0026】
また、歯車列Tの各歯車の相互位置が適切であり、かつ、歯車列Tが軸受を介してケースCに収納されることを確認するために、歯車列TとケースCとを組み合わせる。図4は、歯車列Tの三次元形状モデル(実線)と、ケースCの三次元形状モデル(二点鎖線)と、を組み合わせた状態を示したものである。
【0027】
歯車列TとケースCとが正確に組み合わせられることが確認できたら、再び歯車列TとケースCとを分離する。そして、ケースCの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)の中心位置を固定し、歯車列Tの出力軸S3を回転しないように固定して、有限要素法により、歯車列Tのメッシュモデルの入力軸S1に所定のトルクを入力した場合における、各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置に作用する荷重を算出する(荷重算出工程:S3)。
【0028】
荷重算出工程S3においては、各歯車軸の支持は単純支持であり、与えられた支持位置(ケースCの各軸受部の中心位置)は算出中に変化しないものとする。また、最初の算出の際には、歯車列Tのメッシュモデルの各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置の変位をゼロと仮定して、各歯車軸の支持位置に作用する荷重を算出する。
【0029】
次いで、有限要素法により、ケースCの各軸受部の変形後の中心位置を算出する(位置算出工程:S4)。この際には、荷重算出工程S3で算出した荷重が、ケースCのメッシュモデルの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)に作用するものと仮定して、ケースCの変形を算出する。また、荷重は、ケースの軸受部に、荷重の向きに等分布状態で入力させ、ケースのマウント位置が変形しないものと仮定する。
【0030】
次いで、この位置算出工程S4で算出されたケースCの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)の変形後の中心位置を、各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の新たな支持位置として与えて、有限要素法により、歯車列Tのメッシュモデルの入力軸S1に所定のトルクを入力した場合における、各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置に作用する荷重(更新荷重)を算出する(更新荷重算出工程:S5)。
【0031】
なお、本実施の形態においては、荷重算出工程S3及び更新荷重算出工程S5において荷重を算出する際には、有限要素法プログラム内の接触解析機能を用いて接触解析を行う。かかる接触解析について具体的に説明する。
【0032】
本実施の形態においては、噛み合わせを忠実に再現するために各歯車(歯車G1、歯車G2及び歯車G3)の歯部のメッシュモデルを構築しており、要素(メッシュ)数低減のために、噛み合っている歯部の前後1〜2枚以外は省略することとしている。そして、歯部の歯面のトルク伝達を模擬するため、接触すると相互に荷重が作用する「接触判定範囲」を歯面に設定して、歯部同士があたかも噛み合っているようなモデルを構築する。
【0033】
図5は、各歯車の歯部Hの歯面Hs近傍に設定された接触判定範囲Aを説明するための説明図である。接触判定範囲Aとは、歯面Hs同士の接触を判定する範囲、すなわち、一の歯面Hsと他の歯面Hsとの間に相互に反力が作用する範囲である。接触判定範囲Aの大きさは任意に設定することができるが、ゼロと設定すると、計算誤差により、歯面Hs同士が接触したものとみなされず歯面Hs同士が貫通してしまい、トルク伝達が正確に行われない場合がある(図6(a)参照)。
【0034】
このため、本実施の形態においては、トルク伝達に与える影響が少ない範囲内(例えば±0.02mm)で、接触判定範囲Aを設定し、一の歯面Hsに他の歯面Hsが近接して接触判定範囲Aに入った場合に、反力を作用させることとしている(図6(b)参照)。なお、本実施の形態においては、歯面Hsの接触判定を正確に行うために、高精度の結果が算出される8点積分法を採用している。
【0035】
また、接触解析の初期においては、歯車列Tの各歯車(歯車G1、歯車G2及び歯車G3)の歯部Hは任意の位置で作成されるので、多数ある歯部Hの歯面Hs同士を確実に接触させるための調整が必要となる。このため、まず、歯面Hsが所定範囲(歯面Hs同士が貫通しない範囲)に入るように各歯車(歯車G1、歯車G2及び歯車G3)を回転させ、各歯面Hsを調整する。そして、有限要素法プログラム内にある初期の接触状態を確認する機能を用いて、歯面Hsが貫通している箇所を検出し、トルク伝達への影響が少ない範囲内でその箇所のモデル形状を修正して、正確にトルクを伝達するモデルを作成し、トルク伝達特性の解析を実行するようにする。
【0036】
更新荷重算出工程S5において、各歯車軸の支持位置に作用する更新荷重を算出した後、この更新荷重を用いて、ケースCの各軸受部の変形後の中心位置(更新位置)を再び算出する(更新位置算出工程:S6)。この際には、更新荷重算出工程S5で算出した更新荷重が、ケースCのメッシュモデルの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)に作用するものと仮定して、ケースCの変形を算出する。
【0037】
次いで、更新位置算出工程S6で算出したケースCの各軸受部の中心位置(更新位置)と、位置算出工程S4で算出したケースCの各軸受部の中心位置と、を用いて、各軸受部の中心位置の変化量(すなわち変位)を算出する。そして、算出した変位が所定値以下であるか否かを判定する(変位判定工程:S7)。なお、この変位判定工程S7の判定においては、変位の大きさ(絶対値)のみが用いられるが、計算結果が正しいことを確認するために、各軸受部の中心位置の変位方向をも確認する。
【0038】
変位判定工程S7において、算出された変位が所定値より大きいと判定された場合には、更新荷重算出工程S5に戻り、前記した更新位置算出工程S6で算出したケースCの各軸受部の中心位置を用いて、歯車列Tのメッシュモデルの入力軸S1に所定のトルクを入力して、各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置に作用する新たな更新荷重を算出する。この後、算出された新たな更新荷重を用いて更新変位算出工程S6を実施してケースCの各軸受部の新たな更新位置を算出し、変位判定工程S7に戻る。
【0039】
一方、変位判定工程S7において、算出された変位が所定値以下であると判定された場合には、入力軸S1から出力軸S3に駆動力を伝達する2本の分配軸S2のトルク分配比を算出し、このトルク分配比が所定範囲内にあるか否かを判定する(トルク分配比判定工程:S8)。
【0040】
トルク分配比判定工程S8において、トルク分配比が所定範囲内にない場合には、パラメータ設定工程S10に戻って分配軸S2の軸径を再設定した上で、分離工程S1以降の各工程を実施する。そして、これら各工程(分離工程S1〜トルク分配比判定工程S8)を、2本の分配軸S2の軸径を変化させて所定回数繰り返し、必要なトルク分配比が得られるような分配軸S2の軸径を求める。なお、分配軸S2の軸径を求める方法については、図7及び図8を用いて後述する。
【0041】
分配軸S2の軸径を求めた後、2本の分配軸S2のトルク分配が適切であることを確認するために、分離工程S1からトルク分配比判定工程S8までの工程を再度実施する。この結果、トルク分配比判定工程S8においてトルク分配比が依然として所定範囲内にないと判定された場合には、さらに分配軸S2の軸径の調整を行う。一方、トルク分配比判定工程S8においてトルク分配比が所定範囲内にあると判定された場合には、算出結果を出力して解析を終了する(出力工程:S9)。
【0042】
図6は、前記各工程を経て求められた分配軸S2のトルク伝達の様子を、出力を経時変化させて確認したものである。図6のグラフは、縦軸にトルク(N・m)を、横軸に時間(s)を、各々とっており、2本の分配軸S2に伝達される各トルクの伝達開始時点から約0.1秒経過時点までの時間履歴を示している。なお、本実施の形態においては、2本の分配軸S2のうち、入力軸S1の下方の歯車G1と噛み合う方を「長軸」と称し、入力軸S1の上方の歯車G1と噛み合う方を「短軸」と称している。
【0043】
次に、分配軸S2のトルク分配比を所定範囲内に収めるために、分配軸S2の軸径を変更する方法について、図7及び図8を用いて具体的に説明する。図7は、分配軸S2の軸径を変更する方法を説明するためのフローチャートである。
【0044】
まず、歯車列Tの歯車軸の軸径や位置、ケースCの肉厚、歯車列T及びケースCの材質や細部形状、等の各種パラメータを入力する(パラメータ設定工程:S10)。本実施の形態の初期においては、歯車列Tの分配軸S2の長軸の内径を41.5mmと設定し、短軸の内径を43.5mmと設定している。
【0045】
次いで、歯車列T及びケースCの三次元形状モデルについて各々メッシュモデルを構築し、これらメッシュモデルを正規の位置に配置して組み合わせる。これは、歯車同士の位置関係や、歯車とケースとの位置関係を確認し、必要な場合は微調整を行って解析をスムースに行うために実施するものであり、CRTに表示して行われる。
【0046】
歯車の位置が適切であることを確認すると、歯車同士の位置関係を固定して、歯車列とケースとを分離し、歯車列T及びケースCのメッシュモデルを利用して、歯車列Tのメッシュモデルの分配軸S2全体に伝達されるトルクのうち長軸側に伝達されるトルクの割合(以下、「長軸トルク分配比」という)を算出し、算出結果を出力する(トルク分配出力工程:S20)。なお、トルク分配出力工程S20は、前記した分離工程S1〜変位判定工程S7の工程群を順次実施する工程である。
【0047】
図8は、トルク分配出力工程S20における算出結果をプロットしたグラフである。図8のグラフは、長軸トルク分配比(%)を縦軸にとり、捩り剛性比(分配軸S2の長軸と短軸の断面2次極モーメントの比)を横軸にとっている。
【0048】
本実施の形態の初期においては、歯車列Tの分配軸S2の長軸の歯車以外の部分の外径を58mm、内径を41.5mmと設定し、短軸の歯車以外の部分の外径を58mm、内径を43.5mmと設定しており、捩り剛性比は1.07である。一方、トルク分配出力工程S20により、長軸トルク分配比が53.8%と算出される。図8の点P1は、かかる算出結果をプロットしたものである。なお、入力トルクは、前記した歯車軸荷重やケース変形の算出に用いた値である。
【0049】
次いで、トルク分配出力工程S20で算出した長軸トルク分配比が所定値に達しているか否かを判定する(トルク分配判定工程:S8)。
【0050】
トルク分配判定工程S8において、長軸トルク分配比が所定値に達していないと判定された場合には、歯車列Tの分配軸S2の長軸の内径及び短軸の内径を所定の範囲内で変化させ、長軸トルク分配比が所定値に近付くような値を算出する(パラメータ変更工程:S30)。そして、パラメータ設定工程S10に戻り、パラメータ変更工程S30で算出された長軸の内径及び短軸の内径に係るデータを用いて、軸のパラメータ、具体的には軸の内径を(必要な場合には外径を含めて)更新(再設定)する。
【0051】
この後、トルク分配出力工程S20において、更新(再設定)したパラメータに基づいて、歯車列T及びケースCの三次元形状モデルについて各々メッシュモデルを構築し、これらメッシュモデルを利用して、再び歯車列Tのメッシュモデルの長軸トルク分配比を算出して、トルク分配判定工程S8に戻る。
【0052】
一方、トルク分配判定工程S8において、長軸トルク分配比が所定値に達していると判定された場合には、最適なトルク分配をもたらす軸形状が算出されたものとして、算出結果を出力して解析を終了する(出力工程:S9)。
【0053】
実際には、最適なトルク分配(長軸トルク分配比が所定値)に達するような軸形状を算出するのは時間がかかるため、本実施の形態においては、パラメータ設定工程S10、トルク分配出力工程S20、トルク分配判定工程S8及びパラメータ変更工程S30から構成される工程群を複数回実施して得た複数の算出結果(図8の点P1〜点P5)を用いて、軸形状の最適値を推定している。
【0054】
具体的に説明すると、図8に示される複数の算出結果(点P1〜点P5)を用いて、最小自乗法により、長軸トルク分配比と捩り剛性比との相関関係を近似的に表す直線を求める。そして、この直線と長軸トルク分配比50%の直線との交点を元に、最適なトルク分配を達成させる歯車列Tの分配軸S2の軸径(内径)を決定している(図8参照)。
【0055】
以上説明したパラメータ設定工程S10、トルク分配出力工程S20、トルク分配判定工程S8及びパラメータ変更工程S30から構成される工程群は、本発明における解析工程である。
【0056】
本実施の形態に係る動力伝達解析方法においては、歯車列TをケースCから分離した上で歯車列T及びケースCのメッシュモデルを構築し、歯車列Tの各歯車軸(入力軸S1、分配軸S2及び出力軸S3)の支持位置を与えて歯車列Tに所定のトルクを入力し、有限要素法により各歯車軸の支持位置の荷重を算出する。次いで、この算出した荷重をケースCの各軸受部(第1軸受部B1、第2軸受部B2及び第3軸受部B3)に入力し、有限要素法により各軸受部の変形後の位置を算出する。
【0057】
すなわち、歯車列Tの荷重とケースCの変形とを別々に計算するので、比較的容量の少ないコンピュータを用いて所望の解析結果を算出することができる。従って、大容量の大型コンピュータほど利用機会が限定される現在において、きわめて効率的に解析を進めることができる。また、歯車列TとケースCとの個別解析を実施することにより、歯車列T又はケースCのいずれかに不適切な設計箇所があった場合に、その箇所の発見及び修正を迅速に行うことが可能となる。
【0058】
また、歯車列T及びケースCのメッシュモデルを利用して、歯車列のトルク伝達特性の有限要素法解析と、ケース変形の有限要素法解析と、を組み合わせた解析を行うので、歯車列のトルク伝達特性を、試作品を製作することなく視覚的に予測することができる。従って、トルク伝達特性の確認に要する時間を大幅に短縮することができる。また、不具合の改善を目的とした設計変更に迅速に対応することができる。さらに、試作品を製作するコストを削減することができる。
【0059】
また、本実施の形態に係る動力伝達解析方法においては、歯車列Tのメッシュモデルにおいて、位置算出工程S4で算出したケースCの軸受部の変形後の中心位置を、歯車列Tの各歯車軸の支持位置として与えた上で、各歯車軸の支持位置の更新荷重を算出する。次いで、ケースCのメッシュモデルにおいて、算出した更新荷重を各軸受部に入力して、ケースCの軸受部の変形後の中心位置(更新位置)を算出する。続いて、更新位置と、位置算出工程S4で算出した位置と、から変位を算出し、算出した変位が所定値以下である場合に、荷重及び位置の算出を終了する。
【0060】
一方、算出した変位が所定値を超えている場合に、更新位置を用いて、歯車軸の支持位置の新たな更新荷重を算出し、算出された新たな更新荷重を用いて、ケースの軸受部の変形後の新たな更新位置を算出する。そして、算出された新たな更新位置と、前回の更新位置と、から更新変位を算出し、算出した更新変位を再び所定値と比較する。
【0061】
すなわち、ケースCの軸受部の変位が所定の範囲に収まるまで荷重及び位置の算出を繰り返すため、歯車列Tの荷重とケースCの変形とを分離した計算においても、十分に正確な解析結果を算出することができる。また、ケース変形の収束と、歯車列のトルク伝達特性と、の関連性を予測することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る動力伝達解析方法においては、歯車列Tの各分配軸S2により伝達されるトルクの分配特性を、入力トルクを急激に経時変化させる遷移状態で解析して求めたが、こうした急激な変化でも各分配軸S2は略等しいトルクを伝えていることがわかる(図6参照)。
【0063】
また、本実施の形態に係る動力伝達解析方法においては、歯車列T及びケースCに係るパラメータを設定し、設定したパラメータを参照して歯車列T及びケースCのメッシュモデルを構築し、この構築したメッシュモデルを用いて、歯車列Tのメッシュモデルにおけるトルク分配特性(長軸トルク分配比)を出力する。そして、出力されたトルク分配特性(長軸トルク分配比)が、所定値に達しているか否かを判定し、所定値に達していないと判定された場合に、歯車列Tに係るパラメータ(軸径)を変更する。
【0064】
従って、変更したパラメータ(軸径)を用いて歯車列T及びケースCに係るパラメータ全体を更新し、更新したパラメータを参照して構築した歯車列T及びケースCのメッシュモデルを用いてトルク分配特性(長軸トルク分配比)を出力する、という工程を繰り返すことにより、最適なトルク分配を達成させる歯車列Tの分配軸S2の軸径(内径)を決定することができる。
【0065】
なお、以上の実施の形態においては、歯車列の伝達特性解析と、ケースの変形の解析と、を併せて行ったが、予め歯車列のみで伝達特性を解析して適切なトルク分配を与える分配軸の形状を決定しておき、その後にケース変形を考慮して前記した一連の解析を行うこともできる。歯車列のみで伝達特性を解析する際には、軸受部の変位をゼロと設定してもよいし、所定の値を与えてもよい。一方、予めケースのみで変形解析を行うこともできる。すなわち、ケースの軸受部に所定の荷重を与え、その荷重による軸受部の変位を所定値に収めた上で、前記した一連の解析を行ってもよい。
【0066】
【発明の効果】
本発明に係る動力伝達解析方法によれば、歯車列のメッシュモデルと、ケースのメッシュモデルと、を別々に構築し、ケースの各軸受部の位置と、歯車列の各歯車軸の支持位置と、を一致させて荷重の受け渡しを行いつつ、歯車列の伝達特性解析と、ケースの変形解析と、を行うので、歯車列とケースとを分離して解析でき、歯車列とケースとを別々に検討することができる。従って、使用するコンピュータも小型化することができるので、きわめて効率的に伝達特性を解析することができ、設計変更にも迅速に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る動力伝達解析方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において使用される歯車列のメッシュモデルを示す図である。
【図3】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において使用されるケースのメッシュモデルを示す図である。
【図4】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において使用される歯車列及びケースのメッシュモデルを示す図である。
【図5】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において使用される歯車列の歯車の歯面に設定された接触判定範囲を説明するための説明図である。
【図6】本実施の形態に係る動力伝達解析方法で出力されたトルク分配特性を示すグラフである。
【図7】本実施の形態に係る動力伝達解析方法において、分配軸のパラメータを変更する工程を説明するためのフローチャートである。
【図8】本実施の形態に係る動力伝達解析方法のトルク分配出力工程における算出結果をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
T 歯車列
S1 入力用歯車軸
S2 分配用歯車軸
S3 出力用歯車軸
C ケース
B1 第1軸受部
B2 第2軸受部
B3 第3軸受部
S1 分離工程
S2 モデル構築工程
S3 荷重算出工程
S4 位置算出工程
S8 トルク分配判定工程(解析工程)
S10 パラメータ設定工程(解析工程)
S20 トルク分配出力工程(解析工程)
S30 パラメータ変更工程(解析工程)
Claims (3)
- 複数の歯車軸を有する歯車列と、前記歯車軸を軸受部で支持して前記歯車列を収納するケースと、を備える動力伝達機構の動力伝達解析方法において、
前記歯車列を前記ケースから分離する分離工程と、
前記歯車列及び前記ケースのメッシュモデルを構築するモデル構築工程と、
前記歯車列のメッシュモデルにおいて、各歯車軸の支持位置を与えて前記歯車列に所定のトルクを入力し、各歯車軸の支持位置の荷重を算出する荷重算出工程と、
前記ケースのメッシュモデルにおいて、前記軸受部に前記荷重を入力し、前記軸受部の変形後の位置を算出する位置算出工程と、
を備えることを特徴とする動力伝達解析方法。 - 前記位置算出工程で算出された前記軸受部の位置を前記歯車軸の支持位置として前記荷重算出工程を実施することにより前記歯車軸の支持位置の更新荷重を算出し、算出された前記更新荷重を用いて前記位置算出工程を実施することにより前記軸受部の変形後の更新位置を算出し、算出された前記更新位置と前記位置算出工程で算出した前記軸受部の位置とから変位を算出し、算出された前記変位を所定値と比較し、前記変位が前記所定値以下の場合に、荷重及び位置の算出を終了する一方、前記変位が前記所定値を超えている場合に、前記更新位置を前記歯車軸の支持位置として前記荷重算出工程を実施することにより前記歯車軸の支持位置の新たな更新荷重を算出し、算出された新たな更新荷重を用いて前記位置算出工程を実施することにより前記軸受部の変形後の新たな更新位置を算出し、算出された新たな更新位置と前回の更新位置とから更新変位を算出し、算出された前記更新変位を前記所定値と比較することを特徴とする請求項1に記載の動力伝達解析方法。
- 前記歯車列は、
入力用歯車軸に入力された動力を複数の分配用歯車軸に分配して出力用歯車軸に伝達するものであって、
前記分配用歯車軸の軸径を変更して前記分離工程、荷重算出工程及び前記位置算出工程を実施し、これら工程を実施した結果から前記分配用歯車軸のトルク分配比を算出するとともに、前記トルク分配比が予め設定した値になる各歯車軸の軸径を算出する歯車軸の解析工程をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の動力伝達解析方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2003
- 2003-02-24 JP JP2003045259A patent/JP2004258697A/ja active Pending
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